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進行悪性黒色腫患者におけるオプジーボ・イピリムマブ併用療法、6.5年の追跡調査(CheckMate-067)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年5月20日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法およびオプジーボ単剤療法が、イピリムマブ単剤療法と比較して、ファーストライン治療の進行悪性黒色腫患者において生存期間の持続的な改善を示した無作為化二重盲検第III相CheckMate-067試験の新たな6.5年データを発表した。 最短6.5年の追跡調査において、ニボルマブ・イピリムマブ併用療法の全生存期間(OS)中央値は72.1ヵ月であった。これは進行悪性黒色腫に対する第III相試験において報告された最長のOSの中央値である。ニボルマブ単剤群のOS中央値は36.9ヵ月、イピリムマブ単剤群では19.9ヵ月であった。また、ニボルマブ・イピリムマブ併用群の6.5年無増悪生存(PSF)率は34%(中央値11.5ヵ月)、ニボルマブ単剤群では29%(中央値6.9ヵ月)、イピリムマブ単剤群では7%(中央値2.9ヵ月)であった。追跡調査で生存していた併用群患者のうち、77%(145例中112例)が無治療であり、その後の全身療法を受けていなかった。同様の患者の割合は、ニボルマブ単剤群で69%(122例中84例)、イピリムマブ単剤群では43%(63例中27例)であった。 ニボルマブ・イピリムマブ併用群またはニボルマブ単剤群では、BRAF変異陽性、野生型、ベースライン時に肝転移を有する患者を含む関連サブグループ全体で、持続的な臨床ベネフィットが維持された。BRAF変異陽性患者における6.5年生存率は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群57%、ニボルマブ単剤群43%、イピリムマブ単剤群25%であった。BRAF野生型患者における生存率は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群46%、ニボルマブ単剤群42%、イピリムマブ単剤群で22%であった。肝転移を有する患者における生存率は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群38%、ニボルマブ単剤群31%、イピリムマブ単剤群で22%であった。奏効期間(DoR)中央値は、併用療法群とニボルマブ単剤療法群で未達だったのに対し、イピリムマブ単剤療法群では19.2ヵ月であった。 ニボルマブ・イピリムマブ併用療法の安全性プロファイルは、これまでの結果と一貫しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。また、5年時点の解析以降、新たに発生した治療に関連する死亡例はなかった。 CheckMat -067試験の6.5年データは、6月4~8日に開催される2021年米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2021)にて、2021年6月6日、口頭抄録セッションで発表される(抄録番号#9506)。

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非責任病変へのPCI追加、FFRガイドvs.血管造影ガイド/NEJM

 多枝病変を有するST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、梗塞関連病変へのPCI成功後の非責任病変の完全血行再建は、冠血流予備量比(FFR)ガイド下と血管造影ガイド下で有益性に差は認められなかった。フランス・パリ大学のEtienne Puymirat氏らが、Flow Evaluation to Guide Revascularization in Multivessel ST-Elevation Myocardial Infarction(FLOWER-MI)試験の結果を報告した。ただし、イベント発生率が予想より低く統計学的検出力が計画より低下したため、著者は、「FFRガイド下治療の有意な効果は認められなかったが、主要評価項目のハザード比の95%信頼区間(CI)が0.78~2.23と非常に広く、これはFFRガイド下治療により相対的に22%リスクが低下または123%リスクが上昇することを表しており、今回の結果を結論付ける解釈はできない」との見解を示している。非責任病変へのPCI追加による完全血行再建が、責任病変単独治療より優れているが、FFRガイド下治療が血管造影ガイド治療より優れているかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。多枝病変のSTEMI患者1,171例で、1年後の主要心血管イベントを比較 FLOWER-MI試験は、2016年12月18日~2018年12月6日に、フランス国内41施設で実施された医師主導の評価者盲検無作為化非盲検試験である。梗塞関連病変のPCIが成功した18歳以上の多枝病変STEMI患者で、50%以上狭窄の非責任病変が1つ以上存在し、PCIの適応と判断された患者1,171例を、FFRガイド群(590例)または血管造影ガイド群(581例)に1対1の割合で無作為に割り付け、入院中に完全血行再建術を行った。 主要評価項目は、1年時点での全死因死亡、非致死的MI、緊急血行再建に至る予定外入院の複合であった。FFRガイド下完全血行再建術、血管造影ガイド下と比べて有意差なし 各群4例が同意撤回等により除外され、intention-to-treat解析集団はFFRガイド群586例、血管造影ガイド群577例であった。PCIは、それぞれ388例(66.2%)、560例(97.1%)に実施され、非責任病変のステント留置数/例(平均±SD)は、FFRガイド群1.01±0.99、血管造影ガイド群1.50±0.86であった。 主要評価項目イベントは、FFRガイド群で5.5%(32/586例)、血管造影ガイド群で4.2%(24/577例)に発生し、ハザード比(HR)は1.32(95%CI:0.78~2.23、p=0.31)であった。 また、全死因死亡は1.5%(9例)vs.1.7%(10例)(HR:0.89、95%CI:0.36~2.20)、非致死的MIは3.1%(18例)vs.1.7%(10例)(1.77、0.82~3.84)、緊急血行再建に至る予定外入院は2.6%(15例)vs.1.9%(11例)(1.34、0.62~2.92)であった。

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統合失調症に対する抗精神病薬治療の有効性と安全性~日本でのRCTを用いたメタ解析

 さまざまな人種や民族のデータをプールした解析では、生物学的および環境的な不一致性が問題となる場合がある。そこで、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、日本で実施された統合失調症に対する抗精神病薬治療のランダム化比較試験(RCT)のみを使用して、統合失調症に対する抗精神病薬の有効性および安全性の検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2021年4月30日号の報告。 Embase、PubMed、CENTRALより、文献検索を行った。主要アウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの改善およびすべての原因による中止とした。副次的アウトカムは、PANSSサブスケールスコアの改善、有害事象または効果不十分による中止、16種の有害事象発生率とした。平均差またはリスク比と95%信頼区間を算出した。 主な結果は以下のとおり。・34件のRCTが特定された(患者数6,798例、平均研究期間:9.0±4.24週、男性の割合:53.7%、平均年齢:43.3歳)。・検討された抗精神病薬は、アリピプラゾール、アセナピン、ブロナンセリン、ブロナンセリン経皮吸収製剤、ブレクスピプラゾール、クロカプラミン(PANSSデータなし)、クロザピン(PANSSデータなし)、ハロペリドール、ルラシドン、モサプラミン、オランザピン、パリペリドン、ペロスピロン、クエチアピン、リスペリドンであった。・日本人統合失調症患者に対する抗精神病薬の有効性および安全性プロファイルは、薬剤間で異なっていた。・ハロペリドールおよびクエチアピン以外の薬剤による積極的な治療は、プラセボと比較し、PANSS合計スコアの改善が認められた。・アセナピン、オランザピン、パリペリドン、リスペリドンは、すべての原因による中止において、プラセボよりも優れていた。・アセナピン、ブロナンセリン、ブロナンセリン経皮吸収製剤、ハロペリドール、ルラシドン、モサプラミン、オランザピン、パリペリドン、リスペリドンは、PANSS陽性症状スコアの改善において、プラセボよりも優れていた。・アリピプラゾール、アセナピン、ブロナンセリン、ブロナンセリン経皮吸収製剤、ブレクスピプラゾール、ルラシドン、オランザピン、パリペリドン、ペロスピロン、リスペリドンは、PANSS陰性症状スコアの改善において、プラセボよりも優れていた。・ほとんどのアウトカムに対するエビデンスの信頼性は、低いまたは非常に低いであった。 著者らは「本結果は、さまざまな人種や民族を含むこれまでのメタ解析の結果と同様であった」としている。

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FDA、食道・胃食道接合部がんの術後補助療法にニボルマブ承認(CheckMate-577)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年5月20日、米国食品医薬品局(FDA)が、術前補助化学放射線療法(CRT)を受け病理学的残存病変を認めた完全切除後の食道がんまたは胃食道接合部(GEJ)がん患者の術後補助療法として、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)を承認したことを発表した。 この承認は、術前補助CRTおよび完全切除後に病理学的残存病変を認めた食道がんまたはGEJがん患者を対象に、オプジーボ(532例)とプラセボ(262例)を比較評価した第III相CheckMate-577試験の結果に基づいている。 同試験において、無病生存期間(DFS)中央値は、オプジーボ群22.4ヵ月、プラセボ群11.0ヵ月であった(HR:0.69、95%CI:0.56~0.85、p=0.0003)。探索的解析における、腺がん患者のDFS中央値は、オプジーボ群19.4ヵ月、プラセボ群で11.1ヵ月(非層別HR:0.75、95% CI:0.59~0.96)、扁平上皮がん患者のDFS中央値は、オプジーボ群で29.7ヵ月、プラセボ群で11.0ヵ月であった(非層別HR:0.61、95% CI:0.42~0.88)。

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新「内科専門医」と「総合内科専門医」の試験と位置付け教えます

 従前からアナウンスされていた、日本内科学会の専門医制度改革がいよいよ現実のものとなる。今年7月には、初めての「内科専門医」試験が実施され、今後、内科専門医が続々誕生していく一方、従来の「認定内科医」試験は今年6月が最後となる。近年受験者が急増していた「総合内科専門医」と内科専門医はどのようなすみ分けになるのか? 認定内科医との試験内容の違いは? CareNeTVで総合内科専門医試験対策のレクチャーを手がけている長門 直氏(JCHO東京山手メディカルセンター 呼吸器内科・感染症内科)に解説してもらった。=============== 内科の専門医制度変更に伴い、しばしば質問される3つのテーマについて述べていきたいと思います。1)内科専門医と認定内科医の位置付け 日本内科学会の専門医制度改革の大枠は、認定内科医・総合内科専門医→内科専門医・総合内科専門医への変更だといえます。他学会でも、認定医→専門医→指導医というステップアップ制度を採用していたところは過去ありましたが、何回も試験を受けないといけない医師側の負担、患者側から見てどちらが上位資格かわかりにくく誤解を招くといった理由から、次第に「認定医」がなくなって、専門医→指導医の2階建てとなり、現在この形がほぼスタンダードになっています。 内科に関しては、認定内科医取得と前後して、後期研修から循環器、呼吸器、消化器などのサブスペシャリティ診療科に分かれてしまい、体系的な内科診療、総合内科的な思考が十分に修得できないという問題点が指摘されていました。それにより、実際に患者が不利益を被る事例も少なくありません。たとえば、腹痛患者が時間外受診し、当直医が呼吸器内科であったりすると「専門外だから」と診療拒否して、離れた医療機関に搬送になり、搬送中に急変する、といった事態です。 内科医であるにもかかわらず、「臓器専門外だからお断り」といったことが次第に目立つようになってきて、地域の医療ネットワークにも支障が出てきたのです。そのため、日本内科学会は、内科の臓器別の専門研修に進む前に、内科全般の研修期間をしっかり設けて、体系的に内科診療ができるように制度を変更することにしたのです。それが従来の認定内科医より高い内科の臨床レベルが求められる、新しい内科専門医となります。 一方で、認定内科医は内科のサブスペシャリティ専門医取得のための必須条件となっています。実際に、認定内科医→サブスペシャリティ専門医という今までのプロセスを経ているベテラン内科医が数多く存在します。学会としては、その先生方に認定内科医を廃止するので、改めて内科専門医試験を受験してくださいというわけにもいかず、新規に「認定医」の認定は行わないが、既取得に限って更新を認めるという形に落ち着きました。 今後、新規に認定内科医を認定しなくなると、内科専門医の取得が内科のサブスペシャリティ専門医に進むための必須要件になります。端的に言うと、認定内科医は既存の内科サブスペシャリティ専門医の資格維持のためだけに存続するものとなり、将来的には「絶滅」する資格となります。2)内科専門医と総合内科専門医の試験の難易度 日本内科学会のホームページに、新内科専門医は「認定内科医試験と総合内科専門医試験の中間」、総合内科専門医は「(現行の)総合内科専門医」を踏襲すると明確に記載されています。そのうえで筆者が、後輩によく質問されるのは、「認定医試験と総合内科専門医試験の中間とは一体どういう意味?」ということです。 ここで「認定内科医試験」をまず振り返ります。 認定内科医の最後の資格試験は、昨年実施の予定だったのですが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、今年2021年6月にずれ込みました。問題数は300問で、一般問題と臨床問題の割合は非公表ですが、一般問題が臨床問題より多い、もしくは同数程度です。 新内科専門医試験は、問題数250問で一般問題100問・臨床問題150問と公表されており、臨床問題に比重が置かれています。一般問題はほぼ「暗記」で乗り切れるのですが、臨床問題は体系的な思考が要求されるので、当然難易度は上がります。 また、学会関連の会議や研修のたび、「内科専門医は初診患者や救急患者の初期対応がしっかりできるレベルを求めている」と聞いていますので、新内科専門医試験は希少疾患よりも患者数の多いいわゆるメジャー内科疾患中心に出題されると予想されます。この傾向は、認定内科医の臨床問題の傾向でもありましたので、新内科専門医試験は診断基準や法的問題・禁忌など暗記が必須である一般問題対策をしつつ、「内科初診や時間外で診ることの多いメジャーな内科疾患に関する臨床問題対策」に重きを置いて勉強することが大事だと考えます。 後輩たちからよく「up to date問題は出題されますか?」とよく質問されますが、新内科専門医試験でup to date問題はあまり出題されないと考えます。その理由は、抗体薬を含めた新規薬剤はよく話題にはなりますが、実際には、臓器別専門医がしっかりトレーニングした上で使用するものです。処方に当たっては、医師側にもいろいろと条件が定められているので、この種の知識は、大半が内科サブスペシャリティ専門医資格を有している医師が受験する「総合内科専門医試験」で問われる領域になると考えます。 なお、「総合内科専門医試験」は2021年度までは問題数250問で一般・臨床(up to date含む)の割合は非公表でしたが、2022年度より問題数は200問と少なくなり、一般50問・臨床150問(up to date含む)になることが公表されています。3)内科専門医と総合内科専門医の今後のキャリア 新しい内科専門医制度によって、内科専門医、総合内科専門医はそれぞれどのような意味を持ち、内科医のキャリアに影響してくるのでしょうか。ここでカギになるのは「内科指導医」です。 病院が内科研修プログラムを提供するためには、一定数の内科指導医が必要ですが、現在の認定内科医保有の内科指導医は2025年までの暫定措置とされました。現在、「認定内科医+サブスペシャリティ専門医」資格保有での内科指導医が依然多く、そのままだと、2025年をもって「内科指導医」から退かなくてはなりません。 2026年以降も指導医の継続を希望する場合、「総合内科専門医」もしくは「内科専門医」の資格が必要となります。また、内科指導医は「総合内科専門医であることが望ましい」と明記されており、さらに「内科専門医」は1回以上更新していることが条件なので、基幹病院で指導的な立場で仕事をしたいという気持ちがあるならば、事実上「総合内科専門医」は必須資格と言えるでしょう。 とくに近年の新型コロナ感染拡大による医療環境の変化や、それに伴う専門医試験実施内容の変更を踏まえると、心乱さず仕事するには、やはり「総合内科専門医」まで取得しておく必要があると考えます。実際、2026年に「内科指導医」の数が減ることも考えられるので、医療機関によっては研修に必要な指導医数が充足できないという事態も考えられます。2026年に指導医数が不足する恐れがある病院では、「総合内科専門医」資格はことさら重宝される可能性が高く、キャリア形成有利に働くと予想されます。■CareNeTV関連番組:『総合内科専門医試験2021』完全対策

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看護師1人当たりの患者数最小化で、患者転帰が改善/Lancet

 看護師1人当たりの患者数を最小化する施策により、死亡率、再入院率、在院日数が改善され、その結果として支出せずに済んだ費用は、看護師の増員に要した費用の2倍以上に達したことが、米国・ペンシルベニア大学のMatthew D. McHugh氏らが実施した「RN4CAST-Australia試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年5月11日号で報告された。クイーンズランド州55病院の前向きパネル調査 研究グループは、2016年にオーストラリア・クイーンズランド州で制定された最小看護師-患者比率に関する施策が看護師の人員配置や患者転帰に及ぼす影響の評価および、同施策が人員配置と患者アウトカムに関連があるかを検討する目的で、前向きパネル調査を行った(オーストラリア・クイーンズランド州保健局などの助成による)。 クイーンズランド州の最小看護師-患者比率施策(午前と午後の勤務では1対4を超えない、夜間勤務では1対7を超えない)の対象となった病院(介入病院:27施設)と、退院患者が類似するがこの施策の対象ではない病院(対照病院:28施設)を、施策の導入前(ベースライン)と導入から2年の時点で比較した。 死亡記録と関連付けられた「標準化クイーンズランド州入院患者データ」を用いて、内科および外科病棟の患者の背景因子およびアウトカム(30日死亡、7日再入院、在院日数)のデータを取得し、施策導入の前後で対象病院の内科系および外科系の看護師1万7,010人の調査データを入手した。 看護師の調査データを用いて看護師の人員配置を評価し、標準化された患者データと関連付けた後、介入群と対照群の病院における患者転帰の変化を推定し、看護師の人員配置の変化との関連を検討した。 ベースライン(2016年)で評価を受けた患者23万1,902例(介入病院群14万2,986例、対照病院群8万8,916例)と、施策導入後(2018年)に評価を受けた患者25万7,253例(16万167例、9万7,086例)が解析に含まれた。1対4.5以上の病院の割合が、83%から58%に低下 看護師1人当たりの平均患者数は、対照病院群ではベースラインの6.13(SD 0.75)例から施策導入後2年の時点の5.96(0.98)例へとわずかに改善し、介入病院群では4.84(1.05)例から4.37(0.54)例に改善した。 ベースラインの30日死亡率は、対照病院群に比べ介入病院群で高かった(補正後オッズ比[OR]:1.34、95%信頼区間[CI]:1.09~1.64、p=0.0052)。導入後の30日死亡率は、対照病院群ではベースラインと有意な差は認められなかった(補正後OR:1.07、95%CI:0.97~1.17、p=0.18)が、介入病院群ではベースラインに比べ有意に低下した(0.89、0.84~0.95、p=0.0003)。 ベースラインから導入後2年までに、7日再入院率は対照病院群で増加した(補正後OR:1.06、95%CI:1.01~1.12、p=0.015)のに対し、介入病院群では増加しなかった(1.00、0.95~1.04、p=0.92)。 在院日数は、両群とも導入後に減少した(対照病院群:補正後発生率比[IRR]:0.95、95%CI:0.93~0.98、p=0.0001、介入病院群:0.91、0.89~0.94、p<0.0001)が、短縮の程度は介入病院群が対照病院群よりも顕著であった(補正後OR:0.95、0.92~0.99、p=0.010)。 ベースラインから導入後2年までに、病院の人員配置に変化がみられた。人員配置に関する信頼性の高いデータを持つ36病院のうち、ベースライン時に看護師1人当たりの患者数が4.5例以上の病院は30施設(83%)であったが、導入後は21施設(58%)に減少した。 これらの変化の大部分は介入病院群によるものであり、対照病院群と比較して介入病院群では、看護師1人当たりの患者数を1例削減することで、30日死亡率(OR:0.93、95%CI:0.86~0.99、p=0.045)、7日再入院率(0.93、0.89~0.97、p<0.0001)、在院日数(IRR:0.97、95%CI:0.94~0.99、p=0.035)がいずれも有意に改善された。 また、再入院率の抑制と在院日数の短縮で支出せずに済んだ費用は、看護師の増員に要した費用の2倍以上であった。 著者は、「最小限の看護師-患者比率を確立する施策は実行可能なアプローチであり、看護師の人員配置と患者転帰を改善し、投資利益率が向上すると考えられる」としている。

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バダデュスタットの貧血改善効果とMACEによる心血管安全性をダルベポエチンを対照薬として非劣性試験にて評価(解説:栗山哲氏)-1394

 バダデュスタット(Vadadustat:Vad)は、低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)の阻害薬であり、HIFを安定化し内因性エリスロポエチン(EPO)の産生を刺激する。これに対して、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)であるダルベポエチンα(DA)は遺伝子組み換えEPOである。1990年代初頭から使われているESAは、腎性貧血改善による輸血量減少や患者QOL改善に加え、Cardio-Renal-Anemia(CRA:心・腎・貧血)症候群の改善が示唆されている。一方、HIF-PH阻害薬のCRA症候群に与える影響は現時点では不明である。 米国・スタンフォード大学Chertow氏らの研究グループは、Vadの有効性を評価した2件の第III相無作為化非盲検実薬対照非劣性試験(PRO2TECT study)の結果を報告した。研究では、ESAによる治療歴がなくヘモグロビン(Hb)値10g/dL未満の保存期CKD患者、およびESA治療歴がありHb値8~11g/dL(米国)または9~12g/dL(米国以外)の保存期CKD患者を、Vad群またはDA群に1対1の割合で無作為に割り付けた。主要安全性評価項目は、初発のMACE(全死因死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)で、2件の試験を統合しtime-to-event解析により評価した。副次安全性評価項目には、拡張MACE(MACE+心不全あるいは血栓塞栓イベントによる入院)を組み入れた。 その結果、24~36週のHb値の平均変化量の群間差は、ESA未治療患者(1,751例)で0.05g/dL(95%CI:-0.04~0.15)、ESA既治療患者(1,725例)で-0.01g/dL(95%CI:-0.09~0.07)であり、事前に設定した非劣性マージン(-0.75g/dL)を満たした。一方で、統合解析において、Vad群(1,739例)のDA群(1,732例)に対するMACEのハザード比は1.17(95%CI:1.01~1.36)で、事前に設定された非劣性マージン1.25を満たさなかった。つまり、Vadは貧血改善効果に関しては事前に設定した非劣性マージンを満たしたが、主要安全性評価項目であるMACEについては非劣性マージンを満たさなかった。本論文のMACEサブグループ解析をForest plotでみると、VadがDAに比較して非劣性を証明し得なかったことに影響した可能性のある因子(すなわちDAに有利に作用した可能性がある因子)として、(1)開始時Hb値が高い、(2)目標Hb値が高い(10~12g/dL)、(3)欧州民族(vs.米国)、(4)年齢が65歳未満、(5)ヒスパニックあるいはラテン系民族、(6)開始時eGFRが15mL/min/1.73m2以上、(7)開始時尿ACR 300g/kg以上、(8)開始時フェリチン値が中間値で277.5ng/mL以上、(9)開始時CRP 0.6mg/dL未満、などが示唆された。 本研究で用いられた実験デザイン「非劣性試験」は、なじみが少なく、その解釈に難渋する読者もあろう。“非劣性”とは、すでに有効な既存薬(この場合はDA)が存在し、新薬(Vad)は副作用が少ないなど既存薬よりも利点があるといった場合に、既存薬に対し有効性において優越性が証明できなくても、劣っていないことが証明できればそれでよし、とする研究に使われる。同等性を示すマージンが両側であるのに対し、非劣性試験では、新薬が既存薬より劣っていないかどうかのみに注目し、新薬が既存薬より優れているという優越性が成り立っても成り立たなくてもよいので、信頼区間は片側のみに注目する。本試験では事前に非劣性マージンとして1.25が心血管リスクの評価に用いられた。本研究のごとくMACEに関して「非劣性が証明されない」場合の解釈として、新薬(Vad)が既存薬(DA)に比べ「劣っている」のではなく、新薬が既存薬に比し「リスクが高い」ものでもない。本研究の結果を考えると、「VadがDAよりMACEリスク面で不利」とまでは言及できない。 以上、本研究のメッセージとしては、「VadはDAに比べてCKD患者の貧血改善効果は劣らないが、心血管安全性の面で結論が持ち越された」、と結論するのが妥当であろう。今後、HIF-PH阻害薬の治療目標、リスクとベネフィットなどをさらに明確にする目的で研究がデザインされ、その疑問に答える必要がある。

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DLBCL、研究・治療の最新状況を報告したNEJM論文をポイント解説【Oncologyインタビュー】第33回

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は悪性リンパ腫の一種であり、血液腫瘍の中で最も患者数が多い疾患である。2021年3月、NEJM誌に「Diffuse Large B-Cell Lymphoma」と題した、疾患名そのものをタイトルにした論文が掲載された。現在の初発・再発における治療戦略から今後の新薬の開発情報までがまとめられた、17ページにわたる本論文のポイントを、岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センターの遠西 大輔氏(血液・腫瘍内科 准教授)が解説する。インタビューはzoom形式で行われたこの論文は、著者2人がいずれも臨床医です。臨床医目線で病態の分類変更の背景など、最新知識をコンパクトにまとめたところに、まずは大きな価値があるでしょう。血液疾患の臨床に当たっている方であれば既知の情報も多いので、関心あるところと新たな知見の部分を重点的に読むとよいと思います。重要なポイントについて、パートごとに内容を読み解いていきましょう。Pathological Features and Molecular Classification最初は分子遺伝学的なまとめです。最近の分子の詳細な解析によって新たなサブタイプが登場している状況を解説しており、この内容はFigure 1Cにまとまっているのでこれを見るだけでもよいと思います。Staging and Response Assessment今後の臨床面で注目すべきは、一行だけ触れられている「リキッドバイオプシー」でしょう。世界的にも、血液腫瘍に対するリキッドバイオプシーを用いた遺伝子検査は保険承認されていませんが、数年内には臨床で使われるようになると予想されます。固形がん同様に、血液がんでも遺伝子変異のタイプに応じて治療戦略を選択し、効く薬剤を予測して使い分けるようになるかもしれません。ここで引用されている論文1)は、あまたあるDLBCLとリキッドバイオプシーに関する論文の中でも代表的なものなので、関心がある方はこちらの著者グループに注目するとよいと思います。Prognostic Factorsここでは長らく使われてきた、国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)が改良され「NCCN-IPI」となったことが紹介されています。こちらの要旨はTable 3にまとまっているのでそれを確認するだけでもよいでしょう。Primary Managementここから進行期と限局期に分けて治療の話題に入っていきます。進行期の最適なレジメンを決めるまでのこれまでの経緯がまとめられていますが、CHOP療法にリツキシマブを追加したR-CHOP療法を6回投与、というのが現状の結論です。それに加え、現在進んでいるR-CHOPに他の薬剤を追加する複数の試験内容が紹介されています。この部分はこれからのDLBCL治療を考えるうえで非常に重要なポイントなのでじっくり読んでみてください。Management of Relapsed or Refractory Diseaseここでは、再発・難治のDLBCLに対する治療戦略が述べられています。若年層の患者には自家造血幹細胞移植(ASCT)を試みることがありますが、あまり成績がよくないことが示されています。次いで、現在の臨床を大きく変えつつあるCAR-T療法が紹介されています。CAR-T療法は国内では2年前に再発または難治性のDLBCLに対して承認され、ここでは臨床試験からリアルワールドまで最新のデータが紹介されています。承認当初に懸念されていた副作用についても想定より抑えられていることが示されています。そして最後は新薬の開発状況です。日本で今年3月に承認を受けたばかりの抗CD79bを標的とする抗体薬物複合体・ポラツズマブ ベドチンに関する臨床試験のデータをはじめ、現在開発中の新薬が、ターゲットとする分子や現状までの臨床試験の結果と共にまとまっています。それなりの数がありますが、今後臨床に登場してきそうな有望なものが選別されているのはさすがです(Table 4)。個人的には次世代の免疫チェックポイント阻害薬といわれる、マクロファージを使う抗CD47抗体にとくに注目しています。最終ページのfigure 2には、現在のDLBCL治療の全体がまとまっています。病態分類から始まり、再発や自家移植で寛解する割合や、それぞれの段階で行う治療戦略と薬剤が見やすくまとめられており、全体を俯瞰するうえで非常によくできた1枚です。図 原著論文のfigureを基にCareNet.com編集部作成画像を拡大する上部左の「High-Grade B-Cell Lymphoma」はWHO分類変更によって新たに登場したものです。特定の遺伝子変異を認める予後不良のものをDLBCLと分け、異なる治療戦略をとることになりました。真ん中の限局期・進行期では治療戦略には大きな変化はないものの、治験等で新たなレジメンを選択できる状況を示しています。そして右下のこれまで治療の手段がなかった2次・3次治療においても、CAR-T療法や免疫療法等によって治療を継続できる可能性が生まれており、今後も治療戦略は大きく進化していくでしょう。原著論文Sehn LH, et al. N Engl J Med. 2021;384:842-858.参考1)Kurtz DM, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2845-2853.

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第61回 新たなコロナウイルス2つがヒトに侵入

マレーシアで2017~18年に肺炎で入院した患者8人からイヌのコロナウイルス、ハイチで2014~15年に急な発熱を呈した小児3人からブタのコロナウイルスが検出されました。マレーシアでの研究1-3)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し始めの頃にデューク大学の感染症疫学者Gregory Gray氏が抱いた疑問に端を発しています4)。Gray氏は別の流行を引き起こしかねない他のコロナウイルスがすでにヒトを害しているかもしれないと考え、未知のものも含むあらゆるコロナウイルスの検出法の開発を大学院生に頼みました。大学院生のLeshan Xiu氏は期待以上に良い手法を生み出し、マレーシアのボルネオ島の病院に2017~18年に入院した肺炎患者301人の鼻拭い液検体がその手法で調べられました。その結果、1人を除いてあとはすべて小児の8人(2.7%)からそれまでにない新たなコロナウイルスが検出されました。見つかったウイルスのゲノムを調べたところイヌコロナウイルスとブタコロナウイルスの混成(キメラ)の様相を呈していましたが、大部分はイヌから過去に同定された2つのコロナウイルスに最も近く、培養イヌ細胞で増えることができました。オハイオ州立大学の動物コロナウイルス研究専門家で著者の一人Anastasia Vlasova氏によるとイヌのコロナウイルスがヒトに感染するとはこれまで考えられておらず、その報告もありませんでした4)。CCoV-HuPn-2018と名付けられたそのウイルスが患者の肺炎を引き起こしたのかどうかは不明ですが、もしそうであるならヒトを害する病原性コロナウイルスは8つに増えます。病原性が不明なのと同様にCCoV-HuPn-2018がヒトからヒトに感染するかどうかも分かっていません。他のイヌコロナウイルスにはなくてヒトに感染するコロナウイルスには存在する欠損変異がCCoV-HuPn-2018にはあります。その変異のおかげで種の垣根を越えうるようになったのかどうかを今後調べる必要がありますが、CCoV-HuPn-2018がヒトに広まる病原体となる可能性は否定できないとVlasova氏は言っています5)。今後の課題として、肺炎患者にCCoV-HuPn-2018がどれぐらい頻繁に認められるかどうかをさらに多くの検体を使って調べ、動物実験で病原性を確かめる必要があります。ハイチでの研究は同国の就学児の病気の把握を2012~20年に担当したチームの手によります6)。チームは急な発熱を呈した小児から2014~15年に採取した369の血液検体を調べ、その結果3人からブタのデルタ(δ)コロナウイルスが見つかりました。コロナウイルスはα、β、γ、δの4種類あり、ヒトに最も危険なコロナウイルス・SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVはどれもβコロナウイルスに属します7)。ハイチの小児からの同定株が属するδコロナウイルスはかつて鳥にのみ感染すると考えられていました。しかしおそらく鳴禽類(songbird)から感染したらしいδコロナウイルスが2012年に香港のブタに認められています。2014年には同じδコロナウイルスが米国でブタに深刻な下痢疾患流行を引き起こしています。δコロナウイルスがヒトに流行した例はないもののヒト細胞に感染しうることは分かっています。マレーシアで新たに見つかったイヌ起源コロナウイルスが含まれるαコロナウイルスもδコロナウイルスと同様にヒトに流行したためしはありません。しかしいまやどちらもヒトで検出されており、今後も流行の心配はないと安心してはいられません5)。コロナウイルスはこれまで考えられていた以上に動物界を駆け巡っているようであり、調べれば調べるほどコロナウイルスが至るところで種の垣根を越えていることが判明するだろうとアイオワ大学のウイルス学者Stanley Perlman氏はScienceに話しています7)。われわれの与り知らないところですでにヒトに適応し始めている動物ウイルスが存在するかもしれず、ウイルスがヒトに病気を引き起こすようになる前にそれらを探し出さねばなりません。動物からヒトへのコロナウイルスの感染の頻度やヒトからヒトへの感染の可能性をもっと調べる必要があります7)。参考1)Vlasova AN, et al. Clin Infect Dis. 2021 May 20. [Epub ahead of print]2)New human coronavirus that originated in dogs identified/Ohio State University 3)Surveillance turns up new coronavirus threat to humans/Eurekalert4)New Coronavirus Detected In Patients At Malaysian Hospital; The Source May Be Dogs/NPR5)Two New Coronaviruses Make the Leap into Humans / TheScientist6)Emergence of porcine delta-coronavirus pathogenic infections among children in Haiti through independent zoonoses and convergent evolution. medRxiv. March 25, 2021.7)Two more coronaviruses can infect people, studies suggest/Science

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抗LAG-3抗体relatlimab+二ボルマブ、未治療の悪性黒色腫の第III相データを提示/BMS

 ブリストルマイヤーズスクイブは、2021年5月29日、第II/III相RELATIVITY-047試験の結果を発表した。ニボルマブと抗LAG-3抗体relatlimabの固定用量の組み合わは、未治療の切除不能悪性黒色腫において、ニボルマブ単独と比較して、統計的に有意かつ臨床的に意味のある無増悪生存期間(PFS)の改善を示した。 同試験における併用療法患者のPFS中央値は10.12ヵ月であったのに対し、ニボルマブ単剤では4.63ヵ月と、併用群で有意に良好であった(HR:0.75、95%CI:0.62~0.92、p=0.0055)。PFS改善は早期に観察され、時間経過しても一貫していた。PFS改善は、事前に指定されたサブグループおよび層別化因子にかかわらず認められた。 relatlimabとニボルマブの固定用量の組み合わせの安全性プロファイルは管理可能であり、既存の報告と一致していた。Grade3/4の薬物関連有害事象発現は、併用療法群18.9%、ニボルマブ群は9.7%であった。治療中止に至った薬物関連有害事象は、併用療法群14.6%に対し、ニボルマブ群は6.7%で発現した。 この抗LAG-3抗体を評価するの最初の第III相試験の結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2021)の口頭セッションで、6月6日(現地時間)に発表される(Abstract#9503)。

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tezepelumab、コントロール不良の重症喘息患者に有効/NEJM

 コントロール不良の重症喘息成人/思春期患者の治療において、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)のヒト型モノクローナル抗体であるtezepelumabはプラセボと比較して、喘息の増悪が少なく、肺機能や喘息コントロール、健康関連QOLの改善効果が良好であることが、英国・Royal Brompton HospitalのAndrew Menzies-Gow氏らが実施した「NAVIGATOR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年5月13日号で報告された。18ヵ国297施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 本研究は、18ヵ国297施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2017年11月~2020年9月の期間に行われた(AstraZenecaとAmgenの助成による)。 対象は、年齢12~80歳で喘息と診断され、スクリーニングの12ヵ月以上前の期間に、中~高用量の吸入グルココルチコイドの投与を受け、インフォームドコンセントの3ヵ月以上前の期間に、経口グルココルチコイドの有無を問わず、少なくとも1剤の長期管理薬の投与を受けていた患者であった。 被験者は、tezepelumab(210mg)の4週ごとの皮下投与を52週間行う群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。主要エンドポイントは、52週時の喘息増悪の年間発生率とした。 1,061例が無作為化の対象となった。tezepelumab群に529例、プラセボ群に532例が割り付けられ、それぞれ528例(平均年齢±SD 49.9±16.3歳、男性36.6%)および531例(49.0±15.9歳、36.5%)が有効性と安全性の評価に含まれた。好酸球数低値例でも年間発生率を抑制 喘息増悪の年間発生率は、tezepelumab群が0.93(95%信頼区間[CI]:0.80~1.07)で、プラセボ群の2.10(1.84~2.39)に比べ良好であった(率比:0.44、95%CI:0.37~0.53、p<0.001)。また、ベースラインの血中好酸球数が300/μL未満の患者における喘息増悪の年間発生率は、tezepelumab群が1.02(95%CI:0.84~1.23)、プラセボ群は1.73(1.46~2.05)であり、有意な差が認められた(率比:0.59、95%CI:0.46~0.75、p<0.001)。 tezepelumab群はプラセボ群に比べ、ベースラインから52週までの気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)の変化(臨床的に意義のある最小変化量[MCID]:0.1L)が大きく改善された(0.23L vs.0.09L、群間差:0.13L、95%CI:0.08~0.18、p<0.001)。 さらに、tezepelumab群では、6項目喘息コントロール質問票(ACQ-6、0[障害なし]~6[最大限の障害]点、MCID:0.5点)のスコアのベースラインからの変化(最小二乗平均値:-1.55点vs.-1.22点、最小二乗平均値の差:-0.33点、95%CI:-0.46~-0.20、p<0.001)が良好で、喘息QOL質問票(AQLQ、1[最大限の障害]~7[障害なし]点、MCID:0.5点)のスコアの変化(1.49点vs.1.15点、0.34点、0.20~0.47、p<0.001)、および喘息症状日誌(ASD、0[症状なし]~4[起こりうる最悪の症状]点、MCID:0.5点)の週平均スコアの変化(-0.71点vs.-0.59点、-0.12点、-0.19~-0.04、p=0.002)についても、大幅に改善された。 有害事象は、tezepelumab群が77.1%、プラセボ群は80.8%で発現し、重篤な有害事象はそれぞれ9.8%および13.7%に認められた。有害事象で試験薬の投与を中止した患者は、tezepelumab群が2.1%、プラセボ群は3.6%だった。頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎、上気道感染症、頭痛、喘息などであった。重症感染症(8.7% vs.8.7%)や注射部位反応(3.6% vs.2.6%)の頻度は両群で同程度であり、治療関連のアナフィラキシー反応やギランバレー症候群はみられなかった。 著者は、「血中好酸球数と呼気中一酸化窒素(FENO)、IgEの値が同時に低下したことから、本薬は複数の炎症経路を抑制することが示唆される。TSLPの阻害は、2型サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)を標的とするよりも、広範な生理学的効果をもたらす可能性がある」としている。

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メランコリアに特徴的な5つの主観的症状

 近年、うつ病と診断される患者には、さまざまな病態の抑うつ症状患者が含まれていることから、メランコリアが再評価されている。しかし、メランコリアのDSM-5基準(DSM-MEL)を用いて、メランコリーうつ病と非メランコリーうつ病を明確に鑑別することは困難であり、DSM-MELでは不十分であるともいわれている。メランコリアの特徴で唯一、定量的に評価できる精神運動障害は、重要な指標であると考えられる。虎の門病院分院の玉田 有氏らは、精神運動障害と関連する症状を分析し、メランコリアの主観的症状を客観的に特定する試みを行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2021年4月19日号の報告。 うつ病患者106例を対象に精神科医による検査を実施した。精神運動障害の評価には、Parker氏らが開発したCORE measureを用いた。CORE合計スコアを従属変数、DSM-MEL項目および特徴的なメランコリック病歴を独立変数とし、重回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・精神運動障害と関連のある主観的症状として、次の5項目が特定された。 (1)感情がわからなくなった (2)抑うつ性妄想 (3)当惑感 (4)決断困難 (5)他人への攻撃性がない・これら5項目は、DSM-MELよりもCORE合計スコアとより強い相関が認められた。・本研究の主な限界として、DSM以外のメランコリックな徴候や症状を選択する際、症状を包括的に評価および選択するのではなく、臨床的に重要な項目を選択した点が挙げられる。 著者らは「今回特定された精神運動障害に関連する5つの自覚症状は、メランコリアの診断基準として、臨床的に有用であると考えられる」としている。

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ワクチン接種後の手のしびれ、痛みをどう診るか(1)

前回、ワクチン接種後に生じる可能性のある末梢神経障害や、SIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration:ワクチン接種に関連する肩関節傷害)について解説しました。今回はワクチン接種後にこれらを疑う症例について、より実際に即したお話をしたいと思います。<今回のポイント>神経に穿刺した場合、“どこに注射したか”“何を注射したか”“損傷の形態”さらに“心因的な要素”などによって症状は異なる。神経を損傷したわけではなくても、注射の後に手の痺れを訴えることがある。末梢神経損傷やSIRVAについて、ワクチン接種に従事する医療者は知っておいたほうが良いのでしょうか?前回も述べたように、私たちが提案した安全なワクチンの筋注方法に従って注射する限り、末梢神経損傷やSIRVAは心配しなくても良いと考えています。とくに今回のような状況下では末梢神経損傷やSIRVAについては、せいぜい「そんな副反応もあるのだな」程度の知識で十分ではないでしょうか。それよりもワクチン接種会場では適切な問診の対応ができること、さらに厚生労働省が示すように、「アナフィラキシー」「血管迷走神経反射」といった副反応への対処のほうが大切でしょう。しかし、従来通り肩峰下三横指以内に筋肉注射する手技を選択するのであれば、少なくともSIRVAという疾患概念については知っておくべきではと思います。その部位に接種することによって障害が発生するリスクが指摘されているからです。針で神経を刺してしまうと、必ず麻痺が起こるのでしょうか?“どこに注射したか”“何を注入したか”“神経損傷の形態”さらに“心因的な要素”などによって症状は大きく異なると考えます。まず“どこに注射したか”ですが、たとえば、手関節の橈側での静脈穿刺は、橈骨神経浅枝損傷のリスクがあります1)(図1)。(図1)画像を拡大する2021年現在、判例等によると、手関節から12cm以内の前腕橈側での静脈穿刺は、橈骨神経浅枝の損傷に対して医療側の過失を問われる可能性が高い。実際にCRPS(複合性局所疼痛症候群)を発症し、病院側が敗訴した判例もあります2)。この部位での採血や静脈路確保による橈骨神経障害は、ほかの部位と比べると症状が強く発現しやすくトラブルに発展しやすいため、極力避けるべきだと個人的にも思います。ワクチン接種と関連した上腕の部位だと、腋窩神経は終末近くを分岐する運動神経で症状が出にくく、橈骨神経では手の一部を支配する感覚神経と運動神経双方の線維を含むことから症状が現れやすいと言えます。一方で、私たち整形外科医や麻酔科医は腕神経叢や坐骨神経に対して神経ブロックを行う際に末梢神経を針で刺し、局所麻酔薬を注入します。確かに神経に針を刺せば、部分的な軸索の損傷を生じる可能性があります。しかし、通常神経ブロックを行う部位への局所麻酔薬の注射では、永続的な神経障害の危険性はかなり低いと考えられています。もちろん注入する薬剤の種類や濃度によっては、注射部位によらず神経の障害を起こしうるでしょう。“何を注射したか”薬剤の種類によって神経毒性はまったく異なります。とくにワクチンは局所の炎症を引き起こすので、誤って末梢神経に注入するようなことは避けるべきでしょう(図2)。(図2)画像を拡大する末梢神経に対する局所の毒性は薬剤によって大きく異なる。「神経ブロックでよく穿刺しているから、ワクチン接種で穿刺しても大丈夫」とはならない。さらに知っておきたいのは、実際にはさまざまな“神経損傷の形態”があるということです。古典的なSeddon分類に従って考えても、一時的な圧迫による伝導障害、神経幹は断裂していないが軸索が損傷している状態、神経幹自体が断裂している状態など、神経損傷の程度や回復の見込みもさまざまです(図3)。(図3)画像を拡大するそれぞれの末梢神経は、図に示す神経線維の束である神経束がさらに束になったものである。実際には部分的な神経束の損傷など、さまざまな形態が存在する。ですから実際の患者さんが教科書に書いてあるような典型的な麻痺の症状を必ず呈するとは限りません。たとえば、単純に『肩が自動運動で挙上できるので、腋窩神経損傷は否定できます』などとは言えないわけです。末梢神経を傷つけた場合、ほとんど無症状の場合から、異常な感覚を訴える場合、あるいは筋力低下を明らかに示す場合など、さまざまな症状が生じ、整形外科医でも判断に迷うことはよくあります。注射後に手の痺れを訴える人もいるようですが、神経損傷あるいは気のせいでしょうか。神経損傷やSIRVAを生じる可能性は、全体的に見ると低いものです。SIRVAの場合、4月30日時点での厚生労働省の「医療機関からの副反応疑い報告について」3)を参照すると2件の副反応疑いとして報告(ワクチン接種関連肩損傷[ワクチン投与関連肩損傷])があります。もちろん何千万という単位で行われる集団ワクチン接種が今回日本で初めて筋肉注射という形で行われているので、確率の低い合併症であっても日本全体で見ると今後問題となるかもしれません。神経障害については、まだはっきりとした発生頻度は分かりません。上記の厚労省報告では、さまざまな症状の中で「感覚異常(感覚鈍麻)」と記載されているものは100例以上あるようです。しかし、ワクチン接種後に腕のしびれや肩の痛みなどの症状があっても、それをすぐに末梢神経損傷やSIRVAといった診断や被接種者への説明に結びつけるべきではないとも思います。 奈良県立医科大学附属病院では、これまで約4,000人の医療従事者に対して2回の新型コロナウイルスワクチン接種が研修医によって行われました。副反応のうち、肩や腕など接種部位に関連する症状について診察を必要とすると判断された被接種者については、私の外来を受診してもらっています。本病院ではわれわれが作成した筋肉注射手技マニュアルに従った接種方法を研修医に行ってもらいましたが、現在のところ末梢神経損傷やSIRVAを疑う被接種者はおりません。しかし、腕のしびれや痛みを訴えて受診された方は数名いました。実はインフルエンザワクチン接種や採血、あるいは研修医同士の採血の練習などにおいて、明らかな末梢神経の損傷を示す所見はないのに、「腕や手の痺れを訴える」というケースが毎年あり、珍しいものではありません。腕に注射をされた際、一時的に「なんとなく腕や手に軽い違和感」を自覚したものの、そのあとは「とくに何もしなくても元に戻った」と感じたことがある人は多いのではないでしょうか。このような一時的な痛みや痺れは、ほとんどの場合臨床上問題なく自然治癒するものなのですが、中には医療従事者の対応も含めた“心因的な要素”も重なり、CRPS(複合性局所疼痛症候群)を疑うような強い痛みに発展してしまう患者さんもいます。ただし、稀に本当の神経損傷がまぎれ込むこともあるので、慎重な診察が必要です。このあたりの問題については、次稿で解説します。1)渡邉 卓編. 日本臨床検査標準協議会. 標準採血法ガイドライン(GP4-A3). 2019.2)Medsafe.Net: No.400「点滴ルートの確保のために左腕に末梢静脈留置針の穿刺を受けた患者が複合性局所疼痛症候群(CRPS)を発症。看護師が、深く穿刺しないようにする注意義務を怠った結果、橈骨神経浅枝を損傷したと認定した高裁判決」3)厚生労働省:医療機関からの副反応疑い報告について(予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について [令和3年2月17日から令和3年4月25日報告分まで])

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第66回日本透析医学会学術集会・総会の開催について【ご案内】

 第66回日本透析医学会学術集会・総会が2021年6月4日~6月6日にパシフィコ横浜において開催される。今回もチーム医療、アドバンス・ケア・プランニング、共同意思決定、コミュニケーションなど多くのプログラムが用意されており、もちろん、新型コロナに関する話題も盛り込まれている。主要プログラムは、十分な感染対策を講じLIVE配信を併用するハイブリッド形式とし、来場しなくても全国どこからでも視聴できる。なお、学術集会終了後のオンデマンド配信は実施されない。 開催概要は以下のとおり。【日時】2021年6月4日(金)~6日(日)【参加条件】登録方法:オンライン参加登録[6月6日(日)16:00まで]参加費:ホームページ参照【テーマ】チームの俯瞰・発想・行動力~良質な医療とケアの発信~【大会長】岡田 一義氏(社会医療法人川島会川島病院 副院長)【大会概要】本学術集会・総会のテーマは「チームの俯瞰・発想・行動力~良質な医療とケアの発信~」。透析チームが力を結集して良質な医療とケアを提供するために、グローバルな視野で、客観的な視点で現状を見渡して新しい課題を考え、豊かな発想力でその課題を克服するための研究を行い、その成果を世界に向けて発信することを目指す。【会長講演】6月6日(日)11:00~12:00[現地開催+LIVE配信]「良質な医療とケアを提供するコミュニケーションの実践」岡田 一義氏(社会医療法人川島会川島病院)【招待講演1】6月4日(金)~ 6日(日) 9:15~9:50[WEB動画配信]「A Black Swan Visits Nephrology: the Impact of COVID-19 on ESKD Incidence and Outcomes in the United States」Eric D. Weinhandl氏(Chronic Disease Research Group, Hennepin Healthcare Research Institute, USA/Department of Pharmaceutical Care and Health Systems, University of Minnesota, USA)【招待講演5】6月6日(日) 8:00~8:45[WEB動画配信]「Current Status of the COVID-19 Pandemic in the United States and CDC Recommended Practices/Diabetes and Chronic Kidney Disease: US trends and public health programs to improve outcomes」Nilka Rios Burrows氏(Centers for Disease Control and Prevention, Division of Diabetes Translation, USA)【会長特別企画3】6月5日(土) 10:05~12:00[現地開催+LIVE配信]「良質な医療とケアを提供する『透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言』の正しい理解と普及を目指して」小松 康宏氏(群馬大学大学院医学系研究科医療の質・安全学講座)ほか【特別講演1】6月4日(金) 8:20~9:20[現地開催+LIVE配信] 「医療技術とシステム(COVID-19対策を含む)のグローバル展開」横倉 義武氏(弘恵会ヨコクラ病院)【特別講演4】6月5日(土) 10:00~10:50[現地開催+LIVE配信]「虚血性心疾患を有する慢性腎不全症例に対する治療戦略」天野 篤氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院心臓血管外科)【特別講演6】6月5日(土) 15:55~16:45[現地開催+LIVE配信] COVID-19のこれまで、そしてこれから」尾身 茂氏(独立行政法人地域医療機能推進機構本部)【特別講演13】6月6日(日) 10:00~10:50[現地開催+LIVE配信]「チーム育成とコミュニケーションのコツ」武田 美保氏(アテネ五輪シンクロナイズドスイミング銀メダリスト)【ワークショップ8】6月6日(日) 14:40~16:35[現地開催+LIVE配信]「透析に関する共同意思決定とアドバンス・ケア・プランニングの実践」岡田 一義氏(社会医療法人川島会川島病院)ほか詳細はこちら【お問い合わせ】第66回日本透析医学会学術集会・総会 運営事務局株式会社コングレ内〒103-8276 東京都中央区日本橋3-10-5 オンワードビルディングE-mail:jsdt2021@congre.co.jp

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TNF阻害薬治療中のIBD患者、新型コロナワクチン単回接種では抗体応答が不良

 新型コロナワクチンを巡っては、世界的に需要が高まり、限られた供給量をどう配分するかが各国における喫緊の課題になっており、単回接種の有効性についての研究も進んでいる。一方で、炎症性腸疾患(IBD)など全身免疫を抑制する治療を行っている患者では、免疫応答が十分に得られず、ワクチンの有効性が落ちるのではないかという懸念がある。英国・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのNicholas A Kennedy氏らは、インフリキシマブもしくはベドリズマブ治療中のIBD患者に対し、2種類の新型コロナワクチン(ファイザー製BNT162b2、アストラゼネカ製ChAdOx1 nCoV-19)接種後の抗体価を比較。その結果、インフリキシマブ治療患者では、ベドリズマブと比べワクチン単回接種後の抗体価が有意に低かった。ただし、SARS-CoV-2感染後のワクチン接種、もしくは規定通り2回接種後は、ほとんどの患者でセロコンバージョンが認められた。著者らは、「インフリキシマブ治療患者においては、ワクチンの単回投与に対する抗体応答が悪く、SARS-CoV-2感染のリスクが高まる可能性があり、2回目接種の遅延は避けるべき」と述べている。Gut誌オンライン版2021年4月26日号の報告。 研究グループは、2020年9月22日~12月23日の間に、英国の92医療機関に来院したIBD患者(5歳以上、インフリキシマブまたはベドリズマブ治療を6週間以上実施、過去16週間に少なくとも1回の薬物治療を受けている)7,226例を連続して登録。インフリキシマブ治療中の865例とベドリズマブ治療中の428例を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・1回目のワクチン接種後3~10週間で測定した抗SARS-CoV-2スパイクタンパク抗体濃度は、ベドリズマブ治療群と比べ、インフリキシマブ治療群でBNT162b2およびChAdOx1 nCoV-19ワクチンのいずれにおいても低かった。・ワクチンの種類に関係なく、ベドリズマブ単剤の治療患者におけるセロコンバージョン率が最も高く、インフリキシマブと免疫抑制剤を併用した患者において最も低いセロコンバージョン率が観察された。・SARS-CoV-2感染歴がある患者において、いずれかのワクチンの1回目接種前およびBNT162b2ワクチンの2回投与後でより高い抗体濃度およびセロコンバージョン率が認められた。・インフリキシマブ治療群においても、2回接種後の患者では抗体価の上昇が認められた。

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治療抵抗性統合失調症患者におけるオキシトシン系機能障害

 治療抵抗性統合失調症(TRS)は、重度の陽性症状のみならず他の症状とも関連する非常に複雑な病態生理を有している。また、統合失調症では、自閉スペクトラム症と重複する心理的および生物学的プロファイルが注目されている。千葉大学の仲田 祐介氏らは、治療抵抗性統合失調症患者におけるオキシトシン系機能障害について、検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2021年3月30日号の報告。 TRS患者30例、寛解期統合失調症(RemSZ)患者28例、ASD患者28例を対象に、一般的な認知機能および社会的認知機能障害とオキシトシン系機能障害との関連について、比較検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・3群間でオキシトシン濃度に差は認められなかった。・TRS群の血中オキシトシン濃度は、処理速度および心の理論のスコアと正の相関が認められたが、RemSZ群およびASD群では、いずれのスコアにおいても有意な関連は認められなかった。・オキシトシン受容体遺伝子の一塩基多型であるRs53576は、統合失調症患者の社会的認知機能に影響を及ぼしていた。 著者らは「全体的な調査結果は予備的なものである」としながらも「TRS患者の重篤な認知機能障害にオキシトシンシステムの機能障害が関連していると考えられる」とし「この結果は、TRS患者がASD患者と共通の生物学的特性に基づいて初期の神経発達異常を有している可能性を示唆している」としている。

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直腸と膀胱を貫通させた、ある行為【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第187回

直腸と膀胱を貫通させた、ある行為Photo-acより使用おどろき医学論文の連載も200回近くになってきました。ここまで来ると、膀胱や直腸の異物ごときでは驚かなくなります。ただ、その両方の臓器がやられてしまった、となると話は別ッ!Hosni A, et al.A rectal foreign body: An unexpected cause of a rectovesical fistula with hematuriaUrol Case Rep . 2021 Feb 4;36:101596.50歳の男性が、尿閉を訴えて救急外来を受診しました。排尿障害の病歴はなく、とくにこれといった既往歴もなさそうです。とりあえず導尿をしてから、泌尿器科へコンサルトされました。尿閉どころか、肉眼的血尿が出てくるようになり、これはいよいよおかしいぞということで造影剤を用いてCT尿路検査が行われました。おや……おやや!ぞ、造影剤が、膀胱から直腸に流れているぞ……?――こ、これは「膀胱直腸瘻」だっ!患者に直腸出血の可能性はないかと尋ねましたが、答えはNOでした。また、骨盤内手術や結核などの慢性炎症の既往もありませんでした。直腸診でも、これといった異常もありませんでした。いや、なぜ直腸と膀胱に穴が開いているんだ。頼むから、隠していることを言ってくれ。そうお願いしたのでしょうか、再び患者に詳しい問診と検査を開始し始めたとき、こんな回答が返ってきました。「便秘の自己治療のために、長いブラシを肛門に突っ込んで使っていた」おかしな性癖があって異物を入れる症例は、過去何度も紹介してきましたが、便秘治療でブラシを突っ込んで膀胱直腸瘻をつくるって、あーた、どんなに強く入れたの!しかも、普通のブラシではなく、排水管の詰まりを取るような、長いアレです。あれを膀胱が貫通するほど突っ込んでいたということになります。膿瘍化したり重症化したりせずにこの症例は治癒に至りましたが、便秘のときに摘便するがごとくブラシを突っ込んでしまう事態、高齢者では起こる可能性があるため、注意が必要です。

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妊婦のストレス症状、COVID-19パンデミック前後の比較

 コロナウイルス感染症(COVID-19)関連のストレスを受けている妊婦は、そうでない妊婦と比較してストレスレベルが有意に高いことが、オランダ・Amsterdam Reproduction & Development Research InstituteのSanne J. M. Zilver氏らによって明らかにされた。COVID-19ストレスの軽減を目的とする介入は、パンデミック下における妊婦の全体的なストレスレベルを減らす可能性がある。Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology誌オンライン版2021年4月26日号の報告。 COVID-19のパンデミックは、多くの人々のメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、ストレス、不安、うつ病の症状を抱える人々が増加している。不安やうつ病は、妊婦に良からぬ影響をもたらし、新生児の転帰を悪化させる可能性がある。 本研究は、妊婦のストレスや不安、うつ病について、COVID-19流行前に妊娠した女性とCOVID-19流行下で妊娠した女性を比較したコホート研究。対象は、2020年5月21日~6月22日にソーシャルメディアプラットフォームを通じて募集された、オランダ語を習得している18歳以上の妊婦。精神症状の評価はHADS※1とPSS-10※2を用いた。記述統計により人口統計学的特徴を評価し、グループ間の人口統計学的変数の潜在的な相違は、Mann-WhitneyのU検定およびカイ二乗検定によって比較した。ロジスティック回帰分析または独立した一元配置共分散分析により、両グループの連続的なHADS合計スコアとサブスコア(HADS-AおよびHADS-D)を解析した。 主な結果は以下のとおり。・質問票の回答が得られたのは、COVID-19流行下の妊婦1,102人、COVID-19流行前の妊婦364人だった。・臨床的に高レベルな不安(HADS-A≧8)とうつ病(HADS-D≧8)について、COVID-19流行下の妊婦(それぞれ19.5%と13.2%)とCOVID-19流行前の妊婦(それぞれ23.1%と19.5%)で差は認められなかった。・COVID-19関連のストレスを受けている妊婦は、COVID-19に関連しないストレスを感じている妊婦と比較して、PSS-10の全体的なストレスレベルが有意に高かった(平均15.62[標準偏差6.44]vs.平均10.28[標準偏差5.48]、p<0.001)。※1:HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale):14の精神症状に関する項目から、身体的疾患を有する患者の抑うつと不安の測定に用いる尺度※2:PSS-10(Perceived Stress Scale-10):10項目の設問から、包括的なストレスレベルを評価する尺度

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日本人高齢者における認知症リスクと音楽活動

 認知症リスクの低減のために、余暇の認知活動が推奨されている。大阪大学のAhmed Arafa氏らは、日本人高齢者における認知症リスクとさまざまな音楽活動との関連について調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2021年4月6日号の報告。 日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクトに参加した65歳以上の高齢者5万2,601人を対象に、縦断的データを分析した。楽器演奏、カラオケ、合唱、民謡などの音楽活動についてアンケートを用いて評価した。認知症の診断には、介護保険制度で標準的に使用される認知症尺度を用いた。Cox回帰を用いて、音楽活動に関連した認知症のハザード比および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間の中央値は、5.8年であった。・男性における音楽活動未実施者と比較した認知症のハザード比は以下のとおりであった。 ●1つの音楽活動を実施:0.94(95%CI:0.82~1.07) ●複数の音楽活動を実施:0.59(95%CI:0.32~1.10)・女性における音楽活動未実施者と比較した認知症のハザード比は以下のとおりであった。 ●1つの音楽活動を実施:0.79(95%CI:0.69~0.90) ●複数の音楽活動を実施:0.89(95%CI:0.63~1.26)・楽器の演奏およびカラオケを行っていた高齢者は、音楽活動未実施者と比較し、男性では認知症リスクがわずかに減少し、女性では認知症リスクの有意な減少が認められた。 【男性】 ●楽器の演奏:0.70(95%CI:0.45~1.02) ●カラオケ:0.90(95%CI:0.79~1.04) 【女性】 ●楽器の演奏:0.75(95%CI:0.58~0.98) ●カラオケ:0.77(95%CI:0.68~0.89) 著者らは「音楽活動、とくに楽器の演奏やカラオケは、日本人高齢女性の認知症リスク低下との関連が認められた」としている。

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Novavax製ワクチン、南ア変異株に効果/NEJM

 米国・Novavax製の遺伝子組み換えSARS-CoV-2ナノ粒子ワクチン「NVX-CoV2373」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に有効であり、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陰性者において、より高い効果が認められた。NVX-CoV2373接種後の感染例の多くは、南アフリカ(B.1.351)変異株が原因であった。NovavaxのVivek Shinde氏らが、南アフリカで実施したNVX-CoV2373ワクチンの無作為化プラセボ対照第IIa/b相試験の結果を報告した。SARS-CoV-2変異株の出現が、COVID-19感染制御の進展を脅かしている。NVX-CoV2373ワクチンは、健康成人を対象とした第I/II相試験において安全性が確認されるとともに、強力な中和抗体産生と抗原特異的多機能CD4陽性T細胞反応との関連が示されていた。NEJM誌2021年5月5日号掲載の報告。南アフリカでHIV陽性/陰性の6,324例を対象にNVX-CoV2373ワクチンを評価 研究グループは、18~84歳のHIV陰性成人、および18~64歳の医学的に安定しているHIV陽性者を、NVX-CoV2373ワクチン(組み換えスパイクタンパク質5μg+Matrix-M1アジュバント50μg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ2回接種した。接種するスタッフのみ割り付けを知っており、他の研究スタッフおよび参加者は盲検化されていた。 主要評価項目は、安全性、ならびにベースラインSARS-CoV-2血清陰性者における2回目接種後7日以上経過時点の検査で確認された症候性COVID-19発症に関する有効性とした。 6,324例がスクリーニングを受け、このうち4,387例が少なくとも1回の接種を受けた(ワクチン群2,199例、プラセボ群2,188例)。平均年齢は32.0歳で、65歳以上の高齢者は4.2%、男性が57%であった。また、抗スパイクIgG抗体の評価により、ベースラインで30.2%がSARS-CoV-2血清陽性であった。ワクチンの有効率は全体で約50%、HIV陰性者で60% 2回の接種を受けベースラインで血清陰性であった有効性解析対象集団(per-protocol集団)は2,684例(HIV陰性94%、HIV陽性6%)で、ワクチン群1,357例中15例、プラセボ群1,327例中29例において軽症~中等症のCOVID-19が発症した。 全体でのワクチン有効率は49.4%(95%信頼区間[CI]:6.1~72.8)、HIV陰性者におけるワクチン有効率は60.1%(95%CI:19.9~80.1)であった。 COVID-19を発症した44例のうち全ゲノムシークエンス解析が可能であった41例において、38例(92.7%)でB.1.351変異が確認された。B.1.351に対するワクチンの有効性(事後解析)は、HIV陰性者(ワクチン群11例、プラセボ群22例)において51.0%(95%CI:-0.6~76.2)であった。 初期の局所/全身の反応原性イベントは、ワクチン群で高頻度であったが、重篤な有害事象は両群においてまれであった。

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