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妊婦への2価RSVワクチン、乳児の重症下気道感染を予防/NEJM

 妊婦への2価RSV融合前F蛋白ベース(RSVpreF)ワクチン投与は、乳児において診察を要する重症の呼吸器合胞体ウイルス(RSV)関連下気道感染症に対し予防効果があり、安全性への懸念は示されなかった。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のBeate Kampmann氏らが、約7,400例の妊婦とその出生児を対象に行った第III相二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。これまで、同ワクチンの妊婦への投与の効果は不明であった。NEJM誌オンライン版2023年4月5日号掲載の報告。18ヵ国で49歳以下の健康な妊婦を対象に試験 研究グループは18ヵ国で、妊娠24~36週、49歳以下の健康な妊婦を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に割り付け、一方には2価RSVpreFワクチン(120μg)を、もう一方にはプラセボをいずれも単回筋肉内投与した。 有効性の主要エンドポイントは2つで、生後90日、120日、150日、180日以内の乳児における、診察を要した重症RSV関連下気道感染症と、診察を要したRSV関連下気道感染症だった。 ワクチンの有効性を示す信頼区間(CI)下限値(90日以内が99.5%CI値、それ以降は97.58%CI値)は20%超と規定した。有害事象発生率は両群で同等 2020年6月17日~2022年10月2日に7,392例の妊婦が無作為化され、そのうち7,358例(RSVpreFワクチン群3,682例、プラセボ群3,676例)が接種および評価を受けた。乳児についてはRSVpreFワクチン群3,570例とプラセボ群3,558例が組み込まれた。 本論は事前規定の中間解析の結果を示すもので、主要エンドポイントの1つに関して、ワクチンの有効性を示す基準が満たされた。 生後90日以内の、診察を要した重症RSV関連下気道感染症は、RSVpreFワクチン群の乳児で6件、プラセボ群では33件だった(ワクチン有効性:81.8%、99.5%CI:40.6~96.3)。同様に生後180日以内では19件と62件だった(ワクチン有効性:69.4%、97.58%CI:44.3~84.1)。 一方で、診察を要したRSV関連下気道感染症については、生後90日以内でRSVpreFワクチン群の乳児24件、プラセボ群56件が報告され(ワクチン有効性:57.1%、99.5%CI:14.7~79.8)、統計学的な有効性を示す基準を満たさなかった。 安全性に関連する兆候は、妊婦および生後24ヵ月までの乳幼児ともに認められなかった。ワクチン投与1ヵ月以内または生後1ヵ月以内に発生した有害事象の発生率は、RSVpreFワクチン群(妊婦13.8%、乳児37.1%)とプラセボ群(13.1%、34.5%)で同程度だった。

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sotaterceptは新しい作用機序の肺動脈性肺高血圧症の新薬である(解説:原田和昌氏)

 BMP(bone morphogenetic protein)シグナルの機能喪失とTGF-β(transforming growth factor-β)シグナルの過剰が肺動脈性肺高血圧症(PAH:pulmonary arterial hypertension)を進行させると報告されている。アクチビンIIA型受容体(ACTR IIA)-Fcは、免疫グロブリン(Ig)G1のFc領域とアクチビンIIA型受容体の細胞外領域からなる遺伝子組み換え融合糖タンパク質であり、アクチビンA/BとGDF(growth differentiation factor)8、GDF11を中和(trap)する。 STELLAR試験においてドイツ・Hannover Medical SchoolのHoeperらは、PAHにおいてACTR IIA-Fc(sotatercept)によるアクチビンとGDFの阻害がTGF-βシグナルの抑制により、BMPシグナルとTGF-βシグナルのバランスを修復し、肺血管リモデリングを防ぐ効果があると仮定して検討を行った。安定用量の基礎治療を受けているWHO Group 2/3成人PAH患者163例を対象に、sotaterceptの3週に1回皮下注射の効果・安全性を検証する第III相二重盲検RCTを行った。 この試験の主要評価項目であるベースラインから24週時の6分間歩行距離(6MWD)は、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した(差40.8m)。副次評価項目においては、9項目中8項目で統計学的な有意差が示された。これには複合的な評価項目の改善(6MWDの改善、NT-proBNP値の改善、かつWHO機能分類の改善またはWHO機能分類IIの維持と定義)を示した患者の割合や、死亡または最初の臨床的悪化イベントまでの時間などが含まれている。全般的な安全性プロファイルは第II相試験で確認された結果とほぼ一貫しており、鼻出血・めまい・毛細血管拡張・Hb値上昇・血小板減少・血圧上昇がより多く発生した。 増殖因子と増殖抑制因子の関係は自動車のアクセルとブレーキのような関係であるが、血小板にもPDGFのような正の増殖因子と、TGF-βという強力な増殖抑制因子が存在することが明らかとなった。その後、アクチビンやTGF-βII型受容体がクローニングされた。TGF-βには類似した物質が数多くあり、BMPやアクチビンはTGF-βスーパーファミリーに含まれる。1993年に宮園 浩平教授らはTGF-βII型受容体に類似したものの探索から6つのクローンを得たが、その1つがTGF-βI型受容体であった。また残りの受容体もアクチビンやBMP I型受容体であることが明らかとなり、TGF-βスーパーファミリーの受容体が系統的に明らかになった。 PAHにはすでに10薬がFDA承認されているが、なお予後不良な疾患である。sotaterceptは新しい作用機序の薬であり肺血管リモデリングの抑制が期待されている。エンドセリン受容体拮抗薬と並んで、日本人研究者による基礎研究の成果が実用化されようとしているよい一例である。

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ACC2023で発表、新たな関係を築くには学会での交流が欠かせない【臨床留学通信 from NY】第46回

第46回:ACC2023で発表、新たな関係を築くには学会での交流が欠かせない前回コラムでも書かせていただきましたが、3月上旬にニューオーリンズでACC(米国心臓病学会)がありました。Moderated Poster Sessionという、電光掲示板のポスターセッションでの発表でした。海外学会でよくある“ポスター貼り逃げ”(海外学会の通常のポスターセッションでは、日本と違って、発表、質疑応答などはなく、ただ立っているのみです)とはいかず、決まった時間の発表、および質疑応答の対応が必要です。渡米5年目とはいえ、1度や2度自作のポスターを眺めただけではすらすらとは英語は出てこないため、ある程度のストーリーを作って何回かぶつぶつ呟いて練習しておく必要があります。アメリカあるあるですが、行きの飛行機が5時間遅れだったため、そこで入念に練習することができ、発表は事なきを得ました。奇しくも、座長は私と同じMontefiore Medical Centerの先生でした。発表後、周りからの質疑にも回答することでき、他の座長の先生から「想定質問があったの?」とお褒めの言葉(?)もいただきました。心臓カテーテル領域のTCTという学会のニュースサイトのインタービューも受け、こちらの記事で紹介されました。学会といえば、セッションを聞いて、夕方になったらせっかく訪れた現地の観光もしたいところですが、ここはresearch giantsとのコネクションをキープするため、偉い先生方のセッションに足繁く通います。普段メールでやり取りしているとはいえ、学会の都度の挨拶は欠かせません。フェローシップのマッチの前などは、むしろ「推薦状を書いてください」といったお願いをすることが多かったのですが、今回は晴れてご挨拶のみで済んだのも気が楽でした。また、2024年7月からマサチューセッツ総合病院のカテーテル治療フェローを開始しますが、そこのプログラムディレクターが、実はACC2023のチェアパーソンのDouglas Drachman先生でした。昨年Zoom面接を経たのみだったので、直接にご挨拶ができたのもよかったです。それ以外にも、新たにメールで繋がることができていたハーバード系の先生方とも、現地で会うことで、新しい研究プロジェクトの話もできたのは有意義でした(Nice to e-meet youからNice to meet you)。米国内や日本から参加される日本人の先生方と会って情報交換できるのも楽しいものです。最近はハイブリッドの学会に慣れてきたせいか、ほとんどセッションには参加せず、後でオンデマンドを聴くことが多いです。朝一のセッションに早く起きれなくて間に合わなくても、オンラインでLate breaking clinical trialを聴くこともできます。結局、学会は人に会い、勉強はセッションをその場もしくはオンデマンドで聞く、または同時発表で文献になっていればそれを逐一チェックという流れになりそうです。実のところフェローの給料で学会参加はかなり大変なのですが、今回は発表があったので、プログラムが1,500ドルのサポートをしてくれました。といっても学会参加費用400ドル、宿泊3泊500ドル(他より安い反面、学会会場まで歩いて30分…)、飛行機350ドル(直行便が高く経由便にしてこの価格)となり、Uber、食事込みで合計1,500~1,600ドルかかりました。日本の学会に参加するよりはかなり高いのがネック、参加するためにはお金の工面も必要です。Column今回は同僚フェローのポスター発表セッションも聴講することができました。アメリカ人は合理的なのか、実はリサーチや学会発表に興味がある人はほんの一握りで、30人以上いるフェローの中で参加したのは6人のみ。参加しても多くはフェローシップアプライ前など、履歴書の見栄えを良くしたいという理由であって、リサーチ自体に興味がある人はほとんどいません。実際にこのような学会で発表する人は、レジデントでこれから循環器フェローを狙う人、はたまた循環器フェロー中で、インターベンション、不整脈や重症心不全といったアドバンスドフェローを狙う人に限定されています。

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重度の円形脱毛症、MTX+低用量ステロイドで毛髪再生

 フランス・ルーアン大学病院およびフランス国立衛生医学研究所(INSERM)U1234のPascal Joly氏らは、円形脱毛症(AA)のうち重度とされる全頭型AAまたは汎発型AA患者を対象に、メトトレキサート(MTX)単剤とプラセボの比較、MTX単剤とMTX+低用量prednisoneの併用療法を比較する2段階の二重盲検無作為化比較試験を実施した。その結果、MTX単剤では主に部分的発毛が可能であったが、MTX+低用量prednisone併用療法は患者の最大31%で完全発毛が可能であった。著者らは、「これらの結果は、JAK阻害薬で最近報告された結果と同程度であるが、コストははるかに安価と考えられる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年3月8日号掲載の報告。 研究グループは、治療効果が低いと報告されているAAの中でも最も重度とされる全頭型AAと汎発型AAについて、安価な治療法であるMTX単剤とMTX+低用量prednisoneの併用療法の有効性と忍容性を検討した。 試験は、8つの大学病院の皮膚科部門で2014年3月~2016年12月の期間に行われた。対象は、6ヵ月超の局所および全身性の治療にもかかわらず症状進行が認められる全頭型AAまたは汎発型AA成人患者。 対象患者は第1段階として、MTX(25g/週)単剤群またはプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。6ヵ月時点の評価で25%以上の発毛が認められた患者は、12ヵ月間後まで1段階目で割り付けられた治療を継続した。発毛が25%未満であった患者は、第2段階としてMTX+prednisone(20mg/日を3ヵ月と15mg/日を3ヵ月)併用群またはMTX単剤群(MTX+プラセボ)に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、MTX単剤の開始から12ヵ月後の完全発毛またはほぼ完全発毛(Severity of Alopecia Tool[SALT]スコア10未満)であった。なお、主要エンドポイントの評価は、試験開始時からMTXが投与された患者に限定され、4人の国際的な専門家が写真を基に評価した。副次エンドポイントは、頭皮の50%を超える発毛、QOL、忍容性などであった。データ解析は、2018年10月~2019年6月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・合計89例(女性50例、男性39例、平均年齢±標準偏差:38.6±14.3歳、全頭型AA:1例、汎発型AA:88例)が、MTX単剤群(45例)またはプラセボ群(44例)に無作為に割り付けられた。・12ヵ月時点で、完全またはほぼ完全発毛が観察されたのは、MTX単剤群1例、プラセボ群0例であった。MTX(6または12ヵ月)+prednisone併用群では35例中7例(20.0%、95%信頼区間[CI]:8.4~37.0)で観察され、このうちMTX(12ヵ月)+prednisone(6ヵ月)併用群では16例中5例(31.2%、95%CI:11.0~58.7)で観察された。・完全またはほぼ完全発毛が観察された患者は非反応患者と比べて、QOLの改善が認められた。・MTX投与を受けた患者において、疲労が7例(6.9%)、悪心が14例(13.7%)に認められ、2例が疲労と悪心で試験を中断した。重度の治療関連有害事象は観察されなかった。

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肺がん・上部消化器がん、オランザピンが食欲・体重を改善/JCO

 食欲減退は進行がん患者の30~80%にみられ、化学療法により悪化することがある。そこで、インド・Jawaharlal Institute of Postgraduate Medical Education and ResearchのLakshmi Sandhya氏らは、がん患者の化学療法に伴う消化器症状の改善に用いられるオランザピンについて、食欲亢進・体重増加効果を検討した。肺がん患者、上部消化器がん患者に対して、化学療法中に低用量のオランザピンを毎日投与することで、食欲亢進および体重増加が認められた。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年3月28日号に掲載された。 18歳以上で、未治療の進行または転移を有する胃がん患者(68例)、肺がん患者(43例)、肝がん・膵がん・胆道がん患者(13例)計124例を対象とした。対象患者を化学療法とともに低用量オランザピン(2.5g/日)を投与する群(オランザピン群)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付け、12週間投与した。両群とも、標準的な栄養評価と食事のアドバイスを受けた。主要評価項目は、5%以上の体重増加が認められた患者の割合と食欲改善であった。食欲については、VAS(visual analog scale)およびFAACT ACS(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy system of Quality-of-Life questionnaires Anorexia Cachexia subscale)で評価した。副次評価項目は、栄養状態の変化、QOL、化学療法の毒性であった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者124例(年齢中央値:55歳[範囲:18~78]、オランザピン群63例、プラセボ群61例)のうち、112例(オランザピン群58例、プラセボ群54例)が解析可能であった。・5%以上の体重増加が認められた患者の割合は、プラセボ群が9%(5/54例)であったのに対し、オランザピン群は60%(35/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p<0.001)。・VASに基づく食欲改善が認められた患者の割合は、プラセボ群が13%(7/54例)であったのに対し、オランザピン群は43%(25/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p<0.001)。・FAACT ACSに基づく食欲改善(37点以上)が認められた患者の割合は、プラセボ群が4%(2/54例)であったのに対し、オランザピン群は22%(13/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p=0.004)。・オランザピン群では、栄養状態、QOLが良好であり、化学毒性も少なかった。 著者らは、「低用量オランザピンは、未治療患者におけるがん化学療法中の食欲と体重を改善する、安価かつ忍容性の高い治療である。低用量オランザピンには、栄養状態の改善やQOLの改善、化学療法の毒性の低減といった副次的なベネフィットもみられた」とまとめた。

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アリピプラゾールの自律神経への影響、長時間作用型注射剤と経口剤の比較

 非定型抗精神病薬は、自律神経系(ANS)の活動にさまざまな影響を及ぼす。中でも、経口の抗精神病薬であるアリピプラゾールは、ANS機能不全と関連しているといわれている。長時間作用型注射剤(LAI)は統合失調症の主な治療オプションであるが、ANS活性に対するLAIと経口剤との違いは、これまでよくわかっていなかった。横浜市立大学の服部 早紀氏らは、統合失調症におけるアリピプラゾールの経口剤と月1回LAI(AOM)のANS活性への影響を比較検討した。その結果、AOMによる単剤治療は、経口アリピプラゾールと比較し、交感神経系などの副作用リスクが低いことを報告した。BMC Psychiatry誌2023年3月3日号の報告。 対象は、日本人統合失調症患者122例(入院患者:10例、外来患者112例、男性:51例、女性:71例、平均年齢[±SD]:43.2±13.5歳)。内訳は、経口アリピプラゾール単剤治療患者72例、AOM単剤治療患者50例であった。ANS活性の評価には、心拍変動パワースペクトル解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・経口アリピプラゾールで治療された患者は、AOMで治療された患者と比較し、交感神経活性の有意な減少が観察された。・重回帰分析では、アリピプラゾール製剤は、交感神経活性に有意な影響を及ぼすことが明らかとなった。・AOMは、経口アリピプラゾールよりも、交感神経系などの副作用リスクが低いことが示唆された。

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英語で「鼻うがい」は?【1分★医療英語】第75回

第75回 英語で「鼻うがい」は?My hay fever(seasonal allergy)is getting worse…(花粉症が悪化してきています)Nasal irrigation might help with your symptoms.(鼻うがいが良いかもしれません)《例文1》Gargling and nasal irrigation may ease sinus inflammation.([喉の]うがいと鼻うがいは、炎症を和らげる効果があります)《例文2》The idea behind nasal irrigation is that it helps flush out the nasal cavity.(鼻うがいは、鼻腔を洗い流す作業です)《解説》「鼻うがい」は“nasal irrigation”や“nasal rinse”と言いますが、うがいは“gargle”と言うので、“nasal gargle”と表現することもあります。日本では「手洗い・うがい」が習慣化されていますが、海外ではあまりうがいの習慣がないため、私が塩水でガラガラとうがいをしていたら、ルームメイトに注目されたこともありました。小規模な研究ですが、「1日2回の鼻うがいが新型コロナの感染後の入院や死亡率を下げる」という報告1)もあり、このときは米国でも鼻うがいが話題に上がりました。鼻孔のことを“nostril”と言います。鼻うがいのやり方の説明としては、“Pour the saline solution slowly into one nostril and let it drain out of the other nostril.”(片方の鼻孔から液体をゆっくり入れ、反対の鼻孔から流し出します)となります。“hay fever”(花粉症)の季節は毎年やってくるので、“personal hygiene”(清潔習慣)の一つである 鼻うがいの説明を覚えておくと、役に立つかもしれません。<参考>1)Baxter AL, et al. Ear Nose Throat J. 2022 Aug 25. [Epub ahead of print]講師紹介

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第158回 胎児脳のコロナ感染 / コロナ入院患者死亡率は依然として高い

妊婦感染コロナの胎児脳への移行が初めて判明妊婦に感染した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の胎児の脳への移行とその害が、米国・マイアミ大学の研究者いわく初めて認められました1,2,3)。調べられたのはコロナに感染した妊婦から生まれ、生まれてすぐに発作を起こし、出産時には認められなかった小頭症をやがて呈し、発達の大幅な遅れを示した小児2例です。2例の出産時の鼻ぬぐい液のPCR検査ではSARS-CoV-2は検出されませんでした。しかし2例とも抗コロナ抗体を有しており、血液中の炎症指標が有意に上昇していました。母親2例の胎盤を調べたところSARS-CoV-2のタンパク質が認められ、生まれた小児の血液と同様に炎症指標の亢進が認められました。小児の1例は1歳を迎えて間もない生後13ヵ月で不慮の死を遂げました。その脳を免疫染色で調べたところSARS-CoV-2に感染していたことを示すタンパク質が脳全域で認められました。亡くなったその小児が生前そうであったようにもう1例の小児も出生時には認められなかった小頭症をやがて呈し、発達もかなり遅れました。1歳になっても寝返りを打ったり支えなしで座ったりすることができず、報告の時点でホスピスを利用していました。妊娠半ばに感染したSARS-CoV-2は胎児と胎盤、さらには胎児の脳に至って胎盤と胎児の両方に炎症反応を誘発しうることを今回の調査結果は示しています。そうして生じた炎症反応は生後間もないころを過ぎても続く脳損傷や進行性の神経不調とどうやら関連しそうです。今回報告された2例の小児はコロナ流行が始まって間もない2020年のデルタ株優勢のころに妊娠第2期で感染した母親から生まれました。母親の1例は肺炎や多臓器疾患で集中治療室(ICU)に入り、そこでSARS-CoV-2感染が判明します。胎児の経過はその後も正常でしたが、妊娠32週時点で帝王切開による出産を要しました。死後脳に感染の痕跡が認められたのはこの母親の子です。一方、もう1例の母親のコロナ感染は無症状で、妊娠39週に満期出産に至っています。それら2例の母親が感染したころはワクチンが普及した現在と状況が違っていますが、胎児の経過観察の目下の方針は不十分であると著者は言っています。胎児の脳がSARS-CoV-2による影響を受けるのであればなおさら慎重な様子見が必要です。それは今後の課題でもあり、脳の発達へのコロナ感染の長期の影響を検討しなければなりません。コロナ入院患者の死亡率はインフル入院患者より依然として高いコロナ流行最初の年のその入院患者の死亡率はインフルエンザによる入院患者より5倍近く高いことが米国での試験で示唆されています。さてウイルスそのもの、治療、集団免疫が様変わりした今はどうなっているのでしょうか?この秋冬の同国のコロナ入院患者のデータを調べたところ、幸いにも差は縮まっているもののインフルエンザ入院患者の死亡率を依然として上回っていました4,5,6)。調べられたのは2020年10月1日~2023年1月31日にコロナまたはインフルエンザの感染前後(感染判明の2日前~10日後)に入院した退役軍人のデータです。いわずもがな高齢男性を主とするそれら1万1,399例のうちコロナ入院患者8,996例の30日間の死亡率は約6%(5.97%)であり、インフルエンザ入院患者2,403例のその割合である約4%(3.75%)を1.6倍ほど上回りました。他のコロナ転帰の調査がおおむねそうであるようにワクチンの効果がその解析でも認められています。ワクチン非接種者に比べて接種済みのコロナ入院患者の死亡率は低く、追加接種(boosted)も受けていると死亡率はさらに低くて済んでいました。コロナによる死を防ぐワクチンの価値を今回の結果は裏付けています。参考1)Benny M, et al. Pediatrics. 2023 Apr 06. [Epub ahead of print]2)COVID caused brain damage in 2 infants infected during pregnancy -US study / Reuters3)SARS-CoV-2 Crosses Placenta and Infects Brains of Two Infants: 'This Is a First' / MedScape4)Xie Y, et al. JAMA. 2023 Apr 06. [Epub ahead of print]5)COVID-19 patients were more likely to die than flu patients this past flu season: study / NMC6)Covid Is Still Deadlier for Patients Than Flu / Bloomberg

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ピロリ菌による胃がんリスク、病的バリアントが増強/NEJM

 Helicobacter pylori(H. pylori)感染は胃がんのリスク因子だが、遺伝性腫瘍関連遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントの、胃がんリスクへの関与や、これらの病的バリアントとH. pylori感染の組み合わせの、胃がんリスクに及ぼす影響は十分に評価されていないという。理化学研究所の碓井喜明氏らは、9つの遺伝性腫瘍関連遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントが胃がんリスクと関連していること、そのうち相同組換え修復機能に関わる遺伝子の病的バリアントが、H. pylori感染による胃がんのリスクをさらに増強することを示した。研究結果は、NEJM誌2023年3月30日号に掲載された。2つの独立コホートで、感染、病的バリアント、胃がんの関連を評価 研究グループは、バイオバンク・ジャパン(BBJ)の胃がん患者1万426例(年齢中央値69歳[四分位範囲[IQR]:62~75]、男性74.5%)と、対照群3万8,153例(64歳[54~72]、53.1%)を対象に、27個の遺伝性腫瘍関連遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントと胃がんリスクとの関連を評価した。 また、愛知県がんセンター病院疫学研究(HERPACC)の胃がん患者1,433例(年齢中央値62歳[IQR:54~69]、男性74.6%)と、対照群5,997例(55歳[45~64]、51.1%)を対象に、病的バリアントとH. pylori感染状態の組み合わせが、胃がんリスクに及ぼす影響を評価し、累積リスクを算出した。病的バリアント保持率は年齢とともに低下 BBJコホートの解析では、9個の遺伝子(APC、ATM、BRCA1、BRCA2、CDH1、MLH1、MSH2、MSH6、PALB2)の生殖細胞系列の病的バリアントが、胃がんのリスクと関連していた(9遺伝子すべてでp<1.85×10−3)。 これらの病的バリアント保持者の割合は、診断時の年齢が高くなるにつれて低下した(傾向のp=0.001)。9個の遺伝子の病的バリアント非保持者に比べ、APCの病的バリアント保持者は年齢が18.0歳低く(p=0.003)、CDH1の病的バリアント保持者は20.5歳(p<0.001)、MLH1の病的バリアント保持者は11.5歳低かった(p=0.02)。 追跡期間中央値7.5年の時点での全生存期間は、保持者と非保持者で差はなかった(log-rank検定のp=0.58、多変量解析のハザード比:1.27、95%信頼区間[CI]:0.82~1.97、p=0.28)85歳時の累積リスク、感染者で病的バリアント保持者は45.5% HERPACCコホートの解析では、胃がんリスクに関して、H. pylori感染と相同組換え遺伝子(ATM、BRCA1、BRCA2、PALB2)の病的バリアントとの間に交互作用が認められた(交互作用による相対的過剰リスク:16.01、95%CI:2.22~29.81、p=0.02)。 85歳の時点で、H. pyloriの非感染者は、病的バリアントの保持・非保持にかかわらず、胃がんの累積リスクは5%未満であった。これに対し、H. pylori感染者で相同組換え遺伝子の病的バリアント保持者は、同病的バリアント非保持者に比べ、胃がんの累積リスクが高かった(45.5%[95%CI:20.7~62.6]vs.14.4%[12.2~16.6])。 著者は、「これらの結果は、相同組換え遺伝子の病的バリアントの保持者では、H. pylori感染の評価と除菌が、とくに重要となる可能性を示唆する」としている。本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)などの助成を受けて行われた。

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循環器領域における「睡眠呼吸障害の診断・治療ガイドライン」改訂で“睡眠”も心血管リスク因子に/日本循環器学会

 睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)が循環器疾患の重要なリスク因子であることが明らかになり、2010年に『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』が発刊された。あれから13年、3月11日に『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』の2023年改訂版が発刊され、第87回日本循環器学会学術集会の「ガイドラインに学ぶ2」において、葛西 隆敏氏(順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科 准教授)が改訂ポイントを6つに絞り、改訂の背景や臨床に役立つ点を発表した。『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』は“睡眠”を意識 SDBは、さまざまな循環器疾患に合併し、循環器疾患の悪化に関与するだけではなく、循環器疾患の発症そのものに関与することも示唆されている1)。AHAは2010年にCardiovascular Health Promotionとして、7つの修正可能な因子(適正体重の維持、禁煙、運動習慣、健康的な食習慣、血圧・血清脂質・血糖値のコントロール)をLife’s Simple7として示してきたが、「睡眠」の重要性がエビデンスの構築により高まり、2022年の改訂では追加されLife‘s Essential 8になっている。 今回、本邦の『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』にもその点が反映され、以下の6項目が改訂された。葛西氏は「とくに診断における定義・スクリーニング、検査時のスコアリングルールがアップデートされており重要」と述べ、「以前から多くの先生に引用されていたであろう“心血管疾患ごとのSDB合併頻度”についても改訂し、HFpEFなどの疾患項目数を増やした」と説明した(本GL図8参照)。また、現状の循環器診療においてSDB診断がなされているかを知るために福島県立医科大学の医師らがJROAD-DPCからその傾向を調査したところ、「入院患者のみのデータではあるが、2012~19年の期間に急性心筋梗塞以外でのSDB診断は若干増加したものの、全体としては未診断が散見され、検査の実施率も心房細動以外では低下傾向」であったことを言及し、「入院中検査は点数が算定できないことも要因の1つだが、循環器医に対して、SDB診断の普及啓発が必要である」とも話した。<『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』2023年版の主な改訂点>1)正常睡眠と睡眠障害:より循環器領域の内容に特化する形へ変更2)診断:最近の定義・スコアリングルールに関する内容にupdate3)疫学:有病率などをより近年のデータにupdate4)病態:近年提唱された新たな病因・病態生理について言及5)治療:全体をupdateするとともに、エビデンスが出ている治療(舌下神経電気刺激療法[保険収載]、中枢性睡眠時無呼吸への横隔神経電気刺激療法[保険未収載]など)の可能性に関して言及6)各疾患との関連と治療:項目を拡充し、高血圧以外の循環器疾患リスク因子にも言及。多数のエビデンスが報告された不整脈(とくに心房細動)や心不全に関して、細分化し項目を分けた。 主な変更点は以下のとおり。1)正常睡眠と睡眠障害睡眠呼吸障害以外に循環器医が注意すべき睡眠問題として、睡眠過不足、睡眠関連運動障害(むずむず脚症候群[restless legs syndrome:RLS]、周期性四肢運動[periodic limb movement in sleep:PLMS])にもフォーカスを当てた。2)診断呼吸器学会が発行している「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」同様にSDBの診断基準は国際睡眠障害分類の第3版(ICSD-3)に準じ、成人の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea:OSA)の診断基準の1つに「患者が高血圧、気分障害、認知機能障害、冠動脈疾患、脳卒中、うっ血性心不全、心房細動、あるいは2型糖尿病と診断されている」と書かれている点を踏襲。『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』2023年版では、スクリーニングと診断の違いを明記した(表10参照)。なお、OSAの診断基準とCPAP治療の保険適用の基準が異なる点に注意が必要。また、心房細動や粗動、うっ血性心不全、あるいは神経疾患の存在は、中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea with Cheyne-Stokes respiration:CSA-CSR)を合併しやすい点も重要。3)疫学各心血管疾患でのSDB合併頻度は肺高血圧症(89.0%)が最も高く、治療抵抗性高血圧(83.0%、AHI≧10)、心房細動(81.4%)、HFrEF(76.0%)と続く。これを踏まえ患者を診察してもらうことで、これまで以上にリスク患者をあぶりだせる可能性。4)病態OSAの機序の記載を大幅に変更し、「上気道の解剖学的異常、上気道の神経性調節異常、呼吸調節系の不安定性、覚醒閾値」について、『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』2023年版では具体的な説明を加えた。5)治療・OSAに対する舌下神経電気刺激療法(CPAPが受けられない患者に適用)の項が追加。・生活習慣是正については睡眠薬のうち非ベンゾジアゼピン系睡眠薬やオレキシン受容体拮抗薬の処方検討を考慮してもよい。・OSAの薬物療法については上気道解剖学的要因、上気道神経性調節異常などに対しそれぞれ言及。・CSR-CSA治療に対しては心不全治療薬ARNIが追加。・そのほかのSDB治療については弾性ストッキングが追加。6)各疾患との関連と治療これまで「各論」としていた項目の名称を変更し、高血圧をはじめとする13疾患にカテゴライズ。とくにSDBのリスク因子となる高血圧、糖尿病、CKD、高尿酸血症のほか、多数のエビデンスが報告された頻脈性不整脈(上室)などの内容を充実させた(表35~45参照)。

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統合失調症長期入院患者の半数でみられる非アルコール性脂肪性肝疾患

 長期入院の統合失調症患者は身体的な疾患を呈しやすく、平均余命や治療アウトカムを害することにつながるとされる。しかし、長期入院患者における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の影響に関する研究はほとんどない。中国・安徽医科大学のXuelong Li氏らは、統合失調症入院患者のNAFLDについて、有病率と影響を及ぼす因子を調査した。その結果、重度の統合失調症による長期入院患者はNAFLDの有病率が高く、糖尿病、抗精神病薬の多剤併用、過体重や肥満、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアポリポ蛋白B(ApoB)の高値などが負の影響を及ぼす因子として特定された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年2月18日号の報告。 長期入院を経験していた統合失調症患者310例を対象に、横断的レトロスペクティブ研究を実施した。NAFLDは腹部超音波検査の結果に基づき診断した。NAFLDに影響を及ぼす因子を特定するため、t検定、マン・ホイットニーのU検定、相関分析、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・NAFLDの有病率は54.84%であった。・NAFLD群と非NAFLD群で有意差が認められた因子は、抗精神病薬の多剤併用、BMI、高血圧、糖尿病、総コレステロール、ApoB、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ALT、トリグリセライド(TG)、尿酸、血清グルコース、γ-GTP、HDL、好中球/リンパ球比、血小板/リンパ球比であった(各々、p<0.05)。・NAFLDと正の相関が認められた因子は、高血圧、糖尿病、抗精神病薬の多剤併用、BMI、TG、総コレステロール、AST、ApoB、ALT、γ-GTPであった(各々、p<0.05)。・ロジスティック回帰分析の結果では、統合失調症患者のNAFLDに影響を及ぼす因子は、抗精神病薬の多剤併用、糖尿病、BMI、ALT、ApoBであることが示唆された。・これらの知見は、統合失調症患者のNAFLDの予防および治療の理論的な基礎を提供し、新たな標的治療の開発に役立つ可能性がある。

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Fire and Forget vs.Treat to Target(解説:平山篤志氏)

 これまでの欧米での心血管イベントを低下させるためのガイドラインでは、ハイリスク患者に対してはLDL-コレステロール(LDL-C)を治療するために強力なスタチンの高用量をまず投与するというFire and Forgetの戦略が推奨されてきた。これはスタチンを用いた大規模臨床試験で、高用量と低用量を比較する、あるいはStrongとMildの高用量を比較する試験のメタ解析から得られた結論であった。また、管理目標値を設定するより、初期投与によるLDL-C低下の割合がイベント抑制には必要であるという考えもあった。 ただ、これまでのメタ解析からLDL-C達成値により心血管イベントが低下していること、また冠動脈プラークの退縮が認められることから、LDL-Cの管理目標値を目指す治療が重要であるとされていた(Treat to Target)。さらに、スタチン以外のコレステロール低下薬の有効性が示されると、リスクに応じたLDL-C管理目標値がガイドラインに記載されるようになった。 本試験は、Fire and Forget vs.Treat to Targetを検証するための試験であった。結果としては、両群で達成LDL-C値に差がなく、イベントにも差がなかったという結果であった。これまでのTreat to Targetを検証した試験では、目標値を達成することができず不十分な結果であったが、本試験では十分なコレステロール低下がTreat to Target群で達成できていたことが本試験成功の背景として挙げられる。これは管理目標値を設定しているガイドラインを後押しする結果である。ただ、わが国で通常使用可能なStrongスタチンの高用量は本試験の半量であるため、Treat to Targetで調整するよりはハイリスクの患者では、まずわが国の通常の高用量のStrongスタチンで治療を開始し、管理目標値を達成できない場合に薬剤を追加するFire and Forgetの戦略を選択するほうが実臨床に即していると考えられる。

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メタアナリシスで示される心血管系への緑茶の有効性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第231回

メタアナリシスで示される心血管系への緑茶の有効性イラストACより使用緑茶が心血管系に対して保護的に働くことは数多くの研究で示されています。昔はペットボトルで飲むものといえば麦茶が主流でしたが、ここ最近、本当に緑茶が広く浸透しているなと思います。伊藤園によると、緑茶飲料の国内市場規模は、20年前と比較して約1.5倍伸長しているそうです(図)。図. 緑茶飲料の国内市場規模(伊藤園ウェブサイトを参考に筆者作成)Zamani M, et al.The effects of green tea supplementation on cardiovascular risk factors: A systematic review and meta-analysis.Front Nutr. 2023 Jan 10;9:1084455.このメタアナリシスは、PubMed、Medline、Scopus、Web of Science、Embaseなどのオンラインデータベースにおいて、緑茶と心血管危険因子の検索語を組み合わせて、心血管リスク因子に対する緑茶摂取の効果を検討したランダム化比較試験のシステマティックレビューによるものです。55件のランダム化比較試験が適格とされました。ランダム効果メタアナリシスの結果、緑茶摂取は、総コレステロール値(加重平均差[WMD]:-7.62、95%信頼区間[CI]:-10.51~-4.73、p≦0.001)、LDL-C(WMD:-5.80、95%CI:-8.30~-3.30、p≦0.001)、空腹時血糖(WMD:-1.67、95%CI:-2.58~-0.75、p≦0.001)、HbA1c(WMD:-0.15、95%CI:-0.26~-0.04、p=0.008)、拡張期血圧(WMD:-0.87、95%CI:-1.45~-0.29、p=0.003)を有意に減少させる効果があり、一方でHDL-Cは有意に上昇させました(WMD:1.85、95%CI:0.87~2.84、p=0.010)。血圧については、健康な個人において、緑茶摂取において収縮期血圧を2.99mmHg、拡張期血圧を0.95mmHg減少させるという別のメタアナリシスもあります1)。また、このほか、摂取量に応じての脳卒中のリスクが低下するというメタアナリシスも報告されています2)。したり顔で緑茶の有効性を書いてきましたが、個人的には緑茶の有無にこだわるよりも、そのほかの食生活や運動のほうが重要ではないかと思っています。1)Yildirim Ayaz E, et al. Effect of Green Tea on Blood Pressure in Healthy Individuals: A Meta-Analysis. Altern Ther Health Med. 2023 Jan 23;AT7623. [Epub ahead of print]2)Wang ZM, et al. Green tea consumption and the risk of stroke: A systematic review and meta-analysis of cohort studies. Nutrition. 2023 Mar;107:111936. [Epub ahead of print]

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妊娠中の抗うつ薬使用、リスクとベネフィットは?~メタ解析

 妊娠中の抗うつ薬使用は数十年にわたり増加傾向であり、安全性を評価するため、結果の統計学的検出力および精度を向上させるメタ解析が求められている。フランス・Centre Hospitalier Universitaire de Caen NormandieのPierre Desaunay氏らは、妊娠中の抗うつ薬使用のベネフィットとリスクを評価するメタ解析のメタレビューを行った。その結果、妊娠中の抗うつ薬使用は、ガイドラインに従い第1選択である心理療法後の治療として検討すべきであることが示唆された。Paediatric Drugs誌オンライン版2023年2月28日号の報告。 2021年10月25日までに公表された文献を、PubMed、Web of ScienceデータベースよりPRISMAガイドラインに従い検索した。対象研究は、妊娠中の抗うつ薬使用と、妊婦、胎芽、胎児、新生児、発育中の子供などの健康アウトカムの関連を評価したメタ解析とした。研究の選択およびデータの抽出は、2人の独立した研究者により重複して実施した。研究の方法論的質の評価にはAMSTAR-2ツールを用いた。各メタ解析の重複部分は、修正された対象エリアを算出することにより評価した。4段階のエビデンスレベルを用いて、データの統合を行った。主な結果は以下のとおり。・51件のメタ解析をレビューに含め、1件を除くすべてのリスク評価を行った。・各リスクの有意な増加は以下のとおりであった。 ●主な先天性奇形(メタ解析8件:SSRI、パロキセチン、fluoxetine) ●先天性心疾患(11件:パロキセチン、fluoxetine、セルトラリン) ●早産(8件) ●新生児の適応症状(8件) ●新生児遷延性肺高血圧症(3件)・分娩後出血の有意なリスク増加および、死産、運動発達障害、知的障害の有意なリスク増加については高いバイアスリスクで、限られたエビデンスが認められた(各々1件のみ)。・自然流産、胎児週数や出生時低体重による児の小ささ、呼吸困難、痙攣、摂食障害のリスク増加および、早期抗うつ薬曝露による自閉症のその後のリスク増加に関して、矛盾した不確実なエビデンスが確認された。・妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症のリスク増加および、ADHDのその後のリスク増加に関するエビデンスはみられなかった。・重度または再発性のうつ病の予防について、1件の限られたエビデンスのみで、抗うつ薬使用のベネフィットが評価されていた。・新生児の症状(小~大)を除きエフェクトサイズは小さかった。・結果の方法論的な質は低く(AMSTAR-2スコア:54.8±12.9%[19~81%])、バイアスリスク(とくに適応バイアス)が高いメタ解析に基づいていた。・修正された対象エリアは3.27%であり、重複はわずかであった。・妊娠中の抗うつ薬治療は、第2選択として用いられるべきであることが示唆された(ガイドラインに従い心理療法後に検討)。・ガイドラインを順守し、パロキセチンやfluoxetineの使用をとどまらせることで、主要な先天性奇形リスクを防ぐことが可能である。・今後の研究では、不均一性やバイアス減少のため、母体の精神疾患と抗うつ薬の投与量を調整し、曝露のタイミングで分析を実行することが求められる。

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CTAで側副血行を確認の急性脳梗塞、6~24h後でも血管内治療は有効か/Lancet

 発症または最終健常確認から6~24時間(late window)の前方循環系主幹動脈閉塞による脳梗塞で、CT血管造影(CTA)により側副血行が確認された患者において、血管内治療は有効かつ安全であることが、オランダ・マーストリヒト大学医療センターのSusanne G. H. Olthuis氏らが実施した第III相試験「MR CLEAN-LATE試験」の結果、示された。前方循環系脳梗塞に対する血管内治療は、発症後6時間以内での有効性および安全性が確認されていた。著者は、「今回の結果は、主に側副血行路の有無に基づいてlate windowにおける血管内治療の対象患者を選択できることを支持するものである」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年3月29日号掲載の報告。側副血行が確認された患者を対象に、90日後のmRSスコアを評価 MR CLEAN-LATE試験は、オランダの脳卒中治療センター18施設で実施された多施設共同無作為化非盲検評価者盲検試験で、年齢18歳以上、CTAで前方循環系の主幹動脈(頭蓋内内頸動脈、中大脳動脈のM1部およびM2部)閉塞および側副血行が確認され、発症または最終健常確認から6~24時間、NIHSS神経機能欠損スコア2以上の患者を対象とした。なお、DAWN試験およびDEFUSE-3試験の選択基準と同様の臨床および画像プロファイルを有する患者は、オランダ国内のガイドラインに従って血管内治療を行い、MR CLEAN-LATE試験の登録からは除外した。 研究グループは、適格患者を最良の内科的治療に加えて血管内治療を行う群(血管内治療群)と行わない群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化はウェブベース行われ、ブロックサイズ範囲は8~20で、施設によって層別化された。 主要アウトカムは、無作為化90日後の修正Rankinスケール(mRS)スコア、安全性アウトカムは、無作為化90日後の全死因死亡と症候性頭蓋内出血とし、同意を延期または同意する前に死亡した患者を含む修正intention-to-treat集団を解析対象集団とした。解析は事前規定の交絡因子を調整して行われた。治療効果は多変量順序ロジスティック回帰分析で推定し、補正後共通オッズ比(acOR)と95%信頼区間(CI)により示した。90日後のmRSスコアは、血管内治療群で低下 2018年2月2日~2022年1月27日に535例が血管内治療群(268例)または対照群(267例)に無作為に割り付けられた。このうち、502例(94%)の患者が同意を延期または同意を得る前に死亡した(血管内治療群255例、対照群247例、女性261例[52%])。 90日後のmRSスコア中央値は血管内治療群3(四分位範囲:2~5)、対照群4(2~6)であり、血管内治療群が低かった。 多変量順序ロジスティック回帰分析の結果、血管内治療群でmRSのアウトカムが良好であることが認められた(acOR:1.67、95%CI:1.20~2.32)。全死因死亡は、両群で有意差はなかった(24%[62/255例]vs.30%[74/247例]、acOR:0.72、95%CI:0.44~1.18)。症候性頭蓋内出血は、血管内治療群のほうが対照群と比較して高頻度であった(7% vs.2%、4.59、1.49~14.10)。

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5歳未満のコロナワクチン、地域の流行状況と有効性のバランスを鑑みて(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 生後6ヵ月~4歳児に対するファイザー製コロナワクチン「BNT162b2」3回接種の安全性と有効性がNEJM誌に示されたので、現状と照らし合わせて検討してみたい。現在日本では、6ヵ月~4歳児に対するコロナワクチンは、この論文で示されている12歳以上の1/10量であるBNT162b2ワクチン3μgを3週間間隔で2回、その後8週間以上空けて3回目接種が可能となっている(厚生労働省「生後6か月~4歳の子どもへの接種(乳幼児接種)についてのお知らせ」)。 本研究では用量設定試験である第I相の結果から3μgの用量を採用した。第II/III相試験において、6ヵ月~2歳児1,178例と2~4歳児1,835例にBNT162b2ワクチンを、それぞれ598例と915例にプラセボを接種して比較検討した。また3回目接種まで完了した児は6ヵ月~2歳児で386例、2~4歳児で606例であった。最も重要な安全性の項目に関しては、ほとんどが軽度~中等度の接種反応イベントとなっており、Grade4のイベントは確認されなかったとされる。大人では頻度の高い発熱も、6ヵ月~2歳児で7%、2~4歳児で5%程度と報告されている。有効性に関してはオミクロン変異株流行下におけるコロナ発症予防効果が、3回目接種後の1週間以降で73.2%と示された。 2023年3月の本論考の執筆時点では、日本の第8波のコロナ流行はほぼ収束しており、コロナワクチン接種の有用性を感じにくくなっている。第7波、第8波の到来から日本小児科学会では、生後6ヵ月~4歳の小児でもコロナワクチン接種のメリットがあると捉え、「努力義務」としている(日本小児科学会「生後6か月以上5歳未満の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」)。オミクロン変異株流行期以降は呼吸不全こそまれであるものの、重症例や死亡例が増加していることや、コロナ感染に伴う熱性けいれんや脳症などの重症例が報告されていることに基づいている。また、これまでに有効性の知見から、重症化予防効果は発症予防効果を上回ることが期待されるため、生後6ヵ月~4歳の小児においてもコロナワクチン接種が推奨されている。 先日3月28日に世界保健機関(WHO)から発表された「新型コロナウイルス感染症ワクチン接種ガイダンス」においては、健康な生後6ヵ月~4歳児に対するワクチン接種は「低優先度」に分類されている。1次接種(1、2回目ワクチン接種)や追加接種(3回目ワクチン接種)に関しては有効性や安全性が確認されているものの、他の予防接種に比べベネフィットが少なく、各国の感染状況や費用対効果などを鑑みることとされている(WHO : SAGE updates COVID-19 vaccination guidance)。 本研究ではワクチン接種に伴う副反応に対しても検討されている。発赤や腫脹などの接種部位反応や発熱などの項目に関しては生後6ヵ月~4歳児でも正確な評価が可能だが、倦怠感や頭痛、筋痛や関節痛に関する客観的な項目に関しての評価はNEJM誌に掲載された論文といえども、にわかには信じ難いと4児のパパとしては考える(田中)。もちろん成人に比べワクチン接種量も少なく、局所の副反応も全身性の副反応も頻度は低く、安全性は許容範囲内と捉えられる。現在のコロナ感染が落ち着いている状況下でワクチン接種を進めていくことはいささか難しいと考えるが、今後起こりうる流行の状況や安全性・有効性を考えて、小児期に接種する他の予防接種の間に組み込むことは何の問題もないのではと考える。

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花見と引っ越し【Dr. 中島の 新・徒然草】(471)

四百七十一の段 花見と引っ越し大阪では桜が満開!私のマンションでは先週末、近所の公園で花見がありました。とはいえ、花粉症の私にとっては難行苦行。でも、自治会役員をしているので行かないわけにはいきません。10年ほど前にも自治会役員として参加しました。その時の参加者は10人ちょっと。全然盛り上がらなかったので、準備も進行も楽でした。でも、今回は予想外。よほどコロナの3年間がフラストレーションだったのでしょうか。なんと62人が参加表明しました。62人ですよ、62人!場所取りも、弁当の準備も、ビールを冷やすのも、何もかもが大掛かりです。中にはキリンじゃなくてアサヒをくれ、と言う人までいて大変。私も抗ヒスタミン薬を飲んで参加しました。幸い薬が効いたのか、桜の下で弁当を広げても問題なし。皆さん、ビールを飲んで楽しんでおられたようです。とはいえ、それだけと言えばそれだけ。前日に行われた近所の自治会の花見は異常に力が入っていました。詩吟だとか、ハワイアンフラだとか、フォークダンスだとか。どう考えても高齢者主体のプログラムですね。ウチの管理組合も自治会も、それぞれ10年ごとくらいに役員が回ってきます。が、住民の高齢化に伴い、体の動かない人も多くなってきました。最近は75歳以上を免除にしようという話があります。でも、そんなことをすると若い人にどんどん回ってくるかもしれません。現役で働きながら役員をするというのも厳しい話です。私も体が動く間だけでも貢献しようと思っているのですが……さて、週明けの月曜日は4月最初の出勤日。異動や定年で去った先生の部屋の前には、不要になった本が山積み。中には本棚とかソファまで廊下に置いていった人もいます。そのうち誰かが片付けてくれるのでしょうか?そういえば、親戚の家を片付けていた女房も、古本を買取屋に持っていったそうです。なぜか『サンタフェ』には値段が付かず『養生訓』が売れました。養生訓を書いたのは貝原 益軒ですが、何かと引用されますね。パッと浮かぶのは、「接して漏らさず」とか「腹八分目」とか。医師であるだけに、健康オタクでもあったようです。試しにChatGPTに「貝原 益軒の『接して漏らさず』を説明して」と尋ねてみました。すると、とんでもない答えが……「人と接する際には、相手の話を注意深く聞き、相手の言葉や気持ちを漏らさずに受け止めることが大切であるという意味が込められています」ほんまかいな!もっともらしい回答に思わず騙されそうになりました。知ったかぶりをしないよう、ChatGPTには説教しておくことにいたしましょう。ということで花見と引っ越し。すっかり年度替わりの風物詩になったようです。最後に1句新年度 異動で残る 本の山

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日本における若年性認知症の初期症状とは

 東京都健康長寿医療センター研究所の枝広 あや子氏らは、認知症のサブタイプごとに、若年性認知症の初期症状を調査した。その結果、若年性認知症はサブタイプにより初期症状の頻度に違いがあることが明らかとなった。著者らは、本結果が若年性認知症の初期症状に対する一般の人々の意識向上に貢献し、早期診断や社会的支援が促進されるだろうと述べている。Psychogeriatrics誌オンライン版2023年2月22日号の報告。 日本における全国的な人口ベースの若年性認知症有病率調査を実施した。データは、若年性認知症を有する人が利用する医療サービス提供者を通じて収集した。初期症状は、記憶障害、失語障害、易刺激性、意欲低下、職場や家庭でのミスの増加、それ以外の異常な行動や態度といった6つのドメインで評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、若年性認知症を有する770例。・認知症のサブタイプごとに特徴的な初期症状が観察された。・アルツハイマー病では、記憶障害がより頻繁に認められた(75.7%、p<0.001)。・血管性認知症では、失語障害がより一般的であった(41.3%、p<0.001)。・前頭側頭型認知症では、意欲低下(34.9%、p<0.001)、職場や家庭でのミスの増加(49.4%p<0.001)、それ以外の異常な行動や態度(34.9%、p<0.001)が高率に認められた。・女性では記憶障害が、男性では易刺激性がより多く観察された。・対象者の半数以上が発症時に雇用されており、そのうちの57.2%は初期症状として職場や家庭でのミスの増加が認められた。

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ペムブロリズマブ+化学療法、悪性胸膜中皮腫1次治療のOSを改善/MSD

 2023年3月10日、Merck社は切除不能な進行または転移のある悪性胸膜中皮腫の1次治療においてペムブロリズマブと化学療法の併用療法を評価する第II/III相CCTG IND.227/KEYNOTE-483試験で、主要評価項目の全生存期間(OS)を達成したことを発表した。 IND.227/KEYNOTE-483試験は、Canadian Cancer Trials Group(CCTG)が実施医療機関となり、National Cancer Institute of Naples(NCIN)およびIntergroupe Francophone de Cancerologie Thoracique(IFCT)と共同で実施する非盲検無作為化第II/III相試験である。同試験では切除不能な進行悪性胸膜中皮腫の治療においてペムブロリズマブと化学療法の併用療法を評価した。主要評価項目はOSで、副次評価項目は盲検下独立判定機関(BICR)が評価した無増悪生存期間(PFS)および客観的奏効率(ORR)のほか、安全性、生活の質(QoL)であった。 同試験の最終解析でペムブロリズマブと化学療法の併用療法群は、化学療法単独群と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるOSの改善が認められた。本試験におけるペムブロリズマブと化学療法の併用療法の安全性プロファイルはこれまでに報告されている試験の結果と一貫していた。 悪性中皮腫は胸部、腹部、心臓、精巣など体の特定の部位を覆う膜に発生するがんで、2020年には世界で3万人以上が新たに診断され、2万6,000人以上が死亡したと推定されている。胸膜中皮腫は、悪性中皮腫の中で最も多く、約75%を占めている。悪性胸膜中皮腫は多くの場合進行が速く、5年生存率はわずか12%とされる。 この結果は、今後さまざまな腫瘍関連学会で発表するとともに、世界各国の規制当局へ承認申請する予定である。

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インヒビター保有の重症血友病A・B、siRNA薬fitusiranが出血抑制/Lancet

 インヒビターを保有する重症血友病AまたはB患者において、fitusiranの予防的皮下投与は、年間出血率を統計学的有意に改善し、被験者の3分の2において出血を認めなかったことが、米国・南カリフォルニア大学のGuy Young氏らによる第III相多施設共同非盲検無作為化試験「ATLAS-INH試験」で示された。fitusiranは、アンチトロンビンを標的とする新規開発の短鎖干渉RNA(siRNA)治療薬で、インヒビター保有の有無を問わず血友病AまたはB患者の止血バランスを調整する。本検討は、fitusiranの予防的投与の有効性と安全性を評価したもので、結果を踏まえて著者は、「fitusiranの予防的投与が、血友病患者の治療管理を改善する可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年3月29日号掲載の報告。fitusiran予防的投与とBPA出血時投与で平均年間出血率を比較 ATLAS-INH試験は、12ヵ国26ヵ所の医療機関(主に第2次・3次医療センター)で実施された。第VIII因子または第IX因子に対するインヒビターを保有する重症血友病AまたはBで、出血時にバイパス製剤(BPA)投与を受けている12歳以上の男性患者を、fitusiran(80mg/月)を予防的に皮下投与する群(fitusiran予防的投与群)、出血時にBPA投与を継続する群(BPA出血時投与群)に2対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は9ヵ月だった。 主要エンドポイントは、有効性判定期間(29~246日目)のITT集団における平均年間出血率で、負の二項分布モデルで推定した。安全性については、副次エンドポイントとして安全性集団を対象に評価した。平均年間出血率はfitusiran群1.7%、BPA群18.1% 2018年2月14日~2021年6月23日に、85例がスクリーニングを受け、うち57例(67%)が無作為化を受け全例が試験を完了した(ITT集団、年齢中央値27.0歳[四分位範囲:19.5~33.5]、BPA出血時投与群19例[33%]、fitusiran予防的投与群38例[67%])。安全性集団は、60例(BPA出血時投与群19例、fitusiran予防的投与群41例[無作為化を受けずにfitusiranの予防的投与を受けた3例を含む])を対象とした。 負の二項分布モデルで推定した平均年間出血率は、BPA出血時投与群18.1%(95%信頼区間[CI]:10.6~30.8)に対し、fitusiran予防的投与群は1.7%(1.0~2.7)と有意に低率で(p<0.0001)、fitusiran予防的投与は年間出血率を90.8%(95%CI:80.8~95.6)低下させた。 治療を要する出血が認められなかったのは、BPA出血時投与群1例(5%)に対し、fitusiran予防的投与群は25例(66%)だった。 fitusiran予防的投与群で最も多くみられた治療中に発現した有害事象は、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加で、13/41例(32%)に認められた。同有害事象はBPA出血時投与群では認められなかった。また、血栓イベントの疑いまたは確定例は、fitusiran予防的投与群で2例(5%)認められた。試験期間中の死亡は報告されなかった。

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