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選択的Nav1.8阻害薬VX-548、術後急性疼痛を軽減/NEJM

 電位依存性ナトリウム(Na)チャネルNav1.8の選択的阻害薬であるVX-548は、高用量においてプラセボと比較し、腹壁形成術ならびに腱膜瘤切除術後48時間にわたって急性疼痛を軽減し、有害事象は軽度~中等度であった。米国・Vertex PharmaceuticalsのJim Jones氏らが、2件の第II相無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。電位依存性NaチャネルNav1.8は、末梢侵害受容ニューロンに発現し、侵害受容シグナルの伝達に寄与していることから、選択的Nav1.8阻害薬VX-548の急性疼痛抑制効果が研究されていた。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。腹壁形成術および腱膜瘤切除術後の急性疼痛患者で、VX-548vs.プラセボを評価 研究グループは、(1)腹壁形成術(軟部組織の痛みのモデル)、または(2)腱膜瘤切除術(外反母趾手術)(骨の痛みのモデル)術後の急性疼痛を有する患者を対象とした2件の第II相無作為化二重盲検比較試験を実施した。 (1)の腹壁形成術試験は2021年8月~2021年11月に米国内の7施設において、腹壁形成術終了後4時間以内で、数値的疼痛評価尺度(Numeric Pain Rating Scale[NPRS]、スコア範囲:0~10、数値が高いほど痛みが強いことを示す)のスコアが4以上、および口頭式疼痛評価尺度(Verbal Categorical Rating Scale[VRS]、痛みが「ない」から「重度」まで4段階で評価)で中等度または重度の痛みを有する18~75歳の患者を、高用量群(VX-548を100mg経口負荷投与後12時間ごとに50mgを維持投与)、中用量群(VX-548を60mg経口負荷投与後12時間ごとに30mgを維持投与)、実薬対照群(酒石酸水素ヒドロコドン5mg/アセトアミノフェン325mgを6時間ごとに経口投与)、プラセボ群(プラセボを6時間ごとに経口投与)に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、48時間投与した。 (2)の腱膜瘤切除術試験は2021年7月~2022年1月に9施設において、術後1日目の膝窩坐骨神経ブロック除去後9時間以内に(1)と同様の痛みを有する18~75歳の患者を、高用量群、中用量群、低用量群(VX-548を20mg経口負荷投与後12時間ごとに10mgを維持投与)、実薬対照群、プラセボ群に2対2対1対2対2の割合で無作為に割り付け、48時間投与した。 主要エンドポイントは、NPRSスコアに基づく疼痛強度差(SPID)の48時間にわたる時間加重合計(SPID48)とした。NPRSスコアは、初回投与後0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、8、12時間後、以降は4時間ごとに合計19回測定した。主解析では、VX-548各投与群とプラセボ群を比較した。VX-548高用量群で術後急性疼痛が軽減 (1)腹壁形成術試験には計303例、(2)腱膜瘤切除術試験には計274例が登録された。 時間加重SPID48のVX-548高用量群とプラセボ群の最小二乗平均群間差は、腹壁形成術後で37.8(95%信頼区間[CI]:9.2~66.4)、腱膜瘤切除術後で36.8(95%CI:4.6~69.0)であった。両試験とも、中用量群または低用量群はプラセボ群と同様の結果であった。 有害事象はほとんどが軽度~中等度であり、主な有害事象は(1)腹壁形成術試験では悪心、頭痛、便秘、(2)腱膜瘤切除術試験では悪心および頭痛であった。

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うつ病と炎症性腸疾患との関連~メタ解析

 うつ病または抑うつ症状の既往歴のある患者は、炎症性腸疾患(IBD)リスクが高いといわれている。イタリア・Humanitas UniversityのDaniele Piovani氏らは、うつ病または抑うつ症状とその後の新規IBD(クローン病、潰瘍性大腸炎)発症との関連を調査するため、縦断的研究を実施した。その結果、うつ病歴を有する患者は、たとえ診断から数年たっていたとしても、軽度から中程度のIBDリスクが上昇する可能性が示唆された。Inflammatory Bowel Diseases誌オンライン版2023年6月10日号の報告。 うつ病または抑うつ症状とその後の新規IBD発症との関連を調査した研究を、MEDLINE/PubMed、Embase、Scopusよりシステマティックに検索した。検証されて評価尺度によりうつ病または抑うつ症状の確定診断に至った研究も対象に含めた。診断バイアスと逆因果関係に関する懸念を制御し、うつ病または抑うつ症状とアウトカムとの関係を評価するため、報告された最長タイムラグに対応した推定値を算出した。独立した2人の研究者が、データを抽出し、各研究のバイアスリスクを評価した。最大限に調整された相対リスク(RR)推定値は、ランダム効果モデルおよび固定効果モデルを用いて、算出した。 主な結果は以下のとおり。・5,307件の研究のうち、13件(900万例、コホート研究:8件、ネステッドケースコントロール研究:5件)が適格基準を満たした。・うつ病は、クローン病(RRランダム:1.17、95%信頼区間[CI]:1.02~1.34、7研究、1万7,676例)および潰瘍性大腸炎(RRランダム:1.21、95%CI:1.10~1.33、6研究、2万8,165例)との有意な関連が確認された。・プライマリ研究では、関連する交絡因子が考慮された。・うつ病または抑うつ症状からIBD発症までの期間は、平均すると数年を要した。・重要な異質性、出版バイアスは見当たらなかった。・サマリ推定値は、バイアスリスクが低く、結果は多重感度分析で確認した。・時間経過による関連性の低下については、明確な結論に至らなかった。・これらの因果関係を明らかにするためには、さらなる疫学やメカニズムの研究が求められる。

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英語プレゼン、数字の基本的な口語表現のコツ(5)乗数・累乗の表現【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第21回

英語プレゼン、数字の基本的な口語表現のコツ(5)乗数・累乗の表現今回は、使う頻度はやや低くはなりますが、重要な数字表現として「累乗」を紹介します。日常会話で使うことは滅多にないですが、学会発表などではしばしば耳にすることがあるので、ぜひこの機会に覚えてしまいましょう。1)“WBC 5 × 103/μL (= 5 × 109/L)”はどう読む?たとえば、「白血球数」を記載する際には「5×103/μL」もしくは、「5×109/L」の単位を使用することが一般的です。この数字はどのように読めばよいのでしょうか?「乗数」(multiplication)の記号である“×”は“times”と読みます。例外的に、四角形の縦横の辺の長さを表すときなどには、“2 × 2”と表記して、“two by two”と読みます。“103”のような累乗の表示は、exponential (or power) expressionと呼び、右上の小さい数字は指数(exponent)と呼びます。これを読むときは、“ten to the third (power)”となります。この表現は、数学的な意味(103=10×10×10)を考えて、「10という数字が3番目まで掛け算されている」と考えるとわかりやすいでしょう。同様に、109は“ten to the ninth (power)”(=10×10×10×10×10×10×10×10×10)と読みます。どちらの場合も、“five thousand (5,000)”、“five billion (5,000,000,000)”と読むことも可能です。2)“m”、“m2”、“m3”はどう読む?これらは長さ、面積、容積の単位ですが、医学系の発表でも目にする表現です。個人的によく使う場面は、「体表面積」(body surface area)です。発表スライドに“BSA 1.2 m2”と記載したものを、“body surface area is 1.2 square meters”と読み上げます。この応用として、薬剤投与量における“10 mg/m2”は“ten milligram per square meters”となります。また“BMI 20 kg/m2”は、“body mass index is twenty kilogram per square meter-s”となります。講師紹介

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聞き流しOK!ASCO2023肺がんトピックスまとめ【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第2回

第2回:聞き流しOK!ASCO2023肺がんトピックスまとめパーソナリティ日本鋼管病院 呼吸器内科 部長 田中 希宇人 氏ゲスト聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科 古屋 直樹 氏関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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1日3.4分の高強度の身体活動で、がんリスク17%減

 高強度の身体活動(Vigorous Physical Activity:VPA)は、がん予防のために推奨される身体活動(Physical Activity:PA)を達成するための効率のよい方法であるが、多くの人にとって継続のハードルが高い。「日常生活中の高強度の断続的な身体活動(Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity:VILPA)」を継続することで、がん発症のリスクを大幅に低下させる可能性があることが、新たな研究で明らかになった。オーストラリア・シドニー大学のEmmanuel Stamatakis氏らによる本研究の結果は、JAMA Oncology誌オンライン版2023年7月27日号に掲載された。 オーストラリア、シドニー大学の研究者らは、英国バイオバンクで「普段運動をしていない」と申告した人を対象にウェアラブルデバイスのデータを収集し、その後6~7年間の健康記録を調べた。参加者は2021年10月30日(死亡および入院)、2021年6月30日(がん登録)まで追跡された。 主要アウトカムは、全がんおよびPA関連がん(低いPAと関連する13のがん部位の複合アウトカム)の発生率だった。ハザード比および95%信頼区間(CI)は、年齢、性別、教育レベル、喫煙、アルコール摂取、睡眠時間、果物および野菜の摂取、両親のがん既往等で調整して推定した。 VILPAの例としては、負荷が高い家事、スーパーでの買い物袋の持ち運び、早足のウォーキング、身体を動かすゲームなどがある。このような活動は一度に行うのではなく、数分ごとに行うことが特徴だ。 主な結果は以下のとおり。・登録された2万2,398例は、平均年齢62.0(SD:7.6)歳、男性1万122例(45.2%)だった。平均追跡期間6.7(SD:1.2)年に2,356例のがんイベントが発生し、うち1,084例がPA関連がんであった。・1日のVILPA持続時間中央値が1分まで(1日当たり4.5分)の場合、VILPAを行わない場合と比較して、全がんのHRは0.80(95%CI:0.69~0.92)、PA関連がんのHRは0.69(95%CI:0.55~0.86)であった。・全がん発生率との関連が認められたVILPAの最小量は1日当たり3.4分(HR:0.83、95%CI:0.73~0.93)、PA関連がんは1日当たり3.7分(HR:0.72、95%CI:0.59~0.88)であった。 最低3.4分のVILPAを毎日行うことで、行わない場合と比較して、全がん発生率の17%減少、1日4.5分で肺がん、腎臓がん、膀胱がん、胃がんなど、PAがんの発生率の31%減少につながることが示された。著者らは「運動ができない集団や意欲のない集団にとって、断続的な短い身体活動の継続が、がん予防の有望な介入になる可能性がある」としている。

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日本における統合失調症、うつ病患者に対する向精神薬処方実態

 日本の精神疾患の治療では、メインとなる治療薬(たとえば、統合失調症に対する抗精神病薬、うつ病に対する抗うつ薬)に加えて向精神薬の多剤併用が一般的に行われている。北海道大学の橋本 直樹氏らは、施設間での差異を減少させながら、日本における向精神薬の処方を国際基準と一致させることを目的に、精神疾患患者の入院時および退院時の処方実態の比較を行った。BMC Psychiatry誌2023年6月28日号の報告。 2016~20年の入院時および退院時における処方箋データを収集した。データに基づき患者を次の4群に分類した。A群(入院時および退院時:主薬単剤療法)、B群(入院時:主薬単剤療法、退院時:多剤併用療法)、C群(入院時および退院時:多剤併用療法)、D群(入院時:多剤併用療法、退院時:主薬単剤療法)。向精神薬の投与量および数を4群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症、うつ病のいずれにおいても、入院時に主薬単剤療法を行っていた患者は、退院時に主薬単剤療法を行っている可能性が高く、その逆も同様であった。・統合失調症では、A群よりもB群において、多剤併用が行われることが多かった。・処方がまったく変更されなかった患者は、10%以上であった。 結果を踏まえて著者らは、「ガイドラインに準拠した治療を確実に行うためには、多剤併用療法を減らしていくことが重要となる」とし、日本全国の270以上の精神科医療施設が参加する「EGUIDEプロジェクト(精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究)」の講義後、主薬による単剤療法率が上昇することが期待される、とまとめている。

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バイアスドリガンドorforglipronは2型糖尿病・肥満症治療のgame changerになり得るか?(解説:住谷哲氏)

 GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病患者に対する血糖降下作用、体重減少作用および臓器保護作用が明らかにされている。さらに肥満症治療薬としてセマグルチド(ウゴービ)が製造承認されて現在薬価収載待ちの状況である。GLP-1受容体作動薬は有用な薬剤であるが注射薬のバリアはなかなか手ごわく、必要な患者に導入できないことが少なくない。そこで登場したのが経口セマグルチド(リベルサス)であったが、早朝空腹時に120mL以下の水で服用してその後30分は飲食不可、となっているので注射薬ほどではないが服薬アドヒアランスを維持するのが難しい。orforglipronは1日1回服用の非ペプチド性GLP-1受容体作動薬であり、本試験は糖尿病を合併しない肥満患者に対するorforglipronの体重減少作用を主要評価項目とした第II相臨床試験である。orforglipronの2型糖尿病患者に対する血糖降下作用を主要評価項目とした第II相臨床試験の結果は、ほぼ同時にLancetに掲載された1)。両試験の結果をみると、orforglipronの体重減少作用および血糖降下作用はきわめて有効であった。 本論文をみたときに経口セマグルチドと同様の薬剤かと思っていたが、筆者の勉強不足であった。医薬品は大きく分けると低分子医薬品(分子量<500)、高分子医薬品(分子量>10,000~15,000)と、その中間の中分子医薬品とになる。orforglipronは、もともと中外製薬で中分子医薬品として創薬されたOWL833(分子量883)が、2018年にEli Lillyに導出されて臨床開発が継続されてきた歴史がある。中分子医薬品は、タンパク質間相互作用(protein-protein interaction)を修飾することによる細胞内シグナル伝達調節作用が期待されており、世界中の製薬企業が開発に注力している。 GLP-1受容体はG蛋白質共役受容体(G-protein coupled receptor:GPCR)に分類される(ちなみにGIPおよびグルカゴン受容体もGPCRに分類される)。GLP-1はGLP-1受容体に結合して細胞内にシグナルを伝達するが、そのシグナルにはGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン(arrestin)依存的シグナルとがある。前者はcAMPなどのセカンドメッセンジャーを介して細胞内Ca濃度を上昇させることでGLP-1作用を発揮する。後者は従来GLP-1受容体の脱感作を誘導すると考えられてきたが、近年その他の多様な細胞内シグナル伝達を担っていることが明らかになりつつある。orforglipronはGLP-1受容体に結合してGタンパク質依存的シグナルのみを活性化しβアレスチン依存的シグナルを活性化しないことが報告されている2)。このようにGPCRを介したGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン依存的シグナルとを選択的に活性化させる分子をバイアスドリガンド(biased ligand)という3)。つまりorforglipronは、これまでのGLP-1受容体作動薬とは異なるまったく新しい作用機序を有する薬剤であり、2型糖尿病・肥満症治療における画期的な新薬となる可能性がある。 すでにEli Lillyは第III相臨床開発プログラムであるACHIEVE(対象は2型糖尿病)およびATTAIN(対象は肥満症)を開始することを発表しており、数年後には2型糖尿病・肥満症治療に新たな展開が期待される。

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心不全患者と漢方薬の意外な親和性【心不全診療Up to Date】第11回

第11回 心不全患者と漢方薬の意外な親和性Key Points西洋薬のみでは困ることが多い心不全周辺症状との戦い意外とある! 今日からの心不全診療に活かせる漢方薬とそのエビデンスその1 西洋薬のみでは困ることが多い心不全周辺症状との戦いわが国における心不全患者数は増加の一途を辿っており、とくに高齢心不全患者の増加が著しいことは言わずもがなであろう。そして、その多くが、高血圧や心房細動、貧血、鉄欠乏といった併存症を複数有することも明らかとなっている。つまり、高齢心不全診療はMultimorbidity(多疾患併存)時代に突入しており、単に心臓だけを診ていてもうまくいかないことが少なくない1)。日本心不全学会ガイドライン委員会による『高齢心不全患者の治療に関するステートメント』では、「生命予後延長を目的とした薬物治療より生活の質(QOL)の改善を優先するべき場合が少なくない」とされており、高齢心不全ではとくに「QOLをいかに改善できるか」も重要なテーマとなっている。では、その高齢心不全患者において、QOLを低下させている原因は何であろうか。もちろん心不全による息切れなどの症状もあるが、それ以外にも、筋力低下、食思不振、倦怠感、不安、便秘など実に多くの心不全周辺症状もQOLを低下させる大きな原因となっている。しかしながら、これらの症状に対して、いわゆる“西洋薬”のみでは対処に困ることも少なくない。そこで、覚えておいて損がないのが、漢方薬である。漢方薬と聞くと、『the職人技』というようなイメージをお持ちの方もおられると思うが、実は先人の知恵が集結した未来に残すべき気軽に処方できる漢方薬も意外と多く、ここではわかりやすく簡略化した概念を少しだけ説明する。漢方の概念は単純な三大法則から成り立っており、人間の身体活動を行うものを気、血、水(津液)、精とし、これらが体内のさまざまな部分にあり、そしてそれが体内を巡ることで、生理活動を行うと考えられている。それぞれが何を意味するかについては図1をご覧いただきたい。(図1)画像を拡大するでは、どのように病気が起こり、どのようにそれを治療すると先人が考えたか、それを単純にまとめたものが図2である。(図2)画像を拡大するこのように、気・血・水のバランスが崩れると病気になると考えられ、心不全患者に多いとされているのが、気虚、血虚、瘀血、水毒(水滞)であり、その定義を簡単な現代用語で図3にまとめた。(図3)画像を拡大するそう、この図を見ると、心不全患者には、浮腫を起こす水毒だけでなく、倦怠感を引き起こす気虚、便秘を引き起こす瘀血など、心不全周辺症状にいかに対処するかについて、漢方の世界では昔からおのずと考えられていたのではないかと個人的には思うわけである。では、具体的に今日から役立つ漢方処方には何があるか、説明していきたい。その2 意外とある!今日からの心不全診療に活かせる漢方薬とそのエビデンス今日からの心不全診療に活かせる漢方薬、それをまとめたものが、図4である2)。(図4)画像を拡大するまずは即効性のある処方から説明していこう。漢方といえばすぐには効かないという印象があるかもしれないが、実は即効性のある処方も多くある。たとえば、高齢者の便秘に対してよく用いられる麻子仁丸がそれに当たる。また効果のある患者(レスポンダー)の割合も多く、高齢のATTR心アミロイドーシス患者の難治性便秘に対して有効で即効性があったという報告もある3)。なお、心不全患者でもよく経験するこむら返りに対して芍薬甘草湯が有名であるが、この処方には甘草が多く含まれており、定期内服には向かず、繰り返す場合は、効果の面からも疎経活血湯がお薦めである(眠前1~2包)4)。また、心不全患者のサルコペニア、身体的フレイルに対しては、牛車腎気丸、人参養栄湯が有効な場面があり、たとえば人参養栄湯については、高齢者に対する握力や骨格筋への良い影響があったという報告もある5)。心不全患者の食思不振、倦怠感に対しては、グレリン(食欲亢進ホルモン)の分泌抑制阻害作用が報告されている六君子湯6)、補中益気湯、人参養栄湯が、そして不安、抑うつ、不眠などの精神的フレイルに対しては、帰脾湯、加味帰脾湯がまず選択されることが多い。これらの処方における基礎研究なども実は数多くあり、詳細は参考文献2を参照にされたい。そして、心不全患者で最も多い症状がうっ血であり、それに対しても漢方薬が意外と役立つことがある。うっ血改善のためにはループ利尿薬をまず用いるが、慢性的に使用することで、RAAS系や交感神経系の亢進を来し、腎機能障害、電解質異常、脱水などの副作用もよく経験する。そんな利尿薬のデメリットを補完するものとして漢方薬の可能性が最近注目されている。うっ血改善目的によく使用する漢方は図4の通りであるが、今回は研究面でもデータの多い五苓散を取り上げる。五苓散の歴史は古く、約1,800年前に成立した漢方の古典にも記載されている薬剤で、水の偏りを正す水分バランス調整薬として経験的に使用されてきた。五苓散のユニークな特徴としては、全身が浮腫傾向にあるときは尿量を増加させるが、脱水状態では尿量に影響を与えないとされているため7)、心不全入院だけでなく、高齢心不全患者でときどき経験する脱水による入院、腎機能障害などが軽減できる可能性が示唆され、その結果として医療費の軽減効果も期待される。五苓散は、脳外科領域で慢性硬膜下血腫に対する穿頭洗浄術による血腫除去後の血腫再発予防を目的として、経験的に使用されることも多い。そのDPCデータベースを用いた研究において入院医療費を比較した結果、五苓散投与群のほうが非投与群と比較して有意に低かったという報告がある8)。五苓散の心不全患者への実臨床での有用性についても、症例報告、ケースシリーズ、症例対照研究などによる報告がいくつかある2)。これらの結果から、心不全患者において五苓散が有用な症例が存在することは経験的にわかっているが、西洋薬のように大規模RCTで検証されたことはなく、そもそも漢方エキス製剤の有用性を検証した大規模RCTは過去に一度も実施されていない。そこへ一石を投じる試験、GOREISAN-HF trialが現在わが国で進行中であり、最後に紹介したい。この試験は、うっ血性心不全患者を対象とし、従来治療に五苓散を追加する新たなうっ血戦略の効果を検証する大規模RCTである9)。目標症例数は2,000例以上で、現在全国71施設にて進行中であり、この研究から多くの知見が得られるものと期待される。循環器領域は、あらゆる領域の中でとくにエビデンスが豊富で、根拠に基づいた診療を実践している領域である。今後は、最新の人工知能技術なども駆使しながら、さらに研究が進み、西洋医学、東洋医学のいいとこ取りをして、患者さんのQOLがより向上することを切に願う。1)Forman DE, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71:2149-2161.2)Yaku H, et al. J Cardiol. 2022;80:306-312.3)Imamura T, et al. J Cardiol Cases. 2022;25:34-36.4)土倉 潤一郎ほか. 再発性こむら返りに疎経活血湯を使用した33例の検討. 日本東洋医学雑誌. 2017;68:40-46.5)Sakisaka N, et al. Front Nutr. 2018;5:73.6)Takeda H, et al. Gastroenterology. 2008;134:2004-2013.7)Ohnishi N, et al. Journal of Traditional Medicines. 2000;17:131-136.8)Yasunaga H, et al. Evid Based Complement Alternat Med. 2015;2015:817616.9)Yaku H, et al. Am Heart J. 2023;260:18-25.参考1)Kracie:漢方セラピー2)TSUMURA MEDICAL SITE 「心不全と栄養~体に優しく、バランスを整える~」

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経口CGRP受容体拮抗薬atogepant、慢性片頭痛の予防に有望/Lancet

 慢性片頭痛の予防治療において、経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬atogepantはプラセボと比較して、12週の治療期間における1ヵ月当たりの平均片頭痛日数(MMD)に関して臨床的に意義のある抑制効果を示すとともに、安全性プロファイルも良好で既知のものと一致することが、スペイン・バルセロナ自治大学のPatricia Pozo-Rosich氏らが実施した「PROGRESS試験」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月26日号で報告された。16の国と地域の無作為化プラセボ対照第III相試験 PROGRESS試験は、日本を含む16の国と地域の142施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年3月11日~2022年1月20日に参加者の適格性の評価が行われた(Allergan[現AbbVie]の助成を受けた)。 年齢18~80歳で、50歳以前に発症し、1年以上の病歴を有する慢性片頭痛の患者を、atogepant 30mg(1日2回)、同60mg(1日1回)、プラセボを経口投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、修正intent-to-treat(mITT)集団における12週の治療期間中の平均MMDの変化量であった。 778例を登録し、このうち773例(安全性評価集団、atogepant 30mg群255例、同60mg群257例、プラセボ群261例)が実際に試験薬の投与を受け、755例(253例、256例、246例)がmITT集団に含まれた。臨床的に意義のある体重減少効果の可能性も 安全性評価集団の平均年齢は42.1歳、88%が女性、59%が白人で、平均罹患期間は21.4(SD 12.2)年、平均MMDは16.0(5.9)日であり、83%に予防薬の使用歴があった。mITT集団におけるベースラインの平均MMDは、30mg群が18.6(SE 5.1)日、60mg群が19.2(5.3)日、プラセボ群は18.9(4.8)日だった。 12週の治療期間におけるmITT集団でのベースラインからのMMDの変化量は、atogepant 30mg群が-7.5(SE 0.4)日、同60mg群が-6.9(0.4)日、プラセボ群が-5.1(0.4)日であった。プラセボ群との最小二乗平均差は、atogepant 30mg群が-2.4(95%信頼区間[CI]:-3.5~-1.3、p<0.0001)、同60mg群が-1.8(-2.9~-0.8、p=0.0009)であり、いずれもatogepant群で有意に優れた。 atogepant群で最も頻度の高い有害事象は、便秘(30mg群10.9%、60mg群10%、プラセボ群3%)と、吐き気(8%、10%、4%)であった。重篤な治療関連有害事象は、30mg群が2%、60mg群が3%、プラセボ群が1%で、投与中止の原因となった有害事象はそれぞれ5%、3%、4%で発現した。 また、臨床的に有意義な可能性のある体重減少(ベースライン以降の任意の評価時点で7%以上の減少)が、各治療群で観察された(30mg群6%、60mg群6%、プラセボ群2%)。 著者は、「本試験の知見は、atogepantの有益性を慢性片頭痛にも拡大するものである。これにより、慢性片頭痛における初のCGRPを標的とする有効で忍容性が良好な経口予防薬の選択肢が確立された」としている。

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英語で「妊娠している可能性はありますか?」は?【1分★医療英語】第92回

第92回 英語で「妊娠している可能性はありますか?」は?Is there any possibility that you may be pregnant now?(現在、妊娠している可能性はありますか?)No, I’m not pregnant.(いいえ、妊娠していません)《例文1》Have you ever been pregnant before?(これまでに妊娠したことはありますか?)《例文2》She is expecting.(彼女は妊娠しています)《解説》女性の患者さんに画像検査や処方を行う際、妊娠の可能性について聞く必要がありますが、英語ではどのように聞けばよいでしょうか。こういったときは、“pregnant”(妊娠している)という形容詞を使うと便利です。最もシンプルな表現としては、“Are you pregnant now?”(現在、妊娠していますか?)と聞くことができます。とはいえ、本人に妊娠の自覚がない場合でも妊娠している可能性があるため、“Is there any possibility that you may be pregnant now?”(現在、妊娠している可能性はありますか?)といった丁寧な表現で聞くことが望ましいでしょう。また、妊娠を表す他の単語としては、“expect”(期待する、予期する)という動詞を使って“She is expecting.”という表現を使うこともあります。これは“She is expecting a baby.”を略したもので、「子供を期待している」、つまりは「妊娠している」「出産を控えている」という意味になるのです。講師紹介

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ChatGPTの基本的な使い方【医療者のためのAI活用術】第2回

(1)ChatGPTの登録方法ChatGPTの使用方法は非常にシンプルです。まずは、ウェブサイトにアクセスし、会員登録を行います。登録した後は、チャット上で文章を入力すると、AIからの回答を得ることができます。ChatGPTは多言語に対応しており、日本語で入力すれば日本語で、英語で入力すれば英語で回答が返ってきます。なお、ChatGPTでは入力した情報がAIの学習のために利用される場合があります。自分が入力した情報をAIが学習しないようにしたいという方は、情報の利用に関して「オプトアウト」の設定をしておくことをおすすめします。図1に方法を示しています。Settingsの中のData controlsをクリックし、Chat history & trainingの項目をオフにしておくことでオプトアウトが可能です。(図1)オプトアウトの設定方法(2)無料版と有料版の違いChatGPTは月額20ドル(2023年8月時点)で有料会員になることもできます。無料版と有料版の違いを表1にまとめています。無料版ではGPT-3.5の言語モデルを使用でき、応答速度も標準です。一方、有料版ではGPT-3.5と、より高機能なGPT-4.0の両方のモデルを使用することができるため、無料版よりも質の高い回答を得ることができます。また混雑時でも利用可能で、応答時間も無料版よりも短いのが特徴です。さらに、ChatGPTのプラグインなど最新の機能が出た場合に、有料版のユーザーは優先的に利用できるという特典もあります。無料版でも基本的な機能はすべて利用可能なため、ChatGPTを試したことがないという方は、まずは無料版を試し、使用する頻度が多ければ有料会員になることをおすすめします。(表1)無料版と有料版の料金、機能の違い(3)プロンプトとはChatGPTのチャット画面で入力する、AIに対する指示文のことを「プロンプト」といいます。ChatGPTではこのプロンプトの入力により得られる回答の質が大きく異なります。ChatGPTを使用したことがある方の中には、「使用したものの思ったような回答が得られなかった」という経験がある方がいるかもしれません。またSNS上では、しばしばChatGPTが役に立たなかったという旨の投稿や動画が散見されます。それらの理由の大半はプロンプトが不適切であることや、使い方が間違っていること(例:情報の検索目的で使用している)が原因です。逆に言えば、AIから得たい回答を引き出すための適切なプロンプトの入力は、ChatGPTを活用するための必須のスキルと言えます。このスキルの重要性は最近注目されており、AIから優れた答えを引き出す「プロンプトエンジニア」という専門職も生まれているほどです。(4)深津式プロンプトでは、どのようなプロンプトを使用するのが良いのでしょうか。ChatGPTの登場以降、さまざまなプロンプトのテンプレートがこれまで提案されていますが、最も有名なものの1つが、「深津式プロンプト」と呼ばれるものです。これはnoteという会社のCXO(Chief x officer)を務める深津 貴之氏がChatGPTの活用方法についてYouTube上でレクチャーを行っており、そこで紹介された手法です1)。この方法はすでに広く活用されており、医療分野での応用も可能です。深津氏はプロンプトを入力する際には以下の点が重要であることを述べています。1)役割を明確にする2)入力から出力を作ることを明確にする3)何を出力するかを明確にする4)マークアップ言語(ハッシュタグなど)を用いて、本文でない部分を明確にする5)命令を箇条書きで明快にする6)さまざまなワードで、AIの出力しうる空間を、積極的に狭くしていくつまり、役割を与えたうえで明確な指示を行い、なるべく要求を細かく限定していくことで、求めたい出力を得ることができるのです。深津式プロンプトを用いてプロンプトを作成する場合におすすめしたいのが、以下のようなテンプレートです。#役割あなたは、プロの○○です#命令書例)以下の制約条件から、○○を出力してください。#制約条件例)出力は英語で行ってください。○○○#入力文○○○このように入力することで、ChatGPTが特定の分野のプロフェッショナルとして振る舞い、得たい回答を理想的な形式で出力してくれます。このテンプレートでは、制約条件の部分に箇条書きで要求を追加していくと、より細かく回答の調整をすることができます。また、元となる文章から要約や校正などをしてほしい場合には、#入力文の部分に文章を入力します。このプロンプトは汎用性が高く、英文校正や要約、アイデア出しなどさまざまな場面で活用できるため、ぜひ覚えておいてください。今後の連載ではこの深津式プロンプトを用いた具体的な活用法を紹介していきます。参考1)note. 「あなたの仕事が劇的に変わる!? ChatGPT使いこなし最前線」. (2023年6月24日参照)

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第175回 コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始

コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)を治療しうる手段をいくつかに分類して次々に検討する第II相試験の2つが米国で始まりました1)。それら試験はCOVID-19の長期経過の把握、治療、予防を目指す米国国立衛生研究所(NIH)の取り組みであるResearching COVID to Enhance Recovery(RECOVER)の一環として実施されています。早速始まった2試験の1つはRECOVER-VITAL2)と呼ばれます。ウイルス感染の持続、ウイルスの再活性化、過剰あるいは慢性的な免疫反応や炎症がlong COVIDに寄与し、ウイルスの除去や炎症の抑制をもたらす治療でlong COVIDが改善しうるという仮説の検証を目的としています。RECOVER-VITAL試験でプラセボと対決する治療の先鋒として白羽の矢が立てられたのはファイザーの抗ウイルス薬であるニルマトレルビル・リトナビル(日本での商品名:パキロビッドパック)です。より長期(25日間)の同剤投与によるlong COVID症状改善効果の検討への被験者組み入れはすでに始まっています。RECOVER-VITALとともに始まったRECOVER-NEURO3)という名称のもう1つの試験は遂行機能や注意などのlong COVID絡みの認知機能の低下を改善しうる治療手段の検討を目当てとしています。RECOVER-NEUROで検討される手段はすでに3つが決まっています。1つはインターネットを介した脳トレで、BrainHQと呼ばれます。BrainHQは認知障害の改善手段としてすでに普及しています。もう1つはPASC-Cognitive Recovery(PASC CoRE)と呼ばれ、BrainHQと同様にインターネットを介した脳トレであり、注意や遂行機能を改善する効果があります。3つ目は脳の活動や血流増加を助けることが知られるSoterix Medical社の製品を利用した脳の電気刺激です。同社の経頭蓋直流刺激(tDCS)製品は自宅で簡単にできるように作られています。睡眠や自律神経に注目した2つの試験RECOVER-SLEEPとRECOVER-AUTONOMICも準備段階にあり、間もなく始まります。RECOVER-SLEEPはコロナ感染後に変化した睡眠習慣や寝付きに対処しうる手段を検討します。同試験の一環として過眠や日中の過度の眠気への覚醒促進薬2種の効果がプラセボと比較されます。また、入眠や睡眠の維持の困難などの睡眠障害に睡眠の質を改善する手段が有効かどうかも検討されます。準備段階のもう1つの試験はRECOVER-AUTONOMICと呼ばれ、心拍、呼吸、消化などの生理機能ひとそろいを制御する自律神経系の失調と関連する症状への対処法を調べます。心拍異常、めまい、疲労などの症状を特徴とする体位性頻脈症候群の治療手段いくつかが手始めに検討されます。免疫疾患治療薬とプラセボの比較がその1つで、心拍亢進を伴う慢性心不全の治療薬とプラセボの比較も予定されています。運動できなくなることや疲労への手段を検討する試験も患者や専門家からの意見を取り入れて開発されています。今後次々に始まっていくRECOVER試験はlong COVIDの影響が最も大きい地域を含めて被験者を募っていきます。試験参加施設は自治体と協力してlong COVIDについての理解を促し、RECOVER試験への参加の普及に努めます。効果的な治療や手当てを検討する臨床試験はlong COVIDへの政府の取り組みの肝であり、苦労が絶えない患者やその家族が楽になるように努力していくと米国政府の役員は言っています1)。参考1)NIH launches long COVID clinical trials through RECOVER Initiative, opening enrollment / NIH 2)RECOVER-VITAL試験(ClinivalTrials.gov) 3)RECOVER-NEURO試験(ClinivalTrials.gov)

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不要な抗菌薬処方、60歳以上の医師に多く特定の医師に集中か

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含むウイルス感染症には、抗菌薬が無効であるにもかかわらず、抗菌薬が処方されている実態が報告されている1,2)。ただし、抗菌薬処方に関連する医師や患者の特徴については明らかになっていない。そこで、東京大学大学院医学系研究科の宮脇 敦士氏らは、本邦の一般開業医を対象としたデータベース(Japan Medical Data Survey:JAMDAS)を用いて、COVID-19の外来受診データを分析した。その結果、本邦の新型コロナのプライマリケアにおいて、抗菌薬の処方は少数の診療所に集中していた。また、60歳以上の医師は抗菌薬の処方が多かった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月25日号のリサーチレターで報告された。新型コロナの抗菌薬処方の傾向についてJAMDASを用いて解析 2020年4月1日~2023年2月28日の期間において、継続観察された843診療所の新型コロナの外来受診データ(JAMDAS)を分析し、抗菌薬処方の傾向について検討した。ロジスティック回帰モデル(月と都道府県で調整)を用いて、患者特性(性、年齢、合併症の有無)や医師特性(性、年齢)と抗菌薬処方の関連を調べた。なお、抗菌薬の処方が適切である可能性のある疾患の診断を有する患者の受診データは除外した。 JAMDASを用いて新型コロナの抗菌薬処方の傾向について検討した主な結果は以下のとおり。・COVID-19患者52万8,676例(年齢中央値33歳[四分位範囲:15~49]、女性51.6%)のうち、4万7,329例(9.0%)に抗菌薬が処方された。・新型コロナで最も多く処方された抗菌薬は、クラリスロマイシン(25.1%)であった。次いで、セフカペン(19.9%)、セフジトレン(10.2%)、レボフロキサシン(9.9%)、アモキシシリン(9.4%)の順に多かった。・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所で、全体の処方数の85.2%を占めていた。・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所における抗菌薬の平均処方率が29.0%であったのに対し、残りの90%の診療所における抗菌薬の平均処方率は1.9%であった。・医師が新型コロナに抗菌薬を処方する割合は、44歳以下の医師と比較して、60歳以上の医師で高かった(調整オッズ比[aOR]:2.38、95%信頼区間[CI]:1.19~4.47、p=0.03)。医師の性別によって、抗菌薬の処方に違いはなかった。・新型コロナ患者が抗菌薬を処方される割合は、18歳未満の患者と比較して、18~39歳(aOR:1.69、95%CI:1.37~2.09、p<0.001)および40~64歳(aOR:1.36、95%CI:1.11~1.66、p=0.01)の患者で高かった。・併存疾患のない新型コロナ患者と比較して、併存疾患を有する患者は抗菌薬を処方される割合が高かった(aOR:1.48、95%CI:1.09~2.00、p=0.03)。 本研究結果について、著者らは「本研究の限界として、患者の重症度など、未測定の交絡因子の影響を十分に考慮できないこと、JAMDASに含まれない診療所などへの一般化可能性には限界があることなどが挙げられる」としたうえで、「本研究結果は、抗菌薬の適正使用促進の取り組みに役立つ可能性がある」とまとめた。

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喘息の増悪発生に地域差/AZ

 アストラゼネカ(以下、AZ)は、喘息増悪の発生状況を地域別に検討した「Asthma heatmap研究」を実施し、喘息の増悪発生率に日本国内で地域差があることを初めて明らかにしたと発表した。本研究の結果を基に、地域の実情に即した喘息治療の適正化を目指した活動を実施していくとしている。 日本において、喘息に罹患している患者(小児を含む)は約800万人といわれている。喘息による死亡数は年々減少傾向にあり、2021年では1,038人と報告されている一方で、症状が残存する患者はいまだ残されており、患者の5~10%は従来の治療でコントロールできない重症喘息と推定されている。本研究では、複合アウトカム*で定義した喘息増悪が平均で100人年当たり39.87件生じており、その頻度に地域差があることが示された。都道府県別にみると、複合アウトカムに示された喘息増悪発生率は、最多の地域では最少の地域の6.7倍であった。*複合アウトカムの定義:入院、静注ステロイド、OCS(経口ステロイド:20mg以上/日の処方またはOCS10mg以上/日の増量)のすべて対象:基準日(2018年10月1日以前に喘息と診断され、かつ喘息関連薬を処方された最新の日)以前の1年間に4回以上ICS(吸入ステロイド)またはICS/LABAが処方されたICS継続投与喘息患者2万4,883例方法:保険データベースMedi-Scope(2016年10月1日~2019年12月31日までのデータ)を用いたレトロスペクティブコホート研究。フォローアップ期間(基準日以降の1年間)における地域別の喘息増悪発生率、およびベースライン期間(基準日以前の1年間)における患者背景因子と喘息増悪との関連を解析。 本研究結果から喘息増悪の地域差が明らかになったことを踏まえ、AZは日本呼吸器学会との共催、厚生労働省の後援の下、各地域で医師を対象とし、地域に根差した喘息増悪予防について検討するための講演会を順次実施している。講演会を地域別に行うことで、地域の特性に即した課題が医療関係者に共有され、治療の最適化や地域連携を通じての専門医への紹介等、地域の実情に根差した医療環境がより整うことを期待しているとし、今後、全国においてもオンラインにて全3回の講演会開催を予定している。AZは喘息領域において、適切な増悪予防と症状コントロールによって、患者が健康な人と変わらない生活を送ることを目指し、患者中心の医療へ今後も貢献していくとしている。

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日本におけるアルコール摂取、喫煙と認知症リスク~村上健康コホート研究

 飲酒や喫煙は、生活習慣病リスクに影響するが、認知症への影響については依然としてよくわかっていない。新潟大学のShugo Kawakami氏らは、日本人中高年におけるアルコール摂取や喫煙と認知症リスクとの長期的な関連性を調査するため本研究を実施した。その結果、中程度までのアルコール摂取は認知症リスクが低下し、喫煙は用量依存的に認知症リスク増加との関連が認められた。また、多量のアルコール摂取と喫煙との間に認知症リスクとの相互作用が確認された。Maturitas誌オンライン版2023年6月14日号の報告。 研究デザインは、8年間のフォローアップによるコホート研究。参加者は、40~74歳の地域在住の日本人1万3,802人。2011~13年に自己記入式アンケートを含むベースライン調査を実施した。アウトカムは、介護保険データベースから収集した認知症発症、予測因子は、アルコール摂取量および喫煙とした。共変量は、人口統計、ライフスタイル要因、BMI、一般的な健康状態、脳卒中歴、糖尿病歴、うつ病歴とした。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は、59.0歳。・1週間当たりのエタノール量が1~149g、150~299g、300~449gの群は、対照群と比較し、調整ハザード比(HR)が有意に低く、有意な線形関連性は認められなかった。・飲酒歴、健康状態が不良、病歴を有する人を除外した場合、HRは1に向かい増加が認められた(各々、HR:0.80、0.66、0.82)。・喫煙レベルが高いほど、用量依存的にHRが高く(調整p for trend=0.0105)、1日当たり20本以上の喫煙群では、調整HRが有意に高かった(HR:1.80)。・多量飲酒者(1週間当たりのエタノール量:449g以上)において、喫煙習慣のある人は認知症リスクが高かったが(p for interaction=0.0046)、喫煙習慣のない人では影響が認められなかった。

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コロナ異種ワクチンによる追加接種を支持するエビデンス/BMJ

 オミクロン株が優勢な時期における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種では、プライマリ接種スケジュール(2回接種)や同種ブースター接種(3回)と比較して、異種ブースター接種(3回)はCOVID-19による入院や死亡の予防効果が優れていたことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2023年7月24日号に掲載された。3種のワクチンを比較する北欧のコホート研究 本研究は、北欧の4ヵ国(デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン)のデータを用いた住民ベースのコホート研究である(欧州医薬品庁[EMA]の助成を受けた)。 対象は、初回接種時に年齢18歳以上で、2020年12月27日~2022年12月31日に、プライマリ接種スケジュールとして、AZD1222(アストラゼネカ製)、BNT162b2(1価、ファイザー製)、mRNA-1273(モデルナ製)、あるいはこれらの任意の組み合わせで、少なくとも1回の接種を受けた集団であった。 主要アウトカムは、4ヵ国を合わせたCOVID-19関連入院とCOVID-19による死亡とした。フォローアップはブースター接種後14日目から75日間行い、相対的なワクチンの有効性を75日目の累積発生率を用いて(1-リスク比)として算出した。異種接種戦略を支持する新たなエビデンス 北欧4ヵ国全体で、108万6,418人がAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273による異種ブースター接種(3回)を、250万5,093人がBNT162b2+mRNA-1273による異種ブースター接種(3回)を受けた。 プライマリ接種(2回)のみと比較して異種ブースター接種は有効性に優れ、COVID-19関連入院の予防に関する有効性はAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273が82.7%(95%信頼区間[CI]:77.1~88.2)、BNT162b2+mRNA-1273は81.5%(78.9~84.2)であり、COVID-19による死亡の予防に関する有効性はそれぞれ95.9%(91.6~100.0)、87.5%(82.5~92.6)であった。 また、同種ブースター接種(BNT162b2またはmRNA-1273の3回接種)も同様に、プライマリ接種のみの場合に比べCOVID-19関連入院(≧76.5%)およびCOVID-19による死亡(≧84.1%)の予防効果の向上と関連が認められた。 異種ブースター接種を同種ブースター接種と比較すると、COVID-19関連入院の予防に関してはAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273が27.2%(95%CI:3.7~50.6)、BNT162b2+mRNA-1273が23.3%(15.8~30.8)で、COVID-19による死亡の予防ではそれぞれ21.7%(−8.3~51.7)、18.4%(−15.7~52.5)であり、小幅ながら異種ブースター接種で良好だった。 著者は、「COVID-19ワクチン接種は現在、異種接種スケジュールへの依存が高くなり、この傾向は今後も続くと考えられるが、本研究の結果はこの戦略を支持する新たなエビデンスを付け加えるものである」としている。

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軟骨無形成症〔ACH:achondroplasia〕

1 疾患概要■ 定義軟骨無形成症(achondroplasia:ACH、MIM100800)は四肢短縮型低身長症を呈する骨系統疾患の代表である。成人身長は男性で約130cm、女性で約124cmと低く著明な四肢短縮のため、患者は日常生活でさまざまな制約をうける。脊柱管狭窄のため中高年になると両下肢麻痺を呈したり、下肢アライメントの異常による変形性関節症を発症し、歩行障害を生じたりすることが少なくない(指定難病)。■ 疫学ACHの頻度は出生10,000~30,000に1人と報告されている。■ 病因ACHの97%以上に、染色体4p26.3に位置するFGFR3遺伝子のGly380Arg病的バリアント(ほとんどがc.1138G>A、ごく一部がc.1138G>C)を認め、遺伝型としての均質度は高い。遺伝様式は常染色体顕性遺伝であるが、約80%は新規突然変異によるものとされる。変異FGFR3は恒常的に活性化された状態にあり、軟骨細胞の分化、軟骨基質の産生および増殖が抑制される。軟骨組織を介して骨が形成される軟骨内骨化が障害されるため、長管骨の伸長不良、頭蓋底の低形成などが生じると考えられている。■ 症状ACHでは、近位肢節により強い四肢短縮型の著しい低身長、特徴的な顔貌、三尖手などがみられる(表)。成長とともに低身長が目立つようになる。思春期の成長スパートがみられず、この間にも相対的に低身長の程度が悪化する。成人身長は男性130cm程度、女性124cm程度である。顔貌の特徴は出生時からみられる。乳幼児期(3歳頃まで)に問題となるのは、大後頭孔狭窄および頭蓋底の低形成による症状である。大後頭孔狭窄では延髄や上位頚髄の圧迫により、頚部の屈曲制限、後弓反張、四肢麻痺、深部腱反射の亢進、下肢のクローヌスがみられ、中枢性無呼吸、脊髄症、水頭症、突然死の原因となる。ACHの脳室拡大は、2歳までに生じる可能性が最も高く、一般的には交通性であり、真の水頭症(神経症状を伴う脳室拡大)はまれであるが、重篤な合併症の1つである。上気道閉塞はよくみられ、10~85%の患者が睡眠時無呼吸や慢性呼吸障害の治療が必要とされる。胸郭の低形成が高度な場合、拘束性肺疾患や呼吸器感染症の反復、重症化も問題になる。中耳炎の罹患も多く、ACHの約90%で2歳までに発症する。多くは慢性中耳炎に移行し、30~40%で伝音性難聴を伴う。脊柱管狭窄は必発であり、幼児期に症状が発現することはまれであるが、成長とともに狭窄が増強し、しびれ、脱力、間欠性跛行、下肢麻痺、神経因性膀胱による排尿障害などを呈することが多い。40歳までに約7%の患者が手術を受けると報告されている。胸腰椎後弯、内反膝をよく認め、腰痛、下肢痛もしばしばみられる。乳児期に運動発達の遅延はあるが、知能は正常である。このほか、咬合不整、歯列不整がみられる。表 軟骨無形成症の診断基準A.症状1.近位肢節により強い四肢短縮型の著しい低身長(−3SD以下の低身長、指極/身長<0.96の四肢短縮)2.特徴的な顔貌(頭蓋が相対的に大きい、前額部の突出、鼻根部の陥凹、顔面正中部の低形成、下顎が相対的に突出):頭囲>+1SD3.三尖手(手指を広げたときに中指と環指の間が広がる指)B.検査所見単純X線検査1.四肢(正面)管状骨は太く短い、長管骨の骨幹端は幅が広く不整で盃状変形(カッピング)、大腿骨頸部の短縮、大腿骨近位部の帯状透亮像、大腿骨遠位骨端は特徴的な逆V字型、腓骨が脛骨より長い(腓骨長/脛骨長>1.1、骨化が進行していないため乳幼児期には判定困難)。2.脊椎(正面、側面)腰椎椎弓根間距離の狭小化(椎弓根間距離L4/L1<1.0)(乳児期には目立たない)、腰椎椎体後方の陥凹。3.骨盤(正面)坐骨切痕の狭小化、腸骨翼は低形成で方形あるいは円形、臼蓋は水平、小骨盤腔はシャンパングラス様。4.頭部(正面、側面)頭蓋底の短縮、顔面骨低形成。5.手(正面)三尖手、管状骨は太く短い。C.鑑別診断以下の疾患を鑑別する。骨系統疾患(軟骨低形成症、変容性骨異形成症、偽性軟骨無形成症など。臨床症状、X線所見で鑑別し、鑑別困難な場合、遺伝子診断を行う)D.遺伝学的検査線維芽細胞増殖因子受容体3型(FGFR3)遺伝子のG380R変異を認める。<診断のカテゴリー>DefiniteAのうち3項目+Bのうち5項目すべてを満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。または、Probable、PossibleのうちDを満たしたもの。ProbableAのうち2項目以上+、Bのうち3項目以上を満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。PossibleAのうち2項目以上+Bのうち2項目以上を満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。(出典:難病情報センター 軟骨無形成症)■ 予後積極的な医学的評価を行わない場合、乳幼児期に約2~5%の突然死が生じる。突然死の原因は主に無呼吸であると考えられている。大半が知能面では正常であり、平均余命も正常であるとされる。脊柱管狭窄に伴う両下肢麻痺や下肢のアライメント異常による下肢変形が経年的に増加する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)上記の症状と下記の骨単純X線所見と合わせて診断する(表)。骨X線所見にて、太く短い管状骨、長管骨の骨幹端は幅が広く不整で盃状変形(カッピング)、脛骨より長い腓骨、腰椎椎弓根間距離の狭小化、腰椎椎体後方の陥凹、坐骨切痕の狭小化などがみられる(表)。新生児期には、扁平椎を認めることがある。鑑別疾患として軟骨低形成症、変容性骨異形成症、偽性軟骨無形成症などが挙げられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 成長ホルモン(GH)治療ACHのヒトGH治療開始時の適応基準として、3歳程度以上、現在の身長が同性、同年齢の標準値-3SD以下、手術的治療を考慮するほどの大後頭孔狭窄、脊柱管狭窄、水頭症、脊髄・馬尾圧迫などの合併症がMRI ・CT所見上認められないこと。また、これらのための圧迫による臨床上問題となる神経症状が認められないことなどがある。GH治療の身長に対する短期的な効果はいくつか報告されている。5年間に身長SDSが低用量で1.3SD、高用量で1.6SD改善したという報告や、治療開始前に比べて成長速度が1年目に2.6cm/年、2年目に0.7cm/年増加したという報告がある。一方、3年間のGH治療で身長SDSの改善が0.3SDにとどまったという報告もある。成人身長の検討では、男性で0.6SD(3.5cm)の増加、女性で0.5SD(2.8cm)の増加がみられたと報告されている。■ C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)アナログ治療ACHに対してCNPアナログであるボソリチド(商品名:ボックスゾゴ)が2022年に製造販売承認された。国際多施設共同治験においてボソリチド群ではプラセボ群に比べて、52週において1.57cm/年の成長促進効果を認めたことが報告された。この成長促進効果は104週でも維持されていた。今後の中長期的な効果の検討が必要である。なお、ボソリチドは3歳未満の患者でも投与可能である。■ 四肢延長術:ACHの低身長、四肢短縮の改善のため実施されることが多い。創外固定器を用いた下肢延長術は長期の治療期間、高頻度の合併症がみられるため、脚延長術開始の意思決定は患者自身で行うことが望ましい。下肢延長術では8.4~9.8cmの平均獲得身長とされている。後遺症として、尖足、腓骨神経麻痺の残存、膝関節・足関節の外反変形、骨折、股関節の拘縮などが報告されている。上腕骨延長術も施行されているがまとまった報告は少ない。4 今後の展望新規治療として以下の第II相臨床試験が行われている。TransCon CNP(CNPアナログ/週1回注射)、Infigratinib(FGFR阻害薬/経口投与)、塩酸メクリジン(抗ヒスタミン薬/経口投与)、RBM-007(FGF2 アプタマー/1~4週間隔注射)。今後、成長障害や他の症状により有効な治療法が実施可能となることが期待される。5 主たる診療科小児科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 軟骨無形成症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター 軟骨無形成症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「先天性骨系統疾患の医療水準と患者QOLの向上を目的とした研究」(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報つくしんぼ-軟骨無形成症と骨疾患低身長の会(患者とその家族および支援者の会)つくしの会:軟骨無形成症患者・家族の会(患者とその家族および支援者の会)1)軟骨無形成症診療ガイドライン-日本小児内分泌学会2)GeneReviewsJapan:軟骨無形成症3)Hoover-Fong J, et al. Pediatrics. 2020;145(6):e20201010.4)Savarirayan R, et al. Nat Rev Endocrinol. 2022;18:173.公開履歴初回2023年8月7日

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小児の16%にコロナ後遺症、多くみられる症状は?~メタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を経験した小児でも、コロナ後遺症(コロナ罹患後症状、long COVID)の報告が増加している。19歳以下の小児におけるSARS-CoV-2感染の長期的な臨床的特徴を明らかにするために、カナダ・トロントのThe Hospital for Sick ChildrenのLi Jiang氏らによって系統的レビューとメタ解析が実施された。その結果COVID-19小児患者の16.2%がコロナ後遺症を経験し、男児よりも女児に特定の症状が発生するリスクが高いことなどが判明した。Pediatrics誌オンライン版2023年7月21日号掲載の報告。女児は男児よりも睡眠障害や頭痛のコロナ後遺症を発症するリスクが高い 本研究では、2019年12月~2022年12月に発表された論文およびプレプリントの論文で、小児および青年(0~19歳)でSARS-CoV-2感染が確認されてから3ヵ月以降に新たに発生、再発、または持続する徴候、症状、検査所見を検討した研究が対象となった。使用したデータベースは、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Library、WHO COVID-19 Research Database、China National Knowledge Infrastructure Database、WanFang Database、Latin American and Caribbean Health Sciences Literature、Google Scholar、medRxiv、bioRxiv、ChinaXiv。27 件のコホート研究(前向き19件、後ろ向き8件)と4件の横断研究が最終的な統計的レビューに含まれた。これらの研究から、2値転帰について加重平均有病率と95%信頼区間(CI)を算出した。転帰に関して複数の測定法が報告されている場合は、最も一般的に報告されている測定法を使用した。ランダム効果モデルを用いてメタ解析を行い、異質性はI2統計量、χ2検定、フォレストプロットを用いて評価した。 小児におけるコロナ後遺症の特徴を明らかにするために実施したメタ解析の主な結果は以下のとおり。・19件の前向きコホート研究で、COVID-19と診断されてから少なくとも3ヵ月以上の追跡調査を受けた小児および青年の総数は1万5,000例以上だった。追跡期間の範囲は3~12ヵ月以上とさまざまだった。地域別に、ヨーロッパ13件、イラン2件、オーストラリア1件、中国1件、米国1件。・COVID-19の持続的症状の絶対数を報告した12件の前向きコホート研究(6,000例以上)をメタ解析したところ、COVID-19と診断された小児および青年の16.2%(95%CI:8.5~28.6)が、3~13ヵ月の追跡期間中に1つ以上の持続的症状を経験していた。・この集団において、COVID-19の長期的な症状として多かったのは、咽頭痛(n=3,106、統合推定値14.8%[95%CI:4.8~37.5])、持続的な発熱(n=5,128、10.9%[2.4~38.2])、睡眠障害(n=697、10.3%[4.9~20.4])、疲労(n=6,110、9.4%[4.1~20.2])、筋力低下(n=196、8.7%[5.5~13.6])、咳嗽(n=5,890、6.8%[2.4~17.7])、頭痛(n=5,809、4.6%[1.2~16.2])、呼吸困難(n=5,560、4.3%[1.1~15.1])、腹痛(n=3,718、3.7%[2.3~5.8])、下痢(n=3,564、3.5%[1.3~8.9])。・バイアスリスクの低い研究2件と中程度の研究5件から感度分析を行ったところ、長期的な症状として多かったのは、持続的な発熱(n=559、統合推定値7.9%)、疲労(n=5,654、7.4%)、嗅覚/味覚の変化(n=5,433、6.1%)、呼吸困難(n=5,560、4.3%)、頭痛(n=5,493、3.9%)であった。・追跡期間別のサブグループ解析では、3~6ヵ月で一般的な持続症状は、咽頭痛、持続的な発熱、筋力低下、疲労、咳嗽。6~12ヵ月では、睡眠障害、体重減少、持続的な発熱、疲労、筋力低下。12ヵ月以上では、疲労、動悸、関節痛、筋肉痛。・5件の研究をメタ回帰分析し、コロナ後遺症の潜在的なリスクを調べたところ、女児は男児よりも、COVID-19の長期的な症状として睡眠障害や頭痛を発症するリスクが高かった(p<0.01)。 著者は小児におけるコロナ後遺症の解析結果について「COVID-19小児患者は3ヵ月以上症状が持続することが一般的であり、症状は広範囲に及ぶ。今後も適切な管理のもと質の高い前向き研究が必要だ」と述べている。

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オメガ3脂肪酸、肺機能にも好影響

 肺機能の低下や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症には炎症が関与する。そこで、抗炎症作用を有するオメガ3脂肪酸が肺機能の低下やCOPDの予防に役立つ可能性が考えられており、オメガ3脂肪酸の血中濃度が高いと肺機能が高いことも報告されている1)。しかし、オメガ3脂肪酸の血中濃度と肺機能の経時変化を調べた報告はなく、因果関係は不明である。そこで、米国・コーネル大学のBonnie K. Patchen氏らは、前向きコホート研究およびメンデルランダム化研究により、オメガ3脂肪酸の血中濃度と肺機能、気流閉塞との関連を検討した。その結果、オメガ3脂肪酸(とくにドコサヘキサエン酸[DHA])の血中濃度が高いと肺機能の維持に良い影響があることが示された。本研究結果は、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌オンライン版2023年7月20日号で報告された。 オメガ3脂肪酸の血中濃度と肺機能との関連を調べることを目的として、2部構成の研究を実施した。第1部では、米国のコホート研究(National Heart, Lung, and Blood Institute Pooled Cohorts Study)に参加した健康成人1万5,063人(平均年齢56歳、女性55%)を対象として、最長20年間追跡した(平均7年間)。オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸[ALA]、イコサペント酸[EPA]、DHA、ドコサペンタエン酸[DPA])の血中濃度と肺機能(1秒量[FEV1]、努力肺活量[FVC])を測定し、両者の関連を検討した。第2部では、英国のUKバイオバンクに登録された欧州人(50万人以上)の遺伝子データを分析し、オメガ3脂肪酸の間接的または代理指標となる遺伝子と肺機能の関係を検討した。 主な結果は以下のとおり。・縦断研究において、血漿中のオメガ3脂肪酸濃度が高いと肺機能低下が抑制され、オメガ3脂肪酸の中でもDHAの寄与が最も大きかった。・総脂肪酸に占めるDHAの割合が1%増加すると、1年当たりのFEV1、FVCの低下はそれぞれ1.4mL(95%信頼区間[CI]:1.1~1.8)、2.0mL(95%CI:1.6~2.4)抑制された。・総脂肪酸に占めるDHAの割合が1%増加すると、気流閉塞(FEV1/FVC<0.7)の発生率は7%低下した。・メンデルランダム化研究においても、オメガ3脂肪酸の血中濃度が高いと、FEV1およびFVCが高いことが示された。

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境界性パーソナリティ障害と全般不安症の併存率

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、感情、衝動性のコントロール、対人機能において重度の不安定さを特徴とする精神疾患である。これまでの研究でBPD患者は不安症などの他の精神疾患の併発リスクが高いと報告されているにもかかわらず、全般不安症(GAD)とBPDとの関係はあまり調査されていなかった。カナダ・マクマスター大学のAimun Qadeer Shah氏らは、成人におけるBPDとGAD併存の臨床アウトカムに関する報告を統合するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、BPDにGADが併発する頻度は高く、この併存疾患がBPDの症状の重症度に関連している可能性が示唆された。Journal of Psychiatric Research誌2023年8月号の報告。 2021年10月27日の時点で、PsycINFO、PubMed、Embaseの3つのデータベースより検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象研究24件(併存疾患の有病率に関する報告21件、併存疾患に関する臨床アウトカムの報告4件)が抽出され、そのうち9件をメタ解析に含めた。・BPD患者における現在のGADの有病率は、入院患者で16.4%(95%信頼区間[CI]:1.9~66.1%)、外来および地域在住患者で30.6%(95%CI:21.9~41.1%)であった。・BPD患者におけるGADの生涯有病率は、入院患者で11.3%(95%CI:8.9~14.3%)、外来および地域在住患者で13.7%(95%CI:3.4~41.4%)であった。・BPDとGADの併存と関連していた因子は、BPD重症度、衝動性、怒りっぽさ、絶望感などの測定値の悪化であった。 しかし、著者らは、統合された有病率の信頼区間の幅が大きいことを考慮し、本結果は慎重に解釈する必要がある、としている。

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