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第55回 スピアマン順位相関係数の計算方法は?【統計のそこが知りたい!】

第55回 スピアマン順位相関係数の計算方法は?今回は、前回紹介した、「順序尺度の相関関係を把握する解析手法」であるスピアマン順位相関係数(Spearman's rank correlation coefficient)の計算方法について解説します。まず、「タイ(tie)の長さ」を求めます。 タイとは同じ順位ということです。「トップタイ」なら1位が2人いて、その次の人が3位になるのは、とくに説明がなくてもわかると思います。事例として、あるクリニックの患者満足度調査(5段階評価)を行ったところ表1の結果が得られたとしましょう。受付スタッフの対応の満足度について、「やや満足」の「タイの長さ」を求めてみます。表1 患者満足度調査の結果一覧「タイの長さ」は下記(1)、(2)の手順で求めます。(1)まず、受付スタッフの対応の満足度のデータを降順あるいは昇順で並べ替える(2)同順位の個数を数える同じ順位の個数を「タイの長さ」と言い、“t”で表します。たとえば、受付スタッフの対応の満足度「やや満足」にあたる「4」は3個あるので、tは3になります。表2のようにまとめます。表2 受付スタッフ対応満足度のまとめ■スピアマン順位相関係数の計算方法上の計算式を活用し、スピアマン順位相関係数を求めるため、前述の回答で示した(1)、(2)に続いて以下の手順で計算を進めます。(3)t3-tを求め、合計Σ(t3−t)(タイ合計と呼ぶ)を求めます。その結果、受付スタッフの対応の満足度の合計は90であることがわかります。つぎに、(4)順位を求めます。同順位がある場合は、その平均を順位とします。たとえば、やや満足の「4」は7~9位に位置するので、「7、8、9」の平均である8を順位とします。(5)表3の右端の順位1は、No1~10の受付スタッフの対応の満足度の順位です。表3 受付スタッフ対応満足度の一覧画像を拡大する(6)受付スタッフの対応の満足度の順位を「順位1」、クリニック総合満足度の順位を「順位2」とします。また、順位1と順位2の差分を「d」とします。(7)dの2乗を求め、Σd2を求めると表4の通り103となります。表4 2項目の満足度の一覧画像を拡大する(8)ここで、受付スタッフの対応の満足度のタイ合計をx、クリニック総合満足度のタイ合計をyとすると、x=90、y=90(9)計算式に数値を代入し、TxとTyを求めるとTx=(n3-n-x)÷12=(1000-10-90)÷12=75Ty=(n3-n-y)÷12=(1000-10-90)÷12=75※nはサンプルサイズこの事例は同順位があるため、よって、受付スタッフの対応の満足度とクリニック総合満足度のスピアマン順位相関係数は0.3133になることがわかります。単相関係数は2変量に直線的な相関関係があれば適用されますが、そうでない場合やデータの順位しかわかっていない場合もありますよね。そんなときに有効なのがスピアマン順位相関係数なのです!■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第52回 相関比とは?「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その1)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その2)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その3)

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医療者も実は…?糖尿病のスティグマを見直す/日糖協の活動

 近い将来、「糖尿病」という病名は使用されなくなるかもしれない。 日本糖尿病協会(以下、日糖協)は、都内開催のセミナーにて、「『糖尿病』という言葉を変える必要がある」と問題意識を明らかにした。現在、日糖協では「糖尿病にまつわる“ことば”を見直すプロジェクト」を推進しており、病名変更もその一環だ。 日糖協理事の山田 祐一郎氏(関西電力病院 副院長)は、「言葉を変える目的は、糖尿病に関するスティグマ(偏見)を減らすことにある。単なる言葉の入れ替えでは意味がない。医療従事者と糖尿病のある方とのコミュニケーションを変えることが重要だ」と述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。医療従事者も実は…? スティグマの発生源 世間的に「食べ過ぎ」「長生きできない」などのイメージが先行しやすい糖尿病だが、糖尿病のある人とない人で、総エネルギー消費量や摂取量は、実は変わらない1)。また、治療を受けていれば、平均余命にも有意差はない2,3)。 しかし、高度経済成長期に糖尿病患者数100万人を突破した本邦では、先述のようなスティグマが世間に定着し、今なお存在し続けている。実際、2022年に発表されたデータでも、糖尿病のある人はスティグマを受けている4)ことが明らかになっている。 注目すべきは、スティグマの主な発生源として、家族、友人以外に、本来患者の支援者である医療従事者も含まれる5)ことだ。 日糖協理事長の清野裕氏(関西電力病院 総長)は、「医療従事者は“そんなつもりはないのに”、無意識にスティグマを付与している可能性がある」と述べる。 「今回のHbA1cが上昇している。何か食べ過ぎましたか?」 「あの人は糖尿病だから、全然言うことを聞かない」 といった発言が代表的だ。しかし、糖尿病のある人の生活状況はそれぞれ異なる。実行不可能な治療法を示していないか、悩みを正しく理解しているか、医療従事者も省みる必要があるという。さらに「糖尿病」という病名自体がスティグマとなる可能性もある。病名「糖尿病」への抵抗感や不快感 日糖協が糖尿病のある人に実施した「糖尿病の病名に関するアンケート」の調査結果によると、回答者1,087人のうち、9割が「糖尿病」という病名に何らかの抵抗感や不快感を抱いており、7割が治療を受ける際に病名に対する抵抗を感じている、という。さらに回答者の8割が「糖尿病」の病名変更を希望した。病名変更を希望した人の38.6%が「だらしない」など負のイメージや誤解を受けることを懸念しており、31.8%は「尿」という表記に違和感や羞恥心を抱いていた。さらに、6割が何らかの形で糖尿病を隠して生きていることも明らかになった。日糖協理事の津村 和大氏(川崎市立川崎病院 病態栄養治療部長)は、「糖尿病の治療や予後が大きく改善した現代では、病名の持つ負のイメージを払拭することも必要だ」と述べた。糖尿病にまつわる“ことば”の見直し すでに現在、日糖協では「糖尿病」の病名変更に関する議論が進んでいる。加えて「糖尿病患者→糖尿病のある人」「血糖コントロール→血糖マネジメント(管理)」など、使用すべき医療用語の再考も検討されている。背景として、「糖尿病のある人」には、海外ではpatientを使用せず、person with diabetesという表現を用いること、「血糖マネジメント(管理)」は、コントロールが「こちら(=医療従事者)の意思通りに動かす」意味合いが強いのに対し、英語圏ではcontrolからmanagementへと表現が変わっており、世界的にも主体的表現へ変化しつつあることが挙げられる。ただし、“ことば”を入れ替えるだけでは不十分で、より主体的に糖尿病に関わる意識が重要とされる。関連企業やメディアの参画で医療現場にもインパクトを 日糖協の活動は企業にも広がっており、賛同企業が間接的支援を行う「企業委員会」も立ち上げられた。製薬・医療機器製造・食品関連企業33社が参画中だ。企業の提供する情報量は膨大で、医療現場へのインパクトも大きいと推察される。代表幹事の小山 由起氏(住友ファーマ)、郷田 秀樹氏(ノボ ノルディスク ファーマ)からも、スティグマを理解するための企業研修や日本糖尿病協会年次学術集会での啓発活動などの取り組みが紹介された。今後は、企業作成物の改訂、とくに糖尿病のある人に向けた資料の表現に配慮していくという。言葉の見直しは、今後「日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同 アドボカシー活動」の中で協議され、数年以内の提言実現を目指すという。 われわれメディアも“ことば”を多く扱う。病名に対する関心の喚起は「社会を動かす力」になる。最後に、スティグマの存在を正しく理解し、適切な情報発信に努めることを自戒として記載したい。 糖尿病のある人にスティグマを負わせないために、病名も、私たち自身の意識も変えなければいけない。

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VTE既往妊産婦への低分子ヘパリン、体重補正中用量vs.固定低用量/Lancet

 静脈血栓塞栓症(VTE)既往のある女性において、分娩前~分娩後に体重で補正した中用量の低分子ヘパリン投与は、固定低用量の低分子ヘパリン投与と比べてVTE再発リスクを低減しないことが、オランダ・アムステルダム大学のIngrid M. Bistervels氏らが行った多施設共同非盲検無作為化試験「Highlow試験」の結果、示された。妊娠に関連したVTEは、母体の罹患および死亡の主要な原因であり、VTE既往女性では分娩前および分娩後に血栓予防が適応となる。しかし同期間中のVTE再発予防のための低分子ヘパリンの至適投与量は明らかでなかった。Lancet誌オンライン版2022年10月28日号掲載の報告。9ヵ国70病院で無作為化試験、妊娠14週~分娩後6週まで各用量を投与 Highlow試験は、9ヵ国(オランダ、フランス、アイルランド、ベルギー、ノルウェー、デンマーク、カナダ、米国、ロシア)の70病院から、VTE既往の妊娠中の女性を集めて行われた。客観的診断によるVTE既往のある18歳以上で、妊娠14週以下の女性を適格とした。 適格女性を、1対1の割合でウェブベースシステムと置換ブロック無作為化法にて、妊娠14週前に、体重補正した中用量の低分子ヘパリン投与(体重補正中用量)群または固定低用量の低分子ヘパリン投与(低用量)群に割り付け、分娩後6週まで1日1回皮下投与した。 主要有効性アウトカムは客観的診断のVTE(深部静脈血栓症、肺塞栓症または非典型的部位静脈血栓症など)で、独立した中央判定委員会で確認を行った。評価対象はintention-to-treat(ITT)集団(投与群に割り付けられたすべての女性など)とした。 主要安全性アウトカムは、分娩前、分娩後早期(分娩後24時間未満)を含む大出血、および分娩後後期大出血(分娩後24時間以上~6週間)で、割り付けられた治療の投与を少なくとも1回受け、投与の終了が確認されたすべての女性を評価対象とした。VTE再発に有意差なし、安全性も同等 2013年4月24日~2020年10月31日に、1,339例の妊娠中の女性がスクリーニングを受け、適格であった1,110例が、体重補正中用量群(555例)、低用量群(555例)に無作為に割り付けられた(ITT集団)。 VTEの発生は、体重補正中用量群11/555例(2%)、低用量群16/555例(3%)であった(相対リスク[RR]:0.69[95%信頼区間[CI]:0.32~1.47]、p=0.33)。 分娩前のVTE発生は、体重補正中用量群5/555例(1%)、低用量群5/555例(1%)であり、分娩後のVTE発生はそれぞれ6例(1%)、11例(2%)であった。 安全性解析集団(1,045例)における治療期間中の大出血は、体重補正中用量群23/520例(4%)、低用量群20/525例(4%)であった(RR:1.16[95%CI:0.65~2.09])。

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新経口薬camizestrant、ER+進行乳がんでフルベストラントに対しPFS延長/AZ

 アストラゼネカは2022年11月8日、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるcamizestrantが、進行乳がんに対して内分泌療法による治療歴があり、エストロゲン受容体(ER)陽性の局所進行または転移乳がんを有する閉経後の患者を対象に、フルベストラント500mgと比較して、75mgおよび150mgの両用量で主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示したと発表した。なお、camizestrantの忍容性は良好であり、安全性プロファイルは過去の試験で認められたものと一貫しており、新たな安全性上の懸念は確認されていない。 camizestrantは、強力で経口投与可能なSERDかつERへの完全拮抗薬であり、ER活性型変異を含む幅広い前臨床モデルで抗がん活性を示している。第I相臨床試験(SERENA-1試験)では、camizestrantの忍容性が良好であり、単剤療法またはCDK4/6阻害薬パルボシクリブとの併用療法として投与したときに有望な抗腫瘍プロファイルを有することが示されている。 今回結果が発表されたSERENA-2試験は、ER陽性HER2陰性の進行乳がん患者を対象に、複数の用量のcamizestrantをフルベストラントと比較して評価する、無作為化非盲検並行群間多施設共同第II相臨床試験。主要評価項目は、フルベストラント(500mg)との比較によるcamizestrant(75mg)のPFS、およびフルベストラントとの比較によるcamizestrant(150mg)のPFSであり、Response Evaluation Criteria In Solid Tumours(RECIST)ガイドライン第1.1版の定義に従い評価される。240例をcamizestrant群またはフルベストラント群に無作為に割り付け、病勢進行が認められるまで治療を実施した。副次評価項目は、24週目の安全性、客観的奏効率および臨床的ベネフィット率(CBR)など。本試験の詳しい結果は、今後の医学学会で発表される予定となっている。 また、1次治療中にESR1遺伝子変異が検出されたHR陽性の転移乳がん患者を対象にcamizestrantとCDK4/6阻害剤(パルボシクリブまたはアベマシクリブ)の併用療法を評価する検証的第III相臨床試験であるSERENA-6試験や、HR陽性の局所進行または転移乳がんへの1次治療におけるcamizestrantとパルボシクリブの併用療法を評価する第III相SERENA-4試験などが実施されており、SERENA-6試験の適応症は米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定を付与されている。

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治療抵抗性うつ病、psilocybin単回投与の有効性は/NEJM

 治療抵抗性うつ病治療への使用が検討されているpsilocybinについて、25mg単回投与は同1mg単回投与と比較して、3週時までのうつ病スコアが有意に低下したが、有害事象と関連していた。英国・COMPASS PathfinderのGuy M. Goodwin氏らが、欧州および北米の10ヵ国22施設で実施されたpsilocybinの第II相無作為化二重盲検用量設定試験の結果を報告した。NEJM誌2022年11月3日号掲載の報告。25mg vs.10mg vs.1mg単回投与の有効性/安全性を比較検証 研究グループは、2019年3月1日~2021年9月27日の期間に、臨床評価に基づき精神病性の特徴を伴わない大うつ病性障害のDSM-5診断基準を満たし、現在のうつ病エピソードに対してMGH-ATRQに基づく用量と治療期間(8週以上)による2~4回の適切な治療を行うも効果が不十分であった18歳以上の治療抵抗性うつ病患者を対象に、心理学的サポートに加えてpsilocybinの合成製剤であるCOMP360を25mg、10mgまたは1mg(対照)の単回投与を受ける群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、Montgomery-Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコア(範囲:0~60、スコアが高いほど重症度が高い)の、ベースラインから3週時までの変化量とし、25mg群と10mg群を1mg群と比較した。また、主な副次評価項目は、3週時の反応率(MADRS合計スコアがベースラインから50%以上低下[改善]した患者の割合)、3週時の寛解率(MADRS合計スコアが10以下の患者の割合)、12週時の反応持続率(3週時の反応が12週時まで持続した患者の割合)とした。 428例がスクリーニングされ、233例が無作為に割り付けられた(25mg群79例、10mg群75例、1mg群79例)。25mg単回投与、3週間でうつ病スコアが有意に低下 ベースラインの患者背景は3群で類似しており、MADRS合計スコア(平均値)は25mg群31.9、10mg群33.0、1mg群32.7であった。 主要評価項目であるベースラインから3週時までのMADRS合計スコア変化量(最小二乗平均値)は、25mg群:-12.0、10mg群:-7.9、1mg群:-5.4であり、群間差(vs.1mg群)は25mg群で-6.6(95%信頼区間[CI]:-10.2~-2.9、p<0.001)、10mg群で-2.5(-6.2~1.2、p=0.18)であった。 副次評価項目の反応率は25mg群37%、10mg群19%および1mg群18%で、オッズ比[OR](vs.1mg群)は25mg群2.9(95%CI:1.2~6.6)、10mg群1.2(0.5~3.0)、寛解率はそれぞれ29%、9%および8%(ORはそれぞれ4.8[95%CI:1.8~12.8]、1.2[0.4~3.9])、反応持続率は20%、5%および10%(オッズ比は2.2[95%CI:0.9~5.4]、0.7[95%CI:0.2~2.0])であった。 有害事象は25mg群66例(84%)、10mg群56例(75%)、1mg群57例(72%)に発現した。主な事象は頭痛、悪心、眩暈、疲労などであった。自殺念慮または自殺行為、自傷行為等の重篤な有害事象の発現率は、投与翌日(2日目)から3週時までが25mg群5%、10mg群5%、1mg群0%、3週以降12週までがそれぞれ5%、4%、1%であった。 著者は、研究の限界として実薬対照ではないこと、民族的に多様な被験者集団ではないこと、臨床的に自殺リスクが高い患者は除外されたことなどを挙げた上で、「治療抵抗性うつ病患者に対するpsilocybinの有効性および安全性を明らかにするためには、既存の治療法との比較を含めた、より大規模で長期的な臨床試験が必要である」とまとめている。

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アスピリン潰瘍出血、ピロリ除菌での予防は一時的?/Lancet

 Helicobacter pylori(H. pylori)除菌は、アスピリンによる消化性潰瘍出血に対する1次予防効果があるものの、その効果は長期間持続しない可能性があることが、英国・ノッティンガム大学のChris Hawkey氏らが英国のプライマリケア診療所1,208施設で日常的に収集された臨床データを用いて実施した、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Helicobacter Eradication Aspirin Trial:HEAT試験」の結果、明らかとなった。アスピリンによる消化性潰瘍は、H. pylori感染と関連していることが知られていた。Lancet誌2022年11月5日号掲載の報告。H. pylori陽性者約5,300例を除菌群とプラセボ群に無作為化 HEAT試験の対象は、アスピリン(1日325mg以下、過去1年で28日分の処方を4回以上)の投与を受けている60歳以上の高齢者で、スクリーニング時にH. pylori C13尿素呼気試験が陽性の患者であった。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)または胃保護薬の投与を受けていた患者は、除外された。 適格患者を、H. pylori除菌群(ランソプラゾール30mg、クラリスロマイシン500mg、メトロニダゾール400mgを1日2回7日間投与)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、試験終了(2020年6月30日)、同意撤回または死亡まで追跡調査した。試験期間中、患者、担当医師および医療従事者、リサーチナース、試験チーム、判定委員会および解析チームは、治療の割り付けに関して盲検化された。追跡調査は、プライマリケアおよび2次医療施設における電子データを用いて実施された。 主要評価項目は、definite/probable消化性潰瘍出血による入院または死亡までの時間とし、intention-to-treat集団を対象にCox比例ハザードモデルを用いて解析した。 2012年9月14日~2017年11月22日の期間に、計3万166例がH. pyloriの呼気検査を受けた。陽性者は5,367例で、このうち5,352例が無作為化された(除菌群2,677例、プラセボ群2,675例)。追跡期間中央値は、5.0年(四分位範囲[IQR]:3.9~6.4)であった。消化性潰瘍出血による入院/死亡、最初の2.5年未満は除菌群で65%低下 主要評価項目の解析の結果、Schoenfeld検定で比例ハザード性の仮定からの有意な逸脱(p=0.0068)が認められた。すなわち、Kaplan-Meier生存曲線が治療群間で早期に分離したが、その差が時間の経過と共に減少した。そこで、無作為化後2.5年未満と2.5年以降に分けて解析した結果、主要評価項目のイベント発生率は2.5年未満において、対照群と比較し除菌群で有意に低下した。definite/probable消化性潰瘍出血と判定されたエピソードは、除菌群6件(1,000人年当たり0.92[95%信頼区間[CI]:0.41~2.04])vs.対照群17件(2.61[1.62~4.19])だった(ハザード比[HR]:0.35[95%CI:0.14~0.89]、p=0.028)。 この有益性は、死亡の競合リスクで補正後も維持されたが(p=0.028)、追跡期間が長期になると消失した(無作為化後2.5年以降でのHR:1.31[95%CI:0.55~3.11]、p=0.54)。 有害事象は5,307例から報告され、最も多かった有害事象は味覚障害(787例)であった。

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真性多血症(真性赤血球増加症)〔PV:polycythemia vera〕

1 疾患概要■ 定義真性多血症(PV)は、造血幹細胞レベルで生じる遺伝子変異により汎血球増加、特に赤血球数の著増を来す骨髄増殖性腫瘍である。■ 疫学発症率は人口10万あたり年間約2人、発症年齢中央値は65歳、男女比は約1.5:1である。■ 病因エリスロポエチン(Epo)、トロンボポエチン、顆粒球コロニー刺激因子などのサイトカインのシグナル伝達に必須なJAK2の変異により、これらレセプターの下流のシグナル伝達経路が恒常的に活性化して生じる。JAK2変異は95%以上の例に検出されるが、それ以外に、TET2、DNMT3などのエピゲノム関連分子の変異がそれぞれ10~20%、5~10%にみられる。■ 症状頭痛、頭重感、赤ら顔(深紅色の口唇、鼻尖)、発熱、体重減少、倦怠感、掻痒、骨痛などがみられる。皮膚掻痒感は入浴後に悪化することが多い。血小板増加例では、四肢末端に非対称性の灼熱感を伴う発赤腫脹を来す肢端紅痛症がみられる。触知可能な脾腫が15~20%に認められる。■ 分類血栓症の発症リスクに応じて、低リスク群(年齢60未満、かつ血栓症の既往がない)と高リスク群(年齢60歳以上、血栓症の既往の、いずれか、あるいは両方を認める)に分類する。■ 予後生命予後は比較的良好であり、10年総生存率は約85%である。10年の血栓症を生じない生存率、出血を伴わない生存率は、それぞれ約90%である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多血、骨髄生検所見、JAK2変異の大基準のうち3項目以上、あるいは大基準の多血と骨髄生検所見に加え、小基準である血清Epo値が低値を示すときにPVと診断する。多血はPVを最初に疑う所見である。PVの診断基準では、Hb値が男性>16.5g/dL、女性>16.0g/dL、ヘマトクリット(Ht)値が男性>49%、女性>48%、もしくは循環赤血球量が予測値の25%を超えて増加している場合を多血とする。赤血球数のみならず、PVでは好中球、血小板数も増加することが多い。PVの骨髄生検所見は過形成であり、赤芽球系、顆粒球系、巨核球系細胞の3系統の細胞の増生がみられる。ただし、3系統の細胞数の比は正常と比べてほぼ同等である。巨核球の分化障害も認めない。線維化はあってもごく軽度である。JAK2変異はPVの95%以上の例に認められる。大部分はV617F変異であり、少数例はexon12の変異を示す。大多数のPVにJAK2変異を認めるため、その存在はPV診断に有用であるものの、JAK2変異はPVに特有ではなく、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症の約50%の例にも検出されることに留意が必要である。つまり、JAK2変異を認めない場合のPV診断は慎重に進めるべきであるが、逆にJAK2変異を認めた場合、PV、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症のいずれかであると言ってよい。ただし、JAK2変異の存在だけでPVとは診断できない。血清Epoは低値を示すことが多い。PV診断においてEpo値の低下の特異度は高いものの、感度は中等度である。つまり、血清Epo値が低い場合はPVである可能性が高いが、Epoが高いからといってPVを否定できるわけではない。鑑別すべき主な疾患は、相対性赤血球増加症と2次性赤血球増加症である。相対性赤血球増加症は、循環赤血球量の増大は認めないものの、脱水などによりHt値やHb値が上昇している場合をいう。嘔吐、下痢などの有無、利尿薬の服薬状況の確認が必要である。相対性赤血球増加症に分類されるストレス多血症は、中年の男性に好発し、喫煙者に多い。赤血球数やHb値、Ht値の上昇を認めるが、白血球数や血小板数は正常であり、脾腫も認めない。また、血清Epo値は上昇していることが多い。2次性赤血球増加症は、血清Epo濃度の上昇により生じる赤血球数の増加である。低酸素(高地や慢性閉塞性肺疾患、右左シャントを伴う心疾患など)が続くと、反応性に腎臓からのEpo産生が増加して、また腫瘍性にEpoが産生されると赤血球数増加を来す。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)生命予後は良好であり、治療の基本は血栓症の予防である(図)図 血栓症リスクに基づくPVの治療方針画像を拡大するはじめに心血管系合併症の危険因子(喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症など)の評価を行い、該当する場合は禁煙指導、生活習慣の改善、生活習慣病の治療を行う。増加している赤血球体積を減少させるため、原則として全例に瀉血療法を行う。ヘマトクリット値0.45未満を目標に、血圧、脈拍などの循環動態をみながら1回200~400mLの瀉血を月に1~2度のペースで行う。高齢者や心血管障害を有する例では、循環動態の急激な変化がないように、少量(100~200mL)、頻回の瀉血が望ましい。また、瀉血後に同量の補液を行うと、血行動態の変化を抑えられるだけでなく、ヘマトクリット値が希釈により低下することも期待される。これに加えて、出血や消化器潰瘍症状などの禁忌がなければ低用量アスピリン(商品名:バイアスピリン)投与により血栓症の予防をはかる。血小板数の増加がある場合、von Willebrand 因子(vWF)活性が低下していることがあり(後天性のvWF症候群)、アスピリン投与により出血を来す可能性がある。そのためvWFが30%以下の場合にはアスピリンの投与は行わない。上記に加えて、血栓症の高リスク群(年齢60歳以上、あるいは血栓症の既往がある場合)では、細胞減少療法を行う。細胞減少療法の第1選択薬はヒドロキシカルバミド(同:ハイドレア)、またはロペグインターフェロンα-2b(同:ベスレミ)である。ヒドロキシカルバミドの必要量は症例により大きく異なるため、少量から開始し、Ht<0.45となるように調節する。ロペグインターフェロンα-2bは100μgを開始用量とし、2週間に1回皮下注を行う。増量は50μgずつ行い、最大用量は500μgである。自己注射も可能である。個々の患者に応じた最大量のヒドロキシカルバミドを投与してもHt値0.45以下、白血球数10,000/μL以下、血小板数40万/μL以下にコントロールできない場合をヒドロキシカルバミド抵抗性と、ヒドロキシカルバミド投与によりHb<10g/dL、好中球数<1,000/μL、血小板数<10万/μLと血球減少が生じる場合、あるいはヒドロキシカルバミドによる下肢潰瘍などのためにヒドロキシカルバミド治療が継続できない場合を「ヒドロキシカルバミド不耐容」と呼ぶ。ヒドロキシカルバミド治療を開始された患者の20~40%はヒドロキシカルバミド抵抗性/不耐容となる。このような場合は、JAK1/2阻害剤であるルキソリチニブ(同:ジャカビ)投与により、血球数のコントロールのみならず、血栓症の減少も期待できる。1回10mgを開始用量とし、1日2回経口投与する。最大用量は1回25mg(1日50mg)である。真性多血症の3~6%は2次性の骨髄線維症へと、数%の例は急性骨髄性白血病へと病型進展する。治療が一定であるにもかかわらず経過中に血球数が減少する場合や、末梢血に芽球が出現する場合は、骨髄線維症、急性白血病への移行を疑い、骨髄生検を行う。4 今後の展望PVの生命予後は比較的良好なものの、約10~20%の例が血栓症、出血を合併する。現在用いられている血栓症のリスク分類は、細胞減少療法の適応を決めるためのものであり、標準的な治療法が選択された患者における血栓症、出血の発症リスクが明らかになることが望まれる。またロペグインターフェロンα-2bやルキソリチニブ治療により、一部の症例ではJAK2V617F allele burdenの減少が認められる。JAK2V617F allele burdenが治療前値と較べ50%以上減少した症例は、そうでない症例と較べ主要血栓症、出血、骨髄線維症や急性骨髄性白血病への進展、死亡を認めない生存率が良好であることが報告されており、血栓症の予防のみならず、腫瘍量の減少を目指す治療戦略が現実的になりつつある。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。1)日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン2024年版(第3.1版). 金原出版;2024.2)Harrison et al. WHO Classification of Tumours of Haematolopoetic and Lymphoid Tissues 5th edition. WHO;2022. p.p40-43.公開履歴初回2022年11月10日更新2025年6月30日

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PEACEを受講しよう【非専門医のための緩和ケアTips】第39回

第39回 PEACEを受講しよう緩和ケアが広がるにつれて専門誌や書籍も増え、独学でも学びやすくなりました。一方で、緩和ケアは個別性が高かったりコミュニケーションの要素が多かったり、書籍だけでは学べない部分も多くあります。今回は、そうした部分が学べる研修会をご紹介します。今日の質問緩和ケアについて学ぶには、何をすればいいでしょうか? 緩和ケアの連携は地域の実情によって異なる部分も多く、そういった面を学ぶのは本だけでは難しく感じます。ご質問いただいた方の着眼点は素晴らしいですね。おっしゃるとおり、地域の医療機関同士の連携や、在宅療養への移行などの際には地域ごとに事情が異なります。こうした座学では学びにくい領域って、どのように学べばよいのでしょうか? そんな方にお薦めなのが、今回ご紹介する「PEACE」という研修会です。PEACEの正式名称は、「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会(Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education)」と長いため、PEACEの略称や単に「緩和ケア研修会」と呼ばれています。この研修会は、厚生労働省の委託事業として日本緩和医療学会と日本サイコオンコロジー学会がコンテンツを作成しています。事前学習としてE-learningを受講し、グループワークを含む集合研修に1日参加する、というのがその内容。対象は「がん等の診療に携わるすべての医師・歯科医師、緩和ケアに従事するその他の医療従事者」です。E-learning緩和ケア概論/全人的苦痛と包括的アセスメント/がん疼痛/呼吸困難/消化器症状/気持ちのつらさ/せん妄/コミュニケーション/療養場所の選択と地域連携/ACP、看取りのケア、家族・遺族のケアが必修コンテンツです。集合研修コミュニケーションのロールプレイ/全人的苦痛や症状緩和に関するケーススタディ/療養場所の選択と地域連携に関するケーススタディ/患者を支える仕組みについてのレクチャーといった、一人では学びにくいテーマのグループワークが中心です。がん拠点病院では、年に1回以上PEACEを開催することが施設要件になっているため、どの地域でも受講可能です。開催スケジュールは各都道府県の担当部署のサイトに公開されており、「都道府県名+緩和ケア講習会」などで検索すれば出てきます。地域の基幹病院の緩和ケアに関わる医療者と一緒に学ぶことは、連携構築の上での大きな機会となるでしょう。新型コロナの影響で集合研修をオンラインで開催するケースもあり、遠方でも参加しやすくなっています。少し注意が必要なのが内容の「レベル感」です。あくまでも基本的な緩和ケアについて学ぶ研修会であり、受講者の多くが初期研修医を含めた若手です。ベテランの方からすると少し簡単に感じられるかもしれません。一人では学べないことを学び、顔の見える関係をつくるための貴重な機会として、ぜひPEACEを活用してみてください。今回のTips今回のTips地域のがん拠点病院で開催されているPEACEを受講してみましょう。PEACEプロジェクトホームページ/日本緩和医療学会

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近年の米国うつ病有病率―2015~20年調査

 うつ病は一般的に認められる精神疾患だが、致死的な状態を引き起こす可能性がある。COVID-19パンデミックによるうつ病問題の深刻化が、いくつかのデータで示されている。米国・ニューヨーク市立大学のRenee D. Goodwin氏らは、米国におけるCOVID-19パンデミックがメンタルヘルスへ及ぼす影響に対し包括的に対処するため、パンデミック前のうつ病有病率の定量化を試みた。その結果、2015~19年にかけて、うつ病治療件数が相応に増加していないにもかかわらず、うつ病患者の増加が認められており、2020年には過去1年間のうつ病患者数が米国人の10人に1人、青年および若年成人では5人に1人にまで増加していることが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、このメンタルヘルスに関する危機的状況に対処するため、エビデンスに基づく予防や介入、多面的な公衆衛生キャンペーンなどの対策が早急に必要であろうと述べている。American Journal of Preventive Medicine誌2022年11月号の報告。 12歳以上の米国人を対象とした代表的な研究である、薬物使用と健康に関する全国調査(National Survey on Drug Use and Health)の2015~20年のデータを用いて分析を行った。2015~19年における過去1年間のうつ病有病率および介助が必要なうつ病患者数を推定するため、ロバスト標準誤差(SE)を用いたポアソン回帰により時間傾向を評価した。2020年の点推定を算出したが、データの収集法が異なるため、統計傾向分析には含めないこととした。 主な結果は以下のとおり。・2020年において、過去1年間のうつ病エピソードを経験していた12歳以上の米国人は、9.2±0.31%であった。・うつ病の年齢分布は、18~25歳の若年成人(17.2±0.78%)が最も多く、次いで12~17歳の青年(16.9±0.84%)であった。・うつ病の有病率は、性別、人種/民族、収入状況、教育歴のほぼすべてのグループにおいて増加が認められたが、青年および若年成人においては最も急速に増加していた。・35歳以上のうつ病有病率は変化が認められておらず、全研究期間を通じて介助が必要なうつ病有病率は低いままであった。

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オミクロン株BA.4/5の病原性と増殖性、デルタ株よりも低いか/Nature

 東京大学医科学研究所の河岡 義裕氏らの研究グループは、新型コロナウイルスのオミクロン株BA.4/5について、感染した患者の臨床検体からウイルスを分離し、その性状についてハムスターを用いてin vivoで評価した。デルタ株およびBA.2と比較したところ、BA.4およびBA.5のハムスターにおける増殖性と病原性は、いずれもBA.2と同程度であったが、デルタ株と比べると低いことなどが明らかになった。本研究は、東京大学、国立国際医療研究センター、米国ウィスコンシン大学、国立感染症研究所、米国ユタ州立大学の共同で行われ、Nature誌オンライン版11月2日号に掲載された。 主な結果は以下のとおり。・BA.4およびBA.5をハムスターに感染させたところ、BA.2と同様に、すべての株において感染ハムスターは体重減少を示さなかった。一方、デルタ株を感染させたハムスターはすべての個体で体重が減少していた。・BA.4あるいはBA.5を感染させたハムスターでは、呼吸器症状の悪化も認められなかった。・ハムスターの肺や鼻におけるBA.4とBA.5の増殖能は、BA.2と同程度だったが、デルタ株と比べると低かった。さらに、感染動物肺の病理解析を行ったところ、BA.4/5感染ハムスターでは、BA.2感染ハムスターと同程度の軽度の炎症しか見られなかった。・新型コロナウイルスの受容体であるヒトhACE2を発現するハムスターを用いた感染実験においても、BA.4およびBA.5の病原性と増殖能はデルタ株よりも低かった。・BA.2とBA.4を同時に同じ個体に感染させ、どちらの株がハムスターの呼吸器でより増えやすいのか競合試験を行ったところ、呼吸器で検出されたそれぞれの株の割合は、同程度か、ややBA.4のほうが高い傾向が見られた。一方、BA.2とBA.5を同時に感染させたハムスターの呼吸器では、BA.5の割合が高いことがわかった。 研究グループによると、BA.2をもとに、スパイク蛋白質のみをBA.4やBA.5と置き換えた組換えウイルスを用いた感染実験では、BA.4やBA.5のスパイク蛋白質を有するウイルスの病原性がBA.2よりも高いとする報告もあるが、患者から分離したウイルスを用いた本研究では、BA.2、BA.4およびBA.5の病原性に違いがないことが明らかになったとしている。

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海外の著名医師が日本に集結、Coronary Week 2022開催について【ご案内】

 2022年12月1日(木)~3日(土)、The 8th International Coronary Congress(ICC2022)をJPタワーホール&カンファレンスにて開催する。本会は初の試みである「Coronary Week 2022」として、第25回日本冠動脈外科学会学術大会および第34回日本冠疾患学会学術集会と同時開催する。現在、以下24名のInternational Facultyの来日が決定している。―――John D. Puskas (USA)Professor of Cardiovascular SurgeryIcahn School of Medicine at Mount Sinai New York, NYChairman, Department of Cardiovascular SurgeryMount Sinai Morningside (formerly Saint Luke’s),Mount Sinai Beth Israel and Mount Sinai West (formerly Roosevelt) HospitalsNew York, NYDavid P. Taggart (UK)Professor of Cardiovascular Surgery at the University of OxfordMario F. Gaudino (USA) Faisal G. Bakaeen (USA)Stephen Fremes (USA) Bob Kiaii (USA)Husam H. Balkhy (USA) Gianluca Torregrossa (USA)Sigrid E. Sandner (Austlia) Torsten Doenst (Germany)Vipin Zamvar (UK) Piroze Davierwala (Canada)Michael E Farkouh (Canada) James Tatoulis (Australia)Ki-Bong Kim (Korea) Umberto Benedetto (UK)Gil Bolotin (Israel) Sotirios Prapas (Greece)Jeong Seob Yoon (Korea) Oh-Choon Kwon (Korea)Theodoros Kofidis (Singapore) Chusak Nudaeng (Thai)Nuttapon Arayawudhikul (Thai) Chawalit Wongbuddha (Thai)――― Program Chairの荒井 裕国氏(東京医科歯科大学 名誉教授/JA長野厚生連 北信総合病院 統括院長)は「冠動脈外科領域でこれほど多数の豪華海外メンバーが本邦に集結するイベントは初めてであり、ぜひ、この機会にジョイントセッションでの講演にご参加ください。多数のご来場をお待ち申し上げております」と参加を呼びかける。【Coronary Week 2022開催概要】●The 8th International Coronary Congress 会期:2022年12月1日(木)〜3日(土) Program Chair:荒井 裕国(東京医科歯科大学 名誉教授/JA長野厚生連 北信総合病院 統括院長/日本冠動脈外科学会 理事長) ホームページはこちら●第25回日本冠動脈外科学会学術大会 会期:2022年12月1日(木)〜2日(金) 会長:高梨 秀一郎(川崎幸病院心臓病センター心臓外科 主任部長/国際医療福祉大学三田病院 教授 心臓外科部長) ホームページはこちら●第34回日本冠疾患学会学術集会 会期:2022年12月1日(木)〜3日(土) 会長:内科系/中村 正人(東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科)    外科系/渡邉 善則(東邦大学医療センター大森病院 心臓血管外科) ホームページはこちら【会場】JPタワーホール&カンファレンス【参加登録】登録方法:オンライン参加登録はこちら参加費: 条件によって異なる※参加登録サイトにてご確認ください。【お問い合わせ】ICC2022 運営事務局E-mail:jacas25@nip-sec.com

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第134回 「消化器外科手術に男女の性差なし」、女性外科医たちがBMJに研究成果を発表

野球を観戦しながら年齢差、性差について考えるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本シリーズに続き、米国MLBのワールドシリーズも終わり、今年の野球シーズンもほぼ幕を閉じました。MLBではヒューストン・アストロズがフィラデルフィア・フィリーズを4勝2敗で下し、ワールドチャンピオンとなりました。アストロズは5年前の2017年に球団初の世界一となりましたが、組織ぐるみの「サイン盗み」が発覚、当時GM、監督が1年間の出場停止処分を受けており、“インチキ優勝”のレッテルが貼られていたので、まさに満を持しての世界一と言えます。また、メジャー監督歴25年、通算2,093勝のダスティ・ベーカー監督(73歳)は自身初、ワールドシリーズ史上最高齢での世界一となりました。MVPを取った新人のジェレミー・ペーニャ内野手(25歳)との年齢差は実に48歳。MLBの底力と深さを感じさせる今年のシリーズでした。そんな中、オフシーズンに入った日本では、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本代表対北海道日本ハムファイターズといったエキシビジョン・ゲームが各地で行われています。11月3日には東京ドームで、元大リーガーのイチロー氏(49歳、マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が率いる草野球チーム「KOBE CHIBEN」と、高校野球女子選抜の試合が行われました。イチロー氏のチームと女子選抜との試合は、女子野球を盛り上げるためにイチロー氏が中心となって企画したイベントで、昨年12月に第1回が神戸で開かれています。女子選抜は今年の夏の全国高等学校女子硬式野球選手権大会に出場した選手から3年生20人が選ばれました。3年間野球を頑張った女子高校球児へのご褒美といった側面もあるようで、今後も継続される予定だそうです。私はBS-TBSで放送していた生中継を見たのですが、“草野球”にもかかわらず観客もそこそこ入っていた(報道では1万6,272人)のには驚きました。試合はKOBE CHIBENが7対1で圧勝しました(昨年は1対0で辛勝)。イチロー氏は9番・投手で出場し、131球2安打1失点、14奪三振で完投勝利。新加入した元西武ライオンズ(且つ元メジャーリーガー)の松坂 大輔氏(42歳)も4番・遊撃手として9回フル出場、打撃は4打数3安打1打点、守備もほぼ完璧で大活躍でした。40歳を超えたおじさん中心のチームが真剣に女子高生と戦い、ボコボコにしてしまう姿は一部に批判もあったようです。130キロ超の速球を投げる投手は女子高校野球の世界にはいない、とのことですが、その速球を女子高生に忖度することなくバンバン投げて、三振を取っていく姿は、何事にも常に真剣に取り組むイチロー氏らしく、私はむしろ感動を覚えました。女子選抜の選手たちも実に楽しそうにイチロー氏や松坂氏らと対戦していました。ちなみに、イチロー氏のバッティングは4打数無安打で、女子選抜の投手に完璧に封じ込められていました。イチロー氏は試合後のインタビューで、「(身体は)ボロボロです。女子野球選手のモチベーションになれば(と思い試合を企画した)。新たなステージを設けることは意義があると思う」と話していました。というわけで、今回は1ヵ月ほど前にBMJ誌に掲載された、「日本における消化器外科医の手術成績に性差がないことがわかった」という興味深い研究結果のニュースを取り上げます。女性が外科医として十分活躍できる存在であるのかを調査京都大学大学院医学研究科の大越 香江客員研究員、東京大学大学院医学系研究科の野村幸世准教授らの共同研究グループは、日本消化器外科学会による日本最大の手術データベースNational Clinical Database(NCD)を利活用した研究において、男女の消化器外科医が執刀した手術の短期成績を解析しました。日本の消化器外科医における女性の割合は6%程度(2016年当時)と少ないですが、年々増加傾向にあるそうです。しかし、指導的立場の女性消化器外科医は未だに少ないことから、男女の消化器外科医による手術成績に差があるのか、女性が外科医として十分活躍できる存在であるのかを調査するために、この研究を行ったそうです。幽門側胃切除術、胃全摘術、直腸低位前方切除術の死亡率、合併症を比較2022年9月29日、BMJオンライン版に掲載された論文1)によれば、研究の概要は以下のようなものです。2013年から2017年にかけて登録されたNCDおよび日本消化器外科学会の会員データを使用して、幽門側胃切除術(DG:18万4,238症例)、胃全摘術(TG:8万3,487症例)、直腸低位前方切除術(LAR:10万7,721症例)の手術症例の患者背景、病院の特徴、患者の術後短期成績について、執刀した外科医の性別や医籍登録後の年数などを分析。この3つの術式はNCDに患者背景や合併症の有無などが詳細に記録されており、かつ女性消化器外科医の執刀数が比較的多い術式とのことです。研究ではこれらの手術について、術後90日以内の手術関連死亡率、手術関連死亡率および術後30日以内の合併症、膵液瘻(幽門側胃切除術と胃全摘術のみ)、縫合不全(低位前方切除術のみ)の発生率を主要評価項目として解析しました。女性外科医はよりリスクの高い患者を対象に手術を施行多変量ロジスティック回帰モデルを使った患者、外科医、病院の特徴を調整後、男性外科医と女性外科医における手術関連死亡率は、幽門側胃切除術(調整オッズ比[OR]:0.98、95%CI:0.74~1.29〕、胃全摘術(同:0.83、0.57~1.19)、直腸低位前方切除術(同:0.56、0.30~1.05)のいずれにおいても差は認められませんでした。手術関連死亡率と合併症の複合についても、幽門側胃切除術(OR:1.03、95%CI 0.93~1.14)、胃全摘術(同:0.92、0.81~1.05)、直腸低位前方切除術(同:1.02、0.91~1.15)で性差はありませんでした。膵液瘻の発生率は幽門側胃切除術(OR:1.16、95%CI:0.97~1.38)と胃全摘術(同:1.02、0.84~1.23)のいずれにおいても性差はありませんでした。直腸低位前方切除術における縫合不全の発生率(同:1.04、0.92~1.18)にも性差は認められませんでした。また、女性外科医は男性外科医に比べて医籍登録後の年数が短く、腹腔鏡手術に携わる割合が少ないものの、よりリスクの高い患者(栄養不良、ステロイド長期服用、疾患の病期が高い)に手術を施行していることも明らかになりました。なお、担当した手術数は、女性外科医は圧倒的に少なく、全手術の5%しか施行していませんでした。ちなみに、別の研究では、難易度が高い手術ほど女性外科医の担当割合は低くなる傾向が出ていたとのことです。「新規技術を医局で導入するときは、まず男子に先にやらせる」論文掲載に先立ち9月27日に開かれた記者会見で、大越氏らは「女性は手術を執刀するのに適していないと考えられ、外科医になりたいと思っても歓迎されないという話がよくあった。しかし、今回の分析では、術後死亡率や合併症率に執刀医の性別による有意な差はなく、女性も同様に手術スキル向上に成功していることがわかった。今後、手術トレーニングの機会や執刀数、昇進の機会などにおいて男女の平等が実現すれば、女性消化器外科医の技術はさらに向上すると思われる」とコメントしました。なお、女性外科医による腹腔鏡下手術が少なかった点について大越氏は「女性消化器外科医にはそもそも腹腔鏡手術困難症例の割り当てが多く、腹腔鏡技術を習得する機会が少なかった可能性がある」と話し、その背景として野村氏は「新規技術を医局で導入するときは、まず男子にやらせるといった状況もある」と指摘していました。心臓外科や脳神経外科など他の分野でも同じ状況?“男の世界”で苦闘する女性医師の問題については、本連載でも医学部入試に関連して、「第94回 昨年の医学部入試で男女別合格率が逆転!医師が「An Unsuitable Job for a Woman」でなくなる日は本当に来るか(前編)」、「第95回 同(後編)」などで書きました。今回のBMJへの論文掲載で個人的に驚いたのは、10年ほど前、私が女性の外科系医師のキャリアパスをテーマとした座談会の司会をした時に登場してもらった女性消化器外科医が、この論文の共著者の1人だったことです。消化器外科の技術を磨くことに加え、女性外科医の地位向上にも一貫して取り組まれていることに感服しました。今回の論文を読む限り、消化器外科の手術は野球とは違い、そのパフォーマンスに性差はないようです。消化器外科に限らず、心臓外科や脳神経外科など他の分野でも同じ状況なのでしょうか。医師の働き方改革が進められる中、こうした研究は今後ますます重要になってくるに違いありません。野球シーズンの終わり、イチロー氏が女子野球の技術向上に尽力する姿を見ながら、そんなことを考えた週末でした。参考1)Okoshi K, et al. BMJ 2022;378:e070568.

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非感情性精神病患者の就労に対する抗精神病薬の影響

 抗精神病薬の使用が初回エピソード非感情性精神病(nonaffective psychosis)の就労障害低下と関連しているかを明らかにするため、カナダ・オタワ大学のMarco Solmi氏らは、検討を行った。その結果、初回エピソード非感情性精神病に対する抗精神病薬(とくに長時間作用型注射剤)の使用は、未使用の場合と比較し、就労障害リスクを30~50%低下させ、この影響は初回診断5年超でも継続していることを報告した。このことから著者らは、非感情性精神病の初回エピソード後、できるだけ早期に抗精神病薬治療を開始することの意義を強調した。The American Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年10月6日号の報告。 16~45歳の初回エピソード非感情性精神病患者2万1,551例を対象に、抗精神病薬の使用と病気による欠勤または障害年金リスクとの関連を評価するため、最長11年間(2006~16年)のフォローアップ期間を設けたスウェーデン全国コホート研究を実施した。被験者内分析を採用し、選択バイアスを除外するため各個人自身を対照群とし、時間により変化する因子で調整した後、層別Cox回帰モデルを用いて分析した。主要アウトカムは、就労障害(病気による欠勤または障害年金)とし、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、初回エピソード非感情性精神病患者の45.9%に就労障害が認められた(フォローアップ期間中央値:4.8年)。・抗精神病薬使用患者は、未使用患者と比較し、就労障害リスクが低かった(aHR:0.65、95%CI:0.59~0.72)。・調整済みHRが最も低かった因子は、長時間作用型注射剤抗精神病薬の使用(aHR:0.46、95%CI:0.34~0.62)、経口アリピプラゾールの使用(aHR:0.68、95%CI:0.56~0.82)、経口オランザピンの使用(aHR:0.68、95%CI:0.59~0.78)であった。・長時間作用型注射剤の使用は、最も使用頻度の高かった経口抗精神病薬であるオランザピンと比較し、就労障害リスクが低かった(aHR:0.68、95%CI:0.50~0.94)。・調整済みHRは、診断から2年未満、2~5年、5年超の場合で同様であった。

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ラブリズマブ、視神経脊髄炎スペクトラム障害患者で73週間再発ゼロを達成/アレクシオン

 アレクシオンは、2022年11月2日付のプレスリリースで、第III相CHAMPION-NMOSD試験において、ラブリズマブを投与された抗アクアポリン4抗体陽性の視神経脊髄炎スペクトラム障害(以下、NMOSD)成人患者群が、外部対照であるエクリズマブのPREVENT試験のプラセボ群と比較して、再発リスクが有意に低いことが示されたことを2022年欧州多発性硬化症学会(ECTRIMS)会議で発表されたと報告した。 CHAMPION-NMOSD試験は、成人患者(58例)を対象としてラブリズマブの安全性および有効性を評価する非盲検第III相多施設国際共同試験である。NMOSDの再発は長期的な機能障害をもたらす可能性があり、またすでに有効な治療選択肢が存在していたため、本試験では倫理的理由からプラセボ対照群が設定されず、ラブリズマブ投与群は、外部対照としてエクリズマブのPREVENT試験のプラセボ群と比較された。本試験の主要評価項目は、独立評価委員会により判定された初回の治験中再発までの期間と設定されており、ラブリズマブを投与された患者は全員、73週(中央値)にわたる治療期間を再発と判定されることなく経過した(再発リスク低下率:98.6%、ハザード比:0.014[95%信頼区間[CI]:0.000~0.103]、p<0.0001)。48週時点の無再発率は、外部対照のプラセボ群では63%であったのに対し、ラブリズマブ群では100%であった。また本試験では、独立評価委員会により判定された治験中再発の年間再発率(判定された再発数の合計を患者年数の合計で割った値)や、Hauser Ambulation Index(可動性の評価尺度)で測定された可動性(歩行機能)のベースラインからの臨床的に重要な悪化などの副次評価項目も達成された。 全体として、ラブリズマブの安全性および忍容性は、これまでの臨床試験や実臨床下での使用時の結果と一致しており、新たな安全性の懸念は認められなかった。最もよく見られた(患者の10%以上)有害事象(AE)は、COVID-19(24%)、頭痛(24%)、背部痛(12%)、関節痛(10%)、尿路感染(10%)であった。COVID-19 症例はすべて非重篤であり、ラブリズマブとは無関係と見なされている。髄膜炎菌感染症が2例報告されたが、2例とも後遺症なく完治し、1例は試験を継続している。56例の患者が、延長投与期に移行し、現在も治療を継続している。 NMOSDは希少疾患であり、脊髄や視神経などの中枢神経系に影響を与える自己免疫疾患である。ほぼすべてのNMOSD患者が神経症状の新規出現や悪化などを引き起こす再発を繰り返し経験し、各再発は重度かつ予測不能で、障害が一生残ることもある。 CHAMPION-NMOSD試験の主任治験責任医師であるSean J. Pittock氏は「CHAMPION-NMOSD試験では、73週間(中央値)の治療期間にわたって再発が見られなかった。これは、ラブリズマブの8週間ごとの投与によって再発リスクが持続的に低下しうることを示しているとともに、NMOSDの治療におけるC5補体阻害の有効性を強調するものだ」と述べた。また、NMOSDを対象とした Guthy-Jackson Charitable Foundationのメディカルアドバイザーの座長でもあるMichael Yeaman氏は、「近年、抗AQP4抗体陽性のNMOSD患者に安全かつ有効な治療を提供する活動において、有意義な進展が見られている。この希少疾患は、可動性、視力、筋力、平衡機能など、日常生活のあらゆる面で妨げとなる可能性があるが、患者やその家族と日々接する中で得られる知見に基づき、革新的な研究や臨床試験を続けることで、個々のニーズや生活習慣に合った新たな治療の選択肢を発展させ、患者を力付けることができる」と述べた。アレクシオンのシニア・バイスプレジデントであり、開発・安全性部門長であるGianluca Pirozziは、「CHAMPION-NMOSD試験は、希少疾患を対象とした科学的に厳密で臨床的にも意義ある臨床試験のデザイン、および実施に必要なイノベーションを達成した注目すべき実例となる。本試験では、患者の声を聞き、保健当局と連携しながら、患者のニーズを第一に考え、患者にとって最も重要な指標を評価した。今回得られた有意義な結果に加え、ラブリズマブがNMOSDのコミュニティのために治療を向上させうることを大変喜ばしく思う」と語った。

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EVARデバイス監視モデルがリスク評価に有望/BMJ

 腹部大動脈瘤の血管内修復術(EVAR)後の長期にわたるデバイス(グラフト)監視に、リンク登録した医療費支払請求データを活用したところ、個々のデバイスの再手術リスクを特定したことが示された。米国・ダートマス-ヒッチコック・メディカルセンターのPhilip Goodney氏らによる検討の結果で、著者は「デバイスメーカーおよび規制当局は、リンク登録データソースを活用すれば、心血管手術後の実臨床における長期アウトカムの積極的なモニタリングが可能である」と述べ、今回の検討結果が、将来的なデバイス監視モデルになりうることを示唆した。BMJ誌2022年10月25日号掲載の報告。EVAR治療使用の4種のデバイスを長期監視、再手術・破裂を評価 研究グループは、実臨床での大動脈エンドグラフトの長期アウトカム(腹部大動脈瘤の再手術およびlate破裂)の評価に、リンク登録医療費支払いデータを用いることを検討する観察サーベイランス試験を行った。米国メディケア医療費とリンクするVascular Quality Initiative Registryを設定(2003~18年、282施設が参加)し検討した。 被験者は2万489例で、EVAR治療では4種のデバイスが使用されており、8,310例(40.6%)がExcluder(Gore製)、6,606例(32.2%)がEndurant(Medtronic製)、3,281例(16.0%)がZenith(Cook Medical製)、2,292例(11.2%)がAFX(Endologix製)を使用した。このうち、AFXは2014年後期に改良が行われたため、同群は2群に分類し(初期AFX群942例、後期AFX群1,350例)、他のデバイス群と比較した。検討には傾向マッチングCoxモデルが用いられた。 主要評価項目は、EVAR後の腹部大動脈瘤の再手術および破裂の発生。全患者(100%)が、登録または医療費支払ベースもしくは両者を介したアウトカム評価を完遂した。当局の警告発出は2017年、対して開発モデルのリスク特定時期は2013年半ば 被験者の年齢中央値は76歳(四分位範囲[IQR]:70~82)、男性が80.0%(1万6,386/2万489例)、追跡期間中央値は2.3年(IQR:0.9~4.1)であった。 5年粗再手術率は、初期AFX群がその他デバイス群と比べて有意に高率であった。初期AFX群27.0%(95%信頼区間[CI]:23.7~30.6)に対し、Excluder群14.9%(13.7~16.2)、Endurant群19.5%(18.1~21.1)、Zenith群16.7%(15.0~18.6)であった。 初期AFXでEVARを受けた患者の再手術リスクは、傾向マッチングCoxモデルでのその他デバイスとの比較において有意に高率であり(ハザード比[HR]:1.61、95%CI:1.29~2.02)、外科医レベル変数(臨床でのAFXグラフト使用が33%超)を用いた解析でも同様であった(1.75、1.19~2.59)。 リンク登録された医療費支払請求データが、早期AFXデバイスの再手術リスク増大を特定したのは2013年半ばであり、2017年に米国で最初の規制当局の警告が発出されるよりかなり前であった。

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線維組織に対する追加焼灼 - 心房細動アブレーションはさらに進化したか?(解説:香坂俊氏)

(1)加齢と線維化と心房細動 心房細動は心筋組織の「線維化」にその根本原因があるとされている。実はどこの臓器でも加齢と線維化の進行は表裏一体であり、心臓の場合、その典型的な表現型が心房細動であるという言い方もできる(下記参照)。―――――――――――――――――――・線維化が進んだ心房では、洞房結節からの信号が線維組織に邪魔されたり、ほかの場所からの信号が混ざったりして、その結果小さな不規則なリエントリー回路が形成される。・加えて、線維化が進んだ心臓は急速に大きくなっていき(リモデリング)、余計に伝導が房室結節に伝わりにくくなり、さらに心房細動が起きやすくなる。『極論で語る循環器内科 第3版』1章より許可を得て抜粋―――――――――――――――――――(2)線維組織をターゲットとするアブレーションは有効か? 近年、この線維組織がMRIによって可視化することができるようになっている。今回執筆を依頼いただいたDECAAF II試験では、心房細動カテーテルアブレーション(焼灼)治療を行う際に、追加でこの線維組織を「焼く」ことによって、治療成績を向上させることができるかどうか、ランダム化によって検討している。 しかし、結果から先に申し上げると、線維組織を追加焼灼した群と通常焼灼群を比較しても、90日の心房細動の再発率に差は認められず(43.0% vs.46.1%、P=0.63)、一方で手技関連の合併症(とくに脳梗塞)は増えてしまった(1.5% vs.0%)。同論文の著者たちは結語に率直に「この研究結果は MRIガイド下のカテーテル焼灼術の使用を支持しない(findings do not support the use of MRI-guided fibrosis ablation)」と記している。(3)DECAAF II試験がもたらしたもの 意欲的なデザインであり、線維組織を焼灼のターゲットとするということも非常に理に適っていたように考えられたのだが、予想されるような結果はもたらされなかった。心房細動アブレーションは優れた手技であり、心房細動のリズムコントロール治療に革命的な変化をもたらしたが、その基本手技から再発率をさらに下げることは容易ではない(とくに今回対象とされた永続性心房細動に対しては)。 しかし、自分はこのDECAAF II試験が実施されたことには大きな意義があったと考えている。「線維組織周辺を焼いたほうがよいような気がする」という、理には適っているが仮説にすぎない命題を、多施設共同RCTに落とし込み、検証を行う姿勢というのは見習うべきではないかと思う。最終的に10ヵ国44施設から843例の患者さんを登録したと記載されているが、こうした方々の協力があってこそ、いわゆる標準治療は真に「標準(スタンダード)」であると広く認知されるのではないだろうか。

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英語で「経口摂取ができている」は?【1分★医療英語】第53回

第53回 英語で「経口摂取ができている」は?The patient is tolerating oral intake very well. (患者さんは、経口摂取がしっかりできています)Okay, then let’s plan to discharge him next week.(良いですね。それでは、来週退院の予定としましょう)《例文1》I will advance his diet because he is tolerating puree diet.(ペースト食が摂取できているので、食上げします)《例文2》Let’s make her NPO(nothing per os)for now as she is not tolerating PO.(経口摂取ができていないので、いったん絶食にしておきましょう)《解説》「経口摂取ができている」を直訳しようとすると、“The patient can eat~”というようなフレーズが思い浮かぶかもしれません。確かにそれでも意味は通じるでしょうが、医療現場では今回紹介した“tolerate”という動詞をよく用います。この“tolerate”を使うことで、「これまで食事が摂れていなかった人」、あるいは「食事摂取が十分できるかどうかわからなかった人」が、「十分耐性がある」「十分にその力がある」ことを確認した、というニュアンスを出すことができます。“tolerate”という動詞は「耐える」という訳が充てられることが多く、知らないと咄嗟に使うのは難しいかもしれませんが、実はよく医療現場で用いられる言葉で、患者さんの回復過程に相性の良い動詞です。他にも、「可能な範囲で食上げをしてください」という場合に、“Please advance his diet as tolerated.”というフレーズを使うことがあります。“tolerate”を“as”と一緒に用いて“as tolerated”とすると「できる範囲で」「可能な範囲で」といった意味合いを持たせることができます。医師が看護師さんへの指示を出す場合などによく用いる表現ですので、これもあわせて覚えてしまいましょう。講師紹介

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第137回 コロナワクチン買い占めが130万人の命を奪った/あの飲み物でコロナ予防?

COVID-19ワクチン買い占めが130万人の命を奪った去年2021年の終わりまでに世界のおよそ2人に1人(約50%)が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)ワクチンの一通り(2回)の接種を済ませました。しかしその普及率は一様ではなく、高所得国では75%近くに達しているのに対して低所得国ではわずか2%足らずです。富裕国は去年末時点でCOVID-19ワクチンを余分に貯め込み、比較的重症化し難い幼い小児への接種に取り掛かっています。かたや貧しい国はというとCOVID-19で死ぬリスクが高い人への接種も十分に行き届いていないありさまです。COVID-19ワクチン普及の世界的な格差は不必要な死をおそらくもたらしたとすでに周知されています。そのような不必要な死がどれほど生じたかを推定することは将来の不可避な疫病流行への備えの準備に役立つはずです。そこで英国ワーウィック大学の数理疫学専門家Sam Moore氏等は世界154ヵ国の死亡やワクチン普及のデータを使い、金ではなく需要に応じてCOVID-19ワクチンが隈なく世界の人々の手に渡っていたらSARS-CoV-2感染やその重症度はどうだったかを予想しました。その結果、COVID-19ワクチンが世界で完全に公平に分配されていたとしたら2021年にSARS-CoV-2感染は約3億例少なく、130万人はCOVID-19で死なずに済んだと推定されました1-4)。さらには変異株を封じる効果も期待できるようです。SARS-CoV-2オミクロン株BA.5が流行したかと思えば早くも次はBA.5から分家したBQ.1やその近縁種BQ.1.1の感染が世界的な広がりを見せており、米国では先週5日までの一週間のCOVID-19診断数のおよそ35%を占めるまでに増えています5)。その前の週のBQ.1とBQ.1.1感染の割合はおよそ23%でした。欧州でも増えており、まもなく感染の大半を占めるようになり、向こう数週間か数ヵ月の感染例増加を後押しするとみられています6)。COVID-19ワクチンをより公平に共有すれば、SARS-CoV-2感染がいっそう減少し、そのような次から次へのSARS-CoV-2変異株台頭を遅らせうることも今回の研究で示唆されました4)。金払いではなく需要に応じてワクチンを分配することで皆が恩恵を受けうるのであり1)、各国の政策決定者は今回の研究の推定結果を頼りに次の流行にもっと優れた手立てを講じることができそうです4)。コーヒーでCOVID-19予防?COVID-19ワクチンを世界に公平に広めるには各国の協力などのひと手間が今後必要ですが、すでに世界に広まるある飲み物がもしかしたらCOVID-19予防効果を担うかもしれません。その飲み物とは、それを朝飲まないことには一日が始まらないという方も多いであろうコーヒーです。その成分・5-caffeoyl quinic acid(慣用名はクロロゲン酸)がコーヒー1杯分ほどに含まれる量の濃度でSARS-CoV-2のスパイクタンパク質と細胞のACE2受容体の結合を確実に阻止し、細胞感染を防ぐことがドイツのヤーコプス大学の化学者Nikolai Kuhnert氏等の生化学実験で示されました7)。実験ではコーヒー1杯を200mLと仮定しました8)。その量のコーヒーにはクロロゲン酸がおよそ100mg含まれます。コーヒーに実際のところCOVID-19予防効果があるのかないのかの判断は化学者である自分にはできないが、疫学試験でその答えが判明するだろうとKuhnert氏は言っています8)。同氏等は社会学などの他の分野の研究者に相談する予定です。参考1)Moore S, et al. Nat Med. 2022 Oct 27. [Epub ahead of print]2)Quantifying the effect of inequitable global vaccine coverage on the COVID-19 pandemic / Nature3)Daily briefing: Vaccine hoarding might have cost 1.3 million lives / Nature 4)COVID vaccine hoarding might have cost more than a million lives / Nature 5)COVID variants BQ.1/BQ.1.1 make up 35% of U.S. cases / Reuters6)Cases of BQ.1, BQ.1.1 COVID variants double in U.S. as Europe warns of rise / Reuters7)Schmidt D, et al. Food Funct. 2022;13:8038-8046.8)Research at Jacobs University: Coffee could offer protection from catching COVID-19 / Eurekalert

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不眠症患者の死亡リスクに対する睡眠薬の影響~J-MICC研究

 不眠症患者の死亡リスクに関する研究では、一貫した結果が得られていない。不眠症の治療では、睡眠のコントロールよりも、睡眠薬の使用が死亡リスクを高める可能性があるにもかかわらず、死亡リスクに対する睡眠薬の影響については、これまでよくわかっていなかった。佐賀大学医学部附属病院の祖川 倫太郎氏らは、日本の大規模サンプルにおける全死亡リスクと睡眠薬使用との関連を、併存疾患の影響を考慮したうえで評価した。その結果、睡眠薬の使用と全死亡率との間に、性別および年齢による関連性が観察されたことを報告した。Sleep Medicine誌オンライン版2022年9月28日号の報告。 日本多施設共同コーホート研究(Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study:J-MICC study)として35~69歳の9万2,527人を対象に、死亡率に関するフォローアップ調査を実施した。睡眠薬の定期的な使用の評価には、自己記入式アンケートを用いた。がん歴は死亡リスクが高く、睡眠薬による不眠症治療と関連しているため、がん歴を有する患者は除外した。睡眠時間、併存疾患(BMI、虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病)などの共変量で調整した後、睡眠薬使用に関連する全死亡率のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間(平均:8.4±2.5年)中の死亡数は1,492人であり、睡眠薬の使用率は4.2%であった。・共変量で調整した後、睡眠薬の使用により、全死亡リスクが有意に上昇することが確認された(HR:1.32、95%CI:1.07~1.63)。・睡眠薬の使用と全死亡率との関連は、男性(HR:1.51、95%CI:1.15~1.96)、60歳未満(HR:1.75、95%CI:1.21~2.54)で強かった。

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SpO2目標値の高低で、人工呼吸器の非使用期間に差はあるか/NEJM

 侵襲的人工呼吸管理を受けている重篤な成人患者では、酸素飽和度(SpO2)の目標値を3段階(低[90%]、中[94%]、高[98%])に分けた場合に、これら3群間で28日後までの人工呼吸器非使用日数に差はなく、院内死亡の割合も同程度であることが、米国・ヴァンダービルト大学のMatthew W. Semler氏らが実施した「PILOT試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2022年10月24日号に掲載された。単一施設のクラスター無作為化クロスオーバー試験 PILOT試験は、侵襲的人工呼吸管理下の患者における、異なるSpO2目標値が臨床アウトカムに及ぼす影響の比較を目的に、ヴァンダービルト大学医療センター(米国、ナッシュビル市)の救急診療部(ED)と集中治療室(ICU)で実施された実践的な非盲検クラスター無作為化クロスオーバー試験であり、2018年7月~2021年8月の期間に参加者の登録が行われた(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。 対象は、ICUに入室またはEDを受診しICU入室が予定されている成人(年齢18歳以上)患者であり、侵襲的人工呼吸管理を最初に受けた時点で試験に登録された。 被験者は、SpO2(パルスオキシメトリで測定)の目標値が低(90%、目標範囲:88~92%)、中(94%、92~96%)、高(98%、96~100%)の3つの群に無作為に割り付けられ、無作為に作成された順序で2ヵ月ごとに3つの群に切り換えられた。 主要アウトカムは、28日以内の生存および人工呼吸器非使用日数とされた。副次アウトカムは28日目までの死亡であった。安全性アウトカムの頻度も3群で同程度 2,541例が主解析に含まれた。低目標値群が808例(年齢中央値57歳、女性44.7%)、中目標値群が859例(59歳、44.8%)、高目標値群は874例(59歳、46.8%)であった。SpO2中央値は、それぞれ94%、95%、97%で、SpO2が99%または100%の患者の割合は、12.3%、14.7%、32.7%、85%未満の患者の割合は、0.8%、0.6%、0.9%だった。 28日目までの人工呼吸器非使用日数中央値は、低目標値群が20日(四分位範囲[IQR]:0~25)、中目標値群が21日(0~25)、高目標値群は21日(0~26)であり、3つの群で有意な差は認められなかった(p=0.81)。 また、28日目までの院内死亡は、低目標値群が808例中281例(34.8%)、中目標値群が859例中292例(34.0%)、高目標値群は874例中290例(33.2%)であった。 安全性のアウトカムについては、心停止、不整脈、心筋梗塞、脳卒中、気胸の発生は3つの群で同程度であった。有害事象は、低目標値群で1件(徐脈)みられた。 著者は、「これらの知見の臨床的意義は、ICUで人工呼吸管理を受けている患者では、SpO2目標値を90%にまで低く設定して酸素補給を制限しても、死亡を防げず、人工呼吸器からの解放を早められないということである」と指摘している。

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