サイト内検索

検索結果 合計:22件 表示位置:1 - 20

1.

必携 消化器・一般外科医のための外科解剖アトラス

良い手術を行うために必要な外科解剖をエキスパートが解説「手術」78巻4号(2024年3月臨時増刊号)ある疾患の手術に必要な外科解剖を熟知することは、執刀医たる者の責務である。しかも、外科解剖の正しい理解は刻々と変化するため、外科医はその生涯にわたり知識更新の義務を負う。本臨時増刊号特集では、消化器・一般外科医が扱うことの多い5領域(食道・胃、肝胆膵、大腸、肛門疾患・直腸脱、鼠径部・腹壁瘢痕ヘルニア)について、最新の外科解剖・局所解剖を詳細に解説。初学者からベテランまで幅広く活用できる内容とした。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する必携 消化器・一般外科医のための外科解剖アトラス定価8,860円(税込)判型B5判頁数368頁発行2024年3月企画石原 聡一郎ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

2.

早産児の鼠径ヘルニア手術の重篤AE、NICU退室前vs.退室後/JAMA

 早産児の鼠径ヘルニア修復術を、新生児集中治療室(NICU)退室後に行うことで、重篤な有害事象(AE)を発現した乳児が減少したことが示された。米国・テキサス大学健康科学センターのMartin L. Blakely氏らHIP Trial Investigatorsが、同国の39施設で実施した多施設共同無作為化臨床試験の結果を報告した。早産児は鼠径ヘルニアの罹患率が高く、修復術は一般的に行われるが、手術をNICU退室前にすべきか退室後にすべきかについては議論の余地があった。著者は、「今回の結果は、NICUからの初回退室まで鼠径ヘルニア修復術を遅らせることを支持するものである」とまとめている。JAMA誌2024年3月26日号掲載の報告。NICU退室前vs.退室後で、10ヵ月間の重篤AEの発現リスクを比較 研究グループは2013年9月~2021年4月に、初回入院中に鼠径ヘルニアと診断された早産児を、NICU退室前に鼠径ヘルニア修復術を施行する早期修復群と、NICU退室後に乳児が最終月経後年齢(postmenstrual age)55週を超えた時点で修復術を行う後期修復群に無作為に割り付けた。最終追跡調査日は2023年1月3日である。 主要アウトカムは、10ヵ月の観察期間中における事前に規定された重篤AEの発現(盲検下判定委員会による評価)、副次アウトカムは、同期間中の総入院日数などであった。重篤AE発現率、退室前(早期修復群)28%、退室後(後期修復群)18% 無作為化された早産児338例(早期修復群172例、後期修復群166例)のうち、320例が外科的修復術を受けた。患児背景は、男児が86%で、アジア系2%、黒人30%、ヒスパニック系16%、白人59%、人種不明9%、民族不明4%であった。また、出生時の平均在胎週数は26.6週(SD 2.8)、登録時の平均出生後週数は12週(5)であった。 338例中完全なデータが得られたのは308例(91%)(早期修復群159例、後期修復群149例)で、このうち1件以上の重篤AEが発現したのは早期修復群44例(28%)、後期修復群27例(18%)であった。群間リスク差は-7.9%(95%信頼区間:-16.9~0)であり、ベイズ事後確率97%で後期修復が有益であることが示された。 10ヵ月の観察期間中の総入院日数中央値は、早期修復群19.0日(四分位範囲[IQR]:9.8~35.0)だったのに対し、後期修復群では16.0日(7.0~38.0)であった(後期修復術の有益性のベイズ事後確率82%)。 事前に規定されたサブグループ解析では、後期修復により1件以上の重篤AEが発現する乳児の数が減少する確率は、在胎週数28週未満の乳児および気管支肺異形成症の乳児で高かった(各サブグループの有益性の確率は99%)。

3.

デジタル手術イラストの描き方(着色~仕上げ編)【誰も教えてくれない手術記録 】第4回

第4回 デジタル手術イラストの描き方(着色~仕上げ編)こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。今回は前回の続きで、手術イラストの着色~仕上げまでをお伝えします。前回は、下書き~線画を軸に、デジタルイラストの特徴である「レイヤー機能」について、少し掘り下げて紹介しました。今回もレイヤー機能の活用を中心に、イラスト完成までの流れを説明しますので、「レイヤーって何のこと?」と思われた方は、前回のコラムを先にご一読いただけると理解が深まるかと思います!(3)着色:色や構造ごとにレイヤーを分けるのがポイント!線画だけで着色をしなくても、手術イラストとしては成り立ちますが、やはり色が付いていたほうがより見やすくて伝わるイラストになります。私は、色塗りに「ソフトエアーブラシ」を愛用していますが、着色にもさまざまな質感のブラシが使えるので、いろいろと試してみてください。まず、線画レイヤーの下に、新規レイヤーを作成します。カラーパレットから塗りたい色を選択し、多少のはみ出しは気にせず大まかに塗っていきます。そして大体塗り終えたら、消しゴムツールを用いて線画からはみ出した部分を消していきましょう。広い面から塗って、不要な部分を後から消すほうが、早く簡単できれいに塗れると思います。大まかな着色⇒消しゴムで丁寧に消した図また、色が変わる隣り合った部分や構造でレイヤーを分けると、後から細かな修正がしやすくなるのでおすすめです。慣れるまでは、レイヤーに名前を付けて整理するといいですよ。各レイヤーに名前を付けた図色を塗った後は、影(黒、灰色)やハイライト(白)を重ねると、よりそれらしいイラストになると思います。これもレイヤーを分けて描くようにしましょう。レイヤーごとに透明度を調節できるので、影やハイライトが濃くなり過ぎてしまった場合は、透明度を下げると自然に仕上がりますよ。ポイントとしては、着色が終わったタイミングで線画と色のレイヤーをすべてグループ化しておきましょう(ソフトによってはフォルダに入れることでグループ化できるものもあります)。詳しいことは後で説明しますが、イラストの配置を調整するときなどに役立ちます。見本:着色後の完成図(4)仕上げ:手術の流れやポイントがわかるような矢印やテキストを書き込むさて、ついに最後のステップです。余白に矢印やテキストを書き込むことで、手術イラストから手術記録に仕上げていきます。付記する内容としては、病名、施行した術式解剖構造の名称術中所見(病変の様子、腫瘍であれば転移の有無、血管走行、癒着の程度など)手術操作の内容(郭清、剥離、血管/腸管切離など)手術に使用した道具(糸の種類・太さ、エネルギーデバイス、血管用クリップ、メッシュなど)などが一般的ですね。自分は手書き文字が好みですが、お絵描きソフトのテキストツールや、パワーポイントなどを使って仕上げる方法もよく用いられているようです。手書きの際は、グリッドなどの描画ガイドを用いると、字の大きさや傾きが整うのでおすすめです。また、文字を書く余白が足りない、何となく配置バランスが悪いなどと感じたら、各イラストの位置や大きさの調整をしましょう。ここで、先に説明したレイヤーのグループ化機能を活用します。グループ化した全レイヤーを選択した状態で、なげなわ(選択)ツールを用いて動かしたい範囲を指定すると、選択範囲の位置調整や拡大・縮小が可能です。なげなわツールで範囲指定⇒拡大・縮小した図最後に各工程の細かな調整を行って完成です! お疲れさまでした!見本:完成図(お絵かきソフトのテキストツールで文字入れ後)まとめここまで2回に分けて、手術イラストの下書きから完成までの過程を説明しましたが、いかがでしたか? 皆さんがデジタル手術イラストに挑戦するきっかけになればうれしいです。次回以降も、手術記録に関するいろいろな情報をお届けできたらと思っています。ではまた!

4.

デジタル手術イラストの描き方(下書き~線画編)【誰も教えてくれない手術記録 】第3回

第3回 デジタル手術イラストの描き方(下書き~線画編)こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。さて、今回からは2回に分けて、手術イラストの下書きから完成までの過程を順に解説します。皆さん、お手元にデジタルイラストレーションを描く準備はできていますでしょうか? まだの方は前回のコラムを参考にしてください。最近、自分の周りでも徐々に手術イラストをデジタルで作成する人が増えてきている印象です!まずは、基本的なレイヤーの使い方を覚えましょう描き始める前に、デジタルイラストで重要な「レイヤー機能」を押さえておきましょう。下に完成したイラストを提示しましたが、実はこのイラストは、右図のように複数の層(レイヤー)が重なってできています。画像を拡大する(左)完成図/レイヤーのイメージ(右)線画、着色、テキストなど、イラストを構成する要素がそれぞれ透明なシートに描かれていて、それらを重ねると1枚のイラストが出来上がって見えるというイメージでしょうか。このレイヤー機能を駆使すると、臓器の奥行きや前後関係などの表現、部分ごとの加筆修正などが容易となります。これを理解し使いこなすことが、デジタルイラストでの必須スキルです! 少しややこしいかもしれませんが、描いていくうちにわかってくると思います。ではここからは、実際にイラストを描く手順について、(1)下書き、(2)線画、(3)着色、(4)仕上げの4段階に分けて説明していきます。(1)下書き:後で調整できるので、大まかに描いていくまずは下書きから始めましょう。下書きには「鉛筆」のブラシを使用しています。細かい部分は後のステップで整えるので、ここは思うままにざっくりと描き上げます。描きたい場面が複数ある場合は、それぞれのイラストの配置や大きさなども考えながら、大まかに決めていきます。見本:下書きの完成図(2)線画:イラストの良しあしが決まるので、完成図をイメージして丁寧に下書きを描き終えたら、線画の作成(清書)に移ります。下書きレイヤーの「不透明度」を下げる(「透明度」を上げる)と、下書きが薄くなるので、線画がぐっと描きやすくなります。次に、下書きのレイヤーの上に線画用の「新規レイヤー」を作成し、描いていきましょう。画像を拡大する(左)不透明度の調整/下書きの上に新規レイヤーを作成(右)※iPadお絵描きアプリ「Procreate」を使用私は線画に「製図ペン」というブラシを愛用していますが、いろいろな種類のブラシがあるので、自分の使いやすいものを探してみてください。下書きよりもさらに正確できれいなイラストを描くことを心掛けて、丁寧に線を引いていきます。細かい部分を描き込む際には、拡大機能を活用しましょう。だいたいのアプリが、二本指のピンチアウト/ピンチインで拡大・縮小できると思います。私は、この線画がイラスト作成の全過程の中で一番重要だと考えています。線画でイラストの良しあしの大半が決まると言ってもよいかもしれません。手術イラストでは、臓器や膜構造の位置関係をできるだけ正確に記載すべきと考えていて、それらはすべて線画で決まります。ここは気合いを入れて取り組み、納得のいくイラストに仕上げていきましょう。画像を拡大する(左)下書き/線画の完成図(右)下書きのレイヤーを非表示にすると、このように描き上げた線画を確認できます。ここで完璧に仕上げなくても、後からいくらでも修正できるので大丈夫です。次の作業をまた別のレイヤーで行うことで、線画のレイヤーを選択するといつでも線画のみの修正ができるわけです。レイヤー、とっても便利な機能ですよね!次回は、(3)着色と(4)仕上げについて詳しく説明していきます。お楽しみに!

5.

ケアネットDVD 2021年6月以降のお取り扱い商品につきまして【2024年3月14日 更新】

DVDインデックスページへ戻る日頃よりケアネットDVDをご愛顧いただきありがとうございます。このたび弊社では、ケアネットDVDの個人向けの販売方法を変更する運びとなりました。2021年6月以降につきましては、Amazon.co.jpにて販売させていただきます。なお、一部商品につきましてはDVD販売が終了となるものもございますので、詳細は下記をご参照ください。DVD販売が終了した商品も、臨床医学チャンネル『CareNeTV』にて引き続きオンデマンド配信(有料)を行っておりますので、こちらをぜひご利用ください。今後ともCareNeTV、ケアネットDVDをご愛顧のほどお願い申し上げます。本件に関する問い合わせは、お問い合わせフォーム までお願いいたします。※下記の一覧は、2024年3月14日時点のものです。※販売を継続するタイトル一覧にある商品でも、弊社の在庫がなくなりしだい販売終了となる場合がございます。何卒ご了承ください。販売を継続するタイトル  販売を終了するタイトル販売を継続するタイトルCND0002 平本式 皮膚科虎の巻<上巻>CND0003 平本式 皮膚科虎の巻<下巻>CND0008 Dr.東田の今さら聞けない病態生理<上巻>CND0009 Dr.東田の今さら聞けない病態生理<下巻>CND0010 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第1巻>CND0011 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第2巻>CND0012 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第3巻>CND0013 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第4巻>CND0014 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第5巻>CND0015 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第6巻>CND0019 チャレンジ!超音波走査<上巻>CND0020 チャレンジ!超音波走査<下巻>CND0028 マッシー池田の神経内科快刀乱麻!<上巻>CND0030 マッシー池田の神経内科快刀乱麻!<下巻>CND0033 骨太!Dr.仲田のダイナミック整形外科<下巻>CND0039 Dr.林の笑劇的救急問答 1 <上巻>CND0044 もう迷わない!好きになる心電図<下巻>CND0045 Dr.岩田の感染症アップグレード<第1巻>CND0046 Dr.岩田の感染症アップグレード<第2巻>CND0047 Dr.岩田の感染症アップグレード<第3巻>CND0048 Dr.岩田の感染症アップグレード<第4巻>CND0049 Dr.さわやまの心音道場<上巻>CND0052 Step By Step!初期診療アプローチ<第1巻>/疼痛(前編)CND0053 Step By Step!初期診療アプローチ<第2巻>/疼痛(後編)CND0054 Dr.古谷の実践!ザ・診察教室<上巻>CND0055 Dr.古谷の実践!ザ・診察教室<下巻>CND0056 Dr.林の笑劇的救急問答 2 <上巻>CND0057 Dr.林の笑劇的救急問答 2 <下巻>CND0058 Dr.林の笑劇的救急問答 3 <上巻>CND0059 Dr.林の笑劇的救急問答 3 <下巻>CND0060 "の"の字2回走査法で出来る!超音波手技大原則<第1巻>CND0061 "の"の字2回走査法で出来る!超音波手技大原則<第2巻>CND0063 mの字走査法で出来る!乳腺超音波手技大原則CND0064 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第1巻>CND0065 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第2巻>CND0066 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第3巻>CND0067 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第4巻>CND0068 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第5巻>CND0071 Step By Step!初期診療アプローチ<第3巻>/神経(前編)CND0072 Step By Step!初期診療アプローチ<第4巻>/神経(後編)CND0082 Dr.夏井の創傷治療大革命CND0088 Dr.岸本の関節ワザ大全<第1巻>CND0089 Dr.岸本の関節ワザ大全<第2巻>CND0090 Dr.岸本の関節ワザ大全<第3巻>CND0101 Dr.須藤のやりなおし輸液塾<上巻>CND0102 Dr.須藤のやりなおし輸液塾<下巻>CND0103 Step By Step!初期診療アプローチ<第5巻>/呼吸器CND0104 Step By Step!初期診療アプローチ<第6巻>/消化器CND0105 Dr.林の笑劇的救急問答 4 <上巻>CND0106 Dr.林の笑劇的救急問答 4 <下巻>CND0107 Dr.鈴木の眼底検査完全マスターCND0114 内科医のための精神科的対応“自由自在”<上巻>CND0115 内科医のための精神科的対応“自由自在”<下巻>CND0123 Step By Step!初期診療アプローチ<第7巻>/マイナー症候CND0129 Dr.林の笑劇的救急問答 5 <上巻>CND0130 Dr.林の笑劇的救急問答 5 <下巻>CND0134 出直し看護塾<第1巻>CND0135 出直し看護塾<第2巻>CND0140 Dr.坂根のなるほど!納得!ダイエット!CND0143 ワクワク ! 臨床英会話<上巻>CND0144 ワクワク ! 臨床英会話<下巻>CND0150 Dr.林の笑劇的救急問答 6 <上巻>CND0151 Dr.林の笑劇的救急問答 6 <下巻>CND0154 聖路加GENERAL 【心療内科】CND0155 聖路加GENERAL 【神経内科】CND0156 聖路加GENERAL 【がん検診】CND0157 聖路加GENERAL 【一般診療に役立つ腫瘍内科学】CND0158 聖路加GENERAL 【内分泌疾患】<上巻>CND0159 聖路加GENERAL 【内分泌疾患】<下巻>CND0161 人のハいで読める! Dr.山口の胸部写真読影 免許皆伝<上巻>CND0162 人のハいで読める! Dr.山口の胸部写真読影 免許皆伝<下巻>CND0164 Dr.林の笑劇的救急問答 7 <上巻>CND0165 Dr.林の笑劇的救急問答 7 <下巻>CND0167 “かぜ”と“かぜ”のように見える重症疾患CND0168 聖路加GENERAL 【腎臓内科】CND0169 聖路加GENERAL 【Dr.香坂の循環器内科】CND0170 聖路加GENERAL 【Dr.大曲の感染症内科】CND0171 聖路加GENERAL 【Dr.仁多の呼吸器内科】CND0173 Dr.林の笑劇救急シリーズ1.脳に異常あり?<神経内科疾患>編CND0174 Dr.林の笑劇救急シリーズ2.おなかが痛い!<内科・胃腸科>編CND0175 聖路加GENERAL 【Dr.小林の消化器内科】CND0176 聖路加GENERAL 【Dr.衛藤の皮膚科疾患アーカイブ】 <上巻>CND0177 聖路加GENERAL 【Dr.衛藤の皮膚科疾患アーカイブ】 <下巻>CND0178 ドクター力丸の人工呼吸管理のオキテCND0179 Dr.香坂の循環器診療 最前線<第1巻>CND0180 Dr.香坂の循環器診療 最前線<第2巻>CND0181 Dr.香坂の循環器診療 最前線<第3巻>CND0183 Dr.清水のおいしい栄養療法CND0184 Dr.林の笑劇的救急問答 8 <上巻>CND0185 Dr.林の笑劇的救急問答 8 <下巻>CND0186 聖路加GENERAL 【Dr.石松の帰してはいけない患者症例】<上巻>CND0187 聖路加GENERAL 【Dr.石松の帰してはいけない患者症例】<下巻>CND0188 直伝!Dr.守屋の素人独学漢方<上巻>CND0189 直伝!Dr.守屋の素人独学漢方<下巻>CND0190 Dr.岩田の感染症アップグレードBEYOND<上巻>CND0191 Dr.岩田の感染症アップグレードBEYOND<下巻>CND0192 こどものみかた<上巻> ~シミュレーションで学ぶ見逃せない病気~CND0193 こどものみかた<下巻> ~シミュレーションで学ぶ見逃せない病気~CND0196 Dr.前野のスペシャリストにQ!【循環器編】 CND0197 Dr.林の笑劇的救急問答 9 【小児診療編】CND0198 Dr.香坂の循環器診療 最前線<第4巻>CND0203 ここから始めよう!みんなのワクチンプラクティスCND0205 骨太!Dr.仲田のダイナミック整形外科2CND0206 Dr.林の笑劇的救急問答 10 <上巻>CND0207 Dr.林の笑劇的救急問答 10 <下巻>CND0208 産婦人科医ユミの頼られる「女性のミカタ」CND0211 Dr.みやざきの鼠径ヘルニア手術テクニックコレクションCND0212 Dr.野原のナルホド!摂食・嚥下障害マネジメントCND0214 Dr.前野のスペシャリストにQ!【呼吸器編】CND0216 Sedation for All ―安全で確実な鎮静・鎮痛プログラム― CND0217 Dr.小川のアグレッシブ腹部エコー<肝臓編>CND0218 ネッティー先生のわかる!見逃さない!CT読影術CND0220 Dr.たけしの本当にスゴい症候診断CND0223 Dr.林の笑劇的救急問答 11 <上巻>CND0224 Dr.林の笑劇的救急問答 11 <下巻>CND0225 ナベちゃん先生のだれでも撮れる心エコーCND0226 ナベちゃん先生のだれでも読める心エコーCND0227 Dr.香坂のすぐ行動できる心電図 ECG for the Action! CND0228 プライマリ・ケアの疑問 Dr.前野のスペシャリストにQ!【消化器編】CND0229 スーパー服薬指導<第1巻>CND0230 スーパー服薬指導<第2巻>CND0231 スーパー服薬指導<第3巻>CND0232 スーパー服薬指導<第4巻>CND0233 Dr.たけしの本当にスゴい症候診断2CND0235 フィーバー國松の不明熱コンサルトCND0236 認定内科医試験完全対策 総合内科専門医ベーシック vol.1CND0237 認定内科医試験完全対策 総合内科専門医ベーシック vol.2CND0238 認定内科医試験完全対策 総合内科専門医ベーシック vol.3CND0239 認定内科医試験完全対策 総合内科専門医ベーシック vol.4CND0240 感染症コンサルタント岸田が教える どこまでやるの!?感染対策CND0243 イワケンの「極論で語る感染症内科」講義CND0244 Dr.加藤の「これだけ眼科」CND0245 Dr.林の笑劇的救急問答 12 <上巻>CND0246 Dr.林の笑劇的救急問答 12 <下巻>CND0247 Dr.長尾の胸部X線ルネッサンス CND0248 Dr.前野のスペシャリストにQ!【神経内科編】CND0249 スーさんの急変エコー 裏ワザ小ワザCND0250 Dr.香坂のアカデミック・パスポート 「文献の引き方」から「論文の書き方」までCND0251 Dr.たけしの本当にスゴい症候診断3 CND0252 Dr.宮本のママもナットク!小児科コモンプラクティス CND0253 Dr.水野のうたう♪心音レクチャー CND0258 救急エコー最速RUSH! CND0262 Dr.大山のがんレク!すべての医療者に捧ぐがん種別薬物療法講義(上巻)CND0263 Dr.大山のがんレク!すべての医療者に捧ぐがん種別薬物療法講義(下巻)CND0265 Dr.林の笑劇的救急問答 13<上巻>CND0266 Dr.林の笑劇的救急問答 13<下巻>CND0267 Dr.徳田のすぐできるフィジカル超実技CND0268 プライマリ・ケアの疑問 Dr.前野のスペシャリストにQ!【整形外科編】CND0269 Dr.志賀のパーフェクト!基本手技 CND0270 志水太郎の診断戦略エッセンス CND0271 民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.1CND0272 民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.2CND0273 民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.3CND0274 Dr.長尾の胸部X線クイズ 初級編 CND0275 Dr.長尾の胸部X線クイズ 中級編 CND0276 長門流 総合内科専門医試験MUST!2018 Vol.1CND0277 長門流 総合内科専門医試験MUST!2018 Vol.2CND0278 長門流 総合内科専門医試験MUST!2018 Vol.3CND0279 Dr.小松のとことん病歴ゼミCND0282 Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 市中感染症編(上下巻2枚組)CND0283 肩腰膝の痛みをとる Dr.究のあなたもできるトリガーポイント注射 CND0284 Dr.須藤のやり直し酸塩基平衡 CND0285 Dr.長尾の胸部X線クイズ 上級編 CND0286 志水太郎の診断戦略ケーススタディCND0287 Dr.林の笑劇的救急問答 14<上巻>CND0288 Dr.たけしの本当にスゴい高齢者身体診察CND0289 プライマリ・ケアの疑問 Dr.前野のスペシャリストにQ!【精神科編】CND0290 Dr.安部の皮膚科クイズ 初級編CND0291 Dr.林の笑劇的救急問答14<下巻>CND0292 毎日使える 街場の血液学CND0293 Dr.白石のLet's エコー 運動器編CND0294 一発診断CND0295 Dr.林の笑劇的救急問答15<上巻>CND0296 Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 医療関連感染症編CND0297 Dr.飯島の在宅整形CND0298 岡田正人のアレルギーLIVECND0299 Dr.皿谷の肺音聴取道場CND0300 Dr.林の笑劇的救急問答15<下巻>CND0301 Dr.増井の心電図ハンティングCND0302 Dr.長門の5分間ワクチン学CND0303 Dr.安部の皮膚科クイズ 中級編CND0304 プライマリ・ケアの疑問 Dr.前野のスペシャリストにQ!【糖尿病・内分泌疾患編】CND0305 Dr.水谷の妊娠・授乳中の処方コンサルトCND0306 Dr.飯村の英語の発音が劇的に変わるトレーニングCND0307 Dr.田中和豊の血液検査指南 総論・血算編CND0308 脳血管内治療STANDARDCND0309 Dr.林の笑劇的救急問答16<上巻> 肺炎編CND0310 Dr.安部の皮膚科クイズ 上級編CND0311 Dr.須藤の輸液大盤解説CND0312 総合内科専門医試験オールスターレクチャー アレルギーCND0313 総合内科専門医試験オールスターレクチャー 血液CND0314 総合内科専門医試験オールスターレクチャー 呼吸器CND0315 総合内科専門医試験オールスターレクチャー 神経CND0316 総合内科専門医試験オールスターレクチャー 内分泌・代謝CND0318 Dr.林の笑劇的救急問答16<下巻> 皮膚科救急編CNPA003 Dr.東田の病態生理学 自由自在!【糖尿病編】CNPA004 Dr.東田の病態生理学 自由自在!【循環器編】1CNPA005 Dr.東田の病態生理学 自由自在!【循環器編】2ページTOPへ販売を終了するタイトルCND0006 Dr.名郷のコモンディジーズ常識のウソ/高脂血症篇 <上巻>CND0007 Dr.名郷のコモンディジーズ常識のウソ/高脂血症篇 <下巻>CND0026 Dr.箕輪の実戦救急指南CND0027 実践!Dr.鳥谷部の How to ラップ療法-注目の新しい褥創治療-CND0029 Dr.名郷のコモンディジーズ常識のウソ <ルーチンの落とし穴>CND0032 骨太!Dr.仲田のダイナミック整形外科<上巻>CND0035 激辛!伊賀流心臓塾<第2巻>CND0036 激辛!伊賀流心臓塾<第3巻>CND0037 小三J読影法でわかる!Dr.佐藤の胸部写真の楽しみ方<上巻>CND0038 小三J読影法でわかる!Dr.佐藤の胸部写真の楽しみ方<下巻>CND0041 みんなの症候診断<上巻>CND0042 みんなの症候診断<下巻>CND0043 もう迷わない!好きになる心電図<上巻>CND0050 Dr.さわやまの心音道場<下巻>CND0051 Dr.名郷のコモンディジーズ常識のウソ <必ず遭遇する壁>CND0062 "の"の字2回走査法で出来る!超音波手技大原則<第3巻>CND0069 亀井道場スーパーライブ 臨床呼吸器ブラッシュアップ<上巻>CND0070 亀井道場スーパーライブ 臨床呼吸器ブラッシュアップ<下巻>CND0073 Dr.岩田のスーパー大回診<上巻>CND0074 Dr.岩田のスーパー大回診<下巻>CND0077 褥創治療最前線!Dr.鳥谷部の超ラップ療法CND0078 激辛!伊賀流心臓塾<第4巻>CND0079 ケイコ先生の肺ガン読影講座CND0081 ジェネラリストのための他科診療エッセンスQ&A II―整形外科、心療内科CND0083 Dr.岡田のアレルギー疾患大原則<第1巻>CND0084 Dr.岡田のアレルギー疾患大原則<第2巻>CND0085 Dr.岡田のアレルギー疾患大原則<第3巻>CND0086 Dr.齋藤のハワイ大学式スーパートレーニング<上巻>CND0087 Dr.齋藤のハワイ大学式スーパートレーニング<下巻>CND0091 ジェネラリストのための内科外来Q&A -不整脈-CND0092 ジェネラリストのための内科外来Q&A -脳梗塞-CND0093 ジェネラリストのための内科外来Q&A -腎疾患-CND0094 ジェネラリストのための内科外来Q&A -消化性潰瘍-CND0095 カスガ先生の精神科入門[負けるが勝ち!]<上巻>CND0096 カスガ先生の精神科入門[負けるが勝ち!]<下巻>CND0097 Dr.須藤のビジュアル診断学<第1巻>CND0098 Dr.須藤のビジュアル診断学<第2巻>CND0099 Dr.須藤のビジュアル診断学<第3巻>CND0108 USA発!関節X線ASBCD<上巻>CND0109 USA発!関節X線ASBCD<下巻>CND0110 Dr.岡田の膠原病大原則<第1巻>CND0111 Dr.岡田の膠原病大原則<第2巻>CND0112 Dr.岡田の膠原病大原則<第3巻>CND0113 一般医療機関における暴言・暴力の予防と対策CND0116 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第1巻>CND0117 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第2巻>CND0118 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第3巻>CND0119 T&A 動きながら考える救急初療<上巻>CND0120 T&A 動きながら考える救急初療<下巻>CND0124 Dr.岩田のFUO不明熱大捜査線<第1巻>CND0125 Dr.岩田のFUO不明熱大捜査線<第2巻>CND0126 Dr.岩田のFUO不明熱大捜査線<第3巻>CND0127 Dr.岩田のFUO不明熱大捜査線<第4巻>CND0128 Dr.岡田のみんなの関節リウマチ診療CND0131 リウマチ膠原病セミナー<第1巻>CND0132 リウマチ膠原病セミナー<第2巻>CND0133 リウマチ膠原病セミナー<第3巻>CND0138 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第4巻>CND0139 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第5巻>CND0141 Dr.能登のもう迷わない!臨床統計ここが知りたい!!<上巻>CND0142 Dr.能登のもう迷わない!臨床統計ここが知りたい!!<下巻>CND0145 外傷治療ベーシックCND0146 Dr.安田のクリアカット腎臓学<上巻>CND0147 Dr.安田のクリアカット腎臓学<下巻>CND0152 北米式☆プレゼンテーション上達ライブCND0153 北米式臨床力強化プログラム Vol.1CND0160 プライマリケアでよく見る精神症状の診方と対応のコツCND0163 Dr.中野のこどものみかたNEOCND0166 リウマチ膠原病セミナー<第4巻>CND0172 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第6巻>CND0182 激辛!伊賀流心臓塾<第1巻> 増補改訂版CND0194 さわやま流 音楽的聴診術<上巻>CND0195 さわやま流 音楽的聴診術<下巻>CND0199 Dr.山中の攻める問診<上巻>CND0200 Dr.山中の攻める問診<下巻>CND0201 CliPS -Clinical Presentation Stadium- @TOKYO2013CND0204 Dr.ゴン流ポケットエコー簡単活用術CND0209 Dr.ハギーの関節リウマチ手とり足とり<早期介入編>CND0210 Dr.ハギーの関節リウマチ手とり足とり<長期罹患編>CND0215 ひと・身体をみる認知症医療CND0219 Dr.山田のゆるい糖質制限 -医学的根拠と実践方法-CND0234 Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療CND0241 総合内科専門医試験対策 【アップデート問題はココが出る!】 2016CND0242 総合内科専門医試験対策 【“苦手”科目をクイック復習】 2016CND0254 無敵の研修医ストレスマネジメントCND0255 長門流 認定内科医試験BINGO!総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.1CND0256 長門流 認定内科医試験BINGO!総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.2CND0257 長門流 認定内科医試験BINGO!総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.3CND0264 国立国際医療研究センター総合診療科presents 内科インテンシブレビュー2017(2枚組)CND0280 Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 市中感染症編(上巻) CND0281 Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 市中感染症編(下巻)ページTOPへ

6.

血圧コントロール不良を契機に漫然投与のNSAIDsを卒業【うまくいく!処方提案プラクティス】第25回

 今回は、血圧上昇を理由にNSAIDsの中止を提案したケースを紹介します。高齢者では、骨折や転倒などによる受傷、手術を契機にNSAIDsが開始となり、そのまま漫然と投薬を続けていることは少なくありません。薬剤師は服薬開始日や理由を薬歴などに記録し、長期的に服用を続ける必要があるかどうかを医師と共同モニタリングしましょう。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患高血圧症、不眠症既往歴75歳時に大腿骨頸部骨折、60歳時に鼠径ヘルニア手術訪問診療の間隔2週間に1回服薬管理施設看護師が管理処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.エナラプリル錠5mg 1錠 分1 朝食後3.酸化マグネシウム錠 500mg 2錠 分2 朝夕食後4.セレコキシブ錠100mg 2錠 分2 朝夕食後5.レバミピド錠100mg 2錠 分2 朝夕食後6.ピコスルファートナトリウム錠2.5mg 1錠 分1 夕食後本症例のポイントこの患者さんは、普段から穏やかでおとなしい性格で、訪問診療時の血圧は140〜150/80〜90くらいで推移していました。セレコキシブが処方されていますが、日中や夜間の疼痛の訴えはなく、疼痛コントロールは安定していました。長期的にNSAIDsを服用すると、腎機能低下や胃潰瘍などのリスクがあるため、いつからセレコキシブを服用していて、いつまで服用しなければならないのか気になっていました。そのさなか、訪問診療時に血圧が158/96と高めの日があり、医師より降圧薬を追加するのはどうかと相談がありました。そこで、いくつか懸念事項があったので下記のように考えをまとめました。血圧上昇のアセスメント降圧薬を単に追加するのではなく、現行の治療薬で何か血圧に影響しているものはないかを検証することが先決です。そこで、真っ先にNSAIDsであるセレコキシブによる影響を考えました。セレコキシブは、過去の骨折の際に処方が開始となり、変更なくそのまま服用していることをお薬手帳や施設看護師から情報収集しました。通常、NSAIDsはアラキドン酸からプロスタグランジンへの産生を抑制し、水やNaの貯留と血管拡張抑制による影響から血圧を上昇させる可能性があります。血圧への影響や長期的な腎機能障害への影響については、COX-2選択的阻害薬でも非選択的NSAIDsと効果は同等といわれています。さらに、セレコキシブは長期間にわたって酸化マグネシウムと併用されていますが、AUCこそ変動はないものの、併用によってCmaxが低下するため、薬効低下が生じて十分な治療効果が得られていない可能性もあります。そこで、現在疼痛コントロールも安定していることと、血圧上昇の影響も考慮して、セレコキシブを中止する提案をすることにしました。処方提案と経過医師より降圧薬追加の相談を受けて、セレコキシブを中止することで血圧が安定する可能性があることを上記の考察を添えて回答しました。医師が長期間使っていた治療薬を中止することで患者さんの状態が変化することを懸念したため、セレコキシブを中止する代わりにアセトアミノフェン錠500mg 1錠/回 疼痛時の頓用を提案し、承認を得ることができました。セレコキシブと胃粘膜障害を防ぐために併用されていたレバミピドを中止した後も疼痛増悪はなく、アセトアミノフェン錠を服用することなく経過しました。血圧も130〜140/70〜80で落ち着いて推移しているため、その後も降圧薬を追加することなく患者さんは安定した状態を維持しています。1)セレコックス錠100mg/200mg 添付文書2)北村和雄. 宮崎医学会誌. 2008;32:1-5.

7.

エーラス・ダンロス症候群〔EDS:Ehlers-Danlos syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義エーラス・ダンロス症候群(Ehlers-Danlos syndrome:EDS)は、皮膚・関節の過伸展性、各種組織の脆弱性を特徴とする遺伝性結合組織疾患の総称である。■ 疫学EDS全体としての頻度は1/5,000人程度と推定されている。古典型EDSでは1/2万人、関節過可動型EDSでは1/5,000~2万人、血管型EDSでは1/5~25万人、後側弯型EDSでは1/10万人とされる。それ以外の病型ではさらに頻度は低くまれとなる。詳しい病型は後述する。■ 病因コラーゲン分子、もしくは修飾酵素の遺伝子変異などにより発症する。古典型EDSはV型コラーゲン遺伝子変異、血管型EDSはIII型コラーゲン遺伝子変異によるdominant negative効果またはハプロ不全に基づき発症する。筋拘縮型EDSでは、デルマタン4-0-硫酸基転移酵素-1またはデルマタン硫酸エピメラ-ゼの欠損に基づき、代表的なデルマタン硫酸(DS)含有プロテオグリカンであるデコリンのグリコサミノグリカン鎖の組成が変化し(DSの消失、コンドロイチン硫酸への置換)、デコリンが媒介するコラーゲン細線維のassembly不全を来すことによって進行性の結合組織脆弱性を生じる。関節過可動型EDSでは、いまだ原因遺伝子は同定されていない。■ 症状EDSの各病型の臨床症状は、後述する表2の診断基準のとおりである。血管型EDSでは、薄く透けて見える皮膚、易出血性、特徴的な顔貌、動脈・腸管・子宮の脆弱性を特徴とする。血管破裂・解離、腸管破裂、臓器破裂は70%の成人例における初発症状となる(平均年齢23歳)。新生児期には、内反足、先天性股関節脱臼を、小児期には鼠径ヘルニア、気胸、反復性関節脱臼・亜脱臼を合併しうる。妊婦では分娩前後の動脈・子宮破裂により、死亡する危険性がある(~12%)。古典型EDSでは、滑らかでベルベット様の皮膚、過伸展性、脆弱性が目立ち、創傷治癒が遅れ瘢痕が薄く伸展する(萎縮性瘢痕:シガレットペーパー様と称される)。また、縫合部位は離開しやすい。肩、膝蓋骨、指、股、橈骨、鎖骨などが容易に脱臼するが、自然整復または自力で整復できることが多い。運動発達遅延を伴う筋緊張低下、易疲労性、筋攣縮、易出血性がみられることがある。妊婦は前期破水・早産(罹患胎児の場合)、会陰裂傷、分娩後の子宮・膀胱脱を生じうる。関節過可動型EDSでは、皮膚の過伸展性は正常もしくは軽度であるが、関節過伸展性が顕著であり、脱臼・亜脱臼の頻度も高い。変形性関節症もよくみられる。関節痛を含めた慢性疼痛が深刻であり、身体的・精神的な障害となりうる。しばしば胃炎、胃食道逆流、過敏性腸症候群といった消化器合併症を呈する。筋拘縮型EDSでは、先天性多発関節拘縮(内転母指、内反足)、顔貌上の特徴、内臓や眼の先天異常など先天異常関連症状、そして、皮膚の脆弱性、関節の易脱臼性、足・脊椎の変形、巨大皮下血腫、大腸憩室など進行性の結合組織疾患脆弱性関連症状を呈する。■ 分類1998年に発表された国際命名法により、6つの主病型に分類されてきたが,近年新たな病型がその生化学的・遺伝学的基盤とともに報告されており、2017年に新たな国際分類が定められ13の病型に分類された(表1)。表1 2017年に発表された新たなEDSの国際分類画像を拡大する■ 予後予後は各病型によりさまざまである。血管型EDSでは生涯を通じて易出血性を呈する。20歳までに25%の症例が、40歳までに80%の症例が深刻な合併症を発症し、死亡年齢の中央値は48歳とされる。とくに誘因もなく突然発症し、突然死、脳卒中、急性腹症、ショックといった形で現れることも多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断では、表2に示したEDSの各病型の診断基準を参照されたい。関節過可動型EDSを除きいずれの病型でも、最終診断には分子遺伝学的検査が必須となってくる。関節過可動性の評価としては、Beightonの基準を用いる。(1)小指の他動的背屈>90°(片側1点)、(2)母指が他動的に前腕につく(片側1点)、(3)肘の過伸展>10°(片側1点)、(4)膝の過伸展>10°(片側1点)、(5)前屈で手掌が床につく(1点)(計9点中5点以上で関節過可動性ありと判断)。表2 EDS各病型の診断基準画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)各病型に共通している診療のポイントは、医療者(関係各科、救急)と患者・家族が疾患についてあらゆる情報を共有し、起こりうる合併症の早期発見・早期治療を行うことである。病型にもよるが皮膚裂傷や関節過伸展性・脆弱性に対しては、激しい運動を控えサポーターなどで保護を行う。関節過可動型EDSでは、関節保護の理学療法、補装具の使用、鎮痛薬投与なども必要であり、重症患者では身体障害や難治性疼痛への負担に配慮した心理カウンセリング、抗うつ薬の投与などの対応が必要な時もある。血管型EDSでは動脈合併症予防のためセリプロロール(商品名:セレクトール)投与を考慮する。急性の動脈病変(瘤、解離)が生じた場合、可能な限り保存的に対処するが、病状が進行する場合は、血管内治療を考慮する。手術を行う場合は、血管および組織脆弱性を考慮し、細心の注意が必要になる。患者の妊娠はハイリスクであり、カップルに対し十分な情報提供を行ったうえで、心臓血管外科のバックアップができる施設において、陣痛開始前のコントロールされた分娩(おそらくは帝王切開のほうが安全)を行う。古典型EDSの裂傷の予防対策として、小児で皮膚裂傷を予防するためには、前頭部、膝、頸部を保護する。縫合に際しては、張力をかけない、できれば2層で縫合するなど十分注意を払う。さらに瘢痕を広げないよう、抜糸までの期間を通常の2倍程度に延ばす、テープで補強するなどの工夫が必要となる。また、遺伝カウンセリングについてふれると、これは「臨床遺伝専門医を中心に認定遺伝カウンセラー、担当医、看護・心理職種が協力して、患者自身または家族の遺伝に関する問題を抱える患者を対象に、臨床情報の収集に基づき正確な診断と発症・再発リスク評価を行い、わかりやすく遺伝に関する状況の整理と疾患に関する情報提供を行うこと、同時に患者が遺伝に関連したさまざまな負担に、その人らしく向き合い、現実的な意思決定を行っていけるような継続的な心理社会的支援を行うことを含んだ診療行為」とされる。EDSの病型は常染色体優性遺伝が多く、この場合、本症と診断されることは、患者自身が難治性疾患であることに加え、次世代が罹患する確率が50%であることを示すものである。また、稀少病型の多くは常染色体劣性遺伝であり、発症者の同胞への再発率は25%とされる。診断の時点、家族計画の相談が出た時点など診療の局面で、遺伝子医療部門への紹介を考慮したい。4 今後の展望次世代シークエンスを活用した、網羅的な遺伝学的検査の運用が始まっている。現在、唯一原因遺伝子が同定されていない関節過可動型EDSの原因遺伝子同定に向けた研究が進行中である。5 主たる診療科小児科、皮膚科、整形外科、循環器内科、心臓血管外科、消化器内科、消化器外科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、リハビリテーション科、麻酔科(ペインクリニック)、リウマチ科、救急科、遺伝子医療部門など関与する診療科は多岐にわたる。各科との連携が重要である。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター エーラス・ダンロス症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター エーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Gene Reviews(医療従事者向けの研究情報:英文のみ)Gene Review Japan(医療従事者向けの研究情報。血管型、古典型、関節可動型について詳細説明あり)患者会情報日本エーラスダンロス症候群協会(友の会)(患者とその家族および支援者の会)公開履歴初回2019年5月14日

8.

マルファン症候群〔MFS:Marfan syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義マルファン症候群(Marfan syndrome:MFS)は、結合組織の主要成分の1つであるfibrillinの質的あるいは量的異常による先天性の結合組織疾患である。心血管、眼、骨、関節、皮膚,肺を含む全身の結合組織において広範かつ多彩な表現型を呈するが、とくに大動脈瘤(基部拡張)・解離と水晶体偏位(亜脱臼)が重要な所見で、前者は90%以上、後者は50%以上の患者で認める。病名は、1896年にフランスの小児科医であったAntoine Marfan博士が、長く細い指(arachnodactyly:クモ指)が特徴的な少女の症例を報告したことに由来する。当初は、高身長・側弯・胸郭異常などの骨格症状のみが注目されたが、その後、重篤な大動脈解離を高頻度に合併することがわかり、循環器疾患として再認識されるようになった。常染色体優性遺伝による遺伝性疾患であるが、約25%では家族歴を認めず、突然変異によるとされる。■ 疫学発症頻度は、人種に関わりなく5,000~1万人出生に1人とされ、性差はない。■ 病因15番染色体長腕に位置するFBN1遺伝子の機能喪失型の変異により発症する。FBN1遺伝子がコードするfibrillinは弾性線維の骨格成分であるmicrofibrilの主成分であるため、弾性線維に富む筋・皮膚・肺などの臓器が障害される。また、fibrillinは眼球を保持するチン小帯の主成分でもあるため、チン小帯の断裂や弛緩により水晶体偏位を生じる。そのほか、fibrillinは、細胞増殖抑制や分化に関わるTGF-βの組織における活性制御に関与していることから、多彩な症状の背景にはTGF-βの機能亢進も関係していると推測されている。■ 症状臨床症状は、心血管系、眼系、骨格系、その他に大別される。1)心血管系:大動脈瘤・解離、僧帽弁逸脱、大動脈弁閉鎖不全、僧帽弁閉鎖不全MFSでは、大動脈中膜の平滑筋が障害されるため、大動脈全般で拡張や解離を来しやすく、実際、大動脈病変は、60歳までにはほぼ全例で認めるとされる最も重要な所見である。なかでも特徴的な所見は、大動脈基部(バルサルバ洞)の拡大(図1)である。画像を拡大する比較的早期から大動脈基部のバルサルバ洞部の洋梨状拡大を認めることが多いが、初期には自覚症状は乏しく、その後、上行大動脈や胸部下行大動脈にも拡大が及び、大動脈弁閉鎖不全や大動脈解離を合併して初めて自覚症状が現れる、という経過をたどることが多い。一般的に、軽度の基部拡張は小児期より認められるが、小児循環器科専門医でないと見過ごされやすい。大動脈基部径と大動脈解離のリスクには、ある程度の相関が見られ、拡大傾向が強くなる青年期以降に解離のリスクが高くなる。解離部位は、上行大動脈を含むことが多いが、胸部下行大動脈が初発部位となることもある。僧帽弁逸脱所見は約75%の患者で認め、粘液変性(myxomatous degeneration)所見も約25%で認める。僧帽弁逸脱は、MFSの特徴的症状のそろわない小児期でも認められることが多い。聴診の際の収縮中期クリック音で気付かれるが、確認には心臓超音波検査が最も有効である。重度の僧帽弁閉鎖不全は、新生児MFSを除くと病初期にはまれであるが、幼~小児期以降は、僧帽弁閉鎖不全による症状が前面に出てくる場合がある。その他、肺動脈基部の拡張や三尖弁逸脱もしばしば認めるが、治療の対象となることは少ない。2)眼系:水晶体偏位(亜脱臼・脱臼・振盪)、近視、乱視、網膜剥離、白内障、緑内障水晶体を支えるチン小帯の脆弱性により、水晶体偏位(亜脱臼・脱臼・振盪)や、水晶体性近視・乱視を発症する。また、眼軸が伸びることによる軸性近視もしばしば認める。水晶体偏位は、MFS患者の50~60%で認め、他の類縁疾患ではみられない特徴的所見であるため、診断的価値はきわめて高い。水晶体偏位は、外傷性の場合と異なり、両側性で上方にずれることが多いとされる。幼児期に高度の偏位を認める場合には、将来の弱視につながる可能性があるため、早期の治療を要する。一方、偏位が軽度の場合は、視力も正常に保たれるため、診断には散瞳下細隙灯検査が必要である。網膜剥離、白内障、緑内障も、一般に比べるとやや頻度が高い。3)骨格系:高身長、細く長い指、側弯、胸郭変形、扁平足ほか長管骨が長軸方向に伸びる結果、高身長で手足が長いdolichostenomeliaを認める。指が長く関節が柔らかいことによる親指徴候(サムサイン)・手首徴候(リストサイン)はarachnodactyly(クモ指)と称され、MFSの代表的身体所見で、幼少児期よりみられることが多い(図2)。漏斗胸、鳩胸、脊椎側弯、脊椎後弯などの胸郭病変も小児期より認める場合が多いが、成長期に増悪しやすい。その他、外反扁平足、高口蓋、叢生歯(歯列不正)も高率に認める。顔貌の特徴としては、長頭、頬骨低形成、眼球陥凹、下顎後退、眼瞼裂斜下などが傾向として挙げられる。画像を拡大する4)その他自然気胸は全体の約15%で認める。皮膚弾性組織の断裂による線状性皮膚萎縮(皮膚線条)も、成人には高頻度で認めるが、小児期には少なく、成長期以降に増加する。鼠径ヘルニアや瘢痕ヘルニアも一般に比べて高い頻度で認める。腰仙部の脊髄硬膜拡張もCTやMRIによる画像検査でしばしば認める所見であるが、自覚症状はない場合がほとんどである。■ 予後生命予後は、大動脈解離をはじめとする心血管系合併症に左右される。1986年に報告された大動脈基部置換術(Bentall手術)により生命予後は劇的に改善したが、その後、予防的自己弁温存大動脈基部置換術(David手術、Yacoub手術)など、解離前に脆弱な大動脈基部を人工血管に置換する術式の開発により、さらに生命予後は改善している。また、小児期よりβ遮断薬やアンギオテンシン受容体拮抗薬の内服が、大動脈拡張自体をある程度抑制できることも大規模臨床試験で示された。近年では、早期診断と早期からの医療管理により、健康な人と遜色ない生命予後が期待できるところまできている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)国際的診断基準である「ゲント診断基準(2010改訂)」に従う。診断は、(1)大動脈基部病変、(2)水晶体偏位、(3)遺伝学的検査、(4)全身徴候スコア、に基づいてなされる(表1)。診断に必要な項目は、家族歴の有無により異なる。この基準により、MFSの95%以上は診断可能とされる。表1 マルファン症候群(MFS)診断のための改訂ゲント基準(2010)【家族歴がない場合】(1)大動脈基部病変(Z≧2)1)+水晶体偏位 → MFS(2)大動脈基部病変+FBN1遺伝子異常2) → MFS(3)大動脈基部病変+全身徴候(7点以上) → MFS*(4)水晶体偏位+(大動脈病変との関係が既知の)FBN1遺伝子異常 → MFS【家族歴がある場合】(5)水晶体偏位+家族歴3) → MFS(6)全身徴候(7点以上)+家族歴 → MFS*(7)大動脈基部病変(Z≧2(20歳以上)、Z≧3(20歳未満))+家族歴 → MFS*・水晶体偏位があっても、大動脈病変と関連するFBN1遺伝子変異を認めない場合は、全身徴候の有無にかかわらず「水晶体偏位症候群(ELS)」とする。・大動脈基部病変が軽度で(バルサルバ洞径;Z<2)、全身徴候(≧5点で骨格所見を含む)を認めるが、水晶体偏位を認めない場合は「MASS」4)とする。・僧帽弁逸脱を認めるが、大動脈基部病変が軽度で(バルサルバ洞径;Z<2)、全身徴候を認めず(<5点)、水晶体偏位も認めない場合は「僧帽弁逸脱症候群(MVPS)」とする。・MFS*:この場合の診断は、類縁疾患であるShprintzen-Goldberg症候群、Loeys-Dietz症候群、血管型エ-ラスダンロス症候群との鑑別を必要とし、所見よりこれらの疾患が示唆される場合の判定は、TGFBR1/2遺伝子、COL3A1遺伝子、コラーゲン生化学分析などの諸検査を経てから行うこと。なお、鑑別を要する疾患や遺伝子は、将来変更される可能性がある。注1)大動脈基部径(バルサルバ洞径)の拡大(体表面積から算出された標準値との差をZ値で判定)、または大動脈基部解離注2)FBN1遺伝子異常の意義付けに関しては別に詳しく規定されている(詳細は省略)注3)上記の(1)~(4)により、個別に診断された発端者を家族に有する注4)MASS:近視、僧帽弁逸脱、境界域の大動脈基部拡張(バルサルバ洞径;Z<2)、皮膚線条、骨格系症状の表現型を有するもの(訳者注 MASSとは、“Mitral valve、Aorta、Skin、Skeletal features”をあらわす)■ 診断のための検査大動脈基部病変の評価は、心臓超音波検査、胸部CT(造影・非造影)検査、胸部MRI/MRA検査による。このうち心臓超音波検査は、大動脈基部の評価や心臓弁や心機能の評価に最も適しており、定期的フォローには欠かすことができない検査である。大動脈基部病変の定義は拡張および解離であるが、このうち拡張の評価は、バルサルバ洞径の実測値と体表面積から算出した標準値を比較して行われ、成人では、実測値が標準値の+2SD以上、小児では+3SD以上を有意な拡張とする。一方、弓部以降の大動脈や分枝動脈の評価には、CTやMRI検査が適しており、年齢や目的に応じて適宜使い分ける。水晶体偏位を含む眼病変は、通常の眼科的検査で評価する。水晶体偏位の有無は、散瞳薬により瞳孔を開いた状態で細隙灯(スリットランプ)下で確認する。遺伝学的検査では、FBN1遺伝子の病原性変異(バリアント)を検出する。FBN1遺伝子は巨大な遺伝子であり、病気の発症と関係しないバリアントや、MFS以外の疾患の原因となるバリアントも存在するため、病原性の判定には注意を要する。わが国ではMFSの診断のための遺伝学的検査は、2016年4月より保険診療として認められており、国内では、かずさDNA研究所などが検査を受注している。全身徴候スコアは、通常の理学的検査による身体所見やX線やCTなどの一般的画像所見を用いて評価するもので、項目別に点数化し、全20点中7点以上のスコアを陽性と判断する(表2)。ここには、旧ゲント基準に含まれていた、上記以外のほとんどが含まれる。項目の詳細は、画像付きで米国マルファン協会のHPの中で紹介されている。表2 改訂ゲント基準における全身徴候スコア画像を拡大する■ 鑑別診断大動脈瘤・解離を合併しやすい疾患および類似の骨格所見・眼所見を呈する疾患が鑑別の対象となる。いずれも、改訂ゲント基準により鑑別可能である。・ロイス・ディーツ症候群(Loeys-Dietz syndrome)・血管型エーラス・ダンロス症候群(Vascular Ehlers-Danlos syndrome)・家族性胸部大動脈瘤・解離症候群(Familial thoracic aortic aneurysm and dissection syndrome)・動脈蛇行症候群(Arterial tortuosity syndrome)・先天性拘縮性くも状指趾症(Congenital contractural Arachnodactyly/Beals syndrome)・ホモシスチン尿症(Homocystinuria)・スティックラー症候群(Stickler syndrome)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)心血管系合併症に対する治療で最も重要なのは大動脈瘤・解離の予防である。内科的治療としては、β遮断薬あるいはアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の内服で、基部の拡張を認めるときには、できるだけ早期に治療を開始することが推奨されている。大動脈基部径が45mmを超えると大動脈解離のリスクが高くなるため、予防的大動脈基部置換手術を考慮する。これには、自己弁温存手術(David手術、Yacoub手術)と生体弁や機械弁を用いたBentall手術があるが、それぞれ長所・短所があるため、患者の年齢・性別・生活歴などを考慮しながら、最善の方法を選択する。なお、女性患者の場合、将来の妊娠の可能性を踏まえた治療が大切である。つまり、大動脈基部径が40mmを超えると妊娠中の大動脈解離リスクが高くなるため、そのままでの妊娠は難しくなる。したがって、女児では、成長後の基部径が40mm以下に保てるように、小児期から適切に降圧薬治療を継続することが重要である。その他、僧帽弁閉鎖不全や不整脈に対する治療は、通常の場合と同様である。水晶体偏位を認める場合、軽症なら眼鏡などによる視力矯正のみで経過観察を行うが、偏位が重症で完全脱臼や弱視の可能性がある場合は水晶体摘出手術や眼内レンズ縫着手術が行われる。高度近視の場合や水晶体手術後は網膜剥離のリスクが高くなるので、定期的に眼科を受診する必要がある。側弯、漏斗胸、気胸、ヘルニアなど、上記以外の合併症に対しては、いずれも対症療法が基本である。4 今後の展望致死的合併症となりうる大動脈解離の予防には、早期診断および早期治療介入が必須である。内科的治療に関しては、大規模臨床試験で、小児期からのβ遮断薬とアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)内服に大動脈基部拡張予防効果のあることが示され、標準的治療として定着してきた。また、外科的治療についても、致死的な大動脈解離の発症を防ぐための予防的大動脈基部人工血管置換手術も、手術手技の進歩により自己弁温存手術が標準的治療として定着しつつあり、術後のQOLも改善している。5 主たる診療科循環器内科、小児科、臨床遺伝科、眼科、心臓血管外科、整形外科※全身性疾患であり、各科専門医によるチーム診療が望ましい。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センタ- マルファン症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センタ- マルファン症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviewsJapan  マルファン症候群(医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviews “Marfan syndrome”(医療従事者向けのまとまった疾患情報:英語のみ)National Library of Medicine Genetics Home Reference(医療従事者向けのまとまった情報:英語のみ)National Marfan Foundation (NMF)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:英語のみ)患者会情報マルファンネットワークジャパン(患者とその家族および支援者の会)日本マルファン協会(患者とその家族および支援者の会)1)Loeys BL, et al. J Med Genet. 2010;47:476-485.2)Neptune ER, et al. Nat Genet. 2003;33:407-411.3)Lacro RV, et al. N Engl J Med. 2014;371:2061-2071.公開履歴初回2018年11月27日

9.

鼠径ヘルニア手術、代替低価格メッシュでもアウトカム同等/NEJM

 鼠径ヘルニアの修復に使用する合成メッシュについて、低価格の滅菌した蚊帳用メッシュを用いても、高額な市販軽量合成メッシュを使用した場合と術後1年の再発率や術後合併症リスクは、いずれも同等であることが明らかにされた。スウェーデン・ウメオ大学のJenny Lofgren氏らが、302例の男性患者を対象に行った試験で明らかにした。低・中所得国では、市販軽量メッシュは高価なため使えない患者も多く、滅菌した蚊帳用のメッシュが代替品として使われているという。ただしこれまでその治療アウトカムについて厳格な試験は行われていなかった。NEJM誌2016年1月14日号掲載の報告。術後1年のヘルニア再発と術後合併症リスクを比較 研究グループは、ウガンダ東部で、初発片側還納性鼠径ヘルニアの成人男性患者302例を対象に、二重盲検無作為化比較試験を行い、低価格メッシュと市販メッシュによる修復の治療アウトカムを比較した。両メッシュともに、軽量メッシュだった。 被験者は18歳以上で、手術は熟練の外科医4人がそれぞれ行った。 主要評価項目は、術後1年のヘルニア再発と術後合併症だった。ヘルニア再発率、低価格群で0.7%、市販メッシュ群で0%と同等 被験者の追跡率は、術後2週で97.3%、術後1年で95.6%だった。 ヘルニア再発率は、低価格メッシュ群0.7%(1例)、市販メッシュ群0%(0例)と、両群で有意差はなかった(絶対リスク差:0.7ポイント、95%信頼区間:-1.2~2.6、p=1.0)。 また、術後合併症の発症率も、低価格メッシュ群30.8%(44例)、市販メッシュ群は29.7%(44例)と同等だった(絶対リスク差:1.0ポイント、同:-9.5~11.6、p=1.0)。

10.

乳幼児期の全身麻酔、2歳時の神経発達への影響は/Lancet

 生後60週未満の乳幼児に対するセボフルランによる全身麻酔は、意識下局所麻酔と比べ、2歳時点における神経発達アウトカムへの影響は認められなかったことが報告された。オーストラリア・Murdoch Childrens Research InstituteのAndrew J. Davidson氏らが行った、無作為化比較試験の副次評価項目で示された。Lancet誌オンライン版2015年10月23日号掲載の報告より。オーストラリア、イタリアなど7ヵ国28病院で試験 研究グループは、2007年2月9日~13年1月31日にかけて、オーストラリア、イタリア、米国など7ヵ国28ヵ所の病院を通じて、生後60週未満で、胎在週数26週を超えてから生まれ、鼠径ヘルニア縫合術を受けた幼児722例を対象に試験を行った。 無作為に2群に分け、一方には意識下局所麻酔を(363例)、もう一方にはセボフルランによる全身麻酔を行った(359例)。 主要評価項目は、5歳時点でのウェクスラー就学前・小学生知能評価尺度第3版(WPPSI-III)スコアだった。今回の報告では、副次的評価項目の2歳時点でのベイリー乳幼児発達尺度第3版の認知機能複合スコアが発表された。全身麻酔時間中央値は54分 被験者のうちアウトカムが得られたのは、局所麻酔群が238例、全身麻酔群が294例だった。 2歳時点でのベイリー乳幼児発達尺度認知機能複合スコア平均値は、局所麻酔群が98.6(SD:14.2)、全身麻酔群が98.2(同:14.7)で、両群の差は0.169(95%信頼区間:-2.30~2.64)と同等だった。 なお、全身麻酔群の麻酔時間中央値は54分だった。

11.

常染色体優性多発性嚢胞腎〔ADPKD : autosomal dominant polycystic kidney disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義PKD1またはPKD2遺伝子の変異により、両側の腎臓に多数の嚢胞が発生・増大する疾患。■ 診断基準ADPKD診断基準(厚生労働省進行性腎障害調査研究班「常染色体優性多発性嚢胞腎ガイドライン(第2版)」)1)家族内発生が確認されている場合(1)超音波断層像で両腎に各々3個以上確認されているもの(2)CT、MRIでは、両腎に嚢胞が各々5個以上確認されているもの2)家族内発生が確認されていない場合(1)15歳以下では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々3個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合(2)16歳以上では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々5個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合※除外すべき疾患多発性単純性腎嚢胞(multiple simple renal cyst)腎尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis)多嚢胞腎(multicystic kidney 〔多嚢胞性異形成腎 multicystic dysplastic kidney〕)多房性腎嚢胞(multilocular cysts of the kidney)髄質嚢胞性疾患(medullary cystic disease of the kidney〔若年性ネフロン癆 juvenile nephronophthisis〕)多嚢胞化萎縮腎(後天性嚢胞性腎疾患)(acquired cystic disease of the kidney)常染色体劣性多発性嚢胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease)【Ravineの診断基準】(表)(家族歴がある場合の画像診断基準)画像を拡大する■ 疫学一般人口中に占める多発性嚢胞腎患者数(有病率)は、病院受診者数を基に調査した結果では一般人口3,000~7,000人に1人である。病院患者数に占める多発性嚢胞腎患者数は3,500~5,000人に1人、病院での剖検結果では被剖検患者約400人に1人である。メイヨー病院があるオルムステッド郡(米国)で1年間に新たに診断された患者数(発症率)は、一般人口1,000~1,250人あたり1人である。調査方法、調査年代、調査場所などにより、結果に差異が認められる。今後、治療薬が利用可能になると受療する患者数が増加し、有病率も増える可能性がある。■ 病因(図を参照)画像を拡大するPKD1またはPKD2遺伝子の変異による。PKD1は16p13.3、PKD2は4q21-23に位置する。PKD1とPKD2の遺伝子産物 polycystin 1(PC 1)とPC2はtransient receptor potential channel for polycystin(TRPP)subfamilyで、Caチャネルである。PC1とPC2は腎臓、肝臓、膵臓、乳腺の管上皮細胞、平滑筋と血管内皮細胞、脳の星状細胞に存在する。PCは腎臓上皮細胞、血管内皮細胞、胆管細胞などの繊毛に存在する。尿細管腔の内側に存在する繊毛は、尿細管液の流れに反応して屈曲する。屈曲によるshear stressはPCや繊毛機能に関係する蛋白を活性化し、細胞外と小胞体からCaイオンを細胞質内へ流入させ、細胞質内Ca濃度を高める。繊毛機能に関係する蛋白をコードする遺伝子異常が嚢胞性腎疾患をもたらすことが明らかとなり、繊毛疾患(ciliopathy)として概括されている。PKD細胞ではPC機能異常により、尿細管上皮細胞のCa濃度は低値である。細胞内Ca濃度が低下すると、cyclicAMP(cAMP)分解酵素(PDE)活性が低下し、またcAMPを産生するadenyl cyclase(AC)活性が高まり、細胞内cAMP濃度が高まる。その結果、cAMP依存性protein kinase A(PKA)機能が高まり、種々のシグナル経路(EGF/EGFR、Wnt、Raf/MEK/ERK、JAK/STAT、mTORなど)が活性化され細胞増殖が起きる。繊毛は細胞極性(尿細管構造形成)に関与しており、細胞極性機能を失った細胞増殖が起きる結果、嚢胞が形成される。また、PKAはcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)を刺激し、嚢胞内へのCl分泌を高める。腎尿細管(集合管)に存在するバソプレシン(AVP)V2受容体は、AVPの作用を受け、ACおよびcAMP、PKAを介して水透過性を高める。この過程でcAMPは嚢胞を増大させる。ソマトスタチンはACを抑制するので、治療薬として期待される。■ 症状多くの患者は30~40代までは無症状で経過する。1)腎機能低下腎機能の低下と総腎容積は相関し、総腎容積が3,000mLを超えると腎不全になる確率が高い。しかし、3,000mLを超えない場合でも腎不全になる場合もある。腎不全による症状(疲労、貧血、食欲低下、皮膚搔痒など)は、他疾患による腎不全症状と同じである。透析導入平均年齢は55歳位であったが、最近では60歳近くになっている。患者全体では70歳で約50%が終末期腎不全になる。2)高血圧血管内皮機能の異常により高血圧を来すと考えられ、腎機能が低下する以前から発症する。60~80%の患者が高血圧に罹患している。高血圧になっている患者では腎臓腫大と腎機能低下の進行が速い。3)圧迫症状腎臓や肝臓の嚢胞(60~80%の患者に嚢胞肝が併存)が腫大するにつれて、腹部膨満感、少し食べるとお腹が張る、前屈が困難になる、背腰部痛、腹部痛などの圧迫症状が出現する。腎嚢胞は平均年5~6%の割合で増大するので、加齢とともに症状は進行する。4)脳血管障害脳出血、くも膜下出血、脳梗塞の発症頻度が高い。脳出血の原因として高血圧がある。脳動脈瘤の発生頻度(約8%)は一般より高い。5)血尿・尿路感染症血管の構築異常により血管が裂け、嚢胞内に出血し、疼痛を引き起こす。出血巣と尿路が交通すると血尿になる。また、変形した尿路のために尿路感染症を起こしやすい。嚢胞感染が起きると抗菌薬が嚢胞内に移行しにくいので難治性になることがある。6)その他尿路結石、鼠径ヘルニア、大腸憩室、心臓弁膜機能異常などの頻度が高い。■ 分類遺伝子の変異部位に応じて、PKD1とPKD2に分かれる。約85%はPKD1である。PKD1の方が症状は強く、腎不全になる平均年齢も若い。■ 予後生命予後に関するデータはない。腎機能に関しては症状の項参照。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断基準に準ずる。家族歴と画像検査(超音波、CT、MRIなど)で比較的正確に診断できるが、中には診断に迷う症例もあり、遺伝子診断が有用な場合もある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)トルバプタン(商品名: サムスカ)による治療AVP V2受容体拮抗薬トルバプタンは、ナトリウム利尿をあまり伴わない水利尿作用があり、低ナトリウム血症、体液貯留の治療薬として開発され、わが国では、2010年に心不全による体液貯留、2013年に肝硬変による体液貯留への治療薬として承認を受けている。2003年にモザバプタン(トルバプタンの前段階の薬)が、多発性嚢胞腎モデル動物に有効であると発表され、2007年から多発性嚢胞腎患者1,445名を対象として、トルバプタンの有効性と安全性を検討する国際共同治験が行われた。腎臓容積増大速度を約50%、腎機能低下速度を約30%緩和する結果が2012年秋に発表され、わが国において2014年3月に多発性嚢胞腎治療薬として承認され、臨床使用が始まっている。わが国での投薬適応基準は、総腎容積≧750mL、総腎容積増大速度≧年5%、eGFR≧15 mL/min/1.73m2などである。服用開始時には入院が必要で、その後月1回の血液検査で肝機能(5%程度に肝機能障害が発生する)、血清Na値(飲水不足で高Na血症になる)、尿酸値(上昇する)などのモニターが必要である。また、トルバプタンの処方医はWeb講習を受講し、登録する必要がある。2)高血圧の治療ARBが第1選択薬として推奨される。標準的降圧目標(120/70~130/80)とより低い降圧目標(95/60~110/75)との2群を5年間追跡したところ、より低い降圧群での総腎容積増大速度が低かったことが報告されているので、可能なら収縮期血圧を110未満にコントロールすることが望ましい。3)Na摂取制限Na摂取と腎嚢胞増大速度は相関するので、Na摂取は制限したほうがよい。4)飲水動物実験では飲水によって嚢胞の増大抑制効果が認められているが、人で飲水を奨励した結果では、逆に嚢胞増大速度とeGFR低下速度が増大したことが報告されている。水道水では、消毒用塩素の副産物ジクロロ酢酸に嚢胞増大作用があることが報告されている。多発性嚢胞腎患者では、腎機能が低下するにしたがい血清浸透圧とAVPが高くなることが報告されている。人における飲水効果には疑問があるが、脱水によるAVP上昇は避けるべきである。5)カフェインや抗うつ薬カフェインはPDEを抑制しcAMP濃度を上昇させ、嚢胞増大を促進する可能性がある。SSRI、三環系抗うつ薬などはAVPの放出を促進するため、多発性嚢胞腎では嚢胞増大を促進することが考えられる。6)開発中の薬剤(1)トルバプタン〔AVP V2受容体阻害薬〕は、大規模な臨床試験で腎嚢胞増大と腎機能悪化を抑制する効果が示され1)、わが国では2014年3月、カナダ、ヨーロッパでは2015年3月に認可が下りている。(2)ソマトスタチンアナログは小規模な臨床試験で肝臓と腎臓の嚢胞増大に有効と報告されているが、当局への申請を目的とする大規模な臨床試験は行われていない。(3)mTOR阻害薬であるシロリムスとエベロリムスの臨床試験が行われたが、副作用が強く臨床効果が認められなかった。7)腎動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)腎動脈を塞栓し、腎臓を縮小させることで症状の緩和をもたらす。すでに透析が導入され、尿量が1日500mL以下の患者が対象となる。8)腹腔鏡下腎嚢胞開創術、腎摘除術抗菌薬抵抗性または反復感染の原因になっている嚢胞が特定される場合、あるいは数個の嚢胞が特別に大きくなり圧迫症状が強い場合、腹腔鏡下に特定の嚢胞を開窓する手術が適応となる。出血が強い場合や、反復する嚢胞感染がある場合、患者に腎機能の予後をよく説明したうえで同意を前提として腎摘除術(腹腔鏡下腎摘除術も行われる)が選択肢となる。4 今後の展望1)最近の研究では、総腎容積増大速度が5%/年以下でも、腎不全に進行することが示されている。トルバプタン適応基準となった総腎容積増大速度≧5%/年の基準では、これら腎不全に進行する患者を除外することになる。2)トルバプタンの作用として利尿作用があるが、利尿作用を少なくする薬剤が望まれる。3)多発性嚢胞腎の進展機序は、cAMP-PKAを介する経路のみではないので、cAMP-PKA非依存性経路を抑制する薬剤開発が望まれる。4)肝臓嚢胞に有効なソマトスタチンアナログの臨床開発が望まれる。5 主たる診療科腎臓内科、泌尿器科、脳動脈瘤があれば脳外科(多発性嚢胞腎に関心の高い医師の存在)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報多発性嚢胞腎啓発ウエブサイト(杏林大学多発性嚢胞腎研究講座)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 多発性嚢胞腎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)常染色体多発性嚢胞腎(順天堂大学医学部泌尿器科)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ADPKD.JP (~多発性嚢胞腎についてよくわかるサイト~/大塚製薬株式会社)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報PKDの会(患者と患者家族の会)1)Torres VE,et al.N Engl J Med.2012;367:2407-2418.2)東原英二 編著.多発性嚢胞腎~進化する治療最前線~.医薬ジャーナル;2015.3)Irazabal MV, et al. J Am Soc Nephrol.2015;26:160-172.公開履歴初回2013年04月18日更新2015年10月27日

12.

術後TAPの単回投与+持続注入追加の効果は?

 術後鎮痛に腹横筋膜面(TAP)ブロックの単回投与が用いられているが、持続投与の有用性を検討した比較試験はこれまでなかった。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のJustin W. Heil氏らは、腹部のヘルニア患者を対象に小規模な無作為化三重盲検プラセボ対照比較試験を行い、ロピバカイン(商品名:アナペイン)によるTAPブロックとして、術前単回注入にさらに術後持続注入を追加して有用性を検討した。その結果、効果がなかったことが示された。ただし著者は、「検出力が不足しているためさらなる研究が必要」とまとめている。Pain Medicine誌2014年11月号(オンライン版2014年8月19日号)の掲載報告。 本研究に登録されたのは、片側鼠径ヘルニア患者19例、臍ヘルニア患者1例、計20例であった。 術前、ロピバカイン0.5%(20mL)単回注入によるTAPを行ってカテーテルを留置。2群に無作為化した後、手術を行い、携帯用注入ポンプを用いてロピバカイン0.2%または生理食塩液を術後2日目の夜まで持続注入した。 疼痛(数値的評価スケールによる:0~10)ならびに経口オピオイドの使用などを術後0~3日目に評価し、術後day1の体動時痛を主要評価項目とした。 主な結果は以下のとおり。・術後1日目の疼痛スコア(mean±SD)は、ロピバカイン投与群(10例)3.0±2.6、プラセボ群(10例)2.8±2.7であった(95%信頼区間:-2.9~3.4、p=0.86)。・副次的評価項目も、両群間で有意差はなかった。

13.

Dr.みやざきの鼠径ヘルニア手術テクニックコレクション

第1回 鼠径部ヘルニアの診断と分類 第2回 鼠径部の臨床解剖 第3回 手術手技の種類と術式選択の基準 第4回 鼠径部ヘルニア手術の術前・術後管理 第5回 鼠径部ヘルニア手術の麻酔法 第6回 手術手技の実際(1)高位結紮術第7回 手術手技の実際(2)Mesh-plug法第8回 手術手技の実際(3)Lichtenstein法第9回 手術手技の実際(4)UHS法第10回 手術手技の実際(5)Direct Kugel Patch法第11回 手術手技の実際(6)大腿ヘルニア手術第12回 手術手技の実際(7)女性の鼠径ヘルニア手術 手術の中で最も件数の多い手術の一つである鼠径ヘルニア修復術。「研修医やレジデントなどが行う初歩的な手術」と思っていませんか?しかし、侮るなかれ!鼠径部は解剖が複雑、手術手技は多種多様と、ヘルニア修復術を完全に理解するのは実は非常に難しいのです!そこで、日本でも有数の鼠径部ヘルニアの手術件数を誇るDr.みやざきこと宮崎恭介氏が講師として登場!鼠径ヘルニア症例数はなんと10年で4300例!この経験に裏打ちされた手術テクニックを余すことなくお見せいたします。臨床解剖、麻酔、術後管理、そして様々な手術手技-高位結紮術、プラグ法、DK法、UHS法、リヒテンシュタイン法、そして大腿ヘルニア、女性の鼠径ヘルニアなどなど、知りたかった、見たかった内容が網羅されています。こんなにたくさんの症例を、多様な手技を、見ることができるものはほかにはありません。しかも手術映像・画像は術者目線!明日からの手術が大きく変わります!第1回 鼠径部ヘルニアの診断と分類 鼠径ヘルニア修復術を理解する上でまず知っておかなければならないことは、鼠径部の解剖、ヘルニアの種類と分類、そして診断方法です。第1回では、鼠径ヘルニアの分類と、その診断方法について解説します。 診断の際は必ず立位で行うこと、そして大腿ヘルニアを見逃さないこと、この2つをおさえておきましょう。第2回 鼠径部の臨床解剖 鼠径ヘルニア手術を行うにあたっては、鼠径部の解剖の理解が重要なのは当然ですが、完全に理解することは難しいと言われています。 鼠径部の解剖をシェーマや写真などで理解したとしても、実際の手術現場では役に立たない事を経験した方も多いでしょう。それは鼠径部の構造が立体的であること、連続する組織(膜)でも部位によって名称が異なる場合があるからです。 そこで、今回は、鼠径部の臨床解剖ーすなわち術者として鼠径部を見た際の解剖をしっかりと理解していきます。最初のポイントは皮膚切開から。皮膚切開ひとつで、こんなにも視野が違います!第3回 手術手技の種類と術式選択の基準 鼠径ヘルニア修復術の手技は、多種多様。 ヘルニアの位置や大きさ、性別や年齢、既往など、術式を決めるための要素はたくさんあるなかで、患者さんにとって、そして、術者にとってよりよい手術手技は一体何か?様々な手術手技を行うヘルニアのスペシャリストはこうやって術式を決めている! 第4回 鼠径部ヘルニア手術の術前・術後管理鼠径ヘルニア手術は嵌頓例以外は手術の緊急性はありません。無理に患者さんへ手術を薦めず、患者さん自信が、手術を決意するまで待つことが大切です。さて、いざ手術となった場合、鼠径ヘルニア修復術の術前と術後の管理はどうすればよいのでしょうか?実は、鼠径ヘルニア手術の術前には特別な管理はほとんど不要です。Dr.みやざき曰く「抗凝固薬服用中、抗血小板療法中の患者でさえも、内服継続のままでも十分に手術可能。」はてさて本当に可能かどうか、どうすれば可能なのか、みていきましょう。また、術後では、「出血」「漿液腫」「SSI」「再発」「慢性疼痛」などが合併症として考えられますが、これらは起こった場合にどう対応するではなくて、「起こさない」ことが重要です。そのために何をするべきかを知り、実践してみましょう。第5回 鼠径部ヘルニア手術の麻酔法 鼠径ヘルニア修復術の麻酔は、日帰りの場合と、入院の場合と異なります。麻酔の3要素は鎮静(意識の消失)、鎮痛(痛みの除去)、筋弛緩(体動の防止)。この3つすべてを、麻酔するのが、麻酔科医による麻酔、すなわち外科医にとって最も手術を行いやすい麻酔です。入院手術の場合は、この麻酔方法で行います。しかし、日帰り手術の際は、筋弛緩は必要ありませし、意識があってもかまいません。鎮痛と鎮静を患者さんに与える手術侵襲を少しだけ上回る麻酔をかけてあげればよいのです。静脈麻酔、局所麻酔、硬膜外麻酔、気管挿管などの様々な麻酔を組み合わせ、術式、患者さんの年齢、BMI、嵌頓の有無等に合わせた麻酔方法を行っています。この回ではそれぞれの詳しい方法を解説します。第6回 手術手技の実際(1) 高位結紮術さて、いよいよ手術手技の実際に入っていきます。最初は高位結紮術です。高位結紮術は、内鼠径輪のみを閉鎖するというシンプルな術式ですが、他の手術手技の基本となる手技です、ここでしっかりと習得しておきましょう。高位結紮術は、若年男性や若年女性のⅠ-1型間接鼠径ヘルニアが適応となります。術者目線の手術映像を見ながら、実際の手術手技を体験し、習得してください。第7回 手術手技の実際(2) Mesh-plug法手術手技の実際:第2回はMesh-plug法です。Mesh-plug法はメッシュプラグでヘルニア門を閉鎖し、オンレイパッチで鼠径管後壁を補強するという術式です。鼠径ヘルニア修復術の中で日本で一番行われている手術法で、シンプルな術式ですが、一歩間違うと術後の疼痛や再発などを引き起こすことがあります。これらの合併症をいかに防止するかは、すべて手術手技にかかっています。そのコツをヘルニアスペシャリストのテクニックから学んでください。第8回 手術手技の実際(3) Lichtenstein法手術手技の実際:第3回はLichtenstein法です。リヒテンシュタイン法はヘルニア門を高位結紮術で閉鎖し、鼠径管後壁をメッシュで補強する術式です。日本においては、それほど多くの症例が行われているわけではありませんが、EHS(the European Hernia Society)の鼠径ヘルニアの診療ガイドラインではLichtenstein法が推奨されているように欧米では第一選択の術式となっています。Dr.みやざきは、腹膜前腔の剥離操作がないことから下腹部手術既往のある間接鼠径ヘルニアを適応としています。メッシュ固定による疼痛を予防するために縫合固定の必要のないメッシュを用いることも1つのポイントです。第9回 手術手技の実際(4) UHS法手術手技の実際:第4回はUHS法です。UHS法は、UHS(Ultlapro® Hernia System )というメッシュを使用して行う術式で、インレイメッシュ法、プラグ法、、リヒテンシュタイン法を1つにした欲張りな術式です。コネクターでヘルニア門を閉鎖し、アンダーレイパッチ、オンレイパッチで鼠径管後壁を挟み込むように補強します。Ⅰ-3型巨大陰嚢内ヘルニア以外の鼠径ヘルニアすべてが適応となります。メッシュ固定による疼痛を予防するためにオンレイメッシュは縫合固定しないこともポイントです。第10回 手術手技の実際(5) Direct Kugel Patch法手術手技の実際:第5回はDirect Kugel Patch法です。Direct Kugel Patch法はインレイメッシュ法の1つで、形状記憶リングにより、腹膜前腔への展開が容易な術式です。ヘルニア門の閉鎖をダイレクトクーゲル®パッチで行い、オンレイパッチは、鼠径管後壁の補強としてオプションとして使用します。ダイレクトクーゲル®パッチで筋恥骨孔すべてを覆うことができ、すべての鼠径部ヘルニアに適応しています。今回は、間接鼠径ヘルニア、直接鼠径ヘルニアともに実際の手術症例を術者目線の映像で提示します。第11回 手術手技の実際(6) 大腿ヘルニア手術大腿ヘルニア手術を解説します。大腿ヘルニアの術式は大きく、2つに分けることができます。1つは鼠径法、そしてもう1つが大腿法です。鼠径法は、鼠径靭帯の上からアプローチし、筋恥骨孔すべてを覆う方法で、大腿法は鼠径靭帯の下からアプローチし、大腿輪のみ閉鎖する方法となります。男性の大腿ヘルニアは症例としては稀ですが、他の鼠径ヘルニアを合併することが多いため鼠径法を適応とし、女性の大腿ヘルニアは、鼠径ヘルニアの合併がほとんどないため、大腿輪のみの閉鎖を行う大腿法を適応としています。本番組では、いずれの方法も術者目線の映像でご覧いただけます。第12回 手術手技の実際(7) 女性の鼠径ヘルニア手術鼠径ヘルニア手術テクニックコレクションの最終回は「女性の鼠径ヘルニア手術」です。女性の鼠径ヘルニアは、男性に比べると症例が少ないため、マニュアルや手順書などでも取り上げられる機会が非常に少ないようです。そのため、学習したり、修得したりする機会が少なく、重要なポイントを見落としてしまうことも。本番組では、見落とされがちなポイントを実際の症例に照らしあわせて解説し、その後、手術映像で手術手技を学んでいただきます。女性の鼠径部ヘルニアを診る場合に気をつけなければならないポイントは2つ。鼠径部ヘルニアの発生頻度と若年女性の鼠径ヘルニアです。そして、そのKey wordは大腿ヘルニアとNuck管嚢腫です。

14.

ムコ多糖症VI型〔MPS VI : Mucopolysaccharidosis VI〕

ムコ多糖症VI型のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義ムコ多糖症(MPS: Mucopolysaccharidosis)は、細胞内小器官のリソゾーム内でムコ多糖の一種であるグリコサミノグリカン(GAG)を加水分解する酵素の異常により、リソゾーム内にGAGが蓄積し、種々の臨床症状を引き起こす先天代謝異常症である。ムコ多糖症Ⅵ型(MPS VI型)は、1963年にフランス人のMaroteaux PとLamy M.E.J.により報告されマロトー・ラミー症候群と呼ばれていたが、1987年Gitzelmannらにより欠損酵素がNアセチルガラクトーサミン-4-スルファターゼ(アリルスルファターゼB)であることが明らかとなり、さらに1990年にはSchuchmanらにより本酵素がクローニングされ、遺伝子配列が明らかとなった。責任酵素の遺伝子座は5q13.3で遺伝形式は常染色体劣性遺伝である。MPS VI型は、リソゾーム酵素の1つであるアリルスルファターゼBの異常によりリソゾーム内にGAGの一種であるデルマタン硫酸が異常に蓄積するため、慢性で進行性の多様な臨床症状を呈する。■ 疫学MPS VI型の頻度は、非常にまれであり、欧米では32万人に1人で、わが国では10人程度とされる。■ 病因リソゾーム酵素の1つである、アリルスルファターゼBをコードする遺伝子の異常に基づく遺伝性の疾患で、この酵素の欠損はリソゾーム内にGAGの一種であるデルマタン硫酸が異常に蓄積するため、慢性で進行性の多様な臨床症状を呈する。デルマタン硫酸の蓄積は骨の変形に関与するためI型と同様の身体所見を認めるが、知能は正常である。■ 症状リソゾームはほとんどすべての細胞に存在するため障害も多臓器に及び、MPS I型と類似した症状を呈する。このため重症型ではハーラー症候群に、また軽症型ではシャイエ症候群に類似した症状を示し、骨変形や角膜混濁を認めるが、精神発達は正常であるのが特徴である。出生直後からガルゴイ様と呼ばれる特異顔貌、水頭症や胸骨などの形態異常が認められるが、乳児期から症状が現れて急速に進行する重症型のMPS VI-A型(急速進行型)と、緩徐に進行する軽症型のMPS VI-B型(緩徐進行型)に分類される。疾患の進行につれて関節拘縮に伴う運動制限、強い骨変形、角膜混濁や視力障害、滲出性中耳炎や難聴、肝脾腫、臍・鼠径ヘルニア、気道狭窄に伴う呼吸困難や睡眠時無呼吸、心臓弁膜症、手根管症候群などの神経症状、低身長といった症状を来す(表)。重症型では5〜7歳で成長が止まるため著しい低身長となり、20歳前後で心不全や肺炎などに伴う呼吸不全で死亡することが多い。軽症型でも手指の運動制限や手根管症候群といった症状が認められるが、症状が現れずに成人することもある。しかし、末期には顕著な消耗性の症状を来すことが多い。画像を拡大する■ 予後無治療の場合、重症型では小児期に死亡することが多いが、軽症例では40~50歳まで生存可能である。今後、治療法の進歩により生命予後は、かなり改善されることが予測される。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断ヘルニアや蒙古斑のほか、粗野な顔貌や関節拘縮を認めた場合、全身骨のX線撮影、頭部CT、眼科、耳鼻科的処置を行う。1)胸部X線正面画像:肋骨のオール状変形が認められる。2)腰部X線側面画像:上部腰椎の卵状変形、下部腰椎の椎体の下部が前方に突出する所見が認められる。3)手のX線画像:指の骨の弾丸状変形が認められる。4)頭部CT:水頭症5)眼科受診:角膜混濁や視力障害を認める。6)耳鼻科受診:滲出性中耳炎■ 生化学診断:尿中ムコ多糖分析1)尿中GAG定量値が高値である。2)GAG分画:デルマタン硫酸の増加が認められる。■ 酵素診断:アリルスルファターゼB活性の測定白血球、培養皮膚線維芽細胞のアリルスルファターゼB活性の低下を認める。■ 遺伝子診断確定診断に必須の検査ではないが、保因者診断や出生前診断には有用である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 対症療法1)中耳炎・難聴:鼓膜チューブ挿入や補聴器など耳鼻科的処置を行う。2)角膜混濁・視力障害:角膜移植を行う。3)骨変形:整形外科的手術を行う。4)睡眠時無呼吸:耳鼻咽喉科的手術や経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行う。5)心弁膜症:弁置換術など心臓外科的手術を行う。6)水頭症:シャント術など脳外科的手術を行う。7)手根管症候群:手根管修復術を行う。■ 造血幹細胞移植1)移植によるリスクがかなり軽減しているため、最も勧められる治療法である。2)肝脾腫の縮小、関節拘縮の軽度改善、心弁膜症の進行抑制、粘膜の肥厚の改善などが認められるが、骨変形や精神発達の退行を防ぐことは難しい。■ 酵素補充療法1)人工的に合成されたNアセチルガラクトーサミン-4-スルファターゼ[ガルスルファーゼ (商品名:ナグラザイム)]を毎週点滴静注により補充する治療法である。2)診断後すぐに治療が開始できるため、造血幹細胞移植を施行するまでの繋ぎの治療として有効である。3)血流が豊富な組織:粘膜の肥厚の改善による呼吸状態の改善、肝臓や脾臓の縮小、皮膚・関節拘縮の軽減などの効果が認められる。4)血流が豊富でない組織:角膜・骨の改善は困難である。5)抗体産生による免疫反応としてアレルギー症状が発現する可能性があるが適切な処置により副反応はコントロール可能である。4 今後の展望リソゾーム酵素は、作られた細胞からいったん分泌され血流により全身の臓器に運ばれた後、各臓器組織に取り込まれリソゾームに移行し、作用する性質がある。このため、移植された細胞から分泌された正常の酵素が、あるいは人工的に作られた酵素を点滴で血液中に注入すると、各臓器組織に取り込まれて症状の改善が認められる。しかし、この治療法は、各臓器組織における血流に依存するため、血流が豊富ではない骨や脳血液関門の存在する脳などの重要な臓器での症状の改善が認められないという問題がある。今後、これらの臓器組織への移行を改善した酵素補充療法の開発が期待される。5 主たる診療科先天代謝異常症であることのため主たる診療科は小児科であるが、全身の臓器に異常が生じるため該当するいくつかの診療科と並行して受診と治療が必要である。また、20歳を超えた成人症例には、小児科の入院は難しいため、必要となる診療科に入院し、小児科が共同で観察することが重要である。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患克服事業:ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本ムコ多糖症 親の会(患者とその家族の会)ムコ多糖症支援ネットワーク(患者とその家族の会)1)Maroteaux P, et al. Presse Med. 1963; 71: 1849-1852.2)遠藤 文夫 総編集. 奥山虎之ほか専門編集. 先天代謝異常ハンドブック. 中山書店; 2013. p.198-199.3)小須賀 基通ほか. ムコ多糖症. In: 小児内科・小児外科編集委員会共編. 小児疾患の診断治療基準(小児内科 増刊. 2012; 44). 東京医学社; 2012. p.168-169.

15.

鼠径ヘルニアの手術中に心肺停止を来して死亡したケース

小児科最終判決判例時報 1656号117-129頁概要両側鼠径ヘルニアと診断された1歳11ヵ月の男児。きちんとした術前検査が行われないまま、GOF全身麻酔下の両側ヘルニア手術が行われた。ところが、手術開始から48分後に呼吸停止・心拍停止状態となり、ただちに手術を中止して救急蘇生が行われたが、結局心肺は再開せずに死亡確認となった。裁判では、術前検査を行わずに手術に踏み切った無謀さと、記録の改竄が争点となった。詳細な経過患者情報1歳11ヵ月の男児経過1985年7月15日両側鼠径部の硬結を主訴に外科開業医を受診し、鼠径ヘルニアと診断された1歳11ヵ月の男児。その後硬結の増大がみられたため、根治手術を勧められた。1986年4月12日09:20母親に付き添われて入院。術前検査(心電図、一般採血など)は患者が泣いて嫌がったため省略した。13:00前投薬として硫酸アトロピンを筋注。13:30マスクによるGOF麻酔(笑気、酸素、フローセン)開始。この時看護師はみぞおちあたりが呼吸するたびに陥没するような状態になるのを認めた。麻酔担当医は心電図モニターで脈拍数を確認し、左前胸部に絆創膏で固定した聴診器で心音を聞き、マスクを保持している手で頸動脈の脈拍をはかることにより麻酔管理を行った。14:00まず右側の鼠径ヘルニア手術を開始、この時の脈拍104。ヘルニア嚢の壁は肥厚が著しく、周囲と強固に癒着していた。メス操作と同時に患者の体動がみられたため、フローセン濃度を2%→2.5%に変更(その後血圧がやや低下気味となったため、フローセン濃度を2%に下げた)。14:14脈拍180まで上昇。14:20脈拍120まで低下。14:41脈拍80まで低下。14:0014:0214:0314:14脈拍10412516018014:2014:3014:4114:48脈拍1209680014:48右側の鼠径ヘルニア手術完了後、左側の手術を開始してまもなく、麻酔医は無呼吸・心停止が生じたことに気付き、手術が中止された。ただちに気管内挿管、酸素増量(4L)心臓マッサージ、アドレナリン(商品名:ボスミン)、炭酸水素ナトリウム(同:メイロン)、塩化カルシウム、ヒドロコルチゾン(同:ソル・コーテフ)などを投与したところ、一時的に心室細動がみられた(当時この病院には除細動器は配備されていなかった)が、結局蘇生することはできず、死亡確認となった。当事者の主張患者側(原告)の主張1.心停止の原因舌根沈下を原因とする気道狭窄による換気不全から酸欠状態が生じ、さらに麻酔薬の過剰投与が加わって呼吸抑制を助長させ、心筋機能の抑制が相まって心停止となった2.問診および術前検査義務全身麻酔を施行するに当たっては、患者の問診、バイタルサイン、心電図検査、電解質などの血液検査を行うべきであるのに、体温と体重を計ったのみで問診や術前検査を一切行わなかった3.救命措置心停止の危険がある麻酔手術を実施する医療施設でありながら除細動器を備えていないのは、明らかな過失である4.記録の改竄麻酔記録、看護記録、手術記録などは、手術の際に作成されたものではなく、それとはまったく別のものに書き換えられたものである病院側(被告)の主張1.心停止の原因何らかの心機能異常があった可能性はあるが、解剖していないため解明不可能である。担当医師は何度も解剖を勧めたが家族に拒否されたため、突発的変化の原因の解明ができなかった2.問診および術前検査義務外来で問診を含めた診察をして、理学的所見や全身状態から全身麻酔による手術について問題のないことを確認していた。念のため術前から心電図検査をしようとしたが、患者が泣いて興奮し協力が得られなかったため実施できなかった。電解質検査は当日では間に合わないので行わなかったが、それまでの診察の間に検査を実施しなければならないと思わせる所見や経過はなかった3.救命措置除細動器が配備されていなかったためにカウンターショックの蘇生術を行えなかったが、当院程度の診療所に除細動器の配備を求めるのは無理である4.記録の改竄麻酔記録、看護記録、手術記録などが改竄された事実はない。看護記録、麻酔記録とでは脈拍や血圧の数値に食い違いが多々あるが、そのような食い違いがそのままになっているということは記録に作為が加えられていないことを示すものであり、責任を逃れる目的で改竄が行われたというのであればそのような食い違いが一致するように改竄されるはずである裁判所の判断1. 心停止の原因心停止の原因は、麻酔薬の過剰投与による低酸素症、ないし換気不全による不整脈による可能性が高い。そして、術中の脈拍が80にまで低下した14:41頃までには、循環系の異常を疑いそのまま放置すれば心停止に至ることもあり得ることを予見するべきであった。2. 問診および術前検査義務本件のような幼児に、手術を行う際に通常行われるべき一般検査、心臓、肺そのほかの検査も行わないで手術を施すというのは、無謀な感を否めない。採血は泣いて嫌がる状態にあって危険だとするが、手術日前にこれらの諸検査を試みた形跡はない。3. 救命措置全身麻酔下の手術を行う診療所に除細動器を配備することのぜひについては、裁判所の判断を提示せず。4. 記録の改竄当時勤務していた元看護師の証言などから判断して、看護記録は担当医師の主導により手術の際に作成されていた看護記録とは別に作成されたものである。麻酔記録もまた、手術の際に作成されたものとは別に作成されたものと疑われる。原告側合計6,038万円の請求に対し、5,907万円の判決考察本件の最大の問題点は、鼠径ヘルニアというどちらかというと軽症の病気を治療する際に、採血やバイタルサイン測定といった基本的な術前診察を怠ったことと、事態の重大さに後から気付いて看護記録や麻酔記録を改竄したという、医療従事者としては恥ずべき行為をしたことにあると思います。経過をご覧になってほとんどの先生方がお気づきになったかと思いますが、いくら術前の診察で元気そうにみえた幼児であっても、全身麻酔下の手術を行う以上きちんとした診察をしなければならないのはいうまでもありません。担当医師は、患者が泣き騒いだため心電図検査を施行することができなかったとか、自院では血液検査ができず結果がすぐにわからないことを理由としてあえて術前の血液検査をしなかったと主張しましたが、そのような言い訳が通用しないのは明白であると思います。しかも、乳幼児のヘルニア手術でマスク麻酔とするのは、経験のある麻酔科医が担当し、かつ術者が一人前で手術が短時間で終了するケースが望ましいとされています。また、年齢が低い場合や両側手術の場合には気管内挿管の適応となります(小児外科.1999;31:13-16.)。したがって、両側のヘルニア手術でしかも麻酔科専門医が担当していない本件でマスク麻酔を用いたのは、杜撰な術前・術中管理といわれても抗弁の余地はないと思います。おそらく、「なあんだ、ヘルニアのケースか」という安易な気持ちで手術に臨んだのではないでしょうか。そのような認識の甘さがあったために「本件のような幼児に、手術を行う際に通常行われるべき一般検査、心臓、肺そのほかの検査も行わないで手術を施すというのは、無謀な感を否めない」とまで判決文に記載されました。しかも、医療過誤として問われることを危惧したためか、事後処理としてカルテを改竄したのは裁判官の心証を著しく悪くし、ほぼ患者側の要求通りの判決額へと至りました。裁判の中では、担当医師が改竄を指示した様子が次のように記載されています。「本件手術日の後日、担当医師らは手術時の経過、処置について確認、整理をする目的で婦長らを院長室に呼び、担当医師がすでに看護記録用紙に記載していた部分を除く空白部分の処置、経過について尋ね、空白部分を埋める形で看護記録のメモを作成した。そして、そのメモをもとに実際に手術時に作成されていた看護記録とは別の看護記録が作成された」という事実認定を行っています。そのなかでも、事件後当該病院を辞職した担当看護師が改竄目的の看護記録の空欄部分を埋めるように婦長から指示された時に、「偽証するんですね」と述べたことを裁判で証言したため、もはや記録の改竄は動かし難い事実として認定されました。同様にカルテの改竄が問題となったケースとして、「喘息様気管支炎と診断した乳児が自宅で急死したケース」がありますが、今回のように公的文書と同じ扱いを受けるカルテを改竄したりすると、それだけでも医療機関の信用を大きく失い、訴訟の場では著しく不利な立場に立たされることを肝に銘じておかなければなりません。なお本件では裁判所の判断の通り、おそらく麻酔中の管理が悪かったために低酸素状態となり、ついには心停止を来した可能性が高いと思われます。ただし、もし病理解剖が行われたとしたら病院側の主張のように先天性心疾患などの別の原因がみつかったかもしれません。病理解剖を行わなかった理由として、「何度も勧めたが家族が拒否した」としていますが、本件のように死因が不詳のケースで家族から解剖の同意が得られないような場合には、「異状死体」として警察官による行政検視、さらには行政解剖を行うという道もあります。われわれ医師の感覚として、警察署に届け出るという行為自体が医療過誤を認めることにつながるのではないかという懸念があるとは思いますが、数々の紛争事案をみる限り、担当医師の立場で医療過誤ではないことを証明するには病理解剖が最大の根拠となります。したがって、「自分の医療行為は間違っていないのに、その結果が悪かった」というケースでは、紛争に巻き込まれることも考えてぜひとも病理解剖をするべきであると思います。小児科

16.

1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第2回

第2回:鼠径ヘルニアは問診と診察で診断を <一般的な内容> 鼠径ヘルニアは、プライマリ・ケアで目にする一般的な外科的疾患の一つです。しかし患者さんやご家族にはあまり知られているとはいえず、とくに患児の保護者が心配して受診することがしばしばあります。 鼠径ヘルニアは9:1の割合で男性に多く、とくに40歳~59歳の男性に好発します。鼠径部の膨隆がはっきりしない場合、痛みなどの症状に乏しい場合もあります。姿勢によって膨隆が消失する場合もあるので、診察の際は息こらえなどをさせると症状がはっきりします。画像の意義は大きくなく、病歴と身体診察で診断をつけるべき疾患といえます。外科的治療にはラパロスコピーと開腹術がありますが、経験豊富な術者であれば両者に大きな成績の差はないようです1)。 以下、本文 American Family Physician 2013年6月15日号1)より鼠径ヘルニア1.概要 鼠径ヘルニアは、プライマリ・ケアにおいて外科への紹介を要する最もよくある原因の一つ。 病歴と診察で診断可能。 症状としては鼠径部痛や異常感覚がある。 ヘルニアの膨隆が消えることもあるが、咳込みやいきみなどで腹圧が上がると出現する。 小さく最低限の症候性のヘルニアでは外科的介入が必ずしも必要ではない。 外科的整復には開腹術とラパロスコピーがある。2.症状と臨床所見 身体診察の感度と特異度はそれぞれ75%、96%という報告がある。 鼠径ヘルニアの症状は時間とともに徐々に、または嵌頓により突然増強する。 鼠径ヘルニアは、無症候性であったり、ルーチンの身体診察の際にたまたま見つかることもある。 通常は、ヘルニア部の局所痛を引き起こす。痛みはValsalva手技で増悪することがある。 診察は、立位で鼠径部と大腿部の膨隆を注意深く探すことから始めるべきである。そして術者が膨隆を観察しながら、患者にいきませる(Valsalva手技)。Valsalva手技でも膨隆を見つけられなければ、ヘルニアは疑わしくない。 スポーツ選手の鼠径部痛で膨隆がない場合は、スポーツヘルニア(組織線維の断裂)が考慮される。 急性発症の鼠径部痛が出現したら絞扼を考慮する。絞扼は疼痛や発赤、嘔気・嘔吐の存在で疑うべきであり、外科的緊急である。3.画像 画像はヘルニアの診断にはあまり必要とならない。 スポーツヘルニアや、ヘルニアの再発や水腫の可能性があるとき、診断が不確かなとき、外科的合併症のときは役立つ。 鼠径ヘルニア検索への超音波の感度は90%以上、特異度は82%。 MRIは、鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアの鑑別に、高感度・高特異度で有用。4.手術 小さく、最小限の症候性で、初発のヘルニアでは必ずしも外科的整復は必要ではなく、嵌頓や絞扼に注意しながら待機的にフォローできる。 症候性、大きい、再発の場合は、一般的に1ヵ月以内に外科的整復が必要。 外科的整復には、妊娠可能年齢の女性を除いて、ほとんどの場合補綴材料(メッシュなど)が使われる。 外科的整復にはラパロスコピーと開腹術がある。米国ではラパロスコピーはわずか10%。術者が経験豊富であればどちらも同等に有効であり、再発率は0~9.4%である。 最も一般的な外科的整復の合併症は血腫(陰茎や陰嚢の斑状出血を含む)と創感染である。 慢性疼痛は5~12%に起こり、神経損傷やメッシュの収縮や慢性炎症や恥骨骨炎に関連する。5.術後ケア 現在の術後の標準的なケアは、一般的な創のケアである。 安静を要する期間は外科医の好みによって大きく異なるが、通常は力仕事の人の場合2~4週間、デスクワークの人の場合は10日程度で仕事復帰してよい。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) LeBlanc KE, et al. Am Fam Physician. 2013 Jun 15;87:844-848.

17.

こどものみかた<下巻> ~シミュレーションで学ぶ見逃せない病気~

第4回「もう大丈夫!子どもの喘鳴」第5回「これですっきり!嘔吐のみかた」第6回「子どもの腹痛 便秘と重症疾患の見極め!」 小児科医でなくても、日常診療や夜間救急・輪番で「こどもを診る」機会のある一般内科医や看護師も多いのではないでしょうか。そんな時、慌てずに対応できていますか?本DVDは、診療所に緊急度の高い小児救急患者が訪れた場面のシミュレーションをふまえ、適切なトリアージ、処置、診断、家族への病状説明、小児専門医への搬送などを身に付ける、小児救急の実践的プログラムです。第4回「もう大丈夫!子どもの喘鳴」小児の小急性疾患のひとつ喘鳴を取り上げます。レクチャーにおける到達目標は3つです。1)小児の喘鳴の鑑別疾患を5つ挙げることができる 2)緊急性を判断し小児科に相談ができる 3)喘鳴の鑑別診断と初期治療を行うことができる番組では、症例動画を参考に喘鳴患者の見た目と呼吸音を理解し、ロールプレイをとおして病歴聴取法やバイタルサインの確認法など学習していきます。本シリーズ恒例のおさらいクイズで喘鳴診療の学習度をチェックしましょう。第5回「これですっきり!嘔吐のみかた」子どもの救急外来で「発熱」に次いで多いのが「嘔吐」です。高熱でお腹が張り嘔吐、咳が出てむせこみ嘔吐、泣きすぎて嘔吐…などコモンな症状に関わらずその原因は様々で、緊急度の高い疾患も潜むため、嘔吐の診断は的確さが求められます。とはいえ焦る必要はありません。ABC(見た目)の確認、バイタルサインの数値化、的確な問診・診察を行い、胃腸炎、腸重積、虫垂炎、髄膜炎、代謝性など嘔吐をきたす疾患を見極める術を学びます。そしておさらいクイズで学習度をチェック!第6回「子どもの腹痛 便秘と重症疾患の見極め!」小児救急の3大主訴のひとつ「腹痛」です。乳幼児は大人のように腹痛を訴えることができません。不機嫌、哺乳力低下、啼泣など子どもの様子から迅速かつ的確にトリアージしなくてはなりません。小児になると便秘による腹痛が大半です。便が出ていても便秘!?激痛が浣腸だけで収まる!といったことも珍しくありません。このように小児の腹痛は便秘や胃腸炎などが多いのですが、虫垂炎、腸重積、鼠径ヘルニア、精巣捻転、紫斑病などを念頭に鑑別する必要があります。ABCで見た目の異常を確認し、虫垂炎や腸重積などの特徴を念頭に便秘と重症疾患を見極める術を学びます。最後のおさらいクイズで学習度をチェックしましょう。

18.

神経障害性疼痛の実態をさぐる

神経障害性疼痛が見逃されているたとえば熱いものを触ったり、刃物で切れば痛みを感じる。そういう通常の痛みを「侵害受容性疼痛」といいます。末梢神経の終末にある侵害受容器が刺激されたときに感じる痛みです。侵害受容性疼痛の中には炎症に伴って起こる炎症性疼痛も含まれますが、これらを合わせて生体を守るための生理的な疼痛と呼んでいます。一方、「神経障害性疼痛」は、末梢神経から脊髄、さらに大脳に至るまでの神経系に何かの障害が起こったときに、エラーとして生じる痛みです。生体を守る意義はなく、病的な疼痛と考えられています。このように、神経障害性疼痛と炎症性疼痛は区別して考える事になっています。ただし、臨床的には炎症が遷延し持続的に痛みのシグナルが入力されるような状態では、神経系はエラーとしての過敏性を獲得するため、炎症性疼痛が続いた結果起こる痛みと神経障害性疼痛は明確に区別できないと考えられています。多くの神経障害性疼痛は痛みの重症度が高く、患者さんのQOLは著しく低下します。神経障害性疼痛は、まだまだ医療者に浸透していない痛みの概念です。神経障害性疼痛であることが疑われないで治療されているケースも多くみられ、神経障害性疼痛には特別なスクリーニングが必要だと考えます。神経障害性疼痛のスクリーニング痛みと一口にいっても、ナイフで刺された時の痛みと、炎や熱に手をかざした時の痛みは、おのずと性質が違ってきます。神経障害性疼痛の患者さんの多くは、「ヒリヒリと焼けるような痛み」「電気ショックのような痛み」「痺れたような痛み」「ピリピリする痛み」「針でチクチク刺されるような痛み」といった特徴的な性質の痛みを訴えます。一方、炎症性疼痛の患者さんでは、ズキズキする、ズキンズキンするといった、明らかに痛みの性質が異なった訴えをします。痛みの性質の違いは、痛みの発生メカニズムの違いを表していると考えられています。患者さんの自覚的な訴えから痛みの種類を鑑別するために、痛みの問診票が各国で開発されています。私たちはドイツでつくられた「PainDETECT」の日本語版を許可を得て開発し、その妥当性の検証試験を行っています。痛みの性質、重症度、場所、範囲、時間的変化を1つの質問用紙に記入する形のもので、臨床で使いやすい問診票になっています。侵害受容性疼痛なのか神経障害性疼痛なのか、あるいは両方が混合している疼痛なのかを分類することができます。画像を拡大する痛みの具体性を評価する痛みのスクリーニングにおいて、痛みの性質と共に痛みの具体性を評価することが重要です。たとえば捻挫をした患者さんにどこが痛いか聞くと、「足首のここが痛い、足首を伸ばすと痛い」と明確な答えが得られます。これは痛みの具体性が高いといえます。一方、器質的な異常を伴わない非特異的腰痛や、外傷後の頸部症候群(むち打ち症)では、「腰のあたりが全体的に痛い」とか、「何となく首の周りが痛い」といった部位を特定しにくい漠然とした痛みを訴えることがあります。そのような場合は痛みの具体性が低いと評価します。痛みの具体性が高いときには身体的な問題、器質的な異常があり、痛みの具体性が低い場合は器質的な異常がない(少ない)と判断し、心因性疼痛の要素の有無を考えます。器質的異常の有無は薬物療法の適応を考える際に重要なポイントになりますので、痛みの性質と共に具体性を聞くことは非常に有用です。神経障害性疼痛が合併しやすい疾患神経障害性疼痛が多く見られる疾患は、糖尿病性ニューロパチー、帯状疱疹後神経痛、脊柱管狭窄症です。たとえば帯状疱疹では、神経にウイルスが棲んでいて神経の炎症や障害が起きます。日本での大規模な調査研究で、これまで神経障害性疼痛ではないと考えられていた腰痛や膝関節症を含む多くの慢性疼痛患者さんの中にも、神経障害性疼痛が含まれていることがわかってきました。首から背中、腰の痛みを訴える患者さんの実に約8割が、神経障害性疼痛だろうと推察される報告もあります。手術後の痛みは意外に調べられていない領域です。傷が治れば痛くないと医療者が思っているので、患者さんが痛みを訴えにくい環境があるようです。開胸手術後は6~8割、乳腺の術後には5~6割、鼠径ヘルニアの術後では3~4割の患者さんが傷が治った後にも痛みを持っていることがわかっています。もちろん手術後に遷延する痛みの病態のすべてが神経障害性疼痛ではありません。術後遷延痛には、神経障害性疼痛とも炎症性疼痛ともいえない独特のメカニズムがありそうだ、ということが分子生物学的な病態研究によってわかってきています。薬物療法による神経障害性疼痛の治療神経障害性疼痛の治療は、侵害受容性疼痛とは治療戦略がまったく異なります。基本的に消炎鎮痛薬は効果がありません。神経障害性疼痛の第一選択薬はCa2+チャネルα2δリガンドであるプレガバリン(商品名:リリカ)と三環系抗うつ薬です。第二選択薬としては、抗うつ薬セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のうちの一つであるデュロキセチン(商品名:サインバルタ)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)、抗不整脈薬メキシレチン(商品名:メキシチールほか)です。第三選択薬は、麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)です。まず初めにプレガバリンか三環系抗うつ薬を用います。効果が不十分であれば、いずれかに切り替えるか併用する。プレガバリンは添付文書では、朝と夕方に内服することになっていますが、私たちは就寝前の服用を勧めています。神経障害性疼痛の患者さんは痛みが強く不眠を訴える方が多いのですが、プレガバリンによる眠気の作用を逆に利用した服用方法です。プレガバリンの眠気は鎮静によって生じるものではなく、生理的な睡眠作用であることがわかっています。そのためか、患者さんもぐっすり眠れたという満足感を持つことが多いようです。そして第一選択薬で効果が不十分な場合は、第二選択薬への切り替え、あるいは第二選択薬との併用を行います。ただし三環系抗うつ薬とデュロキセチンの併用では、副作用として興奮・せん妄等のセロトニン症候群を起こす危険性があるので、三環系抗うつ薬とデュロキセチンは基本的に併用はしません。第二選択薬が無効な場合は、第三選択薬として麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)を使います。非がん性の慢性疼痛に対して使えるオピオイド鎮痛薬は、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(商品名:トラムセット)とフェンタニル貼付剤(商品名:デュロテップMTパッチ)が主なものです。ブプレノルフィン貼付剤(商品名:ノルスパンテープ)は変形性関節症、腰痛症のみが保険適応となっています。オピオイドは最も高い鎮痛効果を期待できますが、長期間使った場合に便秘や吐き気、日中の眠気などの副作用が問題になります。オピオイド鎮痛薬に対して精神依存を起こす患者さんもまれにですがいます。そのため、第一選択薬、第二選択薬が無効な場合にのみ使うことが推奨されています。オピオイド鎮痛薬使用における注意点非がん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使い方は、がん性疼痛とは異なります。がん性疼痛の場合は、上限を設けずに患者さんごとに投与量を設定し、痛みが続いている間は使い続けます。痛みが発作的に強まったときには頓用薬も用います。一方、非がん性の疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合は、経口のモルヒネ製剤換算で120mgを上限に設定することが推奨されています。オピオイド鎮痛薬の使用期間は極力最少期間にとどめ、痛みが強くなったときの頓用は推奨されていません。これらのオピオイド鎮痛薬の使用に制限を設けている理由は、すべて精神依存の発症リスクを抑えるためです。がん性疼痛と非がん性疼痛では、オピオイド鎮痛薬の使い方の原則が違うことをご理解いただきたいと思います。オピオイド鎮痛薬の精神依存は、器質的な痛みの患者さんでは基本的に発症しないことがわかっています。器質的ではない疼痛、すなわち痛みの具体性の低い患者さんでは精神依存を起こす可能性が高まるので、オピオイド鎮痛薬を積極的に使用すべきではないと考えています。うつ病や不安障害といった精神障害を合併している患者さんも、オピオイド鎮痛薬による精神依存を発症しやすいことがわかっています。最も強い鎮痛効果を求めるときは、われわれはオピオイド鎮痛薬とプレガバリンを併用しています。プレガバリンには抗不安作用があり、それがオピオイド鎮痛薬による吐き気の発生に対する予期不安を抑制し、制吐効果が期待できます。オピオイド鎮痛薬と三環系抗うつ薬の併用も強い鎮痛効果が期待できますが、吐き気、眠気、抗コリン作用による口渇などを相乗的に増強してしまうため推奨していません。

19.

英国における待機的手術施行への民間活力導入、その質的評価は?

英国待機的手術のアウトカムについて、民間治療センター(ISTC)とNHS治療センターとを比較した結果、両者はほぼ同等であることが報告された。英国では、患者が待機的手術をすみやかに、より強い選択権を有して受けられ、より良好なアウトカムを得られるようにするとの目的で、1999年より公的医療サービスであるNHS治療センターの改革プログラムが開始。そのさらなる進展のため2002年より民間活力を導入、2009年12月末までに29のISTCが開設(さらに2施設が建設中)された。しかし、治療センター増大が歓迎される中、ISTCの“民間運営”“外国人医師”に対する懸念が高まり、2006年以降、第三者機構によるISTCとNHSとを比較する質的評価の取り組みが行われているという。本論の報告は、英国保健省がRoyal College of Surgeons of Englandに質的評価の比較について委嘱したPatient Outcomes in Surgery(POiS)監査機構(2007年11月設立)による最終報告で、Royal College of Surgeons of EnglandのJ Chard氏らが、BMJ誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月19日号)で発表した。25のISTCおよび72のNHS治療センターの患者報告のアウトカムを収集・比較POiSは、ISTCとNHS治療センターとの待機的手術(股関節/膝関節置換術、鼡径ヘルニア修復術、静脈瘤手術)のアウトカムについて比較するため、25のISTCおよび72のNHS治療センターで、患者によって報告された術後3~6ヵ月のアウトカムをフォローアップ収集し比較した。具体的には、股関節/膝関節置換術については2008年6月~2009年9月に、ISTCで5,671例、NHS治療センターで1万4,292例を収集、鼡径ヘルニア修復術は2008年12月~2009年9月に同640例と2,023例を、静脈瘤手術は同期間に同248例と1,336例を収集した。それらの患者によって報告された症状と障害(48ポイントスケールのOxford股関節・膝スコア、Aberdeen静脈瘤調査票)、QOL(EuroQol EQ-5Dスコア)を比較の指標とした。NHSの患者のほうがアウトカム劣るが……患者特性として、ISTCの患者のほうがNHSの患者と比べ、健康で、術前重症度は小さく、より裕福であるとの傾向が認められた。補正後アウトカムは、NHSで関節置換術を受けた患者のほうが、劣っていると報告した患者が多かった。同患者のほうが、Oxford股関節スコアは-1.7(95%信頼区間:-2.5~-0.9)、Oxford膝スコアは-0.9(同:-1.6~-0.2)低かった。また、合併症の報告例がNHS患者のほうが多かった。股関節に関する合併症報告例は1.3倍(オッズ比:1.3、95%信頼区間:1.1~1.5)、膝は1.4倍(同:1.4、1.2~1.6)だった。ヘルニア手術、静脈瘤手術の術後アウトカムについては、両施設間に有意な差はみられなかったが、NHS患者のほうが、ヘルニア修復術後の結果が劣っており(オッズ比:1.4、95%信頼区間:1.0~1.9)、静脈瘤手術について追加手術が多かった(同:2.8、1.2~6.8)。Chard氏は「ISTC患者のほうが、やや健康で重症度が低かった。いくつかのアウトカムはISTCのほうがよかったが、ISTCが選択サービスの提供において持ち得る可能性があるインパクトと比べて、その差異は小さかった」と結論している。

20.

副院長 教授 加藤良二 先生の答え

がん化学療法は外科医が身につけるべき手技でしょうか?一地方病院の21年目の腫瘍内科医です。わが国には腫瘍内科医の養成システムがなく、すべての癌に自信を持って化学療法ができるようになったのは、ここ数年のことです。先日も分子標的薬関連の講演会があり出席しましたが、数人の外科医がスペシャリストとして講演していました。外科医の本分は手術であり、化学療法に手を出す前にたとえば消化管の専門にとらわれず尿路変向や子宮付属器切除など隣接臓器の外科的手技を身につける方が合理的ではないかと思っていました。私は血液腫瘍を含め全ての悪性腫瘍の治療をすぐに行えますが、薬物による治療という共通点があるからこそできることで、超人的なこととも思えません。むしろ人材の有効利用につながると思います。外科医が手術をやりながら(手術の技術を身につけながら)化学療法をやることなどは不器用な私などには到底出来そうもありません。私が外科医であれば(細かい手作業が得意で、卒業直後は外科医になるつもりでした)各領域の手術の技術の腕を上げることに邁進するだろうと常々思っています。現在は腫瘍内科医の不足があり外科の医師に手伝ってもらうのはやむを得ないと思いますが、今後も外科医は化学療法を必要な技術として身につけるべきでしょうか。あるいは外科系の診療科や教室に化学療法の専門家が必要なのでしょうか。現在、日本臨床腫瘍学会を中心として数多くの抗がん剤治療(化学療法)の治験が行われています。また日本癌治療学会と提携して癌治療専門医を認定しています。現実に多くの施設で外来化学療法室が設置されてきています。この中心は化学療法専門医であるべきと考えます。これからは術前・術後を問わずこれらの治療専門医に化学療法を任せる時代が来ると思ってはいますが、如何せん医師数の絶対的不足が時代の到来を阻んでいます。佐倉病院でも外来化学療法室の大半が外科系医師によって運営されています。我々が外科医となってから、つい最近まで血液腫瘍内科を除いて、術後の補助化学療法は外科医の手によってなされていました。一旦手術を受けた患者さんは外科医を信頼しており(腹の中まで見てもらったから何でも理解していると信じ込んでる?)外来を離れようとしません。他の内科医または放射線治療医を紹介すると放り出された(あるいは見放された)と感じていたようです。一方、外科医は施術した患者さんをなんとか最後まで面倒みようとした結果であると理解しています。今ほどエビデンスも有効な治療薬も無い頃で再発の可能性を肌で感じながら、ああでもないこうでもないと努力しました。勿論、化学療法は片手間にやるものでは無いと思いますが、癌を治療する上で手術や照射あるいは免疫治療等と同様に集学的治療のひとつであると位置づけています。自分の知らないことは専門医に任せておけばいいと思いますか?各分野がそれぞれの立場を主張し、理解した上で患者さんにとって最良の治療を勧めるべきであると考えます。それには外科医も化学療法、放射線治療に関して充分な知識を持つことが必要です。外科の手術修練は大変ですが、朝から晩まで糸を縛っているだけじゃありません(笑)。外来で患者さんと長く付き合うようになった時、適切なアドバイスをしてあげたいと思います。私は内科へ進む研修医にも暇があれば手術に誘います。自分が診断した結果を見て欲しいからです。手術の何たるかを知らずに患者さんに手術を勧められますか?興味あること全てにチャレンジして欲しいものです。何をやっても患者さんの役に立つと信じています。先生の方針は伝統になりますでしょうか?加藤先生が目指されているように、外科医なら外科領域全般を扱えるように指導することは大変重要だと考えます。ところで、主任教授が変わると方針も変わるかと思います。それでも佐倉病院としては、外科手術全般を学ぶ方針(育成方針?)は変わらず維持されるのでしょうか?大変良い方針なので、変わらず伝統としていただきたいものです。有り難うございます。応援に感謝します。これから育つ若手外科医に全領域を経験させることで、外科の領域全てで怖いものがなくなり何でもやるようになれば、彼らが指導する時に伝統となったということです。佐倉病院外科がひとつである限り、全領域を学ぶ姿勢は変わらないと信じていますし、外科医が溢れかえってもそうあるべきです。佐倉の若手は肺・乳腺や甲状腺同様に腸管や肝胆膵も扱います。いろんな経験をすることで、それぞれの違いが分かってきています。いろんな事をやれば自分は大変な思いをしますが、すべて役に立ちます。幸いなことに当科の若手は順調に育ってきていますし、この考えを踏襲してくれると信じています。 外科医の道現在医学部に通う者です。佐倉病院ではまず外科全般を学ぶとのことですが、何年くらい時間を費やすのでしょうか?また、途中で心臓や脳に興味がでてきた場合、その専門分野に特化する道もあるのでしょうか?拙い質問ですが、ご教示のほど宜しくお願いします。ひととおりの分野を経験し、理解できるのに4年はかかります。また自分で手術をできるようになるのに卒後7、8年を要します。心臓に関しては当科内のローテーションに入っていますが、心臓外科を志望する学生が少ないので希望してくれれば大助かりです。外科としては脳外のローテーションは組んでいませんが、興味が湧いてくればいつでも(1年の途中というわけにはいきませんが)、どこ(どの病院)からでも可能ではないでしょうか?勿論、佐倉病院の脳外科を志望してくれたら、大歓迎です(笑)。また外科的手術手技を学んだ婦人科や泌尿器科医がいても良いと思います。元々は脳外科、泌尿器科、婦人科などは外科から分化したものであり、外科的手技はどの外科系診療の基礎となり得るものであるはずです。日本でも珍しい育成システムについて記事拝見しました。「当外科の最大の特徴です。呼吸器でも消化器でも、外科手術全般においてまず学ぶ。つまり、外科手術の分野においてすべての症例に対応できる医師の育成という日本でも珍しいシステムを構築しています。」とありますが、差し支えなければ、もう少し詳しく教えていただけると幸いです。私が勉強不足なのかも知れないが、あまり聞いたことのないシステムですので、興味があります。宜しくお願いします。全国には数多くの外科学教室がありますが、残念ながら主催する教授の得意とする専門臓器分野に偏る傾向があります。例えば大腸を得意とする教室では食道・上部消化管あるいは肝胆膵が苦手とか、消化器外科医は肺の手術ができないとか、逆に肺癌を主に扱っている教室では消化管の手術経験が少ないというようにです。消化管主体の教室では外科専門医の資格を得るのに心臓専門の教室や呼吸器を扱っている教室に一時期留学あるいは研修に出なければなりません。当教室では外科専門医資格を得るために必要な手術症例はすべて指導でき、経験できるようになっており、他所にわざわざ出向く必要が無いということです。どのような研究を行っているのでしょうか?東邦大学医療センター佐倉病院さんでは、どのような研究を行っているのでしょうか?また、今一番力を入れている研究はどんなものでしょうか?ホームページには載っていなかったので、教えて頂ければと思います。内科その他の研究に関しては、東邦大学ホームページから閲覧が可能ですので参照して下さい。佐倉病院外科での研究についてご説明します。優しい手術をテーマに「外科侵襲と悪性腫瘍の進展」「外科侵襲・化学療法とストレス」「消化器(管)悪性腫瘍・呼吸器・乳腺・甲状腺の外科治療」「低侵襲手術法の開発」「がんの増殖・転移の抑制」「術前・術後の補助化学療法」「センチネルリンパ節生検による術式の選択」「腫瘍免疫」「分子生物学的手法による悪性腫瘍の診断と治療」「CT・MRI・PET等を用いた術前画像診断」「疼痛管理と遺伝子診断」など多岐にわたっています。残念ながら当施設では動物実験舎を備えていません(現在計画中)ので、基礎研究は東邦大学関連の習志野キャンパス、大森キャンパス(医学部)や筑波にある他機関の研究施設などを利用しています。臨床研究は、随時当施設で行っています。また全国的に実施されている多施設共同の治療研究にも参加しています。外科医になってよかったと思ったことは何ですか?単純な質問で失礼かと思いますが、外科医になってよかったと思ったことは何でしょうか?今臨床研修で色々とローテートしています。どの科も良いなと思っていますが、外科系だけは、短い研修期間の中では何が魅力なのか実感ができません。とはいえ、指導医の先生は、忙しそうですが、なんだか使命感に燃えているような印象があります(他の科の先生よりも特に。)。加藤先生が長年外科医をやってきて、その中で「外科医になってよかったな」と思ったことを教えて頂ければ幸いです。感動を瞬時に得られます。患者さんが治った時あるいは痛み・苦しみから解放されたと解った時の達成感です。外科の手術は、よく大工さんに例えられますが職人が後世に残る家を造り上げるような感じかもしれません。ひとつの作品を造り上げたような満足感に近いものかもしれません。これらは短期間で消えていくものですが、患者さんがいれば、また望まれればいつでも何処でも腕や知恵をフルに使って治療することに力を注ぎます。何度も押し寄せる大波小波を乗り越えることに楽しみを感じています。ですから夜中あるいは緊急の手術ほど燃えてきて、集まった仲間達はみんな生き生きしています。外科医は「鬼手仏心」と言い、仏の心を持ってメスを振るうことを基本としています。人を傷つけるのは嫌ですが、早く治したい、早く苦しみから救いたいという使命感は強いと思います。患者さんの笑顔と沢山会えるようにしたいものです。女性が外科医になることについてメディトウキングの記事を拝見しました。よく聞かれることかも知れませんが、女性が外科医になることについて如何お考えでしょうか?私は是非外科系に進みたいと考えていますが、将来的なことを考えると(出産や家庭の事情など)外科医よりも他の科を考えた方が良いと周囲から言われます。でも本当にそうなんでしょうか?運よく(?)外科医は不足するので、出産して育児をしても、復帰できる場はたくさんありそうですし。忌憚ないご意見いただけると幸いです。佐倉外科は今年、20周年を迎えます。最近になって2名の女性が入局してくれました。今後ますます増えることを期待しています。外科を目指す女性は頑張り屋さんが多いようです。体力的にも一生懸命やっていれば、多くの男性外科医は優しく、みんなでカバーしようとしますから、出産や家庭の事情などは、なんとかなると考えています。外科でもダイナミックな手術から腕力を必要としない手術まで様々な分野があります。乳腺や甲状腺などは力を必要としませんし、消化器や肺癌などでも鏡視下手術であれば力は要りません。実際、佐倉外科では全麻下腹部手術の約7割、胸腔鏡下手術の9割が鏡視下手術ですから女性外科医の活躍の場は沢山あり、安心して外科医になってください。必要なのは、素直さと情熱です。外科医不足の解消について田舎の総合病院で外科医しています。先生が提言されているように外科医は臓器別に専門化(細分化)され過ぎているように感じています。(大学病院が高度医療のみを提供するという前提であれば良いですが…)今の先生方は、専門化された中で外科医として教育されているので、私どもの病院に来てくれるのはありがたいのですが、最初は盲腸も切れないような先生もいます。逆にいうと、佐倉病院さんのように外科医全般を最初から叩き込んで教育していただくと、私どものような病院にとってはすぐに戦力になります。専門分野は本人の興味次第で後から身につきますし。こう考えると、外科医全般を叩き込んだ先生が増えれば増えるほど外科医の解消につながりそうなのですが。先生のご意見を頂きたいと思います。 専門に特化した外科医も必要です。中央と地方の必要性をバランス良く配分することが必要なのです。しかし学会中心だとどうしても専門性に偏ってしまいます。医学会総会や外科系連合学会など幅広い分野を網羅した学会が、あまり人気の無いのも憂うべきです。しかし、大学病院に盲腸が少ないのも現実ですし、最先端から第一線の診療など、何からなにまで網羅するのも困難です。専門性を追求するのも良いですが、少なくとも外科専門医を取得するまではできるだけ多くの専門分野をまわって多様な経験や勉強を積むべきであると考えます。外科全般にわたって一人前になるのにかなりの時間が必要で、鏡視下手術ができてもアッペも切れない外科医を指導するのも地方の先生方の役割でもあると考えます。自分が育ててもらったように、手間暇掛けてみんなで育てましょう。少しでも多くの若い人達に外科の醍醐味と感動を味わってもらいましょう。ご家族とのコミュニケーションについてプライベートなことで恐縮です。差し支えなければ教えていただきたいことがあります。外科医は患者さんを待たせることできないので、緊急オペが多く、なかなか家族との時間が持てません。先生も同じ状況だとは思いますが、何か家族とのコミュニケーションを円滑にするお知恵があればご教示お願いします。一番は家族の理解です。時間的には短いですが、濃い時間を過ごすことだと思っています。患者さんに使う時間は全知全霊を傾けて行動しているはずですが、家族とも同様に接しなければなりません。外科医に限ったことではありませんが、患者さんの話を良く聞き、状況を理解した上で、持てる力をフルに発揮して適切な治療を行うことは必要なことです。家族も同様に接することであると思います。ちょっと手を抜くとたちまち大変なことになってしまいます。簡単にできることではありませんが、つねに誰とでも真剣に接し、体力知力の続く限り頑張ることだと思います。専門診療科について外科の中の専門診療科に、「消化器」「呼吸器」「心臓血管」「乳腺」とあります。なぜこの4つなのでしょうか?特別な意図があれば是非ご教示いただきたく思います。(とんちんかんな質問でしたら申し訳ありません。)他にも甲状腺や副腎などを扱う「内分泌外科」や「小児外科」もありますが、佐倉外科では充分な診療経験の上で消化器、呼吸器、循環器、乳腺の専門医がおり、それぞれに教育・研究が行われていますので4つの分野を示しました。専門といっても指導する上級医の一人か二人だけで若い連中は特にグループ間の壁を意識していません。私自身が何でもやるので、若い連中はいろんな疾患を担当しても違和感がないようです。甲状腺や副甲状腺は主に呼吸器外科で扱いますが、副腎は消化器を含む腹部外科が担当しています。先天奇形などの小児外科は県の専門子供病院にお願いしておりますが、幽門狭窄、腸重積、鼠径ヘルニアなどは一般外科として消化器や呼吸器のグループでも担当しています。総括外科医は絶滅危惧種です。新入会員が減り続けており、今のままだとあと10年もすれば極端に少なくなります。何でもできる外科医になりましょう。今ならみんな必死になって育てようとしています。10年後、あなた達はスターです。副院長 教授 加藤良二 先生「人を助けるために何かをしたい。その動機が医師の原点となる」

検索結果 合計:22件 表示位置:1 - 20