血液型が脳梗塞リスクに影響?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/09/23

 

 血液型によって虚血性脳卒中(脳梗塞)のリスクに差がある可能性を示唆する研究結果が報告された。米メリーランド大学のBraxton Mitchell氏らの研究によるもので、論文が「Neurology」に8月31日掲載された。特に非高齢期での脳梗塞リスクへの影響が大きいという。

 Mitchell氏らの研究は、非高齢者の脳梗塞リスクに関する遺伝子変異の影響を、これまでの研究を統合して分析するメタ解析という方法で検討したもの。その研究から、血液型と脳梗塞リスクとの関連性が浮かび上がった。具体的には、O型の人はA型やB型、AB型の人よりも脳梗塞のリスクがやや低いことが示された。反対にA型の人は脳梗塞が多く、特に60歳未満での発症との強い関連が見られ、他の血液型の人よりも16%リスクが高かった。ただしMitchell氏は、「自分がA型だからといって心配することはない。血液型は変更できないが、脳梗塞のリスクの中には変更可能なさまざまな因子が含まれている。例えばタバコを吸わないこと、習慣的に運動すること、健康的な食事を取ること、高血圧や糖尿病などの脳梗塞のリスクを高める疾患があればそれをコントロールすることで、リスクを抑えられる」と話している。

 血液型によって脳梗塞のリスクが異なるのはなぜだろうか? 大半の脳梗塞は、血栓が脳への血流を遮断したときに発生する。O型以外の血液型は、血栓形成に寄与するフォンウィルブランド因子(VWF)や第VIII因子のレベルが高いことが知られており、そのことが関係している可能性がある。Mitchell氏によると、高齢期に入る前に発症する脳梗塞は高齢期に入ってから発症する脳梗塞に比べて、血液凝固傾向の強さがより大きな影響を及ぼしていると考えられるという。今回の研究から得られた他のデータも、そのような考え方を支持している。例えば、血液型がA型であることは、脳梗塞以外に静脈血栓塞栓症のリスクの高さとも関連しているとのことだ。

 Mitchell氏らが行ったメタ解析の対象は、世界各地で実施された48件の研究報告で、60歳になる前に脳梗塞を発症した1万6,730人と、非発症の比較対照群59万9,237人が含まれていた。脳梗塞発症と遺伝子プロファイルとの関連の解析の結果、血液型を決定するABO遺伝子を含む染色体領域との関連が見つかった。O型の人の60歳未満での脳梗塞リスクは他の血液型の人より12%低く、60歳以上での脳梗塞リスクは4%低かった。A型の人の60歳未満での脳梗塞リスクは前述のように16%高かったが、60歳以上での脳梗塞のリスク差は5%と小さかった。

 この研究報告について、米マクガバン医科大学の脳血管神経内科医で、米国心臓協会(AHA)のボランティアでもあるBharti Manwani氏は、「非常に興味深い研究」と評している。また、若年期の脳梗塞に対しては血液凝固傾向の強さがより重要な役割を果たす可能性があるとの考え方に同意。その上で、「この知見は、A型という血液型がA型の人の人生を運命づけていることを示すものではない。人々は自分の血液型に関係なく、自分で変更可能な脳梗塞のリスク因子をコントロールすべきだ」と強調する。

 とは言え、Manwani氏、Mitchell氏ともに、A型の人は喫煙や経口避妊薬などの血栓形成を促すことのある他の要因の影響を受けやすい可能性があると述べている。Mitchell氏らは昨年3月の米国脳卒中協会(ASA)の学術集会にて、O型以外の血液型の女性は、喫煙や経口避妊薬の服用によって50歳以前に脳梗塞を発症するリスクが有意に高くなるという研究結果を報告している。

 脳梗塞や脳出血などの脳卒中は、基本的には高齢者に多い病気だが、高齢期に入るまでは心配ないというものでもない。AHAによると、米国で毎年新たに約80万人が脳卒中を発症し、そのうち10~15%は45歳以下だという。また、過去数十年の間に50歳未満の米国成人の脳卒中発症率は上昇してきており、その原因として、若年期に高血圧や糖尿病などを発症する人が増えたことの影響が考えられるとのことだ。

[2022年9月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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Jaworek T, et al. Neurology. 2022 Aug 31.[Epub ahead of print]