ステント血栓症の抑制効果、コバルトクロム合金製エベロリムス溶出ステントが最も高い

提供元:ケアネット

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公開日:2012/04/26

 



コバルトクロム合金製エベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)は、ベアメタルステント(BMS)や他の薬剤溶出ステントに比べステント血栓症のリスクが低いことが、イタリアPoliclinico S Orsola(ボローニャ市)のTullio Palmerini氏らの検討で示された。薬剤溶出ステントとBMSのステント血栓症のリスクについては議論が続いているが、ステント血栓症の総発生率の低さを考慮すると、各ステントの差を正確に評価するには、膨大なサンプル数が必要とされる。ネットワークメタ解析は、共通の治療法をレファランスとして個々の治療法の間接的な比較を可能にする新しい研究法で、サンプル数を増やすことができるという。Lancet誌2012年4月14日号(オンライン版2012年3月23日号)掲載の報告。

ステント血栓症のリスクをネットワークメタ解析で評価




研究グループは、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を受けている薬剤溶出ステントとBMSによるステント血栓症の発生率を検討した無作為化試験を対象に包括的なネットワークメタ解析を行った。

解析の対象となった薬剤溶出ステントは、CoCr-EES、プラチナクロム合金製エベロリムス溶出ステント(PtCr-EES)、パクリタキセル溶出ステント(PES)、シロリムス溶出ステント(SES)、Resoluteゾタロリムス溶出ステント(Re-ZES)、ホスホリルコリンポリマーベースのゾタロリムス溶出ステント(PC-ZES)の6つであった。

Academic Research Consortium(ARC)のステント血栓症の定義に基づき、definiteステント血栓症の1年発生率を主要評価項目とした。ランダム効果モデルを用いたネットワークメタ解析を行い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。感度分析には固定効果モデルを用いた。
パラダイムシフトの可能性も




49試験に参加した5万844例が解析の対象となった。definiteステント血栓症の1年発生率は、CoCr-EESがBMSに比べ有意に低かった(OR:0.23、95%CI:0.13~0.41)。30日発生率(同:0.21、0.11~0.42)および31日~1年の発生率(同:0.27、0.08~0.74)も、CoCr-EESがBMSよりも有意に低値を示した。

CoCr-EESの1年definiteステント血栓症発生率は、PES(OR:0.28、95%CI:0.16~0.48)、SES(同:0.41、0.24~0.70)、PC-ZES(同:0.21、0.10~0.44)、Re-ZES(同:0.14、0.03~0.47)との比較でも、有意に良好だった。

フォローアップ期間2年の時点でも、CoCr-EESのdefiniteステント血栓症の発生率はBMS(OR:0.35、95%CI:0.17~0.69)やPES(同:0.34、0.19~0.62)よりも有意に低かった。BMSよりも2年definiteステント血栓症発生率が低いステントはほかにはなかった。

著者は、「2年以内のステント血栓症の発生率はCoCr-EESが最も低かった」と結論し、「今後、無作為化試験でCoCr-EESがBMSよりもステント血栓症が少ないことが示されれば、パラダイムシフトが起きるだろう」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)