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抗血小板薬の投与期間と超遅発型ステント血栓症の発症:J-Cypher

現在、薬剤溶出ステント(DES)留置後のデュアル抗血小板療法(DAPT)が超遅発型ステント血栓症(VLST)を減少させるというエビデンスは明らかに欠如している。しかし、臨床現場ではVLST発症を懸念し、DES留置後1年以上にわたりDAPT療法が広く行われている。この点に関して、京都大学の木村氏らは、J-Cypherステントレジストリの解析結果を発表した。その発表によると、シロリムス溶出ステント(SES)留置後1年を超えたチエノピリジンの長期使用は、VLSTリスクや、死亡、心筋梗塞または脳卒中を含む重篤な心血管イベントリスクの減少と有意な関連性を認めなかった。Cardiovasc Interv Ther誌オンライン版6月14日号掲載。研究対象集団は、少なくとも1本のシロリムス溶出ステント(SES)で治療されたJ-Cypherステントレジストリ内の12,812例。主な結果は以下のとおり。 ・ステント留置後1年で心筋梗塞、ステント血栓症や脳卒中を発症しなかった11,713例のうち、7,414例(63%)がチエノピリジンを継続し、4,299例(37%)が1年未満で中止していた。・チエノピリジン継続群の患者は、チエノピリジン中止群の患者よりも複雑な特性を有していた。・明らかなVLSTリスクやVLSTの累積発症率において、チエノピリジン継続群は、チエノピリジン中止群に比較し、有意な差を示さなかった [0.9 vs 1.2%、p=0.1、調整HR(95%CI):0.71 (0.47~1.06)、p=0.11]。・死亡、心筋梗塞、脳卒中リスクやそれら疾患の累積発症率において、チエノピリジン継続群は、チエノピリジン中止群に対し有意な差を示さなかった [15.3 vs 14.3%、p=0.15、調整HR(95%CI):0.99 (0.89~1.11)、p=0.89]。(ケアネット 鈴木 渉)

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無作為化試験の患者データを基にしたメタ解析:DES vs BMS

現在のプールされた患者レベルのメタ解析の結果、プライマリPCIを受けたST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、シロリムスやパクリタキセルの薬剤溶出ステント(DES)が、ベアメタルステント(BMS)に比較し、長期間におけるターゲット部位の血行再建を減少させたが、逆に、遅発性再梗塞およびステント血栓症はDES群において増加したと報告された。これは、イタリアの De Lucaらの報告によるもので、STEMIに対して実施されたDESの無作為化試験の全てが対象とされ、合計6,298人であった。内訳は、DES群が3,980人(63.2%)、BMS群が2,318人(36.8%)であり、DESの99%にシロリムスまたはパクリタキセルの溶出ステントが使用されている。主な結果は以下のとおり。 ・平均フォロー日数は1201(±440)日であった。・標的部位の血行再建率は、DES群で12.7%、BMS群で20.1%(ハザード比:0.57[95%CI:0.50-0.66], P

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ステント血栓症の抑制効果、コバルトクロム合金製エベロリムス溶出ステントが最も高い

コバルトクロム合金製エベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)は、ベアメタルステント(BMS)や他の薬剤溶出ステントに比べステント血栓症のリスクが低いことが、イタリアPoliclinico S Orsola(ボローニャ市)のTullio Palmerini氏らの検討で示された。薬剤溶出ステントとBMSのステント血栓症のリスクについては議論が続いているが、ステント血栓症の総発生率の低さを考慮すると、各ステントの差を正確に評価するには、膨大なサンプル数が必要とされる。ネットワークメタ解析は、共通の治療法をレファランスとして個々の治療法の間接的な比較を可能にする新しい研究法で、サンプル数を増やすことができるという。Lancet誌2012年4月14日号(オンライン版2012年3月23日号)掲載の報告。ステント血栓症のリスクをネットワークメタ解析で評価研究グループは、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を受けている薬剤溶出ステントとBMSによるステント血栓症の発生率を検討した無作為化試験を対象に包括的なネットワークメタ解析を行った。解析の対象となった薬剤溶出ステントは、CoCr-EES、プラチナクロム合金製エベロリムス溶出ステント(PtCr-EES)、パクリタキセル溶出ステント(PES)、シロリムス溶出ステント(SES)、Resoluteゾタロリムス溶出ステント(Re-ZES)、ホスホリルコリンポリマーベースのゾタロリムス溶出ステント(PC-ZES)の6つであった。Academic Research Consortium(ARC)のステント血栓症の定義に基づき、definiteステント血栓症の1年発生率を主要評価項目とした。ランダム効果モデルを用いたネットワークメタ解析を行い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。感度分析には固定効果モデルを用いた。パラダイムシフトの可能性も49試験に参加した5万844例が解析の対象となった。definiteステント血栓症の1年発生率は、CoCr-EESがBMSに比べ有意に低かった(OR:0.23、95%CI:0.13~0.41)。30日発生率(同:0.21、0.11~0.42)および31日~1年の発生率(同:0.27、0.08~0.74)も、CoCr-EESがBMSよりも有意に低値を示した。CoCr-EESの1年definiteステント血栓症発生率は、PES(OR:0.28、95%CI:0.16~0.48)、SES(同:0.41、0.24~0.70)、PC-ZES(同:0.21、0.10~0.44)、Re-ZES(同:0.14、0.03~0.47)との比較でも、有意に良好だった。フォローアップ期間2年の時点でも、CoCr-EESのdefiniteステント血栓症の発生率はBMS(OR:0.35、95%CI:0.17~0.69)やPES(同:0.34、0.19~0.62)よりも有意に低かった。BMSよりも2年definiteステント血栓症発生率が低いステントはほかにはなかった。著者は、「2年以内のステント血栓症の発生率はCoCr-EESが最も低かった」と結論し、「今後、無作為化試験でCoCr-EESがBMSよりもステント血栓症が少ないことが示されれば、パラダイムシフトが起きるだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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薬剤溶出ステントXIENCE V、安全性と有効性においてTAXUSよりも優位であることを確認

米アボット社が行った米国の3,690名の患者を対象に2つの薬剤溶出ステントを比較した大規模無作為化試験の1つであるSPIRIT IV試験の結果が、2010年5月5日に発刊されたNEJM(The New England Journal of Medicine)に掲載された。同社の日本法人が18日に発表した。今回発表された結果において、XIENCE Vエベロリムス溶出冠動脈ステントシステム(販売名:XIENCE V 薬剤溶出ステント)はTAXUS Express2 パクリタキセル溶出冠動脈ステントシステム(販売名:TAXUS エクスプレス2 ステント)よりも、ステント留置後1年経過観察時点において心筋梗塞、血行再建術、心臓死等の主要心事故を引き起こしにくいことが示された。また、SPIRIT IV試験では、XIENCE V留置群とTAXUS留置群との比較において、ステント血栓症発生率を有意に低減することが示されました。これらの結果は2009年9月に行われたTCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)でも発表されている。SPIRIT IV試験では、XIENCE V群はTAXUS群と比較すると、1年経過観察時点において、主要評価項目であるTLF(Target Lesion Failure)を38%統計的に有意に低減することが示された(XIENCE V群 4.2%に対しTAXUS群 6.8%、 p値=0.001)。TLFは患者に対する有効性と安全性を評価する複合評価項目として定義されており、心臓死、標的血管起因の心筋梗塞、虚血に基づく標的病変血行再建 (ID-TLR) が含まれる。また、1年経過観察時点での血栓(ステント血栓症)発生率において、XIENCE V群は現在までに報告されているその他の薬剤溶出ステントと比較するとステント血栓症の発生を最も低減することが示された(Academic Research Consortium〔ARC〕定義の Definite/Probable に分類される1年経過観察時点でのステント血栓症発生率は0.29%)。詳細はプレスリリースへhttp://www.abbott.co.jp/press/2010/100518.asp

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教授 中村正人先生の答え

循環器内科での後期研修について初期研修1年目の者です。循環器内科に興味を持ち始めたのですが、循環器内科といっても幅が広く、心臓血管カテーテル以外にも多くの専門領域があると思います。大橋病院ではどのような体制で診療や研究を行うのでしょうか?入局してくるレジデントは、ある程度専門領域を決めて来るのでしょうか?少し場違いな質問ですが御教授願います。ご指摘のごとく、循環器の診療はカテーテル検査のみでなく、心臓超音波、心臓CT、核医学など画像評価、不整脈、心不全、リハビリテーションなど幅広い知識、経験が必要です。このため我々の診療科では初年度1年間は、画像診断、不整脈、心臓血管カテーテルをローテーションで勉強するシステムを構築しています。その間は、当該領域専門の医師の指導下で関係する検査、関係する疾患の診療を行います。その後に、自分の専門領域を決定します。従って、最初から自分の専門を決めてこられる人は多くありません。ローテーションで回っている間に興味を覚えさらに勉強したいと思った領域を選択する人が多いと言えます。大学では、主として自分の専門領域の診療、研究を行いますが、大学からの出張先ではオールラウンドな診療を行うこととなります。なお、近年自分の専門領域と他科との関わりの中での研究の必要性も高まっています。なお、我々の診療科は循環器として勉強を始める前に消火器科、腎臓内科、呼吸器科を研修するシステムを採用しています。他診療科との連携について先生のコメントの中に「他診療科との連携も重要となります。」とありますが、最近ではどのような科との連携が増えてきたのでしょうか?また、先生が他診療科との連携において最も重視されていること、ご苦労などございましたら教えて下さい。今日、診療はどんどん専門に特化していく方向ですが、複雑化、重症化すればするほど、また長期成績を見据えた治療を考えれば考えるほど他科の先生との連携は避けられなくなってきます。緊急で冠動脈バイパス術をお願いすることはほとんど皆無となりましたが、大動脈弁疾患、大動脈疾患の合併が増加、心臓血管外科の先生との連携は必須です。冠動脈インターベンションの40%以上は糖尿病症例です。糖尿病における冠動脈インターベンションの成績改善には糖尿病の管理は不可欠です。また、数%は透析症例であり、造影剤を用いる検査であるため、造影剤腎症の問題は避けて通ることはできません。今日、アテローム血栓症の概念が提唱されるようになりました。冠動脈と同様な病変は脳血管、頸動脈、腎動脈、下肢動脈と全身に及び、冠動脈の管理のみでは不十分であると考えられています。冠動脈インターベンションの経験はこれら動脈病変の治療において非常に有益です。しかし、頸動脈の治療においては脳外科の先生との連携が重要ですし、下肢閉塞性動脈硬化症の治療において、とくに重症虚血肢の症例では創傷治癒の診療をお願いする形成外科の先生、foot careチームとの連携が必須となります。たとえ、下肢の血流を再開のみでは本病態の改善が得られないからです。TASCにおいても多診療科の連携の重要性が述べられています。しかし、大学病院など大きな病院ではこれら診療科が縦割であり、横の連携が機能しにくい傾向があると指摘されています。専門化の弊害といえます。幸い、当院ではその垣根が低く、多くの先生に協力を得ながら診療を行っています。研修について記事拝見しました。研修で全国を回っていらっしゃることを初めて知りました。研修の内容をもう少し詳しくお聞きしたいです。(研修日程や内容、参加者数、参加者層、講師の先生のことなど。)また、先生の研修に参加することは可能でしょうか?このような機会はあまりないかと思いますので是非教えて頂きたいと思っております。年2回春と秋に土、日曜日の2日間行っています。場所は、郡山、神奈川、神戸、宮崎の4か所を持ち回りで行っています。井上直人先生、村松俊哉先生、横井宏佳先生、私の4名で実施しています。当初4名で実施しましたが、2回目以降は各地域の近隣の経験豊かな先生方に講師として協力していただき実施しています。これまでに7回行われ、次回は神戸で10月に実施予定です。対象は初心者の先生方。これから冠動脈形成術を始める、始めたばかりの先生方であり、基本的、標準的な実技をトレーニングしようとするものです。開催地区近隣の先生の参加が多いのが実情ですが、全国から参加可能です。参加者は20‐30名程度で4つのグループに分かれていただき、ローテーションで動物を用いたカテーテルのトレーニング(ガイドワイヤーの曲げ方、挿入、ステントの留置、バルーンの挿入、抜去、IVUSの操作)。コンピューターによるシィミレーション、モデルを用いたロータブレーターの手技などのトレーニングが行われます。実技を中心とした研修ですが、講義による座学も行われます。また、夜には困った、悩んだ症例をもちよりみなで議論、親交を深めております。アドバンスコースは年2回、土曜日の一日コースで及川先生、矢島先生、小川先生、濱崎先生と東京の先生に協力していただき、動物モデルで実施しています。10名前後の少数の研修で、人数の関係もあり東京限定で実施しています。これら研修は非常に体力を要し疲労しますが、若い先生の情熱を感じ、昔の自分達を思い出し、終了するたびにやめられないと企画者一同実感しております。薬剤溶出ステントの副作用について以前、薬剤溶出ステントの副作用について話題になったかと思いますが、現在はどのようになっているのでしょうか?欧米に比べると日本の副作用発生率は少ないとの発表もあったようですが、最前線にいらっしゃる先生のお考えをお聞きしたいです。宜しくお願いします。本邦でも、この種のステントが登場して5年を経過しました。この間、多くの成績が報告され、薬剤溶出ステントは揺るぎないものとなっています。しかし、現在のステントの問題点も指摘され、さらなる改善が望まれています。このデバイスの最大の利点は再狭窄を著しく軽減させたことにあります。ステントにても克服できなかった再狭窄の問題が解決に向け大きく前進しました。糖尿病、小血管など従来のステントで成績に限界があった病変、病態におけるインパクトが最大です。一方、従来のステントでは経験しないような留置後1年以降に生じるステント血栓症が新たな問題として浮かび上がりました。このため、チエノピリジン系の抗血小板薬、アスピリンの2剤の抗血小板薬を長期に服薬することが推奨されています。一方、これら薬剤による出血性リスクの懸念もあり、長期服薬の是非が問われています。この合併症の原因は依然として不詳ですが、解決すべく新たなデバイス開発がなされています。薬剤溶出ステントはステント、コーティング、薬剤の3者で構成されていますが、コーティング、最終的にはステントが溶けてなくなるようなデバイスもすでに臨床で試みられています。先生が指摘されたように、上記の合併症は幸いなことに諸外国に比し本邦では極めて低率であることが報告されています。この理由も定かではありません。幾つかの要因が指摘されています。人種差による血小板機能の差異、薬剤コンプライアンスの差異、血管内超音波を用いた治療手技の差異などです。実臨床では個々の症例で原因は異なっているものと考えられ、本邦の成績が良いのは複合的な作用の結果であろうと推測されます。いずれにしても、デバイスは有効性、安全性の両面が重要であり、このテーマは永遠に追求されていくものと思われます。カテーテルを極めるには?医大に通っています。心臓を悪くして亡くなった者がいるので、心臓血管カテーテルに大変興味があります。先生のように、カテーテルを極めるには、どのような進路や経験を積めば良いのでしょうか?心臓血管カテーテルは急速な進歩であり、これは我々の予想を大きく上回るものでした。まさに、成熟期を迎えたと言えます。幸いなことにこれら進歩を眼のあたりにしながら今日まで診療をすることができました。これらかの先生は今日の診療が当たりまえの位置からスタートするわけですから大変であろうと思います。まず、実技に入る前に清書を読むことをお勧めします。歴史を知ることは、今日の問題点が何故あるのか、どのような模索がされてきたかを理解することにつながります。広い視野が重要で、今後非常に参考になるでしょう。絶対的なルールはありませんが、次に大切なポイントはカテーテル検査を好きになることです。この領域は経験がものをいうことは否めませんから一歩、一歩、着実に前進するしかありません。手技は感覚的な要素も含まれるため、見て盗むといった古典的な手法が依然として必要になります。助手、または聴講者としてみているときも、つねに何故?その理論的背景は、自分ならどうするといった心構えが重要と思います。漠然と時間が過ぎていくのではなく、一例一例が重要です。その意味で色々なオプション、引きだしをもつことができるか、それを実践できるかが重要です。良い上司、環境は重要でしょうが、入ってみないと現状はわからないものです。多くの施設を訪問し、多くの先生の意見を聞いてみるのがよいと思います。その中で何か感じるものがあれば、あとは自分の努力で前進は可能です。昔より、勉強する機会、環境は非常に増えたと思います。狭心症患者に「カテーテル治療」と「バイパス手術」の選択について説明する時の注意点私はクリニックに勤めている医師ですが、近隣に住む、狭心症で大学病院にかかっている方から「カテーテル治療」と「バイパス手術」の選択について相談を受けました。患者の状態によって違うとは思いますが、せめて一般的なメリット、デメリット、再発率などを説明してあげたいと思っております。教科書通りの説明は本を読めばできるのですが、先生の御経験に基づいた注意点やポイントなどありましたら教えて頂ければと思います。両治療の差異は侵襲性と再血行再建の必要性にあります。両者に生命予後の点では差がないことが示されています。冠動脈形成術は、侵襲性が低く1-2時間で手技が終了、2-3日で退院可能です。死亡リスクは1%未満で、社会復帰も早期に可能です。最大のアキレス腱は再狭窄がある一定の頻度で生じることです。しかし、この問題も薬剤溶出ステントが登場して著しく軽減、数%となっています。このため、薬剤溶出ステントが汎用されていますが、この種のステントで治療した場合ステント血栓症を防止するためアスピリン、チエノピリジン系抗血小板薬2剤長期服薬が必須です。服薬アドヒアランスが低い患者さんには不向きと言えます。また、冠動脈形成術は局所の治療であるため、治療部位以外のイベントは回避困難であり、厳格なリスク管理が重要です。一方、冠動脈バイパス術は全身麻酔を要し、初期の侵襲性は高く、死亡リスクは1-3%、脳卒中、開胸に伴う合併症、麻酔に伴いトラブルなどのリスクが若干あります。一回で治療を完結できる可能性が高く、グラフトされた末梢での心血管事故防止効果も期待できます。初期に開存が得られ長期的な開存が期待できます(グラフトの種類により差異がある)。他に両治療戦略を選択する重要なポイントに病変形態、合併疾患の有無があります。病変形態が冠動脈インターベンション治療に向いているか否かの判断が極めて重要です。この事実は最近の臨床試験でも示されています。また、腎機能障害があれば複数回のカテーテル治療は腎機能を悪化させるリスクとなります。高齢者では合併症のリスクが高く、最も重要な病変のみ治療を行い薬物で補完することも戦略となります。穿刺部合併症心臓カテーテル検査を始めて3年目なのですが、穿刺部合併症を最近数例件しました。具体的には浅腸骨回旋動脈の穿孔や、血腫、仮性動脈、動静脈瘻を経験しました。 こういった合併症を防ぐために、普段どういったところに注意されていますか? Femoral Punctureでは穿刺部位は透視で大腿骨頭の位置を確認して刺していますが、シースを挿入する前のワイヤー操作はやはりほとんど透視しながらやった方が良いのでしょうか?仮性動脈瘤はlower punctureで合併しやすく、逆にhigher punctureは腹腔穿刺になるため大腿動脈穿刺において穿刺部位は極めて重要です。これは比較的狭い範囲です。先生が実施しているように透視で大腿骨頭の位置を確認することは重要です。当院では全例実施しています。今後も必ず実施してください。大腿骨頭の下縁以下、上縁以上は避けることになります。穿刺はsingle wall punctureが良いとされています。すなわち、血管の後壁を突き抜けないように動脈の前壁のみを穿刺する手法です。当院では外筒のないアルゴンニードルを使用しています。なお、この穿刺針とラジフォーカスは相性が悪く、スプリングワイヤーを用います。その後穿刺針にガイドワイヤーを挿入します。透視を見ながらの挿入は行っておりませんが、ゆっくり挿入し、抵抗を感じた場合必ず透視で確認を行います。この際にラジフィーカスを用いないのは、迷入しても気づきにくいからです。透視で迷入が確認された場合、検査後造影にて確認を行えば確実です。上記の理由でラジフォーカスを用いる場合は透視下で挿入する方が安全でしょう。静脈は動脈の内側に伴走していますが、血管の蛇行などで上下に重なっていることもあります。止血手技も重要です。Learning curveがあり、ある程度の経験が必要です。とくに高度肥満の人、高齢者、大動脈弁閉鎖不全症など脈圧が高い人は要注意です。皮膚の穿刺点と血管の穿刺点は高さが異なること、拍動を感じながら圧迫することなどが重要であり、single wall punctureが望ましく, lower punctureは止血困難な要因となります。どこに問題があったか、自問してみましょう。しかし、実際には動脈穿刺に伴う合併症はある一定の頻度で合併し得るものです。合併症は早期に見つけること、そのためには疑うことが肝要です。PCIにおけるステントの選択に関してPCIにおけるステントの選択ですが、私は、3mm以上の血管に対してはエンデバースプリント、2mm代の小血管に対してはCypher select、AMIに関してはDriver stentという選択をしております。ザイエンスが登場し、遠隔期の成績の良さはよくわかるのですが、メリットである通過性に関してもエンデバースプリントでことたりますし、ザイエンスのデリバリーバルーンのドッグボーン、コンプライアンスが良すぎるバルーン、ウイギング現象を考えるといまいちザイエンスの使い勝手が悪い気がします。中村先生は、ステント選択に関して何かいいポイントはありませんか?ぜひ教えてください。ステントの成績に関する報告は多数ありますが。これらの報告を実臨床にどのように生かすかが個々の医師に託された仕事であろうと思います。比較試験は限られた対象における検討であり、レジストリーデータは実臨床に近い対象になりますが、バイアスのかかった対象であり、近年はやりのマッチングを行っても比較試験と同等の意味をもたせるには限界があります。最近の臨床試験における各デバイスの差異は数%以内のものであり、基本的に大きな差異はないと言えるでしょう。薬剤の臨床試験と極めて類似して来ました。従って、どのステントを選ぶかは、そのステントの何を生かそうとして選択したかという点に尽きます。抗血小板薬長期服薬困難であるか、ステントのプラットフームが重要な病変であるか、通過性が重要な病変であるかなど個々に適したものを選択すればよいと思います。大切な点は、適切な拡張術で良好なステント拡張を得ることです。この点で、使いなれたステントを用いると予想された結果が得られやすいということは言えるでしょう。さてザイエンスです。ご指摘のごとくコンプライアンスが高く、留意が必要です。特に2.5mmはコンプライアンスが高く、サイズを間違えないことが重要です。また、taper vesselでは近位に合わせたサイズを選択すると危険です。この点先生の意見に賛成です。私は高圧をかけず、低圧で長時間拡張後にステント内を高圧拡張行うようにしています。ステントの特徴はむしろマウントされているバルーンの性能とステントの相性によって決定されるといって過言でありません。従って各ステントにあった拡張を行うことが重要です。それは個々の先生の流儀と相性があるかもしれません。以上のごとく、病変、病態にあったステントを選択し、そのステントにあった拡張術(edge損傷なくステント面積を得る)を行うのが良いと考えています。予後50歳男性心筋梗塞発症15時間後に心カテ施行。1枝は凝固が強く、完全閉塞だが微小な側副血行あり。ヘパリン治療にて24時間経過、バイタルは安定、軽度左室肥大あり。今後の予後予測は?外科適応の指標などあればご教示下さい。ポイントは50歳と若年、1枝病変完全閉塞の2点にあります。本例の梗塞部位は不明ですが、初回梗塞の1枝病変で血行動態が安定しており、高齢でない点から予後は良好、機械的合併症発生のリスクは低いものと予想されます。本例は15時間経過した梗塞例で、側副路の発達が不良な完全閉塞であったとのことから、壊死はすでに完成しているものと推測され、このためこの時点で再灌流による心筋救済のメリットは小さいものと推測されます。結果としての梗塞サイズ、残存心機能が予後を規定します。再灌流が得られていないので梗塞後のリモデリング防止が重要となります。さて、慢性期に1枝完全閉塞であった場合の血行再建の適応は残存虚血の有無、病変部位によって決定されます。虚血がない、または小さい場合は薬物で管理。虚血が残存する場合、バイパス術、PCIなどの血行再建が必要になります。両者の別は病変形態、部位によって決定されます。冠動脈バイパス術は本例が主幹部、LADの近位部にあり、病変形態がPCIに不向きな場合に考慮されます。なお、急性期に完全閉塞であっても自然に再疎通し開存していることが少なくありません。従って、退院前に再造影することをおすすめします。教授 中村正人先生「カテーテルの歴史とともに30年、最先端治療の場で」

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PCI後の抗血小板併用療法の長期投与のリスクと有効性

現行の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)ガイドラインでは、患者の出血リスクが高くない場合は薬剤溶出ステント挿入後、クロピドグレル(商品名:プラビックス)75mg/日投与を用いた抗血小板併用療法を12ヵ月以上行うべきことを推奨している。しかしその勧告に関するエビデンス(リスクおよび有効性)は明らかでない。韓国・ウルサン大学校循環器科のSeung-Jung Park氏ら研究グループは韓国で行った2つの多施設共同無作為化試験からの結果、併用療法がアスピリン単独療法と比べてイベント抑制効果があるとは言えない結果が得られたと報告した。本論点に関する無作為化試験報告はこれが初めてという。NEJM誌2010年4月15日号(オンライン版2010年3月15日号)より。出血リスクの低い2,701例を、併用療法か単独療法に無作為化研究グループは、REAL-LATE試験とZEST-LATE試験の2つの無作為化試験を行い、その結果データを統合し分析した。両試験には、2007年7月~2008年9月に韓国の22の循環器センターで、重大有害な心臓・脳血管イベントおよび大出血のリスクがない合計2,701例(REAL-LATE試験:1,625例、ZEST-LATE試験:1,076例)が登録された。被験者は、クロピドグレル75mg/日+低用量アスピリン(100~200mg/日)の併用療法群(1,357例)と、低用量アスピリン単独療法群(1,344例)に無作為化され、12ヵ月以上投与を受け追跡された。主要エンドポイントは、心筋梗塞・心臓関連死の複合とされた。イベント単独・複合リスクとも、両群間に有意差認められず追跡期間中央値は、19.2ヵ月。2年時点の主要評価項目の累積リスクは、アスピリン単独療法群1.2%に対し、併用療法群は1.8%だった(ハザード比:1.65、95%信頼区間:0.80~3.36、P=0.17)。心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症、再度の血管再生術、大出血、全死因死亡の各リスクについて、両群間で有意差はなかった。またイベント複合リスクについても有意差は認められなかった。アスピリン単独療法群に比べて併用療法群の、心筋梗塞・脳卒中・全死因死亡の複合リスクは、ハザード比1.73(95%信頼区間:0.99~3.00、P=0.051)、心筋梗塞・脳卒中・心臓関連死の複合リスクは、同1.84(0.99~3.45、P=0.06)。研究グループは、「薬剤溶出ステント挿入患者の心筋梗塞・心臓関連死低減に、12ヵ月以上の抗血小板併用療法の効果が、アスピリン単独療法より有意であることは認められなかった」と結論し、「より大規模な長期無作為化試験での検証が必要」とまとめている。(医療ライター:武藤まき)

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エベロリムス溶出ステントは、パクリタキセル溶出ステントよりも有用:COMPARE試験

実地臨床で2つの第2世代薬剤溶出ステントを比較した無作為化試験(COMPARE試験)において、エベロリムス溶出ステント「Xience V」は、パクリタキセル溶出ステント「Taxus Liberte」よりも安全性および有効性が優れることが示された。これらのステントはいずれも、厳格な患者選択基準のもとで実施された冠動脈疾患の臨床試験において再狭窄のリスクが従来のベアメタルステントに比べ低減することが示されている。一方、1)ステント血栓症のリスクは低いものの予測不能で、リスクは時間とともに増大する、2)デバイスの送達能には改善の余地がある、3)重篤な冠動脈疾患患者では再インターベンションが必要となる場合がある、などの課題が残されていた。オランダMaasstad病院循環器科のElvin Kedhi氏らが、Lancet誌2010年1月16日号(オンライン版2010年1月8日号)で報告した。単一施設に登録された1,800例の実地臨床における単盲検試験COMPARE試験の研究グループは、2つの第2世代薬物溶出ステントの安全性と有効性を実地臨床において比較する無作為化試験を実施した。Maasstad病院で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適用となった1,800例(18~85歳)が、エベロリムス溶出ステント群(897例、1,286病変)あるいはパクリタキセル溶出ステント群(903例、1,294病変)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、ステント留置後12ヵ月における安全性と有効性の複合エンドポイント(全死亡、心筋梗塞、標的病変再血行再建)とした。患者にはいずれのステントが留置されたかは知らされなかった。エベロリムス溶出ステント群で、複合エンドポイントの発生リスクが31%低減フォローアップが完遂されたのは1,797例であった。1年後の複合エンドポイントの発生率は、エベロリムス溶出ステント群が6%(56/897例)と、パクリタキセル溶出ステント群の9%(82/903例)に比べ有意に優れていた[相対リスク(RR):0.69、p=0.02]。ステント血栓症[<1%(6例) vs. 3%(23例)、RR:0.26、p=0.002)]、心筋梗塞[3%(25例) vs. 5%(48例)、RR:0.52、p=0.007)]、標的病変再血行再建[2%(21例) vs. 6%(54例)、RR:0.39、p=0.0001)]はいずれもエベロリムス溶出ステント群が有意に優れていた。副次評価項目(心臓死、非致死的心筋梗塞、標的病変再血行再建の複合エンドポイント)の発生率についても、エベロリムス溶出ステント群が有意に優れていた[5%(44例) vs. 8%(74例)、RR:0.60、p=0.005]著者は、「非患者選択を対象とした実地臨床の無作為試験において、エベロリムス溶出ステントはパクリタキセル溶出ステントよりも安全性および有効性が有意に優れた」と結論し、「これらの知見に基づき、日常診療ではパクリタキセル溶出ステントは使用すべきでない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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薬剤溶出ステントvs. ベアメタルステント長期の安全性と有効性の軍配

薬剤溶出ステント(DES)の有効性については、前向き無作為化試験とメタ解析の結果、標的病変部血行再建術(TLR)の施行率はベアメタルステント(BMS)と比べて有意に低いものの、死亡率と心筋梗塞の率は同程度とされている。一方、術後長期におよぶ患者の死亡率はDESが高いなど、長期にわたる安全性と有効性は疑問視されてきた。その点に関するスウェーデンで行われたSCAAR試験の報告が、NEJM誌2009年5月7日号にて発表されている。主要エンドポイントで有意差は認められず2003年から2006年にかけて冠動脈ステント留置術を受けSCAARに登録され、かつ1~5年間(平均2.7年)の完全な追跡調査データが利用できた患者4万7,967例について評価が行われた。主要解析において、DESを1個留置した患者1万294例と、BMSを1個留置した患者1万8,659例について、患者の臨床特性と血管および病変特性の差を調整した後、両者を比較。アウトカム解析は2,380例の死亡と3,198例の心筋梗塞を基に行われた。結果、全体として、DES群とBMS群との差は、死亡または心筋梗塞の複合エンドポイント(薬剤溶出ステントの相対リスク:0.96、95%信頼区間:0.89~1.03)、死亡(0.94、0.85~1.05)、心筋梗塞(0.97、0.88~1.06)の個々のエンドポイントにおいて有意差は認められなかった。また、ステント埋め込みの適応別サブグループ間でもアウトカムに有意差は見られなかった。ハイリスク例では再狭窄率が有意に低下一方、最も早い2003年にDESを留置した患者は、同じ年にBMSを留置した患者より遅発性イベントが有意に高率だった。しかし、それ以降の年に治療された患者ではアウトカムのわずかな差も観察されなかった。留置後1年以内の平均再狭窄率は、100人年当たりDESが3.0に対し、BMSは4.7(補正相対リスク:0.43、95%CI 0.36~0.52)だった。これは、DES留置を39例行って再狭窄が1例予防できるという計算になる。なお、ハイリスク患者の場合は、DESの補正後再狭窄リスクはBMSより74%低く、再狭窄1例を予防するための必要治療数はわずか10例となる。これらから研究グループは、DESはBMSと比較して、長期の死亡または心筋梗塞の出現率は同程度としながらも、ハイリスク患者においては再狭窄率の臨床上有意な低下をもたらすと結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

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ST上昇型心筋梗塞患者へのパクリタキセル溶出ステント留置の有効性と安全性

薬剤溶出ステント(DES)について、ベアメタルステント(BMS)と比較して、初回の経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けたST上昇型急性心筋梗塞患者に対する安全性と有効性に関してはコンセンサスが得られていない。3,006例のST上昇型心筋梗塞患者を、パクリタキセル溶出ステント留置群(2,257例)とBMS留置群(749例)にランダムに割り付け行われた国際的な多施設共同試験HORIZONS AMIの結果が、NEJM誌2009年5月7日号に掲載された。TLR施行率と複合安全性評価で判定本研究の主要エンドポイントは2つあり、第1にステント留置後12ヵ月までの虚血による標的病変部血行再建術(TLR)の施行率(優位性解析)、第2に死亡・再梗塞・脳卒中・ステント血栓症の複合安全性評価(3.0%マージンでの非劣性解析)だった。また、主な副次エンドポイントは、13カ月時点の血管造影による再狭窄の所見とされた。留置1年後の安全性に懸念は見られずパクリタキセル溶出ステントを留置した患者は、BMS留置患者と比較して、12ヵ月時点の虚血駆動によるTLR実施率(4.5%対7.5%、ハザード比:0.59、95%信頼区間:0.43~0.83、P=0.002)、標的血管血行再建術の実施率(5.8%対8.7%、0.65、0.48~0.89、P=0.006)とも有意に低かった。一方、複合安全性に関しては非劣性となった(8.1%対8.0%、1.02、0.76~1.36、絶対差:0.1パーセンテージ・ポイント、95%信頼区間:2.4対2.1、非劣性P=0.01、優位性P=0.92)。パクリタキセル溶出ステントを留置した患者とベアメタルステント留置患者は、12ヵ月時点の死亡率(3.5%対3.5%、いずれもP=0.98)、ステント血栓症(3.2%対3.4%、いずれもP=0.77)とも同程度だった。13ヵ月時点の、50%以上の再狭窄を表すバイナリ再狭窄率は、パクリタキセル溶出ステント群のほうが、ベアメタルステント群より有意に低かった(10.0%対22.9%、ハザード比:0.44、95%信頼区間:0.33~0.57、P

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重度冠動脈疾患の標準治療はCABG:SYNTAX試験

重度の冠動脈疾患に対しては冠動脈バイパス術(CABG)が標準治療とされてきたが、近年は急速に、薬剤溶出ステントを用いた経皮的冠動脈形成術(PCI)の施行が増えている。果たしてPCIが標準治療と成り得るのか。冠動脈3枝病変または左冠動脈主幹部病変(またはその両方)を有する患者を対象に、PCIとCABGを比較したSYNTAX試験の結果報告が、NEJM誌2009年3月5日号(オンライン版2009年2月18日号)にて発表された。患者1,800例を無作為割り付けし、比較試験対象患者は1,800例。全員これまでにCABGまたはPCIを受けたことがなく、また心臓外科医とインターベンション専門医によって、どちらの術式でも同程度の血行再建が得られると判断されていた。無作為化割り付けの比率は1対1。主要エンドポイントは、無作為化後12ヵ月間の、心臓または脳血管の重大な有害イベント(全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞あるいは再度の血行再建)とし、2群間の非劣性試験が実施された。なお解剖学的特徴または臨床状態から、2つの治療選択肢のうち1つだけが有益と判断された患者はランダム化から除外され、CABGまたはPCIのいずれかで登録された。手術前特性は2群間で同程度だった。1年後の複合エンドポイントが、CABGのほうがより低い12ヵ月後の重大な心臓または脳血管イベント発生率は、PCI群のほうが有意に高かった(CABG群12.4%、PCI群17.8%、P=0.002)。主なイベントは再度の血行再建(同5.9%対13.5%、P

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薬剤溶出ステントの2年後転帰はベアメタル・ステントより有利

薬剤溶出ステント(DES)はベアメタル・ステント(BMS)より再狭窄率を低下させるが、ステント血栓症リスクの増加にも関係するという懸念は依然として強い。米国・ダートマス大学医学部のDavid J. Malenka氏らは、DES認可前と認可後にステント留置術を受けた患者群について、それぞれ2年後の転帰を比較した結果、「DESは血管再生術再施行の必要性を低下させ、死亡率とST上昇心筋梗塞のリスクはBMSと同じである」と報告した。JAMA誌2008年6月25日号より。DES認可前後のメディケア受給者の転帰を比較本研究は、非緊急的な冠動脈ステント留置術を受けたメディケア受給者を対象に、DESの有効性について転帰を比較するために行われた。2003年4月以前は、米国FDAが認可しメディケアが適用されたのはBMSだけだったが、その後、DESが認可されて急速に普及した。このため、BMSだけを利用できた2002年10月~2003年3月(BMS期コホート)に治療を受けたメディケア受給者38,917例と、類似疾患の患者28,086例のうち61.5%はDES、38.5%がBMS留置術を受けた2003年9~12月(DES期コホート)を追跡調査した。主要評価項目は、冠動脈血管再生術(経皮的冠動脈介入、冠動脈バイパス術)、ST上昇型心筋梗塞、2年間の追跡調査中の生存とした。血管再生術再施行の必要性が有意に低下ステント留置から2年以内の経皮的冠動脈介入の再施行率を比較すると、BMS期に治療を受けた患者では20.0%、DES期の患者では17.1%だった(P<0.001)。同じく冠動脈バイパス施行率はBMS群4.2%に対してDES群は2.7%だった(P<0.01)。2つの時期における、血管再生術再施行の必要性の違いは、リスク補正後も有意差を保っていた(ハザード比:0.82、95%信頼区間:0.79~0.85)。2年後の時点で、BMS群とDES群の未補正死亡率に違いはなかった(8.4%対8.4%、P=0.98)が、ST上昇心筋梗塞はDES群がわずかに減少した(2.4%対2.0%、P<0.001)。同期時の補正死亡率とST上昇型心筋梗塞はどちらも類似していた(ハザード比:0.96、95%信頼区間:0.92~1.01)。Malenka氏は「ルーティンな診療におけるDESの広範な採用は、血管再生術再施行の必要性を低下させ、2年後の時点での死亡率またはST上昇型心筋梗塞のリスクはBMSと変わらない」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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ステント留置術 vs 冠動脈バイパス術 長期転帰に有意差なし

冠動脈ステント留置術と冠動脈バイパス術(CABG)の治療効果に関する比較研究はこれまでにも行われてきたが、非保護左冠動脈主幹部の病変にはCABGが標準治療とされるため、両者の長期転帰には限られたデータしかなかった。今回、欧米よりもこの部位へのステント留置術が広く行われている韓国・カソリック大のKi Bae Seung氏らが、比較研究の結果を報告。両手技の患者死亡率に有意差は認められないものの、ステント留置術のほうが標的血管の血行再建術施行率が高まる傾向があるとしている。NEJMオンライン版2008年3月31日号、本誌2008年4月24日号より。ステント留置術1,102例とCABG 1,138例を比較 対象は、韓国で2000年1月~2006年6月の間に、非保護左冠動脈主幹部病変に対する治療として、ステント留置術を受けた患者1,102例と、CABGを受けた患者1,138例。コホート全体と、ステント種類別のサブグループについて、傾向スコア・マッチング法で有害転帰を比較した。比較項目は、死亡、Q波心筋梗塞か脳卒中または両者の複合転帰による死亡、標的血管血行再建術。死亡リスク、複合転帰ともに有意差なし結果、ステント群とバイパス群の間に、死亡リスク、複合転帰リスクで有意差は見られなかった。ステント群のハザード比は死亡リスク1.18(95%CI:0.77~1.80)、複転帰リスク1.10(同0.75~1.62)。しかし、標的血管血行再建術の施行率が、ステント群のほうがバイパス群より有意に高かった(ハザード比:4.76、95%CI:2.80~8.11)。ステント種類別では、ベアメタル・ステント群とバイパス群の比較も、薬剤溶出ステント群とバイパス群の比較も類似の結果だったが、薬剤溶出ステント群のほうが、死亡率と複合エンドポイント発生率が高まる傾向があった。このためKi氏らは、ステント留置術とCABGの間に、複合エンドポイント死亡率の有意差は見いだせないと結論した。ただ、ステント留置術は、薬剤溶出ステントを使用した場合でも、CABGより標的血管血行再建術の施行率が高まる傾向が見られる、としている。(武藤まき:医療ライター)

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下肢血管形成術でパクリタキセル・コーティング・バルーン使用は再狭窄を有意に減少

薬剤溶出ステントは冠動脈の再狭窄を減少させるものの、末梢動脈での有効性は臨床試験では証明されていなかった。そのため下肢血管形成術における、パクリタキセルでコーティングされた血管形成術用バルーンと、血管造影剤に溶解したパクリタキセルの効用について調査が、エーベルハルト・カール大学(ドイツ)Gunnar Tepe氏らによって行われた。NEJM誌2008年2月14日号より。大腿膝下動脈で遠隔期損失径を比較調査は、大腿膝窩動脈の狭窄、または閉塞を伴う患者154例を、パクリタキセルでコーティングされた標準的バルーンカテーテルによる治療群、コーティングなしのバルーン+造影剤に溶解したパクリタキセル治療群、コーティング・バルーンも含有造影剤もなしの群(対照群)にランダムに割り付け、小規模の多施設共同試験を行った。主要評価項目は6ヵ月後の遠隔期損失径。患者の平均年齢(±SD)は68歳(±8)、喫煙者が24%、そして糖尿病が49%だった。病変の27%は完全閉塞、36%は再狭窄であった。平均の病変長は7.4±6.5 cmで、治療群間のベースライン特性には有意差がなかった。パクリタキセル・コーティングに起因する有害事象は認められなかった。パクリタキセル・コーティング・バルーンで有意な効果6ヵ月後の対照群の遠隔期損失径の平均値は1.7±1.8mm、一方、パクリタキセル・コーティング・バルーンによる治療群は0.4±1.2mm(P

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DESへのCOX2阻害薬追加で再狭窄抑制

服用による心筋梗塞リスク増加が懸念されている選択的COX2阻害薬だが、その1つcelecoxibは、薬剤溶出ステント(DES)留置前からの服用開始により6ヵ月間の経皮的冠血行再建術(PCI)再施行を減少させる可能性が示唆された。Lancet誌8月18日号にNational University of Seoul(韓国)のBon-Kwon Koo氏らが無作為化オープン試験の結果として報告した。抗血小板薬中止後の超遠隔期血栓がDESの最大問題となっている現在、この研究の臨床的価値はどのようなものだろうか──。追跡は6ヵ月間対象となったのは狭心症、あるいは負荷試験による虚血所見が陽性で、かつ責任病変にインターベンション歴のない274例。このうち136例を celecoxib群、138例を対照群に無作為化した後盲検化せずにパクリタキセル溶出ステントを留置し、アスピリンとクロピドグレル服用の上、6ヵ月間追跡した。追跡終了時のスタチン、β遮断薬、レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬の服用率は両群で同等だった。再狭窄は有意に抑制され、PCI再施行も減少第一評価項目は「冠動脈造影(CAG)で評価した血管ステント留置部内腔径の変化」である。試験終了時にCAGを施行できたのはcelecoxib群、対照群とも112例だった。その結果、celecoxib群では対照群に比べ、ステント留置部の血管内腔径減少が0.26mm有意に(p

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