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起立性低血圧ありの高血圧患者、厳格治療のベネフィットは?/JAMA

 ベースラインで起立性低血圧が認められる場合でも、厳格降圧治療が標準降圧治療と比べて心血管疾患(CVD)または全死因死亡リスクを低減し、また立位性低血圧の有無による治療効果の差はないことが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのStephen P. Juraschek氏らによる検討で示された。起立性低血圧または立位性低血圧を有する成人において、厳格vs.標準降圧の有益性については懸念が続いていた。JAMA誌2023年10月17日号掲載の報告。CVDまたは全死因死亡リスクを比較 研究グループは、ベースラインで起立性低血圧または立位性低血圧を有する被験者におけるCVDまたは全死因死亡への降圧治療の影響を調べるため、血圧目標値がより低値の治療または積極的な治療と、血圧目標値が標準の治療またはプラセボによる治療を比較した。 2022年5月13日までのMEDLINE、EMBASE、CENTRALのデータベースを基に、起立性低血圧の評価を行い、薬物による厳格降圧治療(血圧目標値が厳格または積極的治療薬)を評価した無作為化試験を特定。PRISMAガイドラインに沿って被験者個人のデータを対象にメタ解析を行った。治療効果は、Cox比例ハザードモデルのシングルステージ・アプローチで評価した。 主要アウトカムは、CVDまたは全死因死亡。起立性低血圧は、座位から立位で収縮期血圧が20mmHg以上、拡張期血圧が10mmHg以上、いずれも低下する状態と定義した。立位性低血圧は、立位時の収縮期血圧110mmHg以下または拡張期血圧60mmHg以下と定義した。起立性低血圧有無にかかわらず、厳格降圧がCVDまたは全死因死亡リスクを低減 9試験(被験者総数2万9,235例)が解析に含まれ、追跡期間中央値は4年、平均年齢は69.0歳(SD 10.9)、女性は48%だった。ベースラインで起立性低血圧が認められたのは9%、立位性低血圧は5%だった。 厳格降圧治療は、ベースラインでの起立性低血圧の有無にかかわらず、CVDまたは全死因死亡リスクを同様に低下した(それぞれ、ハザード比[HR]:0.81[95%信頼区間[CI]:0.76~0.86]、0.83[0.70~1.00]、ベースライン起立性低血圧と治療の相互作用に関するp=0.68)。 立位性低血圧については、ベースラインで認められなかった被験者ではCVDまたは全死因死亡リスクの低下がみられたが(HR:0.80[95%CI:0.75~0.85])、認められた被験者では有意な低下はみられなかった(0.94[0.75~1.18])。ベースラインの立位性低血圧の有無による治療効果の差はみられなかった(ベースライン立位性低血圧と治療の相互作用に関するp=0.16)。

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脳梗塞急性期の降圧治療開始、早期vs.8日目/BMJ

 発症から24~48時間以内の軽度~中等度急性虚血性脳卒中で、収縮期血圧が140mmHg以上220mmHg未満かつ静脈内血栓溶解療法を受けなかった患者において、早期降圧治療は8日目以降開始の降圧治療と比較し、90日時点の機能的依存(後遺症)や死亡を低下させることはなかった。中国・首都医科大学のLiping Liu氏らが、多施設共同無作為化非盲検評価者盲検比較試験「China Antihypertensive Trial in Acute Ischemic Stroke:CATIS-2試験」の結果を報告した。急性虚血性脳卒中患者において、発症後3日以内の早期降圧治療は無治療と比較し、90日時の機能的依存または死亡のリスクに影響を与えないことが示されていたが、早期降圧治療と遅延降圧治療の比較試験はなかった。BMJ誌2023年10月9日号掲載の報告。主要評価項目は90日後の機能依存または死亡 研究グループは、2018年6月13日~2022年7月10日の期間に、中国の病院106施設において、発症から24~48時間以内で収縮期血圧が140mmHg以上220mmHg未満の急性虚血性脳卒中患者4,810例(40歳以上)を登録し、降圧治療を無作為化直後に開始する早期治療群(2,413例)と無作為化後8日目に開始する遅延治療群(2,397例)に無作為に割り付けた。 早期治療群では、無作為化後すぐに降圧薬を投与し、最初の24時間以内に収縮期血圧を10~20%低下、7日以内の収縮期血圧/拡張期血圧を平均140/90mmHg未満とし、90日間の追跡期間中も維持することを目標とした。 遅延治療群では、無作為化後すべての降圧薬を中止し、8日目に降圧治療を開始し、追跡期間中に140/90mmHg未満を達成し維持することを目標とした。ただし、最初の7日間に収縮期血圧が200mmHg以上に上昇した場合は、試験担当医の判断により一時的な降圧治療は可とした。 主要アウトカムは、無作為化後90日以内の死亡または90日時の機能的依存(修正Rankinスケールスコア3~5)の複合で、ITT解析を実施した。主要アウトカムの発生、早期治療群12.0%、遅延治療群10.5%で、有意差なし 無作為化後24時間以内の平均収縮期血圧の低下は、早期治療群で9.7%(162.9mmHgから146.4mmHg)、遅延治療群で4.9%(162.8mmHgから154.3mmHg)であり(群間差のp<0.001)、7日目の平均収縮期血圧は早期治療群で139.1mmHg、遅延治療群で150.9mmHgとなった(群間差のp<0.001)。また、7日目の血圧が140/90mmHg未満の患者の割合は、早期治療群で54.6%、遅延治療群で22.4%であった(群間差のp<0.001)。 主要アウトカムのイベントは、90日時点において早期治療群では2,401例中289例(12.0%)、遅延治療群では2,382例中250例(10.5%)に認められた(オッズ比[OR]:1.18、95%信頼区間[CI]:0.98~1.41、p=0.083)。 両群間で、脳卒中再発や有害事象に有意差は報告されなかった。 なお、著者は、早期治療が遅延治療より優れているという仮説を検証するには検出力が不十分であったこと、早期治療群で最初の7日間に認められた血圧低下は中程度であったことなどを研究の限界として挙げている。

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高血圧治療補助アプリで8mmHgも降圧、治療効果のある患者とは

 CureApp HT高血圧治療補助アプリ(以下、治療アプリ)が保険収載、処方が開始してから1年が経過した。現在までの治療効果について、株式会社CureAppが「スマート降圧療法RWD発表記者会見」において、全国の医療機関で処方された治療アプリに入力された血圧データの解析結果を説明した。 本データ解析によると、全体集団における12週後の収縮期血圧の変化は起床時では8.8mmHg、就寝前では8.5mmHgの低下がみられた。これについて同社取締役の谷川 朋幸氏は「治験で検証されていなかった65歳以上の患者を含む、幅広い患者集団において薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによるスマート降圧療法の効果が示された」とコメント。薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによる実臨床での降圧データの公開は世界初である。 本試験の概要ならびに結果は以下のとおり。<試験概要> 高血圧症向け治療アプリへの入力データを用いた後ろ向き研究で、以下の条件で実施された。対象者:2022年9月~2023年4月にアプリを処方された患者家庭血圧を少なくとも1回入力した患者情報の研究利用を拒否する旨の意思表示を行っていない患者主要評価項目:高血圧症向け治療アプリ使用開始(ベースライン)後12週間での降圧量(ベースラインの週およびアプリ使用開始12週後の週においてそれぞれ5日以上血圧を入力した患者が対象)解析方法:年齢、アプリ使用開始時点での服薬の有無、塩分チェックシートスコア、BMIでの層別解析結果:・解析対象者は554例で女性は263例(55.1%)だった。・アプリ使用者の平均年齢は55.1歳(範囲:22~87歳)で、そのうち65歳以上は115例(21%)だった。・薬物治療を行っていたのは248例(45%)であったが、その薬剤の種類や用量は不明であった。・アプリ使用開始後12週間での全体集団における収縮期血圧の降圧変化は、起床時は-8.8mmHg、就寝前は-8.5mmHgだった。・65歳以上での12週後の収縮期血圧変化は、起床時で-11.8mmHg、就寝前で-10.1mmHgだった。・ベースラインでの平均収縮期血圧は起床時が133.6mmHg、就寝前が129.7mmHgで、治験1)時(起床時:149.3mmHg、就寝前:143.3mmHg)より低い傾向にあった。・2023年8月時点で報告対象となる健康被害はみられなかった。―――医師に向き合ってもらえている、この感覚が患者のやる気に 実際に本治療アプリによるスマート降圧療法を行っている野村 和至氏(野村医院)は処方が推奨される患者の特徴や処方経験からみえたことについて語った。同氏は患者13例に処方を行い11例がプログラムを終了(1例中断、1例は導入後一度も使用せず)、そのうち8例が改善を示した。この患者変化について、「医師は患者の入力データをネット接続したPCで確認するわけだが、患者の生活習慣の問題点、配慮すべき心理面などを把握することができる。本治療アプリを通して患者の全体像がみえてくるため、患者の良い所をみつけて褒めることもできた。過去に薬物療法を自己中断していた方でも行動変容に合わせた声かけにより継続することができ、スマート降圧療法で血圧も改善した」と述べ、別の症例では「毎年冬に血圧上昇がみられ降圧薬を増量する患者に対しスマート降圧療法を勧めた結果、2剤服用していた降圧薬のうちCa拮抗薬を中止するに至った。また、それに伴いHbA1cなどの数値にも改善がみられた」といった、驚くべき改善が得られたことを報告した。 一方、治療アプリを処方する際に困った点として、予想以上に血圧低下するケース、スマート降圧療法を求め別の施設から同氏の元へ来院するケースがあったそうで、前者については、「血圧低下時の対処方法を決めておく必要がある」と説明。後者については、かかりつけの医療機関で治療ができないか相談してもらい、難しいようであれば半年間だけスマート降圧療法留学をお願いする」などの工夫を紹介した。 なお、同氏が考える“スマート降圧療法が推奨される”患者像は以下のとおり。 ■推奨される患者像 健康志向の強い人、高血圧症の早期、内服薬に抵抗のある人 ■推奨される併存疾患 メタボリックシンドローム、心不全、腎疾患(運動のみ注意) このほか、減塩、減量、運動が推奨される疾患を有するなど成功モデル・離脱モデルのデータ蓄積に期待 さらに、プログラム終了間近の患者が “終わってしまうのが寂しい”“まだ続けていたい”という感想を漏らしたことに同氏は驚いたそうで、「プログラム上で自身の話を受け止め、病気についてアドバイスしてくれる点が行動変容に効果があるのではないか」と見解を示した。 最後に同氏は、スマート降圧療法は治療効果や治療中断の防止もさることながら、「“やったらできる!”という自己効力感の向上に重要」と強調し、「行動変容モデルを意識した適切なアプローチ、マンネリ化の防止のために、データ蓄積と本治療アプリのアップデートに期待したい」と締めくくった。

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高血圧に対するアルドステロン合成酵素阻害薬Lorundrostatの効果(解説:石川讓治氏)

 アルドステロンが高血圧性臓器障害に影響を与えていると考えられており、いくつかのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が、現在、臨床で使用可能である。lorundrostatはアルドステロン合成阻害をする降圧薬として開発されている。本研究において、2剤以上の降圧薬を用いても目標血圧レベルに達していない高血圧患者に対して、アルドステロン合成阻害薬lorundrostatを投与し、その投与量、投与回数による降圧度および安全性を比較している。研究1では血漿レニン活性が低い患者、研究2では高い患者を選択して投与し、いずれの投与方法においてもlorundrostatはプラセボと比較して有意に血圧を低下させ、高カリウム血症は6例に認められたのみであった。 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は治療抵抗性高血圧に使用されることが多く、治療抵抗性高血圧は、サイアザイド系利尿薬を含む3剤以上の降圧薬でも目標血圧に達しない高血圧と定義されている。本研究の対象には、3剤以上の降圧薬の内服者も含まれているが、サイアザイド系利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の内服者の割合に各群間でばらつきが認められた。今後は、lorundrostatにおける(1)治療抵抗性高血圧に対する効果、(2)ACEIやARBに対する相加効果、(3)サイアザイド系利尿薬との降圧効果の比較、(4)ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬との比較など、今後、われわれが実臨床で使用していくためのデータの積み重ねが必要であると思われた。

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コントロール不良高血圧、アルドステロン合成阻害薬lorundrostatが有望/JAMA

 コントロール不良の高血圧患者の治療において、経口アルドステロン合成酵素阻害薬lorundrostatはプラセボと比較して、優れた降圧効果をもたらす可能性があることが、米国・クリーブランド・クリニック財団のLuke J. Laffin氏らが実施した「Target-HTN試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年9月10日号で報告された。米国の無作為化プラセボ対照用量設定試験 Target-HTN試験は、米国の43施設で実施された無作為化プラセボ対照用量設定試験であり、2021年7月~2022年6月に参加者の無作為化を行った(Mineralys Therapeuticsの助成を受けた)。 年齢18歳以上、自動診察室血圧(AOBP)測定による収縮期血圧が130mmHg以上で、2剤以上の降圧薬を最大耐用量で少なくとも4週間使用している患者を対象とした。血漿レニン値が抑制され(血漿レニン活性[PRA]≦1.0ng/mL/時)、かつ血清アルドステロン値が上昇(≧1.0ng/dL)している患者をコホート1として、PRA>1.0ng/mL/時の患者をコホート2として登録した。 コホート1は、プラセボまたは5つの用量のlorundrostat(12.5mg、50mg、100mgを1日1回、12.5mg、25mgを1日2回)、コホート2は、プラセボまたはlorundrostat(100mg、1日1回)を経口投与する群に、それぞれ無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、収縮期AOBPのベースラインから8週目までの変化量とした。 コホート1に163例、コホート2に37例を割り付けた。全体の平均年齢は65.7(SD 10.2)歳、女性が60%であり、48%がBMI値30超、40%が2型糖尿病、42%が3剤以上の降圧薬の投与を受けていた。ベースラインの平均血圧は、コホート1が収縮期血圧142.2(SD 12.5)mmHg、拡張期血圧81.5(9.7)mmHgで、コホート2はそれぞれ139.1(8.7)mmHg、79.1(9.7)mmHgだった。50mg群と100mg(1日1回)で有意な降圧効果 コホート1における治療開始から8週の時点での収縮期血圧の変化量は、lorundrostatの1日1回投与では100mg群が-14.1mmHg、同50mg群が-13.2mmHg、同12.5mg群が-6.9mmHgで、プラセボ群は-4.1mmHgであり、同1日2回投与では25mg群が-10.1mmHg、12.5mg群は-13.8mmHgであった。 収縮期血圧のプラセボ群とlorundrostat群の最小二乗平均群間差は、50mg群(1日1回投与)が-9.6mmHg(90%信頼区間[CI]:-15.8~-3.4、p=0.01)、100mg(1日1回投与)が-7.8mmHg(-14.1~-1.5、p=0.04)と有意な差を認めた。 コホート2では、lorundrostat100mg(1日1回投与)で収縮期血圧が11.4(SD 2.5)mmHg低下し、コホート1の同一用量の群と同程度の降圧作用がみられた。 lorundrostat群の6例(3.6%)で血清カリウム値が6.0mmol/L以上に上昇したが、減量または投与中止によって正常化した。コルチゾール分泌不全は発生しなかった。 著者は、「lorundrostatによるアルドステロン合成酵素の阻害は、基礎治療となる降圧療法を問わず、コントロール不良な高血圧患者に降圧効果をもたらす可能性が示された。これらの結果は、コントロール不良の高血圧患者の治療法としての本薬のさらなる検討を支持するものである」としている。

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機械的血栓回収療法後の脳卒中急性期の血圧管理目標レベル(解説:冨山博史氏)

背景: 現在、脳卒中急性期の治療法として血栓溶解療法に加え機械的血栓回収療法が施行されている。そして、日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021(2023改訂版)』では、脳卒中急性期の血圧治療に関して以下を記載している。“機械的血栓回収療法を施行する場合は、血栓回収前の降圧は必ずしも必要ないが、血栓回収後には速やかな降圧を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。一方、血栓回収中および回収後の過度な血圧低下は、避けるように勧める(推奨度E エビデンスレベル低)” 前半の“血栓回収後には速やかな降圧を行うことは妥当”とする根拠はWaltimo T.らの報告で血栓溶解療法後での血圧高値は脳出血のリスクが高まるとの報告などを参考にしている1)。一方、脳は脳血流自動調節能を有するが、脳血管障害急性期は、この調節能が消失し、わずかな血圧の下降によって脳血流も低下することが知られている。すなわち、過度の降圧は脳障害を増悪させる可能性がある。 そして、ENCHANTED2/MT試験は、頭蓋内大血管閉塞による急性虚血性脳卒中に対して機械的血栓回収療法で再灌流に成功した症例が対象であり、非積極的降圧治療群(収縮期血圧140~180mmHg:404例)と比較して、積極的降圧治療群(収縮期血圧120mmHg:406例)では早期の神経学的悪化および90日後の主要機能障害が多かったことを報告した2)。すなわち、過度の降圧の有害性を示唆する結果であった。故に、“血栓回収中および回収後の過度な血圧低下は、避けるように勧める”と記載した。しかし、この試験以外、機械的血栓回収療法施行後の過度の降圧の有害性の検証はなく(故にエビデンスレベル低と記載された)、さらなる根拠が必要であった。知見: 今回コメントするOPTIMAL-BP試験は、こうした必要性に合致する研究である。同試験は、多施設共同無作為化非盲検評価者盲検比較試験で、韓国の19の脳卒中センターで実施された。機械的血栓回収治療を受けた大血管閉塞急性虚血性脳卒中患者306例を対象とした。介入は登録後24時間、積極的血圧管理(収縮期血圧目標140mmHg未満、n=155)または従来の血圧管理(収縮期血圧目標140~180mmHg、n=150)を受ける群に無作為に割り付けられた。主要アウトカムは3ヵ月後の機能的自立(modified Rankin Scaleスコア0~2)であった。そして、血栓回収療法で再灌流に成功した患者において、24時間の積極的な血圧管理は、従来の血圧管理と比較して3ヵ月後の機能的自立を低下させた。なお、本試験は、安全性に関する懸念を指摘したデータ・安全性モニタリング委員会の勧告に基づき早期に中止された。まとめ: 今回の結果は、脳卒中急性期の適切な血圧コントロールの重要性を確認する結果である。さらに、脳卒中急性期の脳血流自動能破綻の有害性を支持し、積極的な再灌流療法でも急性期には自動能が改善しないことを示唆している。

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急性期脳梗塞で血管内治療後の急性期血圧管理、厳格vs.標準(OPTIMAL-BP)/JAMA

 主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中患者で血管内血栓除去術(EVT)により再灌流に成功した後、血圧上昇がみられる患者において、24時間の集中的な血圧管理(収縮期血圧の目標140mmHg未満)は従来の血圧管理(同140~180mmHg)と比較し、3ヵ月時点の機能的自立の達成割合が低いことを、韓国・延世大学のHyo Suk Nam氏らが多施設共同無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Outcome in Patients Treated With Intra-Arterial Thrombectomy-Optimal Blood Pressure Control:OPTIMAL-BP試験」の結果、報告した。急性期虚血性脳卒中患者におけるEVTによる再灌流成功後の最適な血圧管理は、不明であった。著者は、「EVTを受けた急性期虚血性脳卒中患者において、再灌流成功後24時間の強化降圧療法は避けるべきである」と述べている。JAMA誌2023年9月5日号掲載の報告。140mmHg未満目標の強化管理群vs.140~180mmHg目標の従来管理群を評価 研究グループは、2020年6月~2022年11月の期間に韓国の脳卒中センター19施設において、EVTを受けた20歳以上の主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中患者で、修正Thrombolysis in Cerebral Infarction(TICI)スコアが2b以上(閉塞血管領域の50%以上で再灌流)、再灌流成功後2時間以内に2分間隔で少なくとも2回測定した収縮期血圧が140mmHg以上の患者を登録。登録後24時間の収縮期血圧について、140mmHg未満を目標とする強化管理群と140~180mmHgを目標とする従来管理群に1対1に無作為に割り付けた。 主要有効性アウトカムは、3ヵ月時点の機能的自立(修正Rankin Scaleスコア0~2)とした。主要安全性アウトカムは、36時間以内の症候性頭蓋内出血、3ヵ月以内の脳卒中関連死であった。3ヵ月後の機能的自立の達成割合は、従来管理群が良好 本試験は、ENCHANTED2/MT試験で示された安全性の懸念が確認されたことなどにより、データ安全性モニタリング委員会の勧告に基づき、306例が無作為化された時点で早期中止となった。無作為化された患者のうち、305例が適格基準を満たし、302例(99.0%)が試験を完了した(平均年齢73.0歳、女性122例[40.4%])。 機能的自立を達成した患者の割合は、強化管理群39.4%(61/155例)、従来管理群54.4%(80/147例)、群間リスク差は-15.1%(95%信頼区間[CI]:-26.2~-3.9)、補正後オッズ比は0.56(95%CI:0.33~0.96、p=0.03)であり、強化管理群で達成が有意に低いことが認められた。 症候性頭蓋内出血の発現率は、強化管理群9.0%(14/155例)、従来管理群8.1%(12/149例)であった(群間リスク差:1.0%[95%CI:-5.3~7.3]、補正後オッズ比:1.10[95%CI:0.48~2.53]、p=0.82)。また、3ヵ月以内の脳卒中関連死亡率は、強化管理群7.7%(12/155例)、従来管理群5.4%(8/147例)であった(2.3%[-3.3~7.9]、1.73[0.61~4.92]、p=0.31)。

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急性脳梗塞、血管内治療後の積極降圧は有益か?(BEST-II)/JAMA

 急性虚血性脳卒中の患者において、血管内治療成功後の収縮期血圧(SBP)目標値について、140mmHg未満や160mmHg未満の設定は、180mmHg以下の設定と比較して、事前規定の無益性は示されなかった。一方で、将来的に大規模試験で比較した場合に、低SBP目標値が高SBP目標値より優越性を示す確率は低い可能性も示唆されたという。米国・シンシナティ大学のEva A. Mistry氏らが、無作為化試験「BEST-II試験」の結果を報告した。急性虚血性脳卒中への血管内治療成功後の中程度のSBP降圧の影響は、明らかになっていなかった。JAMA誌2023年9月5日号掲載の報告。米国の3ヵ所の総合脳卒中センターで120例を対象に検討 研究グループは、2020年1月~2022年3月に米国の3ヵ所の総合脳卒中センターで、血管内療法を受け成功した急性虚血性脳卒中患者120例を登録し、降圧目標の低SBP値(140mmHg/160mmHg未満)が高SBP値(180mmHg以下)と比較して無益であるかを検証する第II相無作為化非盲検エンドポイント盲検化試験を行った。最終フォローアップは2022年6月。 被験者を血管内治療後に無作為に3群に分け、SBP目標値を、40~140mmHg未満、40~160mmHg未満、40~180mmHg以下(臨床ガイドライン推奨値)にそれぞれ設定し、再灌流後60分以内に血圧管理を開始し24時間継続した。 主要解析の無益性検証のために事前に規定した主要アウトカムは、フォローアップ36(±12)時間後の梗塞体積と、90(±14)日時点の実用性加重・修正Rankin Scale(mRS)スコア(範囲:0[最悪]~1[最良])の複合だった。 線形回帰モデルを用いて、血管内治療後のSBP目標値の20mmHg低下ごとの、フォローアップ梗塞体積は10mL増加(傾き:0.5)、または実用性加重mRSスコアが0.10減少(傾き:-0.005)を有害性-無益性の境界として検証した(片側α=0.05)。そのほか無益性に関する事前規定は、将来的にSBP目標を低~中値とする群と高値とする群を比較した優越性試験(実用性加重mRSスコアのアウトカムを最大サンプルサイズ1,500例で検証)で、低~中値群が優越性を示す確率が25%未満であることとした。目標値140mmHg/160mmHg未満、180mmHg以下に対し優越性示す確率は25%・14% 被験者120例は、平均年齢69.6(SD 14.5)歳、女性は69例(58%)で、試験を完了したのは113例(94.2%)だった。 フォローアップ梗塞体積の平均値は、140mmHg未満群が32.4mL(95%信頼区間[CI]:18.0~46.7)、160mmHg未満群が50.7mL(33.7~67.7mL)、180mmHg以下群は46.4mL(24.5~68.2)だった。実用性加重mRSスコア平均値は、それぞれ0.51(0.38~0.63)、0.47(0.35~0.60)、0.58(0.46~0.71)だった。 ベースラインでAlberta Stroke Program Early CT(ASPECT)スコアにより補正後、SBP目標値低下ごとのフォローアップ梗塞体積増加の傾きは、-0.29(95%CI:-0.81~∞、無益性のp=0.99)だった。同じく実用性加重mRSスコアの傾きは、-0.0019(-∞~0.0017、無益性のp=0.93)といずれも無益であることは示されなかった。 一方で、SBP目標の高値群と低~中値群を比較した将来的な優越性試験の予測される成功確率は、140mmHg未満群が25%で、160mmHg未満群は14%だった。

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家庭料理をターゲットに地域介入、減塩・降圧に効果/BMJ

 家庭内の調理人と家族をターゲットとしたコミュニティベースの減塩教育やモニタリングが、食塩摂取量および血圧の低下に有効であったことを、中国・疾病予防管理センターのXiaochang Zhang氏らが報告した。中国6省6都市、60コミュニティの788家族を対象に行ったクラスター無作為化比較試験の結果で、著者は、「こうした介入は、食塩の主な摂取源が依然として家庭料理である中国および他国で、広く用いることができるだろう」と述べている。中国の食塩摂取量は推奨制限量の2倍を超えており、摂取が主に加工食品からの西欧諸国とは異なり、中国では76%が家庭料理に由来していることが報告されていたが、これまで家庭料理をターゲットとした介入の無作為化試験によるエビデンスはなかった。BMJ誌2023年8月24日号掲載の報告。1年後の24時間尿中ナトリウム排出量の変化を評価 研究グループは、2018年10月~19年12月にかけて、中国6省6都市から60コミュニティ(各省から10コミュニティずつ)を募集してクラスター無作為化比較試験を行い、家庭料理と家族員を対象にデザインされた減塩介入の効果を評価した。 各コミュニティから18~75歳の成人を26人ずつ(13家族から2人ずつ)集めた。参加条件は、週4日以上家庭料理を食べている家族で、日常的に調理を担当している家庭内の調理人と家族員(家庭内調理人の配偶者または複数の家族員が参加を希望する場合は性別が異なる家族を優先して選定)とした。 介入群の参加者は、減塩支援のための環境整備、減塩に関する6回の教育セッション、7日間の食塩摂取モニタリング(食塩および塩味調味料を計量し記録)などの介入を12ヵ月間にわたり受けた。対照群の参加者は、いずれの介入も受けなかった。 主要アウトカムは、12ヵ月の追跡期間中の、24時間尿中ナトリウム排泄量で測定した食塩摂取量の変化の群間差だった。介入群は収縮期血圧(2.0mmHg)、拡張期血圧(1.1mmHg)も低下 788家族からの1,576人(男性775人[49.2%]、平均年齢55.8歳[SD 10.8])が、ベースライン評価を完了した。その後、30コミュニティの786人が介入群に、30コミュニティの790人が対照群に割り付けられた。試験中に、157人(10%)が追跡不能となり、介入群706人と対照群713人が追跡評価を完了した。 12ヵ月の追跡期間中、24時間尿中ナトリウム排泄量が、介入群では4,368.7(SD 1,880.3)mgから3,977.0(1,688.8)mgへと減少したのに対し、対照群では4,418.7(1,973.7)mgから4,330.9(1,859.8)mgへの減少だった。調整混合線形モデル解析の結果、対照群と比較した介入群の24時間尿中ナトリウム排泄量は、24時間当たり336.8(95%信頼区間[CI]:127.9~545.7)mg減少した(p=0.002)。 収縮期血圧と拡張期血圧についても、それぞれ2.0(95%CI:0.4~3.5)mmHg、1.1(0.1~2.0)mmHg低下した(それぞれp=0.01、p=0.03)。適切な食塩摂取に関する知識や態度、行動についても、介入群で対照群に比べ有意に改善した。

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RNA干渉が切り開く、画期的な高血圧治療薬―zilebesiranの挑戦―(解説:石上友章氏)

 核酸・DNAを鋳型にして、メッセンジャーRNAが転写される。4種類の塩基の組み合わせを暗号にして、20種類のアミノ酸に翻訳されることで、タンパク質の合成が行われる。人体は、さまざまなタンパク質から構成されており、染色体DNAは、人体の設計図である。RNA干渉(RNA interference)とは、2本鎖RNAが、いくつかのタンパク質と複合体を作り、相同な塩基配列を持つメッセンジャーRNAと特異的に対合し、切断することによって、遺伝子の発現を抑制する現象である。RNA干渉は、遺伝子の機能を人為的に抑制することに応用できるので、遺伝子機能解析のツールとして、実験室ではおなじみの技術であった。 遺伝子の発現を、特異的に抑制することができることから、研究者ならだれでも、本技術を用いて、特定の遺伝子・タンパク質の働きを制御する『創薬』への展開を期待していたのではないか。英国・ケンブリッジのAlnylam社は、これまでに、家族性アミロイドポリニューロパチーの原因タンパク質を作りだす、トランスサイレチン遺伝子に対して、RNA干渉技術を応用した創薬に成功している。このたび、同じく肝細胞で発現しているアンジオテンシノーゲンを標的にした、siRNA製剤・zilebesiranを開発した。(Desai AS, et al. N Engl J Med. 2023;389:228-238.) 本研究は、健常者を対象にした、第I相試験として行われた。結果は、驚異的であった。わずか一回の投与で、血清アンジオテンシノーゲンの低下をもたらすだけでなく、有効な降圧作用が、実に24週間持続した。低血圧、高カリウム血症、腎機能障害は、認められなかったという。 レニン・アンジオテンシン系は、これまでにレニン、アンジオテンシン変換酵素、アンジオテンシンII受容体、中性エンドペプチダーゼが、心血管疾患の創薬標的として、実薬化されてきた歴史がある。アンジオテンシノーゲンは、レニン・アンジオテンシン系の基質であるが、核酸医薬の技術により、創薬標的となった。本試験の結果は、大いに期待される結果である。アンジオテンシノーゲンを枯渇させる本薬剤の効果は、その特異性と並んで、持続性に目を見張るものがある。一点の曇りがあるとしたら、これだけ長期間抑制することで、レニン・アンジオテンシン系の生理的な機能を喪失することに伴って生ずる、非代償的なリスクに対する懸念が残るといえる。

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高血圧への第1選択としての利尿薬vs.他の降圧薬~コクランレビュー

 高血圧患者における死亡率、心血管イベントの発生率、有害事象による中止率などについて、第1選択薬としてのサイアザイド系利尿薬と他のクラスの降圧薬を比較したシステマティックレビューの結果を、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のMarcia Reinhart氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2023年7月13日号に報告した。 2021年3月までのCochrane Hypertension Specialized Register、CENTRAL、MEDLINE、Embase、および臨床試験登録が検索された。対象は1年以上の無作為化比較試験で、第1選択薬としての利尿薬と他の降圧薬の比較、および死亡率とその他のアウトカム(重篤な有害事象、総心血管系イベント、脳卒中、冠動脈性心疾患[CHD]、うっ血性心不全、有害作用による中止)が明確に定義されているものとした。 主な結果は以下のとおり。・9万例超が対象の、26の比較群を含む20件の無作為化試験が解析された。・今回の結果は、2型糖尿病を含む複数の合併症を有する50〜75歳の男女高血圧患者における第1選択薬に関するものである。・第1選択薬としてのサイアザイド系およびサイアザイド系類似利尿薬が、β遮断薬(6試験)、Ca拮抗薬(8試験)、ACE阻害薬(5試験)、およびα遮断薬(3試験)と比較された。・他の比較対照には、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、アリスキレン(直接的レニン阻害薬)、およびクロニジン(中枢作用薬)が含まれていたが、データが不十分だった。・重篤な有害事象の総数に関するデータを報告した研究は3件のみで、利尿薬とCa拮抗薬を比較した研究が2件、直接的レニン阻害薬と比較した研究が1件だった。β遮断薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(リスク比[RR]:0.96[95%信頼区間:0.84~1.10]、5試験/1万8,241例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(5.4% vs.4.8%、RR:0.88[0.78~1.00]、絶対リスク減少[ARR]:0.6%、4試験/1万8,135例/確実性:中程度)。・脳卒中(RR:0.85[0.66~1.09]、4試験/1万8,135例/確実性:低)、CHD(RR:0.91[0.78~1.07]、4試験/1万8,135例/確実性:低)、心不全(RR:0.69[0.40~1.19]、1試験/6,569 例/確実性:低)。・有害作用による中止(10.1% vs.7.9%、RR:0.78[0.71~0.85]、ARR:2.2%、5試験/1万8,501例/確実性:中程度)。Ca拮抗薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:1.02[0.96~1.08]、7試験/3万5,417例/確実性:中程度)。・重篤な有害事象(RR:1.09[0.97~1.24]、2試験/7,204例/確実性:低)。・総心血管イベント(14.3% vs.13.3%、RR:0.93[0.89~0.98]、ARR:1.0%、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)。・脳卒中(RR:1.06[0.95~1.18]、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)、CHD(RR:1.00[0.93~1.08]、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)、心不全(4.4% vs.3.2%、RR:0.74[0.66~0.82]、ARR:1.2%、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(7.6% vs.6.2%、RR:0.81[0.75~0.88]、ARR:1.4%、7試験/3万3,908例/確実性:低)。ACE阻害薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:1.00[0.95~1.07]、3試験/3万961例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(RR:0.97[0.92~1.02]、3試験/3万900例/確実性:低)。・脳卒中(4.7% vs.4.1%、RR:0.89[0.80~0.99]、ARR:0.6%、3試験/3万900例/確実性:中程度)、CHD(RR:1.03[0.96~1.12]、3試験/3万900例/確実性:中程度)、心不全(RR:0.94[0.84~1.04]、2試験/3万392例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(3.9% vs.2.9%、RR:0.73[0.64~0.84]、ARR:1.0%、3試験/2万5,254例/確実性:中程度)。α遮断薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:0.98[0.88~1.09]、1試験/2万4,316例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(12.1% vs.9.0%、RR:0.74[0.69~0.80]、ARR:3.1%、2試験/2万4,396例/確実性:中程度)。・脳卒中(2.7% vs.2.3%、RR:0.86[0.73~1.01]、ARR:0.4%、2試験/2万4,396例/確実性:中程度)、CHD(RR:0.98[0.86~1.11]、2試験/2万4,396例/確実性:低)、心不全(5.4% vs.2.8%、RR:0.51[0.45~0.58]、ARR:2.6%、1試験/2万4,316例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(1.3% vs.0.9%、RR:0.70[0.54~0.89]、ARR:0.4%、3試験/2万4,772例/確実性:低)。 著者らは、本結果を以下のようにまとめている。・利尿薬と他のクラスの降圧薬の間で、おそらく死亡率に差はない。・利尿薬はβ遮断薬と比較して、心血管イベントをおそらく減少させる。・利尿薬はCa拮抗薬と比較して、心血管イベントと心不全をおそらく減少させる。・利尿薬はACE阻害薬と比較して、脳卒中をおそらくわずかに減少させる。・利尿薬はα遮断薬と比較して、心血管イベント、脳卒中、心不全をおそらく減少させる。・利尿薬はβ遮断薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、α遮断薬と比較して、有害作用による中止がおそらく少ない。

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RNA干渉薬zilebesiran、単回投与で24週間降圧持続/NEJM

 高血圧症患者に対する長時間作用型RNA干渉治療薬zilebesiranは、200mg以上の投与で、血清アンジオテンシノーゲン値と24時間自由行動下血圧の用量依存的な低下を24週まで持続したことが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAkshay S. Desai氏らが、107例を対象とした第I相試験の結果を報告した。アンジオテンシノーゲンは、アンジオテンシンペプチドの唯一の前駆体で、高血圧の発症機序に重要な役割を果たしている。zilebesiranは、肝臓でのアンジオテンシノーゲンの合成を阻害する長時間作用型RNA干渉治療薬として治験が進められている。NEJM誌2023年7月20日号掲載の報告。低塩食、高塩食での効果やイルベサルタンとの併用も検証 英国の4医療機関で行われた第I相試験で、高血圧症の成人患者を2対1の割合で無作為化し、一方の群にzilebesiranを用量漸増法で(10、25、50、100、200、400、800mg)、もう一方の群にはプラセボを、いずれも単回皮下投与し24週間追跡した(パートA試験)。また、低塩食(0.23g/日)または高塩食(5.75g/日)の状態下で、zilebesiran 800mgの有効性を評価した(パートB試験)。さらに、zilebesiran 800mgをイルベサルタンと同時に投与した場合の有効性も評価した(パートE試験)。 エンドポイントは、安全性、薬物動態・薬力学的特性、24時間自由行動下血圧モニタリングで測定した収縮期・拡張期血圧のベースラインからの変化などだった。高塩食の血圧への影響を弱め、イルベサルタンとの併用で効果増強 被験者107例のうち5例に、軽度や一過性の注射部位反応が認められた。医療的介入を要した低血圧、高カリウム血症、腎機能悪化の報告はなかった。 パートA試験では、zilebesiran投与群で血清アンジオテンシノーゲン値が低下し、その程度について投与量との相関関係が認められた(8週時点のr=-0.56、95%信頼区間[CI]:-0.69~-0.39)。 zilebesiran 200mg以上の単回投与は、8週までの収縮期血圧の低下(>10mmHg)および拡張期血圧の低下(>5mmHg)と関連し、これらの変化は日内変動の中で一貫しており、24週時点でも持続していた。 パートBの結果からはzilebesiranが高塩食の血圧への影響を弱めることが示唆され、パートEの結果ではzilebesiranのイルベサルタンとの併用による効果の増強が示唆された。

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脳出血患者の収縮期血圧を1時間以内に130~140mmHgにコントロールすると通常治療と比較して6ヵ月後の神経学的予後(modified Rankin Scale)が良い(解説:石川讓治氏)

 脳出血患者の急性期の血圧をどのようにコントロールすればよいのかという問題は、徐々に変化してきた。『脳卒中治療ガイドライン』の2009年版においては、「脳出血急性期の血圧は、収縮期血圧が180mmHg未満または平均血圧が130mmHg未満を維持することを目標に管理する」ことが推奨されていたが、2015年版では、「できるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、7日間維持することを考慮しても良い」となり、2021年版では、「脳出血急性期における血圧高値をできるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満へ降圧し、7日間維持することは妥当であり、その下限を110mmHg超に維持することを考慮しても良い」となった。 本研究において、低および中所得国(9ヵ国)で行われた多施設共同研究で、発症6時間以内の脳出血患者を対象に、(1)1時間以内の収縮期血圧(140mmHg未満を目標、130mmHgを下限)、(2)できるだけ早期の血糖(非糖尿病患者では6.1~7.8mmol/L、糖尿病患者では7.8~10.0mmol/L)、(3)1時間以内の体温(37.5度未満)、(4)ワルファリン内服患者においては1時間以内にINR1.5未満を目標に速やかにコントロールを行うことで、6ヵ月後に評価したmodified Rankin Scaleにおける神経学的予後が、通常治療よりも良好であったことが報告された。今回の研究の結果から、脳出血急性期の積極的な降圧を「考慮しても良い」や「妥当である」といった表現から、今後は積極的な推奨にするのかどうかが議論になると思われた。 本研究は低~中所得国で行われており、それぞれの国における通常治療がどうであったのかが不明であった。収縮期血圧を140mmHgにコントロールすることが、通常治療(ガイドライン)においてすでに妥当であるとされているわが国で同様の試験が施行された場合、同じ結果が得られるのかが疑問であった。また、本研究の血圧コントロールは130~140mmHgといった非常に狭い範囲で行われている。実臨床において、とくに高齢者では、収縮期血圧の変動を10mmHgの幅に維持することは容易ではないと思われた。本研究における実際の収縮期血圧は、論文のFigureにおいては、1時間後では150mmHg程度であり、約4時間後に140mmHg未満に達していたようである。

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『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』改訂のポイント/日本腎臓学会

 6月9日~11日に開催された第66回日本腎臓学会学術総会で、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』が発表された。ガイドラインの改訂に伴い、「ここが変わった!CKD診療ガイドライン2023」と題して6名の演者より各章の改訂ポイントが語られた。「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」第1~3章の改訂ポイント第1章 CKD診断とその臨床的意義/小杉 智規氏(名古屋大学大学院医学系研究科 腎臓内科学)・実臨床ではeGFR 5mL/分/1.73m2程度で透析が導入されていることから、CKD(慢性腎臓病)ステージG5※の定義が「末期腎不全(ESKD)」から「高度低下~末期腎不全」へ変更された。・国際的に用いられているeGFRの推算式(MDRD式、CKD-EPI式)と区別するため、日本人におけるeGFRの推算式は「JSN eGFR」と表記する。・一定の腎機能低下(1~3年間で血清Cr値の倍化、eGFR 40%もしくは30%の低下)や、5.0mL/分/1.73m2/年を超えるeGFRの低下はCKDの進行、予後予測因子となる。※GFR<15mL/分/1.73m2第2章 高血圧・CVD(心不全)/中川 直樹氏(旭川医科大学 内科学講座 循環・呼吸・神経病態内科学分野)・蛋白尿のある糖尿病合併CKD患者においては、ACE阻害薬/ARBの腎保護に関するエビデンスが存在するが、蛋白尿のないCKD患者においては、糖尿病合併の有無にかかわらず、ACE阻害薬/ARBの優位性を示す十分なエビデンスがない。したがって、ACE阻害薬/ARBの投与は糖尿病合併の有無ではなく、蛋白尿の有無を参考に検討する。・CKDステージG4※、G5における心不全治療薬の推奨クラスおよびエビデンスレベルが『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では次のとおり明記された。ACE阻害薬/ARB:2C、β遮断薬:2B、MRA:なしC、SGLT2阻害薬:2C、ARNI:2C、イバブラジン:なしD。※eGFR 15~29mL/分/1.73m2第3章 高血圧性腎硬化症・腎動脈狭窄症/大島 恵氏(金沢大学大学院 腎臓内科学)・2018年版では「腎硬化症・腎動脈狭窄症」としていたが、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では「高血圧性腎硬化症・腎動脈狭窄症」としている。高血圧性腎硬化症とは、持続した高血圧により生じた腎臓の病変である。・片側性腎動脈狭窄を伴うCKDに対する降圧薬として、RA系阻害薬はそのほかの降圧薬に比べて末期腎不全への進展、死亡リスクを抑制する可能性がある。ただし、急性腎障害発症のリスクがあるため注意が必要である。・動脈硬化性腎動脈狭窄症を伴うCKDに対しては、合併症のリスクを考慮し、血行再建術は一般的には行わない。ただし、治療抵抗性高血圧などを伴う場合には考慮してもよい。「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」で腎性貧血を伴う患者のHb目標値が改定第4章 糖尿病性腎臓病/和田 淳氏(岡山大学 腎・免疫・内分泌代謝内科学)・尿アルブミンが増加すると末期腎不全・透析導入のリスクが有意に増加することから、糖尿病性腎臓病(DKD)患者では定期的な尿アルブミン測定が強く推奨される。・DKDの進展予防という観点では、ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬の使用について十分なエビデンスはない。体液過剰が示唆されるDKD患者ではループ利尿薬、尿アルブミンの改善が必要なDKD患者ではミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が推奨される。・糖尿病患者においては、DKDの発症、アルブミン尿の進行抑制が期待されるため集約的治療が推奨される。・DKD患者に対しては、腎予後の改善と心血管疾患発症抑制が期待されるため、SGLT2阻害薬の投与が推奨される。第9章 腎性貧血/田中 哲洋氏(東北大学大学院医学系研究科 腎・膠原病・内分泌内科学分野)・PREDICT試験、RADIANCE-CKD Studyの結果を踏まえて、腎性貧血を伴うCKD患者での赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療における適切なHb目標値が改定された。『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では、Hb13g/dL以上を目指さないこと、目標Hbの下限値は10g/dLを目安とし、個々の症例のQOLや背景因子、病態に応じて判断することが提案されている。・「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation(2020年9月29日版)」に関する記載が追記された。2022年11月、ロキサデュスタットの添付文書が改訂され、重要な基本的注意および重大な副作用として中枢性甲状腺機能低下症が追加されたことから、本剤投与中は定期的に甲状腺機能検査を行うなどの注意が必要である。第11章 薬物治療/深水 圭氏(久留米大学医学部 内科学講座腎臓内科部門)・球形吸着炭は末期腎不全への進展、死亡の抑制効果について明確ではないが、とくにCKDステージが進行する前の症例では、腎機能低下速度を遅延させる可能性がある。・代謝性アシドーシスを伴うCKDステージG3※~G5の患者では、炭酸水素ナトリウム投与により腎機能低下を抑制できる可能性があるが、浮腫悪化には注意が必要である。・糖尿病非合併のCKD患者において、蛋白尿を有する場合、腎機能低下の進展抑制、心血管疾患イベントおよび死亡の発生抑制が期待できるため、SGLT2阻害薬の投与が推奨される。・CKDステージG4、G5の患者では、RA系阻害薬の中止により生命予後を悪化させる可能性があることから、使用中のRA系阻害薬を一律には中止しないことが提案されている。※eGFR 30~59mL/分/1.73m2 なお、同学会から、より実臨床に即したガイドラインとして、「CKD診療ガイド2024」が発刊される予定である。

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添付文書改訂:アメナリーフに再発性単純疱疹が追加/ミチーガが在宅自己注射可能に ほか【下平博士のDIノート】第125回

アメナリーフに再発性の単純疱疹が追加<対象薬剤>アメナメビル(商品名:アメナリーフ錠200mg、製造販売元:マルホ)<改訂年月>2023年2月<改訂項目>[追加]効能・効果再発性の単純疱疹[追加]効能・効果に関連する注意単純疱疹(口唇ヘルペスまたは性器ヘルペス)の同じ病型の再発を繰り返す患者であることを臨床症状および病歴に基づき確認すること。患部の違和感、灼熱感、そう痒などの初期症状を正確に判断可能な患者に処方すること。<Shimo's eyes>本剤の適応症はこれまで帯状疱疹のみでしたが、2023年2月から「再発性の単純疱疹」が追加されました。帯状疱疹の場合は1日1回2錠を原則7日間投与ですが、再発性の単純疱疹では1回6錠の単回投与となります。初発例は適応になりません。用法・用量に関連する注意には「次回再発分の処方は1回分に留めること」とあり、患者さんの判断で服用するPIT(Patient Initiated Therapy)分を前もって1回分処方することができます。患者さん自身が単純疱疹の症状の兆候を認識した際に速やかに服用することで、早期の対応が可能となります。パキロビッド:パック600と中等度腎機能障害用のパック300が承認<対象薬剤>ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック600/同300、製造販売元:ファイザー)<承認年月>2022年11月<改訂項目>[変更]医薬品名、規格パキロビッドパック600、同300が承認<Shimo's eyes>パキロビッドパックは、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)に続く、2番目の新型コロナウイルス感染症の経口薬として2022年2月に承認されました。2023年3月21日以前は、登録センターに登録することで特定の医療施設に配分されていました。今回パキロビッドパック600/同300が薬価収載され、2023年3月22日以降は一般流通されています。パキロビッドパック600は従来のパキロビッドパックと同等の製剤で通常用のパッケージです。一方、パキロビッドパック300は中等度の腎機能障害(eGFR30mL/min以上60mL/min未満)の患者さん用のパッケージです。600と300はブースターであるリトナビルの投与量は同じですが、抗ウイルス薬であるニルマトレルビルが300では半分の量になっています。ミチーガ:在宅自己注射が可能に<対象薬剤>ネモリズマブ(遺伝子組換え)(商品名:ミチーガ皮下注用60mgシリンジ、製造販売元:マルホ)<在宅自己注射の保険適用日>2023年6月1日<改訂項目>[追加]重要な基本的注意自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施した後、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認したうえで、医師の管理指導のもと実施すること。自己投与の適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、ただちに自己投与を中止させ、医師の管理のもと慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。また、本剤投与後に副作用の発現が疑われる場合は、医療施設へ連絡するよう患者に指導を行うこと。使用済みの注射器を再使用しないように患者に注意を促し、すべての器具の安全な廃棄方法に関する指導を行うと同時に、使用済みの注射器を廃棄する容器を提供すること。[追加]薬剤交付時の注意患者が家庭で保管する場合は、光曝露を避けるため外箱に入れたまま保存するよう指導すること。<Shimo's eyes>本剤は、4週間の間隔で皮下投与する抗体医薬品のアトピー性皮膚炎治療薬として2022年8月に発売され、2023年6月から在宅自己注射が可能となりました。近年、新しい作用機序のアトピー性皮膚炎治療薬が続々と開発されています。経口薬としては、関節リウマチへの適応から始まったJAK阻害薬、本剤のような抗体医薬品、外用薬ではPDE4阻害薬が発売され、難治性の患者さんにも選択肢が増えています。RA系阻害薬:妊娠禁忌について再度注意喚起<対象薬剤>RA系阻害薬<改訂年月>2023年5月<改訂項目>[新設]妊娠する可能性のある女性、妊婦妊娠する可能性のある女性に投与する場合には、本剤の投与に先立ち、代替薬の有無なども考慮して本剤投与の必要性を慎重に検討し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、投与が必要な場合には次の注意事項に留意すること。(1)本剤投与開始前に妊娠していないことを確認すること。本剤投与中も、妊娠していないことを定期的に確認すること。投与中に妊娠が判明した場合には、ただちに投与を中止すること。(2)次の事項について、本剤投与開始時に患者に説明すること。また、投与中も必要に応じ説明すること。妊娠中に本剤を使用した場合、胎児・新生児に影響を及ぼすリスクがあること。妊娠が判明したまたは疑われる場合は、速やかに担当医に相談すること。妊娠を計画する場合は、担当医に相談すること。<Shimo's eyes>RA系阻害薬に関しては、2014年9月に妊婦や妊娠の可能性がある女性には投与しないこと、投与中に妊娠が判明したらただちに中止することなどが注意喚起されていましたが、それ以降も妊娠中のRA系阻害薬投与により、胎児や新生児への影響が疑われる症例(口唇口蓋裂、腎不全、頭蓋骨・肺・腎の形成不全、死亡など)が継続的に報告されていました。医師が妊娠を把握せずにRA系阻害薬を使用していた例が複数存在していたため、RA系阻害作用を有する降圧薬32成分(ACE阻害薬、ARB、レニン阻害薬、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬)の添付文書改訂が指示されました。

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血圧管理ケアバンドル、脳内出血の機能的アウトカムを改善/Lancet

 脳内出血の症状発現から数時間以内に、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムとの組み合わせで早期に集中的に降圧治療を行うケアバンドルは、通常ケアと比較して、機能的アウトカムを有意に改善し、重篤な有害事象が少ないことが、中国・四川大学のLu Ma氏らが実施した「INTERACT3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年5月25日号で報告された。10ヵ国121病院のstepped wedgeクラスター無作為化試験 INTERACT3試験は、早期に集中的に血圧を下げるプロトコールと、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムを組み込んだ目標指向型ケアバンドルの有効性の評価を目的に、10ヵ国(低・中所得国9、高所得国1)の121病院で実施された実践的なエンドポイント盲検stepped wedgeクラスター無作為化試験であり、2017年5月27日~2021年7月8日に参加施設の無作為化が、2017年12月12日~2021年12月31日に患者のスクリーニングが行われた(英国保健省などの助成を受けた)。 参加施設は、ケアバンドルと通常ケアを行う時期が異なる3つのシークエンスに無作為に割り付けられた。各シークエンスは、4つの治療期間から成り、3シークエンスとも1期目は通常ケアが行われ、ケアバンドルはシークエンス1が2~4期目、シークエンス2は3~4期目、シークエンス3は4期目に行われた。 ケアバンドルのプロトコールには、収縮期血圧の早期厳格な降圧(目標値:治療開始から1時間以内に140mmHg未満)、厳格な血糖コントロール(目標値:糖尿病がない場合6.1~7.8mmol/L、糖尿病がある場合7.8~10.0mmol/L)、解熱治療(目標体温:治療開始から1時間以内に37.5°C以下)、ワルファリンによる抗凝固療法(目標値:国際標準化比<1.5)の開始から1時間以内の迅速解除が含まれ、これらの値が異常な場合に実施された。 主要アウトカムは、マスクされた研究者による6ヵ月後の修正Rankin尺度(mRS、0[症状なし]~6[死亡]点)で評価した機能回復であった。6ヵ月以内の死亡、7日以内の退院も良好 7,036例(平均年齢62.0[SD 12.6]歳、女性36.0%、中国人90.3%)が登録され、ケアバンドル群に3,221例、通常ケア群に3,815例が割り付けられ、主要アウトカムのデータはそれぞれ2,892例と3,363例で得られた。 6ヵ月後のmRSスコアは、通常ケア群に比べケアバンドル群で良好で、不良な機能的アウトカムの可能性が有意に低かった(共通オッズ比[OR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.76~0.97、p=0.015)。 ケアバンドル群におけるmRSスコアの良好な変化は、国や患者(年齢、性別など)による追加補正を含む感度分析でも、全般に一致して認められた(共通OR:0.84、95%CI:0.73~0.97、p=0.017)。 6ヵ月の時点での死亡(p=0.015)および治療開始から7日以内の退院(p=0.034)も、ケアバンドル群で優れ、健康関連QOL(EQ-5D-3Lで評価)ドメインのうち痛み/不快感(p=0.0016)と不安/ふさぎ込み(p=0.046)が、ケアバンドル群で良好だった。 また、通常ケア群に比べケアバンドル群の患者は、重篤な有害事象の頻度が低かった(16.0% vs.20.1%、p=0.0098)。 著者は、「このアプローチは、収縮期血圧140mmHg未満を目標とする早期集中血圧管理を基本戦略とする簡便な目標指向型のケアバンドルプロトコールであり、急性期脳内出血患者の機能的アウトカムを安全かつ効果的に改善した」とまとめ、「この重篤な疾患に対する積極的な管理の一環として、医療施設は本プロトコールを取り入れるべきと考えられる」としている。

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24時間平均血圧および夜間血圧は、診察室血圧よりも優れた総死亡のリスクマーカー なぜ夜間血圧は予後予測能が高いのか? 治療の対象なのか?(解説:石川讓治氏)

 24時間自由行動下モニタリングは、カフ・オシロメトリック法を用いて、上腕で20分間~30分間隔で血圧を自動測定する装置であり、昼間の自由行動下におけるストレス状態や夜間睡眠時の血圧などの、診察室血圧では評価できない時間帯の血圧の情報を得ることができる。地域一般住民および日常診療における多くの研究で、24時間平均血圧、とくに夜間血圧が診察室血圧よりも優れた総死亡や心血管死亡の予測因子であることが報告されてきた。Spanish Ambulatory Blood Pressure Registryは、スペインのプライマリケア医が高血圧の診断や治療のために24時間自由行動下血圧測定を行った患者のデータの登録研究であり、5万9,124例もの患者が平均9.7年間追跡された。このように非常に大きな症例数のデータベースにおいても以前と同様の知見が再確認されたが、追跡期間中に12.1%もの患者が死亡していた。 安定した状況で、繰り返し測定された血圧が、診察室というストレスや不安定な測定環境での回数の少ない血圧よりも、患者の真の血圧値に近いことが、主な理由であると考えられているが、夜間という測定時刻や睡眠というライフサイクルが、夜間血圧の予後予測能の増加に影響を与えているかどうかはわかっていない。夜間(睡眠)の血圧は、年齢、腎機能低下、体液貯留、睡眠の質の影響を受けていることが報告されている。そのため、夜間血圧のリスク増加は、夜間(睡眠)中の血圧に影響を与える上記の背景因子が重要である可能性が示唆されている。 夜間血圧をターゲットにした降圧治療は必要なのであろうか? スペインおよび日本の2つのグループから、就寝前の降圧薬投与によって夜間血圧をターゲットにした降圧治療を行うことの有効性が報告され、わが国においても就寝前に降圧薬が処方されている患者が多く認められる。近年、欧米を中心とした多施設共同研究において、降圧薬の朝食後内服と就寝前内服の比較試験が追試され、その結果、長時間作用型の降圧薬は、朝食後と就寝前のいずれに投与しても、予後には有意差が認められなかったことが報告された。降圧薬は朝食後に飲んでも就寝前に内服しても大きな差がないから、睡眠前に処方すると主張する意見もあるが、従来通りの朝1回の内服のほうが服薬アドヒアランスもよいものと思われる。朝食後に降圧薬を投薬した場合も、長時間作用型の降圧薬であれば、夜間血圧は投与開始前の血圧レベルに依存して低下することが報告されている。そのため、夜間高血圧はその背景となる因子への介入のほうが有用に思われた。 24時間平均血圧、とくに夜間(睡眠)中の血圧は、診察室血圧より優れた総死亡、心血管死亡のリスクマーカーであることは本研究を含む多くの研究で一貫して示されているが、その機序や夜間血圧を指標とした血圧コントロールを行うべきかどうかといった問題に関しては、今後のエビデンスの積み重ねが必要であると思われた。

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降圧薬による血圧低下度に薬剤差、個人差があるのか?(解説:石川讓治氏)

 降圧薬の投与によって速やかに降圧目標に達することで、投与開始後早期の患者の心血管イベント抑制につながると考えられている。そのため、それぞれの患者に最も有効な降圧薬を選択していくことが重要である。 本研究は、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(リシノプリル20mg)、アンジオテンシンII受容体阻害薬(カンデサルタン16mg)、サイアザイド利尿薬(ハイドロクロロサイアザイド25mg)、カルシウムチャンネル阻害薬(アムロジピン10mg)の4種類の降圧薬をクロスオーバーデザインで繰り返し投与し、降圧度の薬剤差、個人差を検討している。ダブルブラインドではあるが、1例の患者が繰り返しこれらの薬剤を内服したり中止したりするプロトコールであり、参加に同意した患者および医師の大変さが想像された。結果として薬剤間で最大4.4mmHgの収縮期血圧の低下度に差が認められたことが報告された。 降圧の効果に患者間で差があることは重要であるが、本研究の降圧投与量は我が国の最大投与量に近い。血圧低下度の差は設定投与量の差でもあり、日常臨床では4.4mmHg程度の差は投与量の増減で調整すればいいのではないかと感じる。本研究においては、どういった特徴の患者において各降圧薬の降圧度がより大きかったのかといったことは示されていないが、日常臨床においてはそういった情報のほうがより重要に思われた。 英国のNICEガイドランにおいては、年齢によって、カルシウムチャンネル阻害薬と、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体阻害薬のどちらを第一選択にするのかを規定している。プライマリケア医においては、このような明確な指標のほうが有用に思われる。日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインにおいては、4つの種類の降圧薬を医師の判断で第一選択薬として選択可能になっているが、英国同様にプライマリケア医に対するより簡便な指針も検討する時期が来たのかもしれない。また、欧米のガイドラインにおいては、降圧薬間の降圧度の差を考慮し、速やかに降圧目標に到達する目的で、第一選択薬として合剤を使用する基準が記載されている。わが国においては、そういったガイドラインの記載はなく、今後の検討が必要である。

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5月17日 高血圧の日【今日は何の日?】

【5月17日 高血圧の日】〔由来〕日常的な血圧測定や定期健診を促すことで、高血圧による疾病リスクを低減するために「世界高血圧デー」に准じ、2007年に日本高血圧学会と日本高血圧協会によって制定された。また、毎月17日は、高血圧の原因となる食塩の過剰摂取を防ぐために「減塩の日」として諸活動を行っている。関連コンテンツ降圧目標【一目でわかる診療ビフォーアフター】高血圧:脳心血管疾患の危険因子【一目でわかる診療ビフォーアフター】高血圧の人では、コーヒーと緑茶のどちらが危ない?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】体重増加は糖尿病や高血圧のリスク【患者説明用スライド】降圧薬使用とアルツハイマー病との関連~メタ解析

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地域医療提供者による集中的な血圧介入は有用か?(解説:三浦伸一郎氏)

 わが国の高血圧有病者は4,300万人であり、治療中・コントロール良好な患者はわずか27%である一方、未治療・認知なしが33%、未治療・認知ありは11%も存在し、いまだに十分な心血管疾患の発症抑制にはつながっていないのが現状である。わが国は世界的に見ても、国民皆保険制度が確立し医師数も比較的多いが、医療制度が未熟な国々は多く存在し医師数も不足している。そのような国々では、医師以外の地域医療提供者の存在が欠かせない。  今回、He氏らは、Lancet誌にCRHCP Study Groupによる興味深い報告を発表した1)。医師以外の地域医療提供者主導による集中的な血圧介入が通常のケアと比較して、高血圧患者の心血管疾患および全死亡リスクを抑制するかを検討した、非盲検、エンドポイント盲検、クラスター無作為化臨床試験である。 介入群では、訓練を受けた非医師の地域医療提供者が降圧薬を開始し、簡単な段階的ケアプロトコルに従って漸増していた。その結果、介入群では、主要評価項目の心筋梗塞、脳卒中、入院を必要とする心不全、および心血管疾患による死亡の複合エンドポイントが、通常ケア群に比し有意に抑制されていた。この有用な抑制効果と共に、低血圧発症率が通常のケア群よりも介入群のほうで高かったが、低血圧による症状発現率に有意差はなく、安全性もある程度担保された結果となっていた。  今回の結果は、医療が十分に行き届いていない世界の国々において、いかに血圧を管理・治療し心血管疾患の発症抑制の方策を推進すべきかに、1つの戦略をもたらした。また、現在、わが国では遠隔医療を推進しており、地域への医療提供体制をさらに整えようとしている。オンライン診療において、医師‐患者(D to P)では情報不足となり、安全性の高いD to P with N(看護師)、D to P with H(ヘルパー)といったことを進めていく場合の参考にもなると思われる。今回のLancet誌への報告は、医師以外の地域医療提供者の活躍の可能性を広げた点において非常に興味深い結果であった。

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