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切除可能NSCLC、アテゾリズマブ+化学療法は新たな術前治療の選択肢/Lancet Oncol

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の新たな術前補助化学療法として、PD-L1阻害薬アテゾリズマブ+化学療法の有効性と安全性を評価した第II相試験の結果が示された。米国・コロンビア大学のCatherine A. Shu氏らによる多施設共同単群試験で、高い病理学的奏効率が得られ、忍容性も良好であったという。著者は「切除可能NSCLC患者にとってアテゾリズマブ+化学療法は、新たな術前補助化学療法となりうることが示された」と述べている。NSCLCの約25%は切除可能なStageIB~IIIAであり周術期化学療法が標準治療だが、この治療戦略は生存期間をわずかに改善するのみである。一方で免疫チェックポイント阻害薬が転移NSCLCに有効であることから、著者らは本検討を行った。Lancet Oncology誌オンライン版2020年5月7日号掲載の報告。 研究グループは米国の3施設において、切除可能なStageIB~IIIAのNSCLC患者を対象にアテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセル併用による術前化学療法の有効性および安全性を評価する第II相多施設共同単群試験を実施した。 ECOG PSが0~1で喫煙歴を有する18歳以上のStageIB~IIIAのNSCLC患者を登録し、1サイクルを21日間として、アテゾリズマブ1,200mgをDay1に、nab-パクリタキセル(100mg/m2)をDay1、8および15に、カルボプラチン(AUC5)をDay1に投与した。2サイクル後に病勢進行を認めなかった患者に、さらに2サイクル投与し、その後手術を行った。 主要評価項目は、病理学的奏効率(major pathological response)で、手術時の残存腫瘍が10%以下と定義された。 主な結果は以下のとおり。・2016年5月26日~2019年3月1日に、30例が登録された。うち23例(77%)はStageIIIAであった。・30例中29例(97%)に手術が行われ、26例(87%)がR0切除に成功した。・データカットオフ日(2019年8月7日)の追跡期間中央値12.9ヵ月において、30例中17例(57%)で病理学的奏効が得られた。・主なGrade3/4の治療関連有害事象は、好中球減少症50%(15/30)、ALT増加7%(2/30)、AST増加7%(2/30)、および血小板減少症7%(2/30)であった。・重篤な治療関連有害事象は、Grade3の発熱性好中球減少症1例(3%)、Grade4の高血糖1例(3%)、およびGrade2の気管支肺出血1例(3%)であった。治療に関連した死亡は報告されなかった。

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早期乳がん患者の認知障害、化学内分泌療法vs.内分泌療法/JCO

 がん治療に伴う認知機能障害(CRCI)は補助化学療法中によくみられ、持続する場合がある。米国・Wake Forest School of MedicineのLynne I Wagner氏らは、TAILORx試験(早期乳がん患者の補助療法として化学内分泌療法または内分泌療法単独に無作為に割り付け)において認知障害を前向きに評価したところ、3ヵ月と6ヵ月では化学内分泌療法のほうがCRCIが有意に多かったが、時間とともに差が縮小し12ヵ月以降では有意差は見られなかった。この結果から著者らは「化学内分泌療法は内分泌療法単独に比べて早期に認知障害を引き起こしたが持続的ではなく、補助化学療法によって再発リスク低減が示されている患者や医師に安心をもたらす」としている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年4月9日号に掲載。 本研究では、TAILORx試験に登録された患者のうち、21遺伝子再発スコアが11〜25の患者を化学内分泌療法群または内分泌療法単独群に無作為に割り付けた。認知機能障害は37項目Functional Assessment of Cancer Therapy-Cognitive Function(FACT-Cog)質問票を使用し、552例においてベースライン、3、6、12、24、36ヵ月に評価した。主要評価項目である20項目Perceived Cognitive Impairment(PCI)スケールはFACT-Cogに含まれる。臨床的に意味のある変化は経験的に定義し、ベースラインのPCIスコア、治療、その他の因子に基づくPCIスコアを線形回帰によりモデル化した。 主な結果は以下のとおり。・FACT-Cog PCIスコアは、両群におけるベースラインと比較して3、6、12、24、36ヵ月で有意に低く、認知障害が大きかった。・PCIスコアの変化は、内分泌療法単独群に比べて化学内分泌療法群において3ヵ月(事前に指定された主要評価項目)、6ヵ月で大きかったが、12、24、36ヵ月ではそうではなかった。・更年期のステータスと治療の相互作用は有意ではなかった。

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上部尿路がんに対する術後抗がん化学療法の有効性:POUT trial第III相試験(解説:宮嶋哲氏)-1216

 上部尿路がんは予後不良であるものの、術後補助化学療法の有効性は確認されていない。本研究では腎盂尿管がんで腎尿管全摘除術を施行された患者(261例)を対象に、経過観察群とシスプラチン主体の抗がん化学療法投与群(ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチン)の2群にランダム化してその有効性を前向きに比較検討したものである。 2012年から2017年までに登録された261症例のうち、132例が化学療法群、129例が経過観察群に割り付けられ、観察期間中央値は30.3ヵ月であった。術後化学療法はDFS(HR:0.45、p=0.0001)ならびにMFS(HR:0.48、p=0.0007)を有意に改善した。3年無事象生存率(event-free survival)は化学療法群で71%、経過観察群で46%であった。一方、Grade3以上の有害事象は、化学療法群で44%、経過観察群で4%に認めたが、治療関連死は認めなかった。 以上から、腎盂尿管がんに対する腎尿管全摘除術施行後のシスプラチン主体補助化学療法の有効性がようやく示されたといえる。ただし、対象となったコホートにはリンパ節陽性例が20%以上含まれていたことから、リンパ節陰性例だけ抽出した症例に関する結果に疑問が残る。さらには、リンパ節郭清の意義についても検討課題である。 腎盂尿管がんの術後は単腎となり腎機能は術前に比べ半減するため、投与可能なシスプラチンの量も減少する。したがって、術前抗がん化学療法の有効性に関する検討も必要である。さらには、免疫チェックポイント阻害薬の登場により、シスプラチン主体抗がん化学療法の立ち位置も今後は変化していくものと予測される。

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上部尿路上皮がん、術後化学療法で無病生存率改善/Lancet

 局所進行上部尿路上皮がん(UTUC)患者の治療において、腎尿管全摘除術後のゲムシタビン+プラチナ製剤併用による術後補助化学療法は、これを行わない場合に比べ無病生存(DFS)率を改善することが、英国・ランカシャー州教育病院国民保健サービス(NHS)ファンデーショントラストのAlison Birtle氏らの検討「POUT試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年3月5日号に掲載された。UTUCはまれな疾患で、膀胱上皮がんに比べて各病期の予後が不良とされる。UTUC患者の治療では、根治的腎尿管全摘除術後の術後化学療法の有益性に関して、国際的な合意は得られていないという。術後化学療法の有用性を評価する無作為化試験 本研究は、英国の71施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2012年6月~2017年11月の期間に患者登録が行われた(Cancer Research UKの助成による)。 対象は、年齢16歳以上、糸球体濾過量(GFR)≧30mL/分で、UTUCの根治的腎尿管全摘除術(画像上または肉眼的に異常と判定されたすべてのリンパ節の郭清を含む)を受け、術後のStageが筋層非浸潤性(pT2~pT4、N any)またはリンパ節転移陽性(pT any、N1~3)で、非転移性(M0)の病変を有し、組織学的に移行上皮がんが主の患者であった。 被験者は、サーベイランスを受ける群、または術後90日以内に、21日を1サイクルとする化学療法を4サイクル受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。化学療法は、シスプラチン(CDDP、70mg/m2)またはカルボプラチン(CBDCA、AUC 4.5または5)が第1日に、ゲムシタビン(GEM、1,000mg/m2)が第1日と第8日に静脈内投与された。 主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)集団におけるDFS(割り付け時から初回の再発、転移、死亡までの期間)の割合とした。 本試験は、261例を登録した時点で、事前に規定された中間解析において有効性に関する早期終了の基準を満たしたため、患者登録が中止された。再発/死亡リスクが55%低減 71の参加施設中57施設から261例が登録された。化学療法群に132例、サーベイランス群には129例が割り付けられ、割り付け後にデータの使用への同意を撤回した化学療法群の1例を除く260例(ITT集団)が解析に含まれた。 ベースラインの全体の年齢中央値は68.5歳(IQR 62.0~74.1)、女性が32%含まれた。94%がpT2~pT3、91%がN0で、64%がGFR≧50mL/分であった。腫瘍部位は腎盂が35%、尿管が34%、両方が30%で、術式は開放手術が15%、腹腔鏡手術が82%、ロボット手術が2%であり、顕微鏡的切除断端陽性率は12%だった。フォローアップ期間中央値は30.3ヵ月(IQR:18.0~47.5)。 実際に化学療法を受けたのは126例で、割り付け後にGFRが低下したため76例中16例(21%)がCDDPからCBDCAに、割り付けから治療開始前にGFRが上昇したため50例中1例(2%)がCBDCAからCDDPに切り替えた。 DFS関連イベントの発生率は、化学療法群が27%(35/131例)と、サーベイランス群の47%(60/129例)と比較して有意に低く、相対リスクが55%改善された(ハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.30~0.68、log-rank検定のp=0.0001)。 3年DFS率は、化学療法群が71%(95%CI:61~78)、サーベイランス群は46%(36~56)であり、両群間の推定絶対差は25%(11~38)であった。DFS期間中央値は、化学療法群は未到達、サーベイランス群は29.8ヵ月だった。また、転移または死亡のリスクは、化学療法群で52%低下した(HR:0.48、95%CI:0.31~0.74、log-rank検定のp=0.0007)。 Grade3以上の急性治療関連有害事象は、化学療法群が44%(55/126例、GEM+CDDP 44%[31/71例]、GEM+CBDCA 44%[24/55例])、サーベイランス群は4%(5/129例)で認められた(p<0.0001)。化学療法群では、Grade3以上の好中球数の減少(36%)、血小板数の減少(10%)、悪心(6%)、発熱性好中球減少(6%)、嘔吐(6%)がサーベイランス群よりも多く、重篤な有害事象は32%にみられた。治療関連死の報告はなかった。 QOL(EORTC QLQ-C30、EQ-5D-5L)は、化学療法期間中とその直後(3ヵ月時、p=0.0028)は化学療法群で不良であったが、6ヵ月後にはこの差は解消した。 著者は、「プラチナ製剤ベースの化学療法は、UTUC患者の腎尿管全摘除術後の標準的な補助化学療法と考えられる」としている。

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NSCLCの術後補助化学療法、適正レジメンは?(TORG 0503)/Lung Cancer

 日本発の、非小細胞肺がん(NSCLC)術後補助化学療法の適正レジメンが示された。完全切除されたStage IB、IIおよびIIIAのNSCLCでは、術後補助化学療法が標準治療であるが、これまで最適な化学療法レジメンは決定されていない。日本医科大学呼吸器内科の久保田馨氏らは、これらの患者において望ましいプラチナベースの第3世代レジメンを選択する「TORG0503試験」を実施した。その結果、ドセタキセル+シスプラチン併用療法とパクリタキセル+カルボプラチン併用療法が、術後補助化学療法として安全に施行できることが示された。結果を踏まえて著者は、「次の臨床試験では、対照としてドセタキセル+シスプラチン併用療法を選択する」と述べている。Lung Cancer誌オンライン版2019年3月号の掲載報告。 研究グループは、完全切除されたStage IB、IIA、IIB、IIIAのNSCLC患者を、ドセタキセル(60mg/m2)+シスプラチン(80mg/m2)併用療法を3サイクル行う群(A群)と、パクリタキセル(200mg/m2)+カルボプラチン(AUC 6)併用療法を3サイクル行う群(B群)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は2年無再発生存割合、主な副次評価項目は全生存期間(OS)、有害事象(忍容性、毒性)などとした。 主な結果は以下のとおり。・111例(A群58例、B群53例)が無作為に割り付けられた。両群の患者背景は類似していた。・3サイクルの化学療法を完遂した患者の割合は、A群で93%(54/58例)、B群で92%(49/53例)であった。・両群で治療に関連した死亡は認められなかった。・2年無再発生存割合は、A群で74.5%(95%信頼区間[CI]:68.6~80.4)、B群で72.0%(95%CI:65.7~78.3)であった。・また、5年無再発生存割合はA群で61.6%、B群で46.0%であった。・2および5年OSは、A群で89.7%および73.9%、B群で86.9%および67.5%であった。

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ASCO- GI 2020レポート 消化器がん

インデックスページへ戻るレポーター紹介今回、2020年1月23日~25日に米国・サンフランシスコにおいて開催されたASCO GI 2020に参加し、すでに現地速報という形で注目演題を報告させていただいているが、音声などが乱れたこともあり、補足とともにそこで取り上げることができなかった演題を報告させていただきます。DAY1 Cancers of the Esophagus and StomachOral SessionRESONANCE試験:The Randomized, Multicenter, Controlled Evaluation of S-1 and Oxaliplatin (SOX) as Neoadjuvant Chemotherapy for Chinese Advanced Gastric Cancer Patients.(abstract #280)Chen L, et al.中国から発表された局所進行胃がんに対する術前S-1/オキサリプラチン併用療法(SOX)の有効性に関する無作為化第III相試験である。本試験はStageII/IIIの切除可能胃がんおよび接合部がんを対象とし、手術+術後SOX療法(AC群:adjuvant group)に対する術前SOX療法+手術+術後補助化学療法(NC群:Neoadjuvant group)の優越性を検証した。AC群は術後補助化学療法としてSOX療法を8サイクル施行し、一方NC群は術前SOX療法を2~4サイクル施行後に手術を行い、術後SOX療法は術前投与を含め計8サイクル施行する。SOX療法は共にS-1(80~120mg/day、day1~14、3週ごと)およびオキサリプラチン(130mg/m2、day1、3週ごと)である。主要評価項目は3年間の無病生存割合(3y-DFS)であった。772例が登録され、各群に386例が割り付けられた。両群間の患者背景に偏りはなく、cT3はNC群:AC群=64%:66%、cT4はNC群:AC群=12%:13%であり、cStageIIはNC群:AC群=39%:42%、cStageIIIはNC群:AC群=61%:58%であった。NC群において術前SOX療法は91.9%において投与完遂し、術後補助化学療法を含め8サイクル投与が53.2%において完遂可能であったのに比し、AC群における8サイクル投与完遂率は47.7%であった。R0切除率はNC群においてAC群よりも有意に良好であり(94.8% vs.83.8%)、NC群では46.4%にダウンステージングを認め、術後病理学的完全奏効(pCR)を23.6%に認めた。コメント中国で実施された局所進行胃がんに対する術前SOX療法の有効性を検証した第III相試験の第1報である。主要評価項目である3y-DFSの結果はいまだ不明であるが、術前SOX療法を施行することによりR0切除率の向上とダウンステージングが示唆された。ただし、抄録とR0切除率や治療奏効割合(pRR)の結果が異なるなどいくつか気になる点があり、評価には最終的な報告を待つ必要があると考える。POSTER SessionAPOLLO-11試験:Feasibility and pathological response of TAS-118 + oxaliplatin as perioperative chemotherapy for patients with locally advanced gastric cancer(abstract #351)Takahari D, et al.進行胃がんに対するTAS-118(S-1+ロイコボリン)とオキサリプラチンの併用療法(TAS-118/L-OHP)は、2019世界消化器がん会議(WCGC)においてS-1/CDDP併用療法との比較第III相試験(SOLAR試験)として公表されているが、今回、局所進行胃がん症例に対する周術期化学療法での忍容性を検討する単群第II相試験であるAPOLLO-11試験(UMIN000024688)の第1報が報告された。本試験はリンパ節転移を伴うcT3-4局所進行胃がんを対象とし、術前治療としてTAS-118(80~120mg/日、day1~7、2週ごと)およびL-OHP(85mg/m2、day1、2週ごと)併用療法を4コース施行後、胃切除+D2郭清が実施され、術後補助化学療法としてTAS-118単剤x12コース(Step1)もしくはTAS-118/L-OHP併用療法x8コース(Step2)が行われた。主要評価項目は(1)術前TAS-118/L-OHP併用療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性と(2)術後補助化学療法の忍容性であり、今回の報告では(1)術前TAS-118/L-OHP併用療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性結果が報告された。45例が登録され、術前TAS-118/L-OHP併用療法4コースが完遂されたのが40例(89%)であり、最終的に43例(96%)において外科的切除が完遂可能であった。患者背景は年齢中央値=64歳、男性=82%、胃原発/接合部がん=89%/11%、腸型/びまん型=69%/31%、cT3/4a=29%/71%、cN1/2/3=56%/38%/7%、臨床病期IIB/IIIA/IIIB/IIIC=24%/36%/33%/7%であった。術前化学療法における各薬剤の相対薬物濃度(RDI)中央値はTAS-118=91.7%、L-OHP=100.0%であった。術前TAS-118/L-OHP併用療法におけるGrade3以上の有害事象として、下痢(17.8%)、好中球減少症(8.9%)、食欲不振(4.4%)、口腔粘膜炎(4.4%)、白血球減少症(2.2%)、悪心(2.2%)、倦怠感(2.2%)を認めた。R0切除率は95.6%(90%CI:86.7~99.2%)であった。術後標本による病理学的治療効果(Grade1b-3)を62.2%(90%CI:48.9~74.3%)に認め、うち病理学的完全奏効割合(pCR)は13.3%であり、ダウンステージが68.9%(90%CI:55.7~80.1%)の症例において得られた。コメント局所進行胃がんに対する術前TAS-118/L-OHP併用療法に関する初めての報告であり、術前化学療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性が確認された。今後、術後補助化学療法パートの忍容性結果が報告予定であり、長期予後と合わせてその結果が期待される。EPOC1706試験:An open label phase 2 study of lenvatinib plus pembrolizumab in patients with advanced gastric cancer(abstract #374)Kawazoe A, et al.KN-061試験(胃がん2次治療)やKN-062試験(胃がん1次治療)の結果よりPD-L1陽性胃がんに対するペムブロリズマブ単剤療法の奏効割合は約15%と報告されている。一方、マルチキナーゼ阻害薬であるレンバチニブは腫瘍関連マクロファージを減少させ、CD8陽性T細胞の浸潤を増強することによる抗PD-1抗体の抗腫瘍効果増強が報告されており、進行胃がんに対するレンバチニブ/ペムブロリズマブ併用療法の単群第II相試験であるEPOC1706試験(NCT03609359)の結果が報告された。本試験は進行胃がんを対象とし、レンバチニブ(20mg/日内服)とペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)の併用療法を病勢進行や毒性などの理由による治療中止まで継続するスケジュールで実施された。主要評価項目は担当医判定による全奏効割合(ORR)である。29例が登録され、患者背景は年齢中央値=70歳、男性=90%、腸型/びまん型=52/48%、初回治療/2次治療=48/52%、HER2陽性=17%、dMMR/pMMR=7/93%、EBV陽性=3%、PD-L1 CPS≧1/<1=66/34%であった。腫瘍縮小効果は非常に良好であり、主要評価項目である担当医判定によるORRはCR1例を含む69%(95%CI:48~85%)、病勢制御割合(DCR)は100%(95%CI:88~100%)であった。無増悪生存期間中央値は7.1ヵ月(95%CI:4.2~10.0)、生存期間中央値には至っていなかった。レンバチニブによる有害事象としてGrade3以上の高血圧(38%)、蛋白尿(17%)を認め、ほとんどの症例においてレンバチニブの1段階以上の減量が必要であったが、減量により毒性はマネジメント可能であった。コメント進行胃がんに対する、非常に切れ味良好な腫瘍縮小効果を認める新規併用療法である一方、immatureではあるがその効果の継続が治療継続期間中央値6.9ヵ月(範囲:2.8~12.0)、PFS 7.1ヵ月と限られており、今後の追加報告が期待される。ATTRACTION-2試験 3年フォローアップ:A phase 3 Study of Nivolumab in Previously Treated Advanced Gastric or Gastric Esophageal Junction Cancer(abstract #383)Chen LT, et al.2レジメン以上の化学療法に対して不応の切除不能進行再発胃がん・接合部がんを対象にニボルマブの有効性をプラセボ比較で検証した第III相試験であるATTRACTION-2試験の3年追跡結果報告である。2017年のLancet誌報告時のニボルマブ投与群の生存期間中央値(mOS)は5.26ヵ月、1年生存割合(1y-OS)は26%であり、2018年のESMOで発表された2年追跡結果における2y-OSは10.6%、2年無増悪生存割合(2y-PFS)は3.8%であった。今回新たに1年間の追加観察期間を設けた報告において、ニボルマブ群の3y-OSは5.6%、3y-PFSは2.4%であった。ニボルマブ群の15例とプラセボ群の3例が3年以上の長期生存を認めており、プラセボ群の3例のうち2例は病勢進行後にニボルマブによる加療を受けていた。ニボルマブ群のうち、最良効果(BOR:best overall response)がCRもしくはPRであった32例(9.7%)の生存期間中央値は26.88ヵ月であり、1y-OSは87.1%、2y-OSは61.3%、3y-OSは35.5%であった。BORがSDであった76例(23%)の生存期間中央値は8.87ヵ月であり、1y-OSは36.1%、2y-OSは7.4%、3y-OSは3.0%であった。ニボルマブ群のうち55.5%の症例において免疫関連の有害事象を認め、これら免疫関連有害事象を認めた症例のmOSは7.95ヵ月であり、認めなかった症例のmOSは3.81ヵ月であった(HR=0.49)。コメント今回、3年の観察期間を設けた報告によりニボルマブ投与によって3年以上の長期生存を得られる症例が5%程度いることが示唆され、またBORがCRもしくはPRとなりえる約10%程度の症例においては、約3分の1において3年以上の生存が得られる可能性が示唆された。毒性に関して、ほとんどの場合、既報のごとくニボルマブによる治療開始後3ヵ月以内に発生していたが、なかには治療開始後2年以上の経過の後に免疫関連有害事象として肺障害や腎障害が出現したケースも認め、ニボルマブ投与に当たってはその投与終了後にも免疫関連有害事象の出現に関して引き続き注意が必要であることが示唆された。MSI status in > 18,000 Japanese pts:Nationwide large-scale investigation of microsatellite instability status in more than 18,000 patients with various advanced solid cancers.(abstract #803)Akagi K, et al.本邦におけるMSI-Hの頻度に関して、2018年12月~2019年11月の1年間にMSI検査キット(FALCO)による解析が実施された2万5,789例を対象に検討。2万5,563例(99.1%)で解析可能であり、うち959例(3.75%)がMSI-Hであった。MSI-Hは10~20代の若年者(7.43%)および80代以上の超高齢者(5.77%)において認める傾向が強く、また既報のごとく早期病期(StageI~III)に比べ進行期(StageIV)においてその頻度は少なかった(StageI~III:StageIV=6.02%:3.05%)。がん種別のMSI-Hの頻度は子宮体がん(17.00%)、小腸がん(9.23%)、胃がん(6.73%)、十二指腸がん(5.79%)、大腸がん(3.83%)、NET/NEC(3.60%)、前立腺がん(3.04%)、胆管がん(2.26%)、胆嚢がん(1.55%)、肝がん(1.15%)、食道がん(1.00%)、膵がん(0.74%)であった。コメントMSI-H腫瘍に関して、既報と照らし合わせても最も多くの対象で検討した非常に貴重な報告であり、日本人MSI-H腫瘍の状況を反映していると考える。DAY2 Cancers of the Pancreas, Small Bowel, and Hepatobiliary TractOral SessionPROs from IMbrave150試験:Patient-reported Outcomes From the Phase 3 IMbrave150 Trial of Atezolizumab + Bevacizumab Versus Sorafenib as First-line Treatment for Patients With Unresectable Hepatocellular Carcinoma.(abstract #476)Galle PR, et al.切除不能肝細胞がんの1次治療例を対象に、標準治療であるソラフェニブに対するアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)/ベバシズマブ(抗VEGF抗体)併用療法の優越性がESMO-Asia 2019において報告されており、主要評価項目である生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の両エンドポイントにおいてアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法が有意に良好であった(OS-HR:0.58、p=0.0006、PFS-HR:0.59、p<0.0001)。今回、副次評価項目である患者報告(PRO:patient-reported outcomes)によるQOL評価、身体機能評価、症状評価(疲労感、疼痛、食欲低下、下痢、黄疸)の結果が発表された。評価はEORTC QLQ-C30およびQLQ-HCC18により行われ、治療中は3週ごとに、治療中止後は3ヵ月ごとに1年間実施された。92%以上の症例においてアンケートが回収可能であり、QOL、身体機能、症状の悪化までの期間(TTD:time to deterioration)はいずれもアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法においてソラフェニブより良好であった。コメント切除不能肝細胞がんに対する1次化学療法において、新たな標準療法であるアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法のソラフェニブに対する有効性および安全性が報告された。本邦においても早期の臨床導入に期待したい。Poster SessionStudy117:A Phase 1b Study of Lenvatinib Plus Nivolumab in Patients With Unresectable Hepatocellular Carcinoma(abstract #513)Kudo M, et al.切除不能肝臓がんに対する標準治療の一つであるレンバチニブと、ソラフェニブ治療後の治療選択肢であるニボルマブの併用療法の至適投与量を検討した第Ib相試験である。本試験はBCLC(Barcelona Clinic Liver Cancer) Stage B(肝動脈化学塞栓療法が不応)またはStage C、Child-Pugh分類Aの切除不能肝臓がん症例を対象に、レンバチニブ(12mgもしくは8mg/day)+ニボルマブ(240mg、2週ごと)併用療法を投与した。本試験はPart1とPart2で構成され、Part1では用量制限毒性(DLT:dose-limiting toxicities)を評価目的に6例登録し、Part2はexpansion cohortとして全身化学療法歴のない切除不能肝臓がん患者が24例登録された。主要評価項目は忍容性および併用療法の安全性である。患者背景は年齢中央値=70歳、男性=80%、BCLC Stage B/C=57%/43%、Child-Pugh 5/6=77%/23%、B型肝炎/C型肝炎/アルコール性/不明/その他=20%/20%/30%/23%/6.7%、肝外病変あり/なし=43%/57%である。レンバチニブによる毒性中止を2例(6.7%)に認め、ニボルマブによる毒性中止を4例(13.3%)に認めた。頻度の高い有害事象として手足症候群(60%)、発声障害(53%)、食欲低下(47%)、下痢(47%)、蛋白尿(40%)を認めたが、Grade3以上の有害事象は手足症候群(3.3%)、発声障害(3.3%)、食欲低下(3.3%)、下痢(3.3%)、蛋白尿(6.7%)であった。担当医評価による腫瘍縮小割合(ORR)は76.7%であり、Part2登録例における腫瘍縮小が得られるまでの期間は1.87ヵ月であり、無増悪生存期間(PFS)中央値は7.39ヵ月であった。コメント切除不能肝臓がんの治療に関して、マルチキナーゼ阻害薬(レゴラフェニブ、レンバチニブ)と免疫check point阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)の併用療法が検討されており、本学会においてもほかにレゴラフェニブ/ペムブロリズマブ併用療法に関する発表があった(#564)。その中でもレンバチニブ/ペムブロリズマブ併用療法に関しては、AACR2019で発表された第Ib相試験であるKEYNOTE-524/Study 116試験(#CT061/18)の中間解析結果に基づき、切除不能肝臓がんの1次治療としてFDAよりBreakthrough Therapy指定を受けており、今後の追加報告が期待される。PACS-1 study:A Multicenter Clinical Randomized Phase II Study of Investigating Duration of Adjuvant Chemotherapy with S-1 (6 versus 12 months) for Patients with Resected Pancreatic Cancer. (abstract #669)Yamashita Y, et al.本邦における膵がん術後補助化学療法としてのS-1至適投与期間を検討した無作為化第II相試験。本試験は膵がん切除後例(T1-4、N0-1、M0)を対象とし、術後補助化学療法としてS-1内服を半年間投与する群と1年間投与する群に1:1の割合で割り付けされた。主要評価項目は2年間の生存割合(2y-OS)である。両群間の患者背景に偏りはなかった。術後S-1半年投与群は64.7%において治療完遂が可能であったが、1年間投与群においては44.0%が完遂可能であった。生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)において、統計学的有意差はないものの術後S-1投与期間は半年間群のほうが1年間群より良好な傾向であった。(2年OS:半年間群 vs.1年間=71% vs.65% [HR=1.239、 p=0.3776 ])、( 2年DFS:半年間群 vs.1年間=57% vs.51%[HR=1.182、p=0.3952]) コメント膵がん術後補助化学療法としてのS-1至適投与期間は6ヵ月と考える。DAY3 Cancers of the Colon, Rectum, and AnusOral SessionJCOG1007(iPACS):A randomized phase III trial comparing primary tumor resection plus chemotherapy with chemotherapy alone in incurable stage IV colorectal cancer:JCOG1007 study(abstract #7)Kanemitsu Y, et al.切除不能StageIV大腸がんのうち無症状症例に対して、原発切除を化学療法に先行して行うことの優越性を検証した無作為化第III相試験である。本試験は腫瘍による狭窄などの症状を有さず、待機手術としての原発切除を予定できる治癒切除不能のStageIV大腸がん初回治療例を対象とし、標準治療であるA群:オキサリプラチンベース(FOLFOX/CapeOX)+ベバシズマブ併用療法群とB群:原発切除後にオキサリプラチンベース(FOLFOX/CapeOX)+ベバシズマブ併用療法を受ける群に無作為割り付けされた。主要評価項目は全生存期間である。当初770例を目標に試験が開始されたが、症例登録が伸びなかったために統計設定が見直され280例を登録目標とされたが、160例登録時の初回中間解析の結果、試験群であるB群の生存曲線が対照群であるA群を下回っていたため途中中止となり今回結果が発表された。両群間の患者背景に偏りはなかった。主要評価項目である全生存期間においてA群:B群=26.7ヵ月:25.9ヵ月(HR=1.10、one-sided p=0.69)であり、B群の優越性は認めなかった。副次評価項目であるPFSはA群:B群=12.1ヵ月:10.4ヵ月(HR=1.08)であり、原発切除先行群(B群)において術後死亡例を3例(4%)に認めた。コメント今回の結果より、腫瘍随伴症状を有さないStageIV大腸がんに対して、一律に原発切除を化学療法に先行して行うことは推奨されず、同症例に対しては化学療法の先行を検討すべきと考える。同様の対象に対して、欧州において無作為化比較試験(SYNCHRONOUS試験-ISRCTN30964555、CAIRO4試験)が進行中であり、今後これらの報告にも注意が必要と考える。BEACON CRC QoL:Encorafenib plus cetuximab with or without binimetinib for BRAF V600E-mutant metastatic colorectal cancer:Quality-of-life results from a randomized, three-arm, phase III study versus the choice of either irinotecan or FOLFIRI plus cetuximab(abstract #8)Kopetz S, et al.治療歴を有するBRAF V600E遺伝子変異陽性進行再発大腸がん例に対する治療としてMEK阻害薬であるビニメチニブ、BRAF阻害薬であるエンコラフェニブおよび抗EGFR抗体であるセツキシマブの3剤併用療法と、エンコラフェニブとセツキシマブの2剤併用療法、セツキシマブと化学療法の併用(対照群)を比較する第III相試験であるBEACON CRC試験における患者報告によるQOL評価と最新の生存データが発表された。本試験の結果はすでに2019年9月にNEJM誌において報告されており、全生存期間の中央値は対照群で5.4ヵ月、3剤併用群で9.0ヵ月(HR=0.52、pレポーター紹介インデックスページへ戻る

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リンパ節転移陽性の早期TN乳がん、術前にペムブロリズマブ追加でpCR改善(KEYNOTE-522)/SABCS2019

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前補助化学療法にペムブロリズマブを追加すると病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善したことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告されている(KEYNOTE-522試験)。12月10~14日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)では、本試験のサブグループにおけるpCR率が報告され、リンパ節転移陽性例においてもpCR率が有意に改善したことが示された。英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が発表。 本試験は、2017年3月~2018年9月に新規に診断された21カ国の18歳以上の転移のない早期TNBC患者1,174例が対象。術前補助療法として、ペムブロリズマブ+化学療法(ペムブロリズマブ群)またはプラセボ+化学療法(プラセボ群)に2:1に無作為に割り付けた。術前補助療法後、根治的手術を実施、適応があれば放射線療法を実施した。その後、再発または許容できない毒性が発現するまで、ペンブロリズマブまたはプラセボを投与した。主要評価項目は、pCRおよび無イベント生存(EFS)。 ESMO2019では、PD-L1の発現に関係なく、ペムブロリズマブ群(64.8%)はプラセボ群(51.2%)と比べpCR率が有意に高いことが報告された。今回のサブグループ解析ではリンパ節転移陽性例においても、ペムブロリズマブ群(64.8%)がプラセボ群(44.1%)に比べ有意に高いことが示された。

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HR+乳がんへの術後化療、ゲノム解析結果に年齢も加味すべきか(MINDACT)/SABCS2019

 ホルモン受容体(HR)陽性乳がんにおいて、多重遺伝子解析を用いた術後化学療法の適応有無の判断に、年齢も考慮に入れる必要がある可能性が示唆された。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、ベルギー・ブリュッセル自由大学のMartine J. Piccart氏らによるMINDACT試験の計画外サブグループ解析の結果が発表された。 多重遺伝子解析結果と年齢、化学療法の適応の関係については、TAILORx試験の2次分析からの報告がある1)。MINDACT試験で定義された臨床リスクとの統合に基づく解析が行われ、21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)による高再発スコア(高RS;26〜100点)は、40〜50歳の女性における高臨床リスクおよびRS16~20、または臨床リスクとは独立してRS21~25に相当する可能性が示唆され、9年時の遠隔再発リスクにおける化学療法追加の無視できないベネフィットが示された。 今回の報告は、上記の結果を受けて計画外に実施されたMINDACT試験のサブグループ解析による。MINDACT試験は、HR陽性HER2陰性乳がん患者を対象に、術後補助化学療法の対象の選択において、Adjuvant! Onlineに基づく臨床リスク(c)と70遺伝子アッセイ(Mammaprint)に基づくゲノムリスク(g)の臨床的有用性を前向きに評価する無作為化第III相試験。本解析は無作為化によって割り当てられた治療群(化学療法ありまたは化学療法なし)ごとに行われ、MINDACT試験の主要評価項目が使用された(5年時の無遠隔転移生存率[DMFS])。 主な結果は以下のとおり。・登録された乳がん患者6,693例のうち、HR陽性は5,402例(81.7%)。・そのうち、臨床リスクが高く(cH)/ゲノムリスクが低い(gL)のは1,358例で、年齢別の内訳は40歳未満が53例、40~50歳が411例、50歳超が894例であった。・40歳未満のグループはイベント発生が少なく(2例)、結果は示されなかった。・40~50歳の399例、50歳超の865例が化学療法ありまたは化学療法なしの両群に無作為に割り付けられた。・腫瘍サイズの中央値は、両年齢層で2.2cmであった(T1/T2は40~50歳:35.9%/58.4%、50歳超:41.2%/55.5%)。リンパ節転移の有無は、両年齢層の約半数で陰性であった(40~50歳:50.9%、50歳超:51.8%)。大多数の患者がグレード2またはグレード3の腫瘍を有していた(40〜50歳:グレード2が63.9%/グレード3が26.6%、50歳超:66.6%/26.9%)。・40~50歳では、化学療法ありの203例中8例でイベントが発生し、Kaplan-Meier法による5年DMFSは96.2%(95%信頼区間[CI]:91.5~98.3)。化学療法なしの196例中16例でイベントが発生し、5年DMFSは92.6%(95%CI:87.7~95.7)であった。・50歳超では、化学療法ありの425例中23例でイベントが発生し、5年DMFSは95.2%(95%CI:92.4~97.0)。化学療法なしの440例中23例でイベントが発生し、5年DMFSは95.4%(95%CI:92.8~97.1)であった。 研究者らは、閉経後の患者は主にアロマターゼ阻害薬が投与されており、若い女性では補助内分泌療法として主にタモキシフェンが投与され、LHRHアナログが投与されていたのは7.0%のみであったことを明らかにした。本解析のイベント数の少なさと信頼区間の幅の広さ、計画外のサブグループ解析であることの限界に触れたうえで、それにもかかわらずTAILORx試験と同様の傾向が示され、(おそらく閉経前に分類される)40〜50歳およびcH/gLリスクの患者において、タモキシフェン単独では過小治療となる可能性が示唆されたと結論づけている。 また、化学療法を追加することによるベネフィットが年齢依存性となる理由として、卵巣機能抑制(OFS)によるものである可能性を指摘。ただし、最適な内分泌療法(すなわち、OFS+タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬など)の場合の化学療法の付加価値は、MINDACTまたはTAILORx試験の結果で評価することはできず、さらなる研究が必要としている。

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ESMO2019レポート 消化器がん

レポーター紹介胃がんに対する術前化学療法の意義―PRODIGY試験とRESOLVE試験切除可能な進行胃がんに対する治療は本邦では、S-1、CapeOx、SOX、S-1+ドセタキセル(DS)による術後補助化学療法が標準的治療の位置付けである。欧州では、FLOT4試験の結果、術前術後に3剤併用療法を行うことが標準となった。今回、アジアから2つの術前治療に関する第III相試験が発表された。PRODIGY試験は、韓国で実施されたcT2-3N+M0またはcT4NanyM0に対する術前DOS療法+手術+術後S-1療法(以下、CSC群)の、手術+術後S-1療法(以下、SC群)に対する優越性を検証する第III相無作為化比較試験である。計530例が登録され、最終的な解析対象(FAS)は484例であった。年齢中央値は両群とも58歳、食道胃接合部原発が5%程度含まれていた。CSC群におけるGrade3以上の治療関連有害事象として、好中球減少12.6%、発熱性好中球減少9.2%、下痢5.0%を認め、術前治療中の治療関連死は0.8%であった。手術におけるR0切除割合は、CSC群(238例)96.4% vs.SC群(246例)85.8%(p<0.0001)であった。CSC群では病理学的完全奏効(CR)が10.4%(p<0.0001)で認められた。主要評価項目の3年無増悪生存期間(PFS)は、CSC群66.3% vs.SC群60.2%(HR:0.70、95%CI: 0.52~0.95、p=0.0230)であった。ITT解析でもHR:0.69、6ヵ月のランドマーク解析でもHR:0.71と一貫した結果であった。RESOLVE試験は、中国で行われたcT4a/N+M0またはcT4bNanyM0に対する、術後XELOX、術後SOX、術前SOX+手術+術後SOXの3群比較試験である。計1,094例が登録され、年齢中央値は59~60歳、食道胃接合部原発が35~38%含まれていた。術後化学療法実施割合は、各群66~70%であった。3年無病生存(DFS)は、術後XELOX群と比較して、術前術後SOX群で優越性が示され(54.78% vs.62.02%、HR:0.79、95%CI:0.62~0.99、p=0.045)、術後SOX群の非劣性が示された(54.78% vs.60.29%、HR:0.85、95%CI:0.67~1.07、Non-Inferiority margin:1.33)。以上、中国および韓国から2つの第III相試験が報告され、術前化学療法の優越性が検証された。試験の質も大きな問題はないと考えられ、本邦の実地臨床にも外挿できる可能性が高いと考えられる。ただ、中国の試験はcT4と局所進行症例の中でもより進行した集団が対象であること、韓国の試験は優越性を示すも、PFS曲線はほぼR0切除率の差がPFSの差につながっていることが示唆されることを考慮すれば、すべての切除可能胃がんで術前化学療法が必要とは言い切れないだろう。ただ、発表からは術前化学療法の有害事象も許容範囲内で、術後合併症の発生割合も同程度であったことから、大きなデメリットが感じられない。本邦では、JCOG1509試験、JCOG1704試験の2つの胃がんにおける術前化学療法を検討する前向き試験が実施中である。前者はcT3-4N+M0(肉眼型大型3型および4型を除く)を対象に術前S-1+オキサリプラチン(OX)療法の優越性を無治療群と比較する第III相試験、後者はBulky Nがあるものを対象にしたDOS療法を評価する第II相試験である。これらの試験の結果を待つか、中国・韓国のエビデンスを外挿するか、もう少し国内での議論が必要かもしれない。BRAF V600E変異型大腸がんに対する新規分子標的治療―BEACON試験切除不能BRAF V600E変異陽性大腸がんは、大腸がんの約5%に認められ、きわめて予後不良である。大腸がん治療ガイドラインでは、1次治療においてFOLFOXIRI+ベバシズマブ療法が推奨レジメンの1つとなっているが、2次治療以降には有効な治療が乏しいのが現状である。BRAF変異陽性メラノーマや非小細胞肺がんではBRAF阻害薬+MEK阻害薬の有効性が示されており、同様の治療戦略が大腸がんでも期待されていた。BEACON試験は、BRAF V600E変異を有する切除不能・進行再発大腸がんにおいて、1次治療もしくは2次治療後に腫瘍進行を認めた患者を対象とした無作為化第III相試験である。対象患者665例は、エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブの3剤併用療法群、エンコラフェニブ+Cmabの2剤併用療法群、FOLFIRI+Cmab療法またはIRI+Cmab療法のコントロール群の3群に、1:1:1で無作為に割り付けられた。OS期間中央値は、3剤併用療法群vs.コントロール群で9.0ヵ月vs.5.4ヵ月(p<0.0001)、2剤併用療法群vs.コントロール群で8.4ヵ月vs.5.4ヵ月(p<0.0003)、最初の331例のORRは3剤併用療法群vs.コントロール群で26% vs.2%(p<0.0001)、2剤併用療法群vs.コントロール群で20% vs.2%(p<0.0001)であり、主要評価項目を達成した。相対用量強度(RDI)は3剤併用療法群では、エンコラフェニブ 91%、ビニメチニブ 87%、Cmab 91%、2剤併用療法群では、エンコラフェニブ 98%、Cmab 93%、コントロール群では74~85%であった。Grade3以上の有害事象割合は、3剤併用療法群58%、2剤併用療法群50%、コントロール群61%であり、3剤併用療法群で下痢10%、貧血11%が高く、全Gradeの有害事象において2剤併用療法群で筋肉痛(13%)、関節痛(19%)、頭痛(19%)などの頻度がやや高かった。QOLに関してはQLQ-C30、FACT-Cにおいては差を認めなかった。以上から、3剤併用療法群において良好な有効性を認め、高いRDIを維持しながらも、管理可能な有害事象のプロファイルとQOLの維持を認めた。以上から、今後切除不能BRAF V600E変異陽性大腸がんにおいて、本併用療法は2次治療以降の標準治療として臨床導入されることが期待される。3剤併用療法で有効性がやや高く、有害事象も2剤併用療法とプロファイルが異なるだけでQOLに差がないことからまずは3剤併用でトライしてみることが勧められる。Grade3以上の消化器毒性は3剤併用療法で高いことから、その場合には2剤併用療法もオプションとなりえるだろう。今後メラノーマ同様に1次治療や補助療法での有効性にも期待したいところである。現状、臨床現場でも困っている患者さんのために、早急な薬事承認に期待したいが、まだ1年程度先になるだろう。それまでは、拡大治験の実施や患者申出制度の利用に活路を見いだしたいところである。ハイリスクStageII結腸がんに対する補助療法―ACHIEVE-2試験リンパ節転移のないStageII結腸がんでは、臨床病理学的な再発ハイリスク因子を持つ場合にのみ術後補助化学療法が推奨され、レジメンはCAPOX/FOLFOX療法やフルオロピリミジン単独療法が6ヵ月間行われる。StageIIIにおいて、IDEA collaborationの結果から、CAPOX/FOLFOX療法の3ヵ月投与が治療選択肢として確立されたことからハイリスクStageII結腸がんでも同様の検討が行われた。2019年ASCOでIDEA collaborationに参加した6つの臨床試験のうち、4つの試験(SCOT、TOSCA、ACHIEVE-2、HORG)の統合解析が発表され、主要評価項目である5年無病生存率(DFS)は非劣性が証明されず、negative studyであった。しかし、CAPOX群では3ヵ月と6ヵ月で大きな差を認めず、ハイリスクStageII症例の術後補助化学療法を行う場合でも、CAPOXなら3ヵ月への短縮が可能と結論付けていた。今回のESMOでは、本邦での試験であるACHIEVE-2試験の結果が発表された。514例が登録され、ハイリスク因子はT4 36%、低分化腺がん10~13%、郭清リンパ節転移個数不十分13%、腸閉塞発症19~20%、脈管侵襲陽性87~88%であった。観察期間中央値約36ヵ月の時点で、3年DFSは3ヵ月群88.2% vs.6ヵ月群87.9%であった(HR:1.12、95%CI:0.80~1.57)。レジメン別解析では、FOLFOX群(n=82)3ヵ月群88.6% vs.6ヵ月群85.7%、CAPOX群(n=432)3ヵ月群88.2% vs.6ヵ月群88.4%であった。サブグループ解析では、T4群では3ヵ月群76.2% vs.6ヵ月群79.7%(HR:1.28、95%CI:0.84~1.95)であった。本試験結果の解釈は非常に悩ましい。もともとIDEA collaborationは、統合解析が主体となっていることから、個々の試験の解釈をするときは、統合解析の結果と合わせて評価することが必要である。3年DFSで大きな差はないが、HRが1.12と少し1を超えている点は気になるところである。とくに、T4集団での解析では少数例の検討とはいえ、HR:1.28と1を大きく超えている。全体の3年DFSがlow risk StageIIIよりも悪いことも鑑みると、T4集団ではCAPOX 6ヵ月を選択することが妥当という印象を持った。スペシャルセッションの最後には、登壇者からStageII CCの補助療法のアルゴリズムが提案されたが、私自身はあまり納得のいくものではなかった。国内でのコンセンサス形成には少し時間がかかると思われた。まとめ今回のESMOでも、多くの新しいエビデンスに巡り合うことができた。胃がん、大腸がんでは肺がんなどに比べ新薬の登場が遅れており、その間に周術期治療の開発がトピックスとなっている印象を受けた。日本人の発表やディスカッサント登壇も多く、世界と一緒に新しい治療方針を議論している実感が得られた。腫瘍医としての矜持を持ち、目の前の患者さんにこの新しいエビデンスをどう適用させるかが肝要である。その過程で、また新たなクリニカルクエスチョンが生じ、それに答えるべく臨床試験に取り組む…この繰り返しの結果が今日までのがん治療の進歩であり、令和の時代にも継続していかねばならないだろう。

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大腸がん術後補助化学療法、ctDNAによる評価(A GERCOR-PRODIGE)/ESMO2019

 フランス・European Georges Pompidou HospitalのJulien Taieb氏は、StageIIIの結腸がんでの術後補助化学療法では血液循環腫瘍DNA(ctDNA)が独立した予後予測因子であり、ctDNAが陽性か否かにかかわらず、術後補助化学療法は6ヵ月のほうが無病生存期間(DFS)が良好な傾向が認められたと欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告した。 今回の結果はIDEA FRANCE試験に参加した患者の血液検体を用いたA GERCOR-PRODIGE試験に基づくもの。IDEA FRANCE試験は、大腸がんの術後補助化学療法としてのFOLFOX療法またはCapeOX療法の投与期間について、3ヵ月間と6ヵ月間を比較した6つの前向き第III相無作為化試験を統合解析したIDEA collaborationに含まれる試験の1つ。 IDEA collaboration では全体として6ヵ月投与群に対する3ヵ月投与群の非劣性は確認されなかった。とくにCapeOX療法の患者の低リスク群では、3ヵ月投与は6ヵ月間投与と同様の有効性を示した。ただ、FOLFOX療法の患者の高リスク群では、6ヵ月間投与群でより高いDFSが得られたという結果になっている。 A GERCOR-PRODIGE試験の対象はIDEA FRANCE試験参加者のうち805例。検体採取は化学療法施行前にEDTA採血管を用いて行われている。検体の解析はWIF1遺伝子と神経ペプチドY(NPY)のメチル化マーカーをデジタルPCRによって解析した。最終的に805例のうち、ctDNA陰性群は696例、ctDNA陽性群は109例であった。 主な結果は以下のとおり。・2年DFS率はctDNA陽性群が64.12%、ctDNA陰性群が82.39%でctDNA陽性群は予後不良であった(ハザード比[HR]:1.85、95%信頼区間[CI]:1.31~2.61、p<0.001)。・多変量解析では、ctDNA陽性(HR:1.85、95%CI:1.31~2.61、p=0.0005)、N2(≧4)(HR:2.09、95%CI:1.59~2.73、p<0.0001)は予後不良因子であった。・治療期間別にみると、6ヵ月投与は3ヵ月投与に比べ予後が良好だった(HR:0.6、95%CI:0.45~0.78、p=0.0002)・ctDNA陽性・陰性別と治療期間の関係では、ctDNA陽性群で治療期間3ヵ月間でのDFS率が最も低かった(p<0.0001)。・T4またはN2(≧4)あるいはその両方を有する高リスクStage IIIではctDNA陽性群のDFS率が有意に低かった(p<00001)。・T1-3かつN1(1-3)の低リスクStage IIIではctDNA陽性群とctDNA陰性群の間でDFS率に有意差は認めなかった(p=0.07)。 今回の結果についてTaieb氏は「術後補助化学療法の3ヵ月間はとりわけctDNA陽性結腸がん患者では不十分なアウトカムに関連している可能性がある」と述べている。

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大腸がん、末梢神経障害を考えるならCAPOX3ヵ月療法

 これまでに、大腸がんに対するFOLFOX療法およびCAPOX療法の3ヵ月投与の6ヵ月投与に対する非劣性は報告されているが、オキサリプラチン併用化学療法は、末梢性感覚ニューロパチー(PSN)と関連することが知られている。国立がん研究センター東病院の吉野孝之氏らは、StageIII大腸がん患者を対象とした無作為化非盲検第III相臨床試験「ACHIEVE試験」において、長期持続性PSNの発生率は6ヵ月投与法より3ヵ月投与法で、またmFOLFOX6療法よりもCAPOX療法で、有意に低いことを明らかにした。治療期間を短縮しても有効性の主要評価項目である無病生存期間(DFS)に差はなかったことから、著者は「特に低リスクの患者には、CAPOX療法3ヵ月投与が最適な治療選択肢となるだろう」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月12日号掲載の報告。 研究グループは、StageIII大腸がん治癒切除例に対する術後補助化学療法としてのmFOLFOX6療法またはCAPOX療法について、3ヵ月投与法の6ヵ月投与法に対するDFSの非劣性を検討するとともに、持続性PSNを評価する検討を行った。 2012年8月1日~2014年6月30日に、アジア人患者1,313例を両投与法群に無作為に割り付けた。レジメンの選択は担当医の判断に委ねられた。データの解析は、2017年7月~2018年6月に行われた。 主要評価項目はDFS、副次評価項目は3年後までのPSNおよび全生存期間であった。 主な結果は以下のとおり。・無作為化された1,313例(性別:女性651例、年齢:平均66歳、範囲28~85歳)のうち、22例は治療を受けなかった(10例は登録後2週以内に治療を開始できず、7例は同意撤回、5例はその他の理由)。・治療を受けた1,291例(3ヵ月群650例、6ヵ月群641例)のうち、969例(75%)がCAPOX療法を受けた。・6ヵ月群に対する3ヵ月群のDFSのハザード比は0.95(95%CI:0.76~1.20)であった。・同ハザード比は、mFOLFOX6群で1.07(95%CI:0.71~1.60)、CAPOX群で0.90(95%CI:0.68~1.20)であり、また低リスク(TNM分類T1~3およびN1)群で0.81(95%CI:0.53~1.24)、高リスク(T4またはN2)群で1.07(95%CI:0.81~1.40)であった。・3年間持続する全GradeのPSNは、3ヵ月群9.7% vs.6ヵ月群24.3%であった(p<0.001)。・3年間持続するPSNの発現率は、mFOLFOX6療法よりCAPOX療法のほうが、3ヵ月群および6ヵ月群のいずれにおいても有意に低かった(3ヵ月群:7.9% vs.15.7%[p=0.04]、6ヵ月群:21.0% vs.34.1%[p=0.02])。

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高齢者乳がん、カペシタビン術後療法の10年評価/JAMA Oncol

 カペシタビンの早期高齢乳がん術後補助化学療法における標準療法に対する非劣性を検討した「CALGB 49907試験」の長期10年の追跡結果が、米国・ノースカロライナ大学Lineberger Comprehensive Cancer CenterのHyman B. Muss氏らにより発表された。Journal of Clinical Oncology誌2019年9月10日号掲載の報告。 同試験の主要解析の結果は、追跡期間中央値2.4年後に報告されており、標準術後化学療法は、カペシタビンとの比較において有意に良好な無再発生存期間(RFS)および全生存期間(OS)を示していた。今回、同グループは、追跡期間中央値11.4年後の結果をアップデート報告した。 CALGB 49907試験では、65歳以上の早期乳がん患者を、標準術後補助化学療法群(担当医がシクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル、もしくはシクロホスファミド+ドキソルビシンのいずれかを選択)またはカペシタビン群に無作為に割り付け追跡が行われた。ベイジアン・アダプティブ・デザインを用いて試験サンプルサイズを確認し、カペシタビンの非劣性検定を行った。主要評価項目はRFSであった。 主な結果は以下のとおり。・試験は、初回サンプルサイズ評価後、被験者633例に達した時点で終了となった。・RFSは、標準化学療法群で有意に延長したままであった。・10年時点で、RFSは標準化学療法群56%、カペシタビン群は50%であった(HR:0.80、p=0.03)。・乳がん特異的生存率は、それぞれ88%、82%であった(HR:0.62、p=0.03)。・より長期の追跡で、標準化学療法はホルモン受容体陰性の患者では依然としてカペシタビン群に対して優れていたが(HR:0.66、p=0.02)、ホルモン受容体陽性患者では有意差は認められなかった(HR:0.89、p=0.43)。・集団全体の死亡率は43.9%で(乳がんによる死亡13.1%、乳がん以外による死亡16.4%、原因不明の死亡14.1%)、2次性非乳がんの発生は14.1%であった。

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ASCO2019レポート 消化器がん(肝胆膵)

レポーター紹介ASCO会場のメインの通りに掲げられたテーマ2019年度のASCOが、2019年5月31日~6月4日の5日間、今年もシカゴのマコーミックプレイスにて開催された。毎年同じ開催場所である。今年のテーマは「Caring for Every Patient, Learning from Every Patient」で、患者のためのケア、患者から学ぶことを重要視した学会であった。そして、今年の肝胆膵領域の発表はOral presentationも多く、Plenary sessionで採択された演題もあり、非常に興味深い発表が多かった年で、いわゆる豊作の年となった。膵がんPOLO試験今回のASCOで、肝胆膵領域の最も注目すべき演題は、膵がんに対するPARP阻害薬であるオラパリブのPOLO試験であろう。生殖細胞系(Germline)BRCA1またはBRCA2の変異を有する転移性膵がん患者に対して、1次治療としてプラチナ製剤を含む化学療法を16週以上行い、抗腫瘍効果でCR、PRまたはSDが得られ、増悪を認めていない患者を、オラパリブ300mgを1日2回内服する群と、プラセボを内服する群に3:2にランダムに割り付けて、がんの増悪または忍容できない有害事象を認めるまで治療を継続した。主要評価項目は、RECIST v1.1での中央判定による無増悪生存期間であった。オラパリブ群に92例、プラセボ群に62例がランダム割り付けされた。主要評価項目である無増悪生存期間(中央値)はオラパリブ群7.4ヵ月、プラセボ群3.8ヵ月で、ハザード比は0.53(95%信頼区間[CI]:0.35~0.82)であり、有意に良好な結果(p=0.0038)が示された。生存期間はまだ十分に経過観察しえた結果ではないが、中央値でオラパリブ群18.9ヵ月、プラセボ群18.1ヵ月であり、ハザード比も0.91(95%CI:0.56~1.46)と有意な差は認めなかった(p=0.68)。有意差を認めなかった理由として、プラセボ群の後治療でPARP阻害薬を投与された患者が14.5%存在するなどの後治療の影響や十分な経過観察ができていないことが指摘されていた。有害事象は、疲労、悪心、下痢、腹痛、貧血、食欲低下などで、Grade 3以上の有害事象は貧血と疲労であり、忍容性は良好と判断された。また、プラチナ製剤に特有の末梢神経障害はあまり認めないことが、プラチナ製剤投与後の維持療法として使用するうえで好ましい点のように思われた。今後、BRCA1または2の遺伝子変異を有する膵がん患者には、まずプラチナ製剤を含むレジメン、たとえば、FOLFIRINOXやゲムシタビン+シスプラチンなどによる治療を開始し、4ヵ月以降でSD以上の抗腫瘍効果が得られていたら、維持療法としてオラパリブを投与することが標準治療になるものと思われる。本試験の結果は、日本では明日からの診療につながる話ではないが、その体制整備をしておく必要がある。まず、germline BRCA1/2を調べることから始まる。初回治療開始前にgermline BRCA1/2の変異の有無を調べてから結果が戻ってくるまでの時間を考慮すると、診断の早い段階で同意を取ったうえで、採血の検査をオーダーする必要がある。また、生殖細胞系変異を見つけることは、すなわち遺伝カウンセリングの体制整備が重要になる。日本は本試験に参加しておらず、われわれ肝胆膵領域の臨床腫瘍医にPARP阻害薬の経験が乏しいことが問題点であり、十分にPARP阻害薬のマネジメントに精通しておく必要がある。また、germline BRCA1/2の変異は膵がん患者の4~7%と言われており、プラチナ製剤とオラパリブが有効な対象はまだまだ限られた対象であることも理解しておくことが必要である。Plenary sessionの会場の光景:全部でモニターが12台、演者がかなり遠くに見える。このASCOのPlenary sessionは何千人入るかわからないほどの巨大な会場で行われた。今回も、巨大なモニターが会場内に12台設置され、椅子も所狭しと並んで、聴衆が間を開けることなくぎっしり座っていた。そこに、Prof Kindlerのゆっくりと丁寧な言葉で発表が進んだ。そんな巨大な会場で発表が行われている最中に、メールの配信で、New England Journal of MedicineからPOLO試験の論文掲載の案内が届き、まさに学会と論文の同時発表であり、ここまでタイムリーな対応に驚きを隠せない状況であった。発表が終わってからは拍手喝采が鳴りやまず、まさに圧巻で、一見の価値のある光景であった。APACT試験膵がんにおけるもうひとつの注目演題は、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の補助化学療法であるAPACT試験である。膵がん切除後の補助療法としては、日本ではS-1による補助療法が主流であるが、海外ではゲムシタビンが汎用され、近年、ゲムシタビン+カペシタビンやmodified FOLFIRINOXなども使用されている。進行膵がんにおいて、ゲムシタビン+ナブパクリタキセルの高い有効性が示されていることから、膵がん切除後の補助療法としても期待され、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法とゲムシタビン単独療法を比較した第III相試験が計画された。R0または1の切除後の膵がん患者をゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法とゲムシタビン単独療法に1:1にランダムに割り付けて行われた。主要評価項目は無病生存期間、副次評価項目は全生存期間、安全性であった。全世界から866例が登録され、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法に432例、ゲムシタビン単独療法に434例がランダムに割り付けされた。主要評価項目である中央判定による無病生存期間(中央値)は、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群が19.4ヵ月、ゲムシタビン単独群が18.8ヵ月であり、ハザード比0.88(95%CI:0.729~1.063)、p=0.1824と有意差が示されなかった。しかし、担当医判断の無病生存期間(中央値)で、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群が19.4ヵ月、ゲムシタビン単独群が16.6ヵ月であり、ハザード比0.82(95%CI:0.694~0.965)、p=0.0168と有意差が示された。また、副次評価項目である全生存期間(中央値)もゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群が40.5ヵ月、ゲムシタビン単独群が36.2ヵ月であり、ハザード比0.82(95%CI:0.680~0.996)、p=0.045と有意差が示された。ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の安全性はこれまでの報告と違いはなかった。本試験はプラセボコントロールの試験ではないため、中央判定の無病生存期間が主要評価項目に用いられたが、膵がん切除後の再発判定は非常に難しく、担当医は全身状態や腫瘍マーカーなどから総合的に判断できるため、中央判定よりも担当医のほうが早期に再発を指摘しえたのかもしれない。プラセボコントロールで、担当医判断の無病生存期間が主要評価項目であったら、Positiveな結果であっただけに非常に惜しい試験である。肝細胞がん肝細胞がんにおいて注目された演題は、肝切除とラジオ波焼灼術(RFA)を比較したSURF試験、ソラフェニブに不応/不耐の肝細胞がんに対する2次治療としてペムブロリズマブとプラセボを比較したKEYNOTE-240試験である。ともに有意な結果は示されなかったが、日常診療に大きなインパクトを与える試験であった。また、進行がんに対する有望な薬物療法として、ニボルマブ+イピリムマブの併用療法の結果が報告された。SURF試験3cm、3個以下の小肝細胞がんに対して、肝切除とRFAのどちらが良いかは長年のClinical questionであった。これまでも4試験ほど、ランダム化比較試験の結果が報告されているが、切除が良好という結果や両者変わりないという結果など、一定の見解は得られていない。今回、日本から301例という症例数も多く、質も良好な試験の結果が報告された。初回の肝細胞がんで腫瘍径3cm以下、腫瘍数3個以下で、Child-Pugh 7点以下の20~79歳までの患者600例を目標に肝切除とRFAにランダムに割り付けた比較試験が行われた。主要評価項目は無再発生存期間、全生存期間であり、RFAに比べて肝切除の優越性を検証する試験デザインであった。2009年4月より登録を開始したが、2016年2月の段階で300例しか登録ができておらず、データモニタリング委員会から中止勧告が出され、登録は中止となった。最終的には、切除群150例、RFA群151例が適格で、解析対象となった。両群の患者背景に有意差は認めなかった。無再発生存期間(中央値)は、肝切除群2.98年、RFA群2.76年、ハザード比0.96(95%CI:0.72~1.28)で、p=0.793であり、肝切除の優位性は示されなかった。また、両群ともに死亡例は認めなかったが、入院期間や治療時間はRFA群が有意に良好であった。3cm以下の小肝細胞がんに対して、肝切除とRFAの無再発生存期間はほぼ同等であったと結論された。この発表のDiscussantは、これまでにランダム化比較試験が5試験行われたが、3cm以下、単発の腫瘍に関しては、ほぼRFAの非劣性が示されたと考えてよいだろうと。3cm以上や多発する場合には肝切除が選択肢になるであろうと。そして、患者登録も困難になることから、今後、同様のランダム化比較試験を行うべきではないだろうとまとめていた。長年、論争になっていた肝切除とRFAの比較にひとつの区切りがつけられたように思われた。KEYNOTE-240ソラフェニブ不応/不耐の肝細胞がん患者に対するペムブロリズマブとプラセボを比較した第III相試験の結果が報告された。肝細胞がんに対して初めての免疫チェックポイント阻害薬の第III相試験の結果であり、非常に注目された。対象は、ソラフェニブに不応/不耐の肝細胞がん患者で、Child-Pugh Aで測定可能病変を諭旨、門脈本幹腫瘍栓のない患者で、ペムブロリズマブ200mg/回を3週ごとの投与とプラセボに2:1に割り付けて投与する第III相試験である。主要評価項目は全生存期間と無増悪生存期間の2つであり、全生存期間はp値が0.0174未満で有意に、無増悪生存期間はp値が0.0020で有意になる設定であり、通常のp値が0.05未満よりは厳しい設定であった。ペムブロリズマブ群に278例、プラセボ群に135例が登録された。主要評価項目の全生存期間(中央値)は、ペムブロリズマブ群で10.6ヵ月、プラセボ群で10.6ヵ月、ハザード比は0.781(95%CI:0.611~0.998)で、p値は0.0238と当初設定した0.0174を下回らず、有意な結果は得られなかった。また、無増悪生存期間(中央値)は、ペムブロリズマブ群で3.0ヵ月、プラセボ群で2.8ヵ月、ハザード比は0.718(95%CI:0.570~0.904)で、p値は0.0022と当初設定した0.0020を下回らず、こちらも有意な結果は得られなかった。奏効割合はペムブロリズマブ群で18.3%、プラセボ群で4.4%であり、第II相試験(KEYNOTE-224)と同様に有意差が認められ(p=0.0007)、奏効期間(中央値)も13.8ヵ月とともに良好であった。有害事象はこれまでの報告と同様であった。本療法の後治療として、プラセボ群で47.4%と非常に高率で、抗PD-1/PD-L1抗体による治療が10.4%も含まれていた。本試験は、統計学的に有意差がついていそうな試験結果であったが、主要評価項目は達成しておらずNegativeな結果となった。この発表のDiscussantは、試験としてはNegativeであったが、マルチキナーゼ阻害薬に忍容性がないような患者に、2次治療の日常診療で抗PD-1抗体を継続することは問題ないであろうとコメントしており、有効性は評価していた。今後、中国を中心に行っているペムブロリズマブとプラセボの比較試験(KEYNOTE-394)の結果も参考にして、今後の本薬剤の承認までの方向性を検討することが必要であろうと結論づけた。また、今後の開発の方向性として、VEGF阻害薬との併用療法であるベバシズマブ+アテゾリズマブ、レンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法も期待されており、定位放射線やRadioembolization、肝動脈化学塞栓療法との併用療法の可能性なども示唆していた。会場入り口の階段にはWelcomeの文字がこの結果を受けて、1次治療としてのニボルマブとソラフェニブを比較した第III相試験の結果が期待されたが、2019年6月24日に本第III相試験も主要評価項目を達成しなかったことがプレスリリースされ、残念ながら免疫チェックポイント阻害薬単剤の結果は肝細胞がんにおいては厳しいものとなった。CheckMate-040ソラフェニブに不応/不耐の肝細胞がん患者を対象として、ニボルマブとイピリムマブの推奨投与量を決定する第I/II相試験が発表された。A群はニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgを3週ごとに4回投与後、ニボルマブ240mg/bodyの固定用量にて2週ごとの投与を継続し、B群はニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgを3週ごとに4回投与後、ニボルマブ240mg/bodyの固定用量にて2週ごとの投与を継続、C群はニボルマブ3mg/kgにて2週ごと、イピリムマブ1mg/kgにて6週ごとに投与を継続した。どの群もがんの増悪または忍容できない有害事象が出現するまで、投与を継続した。奏効割合はA群32%、B群31%、C群31%であり差は認めなかったが、生存期間(中央値)は、A群22.8ヵ月、B群12.5ヵ月、C群12.7ヵ月と、A群で良好であった。主な有害事象は、掻痒、皮疹、下痢、AST上昇などであり、免疫関連有害事象は、皮疹、肝障害、副腎不全、下痢、肺炎などであった。A群の有害事象はやや高率に認めていたが、忍容性は十分と判断され、A群(ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg)が推奨投与量と考えられた。ソラフェニブに不応/不耐の患者に対する良好な治療レジメンの登場により、今後、本レジメンの開発の動向が気になるところである。胆道がん胆道がんにおいて最も注目された演題は、ゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法の2次治療として、mFOLFOXと症状コントロールのみを比較したABC-06試験である。この結果は、長らく胆道がんにおける2次治療は確立していなかったのだが、mFOLFOXが2次治療の標準治療として確立することになった。ABC-06対象は、GC療法後に増悪を認めた進行胆道がん患者で、増悪を認めてから6週以内でPSが0または1で、臓器機能が保たれている患者を、A群:積極的な症状コントロールを行う群とB群:積極的な症状コントロールに加えて、mFOLFOXを行う群にランダム割り付けされた。主要評価項目は全生存期間であり、層別化因子は、1次治療のGC療法のプラチナ感受性があったかどうか、アルブミンが35g/L以上か未満か、局所進行か転移性か、であった。主要評価項目である全生存期間において、B群:mFOLFOX群は有意に良好な生存期間を示した(生存期間中央値、6ヵ月と12ヵ月生存割合:A群 5.3ヵ月、35.5%、11.4%、B群 6.2ヵ月、50.6%、25.9%、ハザード比0.69、95%CI:0.50~0.97、p=0.031)。1次治療のGC療法のプラチナ感受性別に検討したサブグループ解析では、プラチナ製剤に感受性がある群のみならず、プラチナ抵抗性のグループでも有意な差が認められ、プラチナ感受性にかかわらず、mFOLFOXは有用であることも示された。mFOLFOXの奏効割合は5%、病勢制御割合は33%、無増悪生存期間(中央値)は4.0ヵ月であった。また、主なGrade 3以上の有害事象は疲労、好中球減少、感染症などであり、忍容性は良好と判断された。GC療法後の2次治療として初めて延命効果を示した治療法であり、今後、標準治療として位置付けられることになるであろうと結論づけられた。Discussantも治療効果が高いわけではないが、新しい標準治療になるであろうと結論づけている。ただし、胆道がんではさまざまな治験や臨床試験が進行中である。1次治療として、化学療法+/-免疫チェックポイント阻害薬の併用療法や、GCにナブパクリタキセルの併用療法、mFOLFIRINOX療法などの3剤併用療法の開発が進行中であり、また、IDH1やFGFR、homologous Recombination Deficiencyなど遺伝子異常に基づいた分子標的治療薬の開発などが進行中であり、これらの動向にも注目する必要がある。まとめASCO2019では、膵がんに対してのゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法が補助療法としてはNegativeな結果であったが、PARP阻害薬が登場した。肝細胞がんでは、ペムブロリズマブの残念な結果が報告されたが、ニボルマブ+イピリムマブにおいて有望な結果が報告され、期待されている。また、切除とRFAは同等の治療成績であることが明らかになり、よりRFAが選択されるようになるかもしれない。そして、胆道がんではmFOLFOXが2次治療における標準治療として位置付けられており、日本もmFOLFOXを承認してもらうような準備が必要である。そのほかにも有望な治療法の開発が進行中であり、肝胆膵領域の化学療法の開発も活気づいており、海外に遅れをとらないように開発を進めていく必要がある。

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術前化学療法を受けた乳がん患者の術後上肢リンパ浮腫、リスク因子は?/JAMA Surgery

 乳がん患者の術後リンパ浮腫に関して、従前にない知見が示された。これまでのリンパ浮腫に関する大部分の研究は、対象集団が不均一で術後補助化学療法を受けた患者に重点を置いているが、米国・ミズーリ大学コロンビア校のJane M. Armer氏らは、術前化学療法と乳がん手術+腋窩リンパ節郭清を受けた患者のリンパ浮腫について検討。ACSOG Z1071研究の登録患者について解析を行い、長期の術前補助化学療法と肥満がリンパ浮腫の発現と関連していることを明らかにした。著者は、「このようなリスク因子を有する患者では、リンパ浮腫のサーベイランスを強化することが有益であろう」とまとめている。JAMA Surgery誌オンライン版2019年7月17日号の掲載。 研究グループは、リンパ節転移陽性乳がん患者で術前化学療法と腋窩リンパ節郭清後のリンパ浮腫に関連する因子を調べる目的でコホート研究を行った。 対象は、2009年1月1日~2012年12月31日の間にACSOG Z1071研究に登録された、診断時にリンパ節転移を有する18歳以上のcT0-T4N1-2M0乳がん女性患者である。2018年1月11日~2018年11月9日にデータを分析した。全例、術前化学療法、乳房手術および腋窩リンパ節郭清を受け、術前化学療法完了時および術後36ヵ月まで6ヵ月間隔で、前向きにリンパ浮腫の測定および症状の評価が行われた。 主要評価項目はリンパ浮腫で、自覚症状(上肢が重いまたは腫れている)、上肢体積10%以上増加および上肢体積20%以上増加の3つの定義で評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は486例で、平均年齢は50.1歳であった。・3年後のリンパ浮腫累積発現率は、自覚症状評価で37.8%、上肢体積10%以上増加で58.4%、上肢体積20%以上増加で36.9%であった。・BMI増加(HR:1.04、95%CI:1.01~1.06)、および術前化学療法の期間が144日以上(HR:1.48、95%CI:1.01~2.17)が、リンパ浮腫の自覚症状と関連していた。・上肢体積20%以上増加の発現率は、術前化学療法の期間が144日以上(HR:1.79、95%CI:1.19~2.68)の患者で高かった。 ・上肢体積10%以上増加の発現率は、リンパ節切除個数30個以上(HR:1.70、95%CI:1.15~2.52)で最も高く、転移陽性リンパ節の数とともに上昇した(HR:1.03、95%CI:1.00~1.06)。・多変量解析の結果、肥満(HR:1.03、95%CI:1.01~1.06)がリンパ浮腫の自覚症状と、術前化学療法の期間(HR:1.74、95%CI:1.15~2.62)が上肢体積20%以上増加と、有意に関連することが示された。

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本邦初、高齢者のがん薬物療法ガイドライン発行/日本臨床腫瘍学会

 約3年をかけ、高齢者に特化して臓器横断的な視点から作成された「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」が発行された。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で概要が発表され、作成委員長を務めた名古屋大学医学部附属病院の安藤 雄一氏らが作成の経緯や要点について解説した。なお、本ガイドラインは日本臨床腫瘍学会と日本癌治療学会が共同で作成している。高齢者を一律の年齢で区切ることはせず、年齢幅を持たせて評価 本ガイドラインは「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」に準拠し、臨床試験のエビデンスとともに、益と害のバランス、高齢者特有の価値観など多面的な要因に基づいて推奨の強さが検討された。作成委員会からは独立のメンバーによるシステマティックレビュー、専門医のほか非専門医・看護師・薬剤師・患者からの委員を加えた推奨パネルでの投票により、エビデンスの強さ(4段階)と推奨の強さ(2段階+推奨なし)が決定されている。 対象となる高齢者については、一部のCQを除き具体的な年齢で示すことはしていない。各薬物療法の適応になる基本的な条件を満たしており、PS 0または1、明らかな認知障害を認めず、主な臓器に機能異常を認めない患者が対象として想定されている。“実臨床で迷うことが多い”という観点で12のCQを設定 12のクリニカルクエスチョン(CQ)は、CQ1が総論、CQ2~3が造血器、CQ4~6が消化管、CQ7~9が呼吸器、CQ10~12が乳腺という構成となっている(下記参照)。各CQは実臨床で遭遇し判断に迷うもの、そして臨床アウトカムの改善が見込まれるものという観点で選定。例えば呼吸器のCQ7は、予防的全脳照射(PCI)を扱っており、薬物療法ではないが、実臨床で迷うことが多く重要、との判断から取り上げられた。 推奨パネルでの投票で意見が割れ、最終的な決定にあたって再投票を実施したCQも複数あった。呼吸器のCQ8では、高齢者の早期肺がんに対する術後補助化学療法としてのシスプラチン併用について検討している。報告されている効果は5年生存率で+10%と小さく、1%の治療関連死が報告されている。判断について意見が分かれたが、最終的に、「実施することを明確に推奨することはできない(推奨なし)」とされている。 本ガイドラインでは、関連のエビデンス解説や推奨決定までの経緯についての記述を充実させており、巻末には各CQについて一般向けサマリーを掲載している。患者ごとに適した判断をするために、また患者にリスクとベネフィットを正確に伝えるために、これらの情報を活用することが期待される。独自のメタアナリシスを実施したCQも そもそも高齢者は臨床試験の選択基準から除外されることが多く、エビデンスは全体的に乏しい。評価できるエビデンスがサブグループ解析に限られ、直接高齢者を対象としたRCTは存在しないものが多かった。消化器のCQ5では、70歳以上の結腸がん患者に対する術後補助化学療法について検討しているが、70歳以上へのオキサリプラチン併用療法は、現状の報告から明確な上乗せ効果は確認できず、一方で末梢神経障害の増加が認められることから、「オキサリプラチン併用療法を行わないことを提案(弱く推奨)」している。 独自のメタアナリシスを行ったCQもある。乳がん領域のCQ11では、高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法で、アントラサイクリン系抗がん剤の省略が可能かどうかを検討している。2つの前向き試験(CALGB49907とICE II-GBG52)のメタアナリシスを行い、アントラサイクリン系抗がん剤を省略することで生存期間と無再発生存期間が短縮する可能性が示唆された。その他心毒性についての観察研究結果などのエビデンスも併せて検討された結果、「アントラサイクリン系抗がん薬を省略しないことを提案(弱く推奨)」している。各領域で取り上げられているCQ[総論] CQ1 高齢がん患者において,高齢者機能評価の実施は,がん薬物療法の適応を判断する方法として推奨されるか?[造血器] CQ2 高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か? CQ3 80才以上の高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してアントラサイクリン系薬剤を含む薬物療法は推奨されるか?[消化器] CQ4 高齢者では切除不能進行再発胃がんに対して,経口フッ化ピリミジン製剤とシスプラチンまたはオキサリプラチンの併用は推奨されるか? CQ5 結腸がん術後(R0切除,ステージIII)の70才以上の高齢者に対して,術後補助化学療法を行うことは推奨されるか?行うことが推奨されるとすれば,どのような治療が推奨されるか? CQ6 切除不能進行再発大腸がんの高齢者の初回化学療法においてベバシズマブの使用は推奨されるか?[呼吸器] CQ7 一次治療で完全奏効(CR)が得られた高齢者小細胞肺がんに対して,予防的全脳照射(PCI)は推奨されるか? CQ8 高齢者では完全切除後の早期肺がんに対してどのような術後補助薬物療法が推奨されるか? CQ9 高齢者非小細胞肺がんに対して,免疫チェックポイント阻害薬の治療は推奨されるか?[乳腺] CQ10 高齢者ホルモン受容体陽性,HER2陰性乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬を投与すべきか? CQ11 高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬の省略は可能か? CQ12 高齢者HER2陽性乳がん術後に対して,術後薬物療法にはどのような治療が推奨されるか?

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欧米と日本における切除可能進行胃がんに対する周術期化学療法の大きな乖離(解説:上村直実氏)-1079

 日本と西欧における胃がんの化学療法に大きな乖離が存在することを示す研究論文である。日本の胃がん治療ガイドラインでは手術可能な進行胃がんに対する周術期化学療法については欧米とまったく異なるレジメンが推奨されている。すなわち、日本における切除可能な進行胃がんに対する周術期化学療法は主に術後補助化学治療として施行されており、その主役はS-1である。手術可能な進行がんを対象として日本で行われたS-1+ドセタキセル併用療法と標準治療とされていたS-1単独を比較したRCT(JACCRO GC-07試験)において、主要評価項目である3年無再発生存(RFS)率は併用療法群が65.9%、S-1単独群が49.5%であり、前者が有意に優れていた。その結果、現在ではS-1+ドセタキセル併用療法が標準的な術後補助化学治療と考えられる。 一方、欧米における標準的周術期化学療法は術前および術後ともに行う方法が一般的であり、さらにS-1は承認されていないために主役どころかレジメンに含まれることはない。ドイツで施行されたFLOT4-AIO試験では、切除可能な局所進行胃・胃食道接合部腺がんの治療において、欧米における標準的周術期化学療法(術前・術後)とされているECF療法(エピルビシン+シスプラチン+フルオロウラシル)とドセタキセルベースの3剤併用レジメン(FLOT群)両群の有効性と安全性をRCTにより検討した結果、FLOTによる術前後の化学療法はECF療法群と比較して、全生存(OS)期間を1年以上延長すること(50ヵ月vs.35ヵ月)が示されたものであり、この結果は欧米においては驚くべき有効な治療選択肢が得られたとの評価を受けている。 以上のように、術前術後化学療法は欧米での標準的治療であるが、日本ではまだ術後の補助化学療法が主体であり、術前療法については手術不能胃がんに対する術前治療で手術可能な状態になるかをアウトカムとする臨床研究が進行中である。

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がん専門病院が取り組む、漢方療法の最前線

 漢方薬は、エビデンスの少なさや体質や症状に応じた選択の難しさなどから処方を敬遠する医師も少なくない。神奈川県立がんセンターは、重粒子線治療施設を備えた都道府県がん診療連携拠点病院であり、なおかつ漢方サポートセンターを持つという、全国でも珍しい存在だ。2019年6月6日に行われた「漢方医学フォーラム」(漢方医学フォーラム主催)では、同院の東洋医学科部長の板倉 英俊氏が、がん治療における漢方に関する取り組みと症例を紹介した。がん患者に漢方薬を投与し、心身全体の改善を評価 板倉氏は「がん治療における漢方の役割~西洋医学と漢方医学の融合によるがん支持療法の現状と今後の展望」をテーマに講演した。同院の漢方サポートセンターは2015年に出された厚生労働省の「がん対策加速化プラン」を契機に創設された。がん治療が進化し、長くがんと共生する患者が増えたことを背景に、漢方を使い、患者のQOLを向上させることを命題とする。 がんと漢方のエビデンスとしては、胃がんの補助化学療法が食欲不振や吐き気などの副作用を理由とした中断が多いことを踏まえ、補中益気湯を併用して効果を見た京都大学などの研究がある1)。この研究では、ステージ2~3のがん患者に対し術後の補助化学療法としてS-1もしくはS-1+補中益気湯を投与した群を比較したところ、3年生存率・3年無再発生存率ともに向上は期待しにくい、という結果が出た。 このがんと漢方のエビデンスに対し、板倉氏は「研究データを詳細に見ると、ステージ3、65歳以上という悪い状態にあることが予想される患者には効果が出ている。さらに、漢方では全身を診る漢方医学的診断とそれに基づく生活指導を踏まえた服薬が重要で、この研究結果だけで漢方ががんに効果がないとは言い切れない」と主張した。 神奈川県立がんセンターでは、東洋医学専属の看護師を配置し、がん患者への生活指導をしつつ、容態に適した漢方を処方。心身全体の改善を評価するため、がん患者のQOL評価に用いられる自記式調査票の「EORTC QLQ-C30」を用い、初診時と3ヵ月後を比較した。対象は全がん患者とし、1年間調査した結果、8.4%の改善が見られた(n=34、p<0.02)。化学療法を受け、下痢・食欲不振・関節痛などを主訴とするがん患者に対して漢方薬を処方し、改善に向かった症例も紹介された。 板倉氏は、「西洋医学と東洋医学では身体や病気に対する捉え方が異なる。その違いを知った上で漢方薬をうまく治療に取り入れてほしい」と述べた。具体的には、同じ病気でも患者の身体所見や体質の違いに応じて異なった薬を使う「同病異治(どうびょういち)」の考え方、五臓は物質的な部分だけでなく精神的な部分の機能もコントロールしている「心身一如(しんしんいちにょ)」の考え方が鍵となる、とした。「漢方薬だけでがんが治る」はあり得ない 「一般患者には漢方薬だけでがんが治る、といった誤解が広まっているが、それはあり得ない。東洋医学で心身の回復を図った上で、抗がん剤や手術の西洋医学の療法を施すという、両者の融合が大切」と板倉氏は強調する。今回のがん患者への漢方による改善効果の調査は同院のみ、期間も1年と限られ参考値としての位置付けだ。一方、2007年から国内の全医学部で漢方の講義が行われ、2019年からWHOのICD-11(国際疾病分類第11版)に伝統医学が追加されるなど東洋医学への関心は高まっており、今後はがん患者への漢方による改善効果の臨床データの増加が期待される。

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StageII大腸がんの予後予測因子としての簇出(SACURA試験)/JCO

 Stage II大腸がんにおける術後補助化学療法の有効性を検討したSACURA試験(主任研究者:東京医科歯科大学 杉原 健一氏)の付随研究として、簇出(budding)の予後予測因子、補助化学療法の効果予測因子としての有用性を評価した解析結果を、防衛医科大学校の上野 秀樹氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年6月10日号に掲載。簇出は、国際対がん連合(UICC)が腫瘍関連の予後因子として挙げている因子であり、2016年のInternational Tumor Budding Consensus Conference(ITBCC2016)において国際的評価基準が定義された。簇出の評価によって術後補助化学療法の適応となる対象を適切に選別 SACURA試験は、Stage II大腸がんを対象として、経口テガフール-ウラシル(UFT)1年間投与による術後補助化学療法群と手術単独群とを比較した大規模な無作為化試験である。今回の付随研究では、2006~10年の間に123施設からSACURA試験に登録されたStage II大腸がん1,982例のうち、991例の病理標本を収集した。簇出は、後にITBCC2016に採用された評価基準に基づいた中央判定によって3つのグレード(BD1/BD2/BD3)に診断され、前向きに記録された。5年間の患者登録完了後に主研究で収集した臨床病理学的データおよび予後データと統合し、解析を行った。 簇出の予測因子としての有用性を評価した主な解析結果は以下のとおり。・991例のうち、BD1(簇出が0~4個)が376例、BD2(同5~9個)が331例、BD3(同10個以上)が284例であった。5年無再発生存率(RFS)はそれぞれ90.9%、85.1%、74.4%(p<0.001)で、深達度T4の部分集団解析では、RFSの分かれ方が顕著であった(86.6~53.3%)。・簇出のグレードは、肝臓、肺、リンパ節、腹膜における再発と有意に相関した(p<0.01~0.001)。・多変量解析において、簇出と壁深達度は、独立した予後不良因子であった。Harrellのc統計量(c-index)に基づくと、これらの2因子はRFSの予測モデルの分別能を有意に改善した。・BD2、BD3の部分集団いずれにおいても、統計学的に有意差は無いものの、手術単独群に比べて術後補助化学療法群で5年累積再発率が約5%良好であった。 これらの結果から、研究グループは「Stage II大腸癌においては、ITBCC2016基準による簇出をルーチンに評価すべきであり、これにより術後補助化学療法の適応となる対象の適切な選別と予後向上が期待される」としている。

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Stage I NSCLCにおける術後補助化学療法の効果/ASCO2019

 StageIの非小細胞肺がん(NSCLC)には異質性があり、再発を来すケースがある。しかし、これらの集団に対する術後補助化学療法には議論の余地がある。広島大学の津谷 康大氏らは、再発リスクによる病理StageI(pStage I)のNSCLCの術後補助化学療法の効果を分析し、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。 肺葉手術で完全切除したpStageI NSCLC 1,278例を分析対象とした。再発高リスクはCox比例ハザードモデルにより、腫瘍径(浸潤径)2cm超、リンパ管侵襲あり、血管侵襲あり、臓側胸膜浸潤ありと定義した。評価項目は無再発生存期間(RFS)、全生存期間(OS)、がん特異的生存期間(CSS)とした。 主な結果は以下のとおり。[高リスク群と低リスク群の予後]・5年RFSは低リスク群96.0%、高リスク群76.7%(HR:6.62、95%CI:4.18~11.10、p<0.0001)、5年OSは低リスク群96.0%、高リスク群85.7%(HR:3.99、95%CI:2.39~7.03、p<0.0001)と、いずれも高リスク群で不良であった。[術後補助化学療法の効果]低リスク群・5年RFSは術後補助化学療法群98.1%、観察群95.7%(HR:0.47、95%CI:0.07~1.67、p=0.30)、5年OSは術後補助化学療法群98.0%、観察群95.6%(HR:0.50、95%CI:0.08~1.81、p=0.35)、5年CSSは補助療法群100%、観察群99.4%(HR:NA、p=0.52)と、いずれも統計学的な差は示さなかった。高リスク群・5年RFSは術後補助化学療法群81.4%、観察群73.8%(HR:0.63、95%CI:0.41~0.93、p=0.023)、5年OSは術後補助化学療法群92.7%、観察群81.7%(HR:0.28、95%CI:0.13~0.53、p<0.0001)、5年CSSは術後補助化学療法群95.0%、観察群89.5%(HR:0.34、95%CI:0.13~0.77、p=0.012)と、いずれも術後補助化学療法で有意に良好であった。・高リスク群における化学療法をプラチナダブレットと単剤化学療法(以下、単剤)で比較したところ、5年RFSはプラチナダブレット群72.8%、単剤群83.3%(HR:1.45、95%CI:0.72~2.94、p=0.29)、5年OSはプラチナダブレット群72.8%、単剤群83.3%(HR:0.69、95%CI:0.32~4.98、p=0.69)と統計学的な差は認められなかったが、5年CSSについてはプラチナダブレット群89.9%、単剤群98.4%と単剤で良好であった(HR:8.92、95%CI:1.40~172.80、p=0.018)。 同氏らは、腫瘍径(浸潤径)2cm超、リンパ管侵襲あり、血管侵襲あり、臓側胸膜浸潤ありは再発高リスク因子であること、術後補助化学療法は高リスク患者の生存を改善すること、pStageIのNSCLCにおける単剤化学療法と比べたプラチナダブレットの生存改善は認められなかったことを結論として示した。

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ASCO2019レポート 消化器がん(Lower GI)

レポーター紹介2019年5月31日~6月4日まで、イリノイ州シカゴにあるMcCormick Placeにて2019 ASCO Annual Meetingが開催された。本稿では、その中から大腸がん関連の演題をいくつか紹介したい。進行再発大腸がんに対する新しい薬剤はここ数年登場しておらず、残念ながら今年のASCOでも、すぐに臨床現場に登場するような新規薬剤の発表はなかった。しかし、臨床家として興味深い演題は多数みられ、そのうちのいくつかを周術期化学療法、進行再発大腸がんに対する化学療法、手術手技のそれぞれに分けて紹介する。周術期化学療法ASCOにおける大腸がんに対する周術期化学療法の発表としては、2017年のIDEA collaborationが記憶に新しい。StageIII結腸がんに対する術後補助化学療法の至適投与期間についての検討である。標準治療であるオキサリプラチン併用レジメ(FOLFOXもしくはCAPOX)の6ヵ月投与に対して、試験治療である3ヵ月投与の非劣性が検証された。試験全体の結果はnegativeであったものの、リスク、治療レジメによる差がみられ、その後の各ガイドラインの記載、日常診療に影響を与えた。#3501:Prospective pooled analysis of four randomized trials investigating duration of adjuvant (adj) oxaliplatin-based therapy (3 vs 6 months {m}) for patients (pts) with high-risk stage II colorectal cancer (CC).IDEA collaborationに参加した6つの臨床試験のうち、4つの試験(SCOT、TOSCA、ACHIEVE-2、HORG)ではStageIIIとともにハイリスクStageII症例も登録されており、その結果が報告された。ハイリスクの因子として挙げられたのは、T4、低分化、不十分なリンパ節郭清、血管・神経浸潤、閉塞、穿孔である。統計学的にはオキサリプラチンの上乗せ効果が60%まで低下することを許容し、非劣性マージンは1.2、80%の検出力で542イベントが必要との仮説であった。ハイリスクStageII症例3,273例が、試験治療である3ヵ月群と標準治療である6ヵ月群に無作為割り付けされ、3ヵ月群では有意に有害事象の低減がみられたものの(p<0.0001)、主要評価項目である5年無病生存率(DFS)は3ヵ月群80.7% vs.6ヵ月群83.9%であり非劣性は証明されず、試験全体としてはnegative studyであった(HR:1.18、80%CI:1.05~1.31、p=0.3851)。レジメと期間ごとの5年DFSはCAPOX 3ヵ月81.7% vs.6ヵ月82.0%、FOLFOX 3ヵ月79.2% vs.6ヵ月86.5%であり、CAPOXにおいてその差は小さい傾向にあった。これらの結果から発表者は、ハイリスクStageII症例の術後補助化学療法を行う場合、CAPOXなら3ヵ月、FOLFOXなら6ヵ月と結論付けていた。#3504:FOxTROT: an international randomised controlled trial in 1052 patients (pts) evaluating neoadjuvant chemotherapy (NAC) for colon cancer.切除可能大腸がんに対しては術後補助化学療法が標準治療であるが、術前化学療法は切除前に化学療法を行うことにより腫瘍縮小による切除率の向上、微小転移の抑制などが期待される。FoxTROT試験は、切除可能大腸がんにおいて術前化学療法が治療成績を改善するか、を検証した第III相試験である。T3-4、N0-2、M0かつFOLFOX療法、手術が可能と考えられる1,052例が、試験治療である術前化学療法群(FOLFOX 3コース→手術→FOLFOX 9コース:NAC群)、もしくは標準治療である術後補助化学療法群(手術→FOLFOX 12コース:術後治療群)に2:1で無作為割り付けされた。NAC群においてRAS野生型であればパニツムマブの併用が許容された。2点において主治医の裁量での変更が可能であり、治療全体の期間が高齢者や再発リスクの低い症例では全体の投与期間が24週ではなく12週でもよい、FOLFOXの代わりにCAPOXでもよい、という設定であった。術前化学療法は安全に施行され全体として大きな合併症の増加はみられなかった。不完全切除率(R1、R2もしくは非切除)はNAC群4.8%、術後治療群11.1%であり、NAC群において有意に低かった(p=0.0001)。病理組織学的検討では、pT0は4.1% vs.0%、pN0は59.4% vs.48.8%で、いずれもNAC群においてdown stagingが得られていた(p<0.0001)。NACによる病理組織学的効果は59%の症例で確認され、pCRの症例を3.5%認めた。主要評価項目である2年後の再発もしくは腫瘍残存はNAC群13.6%、術後治療群17.2%であり、NAC群において予後良好な傾向を認めたものの有意差を認めなかった(HR:0.75、p=0.08)。NAC群におけるパニツムマブの上乗せ効果は認めなかった(p=0.30)。主要評価項目では統計学的有意差を認めなかったものの、大腸がんに対するNACは新たな概念であり、今後の続報を待ちたい発表であった。進行再発大腸がんに対する化学療法ここ数年のASCOでは免疫チェックポイント阻害剤(Immune Checkpoint Inhibitor: ICI)が大きな話題である。大腸がんにおいてはマイクロサテライト不安定性を認める症例(MSI-high)ではICIの効果が期待されるものの、その割合は大腸がん症例全体の数%にすぎず、大腸がんの多くを占めるMSS症例に対する効果は期待できなかった。#2522:Regorafenib plus nivolumab in patients with advanced gastric (GC) or colorectal cancer (CRC): An open-label, dose-finding, and dose-expansion phase 1b trial (REGONIVO, EPOC1603).制御性T細胞(regulatory T cells:Tregs)や腫瘍関連貪食細胞(tumor-associated macrophages:TAMs)は抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体治療に対する抵抗性に関与すると考えられている。レゴラフェニブは大腸がんにおいていわゆるLate lineで使用される薬剤であるが、血管新生阻害作用や腫瘍関連キナーゼ阻害作用を持ち、TAMsを減らすことが腫瘍モデルにて示されている。本試験は、標準治療に不応・不耐となった進行・再発胃がん、大腸がん症例を対象としたレゴラフェニブとニボルマブの併用療法の第Ib相試験である。主要評価項目は用量制限毒性(DLT)、最大耐用量(MTD)と推奨用量(RD)であり、副次評価項目は奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、病勢コントロール率(DCR)であった。レゴラフェニブの1日1回で21日間内服・7日間休薬とニボルマブの3mg/kgを2週ごとに点滴静注を併用する投与スケジュールであった。レゴラフェニブの用量は80mg/day、120mg/day、160mg/dayの3レベルが設定され、低いほうから3例ずつ投与し有害事象がなければ増量していくdose-escalation cohortと、求められたRDで治療を行うexpansion cohortが設定された。胃がん25例、大腸がん25例が登録され、MSI-highは1例(2%)、MSSが49例(98%)であった。レゴラフェニブのdose-escalation cohortにおいて80mg/day、120mg/day、160mg/dayにそれぞれ4例、7例、3例が登録され、160mg/dayのレベルにてGrade3の発疹、蛋白尿、結腸穿孔を認めた。この結果から推奨用量は120mg/dayとなったが、その後Grade3の皮膚症状の頻度が多かったため最終的にレゴラフェニブの用量は80mg/dayとされた。胃がん、大腸がんを合わせた50例全体のORRは40%(95%CI:26~55)、DCRは88%(95%CI:76~96)であった。レゴラフェニブの用量別のORRの検討では、80mgは45%、120mgは36%、160mgは33%であった。大腸がん全体のORRは36%であり、MSSだけに限ると33%であった。胃がんのORRは44%であり全例がMSSであった。全体のPFS中央値は6.3ヵ月であった。消化器がんにおいて今までICIの効果が期待できなかったMSS症例で、レゴラフェニブとの併用においてICIの効果を認めたことは特筆すべきと考える。レゴラフェニブをTregsやTAMsを抑えるために使用するという発想も興味深く、今後の第II相、第III相試験の結果が待たれる。手術手技ASCOは化学療法のみの学会ではなく手術手技、放射線治療、支持療法、緩和ケア、予防、早期発見、医療経済、サバイバーシップなど多岐にわたる発表が行われる。本邦からの大腸がん手術手技に関する演題がPoster Discussion Sessionにおいて発表された。#3515:A randomized controlled trial of the conventional technique versus the no-touch isolation technique for primary tumor resection in patients with colon cancer: Primary analysis of Japan Clinical Oncology Group study JCOG1006.大腸がん手術時に最初に血管の結紮を行うno-touch isolation technique(NTIT)は、手術手技による腫瘍細胞の血行性転移を防ぐことに有効と考えられていたが、大規模な有効性のデータは存在しなかった。JCOG1006はこのNTITの有効性を検証した第III相試験である。主な適格症例は組織学的に確認された大腸がん(回盲部~Rs直腸まで)、T3-4、N0-2、M0などである。症例はconventional technique(CoT:[1]腸管の剥離・授動→[2]辺縁血管の結紮→[3]腸管切離→[4]脈管根部での結紮)もしくはNTIT([1]脈管根部での結紮→[2]辺縁血管の結紮→[3]腸管切離→[4]腸管の剥離・授動)に無作為化された。手術はすべて開腹手術であり、術後病理組織学的にStageIIIと診断された症例はカペシタビンによる術後補助化学療法を受けた。主要評価項目は無病生存期間(DFS)であった。2011年1月~2015年11月に853例が登録され、CoT 427例、NTIT 426例に無作為化された。3年DFSはCoT 77.3%、NTIT 76.2%であり、NTITの優越性は証明されなかった(HR:1.029、95%CI:0.800~1.324、p=0.59)。3年OSはCoT 94.8%、NTIT 93.4%であった(HR:1.006、95%CI:0.674~1.501)。これらの結果からNTITは術後再発率、生存率に寄与しないと結論付けられた。本試験は結果としてnegative studyであったが、臨床現場のClinical Questionに対してきちんとした第III相試験を立案、実施、解析、発表するその姿勢は素晴らしく、そのことが評価されてのPoster Discussionへの採択であったと感じられた。最後に今年のASCO大腸がん領域の演題からいくつかを紹介したが、上記演題のほかにも進行再発がんに対するTripletレジメや、抗PD-1抗体+抗CTL-4抗体、抗PD-1抗体+放射線治療など、さまざまな興味深い演題の発表があった。ASCO2019のテーマは“Caring for Every Patient, Learning from Every Patient”であり、上記のようなさまざまなエビデンスを理解したうえで、患者一人ひとりから学び、患者一人ひとりに最良の治療、ケアを提供していくことが大切であると考えられた。

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