骨を強くする効果が見込めるチーズとは?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/09/08

 

 ヤールスバーグチーズのスライスを毎日2枚ほど食べるだけで、骨粗鬆症を予防できる可能性のあることが、ノルウェーの小規模研究で示唆された。研究を実施したスケッテン医療センター(ノルウェー)のHelge Einar Lundberg氏らは、「こうした骨に対するチーズの効果はヤールスバーグチーズのみで得られ、1日当たり57gの摂取で骨の健康を守るには十分と思われる」と報告した。この研究結果は、「BMJ Nutrition, Prevention & Health」に8月2日発表された。

 ヤールスバーグチーズとは、ノルウェー東部のヤールスバーグ産の牛乳から作られた、マイルドなセミソフトチーズのこと。Lundberg氏によると、ヤールスバーグチーズとカマンベールチーズは含有する脂肪分やタンパク質が似ているが、ヤールスバーグチーズは、メナキノン(MK)とも呼ばれるビタミンK2を豊富に含む点がカマンベールチーズとは異なる。中でも、ヤールスバーグチーズに含まれる特定の細菌種が産生する長鎖MK-9とMK-9(4H)が豊富だという。MK-9(4H)を産生する細菌は、1, 4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸(DHNA)と呼ばれる物質も産生する。DHNAは複数の研究で、骨がもろくなるのを防ぐとともに、骨形成における中心的な役割を担うタンパク質(オステオカルシン)の増加をもたらすことが示されている。

 Lundberg氏らは今回の研究で、66人の健康な若年女性を、6週間にわたって毎日ヤールスバーグチーズを57g食べる群(ヤールスバーグ群)と、25〜50gのカマンベールチーズを食べる群(カマンベール群)のいずれかに2対3の割合でランダムに割り付けた。その後さらに6週間、それぞれの群で食べるチーズの種類を入れ替えて実験を行った。対象者から6週間ごとに血液検体を採取し、オステオカルシンや骨代謝に関わるペプチド(I型プロコラーゲン-N-プロペプチド;PINP)の濃度の他、ビタミンK2値や血中の脂質値なども測定した。

 その結果、6週間後にヤールスバーグ群ではオステオカルシンやPINP、ビタミンK2といった骨代謝マーカーが有意に増加していた。カマンベール群では、PINPの値に変化は見られず、オステオカルシンとビタミンK2については有意に減少していた。しかし、カマンベールチーズからヤールスバーグチーズの摂取へ切り替えた後では、オステオカルシンとビタミンK2の増加が認められた。血中の脂質値は、ヤールスバーグ群とカマンベール群の両群でわずかに上昇したが、カマンベールチーズからヤールスバーグチーズの摂取に切り替えた後には、総コレステロール(TC)値とLDL-コレステロール値が有意に低下した。血糖値(HbA1c)は、6週間後にヤールスバーグ群では3%有意に低下していた。これに対して、カマンベール群では2%上昇していたが、ヤールスバーグチーズの摂取に切り替えた後には有意に低下した。

 こうした結果を受けてLundberg氏は、「ヤールスバーグチーズには、骨減少症や代謝疾患に対する予防効果を期待できる可能性がある」との見解を示した上で、「骨粗鬆症の発症リスクがある高齢の男女の大規模集団を対象に長期研究を実施し、さらに検討を進める必要がある」としている。

 専門家の一人で米ノースウェル・ヘルスの内分泌科医であるStuart Weinerman氏は、「この研究ではヤールスバーグチーズの摂取が骨粗鬆症の予防や骨の強化、骨折予防につながることは示されておらず、ヤールスバーグチーズが骨の健康に有益であることは証明されていない」と指摘。「骨粗鬆症や骨折予防効果を期待してヤールスバーグチーズを食べるべきではない」としている。

 米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスの臨床栄養士であるSamantha Heller氏も、「われわれにはチーズの摂取量を増やす口実は不要だ」と話し、すでに米国人のチーズの摂取量は多いこと、チーズには飽和脂肪酸や塩分が多く含まれ、カロリーも高いことを指摘。「定期的な体重負荷運動やさまざまな健康的な食品の摂取が骨の形成や維持に役立つ」と助言している。

[2022年8月3日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら