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スタチン治療患者の将来リスク予測、CRP vs.LDL-C/Lancet

 スタチン療法を受ける患者において、高感度C反応性蛋白(CRP)で評価した炎症のほうがLDLコレステロール(LDL-C)値で評価したコレステロールよりも、将来の心血管イベントおよび死亡リスクの予測因子として強力であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M. Ridker氏らが行った、3つの無作為化試験の統合解析の結果、示された。著者は、「示されたデータは、スタチン療法以外の補助療法の選択を暗示するものであり、アテローム性疾患のリスク軽減のために、積極的な脂質低下療法と炎症抑制治療の併用が必要である可能性を示唆するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年3月6日号掲載の報告。3つの国際無作為化試験データを統合解析 研究グループは、炎症と高脂質血症はアテローム性動脈硬化の原因となるが、スタチン療法を受けていると将来の心血管イベントリスクに対する両因子の相対的な寄与が変化する可能性があり、補助的な心血管治療の選択について影響を与えるとして今回の検討を行った。スタチン治療を受ける患者の主要有害心血管イベント、心血管死、全死因死亡のリスクの決定因子として、高感度CRPとLDL-Cの相対的な重要性を評価した。 アテローム性疾患を有する/高リスクでスタチン療法を受ける患者が参加する、3つの国際的な無作為化試験「PROMINENT試験」「REDUCE-IT試験」「STRENGTH試験」のデータを統合解析した。 ベースラインの高感度CRP(残留炎症リスクのバイオマーカー)の上昇と同LDL-C(残留コレステロールリスクのバイオマーカー)の上昇の四分位値を、将来の主要有害心血管イベント、心血管死、全死因死亡の予測因子として評価。年齢、性別、BMI、喫煙状況、血圧、心血管疾患の既往、無作為化された割り付け治療群で補正した分析で、高感度CRPとLDL-Cの四分位数にわたって、心血管イベントと死亡のハザード比(HR)を算出した。炎症は将来リスクを有意に予測、コレステロールの予測は中立もしくは弱い 統合解析には患者3万1,245例が包含された(PROMINENT試験9,988例、REDUCE-IT試験8,179例、STRENGTH試験1万3,078例)。 ベースラインの高感度CRPとLDL-Cについて観察された範囲、および各バイオマーカーとその後の心血管イベント発生率との関係は、3つの試験でほぼ同一であった。 残留炎症リスクは、主要有害心血管イベントの発生(高感度CRPの四分位最高位vs.最小位の補正後HR:1.31、95%信頼区間[CI]:1.20~1.43、p<0.0001)、心血管死(2.68、2.22~3.23、p<0.0001)、全死因死亡(2.42、2.12~2.77、p<0.0001)のいずれとも有意に関連していた。 対照的に、残留コレステロールリスクの関連は、主要有害心血管イベントについては中立的なものであったが(LDL-Cの四分位最高位vs.最小位の補正後HR:1.07、95%CI:0.98~1.17、p=0.11)、心血管死(1.27、1.07~1.50、p=0.0086)と全死因死亡(1.16、1.03~1.32、p=0.025)については弱かった。

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スタチン不耐患者、bempedoic acidがCVリスクに有効か/NEJM

 スタチンの服用が困難なスタチン不耐(statin-intolerant)患者において、ATPクエン酸リアーゼ阻害薬ベンペド酸(bempedoic acid)はプラセボと比較し、LDLコレステロール値を低下し、主要有害心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、冠動脈血行再建)のリスクを低下することが示された。一方でベンペド酸投与により、脳卒中、心血管死、全死因死亡のそれぞれのリスクは低減せず、また痛風や胆石症発生リスクはやや増大した。米国・クリーブランドクリニックのSteven E. Nissen氏らによる二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果で、NEJM誌オンライン版2023年3月4日号で発表された。ベンペド酸は、LDL値を低下し筋肉関連の有害事象の発生リスクは低いが、心血管アウトカムへの影響は明らかになっていなかった。“スタチン不耐”でCVD、または高リスクの患者を対象に試験 研究グループは、容認できない副作用のためにスタチン服用ができない、または困難な患者(スタチン不耐患者)で、心血管疾患が認められるか、または同リスクの高い患者1万3,970例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方(6,992例)にはベンペド酸180mgを、もう一方(6,978例)にはプラセボを、それぞれ経口投与した。 主要エンドポイントは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、冠動脈血行再建の4つのうちのいずれかの発生と定義した主要有害心血管イベントだった。心筋梗塞、冠動脈血行再建の発生率、ベンペド酸で各2割程度減少 追跡期間中央値は40.6ヵ月。ベースラインのLDLコレステロール値は、両群共に139.0mg/dLであり、6ヵ月後の低下幅は、ベンペド酸群がプラセボ群より29.2mg/dL大きく、減少率の群間差は21.1ポイントだった。 主要エンドポイントの発生率は、ベンペド酸群(11.7%)がプラセボ群(13.3%)より有意に低かった(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.79~0.96、p=0.004)。 心血管死、非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞の複合発生率は、8.2% vs.9.5%(HR:0.85、95%CI:0.76~0.96、p=0.006)、また心筋梗塞(致死的・非致死的)の発生率は3.7% vs.4.8%(0.77、0.66~0.91、p=0.002)、冠動脈血行再建の発生率は6.2% vs.7.6%(0.81、0.72~0.92、p=0.001)で、ベンペド酸群がプラセボ群より有意に低かった。 一方でベンペド酸は、脳卒中(致死的・非致死的)、心血管死、全死因死亡への有意な影響はみられなかった。さらに、痛風(ベンペド酸群3.1% vs.プラセボ群2.1%)、胆石症(2.2% vs.1.2%)の発生率はベンペド酸群で高く、同様に血清クレアチニン値、尿酸値、肝酵素値もベンペド酸群でわずかだが上昇が認められた。

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冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン、11年ぶりに改訂/日本循環器学会

 『2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン』が第87回日本循環器学会年次集会の開催に合わせ発刊され、委員会セッション(ガイドライン部会)において、藤吉 朗氏(和歌山県立医科大学医学部衛生学講座 教授)が各章の改訂点や課題について発表した。 本ガイドライン(以下、本GL)は日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会をはじめとする全11学会の協力のもと、これまでの『虚血性心疾患の一次予防GL(2012年改訂版)』を引き継ぐ形で作成された。今回の改訂では、一次予防の特徴を踏まえ「冠動脈疾患とその危険因子(高血圧、脂質、糖尿病など)の診療に関わるすべての医療者をはじめ、産業分野や地域保健の担当者も使用することを想定して作成された。また、2019年以降に策定された各参加学会のガイドライン内容も本GLと整合性のある形で盛り込み、「一般的知識の記述は最小限に、具体的な推奨事項をコンパクトに提供することを目指した」と藤吉氏は解説した。  本GLは全5章で構成され、とくに第2章の高血圧や脂質異常などに関する内容、第3章の高齢者、女性、CKD(慢性腎臓病)などを中心に改訂している。 全5章のなかで変更点をピックアップしたものを以下に示す。 第2章:危険因子の評価と治療<高血圧>・『高血圧治療ガイドライン2019』(日本高血圧学会)に準拠。・血圧の診断については、SBP/DBP(拡張期/収縮期血圧)130~139/80~89mmHg群から循環器疾患リスクが上昇してくるため、その名称を従来の「正常高値血圧」から「高値血圧」とした。また、診察室血圧と家庭血圧の間に差がある場合、家庭血圧による診断を優先する。・降圧目標について、75歳以上の高齢者は原則140/90mmHg未満とするが、高齢者でも厳格降圧(130/80mmHg未満)の適応となる併存疾患を有しており、かつ厳格降圧の忍容性ありと判断されれば過降圧に注意しながら130/80mmHg未満を目指すことが記されている。・降圧薬の脳心血管病抑制効果の大部分は、薬剤の特異性よりも降圧の度合いによって規定されている。その点を前提に、降圧薬治療の進め方に関する図を掲載した(p.22 図4)。<脂質異常>・脂質異常は『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』(日本動脈硬化学会)に準拠し、危険因子の包括的評価(p.26 図5)にて、治療方針を決定する(p.23 表8)。・治療すべき脂質の優先順位を明確化した(1:LDL-C、2:non-HDL-C、3:TG/HDL-C)。<糖尿病・肥満>・糖尿病の診断早期から適切な血糖管理・治療が重要で、その理由は、糖尿病診断前のHbA1cが上昇していない耐糖能異常の段階から冠動脈疾患(CAD)リスクが上昇するため。・2型糖尿病の血糖降下薬の特徴が表で明記されている(p.31 表13)。・糖尿病患者においてCADの一次予防を目的としてアスピリンなどの抗血小板薬をルーチンで使用することを推奨しない、とした。これは近年のエビデンスを踏まえた判断であり、以前のガイドラインとは若干異なっている。<運動・身体活動>・運動強度・量を説明するため、身体活動の単位である「METs(メッツ)」や、主観的運動強度の指標である「Borg指数」に関する図表(p.42 表16、図6)を掲載し、日常診療での具体的指標を示した。<喫煙・環境要因、CAD発症時対処に関する患者教育・市民啓発、高尿酸血症とCAD>・禁煙に関する新たなエビデンスを記載し、新型タバコについても触れている。・寒冷や暑熱などの急激な温度変化がCAD誘発リスクを高めること、大気汚染からの防御などに触れている。第3章:特定の注意を要する対策・病態・本章はポリファーマシー、フレイル、認知症、エンドオブライフに注目して作成されている。<高齢者>・75歳までは活発な高齢者が増加傾向である。また年齢で一括りにすると個人差が大きいため、個別評価の方法について本GLに記載した。<女性>・CADリスクの危険因子は男性と同じだが、女性の喫煙者は男性喫煙者に比してその相対リスクが高くなる傾向がある。また、脂質異常症と更年期障害を同時に有する女性に対しては、禁忌・慎重投与に該当しないことを確認したうえでホルモン補充療法を考慮する、とした。<慢性腎臓病(CKD)>・高中性脂肪(高TG)血症を有するCKDに対する注意喚起として、フィブラート系薬剤は、高度腎機能障害を伴う場合には、ペマフィブラート(肝臓代謝)は慎重投与、それ以外のフィブラート系は禁忌であることが記載された。 このほか、本GLで推奨した危険因子の包括的管理に関連し、第2章では包括的管理や予測モデルについて、また第4章にはリスク予測からみた潜在性動脈硬化指標に関する記載を加えた。第5章「市民・患者への情報提供」では市民への急性心筋梗塞発症時の対応や、心肺蘇生法・AEDなどについて触れている。 最後に同氏は「将来的には患者プロファイルを入力することで、必要な情報がすぐに算出・表示できるようなアプリを多忙な臨床医のために作成していけたら」と今後の展望を述べた。 本GLの全文は日本循環器学会のホームページでPDFとして公開している。詳細はそちらを参照いただきたい。

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メタボ該当者はうつ病リスクが高い―国内のコホート内症例対照研究

 メタボリックシンドローム(MetS)に該当する人は、うつ病のリスクが高い可能性のあることが報告された。名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部の今泉貴広氏、同大学大学院医学系研究科病態内科学腎臓内科の丸山彰一氏らによる研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に11月3日掲載された。 うつ病は労働者の精神疾患として最も一般的に見られる疾患であり、公衆衛生上の大きな問題となっている。うつ病が糖尿病や心血管疾患のリスクと関連のあることは既に知られており、さらにそれらの発症前段階に当たるMetSも、うつ病と関連のあることが報告されている。ただし、MetSとうつ病との関連を縦断的に示した研究はなく、MetS該当者が将来的にうつ病を発症しやすいのかどうかは明らかになっていない。仮にそのような関連があるとすれば、MetSによる心血管疾患の発症抑止という目的で行われている特定健診・保健指導を、うつ病予防の介入の機会とするという公衆衛生対策も可能と考えられる。このような背景のもと今泉氏らは、健診データと医療費請求データを用いて、MetS該当者がうつ病を発症しやすいのかを検討した。 2014~2018年度に健診を受診した18~75歳の成人13万4,677人から、腎不全患者や既に抗精神病薬が処方されている人、解析に必要なデータが欠落している人などを除外し、7万6,277人を抽出。2019年3月末まで観察し、抗うつ薬(SSRI、SNRI、NaSSAという3種類の薬)の処方状況を調査した。 7万6,277人のうち、2,051人には観察開始時点で抗うつ薬が処方されており(既処方群)、残りの7万4,226人のうち941人は、観察期間中に抗うつ薬の処方が行われていた(新規処方群)。抗うつ薬が一度も処方されていない群(非処方群)を加えて3群を比較すると、年齢や性別(男性の割合)には有意差がないものの、MetS該当者率は既処方群が16.1%、新規処方群は16.0%であり、非処方群の11.7%より高かった。また、既処方群は他の2群に比べて糖尿病や脂質異常症の割合が高かった。 次に、抗うつ薬の新規処方に関連する因子を検討するため、既処方群を除外した上で、性別と年齢(±3歳以内)が一致する新規処方群と非処方群を1対10の割合で割り当て、計1万915人から成るデータセットを作成し、コホート内症例対照研究を実施した。年齢、性別、喫煙・飲酒・運動・睡眠習慣、睡眠薬・抗不安薬・鎮痛薬(NSAID)の処方、心血管疾患やがんによる入院を調整した多変量解析の結果、以下に記すように、MetSであることやMetSの構成因子などの多くが、抗うつ薬の新規処方と有意に関連していることが明らかになった。 MetS該当者に対する抗うつ薬新規処方のオッズ比(OR)は1.53(95%信頼区間1.24~1.88)、BMIは1高いごとにOR1.04(同1.02~1.06)、腹囲長は10cmごとにOR1.17(1.08~1.27)、20歳からの体重増加が10kg以上でOR1.46(1.25~1.70)、高血圧OR1.17(1.00~1.37)、耐糖能障害OR1.29(1.05~1.58)、脂質異常症OR1.27(1.08~1.51)。なお、このほかに生活習慣関連で、摂食速度が遅いこと(普通に比べてOR1.45)や睡眠不足(OR1.42)が抗うつ薬の新規処方と正の関連があり、摂食速度が速いこと(OR0.64)や飲酒習慣(めったに飲まないに比べて時々はOR0.79、毎日はOR0.65)は負の関連が認められた。 著者らは本研究には、観察研究であり因果関係は不明なこと、SSRIなど3タイプ以外の抗うつ薬による治療を受けている人をうつ病に含めていないこと(その他の抗うつ薬はうつ病治療以外にも使われることが多いため)、非薬物治療を受けている患者やうつ病による休職中で健診を受けていない人を把握できていないことなどの限界点があるとしている。その上で、「MetSやMetS関連の代謝性疾患は労働者における抗うつ薬の新規処方と関連している。MetS該当者を特定する目的で行われている健診に、うつ病のスクリーニングという要素も追加できるのではないか」と結論付けている。

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生活習慣の改善(8)食事療法5【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q56

生活習慣の改善(8)食事療法5Q56本邦の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版で推奨されている日本食パターン「The Japan Diet」のほかにも、動脈硬化性疾患予防に期待されている食形態がある。一般でも有名なその食形態、2つの名称は?

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第149回 今の日本の医療IoT、東日本大震災のイスラエル軍支援より劣る?(後編)

2月6日に発生したトルコ・シリア大地震のニュースを見て村上氏は東日本大震災時のイスラエル軍の救援活動を思い出します。後編の今回は、現在の日本が顔負けのIoTを駆使したイスラエル軍の具体的な支援内容についてお伝えします。前編はこちら 仮設診療所エリアには内科、小児科、眼科、耳鼻科、泌尿器科、整形外科、産婦人科があり、このほかに冠状動脈疾患管理室(CCU)、薬局、X線撮影室、臨床検査室を併設。臨床検査室では血液や尿の生化学的検査も実施できるという状態だった。ちなみにこうした診察室や検査室などはそれぞれプレハブで運営されていた。一般に私たちが災害時の避難所で見かける仮設診療所は避難所の一室を借用し、医師は1人のケースが多い。例えて言うならば、市中の一般内科クリニックの災害版のような雰囲気だが、それとは明らかに規模が違いすぎた。当時、仮設診療所で働いていたイスラエル人の男性看護師によると、これでも規模としては小さいものらしく、彼が参加した中米・ハイチの地震(2010年1月発生)での救援活動では「全診療科がそろった野外病院を設置し、スタッフは総勢200人ほどだった」と説明してくれた。この仮設診療所での画像診断は単純X線のみ。プレハブで専用の撮影室を設置していたが、完全なフィルムレス化が実行され、医師らはそれぞれの診療科にあるノートPCで患者のX線画像を参照することができた。ビューワーはフリーのDICOMビューアソフト「K-PACS」を使用。検査技師は「フリーウェアの利用でも診療上のセキュリティーもとくに問題はない」と淡々と語っていた。実際、仮設診療所内の診療科で配置医師数が4人と最も多かった内科診療所では「K-PACS」の画面で患者の胸部X線写真を表示して医師が説明してくれた。彼が表示していたのは肺野に黒い影のようなものが映っている画像。この内科医曰く「通常の肺疾患では経験したことのない、何らかの塊のようなものがここに見えますよね。率直に言って、この診療所での処置は難しいと判断し、栗原市の病院に後送しましたよ」と語った。ちなみに東日本大震災では、津波に巻き込まれながらも生還した人の中でヘドロや重油の混じった海水を飲んでしまい、これが原因となった肺炎などが実際に報告されている。内科医が画像を見せてくれた症例は、そうした類のものだった可能性がある。診療所内の薬局を訪問すると、イスラエル人の薬剤師が案内してくれたが、持参した医薬品は約400品目にも上ると最初に説明された。薬剤師曰く「持参した薬剤は錠剤だけで約2,000錠、2ヵ月分の診療を想定しました。抗菌薬は第2世代ペニシリンやセフェム系、ニューキノロン系も含めてほぼ全種類を持ってきたのはもちろんのこと、経口糖尿病治療薬、降圧薬などの慢性疾患治療薬、モルヒネなども有しています」と説明してくれ、「見てみます?」と壁にかけられた黒いスーツカバーのようなものを指さしてくれた。もっとも通常のスーツカバーの3周りくらいは大きいものだ。彼はそれを床に置くなり、慣れた手つきで広げ始めた。すると、内部はちょうど在宅医療を受けている高齢者宅にありそうなお薬カレンダーのようにたくさんのポケットがあり、それぞれに違う経口薬が入っていた。最終的に広げられたカバー様のものは、当初ぶら下げてあった時に目視で見ていた大きさの4倍くらいになった。この薬剤師によると、イスラエル軍衛生部隊では海外派遣を想定し、国外の気候帯や地域ブロックに応じて最適な薬剤をセットしたこのような医薬品バッグのセットが複数種類、常時用意されているという。海外派遣が決まれば、気候×地域性でどのバッグを持っていくかが決まり、さらに派遣期間と現地情報から想定される診療患者数を割り出し、それぞれのバッグを何個用意するかが即時決められる仕組みになっているとのこと。ちなみに同部隊による医療用医薬品の処方は南三陸町医療統轄本部の指示で、活動開始から1週間後には中止されたという。この時、最も多く処方された薬剤を聞いたところ、答えは意外なことにペン型インスリン。この薬剤師から「処方理由は、糖尿病患者が被災で持っていたインスリン製剤を失くしたため」と聞き、合点がいった。ちなみにイスラエルと言えば、世界トップのジェネリックメーカー・テバの本拠地だが、この時に持参した医薬品でのジェネリック採用状況について尋ねると、「インスリンなどの生物製剤、イスラエルではまだ特許が有効な高脂血症治療薬のロスバスタチンなどを除けば、基本的にほとんどがジェネック医薬品ですよ。とくに問題はないですね」とのことだった。この取材で仮設診療所エリア内をウロウロしていた際に、偶然ゴミ集積所を見かけたが、ここもある意味わかりやすい工夫がされていた。感染性廃棄物に関しては、「BIO-HAZARD」と大書されているピンクのビニール袋でほかの廃棄物とは一見して区別がつくようになっていたからだ。大規模な医療部隊を運営しながら、フリーウェアやジェネリック医薬品を使用するなど合理性を追求し、なおかつ患者情報はリアルタイムで電子的に一元管理。ちなみにこれは今から11年前のことだ。2020年時点で日常診療を行う医療機関の電子カルテ導入率が50~60%という日本の状況を考えると、今振り返ってもそのレベルの高さに改めて言葉を失ってしまうほどだ。

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通院先の病院までの距離と下肢切断リスクが有意に関連

 末梢動脈疾患(PAD)で治療を受けている患者の自宅から病院までの距離と、下肢切断リスクとの関連を検討した結果が報告された。病院までの距離が長いほど切断リスクが高いという有意な関連が認められたという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に10月12日掲載された。 PADは心筋梗塞や脳卒中と並ぶ動脈硬化性疾患の一つ。下肢の疼痛や潰瘍などの主要原因であり、進行すると下肢切断を余儀なくされる。高齢化や糖尿病の増加などを背景に、国内でもPADが増加傾向にあるとされている。PADに対しては、動脈硬化リスク因子の管理に加えてフットケアなどの集学的な治療が行われるため、地域の中核病院への通院が必要なことが多い。一方でPADは高齢者に多い疾患であり、遠方の医療機関へのこまめな通院が困難なこともある。PAD以外の外科領域では、自宅から病院までの距離が疾患の転帰に影響を与える可能性を示唆する研究結果が報告されている。しかしPADに関するそのような視点での研究は少なく、特に日本発の報告は見られない。 藤原氏らの研究は、千葉県の南房総地域にある地域中核病院2施設の患者データを後方視的に解析するという手法で行われた。2010~2019年度に904人のPAD患者が記録されており、必要なデータがそろっている630人(平均年齢73.4±10.9歳、男性72.2%)を解析対象とした。なお、同地域は人口の高齢化率が42%と国内平均の28.4%(2020年)より高く、またPADの集学的治療および下肢切断を行っているのはこの2施設に限られている。 自宅から通院先病院までの直線距離の中央値は18.9kmだった。これを基準に対象者全体を二分すると、近距離群の方が高齢(74.5±11.3対72.4±10.4歳、P=0.017)で通院歴が長い(3.24±2.72対2.67±2.68年、P=0.009)という有意差が見られた。 つま先の切断も含む下肢切断は92人(14.6%)に施行されていて、近距離群が12.4%、遠距離群が16.8%であり、後者に多いものの有意差はなかった(P=0.114)。 一方、自宅から病院までの距離を連続変数として解析すると、距離が四分位範囲(22.1km)長いごとに下肢切断リスクが46%上昇するという有意な関連が認められた〔ハザード比(HR)1.46(95%信頼区間1.08~1.98)〕。下肢切断リスクに影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、喫煙歴、虚血重症度(フォンテイン分類)、併存疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症)、血管内治療・透析の施行、アスピリン投与など〕を調整後も、この関連は有意性が保たれていた〔HR1.35(同1.01~1.82)〕。 このほか、前記の近距離群と遠距離群とで生存率をカプランマイヤー法とログランク検定により比較すると、わずかに有意水準未満ながら、近距離群の方が高い生存率で推移していた(P=0.0537)。 著者らは本研究の限界点として、自宅から病院までの距離を直線距離で判断しており、実際のルートや移動手段を考慮していないことなどを挙げた上で、「高齢者人口の多い地域では、自宅から病院までの距離が長いほどPAD患者の下肢切断リスクが高い可能性がある」と結論付けている。さらに、「このような地域に住むPAD患者の転帰改善には、病院までのアクセスを改善する必要があり、また臨床医は、患者が通院に支障を来していないか確認する必要があるのではないか」と付け加えている。

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生活習慣の改善(7)食事療法4【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q55

生活習慣の改善(7)食事療法4Q55本邦の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版では言及されていないが、食事療法の際の肉の種類についても、注目され始めている。赤身肉・白身肉それぞれの具体例と、心血管リスク削減のための摂取の考え方は?

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生活習慣の改善(6)食事療法3【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q54

生活習慣の改善(6)食事療法3Q54従来、減塩した「日本食パターン」が動脈硬化性疾患予防に推奨されている。動物性食品を控え、魚や野菜、果物、未精製穀物を中心とした食事を指すが、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版で控えるべき動物性食品に追加された食材は?

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NAFLDに対するペマフィブラート、よく効く患者の特徴

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に対するペマフィブラート※の投与は、BMI に関係なく肝炎症および線維化のマーカーを改善し、なかでもBMI 25未満の患者のほうがBMI 30以上の患者と比較して効果が高いことが、篠崎内科クリニックの篠崎 聡氏らの研究で明らかになった。Clinical and experimental hepatology誌2022年12月8日号の報告。※ペマフィブラート(商品名:パルモディア)の効能・効果は「高脂血症(家族性を含む)」(2023年2月3日現在)。 NAFLDは、世界で最も一般的な慢性肝疾患であり、近年発症率が増加している。日本では2018年に登場した選択的ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-αモジュレーター(SPPARMα)であるペマフィブラートは、NAFLDの改善が期待されている薬剤の1つである。本研究は、NAFLD患者におけるペマフィブラート投与後の炎症および線維化改善の予測因子を特定する目的で行われた。 対象は、ペマフィブラートで6ヵ月以上治療された非糖尿病のNAFLD患者71例。肝臓の炎症と線維化に関しては、それぞれアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値とMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)値によって評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・ペマフィブラート投与6ヵ月後のALT値およびM2BPGi値は、ベースラインと比較して、BMIに関係なく、有意な改善が認められた。・BMI 25未満であることは、肝炎症患者のALTを50%以上減少させる有意な正の予測因子であることが認められた。・BMI 25未満の群におけるALT値は、BMI 30以上の群と比較して有意な減少が認められた (p=0.034)。・BMI 25未満であること、および50歳以上であることは、肝線維化の減少を示すM2BPGiを20%以上減少させる有意な正の予測因子であることが認められた。・BMI 25未満の群におけるM2BPGi値は、BMI 30以上の群と比較して有意な減少が認められた(p=0.022)。

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乾癬の発症にPCSK9が関与か

 脂質異常症の治療薬として用いられているPCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害薬について、乾癬予防に使用できる可能性が指摘された。英国・マンチェスター大学のSizheng Steven Zhao氏らによる1万2,116例の乾癬患者を対象としたメンデルランダム化解析において、乾癬の発症へのPCSK9の関与が示唆された。脂質経路は乾癬の発症に関与しており、スタチンなどの一部の脂質低下薬は疾患修飾の特性を有すると考えられている。しかし大規模集団での研究はほとんど実施されておらず、従来の観察研究の結果に基づく因果関係の解釈は、交絡因子の存在により限界があった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年1月25日号掲載の報告。 研究グループは、脂質低下薬と乾癬発症リスクとの因果関係を調べるため、2022年8月~10月に、2標本のメンデルランダム化解析を行った。検討には、2つのバイオバンク(UKバイオバンク[英国]およびFinnGen[フィンランド])を用いた乾癬に関するゲノムワイド関連研究(GWAS)、およびGlobal Lipids Genetics ConsortiumからのLDL値が含まれた。 LDL値をバイオマーカーとして用い、HMG-CoA還元酵素(スタチンの標的)、Niemann-Pick C1-like 1(NPC1L1、エゼチミブの標的)、PCSK9(アリロクマブなどの標的)の遺伝的阻害(HMG-CoA還元酵素、NPC1L1、PCSK9の阻害を代替する遺伝子変異を抽出)を行い、乾癬発症リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・1万2,116例の乾癬患者のデータと、LDL測定値が得られた約130万人のデータを基に解析した。・PCSK9の遺伝的阻害は、乾癬発症リスク低下と関連した(LDL値の1標準偏差減少ごとのオッズ比[OR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.55~0.88、p=0.003)。・上記の関連は、FinnGenでも同様であった(OR:0.71、95%CI:0.57~0.88、p=0.002)。・感度分析において、遺伝子変異の多面作用(pleiotropy)または遺伝的交絡によるバイアスは認められなかった。・HMG-CoA還元酵素、NPC1L1の遺伝的阻害は、乾癬発症リスクとの関連が認められなかった。

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代謝的に健康でもFIB-4 index高値の男性はCKDリスクが高い

 代謝的に健康で慢性腎臓病(CKD)のリスクは低いと考えられる男性でも、肝臓線維化マーカーである「FIB-4 index」が高い場合はCKDリスクが高いことを示唆するデータが報告された。産業医科大学病院腎センターの久間昭寛氏らが行った縦断的研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に10月5日掲載された。 メタボリックシンドロームの肝臓における表現型とされる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肝硬変や肝がんのリスクであるのと同時に、心血管代謝疾患リスクとも関連のあることが知られている。さらに、NAFLDがアルブミン尿のリスク因子であるとする報告もある。ただし、NAFLDがCKDの独立したリスク因子であるか否かは十分検討されていない。これを背景として久間氏らは、NAFLDなどによる肝線維化の簡便な指標であるFIB-4 indexとCKDリスクとの関連を検討した。 2009~2014年の企業健診受診者1万1,296人から、ベースライン時点でCKDに該当する人、習慣的飲酒者(エタノール換算で男性30g/日以上、女性20g/日以上)、追跡期間が5年未満だった人を除外し、男性5,353人(FIB-4 indexは平均0.73、eGFR81.8mL/分/1.73m2)のデータを解析に用いた。女性は解析対象に残らなかった。 FIB-4 indexが1.3以上を高値とすると、243人(4.5%)が該当した。傾向スコアマッチングにより、FIB-4 index1.3未満の群からこの243人と背景の一致する同数の対照群を設定。両群を比較すると、FIB-4 indexの計算に必要なAST、ALT、血小板数を除き、年齢、BMI、eGFR、血清脂質、血圧、HbA1c、喫煙者率、高血圧・糖尿病の該当者率など、全て有意差のないことが確認された。FIB-4 indexは低値群が0.91±0.22、高値群が1.65±0.49だった。 これら両群を5年間追跡したところ、FIB-4 index低値群の33人(14%)、高値群の48人(21%)がCKDを発症。全数解析では有意な群間差は認められなかった〔オッズ比(OR)1.57(95%信頼区間0.97~2.56)〕。年齢(55歳未満/以上)および、肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙習慣の有無で層別化したサブグループ解析では、非肥満〔OR1.92(同1.09~3.40)〕、非高血圧〔OR2.15(1.16~3.95)〕、非喫煙者〔OR1.88(1.09~3.23)〕において、FIB-4 index高値群でCKD発症オッズ比の有意な上昇が認められた。年齢や糖尿病・脂質異常症の有無では、FIB-4 indexの高低による有意なリスク差は認められなかった。 次に、サブグループ解析で有意差の認められた代謝関連因子(肥満、高血圧、喫煙習慣)が一つ以上該当する群(227人)と一つも該当しない群(237人)に二分し、FIB-4 index低値群に対する高値群のCKD発症オッズ比を検討。すると、代謝関連因子を有する群は有意なオッズ比上昇が観察されなかった一方で〔OR1.06(0.54~2.09)〕、代謝関連因子を持たない群では、FIB-4 indexが高いことによる有意なオッズ比上昇が認められた〔OR2.45(1.19~5.10)〕。 続いて、代謝関連因子を持たない群の5年間でのeGFR変化率を目的変数とする多重線形回帰分析を施行。その結果、FIB-4 index(β=-2.8950、P=0.011)、中性脂肪(β=-0.0159、P=0.026)が有意な負の関連因子、尿酸(β=1.0838、P=0.031)が正の関連因子として抽出され、年齢やBMI、LDL-C、HbA1c、収縮期血圧などは有意な関連がなかった。 以上を基に著者らは、「代謝的に健康でありCKDリスクが低いと考えられる場合でも、FIB-4 index 1.3以上で定義されるNAFLDに該当する男性はハイリスクの可能性があるため、腎機能の注意深い経過観察が必要とされる」と結論付けている。なお、代謝的に健康な場合でのみ両者の関連が有意であることの理由については、「代謝的に不健康な場合はそのことがCKD発症の強力なリスク因子となるため、FIB-4 indexの予測能がマスクされてしまうのではないか」との考察を加えている。

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第149回 コロナ感染に特有の罹患後症状は7つのみ

2020年に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)の世界的流行が始まって以降、その通常の感染期間後にもかかわらず長く続く症状を訴える患者が増えています。それらCOVID-19罹患後症状(コロナ罹患後症状)のうち疲労、脳のもやもや(brain fog)、息切れは広く検討されていますが、他は調べが足りません。感染症発症後の長患いはCOVID-19に限るものではありません。インフルエンザなどの他の呼吸器ウイルスも長期の影響を及ぼしうることが示されています。COVID-19ではあって他の一般的な呼吸器ウイルス感染では認められないCOVID-19に特有の罹患後症状を同定することはCOVID-19の健康への長期影響の理解に不可欠です。そこで米国・ミズーリ大学の研究チームはソフトウェア会社Oracleが提供するCerner Real-World Dataを使ってCOVID-19に特有の罹患後症状の同定を試みました。米国の122の医療団体の薬局、診療、臨床検査値、入院、請求情報から集めた5万例超(5万2,461例)のCerner Real-World Data収載情報が検討され、47の症状が以下の3群に分けて比較されました。COVID-19と診断され、他の一般的な呼吸器ウイルスには感染していない患者(COVID-19患者)COVID-19以外の一般的な呼吸器ウイルス(風邪、インフルエンザ、ウイルス性肺炎)に感染した患者(呼吸器ウイルス感染者)COVID-19にも一般的な呼吸器ウイルスにも感染していない患者(非感染者)SARS-CoV-2感染から30日以降1年後までの47の症状の生じやすさを比較したところ、呼吸器ウイルス感染者と非感染者に比べてCOVID-19患者により生じやすい罹患後症状は思いの外少なく、動悸・脱毛・疲労・胸痛・息切れ・関節痛・肥満の7つのみでした1,2)。無嗅覚(嗅覚障害)などの神経病態がSARS-CoV-2感染から回復した後も長く続きうると先立つ研究で示唆されていますが、今回の研究では一般的な呼吸器ウイルス感染に比べて有意に多くはありませんでした。無嗅覚は非感染者と比べるとCOVID-19患者に確かにより多く生じていましたが、COVID-19以外の呼吸器ウイルス感染者にもまた非感染者に比べて有意に多く発生していました。つまり無嗅覚はCOVID-19を含む呼吸器ウイルス感染症全般で生じやすくなるのかもしれません。一方、先立つ研究でCOVID-19罹患後症状として示唆されている末梢神経障害や耳鳴りは呼吸器ウイルス感染者と非感染者のどちらとの比較でも多くはありませんでした。全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、1型糖尿病(T1D)などの免疫病態もSARS-CoV-2感染で生じやすくなると先立つ研究で示唆されていますが、今回の研究では神経症状と同様にCOVID-19に限って有意に多い症状はありませんでした。ただし、1型糖尿病との関連は注意が必要です。COVID-19患者の1型糖尿病は呼吸器ウイルス感染者と比べると有意に多く発生していたものの、非感染者との比較では有意差がありませんでした。呼吸器ウイルス感染者の1型糖尿病はCOVID-19患者とは逆に非感染者に比べて有意に少なく済んでいました。心血管や骨格筋の病態でも1型糖尿病のような関連がいくつか認められており、COVID-19患者の頻拍・貧血・心不全・高血圧症・高脂血症・筋力低下は呼吸器ウイルス感染者と比べるとより有意に多く、非感染者との比較ではそうではありませんでした。今回の研究でCOVID-19に特有の罹患後症状とされた脱毛はSARS-CoV-2感染から100日後くらいに最も生じやすく、250日を過ぎて元の状態に回復するようです。疲労や関節痛は今回の試験期間である感染後1年以内には元の状態に落ち着くようです。COVID-19患者により多く認められた肥満はダラダラ続くCOVID-19流行が原因の運動不足に端を発するのかもしれません。ただし今回の研究ではそうだとは断言できず、さらなる研究が必要です。参考1)Baskett WI, et al. Open Forum Infect Dis. 1011;10: ofac683.2)Study unexpectedly finds only 7 health symptoms directly related to ‘long COVID’ / Eurekalert

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生活習慣の改善(4)食事療法1【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q52

生活習慣の改善(4)食事療法1Q521日の総エネルギー摂取量の制限は動脈硬化性疾患予防の直接的なエビデンスはない。しかし、過体重、肥満者の発症リスクは高い。そこで、総エネルギー摂取量の制限は以前から推奨されている。その総エネルギー摂取量の目安となる計算式は?

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日本人高齢者の日常的な温泉入浴とうつ病との関係~別府レトロスペクティブ研究

 温熱療法は、うつ病など、さまざまな精神疾患のマネジメントに用いられる。九州大学病院別府病院の山崎 聡氏らは、日本人高齢者の温泉入浴とうつ病との関係を検討するため、アンケート調査を実施した。その結果、習慣的な毎日の温泉入浴とうつ病歴の低さとの間に関連があることが確認された。著者らは、温泉の使用が精神疾患や精神障害の症状緩和に有用であるかを明らかにするためにも、うつ病治療としての習慣的な毎日の温泉入浴に関するプロスペクティブ無作為化比較試験が求められるとしている。Complementary Therapies in Medicine誌オンライン版2022年12月13日号の報告。 大分県別府市在住の65歳以上の高齢者1万429人に対して、うつ病の有病率に関するアンケート調査を実施し、回答した219人を対象に長期的な温泉入浴のうつ病予防効果を総合的に評価した。うつ病歴のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。 セパレート多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、うつ病歴と有意な関連が認められた独立因子は以下のとおりであった。 ●女性(OR:1.56、95%CI:1.17~2.08、p=0.002) ●不整脈(OR:1.73、95%CI:1.18~2.52、p=0.004) ●脂質異常症OR:1.63、95%CI:1.14~2.32、p=0.006) ●腎疾患(OR:2.26、95%CI:1.36~3.75、p=0.001) ●膠原病(OR:2.72、95%CI:1.48~5.02、p=0.001) ●アレルギー(OR:1.97、95%CI:1.27~3.04、p=0.002) ●習慣的な毎日の温泉入浴(OR:0.63、95%CI:0.41~0.94、p=0.027)

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