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腎性貧血患者に新たな治療選択肢を提供/グラクソ・スミスクライン

 6月29日、グラクソ・スミスクライン株式会社は、腎性貧血の経口低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬ダプロデュスタット(商品名:ダーブロック)の製造販売承認を世界に先駆け、日本で最初に取得したと発表した。腎障害で苦しむ患者は約1,100万人 腎臓は、エリスロポエチンなどのホルモンを産生することで赤血球の産生を促進するが、腎障害を有する患者では腎臓が十分な量のエリスロポエチンを産生できなくなることから、腎性貧血がよく起こる。また、腎機能の低下に伴い、腎性貧血の有病率も高くなる。現在は、主に赤血球造血刺激因子(ESA)注射剤による治療が行われている。 現在わが国では慢性腎臓病(CKD)ステージ3~5の患者は1,090万人推定され、このうち約32%に貧血が見られるという。世界中では10人に1人がCKDに罹患しているとされており、2017年には本症が原因で100万人を超える人々が亡くなっている。経口投与で患者のアドヒアランスを向上させ得る 今回製造販売承認されたダプロデュスタット(以下「本剤」という)は、経口の低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素の阻害薬で、透析の有無に関わらず、成人の腎性貧血を効能・効果とした治療薬。酸素を検知するプロリン水酸化酵素を阻害することで、低酸素誘導因子を安定化し、高地で身体に生じる生理学的作用と同様に、赤血球産生や鉄代謝に関与するエリスロポエチンやその他の遺伝子の転写を誘導すると考えられている。本剤は、ESA注射剤と異なり、経口投与が可能で、低温保管の必要性がない新しい治療選択肢として開発された。 今回の承認は、主にわが国で実施された第III相試験における有効性および安全性の結果に基づいており、国内で実施された3つの第III相試験の概要は以下の通り。•ESA注射剤で治療中の血液透析患者271例を対象とした52週間のダプロデュスタットとダルベポエチンアルファ(遺伝子組換え)の比較試験•CKDステージ3~5の保存期患者(ESA注射剤による治療の有無は問わない)299例を対象とした52週間のダプロデュスタットとエポエチンベータペゴル(遺伝子組換え)の比較試験。この試験には、腹膜透析患者56例も含まれる(全例がダプロデュスタットを投与)•ESA注射剤で治療されていない血液透析患者28例を対象とした24週間の試験(全例がダプロデュスタットを投与) これらのほか、現在、心血管イベントを評価項目とする2つのアウトカム試験ASCEND-DとASCEND-NDを含むグローバル第III相プログラムが進行中であり、これらの試験結果は世界各国における承認申請に使用される予定。ダーブロックの概要製品名:「ダーブロック錠」(1mg・2mg・4mg・6mg)一般名:ダプロデュスタット効能または効果:腎性貧血用法及び用量:[保存期慢性腎臓病患者]・赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合 通常、成人にはダプロデュスタットとして1回2mgまたは4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。・赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合 通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。[透析患者] 通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。承認取得日:2020年6月29日製造販売:グラクソ・スミスクライン株式会社販売:協和キリン株式会社なお、薬価・発売日は未定。

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早期DKD併発1型糖尿病、尿酸値低下でも腎機能改善せず/NEJM

 1型糖尿病と早期~中等度の糖尿病性腎臓病(DKD)を有する患者において、アロプリノールの3年投与により血清尿酸値を36%低下させても、腎アウトカムに関して臨床的に意味のある利益のエビデンスは得られなかったとの研究結果が、米国・ハーバード大学医学大学院のAlessandro Doria氏らが実施した「PERL試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2020年6月25日号に掲載された。血清尿酸の高値は、DKDリスクを増加させることが示唆されている。1型糖尿病と早期~中等度のDKDを併発する患者では、血清尿酸値をアロプリノールで低下させると、糸球体濾過量(GFR)の低下が緩徐化される可能性があるという。3ヵ国16施設が参加した無作為化試験 本研究は、3ヵ国(米国、カナダ、デンマーク)の16施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、アロプリノールで血清尿酸値を低下させることで、早期DKDを併発する1型糖尿病患者の腎機能低下を遅延できるかを検証する目的で行われた(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所[NIDDK]などの助成による)。 対象は、1型糖尿病で、推算GFRが40.0~99.9mL/分/1.73m2体表面積であり、DKDの定義(アルブミン尿[尿中アルブミン排泄率:20~3,333μg/分]または過去3~5年間にGFRが年間3mL/分/1.73m2以上低下の所見または既往歴を有する)を満たし、血清尿酸値が4.5mg/dL以上の患者であった。 被験者は、9週間の導入期間ののち、アロプリノールまたはプラセボの経口投与を受ける群に無作為に割り付けられた。アロプリノールは、100mg/日を4週間投与された時点で、推算GFRが≧50mL/分/1.73m2の患者は400mg/日に調整され、25~49mL/分/1.73m2の患者は300mg/日、15~24mL/分/1.73m2の患者は200mg/日を投与された。 主要アウトカムは、3年の介入期間と2ヵ月の休薬期間の終了後におけるベースライン値で補正したGFRとした。GFRはイオヘキソールで測定した。副次アウトカムには、イオヘキソールに基づくGFRの年間低下率や休薬期間後の尿中アルブミン排泄率などが含まれ、安全性の評価も行われた。休薬期間後のGFRは同じ、重篤な有害事象にも差はない 530例(平均年齢51.1±10.9、男性66.2%)が登録され、アロプリノール群に267例、プラセボ群には263例が割り付けられた。 ベースラインの全体の平均糖尿病罹病期間は34.6±12.3年、イオヘキソールによる平均GFRは68.0±16.9mL/分/1.73m2、平均推算GFRは74.7±19.1mL/分/1.73m2、平均血清尿酸値は6.1±1.5mg/dL、平均糖化ヘモグロビン値は8.2±1.3%であった。90.0%がレニン-アンジオテンシン系阻害薬による治療を受けていた。 介入期間中に、アロプリノール群の平均血清尿酸値は6.1mg/dLから3.9mg/dLへ低下し(ベースラインから36%の低下)、休薬期間終了後はベースラインとほぼ同じ値(5.9mg/dL)に上昇した。プラセボ群は6.1mg/dLから変化しなかった。 休薬期間終了後のイオヘキソールによる平均GFRは、両群とも61.2mL/分/1.73m2で、群間差は0.001mL/分/1.73m2(95%信頼区間[CI]:-1.9~1.9、p=0.99)であり、両群間に有意な差は認められなかった。 イオヘキソールによるGFRの平均年間低下率は、アロプリノール群が-3.0mL/分/1.73m2、プラセボ群は-2.5mL/分/1.73m2であり(群間差:-0.6mL/分/1.73m2、95%CI:-1.5~0.4)、有意差はなかった。一方、平均尿中アルブミン排泄率は、アロプリノール群がプラセボ群に比べ、休薬期間終了後には40%(95%CI:0~80)、介入期間終了後は30%(0~60)高かった。 重篤な有害事象は354件(アロプリノール群171件、プラセボ群183件)発生した。重篤な有害事象が1件以上発生した患者の割合は両群でほぼ同等で(93/267例[34.8%]、82/263例[31.2%])、これらのイベントが原因で試験薬を中止した患者の割合も同様であった(16例[6.0%]、11例[4.2%])。重篤な有害事象はまれであったが、致死的重篤な有害事象が発生した患者の数はアロプリノール群で多かった(10例、4例)。 著者は、「尿中アルブミン排泄率は、アロプリノール群がプラセボ群よりも不良であることが示唆されたが、アロプリノールの安全性を懸念する前に、他のDKD患者コホートで、この知見を独立的に検証する必要がある」としている。

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アロプリノールはCKDの進行を抑制するか?/NEJM

 進行リスクが高い慢性腎臓病(CKD)患者において、アロプリノールによる尿酸低下療法はプラセボと比較し、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下を遅らせることはなかった。オーストラリア・St. George HospitalのSunil V. Badve氏らが、アロプリノールによる尿酸低下療法の有効性を検証した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Controlled Trial of Slowing of Kidney Disease Progression from the Inhibition of Xanthine Oxidase:CKD-FIX」の結果を報告した。血清尿酸値の上昇はCKDの進行と関連している。しかし、アロプリノールを用いた尿酸低下療法が進行リスクの高いCKD患者のeGFR低下を抑制できるかどうかは不明であった。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。2年間のeGFRの変化を、プラセボと比較し評価 研究グループは、2014年3月~2016年12月の期間に、オーストラリアおよびニュージーランドの31施設において、尿中アルブミン(mg)/クレアチニン(g)比が265以上または前年からのeGFR低下が3.0mL/分/1.73m2で、痛風の既往がない、ステージ3または4の成人CKD患者を、アロプリノール(100~300mg/日)群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、CKD-EPI(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)式を用いて算出した、無作為化から104週(2年)までのeGFRの変化であった。eGFRの変化はプラセボと有意差なし 目標症例は620例であったが、登録の遅れのため369例(目標の60%)がアロプリノール群(185例)またはプラセボ群(184例)に割り付けられた時点で登録中止となった。無作為化直後に各群3例が同意を撤回し、363例が主要評価項目の解析対象となった。363例のベースラインにおけるeGFR平均値は31.7mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比の中央値は716.9、平均血清尿酸値は8.2mg/dLであった。 主要評価項目であるeGFR変化量は、アロプリノール群が-3.33mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-4.11~-2.55)、プラセボ群が-3.23mL/分/1.73m2/年(95%CI:-3.98~-2.47)であり、両群に有意差は認められなかった(平均群間差:-0.10mL/分/1.73m2/年、95%CI:-1.18~0.97、p=0.85)。 重篤な有害事象は、アロプリノール群で182例中84例(46%)、プラセボ群で181例中79例(44%)に認められた。 なお、著者は、登録が完全ではなかったこと、治療を中断した患者の割合が高かったこと、代替エンドポイントを使用したことなどを研究の限界として挙げている。

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静脈栄養製剤の「使用上の注意」改訂で透析・血液ろ過患者は慎重投与に/厚労省

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)は2020年6月25日付の課長通知で、一般用静脈栄養製剤及び肝不全用アミノ酸製剤の添付文書の改訂指示を発出した。改訂対象には一般用静脈栄養製剤計25品目(アミノ酸製剤10品目[アミパレン:大塚製薬工場 ほか]、末梢静脈栄養用製剤5品目[ビーフリード:大塚製薬工場 ほか]、中心静脈栄養用基本液4品目[ハイカリック:テルモ ほか]、中心静脈栄養用キット製剤6品目[フルカリック:テルモ ほか])と肝不全用アミノ酸製剤4品目(アミノレバン:大塚製薬工場 ほか)が該当する。 改訂内容は以下のとおり。・透析又は血液ろ過患者を、禁忌の「重篤な腎障害のある患者」「高窒素血症の患者」及び「乏尿のある患者」から除外し、慎重投与とする。・重要な基本的注意の項に、「透析又は血液ろ過を実施している重篤な腎障害のある患者又は高窒素血症の患者において、水分、電解質、尿素等の除去量、蓄積量は透析の方法及び病態によって異なるため、血液生化学検査、酸塩基平衡、体液バランス等の評価により患者の状態を確認した上で投与開始及び継続の可否を判断する」旨を記載する。 この改訂は、日本静脈経腸栄養学会(現:日本臨床栄養代謝学会)と日本集中治療医学会からの一般用静脈栄養製剤における重篤な腎障害のある患者に係る禁忌事項の見直しに関する要望書の提出を踏まえたもの。また、海外の添付文書において、透析または血液ろ過患者への投与が禁忌とされていない、肝不全用アミノ酸製剤についても透析または血液ろ過患者では静脈栄養製剤を投与した場合と同様、過剰な尿素等は適切に管理されるものと考える、などの調査結果に基づいて行われた。

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新型コロナで低カリウム血症、その原因は?

 中国・温州医科大学のDong Chen氏らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者における治療転帰との関連性を見いだすため、低カリウム血症の有病率、原因、および臨床的影響を調査する目的で研究を行った。その結果、COVID-19患者において低カリウム血症の有病率が高いこと、さらにその原因として、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合することにより、ACE2(レニン-アンジオテンシン系を抑制)が分解され、レニン-アンジオテンシン系が活性化して持続的に腎からカリウムが排泄されることが示唆された。JAMA Network open誌2020年6月1日号掲載の報告。COVID-19重症および重篤患者40例のうち34例が低カリウム血症 本研究は、2020年1月11日~2月15日までの期間に中国・Wenzhou Central Hospital とWenzhou No.6 People's Hospitalで実施。対象者は入院中Chinese Health Bureauの基準に従いCOVID-19の診断を受けた患者とした。患者を重症低カリウム血症(血漿カリウム濃度:<3mmol/L)、低カリウム血症(同:3~3.5mmol/L)、カリウム正常値(同:>3.5mmol/L)に分類し、臨床的特徴、治療、および臨床転帰について3群間で比較した。主要評価項目は低カリウム血症群の有病率とカリウム補充による治療への反応で、血漿と尿中カリウムの濃度を分析した。また、患者は抗ウイルス療法などを受け、研究者らはそれらの疫学的および臨床的特徴を収集した。 新型コロナウイルス感染症と低カリウム血症の関連を調査した主な結果は以下のとおり。・175例(女性:87例[50%]、平均年齢±SD:45±14歳)の内訳は、重症低カリウム血症:31例(18%)、低カリウム血症:64例(37%)、およびカリウム正常値:80例(46%)だった。・重症低カリウム血症群の患者は、低カリウム血症群の患者と比べ有意に高体温だった(平均体温±SD:37.6±0.9℃ vs. 37.2±0.7℃、差:0.4℃、95%信頼区間[CI]:0.2~0.6、p=0.02)。また、カリウム正常値群の患者体温は、平均体温±SD:37.1±0.8℃(差:0.5℃、95%CI:0.3~0.7、p= 0.005)だった。・重症低カリウム血症群の患者はクレアチンキナーゼ(CK)も高く、平均±SD:200±257U/L(中央値:113 U/L、四分位範囲[IQR]:61~242U/L)、 低カリウム血症群は同:97±85U/L、カリウム正常値群は同:82±57U/Lだった。・クレアチニンキナーゼMB分画タンパク量(CK-MB)は、重症低カリウム血症群で平均±SD:32±39U/L(中央値:14 U/L、IQR:11~36U/L)、低カリウム血症群で同:18±15U/L、カリウム正常値群で同:15±8U/Lだった。・乳酸脱水素酵素(LDH)は、重症低カリウム血症群で平均±SD:256±88U/L、低カリウム血症群では同:212±59U/L、およびカリウム正常値群は同:199±61U/Lだった。・C反応性タンパク(CRP)は、重症低カリウム血症群で平均±SD:29±23mg/L、低カリウム血症群では平均±SD:18±20mg/L(中央値:12mg/L、IQR:4~25mg/L)およびカリウム正常値群では平均±SD:15±18mg/L(中央値:6U/L、IQR:3~17U/L)だった。・COVID-19重症および重篤患者40例のうち34例(85%)は低カリウム血症だった。重症低カリウム血症の患者には、入院中に1日当たり40mEqのカリウムが投与され、平均総投与量±SDは塩化カリウムで453±53mEqだった。・回復において、カリウム補充への反応は良好だった。

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DAPA-HF試験の新データをADAで発表/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2020年6月12日から開催された第80回米国糖尿病学会オンライン学術集会において、主要第III相試験である“DAPA-HF試験”および“DECLARE-TIMI58試験”の新たなデータを発表した(本集会では4つの口頭発表を含む23の演題が採択された)。心血管、腎、代謝領域の治療開発に向けて 発表された主なハイライトは次のとおり。(1)DAPA-HF試験・DAPA-HF試験のデータに関する口頭発表: 左室駆出率が低下した心不全患者における2型糖尿病新規発症率に対するダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の効果(抄録#271-OR)・DECLARE-TIMI58試験の新たなサブ解析の口頭発表: 心血管疾患の既往もしくは心血管疾患リスクの増加した2型糖尿病患者さんにおける急激な腎機能低下に対するダパグリフロジンの効果(抄録#303-OR)・DAPA-HF試験の解析: 2型糖尿病に対する基礎治療がダパグリフロジンによる心不全治療の効果に影響を与えるかについての検討(抄録#1112-P)(2)DISCOVER試験・国際的リアルワールド観察研究であるDISCOVER試験の新たな解析についての口頭発表: 血糖降下薬による2次治療を開始する2型糖尿病患者さんにおける健康関連QOLに影響を及ぼす因子について(抄録#40-OR)(3)EXSCEL試験・エキセナチド(商品名:ビデュリオン)週1回投与のeGFRスロープとベースラインUACRの関数としてのUACRに対する効果: EXSCEL試験の事後解析(抄録#958-P)(4)Cotadutide・GLP-1とグルカゴン受容体デュアルアゴニストであるcotadutide(開発中)における新たな第II相試験データの口頭発表: 2型糖尿病患者さんの血糖値および肝臓脂肪・肝臓グリコーゲン貯蔵量に対する好ましい影響について(抄録#354-OR)(5)THEMIS試験・THEMIS試験における糖尿病関連因子のサブグループ解析: 冠動脈疾患を合併する2型糖尿病患者のチカグレロル(商品名:ブリリンタ)による治療結果における、2型糖尿病の罹病期間、ベースラインHbA1c値、基礎治療の血糖降下薬が及ぼす影響(抄録#403-P)(6)その他・18カ国の医師1,600名以上を対象に、2型糖尿病患者の初期治療およびクリニカルイナーシャ(患者さんが治療目標に達していないのに適切な治療が行われていない状態)を調べた国際調査の結果(抄録#1188-P)

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第11回 GLP-1製剤の自由診療問題と教科書的な生活習慣改善指導との共通点

痩せてスリムな体になりたいというのは比較的万人に共通した願望ではないだろうか。とりわけ年齢を経れば代謝が低下し、太りやすくなるため、中年太りを解消したいという人は私の周りでも少なくない。ところが食事療法、運動療法は大変だから、なるべく楽に痩せたい。そんな「夢」を逆手に取る行為に日本医師会がご立腹のようである。6月17日の定例会見で、日本医師会(以下、日医)副会長の今村 聡氏が、一部の医療機関においてダイエット向けに糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬を自由診療で処方していることを問題視し、そのことが報じられた。確かに好ましい話ではない。だが、こうした適応外処方の自由診療、あるいは薬の個人輸入代行業はかなり前から跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)している。実際、私も知人から個人輸入代行で痩せる薬を入手したと見せられたことがある。この時、見せられたのは抗てんかん薬のトピラマート(商品名:トピナ)である。てんかん専門医から肥満傾向のてんかん患者には使いやすいと聞いたことがあるが、こんな難しい薬が医師の管理もなく、ダイエット目的で入手できるのだと改めて驚いたものだ。これ以外にも同じく糖尿病で使われるSGLT2阻害薬も痩せ薬としてアンダーグラウンドで取引されていると聞いたことがある。GLP-1受容体作動薬の場合、既に海外で肥満症治療薬として承認されているのは事実であり、日本国内でも臨床試験中。ちなみにGLP-1受容体作動薬をダイエット目的で処方している自由診療クリニックのホームページを見ると、海外で承認済みであることを強調しながら、「日本では製薬メーカーで治験が行われず、日本では未承認です(原文ママ)」と事実とは異なる記載をしている。記事中ではGLP-1受容体作動薬の副作用として下痢が記述されているが、むしろ私が危惧するのは低血糖発作のほうだ。そもそもダイエットをしている人は、言っちゃ悪いが極端な糖質制限など偏った食事をしている人が通常集団よりも多いと推察される。そんなところにGLP-1受容体作動薬を投与しようものならば、低血糖発作リスクは高いはずである。その辺を会見で今村氏が言及したかどうかは個人的に気になる。というのも、痩せたい願望が強い人にとっては、下痢レベルの副作用を無視することは十分に考えられる。結果として、逆にこの記事が「寝た子を起こす」がごとく、痩せたい願望を持つ人への誘因になってしまう可能性すらある。(ちなみに日本医師会の定例記者会見は決まった企業メディアにしか参加が認められていない。企業メディアの場合は新たに参加が認められるケースもあるが、フリーランスは実績にかかわらず参加不可。私も過去に広報部門に参加を希望したが一蹴されている)問題のある自由診療はGLP-1だけじゃないしかし、このニュースに私は割り切れないものを感じてしまう。確かに今回のGLP-1受容体作動薬の自由診療による処方は問題ありだし、警告すべきものとは思う。しかし、従来から自由診療では、問題がある治療が行われていることをまさか日医執行部が知らぬわけはないだろう。代表例ががん患者に対する細胞免疫療法。要は患者から採取したT細胞などを増やし、活性化させて体内に戻してがんと戦わせるという「治療」だ。だが、これらは科学的エビデンスが確立されていないのは周知のこと。近年、血液がんを対象に承認されたキメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T細胞療法)のキムリアなどの成り立ちを見ても分かるように、ヒトのT細胞を抽出してちょっとやそっと増やしたりして体内に戻しても生存期間延長や治癒など得られないことは医師ならばわかるはずだ。しかし、がん終末期の患者が藁をもすがる思いで1回数十万円から百万円超ものこの「治療」に貴重なお金を注ぎ、期待したであろう効果を得られず患者が亡くなっている現実はもう30年以上横行している。むしろ例え事実上「糠に釘」でも日医が警鐘を鳴らし続けることが望ましいのではないだろうか。生活習慣改善指導は教科書的でいいのか?それ以上に割り切れないと思う点もある。それは痩せたい人への事実上の医療不在である。ちなみにここでいう痩せたい人とは、単に美容のために痩せたい人を意味するのではなく、疾患あるいはその予備群、代表例を挙げると生活習慣病で肥満傾向を持つ人などだ。患者の立場ならば、医師からなるべく体重を減らすため、過食を止め、運動するよう「指導」された経験のある人はいるだろう。だが、誤解を恐れずに言えば「そう言われただけ」の人がほとんどのはずだ。具体的にどんな運動をどれだけやればいいか、過食を止めるためにどうすれば良いか、何をどのように食べるべきか、単に教科書的文章の読み上げではなく、自分の生活に合わせてどのようにすればよいかを具体的に指導を受けた経験がある人は稀ではないだろうか?そのことをうかがわせる実例として、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2019」を挙げよう。同ガイドラインは書籍として総ページ数は約380ページだが、食事療法、運動療法に関する記述ページはその1割弱。内容はほぼ国内外のエビデンスをさらりと紹介している程度である。多くの経口糖尿病治療薬の添付文書には判で押したように「本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること」という記載がありながら、医師による食事療法、運動療法の指導も判で押したような教科書的なものばかりだ。もちろん個々の患者に合った運動療法、食事療法を指導することも、それを患者が継続することも容易でないことは分かるが、現状はあまりに受け皿がなさすぎるなかで、自由診療だけをとがめるのは穴の開いたバケツで水をくむようなものである。実際、私も経験がある。血液検査の結果、中性脂肪が若干正常上限値を上回っていた時のことだ。医師から次のように言われ、ポカン口状態になった。「肉、魚、卵はできるだけ控えるように」は? 何食べればいいんですか? 大豆? 豆腐? 納豆? 肉、魚、卵はできるだけ控えたら外食では食べるものがない。私たちが聞きたいのは、たとえば「お肉は脂身を残して量は少なめにして、その代わりに豆腐などを副菜に取り入れて」などより具体的なことである。幸いこの中性脂肪高値は一時的なものだったが、後に尿酸値の8.1mg/dLという検査結果に飛び上がらんばかりに驚いたことがある。この時の医師も某ジェネリック医薬品メーカーが作った高尿酸血症・痛風患者向けの冊子の内容を棒読みするだけだった。体重を減らす飲酒を控えるプリン体摂取を控える毎日2Lの飲水唯一棒読みではなかったのは、「体重を減らす」と言った後に「フフッ」と笑ったことぐらい。要はみんなできないんだよねという意味だろう。しかし、私はこれにややカチンときた。さらに飲酒は好きだし、控えるのは限界がある。プリン体をとりわけ多く含む食品はそもそも日常的にそれほど摂取機会がない。ということで体重減少と2L飲水に取り組んだ。いわば「おいしく楽しく酒を飲み続けるため」にそうしたのだ。詳細は省くが1年7ヵ月で14kg減。尿酸値も正常化している。だが、この間、運動をどう習慣化すればいいのか、その内容をどう変化させるかなど試行錯誤の連続。ちなみに一見簡単そうな飲水2Lのほうが楽しくもなく、習慣化までに苦労した。今この原稿を執筆中の傍らに1.5Lと600mLのペットボトルがある。こうしたことで医師などから工夫の伝授や励ましがあれば、どれだけ助けになっただろうと今も時々思う。こうした医療不在の隙を自由診療の囁きが埋めてしまっているのが現実ではないだろうか。このように書くと、「医師に何でも求めないで欲しい」と言われるかもしれないが、ならば医師から対応可能な職種へ繋ぐシステムが欲しいと思う。もちろんそうした職種への報酬の財源は医科診療報酬のプラス幅をやや抑えて捻出する。まあ、日医執行部が最も反発しそうではあるが。

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尿酸の再吸収を抑制する新しい高尿酸血症治療薬「ユリス錠0.5mg/1mg/2mg」【下平博士のDIノート】第52回

尿酸の再吸収を抑制する新しい高尿酸血症治療薬「ユリス錠0.5mg/1mg/2mg」今回は、選択的尿酸再吸収阻害薬「ドチヌラド(商品名:ユリス錠0.5mg/1mg/2mg、製造販売元:富士薬品)」を紹介します。本剤は、尿酸トランスポーター1(URAT1)を選択的に阻害することで、尿酸の尿中排泄を促進し、血中尿酸値を低下させます。<効能・効果>本剤は痛風、高尿酸血症の適応で、2020年1月23日に承認され、5月25日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはドチヌラドとして0.5mgを1日1回経口投与で開始し、その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量します。維持量は通常1日1回2mgですが、患者の状態に応じて1日1回4mgを超えない範囲で適宜増減できます。なお、尿酸降下薬による治療初期には、血中尿酸値の急激な低下により痛風関節炎(痛風発作)が誘発されることがあるので、増量する際は、投与開始から2週間以降に1日1回1mg、投与開始から6週間以降に1日1回2mgとするなど徐々に行い、増量後は経過を十分に観察する必要があります。<安全性>痛風を含む高尿酸血症患者を対象とした第III相試験において、本剤が投与された531例中104例(19.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、痛風性関節炎51例(9.6%)、関節炎11例(2.1%)、四肢不快感8例(1.5%)などでした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、腎臓での尿酸の再吸収を抑えることで、尿中への尿酸排泄を促し、血中尿酸値を低下させます。2.薬を飲み始めると痛風発作を起こすことがあるので、関節への違和感などがあった場合はすぐにご連絡ください。3.尿の量が減ると尿路結石が生じやすくなるため、脱水などに注意し、1日2.0~2.5Lを目安として十分な水分摂取に努めましょう。4.尿酸値の適正化には、生活習慣の改善が大切です。食べ過ぎに気を付け、ウォーキングなどの軽い有酸素運動を継続的に行いましょう。また、高プリン食の摂り過ぎや、アルコール飲料の飲み過ぎは血中尿酸値の上昇につながるので注意してください。<Shimo's eyes>高尿酸血症は、尿酸排泄低下型高尿酸血症、腎負荷型(尿酸産生過剰型、腎外排泄低下型)高尿酸血症、混合型高尿酸血症に大別され、病型分類に応じた薬剤選択が原則となっています。日本人に多いといわれる尿酸排泄低下型に対しては、ベンズブロマロン(商品名:ユリノームほか)などの尿酸排泄促進薬が推奨されていますが、劇症肝炎などの重篤な肝障害への懸念や腎機能低下患者に使用しにくいなどの理由により、病型にかかわらず尿酸生成抑制薬のアロプリノール(同:ザイロリック)、フェブキソスタット(同:フェブリク)、トピロキソスタット(同:トピロリック/ウリアデック)が使用されるケースもあります。本剤は、腎臓の近位尿細管に存在する尿酸トランスポーター1(URAT1)を選択的に阻害することで、尿酸の再吸収を抑制する新規の尿酸排泄促進薬です。非臨床毒性試験において肝障害性を示唆する所見はなく、腎機能が軽度~中程度に低下した場合の投与制限もありません。相互作用については、ピラジナミドとアスピリンなどのサリチル酸製剤は尿酸排泄抑制作用があるため併用注意となっています。臨床効果については、痛風を含む高尿酸血症患者(尿酸産生過剰型を除く)を対象とした2つの国内第III相試験において、ベンズブロマロンおよびフェブキソスタットに対する非劣性が確認されました。また、後期第II相試験において、血清尿酸値6mg/dl以下の達成率は用量依存的に増加し、4mg投与群では100%でした。服用開始時の注意点としては、血中尿酸値の急激な低下による痛風発作を回避するため、初期は低用量で開始し、6週間以降に維持量である2mgへ漸増する必要があります。また、ほかの尿酸排泄促進薬と同様に、多量の尿酸が尿中に排泄されると考えられます。尿が酸性の場合には、尿アルカリ化薬などの併用により、尿pHを6.0~7.0に維持して尿路結石を予防することも覚えておきましょう。参考1)PMDA 添付文書 ユリス錠0.5mg/ユリス錠1mg/ユリス錠2mg

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亜鉛欠乏症診療ガイドライン、味覚障害など症例別の治療効果が充実

 亜鉛欠乏症は世界で約20億人いるものの、世界的に認知度が低い疾患である。そして、日本も例外ではないー。日本臨床栄養学会ミネラル栄養部会の児玉 浩子氏(帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科教授・学科長)が委員長を務め、2018年7月に発刊された『亜鉛欠乏症診療ガイドライン2018』の概要がInternational Journal of Molecular Sciences誌2020年4月22日号に掲載された。 亜鉛欠乏症診療ガイドライン2018にて、同氏らは亜鉛欠乏症の診断基準を以下のように示した。(a)症状(皮膚炎、口内炎、味覚障害など)/検査所見(ALP:血清アルカリホスファターゼ低値)のうち、1項目以上を満たす(b)他の疾患が否定される(c)血清亜鉛が低値-血清亜鉛値60μg/dL未満:亜鉛欠乏症、血清亜鉛値60~80μg/dL未満:潜在性亜鉛欠乏とする。(d)亜鉛補充により症状が改善する。亜鉛欠乏症診療ガイドラインは亜鉛投与による治療効果、基礎疾患ごとの症例を豊富に記載 亜鉛欠乏症はさまざまな病態で併発する。その症状はさまざまで、とくに皮膚炎や味覚障害、貧血、易感染などを訴える患者については血清亜鉛濃度の測定が望ましい。一方、慢性肝疾患、糖尿病、慢性炎症性腸疾患、腎不全では、しばしば血清亜鉛値が低値であるにも関わらず、前述のような症状を訴えない場合もある。亜鉛投与により基礎疾患の所見・症状が改善する場合があることから、亜鉛欠乏症診療ガイドライン2018には「これら疾患を有する患者では亜鉛欠乏症状が認められなくても、亜鉛補充を考慮してもよい」と記載されている。 亜鉛欠乏症診療ガイドライン2018の一番の特徴は、投与前後の血清亜鉛値や改善率などが書かれているため処方時に有用である点だ。治療効果を“亜鉛欠乏の症状がある患者に対する亜鉛投与の治療効果”と“基礎疾患の改善を目的に行う亜鉛投与の治療効果”に区分し、表で示している。 前者には低身長症、皮膚炎、口内炎、骨粗鬆症などの症例を提示、後者では慢性肝疾患、糖尿病などの症例を挙げている。 このほか、亜鉛補充時の注意事項として「亜鉛投与の効果はすぐには現れないため、治療は少なくとも3ヵ月間の継続が必要」「亜鉛投与による有害事象として、消化器症状(嘔気、腹痛)、血清膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)上昇、銅欠乏による貧血・白血球減少、鉄欠乏性貧血が報告されているため、これらの臨床症状や検査値が見られた場合には亜鉛投与量の減量・中止、銅や鉄補充などの対処が必要」などが盛り込まれている。  亜鉛欠乏症診療ガイドライン2018では、2016年版からの改訂にあたり、炎症性腸疾患(IBD)と肝硬変にも焦点が当てられた。研究者らは「亜鉛欠乏症はマクロファージの活性化を介して腸の炎症を促進するので、IBDでの炎症や亜鉛欠乏症の病理学的メカニズム検討している」とし、「肝硬変患者の窒素代謝障害にも影響している可能性がある。亜鉛補給は、アンモニア代謝だけでなく、タンパク質の代謝も改善することができる」とも述べている。

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「ダイアート」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第3回

第3回 「ダイアート」の名称の由来は?販売名ダイアート®錠 30mg/60mg一般名(和名[命名法])アゾセミド(JAN)効能又は効果心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫用法及び用量ダイアート錠30mg通常成人1日1回2錠(アゾセミドとして60mg)を経口投与する。 なお、年齢・症状により適宜増減する。ダイアート錠60mg通常成人1日1回1錠(アゾセミドとして60mg)を経口投与する。 なお、年齢・症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)1.無尿の患者[本剤の効果が期待できない。]2.肝性昏睡の患者[低カリウム血症によるアルカローシスの増悪により肝性昏睡が悪化するおそれがある。]3.体液中のナトリウム、カリウムが明らかに減少している患者[電解質異常を起こすおそれがある。]4.デスモプレシン酢酸塩水和物(男性における夜間多尿による夜間頻尿)を投与中の患者5.スルフォンアミド誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2020年6月10日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2019年8月改訂(改訂第11版)医薬品インタビューフォーム「ダイアート錠® 30mg/60mg」2)三和化学研究所:医薬品一覧

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ロケルマ:45年ぶりに誕生した高カリウム血症改善薬

2020年5月20日、高カリウム血症改善薬ロケルマ懸濁用散分包5gおよび10g(一般名:ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)(以下、ロケルマ)がアストラゼネカ株式会社より発売された。ロケルマは、同疾患改善薬としては45年ぶりの新有効成分含有薬となる。アンメットニーズが高い高カリウム血症高カリウム血症は、CKD例や心不全例に高頻度に合併し、日本の300床超の病院にて治療中の患者では、全例、CKD例、心不全例、RA系抑制薬服用例のうち、6.8、22.8、13.4、14.2%に合併していると報告されている1)。そして、血清カリウムが異常高値になると致死性不整脈や心停止を引き起こしうる臨床上重大な疾患である。しかし、現在の主な治療法(食事制限、原因薬剤の減量・休止、利尿薬、陽イオン交換樹脂)では、効果発現までの時間や忍容性の問題から期待した効果が得られないこともある。ロケルマは速やかな血清カリウム値の低下を実現ロケルマは、非ポリマー無機陽イオン交換化合物の経口剤である。消化管内でカリウムイオンを選択的に捕捉し、初回投与開始後1時間から血清カリウム値の低下を示し、水分による膨潤をしないという特徴を有している。透析例および非透析例への試験結果から効果発現、持続性、安全性に期待ロケルマは、2つの国内試験(第II/III相試験、長期投与試験)および2つの国際共同試験(HARMONIZE Global試験、DIALIZE試験)の結果に基づき承認された。HARMONIZE Global試験は、高カリウム血症患者267例(うち日本人68例)を対象に、ロケルマ10gを48時間投与し、正常カリウム値に達した患者に同剤10g、同剤5gまたはプラセボのいずれかを1日1回28日間投与した試験である。補正期において、投与24および48時間後に正常カリウム値に達した患者の割合は、それぞれ63.3%および89.1%であった。主要評価項目である22日間の血清カリウム値の最小二乗幾何平均は、同剤10g群、5g群およびプラセボ群それぞれ4.4、4.8、5.3mmol/Lであり、プラセボ群と比較していずれも有意に低値となった(いずれもp<0.001)。DIALIZE試験は、血液透析患者196例(うち日本人56例)を対象に、最大透析間隔(血液透析日以外の2日間)後の血液透析前のカリウム値を4.0~5.0mmol/Lに維持するよう、ロケルマを4週間、適宜増減投与し、その後用量を変更せずさらに4週間投与した。ロケルマ群はプラセボ群と比較して奏効例(後半4週間における最大透析間隔後の4回中3回で透析前血清カリウム値が4.0~5.0mmol/Lで、レスキュー治療を受けなかった患者の割合)が有意に高かった(41.2% vs1.0%、p<0.001)。副作用としては、両試験ともに浮腫、便秘、低カリウム血症が認められている。高カリウム血症治療の指針策定を期待させる新薬高カリウム血症に45年ぶりに新有効成分含有薬が登場し、CKD例や心不全例の高カリウム血症の是正による不整脈や突然死の抑制はもちろん、ARB/ACEIの減量や厳しい食事制限の負担軽減が可能となるケースも考えられ、今後、高カリウム血症治療が変貌することは想像に難くない。一方、45年間新有効成分含有薬が出なかったということは、それだけ治療に大きな進歩がなかったことの裏返しでもある。はたして、高カリウム血症は治療開始カリウム値、目標値の明確な指針が示されておらず、医師個人個人の判断によって治療が行われている。学会から新たに高カリウム血症の治療指針が示されるかもしれない。そのような期待を抱かせる新薬が誕生した。1)Kashihara N, et al. Kidney Int Rep. 2019;4:1248-1260.

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COVID-19と共存する診療の指針を示す動画公開/高血圧学会

 2020年初頭より長らく続いたCOVID-19の感染拡大と、それに伴う外出自粛や制限が相次いで緩和され、非常時から通常時へと戻る兆しが見え始めた。しかしながら、今後はCOVID-19を包含しながらの“新たな日常”となることは間違いない。そうしたCOVID-19を念頭に置いた高血圧診療をどう進めるべきかについて指針を示すべく、日本高血圧学会(理事長:伊藤 裕)はこのほど、各領域のスペシャリストによる解説動画コンテンツを作成1)。5月22日よりYouTubeの学会公式チャンネルで公開している。同学会では、これに先立って高血圧治療を受ける患者向けの動画コンテンツを公開しており、今回新たに追加された全10本はいずれも医師をはじめとする医療従事者向けの内容。 詳しい動画コンテンツのラインナップは以下のとおり。<パンデミックと高血圧診療>1.COVID-19到来と日本高血圧医療のNew Normal  解説:伊藤 裕氏(日本高血圧学会理事長、慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科教授)2.高血圧はCOVID-19の感染・重症化のリスク要因か?  解説:三浦 克之氏(滋賀医科大学公衆衛生学部門教授)3.降圧薬とCOVID-19:RAS阻害薬は是か非か?  解説:甲斐 久史氏(久留米大学医学部教授)4.COVID-19パンデミック下での減塩の重要性とその指導法  解説:日下 美穂氏(日下医院院長)<パンデミックと高血圧性臓器障害:メカニズムと診療のポイント>5.COVID-19と血栓症・脳卒中  解説:豊田 一則氏(国立循環器病研究センター副院長)6.COVID-19と心臓病  解説:大西 勝也氏(大西内科ハートクリニック院長)7.COVID-19と腎臓病:CKDと急性腎障害(AKI)  解説:向山 政志氏(熊本大学大学院生命科学研究部腎臓内科学教授)<パンデミック下における実地医家の役割>8.COVID-19と実地診療  解説:勝谷 友宏氏(勝谷医院院長、大阪大学大学院臨床遺伝子治療学招聘教授)9.New Normal時代に向けてのかかりつけ医の役割  解説:宮川 政昭氏(医療法人社団愛政会宮川内科小児科医院院長)10. COVID-19パンデミック下での医療対策:日本医師会の取り組み  解説:羽鳥 裕氏(日本医師会常任理事)

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重症AKIの腎代替療法、開始遅延でも死亡率に影響なし/Lancet

 生命を脅かす合併症がない重症の急性腎障害(AKI)患者への腎代替療法(RRT)の開始時期については、活発な議論が続いている。フランス・AP-HP Avicenne HospitalのStephane Gaudry氏らは、RRTの緊急適応のない重症AKI患者において、RRTを待機的に開始する遅延的戦略は、早期開始戦略と比較して生存への影響に差はなく、緊密な患者モニタリングの下で安全に延期が可能であることを示した。研究の詳細は、Lancet誌2020年5月9日号に掲載された。RRTの早期開始により、代謝異常や、死亡増加に関連する他の合併症のコントロールが改善する可能性があるが、医原性の合併症(低血圧症、出血、感染症、低体温症)をもたらす可能性がある。一方、RRTの開始を意図的に遅らせることで、腎機能が自然に回復するまでの時間を確保でき、RRTの必要性を除去する可能性があるという。2つのRRT開始戦略の28日死亡率を評価するメタ解析 研究グループは、重症AKIを有する重篤な病態の成人患者において、RRTの開始時期の違いが28日死亡に及ぼす影響を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 MEDLINE(PubMed経由)、EmbaseおよびCochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、2008年4月1日~2019年12月20日の期間に報告された文献を検索した。対象は、年齢18歳以上の重症AKIを有する患者において遅延(delayed)と早期(early)のRRT開始戦略を比較した無作為化試験とした。 AKIは、Kidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO)のステージが2または3とし、KDIGOが使用できない場合はSequential Organ Failure Assessment(SOFA)の腎機能スコアが3点以上と定義された。 各試験の主任研究者に連絡を取り、個々の患者のデータの提供を求めた。AKIのない患者や無作為割り付けされなかった患者はメタ解析から除外された。 主要アウトカムは、無作為割り付けから28日までの全死因死亡とした。28日死亡率:44% vs.43%、医療資源節約の可能性 10件(欧州5件、アジア4件、北米1件)の試験(2,143例)が解析に含まれた。個々の患者データは9件の試験(2,083例)から得られ、このうち1,879例が重症AKIであった。遅延群が946例(平均年齢64.3[SD 15.9]歳、男性64%)、早期群は933例(63.5[15.4]歳、63%)だった。 データが得られなかった215例を除く1,664例で主要アウトカムの解析が行われた。28日までに死亡した患者の割合は、遅延群が44%(366/837例)、早期群は43%(355/827例)であり、両群間に有意な差は認められず(リスク比:1.01、95%信頼区間[CI]:0.91~1.13、p=0.80)、全体のリスク差は0.01(95%CI:-0.04~0.06)であった。Kaplan-Meier法による28日死亡の解析では、統合ハザード比(HR)は1.01(95%CI:0.87~1.17)だった。 全試験で異質性はみられなかった(I2=0%、τ2=0)。また、バイアスのリスクは、ほとんどの試験で低かった。 60日および90日の死亡率、院内死亡率、入院期間、退院時RRT依存、退院時血清クレアチニン値、機械的換気が不要な日数、昇圧薬が不要な日数には、両群間に有意差はなかった。 有害事象にも両群間に差はなく、高カリウム血症が、遅延群5%、早期群3%にみられ、重症心臓調律異常がそれぞれ9%および8%、重症出血イベントが14%および12%で発現した。 著者は、「緊密な患者モニタリングの下でRRTの開始を延期することで、RRTの使用が削減され、医療資源の節約につながる可能性がある」としている。

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急性上部消化管出血に対する緊急内視鏡の適切な施行時期は(解説:上村直実氏)-1225

 吐血や下血を主訴とする急性上部消化管出血の死亡率および外科的手術を減少するために、発症から24時間以内の緊急内視鏡検査が推奨されている。日本の臨床現場でも緊急内視鏡の施行が早ければ早いほど救命率が増加すると考えられているものの、緊急内視鏡検査をいつでも施行できる診療体制を有する施設は限られていることも事実である。 最近、重篤な急性上部消化管出血症例を対象として緊急内視鏡検査の適正な時期を検証する目的で、消化器科へ紹介された後6時間以内に検査する緊急施行群と6時間から24時間以内の早期施行群に分けたRCTが行われた結果、検査施行時期が生命予後や再出血率に影響しないことがNEJM誌に発表された。緊急群に比べて早期施行群では薬剤による酸分泌抑制の時間が長いため、検査施行時には露出血管を伴い内視鏡治療を必要とする重篤な潰瘍病変が減少して、技術的にも内視鏡治療が奏効する割合が上昇したために緊急群と早期群が同等の結果となったことが推察されている。 なお、薬剤の有用性を比較する場合と違って、内視鏡診療に関する最適な方法を検討した結果を日本の臨床に適用しようとすると、内視鏡技術の格差が問題となることが多い。今回の臨床研究が実施された中文大学は香港で最も内視鏡診療のレベルが高く、十分なマンパワーを有し、高度な医療機器が整備された施設であり、内視鏡治療法も日本と同様の止血クリップまたは接触熱凝固のいずれかを用いており、出血性の食道静脈瘤と胃静脈瘤にはそれぞれバンド結紮とシアノアクリレート注入を行っていることから、わが国の内視鏡診療にとっても重要な知見である。 『非静脈瘤性上部消化管出血における内視鏡診療ガイドライン2015』(日本消化器内視鏡学会)に緊急内視鏡の適正な施行時期に関する記載がなく、今回の研究結果から緊急内視鏡検査を急ぐより、患者の全身状態を把握するとともに、当該施設における体制を十分に考慮した対応を事前に考えておくことが肝要であり、さらには消化器内科への紹介前の酸分泌抑制薬投与が重要であることが示唆された。

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カリウム代用塩の使用で心血管死が9割減?/BMJ

 中国において全国的に、食事で摂取する塩をカリウム代用塩にすることで、心血管疾患死の約9分の1を予防できるとの推定結果が示された。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMatti Marklund氏らが、任意の塩(卓上または料理で使用する塩)をカリウムが豊富な塩(カリウム代用塩)へ全国的に置き換えることが、中国における死亡率および心血管疾患死にどのような影響を及ぼすかを推定した研究結果を報告した。ナトリウムの摂取が多く、カリウムの摂取が少ない中国や他の国において、カリウム代用塩の使用は血圧を低下させ心血管疾患を予防する有望な戦略と考えられている。しかし、相対的な有益性や有害性について、とくに慢性腎臓病(CKD)患者における高カリウム血症や心臓死のリスクにおいては明らかになっておらず、カリウム代用塩の普及は限定的となっている。結果を踏まえて著者は、「高カリウム血症のリスクを考慮にいれても、相当の有益性がCKD患者にとってもあると推定された」と述べている。BMJ誌2020年4月22日号掲載の報告。カリウム代用塩への置き換えによる心血管疾患死への影響を、モデルを用いて解析 研究グループは、comparative risk assessment modelを用い、中国における成人集団、とくにCKD患者(約1,700万人)を対象に、カリウム代用塩(塩化カリウム20~30%)への置き換えの全国的な介入の影響を推定するモデル解析を行った。モデルは、無作為化試験、China National Survey of Chronic Kidney Disease、Global Burden of Disease StudyおよびChronic Kidney Disease Prognosis Consortiumから得たこれまでのデータと、対応する不確実性を組み合わせたものであった。 主要評価項目は、カリウム代用塩への置き換え後の、避けられた心血管疾患死、非致死的イベントおよび血圧低下による障害調整生命年の推定値で、CKD患者におけるカリウム摂取量増加による高カリウム血症関連心血管疾患死も算出した。心血管疾患死への正味の影響は、心血管疾患死の避けられた死と追加の死の差および比として推定した。心血管死が実質年間約45万例減少 全国的なカリウム代用塩の使用は、年間約46万1,000例(95%不確定区間[UI]:19万6,339~70万4,438)の心血管疾患死を防ぐことができると推定された。これは中国における、年間心血管疾患死の11.0%(95%UI:4.7~16.8%)、年間非致死的心血管イベント74万3,000例(95%UI:30万5,803~127万3,098)、心血管疾患に関連する障害調整生命年790万(95%UI:330万~1,290万)に相当した。CKD患者では、高カリウム血症関連死が推定1万1,000例(95%UI:6,422~1万6,562)増加すると推定された。 したがって、正味の影響として、心血管疾患死が全体集団で年間約45万例(95%UI:18万3,699~69万7,084)、CKD患者でも2万1,000例(95%UI:1,928~4万2,926)減少する可能性が示された。 感度分析においても正味の有益性は全体集団とCKD患者において一貫しており、避けられる死が追加の死を上回った。

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衝撃のISCHEMIA:安定冠動脈疾患に対する血行再建は「不要不急」なのか?(解説:中野明彦氏)-1224

はじめに 安定型狭心症に対する治療戦略は1970年代頃からいろいろな構図で比較されてきた。最初はCABG vs.薬物療法、1990年代はPCI(BMS) vs.CABG、そして2000年代後半からPCI(+OMT)vs.OMT(最適な薬物療法)の議論が展開された。PCI vs.OMTの代表格がCOURAGE試験(n=2,287)1)やBARI-2D(n=2,368)、FAME2試験(n=888)である。とりわけ米国・カナダで行われ、総死亡+非致死性心筋梗塞に有意差なしの結果を伝えたCOURAGE試験のインパクトは大きく、米国ではその後の適性基準見直し(AUC:appropriate use criteria)や待機的PCI数減少につながった。一方COURAGEはBMS時代のデータであり、症例選択基準やPCI精度にバイアスが多いなど議論が沸騰、結局「虚血領域が広ければPCIが勝る」とのサブ解析2)が出て何となく収束した。しかしこの仮説は後に否定され3)、本試験15年後のfollow-up4)も結論に変化はなかった。ISCHEMIA試験:主要評価項目安定冠動脈疾患、侵襲的戦略と保存的戦略に有意差なし/NEJM 上記PCI vs.OMTの試験はサンプルサイズ・デバイス(BMSが主体)・虚血評価不十分・低リスクなどが問題点として指摘された。ISCHEMIA試験はこうしたlimitationを払拭し COURAGEから10年以上の時を経て発表されたが、そのインパクトはさらに大きかった。構図は侵襲的戦略 vs.保存的戦略、すなわち血管造影を行い可能なら血行再建療法(PCI or CABG)を行う群と、基本的にはOMTで抵抗性の場合のみ血行再建療法を加える群との比較である。米国の公的施設(NHLBI)の援助を受けた37ヵ国の国際共同試験で、対象はストレスイメージング・FFRや運動負荷試験によって中等度~高度の虚血が証明された安定型狭心症である。そもそもOMTで事足りるということか、血管造影は行わず冠動脈CT で左冠動脈主幹病変を除外してランダム化された(n=5,179)のも特徴的であり、結果として造影による選択バイアスは減少した。実際の血行再建はそれぞれ79%(PCI 76%、CABG 24%)と21%に施行され、PCIはDESを原則とした。 今度こそは侵襲的戦略(血行再建療法)有利と思われたが、3.2年以上(中間値)の追跡期間で、主要評価項目(心血管死、心筋梗塞、不安定狭心症・心不全・心停止後の蘇生に伴う入院、の複合エンドポイント)の血行再建群の調整後ハザード比は0.93(95%CI:0.80~1.08、p=0.34)と優位性は示されなかった。 ACSの多くは非狭窄部から発生することが以前から指摘されている。したがってPCIで stable plaqueをつぶしても予後改善や心筋梗塞発症抑制につながらない。これが永らくPCI がCABGに勝てない理由である。しかしISCHEMIA試験ではそのCABGを仲間に加えてもOMTに勝てなかった。ソフトエンドポイント:QOLの改善効果 ISCHEMIA試験の「key secondary outcomes」の1つに狭心症由来のQOLが加えられ、今回その詳細が報告された。1次エンドポイントである「SAQ Summary score:Angina Frequency score・Physical Limitation score・Quality of Life scoreの平均値」は両群とも平均70強(登録時)だった。Angina Frequency scoreは登録時平均80強(週1回程度の狭心症状に相当)で、それ以上(毎日あるいは週数回)が2割、無症状も1/3を占めていた。少なくとも36ヵ月までは血行再建群で症状緩和効果は維持され、登録時に狭心症状が強い症例ほど恩恵が多い、という骨子は常識的な結論であろう。 しかし同様の検討が行われたCOURAGE試験では、24ヵ月まで保たれたQOLの改善効果が36ヵ月後には消滅してしまった5)。確かに本試験でもポイント差が縮まってきており、この先を注視する必要がある。予後もイベントも抑えないから「不急」であるが、もし症状を抑える効果も限定的なら「不要」の議論も起こり得る。そして折しも 新たなデバイスや手技の進化に閉塞感が漂う血行再建術と、PCSK9阻害薬・SGLT2阻害薬・新規P2Y12受容体拮抗薬など次々EBMが更新される薬物療法、両者の位置付けはこれからどうなるだろうか? 日本でも数年前から安定冠動脈疾患に対する治療戦略が問われており、PCIへの診療報酬はAUCを前提にしつつ冷遇の方向に改定されている。折しも、新型コロナウイルスパンデミックへの緊急事態宣言発令を受けて、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)から“感染拡大下の心臓カテーテル検査及び治療に関する提言”が出された。曰く「慢性冠症候群、安定狭心症に対するPCIで、緊急性を要しないものについては延期を推奨する」である。時同じくして掲載されたISCHEMIA試験はこれにお墨付きを与えることになった。 今回のパンデミックにより今まで当たり前だったことが当たり前ではなくなった。人々の価値観や人生観・死生観までもが変容するに違いない。虚血性心疾患に対する医療もアフター・コロナでは新たなパラダイムシフトで臨むことになるのかもしれない。

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今、私たちは冠動脈疾患治療の分岐点にいる(解説:野間重孝氏)-1219

 至適内科治療(optimal medical therapy:OMT)という言葉がある。虚血性心疾患は典型的な複合因子的疾患であり、単に血圧を下げるとか禁煙してもらうというだけでは発症予防(1次予防)もその進展の予防(2次予防)もできない。主立った因子をすべてコントロール、それもエビデンスのある薬剤・方法を用いて複合的にコントロールすることによって虚血性心疾患の1次・2次予防をしようという考え方である。90年代の半ば過ぎに確立され、その後種々の改良・改変を加えられたが、その大体の考え方は変わっていない。そこに至るには危険因子の徹底的な洗い出し、それに対する対処とそのエビデンスの蓄積があったことは言うまでもない。世紀をまたぐころにはOMTは虚血性心疾患治療の基礎として確立されたばかりでなく、血行再建術の代替えにもなりうるとも考えられるまでになった。心筋梗塞、不安定狭心症などのいわゆる急性冠症候群(ACS)では血行再建術が絶対適応となっているが、安定狭心症に対しては血行再建術と同程度の治療効果が得られることが期待されるまでになった。この方面での治験のエンドポイントは死亡+非致死的心筋梗塞の発生に置かれることが多いが、いろいろな比較試験でコントロールにされたOMT群の発症率はいずれにおいても20%を切る結果(18%~19%程度)が示されている。 血行再建術に目をやると、実験的ともいえる大動脈-冠動脈バイパス術(CABG)が行われたのは1964年にさかのぼるが、人工心肺と心筋保護法の発達により安定した体外循環心停止下でのCABGが行われるのは80年代になってからといえる。一方、冠動脈インターベンション(PCI)は、Gruentzigが1977年に初めて実験的バルーンインターベンションに成功し、以来デバイスの進歩とも相まって急速に普及し現在に至っている。一部に誤解があり、CABGのほうがかなり先行した技術であると考えている人が多いが、両者は(確かに10年くらいのズレはあるにせよ)同時進行的に発達してきた治療技術であると考えるのが正しい。両者の優劣についてよく論じられるが、評者はこの比較にあまり意味があるようには思えない。CABGは開胸・人工的心停止というリスクを背負いながらも、PCIでは危険な病変の治療、到達できない地点への血行再建、複数箇所の同時血行再建が可能であるが、その手術の性格から何度も行えるものではない。一方PCIは現在、機材・技術の進歩により従来は難しかった病変の治療も可能になり、その点が強調されることが多いが、最大の利点は何回でも、またさまざまな場所に施行できる(いわば“モグラたたき”ができる)ことにあるといえる。つまり両者は競い合う性格のものではなく、補い合うべき技術なのである。 OMTもほぼ確立され、血行再建術も成熟し、冠動脈疾患治療は新しい時代に入ったと多くの医師も患者も考えていた矢先に、これに水をかけるような研究が発表された。2007年に発表されたCOURAGE試験である。OMTに加え、適切な血行再建術が行われれば虚血性心疾患の予後は改善されると誰もが信じていた矢先に、血行再建術は症状の改善はもたらしても、付加的な予後の改善はもたらさないという結果が発表されたのである。この事実は多くの循環器科医に虚血性心疾患の治療を再考させるきっかけとなったが、血行再建術に携わってきた医師たちにとっては自分たちのやってきたことが否定されたに等しかった。その後DEFER試験に代表されるようにFFRなどの指標を用いて、適切な病変を選んで治療すれば成績は良いという結果が示されたこともあり、わが国でカテーテル治療が減ることはなかった。 そんな流れの中、AHA2019でまたしても衝撃的な発表がなされた。ISCHEMIA試験である。彼らは比較的重症患者を含めた母集団5,179例をOMT群とOMT+血行再建群に分けて4.4年フォローした(エンドポイントは死亡と非致死的心筋梗塞の発生)。その結果はOMTのみの群と血行再建群とで結果が同等であったばかりか、治療後の1年半は血行再建群のリスクのほうが高いというものだった。 さて、今回の試験は同様の事実が高度の腎機能障害を持った患者群でもみられるのかということを検証したものである。というのも、COURAGEやISCHEMIAを含め種々の臨床試験では重症腎機能障害患者が対象から除外されていたからである。しかして、結果は予想されたようにOMT群と血行再建群で差がみられなかった。 もし今回の結果だけをみるならば、いろいろと理屈がいえるのではないかと思う。というのは、高度腎機能障害を持つ患者とはつまり冠動脈を含めて全身に強い動脈硬化を持つ患者であり、冠動脈についていえば、責任病変と思われる病変を治療しても第2、第3の病変が進展してしまうことにより当初の治療効果を打ち消してしまうことになるのではないか、といった解釈である。しかし一連の研究の流れは、そういったものではないことを示していると考える以外にないと考えられる。 では、安定狭心症に対する血行再建術はまったく意味のないものなのだろうか。評者は長く実臨床に携わってきた者として、確かに血行再建術によって新しい人生を手に入れることができた患者たちをたくさんみてきた。反対に、症状が取れたからといって内科的にフォローしているうちに、次第に心機能が悪化してきてしまった患者もみてきた。では「お前は自分の診ている患者で、PCIで明らかに症状の改善が得られることがわかっている場合PCIをやらないのか」と問われれば、まず絶対に「やる」と答えるだろう。 私たちは今、直線的に進行してきた歴史の転換点に来ているのだと思う。虚血の評価は、始めは造影した見た目だった。これにFFRをはじめとする指標やアイソトープによる虚血範囲の同定など種々の判断基準が加わった。しかし、まだ何かが足りないのである。臨床医の実経験として、確かに血行再建により良好な予後を手に入れることができた患者がいたことがわかっている以上、どうしたらそういう患者を同定することができるのか、そうした指標・基準が欲しいのである。一方、OMTにも血行再建にも限界があることがわかっている。ではこれらに加えて何ができるのだろうか。不満なのは冠動脈治療に関していえば、新しい治療、新しい技術の開発がすっかり停止してしまっていることである。評者らは老研究者として確かにひとつの時代を築いてきたという自負がある。若い人たち! 君たちの新しい時代を開く手・力に期待している。

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非典型溶血性尿毒症症候群〔aHUS :atypical hemolytic uremic syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義非典型尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome:aHUS)は、補体制御異常に伴い血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)を呈する疾患である。TMAは、1)微小血管症性溶血性貧血、2)消費性血小板減少、3)微小血管内血小板血栓による臓器機能障害、を特徴とする病態である。■ 疫学欧州の疫学データでは、成人における発症頻度は毎年100万人に2~3人、小児では100万人に7人程度とされる。わが国での新規発症は年間100~200例程度と考えられている。わが国の遺伝子解析結果では、C3変異例の割合が高く(約30%)、欧米で多いとされるCFH遺伝子変異の割合は低い(約10%)。■ 病因病因は大きく、先天性、後天性、その他に分かれる。1)先天性aHUS遺伝子変異による補体制御因子の機能喪失あるいは補体活性化因子の機能獲得により補体第2経路が過剰に活性化されることで血管内皮細胞や血小板表面の活性化をもたらし微小血栓が産生されaHUSが発症する(表1)。機能喪失の例として、H因子(CFH)、I因子(CFI)、CD46(membrane cofactor protein:MCP)、トロンボモジュリン(THBD)の変異、機能獲得の例として補体C3、B因子(CFB)の変異が挙げられる。補体制御系ではないが、diacylglycerol kinase ε(DGKE)やプラスミノーゲン(PLG)遺伝子の変異も先天性のaHUSに含めることが多い。表1 aHUSの原因別の治療反応性と予後画像を拡大する2)後天性aHUS抗H因子抗体の出現が挙げられる。CFHの機能障害により補体第2経路が過剰に活性化する。抗H因子抗体陽性者の多くにCFHおよびCFH関連蛋白質(CFHR)1~5の遺伝子欠損が関与するとされている。3)その他現時点では原因が特定できないaHUSが40%程度存在する。■ 症状溶血性貧血、血小板減少、急性腎障害による症状を認める。具体的には血小板減少による出血斑(紫斑)などの出血症状や溶血性貧血による全身倦怠感、息切れ、高度の腎不全による浮腫、乏尿などである。発熱、精神神経症状、高血圧、心不全、消化器症状などを認めることもある。下痢があってもaHUSが否定されるわけではないことに注意を要する。aHUSの発症には多くの場合、感染症、妊娠、がん、加齢など補体の活性化につながるイベントが観察される。わが国の疫学調査でも、75%の症例で感染症を始めとする何らかの契機が確認されている。■ 予後一般に、MCP変異例は軽症で予後良好、CFHの変異例は重症で予後不良、C3変異例はその中間程度と言われている(表1)。海外データではaHUS全体における慢性腎不全に至る確率、つまり腎死亡率は約50%と報告されている。わが国の疫学データではaHUSの総死亡率は5.4%、腎死亡率は15%と比較的良好であった。特に、わが国に多いC3 p.I1157T変異例および抗CFH抗体陽性例の予後は良いとされている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ TMA分類の概念TMAの3徴候を認める患者のうち、STEC-HUS、TTP、二次性TMA(代謝異常症、感染症、薬剤性、自己免疫性疾患、悪性腫瘍、HELLP症候群、移植後などによるTMA)を除いたものを臨床的aHUSと診断する(図1)。図1 aHUS定義の概念図画像を拡大する■ 診断手順と鑑別診断フローチャート(図2)に従い鑑別診断を進めていく。図2 TMA鑑別と治療のフローチャート画像を拡大する1)TMAの診断aHUS診断におけるTMAの3徴候は、下記のとおり。(1)微小血管症性溶血性貧血:ヘモグロビン(Hb) 10g/dL未満血中 Hb値のみで判断するのではなく、血清LDHの上昇、血清ハプトグロビンの著減(多くは検出感度以下)、末梢血塗沫標本での破砕赤血球の存在をもとに微小血管症性溶血の有無を確認する。なお、破砕赤血球を検出しない場合もある。(2)血小板減少:血小板(platelets:PLT)15万/μL未満(3)急性腎障害(acute kidney injury:AKI):小児例では年齢・性別による血清クレアチニン基準値の1.5倍以上(血清クレアチニンは、日本小児腎臓病学会の基準値を用いる)。成人例では、sCrの基礎値から1.5 倍以上の上昇または尿量0.5mL/kg/時以下が6時間以上持続のいずれかを満たすものをAKIと診断する。2)TMA類似疾患との鑑別溶血性貧血を来す疾患として自己免疫性溶血性貧血(AIHA)が鑑別に挙がる。AIHAでは直接クームス試験が陽性となる。消費性血小板減少を来す疾患としては、播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を鑑別する。PT、APTT、FDP、Dダイマー、フィブリノーゲンなどを測定する。TMAでは原則として凝固異常はみられないが、DICでは著明な凝固系異常を呈する。また、DICは通常感染症やがんなどの基礎疾患に伴い発症する。3)STEC-HUSとの鑑別食事歴と下痢・血便の有無を問診する。STEC-HUSは、通常血液成分が多い重度の血便を伴う。超音波検査では結腸壁の著明な肥厚とエコー輝度の上昇が特徴的である。便培養検査、便中の志賀毒素直接検出検査、血清の大腸菌O157LPS抗体検査が有用である。小児では、STEC-HUSがTMA全体の約90%を占めることから、生後6ヵ月以降で、重度の血便を主体とした典型的な消化器症状を伴う症例では、最初に考える。逆に生後6ヵ月までの乳児にTMAをみた場合はaHUSを強く疑う。小児のSTEC-HUSの1%に補体関連遺伝子変異が認められると報告されている点に注意が必要である。詳細は、HUSガイドラインを参照。4)TTPとの鑑別血漿を採取し、ADAMTS13活性を測定する。10%未満であればTTPと診断できる。aHUS、STEC-HUS、二次性TMAなどでもADAMTS13活性の軽度低下を認めることがあるが、一般に20%以下にはならない。aHUSにおける臓器障害は急性腎障害(AKI)が最も多いのに対して、TTPでは精神神経症状を認めることが多い。TTPでも血尿、蛋白尿を認めることがあるが、腎不全に至る例はまれである。5)二次性TMAとの鑑別TMAを来す基礎疾患を有する二次性TMAの除外を行った患者が、臨床的にaHUSと診断される。aHUS確定診断のための遺伝子診断は時間を要するため、多くの症例で急性期には臨床的に判断する。表2に示す二次性TMAの主たる原因を記す。可能であれば、原因除去あるいは原疾患の治療を優先する。コバラミン代謝異常症は特に生後6ヵ月未満で考慮すべき病態である。生後1年以内に、哺乳不良、嘔吐、成長発育不良、活気低下、筋緊張低下、痙攣などを契機に発見される例が多いが、成人例もある。ビタミンB12、血漿ホモシスチン、血漿メチルマロン酸、尿中メチルマロン酸などを測定する。乳幼児の侵襲性肺炎球菌感染症がTMAを呈することがある。直接Coombs試験が約90%の症例で陽性を示す。肺炎球菌が産生するニューラミニダーゼによって露出するThomsen-Friedenreich (T)抗原に対する抗T-IgM抗体が血漿中に存在するため、血漿投与により病状が悪化する危険性がある。新鮮凍結血漿を用いた血漿交換療法や血漿輸注などの血漿治療は行わない。妊娠関連のTMAのうち、HELLP症候群(妊娠高血圧症に合併する溶血性貧血、肝障害、血小板減少)や子癇(妊娠中の高血圧症と痙攣)は分娩により速やかに軽快する。妊娠関連TMAは常位胎盤早期剥離に伴うDICとの鑑別も重要である。TTPは妊娠中の発症が多く,aHUSは分娩後の発症が多い。腎移植後に発症するTMAは、原疾患がaHUSで腎不全に陥った症例におけるaHUSの再発、腎移植後に新規で発症したaHUS、臓器移植に伴う急性抗体関連型拒絶反応が疑われる。aHUSが疑われる腎不全患者に腎移植を検討する場合は、あらかじめ遺伝子検査を行っておく。表2 二次性TMAの主たる原因a)妊娠関連TMAHELLP症候群子癪先天性または後天性TTPb)薬剤関連TMA抗血小板剤(チクロビジン、クロピドグレルなど)カルシニューリンインヒビターmTOR阻害剤抗悪性腫瘍剤(マイトマイシン、ゲムシタビンなど)経口避妊薬キニンc)移植後TMA固形臓器移植同種骨髄幹細胞移植d)その他コパラミン代謝異常症手術・外傷感染症(肺炎球菌、百日咳、インフルエンザ、HIV、水痘など)肺高血圧症悪性高血圧進行がん播種性血管内凝固症候群自己免疫疾患(SLE、抗リン脂質抗体症候群、強皮症、血管炎など)(芦田明ほか.日本アフェレシス学会雑誌.2015;34:40-47.より引用・改変)6)家族歴の聴取家族にTMA(aHUSやTTP)と診断された者や原因不明の腎不全を呈した者がいる場合、aHUSを疑う。ただし、aHUS原因遺伝子変異があっても発症するのは全体で50%程度とされている。よって家族性に遺伝子変異があっても家族歴がはっきりしない例も多い。さらに孤発例も存在する。7)治療反応性による診断の再検討aHUSは 75%の症例で感染症など何らかの疾患を契機に発症する。二次性TMAの原因となる疾患がaHUSを惹起することもある。実臨床においては二次性TMAとaHUSの鑑別はしばしば困難である。2次性TMAと考えられていた症例の中で、遺伝子検査によりaHUSと診断が変更されることは少なくない。いったんaHUSあるいは二次性TMAと診断しても、治療反応性や臨床経過により診断を再検討することが肝要である(図2)。■ 検査1)一般検査血算、破砕赤血球の有無、LDH、ハプログロビン、血清クレアチニン、各種凝固系検査でTMAを診断する。ADAMTS13-活性検査は保険適用となっている。STEC-HUSの鑑別を要する場合は便培養、便中志賀毒素検査、血清大腸菌O157LPS抗体検査を行う。一般の補体検査としてC3、C4を測定する。C3低値、C4正常は補体第2経路の活性化を示唆するが、aHUS全体の50%程度でしか認められない。2)補体関連特殊検査現在、全国aHUSレジストリー研究において、次に記す検査を実施している。ヒツジ赤血球を用いた溶血試験CFH遺伝子異常、抗CFH抗体陽性例において高頻度に陽性となる。比較的短期間で結果が得られる。診断のフローとしては、臨床的にaHUSが疑ったら溶血試験を実施する(図2)。抗CFH抗体検査:ELISA法にてCFH抗体を測定する。抗CFH抗体出現には、CFHおよびCFH関連蛋白質(CFHR)1~5の遺伝子欠損が関与するとされているため、遺伝子検査も並行して実施する。CFHR 領域は、多彩な遺伝子異常が報告されているが、相同性が高いことから遺伝子検査が困難な領域である。その他aHUSレジストリー研究では、血中のB因子活性化産物、可溶性C5b-9をはじめとする補体関連分子を測定しているが、その診断的意義は現時点で明確ではない。*問い合わせ先を下に記す。aHUSレジストリー事務局(名古屋大学 腎臓内科:ahus-office@med.nagoya-u.ac.jp)まで■ 遺伝子診断2020年4月からaHUSの診断のための補体関連因子の遺伝子検査が保険適用となった。既知の遺伝子として知られているC3、CFB、CFH、CFI、MCP(CD46)、THBD、diacylglycerol kinase ε(DGKE)を検査する。臨床的にaHUSと診断された患者の約60%にこれらの遺伝子変異を認める。さらに詳細な遺伝子解析についての相談は、上記のaHUSレジストリー事務局で受け付けている。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)aHUSが疑われる患者は、血漿交換治療や血液透析が可能な専門施設に転送して治療を行う。TMA を呈し、STEC-HUS や血漿治療を行わない侵襲性肺炎球菌感染症などが否定的である場合には、速やかに血漿交換治療を開始する。輸液療法・輸血・血圧管理・急性腎障害に対する支持療法や血液透析など総合的な全身管理も重要である。1)血漿交換・血漿輸注血漿療法は1970年代後半から導入され、aHUS患者の死亡率は50%から25%にまで低下した。血漿交換を行う場合は3日間連日で施行し、その後は反応を見ながら徐々に間隔を開けていく。血漿交換を行うことが難しい身体の小さい患児では血漿輸注が施行されることもある。血漿輸注や血漿交換により、aHUS の約70%が血液学的寛解に至る。しかし、長期的には TMA の再発、腎不全の進行、死亡のリスクは依然として高い。血漿交換が無効である場合には、aHUSではなく二次性TMAの可能性も考える。2)エクリズマブ(抗補体C5ヒト化モノクローナル抗体、商品名:ソリリス)成人では、STEC-HUS、TTP、二次性 TMA 鑑別の検査を行いつつ、わが国では同時に溶血試験を行う。溶血試験陽性あるいは臨床的にaHUSと診断されたら、エクリズマブの投与を検討する。小児においては、成人と比較して二次性 TMA の割合が低く、血漿交換や血漿輸注のためのカテーテル挿入による合併症が多いことなどから、臨床的にaHUS と診断された時点で早期にエクリズマブ投与の開始を検討する。aHUSであれば1週間以内、遅くとも4週間までには治療効果が見られることが多い。効果がみられない場合は、二次性TMAである可能性を考え、診断を再検討する(図2)。遺伝子検査の結果、比較的軽症とされるMCP変異あるいはC3 p.I1157T変異では、エクリズマブの中止が検討される。予後不良とされるCFH変異では、エクリズマブは継続投与される。※エクリズマブ使用時の注意エクリズマブ使用時には髄膜炎菌感染症対策が必須である。莢膜多糖体を形成する細菌の殺菌には補体活性化が重要であり、エクリズマブ使用下での髄膜炎菌感染症による死亡例も報告されている。そのため、緊急投与時を除きエクリズマブ投与開始2週間前までに髄膜炎菌ワクチンの接種が推奨される。髄膜炎菌ワクチン接種、抗菌薬予防投与ともに髄膜炎菌感染症の全症例を予防することはできないことに留意すべきである。具体的なワクチン接種や抗菌薬による予防および治療法については、日本腎臓学会の「ソリリス使用時の注意・対応事項」を参照されたい。3)免疫抑制治療抗CFH抗体陽性例に対しては、血漿治療と免疫抑制薬・ステロイドを併用する。臓器障害を伴ったaHUSの場合にはエクリズマブの使用も考慮される。抗CFH抗体価が低下したら、エクリズマブの中止を検討する。4 今後の展望■ aHUSの診断2020年4月からaHUSの遺伝子解析が保険収載された。aHUSの診断にとっては大きな進展である。しかし、aHUSの診断・治療・臨床経過には依然不明な点が多い。aHUSレジストリー研究の成果がaHUS診療の向上につながることが期待される。■ 新規治療薬アレクシオンファーマ合同会社は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH) の治療薬として、長時間作用型抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤ラブリズマブ(商品名:ユルトミリス)を上市した。エクリズマブは2週間間隔の投与が必要であるが、ラブリズマブは8週間隔投与で維持可能である。今後、aHUSへも適応が広がる見込みである。中外製薬株式会社は抗C5リサイクリング抗体SKY59の開発を進めている。現在のところ対象疾患はPNHとなっている。5 主たる診療科腎臓内科、小児科、血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診療ガイド 2015(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 非典型溶血性尿毒症症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)aHUSレジストリー事務局ホームページ(名古屋大学腎臓内科ホームページ)(医療従事者向けのまとまった情報)1)Fujisawa M, et al. Clin and Experimental Nephrology. 2018;22:1088–1099.2)Goodship TH, et al. Kidney Int. 2017;91:539.3)Aigner C, et al. Clin Kidney J. 2019;12:333.4)Lee H,et al. Korean J Intern Med. 2020;35:25-40.5)Kato H, et al. Clin Exp Nephrol. 2016;20:536-543.公開履歴初回2020年04月14日

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進行性腎障害伴う安定冠動脈疾患に侵襲的戦略は有効か/NEJM

 進行性腎障害を伴う安定冠動脈疾患で、中等度~重度の虚血を呈する患者の治療において、侵襲的戦略は保存的戦略に比べ、死亡および非致死的心筋梗塞のリスクを低減しないことが、米国・ニューヨーク大学のSripal Bangalore氏らの検討(ISCHEMIA-CKD試験)で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2020年3月30日号に掲載された。安定冠動脈疾患患者における血行再建術の効果を評価する臨床試験では、通常、進行性の慢性腎臓病患者は除外される。また、1992年の腎移植候補の患者26例の無作為化試験では、血行再建術は薬物療法に比べ心血管死および心筋梗塞のリスクが低いと報告されているが、この30年間で、これらの治療法は劇的に進歩しており、あらためて侵襲的戦略の有益性の検証が求められている。30ヵ国118施設が参加した医師主導無作為化試験 本研究は、30ヵ国118施設が参加した国際的な医師主導の無作為化試験であり、2014年4月~2018年1月の期間に患者登録が行われた(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成による)。 対象は、進行性腎障害および中等度~重度の心筋虚血を呈する患者であった。被験者は、薬物療法に加え、冠動脈造影と、実行可能な場合は血行再建術(経皮的冠動脈インターベンション[PCI]または冠動脈バイパス手術[CABG])を受ける群(侵襲的戦略群)、または薬物療法のみを受ける群(保存的戦略群)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、死亡と非致死的心筋梗塞の複合とした。主な副次アウトカムは、死亡、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症または心不全による入院、心停止からの蘇生の複合であった。推定3年イベント発生率:36.4% vs.36.7% 777例が登録され、侵襲的戦略群に388例、保存的戦略群には389例が割り付けられた。全体の年齢中央値は63歳(IQR:55~70)、男性が68.9%を占めた。 ベースライン時に、57.1%が糖尿病で、53.4%が透析を受けていた。透析患者を除く推定糸球体濾過量(eGFR)中央値は23mL/分/1.73m2であった。37.8%が重度の虚血だった。 追跡期間中央値2.2年(IQR:1.6~3.0)の時点で、主要アウトカムのイベントは、侵襲的戦略群123例、保存的戦略群129例で発生し、推定3年イベント発生率はそれぞれ36.4%および36.7%であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後ハザード比[HR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.79~1.29、p=0.95)。 主な副次アウトカムの結果も、主要アウトカムとほぼ同様であった(侵襲的戦略群38.5% vs.保存的戦略群39.7%、補正後HR:1.01、95%CI:0.79~1.29)。 ベイズ解析では、侵襲的戦略群で主要アウトカムのHRが10%以上低下(補正後HR<0.90)する確率は19%で、10%以上増加(補正後HR>1.10)する確率は24%だった。 また、侵襲的戦略群は保存的戦略群に比べ、脳卒中(補正後HR:3.76、95%CI:1.52~9.32、p=0.004)および死亡/透析開始(1.48、1.04~2.11、p=0.03)の発生率が高かった。 著者は、「イベント発生率は予測よりも低く、また侵襲的戦略群における血行再建術の施行率は50.2%、保存的戦略群におけるイベントの確認以外の理由による血行再建術の施行率は11.0%と低かったことから、侵襲的戦略の有益性を示すには、この試験の検出力は十分ではなかった」としている。

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