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重症急性膵炎〔Severe acute pancreatitis〕

1 疾患概要■ 概念急性膵炎は、膵内で病的に活性化された膵酵素が膵を自己消化する膵の急性炎症である。炎症が膵内にとどまって数日で軽快する軽症例が多いが、一部は炎症が全身に波及して、多臓器障害や血液凝固障害を引き起こす重症急性膵炎となる。急性膵炎から慢性膵炎への移行は10%前後であり、多くの急性膵炎は可逆性で膵に後遺障害は残さない。■ 疫学急性膵炎の2016年における発症頻度は10万人当たり61.8人で、増加傾向にある。男女比は2:1で、発症時の平均年齢は男性で59.9歳、女性で66.5歳である。重症度は、軽症が76.4%、重症が23.6%となる。重症急性膵炎発症時の平均年齢は63.1歳で、男性で60.2歳、女性で69.4歳である。■ 発症機序・成因食べ物を消化する膵酵素は、膵腺房細胞で生成され、食間では消化機能のない不活性型として蓄えられている。摂食により膵酵素の中のトリプシノーゲンが膵管を介して十二指腸内に放出され、エンテロキナーゼの作用により活性型であるトリプシンに転換され、食物を消化する。この膵酵素の活性化が種々の病的要因により膵内で起こり、膵が自己消化されるのが急性膵炎である。膵内外での炎症反応はサイトカインカスケードを活性化し、高サイトカイン血症によるSIRS(systemic inflammatory response syndrome)を来す。重症例では高度のSIRS反応の結果、炎症メディエーターによる血管内皮細胞の障害から全身末梢血管の透過性が亢進し、組織浮腫と血管内脱水を来す。そして、臓器還流障害から肺や腎臓などの臓器障害が起こり、さらに免疫系や凝固系の障害や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を合併する。また、高度の血管内脱水にともなって全身の末梢血管に血管攣縮を来たし虚血状態を生じ、膵では膵壊死が起こる。発症後期には、膵および膵周囲の壊死部に感染を生じ死亡に至る例がみられる。感染を起こすのは大腸菌などの腸管由来の細菌がほとんどである。健常人では、腸内細菌に対するバリアを備えているが、急性膵炎では腸管壁の透過性が亢進し細菌毒素が腸管粘膜を通過して腸管外へ移行するbacterial transformationが引き起こされる。さらに、全身免疫機能低下が加わり感染を惹起させる。アルコール性と胆石性が2大成因であり、成因が特定できない特発性がそれに次ぐ。男性ではアルコール性(43%)が多く、発症年齢は40~50歳代が多い。女性では胆石性(38%)が多く、発症は60歳以上の高齢者が多くなっている。その他の成因としては、膵腫瘍、手術、内視鏡的膵胆管造影(ERCP)、高脂血症、膵管形成異常、薬剤性などがある。重症急性膵炎の成因は、アルコール性(35%)、胆石性(30%)、特発性(19%)の順である。■ 症状急性膵炎では、ほとんどの例で上腹部を中心とした強い腹痛と圧痛を認める。その他には、嘔気・嘔吐、背部への放散痛、食思不振、発熱などもしばしば認められる。重症急性膵炎では、ショック、呼吸不全、乏尿、脳神経症状、腹部膨隆(イレウス、腹水)、SIRS(高・低体温、頻脈、頻呼吸)などの重要臓器機能不全兆候がみられる。■ 予後2016年の全国調査における急性膵炎患者の死亡率は1.8%であり、軽症例で0.5%、重症例で6.1%であった。重症急性膵炎の死亡率は2011年の調査時の10.1%より約4割減少した。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)急性膵炎の診断は、上腹部痛と圧痛、膵酵素の上昇、および膵の画像所見のうち2項目を満たし、他の膵疾患や急性腹症を除外する診断基準によって行われる(表1)。急性膵炎診療ガイドライン2015に記載されている臨床指標のPancreatitis Bundles 2015(表2)と診療のフローシート(図1)にそって、診断と治療を行う。重症急性膵炎は死亡率が高いので重症例を早期に検出する目的で、急性膵炎診断後、直ちに重症度判定を行い、経時的に重症度判定を繰り返す必要がある。急性膵炎の重症度判定基準(表3)は、9つの予後因子と造影CTによる造影CT Gradeからなり、各1点の予後因子の合計が3点以上か、造影CT Gradeが2以上の場合重症と診断される(図2~4)。それぞれ単独で重症と診断される例より、両者の組み合わせで重症となる例では死亡率が高い。急性膵炎は病理学的には、浮腫性膵炎、出血性膵炎と壊死性膵炎に分類されるが、臨床的には膵および膵周囲の病変は改訂アトランタ分類によって分類される(表4、図5)。発症4週間を経過すると炎症により障害された組織を取り囲む組織の器質化が進み、4週以降は壊死を伴わない液体貯留は仮性嚢胞となるが、壊死を伴う場合には内部に壊死を含む被包化壊死となりWON (wall-off necrosis)と呼ばれる。表1 急性膵炎の診断基準(厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班)1.上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある2.血中または尿中に膵酵素の上昇がある3.超音波、CTまたはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある上記3項目中2項目以上を満たし、他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する。 ただし、慢性膵炎の急性増悪は急性膵炎に含める。注:膵酵素は膵特異性の高いもの(膵アミラーゼ、リパーゼなど)を測定することが望ましい表2 Pancreatitis Bundles 20151.急性膵炎診断時、診断から24時間以内、および、24~48時間の各々の時間帯で、厚生労働省重症度判定基準の予後因子スコアを用いて重症度を繰り返し評価する。2.重症急性膵炎では、診断後3時間以内に、適切な施設への転送を検討する。3.急性膵炎では、診断後3時間以内に、病歴、血液検査、画像検査などにより、膵炎の成因を鑑別する。4.胆石性膵炎のうち、胆管炎合併例、黄疸の出現または増悪などの胆道通過障害の遷延を疑う症例には、早期のERCP+ESの施行を検討する。5.重症急性膵炎の治療を行う施設では、造影可能な重症急性膵炎症例では、初療後3時間以内に、造影CTを行い、膵造影不良域や病変の拡がりなどを検討し、CT Gradeによる重症度判定を行う。6.急性膵炎では、発症後48時間以内は十分な輸液とモニタリングを行い、平均血圧*65mmHg以上、尿量0.5mL/kg/h以上を維持する。7.急性膵炎では、疼痛のコントロールを行う。8.重症急性膵炎では、発症後72時間以内に広域スペクトラムの抗菌薬の予防的投与の可否を検討する。9.腸蠕動がなくても診断後48時間以内に経腸栄養(経空腸が望ましい)を少量から開始する。10.胆石性膵炎で胆嚢結石を有する場合には、膵炎沈静化後、胆嚢摘出術を行う。*:平均血圧=拡張期血圧+(収縮期血圧-拡張期血圧)/3図1 急性膵炎の基本的診療方針画像を拡大する表3 急性膵炎の重症判定基準(厚生労働省難治性疾患に関する調査研究班 2008年)画像を拡大する図2 浮腫性膵炎(矢印)のCT所見画像を拡大する図3 造影CT所見における膵造影不良域(矢印)画像を拡大する図4 重症急性膵炎の造影CT所見。腎下極以遠まで炎症の進展を認める画像を拡大する表4 急性膵炎に伴う膵および膵周囲病変の分類(改訂アトランタ分類)画像を拡大する図5 重症急性膵炎の造影CT所見。薄壁被膜で被包化された左側腹部広範に広がる液貯留腔画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 輸液急性膵炎と診断したら入院治療を行い、意識状態・体温・脈拍数・血圧・尿量・呼吸数・酸素飽和度などをモニタリングする。膵外分泌刺激を回避するために絶食とし、初期輸液と十分な除痛を行う。急性膵炎では発症初期より血管内脱水を起こすので、乳酸リンゲル液などの細胞外液による十分な輸液を行う。ショックまたは脱水状態の患者には、短時間の急速輸液(150~600mL/時間)を行うが、過剰輸液にならないように十分に注意する。脱水状態でない患者には、130~150mL/時間の輸液をしながらモニタリングを行う。平均動脈圧(拡張期血圧+(収縮期血圧―拡張期血圧)/3)が65mmHg以上と尿量0.5 mL/kg/時間以上が確保されたら、急速輸液を終了し輸液速度を下げる。■ 薬物療法急性膵炎の疼痛は激しく持続的であり、非麻薬性鎮痛薬であるブプレノルフィン(商品名:レペタン)などにより十分にコントロールする。軽症例では予防的抗菌薬は必要ないが、重症例や壊死性膵炎では発症後72時間以内に予防的に抗菌剤を投与することが推奨されている。ガベキサートメシル酸塩などの蛋白分解酵素阻害薬の経静脈的投与による生命予後や合併症発生に対する明らかな改善効果は証明されていない。■ 栄養療法経腸栄養を行うことは腸管からのbacterial transformationを減少させるので、感染予防策として腸管合併症のない重症例では入院後48時間以内に開始することが望ましい。原則としてTreitz靭帯を超えて空腸まで挿入した経腸栄養チューブを用いることが推奨されるが、空腸に経腸栄養チューブが挿入できない場合は十二指腸内や胃内に栄養剤を投与しても良い。腹痛の消失、血中膵酵素値などを指標として経口摂取の開始時期を決める。■ Abdominal compartment syndrome(ACS)の診断と対処腹腔内圧(intra-abdominal pressure:IAP)が12mmHg以上をIAH(intra-abdominal hypertension)、腹腔内圧が20mmHg以上かつ新たな臓器障害/臓器不全が発生した場合をACS(abdominal compartment syndrome)と診断する。重症急性膵炎の4~6%にACSが発症する。通常膀胱内圧で測定するIAP 12mmHg以上が持続または反復する場合は、内科的治療(消化管内減圧、腹腔内減圧、腹壁コンプライアンス改善、適正輸液と循環管理)を開始して、IAP 15mmHg以下を管理目標とする。IAP>20mmHgかつ新規臓器障害を合併した患者に対して、内科的治療が無効である場合のみ外科的減圧術を考慮する。■ 特殊治療十分な食輸液にもかかわらず、循環動態が安定せず、利尿が得られない重症例やACS合併例に対しては持続的血液濾過(continuous hemofiltration:CHF)/持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)を導入すべきである。しかし、上記以外の重症急性膵炎にルチーンに使用することは推奨されない。膵の支配動脈から動注することにより、膵の炎症の鎮静化や進展防止および感染予防を目的とする蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬膵局所動注療法は、重症急性膵炎または急性壊死性膵炎の膵感染低下、死亡率低下において有効性を示す報告があるが有用性は確立していない。動注療法は保険適応がないため臨床研究として実施することが望ましい。動注療法の真の有効性と安全性を検証するより質の高いランダム化比較試験(RCT)が必要である。■ 胆石性性膵炎における胆道結石に対する治療急性胆石性膵炎のうち、胆管炎合併例や胆道通貨障害の遷延を疑う症例では、早期にERCP/内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphincterotomy:ES)を施行すべきである(図6)。しかし、上記に該当しない症例に対する早期のERCP/ES施行の有用性は否定的である。急性胆石性膵炎の再発予防のため、手術可能な症例では膵炎鎮静化後速やかに、胆嚢摘出術の施行が推奨される。図6 胆石性膵炎の診療方針画像を拡大する■ 膵局所合併症に対するインターベンション治療壊死性膵炎では保全的治療が原則であるが、感染性膵壊死ではドレナージかネクロセクトミーのインターベンション治療を行う。できれば発症4週以降の壊死巣が十分に被包化されたWONの時期に、経皮的(後腹膜経路)もしくは内視鏡的経消化管的ドレナージをまず行い(図7)、改善が得られない場合は内視鏡的または後腹膜的アプローチによるネクロセクトミーを行う。図7 単純X線所見。被包化壊死(WON)と胃内にダブルピッグテイルプラスチックステントを留置画像を拡大する4 今後の展望遅滞ない初期輸液や経腸栄養などの重症化阻止や感染予防のための方策を講じた急性膵炎診療ガイドラインの普及により、急性膵炎特に重症急性膵炎の死亡率は大きく低下した。今後、急性膵炎発症や重症化の機序のさらなる解明、ガイドラインのさらなる普及、後期合併症対策の改良などが期待される。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。1)Masamune A, et al. Pancreatology. 2020;20:629-636.2)武田和憲、他. 厚生労働科学研究補助金難治性疾患国副事業難治性膵疾患に関する調査研究、平成17年度総括・分担研究報告書. 2006;27-34.3)急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)、金原出版.2015.4)Banks PA, et al. Gut. 2013;62:102-111.公開履歴初回2021年02月11日

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統合失調症治療の有効性、安全性に対する抗精神病薬の用量依存作用

 統合失調症の薬理学的治療の中心は、抗精神病薬である。慶應義塾大学の吉田 和生氏らは、統合失調症の薬物療法を最適化するために、抗精神病薬の有効性、安全性、死亡率との関連を明らかにするため関連文献のレビューを行った。Behavioural Brain Research誌オンライン版2021年1月5日号の報告。 統合失調症患者における抗精神病薬の用量と有効性、有害事象、死亡率との関連を調査した文献をレビューした。 主な結果は以下のとおり。・急性期統合失調症患者に対する抗精神病薬の有効性は、用量依存性が高く、各抗精神病薬で、特定の用量反応曲線を有している。・用量依存性の有無とその程度は、副作用の種類によって異なる。・用量依存性の高い副作用は、パーキンソン症候群、高プロラクチン血症、体重増加、神経認知障害であると考えられる。・少なからず用量依存性との関連の可能性がある副作用は、アカシジア、遅発性ジスキネジア、骨粗鬆症、性機能障害、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、血栓塞栓症、QT延長、抗コリン性副作用、傾眠、肺炎、大腿骨近位部骨折、悪性症候群であった。・用量依存性との関連の可能性が低い副作用は、脂質異常症、発作、唾液分泌過多症、好中球減少症、無顆粒球症であった。・抗精神病薬の用量と低血圧リスクとの関連は、データが不足しており、不明であった。・抗精神病薬の生涯累積用量が高いと、死亡率に影響を及ぼす可能性が考えられるが、用量依存関係を結論付けることは困難であった。 著者らは「本知見は、統合失調症患者に対する抗精神病薬治療を最適化するために、臨床医が診療におけるリスクとベネフィットのバランスを取るうえで、役立つであろう。今後は、各抗精神病薬に焦点を当てた大規模かつ頑健にデザインされた研究が求められる」としている。

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残余因子に対する新たなアプローチ-evinacumabへの期待(解説:平山篤志氏)-1348

 LDLコレステロール(LDL-C)低下療法により動脈硬化性疾患(ASCVD)の発症は減少しているが、最大耐用量の各種薬剤を用いてもLDL-Cが低下しない患者群がある。従来のLDL-C低下薬は、主にLDL受容体を介する機序によるものであった。angiopoietin-like 3(ANGPTL3)の遺伝的欠如で、中性脂肪(TG)、LDL-Cが低下していることが明らかになり、高脂血症マウスでANGPTL3が過剰産生されていることから、新たな治療ターゲットとしてANGPTL3が注目されるようになった。ANGPTL3はlipoprotein lipase(LPL)活性を阻害することでTGが上昇するが、LDL-Cへの作用は明らかではない。ただ、ANGPTL3を低下させることで、TGおよびLDL-Cが低下することが明らかなことから、現在、ANGPTL3に対するanti-oligonucleotide(ASO)やモノクローナル抗体が作成され、治験が開始されている。とくに家族性高コレステロール血症(FH)では、LDL受容体が欠損、あるいは機能低下していることから従来の薬剤では十分なLDL-C低下効果が認められなかった。本論文では、ANGPTL3に対するモノクローナル抗体(evinacumab)を用いて、従来の治療で不十分であった難治性高コレステロールFH患者を対象に第2相の試験が行われ、最大投与量で50%以上のLDL-C低下効果が認められた。FH患者を対象としているが、FHだけでなく、糖尿病やメタボリック症候群でもLPL活性が高いことが知られ、スタチンなどを用いてLDL-Cを低下させても心血管イベントを低下させることができない残余因子と考えられている。ANGPTL3をターゲットとした脂質異常症の治療により、新たなリスク低下が実現するかもしれない。

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COVID-19の院内死亡率、10代はインフルの10倍にも

 インフルエンザとCOVID-19は、類似した感染様式を伴う呼吸器疾患である。そのため、インフルエンザの流行モデルは、COVID-19の流行モデルの検証にもなり得ると考えられる。ただし、両者を直接比較するデータはほとんどない。フランス・ディジョンのUniversity of Bourgogne-Franche-Comté(UBFC)のLionel Piroth氏ら研究グループが、国の行政データベース(PMSI)を用いて後ろ向きコホート研究を実施したところ、入院を要するCOVID-19患者と季節性インフルエンザの患者の症状にはかなりの差異があり、11〜17歳におけるCOVID-19の院内死亡率は、インフルエンザの10倍にも上ることが明らかになった。The Lancet Respiratory Medicine誌2020年12月17日付のオンライン版に掲載。 本研究には、2020年3月1日~4月30日にCOVID-19で入院した全患者、および2018年12月1日~2019年2月28日にインフルエンザで入院した全患者が含まれ、年齢層ごとに層別化されたデータを基に、患者間の危険因子、臨床的特徴、および転帰の比較が行われた。 主な調査結果は以下のとおり。・8万9,530例のCOVID-19患者および4万5,819例のインフルエンザ患者が、それぞれの研究期間中にフランス国内で入院した。患者の年齢中央値は、COVID-19で68歳(四分位範囲[IQR]:52~82)、インフルエンザでは71歳(IQR:34~84)だった。 ・COVID-19患者は、インフルエンザ患者よりも肥満または太り過ぎの傾向があり、糖尿病、高血圧および脂質異常症が多く見られたのに対し、インフルエンザ患者は、心不全、慢性呼吸器疾患、肝硬変、および欠乏性貧血が多かった。 ・COVID-19の入院患者では、インフルエンザと比べ急性呼吸不全、肺塞栓症、敗血症性ショック、または出血性脳卒中の発症頻度が高かったが、心筋梗塞や心房細動の発症頻度は低かった。・院内死亡率は、COVID-19患者のほうがインフルエンザ患者よりも高く(1万5,104例[16.9%]/8万9,530例 vs.2,640例[5.8%]/4万5,819例)、相対死亡リスクは2.9(95%信頼区間[CI]:2.8~3.0)、年齢標準化死亡比は2.82であった。・入院患者のうち、18歳未満の小児の割合はインフルエンザよりもCOVID-19のほうが少なかった(1,227例[1.4%] vs.8,942例[19.5%])。・5歳未満では、インフルエンザよりもCOVID-19のほうが集中治療を要する頻度が高かった(14/613例[2.3%] vs.65/6973例[0.9%])。・11〜17歳におけるCOVID-19の院内死亡率は、インフルエンザよりも10倍高かった(5/458例[1.1%] vs.1/804例[0.1%])。 本結果について著者らは、対象患者数が少ないため、限定的な知見ではあるものの、入院を要するCOVID-19患者と季節性インフルエンザ患者の症状にはかなりの差異があること、小児においてはCOVID-19の入院率はインフルエンザよりも低いが、院内死亡率が高いことを指摘。本結果により、COVID-19の適切な感染予防策の重要性およびワクチンや治療の必要性が浮き彫りになったと述べている。

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COVID-19治療でシクレソニドの推奨見直し/厚生労働省

 2020年12月25日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4.1版」を公開した。 同手引きは診療の手引き検討委員会が中心となって作成され、第1版は3月17日に、第2版は5月18日に、第3版は9月4日に、第4版は12月4日に公表され、今回重要事項について大きく3点で加筆が行われた(なお、この手引きは2020年12月23日現在の情報を基に作成。今後の知見に応じ、内容に修正が必要となる場合がある)。■主な改訂点【病原体・疫学】・国内発生状況の内容を追記(12月23日までの情報に更新)【臨床像】・「重症化のリスク因子」の中で、重症化のリスク因子に「悪性腫瘍」「2型糖尿病」「脂質異常症」「喫煙」「固形臓器移植後の免疫不全」を追記【薬物療法】・「薬物療法」中の「その他の薬剤例」でシクレソニドにつき、「無症状・軽症の患者には推奨されない」を追記

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慢性リンパ性白血病におけるBTK阻害剤 アカラブルチニブの心血管系有害事象

 アストラゼネカは第62回米国血液学会で、慢性リンパ性白血病(CLL)に対するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤アカラブルチニブ単剤療法を受けた患者762例の心血管安全性データの統合解析において、アカラブルチニブで投与中止に至る心血管系の有害事象(AE)の発現率が1%未満であったと発表した。 この解析は、第III相のELEVATE-TN試験とASCEND試験、第II相の15-H-0016試験、そして第I/II相ACE-CL-001試験の4つの臨床試験が対象となり、アカラブルチニブ単剤療法を受けた未治療、または再発/難治性 CLLの患者が含まれている。観察期間中央値 25.9ヵ月時点で、129例(17%)の患者に心血管系のAEが認められ、7例(0.9%)の患者が心血管系のAEのために治療を中止した。 アカラブルチニブの投与期間中央値は 24.9カ月で、患者の2%以上に発現した心血管系のAEには、心房細動(4%)、心房細動/粗動(5%)、動悸(3%)、頻脈(2%)などがあり、心房細動の発現率は一般的な未治療CLL患者の集団と同程度(6%)であった。 グレード3以上の心血管系のAEは、37例(4%)に認められ、そのうち25%は治療開始から6カ月以内に報告された。その内訳は、心房細動(1.3%)、完全房室(AV)ブロック(0.3%)、急性冠症候群(0.1%)、心房粗動(0.1%)、第二度AVブロック(0.1%)、心室細動(0.1%)などであった。2例は心血管系のAEのため、死亡した(うっ血性心不全、心臓発作が各1例)。 全体として、心血管系のAEが認められた患者の91%、認められなかった患者の79%が、アカラブルチニブ投与前に1つ以上の心血管疾患リスク因子を有していた。心血管系のAEを発現した患者における、患者さんの20%以上が有していた心血管疾患リスク因子は、高血圧(67%)、高脂血症(29%)および不整脈(22%)だった。 Jennifer Brown氏(Dana-Farberがん研究所)は、CLL患者に対するBTK阻害剤による治療では、心血管系の合併症が治療中止の理由となることが多いことに言及したうえで、「アカラブルチニブ投与に伴う心血管系のAEリスクは、未治療のCLL患者の一般集団と同程度であったことが示唆されており、医師にとってアカラブルチニブを処方するうえで重要なデータである」と述べている。 アストラゼネカは、前治療歴のある高リスクCLL患者を対象に、アカラブルチニブとイブルチニブを比較評価する第III相のELEVATE-RR試験など、CLLを対象とした追加試験を検討している。

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ロルラチニブ、進行ALK陽性NSCLCの1次治療で有効/NEJM

 未治療の進行未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の患者では、ロルラチニブの投与はクリゾチニブと比較して、無増悪生存(PFS)期間が有意に延長し頭蓋内奏効の割合が優れるが、Grade3または4の有害事象(主に脂質値の異常)の発生頻度は高いことが、米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのAlice T. Shaw氏らが行った「CROWN試験」の中間解析で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年11月19日号で報告された。ロルラチニブは第3世代のALK阻害薬で、血液脳関門を通過して中枢神経系に到達するようデザインされており、第Iおよび第II相試験では、第1・第2世代ALK阻害薬による治療が失敗した患者において強力な抗腫瘍活性が確認されている。第1世代ALK阻害薬クリゾチニブは、本試験開始時の標準的な1次治療薬であった。23ヵ国104施設が参加した無作為化第III相試験 研究グループは、進行ALK陽性NSCLC患者の1次治療におけるロルラチニブの有用性をクリゾチニブと比較する目的で、国際的な無作為化第III相試験を実施した(Pfizerの助成による)。23ヵ国104施設が参加し、2017年5月~2019年2月の期間に参加者の無作為割り付けが行われた。今回は、中間解析の結果が報告された。 対象は、年齢18歳または20歳以上(参加施設の地域の法令に準拠)で、組織学的/細胞学的に局所進行または転移を有するNSCLCと確定され、ALK陽性で、転移を有する疾患に対する全身治療歴のない患者であった。被験者は、ロルラチニブ(100mg/日)またはクリゾチニブ(250mg×2回/日)の経口投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントはPFS期間とし、盲検下で独立した中央判定によって評価された。副次エンドポイントは、独立した評価による客観的奏効や頭蓋内奏効などであった。有効性の中間解析は、病勢進行または死亡の期待件数177件の約75%(133件)が発生した時点で行われた。1年後の病勢進行または死亡のリスクが72%減少 296例が登録され、149例がロルラチニブ群(平均年齢[±SD]59.1±13.1歳、女性56%)、147例がクリゾチニブ群(55.6±13.5歳、62%)に割り付けられた。ベースラインで、ロルラチニブ群の26%、クリゾチニブ群の27%で脳転移が認められた。PFSのフォローアップ期間中央値は、ロルラチニブ群が18.3ヵ月、クリゾチニブ群は14.8ヵ月だった。 12ヵ月の時点におけるPFS患者の割合は、ロルラチニブ群が78%(95%信頼区間[CI]:70~84)と、クリゾチニブ群の39%(30~48)に比べ有意に優れた(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.28、95%CI:0.19~0.41、p<0.001)。 客観的奏効の割合は、ロルラチニブ群が76%(95%CI:68~83)と、クリゾチニブ群の58%(49~66)と比較して良好であった(オッズ比[OR]:2.25、95%CI:1.35~3.89)。また、ベースライン時に脳転移が認められた患者(測定可能か否かを問わず)における頭蓋内奏効割合は、ロルラチニブ群が66%、クリゾチニブ群は20%であり(OR:8.41、95%CI:2.59~27.23)、測定可能病変を有していた患者の頭蓋内奏効割合はそれぞれ82%および23%であった(16.83、1.95~163.23)。測定可能病変を有していた患者の頭蓋内完全奏効は、それぞれ71%および8%で達成された。 12ヵ月の時点で、脳転移の進行のない生存割合は、ロルラチニブ群が96%と、クリゾチニブ群の60%よりも良好であった(HR:0.07、95%CI:0.03~0.17)。また、同時点での初回イベントとしての脳転移の進行の累積発生率は、ロルラチニブ群が3%、クリゾチニブ群は33%だった(0.06、0.02~0.18)。 ロルラチニブ群でとくに頻度の高い有害事象として、高コレステロール血症(ロルラチニブ群70% vs.クリゾチニブ群4%)、高トリグリセライド血症(64% vs.6%)、高脂血症(11% vs.0%)、浮腫(55% vs.39%)、体重増加(38% vs.13%)、末梢性ニューロパチー(34% vs.15%)、認知障害(21% vs.6%)、高血圧(18% vs.2%)、気分障害(16% vs.5%)が認められた。また、ロルラチニブ群はクリゾチニブ群と比較して、Grade3または4の有害事象(主に脂質値の異常)が多かった(72% vs.56%)。有害事象による治療中止は、それぞれ7%および9%で発生した。 著者は、「ロルラチニブは、複数の前臨床研究で第1・第2世代のALK阻害薬よりも強力にALKを阻害することが示され、既知のすべての単一ALK耐性変異に対する効力を保持している。これらの点が、今回の1次治療におけるロルラチニブの顕著な有効性の要因と考えられる」としている。

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高用量オメガ3脂肪酸、高リスク患者のMACE発生を抑制せず/JAMA

 スタチン治療中の心血管高リスクの患者において、通常治療に加えてのEPAとDHAのカルボン酸製剤(オメガ-3CA)の摂取はコーン油摂取と比較して、主要有害心血管イベント(MACE)の複合アウトカムの発生に有意差はなかったことが示された。オーストラリア・モナシュ大学のStephen J. Nicholls氏らが多施設共同二重盲検無作為化試験「STRENGTH試験」の結果を報告した。EPAとDHAのオメガ-3脂肪酸が心血管リスクを抑制するかは明らかになっていない。一方で、オメガ-3CAはアテローム性脂質異常症や心血管高リスクの患者の脂質および炎症マーカーに対して好ましい効果があることが文書化されていた。著者は、「今回の結果は、MACE抑制を目的とした高リスク患者でのオメガ-3CAの使用を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2020年11月15日号掲載の報告。22ヵ国のスタチン治療中患者を対象に、コーン油と比較 オメガ-3CAまたはコーン油摂取について比較した試験は、北米、欧州、南米、アジア、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの22ヵ国・675の大学または地域病院で、スタチン治療中で心血管リスクが高く、高トリグリセライド血症およびHDLコレステロール(HDL-C)が低値の患者を対象に行われた。2014年10月30日~2017年6月14日に登録が行われ、試験は2020年1月8日に終了、最終患者の受診は2020年5月14日であった。 被験者は、スタチン等の通常の治療に加えて、4g/日のオメガ-3CAを摂取する群(6,539例)または不活性比較群として機能することを目的としたコーン油を摂取する群(6,539例)に、無作為に割り付けられた。 有効性の主要評価項目は、心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・冠動脈血行再建術・入院を要した不安定狭心症の複合(MACE)であった。有益性の可能性が見込めず試験は早期に中止 1,384例の患者に主要エンドポイントのイベントが発生した時点(計画では1,600件)で行われた中間解析の結果、オメガ-3CAがコーン油よりも臨床的有益性を認める可能性は低いことが示され、試験は早期に中止となった。 治療中であった1万3,078例の患者(平均年齢62.5[SD 9.0]歳、女性35%、糖尿病70%、LDL-C中央値75.0mg/dL、トリグリセライド中央値240mg/dL、HDL-C中央値36mg/dL、高感度CRP中央値2.1mg/dL)において、1万2,633例(96.6%)が主要エンドポイント発生に関する試験を完了した。 主要エンドポイントの発生は、オメガ-3CA群785例(12.0%)、コーン油群795例(12.2%)であった(ハザード比[HR]:0.99[95%信頼区間[CI]:0.90~1.09]、p=0.84)。 消化器系の有害事象の発現が、オメガ-3CA群(24.7%)でコーン油群(14.7%)よりも高頻度に観察された。

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難治性高コレステロール血症、evinacumabでLDL-C半減/NEJM

 難治性高コレステロール血症患者の治療において、アンジオポエチン様蛋白3(ANGPTL3)の完全ヒト化モノクローナル抗体であるevinacumab(高用量)はプラセボに比べ、LDLコレステロール値を50%以上低下させることが、米国・マウント・サイナイ・アイカーン医科大学のRobert S. Rosenson氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月15日号に掲載された。ANGPTL3は、リポタンパク質リパーゼや血管内皮リパーゼを阻害することで、脂質代謝の調節において重要な役割を担っている。ANGPTL3の機能喪失型変異を有する患者は、LDLコレステロールやトリグリセライド、HDLコレステロールが大幅に低下した低脂血症の表現型を示し、冠動脈疾患のリスクが一般集団より41%低いと報告されている。evinacumabは、第II相概念実証研究の機能解析で、LDL受容体とは独立の機序でLDLコレステロールを低下させる作用が示唆されている。皮下投与で3用量、静脈内投与で2用量とプラセボを比較 本研究は、難治性高コレステロール血症患者におけるevinacumabの安全性と有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、20ヵ国85施設が参加した(Regeneron Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18~80歳、難治性高コレステロール血症を有するヘテロ接合性または非ヘテロ接合性の原発性家族性高コレステロール血症で、エゼチミブの有無を問わず、最大耐用量のPCSK9阻害薬またはスタチンに抵抗性の患者であった。難治性高コレステロール血症は、アテローム性動脈硬化による心血管疾患がある場合は70mg/dL以上、ない場合は100mg/dL以上と定義された。 被験者は、evinacumabまたはプラセボを皮下または静脈内投与する群に無作為に割り付けられた。皮下投与では、450mg/週、300mg/週、300mg/2週、プラセボに1対1対1対1の割合で、静脈内投与では、15mg/kg/4週、5mg/kg/4週、プラセボに1対1対1の割合で割り付けられた。 主要エンドポイントは、ベースラインから16週のLDLコレステロールの変化率とした。HDLコレステロールも用量依存性に低下 272例が登録され、皮下投与例(163例、平均年齢54±13.2歳、女性62%、ヘテロ接合性72%)ではevinacumab 450mg群に40例、同300mg/週群に43例、同300mg/2週に39例、プラセボ群には41例が、静脈内投与例(109例、54.6±11.0歳、56%、81%)では、15mg/kg/4週群に39例、5mg/kg/4週群に36例、プラセボ群には34例が割り付けられた。全例がPCSK9阻害薬の投与を受けており、44%が最大耐用量のスタチン、30%がエゼチミブの投与を受けていた。 16週の時点で、皮下投与例におけるベースラインからのLDLコレステロール値の変化率の最小二乗平均値の差は、450mg群とプラセボ群が-56.0ポイント、300mg/週群とプラセボ群が-52.9ポイント、300mg/2週群とプラセボ群は-38.5ポイントであった(いずれもp<0.001)。また、静脈内投与例における変化率の最小二乗平均値の差は、15mg/kg/4週群とプラセボ群が-50.5ポイント(p<0.001)、5mg/kg/4週群とプラセボ群は-24.2ポイントの差であった。皮下投与例、静脈内投与例とも、2週後にはevinacumab治療への反応が認められ、16週まで維持された。 脂質値は、evinacumabの皮下投与および静脈内投与が、プラセボに比べて実質的に低下した。リポ蛋白(a)を除き、アテローム性リポ蛋白はevinacumabの用量依存性に低下した。 皮下投与例におけるHDLコレステロールの16週時のベースラインからの変化は、450mg群が-27.9%、300mg/週群が-30.3%、300mg/2週は-19.5%であり、プラセボ群は-1.7%であった。また、静脈内投与例では、15mg/kg/4週群が-31.4%、5mg/kg/4週群は-14.9%であり、プラセボ群は1.9%だった。 治療期間中の有害事象の発生率は各群54~84%の範囲であり、重篤な有害事象の発生率は3~16%の範囲であった。治療中止の原因となった有害事象は、3~6%で発生した。 著者は、「これらの結果は、ANGPTL3の阻害による、心血管疾患に対する潜在的な有益性を支持するものである」と結論し、「evinacumabで観察されたHDLコレステロール低下の重要性はまだ十分に解明されていないが、自然発生的な遺伝学的ANGPTL3欠損症の患者では、低HDLコレステロールは心血管疾患のリスク増大とは関連がなかったと報告されている」と指摘している。

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介護負担軽減のためエチゾラムを開始したが、過鎮静でかえって負担増大したため中止【うまくいく!処方提案プラクティス】第29回

 エチゾラムなどのベンゾジアゼピン系睡眠薬は、75歳以上あるいはフレイルから要介護状態の高齢者においては、過鎮静、認知機能や運動機能の低下、せん妄、転倒骨折のリスクになりうるため、慎重に投与する必要があります。今回の症例では、エチゾラムの服薬開始から中止までの経緯と、看護師と連携したフォローアップについて紹介します。患者情報90歳、男性(施設入居)基礎疾患ラクナ梗塞、アルツハイマー型認知症、高血圧症、脂質異常症、前立腺肥大症、変形性腰椎症、高度房室ブロック(ペースメーカー留置)、慢性心不全介護度要介護4訪問診療の間隔2週間に1回処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.アスピリン原末0.1g 分1 朝食後3.ジゴキシン錠0.125mg 1錠 分1 朝食後4.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 朝食後5.シロスタゾール錠100mg 1錠 分1 朝食後6.アルファカルシドール錠0.5μg 1錠 分1 朝食後7.タムスロシン錠0.2mg 1錠 分1 夕食後8.プロピベリン錠10mg 1錠 分1 夕食後9.フルボキサミン錠50mg 1錠 分1 夕食後10.フレカイニド錠50mg 2錠 分2 朝夕食後11.エチゾラム錠0.5mg 1錠 分1 夕食後(施設入居後の初診で追加)本症例のポイントこの患者さんは、アルツハイマー型認知症を基礎疾患とし、施設入居当初から入眠困難の状態で、徘徊や日中の活動低下などもありました。入居4日目の初診同行時に、施設看護師から、今後の介護負担増大が懸念されるため睡眠導入薬の処方を検討してほしいという話がありました。認知症患者における睡眠導入薬のエビデンスは乏しいため推奨されていませんが、現時点では施設介護職員の負担が大きいため、一時的な使用は必要と考えました。施設入居からまだ日が浅く、環境変化に慣れていないことが不眠の原因となっている可能性があるため、長期的ではなく短期的な服薬や状況に応じた頓用が適していると考えました。そこで睡眠障害のパターンが入眠障害型であることから、転倒リスクを考慮して筋弛緩作用が弱い低用量ゾルピデムを提案しました。しかし、医師からは施設介護職員が困っているのでしっかり落ち着かせる必要があるため、エチゾラム錠0.5mgを処方するとの回答でした。エチゾラムなどのベンゾジアゼピン系睡眠薬は『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』において、75歳以上あるいはフレイルから要介護状態の高齢者では、過鎮静、認知機能や運動機能の低下、せん妄、転倒骨折のリスクになることが指摘されています。この患者さんも当てはまりますので、過鎮静や筋弛緩作用による転倒などのリスクを伝え、経過について看護師と小まめに共有することで話がまとまりました。患者さんは、エチゾラム錠0.5mgの服用2日目には入眠できるようになりました。しかし、服用4日目の朝から座位保持が困難な状況になり、日中のふらつきが強く、転倒の危険性が高まってきました。看護師から移動や食事介助も難しいレベルの傾眠とふらつきがあり、かえって介護負担が増えているという相談があったため、医師に処方中止の提案をすることにしました。処方提案と経過医師に電話で上記の状況を報告し、エチゾラムを一旦中止あるいは減量で経過をみるか、エチゾラムを中止して非ベンゾジアゼピン系薬を頓用にするのはどうか提案しました。医師より、「鎮静も強く転倒リスクがあるのは問題なのでエチゾラムを中止して経過をみたい。薬が抜け切ったところで状況がまた変わるようなら他剤を検討する」という返答があり、即日エチゾラムを中止しました。看護師にも医師とのやりとりを共有し、エチゾラムを中止して鎮静が緩和した後に再度不眠で困るようなことがあれば他剤の提案を検討するので、経過については引き続き情報共有してほしい旨を伝えました。その結果、患者さんはエチゾラムの服薬を中止してから3日目まで傾眠とふらつきはありましたが徐々に改善し、5日目には食事や移動の介助時のふらつきもないほどに改善しました。現在は、活気を取り戻し、睡眠も問題ないことから処方薬の整理を医師と検討しているところです。1)日本老年医学会, 日本医療研究開発機構研究費・高齢者の薬物治療の安全性に関する研究研究班 編. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 改訂第5版. 日本老年医学会;2016.2)臨床神経学. 2014;54.

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高齢者でも積極的なコレステロール低下治療が有用だが個別的治療は常に念頭に置くべき(解説:桑島巌氏)-1323

 本論文は24の大規模臨床試験における75歳以上の高齢者2万1,492例について、コレステロール治療と心血管合併症リスク低下との関連をメタ解析した成績である。結果から言うと、75歳以上の高齢者でも若・中年者同様にコレステロール値は下げたほうが心筋梗塞、脳卒中などの心血管イベントリスクは有意に低下するという結果であった。 LDLコレステロール値を1mmol/L(38.67mg/dL)下げると心血管イベント低下率は26%で75歳未満の低下率15%と差がないという結果は、高齢者でもコレステロールの高い症例では心血管イベントは抑制できることを明瞭に示した。 このメタ解析は心血管リスクを有している高コレステロール例を下げることのメリットを実証したものであり、一般住民での追跡研究のメタ解析ではない。したがって、一般住民でのコレステロール値が低いほうが生命予後がよいか否かとの論争とは論点が異なる。 メタ解析の課題の1つである臨床試験の選択における恣意性に関しては、Cholesterol Treatment Trialist’s Collaboration(CTTC)の24試験も含んでおり問題がないと思われる。 メタ解析の避けられない短所として注意すべき点である患者背景の非均一性に関しては、多様性を特徴とする高齢者対象であるだけに、本研究の結果をそのまま臨床の場における高齢者の治療に当てはめるわけにはいかない。本メタ解析に含まれている臨床研究では、フレイルや認知機能障害、腎機能障害例の多くは除外されていることは念頭に置くべきである。また、有効性を検証するメタ解析では、有害事象や安全性に関する情報が希薄になりがちであることにも注意が必要である。 高齢者におけるリスクのある高コレステロール血症に対しても若・中年者同様に、厳格なコレステロール管理が重要であることを念頭に置きつつ、安全性を考慮しながら個別的な治療を心掛ける必要がある。

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生活改善にサポートが必要な患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第39回

■外来NGワード「意思を強く持ちなさい!」(長くは続かない)「ご家族の言うことに従いなさい!」(本人の気持ちを尋ねず)「きちんとしないと合併症が出ますよ!」(医学的脅し)■解説 誰の助けも必要とせず、意思を強く持って一人で頑張る患者さんがいる一方で、家族や知人のサポートが必要な患者さんもいます。こういった社会的サポートについて、ハウス(J.S.House)は4つの分類を提唱しています。金銭面の援助や車による送迎など、直接的に力を貸すのは『道具的サポート』、知識や情報を「こんな運動をしたらいいよ!」「近くのフィットネスジムに行ってみれば?」などと提供するのは『情報的サポート』といいます。また、「頑張っているね!」と励ましたり、愚痴を聞いたりして相談に乗るのは『情緒的サポート』、食事や運動、服薬がうまくいっているかどうかの確認は『評価的サポート』といいます。これらの社会的サポートを必要としているにもかかわらず、うまく得られていない患者さんには、サポーター向けの文書(手紙)を作るという手があります。 たとえば、「一緒に運動しませんか?」「お菓子は週1回までがいいですね?」など、自分にできることについての問い掛けや、「頑張っているわね。応援しています」など、励ましの声掛けをお願いします。逆に、「ダイエットしているのにあまり変わらないわね」「私は普通に食べるけど」などと言って、モチベーションを下げるような言動には気を付けていただけると助かります。などの内容が有効です。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師調子はいかがですか?患者頑張っていますが、なかなか一人では難しいですね。医師どなたか、身近で○○さんをサポートしてくれる人はいませんか?患者うーん、旦那と娘ですかね。医師そうですか。では、お二人に対して思うことはありますか?患者娘は甘いものをよく買ってくるので、つい食べてしまうんですよね。医師なるほど。お母さんの分まで買って来るんですね。旦那さんは?患者少し痩せたのに「あまり変わらないな」ですって…。医師それでは、今の気持ちを基にして、旦那さんと娘さんにお手紙を書いておきますね。患者本当ですか。ありがとうございます。(うれしそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「○○さんをサポートしてくれる人はいますか?」(サポーターの確認)「サポーターさんへのお願いのお手紙を作っておきますね」(サポートの内容、やる気が出る声掛けとNGワードを記載)Williams DR, House JS. WHO Reg Publ Eur Ser. 1991;37:147-172.

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間食がなかなかやめられない患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第38回

■外来NGワード「間食をやめなさい!」(できたら苦労しない)「お菓子を買わないようにしなさい!」(わかっているけどできない)「もう一生分のお菓子は食べたでしょ!」(非論理的)■解説 血糖コントロール不良の原因が明らかに間食のし過ぎにもかかわらず、なかなかやめられない患者さんがいます。そういった患者さんに「間食をやめなさい!」「お菓子を買わないようにしなさい!」と一方的に伝えても、行動に移してくれないでしょう。食べることが好きな患者さんは、目の前に食べ物があると、つい手が出てしまいます。そして、一度食べ始めるとなくなるまで食べてしまいます。つまり、そもそもの“食べたくなる刺激”を減らすことが大切なのです。これを「刺激統制法」といいます。しかし、「食べ物を目に付かないところに置きなさい!」と指導したところで、患者さんは自分で置いた場所を覚えています。ただ隠してもらうだけでなく、たとえば戸棚の奥、高い場所、ガムテープ張りの開けにくい箱の中にしまって、「1つまで!」と張り紙をするなど、食べることに困難を加える工夫が必要です。さらに、本当に食べたいのかを自問自答してもらうことも大切です。刺激統制法に認知の再構成を組み合わせることで、間食の機会が減らせるとよいですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師最近、間食はしていますか?患者なるべく控えるようにと思いながら、実際はなかなか…。医師そうですか。では、どんな工夫をされていますか?患者低カロリーの食品を選ぶようにしたり、小袋のお菓子を買うようにしたりしています。医師なるほど。いろいろ工夫されていますね。けど、結局食べちゃう…と。患者そうなんです。あると食べちゃうんですよね。医師ものは考えようですが、空腹感は脂肪が燃え始めている証拠ですよ。患者えっ、そうなんですか?医師はい。なので、少しおなかが空いてきたタイミングがダイエットの分かれ道です。そこで、自問自答してみてください。患者自問自答…?医師たとえば、おなかを少しつまんでみて、「今、本当に食べたいか」を自分に問い掛けるんです。食べたら、つまんだ脂肪は減らずに、さらに増えるんじゃないでしょうか…。患者なるほど、それは効果がありそうです。頑張ってやってみます。(うれしそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「空腹感は脂肪が燃え始めた証拠です。食べる前におなかをつまんでみて、本当に食べたいかどうかを自問自答してみてもいいかもしれませんね」

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