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薬剤師主導の介入で、高齢者への不適正処方が改善/JAMA

 薬剤師の主導による教育的介入により、高齢者への不適正処方が、通常治療に比べて抑制されるとの研究結果が、カナダ・モントリオール大学のPhilippe Martin氏らが実施したD-PRESCRIBE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年11月13日号に掲載された。北米では、高齢の外来患者において、不適正処方率が高い状況が続いているという。不適正処方は、薬剤による有害事象、転倒、認知機能障害、緊急入院のリスクの増大を招く可能性がある。地域薬局の薬剤師主導介入を検討するクラスター無作為化試験 本研究は、不適正処方の防止に関して、薬剤師主導の介入の有効性を評価する目的で、カナダ・ケベック州で行われたプラグマティックなクラスター無作為化臨床試験である(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成による)。 2014年2月~2017年9月の期間に、地域の薬局を登録し、介入群または対照群に無作為に割り付け、2018年2月までフォローアップを行った。 対象患者は、年齢65歳以上で、高齢者における潜在的に適正ではない医薬品を定めたビアーズ基準(Beers criteria)に含まれる4種の薬剤(催眠鎮静薬、第1世代抗ヒスタミン薬、glyburide(グリベンクラミド)、選択的非ステロイド性抗炎症薬)のうち1剤を処方された者とし、69の地域薬局で登録が行われた。 介入群の薬剤師は、患者には、薬剤の中止・減量に関する患者教育用の小冊子を送るよう奨励された。同時に、担当医には、薬剤の中止・減量の推奨に関するエビデンスに基づく薬学的見解が記された資料を送付することが勧められた。対照群の薬剤師は、通常治療を行った。 34の薬局が介入群(248例)に、35の薬局が対照群(241例)に割り付けられた。患者、担当医、薬剤師、評価者には、アウトカムのデータはブラインドされた。主要アウトカムは、6ヵ月時の不適正処方の中止とし、処方の更新は薬局の薬剤管理記録で確認した。不適正処方のリスクが31%低減 全体の患者の平均年齢は75歳、66%(322例)が女性であった。23%(113例)が80歳以上で、27%(132例)がフレイルの基準を満たした。437例(89%)が試験を完遂した(介入群:219例[88%]、対照群:218例[91%])。 6ヵ月時に、不適正処方に該当しなかった患者の割合は、介入群が42.7%(106/248例)と、対照群の12.0%(29/241例)に比べ良好であった(リスク差:31%、95%信頼区間[CI]:23~38%)。 各薬剤における不適正処方の中止の割合は、催眠鎮静薬では介入群が43.2%(63/146例)、対照群は9.0%(14/155例)(リスク差:34%、95%CI:25~43%)、glyburideではそれぞれ30.6%(19/62例)、13.8%(8/58例)(17%、2~31%)、非ステロイド性抗炎症薬では57.6%(19/33例)、21.7%(5/23例)(35%、10~55%)であった。薬剤クラスの交互作用検定では有意な差はなかった(p=0.09)。抗ヒスタミン薬は症例数(12例)が少なく解析不能だった。 介入群では、処方中止と患者の年齢、性別、健康状態、フレイル、処方期間、薬剤数などのサブグループに関連は認めなかった。 また、介入群で6ヵ月のフォローアップが完遂された219例のうち、担当医に薬学的見解の資料が届けられたのは145例(66.2%)で、この集団の処方中止率は47.6%(69/145例)であったのに対し、担当医に資料が送られていなかった74例の処方中止率は39.2%(29/74例)であり、両群間に差はみられなかった(リスク差:8%、95% CI:-6~22%)。資料を送らなかった理由は、「患者の要望」「患者がすでに薬剤を中止していた」「別の伝達法がよいと思った」などさまざまだった。 入院を要する有害事象は報告されなかったが、催眠鎮静薬の漸減を行った患者の37.7%(29/77例)に離脱症状がみられた。 著者は、「今後、これら知見の一般化可能性の検討が求められる」としている。

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かかりつけ医でうつ病の治療をする時代に気を付けたいこと(解説:岡村毅氏)-957

 今後のわが国の医療がどのように変化するかわからないが、「まずはプライマリケアあるいは総合診療医にかかり、重篤や難治なケースが専門医に紹介される」という方向におおむね進むと理解している。 精神医療はどうだろうか? 多くの国ではうつ病の治療もプライマリケアでまず行うとされる。わが国でも今後そうなるかもしれず、この論文の知見は興味深い。 うつ病が疑われる患者さんが来て、薬物治療が必要な場合まず何を使うか? これについては多くのガイドラインが明確には語れない状況にある。とはいえ、ここでもったいをつけていても仕方ないのでえいやっとまとめてみたい。つまり、ここから下は個人的見解である。 おそらく現代の大多数の専門医はファーストラインでSSRI(なかでもセルトラリンとエスシタロプラムが総合的に優れているとされる。信頼できるエビデンスがあるのだ)を使うことが多いと一致するのではないか。 十分量を十分期間使っても効果がない場合にどうするか(セカンドライン)が本論文で検証されている。他の抗うつ薬(とくに薬理的に異なるもの)への変更、一部の抗うつ薬の追加(この論文のまさに主題であるがミルタザピンが使われることが多い、多くの治療アルゴリズムでそうなっているのだ)、抗精神病薬の抗うつ作用の利用、気分安定薬の利用、などなどの選択肢がある。とはいえ人間というものは多様過ぎて、この段階ではどれが優れているとは言い難い。そしてこの論文が示したのは、セカンドラインでの「ミルタザピンの追加は効果がなかった」というものだ。 ところで、精神科医はうつ病の方が受診した場合は、どのように治療戦略を考えるのだろう? 私見だが、多くの精神科専門医が最も注意を払うのは「本当にうつ病か」という点ではないかと思う。現代社会はますます複雑化する一方で、余裕は失われている。多くの人が、多様な悩みや苦しみを抱いて精神科を受診する。うつ病ではない人を、質問票に惑わされて、間違ってうつ病治療の文脈に導いてしまうと、「うつ病が治らないのは治療が悪いからだ、今は良い治療をするべきで、他の問題解決をするべきではない」という偽りの平衡状態にしばらく陥ることになる。この平衡状態では、医師は責任を感じて焦燥するし、患者はよくならないことに焦燥する、という絶望的なゲームとなる。 個人的臨床経験では、中核的・古典的・単純なうつ病の場合は最初の抗うつ薬(それが何であれ)でほとんど軽快する。一方で、最初の抗うつ薬が効果不十分な場合(つまりこの論文の対象集団だ)は、他の抗うつ薬に変更しようが、何かを加えようがあまり効果はない。その場合、臨床医として私なら、場合によってはミルタザピンを処方はするかもしれないが―――ミルタザピンは鎮静系なので睡眠は改善するだろうし―――内心では「そもそもの見立てを再構築しよう」と焦り、「家族内の葛藤などの語られていない情報はないか」、あるいは「双極性が隠れていないか」と考え、どうやって情報を集めようかと考えはじめるだろう。 この論文を読んで、非専門家がファーストラインで治せないうつ病は抜本的に治療戦略を見直すべきであり、そこで拘泥することは患者・医師双方にとって悲劇であると感じた。そして、この論文はきわめてまっとうな結論(さっさと専門家に紹介だ)を暗に示しているように思われた。 最後に、個々の抗うつ薬についてはさまざまなエビデンスが集積されていますし、その医師にとって使い慣れた、知り尽くした抗うつ薬がある意味で最も安全といえます。筆者はミルタザピンをファーストラインで使用することもあり、決して効果がないと言っているのではありません。本コラムの内容はあくまで単純化した一般論であり、誤解なきようお願いします。また、薬物治療は、精神療法や環境調整と並ぶ治療の大きな柱ですが、すべてではありません。

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抗肥満薬であるlorcaserinは日本でも使用できるのだろうか(解説:吉岡成人氏)-942

抗肥満薬は臨床の現場に出てこない 肥満治療の基本は、食事療法と運動療法であり、非薬物療法を3ヵ月をめどに行ったうえでも、改善が認められない場合に薬物治療が考慮される。しかし、日本で使用が可能な薬剤はマジンドールしかない。米国では、膵リパーゼ阻害薬で腸管からの脂肪吸収を抑制する作用を持ったorlistatも発売されているが、日本での発売の予定はない。脳内で摂食亢進や快楽・報酬系に作動するカンナビノイド受容体の拮抗薬であるrimonabantは、自殺企図を含む重篤な精神疾患を引き起こすことから2008年に開発が中止となっている。また、ノルアドレナリンとセロトニンの再吸収取り込み阻害薬であるsibutramineは、血圧の上昇や心筋梗塞、脳卒中のリスク増加のため2010年に欧米の市場から撤退している。このように、抗肥満薬は開発・中断を繰り返しており、臨床の現場で応用されることがきわめて難しい薬剤となっている。lorcaserin 今回、抗肥満薬として期待されていたlorcaserinが、肥満2型糖尿病患者に対して有用である可能性を示す論文がLancet誌に報告された(Bohula EA, et al. Lancet. 2018 Oct 3. [Epub ahead of print])。lorcaserinはセロトニン5-HT(5-hydroxy-triptamine)2c受容体のアゴニストである。セロトニンは脳内に存在するモノアミンで、5-HT受容体を介して摂食抑制、睡眠、鎮静、疼痛閾値の調整、母性行動などに関与している。5-HT2c受容体は視床下部に発現し、食欲抑制に関与しており、そのノックアウトマウスでは過食や肥満をもたらすことが知られている。5-HT2c受容体への選択性が強いlorcaserinは、2010年に前臨床試験段階で乳腺腫瘍と星細胞腫の発生を増加させるリスクが懸念され、米国食品医薬品局(FDA)で認可されなかった。しかし、その後の第III相試験で腫瘍発生の増加がなかったため、2012年にFDAが認可した薬剤である。lorcaserinの心血管安全性 lorcaserinの心血管系に対する安全性を評価した二重盲検試験であるCAMELLIA(Cardiovascular and metabolic effects of lorcaserin in overweight and obese patients)-TIMI 61試験の結果が、2018年8月26日にNEJM誌電子版に掲載されている(Bohula EA, et al. N Engl J Med. 2018;379:1107-1117.)。 心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中を合わせた複合イベントを主要評価項目とし、有効性については主要評価項目に不安定狭心症、心不全、冠動脈血行再建術を追加した複合イベントについて評価している。中央値3.3年間の追跡で、主要評価項目についてはlorcaserin群6.1%、プラセボ群6.2%(ハザード比:0.99、99%信頼区間:0.85~1.14)であり、安全性が確認された。有効性については、lorcaserin群11.8%、プラセボ群12.1%(ハザード比:0.97、99%信頼区間:0.87~1.9714)でプラセボに勝る心血管イベントの減少は示されなかった。lorcaserinは糖尿病治療にも有用 CAMELLIA-TIMI 61試験の副次評価項目である、2型糖尿病患者における血糖コントロール、糖尿病発症前から2型糖尿病への移行の遅延、糖尿病発症阻止の可能性を検討した詳細な結果が、今回Lancet誌に掲載された論文である。 アテローム動脈硬化性心疾患、または複数の心血管リスクを保有するBMI 27以上の肥満者を対象として、lorcaserinを投与した群では、1年時において糖尿病患者で平均107.6kgの体重がプラセボ群に比較して2.6kg(95%信頼区間:2.3~2.9)減少し、HbA1c 5.7~6.5%未満、空腹時血糖値100~125mg/dL未満の「前糖尿病」状態の対象者が糖尿病に移行するリスクも19%減少(8.5% vs.10.3%、ハザード比:0.81、95%信頼区間:0.66~0.99)し、糖尿病の発症予防に対するNNTは3年で56であると報告している。糖尿病患者においては、細小血管障害(網膜症、持続アルブミン尿、末梢神経障害)の発症も抑止された(10.1% vs.12.4%、ハザード比:0.79、95%信頼区間:0.69~0.92)という。代謝の改善と心血管イベント lorcaserinは従来の抗肥満薬と同様に、体重の減少と糖尿病の発症予防、糖尿病の病態の改善に有用であり、かつ、心血管安全性も確認されたといえる。しかし、減量に成功し、血糖コントロールが改善しても、3.3年の期間では心血管イベントの発症に好影響をもたらさなかった。 はたして日本でも市場に登場する薬剤となるのかどうか、今後の展開が注目される。

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日本の頭部外傷の現状は?/脳神経外科学会

 日本頭部外傷データバンクは、日本脳神経外傷学会のプロジェクトである。日本の頭部外傷診療の現状の把握を目的に、1996年に日本頭部外傷データバンク検討会が設立され、1998年より重症頭部外傷患者を対象とした間欠的に2年間の疫学研究を開始。現在まで、Project1998、2004、2009が行われ、このたび、Project2015の解析が開始された。その概要について、日本脳神経外科学会 第77回学術総会において、山口大学 脳神経外科 末廣 栄一氏が発表した。 登録対象症例は2015年4月1日~2017年3月31日に、搬入時あるいは受傷後48時間以内にGlasgow Coma Scale(GCS)8以下、あるいは脳神経外科手術を施行した頭部外傷症例(0歳を含む全年齢)。Project2015の参加施設は33施設、症例数は1,345例であった。 主な結果は以下のとおり。  ・患者の平均年齢は58.8歳で、70歳以上が以前に比べ著しく増加していた。  ・主な受傷機転は、交通事故が41.9%、転倒・転落が40.8%であった。  ・搬入時GCSスコアは7.3で、重症度は低下傾向であった。  ・外科的処置は67.4%の患者に施行されており、過去の2回に比べ、増加傾向に   あった。  ・頭蓋内圧センサーは36.7%に留置され、こちらも増加傾向であった。  ・鎮静・鎮痛、高浸透利尿薬、抗てんかん薬などの薬物療法施行率は66.5%で   あった。  ・退院時の転帰は、転帰良好30.3%、死亡35.8%であった。 プロジェクトごとに患者の高齢化は進行している。しかし、外科的治療も含めた積極性は向上し、前Projectに比べ、転帰は維持されていた。

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初回エピソード精神疾患患者に対する長時間作用型抗精神病薬の有効性

 長期アウトカムに影響を及ぼす初回エピソード精神疾患(FEP)患者の治療を最適化するうえで、非定型抗精神病薬の異なる有効性プロファイルは、重要なポイントとなる。スペイン・University Hospital Marques de ValdecillaのMarcos Gomez-Revuelta氏らは、FEPに対するアリピプラゾール、ziprasidone、クエチアピン治療の臨床効果について、3年間のフォローアップのうえ、比較検討を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2018年9月12日号の報告。 本研究は、2005年10月~2011年1月にプロスペクティブランダム化オープンラベル試験として実施された。薬物治療ナイーブの初回エピソード患者202例を対象に、アリピプラゾール群(78例)、ziprasidone群(62例)、クエチアピン群(62例)にランダムに割り付け、3年間のフォローアップを行った。主要評価項目は、すべての原因による治療中止とした。臨床効果の分析は、intention-to-treat分析に基づき実施した。 主な結果は以下のとおり。・3年間のフォローアップ期間中の全体的な脱落率は、19.3%であった。・各群の治療中止率は、アリピプラゾール群73.08%、ziprasidone群79.03%、クエチアピン群95.16%であり、有意な差が認められた(χ2=11.680、p=0.001)。・効果不十分、アドヒアランス不良、副作用における統計学的に有意な差は、すべての原因による治療中止までの時間的有意差を判断するための3年間のフォローアップにおいて観察された(Log-Rank=32.260、p=0.001)。・眠気/鎮静(χ2=9.617、p=0.008)および睡眠持続時間(χ2=6.192、p=0.004)の増加において、各群に有意な差が認められた。・錐体外路症状のプロファイルに、有意な差は認められなかった。・アリピプラゾール群では、ベンゾジアゼピン使用率が高かった。 著者らは「FEP患者に対するクエチアピン治療は、非有効性のための治療中止率が高かった。治療中止パターンの違いを特定することは、FEP後の治療選択を最適化することに寄与すると考えられる」としている。■関連記事初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬治療中止に関する20年間のフォローアップ研究初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬中止後の長期的な影響初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る

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不眠症におけるデュアルオレキシン受容体拮抗薬とその潜在的な役割に関するアップデート

 現在の不眠症に対する薬物治療は、すべての不眠症患者のニーズを十分に満たしているわけではない。承認されている治療は、入眠および睡眠維持の改善において一貫して効果的とはいえず、安全性プロファイルも複雑である。これらのことからも、追加の薬物療法や治療戦略が求められている。初期研究において、一部の不眠症患者に対して、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)が追加の薬物治療選択肢として有用であると示されている。米国・セント・トーマス大学のKayla Janto氏らは、DORAとその潜在的な役割について、既存の文献を調査しアップデートを行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌2018年8月15日号の報告。 DORAに関する既存の文献は、PubMedデータベースより、「オレキシン受容体拮抗薬」「almorexant」「filorexant」「lemborexant」「スボレキサント」の検索キーワードを用いて検索を行った。検索対象は、英語の主要な研究論文、臨床試験、レビューに限定した。 主な結果は以下のとおり。・不眠症治療においてオレキシン受容体系を標的とすることは、より一般的に用いられるGABA作動性催眠鎮静薬治療に対する追加および代替的な薬物治療である。・現在の文献において、その有効性が示唆されているものの、まだ十分に確立されていない。・前臨床報告では、アルツハイマー病と不眠症を合併した患者に対する治療の可能性が示唆されている。 著者らは「DORAは、不眠症に対する追加の治療選択肢として使用可能である。いくつかの不眠症サブタイプにおいて、その安全性および有効性をきちんと評価するために、より多くの臨床試験が必要とされる。不眠症に対する既存治療とのhead-to-head比較研究が求められている」としている。■関連記事日本人高齢不眠症患者に対するスボレキサントの費用対効果分析不眠症へのスボレキサント切り替えと追加併用を比較したレトロスペクティブ研究不眠症患者におけるスボレキサントの覚醒状態軽減効果に関する分析

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睡眠薬の長期使用に関する10年間のフォローアップ調査

 催眠鎮静薬の長期使用は、非常によく行われているが、ガイドラインでは推奨されていない。新規睡眠薬使用患者における長期使用への移行率は、十分に研究されているわけではなく、現時点では、有益だと考えられる推奨薬は不明である。イスラエル・テルアビブ大学のYochai Schonmann氏らは、新規睡眠薬使用患者における長期使用リスクを定量化し、睡眠薬の選択とその後の使用パターンとの関連性を検討した。European Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2018年8月8日号の報告。 イスラエル最大のヘルスケアプロバイダーのデータベースを用い、検討を行った。2000~05年に催眠鎮静薬を新たに使用した患者23万6,597例を対象に、10年間フォローアップを行った。2年目、5年目、10年目の処方箋が記録された。初回の睡眠薬選択(ベンゾジアゼピン/Z薬[非ベンゾジアゼピン系])と長期使用との関連は、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・新規睡眠薬使用患者の平均年齢は、63.7歳(SD±16.4歳)であった。・女性の割合は、58.6%であった。・ベンゾジアゼピンは、15万4,929例(65.5%)に使用されていた。・ベンゾジアゼピン使用患者は、Z薬使用患者と比較し、より高齢であり、社会経済的状態もより低かった(p<0.001)。・10年目において、新規ベンゾジアゼピン使用患者の66.8%(10万3,912例)が30DDD(defined daily dose:規定1日用量)以下、20.4%(3万1,724例)が長期使用(180DDD/年以上)、0.5%(828例)が過量投与(720DDD/年以上)であった。・Z薬の使用は、長期使用リスクの増加と関連していた(p<0.0001)。 2年目:17.3% vs.12.4%、RR=1.40(1.37~1.43) 5年目:21.9% vs.13.9%、RR=1.58(1.55~1.61) 10年目:25. 1% vs.17.7%、RR=1.42(1.39~1.45)・Z薬使用患者における日常的投与および過量投与についても、同様の結果が観察された(p<0.001)。 著者らは「新規催眠鎮静薬使用患者のうち約20%が長期使用となっていた。また、過量投与は、0.5%に認められた。そして、Z薬の使用は、長期使用リスク増加と関連が認められた」としている。■関連記事ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は高齢者へのZ薬と転倒・骨折リスクに関するメタ解析ベンゾジアゼピン依存に対するラメルテオンの影響

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陣痛緩和にレミフェンタニル自己調節鎮痛法が有用/Lancet

 陣痛時の疼痛緩和において、静脈内レミフェンタニル自己調節鎮痛法(PCA)は、ペチジンの筋肉内投与に比べ、硬膜外麻酔への変更を要する女性が少ないことが、英国・シェフィールド大学のMatthew J. A. Wilson氏らの検討「RESPITE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2018年8月25日号に掲載された。陣痛の緩和のためにペチジン筋注を受けた女性の約3分の1が、その後に硬膜外麻酔を要し、良好な疼痛緩和が得られるものの、器械的経膣分娩のリスクが増加する。陣痛時のレミフェンタニルPCAはペチジンの代替法とされるが、十分には普及していないという。英国の14施設で401例を登録 本研究は、英国の14の産科病棟が参加した多施設共同非盲検無作為化対照比較試験(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 対象は、妊娠期間37週以上、胎児が単胎・頭位で陣痛がみられ、オピオイドによる疼痛緩和を希望する16歳以上の女性であった。被験者は、レミフェンタニルPCA(必要に応じて40μgをボーラス投与、次回投与までのロックアウト時間は2分)またはペチジン筋注(4時間ごとに100mgを投与、24時間で最大400mg)を行う群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、試験登録後に硬膜外麻酔を受けた女性の割合とした。また、視覚アナログスケール(VAS、0点:痛みなし、100点:最も強い痛み)を用いて、30分ごとに疼痛緩和効果を評価した。 2014年5月13日~2016年9月2日の期間に401例の女性が登録され、レミフェンタニルPCA群に201例、ペチジン筋注群には200例が割り付けられた。硬膜外麻酔への変更が半減、緩和効果も良好 実際に試験薬の投与を受けたのは、レミフェンタニルPCA群が186例(93%)、ペチジン筋注群は154例(77%)であった。投与を受けない主な理由は、投与が可能になる前に出産(レミフェンタニルPCA群12例、ペチジン筋注群17例)、無作為化直後のオピオイド投与前に、母親が硬膜外麻酔を要すると決断(ペチジン筋注群22例)などであった。同意を取り消したペチジン筋注群の1例を除く400例がintention-to-treat解析の対象となった。 無作為化時の平均年齢は、レミフェンタニルPCA群が29.4歳(SD 6.1)、ペチジン筋注群は29.3歳(6.1)、白人がそれぞれ73%、79%で、未経産婦が60%、59%だった。 硬膜外麻酔への変更の割合は、レミフェンタニルPCA群が19%(39/201例)と、ペチジン筋注群の41%(81/199例)に比べ有意に低かった(リスク比[RR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.34~0.66、p<0.0001)。 VAS疼痛スコア中央値は、レミフェンタニルPCA群がペチジン筋注群よりも13.91点(95%CI:-21.40~-6.43)低下し、有意な差が認められた(p=0.0003)。VAS疼痛スコアの最高点の差には、有意差はなかった(平均差:-4.44点、95%CI:-10.93~2.05、p=0.18)。 分娩様式には、両群間に有意な差が認められた(p=0.02)。鉗子、吸引による器械的分娩の割合は、レミフェンタニルPCA群が15%と、ペチジン筋注群の26%に比べ有意に低かった(RR:0.59、95%CI:0.40~0.88、p=0.008)。帝王切開の割合は両群とも21%だった。呼吸抑制および過鎮静は両群間に差はなく、いずれもまれだった。 新生児はすべて、出生後5分時のApgarスコアが4点以上であった。蘇生を要する新生児の割合にも差はみられなかった(レミフェンタニルPCA群:10%、ペチジン筋注群:11%)。 母親の満足度は、9項目中2項目でレミフェンタニルPCA群のほうが有意に良好で(「陣痛中の疼痛緩和は有効だった」:p=0.0003、「陣痛の疼痛緩和に満足した」:p=0.0003)、他の項目には差がなかった。また、試験薬に直接起因する重篤な有害事象や薬物反応は認めなかった。 著者は、「本試験で得られたエビデンスは、分娩時の女性の標準治療としてのペチジンに疑問を呈し、陣痛時のオピオイドベースの疼痛緩和に関して、根本的な再評価を迫るものである」と指摘している。

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【GET!ザ・トレンド】脳神経細胞再生を現実にする(4)

インタビューのフルバージョン動画はこちら近年の研究で、ヒトの脳神経細胞にも再生機能があることが明らかになった。そのようななか、慢性脳卒中患者の機能を再生する細胞治療の臨床治験が行われている。これらの治験の中心的役割を担い、Stroke誌2018年4月18日号に総説「Cell Therapy for Chronic Stroke」*を発表したピッツバーグ大学 神経科 Lawrence R. Wechsler氏に、世界における慢性脳卒中の細胞治療の現状を聞いた。慢性脳卒中治療の現状について教えていただけますか。慢性脳卒中は、米国および世界のアンメット・メディカルニーズを代表するものでしょう。脳卒中診療の進化に多くの時間と労力を費やしてきたこともあり、急性期については、t-PAや機械的血栓除去といった進行抑制に介入する新たな治療法がいくつか出てきています。また、亜急性期では、理学療法である程度障害を改善することはできます。しかし、慢性期になると、障害改善のためにできることはほとんどありません。脳卒中の問題は、イベント発症後、数ヵ月および数年後にあります。米国では毎年約80万人の脳卒中が発症しており、後遺症による障害をかかえる患者さんは、4〜500万人と推定されています。現状では最大の努力をしても障害が残ってしまう、そういった患者さんを助ける試みが是が非でも必要です。先生の総説に代表されるように、慢性脳梗塞において、細胞治療が注目されていますが、細胞治療にどのような期待をお持ちですか。細胞療法が脳卒中の後遺症を持つ患者さんの機能を改善できるかに注目しています。少なくとも今この段階で、細胞治療は期待以上のものだと思います。発症前の状態に戻すことができれば、喜ばしいことですが、現段階ではまだ多くのハードルがあります。とはいえ、小さな機能の変化でも、その人の人生に大きな影響を与えることができます。たとえば、歩けなかった患者さんが、介助付きで歩けるようになる。手が麻痺した方がコップやペンを持てるようになる。話せなかった方が、コミュニケーションできるようになる。たとえ元に戻っていなくても、細胞治療でこういったことが実現できれば、患者さんの世界は大きく変わります。細胞治療はどのような機序で効果を発揮すると考えられますか。複数の機序があると思います。細胞タイプ、投与方法で、作用機序は変わってくる可能性があります。細胞がなぜ、いつ、どのように機能するのか、現時点では完全には理解されていません。ただ、一般的な細胞治療である間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell、以下MSC)において最も可能性が高いメカニズムは、免疫系の調節であると考えています。脳卒中後は激しい免疫応答があることがわかっており、その免疫応答の一部が回復の阻害する可能性があると考えています。この免疫応答や、有害な成分を抑制することによって、アウトカムを改善できるかもしれないと考えています。また、移植した細胞が、インターロイキンなどのサイトカイン、成長因子などを分泌して、生き残った細胞の機能回復を促進するパラクラインメカニズムにより、不可逆的に傷害された脳の領域を補うことが主な作用であると考えています。これらの要素が、神経細胞形成、血管新生の増加、グリア反応の減少、抗炎症作用などを生み出します。貢献度合いは定かではありませんが、こういったものの組み合わせが、何らかのベネフィットにつながる、と考えています。移植細胞自体が増殖再生するわけではないということですか。おそらく移植した細胞が、損傷した脳細胞に置き換わるような機能はないと思われます。不可逆的に損傷した脳の周辺には、修復反応を再生し回復を促進する機能を持った細胞がまだ存在します。細胞治療のターゲット領域はここで、周囲の細胞つまり再生反応をつないでいく細胞を活性化して、ダメージを受けた領域を補うと思われます。細胞治療の効果を有効に活用するために、どのような試みがなされていますか。MSC以外にも、神経前駆細胞、不死化腫瘍細胞などいくつかの細胞がありますが、最近、最も一般的に使用されているのはMSCです。そのMSCにも、骨髄の単核細胞由来のもの、歯髄、脂肪組織由来のものなどがあります。しかし、最も一般的なソースは骨髄です。骨髄由来のMSCの移植方法として、自家移植と同種(他家)移植がありますが、自家移植では手技の侵襲、高齢者の骨髄から採取した幹細胞の量と質の問題などがあります。一方、骨髄由来のMSCは同種(他家)移植でも拒絶反応がなく、免疫抑制が不要なこと、治療に十分な細胞量を産み出せることから、自家移植よりも同種(他家)移植が多く行われます。同種(他家)移植では、骨髄バンクから骨髄由来細胞を取り出し、企業が開発した方法で増殖し、いわゆる「Off the Shelf Product」を作り、脳卒中を起こした患者に、細胞を投与することが可能になります。細胞の投与経路も研究されています。静脈内投与、髄腔内投与、直接動脈内投与もできます。しかし、多くの研究で行われているのは、脳の穿刺孔から小さな針を入れ、細胞を脳に直接注入する方法です。投与経路を考えるうえで、脳卒中発症後の時間と、細胞の働きは重要です。発症後早い段階では、脳が発するシグナル(ホーミングシグナル)があり、動脈や静脈、髄腔内に投与された細胞は、損傷領域に引き込まれます。しかし、慢性期には、そのシグナルは消えてしまいます。つまり、慢性期では、静脈、動脈、髄腔内投与ではなく、損傷部位に直接注入しないと、そこで効果を発揮するのはむずかしいのです。そのため、慢性脳卒中モデルにおいては、定位脳手術を用いて、細胞を梗塞領域に直接注射することが最善のアプローチであるとされています。慢性脳卒中における細胞治療の臨床試験について教えていただけますか。まず、完了した試験についてお話しします。最初の試験群は10~15年前に行われた、Layton BioScience社の不死化腫瘍細胞の小規模な早期試験です。この細胞は、若年男性の奇形がん患者から単離され、定位脳手術によって、脳の損傷領域に直接移植しています。この研究は12例と、18例の2つの試験で行われました。非常に新しい研究であり、これらの細胞が腫瘍や重篤な反応を引き起こすか知見はありませんでしたが、細胞自体は安全で問題は生じませんでした。また、限定的な試験であったものの、有効性のヒントはいくつか示しました。さらに、ブタ胎児の細胞を用いた別の研究ありました。それも小規模な研究でしたが、合併症があり、5例の患者で中止になっています。この合併症は細胞に関連していなかったことが、判明しましたが、その懸念から、研究は再開されませんでした。その約10年後に、一連の新たな研究が行われました。まずピッツバーグ大学とスタンフォード大学が共同で行ったSanBio社の細胞(SB623)の第I相試験です。SB623は、骨髄由来のMSCであり、プラスミドを用いて、Notch-1を遺伝子導入した同種(他家)移植の製品です。脳卒中発症後6~60ヵ月の患者の梗塞部位の周辺に、定位脳手術で投与されました。このSB623の試験でも、手術に関連するもの以外に安全性の問題はありませんでした。また、小規模でコントロール群がないので、細胞の効果を証明できるような試験ではありませんでしたが、細胞が何らかの作用を示したのであろう、臨床的改善の示唆がいくつかありました。次のレベルの研究へ進むと決断するに十分な有効性を示すヒントがありました。もう1つはReNeuron社が行った試験です。この細胞はc-Mycという遺伝子を導入した神経前駆細胞(CTX0E03)です。CTX0E03の注入部位は脳梗塞部位ではなく被殻で、同じく定位脳手術で行われました。CTX0E03の試験も、安全性は適切で、一部の患者では臨床的に改善の徴候が見られました。細胞治療による改善の状況についてもう少し詳しく教えていただけますか。これらの早期試験では、一般的な脳卒中の機能スコアの一部に改善が見られました。グループ全体ではそれほど差は表れませんでしたが、患者さん個人を「ベースラインはここ、6ヵ月目はここ、12ヵ月目はここ」と、いろいろなスケールをとおして見ていくと、少なくともそこには細胞治療のベネフィットを示唆するシグナルがありました。その改善効果は一貫したもので、改善は最初の年に見られ、その後治療前の状態に悪化することなく、そのまま維持される傾向にありました。進行中および今後の試験についてはいかがですか。画像を拡大する慢性脳卒中細胞治療の臨床試験SanBio社のSB623で前述の第I相に続く、第IIb相試験ACTIsSIMAの組み入れが完了しています。患者の追跡期間は1年間なので結果が出るのはこれからですが、これは非常に興味深い研究です。その理由は、まず大規模な研究ということです。100例以上の患者が登録されています。そして、コントロールとしてSham(偽)手術群を登録していることです。Sham手術の患者は手術室で、細胞を投与された患者と同レベルの鎮静を与えられ、(表層レベルですが)頭蓋骨の穿刺孔施術も同様の手技で施行されます。脳に細胞を注入すること以外、すべてが同じように行われるわけです。また、手術チームと患者をフォロー・評価するチームを分けて、盲検が厳しく順守されるよう努力をしています。まだ結果は出ていませんが、本当に改善が認められるかどうか、とても示唆に富む試験だと思います。私たちはこの研究結果を心待ちにしています。また、ReNeuron社のCTX0E03細胞の第IIb相試験であるPISCES-IIIも行われます。トライアルのデザインは、Sham手術を採用し、盲検でチームを分離するなど、SanBio社のACTIsSIMA試験よく似ています。ACTIsSIMAおよびPISCES-III双方の研究でポジティブな結果がでれば、細胞治療が慢性脳卒中にとって、効果的な治療法であるという、強い示唆を与えてくれるでしょう。細胞治療で改善した患者さんの効果について、Wechsler先生はどのような印象をお持ちですか。興味深い質問です。というのも、測定していない項目において、ポジティブな変化を報告した患者が数多くいたのです。それらの患者さんのコメントは、記憶が良くなった、精神機能が改善された、活力がわいた、考えが明確になった、というものでした。運動機能については、スケールに表れた変化のみならず、評価指標には表れない小さな変化も患者さんから報告されています。手がうまく使えた、バランスをとって歩けた、といったものです。こういたものが、実際の効果なのか、(良くなりたいという患者さん思いからくる)プラセボ効果なのか、適切コントロール試験が重要になってきます。日本の臨床医にメッセージをいただけますか。慢性脳卒中の細胞治療は有望で、その結果は期待できるものです。しかし、まだ証明されたものではありません。実際にこれが効果的な治療になるかどうかを、進行中の研究で、最後まで調べる必要があります。細胞治療が、慢性脳卒中治療の選択肢に加わり、多くの患者さんを助けられるのであれば歓迎すべきことです。私は細胞治療が成功することを期待していますし、現状のすべての徴候を見るかぎり、効果があると言えるでしょう。また、細胞治療の発展形として、成長因子やサイトカインといった細胞の分泌物を同定・分離し、それらの物質を適正な標的に与えることができれば、細胞を注入する必要性すらなくなるかもしれません。私たちの最終目標は、脳を再構成することだと考えています。機能が失われた脳については、まだゴールから少し離れたところにありますが、進歩は続いています。いつかは、細胞を投与することで、残っている機能を増強させるだけでなく、脳を置き換えることができるようになる。そうすれば、さらに高い効果を得られるようになるでしょう。それが、われわれが今細胞治療で目指していることです。Lawrence R. Wechsler氏インタビュー動画ハイライト

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不眠症へのスボレキサント切り替えと追加併用を比較したレトロスペクティブ研究

 スボレキサントは、従来のGABA(γ-アミノ酪酸)-A受容体を介さない新規作用機序の睡眠薬である。藤田保健衛生大学の波多野 正和氏らは、ベンゾジアゼピン受容体アゴニスト(BzRA)を服用している不眠症患者に対するスボレキサント導入方法の検討を行った。Clinical psychopharmacology and neuroscience誌2018年5月31日号の報告。 本研究は、レトロスペクティブ研究として実施された。スボレキサント処方およびBzRAをすでに使用している患者の臨床データを抽出した。患者は切り替え群と追加併用群に割り当てられた。スボレキサント処方から1ヵ月後の処方中止率を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、切り替え群119例、追加併用群109例に割り当てられた。・追加併用群は、切り替え群よりも、すべての原因による中止率が有意に高かった(オッズ比:2.7、95%CI:1.5~5.0、調整p<0.001)。・追加併用群におけるスボレキサント中止の有意に強いリスク因子は、忍容性であった(22.0% vs.7.6%、p<0.002)。最も一般的な副作用は、過鎮静であった。 著者らは「BzRAを服用している不眠症患者に対しスボレキサントを使用する際には、切り替えよりも追加併用のほうが過鎮静を増加させることが示唆された。しかし、本研究は唯一の予備的レトロスペクティブ研究であるため、本所見を確認するためにはさらなる研究が必要である」としている。■関連記事不眠症患者におけるスボレキサントの覚醒状態軽減効果に関する分析2つの新規不眠症治療薬、効果の違いは期待の新規不眠症治療薬、1年間の有効性・安全性は

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コードホワイト【Dr. 中島の 新・徒然草】(225)

二百二十五の段 コードホワイト今週の月曜日の朝、看護師さんたちとの間で出た話題は、あの悲惨な新幹線殺傷事件のニュースです。この事件が他人事と思えないのは、我々の働く病院の中でも起こり得ることであり、実際、酔っ払った患者さんに胸ぐらをつかまれるくらいのことは時々あるからです。我々の病院では、ERで何かあったらボタンを押せと言われています。そうすると警備員さんが駆けつけてくることになっていますが、その効果の程度は不明です。ある病院ではコードブルーならぬコードホワイトというのがあると聞きました。つまり、職員が危害を加えられそうになった場合に、応援を求めてコールするというものです。院内放送で「コードホワイト、コードホワイト、ER」というアナウンスがあると、その時点で手を空けることのできる者は一斉にERに集合します。あっという間に15人程度は集まるので、その人数に圧倒されて暴言暴力の主は戦意喪失してしまうのだそうです。時には逆効果になってしまい、「なんでこんなに大勢集まってくるんや! 俺が何したっちゅうねん!」と余計に激高する人もいるのだとか。ですから、このシステムにはまだまだ改良の余地がありますが、コードホワイトという手段があると分かっていれば、暴力的なトラブルに巻き込まれても職員が落ち着いて対応することができます。もちろんコードホワイトに関わるのは怖いし勘弁して欲しい、という人も少なくありません。そんなこともあってか、現場に1番乗りした人は周囲から称賛の目で見られるのだそうです。かつては、この病院、乱暴者が数多くやってきたので、コードホワイトも月に数件あったそうです。でも現在は落ち着いてきて、月に1件あるか無いかに減りました。トラブル発生時にいきなり110番するのも心理的ハードルが高いので、まずはコードホワイトで対応するというのも悪くはありません。もし事態がエスカレートするようなら、その時こそ警察に連絡すべきですね。職員の安心感につながるコードホワイトのようなシステムは、それぞれの病院でも持っておいても悪くないと思います。最後に1句トラブルは 人を集めて 鎮静

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奥多摩で考える地域医療の将来と展望

 2018年5月19日、西多摩三師会と奥多摩町は「『健康長寿な地域づくりフォーラム』in 奥多摩」を共同で開催した。このフォーラムは、日本の縮図である西多摩地域で、地域の自然・文化・産業・医療資源を生かした「活力ある健康長寿地域づくり」をテーマに、観光・食などのリラクゼーションや健診・運動・湯治・リハビリなどを組み合わせた「ヘルスケアツーリズム」について議論するもの。当日は、西多摩地域の医療者、行政関係者、議会関係者など多数が参集した。本稿では講演の概要をお伝えする(写真は、左上:阿岸 祐幸氏、右上:伴 正海氏、下:武見 敬三氏)。奥多摩で「ヘルスリゾート」 はじめに「観光・湯治・医療資源を生かした健康増進地域づくりに向けて~西多摩ヘルスリゾート構想の可能性~」をテーマに、阿岸 祐幸氏(北海道大学名誉教授)が、奥多摩の自然をドイツやスイスの高原地帯になぞらえ、「ヘルスリゾート」の提案を行った。 自然環境(山、川、海、温泉など)は、健康に良い影響を与える。たとえば温泉について、奥多摩の温泉は、強いアルカリ性泉であり、肌に良い影響を与えるという。欧州では、温泉は「テルメ」と呼ばれ、温泉に付属した療養所は「メディカル・テルメ」と言い、医療の一翼を担うものとして広く利用されている。 また、都心からほどほどの距離にある奥多摩は、気候(転地)療法にも利用でき、「この環境が治癒の促進や健康の増進に役立つ可能性がある」と期待を膨らませた。また、奥多摩の豊富な森林も鎮静殺菌作用があるとされる「森林浴」の効能を高め、「多摩の植生を利用した科学的な遊歩道の設置などが期待できる」とも語る。 そして、同氏は、奥多摩に自然を活用した健康保養地として「Natural capital health resort」の設置を提唱した。「奥多摩地域以外からの療養者はもちろん、地域住民には地域包括ケアシステムへ温泉などの地元の資源を取りこむことで、生活支援や介護などともリンクさせる取り組みができる」と展望を語った。地域医療でできること、できないことの見極め 次に「住民が生きて逝くための地域包括ケアシステムづくりについて~高知のへき地や行政での6年間と国での2年間を踏まえて~」をテーマに伴 正海氏(医師・元厚生労働省 医政局地域医療計画課 医師確保等地域医療対策室)が、地域医療の展望について講演を行った。 伴氏は、地域医療の研修として6年間を過ごした国保梼原病院を例に説明。梼原町の取り組みとして、町立病院と保健福祉支援センターを同じ建物に収容することで、住民を24時間フォローする仕組みやへき地の医療・介護の成功例を紹介した。 たとえば初期認知症の患者であれば、医療者がそのきざしを覚知した時点で、介護の専門職へフォローを依頼することができ、症状が進行した場合、その逆もできることで迅速に、手厚い医療を提供することができるという。 次に「少産多死の時代」の医療について言及し、「今後は『死なせない医療』から『支え看取りの医療』への転換が必要であり、患者の社会背景をくんだ医療・介護の導入のために、地域の役割が大事になる」と語った。そのために地域でできること、できないことの議論と合意の形成が必要になると示唆した。 最後に多摩地域について触れ、「多摩は『地域が医師を育てる場』として最良の場所である。住民が医療者を育てるために教える、体験させるなど医療者を育成し、地域全体が納得する医療を作っていってもらいたい」と思いを語った。労働人口減少の将来の地域の在り方 次に「活力ある健康長寿地域づくりに向けて~西多摩モデルへの期待と行政のリーダーシップ~」をテーマに武見 敬三氏(参議院議員)が、医療、医療経済について解説を行った。 今後の人口動態について厚生労働省などの資料を基に解説。「今後3年間は谷間として一時的に75歳以上上昇率は減る一方で、その後一気に団塊の世代が増加するので上昇率は上がる。その間に国として、どのような政策提言、実行ができるかが試されている」と問題点を示した。 労働人口の減少はこれから全国的な事象であり、「アジア健康構想」の例に代表されるように、アジアの諸国から介護の担い手としての労働者の確保や健康寿命延伸への取り組みにより解決が望まれている。また、社会保険についても「国家財政上の見地から今後は、さまざまなデータベースを作成・活用し、費用対効果の分析を行い、支出を見直すことも国民に理解いただきたい。また、高齢者が活躍できる場を作ることで、働けるうちは元気に働いてもらいたい」と説明を行った。 最後に多摩地区の現状と将来に触れ、「極端に就業人口が少なくなる問題に直面している」と指摘し、医療介護の財政上の問題、住民負担の増大などに対し、地域包括ケアの充実などを活用することで上手に対応してもらいたい。行政と住民がよく話し合い、方針を決め、絶え間なく地域の活性化がされることを期待する」と述べ、講演を終えた。

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不眠症とアルコール依存との関連

 アルコールを“睡眠補助”として使用した際のリスクを評価するため、米国・ウェイン州立大学のTimothy Roehrs氏らは、睡眠前のエタノールの鎮静・催眠効果での耐性の発現、その後のエタノール用量漸増、気分の変化、エタノール“愛好”について評価を行った。Sleep誌オンライン版2018年5月12日号の報告。 対象は、不眠症以外に関しては医学的および精神医学的に健康であり、アルコール依存および薬物乱用歴のない21~55歳の不眠症患者。試験1において、24例に対し睡眠前にエタノールを0.0、0.3、0.6g/kg(各々8例)投与し、夜間睡眠ポリグラフ(NPSG)を8時間収集した。試験2において、エタノール0.45g/kgまたはプラセボによる6日間の前処置を行った後、睡眠前のエタノールまたはプラセボのどちらを選ぶか、7日以上の選択の夜にわたり評価した。 主な結果は以下のとおり。・エタノール0.6g/kg投与は、総睡眠時間および第2夜の第3~4段階の睡眠を増加させたが、これらの効果は第6夜には失われた(p<0.05)。・6日間のエタノールでの前処置は、プラセボでの前処置と比較し、選択の夜におけるエタノール自己投与が多かった(p<0.03)。 著者らは「本研究は、不眠症患者の“睡眠補助”としてのアルコール使用に伴うリスクを明示する最初の研究である。エタノール投与開始の初期には、NPSGの睡眠および鎮静作用の自己報告が改善したが、第6夜には消失した。耐性については、睡眠前のエタノール自己投与の増加と関連が認められた」としている。■関連記事アルコール依存症患者における不眠症に関するメタ解析うつ病とアルコールとの関係:2014年英国調査よりアルコール依存症治療に期待される抗てんかん薬

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「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」通知へ:厚労省

 厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会は 5月7日の会合で、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」について大筋で了承した。本指針では65歳以上の高齢者、とくに平均的な服薬薬剤数が増加する75歳以上に重点をおいて、処方見直しの基本的な考え方や評価・減薬までの流れ、よく使われる薬剤の高齢者における留意点などをまとめている。 早ければ5月中旬を目途に、関連団体や都道府県宛に通知が発出される見通し。また、同検討会では引き続き、主に急性期での対応をまとめた本指針の追補として、外来・在宅などの療養環境別の特徴を踏まえた「高齢者の医薬品適正使用の指針(詳細編)」の作成を開始し、2018年度中のとりまとめを目指す。 本指針は多剤服用やポリファーマシーといった言葉の概念から、処方見直し時のポイントや進め方のフローチャート、減薬する際の注意点などをまとめた本文と、薬効群ごとの薬剤処方における留意点、慎重な投与を要する薬物リストなどの別表から構成される。別表1「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」では、A~Lの12の薬効群ごと(下記参照)に薬剤選択や投与量・使用法に関する注意点、他の薬剤との相互作用に関する注意点が一覧化されている。A.催眠鎮静薬・抗不安薬B.抗うつ薬(スルピリド含む)C.BPSD 治療薬D.高血圧治療薬E.糖尿病治療薬F.脂質異常症治療薬G.抗凝固薬H.消化性潰瘍治療薬 I.消炎鎮痛剤J.抗微生物薬(抗菌薬・抗ウイルス薬)K.緩下薬L.抗コリン系薬剤 なお、詳細編では認知症や骨粗鬆症、COPDなどについても取り上げることが検討されている。■参考厚生労働省「高齢者医薬品適正使用検討会」

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米国の長期介護における向精神薬を使用した認知症ケア改善に関する研究

 養護老人施設における認知症ケア改善のための、メディケアおよびメディケイド・サービスセンター(CMS)国家パートナーシップ(以下、パートナーシップ)は、抗精神病薬の処方の割合を測定し、認知症者のケアの質を向上させるために設立された。米国・ミシガン大学のDonovan T. Maust氏らは、長期介護を受ける高齢者への抗精神病薬および他の向精神薬の処方傾向とパートナーシップとの関連について検討を行った。JAMA internal medicine誌オンライン版2018年3月17日号の報告。 2009年1月~2014年12月までのメディケアサンプル20%の断続的な時系列分析を、パートD(処方箋薬剤給付保険)を有する長期介護のメディケア受給者63万7,426例を対象に実施した。データ分析は、2017年5月1日~2018年1月9日に行われた。主要アウトカムは、抗精神病薬と他の向精神薬(抗うつ薬、気分安定薬[バルプロ酸、カルバマゼピンなど]、ベンゾジアゼピン、他の抗不安薬、催眠鎮静薬)の四半期における使用率とした。 主な結果は以下のとおり。・対象者63万7,426例のうち、女性は44万6,538例、男性は19万888例で、養護老人施設入所時の平均年齢は79.3±12.1歳であった。・対象者における向精神薬使用は、気分安定薬を除き、パートナーシップ開始前に減少していた。・2009年の第1四半期において、14万5,841例中3万1,056例(21.3%)に抗精神病薬が処方されており、これはパートナーシップ開始まで四半期ごとに-0.53%減少していた(95%CI:-0.63~-0.44%、p<0.001)。・その時点での、四半期ごとの減少率は-0.29%であり(95%CI:-0.39~-0.20%、p<0.001)、パートナーシップ後の四半期ごとの減少率は0.24%と減速していた(95%CI:0.09~0.39%、p=0.003)。・気分安定薬の使用は、パートナーシップ開始前に増加し続けており(率:0.22%、95%CI:0.18~0.25%、p<0.001)、開始後にはそれが加速し(変化率:0.14%、95%CI:0.10~0.18%、p<0.001)、2014年の最終四半期までに35万5,716例中7万1,492例(20.1%)まで達した。・抗うつ薬は全体として最も頻繁に処方された薬剤であり、2009年初めには14万5,841例中7万5,841例(52.0%)に処方されていた。・抗精神病薬と同様に、抗うつ薬の使用は、パートナーシップ開始前後どちらでも減少していたが、減少率は減速していた(変化率:0.34%、95%CI:0.18~0.50%、p<0.001)。・認知症者に限定した場合でも、同様な結果が得られた。 著者らは「長期介護において向精神薬の処方は減少していたが、パートナーシップでこの減少は加速しなかった。パートナーシップ開始後に、長期介護者や認知症者に対する気分安定薬の使用が増加し、それが加速したことは、抗精神病薬の代替品として使用されたためであると考えられる。抗精神病薬のみの使用を評価することは、ケアの質の面では不十分であり、リスクとベネフィットのバランスが良くない代替品への処方変更に寄与している可能性がある」としている。■関連記事警告後、認知症への抗精神病薬処方は減少したのか認知症者への抗精神病薬投与の現状は日本では認知症への抗精神病薬使用が増加

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急性増悪期の薬物療法に関するエビデンスレビュー

 救急部での精神症状の急性増悪の管理における抗精神病薬使用の主な目的は、過鎮静を起こすことなく急速に静穏を図り、患者が自身のケアに携われるようにすることである。しかし、比較研究は不足しており、とくに新規の急速鎮静を示す第2世代抗精神病薬の研究が不足している。米国・Chicago Medical SchoolのLeslie S. Zun氏は、急性増悪期の薬物療法に関するエビデンスのレビューを行った。The Journal of emergency medicine誌オンライン版2018年1月17日号の報告。 この構造化されたエビデンスベースのレビューでは、PubMedデータベースの文献検索により抽出されたランダム化比較試験のデータを用いて、急性増悪に対する抗精神病薬治療の有効性について比較検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・28件の盲検ランダム化比較試験が抽出された。・ziprasidone、オランザピンの筋注製剤投与後は、共に15~30分で有効性が確認された。ハロペリドールの筋注製剤とロラゼパムとの組み合わせは30~60分、アリピプラゾールの筋注製剤は45~90分であった。・経口投与の場合、最初の評価時点において、オランザピンは15~120分、リスペリドンは30~120分、アセナピン舌下錠は15分で有効性が確認された。・loxapine吸入剤では、10~20分以内で有意な効果が認められた。・ドロペリドール静注は、約5~10分以内にはっきりした効果が認められた。・効果発現は、ベンゾジアゼピンよりも、第2世代抗精神病薬のほうがより速かったが、データは限られていた。 著者らは「このレビューに含まれる試験の患者集団は、救急部の実情を反映しているとは言えないが、今回の結果によって救急部に急性増悪患者の治療のための第2世代抗精神病薬の急速な有効性に関する情報を提供することができる」としている。■関連記事統合失調症の急性増悪期、抗精神病薬の使用状況は?:国立精神・神経医療研究センター急性期精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用をどう考える急性期統合失調症、ハロペリドールの最適用量は

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小児の双極性障害I型または統合失調症に対するアセナピン治療のレビュー

 1日2回の舌下錠として用いられるアセナピンは、小児・青年期10~17歳における双極性障害I型の躁病および混合エピソードの急性期治療に単独療法として、二重盲検プラセボ対照試験(推奨用量:2.5~10mg、1日2回)の結果に基づき承認されている。小児統合失調症についてもアセナピンの研究が行われているが、まだ承認はされていない。また、米国以外の主要な国々において、アセナピンは、小児の双極性障害I型または統合失調症に対し承認されていない。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のEkaterina Stepanova氏らは、小児精神疾患患者に対するアセナピン治療に関して、神経薬理学、薬物動態、臨床試験、臨床使用の観点より要約した。Paediatric drugs誌オンライン版2017年11月23日号の報告。 主な要約は以下のとおり。・小児患者において、アセナピン舌下錠は口腔粘膜を介して急速に吸収された後、成人患者と同様の薬物動態プロファイルを示し、成人での推奨投与量を小児の投与量に調整する必要性が低いことが示された。・投与後10分間は、食物や水の摂取は避けるべきである。・臨床試験において、小児の双極性障害I型および統合失調症に対するアセナピンは、一般的に安全であり、忍容性が良好であった。・重篤な有害事象は、根底にある精神症状の悪化に関連していた。・最も一般的な臨床試験治療下で発現した有害事象(TEAE:treatment-emergent adverse event)は、両疾患ともに鎮静と傾眠であった。・他の第2世代抗精神病薬と同様に、体重増加やいくつかの代謝パラメータの変化が認められた。・舌下投与に関連する知覚鈍麻、味覚障害、感覚異常などの口腔関連の異常は、一般的に治療中止をもたらさず、一時的であった。・TEAEにおける錐体外路症状は、双極性障害I型と統合失調症の急性期および長期研究において、アセナピン治療患者の5%以上で認められた。■関連記事統合失調症治療に用いられる抗精神病薬12種における代謝系副作用の分析小児攻撃性に対する抗精神病薬の効果~メタ解析小児に対する抗精神病薬処方、診断と使用薬剤の現状は

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小児攻撃性に対する抗精神病薬の効果~メタ解析

 小児における攻撃性や過敏性は、診断のさまざまな段階で認められ、経済的なコストおよび負の社会心理的アウトカムと関連している。このような場合、抗精神病薬が一般的に用いられる。米国・イェール大学のGerrit I van Schalkwyk氏らは、小児の攻撃性および過敏性に対する抗精神病薬の効果についてメタ解析を行った。Expert review of neurotherapeutics誌2017年10月号の報告。 14件の無作為化比較試験のランダム効果メタ解析を行った。攻撃性および過敏性に対する抗精神病薬の全体的なエフェクトサイズを算出した。診断指標、特定の薬剤、鎮静の程度によってサブグループ解析を行った。抗精神病薬の用量効果を調べるため、メタ回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・全体として、抗精神病薬は、攻撃性および過敏性の軽減に有効であった(SMD:0.74、95%CI:0.57~0.92、z=8.4、p<0.0001)。・層別サブグループ解析では、個々の抗精神病薬の有効性に違いは認められなかった(χ2=1.1、df=3、p=0.78)。・アリピプラゾールおよびリスペリドンは、プラセボよりも有意なベネフィットを有していた。・抗精神病薬の効果には、診断指標に基づく有意な違いは認められなかった(χ2=4.2、df=4、p=0.39)。・メタ回帰分析では、全体的な用量効果は認められなかった。 著者らは「臨床データでは、攻撃性および過敏性に対するアリピプラゾール、リスペリドンの効果が認められた。他の薬剤では、利用可能なデータが不十分であった。根本的な診断、薬剤の選択もしくはその鎮静作用の程度に基づく効果の違いは、利用可能なデータでは認められなかった」としている。■関連記事小児不安症に効果的な治療は日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの長期効果はたった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能

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HTLV-1関連脊髄症〔HAM:HTLV-1-associated myelopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義HTLV-1関連脊髄症(HTLV-1-associated myelopathy:HAM)は、成人T細胞白血病・リンパ腫(Adult T-cell leukemia/lymphoma:ATL)の原因ウイルスであるヒトTリンパ球向性ウイルス1型(human T-lymphotropic virus type 1:HTLV-1)の感染者の一部に発症する、進行性の脊髄障害を特徴とする炎症性神経疾患である。有効な治療法に乏しく、きわめて深刻な難治性希少疾病であり、国の指定難病に認定されている。■ 疫学HTLV-1の感染者は全国で約100万人存在する。多くの感染者は生涯にわたり無症候で過ごすが(無症候性キャリア)、感染者の約5%は生命予後不良のATLを発症し、約0.3%はHAMを発症する。HAMの患者数は国内で約3,000人と推定されており、近年は関東などの大都市圏で患者数が増加している。発症は中年以降(40代)が多いが、10代など若年発症もあり、男女比は1:3と女性に多い。HTLV-1の感染経路は、母乳を介する母子感染と、輸血、臓器移植、性交渉による水平感染が知られているが、1986年より献血時の抗HTLV-1抗体のスクリーニングが開始され、以後、輸血後感染による発症はない。臓器移植で感染すると高率にHAMを発症する。■ 病因HAMは、HTLV-1感染T細胞が脊髄に遊走し、そこで感染T細胞に対して惹起された炎症が慢性持続的に脊髄を傷害し、脊髄麻痺を引き起こすと考えられており、近年、病態の詳細が徐々に明らかになっている。HAM患者では健常キャリアに比べ、末梢血液中のプロウイルス量、すなわちHTLV-1感染細胞数が優位に多く、また感染細胞に反応するHTLV-1特異的細胞傷害性T細胞や抗体の量も異常に増加しており、ウイルスに対する免疫応答が過剰に亢進している1)。さらに、脊髄病変局所で一部の炎症性サイトカインやケモカインの産生が非常に高まっており2)、とくにHAM患者髄液で高値を示すCXCL10というケモカインが脊髄炎症の慢性化に重要な役割を果たしており3)、脊髄炎症のバイオマーカーとしても注目されている。■ 症状臨床症状の中核は進行性の痙性対麻痺で、両下肢の痙性と筋力低下による歩行障害を示す。初期症状は、歩行の違和感、足のしびれ、つっぱり感、転びやすいなどであるが、多くは進行し、杖歩行、さらには車椅子が必要となり、重症例では下肢の完全麻痺や体幹の筋力低下により寝たきりになる場合もある。下半身の触覚や温痛覚の低下、しびれ、疼痛などの感覚障害は約6割に認められる4)。自律神経症状は高率にみられ、とくに排尿困難、頻尿、便秘などの膀胱直腸障害は病初期より出現し、初めに泌尿器科を受診するケースもある。また、起立性低血圧や下半身の発汗障害、インポテンツがしばしばみられる4)。神経学的診察では、両下肢の深部腱反射の亢進や、バビンスキー徴候などの病的反射がみられる4)。■ 分類HAMは病気の進行の程度により、大きく3つの病型に分類される(図)。1)急速進行例発症早期に歩行障害が進行し、発症から2年以内に片手杖歩行レベルとなる症例は、明らかに進行が早く疾患活動性が高い。納の運動障害重症度(表)のレベルが数ヵ月単位、時には数週間単位で悪化する。急速進行例では、髄液検査で細胞数や蛋白濃度が高いことが多く、ネオプテリン濃度、CXCL10濃度もきわめて高い。とくに発症早期の急速進行例は予後不良例が多い。2)緩徐進行例症状が緩徐に進行する症例は、HAM患者の約7~8割を占める。一般的に納の運動障害重症度のレベルが1段階悪化するのに数年を要するので、臨床的に症状の進行具合を把握するのは容易ではなく、疾患活動性を評価するうえで髄液検査の有用性は高い。髄液検査では、細胞数は正常から軽度増加を示し、ネオプテリン濃度、CXCL10濃度は中等度増加を示す。3)進行停滞例HAMは、発症後長期にわたり症状が進行しないケースや、ある程度の障害レベルに到達した後、症状がほとんど進行しないケースがある。このような症例では、髄液検査でも細胞数は正常範囲で、ネオプテリン濃度、CXCL10濃度も低値~正常範囲である。■ 予後一般的にHAMの経過や予後は、病型により大きく異なる。全国HAM患者登録レジストリ(HAMねっと)による疫学的解析では、歩行障害の進行速度の中央値は、発症から片手杖歩行まで8年、両手杖歩行まで12.5年、歩行不能まで18年であり5)、HAM患者の約7~8割はこのような経過をたどる。また、発症後急速に進行し2年以内に片手杖歩行レベル以上に悪化する患者(急速進行例)は全体の約2割弱存在し、長期予後は明らかに悪い。一方、発症後20年以上経過しても、杖なしで歩行可能な症例もまれであるが存在する(進行停滞例)。また、HAMにはATLの合併例があり、生命予後に大きく影響する。6)2 診断 (検査・鑑別診断も含む)HAMの可能性が考えられる場合、まず血清中の抗HTLV-1抗体の有無についてスクリーニング検査(EIA法またはPA法)を行う。抗体が陽性の場合、必ず確認検査(ラインブロット法:LIA法)で確認し、感染を確定する。感染が確認されたら髄液検査を施行し、髄液の抗HTLV-1抗体が陽性、かつ他のミエロパチーを来す脊髄圧迫病変、脊髄腫瘍、多発性硬化症、視神経脊髄炎などを鑑別したうえで、HAMと確定診断する。髄液検査では細胞数増加(単核球優位)を約3割弱に認めるが、HAMの炎症を把握するには感度が低い。一方、髄液のネオプテリンやCXCL10は多くの患者で増加しており、脊髄炎症レベルおよび疾患活動性を把握するうえで感度が高く有益な検査である7)。血液検査では、HTLV-1プロウイルス量がキャリアに比して高値のことが多い。また、血清中の可溶性IL-2受容体濃度が高いことが多く、末梢レベルでの感染細胞の活性化や免疫応答の亢進を非特異的に反映している。また、白血球の血液像において異常リンパ球を認める場合があり、5%以上認める場合はATLの合併の可能性を考える。MRIでは、発症早期の急速進行性の症例にT2強調で髄内強信号が認められる場合があり、高い疾患活動性を示唆する。慢性期には胸髄の萎縮がしばしば認められる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)疾患活動性に即した治療HAMは、できるだけ発症早期に疾患活動性を判定し、疾患活動性に応じた治療内容を実施することが求められる。現在、HAMの治療はステロイドとインターフェロン(IFN)αが主に使用されているが、治療対象となる基準、投与量、投与期間などに関する指針を集約した「HAM診療ガイドライン2019」が参考となる(日本神経学会のサイトで入手できる)。(1)急速進行例(疾患活動性が高い)発症早期に歩行障害が進行し、2年以内に片手杖歩行レベルとなる症例は、明らかに進行が早く疾患活動性が高い。治療は、メチルプレドニゾロン・パルス療法後にプレドニゾロン内服維持療法が一般的である。とくに発症早期の急速進行例は治療のwindow of opportunityが存在すると考えられ、早期発見・早期治療が強く求められる。(2)緩徐進行例(疾患活動性が中等度)緩徐進行例に対しては、プレドニゾロン内服かIFNαが有効な場合がある。プレドニゾロン3~10mg/日の継続投与で効果を示すことが多いが、疾患活動性の個人差は幅広く、投与量は個別に慎重に判断する。治療前に髄液検査(ネオプテリンやCXCL10)でステロイド治療を検討すべき炎症の存在について確認し、有効性の評価についても髄液検査での把握が望まれる。ステロイドの長期内服に関しては、常に副作用を念頭に置き、症状や髄液所見を参考に、できるだけ減量を検討する。IFNαは、300万単位を28日間連日投与し、その後に週2回の間欠投与が行われるのが一般的である。(3)進行停滞例(疾患活動性が低い)発症後長期にわたり症状が進行しないケースでは、ステロイド治療やIFNα治療の適応に乏しい。リハビリを含めた対症療法が中心となる。2)対症療法いずれの症例においても、継続的なリハビリや排尿・排便障害、疼痛、痙性などへの対症療法はADL維持のために非常に重要であり、他科と連携しながらきめ細かな治療を行う。4 今後の展望HAMの治療は、その病態から(1)感染細胞の制御、(2)脊髄炎症の鎮静化、(3)傷害された脊髄の再生、それぞれに対する治療法開発が必要である。1)HAMに対するロボットスーツHAL(医療用)HAMに対するロボットスーツHAL(医療用)のランダム化比較試験を多施設共同で実施し、良好な結果が得られている。本試験により、HAMに対する保険承認申請がなされている。2)感染細胞や過剰な免疫応答を標的とした新薬開発HAMは、病因である感染細胞の根絶が根本的な治療となり得るがまだ実現していない。HAMにおいて、感染細胞は特徴的な変化を来しており、その特徴を標的とした治療薬の候補が複数存在する。また神経障害を標的とした治療薬の開発も重要である。治験が予定されている薬剤もあり、今後の結果が期待される。3)患者登録レジストリHAMは希少疾病であるため、患者の実態把握や治験などに必要な症例の確保が困難であり、それが病態解明や治療法開発が進展しない大きな要因になっている。患者会の協力を得て、2012年3月からHAM患者登録レジストリ(HAMねっと)を構築し、2022年2月時点で、約630名の患者が登録している。これにより、HAMの自然史や患者を取り巻く社会的・医療的環境が明らかになると同時に、治験患者のリクルートにも役立っている。また、髄液ネオプテリン、CXCL10、プロウイルス量定量の検査は保険未承認であるがHAMねっと登録医療機関で測定ができる。HAMねっとでは患者向けの情報発信も行っているため、未登録のHAM患者がいたら是非登録を勧めていただきたい。5 主たる診療科脳神経内科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター HTLV-1関連脊髄症(HAM)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)HAMねっと(HAM患者登録サイト)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)HTLV-1情報サービス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省「HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)に関する情報」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)JSPFAD HTLV-1感染者コホート共同研究班(医療従事者向けのまとまった情報)日本HTLV-1学会(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報NPO法人「スマイルリボン」(患者とその家族および支援者の会)1)Jacobson S. J Infect Dis. 2002;186:S187-192.2)Umehara F, et al. J Neuropathol Exp Neurol. 1994;53:72-77.3)Ando H, et al. Brain. 2013;136:2876-2887.4)Nakagawa M, et al. J Neurovirol. 1995;1:50-61.5)Coler-Reilly AL, et al. Orphanet J Rare Dis. 2016;11:69.6)Nagasaka M, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2020;117:11685-11691.7)Sato T, et al. Front Microbiol. 2018;9:1651.8)Yamano Y, et al. PLoS One. 2009;4:e6517.9)Araya N, et al. J Clin Invest. 2014;124:3431-3442.公開履歴初回2017年10月24日更新2022年2月16日

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第39回

第39回:眠れない≠睡眠導入剤監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 眠れないという患者の訴えに対し、睡眠導入剤を処方する医師が多いと思いますが、本当にそれだけでよいのでしょうか?睡眠導入剤内服を開始して、どんどん薬が効かなくなっていって、どんどんお薬の強さや量が増えていって……というケースをよく見ます。 今回取り上げるarticleは、慢性の不眠症に対する薬物療法以外のマネジメントについてです。睡眠導入剤以外の治療について非常に勉強になったため、ご紹介いたします。また本邦でも厚生労働科学研究班 日本睡眠学会のワーキンググループによる「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」が閲覧できるので、ご一読をお勧めします。 以下、American family physician 2015年12月15日号1) より不眠症は、人口の10~30%に影響を与え、年間925~1,075億ドルの医療費が掛かっている。睡眠障害国際分類第3版では、不眠症の診断の基準として、(1)入眠障害、(2)睡眠の維持の障害、(3)早朝覚醒、(4)日中の機能障害―の4項目について、週に3回以上、1ヵ月以上続くこととしている。また、日中の機能障害としては、(1)疲労や倦怠感、(2)注意力や集中力の低下、(3)社会的または職業的・教育的障害、(4)気分障害や過敏症、(5)日中の眠気、(6)モチベーションやエネルギーの低下、(7)エラーや事故の増加、(8)多動性・衝動性または攻撃性などの行動上の問題、(9)睡眠に関する継続的な心配―があり、いずれか1つを満たせばよい。不眠症に寄与する要因として、精神疾患、医学的な問題、薬物の使用、薬物の乱用は除外されるべきである。また、不眠症の非薬理学的療法には、睡眠衛生、認知行動療法、リラクゼーションセラピーなどがある。アメリカ睡眠医療学会によると、慢性の不眠症に対しては、初期治療として睡眠導入剤の使用は避けることが推奨されており、認知行動療法等の非薬物療法の提供を推奨している。またアメリカ老年医学会は、不眠症、せん妄等に対しての初期治療として、ベンゾジアゼピンやその他の鎮静作用のある睡眠薬の使用をしないよう推奨している。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Am Fam Physician. 2015 Dec 15;92:1058-1064. 2) International Classification of Sleep Disorders, 3rd ed. Darien, Ill.: American Academy of Sleep Medicine; 2014. 3) 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療療ガイドライン―出口を見据えた不眠医療マニュアル―

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