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一人暮らしとうつ病リスク~メタ解析

 一人暮らしは、ライフスタイルの管理や健康状態に影響を及ぼす可能性のある最も一般的な心理社会的因子の1つである。これまで、多くの横断研究において一人暮らしがうつ病リスクを上昇させることが示唆されていたが、この関連を縦断研究にて検討した報告はほとんどなかった。中国・Ganzhou People's HospitalのDaolin Wu氏らは、一人暮らしとうつ病リスクとの関連についての縦断研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、一人暮らしの人ではそうでない人と比較し、うつ病リスクが高くなることが明らかとなった。今後これらの因果関係を確認するためにも、さらなる質の高い研究が求められる。Frontiers in Psychiatry誌2022年8月30日号の報告。 2022年5月までに公表された研究をPubMed、Embase、Cochraneデータベースより検索した。調整オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)は、逆分散法を用いたランダム効果モデルによりプールした。 主な結果は以下のとおり。・本メタ解析には、7件の研究(コホート研究:6件、ケースコントロール研究:1件)を含めた。・精神疾患の既往歴のない12万3,859人(女性の割合:65.3%)を分析した。・不均一性を最小限にするため、ランダム効果モデルを用いた。・全体として、プールされたデータより、一人暮らしの人はそうでない人と比較し、うつ病リスクが高いことが示された(OR:1.42、95%CI:1.19~1.70)。

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第130回 手放しに喜べない?新たな認知症治療薬の良好な臨床成績

長らく続くコロナ禍で医療系学会の取材はこの間ご無沙汰していたが、先日久しぶりに学会に参加した。たまたま開催地が実家から近いこともあり、両親と昼食をとる機会に恵まれた。以下、今回はかなり私事を交えることになるが、お付き合いいただきたい。私の場合、地元で開催された学会の取材に赴く際でも実家に宿泊することはほとんどない。あくまで仕事で来ているという線引きが必要だというのが表向きの理由だが、実のところはある種、鬱陶しいからという事情もある。すでに私が50代になっているとはいえ、80代半ばの両親にとっては子供なので、実家でパソコンを開いて仕事をしていても何かと話しかけられるし、食事の時間になると「○○があるから食え」だの、とくに食べたいものでもないのに勧められるのは正直言うならば厄介なことこの上ない。それでも両親を食事に誘ったのは、近年急速に弱ってきている父親が賑やかなところが好きな人だからだ。実家は地元の繁華街から離れた田園地帯にある。父親本人は常に外出したくて仕方ないのだが、すでに足腰も弱り、その牛歩に毎回付き添うのは母親がくたびれるため、週末ぐらいしか外出できない。加えて父親は軽度認知障害(MCI)の診断を受けている。それでも元が几帳面な性格だったことも手伝ってか、現時点でも買い物では小銭から計算して使いたがるので、まだましなほうかもしれない。とはいえ、緩やかに症状は進行しており、先日は銀行に出かけた際にATM前から母親に「使い方がわからなくなった」と連絡があったという。昼時、待ち合わせ場所の寿司屋近くの路上にいると、人混みの向こうから両親がゆっくりと歩いてきた。視界に入ってきた両親はなかなか近づいてこない。父親のゆっくりとした歩みに母親が合わせざるを得ないからである。それでも数年前から介護保険を使って理学療法士のお世話になってからはかなり改善している。一時は「カタツムリか?」と思うほどの歩みだったのだから。私は路上に立ったまま両親が近くに来るのを待った。ようやく顔が良く見える距離になって私を見つけた父親は、「破顔一笑」とも言える表情を見せた。私も微笑んで見せたが、内心はこの上なく複雑だった。幼少期の記憶の中の父親は口下手で喜怒哀楽に乏しく、私に笑顔を向けてきた記憶がほとんどない。常にむすっとしていて、時に激しく叱られることが私の記憶のデフォルトである。母親がよく話題に出すのは、私が2歳ぐらいの時の父親と私のやり取りだ。父親が私を大声で呼びつけた際に登場した私は頭に座布団を乗せていたという。叱られて叩かれると勘違いしたらしい。やや長くなってしまったが、なぜこうつらつらと書いてしまったかというと、今話題のエーザイ・バイオジェン共同開発のアルツハイマー病(AD)治療薬候補lecanemab(以下、レカネマブ)について、こうしたMCI患者を持つ家族と医療ジャーナリストという職業の狭間で揺れ動く自分がいるからだ。ご存じのようにADに関しては、脳内に蓄積するタンパク質「アミロイドβ(Aβ)」が神経細胞を死滅させるというAβ仮説に基づき、過去20年近く新薬開発が進められてきた。Aβ仮説は、Aβ前駆タンパク質から酵素のβセクレターゼ(BACE)の働きで、Aβの一量体(モノマー)が作り出され、そこからモノマーが重合した重合体(オリゴマー)、高分子オリゴマーである可溶性プロトフィブリル、そこから形成されたアミロイド線維である不溶性フィブリルへと進行し、最終的にアミロイド線維から形成されるアミロイドプラークが神経細胞を死滅させADに至るというのが大まかな理論だ。これまでのAβ仮説に基づく新薬開発では、BACE阻害薬と脳内の神経細胞に沈着したAβを排除する抗Aβ抗体が2つの大きな流れだったが、ほとんどが事実上失敗している。唯一飛び抜けていたとも言えるのが、同じエーザイとバイオジェンが共同開発していた抗Aβ抗体のアデュカヌマブ。Aβの生成過程の中でもフィブリルに結合する抗体で第II相試験での成績が良好だったことから期待されたが、2019年3月に独立データモニタリング委員会が主要評価項目を達成できる見通しがないと勧告した結果、進行中の2件の第III相試験が中止された。しかし、勧告後に入手できた症例データを加えて再解析した結果、うち1件では、高用量群でプラセボ群との比較で、臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB:Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)の有意な低下が認められた。このためバイオジェンは一転して米食品医薬品局(FDA)に承認を申請。FDA諮問委員会の評決では、ほぼ否定的な評価を下されていたものの、社会的要請の高さなどを理由に新たな無作為化比較試験の追加実施とそのデータ提出を求める条件付き承認となった。もっともこの承認には専門家の中でも批判が多く、米国ではメディケア・メディケイド サービスセンター(CMS)がアデュカヌマブの保険償還対象を特定の臨床試験参加者のみに限定。さらにヨーロッパと日本では現状の臨床試験結果では効果が十分確認されていないとして承認見送りとなった。まさにジェットコースターのようなアップダウンを繰り返して、ほぼ振出しに戻ったのがAD治療薬開発の現状である。もちろんレカネマブの開発が続いていたことは承知していた。しかし、前述のような開発を巡るドタバタを知っている身としては、必死に開発を行っていた人たちには申し訳ないが、期待はせずに横目で見ていたというのが実状である。そんな最中、エーザイがレカネマブの第III相試験「Clarity AD」の主要評価項目で有意差を認め、記者発表するとのニュースリリースを9月28日早朝に発表した。今回はあの抗寄生虫薬イベルメクチンの時と違って、すでに結果がポジティブだったことはわかっている。要はどの程度のポジティブだったかがカギだ。当日、オンラインで記者会見に参加した私はディスプレイに釘付けになった。ちなみにClarity AD の登録症例は1,795例。脳内Aβ病理が確認され、スクリーニングおよびベースラインの認知症ミニメンタルステート検査(MMSE)が 22~30点、論理的記憶検査(WMS-IV LM II:Wechsler Memory Scale-IV logical memory II)の点数が年齢調整済み平均値を少なくとも1標準偏差を下回り、エピソード記憶障害が客観的に示されることが認められるADによるMCIと軽度ADが対象だ。これを2群に分け、レカネマブ10mg/kgの点滴静注を2週に1回とプラセボ点滴静注を2週に1回行い、主要評価項目は、ベースラインから投与18ヵ月時点でのCDR-SBの変化を比較したものだ。アデュカヌマブとレカネマブの最大の違いは、レカネマブはフィブリル形成直前の可溶性プロトフィブリルが標的となっていることに加え、アデュカヌマブでは漸増投与が必要だったのに対し、レカネマブは初回から有効用量の投与が可能なことである。公表された結果ではプラセボ比でのCDR-SB変化量で見た悪化抑制率は27%、詳細は発表されなかったが副次評価項目すべてでプラセボに対して統計学的有意差が認められたという。また、抗Aβ抗体では付き物の副作用がアミロイド関連画像異常(ARIA)だが、その発現率はARIAのうち脳浮腫をさすARIA-Eが12.5%(症候性2.8%)、脳微小出血をさすARIA-Hが17.0%(同0.7%)。アデュカヌマブが高用量群でプラセボ比でのCDR-SB変化量で見た悪化抑制率は23%(低用量群では14%)で、ARIA発現率がレカネマブの約3倍であることを考えれば、確かに成績は良いと言える。しかも、あくまでエーザイ側の説明に依拠するが、プラセボと比較したCDR-SB変化量の差は治験開始6ヵ月後に発現しているというのだ。私が驚いたのはむしろこの効果発現の早さだ。さてエーザイではこの結果をもって日米欧で2022年度中のフル申請、2023年度中のフル承認を目指すという。「フル」というのはアデュカヌマブの時のような条件付き承認ではないということである。ちなみに米国では、すでにClarity AD以外の試験結果で迅速承認制度の指定を受け、その結果は来年1月上旬までに明らかになる予定だが、この試験結果を追加提出することで、アデュカヌマブのような「失敗」はしないという意味である。CMSはアデュカヌマブの保険償還制限に当たって、同薬のような“条件付きの迅速承認の場合”とこちらも条件を付けている。では、このまま承認に至った際の課題は…やはり投与対象と薬価の問題である。米国でアデュカヌマブが承認された際の年間薬剤費は約600万円となった。前述のCMSの付けた条件が制限となったため、現実にはほとんど売上と言えるほどの数字にはなっていない。抗体医薬品である以上、どんなに頑張ってもレカネマブの年間薬剤費が100万円以下というのは世界のどの国でも考えにくい。たとえば仮に年間100万円としても、現在日本には推定約700万人の認知症患者がいる。日本国内でこのうちの1%強に当たる10万人が処方を受けたとすると、年間薬剤費は1,000億円となる。世界最速とも言える少子高齢化が進み、社会保障費の増大に危機感が募るばかりの昨今の状況を考えれば、簡単に容認できる話ではない。これまでの経緯を考えれば、承認されたあかつきに厚生労働省は最適使用推進ガイドラインなどでかなり投与対象を絞り込んでくるだろう。それに仮に成功しても、その先が相当厄介である。まず、投与開始後にどのような状態を有効・無効と判定するのか。かつて話題になった免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(商品名:オプジーボ)の場合ならば、画像診断での腫瘍縮小効果という指標もあった。では、レカネマブでは1回数十万円もするアミロイドPETでAβ量を定量化するのか? それともある程度ばらつきもあるMMSEで判定するのか?有効基準が決まったとして、投与はいつまで続けるのか? そもそもADは高齢者の病気である。期待余命は長くはなく、悪化抑制効果が最大限得られたとしても患者本人の社会的・経済的生産性の向上が見込めるかと言えば、そこには「?」がつく。とはいえ、MCIの父親を持つ自分にとってみれば、たとえ3割弱の遅延抑制効果とはいえ、老老介護となっている母親の肉体的・精神的負担を考えれば、使える物なら使ってみたいという気持ちもある。約束した寿司屋でうまそうに漬け丼をほおばる父親を見ながら、そんなことばかりを考えていた。寿司屋を出て両親と一緒に牛歩で駅に向かった。とくに何時の新幹線に乗るかは決めていなかった。アーケード街を歩きながら、途中でベンチが見えると父親はそこに腰を掛けて休むと言い出した。母親は私に気を遣って、「私たちはゆっくり行くから、あなたは先に帰りなさい」と促した。私は父親に「またね?」と言ってその場を後にした。父親はまた破顔一笑。そのまま後ろを振り返らずにまっすぐ駅へと向かった。医療経済性、社会保障費の増大、患者家族としての思いがぐるぐる頭を巡りながら、今日この時点でも結論は出ていない。たぶんこの先も容易に結論は出ないだろう。正直、メディアの側にいるというだけで私たちは他人から忌み嫌われることは少なくない。とはいえ、それでも自分で自分の仕事を嫌だと思ったことは、こと私自身に関しては数えられるほど少ない。ただ、この日ばかりは「何も知ならきゃ良かった。本当に因果な商売だな」と自分の仕事が嫌になった数少ない日として、生涯忘れられない日になりそうである。

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片頭痛患者のスマホ使用が痛みの強さや治療に及ぼす影響~多施設横断比較研究

 スマートフォンユーザーは、世界中で飛躍的に増加している。スマートフォン使用中または使用後にみられる症状として、頭痛、睡眠障害、物忘れ、めまい、その他の疾患などが挙げられる。また、片頭痛は身体的衰弱を伴う疾患であり、身体障害の原因として世界で2番目に多い疾患といわれている。パキスタン・Jinnah Medical and Dental CollegeのMehwish Butt氏らは、スマートフォンの使い過ぎが片頭痛患者の障害レベル、痛みの強さ、睡眠の質、全体的なQOLにどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、スマートフォンの使い過ぎは、片頭痛患者の痛みを増強させ、薬物治療効果を減弱させる可能性が確認された。このことから著者らは、片頭痛患者は症状悪化を避けるために、スマートフォンの使用を制御することが推奨されるとしている。Brain and Behavior誌オンライン版2022年9月20日号の報告。 スマートフォン依存傾向尺度(Mobile Phone Problematic Use Scale)を用いて、片頭痛患者をスマートフォン使用率の高い群(HMPUG)と低い群(LMPUG)に分類した。各尺度等を用いて、両群における患者の障害レベル(片頭痛評価尺度[MIDAS])、痛みの強さ(VAS)、睡眠の質(ピッツバーグ睡眠質問票[PSQI])、日中の眠気(エプワース眠気尺度)、QOL(24時間片頭痛QOLアンケート)の評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象者数は400例(女性:263例[65.8%]、男性:137例[34.3%])。・回答者の平均年齢は、27.59±9.79歳であった。・家族の平均人数は、5.98±2.3251人であった。・HMPUGは、LMPUGと比較し、痛みの強さ、睡眠の質の低下、薬物治療効果の減弱が認められた(p<0.05)。・しかし、LMPUGでは、片頭痛の持続時間および治療薬の投与量の増加が報告された(p<0.05)。

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がん治療による放射線関連心疾患、弁膜症を来しやすい患者の特徴/日本腫瘍循環器学会

 9月17、18日に開催された第5回日本腫瘍循環器学会にて、塩山 渉氏(滋賀医科大学循環器内科)が「放射線治療による冠動脈疾患、弁膜症」と題し、放射線治療後に生じる特異的な弁膜症とその治療での推奨事項について講演した(本シンポジウムは日本放射線腫瘍学会との共催企画)。 がんの放射線治療による放射線関連心疾患(RIHD:radiation-induced heart disease)の頻度は医学の進歩により減少傾向にあるが、それでもなお、食道がんや肺がん、縦隔腫瘍でのRIHD発症には注意を要する。2013年にNEJM誌に掲載された論文1)によると、照射から20年以上経過してもなお、主要心血管イベントリスクが8.2%(95%信頼区間:0.4~26.6)も残っていたという衝撃的な報告がなされた。それ以来、RIHDは注目されるようになり、その1つに弁膜症が存在する。放射線治療時の心臓への影響予測にAMC これら放射線治療時の心臓の予後予測のために見るべき点として、「上記のような弁膜症を発症する症例にはAorto-mitral curtain(AMC、大動脈と僧帽弁前尖の接合部)に進行性の弁の肥厚や石灰化が進行しやすいという特徴がある」と同氏は述べ、「肥厚をきたしている場合は予後が悪いとの報告2)もあることから、放射線治療時の診断マーカーになるのではないかとも言われている」とコメントした。また、心臓手術による死亡率を予測する方法として用いられるEuroSCORE(European System for Cardiac Operative Risk Evaluation)は本来であればスコアが高ければ予後が悪いと判定されるが、「AMCが肥厚している症例ではスコアにかかわらず予後不良である」と汎用される指標から逸脱してしまう点についても触れた。放射線治療における心毒性に対するESCガイドラインでの推奨 先日行われた欧州心臓病学会(ESC)2022学術集会において、初となる腫瘍循環器ガイドラインが発刊された。そこでは放射線治療における心毒性に関してもいくつか推奨事項が触れられており、がん治療患者の急性冠症候群(ASC)に対するPCI施行の可否についてはその1つである。ガイドラインによれば、「STEMIまたは高リスクのNSTE-ACSを呈し、予後6ヵ月以上のがん患者には侵襲的な治療戦略が推奨される(クラスI、レベルB)」とされ、予後6ヵ月未満の方については薬物療法を検討することが記載されているが、「がん治療による血小板減少を伴う患者に対しては、抗血小板薬の使用を慎重にならざるを得ないため、“アスピリンやP2Y12阻害薬の使用は推奨されない”(クラスIII、レベルC)」と薬物療法介入時の注意点を説明した。心臓に直接影響のある放射線量やドキソルビシン投与有無で分類 次に、がんサバイバーの外科治療による予後はどうか。外科的弁置換術(SAVR)において、放射線治療を受けた重度の大動脈弁狭窄症患者では放射線治療歴のない患者と比較して長期死亡率が有意に高いことが明らかになっているため、2020年改訂版『弁膜症治療のガイドライン』(p.69)でも、TAVIを考慮する因子として“胸部への放射線治療の既往 (縦隔内組織の癒着)”と明記されている。さらに、胸部放射線照射後の予後を調査した論文3)によると、胸部放射線照射群におけるTAVIは、対照群と比較して30日死亡率、安全性、有効性が同等であるものの、1年死亡率や慢性心不全の増悪が高いことが示された。ただし、両治療法の転帰について比較した報告4)を踏まえ、TAVI群では完全房室ブロックの発症やペースメーカーの挿入率が多かったことを念頭に置いておく必要がある。 そのほか、放射線治療の平均心臓線量と関連する心毒性を確認する推奨項目としてESCガイドラインに掲載されている「ベースラインCVリスク評価とSCORE2またはSCORE-OPによる10年間の致死的および非致死的CVDリスクの推定が推奨される(クラスI、レベルB)」「心臓を含む領域への放射線治療前に、CVDの既往のある患者にはベースライン心エコー検査を考慮するべきである(クラスIIa、レベルC)」「重症弁膜症を有するがんサバイバーの手術リスクを協議し、その判定を行うために、多職種チームによるアプローチが推奨される(クラスI、レベルC)」「放射線による症候性重度大動脈弁狭窄症で、手術リスクが中程度の患者にTAVI手術を行う(クラスIIa、レベルB)」を紹介。最後に同氏は「MHD(Mean heart dose)による評価が大切であり、心臓に直接影響のある放射線量やドキソルビシン投与有無などで低リスク~超ハイリスクの4つに分類する点などもESCガイドラインに記載されているので参考にして欲しい」と締めくくった。

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1型DMの血糖管理、間歇スキャン式持続血糖測定vs.SMBG/NEJM

 糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が高い1型糖尿病患者において、高血糖/低血糖のアラームを設定できる間歇スキャン式持続血糖測定器(isCGM)の使用は、フィンガースティック(指先穿刺)血糖測定による血糖モニタリングと比較して、HbA1c値の有意な低下に結び付くことを、英国・Manchester Academic Health Science CentreのLalantha Leelarathna氏らが同国で実施した多施設共同無作為化非盲検比較試験「FLASH-UK試験」の結果、報告した。持続血糖モニタリングシステム(間歇スキャン式またはリアルタイム)の開発により、フィンガースティック検査なしでの血糖モニタリングが可能となったが、HbA1c値が高い1型糖尿病患者において、高血糖/低血糖のアラームを設定できるisCGMの有益性は不明であった。NEJM誌オンライン版2022年10月5日号掲載の報告。アラーム機能付きisCGM vs.指先穿刺血糖測定、HbA1c値の改善を比較 研究グループは、16歳以上、罹患期間1年以上で、持続皮下インスリン注入療法またはインスリン頻回注射を行ってもHbA1c値が7.5~11.0%の1型糖尿病患者156例を、isCGM群(78例)とフィンガースティック検査による自己血糖モニタリング(対照)群(78例)に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。isCGMは、FreeStyle Libre 2(Abbott Diabetes Care製)を用いた。 主要評価項目は、無作為化後24週時のHbA1c値とし、intention-to-treat解析を行った。主要な副次評価項目は、センサーデータ、患者報告アウトカム、安全性などである。isCGM使用により、低血糖が減少し安全にHbA1c値が改善 156例の患者背景は、平均(±SD)年齢44±15歳、平均糖尿病罹患期間21±13年、HbA1c値8.6±0.8%、女性44%であった。 HbA1c値は、isCGM群でベースラインの平均8.7±0.9%から24週時7.9±0.8%に、対照群で8.5±0.8%から8.3±0.9%にそれぞれ低下した(補正後平均群間差:-0.5ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.7~-0.3、p<0.001)。 血糖値が目標範囲内にある時間(1日当たり)は、対照群と比較してisCGM群において9.0ポイント(95%CI:4.7~13.3)高く、130分(95%CI:68~192)延長した。また、低血糖(血糖値<70mg/dL)の時間(1日当たり)は、対照群と比較してisCGM群で3.0ポイント(95%CI:1.4~4.5)低く、43分(95%CI:20~65)短かった。 重症低血糖エピソードは対照群2例で報告された。また、isCGM群ではセンサーへの皮膚反応が1例に認められた。 なお、著者は研究の限界として、非盲検試験のため対照群のうちisCGMに移行した後に24週時のHbA1c値を測定した患者が5例いたこと、ほとんどの患者が白人で結果の一般化に限りがあること、アラームの設定と使用に関するデータは提供されていないため観察された有益性がセンサーのみによるものか、使用したisCGMのアラームによるものかは確認できないことなどを挙げている。

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新型コロナワクチン未接種者の特徴とは?

 世界中で新型コロナワクチンの接種やブースター接種が進められる中、まだ1度もワクチンを接種していないコロナワクチン未接種者が存在する。これらのコロナワクチン未接種者の人々には共通の特性があるのだろうか。スコットランドにおいてコロナワクチン未接種者の特性を調べたPublic Health Scotland所属のSafraj Shahul Hameed氏らによる研究結果がLancet誌2022年9月24日号 CORRESPONDENCEに掲載された。コロナワクチン未接種者として49万4,288例を特定 2022年8月10日までに、スコットランドに住む約440万人の成人のうち、349万7,208人がCOVID-19ワクチンの3回接種を完了している。Hameed氏らは、2019年1月1日以降にスコットランドの国民保健サービス(NHS)と少なくとも1回のやりとりがあった、ワクチン接種記録がない人をコロナワクチン未接種者と定義した。 ワクチン接種対象者として記録された471万2,810例のうち、84万2,029例(17.9%)に接種の記録がなかった。このうち8万6,489例(10.3%)に免疫性の禁忌、接種の同意が得られない、体調不良、患者による接種拒否など、コロナワクチン未接種の理由が記録されていた。記録されたコロナワクチン未接種の理由の約5分の1が免疫性の禁忌だった。 研究所の記録から、パンデミック開始以降に少なくとも1回COVID-19のPCR検査を受け、かつ接種記録のない25万4,049例が確認された。病院以外の処方記録から2019年1月1日以降に何らかの薬を処方された、接種記録のない41万6,499例を特定した。28万5,647例のコロナワクチン未接種者が予定外の医療機関受診(NHS 24、家庭医の時間外診察、スコットランド救急サービスのいずれか1つ以上)をしており、13万3,569例のコロナワクチン未接種者が少なくとも1回の入院を経験していた。上記のデータのいずれにもワクチン接種の記録がない26万8,740例が確認された。 スコットランドでCOVID-19ワクチン接種の記録がない57万3,289例の成人が、2019年1月1日以降にNHSと少なくとも1回接触していることが確認された。ワクチン接種プログラムの開始以降に死亡した人、およびコロナワクチン未接種の理由として免疫性の禁忌が記録されている人を除外し、2022年8月10日時点で、COVID-19のワクチン接種の記録がない49万4,288例をコロナワクチン未接種者として特定した。コロナワクチン未接種者の5人に1人に中枢神経系に関連する疾患の薬 このコロナワクチン未接種者コホートは、男女比がほぼ同じ、年齢分布も男女ともほぼ同じで、平均年齢は42.4歳であった。多くは都市部に住んでおり、29.0%がScottish Index of Multiple Deprivation(雇用や所得など7領域の総合指標)のスコアが最も低い地域に居住していた(接種者は18.7%)。 家庭医の記録によると、コロナワクチン未接種者のうち29万8,866/49万4,288例(60.5%)が併存疾患を有していない(接種者は198万8,751/384万7789例[51.7%])一方で、5万5,122/49万4,288例(11.2%)が3つ以上の併存疾患を持っていた(接種者は48万1,019/384万7,789例[12.5%])。コロナワクチン未接種者で最も多く報告された併存疾患は、慢性呼吸器疾患(15.7%)、うつ病(12.8%)、高血圧症(10.6%)であった。 コロナワクチン未接種者の5人に1人(10万3,505例[20.9%])が中枢神経系に関連する疾患の薬を処方されており(接種者は65万5,531例[17.0%])、さらにうち3分の1以上(4万179/10万3,505例[38.8%])が抗うつ薬を処方されていた。 多変量ロジスティック回帰分析により、ワクチン接種動向を予測する可能性が最も高い因子を同定した。男性、貧困度が高い、大都市圏在住、中枢神経系疾患の薬を処方されている、3つ以上の併存疾患があることはコロナワクチン未接種と最も関連していたが、いくつかの併存疾患(高血圧、糖尿病、慢性呼吸器疾患など)を持つ人は、ワクチン接種を受ける可能性が高かった。 英国の過去のデータでは、年齢の上昇と併存疾患はCOVID-19死亡率を上げる最も広く認識されているリスク要因の一つだが、併存疾患を多く持つ人々は、コロナワクチン未接種のリスクが高いままであった。 著者らは「本分析により、人口規模の過大推定の可能性を考慮しても、スコットランドの成人人口のかなりの割合がコロナワクチン未接種であることが明らかになった。また、コロナワクチン未接種状態の予測因子も明らかになり、国のワクチン接種戦略の改訂に役立てることができる」としている。

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統合失調症患者におけるMetS発症の3年リスクと予測因子~FACE-SZコホート研究

 メタボリックシンドローム(MetS)は欧米諸国において主要な健康問題であり、なかでも統合失調症患者は、ライフスタイル、精神疾患、治療因子の観点から、とくに脆弱な集団であると考えられる。しかし、予防の指針となるプロスペクティブデータは不十分である。フランス・Universite Paris-Est CreteilのO. Godin氏らは、統合失調症におけるMetSの発症率およびその予測因子を特定するため検討を行い、統合失調症患者におけるMetSの予防および研究をより優先する必要があると報告している。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2022年9月17日号の報告。 フランス全国レベルの専門センター10施設より対象を募集し、3年間のフォローアップ調査を行った。MetSの定義は、国際糖尿病連合の基準に従った。消耗バイアスの補正には、逆確率重み付け法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・3年間のフォローアップ調査を実施した統合失調症患者512例のうち、代謝障害が認められた患者は77.9%であった。・ベースライン時にMetSであった27.5%の患者は、分析から除外した。・分析対象患者371例(平均年齢:31.2±9.1歳、平均罹病期間:10.0±7.6年、男性の割合:73.6%[273例])における3年間のMetS発症率は20.8%であった。・3年間のMetS発症率は、喫煙者で23.6%、ベースライン時に抗うつ薬を処方されていた患者で29.4%、ベースライン時に2つの代謝障害が認められた患者で42.0%であり、分析対象者全体より上昇した。・多変量解析では、MetS発症の独立した予測因子は、喫煙(調整オッズ比[aOR]:3.82、95%信頼区間[CI]:1.27~11.45、p=0.016)および抗うつ薬服用(aOR:3.50、95%CI:1.26~9.70、p=0.0158)であることが確認された。・抗うつ薬処方は、とくに脂質障害の増加を予測した。また、パロキセチンは、MetS発症リスクとの最も強い関連が認められた。

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日本の消化器外科の手術アウトカム、男女医師で差は?/BMJ

 日本の消化器外科医による手術アウトカムの補正後リスク差について、執刀医の男女差は認められない。日本バプテスト病院外科副部長・京都大学大学院医学研究科の大越 香江氏らが、日本の手術症例データベースNational Clinical Database(NCD)等を基に後ろ向きコホート試験を行い、幽門側胃切除術、胃全摘術、直腸低位前方切除術の短期アウトカムを調べた結果を報告した。女性消化器外科医は男性消化器外科医と比べて、医籍登録後の年数が短く、リスクがより高い患者を引き受け、腹腔鏡手術の回数は少ないという不利な条件ながらも、手術死亡率やClavien-Dindo分類≧3合併症率について有意差はなかったという。結果を踏まえて著者は「日本では、女性医師が手術トレーニングを受けるために、より多くの機会が保証されている」と述べ、「女性外科医のためのより適切で効果的な手術トレーニングを整備すれば、手術アウトカムはさらに改善する可能性がある」とまとめている。BMJ誌2022年9月28日号掲載の報告。幽門側胃切除術、胃全摘術、直腸低位前方切除術について検証 研究グループは、NCD(2013~17年、日本の手術データの95%以上が包含されている)と日本消化器外科学会のデータを基に後ろ向きコホート試験を行い、幽門側胃切除術、胃全摘術、直腸低位前方切除術について、短期アウトカムと執刀医男女差の有無を検証した。 主要アウトカムは、手術死亡、手術死亡・術後合併症、膵液漏(幽門側胃切除術、胃全摘術)、縫合不全(直腸低位前方切除術)だった。手術関連死亡および周術期合併症と執刀医性差の関連について、患者、執刀医、病院特性を補正し多変量ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。死亡・Grade3以上の合併症リスクは男女で同等 解析に含まれたのは、14万9,193件の幽門側胃切除術(男性執刀医担当14万971件[94.5%]、女性執刀医担当8,222件[5.5%])、6万3,417件の胃全摘術(5万9,915件[94.5%]、3,502件[5.5%])、8万1,593件の直腸低位前方切除術(7万7,864件[95.4%]、3,729件[4.6%])だった。 平均すると、女性外科医は男性外科医と比べて医籍登録後の年数が短く、リスク高い患者を執刀し、腹腔鏡手術の回数が少なかった。 一方で、手術死亡の補正後リスクについて執刀医の男女間で有意差はなく、男性執刀医に対する女性執刀医の補正後オッズ比は、幽門側胃切除術について0.98(95%信頼区間[CI]:0.74~1.29)、胃全摘術が0.83(0.57~1.19)、直腸低位前方切除術が0.56(0.30~1.05)だった。 また、Clavien-Dindo分類でGrade3以上の合併症と手術死亡の統合アウトカムについても、執刀医の男女間で有意差はなく、補正後オッズ比は、幽門側胃切除術が1.03(95%CI:0.93~1.14)、胃全摘術が0.92(0.81~1.05)、直腸低位前方切除術が1.02(0.91~1.15)だった。膵液漏(補正後オッズ比は幽門側胃切除術が1.16[95%CI:0.97~1.38]、胃全摘術1.02[0.84~1.23])、および直腸低位前方切除術の縫合不全(1.04[0.92~1.18])についても、執刀医の男女間で有意差はなかった。

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その血栓症、CATの可能性は?【知って得する!?医療略語】第21回

第21回 その血栓症、CATの可能性は?がんと血栓症は関連があるのですか?そうなのです、がんと血栓症は密接に関連していて、CATとも呼ばれます。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】CAT【日本語】がん関連血栓症【英字】cancer associated thrombosis【分野】腫瘍関連【診療科】脳神経、循環器【関連】―実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。近年、がん関連血栓症(CAT:cancer associated thrombosis)という言葉を散見するようになりました。CATはがん、もしくはがん治療に関連した血栓症を幅広く表現した概念です。また、がん診療における血栓症の合併リスクを注意喚起するとともに、あらゆる血栓症を治療するにあたり、その血栓形成の背景に“悪性疾患が存在する可能性を念頭に置くべき”であることを認識させてくれる概念だと考えます。脳卒中患者の診療が多かった筆者にとって、最も身近なCATはTrousseau(トルーソー)症候群でした。トルーソー症候群はCATの概念に包含されます。脳塞栓症の多くは、心原性脳塞栓症ですが、一部の塞栓症はトルーソー症候群による脳梗塞で、悪性腫瘍による血栓形成傾向によるものでした。トルーソー症候群の多くが抗血栓療法に抵抗性で短期間に脳塞栓症再発を経験しました。がん治療を受ける方は、脳梗塞を発症しやすく、がん治療中に脳卒中を発症した4人に1人はトルーソー症候群とも言われています。赤塚氏の報告によれば、トルーソー症候群の27.5%は脳梗塞先行群であったことが示されています。このため、「血液凝固能亢進を伴った多発脳梗塞では、悪性腫瘍を念頭に精査を進めることが重要」と述べてられています。CATやトルーソー症候群の疾患概念を念頭に置いていない限り、悪性疾患の精査がなされていない患者に対し、その存在を見過ごしたまま脳梗塞のみを治療するようなことが起きてしまいます。心房細動のない多発性脳梗塞や原因不明のDダイマー上昇を見かけた時には、頭部以下の画像検査も積極的に検討する必要があります。脳領域に限らず、体のどこかで原因不詳の血栓症が見られたら、悪性疾患の併存を疑い、検索することを心がけたいですね。1)赤塚 和寛ほか:当院でのTrousseau症候群40例の臨床的特徴2)野川 茂. 血栓止血誌. 2016;27:18-28.3)岡 亨. 心臓. 2020;52:1337-1341.

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乾癬患者へのアプレミラスト、血管炎症、心臓代謝との関連は?

 海外ではすでに広く使用されている経口ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬アプレミラストについて、血管炎症および心臓代謝機能との関連を評価した米国・ペンシルベニア大学医学大学院のJoel M. Gelfand氏らによる第IV相非盲検非無作為化試験の結果が示された。 乾癬は代謝疾患および心血管疾患と関連する炎症性の疾患であり、アプレミラストによる治療では体重減少を引き起こす可能性が知られている。今回の検討で、大動脈血管炎症との関連性は中立的であること、心血管代謝バイオマーカーのサブセットと可変ではあるが概して有益な関連性があること、内臓脂肪・皮下脂肪の減少と関連することが示され、結果を踏まえて著者は、「アプレミラストは心血管代謝疾患および乾癬を有する患者に対して、全体としてベネフィットをもたらす可能性があることが示唆された」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年9月21日号掲載の報告。 研究グループは、アプレミラストと大動脈血管炎症との関連性について、18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)PET/CT、心臓代謝マーカー(16週時主要アウトカム)、および腹部脂肪組成による評価を、単群非盲検非無作為化介入試験にて行った。試験は米国内7ヵ所の皮膚科部門で、期限を知らされていない研究者によって画像診断と検査結果の測定が行われた。被験者はアプレミラスト30mgを1日2回投与された。 主要評価項目は、ベースラインと比較した16週時点および52週時点で評価した大動脈血管炎症(FDG-PET/CTで測定)、68の心臓代謝バイオマーカー、および腹部脂肪組成(CTで測定)であった。 主な結果は以下のとおり。・画像診断および検査は、2017年4月11日~2021年8月17日に行われ、70例の患者(平均[SD]年齢47.5[14.6]歳、男性54例[77.1%]、黒人4例[5.7%]、白人58例[82.9%])が評価を受けた。・16週時点では、大動脈血管炎症についてベースラインとの変化は認められなかった(target to background ratio[TBR]:-0.02、95%信頼区間[CI]:-0.08~0.05、p=0.61)。なお52週時点においても変化が認められなかった(TBR:-0.07、95%CI:-0.15~0.01、p=0.09)。・16週時点で、IL-1β、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェチュインA、および分岐鎖アミノ酸の潜在的に有益な減少が観察された。・52週時点ではベースラインと比べて、フェリチン、β-ヒドロキシ酪酸、アセトン、およびケトン体の減少が観察され、アポリポ蛋白A-1は増加したが、コレステロール流出は減少した。・皮下脂肪と内臓脂肪は16週時点で約5~6%減少し、52週時点でも維持されていた。

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心房細動の検出率、AIアルゴリズムガイド導入で改善/Lancet

 未知の心房細動の検出において、着用型の連続自由行動下心拍モニタを用いた人工知能(AI)アルゴリズムガイド下標的スクリーニング法は、検出率を向上させ、スクリーニングの有効性を改善する可能性があることが、米国・メイヨークリニックのPeter A. Noseworthy氏らが実施した「BEAGLE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年9月27日号で報告された。心房細動検出能を評価する実践的な前向き介入試験 BEAGLE試験は、これまで認識されていなかった心房細動を特定するための、AIアルゴリズムガイド下標的スクリーニング法の有効性の評価を目的とする実践的な非無作為化介入試験であり、2020年11月~2021年11月の期間に参加者の登録が行われた(Mayo Clinic Robert D and Patricia E Kern Center for the Science of Health Care Deliveryの助成を受けた)。 脳卒中のリスク因子を有するが、心房細動の存在は知られておらず、日常臨床で心電図(ECG)による検査を受けた患者が、前向きに募集された。参加者は、最長30日間、連続自由行動下心拍モニタを着用し、データは携帯電話を介してほぼ即時に送信された。ECGにAIアルゴリズムが適用され、患者は高リスク群と低リスク群に分けられた。 主要アウトカムは、新たに診断された心房細動であった。2次解析では、適格基準を満たしたが試験に登録されなかった患者を実臨床の対照(非介入の通常治療群)とし、傾向スコアマッチング法を用いて、試験参加者(介入群)と対照を1対1の割合でマッチさせた。心房細動負担も、高リスク群で高い 米国の40州から参加した1,003例が試験を完遂した。平均年齢は74.0(SD 8.8)歳、383例(38.2%)が女性で、ベースラインの平均CHA2DS2-VAScスコアは3.6(SD 1.2)点だった。 平均22.3日の連続心臓モニタリングにより、30秒以上持続する心房細動が低リスク群の370例中6例(1.6%)、高リスク群の633例中48例(7.6%)で検出され、高リスク群で検出率が有意に高かった(オッズ比[OR]:4.98、95%信頼区間[CI]:2.11~11.75、p=0.0002)。 同様のパターンが、6分以上持続する心房細動(低リスク群1.6% vs.高リスク群6.3%、OR:4.09、95%CI:1.72~9.75、p=0.0015)および24時間以上持続する心房細動(0.3% vs.1.6%、5.92、0.76~46.45、p=0.091)で観察された。また、心房細動負担(心房細動が記録された時間の割合)も、高リスク群で高かった(4.97% vs.20.32%、p=0.016)。 追跡期間中央値9.9ヵ月の時点で、通常治療群(1,003例)と比較して、AIガイド下スクリーニング群(1,003例)は心房細動の検出率が有意に優れ(通常治療群2.9% vs.AIガイド下スクリーニング群7.8%、ハザード比[HR]:2.75、95%CI:1.81~4.17、p<0.0001)、高リスク群では有意な差が認められたが(3.6% vs.10.6%、HR:2.85、95%CI:1.83~4.42、p<0.0001)、低リスク群では有意差はなかった(1.1% vs.2.6%、2.80、0.76~10.30、p=0.12)。 著者は、「これらの知見は、この集団における心房細動のリスクに関して、従来の臨床的なリスク因子に加えて、AIアルゴリズムはさらなる層別化が可能であることを示した」とし、「この方法を用いた検査プログラムは、(1)日常診療の一環として行われる既存のECGへのAIの適用、(2)既存の電子健康記録やワークフローを使用した臨床的特徴の提示や患者との意思疎通における付加的な活用、(3)最も恩恵を受ける可能性がある患者の遠隔モニタリング、の3つの場面の手段として効率的かつ大規模な実施が可能と考えられる」と指摘している。

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第3世代植込型LVAD(HeartMate 3)はポンプ血栓症の合併頻度が極めて少なく第2世代植込型LVAD(HeartMate II)に比較して5年生存率も良好である。(解説:許俊鋭 氏)

 第3世代植込型LVADのHeartMate 3(完全磁気浮上遠心ポンプ、HM 3)と第2世代のHeartMate II(軸流ポンプ、HM II)とのRCT比較試験(MOMENTUM 3)の2年の治療成績が2019年に報告された1)。結果、(1)ポンプ交換の必要度が低い(2.7% vs.14.3%)、(2)後遺症のある脳卒中や再手術(ポンプ摘出またはポンプ交換)を伴わない2年生存の複合結果(Composit Outcome)においてHM 3群の優位性(76.9% vs.64.8%)が示された。 本論文では、MOMENTUM 3の延長研究として5年の治療成績が報告された。2年終了の時点でLVAD治療が継続されていたHM 3群289症例とHM II群247症例のうち、477例(HM 3:258例、HM II:219例)を対象として5年まで経過観察された。5年終了時の複合結果、すなわち(1)心臓移植、(2)心機能回復によるLVAD離脱、および(3)後遺症のある脳卒中や再手術を伴わない5年生存率においてHM 3群の優位性(54.0% vs.29.7%)が示され、MOMENTUM 3全体の5年生存率もHM 3群の優位性(58.4% vs.43.7%)が示された。合併症の中の重大合併症率(events/patient-years)は、脳卒中(0.050 vs.0.136)、出血(0.430 vs.0.765)、ポンプ血栓(0.010 vs.0.108)でHM 3群が有意に少なかった。完全磁気浮上遠心ポンプであるHM 3は当初からポンプ血栓症の合併頻度が少ないことは予測されており、複合結果は2年の成績も5年の成績もこの傾向は変わっていない。ポンプ血栓に関連した合併症は確実に治療成績を低下させ患者のQOLを低下させる。とくに、長期の良好なLVAD補助が必要とされるDT(destination therapy)において重大合併症が少ないことは重要である。また、重大合併症の減少は再入院率を下げ、植込型LVAD治療の費用対効果を改善する。下図に2022年5月27日までの日本のHM IIおよびHM 3の治療成績を示す。現時点でHM 3群の成績は2年生存率(94.1%)までしか出ていないがHM II群(92.8%)よりやや良好な傾向がみられる。一般的に欧米より良好な植込型LVAD治療成績が達成されている日本の状況を鑑みれば、日本のHM 3の5年生存率はMOMENTUM 3で示された治療成績を上回ることが期待される。また、MOMENTUM 3を含め第3世代磁気浮上植込型LVADが世界で素晴らしい治療成績を上げていることから、日本が開発した磁気浮上植込型LVADであるDuraHeart(テルモ社)の臨床開発を推進した一人として、筆者は次世代植込型LVADとして小型化されたDuraHeart IIが製品化に至らなかったことは残念でならない。

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英語で「吸入」は?【1分★医療英語】第49回

第49回 英語で「吸入」は?How often do I take this inhaler?(この吸入器はどれくらいの頻度で使うのですか?)Inhale 2 puffs once a day.(1日に1回、2吸入してください)《例文1》One bottle of inhaler contains 200 puffs.(吸入器1ボトルで200回分の吸入ができます)《例文2》Repeat these steps for each puff.(一度吸入するたびに、これらの方法を繰り返してください)《解説》「吸入する」という動詞は“inhale”を使い、「吸入器」は動詞を活用した“inhaler”です。そして名詞の「吸入」を表現したいときには“puff”を使います。“puff”は、「ひと吹きする」「吹き出す」「噴射する」といった動詞としても使われ、“take a puff of a cigarette”は「タバコを吹かす(一服する)」という意味になります。また、“puff”には「プッと膨らむ」という意味もあり、お菓子のシュークリームは“cream puff”です。吸入器の使い方は、患者さんがわかるまで丁寧に“step by step”で実演しながら説明します。米国ではHealth literacy があまり高くない患者さんも多いので、理解度を確認することが大切です。吸入器の説明の際によく使われる“breathe”と“breath”の発音の違いも練習しておくとよいでしょう。“Breathe out all the way.”(息を吐き出します)“As you start to slowly breathe in, press down the inhaler one time.”(息をゆっくり吸い込みながら、吸入器を一度押します)“Hold your breath as you slowly count to 10.”(息を止め、ゆっくり10数えます)といった感じです。講師紹介

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第133回 パキロビッド投与後のCOVID-19再燃は免疫障害に起因するのではなさそう

Pfizer社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)プロテアーゼ阻害薬・パキロビッドパック(Paxlovid、以下パキロビッド)投与が済んだ後のSARS-CoV-2感染(COVID-19)再燃(再発症やSARS-CoV-2再検出)は心配されていた免疫反応の障害によるのではないらしいことが米国政府研究者の試験で示唆されました1-3)。米国メリーランド州のNIH Clinical Centerや同国のその他の病院で進行中の試験の被験者を調べたその結果によるとパキロビッド投与5日間は短すぎてSARS-CoV-2への確実な免疫反応を引き出せないという仮説はどうやら的外れなようです2)。Clinical Infectious Diseases誌に先週6日に掲載されたその研究ではパキロビッド使用後にCOVID-19再燃を被った6例と再燃症状なしのCOVID-19患者6例が調べられました。COVID-19再燃患者6例はCOVID-19ワクチンの追加接種まで済ませており、最初の発症から4日以内にパキロビッドを使い始め、その後にCOVID-19症状が再発しました。比較対照群であるCOVID-19非再燃6例もワクチン追加接種済みでした。COVID-19再燃患者6例も対照群の6例も最初の感染や再燃の時に入院を要する重病には陥らずに済みました。それら12例の病状の経過や血液/鼻ぬぐい液を解析した結果、パキロビッドを効かなくすると思しき変異は幸いにもCOVID-19再燃患者に認められませんでした。SARS-CoV-2スパイクタンパク質への抗体はどの患者でも豊富で、COVID-19再燃患者の抗体確立の遅れを示す所見はありませんでした。SARS-CoV-2特異的なT細胞反応も確かであり、COVID-19再燃患者のその反応は非再燃患者を上回っていました。昔ながらの手法の培養でCOVID-19再燃患者6例を調べたところ自己免疫疾患で免疫不全の1例から感染可能なSARS-CoV-2が検出されました。また、ウイルスの細胞侵入をおよそ10倍高める成分・ポリブレン添加による培養でCOVID-19再燃患者6例を調べたところ昔ながらの手法より多い4例からSARS-CoV-2が同定されました。それらの結果によると再燃症状はSARS-CoV-2の名残りのRNAへの確固たる細胞反応を一因とするのであって免疫反応の障害がウイルス複製を許してしまうことに起因するのではなさそうです。COVID-19再燃患者から感染可能なSARS-CoV-2が検出されたことから隔離を要する場合があるかもしれません。それに、免疫反応が不十分な免疫不全の人へのより長期のパキロビッド治療を検討する臨床試験が必要なようです2)。参考1)Epling BP, et al.Clin Infect Dis. 2022 Oct 6:ciac663. [Epub ahead of print]2)Findings suggest COVID-19 rebound not caused by impaired immune response / Eurekalert3)COVID rebound after Pfizer treatment likely due to robust immune response, study finds / Reuters

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コロナ陽性判定後の鼻洗浄で重症化リスクが1/8に!?

 新型コロナウイルスの陽性判定後であっても、1日2回の鼻洗浄によって入院や死亡のリスクが低減することが、米国・Augusta UniversityのAmy L Baxter氏らにより報告された。新型コロナウイルスはACE2受容体に結合して細胞内に侵入することが知られているが、ACE2受容体にまだ結合していないウイルスを洗い流すことで、重症化を防ぐことができる可能性がある。Ear, Nose & Throat誌オンライン版2022年8月25日掲載の報告。 解析対象は、2020年9月24日~12月21日に実施された新型コロナウイルスのPCR検査で陽性となり、24時間以内に登録された55歳以上のハイリスク患者79例。平均年齢64±8歳、女性が36例(46%)、非ヒスパニック系白人が71%、平均BMIが30.3であった。 参加者を、240mLの生理食塩水に、10%ポビドンヨード液(2.5mL)または重曹(2.5mL)を混和した群に無作為に割り付け、14日間、1日2回鼻洗浄を行った。ポビドンヨード群は37例、重曹群は42例であった。主要評価項目は登録28日以内の新型コロナウイルス感染による入院または死亡で、副次的評価項目は鼻洗浄による症状の軽減であった。対照群は、米疾病対策センター(CDC)のデータにより、同期間に新型コロナウイルス陽性が判明した50歳以上の296万2,541例であった。 主な結果は以下のとおり。・参加者は、79例中62例が連日鼻洗浄を行った(1日平均1.8回)。・入院はポビドンヨード群で1例発生し、重曹群ではいなかった(1.27%)。死亡は両群ともいなかった。・対照群では、28万533例(9.47%)が入院し、入院データのない患者の死亡は4万4,773例(1.5%)であった。・対照群の入院・死亡リスクは、鼻洗浄を実施した人の8.57倍であった(標準誤差[SE]:2.74、p=0.06)。・鼻洗浄液の種類にかかわらず、1日2回の鼻洗浄を実施した人のほうが症状の軽減が早かった(x2=8.728、p=0.0031)。

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遺族にNGな声かけとは…「遺族ケアガイドライン」発刊

 2022年6月、日本サイコオンコロジー学会と日本がんサポーティブケア学会の合同編集により「遺族ケアガイドライン」が発刊された。本ガイドラインには“がん等の身体疾患によって重要他者を失った遺族が経験する精神心理的苦痛の診療とケアに関するガイドライン”とあるが、がんにかかわらず死別を経験した誰もが必要とするケアについて書かれているため、ぜひ医療者も自身の経験を照らし合わせながら、自分ごととして読んでほしい一冊である。 だが、本邦初となるこのガイドラインをどのように読み解けばいいのか、非専門医にとっては難しい。そこで、なぜこのガイドラインが必要なのか、とくに読んでおくべき項目や臨床での実践の仕方などを伺うため、日本サイコオンコロジー学会ガイドライン策定委員会の遺族ケア小委員会委員長を務めた松岡 弘道氏(国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科/支持療法開発センター)を取材した。ガイドラインの概要 本書は4つに章立てられ、II章は医療者全般向けで、たとえば、「遺族とのコミュニケーション」(p29)には、役に立たない援助、遺族に対して慎みたい言葉の一例が掲載されている。III章は専門医向けになっており、臨床疑問(いわゆるClinical questionのような疑問)2点として、非薬物療法に関する「複雑性悲嘆の認知行動療法」と薬物療法に関する「一般的な薬物療法、特に向精神薬の使い方について」が盛り込まれている。第IV章は今後の検討課題や用語集などの資料が集約されている。遺族の心、喪失と回復を行ったり来たり 人の死というは“家族”という単位だけではなく、友人、恋人や同性愛者のパートナーのように社会的に公認されていない間柄でも生じ(公認されない悲嘆)、生きている限り誰もが必ず経験する。そして皮肉なことに、患者家族という言葉は患者が生存している時点の表現であり、亡くなった瞬間から“遺族”になる。そんな遺族の心のケアは緩和ケアの主たる要素として位置付けられるが、多くの場合は自分自身の力で死別後の悲しみから回復していく。ところが、死別の急性期にみられる強い悲嘆反応が長期的に持続し、社会生活や精神健康など重要な機能の障害をきたす『複雑性悲嘆(CG:complicated grief)』という状態になる方もいる。CGの特徴である“6ヵ月以上の期間を経ても強度に症状が継続していること、故人への強い思慕やとらわれなど複雑性悲嘆特有の症状が非常に苦痛で圧倒されるほど極度に激しいこと、それらにより日常生活に支障をきたしていること”の3点が重要視されるが、この場合は「薬物治療の必要性はない」と説明した。 一方でうつ病と診断される場合には、専門医による治療が必要になる。これを踏まえ松岡氏は「非専門医であっても通常の悲嘆反応なのかCGなのか、はたまた精神疾患なのかを見極めるためにも、CG・大うつ病性障害(MDD)・心的外傷後ストレス障害(PTSD)の併存と相違(p54図1)、悲嘆のプロセス(p15図1:死別へのコーピングの二重過程モデル)を踏まえ、通常の悲嘆反応がどのようなものなのかを理解しておいてほしい」と強調した。医師ができる援助と“役に立たない”援助 死別後の遺族の支援は「ビリーブメントケア(日本ではグリーフケア)」と呼ばれる。その担い手には医師も含まれ、遺族の辛さをなんとかするために言葉かけをする場面もあるだろう。そんな時に慎みたい言葉が『寿命だったのよ』『いつまでも悲しまないで』などのフレーズで、遺族が傷つく言葉の代表例である。言葉かけしたくも言葉が見つからないときは、正直にその旨を伝えることが良いとされる。一方、遺族から見て有用とされるのは、話し合いや感情を出す機会を持つことである。 そのような機会を提供する施設が国内でも設立されつつあるが、現時点で約50施設と、まだまだ多くの遺族が頼るには程遠い数である。この状況を踏まえ、同氏は「医師や医療者には患者の心理社会的背景を意識したうえで診療や支援にあたってほしいが、実際には多忙を極める医師がここまで介入することは難しい」と話し、「遺族の状況によってソーシャルワーカーなどに任せる」ことも必要であると話した。 なお、メンタルヘルスの専門家(精神科医、心療内科医、公認心理師など)に紹介すべき遺族もいる。それらをハイリスク群とし、特徴を以下のように示す。<強い死別反応に関連する遺族のリスク因子>(p62 表4より)(1)遺族の個人的背景・うつ病などの精神疾患の既往、虐待やネグレクト・アルコール、物質使用障害・死別後の睡眠障害・近親者(とくに配偶者や子供の死)・生前の患者に対する強い依存、不安定な愛着関係や葛藤・低い教育歴、経済的困窮・ソーシャルサポートの乏しさや社会的孤立(2)治療に関連した要因・治療に対する負担感や葛藤・副介護者の不在など、介護者のサポート不足・治療やケアに関する医療者への不満や怒り・治療や関わりに関する後悔・積極的治療介入(集中治療、心肺蘇生術、気管内挿管)の実施の有無(3)死に関連した要因・病院での死・ホスピス在院日数が短い・予測よりも早い死、突然の死・死への準備や受容が不十分・「望ましい死」であったかどうか・緩和ケアや終末期の患者のQOLに対する遺族の評価 上記を踏まえたうえで、遺族をサポートする必要がある。不定愁訴を訴える患者、実は誰かを亡くしているかも 一般内科には不定愁訴で来院される方も多いだろうが、「遺族になって不定愁訴を訴える」ケースがあるそうで、それを医療者が把握するためにも、原因不明の症状を訴える患者には、問診時に問いかけることも重要だと話した。<表5 遺族の心身症の代表例>(p64より一部抜粋)1.呼吸器系(気管支喘息、過換気症候群など)2.循環器系(本態性高血圧症など)3.消化器系(胃・十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群など)4.内分泌・代謝系(神経性過食症、単純性肥満症など)5.神経・筋肉系(緊張型頭痛、片頭痛など)6.その他(線維筋痛症、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など) 最後に同氏は高齢化社会特有の問題である『別れのないさよなら』について言及し、「これは死別のような確実な喪失とは異なり、あいまいで終結をみることのない喪失に対して提唱されたもの。高齢化が進み認知症患者の割合が高くなると『別れのないさよなら』も増える。そのような家族へのケアも今後の課題として取り上げていきたい」と締めくくった。書籍紹介『遺族ケアガイドライン』

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デュピルマブ、6歳未満のアトピー性皮膚炎にも有効/Lancet

 6歳未満のアトピー性皮膚炎患児の治療において、インターロイキン(IL)-4とIL-13を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体デュピルマブはプラセボと比較して、皮膚症状や徴候を有意に改善し、安全性プロファイルも許容範囲であることが、米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らが実施した「LIBERTY AD PRESCHOOL試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年9月17日号に掲載された。北米と欧州の第III相無作為化プラセボ対照比較試験 LIBERTY AD PRESCHOOL試験は、中等症~重症のアトピー性皮膚炎の幼児におけるデュピルマブの有効性と安全性の評価を目的とする第II/III相試験であり、今回は第III相の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験の結果が報告された(SanofiとRegeneron Pharmaceuticalsの助成を受けた)。本研究は、北米と欧州の31施設で行われ、2020年6月30日~2021年2月12日の期間に参加者が登録された。 対象は、生後6ヵ月~<6歳の中等症~重症のアトピー性皮膚炎で、糖質コルチコイドによる局所治療の効果が不十分な患児であった。被験者は、low-potencyの糖質コルチコイド(酢酸ヒドロコルチゾン1%含有クリーム)による局所治療に加え、デュピルマブまたはプラセボを4週ごとに16週間、皮下投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、16週時のInvestigator’s Global Assessment(IGA)スコア0~1点(皮膚症状が消失またはほぼ消失)とされた。主要エンドポイント:28% vs.4% 162例(年齢中央値4.0歳、男児61%)が登録され、デュピルマブ群に83例、プラセボ群に79例が割り付けられた。それぞれ82例(99%)および75例(95%)が、試験薬の投与を完遂した。 16週時に、IGAスコア0~1点を達成した患児は、デュピルマブ群が23例(28%)と、プラセボ群の3例(4%)に比べ有意に優れた(群間差:24%、95%信頼区間[CI]:13~34、p<0.0001)。 主な副次エンドポイントであるEczema Area and Severity Index(EASI)のベースラインから16週までの75%以上の改善(EASI-75)を達成した患児は、それぞれ44例(53%)および8例(11%)であり、デュピルマブ群で有意に割合が高かった(群間差:42%、95%CI:29~55、p<0.0001)。 また、EASIのベースラインから16週までの変化率(デュピルマブ群-70.0% vs.プラセボ群-19.6%、群間差:-50.4%、95%CI:-62.4~-38.4、p<0.0001)および最悪の痒み/掻破の数値評価尺度(NRS)スコアのベースラインから16週までの変化率(-49.4% vs.-2.2%、-47.1%、-59.5~-34.8、p<0.0001)は、いずれもデュピルマブ群で有意に良好だった。 16週の投与期間中に、1つ以上の治療関連有害事象を発現した患児は、デュピルマブ群が83例中53例(64%)、プラセボ群は78例中58例(74%)であり、両群で同程度であった。とくに注目すべき有害事象として、デュピルマブ群で結膜炎が3例(4%)に認められた(プラセボ群は0例)。デュピルマブ関連の有害事象では、アトピー性皮膚炎のフレアによる治療中止が1例みられたが、重篤な有害事象は発現しなかった。 著者は、「これらの結果は、アトピー性皮膚炎の幼児におけるデュピルマブの有効性に関する重要な臨床データであり、世界中の臨床現場に有益な情報を提供し、変化をもたらす可能性がある」としている。

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うどんと白米の嚥下造影、ガチ比較【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第219回

うどんと白米の嚥下造影、ガチ比較pixabayより使用さて、うどんと白米のどちらの喉越しが良く、飲み込みやすいか、おわかりでしょうか。そりゃうどんやろと思われるかもしれませんが、ちゃんと真面目に研究したものが存在します。Iida Y, et al. Videofluorographic evaluation of mastication and swallowing of Japanese udon noodles and white rice.Dysphagia. 2011 Sep;26(3):246-9.これは、健康なボランティア22人を対象に、日本のうどんと白米の咀嚼・嚥下段階を観察するために、嚥下造影(VF)検査を実施した研究です。研究にあたり、硫酸バリウム造影剤が入ったうどんと白米を準備しました。この結果、うどんは白米と比べて硬いものの、滑らかな触感であることがわかりました。うん、そりゃそうだ。図に示すように、一口分の平均重量は、炊飯した白米が21.0±2.7g、うどんが27.8±4.1gという結果でした。平均咀嚼回数は、白米が19.5回±7.7回、うどんが16.2回±8.2回で、有意にうどんのほうが少ないという結果でした。一口分を食べ終わるまでの所要時間は、白米が24.7±7.5秒、うどんが17.7±5.5秒という結果でした。これも有意差がありました。嚥下回数の平均値については、白米で2.7±0.9回、うどんで2.3±0.8回という結果でしたが、統計学的な有意差はありませんでした。図. うどんと白米の比較(文献より引用)以上のことから、うどんは喉越しがよく、比較的スムーズに食べられるということがわかります。確かに、白米を食べ続けるにはそれなりの水分や努力が必要ですが、うどんは本当にチュルン!と食べられますので、誤嚥がない患者さんであれば、うどんのほうが食べやすいかもしれませんね。食べやすければ何でもいいというわけではなく、たとえばプリンの場合、必ずしも咀嚼運動が現れるとは限りません。咀嚼は食事における最初のステップであり、食べ物を飲み込むための準備と言えます。そのため、食べやすければすべてOKというわけではない点も、われわれは知っておくべきでしょう。とにもかくにも、うどんはなかなか嚥下に優しい食材ということが言えるでしょう。

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第129回 国のコロナ治療薬支援は適正価格?現況を列挙してみると…

前回、興和が実施していた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対する抗寄生虫薬のイベルメクチンの第III相臨床試験で有効性を示せなかったことについて触れた。その際に、私は厚生労働省が開発支援として同社に約61億円を拠出したことについては、日本にとってやむなしという見解を示している。ところで国の新型コロナ治療薬の開発支援にはどの程度のお金がこれまで使われたのか? 実はこれを正確に計算することはなかなか困難である。というのも、まず財布(支出元)が厚生労働省、国立感染症研究所、日本医療研究開発機構(AMED)、内閣府、経済産業省、文部科学省など多岐にわたるからだ。また、この中には正規の当初予算の中の予備費などを活用したものや補正予算で対応したものなどさまざま。支出先も製薬企業だけでなく、大学その他の研究機関なども少なくない。こうした中で最も分かりやすい厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症治療薬の実用化のための支援事業」で製薬企業に直接支出されたものは以下のようになる(金額は百万円単位を四捨五入)。エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ):82億2,000万円[?]イベルメクチン(商品名:ストロメクトール):61億6,000万円[試験未達]ファビピラビル(商品名:アビガン):14億8,000万円[試験終了、申請意向は不明]カモスタット(商品名:フオイパン):6億円[コロナ対象の開発中止]AT-527:4億6000万円[国内開発終了]カシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ):3億2,000万円チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド):2億8,000万円ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ):2億6,000万円オチリマブ:1億9,000万円[開発中止]総額では約179億円になる。ちなみに各種報道によると、大学などへも含めた治療薬開発支援の総額は1,000億円超に上るという。現在までにこれらの中で上市に至ったものへの支援総額は8億6,000万円、支出総額の5%程度に過ぎない。開発が進行中で最多金額が支出されたエンシトレルビルは先日、第III相臨床試験でポジティブな結果が報告されたため、このままで行けば上市される可能性が高い。この分を含めると支援総額の半分はなんとか上市にこぎつけることになる。さて、この予算投入に対する評価は個人によってかなり変わるかもしれない。私はまずまずの結果と見ている。ただ、敢えて本音を言えば「ふーん、これが先進国である日本の有様?」とも考えてしまう。率直に言えば、支援額は「0が2つ足りない」とさえ思う。ご存じのように今や1つの新規成分を治療薬として上市するまでには、期間にして20年、費用にして200億円を要すると言われる。その中で抗ウイルス薬はかなり開発が難航する領域である。世界で初めて製品化された抗ウイルス薬といえば、ヘルペスウイルスに対するアシクロビルである。現在のグラクソ・スミスクラインの前身であるバローズ・ウエルカム社の研究所で1974年に開発され、開発者であるジョージ・H・ヒッチングスとガートルード・B・エリオンはその功績が評価され1988年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。念のため言うと、世界で初めて合成に成功した抗ウイルス薬はリバビリンだが、当初の開発目的であったインフルエンザ治療薬としての上市は成功せず、C型慢性肝炎治療薬として世に出るには1990年代まで待たなければならなかった。このように抗ウイルス薬は数ある疾患治療薬の中で、まだ半世紀にも満たない歴史しかなく、合成には数多くのペプチド結合などが必要となるため、開発は容易ではない。ヒト免疫不全ウイルスの登場とその戦いにより抗ウイルス薬の開発に弾みはついたものの、現在ある何らかの抗ウイルス薬のうち国産(国内開発)はインフルエンザに対するバロキサビル(商品名:ゾフルーザ)とラニナミビル(商品名:イナビル)、ファビピラビル(商品名:アビガン)ぐらいである。また、今回の新型コロナでは感染症に抗体医薬品を用いるという新たな戦略が登場したが、抗体医薬品開発能力がある国内の製薬企業は限られている。さらにこの間、新型コロナに対する抗ウイルス薬や抗体医薬品の上市に成功した外資系製薬企業のほとんどが日本円換算で年間の研究開発費が1兆円超。かつ上市に成功した治療薬のほとんどは完全な自社創製ではなく導入品である。悪く言えば、札びらで横っ面をひっぱたきながら時間を買ったとも言えるが、もはやこれは製薬業界ではごく当たり前の開発プロセスの一つになっている。いずれにせよ、新型コロナ治療薬開発競争での日本のディスアドバンテージは大きく、実際、現在までに登場した国産治療薬はない。第8波を迎える前に、そろそろこの辺の総括に入っても良いのではないかと思っている。もっとも今後のパンデミックを見越してやらなければならないことは国と企業ではかなり違う。国がやるべきは、公的研究機関での創薬そのものと言うよりは創薬の基盤技術への大規模・持続的な投資である。もっとも創薬技術が長足の進歩で高度化している以上、すべての基盤技術を国内の公的研究機関で獲得することは困難である。私自身は以前の本連載でも触れたとおり、新薬開発の極端な国粋主義には批判的な立場である。その意味では海外の研究機関との人事交流も含めた提携も欠かせない。これらをいかに「年度主義」から脱して持続的に行えるかがカギである。そして公的研究機関もそれぞれの組織や個人によって特徴がある。その各機関の研究情報の集約と岸田首相が創設を打ち出した日本版CDCとの間のネットワーク化も整備しなければならない。一方、民間企業、すなわち製薬企業側に求められることの一つは日本を軸としたアジア圏での臨床試験実施体制の確立である。メガファーマと呼ばれる国際製薬大手の新型コロナ関連治療薬の臨床試験の多くは、被験者を集めやすいアメリカを中心にその地続きである近傍の北米のカナダや南米を中心に行われることが多い。製薬業界にとって巨大市場であるアメリカに対しては国内の製薬企業もある程度は進出しているが、ここで臨床試験実施競争に勝てる環境はない。その意味ではやはり距離的にも近いアジア圏内にネットワークを確立するほうが早道である。これは抗ウイルス薬の開発に限らないことである。そしてもちろん今回、新型コロナ関連治療薬の上市に成功した外資系の製薬企業各社のように社外のシーズを迅速に目利きすることは重要だが、何より先立つものは金である。有望なシーズを見つけてもそれを獲得する資金がなければ事は動かない。では、どうするのか? 言い古されたことになるが、規模の拡大、すなわち国内外を含めた業界再編が必要になる。ここは最も大きなハードルである。「何を理念的なことばかり言っているんだ」と各方面に叱責されるかもしれないが、次なる新興感染症、あるいは現在の新型コロナの新たな変異株の登場による状況の悪化を想定すれば、いずれも今から少しずつでも始めなければ「後の祭り」になりかねないのである。

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