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コロナワクチン後の心筋炎、高濃度の遊離スパイクタンパク検出

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNAワクチン(以下、新型コロナワクチン)接種後、まれに心筋炎を発症することが報告されているが、そのメカニズムは解明されていない。そこで、マサチューセッツ総合病院のLael M. Yonker氏らの研究グループは、青年および若年成人の新型コロナワクチン接種後の血液を分析し、心筋炎発症例の血中では、切断を受けていない全長のスパイクタンパク質が、ワクチン接種により産生された抗スパイク抗体に結合していない“遊離”の状態で、高濃度に存在していたことを発見した。Circulation誌オンライン版2023年1月4日掲載の報告。遊離スパイクタンパク質が平均33.9pg/mLと有意に高濃度で検出された 2021年1月~2022年2月にかけて、ファイザー製(BNT162b2)またはモデルナ製(mRNA-1273)の新型コロナワクチン接種後に心筋トロポニンTの上昇を伴う胸痛を呈し、心筋炎により入院した患者16例、および年齢をマッチングさせた健康人45人を対象とし、血液をプロスペクティブに採取した。SARS-CoV-2特異的な細胞性免疫応答、自己抗体産生、血中のスパイクタンパク質濃度などを評価した。 SARS-CoV-2に対する適応免疫応答やT細胞応答は、心筋炎発症例と非発症例で差がなかった。また、自己抗体の産生や他のウイルス感染、新型コロナワクチン接種後の過剰な抗体反応も認められなかった。しかし、血中の遊離のスパイクタンパク質濃度には、大きな差がみられた。心筋炎非発症例では、抗スパイク抗体に結合していない遊離のスパイクタンパク質が全例で検出不可であったのに対し、心筋炎発症例では、平均33.9pg/mLと有意に高濃度で検出された(p<0.0001)。また、心筋炎発症例の血漿について、抗体を変性させるdithiothreitolで処理しても、スパイクタンパク質濃度に変化がみられなかったことから、心筋炎発症例で検出されたスパイクタンパク質は、抗スパイク抗体に捕捉されなかったことが示唆された。 本論文の著者らは、「心筋炎発症の有無によって、新型コロナワクチン接種後の免疫応答に差がみられなかったのは、安心感を与える結果であった。心筋炎発症例の血中では、遊離のスパイクタンパク質がみられ、この知見についてより深く理解する必要はあるが、新型コロナウイルス感染症の重症化予防における新型コロナワクチン接種のベネフィットが、リスクを上回ることに変わりはない」とまとめた。

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米国・HIV感染者へのART、人種・民族差は?/JAMA

 米国のHIV感染者が抗レトロウイルス療法(ART)を受ける可能性について、人種・民族間で差異があるかを調べる検討が、同国・ノースカロライナ大学のLauren C. Zalla氏らにより行われた。HIVケア開始1ヵ月以内にARTが開始される確率について有意差はなかったが、インテグレーゼ阻害薬(INSTI)を含むARTを受ける可能性は、調査対象期間(2007~19年)の早期においては、白人と比べて黒人とヒスパニック系の患者で有意に低く、ガイドラインの見直しに伴いINSTIが大半のHIV感染者の初回治療として推奨されるようになって以降、有意差が見られなくなったという。著者は、「さらなる研究で、根底にある人種・民族間の差異を明らかにすること、また処方の差異が臨床アウトカムと関連するかどうかを調べる必要がある」とまとめている。JAMA誌2023年1月3日号掲載の報告。2007~19年の初期治療での処方確率を白人、黒人、ヒスパニック系で比較 研究グループは後ろ向き観察研究にて、米国でHIVケアを導入した新規成人感染者における、INSTIを含むARTの処方の人種および民族間の差異を推定し、それらの差異の変化を治療ガイドラインの変遷と関連付けて調べた。 米国内200超のクリニックが参加する最大規模のHIVケアコンソーシアムであるNorth American AIDS Cohort Collaboration on Research and Designの登録患者データから、INSTIが米国食品医薬品局(FDA)によって最初に承認された2007年10月12日以降、2019年4月30日までにHIVケアを受けた成人4万2,841例のデータを調査した。 人種および民族の情報は、患者の医療記録から集め、「ヒスパニック系」「非ヒスパニック系黒人」「非ヒスパニック系白人」に集約して検討した。 主要アウトカムは、HIVケア開始1ヵ月以内にARTが最初に開始される確率と、INSTIを含むARTが処方される確率。ヒスパニック系・非ヒスパニック系黒人患者と非ヒスパニック系白人患者との差異を、治療開始時期と推奨初回治療レジメンに関する国のガイドラインが変更された暦年および期間ごとに推定し評価した。ARTの開始確率に差はないが、INSTI処方率に当初は有意差あり 4万1,263例が人種および民族の情報を有していた。1万9,378例(47%)が非ヒスパニック系黒人、6,798例(16%)がヒスパニック系で、1万3,539例(33%)が非ヒスパニック系白人。男性3万6,394例(85%)、年齢中央値42歳(IQR:30~51)であった。 2007~15年(CD4+細胞数ベースでの治療開始がガイドラインで推奨)では、ケア開始1ヵ月以内のART開始の確率は、白人患者45%、黒人患者45%(白人患者との差:0%、95%信頼区間[CI]:-1~1)、ヒスパニック系患者51%(5%、4~7)であった。 2016~19年(CD4+細胞数に関係なくすべての患者への治療を強くガイドラインで推奨)では、白人患者66%、黒人患者68%(白人患者との差:2%、95%CI:-1~5)、ヒスパニック系患者71%(5%、1~9)であった。 INSTIの処方率は、2009~14年(初回治療として承認されたが、ガイドラインでの推奨はなし)に、白人患者で22%であったのに対し、黒人患者で17%(白人患者との差:-5%、95%CI:-7~-4)、ヒスパニック系患者で17%(-5%、-7~-3)にとどまっていた。2014~17年(INSTIを含むARTを初回治療の選択肢としてガイドラインで推奨)では、白人患者と比較して黒人患者では有意な差があったが(-6%、-8~-4)、ヒスパニック系患者では有意な差はなかった(-1%、-4~2)。 2017~19年(INSTIを含むARTがほとんどのHIV感染者の唯一の初回治療として推奨)では、人種および民族による差異は統計学的に有意ではなくなっていた。

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高血圧の人では、コーヒーと緑茶のどちらが危ない?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第226回

高血圧の人では、コーヒーと緑茶のどちらが危ない?Pixabayより使用今回紹介する研究は、コーヒーあるいは緑茶の摂取が、高血圧の患者さんにおいて心血管疾患(CVD)の死亡リスクにどのような影響を及ぼすかを検討したものです。個人的にはコーヒーのほうがかなり好きなのですが、私はブラックコーヒーが飲めないので、寒い日は毎晩温かいカフェオレを飲んでいます。砂糖がたっぷり入った甘いカフェオレばかり飲んでいるので、「糖尿病になるわよ」と妻から注意されています。Teramoto M, et al. Coffee and Green Tea Consumption and Cardiovascular Disease Mortality Among People With and Without Hypertension.J Am Heart Assoc. 2022 Dec 21;e026477.これは、JACC(Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer)コホートにおいて、ベースライン時に40~79歳で、生活習慣、食事、病歴に関する質問票と健康診断に回答した1万8,609人(男性6,574人、女性1万2,035人)を2009年まで追跡調査した報告です。参加者を、至適・正常血圧、正常高値血圧、I度高血圧、II-III度高血圧、の4つの血圧カテゴリーに分類しました(現在の分類とは少し異なります)。そして、Cox比例ハザードモデルを用いて、CVD死亡のハザード比を算出しました。中央値18.9年の追跡期間中に、合計842人のCVD死亡が記録されました。コーヒー摂取は、コーヒーを飲まない人と比較して、II-III度高血圧の人のCVD死亡リスクの増加と関連していることがわかりました。CVD死亡のハザード比(95%信頼区間)は、1杯/日未満で0.98(0.67~1.43)、1杯/日で0.74(0.37~1.46)、2杯/日以上で2.05(1.17~3.59)という結果だったのです。ただし、I度高血圧以下の集団では、このような関連は観察されませんでした。反面、緑茶の摂取は、どの血圧カテゴリーにおいてもCVDのリスク上昇と関連しませんでした。というわけで、II度高血圧(診察室血圧が収縮期血圧160~179mmHgかつ/または拡張期血圧100~109mmHg、家庭血圧が収縮期血圧140~159mmHgかつ/または拡張期血圧90~99mmHg)以上の場合、コーヒーを飲み過ぎないほうがよいということになります。緑茶が循環器に対して良い効果をもたらすというのは、いろいろな研究で示されています。この機序として、(1)心・腎臓・大動脈におけるナトリウム-カリウムポンプの発現、(2)腎臓におけるレニン-アンジオテンシンII-アルドステロン系の活性化、(3)心・腎臓・大動脈における抗酸化・抗炎症作用、(4)血管内皮における一酸化窒素の合成促進、(5)脂質プロファイルの改善、が考えられています1)。1)Gao J, et al. Green tea could improve elderly hypertension by modulating arterial stiffness, the activity of the renin/angiotensin/aldosterone axis, and the sodium-potassium pumps in old male rats. J Food Biochem. 2022 Sep 30;e14398.

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1月20日 血栓予防の日【今日は何の日?】

【1月20日 血栓予防の日】〔由来〕「大寒」に前後する、この時季は血栓ができやすいという背景と「20」を「ツマル」と語呂合わせして日本ナットウキナーゼ協会が制定。「ナットウキナーゼ」が血栓を溶解し、脳梗塞や心筋梗塞を予防する効果があることを啓発している。関連コンテンツ「脳卒中診療の最新知見」【診療よろず相談TV】冬の救急編:心筋梗塞はいつ疑う!?【救急診療の基礎知識】その血栓症、CATの可能性は?【知って得する!?医療略語】リバーロキサバン延長で、静脈血栓塞栓症の再発リスク低減/BMJコロナvs.インフル、入院患者の血栓塞栓症リスク/JAMA

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高齢者の認知機能に対するハーブ抽出物の効果~ランダム化対照試験

 アルツハイマー病モデルに関するin vitroおよびin vivoの研究において、ロスマリン酸がアミロイドβの形成やアミロイドβタンパク質のオリゴマー化や沈着を阻害できると報告されている。ロスマリン酸500mgを含有する食用ハーブであるメリッサオフィシナリス(M. officinalis)抽出成分は、健康成人や軽度のアルツハイマー型認知症患者に対し忍容性、安全性が良好であると考えられる。金沢大学の篠原 もえ子氏らは、高齢者におけるM. officinalis抽出成分の認知機能に対する影響を評価するため、ランダム化プラセボ対照二重盲検試験を実施した。その結果、M. officinalis抽出成分は、高血圧でない高齢者の認知機能低下の予防に有用である可能性が示唆された。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2022年12月7日号の報告。 対象は、主観的または軽度認知障害(MCI)と診断された高齢者323例。本試験は、96週間のM. officinalis抽出成分補充療法(1日当たり500mgのロスマリン酸)とその後24週間のウォッシュアウト期間で構成した。主要エンドポイントは、アルツハイマー病の認知機能障害を評価する認知機能下位尺度(ADAS-cog)とし、副次的エンドポイントは、その他の認知機能測定結果および安全性、忍容性とした。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインから96週時における認知機能測定値の変化は、M. officinalis群と対照群に有意な差は認められなかった。・しかし、臨床的認知症重症度判定尺度(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB)による分析では、非高血圧患者において、M. officinalis群ではCDR-SBが0.006増加し、対照群ではCDR-SBが0.085減少しており、両群間で統計学的に有意な差が認められた(p=0.036)。・また、両群間でバイタルサイン、身体的および神経学的な測定値、海馬容積の違いは認められなかった。

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骨盤臓器脱の改善効果、ペッサリーvs.外科的治療/JAMA

 症候性骨盤臓器脱患者において、保存的治療であるペッサリー療法は手術治療と比較して、24ヵ月時点での患者報告による改善に関して非劣性が認められなかった。オランダ・アムステルダム大学のLisa R. van der Vaart氏らが、オランダの21施設で実施した無作為化非劣性試験「PEOPLEプロジェクト」の結果を報告した。骨盤臓器脱は女性のQOL(生活の質)に悪影響を及ぼす疾患で、平均寿命の延長に伴い骨盤臓器脱に対する費用対効果の高い治療が世界的に求められている。JAMA誌2022年12月20日号掲載の報告。24ヵ月時の症状の主観的改善を手術と比較 研究グループは、手術歴またはペッサリー療法歴のないステージ2以上の骨盤臓器脱症状を有する女性を、ペッサリー群または手術群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、24ヵ月時の主観的改善とし、「とても良くなった」から「とても悪くなった」まで7ポイントのリッカート尺度を用いたPatient Global Impression of Improvement(PGI-I)で評価した。副次エンドポイントは、重症度(Patient Global Impression of Severity:PGI-S)、疾患特異的QOLなどで、そのほか治療群のクロスオーバーや有害事象についても評価した。 主要エンドポイントの統計解析では、PGI-I評価に基づき改善(「とても良くなった」、「良くなった」)と非改善に分け、非劣性マージンは群間リスク差の信頼区間(CI)下限が-10%であることとした。 2015年3月~2019年11月に、適格基準を評価された1,605例のうち同意が得られた440例(平均[±SD]年齢 64.7±9.29歳)が無作為化された(ペッサリー群218例、手術群222例)。最終追跡調査日は、2022年6月30日であった。ペッサリー療法は手術に対して非劣性を認めず 無作為化された440例(平均[±SD]年齢 64.7±9.29歳)のうち、ペッサリー群173例(79.3%)および手術群162例(73.3%)が24ヵ月の追跡調査を完了した。 主観的改善は、ペッサリー群で173例中132例(76.3%)、手術群で162例中132例(81.5%)に認められた(群間リスク差:-6.1%、片側95%CI:-12.7~∞、非劣性のp=0.16)。per-protocol解析では、ペッサリー群で74例中52例(70.3%)、手術群で150例中125例(83.3%)が主観的改善を報告した(-13.1%、-23.0~∞、非劣性のp=0.69)。 24ヵ月時にペッサリー群の218例中123例(60.0%)がペッサリーの使用を中止しており、118例(54.1%)は手術へ治療を切り替えた。 主な有害事象は、ペッサリー群が不快感(42.7%)、手術群が尿路感染症(9%)であった。

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リファンピシン耐性結核、24週レジメンが標準治療に非劣性/NEJM

 リファンピシン耐性肺結核患者に対する24週間の経口治療レジメンは、従来の標準治療に対して有効性に関する非劣性が示され、安全性プロファイルも良好であった。オランダ・Operational Center AmsterdamのBern-Thomas Nyang'wa氏らが、国境なき医師団主導による多施設共同無作為化非盲検非劣性第II/III相試験「TB-PRACTECAL試験」の結果を報告した。リファンピシン耐性結核患者においては、現在のレジメンより治療期間が短くかつ有効で、副作用プロファイルも許容できる、経口治療レジメンが必要とされている。NEJM誌2022年12月22日号掲載の報告。ベダキリン+pretomanid+リネゾリド(BPaL)±モキシフロキサシン(M)またはクロファジミン(C)を標準治療と比較 研究グループは、ベラルーシ、南アフリカ共和国、ウズベキスタンの7施設において、新たに診断された15歳以上のリファンピシン耐性肺結核患者を登録した。 本試験の第1段階では、現地の標準治療と3種類の治療レジメン(BPaL、BPaLM、BPaLC)の4群に1対1対1対1の割合で、第2段階では標準治療とBPaLM群に1対1の割合で患者を無作為に割り付けた。 各治療レジメンは次のとおりである。・BPaL:ベダキリン1日400mgを2週間、その後200mgを週3回22週間、pretomanid 1日200mgを24週間、リネゾリド1日600mgを16週間、その後300mgを8週間、いずれも経口投与・BPaLM:BPaL+モキシフロキサシン1日400mgを24週間経口投与・BPaLC:BPaL+クロファジミン1日100mg(体重30kg未満の場合は50mg)を24週間経口投与 主要評価項目は、無作為化後72週時点での不良転帰(死亡、治療失敗、治療中止、追跡不能、結核再発の複合)で、非劣性マージンを12ポイントとした。BPaLMは、72週後の不良転帰に関して標準治療に対し非劣性 本試験は、2017年1月に最初の患者を無作為化し、2021年3月18日に登録を早期終了した。 登録終了時点で、第2段階として145例(標準治療群73例、BPaLM群72例)がintention-to-treat(ITT)集団(無作為化された全患者)、128例(それぞれ66例、62例)が修正ITT集団(ITT集団のうち少なくとも1回の試験薬の投与を受け、微生物学的にリファンピシン耐性結核であることが証明された患者)、90例(それぞれ33例、57例)がper- protocol集団の解析対象となった。 主要評価項目のイベントは、修正ITT解析ではBPaLM群で11%、標準治療群で48%発生し(群間リスク差:-37ポイント、96.6%信頼区間[CI]:-53~-22)、per-protocol解析ではBPaLM群で4%、標準治療群で12%発生した(-9ポイント、-22~4)。 無作為化され少なくとも1回の試験薬の投与を受けた患者(as-treated集団)において、72週以内のGrade3以上または重篤な有害事象の発現率は、BPaLM群が標準治療群より低値であった(19% vs.59%)。

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統合失調症における抗精神病薬の減量と継続

 統合失調症の主な治療では抗精神病薬が用いられるが、QOLを低下させうるさまざまな投与量関連の副作用が問題となる。そのため、抗精神病薬は可能な限り低用量での使用が推奨されているが、実際の臨床現場では高用量で使用されることも少なくない。再発リスクを抑え有害な副作用を最小限にとどめるために、抗精神病薬を安全に減量できるのかどうか、またはその方法について明らかにする必要がある。 イタリア・カターニア大学のAlessandro Rodolico氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬について、現在の用量を継続した場合と比較した減量の有効性および安全性の評価を行った。その結果、抗精神病薬の用量を減量した場合と継続した場合において、QOL、機能、1つ以上の有害事象が発現した患者の割合に差は認められなかったが、減量により再発および治療中止のリスクが上昇し、再入院の可能性は高まった。注目すべき点として、研究の大部分がQOL、機能、有害事象などの潜在的なアウトカムではなく再発予防に焦点を当てており、そのうちのいくつかの研究では、抗精神病薬の急激な減量が行われていた。著者らは、より明確な答えを得るためには、適切に設計されたRCTが求められるとしている。Cochrane Database of Systematic Reviews誌2022年11月24日号の報告。 Cochrane Schizophrenia GroupのStudy-Based Register of Trialsとして2021年2月10日までに公表された文献を、各種データベース(CENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、PsycINFO、PubMed、ClinicalTrials.gov、ISRCTN、WHO ICTRP)よりシステマティックに検索した。現行の抗精神病薬治療で安定している統合失調症または関連疾患の患者を対象に、抗精神病薬の減量および継続を比較したランダム化比較試験(RCT)を含めた。さらに、含まれた研究と以前のレビューにおけるリファレンスリストについても調査した。2人以上のレビュアーが独立して、適格研究より関連する記録のスクリーニング、データ抽出を行い、RoB 2を用いてバイアスリスクを評価した。欠落データおよび追加情報については、各研究の著者に連絡し収集した。 主要アウトカムは、QOLの臨床的に重要な変化、再入院、副作用による治療中止とした。副次アウトカムは、機能の臨床的に重要な変化、再発、すべての理由による治療中止、1つ以上の有害事象とした。また、症状、QOL、機能の測定に用いた評価尺度、特定の有害事象の包括的なリストも併せて調査した。できる限り1年に最も近いエンドポイントでのアウトカムをプールした。エビデンスの確実性の評価には、GRADEアプローチを用いた。 主な結果は以下のとおり。・含まれた25件のRCTのうち22件(2,635例、平均年齢:38.4歳)からデータを抽出した。・研究のサンプルサイズの中央値は60例(範囲:18~466例)であり、期間の中央値は37週(範囲:12週~2年)であった。・用量減量のスピード(研究の約半数で2~16週以内の漸減、残りの半数は急激な減量)および程度(3研究で中央値66%までの計画的減量)には、ばらつきがあった。・全体のバイアスリスクは、いずれかの懸念または高リスクとして評価した。・QOLまたは機能の臨床的に重要な変化が認められた患者に関するデータを報告した研究はなく、QOLまたは機能の測定に用いた評価尺度について継続的なデータを報告した研究は8件のみであった。・QOL(標準化平均差[SMD]:-0.01、95%信頼区間[CI]:-0.17~0.15、RCT:6件、719例、I2=0%、エビデンスの確実性:中)および機能(SMD:0.03、95%CI:-0.10~0.17、RCT:6件、966例、I2=0%、エビデンスの確実性:高)の測定に用いた評価尺度では、抗精神病薬の減量と継続に差は認められなかった。・推定可能なエフェクトサイズに関する8つの研究のデータによると、抗精神病薬の用量を減量した場合は、継続した場合と比較し、再入院のリスクを上昇させる可能性が示唆された。しかし、95%CIに差がない可能性があった(リスク比[RR]:1.53、95%CI:0.84~2.81、RCT:8件、1,413例、I2=59%[異質性:moderate]、エビデンスの確実性:非常に低い)。・同様に、20件の研究のデータによると、抗精神病薬の用量を減量した場合、再発リスクの上昇が認められた(RR:2.16、95%CI:1.52~3.06、RCT:20件、2,481例、I2=70%[異質性:substantial]、エビデンスの確実性:低)。・抗精神病薬を減量した患者は、継続した患者と比較し、有害事象(RR:2.20、95%CI:1.39~3.49、推定可能なエフェクトサイズを含むRCT:6件、1,079例、I2=0%、エビデンスの確実性:中)およびすべての理由(RR:1.38、95%CI:1.05~1.81、RCT:12件、1,551例、I2=48%[異質性:moderate]、エビデンスの確実性:中)による早期の治療中止が多かった。・推定可能なエフェクトサイズを有する4つの研究のデータによると、抗精神病薬を減量した患者と継続した患者では、1つ以上の有害事象が発現した患者の割合に差は認められなかった(RR:1.03、95%CI:0.94~1.12、RCT:5件、998例[推定可能なエフェクトサイズを含むRCT:4件、980例]、I2=0%、エビデンスの確実性:中)。

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コロナ呼吸不全で気管挿管率が低い治療は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による低酸素血症性呼吸不全を発症した成人患者に対し、覚醒下腹臥位療法は通常ケアと比べて、気管挿管の発生リスクを低減するが、死亡率や人工呼吸器離脱期間(VFD)などのアウトカムには、ほとんど影響が認められないことが明らかにされた。カナダ・アルバータ大学のJason Weatherald氏らによる、システマティック・レビューとメタ解析で示された。BMJ誌2022年12月7日号掲載の報告。2022年3月時点でMedline、Embase、CENTRALをレビュー 研究グループは、創刊から2022年3月4日までのMedline、Embase、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)をデータソースとして、COVID-19関連の低酸素血症性呼吸不全の成人患者を対象に、覚醒下腹臥位療法と通常ケアを比較した無作為化試験について、システマティック・レビューと頻度論的・ベイズメタ解析を行った。 2人のレビュアーがそれぞれデータを抽出し、バイアス・リスクを評価。ランダム効果モデルを用いて主要アウトカム(気管挿管)と副次アウトカム(死亡率、VFD、ICU・病院入院期間など)を評価した。気管挿管と死亡率はベイズメタ解析で評価。アウトカムのエビデンスの信頼性はGRADEで評価した。死亡率、VFD、ICU入室日数などは両群で同等 17試験、被験者総数2,931例が適格基準を満たした。12試験はバイアス・リスクが低く、3試験には懸念があり、2試験はバイアス・リスクが高かった。 補正前気管挿管発生率は、覚醒下腹臥位療法群24.2%と、通常ケア群29.8%に比べてリスクが低かった(相対リスク[RR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.73~0.94、信頼性:高)。同リスクの低下は、患者1,000人当たりで気管挿管の実施が55回減少(95%CI:19~87)することに相当した。 一方で副次アウトカムについては、死亡率(RR:0.90、95%CI:0.76~1.07、信頼性:高)、VFD(平均群間差:0.97日、95%CI:-0.5~3.4、信頼性:低)、ICU入室期間(-2.1日、-4.5~0.4、低)、入院期間(-0.09日、-0.69~0.51、中)とも有意な影響が認められなかった。 覚醒下腹臥位療法に関連した有害事象はまれであった。 ベイズメタ解析の結果、気管挿管については、覚醒下腹臥位療法は有効である確率が高いことが示された(無情報事前分布での平均RR:0.83、95%信用区間[CrI]:0.70~0.97、RR<0.95の事後確率96%)。一方で死亡に関する同確率は低かった(0.90、0.73~1.13、68%)。

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ルキソリチニブクリーム、アトピー性皮膚炎への長期安全性・有効性は?

 アトピー性皮膚炎(AD)に対するヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬ルキソリチニブ(本邦では骨髄線維症、真性多血症の適応で承認)のクリーム製剤の安全性・有効性について、長期評価の結果をカナダ・Clinical Research and Probity Medical ResearchのKim Papp氏らが報告した。必要に応じて投与が行われた(as-needed)44週の治療期間中の疾患コントロールと忍容性は本治療が有効であることを示すものであったという。ルキソリチニブクリームのAD治療については、2つの第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験(TRuE-AD1試験とTRuE-AD2試験)で検討が行われ、8週時に安全性と有効性が示されていたが、著者は「今回の試験で8週の結果を確認することができた」とし、また「安全性の所見では、ルキソリチニブの血漿中濃度は低く既知のリスク因子が反映されており、生理学的に重大な全身性のJAK阻害の可能性は非常に低いと考えられる」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2022年11月26日号掲載の報告。ルキソリチニブクリームのアトピー性皮膚炎に対する有効性を1,072例で確認 TRuE-AD1試験とTRuE-AD2試験は北米と欧州で行われ、12歳以上、AD罹病期間2年以上、IGAスコア2または3、病変が体表面積(BSA)の3~20%の患者が参加した。 被験者は、0.75%ルキソリチニブクリーム群、1.5%ルキソリチニブクリーム群、溶媒群に、二重盲検下で無作為に2対2対1の割合で割り付けられ、1日2回の塗布を8週間受けた(VC期間)。被験者は、ベースラインで認められたすべてのAD病変部の改善または消失が認められても治療し続けるよう指示された。 8週時点で、溶媒群は1対1の割合で実薬群のいずれかに割り付けられ、44週間治療が続けられた(LTS期間)。同被験者には疾患活動性のADが認められる病変部のみ治療すること、病変消失3日後に治療を中止すること、再発の最初の兆候が認められたら治療を再開することが指示された。皮膚軟化剤以外のレスキュー治療は許可されなかった。 安全性と忍容性は、治療中に発現した有害事象(TEAE)、治療関連AE(TRAE)、重篤なAEの種類と頻度、および治療中止に至ったAEの頻度などが含まれた。疾患コントロールは、IGAスコア0または1を達成した患者割合で定義し、BSAの平均割合も評価(4週ごと)された。 ルキソリチニブクリームのアトピー性皮膚炎治療の有効性を調べた主な結果は以下のとおり。・1,249例が無作為化を受け、1,119例(89.6%)が8週のVC期間を完了。このうち1,072例(95.8%)がLTS期間に組み込まれた。・1,072例(ルキソリチニブクリーム群872例[0.75%群426例、1.5%群446例]、溶媒からルキソリチニブクリーム切り替え群200例)のうち、831例(77.5%)がLTS期間を完了した。ベースラインの人口統計学的特性および臨床特性は、治療群間で類似していた。・52週時点で、有害事象の報告は、0.75%ルキソリチニブクリーム群(426例)67.4%、1.5%群(446例)62.6%、溶媒→0.75%群(101例)53.5%、溶媒→1.5%群(99例)57.6%であった。・最もよくみられたAEは、上気道感染(各群10.3%、11.4%、5.9%、7.1%)、上咽頭炎(8.9%、9.9%、7.9%、14.1%)であった。・重篤なAEの報告は、0.75%ルキソリチニブクリーム群12例(2.8%)、1.5%群8例(1.8%)、溶媒→0.75%群5例(5.0%)、溶媒→1.5%群1例(1.0%)であったが、1例の奇胎妊娠を除き、ルキソリチニブクリームとは関連していないとみなされた。・適用部位反応はまれであった(各群3.8%、1.8%、1.0%、1.0%)。・LTS期間を通じて疾患コントロールは達成された。52週時点でIGAスコア0または1の患者は74.1~77.8%であり、平均BSAは低値(1.4~1.8%)であった。

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仲間と行う運動は認知機能低下を抑制する/筑波大学・山口県立大学

 高齢者にとって運動習慣を維持することは、フレイルやサルコペニアの予防に重要な役割を果たすとともに、認知症予防に有効であることが知られている。ただ、近年では孤立しがちな高齢者も多く、こうした高齢者が1人で運動した場合とそうでない場合では、認知機能の障害に違いはあるのであろうか。 大藏 倫博氏(筑波大学体育系 教授)らの研究グループは、高齢者4,358人を対象に「1人で行う運動や仲間と行う運動は、どの程度実践されているのか」および「どちらの運動が認知機能障害の抑制に効果があるのか」について、4年間にわたる追跡調査を行った。 その結果、高齢者の多くが実践しているのは、1人で行う運動であり、週2回以上の実践者が40%を超える一方で、仲間と行う運動の週2回以上の実践者は20%未満にとどまることがわかった。また、認知機能障害の抑制効果については、どちらの運動についても週2回以上の実践では、統計的な抑制効果が認められたが、1人で行う運動(22%のリスク減)よりも、仲間と行う運動(34%のリスク減)の方がより強い抑制効果を示すことが判明した。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2022年12月23日号(オンライン先行)からの報告。週2回以上の運動は1人運動でも認知機能障害発生を抑制〔研究の背景〕 従来の研究では、運動サークルなどの集団運動に注目され、夫婦や友人など2人以上で行う運動が認知機能にどのような影響を与えるかは検討されていなかった。また、同様に運動の頻度についても考慮されていないことから、高齢者を対象に、1人で行う運動および仲間と行う運動の実践状況を調査し、認知機能障害の抑制に効果的な運動スタイルと頻度を明らかにすることを目的とした。〔研究対象と方法〕対象:茨城県笠間市在住の高齢者4,358人(平均年齢:76.9歳、男女比はほぼ等分)方法:郵送による調査解析:運動実践状況の調査と「認知症高齢者の日常生活自立度」を用い認知機能障害を判定、Cox比例ハザードモデルを用い、運動形態と認知障害発症の関連を調べ、集団起因分率(PAF)を算出〔結果〕 高齢者の運動実践状況の確認につき、1人で行う運動については、非実践者(52.4%)、週1回実践者(5.8%)、週2回以上実践者(41.8%)の割合だった。また、仲間と行う運動については、非実践者(75.2%)、週1回実践者(6.1%)、週2回以上実践者(18.7%)の割合だった。1人で行う運動の方が広く行われていることが明らかになった。 1人で行う運動と仲間と行う運動が認知機能障害の抑制に与える影響については、追跡期間中に認知機能障害が確認されたのは337人(7.7%)であり、どちらの運動においても週2回以上の運動実践が認知機能障害の発生を有意に抑制した。しかし、効果の大きさという点では、1人で行う運動(22%のリスク減)よりも、仲間と行う運動(34%のリスク減)の方がより強い抑制効果を示した。 以上から、高齢者の認知症予防では、1人で行う運動の意義を認めつつも、仲間と行う運動を推奨していくことが重要と示唆された。 同研究グループでは「運動における仲間の具体的な構成についての考慮、運動中の他者とのかかわり方(例:夫婦、老若男女が混在)による認知機能への影響の違いを今後検討する必要がある」と今後の展開を示している。

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英語で「医療に絶対はありません」は?【1分★医療英語】第63回

第63回 英語で「医療に絶対はありません」は?Do you think this treatment will be safe for sure?(この治療法は確実に安全ですか?)I never say "never", but it is most likely safe for you.(医療に絶対はありません[絶対にないとは言えません]。ただし、あなたにとっては、ほぼ間違いなく安全だと思います)《例文1》I never say "never" and never say "always".(絶対にないとも、絶対にあるとも言えません)《例文2》I never say "never". Any medical treatment has potential side effects.(絶対にないとは言い切れません。どんな治療法でも副作用の可能性はあります)《解説》新たな治療法を開始する場合には、医師に、確実な効果・安全性を保証してほしいと言うことは、一般的な患者心理だと思います。日本でも同様ですが、米国でもこの種の質問はとても多く、適切な返答方法を知っておくことが重要です。医療への過度の期待はトラブルの元であり、健全な医師患者関係の構築にも悪影響を及ぼす可能性があるので、「医療に絶対はない」という事実を明確に伝えることも重要になります。相手に冷たい印象を与えない工夫としては、“I wish I could tell you this is 100% effective”(100%有効だと、お伝えできればよいのですが…)と言ったり、“I wish I had a crystal ball”([占い師が使う未来がわかる]水晶玉があればよいのですが…)という表現を付け加えたりします。また、単純に“unfortunately, I can never say never”という表現でも、与える印象は柔らかくなると思います。講師紹介

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第146回 マウスの老化を巻き戻し / 武田薬品の紫斑病薬が承認申請される

山中因子でマウスの老化を巻き戻し10年ほど前に京都大学の山中伸弥教授をノーベル賞へと導いたiPS細胞(人工多能性幹細胞)の素が個体の老化を巻き戻して若返らせうることを2つの研究チームが報告しました。今では山中教授の名を冠して山中因子と呼ばれるそのiPS細胞の素は4つのタンパク質(転写因子)で構成され、分化した成体細胞を多能性の幹細胞(iPS細胞)へと変えることで知られます。今回米国・カリフォルニア州サンディエゴのバイオテック企業Rejuvenate Bio社のチームはそれら山中因子のうちの3つOct4、Sox2、Klf4を届ける遺伝子治療で老化マウスがより長生きになったことを報告しました1,2)。ハーバード大学の抗老化治療研究者David Sinclair氏が率いる別のチームはRejuvenate社と同様の手段により、マウスの老化状態を若い状態へと回復させうることを示しました3,4)。頭文字をとってOSKと呼ばれるOct4、Sox2、Klf4はそれらどちらの研究でもメチル化などのDNA取り巻き・エピゲノムをより若い状態へと回復させたようです5)。Rejuvenate社はヒトの治療に即した手段を検討するべく、ヒトの遺伝子治療で使われているアデノ随伴ウイルス(AAV)を運搬役としてOSK遺伝子を老齢(生後124週間)のマウスに投与しました。するとその後の余命はより長くなり、対照群マウスが9週間ほどしか生きられなかったのに対してOSK遺伝子投与マウスはその約2倍の約18週間生存しました。加えて、健康指標が向上してより丈夫になったことがうかがわれました。分子レベルでもどうやら若返りしており、より若い頃に特有なメチル化特徴の幾らかをどうやら取り戻していました。山中因子はがんを生じやすくしうることが先立つ研究で示唆されていますが、幸いにも取るに足る害は今のところ認められていないとRejuvenate社の最高科学責任者(CSO)Noah Davidsohn氏は言っています5)。ハーバード大学のSinclair氏のチームが目指したのはDNA切断などのDNA配列の乱れではなくDNA取り巻きのエピゲノム情報の損失こそ老化の原因であるという仮説(information theory of aging)が正しいことの証明です。同チームはICE(inducible changes to the epigenome)という一工夫を加えたマウス(ICEマウス)のゲノムの20箇所のDNAをいったん切断してその後完全に修復させました5)。するとDNA切断の完全な修復とは裏腹にDNAメチル化や遺伝子発現は広範囲に渡って変化し、マウスのエピゲノムはメリハリの乏しい老化マウスにより似たものとなりました6)。また体調も損なわれ、体毛や色素を失い、弱々しくなって組織の老化を呈しました。エピゲノム情報の損失が老化の原因であるなら若返りをもたらす治療でエピゲノム情報も回復するはずです。そこでSinclair氏のチームもRejuvenate社と同様にOSK遺伝子を老けて見えるICEマウスに投与したところ、果たせるかなエピゲノム情報の回復が認められ、組織も若返りの兆候を呈しました。戻すことも可能なエピゲノム情報損失こそ老化の原因であることを今回の結果は示しているとSinclair氏のチームは結論していますが、若返りを研究するAltos Labs社が去年開設したAltos Cambridge Institute of Scienceの長Wolf Reik氏はそう断言するのは時期尚早と見ています。エピゲノム変化を引き出した大掛かりなDNA切断(とその修復)は他にも影響があったかもしれず、そうして生じたDNAエピゲノム変化を老化の原因とするのは困難であるとReik氏は言っています。それに、DNA切断(とその修復)を強いたマウスが自然に老化したマウスとどれだけ似ているかも分かっていません。米国・Albert Einstein College of Medicineの遺伝学者Jan Vijg氏によると、老化は種々の要因が絡んで進行していくものであることを忘れてはいけません。今回の2つの報告でのOSK遺伝子投与の効果はそれほどでもなく、1つでは寿命がいくらか伸びた程度で、もう1つでは強いて発生させた症状が部分的に解消したに過ぎません。老化は戻すことが可能な情報処理(program)であるとそれらの研究をもって結論することはできないとVijg氏は言っています。そのような批評はさておきRejuvenate社もSinclair氏のチームも臨床試験へと駒を進めることを目指します。Rejuvenate社はOSK治療効果の仕組みを研究し、治療の体内への運搬手段や成分の手直しをしています。同社の上述のCSO・Davidsohn氏によると治療成分はOSKに決定しているわけではありません。Sinclair氏はエピゲノム情報を回復させる治療に取り組むバイオテック企業Life Biosciencesを設立し、まずは霊長類の視力を改善させる研究を進めています6)。サルの眼へのOSK遺伝子投与の試験が進行中であり、その試験が成功してヒトにも十分安全らしいことがわかれば失明疾患の臨床試験の開始をすぐに米国FDAに申請するとSinclair氏は言っています5)。前々回紹介の武田薬品の紫斑病薬が承認申請される本連載の前々回(第144回)で取り上げた武田薬品の紫斑病薬TAK-755が良好なピボタル(主要な)第III相試験中間解析結果を受けて承認申請されます7,8)。今月5日に発表されたその中間解析の結果、同剤が投与された先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)患者の血小板減少症事象は標準治療である血漿製剤使用群に比べて60%少なくて済み、その95%信頼区間の上限は100%未満に収まっていました(95%信頼区間:30~70%)。cTTPは血液凝固の制御に携わる血中タンパク質ADAMTS13の欠乏によって生じます。TAK-755はその不足を補う人工のADAMTS13です。【前々回の記事の誤解の訂正】前々回の記事で人工ADAMTS13(TAK-755)は現在第III相試験(NCT04683003)9)が進行中と記しましたが、その試験とそれに先立つもう1つの第III相試験(281102 試験/NCT03393975)10)が実施されています。前々回の記事で抜けていた281102 試験こそ今月5日に武田薬品が中間結果を発表したピボタル第III相試験です。Clinicaltrials.govによるとどちらの試験も本記事執筆時点で被験者組み入れが進行中です。お詫びして修正いたします。参考1)Gene Therapy Mediated Partial Reprogramming Extends Lifespan and Reverses Age-Related Changes in Aged Mice. bioRxiv. January 05, 2023. 2)Rejuvenate Bio Announces New Preclinical Research Evaluating Cellular Reprogramming for Age Reversal / BUSINESS WIRE3)Yang JH, et al. Cell Jan 9:S0092-8674.01570-7[Epub ahead of print].4)Loss of Epigenetic Information Can Drive Aging, Restoration Can Reverse It / Harvard Medical School5)Two research teams reverse signs of aging in mice / Science 6)Epigenetic Manipulations Can Accelerate or Reverse Aging in Mice / TheScientist7)Takeda Announces Favorable Phase 3 Safety and Efficacy Results of TAK-755 as Compared to Standard of Care in Congenital Thrombotic Thrombocytopenic Purpura (cTTP) / BUSINESS WIRE8)先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)に対する標準治療と比較したTAK-755の良好な安全性および有効性を示す臨床第3相試験の結果について / 武田薬品9)A Study of TAK-755 in Participants With Congenital Thrombotic Thrombocytopenic Purpura(Clinical Trials.gov)10)A Study of BAX 930 in Children, Teenagers, and Adults Born With Thrombotic Thrombocytopenic Purpura (TTP) (Clinical Trials.gov)

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コロナ患者に接する医療者の感染予防効果、N95 vs.サージカルマスク

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に接する医療者のマスクの種類によるCOVID-19予防効果を調査したところ、サージカルマスクはN95マスクと比較して非劣性であったことが、カナダ・マックマスター大学のMark Loeb氏らによる多施設共同無作為化非劣性試験の結果、明らかになった。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2022年11月29日号掲載の報告。N95マスクとサージカルマスクのコロナ予防効果を国別に検証した N95マスクと比較して、サージカルマスクが新型コロナウイルス感染症に対して同様の感染予防効果があるかどうかは不明であった。そこで研究グループは、サージカルマスクはN95マスクに劣らないという仮説を立てて検証を行った。 試験はカナダ17施設、イスラエル2施設、パキスタン4施設、エジプト6施設の計29施設において、2020年5月4日~2022年3月29日に行われた。対象は、COVID-19疑いまたは確定の患者に日常的に医療を提供する1,009名の医療者で、業務中にサージカルマスクとN95マスクを着用する群にランダムに1:1に割り当て、10週間着用した。N95マスクのフィットテストに適合していない、COVID-19のハイリスク因子を有している、COVID-19の既往歴がある、流行株に対応しているワクチンを接種している医療者は除外された。主要評価項目は、RT-PCR検査によるCOVID-19確定であった。 N95マスクにサージカルマスクはコロナ予防効果で劣らないことを検証した主な結果は以下のとおり。・intention-to-treat解析の結果、新型コロナウイルス感染症を発症したのは、サージカルマスク群では10.46%(52/497例)、N95マスク群では9.27%(47/507例)であった(ハザード比[HR]:1.14、95%信頼区間[CI]:0.77~1.69)。・国別のサブグループ解析による新型コロナウイルス感染症の発症率は、下記のとおりであった。 -カナダ(計266例):サージカルマスク群6.11%、N95マスク群2.22%(HR:2.83、95%CI:0.75~10.72 -イスラエル(計34例):サージカルマスク群35.29%、N95マスク群23.53%(HR:1.54、95%CI:0.43~5.49) -パキスタン(計186例):サージカルマスク群3.26%、N95マスク群2.13%(HR:1.50、95%CI:0.25~8.98 -エジプト(計518例):サージカルマスク群13.62%、N95マスク群14.56%(HR:0.95、95%CI:0.60~1.50・マスク着用による不快感、皮膚刺激、頭痛を訴えたのは、サージカルマスク群で10.8%、N95マスク群で13.6%であった。

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人工知能は、放射線科専門医試験に合格できるのか?/BMJ

 英国の放射線科医は、研修を修了する前にFRCR(Fellowship of the Royal College of Radiologists)試験に合格する必要がある。英国・Great Ormond Street Hospital for ChildrenのSusan C. Shelmerdine氏によると、人工知能(AI)が、この試験の3つの構成要素のうち迅速報告と呼ばれる試験に合格できるかを検討した「FRCR-AI試験」の結果、AIは人間と同様の厳しい基準で採点された場合は10回の模擬試験のいずれにも合格できなかったが、訓練を受けていないため読影不能な画像を除外すると、全体の平均正答率は79.5%で、10回中2回の模擬試験に合格したという。研究の詳細は、BMJ誌2022年12月21日号で報告された。AIと放射線科医を比較する英国の診断精度研究 研究グループは、1つのAI(Smarturgences v1.17.0、フランス・Milvue製)と、過去12ヵ月間にFRCR試験に合格した放射線科医26人を対象に、複数読影者による前向き診断精度研究を行った(筆頭著者は英国国立健康研究所[NIHR]の助成を受けた)。 FRCR試験の迅速報告では、X線画像30枚が提示され、これを35分以内に読影し、27枚(90%)以上に正答すると合格とされる。試験に参加した放射線科医は、2022年5月1日~31日の期間に、同様の方式で10回の模擬試験を受けた。AIにも、10回のFRCR模擬試験として300枚の匿名化されたX線画像が提供された。 AIモデルは、事前に60万枚以上の胸部および筋骨格系のX線画像のデータセットで、7つの主要な病変(骨折、胸水、肺陰影、関節液貯留、肺結節、気胸、関節脱臼)を検出するよう訓練された。 AIと放射線科医で、FRCR試験迅速報告模擬試験の合格率のほか、感度、特異度、陽性および陰性的中率が算出され、比較された。ピットフォールの多くは、筋骨格系の画像 放射線科医26人のうち16人(62%)が女性、19人(73%)が年齢31~40歳で、16人(62%)が過去3ヵ月以内、8人(31%)が6ヵ月以内、2人は12ヵ月以内に合格していた。15人(58%)は1回目、9人(35%)は2回目、2人は3回目の試験での合格だった。 読影不能な画像を含む場合、AIは10回の模擬試験のうち1回も合格できなかったが、AIには読影不能と考えられる画像を除外した場合は2回(平均正答率:79.5%[95%信頼区間[CI]:74.1~84.3])、正常所見として読影不能な画像を含む場合は1回合格した。 26人のうち、10回の模擬試験すべてに合格した放射線科医はおらず、最も成績が良かったのは9回(1人)、最も悪かったのは1回(3人)で、10人(38%)は5回以上合格した。平均合格率は10回中4回(平均正答率:84.8%[76.1~91.9])だった。 AIでは、診断の感度が83.6%(95%CI:76.2~89.4)、特異度は75.2%(95%CI:66.7~82.5)であったのに対し、放射線科医全体の要約推定値はそれぞれ84.1%(81.0~87.0)および87.3%(85.0~89.3)であった。 300枚のX線画像のうち90%超の放射線科医が正しく読影した148枚において、AIは14枚(9%)を誤って読影した。この14枚の誤読のうち、4枚(29%)は偽陰性診断、10枚(71%)は偽陽性診断で、10枚(71%)は筋骨格系の画像で発生していた。 また、50%以上の放射線科医が誤読したX線画像20枚のうち、AIは10枚(50%)を正確に読影した。残りの、AIも誤読した10枚(偽陰性9枚、偽陽性1枚)では、8枚(80%)が筋骨格系所見の見逃しだった。すなわち、AI診断のピットフォールの多くは、胸部よりも筋骨格系のX線画像の読影に関するものであった。 著者は、「筋骨格系の疾患の症例に焦点を当て、現時点で[読影不能]とされる軸骨格と腹部のX線画像の読影を学習することで、AIのX線画像読影技能は改善する可能性がある」と指摘している。

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日本人統合失調症入院患者における残存歯数とBMIとの関係

 統合失調症入院患者において、BMIに対する歯の状態の影響に関するエビデンスはほとんどない。新潟大学の大竹 将貴氏らは、日本人統合失調症入院患者の残存歯数とBMIとの関連を調査するため、横断的研究を実施した。その結果、歯の喪失や抗精神病薬の多剤併用が統合失調症入院患者のBMIに影響を及ぼすこと、また、統合失調症入院患者は一般集団よりも歯の喪失が多いことが示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月7日号の報告。 統合失調症入院患者212例を対象に、BMIに対する潜在的な予想因子(年齢、性別、残存歯数、抗精神病薬処方数、クロルプロマジン換算量、抗精神病薬の種類)の影響を評価するため、重回帰分析を行った。次に、統合失調症入院患者と日本人一般集団3,283例(平成28年歯科疾患実態調査[2016年])の残存歯数を比較するため、年齢および性別を共変量として共分散分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・重回帰分析では、残存歯数(標準偏回帰係数:0.201)と抗精神病薬処方数(同:0.235)がBMIと有意に相関していることが示された。・共分散分析では、統合失調症入院患者の平均残存歯数(14.8±10.9)は、日本人一般集団(23.0±8.1)と比較し有意に少なかった。

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第142回 これらのデータを並べて「コロナとインフルが同レベル」と言える?

「新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の重症化率や死亡率は、インフルエンザと同等以下」最近、そんな言説をよく耳にする。まあ、一般人からの言説ならば、「またテキトーなことを言っている」で済むのだが、最近SNS上などを見ていると、そうした言説を発信する人の一部には医療従事者もそこそこ交じっている。彼らが根拠としているのが、昨年12月21日に開催された第111回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに厚生労働省が提出した資料や11月に財務省が公表した資料である。この件について、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードはすでにインフルエンザと新型コロナの比較は困難との結論を出している。それはそうだろう。少なくとも両者の比較に使うにしてはデータの「野良」度合いが過ぎる。本サイトの読者に対しては釈迦に説法ではあるが、今回敢えてこの件について触れてみようと思う。まず、そもそも両資料に提示された重症化率、致死率を算定する分母が両者では違い過ぎると言わざるを得ない。インフルエンザの場合は、「NDB(National DateBase、レセプト情報・特定健診等情報データベース)における2017年9月から2020年8月までに診断または抗インフル薬を処方された患者のうち、28日以内に死亡または重症化(死亡)した割合」とある。ここで注意しなければならないのは、インフルエンザでは約3人に1人との報告がある無症候(不顕性)感染者はほぼ含まれていない可能性が高いことである。一方の新型コロナも無症候感染は存在する。厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き」では20~40%と記載されている。どちらの無症候感染者がどの程度、感染者として拾い上げられているかのデータはもちろんない(というか、この点で信頼性の高いデータが存在し得るとは考えにくい)。ただ、コロナ禍前に一般市民のインフルエンザに対する警戒度が現在の新型コロナ並みに高かったと考える人は一般人でも稀だろう。これに対して現在の新型コロナは市中の検査所があふれ、ドラッグストアで抗原検査キットが容易に入手できる状況である。これらを念頭に論理的に考えるなら、新型コロナに関する感染者報告のほうが無症候感染者をより多く拾い上げているだろうと考えられる。つまりより厳格な調査をするならば、インフルエンザのほうが重症化率、致死率を算定する感染者の分母が拡大し、結果としてこれら重症化率、致死率はより小さな値になる可能性が濃厚である。一方、ワクチン接種をめぐる状況は次のようになる。インフルエンザの場合は、▽65歳以上▽60~64歳で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される▽60~64歳でヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な場合、のいずれかに該当すれば予防接種法に基づく定期接種の対象となる。この定期接種対象者でのワクチン接種率は近年50%前後と報告されている。ちなみにワクチンの有効率に関しては、流行の程度や流行株とワクチン株のマッチングによってさまざまな報告があるが、重症化(入院)予防の有効率で見れば、ざっくりいうと50%強である。これに対して新型コロナワクチンは、予防接種法の臨時接種の特例として現在は生後6ヵ月以上が対象となっている。現時点での接種率は総人口あたりで基礎免疫の2回接種完了で80.4%、追加接種の3回接種完了で67.8%、オミクロン株対応2価ワクチンで37.5%である。現時点で2価ワクチンの有効性に関する報告は、まだ十分な数があるとは言えないが、国立感染症研究所の報告では、BA.4-5発症予防の有効率は69%である。このワクチンの有効率とそれが重症化率、致死率に及ぼす影響を考えると、謎解きはかなり複雑になる。季節性インフルエンザの場合、その名の通り主な流行は秋から初春にかけての半年間であり、おおむねこの期間中はワクチンの有効性は保持できると考えられている。これに対して新型コロナは流行が通年。ワクチンの効果はインフルエンザと同じように半年程度であり、前述の国立感染症研究所の研究結果(これとてまだプリミティブなものだが)を見てもわかる通り、接種回数と最終接種からの経過期間によって効果は異なる。重症化予防効果は時間を経ても比較的維持されていると言われてはいるものの、これまでのデータなどを見れば、やはり最終接種から時間が経過するとともに減衰しているのは事実である。このように「第〇波での重症化率、致死率」というデータには、未接種から4~5回接種まで、かつ最終接種日からの経過時間においてさまざまなバリエーションが混在しているため、とてもではないが今のオミクロン株の重症化率、致死率とシンプルに解釈することは無理がある。しかも、米ジョンズ・ホプキンズ大学の研究報告では、ワクチン未接種あるいは未感染者のオミクロン株による重症化・死亡リスクはデルタ株の0.72倍、武漢株の0.94倍との報告もある。この報告に依拠すれば現在のオミクロン株の重症化率自体が比較的高い日本のワクチン接種率でマスクされたものと考えねばならない。加えてこれら数字には、最近医療現場からとみに聞こえてくる新型コロナ経過観察期間終了後の高齢者での基礎疾患の急速な悪化による死亡、罹患後症状、オミクロン株BA.5の感染力の強さによる医療現場や高齢者施設でのクラスター頻発は一切考慮されていない。にもかかわらず、インフルエンザと新型コロナはもはや同レベルなどと一部の医療従事者が口にするのは、もはや妄言が過ぎるのではと思うのだが。

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mRNA-4157/V940・ペムブロリズマブ併用で悪性黒色腫患者に対する主要評価項目達成/モデルナ・メルク

 Moderna(米国)は2022年12月13日付のプレスリリースで、完全切除後の再発リスクが高いStageIII/IVの悪性黒色腫患者において、研究中の個別化mRNAがんワクチンであるmRNA-4157/V940と抗PD-1治療薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を併用した場合、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、疾患の再発または死亡のリスクが統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示したと発表した。mRNA-4157/V940とペムブロリズマブ併用で再発/死亡リスクが44%減少 mRNA-4157/V940は、患者のがんの遺伝子変異に基づいて設計された、最大34の腫瘍特異的変異抗原(ネオアンチゲン)をコードするmRNAベースの個別化がんワクチンである。 無作為化非盲検第IIIb相試験であるKEYNOTE-942試験において、StageIII/IVの悪性黒色腫患者157例が登録された。完全な外科的切除後、患者は無作為にmRNA-4157/V940(mRNA-4157を合計9回投与)とペムブロリズマブ(200mgを3週間ごとに最大18サイクル[約1年間])を併用する群と、ペムブロリズマブを約1年間単独で投与する群に割り付けられ、再発または許容できない毒性が発現するまで治療が継続された。主要評価項目は無再発生存期間(RFS)で、副次評価項目は遠隔転移のない生存期間と安全性である。 mRNA-4157/V940を評価する試験対象者の主な選択基準は以下のとおり。 ・リンパ節に転移し、再発のリスクが高い切除可能な皮膚悪性黒色腫患者 ・ペムブロリズマブの初回投与前13週間以内に完全切除された患者 ・試験登録時(手術後)に無病であり、局所再発または遠隔転移がなく、脳転移の臨床的証拠がない患者 ・シークエンスに適したホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)の腫瘍サンプルを提出できる患者 ・Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Status 0または1 ・スクリーニング時に臓器および骨髄機能が正常な患者 主要評価項目であるRFSについて、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブを併用したアジュバント治療では、ペムブロリズマブ単独と比較して再発または死亡のリスクが44%減少し、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.31~1.08、片側検定のp=0.0266)。 mRNA-4157/V940で観察された有害事象は第I相試験で報告されたものと一致していた。また、ペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告された試験で観察されたものと一致していた。治療関連の重篤な有害事象は、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用群では14.4%、ペムブロリズマブ単独群では10.0%で発生した。 ModernaとMerckは、規制当局と結果について協議し、2023年に悪性黒色腫を対象とする第III相試験を開始し、他の腫瘍タイプにも拡大する予定であるとした。また、両社は、2022年10月に、MerckがmRNA-4157/V940を共同で開発し商品化するオプションを行使したことを発表した。

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オミクロン株XBB.1の細胞侵入効率と免疫回避能

 2022年1月、新型コロナウイルスのオミクロン株XBB系統がインドで初めて検出され、アジアと欧州で増加している。XBB系統は主に5つの亜系統(XBB.1~5)が派生し、ほとんどがXBB.1である。ドイツ・German Primate CenterのPrerna Arora氏らは、XBB.1系統の宿主細胞への侵入と抗体による中和を回避する能力を初めて評価した。その結果、ワクチンを4回接種した人や3回接種後にBA.5に感染した人においてもXBB.1の中和回避能が非常に高いことがわかった。また、この高い中和回避能は、細胞侵入効率の若干の低下と引き換えにもたらされた可能性が示唆された。Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年1月5日号に掲載。 著者らはまず、XBB.1の宿主細胞への侵入効率を祖先株のB.1、現在優勢なBA.5と比較した。BA.5の侵入効率はB.1と比べ、Vero細胞(アフリカミドリザル腎細胞)では2.2倍、293T細胞(ヒト腎細胞)で5.3倍高かったが、Calu-3細胞(ヒト肺細胞)では1.9倍低かった。XBB.1の侵入効率は、すべての細胞株でBA.5と比べて1.7~3.9倍低下し、Calu-3細胞ではB.1と比べて3.4倍低下した。一方、293T細胞およびVero細胞ではXBB.1はB.1と同様だった。 次に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防や治療に臨床使用されている(使用中止となったものも含む)もしくは開発中のモノクローナル抗体(14種類)およびモノクローナル抗体カクテル(4種類)について、XBB.1に対する中和能力を調べた。調査したすべてのモノクローナル抗体およびモノクローナル抗体カクテルがB.1を効果的に中和したが、XBB.1についてはソトロビマブとS2H97が中和できたものの、その中和能力はB.1に対する中和能力と比べて10分の1以下だった。 最後に、ワクチン接種またはワクチン接種+感染によって誘導された抗体のXBB.1の中和能力を評価した。ワクチン3回接種者の血清の中和能力は、B.1、BA.5に対しては高かったが、XBB.1にはほとんどなかった。また、ワクチン3回接種後BA.5流行中に感染した人の血清の中和能力は、B.1には高く、BA.5には中程度、XBB.1には低かった。ワクチン3回接種後に1価ワクチン(B.1)または2価ワクチン(B.1とBA.5)のいずれかを接種した人の血清においても同様だった。 これらの結果から、著者らは「ほとんどの抗体がXBB.1を中和しないことからCOVID-19治療には新たな抗体が必要であり、XBB系統の発生率が高い地域では他の治療法を検討すべき」としている。

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