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末梢性めまいで“最も頻度の高い”良性発作性頭位めまい症、診療ガイドライン改訂

 『良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン』の初版が2009年に発刊されて以来、15年ぶりとなる改訂が行わた。今回、本ガイドライン(GL)の作成委員長を務めた今井 貴夫氏(ベルランド総合病院)に専門医が押さえておくべきClinical Question(CQ)やGLでは触れられていない一般内科医が良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo、以下BPPV)を疑う際に役立つ方法などについて話を聞いた。一般内科医もBPPVを疑い、診断・治療は専門医が担う BPPVは末梢性めまいのなかで最も頻度が高い疾患である。治療法は確立しており予後は良好であるが、日常動作によって強いめまいが発現したり、症状が週単位で持続したりする点で患者を不安に追い込むことがある。また、BPPVはCa代謝の異常により耳石器の耳石膜から耳石がはがれやすくなって症状が出現することから、加齢(50代~)、骨粗鬆症のようなCa代謝異常が生じる疾患への罹患、高血圧、高脂血症、喫煙、肥満、脳卒中、片頭痛などの既往により好発するため、さまざまな診療科の医師による理解が必要になる。 よって、本ガイドラインは耳鼻咽喉科や神経内科などめまいを扱う医療者向けにMinds診療ガイドライン作成マニュアルに準拠し作成されているが、BPPVの疫学(p.20)や鑑別診断(p.25~27)はぜひ多くの医師に一読いただきたい。 以下、治療に関する全10項目のCQを示す。―――CQ1:後半規管型BPPVに耳石置換法は有効か?CQ2:後半規管型BPPVに対する耳石置換術中に乳突部バイブレーションを併用すると効果が高いか?CQ3:後半規管型BPPVに対する耳石置換法後に頭部の運動制限を行うと効果が高いか?CQ4:外側半規管型BPPV(半規管結石症)に耳石置換法は有効か?CQ5:外側半規管型BPPV(クプラ結石症)に耳石置換法は有効か?CQ6:BPPVは自然治癒するので経過観察のみでもよいか?CQ7:BPPV発症のリスクファクターは?CQ8:BPPVの再発率と再発防止法は?CQ9:BPPVに半規管遮断術は有効か?CQ10:BPPVに薬物治療は有効か?――― 今回、今井氏は「めまい診療を行う医師にはCQ5とCQ8に目を通して欲しい」と述べており、その理由として「両者に共通するのは、諸外国では積極的に行われているにもかかわらず日本ではまだ実績が少ない治療法という点」と話した。「たとえば、CQ8のBPPVの再発防止については、ビタミンDとカルシウム摂取が有効であると報告されているが、国内でのエビデンスがないため推奨度は低く設定された。次回の改訂までにエビデンスが得られ、推奨度が高くなることを期待する」とも話した。鑑別すべき疾患 めまいを伴う疾患はBPPVのほか、脳卒中やメニエール病をはじめ、前庭神経炎、めまいを伴う突発性難聴、起立性調節障害、起立性低血圧が挙げられる。とくに起立性低血圧はBPPVの34%で合併しており鑑別が困難であるので注意したい。なお、めまいの訴えが初回で単発性の場合、高血圧・心疾患・糖尿病が既往にある患者では脳卒中も鑑別診断に挙げるべきである。BPPVを疑う鍵は「めまいが5分以内で治まる」か否か BPPVの確定診断のためには特異的な“眼振”を確認することが必要であるので、フレンツェル眼鏡や赤外線CCDカメラといった特殊機材を有している施設でしか診断できないが、同氏は「ガイドラインには掲載されていないが、非専門医でもBPPVを疑うことは可能」とコメントしている。「眼振が確認できない施設では、われわれが開発した採点システム1)を用いて患者の症状をスコア化し、合計2点以上であればBPPVを疑って専門医に紹介して欲しい」と説明した。 本採点システムを開発するにあたり、同氏らは大阪大学医学部附属病院の耳鼻咽喉科およびその関連病院のめまい患者571例を対象に共通の問診を行い、χ2検定を実施。BPPV患者とそれ以外の患者で答えに有意差のあった問診項目を10個抽出した。同氏はこれについて「10個の項目に0~10点を付け、患者の答えから求めた合計点によりBPPVか否かを判断した際、感度、特異度の和が最も高くなるように点数を決定し、0点の項目を除外すると最終的に4項目に絞ることができた。なかでも“めまいが5分以内で治まる”は点数が2点と高く、BPPV診断で最も重要な問診項目であることも示された」と説明した。なお、本採点システムによる BPPVの診断の感度は81%、特異度は69%だった。 以下より、そのツールを基にケアネットで作成した患者向けスライドをダウンロードできるので、非専門医の方にはぜひ利用して欲しい。『良性発作性頭位めまい症の判別ツール』(患者向け説明スライド) なお、CareNeTVでは『ガイドラインから学ぶ良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療のポイント』を配信中。話術でも定評のある新井 基洋氏(横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科 部長)が改訂ガイドラインを基に豊富な写真・イラストや動画を用いて解説している。

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閉経後の骨粗鬆症治療薬、69試験のネットワークメタ解析で効果比較/BMJ

 閉経後女性への骨粗鬆症治療薬の大部分にベネフィットがあることが、デンマーク・Bispebjerg and Frederiksberg HospitalのMina Nicole Handel氏らによる69試験・被験者総数8万例超を対象としたシステマティックレビューとメタ解析で明らかにされた。骨形成促進薬はビスホスホネートよりも、ベースラインのリスク指標にかかわらず、臨床的骨折および脊椎骨折の予防に有効であることが示された。著者は、「今回の分析結果は、骨折リスクの高い患者への骨形成促進薬による治療を制限する、臨床的エビデンスはないことを示すものであった」とまとめている。BMJ誌2023年5月2日号掲載の報告。ビスホスホネートやSERM、PTH受容体作動薬などのRCTをレビュー・解析 研究グループはMedline、Embase、Cochrane Libraryを基に、1996年1月1日~2021年11月24日に発表され、ビスホスホネート、デノスマブ、選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)、副甲状腺ホルモン(PTH)受容体作動薬、ロモソズマブをプラセボまたは実薬と比較した無作為化試験を特定し、システマティックレビューとネットワークメタ解析およびメタ回帰分析を行った。適格試験は、全年齢の非アジア人閉経後女性を対象に、介入時に骨質について幅広い要素を評価したものだった。 主要アウトカムは、臨床的骨折とした。副次アウトカムは、脊椎、非脊椎、腰、その他の主な骨粗鬆症骨折と、全死因死亡、有害イベント、重篤な心血管有害事象だった。骨吸収抑制薬治療、ベースライン時の年齢増加と共に予防効果増大 69試験(被験者総数8万人超)を対象に解析が行われた。臨床的骨折の統合結果は、ビスホスホネート、PTH受容体作動薬、ロモソズマブが、いずれもプラセボに比べ、予防的効果があることを示した。 その中でビスホスホネートはPTH受容体作動薬に比べ、臨床的骨折を軽減する効果が低かった(オッズ比[OR]:1.49、95%信頼区間:1.12~2.00)。デノスマブは、PTH受容体作動薬とロモソズマブに比べ、臨床的骨折の軽減効果が低かった(デノスマブvs.PTH受容体作動薬のOR:1.85[95%CI:1.18~2.92]、デノスマブvs.ロモソズマブのOR:1.56[95%CI:1.02~2.39])。 脊椎骨折リスクについては、すべての薬剤で、プラセボと比べ軽減効果が認められた。実薬の比較では、デノスマブ、PTH受容体作動薬、ロモソズマブが、経口ビスホスホネートに比べ、脊椎骨折の予防効果が高かった。 骨吸収抑制薬による治療は、ベースラインの平均年齢が高くなるにつれ、対プラセボの臨床的骨折リスクの減少幅が増大したが(試験数17、β=0.98、95%CI:0.96~0.99)、それ以外のすべての治療の効果は、ベースラインのリスク指標による影響を受けなかった。 有害アウトカムはみられなかったが、個々のアウトカムに関する効果予測の確実性については、深刻なバイアスリスクや不正確性が示され、評価は中等度~低度であった。

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第147回 健康長寿の自治体は、男女とも川崎市麻生区、ワースト自治体は大阪市西成区/厚労省

<先週の動き>1.健康長寿の自治体は、男女とも川崎市麻生区、ワースト自治体は大阪市西成区/厚労省2.改正健康保険法が成立、出産育児一時金の財源のため75歳以上の保険料の引き上げへ/国会3.全世代型社会保障関連法が成立、「かかりつけ医機能」報告制度を創設へ/国会4.大都市など外来医師多数区域での新規開業規制を/財務省5.緊急避妊薬の市販化、パブリックコメントは圧倒的多数が賛成/厚労省6.財政制度等審議会で医薬品の保険給付範囲の早急な見直しを提案/財務省1.健康長寿の自治体は、男女とも川崎市麻生区、ワースト自治体は大阪市西成区/厚労省厚生労働省は、令和2年に行われた国勢調査の結果を基に市区町村別にみた平均寿命を発表した。それによると、男女ともに最も寿命が短いのは大阪市西成区で、男性が73.2歳、女性が84.9歳。一方、最も長寿な市区町村は男女ともに川崎市麻生区で、男性の寿命は84.0歳、女性の寿命は89.2歳だった。厚労省は、市区町村ごとの平均寿命の差は、生活習慣や健康への意識などの要因によるものとしている。日本人の平均寿命は全国平均で男性が81.49歳、女性が87.60歳で、男女の平均寿命の差は6.1歳。この調査結果を基に、住民の健康増進に役立てることが期待されている。(参考)市区町村別にみた平均寿命 (厚労省)令和2年市区町村別生命表の概況(同)平均寿命 川崎 麻生区が男女とも最長 厚労省調査(NHK)最も長寿な市区町村、男女とも川崎市麻生区…ワーストの区とは10歳の差(読売新聞)市区町村別ニッポンの平均寿命 男性の“短命”は1~3位とも大阪市 厚労省の最新調査(MBS)2.改正健康保険法が成立、出産育児一時金の財源のため75歳以上の保険料の引き上げへ/国会後期高齢者医療制度の保険料の上限引き上げを含む改正健康保険法が、5月12日の参議院本会議で自民党、公明党などの賛成多数で可決、成立した。社会保障の持続性を高める「全世代型社会保障」への改革の一環として、2024年度から所得のある75歳以上の人の医療保険料を段階的に引き上げ、現役世代の負担増を抑えつつ、出産育児一時金の増額に充てる財源とする。法案によれば、年金収入が年153万円を超える約4割の後期高齢者を対象に、2024年度から保険料の上限を73万円、2025年度には80万円に引き上げる予定。厚生労働省の試算では、高齢者の1人当たりの保険料は年平均でおよそ5千円増え、25年度は8万7,200円となる見通し。また、自営業者などが加入する国民健康保険では、出産前後の4ヵ月間の保険料を免除する措置も創設される。(参考)75歳以上の公的医療保険料、段階的引き上げ…出産一時金増額で健康保険法改正(読売新聞)改正健保法が成立 75歳医療保険料引き上げ 出産一時金財源にも充当(産経新聞)75歳以上、保険料5000円増 改正健保法成立 対象4割 財政の持続性 懸念なお(日経新聞)3.全世代型社会保障関連法が成立、「かかりつけ医機能」報告制度を創設へ/国会5月12日に参議院本会議で改正医療法を含む、全世代型社会保障関連法が賛成多数で可決、成立した。これによって「かかりつけ医機能」の法定化と報告制度の創設が決まった。改正医療法では、「かかりつけ医機能」を「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」と定義している。今後、政府は報告制度について検討を行い、今年の夏までに今後の具体的な情報提供項目のあり方や情報提供についてまとめる。2025年4月施行後、診療所や病院は「かかりつけ医機能」として休日・夜間の対応、介護サービスとの連携などについて都道府県に届け出ることになる。都道府県は医療機関の体制を確認し、患者が適切な選択をするための情報を提供するとともに、地域の「かかりつけ医機能」の向上を協議し、医療計画や介護保険事業計画に反映させることを目指す。また、2007年に創設された「医療機能情報提供制度」は、2024年度に全国統一のシステムに切り替えられる予定。(参考)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の改正案(厚労省)「かかりつけ医機能」を法定化、報告制度創設へ 全世代型社会保障関連法が成立(CB news)4.大都市など外来医師多数区域での新規開業規制を/財務省財務省は、財務大臣の諮問機関の財政制度等審議会財政制度分科会を5月11日に開催し、この中で今後の医師の需給見込みについて議論を行った。厚生労働省の将来推計によれば、2029年頃にマクロでは医師需給が均衡し、その後は医師の供給過剰となることが見込まれており、現状のままでは、大都市部において医師や診療所数が過剰となり、地方はそれらが過少となる傾向が続く。厚労省は「外来医師多数区域」における取組みとして、2020年度の「外来医療計画」に基づくガイドラインで「外来医師多数区域」において新規開業を希望する者に対しては、不足する医療機能を担うように要請しているが、一部の都道府県では、そもそも要請を行っておらず、また、要請を行っても、新規開業者に求める医療機能が不明瞭なケースもある。厚労省の調査によれば、要請に従っている新規開業者は7割程度と十分ではない。今後、わが国でも、地域ごとに病院・診療所間の役割分担を明確にしつつ、必要な医療人材を集中・確保していくことが求められる中で、たとえば診療所の新規開設についても、国外の例を参考にもう一歩踏み込んだ対応が必要などの意見が出された。日本医師会は「外来医療計画」について2019年に、外来医療計画は開業を制限するものではないことを確認している。現在、厚労省は第8次医療計画の策定を進めており、来年度から各都道府県に対して、医師の偏在対策を求めていくとみられる。(参考)財政制度等審議 財政制度分科会 財政各論(3):こども・高齢化等[※74頁目より](財務省)財務省、診療所の新規開業規制に言及「一歩踏み込んだ対応必要ではないか」(CB news)2024年度から強力に「医師偏在解消」を推進!地域の「すべての開業医」に夜間・休日対応など要請-厚労省(Gem Med)外来医療計画について(日本医師会)医師確保計画策定ガイドライン~第8次(前期)~(厚労省)5.緊急避妊薬の市販化、パブリックコメントは圧倒的多数が賛成/厚労省厚生労働省は、5月12日に「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」を開催し、医師の処方箋なしで購入できる緊急避妊薬(モーニングアフターピル)の市販化について、約4万6千件のパブリックコメントが寄せられ、およそ99%が賛成であったことを明らかにした。しかし、検討会議では最終報告書がまとまらず、議論が継続されることとなった。現在、緊急避妊薬は医師の処方箋が必要で、診療可能な医療機関やオンライン診療の医師一覧が厚労省のウェブサイトに掲載されているが、休日や夜間に手に入りにくいという課題も存在する。これまで緊急避妊薬については、処方箋が不要な市販薬に変更する意見が取り上げられてきたが、厚労省の専門家会議では、市販化は女性の権利に関わる問題であり、アクセス向上の面でも良い方法であるとの認識が共有されていた。パブリックコメントでは、4万5,314件が賛成であり、反対は412件であった。賛成意見の中には、未成年が避妊薬を手に入れやすくなることへの懸念や、性犯罪被害者のサポートセンターの存在を広く知らせる必要性などが挙げられた。厚労省の専門家会議は、緊急避妊薬に関心の高い女性の存在を認識し、次回までに最終報告書をまとめることを決定したほか、一部薬局や地域での試験的な導入を検討する。今後、課題などを整理した後、製薬会社から緊急避妊薬のOTC化の申請があれば、承認するかどうか別の会議で審議する。(参考)第24回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議(厚労省)緊急避妊薬「市販化を」 異例のパブコメ4万6千件、賛成の声多く(朝日新聞)緊急避妊薬スイッチOTC化前の試験運用検討へ パブリックコメント踏まえ評価会議が方向性(CB news)6.財政制度等審議会で医薬品の保険給付範囲の早急な見直しを提案/財務省財務省は、5月11日に開催された財政制度等審議会において、医療・介護の給付費用が過去20年で大幅に増加しており、医療・介護の給付費用の効率化が必要として、医薬品の保険給付範囲の見直しを求めた。この中で、日本の医療保険制度は、患者側が受診コストを意識しづらく、医療機関側は患者数・診療行為数が増えるほど収入が増える構造である。わが国の保健医療支出GDP比はOECDで5番目に高く、政府支出に占める公的保健医療支出の割合はOECDで2番目に高い状況にある。近年、医薬品に対する給付費用が経済成長率以上に伸びており、さらに高齢化の進展に伴い、さらなる薬剤費の増加も見込まれている。医療・介護の報酬改定で制度改正を行っているが、今後も給付費用の抑制に取り組む必要がある。また、画期的な新薬を含め高額医薬品の収載が増えており、今後も保険財政への影響が大きい医薬品が出てくることも予想され、保険給付について今のままでは保険料や国庫負担の増大が避けられない現状であるとした。すでに欧米諸国では、高額な医薬品については、費用対効果をみて保険対象とするか判断する、医薬品の有用性が低いものは自己負担を増やす、あるいは、薬剤費の一定額までは自己負担とする方策をとっており、わが国でも早急な対応が必要として、新しい枠組みを求めた。政府はこれらの提言を基に、令和5年度の「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」を今年の夏までに決定して、岸田内閣が取り組む課題とするとみられる。(参考)財務省主計局 財政審に「薬剤費の一定額までは自己負担」など保険給付範囲の早急な見直しを正式に提案(ミクスオンライン)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(3):こども・高齢化等[※64頁目より](財務省)

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5月2日 カルシウムの日【今日は何の日?】

【5月2日 カルシウムの日】〔由来〕丈夫な骨を作るために欠かせない「カルシウム」を摂ることの大切さを多くの人に知ってもらうことを目的に、骨(コ[5]ツ[2])の語呂合わせからワダカルシウム製薬が制定。関連コンテンツ高齢糖尿病患者の骨折リスク、骨粗鬆症にどう対応する?【高齢者糖尿病診療のコツ】カルシウム製剤について【患者説明用スライド】カルシウムを含む食材は何【患者説明用スライド】カルシウムってなあに?【患者説明用スライド】

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第145回 5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府

<先週の動き>1.5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府2.コロナ後遺症の診療報酬、5月8日から特定疾患療養管理料を加算へ/厚労省3.緊急避妊薬の市販化、パブコメで97%が賛成/厚労省4.進まぬ電子処方箋、普及に向け、導入拡大を加速化/厚労省5.少子化対策の財源の議論開始、社会保険料や税で/財務省6.認知症患者の遺族が寄付金3億円をめぐって金沢医科大学を提訴/石川1.5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府政府は、新型コロナウイルス感染の感染症法での位置付けが5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行するのに伴い、新型コロナウイルス感染症対策本部を同日に廃止することを閣議決定した。5類移行後の公費負担での対応が大きく変わり、新型コロナウイルスのPCR検査や抗原検査を病院や診療所で行う場合も、検査キットを使用する場合も自己負担となる。また、各自治体による検査キット配布事業も終了となる。ただし、医療機関や介護施設などで陽性患者が発生した場合、医療スタッフなどへの検査を都道府県が実施する場合のみ行政検査として無料で実施される。そのほか、外来診療も従来は公費負担で行われていたものが、インフルエンザとほぼ同じ程度の自己負担が必要となり、入院時の医療費も同様に保険診療となるが、9月末までは、高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額する措置が講じられる。5月8日以降は、医療機関では「コロナ患者である」ことだけを理由とした診療拒否は「応招義務違反」となり、自院での対応が困難な場合には他の「対応可能な医療機関に対応を依頼する」あるいは「患者に対して対応可能な医療機関を伝える」ことを行うことが必要となる。(参考)政府 「5類」移行に伴い新型コロナ対策本部の廃止を決定(NHK)コロナ5類 感染した時は? 医療費負担 外出 療養支援 相談 証明書(同)コロナ「5類」正式決定 5月8日からどうなる?(同)「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」等の一部訂正について(厚労省)5月8日以降、「コロナ感染のみ」を理由とした診療拒否は不可、自院対応困難な際は「対応可能医療機関を患者に伝える」等の配慮を-厚労省(Gem Med) 2.コロナ後遺症の診療報酬、5月8日から特定疾患療養管理料を加算へ/厚労省厚生労働省は新型コロナウイルスに感染後のいわゆる「後遺症」について患者を診た医療機関の診療報酬を加算することを各都道府県に対して通知した。新型コロナ感染症の位置付けが「5類」に移行する5月8日から開始となる。加算対象は、新型コロナ感染と診断された3ヵ月目以降も後遺症が2ヵ月以上続く患者に対して、診療の手引きを参考にした診療に対して3ヵ月に1度、特定疾患療養管理料147点を加算する。支払いを受けるには、都道府県が公表している罹患後症状に悩む方の診療を行っている医療機関のリストに掲載されている必要がある。期限は令和6年3月31日。(参考)味覚・記憶障害など1年以上続くこともある「コロナ後遺症」、診療報酬を加算(読売新聞)コロナ後遺症の診療、3か月ごと147点 報酬特例で評価へ、来年3月まで(CB news)「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」にかかる疑義解釈資料の送付について[その2](厚労省)「コロナ後遺症の専門医療機関」を各都道府県で本年(2023年)4月28日までに選定し、公表せよ-厚労省(Gem Med)3.緊急避妊薬の市販化、パブコメで97%が賛成/厚労省厚生労働省は「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で緊急避妊薬を市販薬とするスイッチOTC化について検討を重ねてきた。去年12月から今年の1月にかけて厚生労働省が実施したパブリックコメントの結果、市販化に賛成の意見が約4万6,000件、反対の意見が約300件と、全体の約97%が賛成する内容だった。厚労省は5年前にも同様の検討を行ったが、このときは転売の可能性や不十分な性教育などを理由に「時期尚早」として見送られた経緯がある。しかし、2019年にはオンライン処方も可能になるなど環境の変化もあり、今後、同省は専門家を交えた検討会議の議論をもとに、結論を出す見込み。(参考)緊急避妊薬OTC化の議論、5月以降に 厚労省、パブコメ整理で大きくずれ込む(日刊薬業)緊急避妊薬の市販化 パブコメに4万6300件の意見 97%が賛成(毎日新聞)第22回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議(厚労省)4.進まぬ電子処方箋、普及に向け、導入拡大を加速化/厚労省厚生労働省は、4月28日に第2回電子処方箋推進協議会を開催した。この中で電子処方箋の導入状況は、4月23日時点で全国3,352施設で運用開始されていた。内訳は病院9、医科診療所250、歯科診療11、薬局3,082。同日公開された公的病院への導入計画に係る調査結果では、回答した施設のうち、令和5年度中に電子処方箋の導入予定の病院が214施設だった。寄せられた意見の中には、オンライン資格確認などシステム利用が伸び悩んでおり、導入後に電子処方箋の利用が伸びるのか疑問といった声が上げられている。電子処方箋導入施設の面的拡大を重点的に行うため、導入意欲が特に高く、稼働中または近日中に稼働予定の病院「気仙沼市立本吉病院」、「静岡市立静岡病院」、「公立松任石川中央病院」、「公立西知多総合病院」、「徳島市民病院」、「長崎みなとメディカルセンター」を中心に周辺施設の導入拡大を加速化する方針を固めた。(参考)第2回 電子処方箋推進協議会 資料(厚労省)電子処方箋「面的拡大」、導入意欲高い病院など中心に 厚労省(CB news)【電子処方箋】“面的拡大”、6病院を列挙/リフィル機能など先行検証/「気仙沼市立本吉病院」「静岡市立静岡病院」、「公立松任石川中央病院」、「公立西知多総合病院」、「徳島市民病院」、「長崎みなとメディカルセンター」(ドラビズ on-line)5.少子化対策の財源の議論開始、社会保険料や税で/財務省財務省は4月28日に財政制度等審議会を開催、少子化対策の議論に着手した。わが国でも、最終学歴が大卒以上の女性の出生こども数は近年増加しており、女性が出産・育児でキャリアを中断することに伴う機会費用が相当な額にのぼっていることが示唆されている。このため女性の出産支援がさらに必要であり、現時点では少子化対策予算として令和5年度の予算では国費6.3兆円が計上されているが、諸外国と比較すると、現金給付の割合が低いとの指摘もあり、財源について「企業を含む社会・経済の参加者全員が広く負担する新たな枠組みの検討が必要」と指摘がなされた。出席した委員からは社会保険料や税の組み合わせを財源とする意見が出た。この前日、内閣府は第2回のこども未来戦略会議を開催しており、財源について、社会保険料引き上げの案が浮上しているが、経済界や労働団体からは消費税を含む幅広い税財源の検討を求める声が出されていた。(参考)少子化財源、消費税含め議論を 労使、現役負担増に懸念-こども会議(時事通信)少子化財源、財制審で議論開始 「社会保険料や税で」(日経新聞)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(2)(財務省)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(3)(同)第2回 こども未来戦略会議(内閣府)6.認知症患者の遺族が寄付金3億円をめぐって金沢医科大学を提訴/石川認知症の疑いがある高齢患者の寄付をめぐって、3億円の寄付を患者にさせたのは無効だとして、患者の遺族が大学病院と当時の主治医を相手取って2億4,000万円余りの損害賠償請求を求める裁判を金沢地裁に起こした。訴えられたのは金沢医大病院。遺族によれば、患者は一昨年の1月に同院に入院し、認知機能の低下が指摘され検査結果で大脳の萎縮などが確認された。同年5月に大学創立50周年の募金に対して3億円を寄付し、同年10月に90歳で亡くなった。遺族がこの寄付を知ったのは死亡後。遺族らは「家族に確認することなく、認知機能の低下に乗じて非常識な金額を寄付させた」と主張し、金沢医科大学と当時の病院長で主治医だった男性に対し2億4,000万円余りの賠償を求めており、大学側は「寄付は正当な手続きをして受け入れている。今後、訴状内容を確認してから対応したい」としている。(参考)父親の3億円寄付「異常で不当」 遺族が金沢医大を提訴(産経新聞)認知症疑い患者の3億円寄付、原告代理人「寄付が原因で借金残る」「極めて異常な額」(読売新聞)認知症なのに「3億円を寄付させた」 遺族が金沢医大病院側を提訴(朝日新聞)認知機能低下の患者に巨額の寄付持ち掛け 遺族らが金沢医科大学を提訴(日テレ)

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骨粗鬆症患者の2型DM発症リスク、デノスマブvs 経口ビスホスホネート製剤/BMJ

 骨粗鬆症患者において、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤デノスマブの投与は経口ビスホスホネート製剤を投与した場合と比較して2型糖尿病(DM)の発症リスクが32%低下したことが、中国・The Chinese PLA General HospitalのHouchen Lyu氏らによるコホート研究で示された。2型DMのリスクが高い前糖尿病状態または肥満の患者では、デノスマブにより糖尿病発症リスクはさらに低下することも示唆され、著者は、「本研究は、デノスマブが経口ビスホスホネート製剤と比較し、糖代謝に対して付加的な有益性をもたらすというエビデンスを示している」とまとめている。これまで、観察研究や無作為化臨床試験の事後解析において、血糖変動に対するデノスマブの効果が示唆されていたが、デノスマブが2型DMのリスクを減少させるかどうかは明らかになっていなかった。BMJ誌2023年4月18日号掲載の報告。デノスマブで治療を開始/切り替えた患者vs.経口ビスホスホネート製剤投与患者で検討 研究グループは、英国のプライマリケアデータベースであるIQVIA Medical Research Data(IMRD)を用い、1995年1月1日~2021年12月31日に骨粗鬆症治療薬を初めて処方された45歳以上の患者を抽出し、このコホートの中からさらに2010年7月1日~2021年12月31日の間にデノスマブの投与を開始した患者(ビスホスホネートから切り替え、または未治療でデノスマブによる治療を開始)と、経口ビスホスホネート製剤の投与を受けた患者を特定し研究コホートとした。 デノスマブへ切り替えた症例1例に対し、切り替え日時点で同じ期間経口ビスホスホネート製剤を使用しておりかつ継続した症例を最大5例、未治療でデノスマブによる治療を開始した症例1例に対し、未治療で経口ビスホスホネート製剤による治療を開始した症例を最大5例、傾向スコアを用いてマッチングさせた。 主要アウトカムは、診断コードにより定義された2型DMの発症で、Cox比例ハザードモデルによりデノスマブ新規投与患者と経口ビスホスホネート製剤投与患者を比較し、補正後ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出し評価した。デノスマブ投与群で2型DM発症リスクが32%低下 解析対象は、デノスマブ新規投与患者4,301例および経口ビスホスホネート製剤投与患者2万1,038例で、平均2.2年間追跡調査された。 2型DM発症頻度は、デノスマブ群で5.7/1,000人年(95%CI:4.3~7.3)、経口ビスホスホネート製剤群で8.3/1,000人年(95%CI:7.4~9.2)であり、デノスマブの投与開始は2型DMの発症リスク低下と関連していることが認められた(HR:0.68、95%CI:0.52~0.89)。 サブグループ解析の結果、前糖尿病状態の患者において、経口ビスホスホネート製剤と比較しデノスマブによる有益性がより高いことが示され(HR:0.54、95%CI:0.35~0.82)、BMI≧30の患者においても同様の結果であった(0.65、0.40~1.06)。

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夜間の不十分な睡眠はワクチンの効果を低下させる?

 夜間の不十分な睡眠は、ワクチン接種後の抗体反応を低下させる可能性のあることが、「Current Biology」に3月13日掲載されたメタアナリシスで明らかにされた。ワクチン接種前後の睡眠時間が6時間未満の人では、7時間以上の人に比べてワクチン接種後に産生される抗体の量が少なく、その損失は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種後2カ月間の抗体減少に相当するものであったという。研究論文の上席著者で米シカゴ大学名誉教授のEve Van Cauter氏は、「十分な睡眠はワクチンの効果を増強するだけでなく、持続期間も延ばすと考えられる」と述べている。 Van Cauter氏は2002年に、論文の筆頭著者であるフランス国立衛生医学研究所のKarine Spiegel氏とともに、睡眠のインフルエンザワクチンへの影響に関する画期的な研究を発表している。この研究では、睡眠時間が制限された人では、ワクチン接種後10日目の抗体レベルが対照群の約半分になることが示されていた。この知見をアップデートするべく、同氏らはウイルス感染症(インフルエンザ、A型・B型肝炎)のワクチンに関する7件の研究結果を統合して、睡眠時間と抗体反応との関連を検討した。 18~85歳の504人を対象に、自己報告による不十分な睡眠(6時間未満と定義)とワクチン接種後の抗体反応の低下との関連を検討したところ、事前に設定した統計学的有意水準に到達しなかった。しかし、全般的に睡眠時間が短い傾向がある65歳以上の高齢者のみを対象にした研究を除外し、18〜60歳の299人を対象に解析すると、関連は有意であった。 さらに、ウェアラブルデバイスなどで睡眠時間を客観的に評価した研究を対象に解析すると(解析対象者304人)、6時間未満の睡眠時間とワクチン接種後の免疫反応の低下との間に強い関連が認められた。しかし男女別に解析すると、関連が有意だったのは男性のみで、女性では有意ではなかった。研究グループはこの理由を、女性ではホルモン値の変動が大きいためではないかとしている。Spiegel氏は、「免疫に関する研究から、性ホルモンが免疫系に影響を及ぼすことが明らかにされている。女性の場合、月経周期、避妊薬の使用、閉経期や閉経後などの状態により免疫が影響を受けるが、今回、解析対象とした研究の中に、性ホルモン値に関するデータを扱っているものはなかった」と説明している。 なお、研究グループはこのメタアナリシスの結果と、ファイザー社製のCOVID-19ワクチン接種後の抗体反応に関する既存のデータを照らし合わせた上で、6時間未満の不十分な睡眠が抗体反応の低下にもたらす影響は、ワクチン接種後2カ月間での抗体減少に相当すると見積もっている。 Van Cauter氏は、「COVID-19ワクチン接種により得られる防御効果は、既存の疾患のある人、男性、肥満の人では低下しやすい。これらはいずれも個人では変えられない因子だが、睡眠時間は自分で改善することができる」と指摘する。 一方Spiegel氏は、「今後は、特に女性での性ホルモンの状態を考慮した、より大規模な研究を実施する必要がある。また、不十分な睡眠の日が何日続くと抗体反応に影響が出るのかや、十分な睡眠が重要になるのはワクチン接種前だけなのか、それともワクチンを接種した日やその後も重要なのかなどについても解明する必要がある」と述べている。

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第41回 乗り遅れるな「論文検索はもうAIの時代」

ChatGPTだけじゃないこの連載では何度かChatGPTについて取り上げてきました。この分野、1週間経つともう賞味期限切れを起こすほど進歩していて、私もちょっとついていけてないです。私はCareNetで興味深い医学論文を紹介する連載「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」を持っているので、普段からPubMedを使っているのですが、AIに論文を探させる手法が出てきました。ChatGPTは課金しないと現状の最新版を体験できない仕様となっていますが、今話題になっているのが「Consensus」です。これは、世界の論文を検索し、質問に対する回答をまとめて一文要約してくれます。そして回答を数値化してくれるなど、論文から得られる情報をかみ砕いて提供できる機能を持ったオープンAIとなっています。キャッチコピー通り、「Evidence-Based Answers, Faster」というのがコンセプトです。Googleアカウントがある人は、ウェブサイトから簡単にログインできるようになっているので、一度試してみてください。Consensus使い方は割と簡単で、質問のところにある程度closed questionを入力することが重要です。ただし、基本的にはYes/Noの質問に対応できるようになってます。画像を拡大する(画像:Consensusより)たとえば、これは「吸入ステロイドが骨粗鬆症を引き起こすか?」という質問を入力したものですが、「吸入ステロイドの長期使用は骨粗鬆症を誘発し骨折リスクを高めるとする研究もあるが、骨への影響は小さいか不明とする研究もあり、これで喘息をコントロールすれば骨粗鬆症を防ぐことさえある」という要約が返って来ました。参考にされた文献は5文献で、下にずらっとシステマティックレビューした結果が出てきます。画像を拡大する(画像:Consensusより)「inhaled」を「systemic」に変えると、全身性ステロイドの骨粗鬆症に対する回答が提示されます。「全身性ステロイドは、とくに長期投与や大量投与で骨粗鬆症を引き起こす可能性があることが示唆されるが、一方で、低用量や隔日投与ではそれほどリスクが高まらない可能性を示す研究結果もあります。」という回答に変わります。なるほど、有能なAIですね。ただ、あの有名論文がなんで掲載されていないんだよ、という事態はしばしばあり、本当に質の高い論文を引っ張ってきているのかちょっと疑問です。試しに重症市中肺炎に対するステロイドのことを聞いても、最近の有名な論文がヒットしませんでした。しかしまぁ、これが正しいAI検索のひな形でしょう。間違いありません。ここからさらに精度を上げていってほしいと思います。Perplexityもう一つ人気なのが、「Perplexity」です。ウェブクローリングした情報を要約する生成系AIです。出典ソースを明記して、時事性のあるテーマにも正しく回答してくれる点が魅力です。Perplexityはウェブ検索結果を分析できれば、たとえそれが架空の内容であっても回答可能ですが、ChatGPTはそのあたりが難しいという差はあるようです。対話型なのでPerplexityのほうが好まれていますが、個人的にはChatGPT4.0(有料版)もなかなかおすすめです。3.5とは全然違います。画像を拡大する(画像:Perplexityより)Mycobacterium szulgaiというまれな呼吸器感染症の治療はどうすればよいか?と聞いてみました。とくにエビデンスが集積されているわけではないのですが、しっかりと報告を引用して治療レジメンが紹介されています。こういうAIで生成された文を、論文を書くのに使っちゃダメということになっていますが、「参考程度に」AIを動かすというのは皆さん今後やっていくのではないでしょうか。果たしてわれわれ医療の世界ではどのAIが生き残っていくでしょうか。楽しみですね。

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男性用経口避妊薬の実現に向けて、マウスで有効性確認

 1人の男性が彼女とベッドインする前に、小さな錠剤を口にする。ただしそれはバイアグラではない。セックスの直前に服用するだけで妊娠を防ぐことができる避妊薬だ――。このような男性によるオンデマンドの避妊法が、いつの日か実際に可能になるかもしれない。米ワイルコーネル医科大学のLonny Levin氏らは、精子の泳ぐ力の鍵となる酵素を阻害するという手法を、男性用避妊薬の開発へつなげる研究を行っている。 「Nature Communications」に2月14日掲載された研究によると、実験用マウスにある化合物を投与してその酵素の作用を阻害すると、妊娠が成立しないことが確認された。Levin氏は、「化合物の効果は投与後30分以内に発現し、その後2時間は効果が維持され、翌日には投与前と同じ状態に戻っていた。マウスに何ら悪影響は見られず、性的行動と射精は全く正常だった」と話している。 発表された論文に研究背景として述べられているところによると、全ての妊娠の約半数は意図しないものであり、その割合は米国の10代の若者ではさらに高いとのことだ。この研究に資金を提供した米国立小児保健・人間発達研究所のChristopher Lindsey氏は、「このようなアプローチは、避妊法に関する長足の進歩をもたらすのではないか。避妊を目的とした女性のホルモン療法のように連日服用する必要がなく、バイアグラがそうであるように、性行為を行う少し前に飲むだけでよいのだから」と期待を表している。 この研究で標的としている酵素は、可溶性アデニリルシクラーゼ(sAC)と呼ばれるもので、精子が女性の卵子に向かって泳いでいくのを助けるように働き、妊娠の成立をサポートする。「受精のために、精子は卵子まで泳いで行かなければならない。精子の運動する力を奪えば、精子はそこにとどまったままで妊娠は成立しない。われわれが研究している化合物はそのように作用して、精子の移動と妊娠を妨げる」とLindsey氏は解説する。 Levin氏らの研究では、sACを特異的に阻害する化合物を投与したオスのマウスを、メスのマウスと同じケージ内で飼育した。予測されていた通り、マウスの活発な性行動が認められたが、妊娠したメスはいなかった。その後、メスのマウスから精子を採取して観察したところ、受精に至る能力を失ったままの状態であることが分かった。一方、化合物は3時間後に失活し、オスマウスは生殖能力を回復した。 なお、Levin氏によると、一部の男性ではsACの働きが低下しているために男性不妊になることがあり、そのような男性では腎結石のリスクが高くなるという。ただし、「腎結石のリスクはsACの働きが長期間阻害されている場合に発生するものであって、この化合物のsAC阻害作用は一時的なものであり、腎結石が形成されるほどの時間はない」としている。 とはいえ、マウスに用いられた薬物はまだ「ツール化合物」と呼ばれる基礎的な実験レベルのものであり、ヒトでも実際に機能するsAC阻害薬を見つけるには、さらなる研究が必要な段階だとLevin氏は述べている。「現時点でヒトを対象とする研究を行うほど研究が進んでいるとは考えていない。今後2〜3年で臨床試験を開始できることを目指している」とのことだ。ただ、sACの働きを阻害するというアプローチが成立し得ることが本研究によって明らかになり、男性のオンデマンド経口避妊薬の可能性が示された意義は大きい。「いつの日か、家族計画において男性と女性が対等なパートナーになり、女性が毎日避妊薬を服用する必要がなくなることを願っている」とLevin氏は期待を語っている。

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抗精神病薬とプロラクチンレベル上昇が骨折リスクに及ぼす影響

 抗精神病薬による治療が必要な患者は、骨粗鬆症関連の脆弱性骨折を含む骨折リスクが高いといわれている。これには、人口統計学的、疾患関連、治療関連の因子が関連していると考えられる。インド・National Institute of Mental Health and NeurosciencesのChittaranjan Andrade氏は、抗精神病薬治療と骨折リスクとの関連を調査し、プロラクチンレベルが骨折リスクに及ぼす影響について、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年1月30日号掲載の報告。 主な結果は以下のとおり。・たとえば、認知症患者では、認知機能低下や精神運動興奮により転倒リスクが高く、統合失調症患者では、身体的に落ち着きがない、身体攻撃に関連する外傷リスクが高く、抗精神病薬服用患者では鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連する転倒リスクが高くなる。・抗精神病薬は、長期にわたる高プロラクチン血症により生じる骨粗鬆症に関連する骨折リスクを高める可能性がある。・高齢者中心で実施された36件の観察研究のメタ解析では、抗精神病薬の使用が大腿骨近位部骨折リスクおよび骨折リスクの増加と関連していることが示唆された。この結果は、ほぼすべてのサブグループ解析でも同様であった。・適応疾患と疾患重症度の交絡因子で調整した観察研究では、統合失調症患者の脆弱性骨折は、1日投与量および累積投与量が多く、治療期間が長い場合に見られ、プロラクチンレベルを維持する抗精神病薬よりも、上昇させる抗精神病薬を使用した場合との関連が認められた。また、プロラクチンレベル上昇リスクの高い抗精神病薬を使用している患者では、アリピプラゾール併用により保護的に作用することが示唆された。・骨折の絶対リスクは不明だが、患者の年齢、性別、抗精神病薬の使用目的、抗精神病薬の特徴(鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連するリスク)、1日投与量、抗精神病薬治療期間、ベースライン時の骨折リスク、その他のリスク因子により異なると考えられる。・社会人口統計学的、臨床的、治療に関連するリスク因子に関連する転倒および骨折リスクは、患者個々に評価し、リスクが特定された場合には、リスク軽減策を検討する必要がある。・プロラクチンレベルの上昇リスクの高い抗精神病薬による長期的な治療が必要な場合、プロラクチンレベルをモニタリングし、必要に応じてプロラクチンレベルを低下させる治療を検討する必要がある。・骨粗鬆症が認められた場合には、脆弱性骨折を予防するための調査やマネジメントが求められる。

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自己注射可能な週1回投与のMTX皮下注「メトジェクト皮下注シリンジ」【下平博士のDIノート】第115回

自己注射可能な週1回投与のMTX皮下注「メトジェクト皮下注シリンジ」今回は、抗リウマチ薬「メトトレキサート(MTX)皮下注(商品名:メトジェクト皮下注7.5mgシリンジ0.15mL/同10mgシリンジ0.20mL/同12.5mgシリンジ0.25mL/同15mgシリンジ0.30mL)、製造販売元:日本メダック」を紹介します。本剤は、国内初の自己注射可能なMTX皮下注製剤であり、関節リウマチ患者の服薬アドヒアランスの向上に加え、誤投与・過剰投与リスクの軽減が期待されています。<効能・効果>本剤は、関節リウマチの適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年11月16日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはMTXとして7.5mgを週に1回皮下注射します。患者の状態や忍容性などに応じて適宜増量できますが、15mgを超えることはできません。4週を目安に患者の状態を十分に確認し、増量は2.5mgずつ行います。<安全性>国内第III相臨床試験(MC-MTX.17/RA試験)において、83.8%(93/111例)に臨床検査値異常を含む有害事象が認められました。5%以上に認められたものは、悪心16.2%、口内炎14.4%、関節リウマチ11.7%、上咽頭炎10.8%、ALT増加9.9%、肝機能異常9.9%、白血球数減少8.1%、上腹部痛5.4%、高血圧5.4%などでした。なお、重大な副作用として、ショック/アナフィラキシー(頻度不明)、骨髄抑制(5%以上)、感染症(0.1~5%未満)、結核、劇症肝炎/肝不全、急性腎障害/尿細管壊死/重症ネフロパチー、間質性肺炎/肺線維症/胸水、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)/皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、出血性腸炎/壊死性腸炎、膵炎、骨粗鬆症、脳症(白質脳症を含む)、進行性多巣性白質脳症(PML)(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、異常な状態となっている免疫反応や炎症反応を抑えることで、関節リウマチによる関節の腫れや痛みを改善します。2.通常、週に1回、特定の曜日に皮下注射してください。3.注射部位は大腿部・腹部・上腕部の毎回異なる部位を選び、短期間に同一部位へ繰り返して投与しないでください。4.この薬を投与している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は医師に相談してください。5.発熱、倦怠感が現れた場合や、口内炎、激しい腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れた場合は直ちに医師に連絡してください。6.(妊娠可能年齢の女性やパートナーが妊娠する可能性のある男性に対して)この薬を投与中および投与終了後一定の期間は、適切な方法で避妊を行ってください。7.(授乳中の女性に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤の投与中は授乳しないでください。<Shimo's eyes> 関節リウマチ(RA)治療の基本は、疾患活動性を低く抑え、早期の臨床的寛解を達成・維持することです。MTXはRAの病態形成に関与する種々の細胞に対して、複数の分子作用機序を介して免疫および炎症性反応を抑制し、抗RA作用を発揮すると考えられています。日本リウマチ学会、米国リウマチ学会(ACR)、欧州リウマチ学会(EULAR)のガイドラインではMTXが第1選択薬として推奨されています。わが国においては、RAに対するMTXはこれまで経口薬のみが発売されていましたが、本剤は週1回の皮下投与のプレフィルドシリンジです。医師の管理・指導のもと、自己注射も可能です。2022年9月時点で、本剤は欧州を中心に世界49の国または地域で承認されており、2019年には欧州医薬品庁はMTXの誤投与の危険性を回避するため、RAなどの治療に対して週1回投与のMTX皮下注製剤を推奨しています。MTX経口薬から切り替えの際の投与初期量は、1週間当たりの投与量を対比させた添付文書の表などを参考に決定されます。安全性プロファイルは、注射部位反応を除いてMTX経口薬と同様と考えられています。主な副作用は白血球数減少、肝機能障害、悪心、口内炎などであり、重大な副作用である骨髄抑制、感染症、結核、劇症肝炎、肝不全、急性腎障害、尿細管壊死、重症ネフロパチー、間質性肺炎、肺線維症、出血性腸炎などに注意する必要があります。2020年10月の「医療安全情報No.167」では、MTXの過剰投与による骨髄抑制の事故が後を絶たないことを注意喚起しています。本剤の普及によって医療現場での投与過誤、あるいは患者さんの服用過誤が減少することを期待します。

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第134回 全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府

<先週の動き>1.全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府2.かかりつけ医機能を制度化へ、かかりつけ医機能報告制度創設/厚労省3.新型コロナワクチン、無料接種は4月以降も継続、次回は今年の秋から/厚労省4.健康保険証廃止で「マイナ保険証」ない人には資格確認書を提供/政府5.臓器移植を無許可あっせんでNPO法人理事を逮捕、法外な料金も問題に/警視庁6.未承認薬の緊急避妊薬やイベルメクチンのアフィリエイト広告で逮捕/兵庫県警1.全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府政府は、2月10日に一定の収入(年収153万円以上)を超えるの75歳以上の高齢者の健康保険料の引き上げを含む、「全世代社会保障法案」(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案)を閣議決定した。少子高齢化で財政が厳しい中、子ども・子育て支援の拡充、高齢者医療を全世代で公平に支えあうための高齢者医療制度の見直し、医療保険制度の基盤強化、医療・介護の連携機能および提供体制などの基盤強化を柱としている。具体的には「出産育児一時金」が今年の4月から50万円に引き上げられる財源について、75歳以上の高齢者にも財源の一部を負担してもらうほか、一定の年収を超える75歳以上の高齢者の保険料を現在の66万円を2024年度に73万円、2025年度に80万円と段階的に引き上げる。さらに74歳までの前期高齢者の医療費を現役世代が支援する仕組みでも、大企業の健康保険組合の負担を増やす一方で、中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ」の負担を軽くする。この他、都道府県に対して、医療費適正化計画の立案の段階から、保険者と協議を行うことで、医療費適正化に向けた都道府県の役割、責務を明確化する。現在開会中の通常国会に提出し、成立を目指す。施行期日は、一部を除いて2024年4月1日となる。(参考)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(厚労省)75歳以上医療保険料引き上げ、法案閣議決定 年収153万円超から(毎日新聞)75歳以上の医療保険料、引き上げへ 政府 全世代型法案を閣議決定(JOINT)2.「かかりつけ医機能報告」を創設、かかりつけ医機能が制度化へ/厚労省政府は2月10日、かかりつけ医機能の制度整備などを盛り込んだ「全世代社会保障法案」(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案)を閣議決定した。現行の医療機能情報提供制度を変更して、新たに「かかりつけ医機能報告制度」が創設される。厚生労働省によれば、慢性疾患を有する高齢者や継続的に医療を必要とする患者を地域で支えるために定められた機能([1]日常的な診療の総合的、継続的実施、[2]時間外診療、[3]急変時や入院時に患者を支援、[4]在宅医療の提供、[5]介護サービスなどとの連携など)について、医療機関から都道府県に報告を求める。都道府県知事はそのデータを確認し、地域の関係者との協議の場に報告するとともに公表する。厚生労働省は、かかりつけ医機能の報告が医療機関を縛るものではないとしており、必ずしもかかりつけ医制度を義務化するものではないとの立場。厚生労働省は医療法を改正して、2025年4月1日の施行を目指す。(参考)かかりつけ医機能が発揮される制度整備について(厚労省)「かかりつけ医機能」発揮へ制度整備、法案閣議決定 厚労相「地域で機能提供できる体制構築」(CB news)自民党厚労部会 全世代社会保障法案を部会長一任で了承 かかりつけ医機能の「確認」は行政行為にあらず(ミクスオンライン)「かかりつけ医」制度化、何が論点? 武藤正樹医師に聞く(上) 政府は患者登録制は見送り(東京新聞)「かかりつけ医」制度化、何が論点? 武藤正樹医師に聞く(下) 総合診療医の育成支援を(同)3. 新型コロナワクチン、無料接種は4月以降も継続、追加接種は今年の秋に実施/厚労省厚生労働省は2月8日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を開催し、今年3月末に無料接種の期限を迎える新型コロナウイルスワクチン接種について、4月以降もすべての接種対象者の無料接種を継続する方針を固め、さらに2023年度の追加接種の方針について、以下の通りとりまとめた。追加接種の対象者は高齢者などの重症化リスクがある人を優先するが、重症化リスクが高くない人であっても重症化が発生するため、引き続き無料接種を継続する。接種時期は、前回から1年が経過する今年秋から冬に実施予定だが、重症化リスクのある人については秋を前に接種を行う。また、子ども(5~11歳)や乳幼児(6ヵ月~4歳)は、接種開始から時間が短いため、接種期間を延長する。(参考)2023年度以降の新型コロナワクチンの接種の方針についての議論のとりまとめについて(厚労省)2023年度以降の新型コロナワクチンの接種の方針について(同)新型コロナワクチン、4月以降も無料接種継続へ 次回は今秋冬に(毎日新聞)新型コロナワクチン 秋から冬に次の接種 基本方針まとまる(NHK)コロナワクチン接種スケジュール「毎年秋冬が妥当」厚労省が厚科審部会に方針案提示(CB news)4.健康保険証廃止で「マイナ保険証」ない人には資格確認書を提供/政府政府は、2024年秋に行う健康保険証の廃止と、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への切り替えを前に、「マイナ保険証」の普及に向けて、取得を呼びかける広報を行っているが、2月5日時点マイナンバーカードの保有率は68.1%だが、健康保険証としての利用登録率は59.3%とまだ低い(2023年2月5日時点)。このため政府は、2024年の健康保険証の廃止後もマイナンバーカードを紛失した人や未取得の人が保険診療を受けられるように、保険証の情報を記載した「資格確認書」を提供する方向で検討を開始した。また、新生児についても、出生届の提出時に申請を受け付け、1歳未満の乳児には顔写真がないカードを交付する方針。政府は、具体化に向けてさらに検討を行い、法案を今国会に提出する見込み。(参考)“マイナ保険証”ない人には「資格確認書」提供で調整 政府(NHK)健康保険証廃止後の保険診療で具体案取りまとめ 政府(同)マイナ保険証未取得者に資格確認書 24年保険証廃止で政府調整(毎日新聞)マイナンバーカード交付状況について(総務省)政策データダッシュボード(ベータ版)(デジタル庁)5.臓器移植を無許可あっせんでNPO法人理事を逮捕、法外な料金も問題に/警視庁ベラルーシの病院での臓器移植を無許可であっせんしたとして、警視庁生活環境課は2月9日までに、NPO法人「難病患者支援の会」(横浜市)の理事を臓器移植法違反の疑いで逮捕した。同法人も同じ容疑で書類送検となる見込み。報道によると逮捕された菊池仁達容疑者らは、厚生労働省の許可を得ずに、臓器移植を希望する患者に対して海外渡航での臓器移植を斡旋し、手術後に合併症などで死亡するなど被害が出ているほか、費用を払い込んだにもかかわらず移植が行われず、死亡した患者の遺族へ返金がなされていないなど被害が発生していた。加藤厚労大臣は、記者会見でこの事件について「事実だとすれば大変遺憾」だとして、国内でも他に同様の事案が無いか、調査していく考えを示した。さらに「同様の事案が生じないよう、臓器提供に関する正確な情報を発信していく」と強調した。日本臓器移植ネットワークによれば、日本国内のドナー数は100万人当たり0.62とアメリカの41.88やドイツの11.22など世界各国に比べて、提供件数が低いままであり、今回のように待機患者が海外を目指すケースが後を絶たない。2008年の国際移植学会で「移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすること」という主旨のイスタンブール宣言が出されたことで、わが国でも2009年に改正臓器移植法が成立し、2010年7月に全面施行となっている。(参考)臓器あっせん、患者は徹底捜査求める「移植費用の行方解明して」(読売新聞)臓器あっせん、別の日本人患者も死亡…ベラルーシで肝臓・腎臓を同時移植(同)相場の2倍要求か 臓器移植、無許可あっせん容疑の理事(日経新聞)「不透明」な海外移植あっせん 増えぬドナー、減らぬ希望者が背景に(朝日新聞)6.未承認薬の緊急避妊薬やイベルメクチンのアフィリエイト広告で逮捕/兵庫県警兵庫県警生活経済課は2月9日、緊急避妊薬やうつ病の治療薬など未承認の医薬品のアフィリエイト広告をインターネット上に掲載したとして、医薬品医療機器法(未承認医薬品の広告禁止)違反の疑いで、群馬県高崎市の男性(39)を逮捕した。調べによると、男性は副業でアフィリエイト(ネット広告)用のウェブサイトを複数開設し、アフィリエイト仲介業者を通して、毎月10万円前後の報酬を得ていた。Webサイトには、未承認の緊急避妊薬、抗うつ薬に加え、新型コロナウイルス感染症治療薬として未承認の「イベルメクチン」も掲載されていた。厚生労働省は2021年8月に医薬品医療機器等法を改正しており、医薬品等の誇大広告の規制の強化を打ち出している。第66条の条文には「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」とされている。規制対象は、広告主だけではなく、広告代理店・アフィリエイターなどの個人も対象となる。また、健康食品・サプリメント、健康・美容器具であっても、医療品のような効果を訴求して、薬機法に抵触する表現をすると医薬品であるとみなされ、課徴金の対象となる可能性があり、課徴金として「売上額」の4.5%を支払う必要がある。(参考)未承認の緊急避妊薬などをネット広告に 県警が群馬の男逮捕「本当に悪いのは輸入代行者」(神戸新聞)医薬品等の広告規制について(厚労省)アフィリエイト広告のしくみと法規制(国民生活センター)薬機法改正のポイントを分かりやすく解説!企業は何を対策すべき?(Letro)

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「肥満」との違いは?肥満症診療ガイドライン改訂

 11月24日に日本肥満学会(理事長:横手 幸太郎氏[千葉大学医学部附属病院長])は、『肥満症診療ガイドライン2022』についてプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、肥満症の現況や治療に関する解説と今回刊行されたガイドラインの概要が説明された。また、本ガイドラインは12月2・3日に那覇市で開催される第43回日本肥満学会(会長:益崎 裕章氏[琉球大学大学院 医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 教授])で発刊される。肥満症とはBMI25以上で何らかの健康障害がある人 はじめに理事長の横手 幸太郎氏が「わが国における肥満症の現況と肥満症診療ガイドライン2022の位置づけ」をテーマに講演を行った。 肥満とは、「脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態」をいい、わが国ではBMI25以上が肥満とされている。その数は、年を経て全世界で増えており、とくにアメリカやアフリカで増加している。 肥満になると糖尿病、高血圧、脂質異常症などの健康障害のほか、膝・腰・足首などへの運動器障害、睡眠時無呼吸症候群などが生じるリスクが高くなる。 そこで、BMIが25以上あり、一定の健康障害(糖尿病、高血圧、脂質異常症、痛風など11項目)がある人を「肥満症」として、医学的に治療が必要な対象者としている(BMI35以上は高度肥満症)。 肥満症の治療は、食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法、外科療法と5つの考え方があり、他職種連携によるチーム医療がなされる必要がある。実際、一番身近な保健指導の介入により6ヵ月後のHbA1cは-0.2%減少、中性脂肪は-81.5%減少など改善効果が報告されている1)。 肥満に関して最近のトピックスとしては、若い女性にはBMI18.5未満の「やせ過ぎ」の女性がむしろ増えていることやそのやせ過ぎが将来的に骨粗鬆症や不妊のリスクとなること、高齢者の肥満ではフレイルなどとの関連も考慮し、無理な減量よりも筋肉量維持や増強に心がけることなども指摘されている。 横手氏は終わりに本ガイドラインの目的について「体重を減らすことにメリットがある。『やせるべき人』を選び出す、そして、適切に治療と予防を行うことである」と述べ講演を終えた。小児や高齢者の肥満にも言及 続いて、同学会のガイドライン作成委員会委員長の小川 渉氏(神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科 教授)が「肥満症診療ガイドライン2022の改訂のポイント」をテーマに、今回の改訂内容や今後の展望などを解説した。 本ガイドラインは、2006年、2016年と発刊され、今回の2022年版では、主に「肥満症治療の目標と学会が目指すもの」「高度肥満症」「小児の肥満」「高齢者の肥満」「肥満症の治療薬」「コラム」について改訂が行われた。 「肥満症治療の目標と学会が目指すもの」と「高度肥満症」では、肥満症治療指針について「肥満症」と「高度肥満症」とで目標、治療などの治療方針が異なることが記載された。とくに肥満の外科治療の減量・代謝改善手術では保険適用の内容などが改訂された。薬物治療についてはGLP-1受容体作動薬の治験に関して言及され、セマグルチドの68週後の体重変化率についてプラセボ-2.1%に対し、セマグルチド-13.2%と有意な体重減少があったこと、また、本試験が学会の定める肥満症の診断基準に基づいて作成されたプロトコ-ルで実施された試験であることなどが記載されている2)。 「高齢者の肥満」では、日本老年医学会のガイドラインの内容 と統一性を考慮して改訂され、 高齢者肥満症の減量目標をフレイル予防と健康障害発症予防の両者も考慮し「BMI22~25」の範囲とすることが記載され、過剰な減量には留意が必要とされている。 「小児の肥満」では、将来の成長を考慮しBMIではなく、肥満度で判定し、身体面だけでなく、肥満に伴う「いじめ」など生活面への配慮も記載されている。 「肥満症の治療薬」では、「肥満の治療」ではなく、「肥満症の治療」という基本概念のもと、記載の整備と概念を明確化したほか、改訂では製薬企業の開発担当者とも意見交換を行い、評価基準と適応基準は必ず同一ではないことが記載されている。 その他、今回の改訂では「肥満へのスティグマ」についても触れられ、肥満の原因が個人への帰責事由という偏見からくる社会的スティグマと肥満を自分自身の責任とする個人的スティグマへの配慮が述べられている。 最後に小川氏は「肥満症の課題は、認知度がまだ低く、社会的な浸透もメタボリックシンドローム(72.5%)や肥満(81.8%)と比較しても、肥満症(58.3%)は低い。このガイドラインが、診療に役立つだけでなく社会の啓発に寄与することを期待する」と抱負を述べ、レクチャーを終えた。

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抗うつ薬と骨量減少との関連~メタ解析

 うつ病や抗うつ薬の使用は、骨粗鬆症のリスク因子の1つであるといわれている。しかし、抗うつ薬の骨への影響やうつ病患者の年齢と骨の健康状態の自然な低下に関する研究では、一貫した結果が得られていない。イタリア・Magna Graecia UniversityのMichele Mercurio氏らは、抗うつ薬と骨密度(BMD)の関連を調査した。その結果、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用がBMD減少と関連している可能性が示唆された。著者らは結果を踏まえ、抗うつ薬の使用と骨の脆弱性との潜在的な関連性に対する医師の意識を高め、骨の健康状態のモニタリング強化を目指すと述べている。Orthopedic Reviews誌2022年10月13日号の報告。 抗うつ薬およびBMDをキーワード(英語のみ)として、2021年6月までに公表された文献をPubMed/Medline、Cochraneデータベース、Scopusライブラリより検索し、PRISMAガイドラインに従ってシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。方法論的質の評価には、ニューカッスル・オタワスケールを用いた。 主な結果は以下のとおり。・定性分析には18件、定量分析には5件の文献を含めた。・さまざまなサブタイプのうつ病患者4万2,656例を対象に分析を行った。・研究の内訳は、SSRIのみを使用した研究が10件、SSRIと三環系抗うつ薬を使用した研究が6件、2種類以上の抗うつ薬を併用した研究が2件であった。・最新カテゴリの抗うつ薬(ボルチオキセチン、esketamineなど)を使用した研究は含まれなかった。・全体として、SSRIによるBMD減少(平均:0.28、95%CI:0.08~0.39)の有意な影響が観察された。

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1日1回投与の新規骨形成促進薬「オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg」【下平博士のDIノート】第110回

1日1回投与の新規骨形成促進薬「オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg」今回は、骨粗鬆症治療薬「アバロパラチド酢酸塩注射剤(商品名:オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg、帝人ファーマ)」を紹介します。本剤は、骨吸収作用に対して骨形成作用がより優位な新規の骨形成促進薬であり、1日1回の皮下投与により、骨量の増加と骨折の抑制が期待されています。<効能・効果>本剤は、骨折の危険性の高い骨粗鬆症の適応で、2022年8月31日に製造販売承認を取得しました。なお、オスタバロ皮下注3mgが2021年3月に同様の適応で製造販売承認されていますが、3mg製剤は28日投与の製剤であり、新薬の14日処方制限への対応が必要であったため現時点での薬価収載は見送られています。<用法・用量>通常、成人には1日1回アバロパラチドとして80μgを皮下に注射します。本剤の投与期間は18ヵ月間までです。なお、本剤は使用開始前も開始後も冷蔵庫で保管します。<安全性>国内および海外の第III相試験を統合した結果、臨床検査値異常を含む副作用は962例中357例(37.1%)で報告されました。主な副作用は、高カルシウム尿症81例(8.4%)、浮動性めまい55例(5.7%)、悪心52例(5.4%)、頭痛34例(3.5%)、動悸33例(3.4%)などでした。重大な副作用として、アナフィラキシー(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、骨形成を促進して骨量を増やすことで、骨折を予防します。2.投与後30分程度はできる限り安静にして、高所での作業、自動車の運転など危険が伴う作業に従事する場合は注意してください。3.投与後に血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸、気分不良、悪心、顔面蒼白、冷汗などが生じた場合には、症状が治まるまで座ったり横になったりしてください。4.悪心、嘔吐、便秘、食欲減退、腹痛などが生じた場合は受診してください。5.(妊娠可能な女性に対して)本剤の投与期間中は避妊してください。<Shimo's eyes>骨粗鬆症に伴う骨折は、日常生活動作やQOLの低下、生命予後の悪化につながるため、初回骨折の予防に加え、すでに骨折が生じた場合は次の骨折を予防して、骨折の連鎖を起こさないための治療が重要です。本剤はヒト副甲状腺ホルモン関連蛋白質(hPTHrP)のアミノ酸配列の一部を改変したアナログ製剤で、骨代謝に関わるPTH1型受容体のRG型を選択的に刺激するため、骨量の増加と骨折抑制が期待できます。既存の副甲状腺ホルモン製剤(PTH製剤)としては、テリパラチド(遺伝子組換え)(商品名:フォルテオ皮下注キット)、テリパラチド酢酸塩(同:テリボン皮下注用、テリボン皮下注オートインジェクター)などが発売されています。また、抗体薬としては、抗ランクル抗体のデノスマブ(遺伝子組換え)(同:プラリア皮下注)、抗スクレロスチン抗体のロモソズマブ(遺伝子組換え)(同:イベニティ皮下注)が発売されており、超高齢社会に対応すべく効果の高い骨粗鬆症治療が近年続々と登場しています。本剤は、海外における骨折の危険性の高い閉経後骨粗鬆患者を対象とした海外第III相試験(BA058-05-003試験、ACTIVE試験)において、プラセボに比べて投与18ヵ月の新規椎体骨折の発生率が低く、最初の非椎体骨折の発生までの期間が有意に延長されました。また、本剤投与終了後のアレンドロネートによる継続治療により、プラセボ投与終了後のアレンドロネート治療群と比較して、ACTIVE試験の開始から投与後25ヵ月および43ヵ月までの新規椎体骨折発生率が有意に低く、最初の非椎体骨発生までの期間に有意な延長が認められました(BA058-05-005試験、ACTIVE延長試験)。本剤の電動式注入器(オスタバロインジェクター)は、製剤カートリッジを14日ごとに交換するよう設計されていて、液晶画面には操作手順、投与履歴、累計投与回数が表示されるとともに、カートリッジの交換や冷所保管忘れの通知機能なども備えられています。診察では、インジェクターに記録された投与履歴や累積回数を確認することができます。なお、本剤の使用にあたっては、インジェクターのほかに製剤カートリッジ、A型専用注射針、消毒用アルコール綿が別途必要となるので、処方の確認が必要です。安全面では、活性型ビタミンD製剤との併用は、血清カルシウム値が上昇する恐れがあるため避けることが望ましいとされています。本剤投与直後から数時間後にかけて、一過性の急激な血圧低下が現れることがあるので注意が必要です。また、一過性の血清カルシウム値上昇がみられることもあり、悪心、嘔吐、便秘、食欲減退、腹痛などが生じた場合は速やかに診察を受けるように患者さんに指導しましょう。

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ESMO2022 レポート 乳がん

レポーター紹介今年度のESMOでは、現在の臨床を変えたり、今後の方向性に大きな影響を与えたりする重要な演題が発表されました。その中で、今回、進行乳がんではTROPiCS-02試験のOSの結果、MONARCH-3試験の中間解析でのOSの結果、経口SERDのランダム化比較試験の結果、周術期乳がんではDATA試験の結果を取り上げます。TROPiCS-02試験:sacituzumab govitecanがOSを改善sacituzumab govitecanは、抗Trop-2抗体とSN-38の抗体薬物複合体です。ランダム化比較第III相試験であるASCENT試験1)では、転移・再発ホルモン受容体(HR)陰性HER2陰性乳がん(トリプルネガティブ乳がん:TNBC)に対して2治療以内の化学療法歴がある症例が対象となりました。この結果、sacituzumab govitecanは、医師選択治療と比較して無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の改善を示したため、すでにTNBCに対してFDAから承認されています。今回のTROPiCS-02試験(ClinicalTrials.gov、ID:NCT03901339)は、内分泌療法抵抗性のHR陽性HER2陰性進行乳がん患者において、sacituzumab govitecan(SG群)(n=272)と医師選択治療(TPC群)(n=271)を比較したランダム化比較第III相試験です。タキサン、内分泌療法、およびCDK4/6阻害薬、ならびに転移乳がんに対して2~4種類の化学療法レジメンを受けた患者が適格でした。TPC群の治療選択肢は、カペシタビン、ビノレルビン、ゲムシタビン、またはエリブリンでした。2022年のASCO年次集会では、追跡期間中央値10.2でのPFSの最終解析結果が報告されており、SG群は、TPC群よりもPFSの中央値が良好で、それぞれSG群5.5ヵ月に対してTPC群は4.0ヵ月でした(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.53~0.83、p=0.0003)2)。6ヵ月PFS割合はそれぞれ46%対30%、12ヵ月PFS割合はそれぞれ21%対7%と、いずれもSG群で良好な結果でした。OSについては第1回中間解析で、immatureな状況で、統計学的な有意差は認めませんでした。有害事象は、SG群で好中球減少症が51%、下痢9%といった結果でしたが、治療中断に至る重篤な有害事象はSG群で6%、TPC群で4%と大きな差を認めませんでした。今回、半年と経たず、2回目の中間解析結果として、OSのupdate結果が公表されました。今回のESMOでの発表は、追跡期間の中央値が12.5ヵ月時点で、OSはSG群で有意に良好でした。OSの中央値は、SG群で14.4ヵ月、TPC群で11.2ヵ月でした(HR:0.79、95%CI:0.65~0.96、p=0.020)。また、12ヵ月のOS割合はそれぞれ61%と47%でした。奏効割合はSG群で21%に対してTPC群は14%(p=0.035)と、有意にSG群が良好でした。sacituzumab govitecanは、HR陽性HER2陰性進行乳がんに対して、他の抗がん剤と比較してPFSに加えてOSの改善を示した数少ない薬となりました。これにより、HR陽性HER2陰性進行乳がんに対しても標準治療の一つとして位置付けられることになります。現在、日本においてもギリアド・サイエンシズによる企業治験が実施中ですので、日本での承認が待たれます。また、一部はHER2低発現のHR陽性HER2陰性乳がんで、トラスツズマブデルクステカン(Destiny Breast 04試験3))と症例対象が重なっています。今後、両剤の位置付けについても、検討が進められると考えられます。MONARCH3試験:第2回中間解析では統計学的有意差は検証されなかったがアベマシクリブ群で良好な結果サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬であるアベマシクリブは、プラセボ対照ランダム化比較第III相試験であるMONARCH3試験で、主要評価項目である無増悪生存期間の有意な改善をもとに、HR陽性HER2陰性閉経後進行乳がん患者に対する初回内分泌療法として非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)と組み合わせて承認されています4)。本試験における副次的評価項目であるOSについて、2回目の中間解析結果が公表されました。既にEMAの添付文書に記載されている結果が、明確に発表されたことになります。2回目の中間解析結果は追跡期間の中央値は5.8年時点で解析されました。全体集団(ITT集団)では、アベマシクリブ+NSAIのOS中央値は67.1ヵ月に対して、プラセボ+NSAIは54.5ヵ月でした(ハザード比:0.754、95%CI:0.584~0.974、p=0.0301)。中間解析の事前設定されたp値は下回らず、統計学的な有意差は検証されていません。一方で、内臓転移あり患者のサブグループ(n=263)でも、アベマシクリブ+NSAIのOS中央値が65.1ヵ月であったのに対し、プラセボ+NSAIは48.8ヵ月であり(HR:0.708。95%CI:0.508~0.985、p=0.0392)、予後不良と考えられる内臓転移ありのサブグループでも全体集団のアベマシクリブによるOS改善傾向は維持されていました。まだOSにまで差があるとは言えないものの、最終解析が期待される結果でした。最終OS解析結果は来年発表される予定であり、現時点で臨床でのCDK4/6阻害薬の使い分けは決定的な差がない状況です。ただし、2022年ASCO年次集会で発表され、OSに統計学的有意差を認めなかったPALOMA-2試験の最終OS結果とは、今回の結果は異なっています。サブグループ解析も、内臓転移症例のような予後不良症例においてアベマシクリブの上乗せ効果が際立っており、これまでのPFSやMONARCH2のOS結果の特徴が維持されています。Adjuvantの様々なCDK4/6阻害薬の結果を含め、これまで同等と考えられていたパルボシクリブとアベマシクリブの薬剤の違いについて、より深い考察が求められます。acelERA BC試験とAMEERA-3試験:経口SERD単剤のPhase2試験が複数negative選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)は、フルベストラントが実臨床で用いられますが、筋注製剤であることが一つのハードルとなっています。また、AI治療中に出現し、AI耐性に関わるESR1遺伝子変異に対する耐性克服としても、経口SERDが期待され、その開発が進んでいます。先行しているelacestrantは、オープンラベルランダム化比較第III相試験において、医師選択の内分泌療法よりもelacestrantによるPFS改善が既に検証されています5)。一方で、複数の製薬企業が経口SERDの開発を進めており、今回は2つの経口SERD単剤のオープンラベルランダム化第II相試験の結果が報告されました。acelERA BC試験では、1-2ラインの治療歴を有するエストロゲン受容体陽性HER2陰性の局所進行または転移乳がんにおいて、経口SERDのgiredestrantが、医師選択の内分泌療法単剤(TPC群)と比較されました。この結果、giredestrantはPFSの有意な改善を示すことはできませんでした。追跡期間中央値は7.89ヵ月で、PFS-INV中央値はgiredestrant群5.6ヵ月、TPC群5.4ヵ月でハザード比は0.81(95%信頼区間:0.60~1.10、p=0.1757)で有意差はありません。6ヵ月PFS率はそれぞれ46.8%、39.6%でgiredestrant群において良好な傾向でした。ESR1遺伝子変異陽性例におけるPFS中央値はgiredestrant群(51例)5.3ヵ月、TPC群(29例)3.5ヵ月で(ハザード比は0.60 95%CI; 0.35-1.03、p=0.0610)で、全集団よりもgiredestrant群で良好な傾向でしたが、有意差を認めませんでした。AMEERA-3試験では、閉経後女性あるいはLHRHアゴニストの投与を受けている閉経前女性または男性のER陽性HER2陰性進行乳がんで、進行乳がんに対する2ライン以下の内分泌療法、1ライン以下の化学療法あるいは1ライン以下の標的治療による前治療歴を有し、ECOG PS 0-1の患者を対象に、amcenestrantと医師選択内分泌療法の有効性と安全性が比較されました。この結果、PFS中央値はamcenestrant 群3.6ヵ月、医師選択内分泌療法群3.7ヵ月(ハザード比 1.051, 95%CI 0.789-1.4、p=0.6437)と、有意差を認めませんでした。さらに、ESR1遺伝子変異陽性例におけるPFSはamcenestrant群においてTPC群よりも良好な傾向で、中央値はそれぞれ3.7ヵ月対2.0ヵ月でハザード比は0.9(95%CI; 0.565-1.435、p=0.6437)でしたが、有意差を認めませんでした。以上をまとめると下記の表のようになります。画像を拡大する経口SERDの開発は、現在よりフロントラインで、初回治療の第III相試験が多数行われていますが、今回の結果で若干の暗雲が立ち込めています。ESR1遺伝子変異症例における経口SERDの有効性は、一貫してありそうと感じられました。ただし、今後も、既存のAIを始めとした内分泌療法やフルベストラントよりも本当に有効なのか、現在行われている第III相比較試験の結果が待たれます。(AMEERA-5試験は既にnegative trialであると発表されています)DATA試験の最終解析結果:一部の症例でExtended ANAの恩恵を受ける可能性DATA試験(ClinicalTrials.gov:NCT00301457)は、オランダで行われたタモキシフェンによる術後内分泌療法2〜3年投与後に再発がなかったHR陽性閉経後乳がん患者における追加AI治療の至適投与期間を調べるべく計画されたオープンラベルランダム化比較第III相試験です。患者は、アナストロゾール3年間の治療またはアナストロゾール6年間の治療のいずれかに無作為に割り付けられました。6年群の827人の患者と3年群の833人の患者が登録されました。この研究の主要評価項目はadapted DFS(aDFS)で、無作為化後3年後以降のDFSとして定義されました。10年aDFS割合はそれぞれ6年治療群69.1%および3年治療群66.0%(HR:0.86、95%CI:0.72~1.01、p=0.073)と、有意差は認めませんでした。同様に、10年型adapted OS(aOS)割合は、6年治療群で80.9%、3年治療群で79.2%(HR:0.93、95%CI:0.75~1.16、p=0.53)と、こちらも有意差を認めませんでした。サブグループ分析において、6年治療群が良い傾向を示したサブグループとして、腫瘍がER陽性およびプロゲステロン受容体(PR)陽性の患者 (HR:0.77、95%CI:0.63~0.93、p=0.018)、リンパ節転移陽性かつER陽性およびPR陽性疾患の患者(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、p=0.011)、腫瘍径2cm以上の腫瘍、かつリンパ節転移陽性、ならびにER陽性およびPR陽性の疾患を有する患者(HR:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.005)といった因子が挙げられました。しかし、これらのサブグループのいずれにおいても、10年間のaOS率に有意な改善は認めませんでした。リンパ節転移陽性かつER陽性およびPR陽性疾患の患者(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、p=0.011)、腫瘍径2cm以上の腫瘍、かつリンパ節転移陽性、ならびにER陽性およびPR陽性の疾患を有する患者(HR:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.005)DATA試験は以前のフォローアップ中央値5年時点の報告ではDFSの有意差が認められなかった6)ところ、今回の最終報告においてもDFSはnegative resultでした。これまで、5年の内分泌療法に対して、AIの5年以降投与(7-8年または10年)の有効性を検討した試験は、AERAS、MA17、NSABP-B33、NSABP-B42、DATA、GIM4、などの大規模ランダム化比較試験が存在します。乳がん学会診療ガイドライン2022年版では、これらの統合解析がなされているように、5年内分泌療法対5年以降にAI投与(extended AI)がなされた場合となると、5年以上の投与によるDFSは改善傾向が認められます。ただし、OSの改善が示されたランダム化比較試験はGIM4のみであり、統合解析でもextended AIは有意ではありませんでした。今回のDATA試験はnegative trialであった一方で、DFSでextended AI群で良好であるというこれまでと一貫した結果であったことから、上記の統合解析も大きな変化がないであろうと想定されます。さらに、extended AIによる骨粗鬆症の悪化や心血管イベントの増加など、有害事象も増えることが分かってきている現状から、ベースラインの再発リスクの見積もり、アロマターゼ阻害薬の忍容性、有害事象の追加といった要素をもとに、総合的にextended AIは検討されるべきと考えられます。一方で、近年は5年以上のアロマターゼ阻害薬投与の有効性を推定する指標が検討されてきました。FFPE検体を用いてRT- PCRから計算するBreast Cancer Index(BCI)、腫瘍径、グレード、年齢、リンパ節転移の個数から再発リスクを算出し、閉経後症例の5年目以降の内分泌療法の追加効果を予測するCTS5などが、晩期再発のリスク見積もりに有用であるとされています7)。日本ではBCIは使用しづらいですが、こういった指標も参考にしつつ、extended AIを検討するべきと考えられます。1)Bardia A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1529-1541.2)Rugo HS, et al. J Clin Oncol. 2022 Aug 26. [Epub ahead of print]3)Modi S, et al. N Engl J Med.2022;387:9-20.4)Goetz MP,et al. J Clin Oncol. 2017;35:3638-3646.5)Bidard FC,et al.J Clin Oncol. 2022;40:3246-3256.6)Tjan-Heijnen VCG, et. al. Lancet Oncol.2017;18:1502-1511.7)Andre F,et al. J Clin Oncol 2022; 40:1816-1837.

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血液型が脳梗塞リスクに影響?

 血液型によって虚血性脳卒中(脳梗塞)のリスクに差がある可能性を示唆する研究結果が報告された。米メリーランド大学のBraxton Mitchell氏らの研究によるもので、論文が「Neurology」に8月31日掲載された。特に非高齢期での脳梗塞リスクへの影響が大きいという。 Mitchell氏らの研究は、非高齢者の脳梗塞リスクに関する遺伝子変異の影響を、これまでの研究を統合して分析するメタ解析という方法で検討したもの。その研究から、血液型と脳梗塞リスクとの関連性が浮かび上がった。具体的には、O型の人はA型やB型、AB型の人よりも脳梗塞のリスクがやや低いことが示された。反対にA型の人は脳梗塞が多く、特に60歳未満での発症との強い関連が見られ、他の血液型の人よりも16%リスクが高かった。ただしMitchell氏は、「自分がA型だからといって心配することはない。血液型は変更できないが、脳梗塞のリスクの中には変更可能なさまざまな因子が含まれている。例えばタバコを吸わないこと、習慣的に運動すること、健康的な食事を取ること、高血圧や糖尿病などの脳梗塞のリスクを高める疾患があればそれをコントロールすることで、リスクを抑えられる」と話している。 血液型によって脳梗塞のリスクが異なるのはなぜだろうか? 大半の脳梗塞は、血栓が脳への血流を遮断したときに発生する。O型以外の血液型は、血栓形成に寄与するフォンウィルブランド因子(VWF)や第VIII因子のレベルが高いことが知られており、そのことが関係している可能性がある。Mitchell氏によると、高齢期に入る前に発症する脳梗塞は高齢期に入ってから発症する脳梗塞に比べて、血液凝固傾向の強さがより大きな影響を及ぼしていると考えられるという。今回の研究から得られた他のデータも、そのような考え方を支持している。例えば、血液型がA型であることは、脳梗塞以外に静脈血栓塞栓症のリスクの高さとも関連しているとのことだ。 Mitchell氏らが行ったメタ解析の対象は、世界各地で実施された48件の研究報告で、60歳になる前に脳梗塞を発症した1万6,730人と、非発症の比較対照群59万9,237人が含まれていた。脳梗塞発症と遺伝子プロファイルとの関連の解析の結果、血液型を決定するABO遺伝子を含む染色体領域との関連が見つかった。O型の人の60歳未満での脳梗塞リスクは他の血液型の人より12%低く、60歳以上での脳梗塞リスクは4%低かった。A型の人の60歳未満での脳梗塞リスクは前述のように16%高かったが、60歳以上での脳梗塞のリスク差は5%と小さかった。 この研究報告について、米マクガバン医科大学の脳血管神経内科医で、米国心臓協会(AHA)のボランティアでもあるBharti Manwani氏は、「非常に興味深い研究」と評している。また、若年期の脳梗塞に対しては血液凝固傾向の強さがより重要な役割を果たす可能性があるとの考え方に同意。その上で、「この知見は、A型という血液型がA型の人の人生を運命づけていることを示すものではない。人々は自分の血液型に関係なく、自分で変更可能な脳梗塞のリスク因子をコントロールすべきだ」と強調する。 とは言え、Manwani氏、Mitchell氏ともに、A型の人は喫煙や経口避妊薬などの血栓形成を促すことのある他の要因の影響を受けやすい可能性があると述べている。Mitchell氏らは昨年3月の米国脳卒中協会(ASA)の学術集会にて、O型以外の血液型の女性は、喫煙や経口避妊薬の服用によって50歳以前に脳梗塞を発症するリスクが有意に高くなるという研究結果を報告している。 脳梗塞や脳出血などの脳卒中は、基本的には高齢者に多い病気だが、高齢期に入るまでは心配ないというものでもない。AHAによると、米国で毎年新たに約80万人が脳卒中を発症し、そのうち10~15%は45歳以下だという。また、過去数十年の間に50歳未満の米国成人の脳卒中発症率は上昇してきており、その原因として、若年期に高血圧や糖尿病などを発症する人が増えたことの影響が考えられるとのことだ。

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腎結石の再発予防のための食事とは

 腎結石の痛みを経験したことのある人なら、目がくらむほどの激痛を二度とは経験したくないと思うことだろう。腎結石の再発予防に役立つ可能性のある食事スタイルが報告された。米メイヨー・クリニックのJohn Lieske氏らが行った前向き研究の結果であり、詳細は「Mayo Clinic Proceedings」に8月1日掲載された。 Lieske氏らは、腎結石の再発に食事スタイルが関与しているか否かを検討するために、2009年1月~2018年8月に腎結石の痛みのために同院で治療を受けた411人と、比較対照群384人の食物摂取状況を把握した上で、4.1年(中央値)追跡した。その結果、腎結石既往群の73人が追跡期間中に症状を再発した。 Cox比例ハザードモデルで、BMI、水分摂取量、摂取エネルギー量の影響を調整した解析の結果、カルシウムおよびカリウムの摂取量が少ないことが、腎結石の症状再発の有意な予測因子として特定された。調整因子に処方薬やサプリメントの利用などを加えても、カルシウムの摂取量が少ないことは引き続き、腎結石の症状再発の有意な予測因子だった。一方、カリウム摂取量が少ないことは、サイアザイド系利尿薬やカルシウムサプリメントを使用していない人でのみ、有意な予測因子として特定された。 この結果からLieske氏は、「腎結石の痛みを経験したことがない人は、食事スタイル変更のモチベーションはあまり高くないかもしれない。しかし、痛みを経験したことがある人が再発を避けたいと考えるのなら、食事に気を付けるべきだ」と述べている。また、再発予防のために重要なもう一つのポイントは、水を十分に飲むことだという。今回の研究では、水分摂取量は再発予測因子として特定されなかったが、それは、腎結石既往群の患者はその大半が医師から指導を受けて、積極的に水を飲んでいたためと考えられるという。 腎結石の痛みによる治療を受けた人の5年以内の再発率は、約3割に上ると報告されている。腎結石は耐え難い痛みだけでなく、慢性腎臓病や骨粗鬆症、心臓病などのリスクとの関連も示唆されている。では、腎結石の再発予防には、どのような食事スタイルが良いのだろうか? 今回の研究で再発リスクとの関連が明らかになったカルシウムとカリウムのうち、カルシウムについてLieske氏は、「低脂肪乳製品からの摂取を中心に、毎日1,200mgを取ることが理想的だ」としている。この値は、米国農務省(USDA)の成人向けの推奨値でもある。一方、カリウムについてUSDAは明確な推奨値を示していない。Lieske氏は、「果物や野菜をたくさん食べることのメリットが、多くの研究から示唆されている。果物や野菜にはカリウムだけでなく、腎結石の予防に役立つ可能性のあるクエン酸なども豊富に含まれている」とアドバイスしている。 一方、本研究には関与していない米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のGary Curhan氏は、「腎結石には複数のタイプがあり、最も一般的なタイプはシュウ酸カルシウム結石だ」と解説。その予防には、十分な水分の摂取と、カルシウムやカリウムの摂取を心がけるとともに、シュウ酸の多い食品の取り過ぎに注意が必要とのことだ。同氏は、「多くの人は腎結石の予防における食事の重要性を意識していないが、実際は極めて重要」と述べるとともに、「腎結石のタイプにより理想的な食事内容が異なるため、腎結石のタイプを評価できる専門家に食事の相談をすることがベストだ」と付け加えている。

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骨を強くする効果が見込めるチーズとは?

 ヤールスバーグチーズのスライスを毎日2枚ほど食べるだけで、骨粗鬆症を予防できる可能性のあることが、ノルウェーの小規模研究で示唆された。研究を実施したスケッテン医療センター(ノルウェー)のHelge Einar Lundberg氏らは、「こうした骨に対するチーズの効果はヤールスバーグチーズのみで得られ、1日当たり57gの摂取で骨の健康を守るには十分と思われる」と報告した。この研究結果は、「BMJ Nutrition, Prevention & Health」に8月2日発表された。 ヤールスバーグチーズとは、ノルウェー東部のヤールスバーグ産の牛乳から作られた、マイルドなセミソフトチーズのこと。Lundberg氏によると、ヤールスバーグチーズとカマンベールチーズは含有する脂肪分やタンパク質が似ているが、ヤールスバーグチーズは、メナキノン(MK)とも呼ばれるビタミンK2を豊富に含む点がカマンベールチーズとは異なる。中でも、ヤールスバーグチーズに含まれる特定の細菌種が産生する長鎖MK-9とMK-9(4H)が豊富だという。MK-9(4H)を産生する細菌は、1, 4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸(DHNA)と呼ばれる物質も産生する。DHNAは複数の研究で、骨がもろくなるのを防ぐとともに、骨形成における中心的な役割を担うタンパク質(オステオカルシン)の増加をもたらすことが示されている。 Lundberg氏らは今回の研究で、66人の健康な若年女性を、6週間にわたって毎日ヤールスバーグチーズを57g食べる群(ヤールスバーグ群)と、25〜50gのカマンベールチーズを食べる群(カマンベール群)のいずれかに2対3の割合でランダムに割り付けた。その後さらに6週間、それぞれの群で食べるチーズの種類を入れ替えて実験を行った。対象者から6週間ごとに血液検体を採取し、オステオカルシンや骨代謝に関わるペプチド(I型プロコラーゲン-N-プロペプチド;PINP)の濃度の他、ビタミンK2値や血中の脂質値なども測定した。 その結果、6週間後にヤールスバーグ群ではオステオカルシンやPINP、ビタミンK2といった骨代謝マーカーが有意に増加していた。カマンベール群では、PINPの値に変化は見られず、オステオカルシンとビタミンK2については有意に減少していた。しかし、カマンベールチーズからヤールスバーグチーズの摂取へ切り替えた後では、オステオカルシンとビタミンK2の増加が認められた。血中の脂質値は、ヤールスバーグ群とカマンベール群の両群でわずかに上昇したが、カマンベールチーズからヤールスバーグチーズの摂取に切り替えた後には、総コレステロール(TC)値とLDL-コレステロール値が有意に低下した。血糖値(HbA1c)は、6週間後にヤールスバーグ群では3%有意に低下していた。これに対して、カマンベール群では2%上昇していたが、ヤールスバーグチーズの摂取に切り替えた後には有意に低下した。 こうした結果を受けてLundberg氏は、「ヤールスバーグチーズには、骨減少症や代謝疾患に対する予防効果を期待できる可能性がある」との見解を示した上で、「骨粗鬆症の発症リスクがある高齢の男女の大規模集団を対象に長期研究を実施し、さらに検討を進める必要がある」としている。 専門家の一人で米ノースウェル・ヘルスの内分泌科医であるStuart Weinerman氏は、「この研究ではヤールスバーグチーズの摂取が骨粗鬆症の予防や骨の強化、骨折予防につながることは示されておらず、ヤールスバーグチーズが骨の健康に有益であることは証明されていない」と指摘。「骨粗鬆症や骨折予防効果を期待してヤールスバーグチーズを食べるべきではない」としている。 米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスの臨床栄養士であるSamantha Heller氏も、「われわれにはチーズの摂取量を増やす口実は不要だ」と話し、すでに米国人のチーズの摂取量は多いこと、チーズには飽和脂肪酸や塩分が多く含まれ、カロリーも高いことを指摘。「定期的な体重負荷運動やさまざまな健康的な食品の摂取が骨の形成や維持に役立つ」と助言している。

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朝食時刻と乳がんリスクが関連

 1日の食事のサイクルと乳がんの関連が指摘されている。スペイン・Barcelona Institute for Global HealthのAnna Palomar-Cros氏らが朝食時刻および夜間絶食時間と乳がんリスクとの関連について検討したところ、閉経前女性では朝食時刻が遅いほど乳がんリスクが高いことが示唆された。Frontiers in Nutrition誌2022年8月11日号に掲載。 本研究では、2008~13年に実施されたスペインのマルチケースコントロール研究(MCC-Spain)における乳がん症例1,181例と対照1,326例のデータを解析した。中年期の毎日の食事のサイクルは電話インタビューで聴取した。朝食時刻および夜間絶食時間と乳がんリスクとの関連について、ロジスティック回帰を用いてオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。年齢、センター、教育、乳がん家族歴、初経年齢、子供の数、母乳育児、初産年齢、BMI、避妊薬使用、ホルモン補充療法で調整し、閉経状態で層別した。 主な結果は以下のとおり。・朝食時刻が遅くなるほど乳がんリスクが増加したが、有意ではなかった(1時間当たりのOR:1.05、95% CI:0.95~1.16)。・この関連は閉経前女性で強く、朝食時刻が1時間遅くなるごとに乳がんリスクが18%増加した(OR:1.18、95%CI:1.01~1.40)。閉経後女性ではこの関連はみられなかった。・朝食時刻を調整しても、夜間絶食時間と乳がんリスクとの関連はみられなかった。

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