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第88回 「みなし感染者」21都道府県が実施/搬送困難3週連続で過去最高

<先週の動き>1.濃厚接触者の発症など検査なしの「みなし感染者」、21都道府県が実施2.救急車の搬送困難事案、3週連続で過去最高に/総務省3.電子処方箋の運用、来年1月開始を目途/厚労省4.紹介受診重点医療機関、紹介状なしの初診で7,000円以上の負担導入へ5.原因不明の重症新生児41例の病名、ゲノム解析で判明/慶応大6.来年2月で経営終了の東海大学大磯病院、徳洲会が承継1.濃厚接触者の発症など検査なしの「みなし感染者」、21都道府県が実施コロナ感染拡大による医療機関や保健所の業務逼迫を緩和するため、同居家族などの濃厚接触者が発症した場合、抗原検査やPCR検査なしで医師が感染者とみなして保健所に届け出る運用を、東京・大阪をはじめ21都道府県が実施している。このうち、秋田、高知を除く19都道府県は、まん延防止等重点措置の適用地域である。神奈川県では、6~49歳までの重症化リスクの低い人や妊娠していない人を対象に、公費検査や抗原検査キットで陽性が判明した場合は、医療機関の受診を待たずに「自主療養」を選べる制度を1月28日から開始し、4日正午までに3,230人の患者が自主療養している。4日から、全国のCOVID-19重症患者は昨年9月以来1,000人を上回っており、6日は新規陽性者数が10万870人と日曜日としては過去最高を記録。厚生労働省はワクチンの3回目接種などの対策推進を指示している。(参考)早期治療狙う・保健所の負担軽減…検査せず診断、「みなし感染」21都道府県で運用(読売新聞)全国で初 自己申告による「自主療養」3200人余が申請 神奈川(NHK)新型コロナウイルス感染症 国内の発生状況(厚労省)2.救急車の搬送困難事案、3週連続で過去最高に/総務省消防庁は1日、救急搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」が、1月30日までの1週間で全国5,303件と過去最高を3週連続で更新したことを明らかにした。同庁によると、このうちコロナ感染が疑われる人は1,833件で、これまで最多だった第5波の1,679件(2021年8月15日までの週)を上回った。地域別で最多は東京消防庁(2,668件)で前週比1%の微増だが、コロナ疑いは22%増の806件だった。大阪市消防局は全体では28%増の527件で、コロナ疑いは43%増の205件。横浜市消防局は全体が4%増の297件、コロナ疑いは26%増の155件だった。(参考)救急搬送困難、3週連続で過去最多 コロナ疑いの困難事案も最多に(朝日新聞)救急搬送困難は5303件 3週連続で最多更新(日経新聞)3.電子処方箋の運用、来年1月開始を目途/厚労省厚労省は、31日に開催した社会保障審議会医療部会で、2023年1月に電子処方箋の運用を開始する方針を明らかにした。電子処方箋は、現在運用しているオンライン資格確認等システムを拡張し、処方箋の運用を電子で実施することで、直近の処方内容の閲覧や複投薬チェックなどの確認が可能となる。なお、利用に当たってはオンライン資格確認を導入している必要があるため、医療情報化支援基金の積み増しを行うなど未導入の医療機関に対して導入を働きかける。(参考)電子処方箋23年1月から、厚労省が関連法制を整備(日経新聞)電子処方箋 概要案内(厚労省)4.紹介受診重点医療機関、紹介状なしの初診で7,000円以上の負担導入へ厚労省は31日に開催した社会保障審議会医療部会で、患者の流れの円滑化を図るため、医療資源を重点的に活用する外来機能を持つ病院について、紹介患者への外来を基本とする医療機関(紹介受診重点医療機関)を明確にすることとし、外来機能報告制度を活用して、病院の外来機能による機能分化を図ることとした。これにより、病院における外来患者の待ち時間短縮や勤務医の外来負担の軽減、医師の働き方改革に寄与することが期待される。紹介受診重点医療機関になった200床以上の病院では、かかりつけ医からの紹介状を持参しない初診患者から7,000円以上の特別負担を徴収する義務が課されることになる(救急患者等の例外あり)。「紹介受診重点医療機関」の指定は、今春の外来機能報告制度によるデータ提出後に検討を行うため、2023年以降となるだろう。(参考)紹介受診重点医療機関や電子処方箋、国民に仕組みやメリットを十分に説明せよ―社保審・医療部会(Gem Med)紹介受診重点医療機関を定額負担の徴収対象に(日経メディカル)資料 紹介受診重点医療機関の検討について 第85回社会保障審議会医療部会(厚労省)5.原因不明の重症新生児41例の病名、ゲノム解析で判明/慶応大原因不明の病気を抱えた重症の新生児85例について、ゲノム(全遺伝情報)の解析を行い、そのうち41例の病名を突き止めたことを慶応大学が発表した。この41例は遺伝性疾患にかかっていることが判明し、約半数の20例で検査や治療方針の変更が行われた。この研究は新生児科医と遺伝学研究者からなる全国17の高度周産期医療センターからなるネットワークにより行われ、研究成果は小児科学分野を代表する国際誌The Journal of Pediatricsに掲載された。(参考)病気の原因がわからない赤ちゃんに対するゲノム解析の有用性を確認-全国で診断に難渋した85名の約半数で原因が判明(慶應義塾大学)原因不明の重症赤ちゃん、ゲノム解析で病名判明 慶大など、治療を改善(日経新聞)6.来年2月で経営終了の東海大学大磯病院、徳洲会が承継東海大学は、このほど神奈川県大磯町にある医学部附属大磯病院の経営を来年2月末で終了すると発表した。その翌月からは、医療法人 徳洲会が事業を継承し、引き続き地域の医療体制を維持するとしている。本病院は昭和59年に東海大学により開設され、21の診療科からなる大学附属病院として運営していたが、高齢化や人口減少のため、この10年で患者数が3割余り減少した。(参考)東海大、大磯病院を移譲 来年3月から徳洲会に事業継承へ(神奈川新聞)東海大学医学部付属大磯病院 来年2月末に事業終了へ(NHK)

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ブレークスルー感染、女性・30歳以上で起こりやすい?

 ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のJing Sun氏らが新型コロナワクチン接種後のブレークスルー感染*の発生率と発生率比(IRR)を特定することを目的とし、後ろ向きコホート研究を実施。その結果、患者の免疫状態に関係なく、完全ワクチン接種がブレークスルー感染のリスク低下と関連していることが示唆された。また、ブレークスルー感染が女性や30歳以上で起こりやすい可能性も明らかになった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2021年12月28日号掲載の報告。*本研究ではブレークスルー感染を、ワクチン接種の14日目以降に発症した新型コロナウイルス感染症と定義しており、2回目完了後の発症としていない。 本研究は、全米の新型コロナに関する臨床データを一元化しているNational COVID Cohort Collaborative(N3C)1)のデータに基づいて分析した。2020年12月10日~2021年9月16日の期間に新型コロナワクチンを1回以上接種した症例がサンプルに含まれた。また、ワクチン接種、新型コロナの診断、免疫機能障害の診断(HIV感染、多発性硬化症、関節リウマチ、固形臓器移植、骨髄移植)、そのほかの併存疾患、人口統計データを検証するにあたり、N3C Data Enclaveを介した。 この研究ではFDAが認可した3つの新型コロナワクチン(ファイザー製[BNT162b2]、モデルナ製[mRNA-1273]、J&J製[JNJ-784336725])と、そのほかのワクチン(アストラゼネカ製など)接種者が含まれた。また、完全ワクチン接種というのは、mRNAワクチンとそのほかのワクチン接種の場合は2回接種、J&J製の場合は1回接種と定義。部分ワクチン接種というのは、mRNAワクチンやそのほかのワクチンを1回のみ接種と定義付けた。2回接種または1回のみ接種後のリスクは、ポアソン回帰を使用して免疫機能障害の有無にかかわらず評価された。 主な結果は以下のとおり。・N3Cのサンプルには計66万4,722例が含まれていた。・患者の年齢中央値(IQR)は51歳(34~66)で、そのうち女性は37万8,307(56.9%)と半数以上を占めていた。・全体として、新型コロナのブレークスルー感染の発生率は、完全ワクチン接種者で1,000人月あたり5.0だった。しかし、デルタ変異株が主要株になった後は高かった(2021年6月20日以前と以降の1,000人月あたりの発生率は、2.2(95%信頼区間[CI]:2.2~2.2)vs. 7.3(95%CI:7.3~7.4)だった。・部分ワクチン接種者と比較し完全ワクチン接種者では、ブレークスルー感染のリスクが28%減少した(調整済みIRR [AIRR]:0.72、95%CI:0.68~0.76)。・完全ワクチン接種後にブレークスルー感染した人は、高齢者や女性が多かった。また、HIV感染者(AIRR:1.33、95%CI:1.18~1.49)、関節リウマチ(AIRR:1.20、95%CI:1.09~1.32)、および固形臓器移植を受けた者(AIRR:2.16、95%CI:1.96~2.38)では、ブレークスルー感染の発生率が高かった。・具体的には、ブレークスルー感染リスクは18〜29歳と比較して30歳以上で30〜40%増加した。・ブレークスルー感染リスクは併存疾患の数が増えるにつれて増加したが、このリスクは免疫機能障害の状態に関連しており、とりわけそれによってAIRRが弱められた。 免疫機能障害のある人は完全ワクチン接種しても、そのような状態ではない人よりもブレークスルー感染リスクはかなり高かったことを受け、研究者らは「免疫機能障害のある人は、ワクチン接種を完遂してもマスク着用やワクチンの代替となるような戦略(例:追加接種や免疫原性試験)が推奨される」としている。

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皮膚疾患患者の睡眠障害

 睡眠不足や睡眠の質の低下は、さまざまな健康への悪影響を引き起こす可能性がある。睡眠障害といくつかの皮膚状態との関連が研究されているが、包括的な皮膚科患者の集団におけるデータは十分ではない。スイス・バーゼル大学のRianna Tamschick氏らは、皮膚科患者の睡眠障害の有病率、原因、影響について検討を行った。Clinics in Dermatology誌2021年11~12月号の報告。 単一施設による横断的研究を実施した。皮膚科患者を対象に、皮膚関連および非皮膚関連の健康、睡眠行動、睡眠障害の原因や影響に関する質問票への回答を求めた。 主な結果は以下のとおり。・634例中、Regensburg Insomnia Scaleで不眠症と診断された患者は177例(27.92%)であった。・177例中、主観的な睡眠障害が認められた患者は115例(64.97%)であり、その内訳は以下のとおりであった。 ●皮膚関連の原因:64例(55.65%) ●非皮膚関連の原因:38例(33.04%) ●皮膚関連と非皮膚関連の併発:13例(11.30%)・皮膚関連の原因が認められた77例の原因別患者数の内訳は、以下のとおりであった。 ●かゆみ:50例(64.49%) ●皮膚関連の疼痛:43例(55.84%) ●皮膚関連の恐怖感:42例(54.55%)・睡眠障害により、115例中79例(68.70%)は日中のパフォーマンスが低下しており、24例(20.87%)は相対的に睡眠の質が低下していた。・異なる診断カテゴリにおける不眠症の有病率の範囲は、20.31~50.00%であった。・睡眠改善に対する最も一般的な方法は、睡眠薬の使用であった(115例中66例、57.39%)。 著者らは「皮膚疾患患者では、睡眠障害が一般的に認められており、日中のパフォーマンスの低下や相対的な睡眠障害、薬物療法の増加につながる可能性が高いと考えられる」としている。

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存在しない共著者の正体は?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第203回

存在しない共著者の正体は?いらすとやより使用なんか幽霊みたいなタイトルですね。でも大丈夫、ホラーな話ではないですから。Hetherington JH and Willard FDC.Two-, Three-, and Four-Atom Exchange Effects in bcc 3HePhys Rev Lett. 1975; 35: 1442.ぶっちゃけ今日紹介する論文の内容はわかりません。低温物理学分野の論文なので……。「おどろき医学論文」というタイトルなのに、物理学の論文を紹介するなんて邪道かもしれませんが、お許しを!――今日紹介するのは、論文の内容ではなく、著者です。重要なのは筆頭著者であるJ. H. Hetherington氏ではなく、2人目の著者、F. D. C. Willard氏です。もともとこの論文、単独著者の論文だったのですが、文中で1人称に「We」が用いられていたため、論文はリジェクトされるのではないかと周囲から指摘を受けました。編集部に問い合わせると、『確かに規定では「I」にしてもらわないといけない』という回答があったそうです。論文の「We」を「I」に変えれば済む話なのですが、当時は手打ちのタイプライターであったことから、最初からすべて打ち直すのに時間を費やすのは厳しいと考えました。そのため、架空の物理学者を作り出すことにしたのです。しかし、架空の物理学者Willardって誰なのという話です。周囲の人も、それが誰なのかわかりません。そりゃそうです、存在しない物理学者なのですから。論文が発表されてから3年後、低温物理学会の国際会議で、この共著者の正体が明かされました。実は、これは彼の飼いネコだったのです(図)。ネコを物理学者にしてしまおうと思ったHetherington氏の行動力に脱帽です。図. 共著者のサイン(wikipediaより)動機の是非はともかく、物理学者の間では微笑ましい話として語り継がれています。Willardは、物理学論文の共著者となった世界初のネコというわけですね。この物理学雑誌はレベルが高い雑誌ということもあって、1975年発表の本研究も、これまでに95回引用されています。つまりこのWillardは、一流雑誌の著者であり、多数の引用を受けている天才ネコというわけです。以下が、Google scholarの著者ページにある、Willardの紹介です。「物理学の専門家」になっていますね。

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米国におけるNGS検査の実施割合と施設間格差(視聴者からの質問)【侍オンコロジスト奮闘記】第128回

第128回:米国におけるNGS検査の実施割合と施設間格差(視聴者からの質問)参考Robert NJ,et al.Biomarker tissue journey among patients (pts) with untreated metastatic non-small cell lung cancer (mNSCLC) in the U.S. Oncology Network community practices. J Clin Oncol.2021;39,supplFuerst ML, Less Than Half of NSCLC Patients Received Comprehensive Biomarker Testing in a Real-World Study. Cancer Terpy Advisor.Conference Coverage ≫ ASCO 2021 ≫ ASCO 2021 Lung Cancer In-depth

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統合失調症の再発までの期間と再発歴との関係

 統合失調症は、再発を繰り返すことが多い疾患であり、このことはしばしば患者にとって悪影響を及ぼす。過去の再発歴は、今後の再発を予測する強力な因子であるといわれているが、この関連性は十分に定量化されているわけではない。デンマーク・ルンドベック社のKristian Tore Jorgensen氏らは、統合失調症の再発までの期間と患者の再発歴との関連を定量化するため、スウェーデンの実臨床データを用いて検討を行った。BMC Psychiatry誌2021年12月21日号の報告。 スウェーデン国立患者レジストリと処方薬レジストリのデータを用いて、2006~15年に初めて登録された統合失調症患者の再発について、再発のプロキシ定義を用いて検討した。主要なプロキシは、7日以上の精神科入院を再発と定義した。その後、各再発リスクについてハザード比(HR)を算出し、Aalen-Johansen推定量を用いて、次の再発までの期間を推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数2,994例、再発エピソード5,820件のデータを分析した。・過去の再発回数が多いと、次回再発までの期間が短くなる傾向が認められた。・再発歴のない統合失調症患者の半数は、フォローアップから1.52年以内に最初の再発エピソードに遭遇すると推定された。・1回目の再発を経験した統合失調症患者の半数は、1.23年以内に2回目の再発を経験すると推定された。・次の再発までの期間は、2回の再発経験を有する患者では0.89年に減少し、10回の再発経験を有する患者では0.22年に減少した。・研究母集団の異なる包括除外基準と再定義された再発プロキシを用いた補足分析では、次の再発までの期間の短縮に関連する過去の再発歴の回数の多さは、一時分析で観察された結果を反映していた。 著者らは「再発は、統合失調症の疾患進行を加速させる傾向を示し、再発回数が多くなると、より短い期間で再発することが明らかとなった。このことから、統合失調症患者の個々のニーズをよく理解し、早期に効果的かつ忍容性の高い治療を提供することが重要であると考えられる」としている。

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mRNAワクチンの心筋炎リスク、年齢・男女別に2億人を解析/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン接種後の心筋炎リスクは、男女とも複数の年齢層で上昇し、とくに12~24歳の男性で2回目接種後に高かった。米国疾病予防管理センター(CDC)のMatthew E. Oster氏らが、米国の受動的なワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)を基にした解析結果を報告した。著者は、「心筋炎のリスクは、COVID-19ワクチン接種のメリットに照らして検討する必要がある」とまとめている。JAMA誌2022年1月25日号掲載の報告。米国VAERSへの心筋炎の報告を検証 研究グループは、2020年12月14日~2021年8月31日に、mRNAワクチン(BNT162b2[Pfizer/BioNTech製]またはmRNA-1273[Moderna製])を接種した米国の12歳以上の1億9,240万5,448例を対象に、接種後に発生した心筋炎のVAERSへの報告について解析した(データカットオフ日2021年9月30日)。 主要評価項目は心筋炎、副次評価項目は心膜炎の発生。VAERSへの心筋炎の報告は、CDCの医師および公衆衛生の専門家が検討し、CDCの心筋炎(疑いまたは確定)の定義を満たしているかを確認し、すべての年齢層についてまとめた。 年齢別および男女別に、粗報告率を算出するとともに、心筋炎の予測率を2017~19年の医療費請求データを用いて算出した。また、30歳未満で心筋炎の疑いあるいは確定した症例については、医学的評価および臨床医のインタビューを行い、可能な限り臨床経過(発症前の症状、確定診断検査の結果、治療、早期転帰など)をまとめた。2回目接種後の16~17歳・男性で心筋炎報告率が最も高く約1万人に1人 調査期間中、mRNAワクチンの接種は1億9,240万5,448例において計3億5,410万845回行われた。VAERSへの心筋炎の報告は1,991例で、このうちCDCの定義を満たした心筋炎患者1,626例が解析対象となった。心筋炎患者の年齢中央値は21歳(IQR:16~31)、症状発現までの期間中央値は2日(IQR:1~3)で、1,334例(82%)が男性であった。 mRNAワクチン接種後7日以内の心筋炎の報告は、BNT162b2ワクチン接種者が947例、mRNA-1273ワクチン接種者が382例であった。接種後7日以内の心筋炎粗報告率は、ワクチンの種類、性別、年齢層、1回目または2回目接種で異なっていたが、男女とも複数の年齢層で予測率を越えた。 ワクチン接種100万回当たりの心筋炎報告率は、12~15歳男性(BNT162b2ワクチン70.7)、16~17歳男性(BNT162b2ワクチン105.9)、18~24歳男性(BNT162b2ワクチン52.4、mRNA-1273ワクチン56.3)において2回目接種後に高かった。 詳細な臨床情報が得られた30歳未満の心筋炎患者は826例で、そのうちトロポニン値上昇が98%(792/809例)、心電図異常が72%(569/794例)、MRI所見異常が72%(223/312例)に認められた。96%(784/813例)が入院し、このうち87%(577/661例)は退院までに症状が消失した。最も多かった治療は、非ステロイド性抗炎症薬が87%(589/676例)であった。 なお、著者は研究の限界として、VAERSは受動的な報告システムであるため、心筋炎の報告が不完全で情報の質が多様であり、過少報告または過剰報告の両方があり得ること、ワクチン接種のデータはCDCへ報告された者に限られているため不完全であった可能性があることなどを挙げている。

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身体活動モニターで身体活動量は増える?/BMJ

 身体活動モニター(PAM)による介入が身体活動に及ぼす効果については、エビデンスの確実性は低く、中~高強度の身体活動および座位時間に対する効果は中程度であったが、介入は安全で、身体活動および中~高強度の身体活動を効果的に増加させるという。デンマーク・コペンハーゲン大学のRasmus Tolstrup Larsen氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。最新のPAMは、身体活動について利用者に直接的なフィードバックを提供し、行動変容を促進させるものとして利用できる可能性があるとされる。2007年のシステマティックレビューでは、PAMが身体活動を増加する可能性が報告されたが、組み込まれた研究が少なく、推定効果量は不正確さに影響されており、2007年以降に発表された研究ではPAMの有効性ついて異なる結論が示されていた。今回の結果について著者は、「身体活動および中~高強度の身体活動に対する有効性は十分確立されているが、出版バイアスに起因して過大評価されている可能性がある」としている。BMJ誌2022年1月26日号掲載の報告。121試験、計1万6,743例についてメタ解析 研究グループは、2021年6月4日にMEDLINE、Embase、SPORTDiscus、CINAHLおよびCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)を検索し、PAMからフィードバックを受ける(介入)群と、フィードバックを受けない(対照)群を比較した無作為化比較試験を特定した。 PAMは、携帯型またはウエアラブル型、電子式または機械式で、加速度計、歩数計またはGPSが内蔵されたものである。試験の選択において、評価項目の種類、出版日、言語は制限しなかった。 評価者2人がそれぞれデータを抽出し、バイアスリスクを評価した。ランダム効果メタ解析を用いて結果を統合し、GRADE(Grading of Recommendations Assessment and Evaluation)を用いてエビデンスの確実性を評価した。 主要評価項目は、身体活動(歩数/日、歩行距離/日、エネルギー消費量/日)、中~高強度の身体活動および座位時間の3つとした。 検索により、無作為化比較試験121件(141比較、参加者合計1万6,743例)が解析に組み込まれた。身体活動モニターによる介入は身体活動に好影響 介入は、身体活動に関して効果量中(103試験、標準化平均差[SMD]:0.42[95%信頼区間[CI]:0.28~0.55]、1日の歩数が1,235歩増加)、中~高強度の身体活動に関しては効果量小(63試験、SMD:0.23[0.16~0.30]、1週間の中~高強度の身体活動時間が48.5分延長)、座位時間に関しては重要ではない小さな効果(38試験、SMD:-0.12[-0.25~0.01]、1日の座位時間が9.9分短縮)であった。すべての評価項目で、介入群のほうが良好な結果が得られた。 なお、著者は研究の限界として、すべての評価項目でかなりの異質性が認められたこと、高所得国で実施された試験がほとんどであったこと、女性の参加者の割合が高い試験が多かったことなどを挙げている。

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mRNAワクチン3回接種、オミクロン株とデルタ株への有効性は?/JAMA

 2021年12月10日~2022年1月1日に新型コロナウイルス感染症様(COVID様)症状を有し検査した人において、mRNAワクチンの3回接種は未接種および2回接種と比較し、オミクロン変異株およびデルタ変異株の両方に対して感染予防効果があることが認められた。米国疾病予防管理センター(CDC)のEmma K. Accorsi氏らが、症例対照研究の結果を報告した。ただし、その効果は、デルタ変異株に比べてオミクロン変異株で低いことが示唆された。JAMA誌オンライン版2022年1月21日号掲載の報告。2021年12月に米国の4,666施設で検査を受けた7万155例について解析 研究グループは、COVID-19のmRNAワクチン3回接種と症候性SARS-CoV-2感染との関連性を、変異株(オミクロン株およびデルタ株)別に推定する目的で、2021年12月10日~2022年1月1日に全米の薬局における検査プログラム(49州のCOVID-19検査施設4,666施設)で検査を受けた18歳以上のCOVID様症状を有する成人7万155例を対象に、診断陰性デザイン(test-negative design)を用いた症例対照研究を行った。 BNT162b2(Pfizer/BioNTech製)またはmRNA-1273(Moderna製)ワクチン3回接種(3回目の接種は検査の14日以上前かつ2回目の接種から6ヵ月以上経過)と、ワクチン未接種および2回接種のみ(2回目接種は検査の6ヵ月以上前、すなわちブースター接種の対象)を比較した。 主要評価項目は、オミクロン変異株またはデルタ変異株による症候性SARS-CoV-2感染。S遺伝子が検出されなかった(S gene target failure:SGTF)感染をオミクロン変異株陽性、非SGTF感染をデルタ変異株陽性とした。すなわち、N遺伝子およびORF1ab遺伝子のPCRサイクル閾値(Ct値)がありS遺伝子のCt値がないをSGTF、それ以外を非SGTFとした。 多変量多項ロジスティック回帰分析により、症例と対照における3回接種vs.未接種および3回接種vs.2回接種のオッズ(OR)を比較することにより、症候性感染とワクチン接種との関連を推定した。また、陽性例において、副次評価項目として、3つのウイルス遺伝子のCt値(ウイルス量に反比例)中央値を、変異株別およびワクチン接種の有無別で比較した。対未接種:オミクロン株67%、デルタ株93.5%、対2回接種:66%、84% 解析対象は、感染例が2万3,391例(オミクロン変異株1万3,098例、デルタ変異株1万293例)、検査陰性(対照)が4万6,764例(平均[±SD]年齢40.3±15.6歳、女性4万2,050例[60.1%])であった。 ワクチン3回接種者の割合は、オミクロン変異株感染例では18.6%(2,441例)、デルタ変異株感染例では6.6%(679例)であり、検査陰性では39.7%(1万8,587例)であった。また、2回接種者はそれぞれ55.3%(7,245例)、44.4%(4,570例)、41.6%(1万9,456例)であり、ワクチン未接種者はそれぞれ26.0%(3,412例)、49.0%(5,044例)、18.6%(8,721例)であった。 3回接種vs.未接種の補正後ORは、オミクロン変異株が0.33(95%信頼区間[CI]:0.31~0.35)、デルタ変異株が0.065(0.059~0.071)、3回接種vs.2回接種の補正後ORは、オミクロン変異株が0.34(0.32~0.36)、デルタ変異株が0.16(0.14~0.17)であった。 Ct値中央値は、オミクロン変異株およびデルタ変異株共に3回接種者で2回接種者より有意に高かった(オミクロンN遺伝子:19.35 vs.18.52、オミクロンORF1ab遺伝子:19.25 vs.18.40、デルタN遺伝子:19.07 vs.17.52、デルタORF1ab遺伝子:18.70 vs.17.28、デルタS遺伝子:23.62 vs.20.24)。

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第94回 昨年の医学部入試で男女別合格率が逆転!医師が「An Unsuitable Job for a Woman」でなくなる日は本当に来るか(前編)

男性の合格率13.51%、女性合格率13.60%こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本のプロ野球がキャンプインする今頃、2月初旬のスポーツ観戦の楽しみの一つに、米国のプロアメリカンフットボールリーグ・NFL(National Football League)の「スーパーボウル」があります。今年は1月30日(現地時間)にAFCとNFC、両リーグのチャンピオンシップ・ゲームが行われ、2月13日のスーパーボウルの出場チームが、シンシナティ・ベンガルズとロサンゼルス・ラムズに決まりました。しかし、日本では今シーズンからNHK BSがNFLの放送を取り止めており、スーパーボウル(を含めたすべてのNFLの試合)は、DAZNなどの有料放送でお金を払って視聴するしかありません。私は勝手に、大谷 翔平選手の試合(MLB)を放送し過ぎてNHKの海外スポーツの放送予算がなくなってしまったからでは、と思っています。NHK BSは1980年代末から長年NFLの試合を放送し、日本のファン拡大・定着の重要な役割を担ってきただけに少々残念です。さて、今回も前回に引き続き、大学入試をめぐる話題を取り上げたいと思います。全国保険医団体連合会(保団連)は1月26日、「医学入試で男女別合格率が逆転」と題した資料を、報道各社に送付しました。同資料は、2013年~2021年の医学部入試の男女別合格率を、文部科学省の公表データをもとに保団連がまとめたもの。それによると、2021年度の医学部入試では、全体の男性の合格率(合格者数/受験者数)が13.51%、女性の合格率が13.60%と、医学部の男女別合格率が公表されている2013年度以降、初めて女性の合格率が男性を上回りました1)。さらに2021年度は、男性の合格率が女性よりも高い大学が、2020年度までの約7割(2020年度:55/81大学)から半数以下(2021年度:36/81大学、44.4%)に突如激減しました。保団連は「2021年度の医学部入試の動向は明らかに2020年度までとは異なっており、2020年年末に文科省が男女別合格率の毎年公表を決めたことで、女性差別のない公正な入試が後押しされた可能性がある」とコメントしています。東京医大不正入試事件をきっかけに、男女別合格率毎年公表へ2020年年末、文科省が男女別合格率の毎年公表を決めたのは、2018年7月に発覚した東京医科大学の不正入試事件がきっかけでした。東京医大の2018年度の一般入試において、同大が文科省の前局長の子息に不正に点数を加点したことが発覚しました。当初は一般的な贈収賄事件として扱われていましたが、その後の調査で、東京医大が行っていた点数操作が前局長の子息だけでなく、女子や複数年浪人した学生にも一律に不利になるように行われていたことが判明すると、事件は一気に社会問題化しました。文科省は医学部医学科がある全国81大学の入学者選抜の過去6年間の実態を緊急調査し、2018年9月に2013年〜2018年度の男女別の合格率を公表しました。これらの調査結果と各大学へのヒアリングを基に、東京医大以外の複数の大学の医学部医学科においても「不適切である可能性が高い」選抜や「疑惑を招きかねない」選抜が行われていた事実が明らかになったのです。その後、男女別の合格率については、与野党議員から公表を継続すべきだという意見が相次ぎ、2020年12月に2019年度と2020年度入試分が公表され、次年度以降も毎年公表することが決定しました。もっとも、この公表は特段記者会見が行われることはなく、言うならばひっそり資料が公開されているのが実情のようです。2021年度の結果を文科省がホームページにアップしたのは、保団連調べでは2021年9月30日だったとのことです。贈収賄事件は公判中、元文科省局長に検察は懲役2年6カ月を求刑東京医大の不正入試事件については、2021年7月には事件の影響で不当に不合格になったとして受験料の返還などを求めた訴訟で、同大が約560人の受験生に計約6,760万円を支払う和解が成立しています。一方で、不正入試を巡る贈収賄事件の公判はまだ続いています。2021年12月27日、東京地方裁判所で開かれた裁判で検察は「恣意的に点数を加算する行為は、公正な入学試験を害し、不公平感も与える。多額の現金を受け取る収賄事件よりも悪質だ」として、文科省元局長に懲役2年6ヵ月、東京医大の前理事長に懲役1年6ヵ月などと、関係者に実刑が求刑されています。無罪を主張している元局長らの最終弁論は、今年2月に行われる予定です。男性中心社会だった医師の世界話を戻しましょう。2021年度医学部合格率の異変は、東京医大不正入試事件をきっかけに行われた文科省の調査と男女別合格率の公表継続、さらには各大学に対して行われたであろう“指導”などが奏功した結果だと言えるでしょう。医学部入試の世界で男女平等、というか勉強ができる女子を正当に評価する仕組みがやっと定着してきたことは、将来の医療の現場をどう変えていくでしょうか。もともと、医師の世界は男性中心社会でした。特に外科系は技術修得が大変で、一人前になるまでに相当な時間がかかったため、専門科目を選ぶ際、女性医師は眼科や皮膚科といった比較的“ラク”とされるマイナー科を選びがちだったとも言われています。私は10年ほど前、女性の外科系医師のキャリアパスがテーマの座談会の司会をしたのですが、ある女性の消化器外科医が「手術が大好きだったが、出産や育児で時間を取られるうちに男の同僚に置いていかれ、出世競争などの第一線から退くことを余儀なくされた」と話していたのが印象的でした。医師は探偵と同様、長い間「女には向かない職業」とみられてきた英国の女流ミステリ作家、P.D.ジェイムズの1970年代の代表作に『女には向かない職業』(ハヤカワミステリ文庫、原題:An Unsuitable Job for a Woman)という魅力的なタイトルの作品があります。22歳の新米探偵コーデリアが「探偵稼業は女には向かない」と言われながら、ある青年の自殺事件の真相解明に挑む、というストーリーです。若くて頑張り屋の探偵コーデリアの活躍は人気を呼び、P.D.ジェイムズは『皮膚の下の頭蓋骨』という作品にも彼女を登場させています。女性医師の問題について考える時、私はいつもこのミステリを思い出します。この原題通り、日本では長い間、医師は探偵同様に「女には向かない職業」と見られてきたからです。ただ、その状況は変わりつつあるようです。医学部に入学する女性が増えてきたことで、外科系の医局であっても女性医師を積極的に入局させ、一人前に育てるカリキュラムやキャリアパス、子育て支援の仕組みなどを用意する必要が出てきました。そもそも、そうしないと大学病院自体が回らなくなってきています。そうした改革の必要性は大学病院だけでなく、市中の病院でも高まっています。女性が働きやすい病院、医局でないと研修医も集まらないからです。「医師の働き方改革」の認知進まずもっとも、そのような動きはまだまだ先進的な病院だけに留まっており、全国の病院どこでも、というわけではないようです。そんな中、女性医師の活躍の場を広げる上で大きな後押しになると期待されているのが「医師の働き方改革」です。2024年4月から、勤務医の残業時間の上限を原則年960時間、地域医療を担う医療機関などで、長時間労働を避けられない場合は年1,860時間とする「医師の働き方改革」は、医師の労働時間管理適正化の一手段として、女性医師の働き方への支援や、子育て環境の整備などに医療機関が積極的に取り組むよう求めています。本格施行まであと2年と近づいた「医師の働き方改革」ですが、現場の医師への周知は遅々として進んでいません。厚生労働省は1月24日、医師の働き方改革の推進に関する検討会の作業部会に、勤務医に対するアンケートの結果を報告しました。調査では、医師の働き方改革の制度認知について、業務内容に応じた各上限水準の内容や宿日直許可基準の内容について「全く知らない」という回答が約半数を占めていました。医学部入試で男女別合格率が逆転する一方で、現場での認知が一向に進んでいない「医師の働き方改革」。このギャップはある意味とても深刻だと言えるでしょう。女性医師が今まで以上に多く誕生する一方で、女性の働き方やキャリアパスが旧態依然のままでは、医師が「女には向かない職業」でなくなる日が日本ではいつまでたってもやって来ないからです(この項続く)。参考1)令和3年度医学部(医学科)の入学者選抜における男女別合格率について

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アセナピンとオランザピン、日本人統合失調症患者での治療継続率

 アセナピンは、多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)に分類される第2世代抗精神病薬であり、その薬理学的特徴はオランザピンと類似している。藤田医科大学の松崎 遥菜氏らは、実臨床データを用いて、統合失調症に対するアセナピンとオランザピンの治療継続率や中止理由についての比較を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2021年12月14日号の報告。アセナピン群の6ヵ月間の治療継続率は27.3%、オランザピン群で50.8% 本研究は、レトロスペクティブ研究として実施した。主要エンドポイントは、6ヵ月間に治療継続率のカプランマイヤー推定とし、潜在的な交絡因子で調整するため傾向スコア法を用いて評価した。 統合失調症に対するアセナピンとオランザピンの治療継続率や中止理由について比較した主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者95例(アセナピン群:46例、オランザピン群:49例)を対象とし、分析を行った。・一致したデータを6つの共変量(年齢、性別、クロルプロマジン換算量、ジアゼパム換算量、クロザピンの使用歴、修正型電気けいれん療法の使用歴)を考慮し調整した。・一致したデータにおける6ヵ月間の治療継続率は、アセナピン群で27.3%(95%信頼区間[CI]:15.6~47.6)、オランザピン群で50.8%(95%CI:34.3~75.3)であった(ハザード比[HR]:0.41、95%CI:0.21~0.82、p=0.0088[Log rank検定])。・効果不十分による中止率は、アセナピン群で13.0%、オランザピン群で10.2%とほぼ同様であった。・アセナピン群のみで観察された副作用は、苦みによる中止(6.5%)、投薬方法の負担(6.5%)であり、オランザピン群のみで観察された副作用は、口渇(4.1%)や便秘(2.0%)などの抗コリン作用系副作用であった。 著者らは「実臨床におけるアセナピンの治療継続率の低さは、苦みや投薬方法などの特定の因子に関連している可能性が考えられる」としている。

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死に至る薬剤耐性菌感染症、最も多い疾患と原因菌は/Lancet

 薬剤耐性(AMR)は、世界中で人々の健康を脅かす主要な原因となっている。これまでのAMR研究は、特定の地域における限られた病原体と薬剤の組み合わせについて、感染症の発生率や死亡数、入院期間、医療費に及ぼすAMRの影響の評価を行い、広範な地域や、病原体と薬剤の網羅的な組み合わせに関する包括的な検討は行われていないという。米国・ワシントン大学のMohsen Naghavi氏らAntimicrobial Resistance Collaboratorsは、今回、AMR負担に関して現時点で最も包括的な検討を行い、2019年に世界で495万人が細菌のAMRに関連する感染症で死亡し、このうち127万人は薬剤耐性菌感染症が直接の原因で死亡したことを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年1月18日号に掲載された。204の国と地域で、88件の病原体と薬剤の組み合わせを評価 研究グループは、2019年時点の204の国と地域における、23種の病原体および、88件の病原体と薬剤の組み合わせについて、細菌のAMRに起因する死亡と、これによる障害調整生存年数(DALY)などを推算した(ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの助成を受けた)。 データは、文献の系統的レビュー、病院やサーベイランスのシステム、その他の情報源から収集された。解析には4億7,100万件の患者記録や分離株が含まれ、調査地の数×年数は7,585であった。 予測統計モデルを用いて、データのない場所を含むすべての地域のAMR負担の推定値が算出された。AMR負担には、次の5つの一般的な要素が含まれた。(1)感染症に起因する死亡数、(2)特定の感染性症候群に起因する感染性の死亡の割合、(3)特定の病原体に起因する感染性症候群による死亡の割合、(4)対象となる抗菌薬に対する特定の病原体の耐性の割合、(5)この耐性に関連する死亡または感染期間の過剰リスク。 これらの要素を用いて、2つの反事実的シナリオ(AMR菌に起因する死亡、AMRに関連する死亡)に基づく疾病負担が推定された。世界全体および地域別の最終的な推定値とその95%不確実性区間(UI)が算出された。負担は下気道感染症、関連死は大腸菌、死亡はMRSAで多い 2019年、世界全体における細菌のAMRに関連する死亡数は495万件(95%UI:3.62~6.57)であり、このうちAMR菌に直接起因する死亡数は127万件(91万1,000~171万)と推定された。 地域別のAMR負担は、サハラ以南のアフリカ西部で最も高く、AMR関連の全年齢死亡割合は10万人当たり114.8件、AMR菌に起因する死亡割合は10万人当たり27.3件であった。これに対し、AMR負担が最も低かったのはオーストララシアで、AMR関連の死亡割合は10万人当たり28.0件、AMR菌に起因する死亡割合は10万人当たり6.5件だった。 また、2019年の世界全体のAMR負担は、主に3つの感染性症候群(下気道感染症/胸部感染症、血流感染症、腹腔内感染症)の割合が大きく、AMR菌に起因する死亡の78.8%をこれらが占めた。さらに、下気道感染症だけで、AMR関連死亡が150万件以上、AMR菌に起因する死亡は40万件以上に達し、最も負担の大きい感染性症候群だった。 世界全体のAMR関連死亡の最も多い原因となった病原体は大腸菌で、次いで黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、肺炎球菌、Acinetobacter baumannii、緑膿菌の順であった。これら6つの主要な病原体による2019年のAMR関連死亡は357万件(全495万件中)で、AMR菌に起因する死亡は92万9,000件(全127万件中)に達していた。 一方、2019年にAMR菌に起因する死亡数が10万件を超え、DALYが350万年以上であった病原体と薬剤の組み合わせは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)(12万1,000件)だけであった。 また、AMR菌に起因する死亡数が5万~10万件の組み合わせは6つあり、死亡数が多い順に、超多剤耐性菌(XDR)を除く多剤耐性(MDR)結核菌(6万4,600件)、第3世代セファロスポリン耐性大腸菌(5万9,900件)、カルバペネム耐性Acinetobacter baumannii(5万7,700件)、フルオロキノロン耐性大腸菌(5万6,000件)、カルバペネム耐性肺炎桿菌(5万5,700件)、第3世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌(5万100件)であった。 著者は、「AMRは、世界各地で主要な死因であり、低医療資源環境では最大の負担となっている。AMR負担と、その原因となる病原菌と薬剤の組み合わせを理解することは、とくに感染予防や管理計画、必須抗菌薬の評価、新たなワクチンや抗菌薬の研究開発に関して、十分な情報を得たうえで地域ごとの施策を決定する際にきわめて重要である。低所得国の多くでは深刻なデータ不足があり、この重要な健康上の脅威に関する理解を深めるためには、微生物学研究所の能力とデータ収集システムの拡充が必要である」と指摘している。

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第97回 COVID-19後遺症様の症状が稀にワクチン接種後にも生じうる

イスラエルでもワクチンのCOVID-19後遺症予防効果あり去年9月に発表された英国での試験1)と同様に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種済みの人のSARS-CoV-2感染後の長引く症状(COVID-19後遺症)の主なものはどれも非接種の人に比べて少ないことがイスラエルでの試験でも示されました2,3)。もっと言うと、ワクチン接種済みの人のそれらの症状はSARS-CoV-2に感染したことのない人より多くもありませんでした。COVID-19後遺症全般についてはワクチンによる予防効果が認められなかった試験報告4)もありますが、エール大学の岩崎明子(Akiko Iwasaki)氏によれば今回のイスラエルでの試験や英国での試験結果はともあれ吉報です。「COVID-19後遺症は悲惨で、消耗を強いる。そうならないようにする手立ては何であれCOVID-19後遺症がこれ以上増えるのを防ぐのに必要であり、(その手立てを担いうるという)ワクチン接種理由がまた1つ増えた」と同氏は言っています2)。ワクチン接種後にも稀ながら生じうる後遺症ワクチンがCOVID-19後遺症を予防しうるとの期待がある一方で、その後遺症に似た症状がワクチン接種後に生じることが稀ながらあるようです5)。かつて幼稚園の先生をしていたBrianne Dressen氏は2020年11月にSARS-CoV-2ワクチンを接種し、その日の晩までに目がぼやけはじめました。また、貝殻を耳に当てているように音が変になりました。症状は急激に悪化し、やがては心拍異常や筋肉の脱力に見舞われ、電気ショックのような感覚を被るようになりました。Dressen氏はいまやそのほとんどの時間を暗い部屋で過ごし、歯を磨くことや幼い我が子に触れられるのさえ耐えることができません。医師がDressen氏を不安症と診断してからときが過ぎ、今から1年前の2021年1月になると米国国立衛生研究所(NIH)の研究者はDressen氏に降り掛かったような事態を把握し始め、Dressen氏や他の患者をNIH施設に招いて検査し、時には治療も施しました。しかし手がかりは少なく、Dressen氏が被ったような長く続く体調不良をワクチンが引き起こしたのかどうかは分からずじまいでした。NIHと患者のやり取りは昨年2021年の遅くまでに途絶えてしまいました。内々で研究は続いているとDressen氏等の調査を率いたNIHの研究者Avindra Nath氏は言うものの、唯一の頼みの綱であったNIHが手を引いたことに患者は困惑し、がっかりしています。NIHの研究は尻すぼみとなりましたが、ワクチン接種後の後遺症を理解することはそれらで悩む人の助けになるでしょうし、もしワクチンとの関連の仕組みが明らかになれば次世代のワクチン開発の参考になるに違いありません。また、そういう後遺症の恐れがある人を事前に同定可能になるかもしれません。カリフォルニア大学の免疫学者William Murphy氏はSARS-CoV-2スパイクタンパク質が誘発する自己免疫で感染後とワクチン接種後のどちらの長患いも説明できるかもしれないとの論説をNEJM誌に去年11月に発表しました6)。感染後やワクチン接種後の好ましい抗ウイルス効果と生じて欲しくない副作用の両方に免疫反応がどう寄与しているかをもっと基礎から調べる必要があります。Murphy氏はワクチン接種の支持者ですが、ワクチンを皆に安心して接種してもらうにはワクチン接種に安全性の心配はないと言って済ますのではなくワクチンについて隈なく調べ尽くすことが必要だと述べています5)。しかしMurphy氏の期待とは裏腹にNIHのNath氏が率いた患者研究は長続きしませんでした。NIHの研究には患者34人が参加し、そのうち14人がNIHで診られ、残り20人は血液検体、それに何人かは脳脊髄液(CSF)検体を提供しました。しばし治療も受けた患者もおり、たとえばステロイド高用量投与や免疫グロブリン静注(IVIG)が施されました。そのようにNIHは初めこそ患者を助けようとしていたにもかかわらずやがて患者との接触を断つようになりました。去年の9月のDressen氏の神経検査の予定は遠隔面談となり、12月になるとNath氏は患者を来させないようにしました。多くの患者を長期間治療するようにNIHは設えられておらず、患者の地元の担当医が手当てにあたるのが最良だとNath氏は言っています。しかしNath氏の言い分とは裏腹に医師には何もしてもらえないという患者もいますし、気のせいだと決めつけられることもあります。そうして表向きは梯子を外したNIHですが、エール大学の岩崎 明子氏はNIHのNath氏の協力を仰いでワクチン接種後の反応とCOVID-19後遺症がどう関連するかを調べることを計画しています。すでに患者との話が始まっており、血液や唾液などの検体を患者から集めるつもりです。また自己抗体を疑うドイツの研究者Harald Pruss氏はマウスへのSARS-CoV-2ワクチン接種後の自己抗体の特定に取り掛かっています。Pruss氏は感染後やワクチン接種後の患者の治療にもあたっており、患者の血液から抗体のほとんどを取り除く治療を調べる臨床試験を近々開始したいと考えています。自己抗体などの免疫系の関与は患者の体験でも示唆されており、ワクチン接種後に不調に陥った患者の何人かはScienceの取材に応じて免疫抑制剤でいくらか良くなったと言っています。NIHのNath氏も同様の効果を把握しており、免疫抑制/調節作用があるIVIGやステロイドによるCOVID-19後遺症治療を調べているNIH主催臨床試験結果がワクチン関連の合併症にも役立つことを期待しています。岩崎氏がワクチン開発にも着手COVID-19研究で何かと目に耳にすることが多いエール大学の岩崎氏の取り組みは今やワクチン開発にも及んでいます。先週26日にbioRxiv誌に発表された同氏率いるチームのマウス実験の結果、mRNAワクチン筋肉注射に続くSARS-CoV-2スパイクタンパク質やそのmRNAの点鼻投与で呼吸器粘膜の免疫を安全に底上げして感染や発病を防ぎうることが示されました7)。次の段階として、より大きな動物や臨床試験での安全性や有効性の検討が必要です8)。将来的には他の粘膜ウイルス病原体にも今回と似た手段が通用しそうであり、岩崎氏の活躍を見聞きすることは今後ますます多くなりそうです。参考1)Antonelli M,et al.Lancet Infect Dis. 2022 Jan;22:43-55. 2)Long-COVID symptoms less likely in vaccinated people, Israeli data say / Nature3)Association between vaccination status and reported incidence of post-acute COVID-19 symptoms in Israel: a cross-sectional study of patients tested between March 2020 and November 2021. medRxiv. January 17, 20224)Six-month sequelae of post-vaccination SARS-CoV-2 infection: a retrospective cohort study of 10,024 breakthrough infections. medRxiv. November 08, 20215)In rare cases, coronavirus vaccines may cause Long Covid-like symptoms. Science.6)Murphy WJ, et al. N Engl J Med. 2022 Jan 27;386:394-396. 7)Unadjuvanted intranasal spike vaccine booster elicits robust protective mucosal immunity against sarbecoviruses. bioRxiv. January 26, 20228)岩崎 明子氏のTwitter投稿(2022年1月27日)

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医療者における毎日の手指消毒剤、皮膚バリアへの影響は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにおいて、アルコールベースの手指消毒剤(ABHS)を用いて毎日行う手洗いは、皮膚バリアの破壊率が低く、バクテリアや真菌のコロニー形成単位(CFU)数も低値であることが示された。 スペイン・Virgen de las Nieves University HospitalのTrinidad Montero-Vilchez氏らが、水とせっけん、ABHS、除菌シートを比較した無作為化試験の結果を報告した。COVID-19により手洗いの頻度は増したが、臨床におけるさまざまな手指衛生の皮膚バリア機能への影響に関するエビデンスは不足していた。Contact Dermatitis誌オンライン版2021年12月25日号掲載の報告。 研究グループは、日常診療における医療従事者のさまざまな手指衛生法の、皮膚バリア機能への影響を比較する無作為化試験を実施した。 被験者は、8時間の勤務中に、水とせっけん、ABHS、または除菌シートで手指を消毒する3群に無作為に割り付けられた。経表皮水分蒸散量(TEWL)などの表皮バリア機能パラメーター、および微生物負荷を、就業の前と直後に評価した。各製品の耐性と受容性は、就業後に記録した。 主な結果は以下のとおり。・試験には62人が参加し、水とせっけん群20人、ABHS群21人、除菌シート群21人にそれぞれ無作為化された。・8時間の勤務後、TEWLの増加は、除菌シート群が、水とせっけん群およびABHS群よりも高かった(それぞれ+5.45 vs.+3.87 vs.-1.46g・h-1・m-2、p=0.023)。・細菌および真菌のCFU数の減少は、水とせっけん群が、ABHS群および除菌シート群よりも低かった。・除菌シートは、水とせっけん、ABHSと比較して、使いにくいと見なされていた(p=0.013)。

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JSMO2022の注目演題/日本臨床腫瘍学会

 2022年1月21日、日本臨床腫瘍学会はオンラインプレスセミナーを開催し、会長の国立がん研究センター中央病院の大江 裕一郎氏らが、第19回学術集会の注目演題などを発表した。 今回の学術集会のテーマは「Inspiring Asian Collaboration and the Next Generation in Oncology」。アジアとの協力関係と若手の活性化を目指したものだという。2022年2月17~19日に、現地(京都国際会館およびザ・プリンス京都宝ヶ池)開催を基本とし、webライブとオンデマンド配信を組み合わせたハイブリッド形式で行われる。演題数は1,000を超え、4分の1は海外からの演題とのこと。4つのPresidenstial Session 選ばれた優秀演題が発表されるPresidentialは1~4までのsessionで行われる。 Session1は乳がんと婦人科がんで2月17日午前、Session2は肺がんで2月17日午後、Session3は消化器がんで2月18日午前、Session4は造血器腫瘍と希少がんのトピックで2月19日の午前に開催される。COVID-19関連演題 COVID-19関連は、主に2つの合同シンポジウムと2つの一般演題セッションで取り上げられる。 同学会と日本癌学会/日本癌治療学会のがん関連3学会の合同シンポジウム「COVID-19流行のがんマネジメント」が2月17日午後に行われる。ここでは、新型コロナの流行によるがんのマネジメントへの影響について、さまざまな観点から議論する。 ESMO(欧州臨床腫瘍学会)との合同シンポジウム「Oncology Trial and Practice with/post COVID-19 era」が上記シンポジウムに引き続いて行われる。ここでは海外演者と日本の演者が登壇し、コロナ禍でのがん臨床および治療開発をどのように行うべきかディスカッションが行われる。 一般演題ではCOVID-19関連Mini Session1と2で国内外の演者による発表が行われる。HPV関連がん 2020年にワクチンの積極的勧奨が再開されたHPV関連がんについては、会長企画「HPV関連がんの予防と治療~日本とアジアの現状から見えてくるものとは~」で取り上げる。 ここではHPVワクチンの安全性や近年増加しているHPV関連中咽頭がんについての新たな知見が紹介される。

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BNT162b2とmRNA-1273の液性/細胞性免疫、感染/発症/重症化予防効果の推移:オミクロン株を中心に(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

ワクチン開発の現状 2022年1月12日現在、世界で開発されているワクチンは152個(開発中止になった10個を含む)に及び、その中で28個のワクチンが世界各国によって緊急使用あるいは完全使用が承認され、各ワクチンの感染/発症予防効果、重症化予防効果、特異的副反応などが徐々に明らかにされている。その結果、優れたワクチンとして生き残りつつあるのが、本邦をはじめ世界の先進国で優先的に使用されているRNAワクチンに分類されるPfizer/BioNtech社のBNT162b2(商品名:コミナティ筋注)とModerna社のmRNA-1273(同:スパイクバックス筋注)の2つである。 2021年の11月以降、世界を席巻するウイルスはデルタ株からオミクロン株に置換されつつある。本邦でも2022年1月に入り、オミクロン株感染者の急激な増加を認めている。オミクロン株のS蛋白をPlatformにしたワクチン開発は理論的には困難な問題ではない。しかしながら、新たなワクチンを実地臨床の現場で使用できるためには第I相から第III相に至る治験を介して有効性、安全性を検証する必要があり、膨大な時間を要する。その意味で、今年の冬から春にかけて世界を席巻するであろうオミクロン株に対する予防策としては、現在使用可能なBNT162b2、mRNA-1273の2回接種(通常接種)に加え、3回目以上のブースター接種を組み合わせて立ち向かう必要がある。以上のような事実を踏まえ、オミクロン株に対する今後のワクチン政策を医学的に正しい方向に誘導するためには、BNT162b2とmRNA-1273の予防手段としての優越性の違いを確実に把握しておく必要がある。RNAワクチン通常接種(2回接種)後のオミクロン株に対する液性免疫、細胞性免疫、予防効果の時間推移 BNT162b2、mRNA-1273を2回接種した場合の野生株(先祖株)S蛋白-RBD(Receptor binding domain)に対する中和抗体価のピーク値(2回目ワクチン接種2~4週後)は、BNT162b2接種後に比べmRNA-1273接種後のほうが40~50%高い(Richards NE, et al. JAMA Netw Open. 2021;4:e2124331., Self WH, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021;70:1337-1343.)。しかしながら、BNT162b2、mRNA-1273接種後の野生株中和抗体価はピーク値が異なるものの、それ以降4~6ヵ月間はほぼ同じ速度で低下する(Levin EG, et al. N Engl J Med. 2021;385:e84., Pegu A, et al. Science. 2021;373:1372-1377.)。 BNT162b2接種後のオミクロン株に対する中和抗体価は、ピーク値を与える時間帯ですでに検出限界近傍まで低下していた。また、mRNA-1273のオミクロン株に対する中和抗体価は、ワクチン接種後4~6ヵ月経過した時点で検出限界以下であった(Rossler A, et al. N Engl J Med. 2022 Jan 12. [Epub ahead of print])。以上より、BNT162b2、mRNA-1273のオミクロン株中和作用はワクチン接種後のいかなる時間帯でもほぼ無効と考えることができる。この現象はオミクロン株S蛋白に存在する多彩な遺伝子変異に起因する強力な液性免疫回避によって惹起されたものである。 ワクチン接種によって形成されたS蛋白には、CD4-T細胞反応を賦活する抗原決定基(Epitope)が約30個、CD8-T細胞反応を賦活する抗原決定基が約50個存在する(山口, 田中. 日本医事新報 2021;5088:38.)。但し、T細胞反応を規定する抗原決定基の個数に関する報告は一定しておらず、確実な個数は現時点では同定されていない。これらの抗原決定基は種々の変異の影響を受け難く、オミクロン株以外の変異株において85~95%(Tarke AT, et al. bioRxiv. 2021;433180.)、オミクロン株においても70~80%が維持される(WHO. COVID-19 Weekly Epidemiological Update. 2022 Jan 7.)。ワクチン接種後のT細胞性免疫の持続期間は野生株を用いた解析ではあるが、少なくとも8ヵ月間は緩徐に低下しながらも維持されることが示された(Barouch DH, et al. N Engl J Med. 2021;385:951-953.)。以上より、オミクロン株に対するワクチン惹起性T細胞性免疫は、時間経過と共にゆっくりと低下するものの、比較的長期間にわたり有効域に維持されるものと考えられる。賦活化されたCD4-T細胞はB細胞由来の液性免疫(中和抗体)と共同し補完的にウイルス感染を抑制する。一方、CD8-T細胞は、ウイルスに感染した生体細胞を殺傷/処理し、生体が感染後の過剰免疫状態に陥ることを阻止する(重症化抑制)。 本論評で取り上げたDickermanらの論文(Dickerman BA, et al. N Engl J Med. 2020;386:105-115.)は、アルファ株、デルタ株感染に対するBNT162b2、mRNA-1273の感染/発症予防効果、重症化(一般入院、ICU入院、死亡)予防効果の差を観察したものである。アルファ株、デルタ株感染にあって、感染/発症予防効果、ICUを含む入院予防効果に関してmRNA-1273のほうが勝っていた。しかしながら、死亡予防効果は両ワクチンで有意差を認めなかった。 オミクロン株に対する両ワクチンの予防効果に関する英国健康安全保障庁(UKHSA)の解析によると(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)、BNT162b2接種後のデルタ株発症予防効果が90%(ワクチン接種2~4週後)から60%(ワクチン接種後25週以上)まで低下するのに対し、同じ時間帯においてオミクロン株発症予防効果は65%から10%前後まで低下した。一方、mRNA-1273接種後のデルタ株発症予防効果は95%(ワクチン接種2~4週後)から75%(ワクチン接種後25週以上)まで低下、オミクロン株発症予防効果は同じ時間帯で70%から10%前後まで低下した。定性的に同様の結果は、米国からも報告されている(Accorsi EK, et al. JAMA. 2022 Jan 21. [Epub ahead of print])。これらの結果は、デルタ株に対する発症予防効果の時間的低下はmRNA-1273でより緩徐であるが、オミクロン株に対する発症予防効果の時間的低下は両ワクチンでほぼ同程度であることを意味する。オミクロン株に対する発症予防効果の時間推移は液性免疫の動態(両ワクチンの中和抗体形成能は低くワクチン接種直後から検出限界近傍)からは説明できず、予防効果の大部分が時間経過と共にゆっくりと低下するT細胞性免疫の賦活によって維持されていることを示唆する。そのため、オミクロン株に対するBNT162b2とmRNA-1273の発症予防効果の差は小さい。オミクロン株抑制を考えた場合、液性免疫ではなく細胞性免疫の賦活が重要である。その意味で、ドイツ・テュービンゲン大学で開発中のT細胞免疫賦活に特化したワクチン(CoVac-1)に論評者らは注目している(Heitmann JS, et al. Nature. 2021 Nov 23. [Epub ahead of print])。 オミクロン株に対するBNT162b2接種後の入院予防効果は、2~24週後に72%であったものが25週以上経過すると52%まで低下した。一方、デルタ株に対するBNT162b2の入院予防効果は接種後の時間経過(接種後20週以内)と無関係に90%前後の値を維持し(Tartof SY, et al. Lancet. 2021;398:1407-1416.)、オミクロン株に対する入院予防効果の動態とは異なっていた。オミクロン株感染における種々の重症化状態(酸素投与、機械呼吸、ICU入院、入院中の死亡)の頻度を解析した論文によると、これらの指標の発生頻度はデルタ株感染に比べオミクロン株感染で有意に低いことが示された(Maslo C, et al. JAMA. 2021 Dec 30. [Epub ahead of print])。オミクロン株が高感染性、低病原性の性質を有する特異的なウイルスであることは感染発症初期から観察されていた。感染性の増強は、Q498R, N501Y, H655Y, N679K, P681Hなどの多彩なS蛋白アミノ酸変異に起因する(CDC. Science Brief. 2021 Dec 2.)。一方、オミクロン株の低病原性は、肺胞領域でのウイルス複製/増殖能が低く、重症化の引き金になる肺炎が発生し難いという実験的事実から説明される(HKUMed News. HKUMed finds Omicron SARS-CoV-2 can infect faster and better than Delta in human bronchus but with less severe infection in lung. 2021 Dec 15.)。RNAワクチンブースター接種(3回目接種)後のオミクロン株に対する液性免疫、細胞性免疫、予防効果の時間推移 播種ウイルスの主体がデルタ株からオミクロン株に置換されつつある現在、オミクロン株を標的とした3回目ブースター接種の意義を明らかにする必要がある。オミクロン株に対する2回ワクチン接種後の中和抗体価は検出限界近傍の低値である(上述)。Nemetらの解析によると(Nemet I, et al. N Engl J Med. 2021 Dec 29. [Epub ahead of print])、BNT162b2の2回目接種5.5ヵ月後のオミクロン株中和抗体価に比べ3回目接種1ヵ月後の中和抗体価は97倍増加した。mRNA-1273の3回目ブースター接種に関するModerna社の報道によると(Moderna. Press Release. 2021 Dec 20.)、mRNA-1273の3回目接種後のオミクロン株に対する中和抗体価は2回目接種後の83倍まで増加したとのことである。 英国健康安全保障庁(UKHSA)の解析によると、BNT162b2の2回目接種後25週以上経過した時点で10%前後まで低下したオミクロン株に対する発症予防効果は、3回目ブースター接種2~4週後には70%以上に回復した(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。しかしながら、3回目接種から10週以上経過するとBNT162b2のオミクロン株発症予防効果は40%台まで再度低下した。BNT162b2の3回目接種後のオミクロン株に対する発症予防効果の推移は、2回目接種後とは異なり、主として中和抗体価の動態によって説明可能である。mRNA-1273の3回目接種後のオミクロン株に対する発症予防効果は78%と報告され、BNT162b2の効果とほぼ同程度であった(Accorsi EK, et al. JAMA. 2022 Jan 21. [Epub ahead of print])。しかしながら、mRNA-1273の3回目接種後の各ウイルスに対する発症予防効果の時間推移は報告されていない。 BNT162b2の3回目接種によるオミクロン株に対する入院予防効果は、2回接種後25週以上で52%まで低下したが、3回目接種2週以後で88%まで回復した(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。入院予防効果など重症化予防効果が主としてT細胞性免疫によって規定されるならば、UKHSAの観察結果は、BNT162b2の3回目ブースター接種はオミクロン株に対する液性免疫に加え細胞性免疫も改善することを意味する。 mRNA-1273はBNT162b2に比べ一般的に免疫原性、予防効果の面でより優れた効果を発揮することが判明したが、オミクロン株に対する作用/効果には明確な差を認めない。両者の差を招来する主たる原因は生体に導入されるmRNA量の違いである。成人においてmRNA-1273の通常接種によって生体に導入されるmRNA量はBNT162b2の3.3倍であり、その結果として高い免疫原性が発現する。しかしながら、mRNA導入量の多さは副反応の多さとも関連し、mRNA-1273では心筋炎を含む多くの副反応の頻度がBNT162b2よりも有意に高いことを知っておく必要がある(Chapin-Bardales J, et al. JAMA. 2021;325:2201-2202., Husby A, et al. BMJ. 2021;375:e068665.)。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー  CONNECTED PAPERSの活用 その2【「実践的」臨床研究入門】第16回

見逃していたかもしれない関連研究を調べる前回は“CONNECTED PAPERS”の概要と使い方のはじめのステップについて解説しました。今回は、われわれのリサーチ・クエスチョンのトピックについて、見逃していたかもしれない関連研究を調べてみたいと思います。“CONNECTED PAPERS”を用いると「Key論文」1)を中心とした関連研究の関係性がリンクのように中央のウィンドウに図示されます。個々の論文のノード(連載第15回参照)にマウスオーバーすると、その論文のタイトルとAbstractがWebページの向かって右側のウィンドウに表示されます。そこにはその論文のDigital Object Identifier(DOI)(連載第15回参照)やPubMedへのリンクも貼られています。向かって左側のウィンドウには「Key論文」1)を筆頭に関連研究が列挙されています。こちらのウィンドウにある“Expand”というボタンをクリックすると、ウィンドウが拡大し、関連研究論文各々の「論文タイトル」、「著者」、「出版年」、「被引用数」、「引用論文数」、(「Key論文」1)からの)「類似性」という文献情報が列記されていることがわかります。デフォルトでは「類似性」順に並んでいますが、上記の文献情報項目毎にソート(並べ替え)することができます。ここでは、コクラン・フル・レビュー論文である「Key論文」1)以降の関連研究をまずは見てみたいので、「出版年」の降順でソートしてみましょう。すると、連載第16回執筆時点(2022年1月)では、「Key論文」1)が出版された2007年以降に以下の関連研究論文が出版されていることがわかります(臨床研究かつDOIが確認されたものに限定)。ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)1編2)システマティック・レビュー(SR: systematic review)8編3-10)総説1編11)なんと、RCTをメタ解析したSRが2008年以降に8編もヒットしました。そのうち連載第12回で取り上げた非糖尿病患者をP(対象)としたコクランSR1編4)、非糖尿病患者もPに組み入れている非コクランSR2編6,9)を除外し、Pを糖尿病性腎疾患患者にしぼった非コクランSR5編の一覧を下記の表にまとめました。「Key論文」1)でメタ解析されていた腎機能低下の指標である推定糸球体濾過量(eGFR)低下速度の変化(連載第14回参照)というO(アウトカム)について、点推定値と95%信頼区間(95% confidence interval:95%CI)を記述し整理してみました。表に示したとおり、非コクランSR3編3,7,8)ではコクランSRである「Key論文」1)の結果と同様、糖尿病性腎疾患に対する低たんぱく食の効果は認められなかった、と結論しています。一方、他の非コクランSR2編5,10)では、eGFR低下速度の変化の95%CIがゼロをまたいでおらず、低たんぱく食群は対照群と比較して統計学的有意に腎機能低下が緩やかであったことを示しています。1)Robertson L, et al. Cochrane Database Syst Rev.2007 Oct. 17:CD002181.DOI: 10.1002/14651858.CD002181.pub22)Koya D, et al. Diabetologia. 2009 Oct;52:2037-45.3)Pan Y, et al. Am J Clin Nutr. 2008 Sep;88:660-6.4)Fouque D, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Jul 8; CD001892.5)Nezu U, et al. BMJ Open. 2013 May 28;3:e002934.6)Rughooputh MS, et al. PloS one. 2015;10:e0145505.7)Zhu HG, et al. Lipids Health Dis. 2018 Jun 19;17:141.8)Li XF, et al. Lipids Health Dis.2019 Apr 1;18:82.9)Yue H, et al. Clin Nutr.2020 Sep;39:2675-85.10)Li Q, et al. Diabetes Ther. 2021 Jan;12:21-36.11)Otoda T, et al. Curr Diab Rep. 2014;14:523.

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せん妄予防に対するラメルテオン+スボレキサントの有効性~メタ解析

 せん妄は、重篤な神経性行動を有する症候群であり、長期入院や有病率、死亡率の増加と関連している。中国・南方医科大学のYu Tian氏らは、高齢入院患者のせん妄に対するラメルテオンの有無にかかわらないスボレキサントの予防効果を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Psychogeriatrics誌オンライン版2021年12月8日号の報告。 各データベース(PubMed、Cochrane Library、Web of Science、EMBASE、EBSCOhostデータベース)より、成人入院患者のせん妄に対するラメルテオンの有無にかかわらないスボレキサントの有効性を調査したすべてのランダム化比較試験(RCT)、ケースコントロール研究、コホート研究を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。主要アウトカムは、せん妄の発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・本メタ解析には、RCT2件、コホート研究7件、ケースコントロール研究2件より2,594例が抽出された。・ラメルテオンの有無にかかわらずスボレキサントでは、成人入院患者におけるせん妄発生率の低下が認められた。 ●スボレキサント単独のオッズ比(OR):0.30(95%信頼区間[CI]:0.14~0.65、p=0.002) ●スボレキサント+ラメルテオンのOR:0.39(95%CI:0.23~0.65、p=0.0003)・ベンゾジアゼピンを用いた6件の研究において、スボレキサント単独とスボレキサント+ラメルテオンを別々に評価したサブグループ解析を行うと、ベンゾジアゼピンを使用した場合には、スボレキサント+ラメルテオンでは、せん妄発生率の低下が認められたが(OR:0.53、95%CI:0.37~0.74、p=0.0002)、スボレキサント単独では有意な差が認められなかった(OR:0.40、95%CI:0.11~1.53、p=0.18)。 著者らは「ベンゾジアゼピンが使用されている場合では、スボレキサント単独でのせん妄発生率に対する有意な効果が認められなかったが、せん妄予防に対しては、ラメルテオンの有無にかかわらずスボレキサントの有効性が支持された。本結果の解釈にあたっては、研究間の有意な異質性により制限を受けていることに注意する必要がある」としている。

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オミクロン株感染3万例、入院・重症化リスクを解析/Lancet

 南アフリカ共和国・国立感染症研究所(NICD)National Health Laboratory ServiceのNicole Wolter氏らは、国内の4つのデータベースを用いた解析から、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株感染者は、同時期に診断された非オミクロン変異株感染者と比較して入院リスクが低いこと、早期のデルタ変異株感染者と比較して重症化リスクが低いこと、この重症化の減少の一部はおそらく過去の感染やワクチン接種による免疫の結果であると考えられることを明らかにした。オミクロン変異株は、2021年11月に同国で確認され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の増加と関連していた。Lancet誌オンライン版2022年1月19日号掲載の報告。症例・検査・ウイルスゲノム解析・入院サーベイランスデータを連携し評価 研究グループは、南アフリカ共和国の次の4つのデータベースから個人レベルのデータを連携し解析した。(1)NICDのNotifiable Medical Conditions Surveillance Systemにリアルタイムに報告されたCOVID-19症例データ、(2)公的検査機関(National Health Laboratory Service)および民間の大規模検査機関1社におけるSARS-CoV-2検査データ、(3)民間および公的診断研究所からNICDに送られた臨床検体、および5つの州の肺炎サーベイランスプログラムを介して収集されたSARS-CoV-2ゲノム解析データ、(4)COVID-19による入院に関する積極的サーベイランスシステム「DATCOV」(南アフリカ共和国の全病院をカバー)のデータ。 多変量ロジスティック回帰モデルを用い、2021年10月1日~11月30日に診断されたCOVID-19患者の入院と重症化(集中治療室入室、酸素治療、人工呼吸器使用、体外式膜型人工肺使用、急性呼吸促迫症候群または死亡)を、オミクロン変異株感染者と非オミクロン変異株感染者で比較するとともに、2021年10月1日~11月30日に診断されたオミクロン変異株感染者と2021年4月1日~11月9日に診断されたデルタ変異株感染者の重症化を比較した。 オミクロン変異株感染は、TaqPath COVID-19 PCR検査(Thermo Fisher Scientific製)でS遺伝子が検出されなかった(S gene target failure:SGTF)感染を代替として用い、S遺伝子が検出された非SGTF感染を非オミクロン変異株感染とした。デルタ変異株はゲノムシークエンスにより同定した。オミクロン株感染者は、入院が少なく、重症化が少ない 南アフリカ共和国では、2021年10月1日(第39週)~12月6日(第49週)に、計16万1,328例のCOVID-19患者が報告され、うち今回の解析対象検査機関からの報告は10万4,529例であった。このうちTaqPath PCR検査で診断されていたのは3万8,282人で、オミクロン変異株感染は2万9,721例、非オミクロン変異株感染は1,412例報告された。オミクロン変異株感染の割合は、39週目の3.2%(2/63例)から、48週目には97.9%(2万1,978/2万2,455例)に増加した。 2021年10月1日~11月30日において、入院した患者の割合はオミクロン変異株感染者2.4%(256/1万547例)、非オミクロン変異株感染者12.8%(121/948例)で、入院に関連する因子を調整した入院のオッズはオミクロン変異株感染者で有意に低下した(補正後オッズ比[aOR]:0.2、95%信頼区間[CI]:0.1~0.3)。 2021年12月21日までの院内転帰が判明している患者(382例)において、重症化した患者の割合は、オミクロン変異株感染者21%(42/204例)、非オミクロン変異株感染者40%(45/113例)で、重症化に関連する因子で補正後の重症化オッズ比は0.7(95%CI:0.3~1.4)であった。 また、2021年10月1日~11月30日に診断されたオミクロン変異株感染者は、同年4月1日~11月9日に診断されたデルタ変異株感染者と比較して、重症化に関連する因子で補正後のオッズは有意に低かった(62.5%[496/793例]vs.23.4%[57/244例]、aOR:0.3、95%CI:0.2~0.5)。

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パニック障害の治療に有効なSSRI、最も効果的なのは?/BMJ

 パニック障害の治療において、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は寛解率が高く有害事象のリスクは低いことが、タイ・マヒドン大学のNatasha Chawla氏らのメタ解析で示された。SSRIの中ではセルトラリンとエスシタロプラムで良好な結果が得られた。しかし、著者は、「これらの知見は、研究内バイアス、不一致、および報告された所見の不正確さによりエビデンスレベルが『非常に低い』~『中程度』の研究に基づいているため、注意して解釈する必要がある」とまとめている。BMJ誌2022年1月19日号掲載の報告。パニック障害の薬物療法に関する87件の臨床試験を評価 研究グループは、広場恐怖症を伴うパニック障害の治療において、寛解率が高く有害事象のリスクが低い薬剤クラス、ならびに個々のSSRIを特定する目的で、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を行った。 Embase、Medline、ClinicalTrials.govを用いて2021年6月17日までに公表された研究を検索した。適格研究は、パニック障害と診断された18歳以上の成人患者を対象に、薬物を用いた介入による寛解、脱落、有害事象などを、無治療(プラセボや待機)または実薬と比較した無作為化試験とした。 改訂版コクランバイアスリスクツールを用いて各試験のバイアスリスクを評価し、ランダム効果モデルを用いて直接メタ解析を行うとともに、SUCRA(Surface under the cumulative ranking curve)を用いた2段階法のネットワークメタ解析により、薬剤クラスと個々のSSRIの効果の比較を推定した。 計1万2,800例、12の薬剤クラスを含む87件の臨床試験が解析に組み込まれた。SSRIの有益性が示されたが、ほとんどの試験はバイアスリスクが高かった ほとんどの試験は、いくつかの懸念があるかバイアスリスクが高く、バイアスリスクが低いと見なされたのは1試験のみであった。 寛解に関するネットワークメタ解析では、プラセボと比較し、三環系抗うつ薬(リスク比:1.39、95%信頼区間[CI]:1.26~1.54)、ベンゾジアゼピン系抗うつ薬(1.47、1.36~1.60)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)(1.30、1.00~1.69)、SSRI(1.38、1.26~1.50)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)(1.27、1.12~1.45)で、一貫して有意に高い寛解率が得られた。 SUCRAでは、ベンゾジアゼピン系抗うつ薬(84.5%、平均ランク=2.4)、三環系抗うつ剤(68.7%、3.8)、SSRI(66.4%、4.0)が寛解のための治療薬ベスト3であった。しかし、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系抗うつ薬、SSRIは、プラセボと比較して有害事象のリスクも有意に増加し、リスク比はそれぞれ1.79(95%CI:1.47~2.19)、1.76(1.50~2.06)、1.19(1.01~1.41)であった。 介入に関連した有害事象のリスク増加については、ネットワークメタ解析で当初一貫性に欠けることが示されたが、女性患者あるいは広場恐怖症を有する患者の割合が高いことが不一致の原因と特定され、これらの試験を除外すると一貫性に欠けることは改善されたもののまだ不一致が存在する可能性が示唆された。 寛解と有害事象の両方を考慮した全薬剤クラスのSUCRAクラスターランキングプロットでは、SSRIは寛解率が高く有害事象のリスクが低いことが示された。個々のSSRIについては、セルトラリンとエスシタロプラムで寛解率が高く、有害事象のリスクは容認可能であった。

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