サイト内検索|page:131

検索結果 合計:11808件 表示位置:2601 - 2620

2601.

糖尿病患者の眼科受診率は半数以下/国立国際医療研究センター研究所

 糖尿病で重大な合併症に「糖尿病性網膜症」がある。治療の進歩もあり、減少しているとはいえ、本症の予防には定期的なスクリーニングが重要であり、糖尿病を主に診療する内科医と眼科医の間の連携はうまく機能しているのだろうか。この疑問に対し、井花 庸子氏(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センター)らの研究グループは、ナショナルデータベースを用いたレトロスペクティブ横断コホート研究「わが国の糖尿病患者における糖尿病網膜症スクリーニングのための内科と眼科の受診間の患者紹介フロー」を行い、その結果を報告した。Journal of Diabetes Investigation誌5月2日オンライン掲載。■糖尿病患者の眼科受診は半数以下 本研究は、2016年4月~2018年3月までの日本全国保険請求データベースのデータを使用。眼科受診および眼底検査は、特定の医療処置コードを用いて定義した。2017年度に眼科を受診した患者のうち、糖尿病薬を服用している患者の眼科受診と眼底検査の割合を算出し、網膜症検診に関連する因子を特定するため修正ポアソン回帰分析を行い、都道府県別の指標も算出した。 結果は以下のとおり。・糖尿病治療薬を服用している患者440万8,585例(男性57.8%・女性42.2%、インスリン使用14.1%)のうち、47.4%が眼科を受診。・眼科受診者の96.9%が眼底検査を受診。・解析から眼底検査実施割合が高かった共通因子は、女性、高齢者、インスリン使用者、糖尿病学会認定教育施設、病床数の多い医療機関で糖尿病薬を処方されている患者だった。・都道府県別の眼科受診率の幅は38.5~51.0%、同様に眼底検査は92.1~98.7%。 以上の結果を受け、「医師から糖尿病薬を処方された患者のうち、眼科を受診した患者は半数以下だった。一方で、眼科受診をした患者のほとんどが眼底検査を受診していた。糖尿病患者を担当する医師や医療従事者は、担当する患者に眼科受診を勧める必要性を再認識することが必要」と井花氏らは結論付けている。

2602.

コロナ罹患後症状、スコアに基づく定義を提案/JAMA

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染後に生じる持続的であり再発を繰り返す、あるいは新規の症状は、罹患後症状(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC)と呼ばれ、long COVIDとしても知られている。米国・マサチューセッツ総合病院のTanayott Thaweethai氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)によるRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)Initiativeの一環として、RECOVER成人コホート9,764例のデータを解析し、SARS-CoV-2感染者では非感染者と比較して37症状が感染後6ヵ月以上の時点で多く認められ、このうち12症状の症状スコアに基づき、PASCを定義する予備的ルールを開発した。著者は、「PASCの実用的な定義のためには、他の臨床的特徴をさらに組み込み反復的な改良が必要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2023年5月25日号掲載の報告。NHIによるRECOVER成人コホートのデータを解析 研究グループは、米国の33州とワシントンDC、ならびにプエルトリコの85施設(病院、保健所、地域団体)において、18歳以上のSARS-CoV-2感染者および非感染者を登録し(RECOVER成人コホート)、前向き観察コホート研究を行った。登録は現在も行われており、今回の解析は2023年4月10日以前に登録された参加者を解析コホートとした。 感染者は、COVID-19の疑い、可能性および確定のWHO基準を満たしていることとし、COVID-19発症日またはSARS-CoV-2検査陽性日を指標日とした。また、非感染者は、SARS-CoV-2感染歴がなく、過去のSARS-CoV-2検査が陰性であった日を指標日とした。参加者は受診および遠隔により症状調査を受け、指標日から6ヵ月以上後の調査を完了している参加者を解析対象とした。 主要アウトカムは、参加者が報告した44の症状の有無で、これらの症状を用いてPASCを特定する予備的定義を作成し、PASCの頻度について解析した。PASCスコアに寄与する12症状を特定 解析対象は、適格基準を満たした9,764例(感染者8,646例、非感染者1,118例)。対象集団の背景は、女性71%、ヒスパニック/ラテン系16%、非ヒスパニック系黒人15%、年齢中央値47歳(四分位範囲[IQR]:35~60)であった。 全体において、44症状のうち、37症状が頻度2.5%以上かつ補正後オッズ比1.5以上(感染者vs.非感染者)であった。頻度(重症度閾値を使用)の絶対差が15%以上の症状は、労作後倦怠感(PEM)、疲労、浮動性めまい、ブレインフォグおよび消化管症状であった。 37の各症状に推定係数に基づいてスコアを割り付け、PASCを特定するためのスコア閾値を求めた結果、12の症状(労作後倦怠感、疲労、ブレインフォグ、浮動性めまい、消化管症状、動悸、性的欲求・性機能の変化、嗅覚・味覚の喪失または変化、口渇、慢性咳嗽、胸痛、異常行動)が特定され、各症状のスコアは1~8で、PASCスコアの閾値は合計12点以上であった。 2021年12月1日以降(オミクロン株流行期)に初感染し、感染後30日以内に登録された参加者2,231例のうち、6ヵ月時点でのPASC陽性者は224例(10%、95%信頼区間:8.8~11)であった。

2603.

γ-GTPが高い、アルコール性肝障害の可能性は?

 大塚製薬主催のプレスセミナー(5月22日開催)において、吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器内科学 教授)が「肝機能異常を指摘されたときの対処法」について講演し、アルコール性肝障害を疑うポイントやかかりつけ患者に対する対応法ついて解説を行った。病院の受診を検討すべきタイミングなどの基準、また減酒治療を検討する基準は? 肝機能障害は“人間ドック受診者の3人に1人が指摘を受ける項目”と言われており、臓器治療としては断酒治療が最も有効だが、ハードルが高い患者さんには「断酒をいきなり強く求めると治療が続かないことが多く、その場合まずは減酒から始める」と吉治氏は話した。医学界では各学会が「熊本宣言 HbA1c7%未満」「stop-CKD eGFR60未満」などのスローガンを掲げて市民に対して疾患啓発を行っている一方で、肝機能については提言が存在しなかった。そこで、日本肝臓学会は6月15、16日に開催される『第59回日本肝臓学会総会』にて“Stop CLD(Chronic liver disease) ALT over 30U/L”(ALTが30を超えたらかかりつけ医を受診しましょう)を『奈良宣言』として掲げることにしたという。この数値の根拠ついて「この値は特定健診基準や日本人間ドック協会のALTの保健指導判定値であり、日本のみならず脂肪肝がとくに問題になっている米国でも医師への相談基準」とコメントした。 このほかに、「飲酒習慣スクリーニングテスト」(AUDIT:The Alcohol Use Disorders Identification Test)において15点超ではアルコール依存症が疑われるが「それを満たさない段階(8~14点)でも減酒支援を行う必要がある」とも話した。健診で「γ-GTPが高い」と言われた。アルコール性肝障害の可能性は? γ-GTPはアルコールだけではなく、脂肪が蓄積した脂肪肝の状態、胆汁の流れが悪くなった場合(胆石・膵臓がんなど)でも上昇するが、アルコールに起因する場合は、AST(GOT)やALT(GPT)も異常値が出るのでそれらの数値を併せて確認することが基本となる。なお、“アルコール性”の定義は『長期(通常は5年以上)にわたる過剰の飲酒が肝障害の原因と考えられる病態』で、以下のような条件を満たすものを指す。<アルコール性の定義を満たす条件>1)過剰の飲酒とは、1日平均純エタノール60g以上の飲酒(常習飲酒家)をいう。ただし女性やALDH2欠損者では、1日40g程度の飲酒でもアルコール性肝障害を起こしうる。2)禁酒により、血清AST、ALTおよびγ-GTPが明らかに改善する。3)肝炎ウイルスマーカー、抗ミトコンドリア抗体、抗核抗体がいずれも陰性である。 また、アルコール性肝障害は性差も関わる。近年、女性の飲酒率は増加傾向だが、男性との体格差があるため、同じ飲酒量ではより過剰になってしまうことにも注意が必要だ。同氏は「実際に女性は男性に比べて2/3程度の飲酒量で肝障害が出現することも明らかになっている」と話した。 このような疾患を予防するためには“正確な飲酒量の把握”が最も重要で、本人の過少申告を防ぐためにも家族・知人から聴取することが必要不可欠となる。そのほかにも「肝機能の低下が他臓器の治療介入にも影響を及ぼすことから早期治療を促すことも大切」と説明した。アルコール性肝障害は将来的にどんなリスクがある? 日本人のアルコール関連死因の中で肝・消化器関連は87%と最も多い。しかもコロナの影響を受け、在宅時間の長さに伴い飲酒量も増えて肝・膵疾患が著明に増加している1)。ほんの10年前までは肝硬変や肝がんの原因と言えばウイルス性肝炎が8~9割を占めていたが、治療方法が確立した昨今ではB型/C型肝炎以外の疾患によるものが半数以上を占め、アルコールが起因している例が増えている2)。また、肝炎治療によりウイルスを排除できた後でもアルコール摂取によって、肝がん発症リスクが増加することも報告3)されている。 また、アルコールによってサルコペニアが進行すると言われているが、一方で「サルコペニアが肝疾患患者の生命予後を悪化させてしまう。このような状況において、診療ガイドがない点が長年の課題だったが、2022年に『アルコール性肝障害(アルコール関連肝疾患)診療ガイド』がついに発刊された」と話した。 なお、海外ではアルコール性肝障害=アルコール依存症を想起することが問題視されていることから、国内でも将来的には「アルコール・リレイテッド」と表現されるようになるかもしれない。減酒治療をするにはどこに受診したらよい? 受診先について同氏は「断酒・禁酒をすることが一番の治療法であるため、精神科の先生に相談することがベストであるが、かかりつけ医はいるけれど健診結果の専門的な相談まではできていないという場合も多いと思われる。2021年から一般内科医も日本アルコール・アディクション医学会および日本肝臓学会が主催するeラーニング研修を受けることで、飲酒量低減薬を処方することが可能になった。そのため、医師の皆さまには、かかりつけ患者に健診結果でALTが30超であった場合には相談するように呼び掛けてほしい。そして、飲酒量が男性で60g/日以上、女性で40g/日以上かつAST・γ-GTP異常がある場合にはアルコール性肝障害を疑って専門医へコンサルテーションするようにお願いしたい」と述べ、「近隣の肝臓専門医は日本肝臓学会のホームページより検索することが可能なので、専門医紹介時にぜひ活用いただきたい」と締めくくった。

2604.

ChatGPTに代筆依頼すると達人エッセイストでした、弟子入り希望です【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第61回

第61回 ChatGPTに代筆依頼すると達人エッセイストでした、弟子入り希望ですChatGPTは、人間のように自然な会話ができる生成AIです。生成AIとは、学習したデータを基に、文章や画像、さらに音楽などを新たに作成する人工知能(AI:Artificial Intelligence)の総称です。2022年11月に公開されるや、無料で利用できる革新的なサービスとして注目を集めています。このChatGPTに関する報道は皆さまも耳にしたことはあるでしょう。すでに上手く使いこなしている方もいるでしょうが、具体的に経験したことがない方もいるでしょう。試してみましょう。ChatGPTに質問です。「医療に関するエッセイで、猫・生命観をモチーフとした原稿を書いてください」と入力し、エンターキーをポンとクリックしました。このコラムの代筆依頼をしたことになります。待つこと30秒でPC画面に表示された内容を、一切修正なしで提示します。タイトル:猫の生命観:自己の存在を受け入れる喜び人間社会において、医療は私たちの生活に欠かせないものです。しかし、医療の本質は単なる身体的な健康だけではなく、私たちの心と魂を癒すことも含まれています。このエッセイでは、猫をモチーフにして、私たちの生命観と医療の関係について探求していきます。猫は自己の存在を受け入れ、豊かな喜びを見いだすことで知られています。その姿勢を参考にしながら、私たちが医療を通じてより充実した人生を送る方法を考えてみましょう。1.猫の自己受容と生命の美しさ猫は、自然な姿勢で自己を受け入れています。彼らは自分自身に対して厳しい評価をしませんし、他の猫との比較にも固執しません。それぞれが個性的な存在として、自分の存在を享受しているのです。私たちも、猫のように自己受容の姿勢を持つことができれば、医療の恩恵をより深く受けることができるのではないでしょうか。2.医療の役割:身体と心のバランスを取る医療は、身体的な健康だけでなく、心の健康も含まれています。猫は、自然なバランスを保つことに優れています。彼らはストレスを感じたり、自己犠牲を強いられることなく、自分の欲求を追求します。私たちも、医療を通じて身体と心のバランスを取り戻し、自己の欲求や目標を追求することで、より充実した人生を送ることができるでしょう。3.猫の喜びと癒しの力猫は、生命の喜びを追求することによって、心を豊かに保ちます。彼らは日常の小さな喜びを大切にし、穏やかで幸福な存在として生きています。私たちも、猫のように喜びを見いだし、心に癒しをもたらすことができれば、医療の助けをより深く受け入れることができるでしょう。猫の生命観は、私たちにとって重要な教訓を与えてくれます。自己受容、バランスの取れた生活、喜びの追求は、医療を通じてより豊かな人生を築くための鍵です。私たちは猫から学び、自分自身を大切にし、心と身体のバランスを取り戻し、喜びと癒しを見つけることができるでしょう。医療は私たちの生活の一部であり、猫のように生きることで、その恩恵を最大限に享受することができます。ここからは再び自筆の文章です。ChatGPTの作文への感想はいかがでしょうか。おそらくは皆さまの予想以上の内容の整った文章と感じたのではないでしょうか。自分自身もChatGPTに原稿の代筆を依頼するまでは、「書かせてやるぜ! どうせツマラナイ文章を書いてくるだろう、俺様が推敲してやるぜ!」という上から目線でした。出来上がった文章を読んで感服しました。なかなかの名文です。さらに30秒もかからずに書き上げるChatGPTは、師匠と仰ぎ弟子入りすべき達人エッセイストです。ChatGPTには、出力された文章の著作権や、元情報の不確実性など多くの問題が内在していることは承知しています。大学の課題レポートの作成に、学生がChatGPTを使用することの是非が議論されています。この使用を認めれば、思考力や問題解決能力の低下が懸念されます。一方で、この使用を禁止するだけで解決する問題ではありません。ここまでAIが進化している現実を認識する必要があります。また、このシステムを開発する情報産業を持つ米国に代表される国家と、そのすさまじい進化に驚愕し、導入の是非を議論する以上の関与が難しい日本という国へのじくじたる思いもあります。近い将来に医療分野にも大きな影響を与えるであろうことも容易に予想されます。世の中の人々は、ChatGPTに代表される生成AIに、(1)開発する人(2)使いこなす人(3)使われる人、この3つのカテゴリーに分類されていくのではないでしょうか。少なくとも(3)にはなりたくないですね。まず(2)を目指して使用経験を重ねてみます。「楽しい猫の鳴き声は?」とChatGPTに質問してみました。返答を一切修正なしで提示します。“にゃんにゃん!にゃおおお〜!にゃんにゃんにゃん!”素晴らしいです。ChatGPTは、猫についても達人レベルで熟知しているようです。やはり弟子入りですね。

2605.

母親の認知症歴が子供の認知症リスクに影響

 両親の認知症歴は、子供の認知症リスクを上昇させるともいわれているが、その結果に一貫性は見られていない。韓国・Sungkyunkwan University School of MedicineのDae Jong Oh氏らは、両親の認知症歴と子供の認知症リスクに関して、認知症サブタイプおよび性別の影響を調査するため、本検討を行った。その結果、母親の認知症歴は、男女ともに子供の認知症およびアルツハイマー病(AD)リスクとの関連が認められた。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年5月10日号の報告。 8ヵ国、9件の人口ベースコホート研究より抽出された高齢者1万7,194人のデータを用いて、横断的研究を実施した。対象研究では、認知症の診断のため、対面診断、身体検査、神経学的検査、神経心理学的評価が実施された。父親および母親の認知症歴と子供の認知症、認知症サブタイプのリスクとの関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象者の平均年齢は72.8±7.9歳、女性の割合は59.2%であった。・両親の認知症歴は、認知症およびADリスク上昇と関連が認められたが、非ADリスクとの関連は認められなかった。 【認知症】オッズ比(OR):1.47、95%信頼区間(CI):1.15~1.86 【AD】OR:1.72、95%CI:1.31~2.26・母親の認知症歴は、子供の認知症およびADリスクとの関連が認められたが、父親では認められなかった。 【認知症】OR:1.51、95%CI:1.15~1.97 【AD】OR:1.80、95%CI:1.33~2.43・子供の性別に分けた分析でも、同様の結果が認められた。 【男性】OR:2.14、95%CI:1.28~3.55 【女性】OR:1.68、95%CI:1.16~2.44・母親の認知症歴は、臨床試験においてADリスクの高い人を特定し、リスク層別化に有用なマーカーである可能性が示唆された。

2606.

HER2+早期乳がん、化学療法なしのde-escalationで3年iDFS良好(PHERGain)/ASCO2023

 HER2+早期乳がん患者を対象とした第II相PHERGain試験において、化学療法を含まないトラスツズマブ+ペルツズマブ(PH)併用療法の3年無浸潤疾患生存(iDFS)率は、ドセタキセル+カルボプラチン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(TCHP)併用療法と同等で、とくに18F-FDG PET/CT(以下「PET」)を指標とした反応例かつ病理学的完全奏効(pCR)例(一度も化学療法を行わない群)では98.8%と最も高かったことを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が発表した。 本試験の先行解析において、HER2+早期乳がん患者の術前治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ併用のpCR率が37.9%であったことが、2021年のLancet Oncology誌に掲載されている。今回は、手術を受けた患者を対象に、3年iDFS率の結果が発表された(データカットオフ:2023年2月24日)。PET反応例の判断基準はベースラインのSUVmax値から40%以上の減少であった。・対象:腫瘍径が1.5cm以上で、初回治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を受けたStageI~IIIAのHR+早期乳がん患者・試験群(PH群):PHを2サイクル→PET→PET反応例はPHを6サイクル/無反応例はTCHPを6サイクル→手術→pCR例はPHを10サイクル/非pCR例はTCHPを6サイクルとPHを4サイクル/PET無反応例はPHを10サイクル 285例・対照群(TCHP群):TCHPを2サイクル→PET→TCHPを4サイクル→手術→PHを12サイクル 71例・評価項目:[主要評価項目]試験群におけるPET反応例のpCR(ypT0/isN0)、試験群における3年iDFS[副次評価項目]全患者のpCR、対照群における3年iDFS、遠隔無病生存期間(DDFS)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)、安全性 など 主な結果は以下のとおり。・2017年6月26日~2019年4月24日に、356例をPH群とTCHP群に4:1の割合で無作為に割り付けた。追跡期間中央値は3.5年(範囲:0~5.3)で、手術を受けたのはTCHP群63例(88.7%)、PH群267例(93.7%)であった。・PH群のPET反応例は79.6%(227例)、PET無反応例は20.4%(58例)であった。pCR率は37.9%であった(95%信頼区間[CI]:31.6~44.5、p<0.001)。・3年iDFS率は、TCHP群が98.3%、PH群全体が95.4%、PH群のPET反応例かつpCR例が98.8%であった。iDFSイベントは、PH群全体で4.5%、PH群のPET反応例かつpCR例で1.2%に生じた。・3年DDFS率は、TCHP群が98.3%、PH群全体が96.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が100%であった。・3年EFS率は、TCHP群が98.4%、PH群全体が93.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が98.8%であった。・3年OS率は、TCHP群が98.4%、PH群全体が98.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が100%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象および重篤な有害事象の発現は、TCHP群が61.8%/27.9%、PH群全体が32.9%/13.8%、PH群のPET反応例かつpCR例が1.2%/0%であった。治療に関連する死亡例はなく、予期しない安全性上の所見は認められなかった。 これらの結果より、Cortes氏は「本試験において、PH群の3年iDFS率は95.4%で、とくにPET反応例かつpCR例では98.8%であった。多くのHER2+早期乳がん患者が、化学療法を含まないトラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)で治療できる可能性がある」とまとめた。

2607.

タイプ2炎症を有するCOPDにデュピルマブが有効か/NEJM

 血中好酸球数の上昇で示唆されるタイプ2炎症を有する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、抗インターロイキン(IL)-4/13受容体抗体デュピルマブ(本邦ではCOPDは未適応)を投与された患者はプラセボ投与患者と比べて、増悪が少なく、肺機能と生活の質(QOL)が改善され、呼吸器症状の重症度も低下したことが、米国・アラバマ大学のSurya P. Bhatt氏らが行った、第III相無作為化二重盲検試験「BOREAS試験」の結果において示された。NEJM誌オンライン版2023年5月21日号掲載の報告。中等度~重度増悪の年間発生率、気管支拡張薬使用前FEV1値の変化量などを比較 BOREAS試験は、24ヵ国275試験地で、標準的トリプル療法実施後も血中好酸球数が300/μL以上で増悪リスクが高いCOPD患者を対象に行われた。研究グループは被験者を1対1の割合で無作為に2群に割り付け、一方にはデュピルマブ(300mg)を、もう一方にはプラセボを、いずれも2週に1回皮下投与した。試験薬の投与期間は52週で、その後に患者は12週の安全性追跡評価を受けた。 主要エンドポイントは、COPDの中等度~重度増悪の年間発生率。多重性補正後の主な副次エンドポイントおよびその他のエンドポイントは、気管支拡張薬使用前FEV1値、St.George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコア(範囲:0~100、低スコアほどQOLが良好)、COPDにおける呼吸器症状評価(E-RS-COPD)のスコア(範囲:0~40、低スコアほど症状が軽度)の各変化量とした。エンドポイントはいずれもデュピルマブ群でより改善 2019年5月~2022年2月に、計939例が無作為化を受けた(デュピルマブ群468例、プラセボ群471例)。デュピルマブ群の95.1%、プラセボ群の93.4%が52週の試験期間を完了した。両群被験者のベースライン特性のバランスは取れており、平均年齢は65.1(SD 8.1)歳、現喫煙者は30.0%、また27.4%が高用量ステロイド吸入薬を投与されていた。 COPDの中等度~重度増悪の年間発生率は、デュピルマブ群は0.78(95%信頼区間[CI]:0.64~0.93)、プラセボ群1.10(0.93~1.30)だった(率比:0.70、95%CI:0.58~0.86、p<0.001)。 気管支拡張薬使用前FEV1値の、ベースラインから12週時までの最小二乗(LS)平均増大値は、デュピルマブ群160mL(95%CI:126~195)、プラセボ群77mL(42~112)で(LS平均群間差:83mL、95%CI:42~125、p<0.001)、両群差は52週時点まで保持された。 52週時点で、SGRQスコアのLS平均改善値は、デュピルマブ群-9.7(95%CI:-11.3~-8.1)、プラセボ群-6.4(同:-8.0~-4.8)だった(LS平均群間差:-3.4、95%CI:-5.5~-1.3、p=0.002)。同様にE-RS-COPDスコア改善値も、デュピルマブ群-2.7(95%CI:-3.2~-2.2)、プラセボ群-1.6(同:-2.1~-1.1)だった(LS平均群間差:-1.1、95%CI:-1.8~-0.4、p=0.001)。 投薬中止につながる有害事象や重篤な有害事象および死に結びつく有害事象が認められた患者数は、両群で均衡していた。

2608.

心アミロイドーシス、本当に除外できていますか?【心不全診療Up to Date】第9回

第9回 心アミロイドーシス、本当に除外できていますか?Key Points心臓に影響を及ぼすアミロイドーシスには、どんな種類がある?最近話題のATTRアミロイドーシスって、なに?まずは疑い、早期発見!~心アミロイドーシス診断の今とこれから~はじめに心アミロイドーシスとは、心臓の間質にアミロイドと呼ばれる不溶性の異常な線維が沈着して機能障害を引き起こす、重篤で進行性の浸潤性疾患である。そのアミロイドが形成されるために必要なアミロイド前駆蛋白は、現在30種類以上同定されているが、心アミロイドーシスを来す病型は、異常形質細胞により産生されたモノクローナルな免疫グロブリン軽鎖由来のアミロイドが全身諸臓器に沈着する免疫グロブリン性(AL, amyloid light chain)アミロイドーシス、トランスサイレチン(TTR, transthyretin) を前駆蛋白とするアミロイドが全身諸臓器に沈着するATTRアミロイドーシスのどちらかで98%以上を占める1)(図1、表1)。(図1)心臓に影響を及ぼすアミロイドーシスは、主にこの2種類画像を拡大するそしてATTRアミロイドーシスの中に、TTR遺伝子に変異のある遺伝性トランスサイレチン(ATTRv, hereditary transthyretin)アミロイドーシス(常染色体優性の遺伝性疾患)と、変異のない野生型トランスサイレチン(ATTRwt, wild-type transthyretin)アミロイドーシス(旧病名:老人性全身性アミロイドーシス)が存在する(表1)。(表1)心アミロイドーシスの主な種類とその特徴画像を拡大する画像診断技術や非侵襲的な診断方法の進歩のおかげで、そのほかの疾患で偶然診断されることも少なくなく(図2)、心アミロイドーシスは従来考えられていたよりも頻度の高い疾患であることがわかってきている。とくに近年症例数が増加している病型は、高齢者に多いATTRwtアミロイドーシスである2,3)(後述の表3で説明)。(図2)さまざまな場面における心アミロイドーシスの有病率画像を拡大するそして、心アミロイドーシスといえば、早期発見、早期治療がきわめて重要な疾患であるが、それはなぜか。その理由を含め、心アミロイドーシスの今とこれからについて皆さまと共有したい。まずは疑い、早期発見!~心アミロイドーシス診断の今とこれから~心アミロイドーシスを見逃さず早期発見するための症状やポイントを表2、図3にまとめた。(表2)心アミロイドーシスをいつ疑うか画像を拡大する臨床症状は多様であるが、まずは心アミロイドーシスのRed Flagsをしっかり把握しておくことが重要である。左室壁肥厚があるにもかかわらず心電図上は低電位を呈する、ACE阻害薬やβ遮断薬などの心不全治療薬に抵抗性であるなど、表2に詳細を記載したので、ぜひご確認いただきたい。それ以外にも、ATTRアミロイドーシスやALアミロイドーシスを疑う所見も表2、図3に記載した。このように、病歴、血液検査、心電図、心エコー図検査などを参考にしながら、「まずは疑う」という姿勢こそが見逃さないためにきわめて重要である(表3)。(表3)トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)は稀ではない!画像を拡大するそして、臨床的に心アミロイドーシスを疑われた場合(表2、図3)、本当に心アミロイドーシスか、アミロイドーシスであれば、どの病型かを診断していくこととなる。その診断アルゴリズムを最新の文献を参考に図4にまとめたので、これを基に診断方法を解説していく。なお、本邦の「2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン」にも大変わかりやすい診断アルゴリズムが掲載されており、ぜひこちらも一読いただきたい。(図3)心アミロイドーシスの症状画像を拡大する(図4)心アミロイドーシスの診断アルゴリズム4,5)画像を拡大する心アミロイドーシスを疑った場合、まず行うべきことは、治療可能なALアミロイドーシス(未治療の場合、急速に進行する致命的な疾患!)の除外である。ALアミロイドーシスは、骨髄中のクローナルな(腫瘍化した)形質細胞の過剰増殖によるもので、通常、血清または尿中にモノクローナル蛋白(M蛋白)が検出される。この疾患は、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS, monoclonal gammopathy of undetermined significance)、くすぶり型骨髄腫(SMM, smoldering multiple myeloma)、多発性骨髄腫(MM, multiple myeloma)にまたがる疾患群の一部である。MGUSは、クローナルな形質細胞のわずかな過剰増殖(骨髄中のクローナルな形質細胞比率<10%)によるものであり、血清M蛋白が3g/dL未満で、クローンに関連する臓器障害(CRAB [高Ca血症:calcium、腎不全:renal、貧血:anemia、溶骨性骨病変:bone]など)がないと定義される。SMMは、骨髄形質細胞または血清M蛋白のいずれか(または両方)が基準値を超えているが、臓器障害がない患者を指す。そして、最終的には臓器障害(CRAB)を合併し、MMとなる。定義上、ALアミロイドーシスは、MGUSとSMMのいずれにも該当しないが、AL患者の骨髄やM蛋白はそれらの定義に合致している。重要な点は、AL患者は、心筋障害、腎障害、神経障害、肝障害などの臓器障害を有し、化学療法を必要とするということである。治療の詳細は後編で述べる。現在、ALアミロイドーシスを除外するための最も効率的で効果的な方法は、血清および尿蛋白免疫固定電気泳動法(IFE, immunofixation electrophoresis)、血清遊離軽鎖(sFLC, serum free light chain)アッセイ、この3つの簡易検査を行うことである。血清および尿のIFEでM蛋白が検出されず、sFLCアッセイが正常(κ/λ比:0.26~1.65)であれば、ALアミロイドーシスを除外するための陰性的中率は約99%となる(なお、sFLCの正常値は、使用するアッセイによって異なる)6,7)。なお、これらの検査が陽性であれば、生検が必要であり、今後の早期治療も踏まえて早急に血液内科へコンサルトする。一方、これらの検査が陰性であれば、次に行うべき検査は、ピロリン酸シンチグラフィ(99mTc-PYP)である。その結果、視覚的評価法のGrade2(肋骨と同等の心臓への中等度集積)もしくはGrade3(肋骨よりも強い心臓への高度集積)、心/対側肺野比(H/CL比)≧1.5(1時間後撮影)もしくは1.3(3時間後撮影)であれば、ATTRアミロイドーシスと診断される8)。ただし、Grade2の症例では、ALや血液プールへの生理的集積を鑑別する必要があるため、プラナー撮影にSPECT撮影をできる限り追加し、心筋や血液プールへの集積をより正確に評価することが推奨されている8,9)。そして最後にTTR遺伝子解析を行い、ATTRvかATTRwtかを診断する。以上、診断アルゴリズムについて詳しく説明してきたが、最後に少し心アミロイドーシス診断のこれからについて、述べてみたい。近年、人工知能・深層学習モデルを用いて心電図や心エコー図検査から心アミロイドーシスを自動検出する技術の進歩が凄まじく、かなりの精度で完全自動診断できるという報告10)や、機械学習モデルを用いて電子カルテ情報からATTRwtアミロイド心筋症のリスク評価を自動で行い、早期診断に繋げるという報告がある11)。このように、心アミロイドーシスが早期に自動診断される時代はすぐそこに来ており、わが国においても、いち早くこのようなシステムが導入されることが望まれる。以上、今回は心アミロイドーシスとはどういったもので、診断をどうすべきかについて述べてきた。次回は、心アミロイドーシスの最新治療を含めた治療の今とこれからについて詳しくまとめていきたいので、乞うご期待。第10回につづく。1)Benson MD, et al. Amyloid. 2018;25:215-219.2)Ruberg FL, et al. J Am Coll Cardiol. 2019;73:2872-2891.3)Aimo A, et al. Eur J Heart Fail. 2022;24:2342-2351.4)Hanna M, J Am Coli Cardiol. 2020;75:2851-2862.5)Kittleson MM, et al. J Am Coll Cardiol. 2023;81:1076-1126.6)Katzmann JA, et al. Clin Biochem Rev. 2009;30:105-111.7)Katzmann JA, et al. Clin Chem. 2002;48:1437-1444.8)Dorbala S, et al. J Nucl Cardiol. 2019;26:2065-2123.9)Singh V, et al. J nucl Cardiol. 2019;26:158-173.10)Goto S, et al. Nat Commun. 2021;12:2726.11)Huda A, et al. Nat Commun. 2021;12:2725.

2609.

重症/治療困難なアトピー性皮膚炎、経口アブロシチニブvs.デュピルマブ

 重症および/または治療困難なアトピー性皮膚炎(AD)患者において、アブロシチニブはプラセボやデュピルマブよりも、迅速かつ大幅な皮疹消失とQOL改善をもたらした。米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが、第III相無作為化試験「JADE COMPARE試験」のサブグループについて行った事後解析の結果を報告した。著者は、「これらの結果は、重症および/または治療困難なADへのアブロシチニブ使用を支持するものである」とまとめている。重症および/または治療困難なADに関するデータはこれまで限定的であった。JADE COMPARE試験では、外用薬治療を受ける中等症~重症ADへのアブロシチニブ併用がプラセボ併用と比べて症状改善が大きいこと、デュピルマブ併用と比べてそう痒の改善が大きいことが示されていた。American Journal of Clinical Dermatology誌オンライン版2023年5月22日号掲載の報告。 研究グループは、JADE COMPARE試験の事後解析において、重症および/または治療困難なAD患者のサブセットにおけるアブロシチニブ、デュピルマブの有効性と安全性を評価した。同試験では、中等症~重症ADの成人患者に対し、1日1回の経口アブロシチニブ200mgまたは100mg、2週ごとのデュピルマブ300mg皮下注、またはプラセボを、外用薬と併用して投与した。 研究グループは、重症および/または治療困難なAD患者サブグループを、ベースライン特性に基づき、以下の7つのサブグループに分類した。1)Investigator’s Global Assessment(IGA)スコア42)Eczema Area and Severity Index(EASI)スコア21超3)全身性薬物治療に失敗または不耐性(コルチコステロイドのみ服用患者は除く)4)体表面積に占めるAD病変の割合(%BSA)50超5)EASIスコア38超(EASIスコア上位25%)6)%BSA 65超7)IGAスコア4の統合サブグループ(EASIスコア21超、%BSA 50超、全身性薬物治療に失敗または不耐性[コルチコステロイドのみ服用患者は除く]をすべて満たす) 評価項目は以下のとおり。・16週時におけるIGAスコアに基づく奏効(0[消失]または1[ほぼ消失]かつベースラインから2ポイント以上改善]・16週時におけるEASI-75達成患者の割合・16週時におけるEASI-90達成患者の割合・16週時におけるPeak Pruritus-Numerical Rating Scaleのベースラインからの4ポイント以上の改善(PP-NRS4)達成患者の割合・PP-NRS4達成までの期間・14日間(15日目に評価)のPP-NRSの変化量(最小二乗平均値[LSM])・16週時におけるPatient-Oriented Eczema Measure(POEM)のベースラインからの変化量(LSM)・16週時におけるDermatology Life Quality Index(DLQI)のベースラインからの変化量(LSM)  主な結果は以下のとおり。・重症および/または治療困難なAD患者のすべてのサブグループにおいて、16週時におけるIGAスコアに基づく奏効、EASI-75、EASI-90を達成した患者の割合が、プラセボ群よりアブロシチニブ200mg群で高率であった(名目上のp<0.05)。・PP-NRS4達成患者の割合は、ほとんどのサブグループにおいて、プラセボ群と比べてアブロシチニブ200mg群で高率であった(名目上のp<0.01)。また達成に要した期間は、アブロシチニブ200mg群(範囲:4.5~6.0日)が、100mg群(5.0~17.0日)、デュピルマブ群(8.0~11.0日)、プラセボ群(3.0~11.5日)より短かった。・POEMとDLQIのベースラインからの変化量(LSM)は、すべてのサブグループにおいて、プラセボ群よりアブロシチニブ200mg群で大きく(名目上のp<0.001)、アブロシチニブ200mg群で改善が認められた。・複数のサブグループ(全身性薬物治療に失敗または不耐性であった患者を含む)において、ほとんどの評価項目について、アブロシチニブ群とデュピルマブ群の間に臨床的に意義のある差が観察された。

2610.

大卒の社会人、ADHD特性レベルが高いのは?

 これまで、成人の注意欠如多動症(ADHD)と社会人口学的特徴を検討した研究の多くは、ADHDと診断された患者を対象としており、一般集団におけるADHD特性について調査した研究は、ほとんどなかった。また、大学在学中には問題がみられず、就職した後にADHD特性を発現するケースが少なくない。国際医療福祉大学の鈴木 知子氏らは、大卒の日本人労働者におけるADHD特性と社会人口学的特徴との関連について、調査を行った。その結果、大学を無事に卒業したにもかかわらず、大卒労働者ではADHD特性レベルは高いことから、ADHD特性レベルを適切に評価し、健康の悪化や予防をサポートする必要性が示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年4月5日号の報告。 日本全国から無作為に抽出された労働者1,240人を対象に、オンラインによる自己記入式調査を実施した。ADHD特性は、成人ADHD自己報告尺度(ASRS)を用いて測定し、DSM-5の基準を反映したスコアリングルールを適用した。性別、年齢、社会経済的地位、労働時間、健康関連行動などの社会人口学的特徴に関する情報を収集した。偏相関分析を用いて傾向の関連性を推定し、共分散分析を用いて調整平均を比較した。本モデルでは、すべての変数に対し調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・ADHD特性レベルは、女性よりも男性で高く(p=0.001)、より若いほど高かった(p<0.001)。・低所得者は、高所得者よりもADHD特性レベルが高かった(p=0.009)。・朝食、昼食、夕食の摂取とADHD特性との関連は認められなかったが、夜食をより頻繁に摂取する人ほど、ADHD特性レベルが高かった(p<0.001)。・睡眠により十分な休息が得られなかった人は、ADHD特性レベルが高かった(p=0.007)。

2611.

高リスク早期乳がんでの術後内分泌療法+アベマシクリブ、高齢患者でも有用(monarchE)/ASCO2023

 再発リスクの高いHR+/HER2-リンパ節転移陽性早期乳がん患者への術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加を検討したmonarchE試験において、65歳以上の高齢患者においても管理可能な安全性プロファイルと治療効果が得られることが示された。米国・Sarah Cannon Research Institute at Tennessee OncologyのErika P. Hamilton氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。術後補助療法としてのアベマシクリブ+内分泌療法は65歳以上にも効果 monarchE試験は、再発リスクの高いHR+/HER2-リンパ節転移陽性早期乳がん患者を対象に、術後補助療法としてアベマシクリブ+内分泌療法群と内分泌療法単独群に1:1に無作為に割り付けた第III相試験で、すでに無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)の延長と忍容可能な安全性プロファイルが示され、2年間の治療後もiDFS、DRFSへのベネフィットが持続し、QOLも保たれている。今回、本試験に参加した高齢患者における有効性と安全性を検討するために、65歳未満および65歳以上に分け、各サブグループでハザード比(HR)を推定した。また、安全性は65歳以上を65~74歳と75歳以上に分けて評価した。 術後補助療法としてのアベマシクリブ+内分泌療法について、高齢患者における有効性と安全性を検討した主な結果は以下のとおり。・monarchE試験の参加者のうち、65歳未満は4,787例、65歳以上が850例であった。・高齢患者は、併存疾患がより多く、PSがより高く、以前に受けていた術前/術後化学療法がより少なかった。・追跡期間中央値42ヵ月で、iDFSは、アベマシクリブ+内分泌療法群が内分泌療法単独群に比べて、65歳未満群(HR:0.646、95%信頼区間[CI]:0.554~0.753)と65歳以上群(HR:0.767、95%CI:0.556~1.059)の両群で数値的に優れた効果がみられた。4年iDFS率の絶対差は、65歳未満6.7%、65歳以上5.2%と、アベマシクリブによる絶対ベネフィットはほぼ同様だった。4年DRFS率の絶対差も65歳未満6.2%、65歳以上4.6%とほぼ同様だった。・アベマシクリブ+内分泌療法群での有害事象(AE)発現率は、全体、65歳未満、65歳以上でほぼ同様だった。75歳以上ではGrade3の下痢とGrade2~3の倦怠感の発現率が高かった。・65歳以上ではAEのために減量する割合が55%(65歳未満41%)、中止する割合が38%(65歳未満15%)と高く、75歳以降ではより高かった。・AEのために用量調節した患者群でもiDFSは同様だった。・QOLは2年間の治療期間中、どちらの治療群でもどの年齢層でも同様だった。 Hamilton氏は「これらのデータは、すべての年代への術後アベマシクリブを支持し、患者への治療経過の見通しについての助言に使用できる」とした。

2612.

EGFR陽性NSCLCの術後補助療法、オシメルチニブのOS解析結果(ADAURA)/ASCO2023

 オシメルチニブは第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であり、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)における術後補助療法、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発NSCLCを効能・効果として承認されている。これまで、病理病期IB~IIIA期のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する、術後補助療法としてのオシメルチニブの有用性を検証した、国際共同第III相無作為化比較試験「ADAURA試験」において、最終解析時においても無病生存期間(DFS)が有意に改善したことが報告されていた1)。今回、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、米国・イェール大学医学大学院のRoy S. Herbst氏が、これまで未発表であったADAURA試験の全生存期間(OS)の解析結果を発表した。DFSの結果がOSにも反映されるか不明であること、これまでEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者に対するEGFR-TKIによる術後化学療法が、OSの延長を示した無作為化試験の結果は報告されていないことから、本試験のOSの解析結果が注目されていた。なお、本発表の結果は2023年6月4日、NEJM誌に同時掲載された2)。・対象:18歳以上(本邦では20歳以上)で病理病期IB~IIIA期(本邦では病理病期II/IIIA期)のEGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)NSCLC患者のうち、腫瘍が完全切除された患者682例・試験群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ80mg/日を最大3年間投与 339例(日本人46例)・対照群(プラセボ群):343例(日本人53例) (両群ともに術後化学療法の使用は許容)・評価項目:[主要評価項目]病理病期II/IIIA期の患者におけるDFS[副次評価項目]全集団(病理病期IB~IIIA)におけるDFS、病理病期II/IIIA期におけるOS、無病生存率、OS率、QOL、安全性など 今回報告された主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2023年1月27日)時点での、病理病期II/IIIA期の患者におけるOS追跡期間中央値はプラセボ群56.2ヵ月、オシメルチニブ群59.9ヵ月で、OSのmaturityは21%であった。・再発後の後治療への移行率は、プラセボ群54%(184例)、オシメルチニブ群22%(76例)であった。そのうち、後治療としてEGFR-TKIを使用した患者の割合はそれぞれ88%(162例)、76%(58例)、オシメルチニブを使用した患者の割合はそれぞれ43%(79例)、41%(31例)であった。・病理病期II/IIIA期の患者におけるOS中央値はいずれの群においても未到達で、プラセボ群に対するハザード比[HR]は0.49(95.03%信頼区間[CI]:0.33~0.73、p=0.0004)であった。・病理病期II/IIIA期の患者における5年OS率は、プラセボ群73%に対し、オシメルチニブ群85%であった。・全集団におけるOS中央値もいずれの群においても未到達で、プラセボ群に対するHRは0.49(95.03%CI:0.34~0.70、p<0.0001)であった。・全集団における5年OS率は、プラセボ群78%に対し、オシメルチニブ群88%であった。・病理病期別にみたOSのプラセボ群に対するHRは、IB期(212例)が0.44(95%CI:0.17~1.02)、II期(236例)が0.63(95%CI:0.34~1.12)、IIIA期(234例)が0.37(95%CI:0.20~0.64)であった。・術後化学療法の併用の有無別にみたOSのプラセボ群に対するHRは、併用ありが0.49(95%CI:0.30~0.79)、併用なしが0.47(95%CI:0.25~0.83)であり、術後化学療法の併用の有無にかかわらず、オシメルチニブ群でOSの延長が認められた。・EGFR遺伝子変異(ex19del/L858R)別にみたプラセボ群に対するOSのHRは、ex19delが0.35(95%CI:0.20~0.59)、L858Rが0.68(95%CI:0.40~1.14)であった。・オシメルチニブ群のOS改善は各サブグループで一貫して認められた。・Grade3以上の有害事象はプラセボ群14%(48例)、オシメルチニブ群23%(79例)に認められたが、治験薬に関連すると判断された死亡例はいずれの群においても認められなかった(安全性のデータカットオフ日:2022年4月11日)。 Herbst氏は、本結果について、「ADAURA試験において、オシメルチニブはプラセボと比較して有意にOSを改善し、DFSの結果がOSにも反映されていた。本試験は、NSCLCに対するEGFR-TKIによる術後化学療法が、統計学的有意かつ臨床的意義のあるOSの改善を示した初めての第III相試験であり、病理病期IB~IIIA期のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する、オシメルチニブによる術後補助療法の標準治療としての地位を強固にするものであった」とまとめた。

2613.

英語で「患者を椅子に座らせる」は?【1分★医療英語】第83回

第83回 英語で「患者を椅子に座らせる」は?Would you be able to get the patient up on the chair ?(患者さんを[ベッドから]椅子に座らせることはできますか?)Definitely.(もちろんです)《例文1》医師Let’s get the patient up and walking today.(今日は患者さんに立って歩いてもらいましょう)看護師Understood.(わかりました)《例文2》医師No worries. We will get you ready for the surgery.(手術に臨めるように手配します)患者Thank you so much.(ありがとうございます)《解説》この表現は、日々の診療の中で患者さんの状態について話すときに非常によく使われます。“get”の後に目的語である“the patient”(この患者さん)、その後に状態を表す形容詞や動名詞を続けることで、「この患者さんを~の状態にする」という意味になります。《例文》のように、治療の過程で状態変化を伴うときによく使われます。日常会話でも“get”の後にさまざまな名詞と形容詞を付けることでいろんな使い方ができます。たとえば、“get you dressed”だと「服を着てきなさい」という意味になります。非常に使いやすいのでぜひマスターしてください。講師紹介

2614.

第166回 現金給付と死亡率低下が関連

世界銀行の推定によると2019年には世界人口の10人に1人近く(8.4%)が極度の貧困の指標である1日当たり2.15ドル未満での暮らしを強いられていました1)。また、今や世界人口の70%を占める“中の上”(upper middle-income)所得国の人々の貧困の指標である1日当たり6.85ドル未満での生活を強いられている人の割合は世界の半数ほどの47%にも上ります。新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)の流行で貧困層は拡大し、世界の極度の貧困者数は2020年に1億人近く(9,700万人超)増えたと推定されています。貧困を減らして治安を守る取り組みの1つとして100を超える低~中所得国が過去20年間に個人や家庭への現金給付を行いました。コロナ流行中に現金給付の裾野はさらに広がりました。世界銀行の昨年(2022年)2月の報告によると203ヵ国での962種類の現金給付のうち672の取り組みはコロナ流行中に新たに導入されたものであり、世界人口の実に17%に相当する13.6億人がコロナ流行中に現金給付を受け取ったと推定されています。政府が運営する大規模な現金給付は貧困の減少に成功し、受給者の経済的自立、就学、小児の栄養、女性の地位向上、保健サービス使用の改善をもたらしています。また、現金給付の導入で新たな感染症が減ったこともいくつかの試験で示されています。現金給付のそういった数々の効果が明らかになっている一方で究極の転帰である死亡率への効果はあまりはっきりしていません。そこで米国・ペンシルバニア大学のチームは低~中所得の37ヵ国の2000~19年の小児や成人700万人超の記録を使って現金給付の死亡率への影響を検討しました2,3)。それら37ヵ国のうち29ヵ国はサハラ以南のアフリカ、3ヵ国はラテンアメリカとカリブ諸国、4ヵ国はアジアパシフィック地域、1ヵ国は北アフリカに位置します。調査期間に成人約433万人(432万5,484人)と小児約287万人(286万7,940人)のうちそれぞれ約13万人(12万6,714人)と約16万人(16万2,488人)が死亡し、解析の結果、現金給付は成人女性の死亡率の20%低下、5歳未満小児の死亡率の8%低下と関連しました。現金をよりあまねく給付することやより高額を給付することは死亡率の一層の低下をもたらしました。現金給付と死亡率低下の関連が男性に認められず女性に限られたのは妊娠関連死亡の大幅な低下が主な要因でした。今回の解析で認められた幼い小児の死亡率低下も加味すると現金給付による貧困の減少は若い家族をとりわけ助けるのでしょう。現金給付などの貧困防止の取り組みで世間の人々の健康を改善して死亡を減らしうることを今回の解析は裏付けています。参考1)Half of the global population lives on less than US$6.85 per person per day / World Bank2)Richterman A et al. Nature. 2023 May 31. [Epub ahead of print]3)Social science: Cash transfer programmes reduce risk of death in low- and middle-income countries / Nature

2615.

治療抵抗性うつ病に対するベンゾジアゼピン長期使用~FACE-TRDコホート研究

 ベンゾジアゼピン(BZD)の長期使用は、公衆衛生上の問題の1つである。しかし、治療抵抗性うつ病(TRD)に対するBZD長期使用の影響に関するデータは、十分とはいえない。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、選択していないTRD患者におけるBZD長期使用および1年間でBZD中止に成功した患者の割合を調査し、継続的なBZD長期使用がメンタルヘルスのアウトカムに及ぼす影響を評価した。その結果、TRD患者の約半数は、BZDが過剰に使用されており、BZD中止を推奨しているにもかかわらず、1年間の中止率は5%未満であることを報告した。著者らは、TRD患者に対するBZD長期使用は、臨床症状、認知機能、日常生活に悪影響を及ぼす可能性があり、計画的なBZD中止が強く推奨されると考えられることから、薬理学的および非薬理学な代替介入を促進する必要があるとしている。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2023年8月30日号の報告。 2014~21年にTRDの専門医療機関13施設より募集されたTRD患者を対象に、1年間のフォローアップを行ったFACE-TRDコホート研究を実施した。トレーニングされた医師および患者からの報告を含む標準化された包括的バッテリーが実施され、1年後に患者の再評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時、BZD長期使用群に分類された患者は、45.2%であった。・多変量解析では、BZD長期使用群は、非BZD長期使用群と比較し、年齢、性別、抗精神病薬の投与量とは無関係に、身体活動の低さ(調整オッズ比[aOR]:1.885、p=0.036)、プライマリケアの利用率の高さ(B=0.158、p=0.031)と関連が認められた。・性格特性、自殺念慮、衝動性、幼少期のトラウマへの暴露、初発大うつ病エピソード年齢の低さ、不安、睡眠障害については、有意な差は認められなかった(それぞれp>0.05)。・BZD中止を推奨しているにもかかわらず、1年間のフォローアップ期間中にBZDを中止した患者は5%未満であった。・1年後の継続的なBZD長期使用と関連していた因子は、以下のとおりであった。 ●うつ病重症度の高さ(B=0.189、p=0.029) ●臨床全般重症度の高さ(B=0.210、p=0.016) ●不安状態の高さ(B=0.266、p=0.003) ●睡眠の質の低下(B=0.249、p=0.008) ●末梢炎症性の増加(B=0.241、p=0.027) ●機能レベルの低下(B=-0.240、p=0.006) ●処理速度の低下(B=-0.195、p=0.020) ●言語エピソード記憶の低下(B=-0.178、p=0.048) ●欠勤および生産性の低下(B=0.595、p=0.016) ●主観的な健康状態の低さ(B=-0.198、p=0.028)

2616.

高リスクStageII/III早期乳がんでの術後内分泌療法+ribociclib、iDFSを改善(NATALEE)/ASCO2023

 再発リスクの高いHR+/HER2-早期乳がんの術後内分泌療法へのCDK4/6阻害薬追加による効果については、すでにアベマシクリブが無浸潤疾患生存期間(iDFS)を改善したことがmonarchE試験で確認されている。ribociclibについては、リンパ節転移のない患者を含む再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がんという幅広い集団を対象に第III相NATALEE試験が進行している。その主要評価項目であるiDFSについて、第2回中間解析の結果、有意に改善したことが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのDennis J. Slamon氏により発表された。・対象: 男性および女性(閉経前後)の再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がん(StageIIAの場合はN1、またはN0かつグレード3、またはN0かつグレード2かつ高リスク、StageIIBの場合はN0~1、StageIIIの場合はN0~3の症例が対象)・試験群(ribociclib+ET群):ribociclib(400mg/日、3週投与1週休薬を3年)+内分泌療法(レトロゾールもしくはアナストロゾールを5年以上投与、男性と閉経前女性はゴセレリンを併用)2,549例・対照群(ET単独群):内分泌療法のみ 2,552例・評価項目:[主要評価項目]iDFS[副次評価項目]無再発生存期間、無遠隔再発生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)、患者報告アウトカム、安全性など 主な結果は以下のとおり。・2019年1月10日~2021年4月20日に5,101例を1:1に無作為化した。iDFSの第2回中間解析のデータカットオフ(2023年1月11日)時点で、426件のiDFSイベントが報告された。追跡期間中央値34ヵ月で、ribociclib群のうち治療中も含め治療を2年以上完了した症例は1,449例(57%)、3年完了した症例は515例(20%)だった。・iDFSにおける追跡期間中央値27.7ヵ月で、iDFSはribociclib+ET群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.748、95%信頼区間[CI]:0.618~0.906、片側p=0.0014)。主要なサブグループでも同様に改善した。・DDFSにおいても同様の改善がみられた(HR:0.739、95%CI:0.603~0.905、片側p=0.0017)。・OSは改善傾向が認められた(HR:0.759、95%CI:0.539~1.068、片側p=0.0563)。・ribociclib 400mgにおいても忍容性の高い安全性プロファイルが認められた。 Slamon氏は「NATALEE試験の結果は、ribociclib+非ステロイド性アロマターゼ阻害薬が、N0を含む、再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がんという幅広い患者の新たな治療選択肢となることを支持する」と結論した。

2617.

変性性僧帽弁閉鎖不全症、経カテーテル修復は有効か/JAMA

 手術リスクの高い孤立性の変性性僧帽弁閉鎖不全症(MR)の患者において、経カテーテル僧帽弁修復は安全に施行可能で、成功率は88.9%に達し、成功例のうち死亡率が最も低かったのは残存MRが軽度以下かつ平均僧房弁勾配が5mmHg以下の患者であったことが、米国・シーダーズ・サイナイ医療センターのRaj R. Makkar氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年5月23・30日号に掲載された。米国のレジストリを用いたコホート研究 研究グループは、変性性MRに対する経カテーテル僧帽弁修復のアウトカムの評価を目的に、レジストリに基づくコホート研究を行った(シーダーズ・サイナイ医療センターSmidt心臓研究所の助成を受けた)。 解析には、2014~22年に米国で、中等度~重度の変性性MRに対して非緊急的にedge-to-edge法による経カテーテル僧帽弁修復(MitraClipデバイス、Abbott製)を受け、米国胸部外科学会(STS)/米国心臓病学会(ACC)のTranscatheter Valve Therapies Registryに登録された患者が含まれた。 主要エンドポイントはMR治療成功とし、残存MRが中等度以下で平均僧房弁勾配<10mmHgと定義された。臨床アウトカムは、残存MRの程度(軽度以下のMR、中等度のMR)と僧房弁勾配の程度(5mmHg以下、5mmHg超10mmHg未満)に基づき評価された。1年後の死亡率、心不全による再入院が有意に改善 1万9,088例が解析の対象となった。年齢中央値は82歳(四分位範囲[IQR]:76~86)、女性が48%で、NYHA心機能分類クラスIII/IVが78%を占め、STS予測に基づく外科的僧房弁修復による死亡リスクは4.6%であった。84.8%が高血圧、31.9%が慢性肺疾患、20.6%が糖尿病を有していた。 MR治療成功は、すべての評価の時点での心エコー検査のデータが得られた1万8,766例のうち1万6,699例(88.9%)で達成された。MR治療成功の割合は、2014年の81.5%から2022年には92.2%へと増加した。 院内での死亡率は1.1%、脳卒中の発生率は0.6%、予定外の心臓手術または介入の割合は1.1%であった。経カテーテル僧帽弁修復後の入院期間中央値は1日(IQR:1~3)だった。また、30日の時点での死亡率は2.7%、脳卒中の発生率は1.2%、僧房弁再介入率は0.97%であった。NYHA心機能分類クラスIII/IVの割合は、30日の時点で15.8%に低下し、有意な改善が認められた(p<0.001)。 経カテーテル僧帽弁修復が失敗した場合と比較して、MR治療成功を達成した患者では、1年後の死亡率(14.0% vs.26.7%、補正後ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.42~0.56、p<0.001)および心不全による再入院(8.4% vs .16.9%、0.47、0.41~0.54、p<0.001)の割合が有意に低かった。 また、経カテーテル僧帽弁修復が失敗した場合と比べて、MR治療成功を達成した患者のうち最も1年後の死亡率が低かったのは、残存MRが軽度以下で平均僧房弁勾配が5mmHg以下の患者であった(11.4% vs.26.7%、補正後HR:0.40、95%CI:0.34~0.47、p<0.001)。 著者は、「高齢で合併症があっても、経カテーテル僧帽弁修復は安全に行えることが示された。今後、外科手術と経カテーテル僧帽弁修復を比較する無作為化臨床試験を行って、変性性MR患者の至適な治療の指針を明らかにする必要があるだろう」としている。

2618.

年代ごとの麻疹・風疹の予防接種制度

麻疹含有ワクチンの定期予防接種と年齢1972年9月30日以前に生まれた方は定期接種の機会がありません。任意接種としてMR(麻疹・風疹混合)ワクチン、麻疹ワクチンの接種が可能です。1回0回 個別接種2回個別接種※※ 1990年(平成2年)4月2日~2000年(平成12年)4月1日生まれは特例措置で中学1年、高校3年生相当年齢に2回目接種(2回目を受けていない人もいる)出生 1歳小学校入学(就学前1年間に接種)幼児期に医療機関で個別接種(1回)1990年(平成2年)4月2日生まれ0回1972年(昭和47年)40歳10月1日生まれ厚生労働省. 第4回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会配付資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000015044.html)より作成Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.風疹含有ワクチンの定期予防接種と年齢1979年4月1日以前に生まれた男性と1962年4月1日以前に生まれた女性は定期接種の機会がありません。定期接種対象の年齢の方以外も任意接種としてMR(麻疹・風疹混合)ワクチン、風疹ワクチンの接種が可能です。男性1回0回 個別接種2回個別接種※※ 1990年(平成2年)4月2日~2000年(平成12年)4月1日生まれは特例措置で中学1年、高校3年生相当年齢に2回目接種(2回目を受けていない人もいる)女性出生 1歳小学校入学(就学前1年間に接種)幼定期接種対象児2019年~2025年3月期抗体価の低い方が対象に 中学生接個(HI抗体価(1:8以下)種 別 の時に0回率 接 医療機関で低中学生の時に個別接種種い学校で( (1回)集団接種1 接種率低い(1回)回)接種率高い1990年(平成2年)4月2日生まれ1979年(昭和54年)40歳4月2日生まれ1987年(昭和62年)10月2日生まれ1962年(昭和37年)4月2日生まれ国立感染症研究所 感染症疫学センター. 風疹に関する疫学情報:2023年4月26日現在(https://www.niid.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/rubella-top/2145-rubella-related/8278-rubella1808.html)より改変Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

2619.

伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子どもは言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 1

今回のキーワード連合学習指差し意図共有自閉症サイン言語音声言語メラビアンの法則左脳皆さんは、どうやって赤ちゃんが言葉を覚えていくのか不思議に思ったことはありませんか? そもそも私たち人間がどうやって言葉を話すようになったのか疑問に思ったことはありませんか? さらに、言葉そのものよりも、なぜ見た目や口調の方が相手に影響を与えるのでしょうか? なぜ言葉と利き手を司る優位半球が同じ左脳なのでしょうか?これらの謎を解くために、今回は、伝記「ヘレン・ケラー」を取り上げ、言葉の意味を理解する象徴機能のメカニズムを解き明かし、その起源に迫ります。なお、厳密にいえば言葉には、発語、象徴、統語の主に3つの機能があります。今回は、象徴にフォーカスしています。発語の機能の詳細については、関連記事1をご覧ください。象徴機能とは?ヘレン・ケラーは、今から100年以上前の偉人です。彼女は、1歳半の時に感染症(髄膜炎)にかかってしまい、その後遺症で「見えない、聞こえない、話せない」という三重苦を背負うことになります。そして、言葉を覚えることが困難なまま、家の中で暴れ回っていました。やがて彼女が6歳になった時、ついに家庭教師のサリバン先生に巡り会います。サリバン先生は、一生懸命ヘレンに指文字を教え込み、やがてヘレンは指文字がものや動作と関連付けられていることを理解し、いくつかの名詞と動詞を覚えました。しかし、ケーキに触れたり嗅いだり味わったりすれば「c-a-k-e」という指文字を綴ることができるのに、ケーキが食べたい時はその指文字を使わずに、身振りで表現していたのです。なぜなのでしょうか?その訳は、「ケーキに触れる→c-a-k-eの指文字を綴る」というパターン学習(連合学習)をしただけだったからです。しかし、c-a-k-eという指文字がケーキというものを表す記号(象徴)であり、それを使って逆に「ケーキが欲しい」という自分の欲求を伝える、つまり「c-a-k-eの指文字を綴る→ケーキに触れる」ということがわからなかったのでした。このように、ものごとやできごとを記号(象徴)に置き換えて、目の前にそれがなくても記号(象徴)によって認識することを象徴機能と呼んでいます。つまり、「もの→記号」なら「記号→もの」と理解することです(刺激等価性)。何が奇跡なの?サリバン先生は、根気強くヘレンに指文字を教えていきます。そして、運命の時が来ます。2人が出会って1ヵ月後、サリバン先生はヘレンを井戸に連れていき、水を流します。そして、ほとばしった水がヘレンの手に当たった時、彼女ははっとします。そして、おもむろに「わーたー(water)」と唸るように言葉を絞り出したのでした。さらに、自分から「w-a-t-e-r」と指文字を綴り、水を求めるのでした。この時、ヘレンは初めてすべてのものには名前があり、それを指文字で表していることに気付くのです。つまり、「もの→記号」なら「記号→もの」を理解したのでした。それを可能にさせたのも、ヘレンが病気になる前にすでに覚えた「water」の発音をその瞬間に思い出したからでした。「waterという発音(記号)→水(もの)」が理解できたからこそ、「w-a-t-e-rの指文字(象徴)→水(もの)」も理解できるようになったのでした。この時を境に、ヘレンは身の回りのあらゆるものの名前を次々と質問するようになります。いわゆる幼児の「なになに期」が遅れて爆発的にやってきたのでした。さらに、サリバン先生が自分の口の中にヘレンの指を入れさせて発音の仕方を教えることで、話せるようにもなっていきます。やがて大学に進学するまでになり、生涯、講演活動を通して世界の福祉のあり方に働きかけました。彼女は、三重苦を背負いながら、世界を変える人になったのでした。まさに奇跡です。と同時に、そんなヘレンを子供の頃から支え続けたサリバン先生こそ、タイトルの「奇跡の人」(The Miracle Worker)であるといえるでしょう。次のページへ >>

2620.

伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子どもは言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 3

象徴機能はどうやって進化したの?象徴機能は、まねによる共感、指差しによる意図共有、ごっこ遊びによる想像によって発達することがわかりました。それでは、この機能はどうやって進化したのでしょうか? ここから、象徴機能の進化を3つの段階に分けて説明しましょう。(1)まねによる共感約700万年前に人類は、アフリカの森で誕生しましたが、約300万年前には森が減って草原に取り残されてしまいました。この時、猛獣から子供を守り食料を獲るために、男性も女性と一緒に子育てをして家族をつくるようになりました。まだ言葉がなかった当時、その助け合いの確認として、お互いのしぐさや発声のまねをし合ったのでしょう。そして、それを心地良く感じるように進化したのでしょう。1つ目の進化は、まねによる共感(ミラーリング)です。この共感の核は同調です。ミラーリングの起源の詳細は、関連記事3をご覧ください。なお、サルなどの類人猿も「ものまね神経」(ミラーニューロン)があり、共感します。ただし、サルは痛み、恐れ、怒りなどの不快感情に限定されています。その理由は、サルは、ほかのサルの不快さを素早く感じ取って自分の身に降りかかるかもしれない危険を事前に避けることができればよいだけで、人間のように喜びや安らぎなどの同調の快感情まで共感する必要がないからです。(2)サイン言語による意図共有人類は、その後に家族をもとに血縁で集まった部族をつくるようになりました。この時、助け合いをよりスムーズにするため、相手の表情だけでなく、しぐさや発声の意図を察知するようになったのでしょう(心の理論)。そして、特定のしぐさや発声を部族内で文化として共有(学習)するようになったのでしょう。2つ目の進化は、サイン言語による意図共有です。サイン言語とは、ジェスチャーをはじめ、表情や声の調子などを含む非言語的コミュニケーションです。たとえば、しぐさの代表は指差しです。また、発声の代表は、「は?」のように質問する時に語尾を上げることです。これらは世界共通のサイン言語です。なお、ベルベットモンキー(サルの一種)は、天敵のヒョウ、タカ、ヘビが来た時にそれぞれ違う警戒音を発するサイン言語を持っています。そうすることで、周りか、空か、足元かのどこに注意を向けるか(意図)を仲間と瞬時に共有することができます。昨今は、ほかのいくつかのサルも同じように警戒音を発し分けていることが発見されています1)。ただし、これは生まれながらのもので、人間のように学習するわけではありません。また、人間に最も近いチンパンジーも、さまざまなしぐさや唸り声によるサイン言語が確認されています2)。有名なのは、手のひらを相手の前に差し出す物乞いのジェスチャーです。野生のチンパンジーは指さしをしないですが、飼育下のチンパンジーは指差しをすることも確認されています。ただし、頭にバケツをかぶっている人に対しても指差しをすることから、「water」と発する前のヘレンと同じように、「指差し→指した餌がもらえる」という連合学習をしただけであることがわかります2)。つまり、彼らは一方的に要求するだけで、相手と意図を共有して働きかけることはできないことがわかります。教わること(連合学習)はできても、教えること(意図共有)はできないわけです。ちなみに、人間だけに白目があるのは、白目によって黒目(視線)の位置がわかることから、視線に指差しと同じ意図共有の機能を持たせるように進化したためであるといわれています。だからこそ、意図共有をしようとしない自閉症は指差しをしないと同時に視線が合わないのです。また、女性が男性よりも人差し指が長いのは(指比)、共感性の高い女性の方が進化の歴史の中で指差し(意図共有)をより多くしていたことで、人差し指が長くなるように進化した可能性が考えられます。逆に、自閉症の人差し指が短いのは3)、直接要因として胎児期にテストステロン(男性ホルモン)の分泌が多いからですが、究極要因としては自閉症(超男性脳)と関連する遺伝子によって、進化の歴史の中で指差しとして使わない人差し指が短くなるように「退化」しつつあるととらえることができます。(3)音声言語による想像約20万年前に現生人類は、歌声の発声をもとに発語が可能になりました。この詳細については、関連記事1をご覧ください。この時、すでにある程度確立していたサイン言語に、発声した音素を当てはめていったのでしょう(言語併合)。たとえば、最も使う体の部分は指差しをする「手(te)」ですが、この世界祖語は「tik」であり、さまざまな言語で似たような発音をします。そして、音声によって、夜や洞窟などの暗闇の中でも、コミュニケーションができるようになりました。この時、目の前にないものや状況も相手と共有するようになりました。3つ目の進化は、音声言語による想像です。なお、これまでにチンパンジーに絵文字や手話を教える研究が何度もされてきました。しかし、「water」と発する前のヘレンと同じように、チンパンジーは「バナナを見る(もの)→バナナの絵文字(記号)」という学習はできるのですが、逆にバナナの絵文字(記号)を使って「バナナちょうだい」と訴えようとはしなかったのです4)。チンパンジーをはじめ、人間以外の動物は目の前にある実物が世界のすべてであり、やはり絵文字や手話などの記号(象徴)を使って目の前にないものを想定(想像)するができないのでした。<< 前のページへ | 次のページへ >>

検索結果 合計:11808件 表示位置:2601 - 2620