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米国では1996年、「痛みは第5のバイタルサイン」との概念が導入され、それ以降、疼痛を測定・治療するための体系的な取り組みが、オピオイドの処方行動にどの程度の影響を及ぼすかについて議論がなされてきたが、これを実証的に研究することは困難とされる。米国・マサチューセッツ総合病院のDavid C. Cron氏らは、病院医療の質と安全に関する認証機関であるThe Joint Commission(TJC)による、抜き打ち訪問審査の期間中に教育病院に入院した患者では、退院時のオピオイド処方率が、同審査のない期間に比べて高いのに対し、非教育病院ではこのような差は生じないことを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年8月19日号に掲載された。米国の準実験的解析 研究グループは、TJCが2~3年ごとに予告せずに行う幅広く厳密な訪問審査(入院患者の疼痛管理の実践に関する体系的な評価を含む)と、退院時のオピオイド処方との関連を評価する目的で準実験的解析を実施した(米国医療研究品質庁[AHRQ]の助成を受けた)。 TJCによる訪問審査日に近い時期に入院し、入院前の90日間にメディケア・パートDにオピオイドの支払請求履歴がないメディケア受給者23万3,744件(2,490病院)の入院記録を解析の対象とした。 主要評価項目は、訪問審査期間中のオピオイド処方(入院日から退院後7日目まで)とした。退院時のオピオイド処方率(受給者1例当たりの週ごとの処方)を、審査前後の±3週間の処方率と比較することで、入院患者の疼痛管理の実践が精査される審査週に、退院時のオピオイド処方が増加したか否かを評価した。教育病院のオピオイド処方率、審査週9.6%vs.非審査週8.2%で有意差 2008~18年の、90の教育病院への2万1,156件(審査週3,190件、非審査週1万7,966件)の入院と、2,400の非教育病院への21万2,588件(審査週3万1,118件、非審査週18万1,470件)の入院を分析した。 教育病院の入院患者(平均年齢65.6歳、女性50.1%)では、退院時のオピオイド新規処方率は、審査週のほうが非審査週と比較して高かった(9.6%vs.8.2%、補正後群間差:1.3%、95%信頼区間[CI]:0.3~2.2)。補正後オッズ比(OR)は1.19(95%CI:1.05~1.34)であり、有意差を認めた(p=0.01)。 一方、非教育病院の入院では、退院時のオピオイド新規処方率(7.9%vs.7.7%、補正後群間差:0.1%、95%CI:-0.2~0.4)に有意な差はみられなかった(OR:1.02、95%CI:0.98~1.07、p=0.36)。 また、TJCによる訪問審査の効果は、教育病院のほうが非教育病院よりも有意に大きかった(交互作用の補正後OR:1.18、95%CI:1.03~1.35、p=0.01)。積極的な疼痛治療は、ホーソーン効果による可能性 著者は、「TJCによる審査期間中は、疼痛管理の実践が厳しく精査され、患者の疼痛評価や治療満足度の評価が強化されており、これが教育病院の医師に、通常よりも積極的な疼痛治療を行わせた可能性がある(ホーソーン効果:観察されることで引き起こされる行動の変化)」「他のいくつかの薬剤クラスでは処方量の増加はみられないことから、オピオイド処方の増加は一時的な変化の可能性がある」としている。 また、「教育病院で処方量が増加した理由として、(1)すでに認証を受けている可能性が高く、その教育使命や研修基準、さらに学術的評価を維持したいとの強い意向があり、認証取得と連邦政府からの資金提供との関連もあるため、認証を優先している可能性がある、(2)医療の質の改善への投資が多い、(3)研修医(審査期間中に最良の医療が確実に遂行されるよう病院管理者が講じる措置の影響を受けやすい)の存在などが挙げられる」「審査期間中の処方が過剰な治療であったのか、それとも、これまで治療が不十分だった疼痛への適切に強化した対応であったのかを判断することはできないが、これらの知見は医療機関が疼痛管理を重視することが、オピオイド処方の測定可能な差異につながる可能性を示している」と指摘している。