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COVID-19パンデミック前後、遠隔皮膚科診療は3倍増に

 本邦のコロナ禍における受診動向の変化については、2020年8月6日の「第10回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で、「令和2年4月~6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証について」が発表され耳目を集めた。電話またはオンライン診療の受診者は10歳未満が最も多く、ほかの年齢では発熱での受診が最多であったが、10歳未満の受診は湿疹が最多(22.7%)で、受診科目は内科、小児科に次いで皮膚科が3番目だったことなどが報告されている。 本論は、COVID-19感染者数が米国に次いで現在世界第2位の、インド・R.D. Gardi Medical CollegeのShashank Bhargava氏らが、ウェブベースでグローバルに皮膚科医に診療形態の変化について行ったサーベイ調査の結果である。COVID-19パンデミック前後で、teledermatology(遠隔皮膚科診療:TD)の活用が3倍増になったことなどが報告されている。International Journal of Women's Dermatology誌オンライン版2020年10月12日号掲載の報告。 研究グループは、COVID-19パンデミックによる皮膚科診療の変化の大きさについては、十分に研究がされていないとして、同パンデミックの皮膚科診療への即時的および長期的影響を評価する検討を行った。評価対象には、臨床活動、診療行為の頻度および種類、TDの使用などを含んだ。Googleフォームでサーベイツールを作成し、2020年4月1日~20日に、とくに皮膚科専門医のソーシャルメディアサイトの研究者に電子的に配布された。 主要アウトカムは、対面診療、病院サービス、TD、処置の提供に関する回答者の割合。また、パンデミック時および将来的なTDの利用について、オッズ比(OR)に与える可能性がある要因をロジスティック回帰モデルで調べた。 主な結果は以下のとおり。・サーベイに応じた皮膚科医は733例であった。アジア系が47.6%、北米18.7%、中南米17.9%、欧州13.9%、その他1.9%であった。診療歴は10年以下が45.0%を占め、都市部従事者が78.6%、開業医47.2%などであった。・対面診療の提供に関する割合は、パンデミック前100%に対し、パンデミック中は46.6%に減っていた。病院サービスは52.8% vs.27%、処置100% vs.25.6%といずれも減っていた(いずれもp<0.001)。・一方で、TDは、3倍増となっていた(26.1%vs. 75.2%)(p<0.001)。・TD利用率は、パンデミック中および将来利用予測ともに、診療地域と有意に関連しており、とくに北米の回答者で最も高かった(いずれもp<0.001)。・パンデミック中のTD利用は、従前からのTD利用、操作能力、およびとくに色素性病変が疑われる場合の生検と正の相関性がみられた(いずれもp<0.001)。・パンデミック前のTD利用は、パンデミック中のTD利用の最も強力な予測因子であった(OR:16.47、95%信頼区間[CI]:7.12~38.06)。・サーベイ参加者のうち3分の2以上(68.6%)が、将来的にTDを利用するだろうと回答した。・将来的なTD利用予測についてOR増大が最も大きかった要因は、国内のCOVID-19感染者数が1,000例を超えた場合だった(OR:3.80、95%CI:2.33~6.21)。

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持続性AFへのアブレーション+マーシャル静脈内エタノール注入併用が有効/JAMA

 持続性心房細動(AF)の患者の治療において、カテーテルアブレーションにマーシャル静脈内エタノール注入を併用すると、カテーテルアブレーション単独と比較して、6ヵ月および12ヵ月後の時点の双方でAFまたは心房頻拍が残存しない可能性が高まることが、米国・Houston Methodist DeBakey Heart and Vascular CenterのMiguel Valderrabano氏らが実施した「VENUS試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年10月27日号で報告された。持続性AFに対するカテーテルアブレーションの成功には限界がある。肺静脈隔離を拡大した手技による戦略は、一貫性のある改善効果を示せていない。マーシャル静脈には、逆行性エタノール注入によってアブレーションが可能となる神経支配やAFのトリガーが含まれるという。マーシャル静脈内エタノール注入の追加で結果を改善できるか評価 本研究は、カテーテルアブレーションにマーシャル静脈内エタノール注入を追加することで、持続性AFのアブレーションの結果を改善できるかを評価する無作為化臨床試験であり、米国の12施設が参加し、2013年10月~2018年6月の期間に患者登録が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]/国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成による)。 対象は、年齢18~85歳、1剤以上の抗不整脈薬に抵抗性で、症候性の持続性AF(>7日の持続)の患者であった。被験者は、カテーテルアブレーション単独またはカテーテルアブレーション+マーシャル静脈内エタノール注入を受ける群に、1対1.15の割合(マーシャル静脈内エタノール注入の技術的な失敗が15%あると想定)で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、6ヵ月および12ヵ月後のいずれの時点でも、抗不整脈薬を使用せずに、1回の手技でAFまたは心房頻拍が発現しない時間が30秒を超えることとした。副次アウトカムは12項目で、AF負荷、複数回の手技を行った後にAFがみられないこと、僧帽弁輪部のブロックなどが含まれた。マーシャル静脈内エタノール注入併用群の主要アウトカムは良好 無作為化された343例(平均年齢66.5[SD 9.7]歳、男性261例)のうち、316例(92.1%)が試験を終了した。マーシャル静脈内エタノール注入併用群が185例、カテーテルアブレーション単独群は158例であった。併用群の185例のうち、155例(84%)でマーシャル静脈内エタノール注入が成功した。 6ヵ月後と12ヵ月後に、1回の手技でAF/心房頻拍が発現しなかった患者の割合は、マーシャル静脈内エタノール注入併用群が49.2%(91/185例)と、単独群の38%(60/158例)に比べ良好であった(群間差:11.2%、95%信頼区間[CI]:0.8~21.7、p=0.04)。 12項目の副次アウトカムのうち、9項目には有意差はなかったが、AF負荷(負荷なしの割合:78.3% vs.67.9%、群間差:10.4%、95%CI:2.9~17.9、p=0.01)、複数回の手技後にAFの発現なし(65.2% vs.53.8%、11.4%、0.6~22.2、p=0.04)、僧帽弁輪部ブロックの成功(80.6% vs.51.3%、29.3%、19.3~39.3、p<0.001)は、併用群で有意に改善した。 有害事象の頻度は両群で同程度であった。全体で最も頻度の高い手技中の有害事象は、血管アクセス合併症(血腫/仮性動脈瘤、11件)および心膜液貯留(3件)であった。手技後に心膜穿刺によるドレナージを要する亜急性心膜液貯留が4例に発生した。手技後の脳血管イベントが7例、肺炎が7例で認められた。ドレナージを要しない症候性の炎症性心膜炎が、併用群11例、単独群6例で発生した。 著者は、「長期的な有効性を評価するには、さらなる研究を要する」としている。

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Pfizer社の新型コロナワクチン、接種28日目以降の予防効果確認/第III相試験中間解析

 Pfizer社とBioNTech社が開発している、SARS-CoV-2に対するmRNAベースのワクチン候補BNT162b2の第III相試験の最初の中間解析で、感染歴のないボランティアへの2回目の投与(初回から21日後)の7日目以降に90%以上のワクチン有効率を示した。これは、ワクチン接種の開始から28日目以降の予防効果が達成されたことを意味する。Pfizer社とBioNTech社が11月9日に発表した。11月第3週に米国食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請する予定という。 BNT162b2の第III相試験は7月27日に開始。現在までに4万3,538人が登録され、そのうち3万8,955人が11月8日時点で21日間隔・2回目の投与を受けている。中間解析は、評価可能なCOVID-19症例数が94例に達した時点で外部の独立データモニタリング委員会により行われ、2回目の投与の7日目以降に90%を超えるワクチン有効率を示した。今後の研究の進行に応じて、最終的な有効率は変わる可能性がある。 この研究では、SARS-CoV-2への曝露経験者でのCOVID-19を予防する可能性および重症COVID-19に対する予防効果も評価する予定。主要有効性評価項目は、2回目の投与から7日目以降におけるCOVID-19発症で、最終解析には、副次有効性評価項目として2回目の投与から14日目以降のCOVID-19発症も追加された。安全性については引き続きデータを蓄積し、2回目の投与後2年間、長期的な予防効果と安全性について観察する。 試験への登録は継続中で、164例のCOVID-19症例が発生した時点で、最終解析が実施される予定。現在の予測に基づくと、2020年に世界で最大5,000万回、2021年には最大13億回のワクチンを生産予定と発表されている。

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COVID入院患者で注意しなくてはならないのは?(解説:香坂俊氏)-1314

COVIDは11月現在、まだ世界で猛威を振るい続けている。なかでも状況が深刻なのは米国であるが、かの国から興味深い報告がなされた(掲載されたのは珍しくBMJ[英国の雑誌]なのであるが…)。COVID-19の感染が確認された成人患者情報が68の病院のICUから集められ、合計5,019人の「集中治療を要した」COVID患者のデータが解析された。このうち14%が心肺停止となったとされ、このあたりの数値は武漢からの報告ともおおむね一致している(武漢のCOVID専属治療施設での重症例の心肺停止の頻度が20~25%程度であった)。院内心停止が発生した患者は高齢かつ、併存疾患が多く、ICU病床数の少ない病院に入院している傾向にあり、心停止の際にモニターでよく見られたパターンはPEA(無脈性電気活動:50%)とasystole(心静止:24%)であったただ、自分が最も注目すべき点として挙げたいのは、こうした院内心肺停止症例で蘇生行為を受けたのが57%にとどまったというところである。自分の経験でも米国の医療施設では、事前にDNRのオーダーが出ていない限り必ず蘇生行為が行われるので、それだけadvance care planning(ACP)が重症例に対して積極的になされていたと考えられる。それを裏付ける、という訳でもないのだが、蘇生行為を受けて助かり、退院までこぎ着けることができた患者はわずか12%にすぎなかった。このときの生存率は年齢によって異なり、若年者にfavorableな結果であったというのもこれまでの報告と一致している(45歳未満の患者の21%が生存しているのに対し、80歳以上の患者の生存率は3%)。こうした非常に大規模な研究により、COVID重症例での対応が徐々に明確になってきている。たとえば、PEAやasystoleが心肺停止の際に多くみられたということは、主に心臓以外の要因で亡くなる方が多いということが示唆される。また、今回のデータからも、重症COVIDで患者さんを拝見させていただく場合に(とくに高齢者や背景疾患が存在する方)、かなり早い時期からACPの議論を始めておく必要性は強調される。

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COVID-19、家庭・職場で感染リスクが高い行動は?

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染リスクを減らすには何に注意すればよいのだろうか。シンガポール・National Centre for Infectious DiseasesのOon Tek Ng氏らが、COVID-19患者の濃厚接触者におけるSARS-CoV-2感染に関連する因子を調べた結果、家族内では「寝室の共有」「COVID-19患者から30分以上話されること」が、家族以外では「2人以上のCOVID-19患者への曝露」「COVID-19患者から30分以上話されること」「同じ車への乗車」が関連していた。一方、「間接的な接触」「一緒に食事すること」「同じトイレの使用」については独立した関連がみられなかった。Lancet Infectious Disease誌オンライン版2020年11月2日号に掲載。 シンガポールではCOVID-19と診断された患者すべてに、保健省による接触者のトレースやPCR検査、濃厚接触者の健康サーベイランスを実施している。本研究は、このデータを使用し、2020年1月23日~4月3日に診断されたCOVID-19患者の濃厚接触者すべてを調査した後ろ向きコホート研究である。家族内接触者はCOVID-19患者との同居者、家族外の濃厚接触者はCOVID-19患者から2m以内で30分間以上の接触者とした。シンガポールではCOVID-19患者は全員入院し、接するのは医療スタッフに限られ、濃厚接触者は全員14日間隔離し1日3回、電話で症状モニタリングを実施している。誤診の発生割合と無症候性SARS-CoV-2陽性者の有病率はベイズモデリングで推定し、SARS-CoV-2感染の危険因子は単変量および多変量ロジスティック回帰モデルで決定した。 主な結果は以下のとおり。・2020年1月23日~4月3日の間に、PCRで確認されたCOVID-19患者1,114例の濃厚接触者7,770人が特定された(家族接触者1,863人、職場での接触者2,319人、社会での接触者3,588人)。・症状に基づいたPCR検査で188例検出され、7,582人は陽性ではなかった。・濃厚接触者7,770人のうち全データが揃っている7,518人(96.8%)における2次的な臨床的罹患率は、家族接触者1,779人では5.9%(95%CI:4.9~7.1)、職場での接触者2,231人では1.3%(同:0.9~1.9)、社会での接触者3,508人では1.3%(同:1.0~1.7)であった。・濃厚接触者1,150人(家族接触者524人、職場の接触者207人、社会での接触者419人)の血液および症状のデータのベイズ分析の結果、症状に基づいたPCR検査戦略によってCOVID-19の62%(95%CI:55~69)を見落とし、感染者の36%(同:27~45)は無症候性だったと推定された。・家族接触者のSARS-CoV-2感染に関連していた因子は、寝室の共有(多変量オッズ比[OR]:5.38、95%CI:1.82~15.84、p=0.0023)、COVID-19患者から30分以上話されること(OR:7.86、95%CI:3.86~16.02、p<0.0001)であった。・家族以外の接触者では、2人以上のCOVID-19患者への曝露(多変量OR:3.92 、95%CI:2.07~7.40、p<0.0001)、COVID-19患者から30分以上話されること(多変量OR:2.67、95%CI:1.21~5.88、p=0.015)、同じ車への乗車(多変量OR:3.07、95%CI:1.55~6.08、p=0.0013)がSARS-CoV-2感染に関連していた。・家族接触者と家族以外の接触者のどちらも、間接的な接触(感染患者から物を受け取る、感染患者が触った面を直後に触る)、一緒に食事すること、同じトイレの使用については、SARS-CoV-2感染との独立した関連は示されなかった。

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COVID-19、エクソソームによる予防と治療の可能性/日本癌治療学会

 10月に行われた第58回日本癌治療学会学術集会において、医療のさまざまな場面で活用されることが急増するリキッドバイオプシーの現状について、「目を見張る進歩をきたしたリキッドバイオプシー」とのテーマでシンポジウムが行われた。この中で東京医科大学の落谷 孝広氏(分子細胞治療研究部門)は「エクソソームによる新型コロナウイルス感染症の予防と治療」と題し、発表を行った。エクソソームがCOVID-19重症化の予測因子として使える可能性 エクソソームとは、細胞から分泌される直径50~150nm程度の物質で、表面には細胞膜由来の脂質やタンパク質、内部には核酸(マイクロRNA、メッセンジャーRNA、DNAなど)やタンパク質など細胞内の物質を含み、細胞間の情報伝達の役割を担うとされる。近年の研究においては、がん細胞由来のエクソソームが、がんの転移に深く関わることも明らかになっている。 落谷氏は、がん領域を中心に、エクソソームに関する研究が数多く行われている状況を紹介。膀胱がんにおける早期発見と再発検出、前立腺がんにおける診断マーカーや骨転移の診断、乳がんにおける早期発見や薬剤の副反応や予後予測などに使った研究などを紹介した。落谷氏は「がんの早期発見、層別化、個別科医療の実現と、エクソソームはがん治療のあらゆるフェーズで使える可能性を持っている」と述べつつも、現状は研究上での成果が出た段階であり、「健康診断や臨床の現場で使われ、がんの死亡率を下げ、医療費削減に貢献することが最終目標。そのためには今後の大規模治験が欠かせない」と強調した。 続けてエクソソームを介した情報伝達のシステムはすべての細胞・生物に共通するものだとし、COVID-19のウイルス(SARS-CoV-2)とエクソソームは非常に形状が似通っており、大きさも同等であると指摘。特定のエクソソームのクラスターがCOVID-19重症化の予測因子として使える可能性がある、という研究結果を紹介した。エクソソームやRNAを補充あるいは除去することがCOVID-19治療につながる 落谷氏らの研究チームは、PCR検査でCOVID-19陽性と判定され、入院となった軽症患者31例と健常者10例を対象とし、エクソソームのタンパク質と血液中RNAの2種類に関して網羅的な解析を行い、その後重症化した9例において高値となった複数のRNAを同定した。 軽症のままだった患者は、陽性判明時点で抗ウイルス応答関連のエクソソームタンパク質が高発現していた。重症化した患者はそれがない一方で、凝固関連エクソソームタンパク質およびRNAと肝障害関連RNAが高発現していた(抗ウイルス応答関連エクソソームタンパク質COPB2の重症化予測因子としてのAUC=1.0、感度・特異度共に100%)。 落谷氏は、「新型コロナウイルス感染症の重症化の特効薬は存在しない現状では、陽性判定時に重症化リスクによって層別化し、ハイリスク群を徹底管理することが重要。軽症者は早期退院・自宅療養として医療崩壊を食い止めるとともに、経済への影響も最小限にできるはず」とする。 現在、この研究結果をもとに別の患者集団による検証解析が行われているが、今回同定された分子のいくつかはSARS-CoV-2の治療標的分子や病態との関連が報告されており、単なる血液バイオマーカーとしてだけでなくCOVID-19の重症化メカニズムに関与している可能性が示唆される。このエクソソームやRNAを補充あるいは除去することが新たなCOVID-19治療法の開発につながることも期待されている。関連サイト【プレスリリース】東京医科大学医学総合研究所の落谷孝広教授が参画する研究チームが、リキッドバイオプシーを用いたCOVID-19における重症化予測因子の同定/東京医科大学

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COVID-19に対する中和抗体LY-CoV555の有効性は?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の外来患者へのSARS-CoV-2の中和抗体LY-CoV555投与について、2,800mg用量ではウイルス量を減少することが認められたが、他の用量では有効性が確認されなかった。米国・シダーズ・サイナイ医療センターのPeter Chen氏らが、進行中の第II相試験「Blocking Viral Attachment and Cell Entry with SARS-CoV-2 Neutralizing Antibodies trial:BLAZE-1試験」で事前に計画された中間解析(2020年9月5日現在)の結果を報告した。COVID-19は、多くの患者では軽症であるが、重症化し生命を脅かす可能性もある。ウイルス中和モノクローナル抗体は、ウイルス量を減らし、症状を改善し、入院を防ぐと予測されている。NEJM誌オンライン版2020年10月28日号掲載の報告。11日後のウイルス変化量で、3用量の有効性をプラセボと比較 研究グループは2020年6月17日~8月21日の期間に、軽症~中等症のCOVID-19外来患者467例を、中和抗体LY-CoV555群(700mg、2,800mg、7,000mg)またはプラセボ群に無作為に割り付け、それぞれ単回静脈内投与した。 主要評価項目は、ベースライン(SARS-CoV-2検査陽性判明時)から11日(±4)時点でのウイルス量の変化。ウイルス学的特性と症状に関するデータは29日目まで収集した。主要な副次評価項目は、安全性、患者報告による症状および転帰(COVID-19による入院、救急外来受診または死亡)であった。2,800mg投与群のみプラセボ群と比較してウイルス低下量が大 中間解析時点で、全例ではウイルス量(log10)のベースラインからの平均減少は-3.81で、ウイルスRNAの99.97%以上が除去された。 LY-CoV555の2,800mg投与群では、ベースラインからのウイルス変化量のプラセボとの差は-0.53(95%信頼区間[CI]:-0.98~-0.08、p=0.02)で、ウイルス量は3.4倍低下した。一方、700mg群(-0.20、95%CI:-0.66~0.25、p=0.38)、7,000mg群(0.09、95%CI:-0.37~0.55、p=0.70)では、ベースラインからのウイルス変化量についてプラセボとの差は認められなかった。 LY-CoV555群はプラセボ群と比較して、2~6日目の症状の重症度がわずかに低下した。COVID-19による入院または救急外来受診の患者の割合は、LY-CoV555群1.6%、プラセボ群6.3%であった。

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消化性潰瘍の予防法が明確に-『消化性潰瘍診療ガイドライン2020』

 消化性潰瘍全般の国内有病率は減少傾向を示す。しかし、NSAIDs服用患者や抗凝固薬、抗血小板薬服用患者の潰瘍罹患率は増加の一途をたどるため、非専門医による予防対策も求められる。これらの背景を踏まえ、今年6月に発刊された『消化性潰瘍診療ガイドライン2020』(改訂第3版)では、「疫学」と「残胃潰瘍」の章などが追加。また、NSAIDs潰瘍と低用量アスピリン(LDA:low-dose aspirin)潰瘍の予防に対するフローチャートが新たに作成されたり、NSAIDsの心血管イベントに関する項目が盛り込まれたりしたことから、ガイドライン作成委員長を務めた佐藤 貴一氏(国際医療福祉大学病院消化器内科 教授)に、おさえておきたい改訂ポイントについてインタビューを行った(zoomによるリモート取材)。消化性潰瘍診療ガイドライン2020で加わった内容 消化性潰瘍診療ガイドライン2020では、主に治療や予防に関する疑問をCQ(clinical question)28項目、すでに結論が明らかなものをBQ(background question)61項目、今後の研究課題についてFRQ(future research question)1項目に記載し、第2版より見やすい構成になっている。CQとFRQにはそれぞれ「出血性潰瘍の予防」「虚血性十二指腸潰瘍の治療法」に関する内容が加わった。佐藤氏は、「NSAIDs潰瘍やLDA潰瘍の治療、とくに予防においてはフローチャートに基づき、プロトンポンプ阻害薬(PPI)による適切な対応をしていただきたい」と話した。 続いて、高齢者診療で慢性胃炎、他剤の副作用回避のために処方されることが多いPPIやヒスタミン2受容体拮抗薬(H2RA)の長期処方時に注意すべきポイントについては、「PPI服用による、肺炎、認知症、骨折などの有害事象が観察研究では危惧されているが、昨年報告された3年間にわたるPPIとプラセボ投与の大規模無作為化試験1)で有意差が見られたのは腸管感染症のみだった。とはいえ、必要以上に長期にわたってPPIを投与するのは避けるべき」と漫然処方に対し注意喚起した。一方で、H2RAは、せん妄など中枢神経系の副作用が高齢者でみられることが報告され注意が必要なため、「PPIやH2RAの有害事象を今後のガイドラインに盛り込むかどうか検討していきたい」とも話した。消化性潰瘍診療ガイドライン2020で強く推奨された服用例 H.pylori陰性、NSAIDsの服用がない患者で生じる特発性潰瘍は増加傾向を示し、2000~03年の潰瘍全体の中の頻度は約1~4%であったのが、2012~13年には12%となっている。同じくLDA服用者において、Nakayama氏ら2)が2000~03年と2004~07年の出血性潰瘍症例を比較した結果、 LDA服用者の比率が9.9%から18.8% へと有意に増加(p=0.0366)していたことが明らかになった。この背景について、同氏は「LDA服用例に消化性潰瘍や出血性潰瘍の予防がなされていなければ、それらの患者はさらに増加する恐れがある。LDA服用例の出血性胃潰瘍症例は2000年代前半より後半で有意に増加したと報告されている」とし、「すでに循環器内科医の多くの方はPPIを用いた潰瘍予防を行っている。今後は消化性潰瘍既往のある患者はもちろん、既往のない場合は保険適用外のため個別の症状詳記が必要になるが、高齢者にはPPI併用による潰瘍予防策を講じていただきたい」と話した。消化性潰瘍診療ガイドラインでは、抗血小板2剤併用療法(DAPT)時にPPI併用による出血予防を行うよう強く推奨している。消化性潰瘍診療ガイドライン2020でおさえておきたい項目 今回の消化性潰瘍診療ガイドライン2020の改訂でおさえておきたいもう1つのポイントとして、「BQ5-13:NSAIDsは心血管イベントを増加させるか?」「CQ5-14:低用量アスピリン(LDA)服用者におけるCOX-2選択的阻害薬は通常のNSAIDsより潰瘍リスクを下げるか?」の項目がある。NSAIDsの心血管イベントの有害事象については、これまでナプロキセン(商品名:ナイキサン)服用者のリスクが低いとされてきた。しかし、今回の文献検討では必ずしもそうではなかったと同氏は話した。「潰瘍出血のNSAIDsとLDA服用例で、セレコキシブ(商品名:セレコックス)+PPI群とナプロキセン+PPI併用群の上部消化管出血再発を比較したRCT3)では、セレコキシブ群で再発率が有意に低く心血管イベントの発生には差を認めなかったため、LDA服用の心血管疾患例でNSAIDs併用投与時にはセレコキシブ+PPIが有用」と説明。また、セレコキシブの添付文書には心血管疾患者への投与は禁忌とあるが、これは冠動脈バイパス術の周術期患者のみに該当し、そのほかの心血管患者は慎重投与であることから、個々の患者の状態に応じた柔軟な治療選択を提唱した。消化性潰瘍診療ガイドライン2020の治療フローチャート このほか、消化性潰瘍の治療フローチャートには治療に残胃潰瘍、特発性潰瘍の診断が消化性潰瘍診療ガイドライン2020に追加された。残胃潰瘍とは、外科的胃切除術後の残胃に生じる潰瘍を示す病態だが、現時点では有病率のデータはない。同氏は「近年では残胃で潰瘍を経験するなど実臨床で遭遇する機会が増えているため、新たに章立てしフローチャートに追加した。胃亜全摘術後の胃と小腸の吻合部分の潰瘍は吻合部潰瘍として知られており、これまで吻合部潰瘍が取り上げられていた。しかし、吻合部だけでなく、残胃内に潰瘍が生じることが多いため、今回取り上げた。その中にはNSAIDs潰瘍もあるが、ピロリ陽性、陰性の潰瘍もある」とコメントした。 最後に佐藤氏は「日常診療において、ピロリ菌除菌時に処方される薬剤、とくにクラリスロマイシンは併用注意薬や併用禁忌薬が多い。そのため、患者の紹介を受けた際には常用薬に該当薬剤が含まれていないか注意しながら治療選択を進めている」と、消化器潰瘍の診察時ならではの見逃してはいけないポイントを話した。

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COVID-19回復者血漿療法は有益か/BMJ

 インドで行われた第II相多施設共同非盲検無作為化試験の結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)回復期患者の血漿を用いた治療は、COVID-19の重症化や全死因死亡の抑制と関連しないことが、インド・Indian Council of Medical ResearchのAnup Agarwal氏らにより報告された。2020年10月現在、COVID-19回復期血漿療法に関しては、複数の小規模ケースシリーズと1つの大規模観察試験(3万5,000例超)および3つの無作為化試験が発表されている。観察試験では臨床的有益性が示唆されたが、試験は早期に中止され、また死亡への有益性を確認することはできていなかった。BMJ誌2020年10月22日号掲載の報告。回復期患者血漿200mLを24時間間隔で2回投与 研究グループは、インドの成人で中等度COVID-19患者への回復期血漿治療の有効性について検討した。2020年4月22日~7月14日に、インド国内39ヵ所の公的および民間病院で、COVID-19が確認された18歳以上の患者464例を対象に試験を行った。被験者は、室内気でPaO2(動脈血酸素分圧)/FiO2(吸入酸素濃度)が200~300mmHg、または呼吸数24/分超かつ酸素飽和度93%以下だった。 235例(介入群)に標準的治療+回復期患者血漿投与を、229例(対照群)に標準的治療のみを行った。介入群には、回復期血漿200mLを24時間間隔で2回投与。中和抗体の出現と値の測定は事前に規定されていなかったが、試験終了時に保存検体の解析が行われた。 主要アウトカムは、試験登録後28日時点における重症(PaO2/FiO2<100mmHg未満)への進行または全死因死亡の複合だった。重症化・全死因死亡発生率は両群ともに18~19%と同等 試験登録後28日時点における主要複合アウトカムの発生は、介入群44例(19%)、対照群41例(18%)と両群で有意差はなかった(リスク差:0.008、95%信頼区間[CI]:-0.062~0.078)。リスク比は1.04(95%CI:0.71~1.54)だった。 結果を踏まえて著者は、「本試験は一般化可能性が高く、回復期血漿投与は検査体制が限られている現実の状況下で行われた」と述べるとともに、「回復期血漿投与を受ける側および提供する側双方の中和抗体価の先験的測定が、今後、COVID-19治療における回復期血漿の役割を明らかにする可能性はある」と提案している。

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「メジコン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第24回

第24回 「メジコン」の名称の由来は?販売名メジコン®錠15mgメジコン®散10%メジコン®配合シロップ一般名(和名[命名法])1)メジコン錠15mg・メジコン散10%デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(JAN)[日局]2)メジコン配合シロップデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(JAN)[日局]クレゾールスルホン酸カリウム(JAN)[局外規]効能又は効果(1)メジコン錠15mg・メジコン散10% 1.下記疾患に伴う咳嗽感冒、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎、肺結核、上気道炎(咽喉頭炎、 鼻カタル) 2.気管支造影術及び気管支鏡検査時の咳嗽(2)メジコン配合シロップ下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難急性気管支炎、慢性気管支炎、感冒・上気道炎、肺結核、百日咳用法及び用量(1)メジコン錠15mg・メジコン散10%通常、成人にはデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物として1回15~30 mgを 1日1~4回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。(2)メジコン配合シロップ通常、成人には1日18~24 mL、8~14歳1日9~16mL、3ヵ月~7歳1日3~8 mLを3~4回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)【禁忌(次の患者には投与しないこと)】1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.MAO阻害剤投与中の患者※本内容は2020年11月4日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2019年12月改訂(改訂第14版)医薬品インタビューフォーム「メジコン®錠15mg、メジコン®散10%、メジコン®配合シロップ」2)シオノギ製薬:製品情報一覧

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今冬の流感予防接種の予定なしは6割/アイスタット

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の中で、今冬のインフルエンザの流行を前に一般市民のインフルエンザの予防意識を探る目的で、株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀保夫)は、10月20日に「インフルエンザ予防接種に関するアンケート調査」を行った。 アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”に登録している会員で20歳以上の会員300人を対象に調査を実施したもの。調査概要 形式:WEBアンケート方式 期日:2020年10月20日 対象:セルフ型アンケートツール“freeasy”の登録者300人(20歳以上)インフルエンザの予防接種を阻む壁 「今までにインフルエンザに感染したことがあるか」の問いに「ある」が48.0%、「ない」」が52.0%という結果で、約半数の回答者にインフルエンザ感染の経験がなかった。 「(10月20日時点)予防接種を受ける予定はあるか」の問いに「受ける予定はまったくない」が38.7%と最も多い結果だった。また、「受けた/受ける予定」「今は受ける予定はない/予定はまったくない」ごとに足した割合でみると、「受けた/受ける予定」は37.3%、「受ける予定はない」は62.7%で、「受ける予定はない」が過半数を上回る結果だった。参考までに2019年の調査と比較すると「受ける予定はない」が9ポイント増加していた。 「予防接種を受けた/受ける予定」と回答した112名の「接種の理由」を聞いたところ、最も多かった理由は「今シーズンは新型コロナウイルスがあり、危機感を感じたから」が58.9%で、次に「インフルエンザに感染しても軽い症状ですむ、回復が早いから」が44.6%、「今シーズンは流行しそうなので」が20.5%と続いた。一方、「予防接種を受ける予定はない」と回答した188名に「接種しない理由」を聞いたところ、最も多かった理由は「値段が高い」が26.1%、「受けに行くのが面倒」が22.3%、「コロナ感染予防対策で予防できる」が21.8%と続いた。手洗い、マスク、うがいで健康を維持 回答者の健康状態について「日頃、風邪をひきやすい、体調を崩しやすい体質」かの問いでは、「はい」が26.7%、「いいえ」が73.3%の結果だった。回答者の約3割が風邪をひきやすい体質との回答だった。 これを踏まえ「最近1年間の感染症による症状」について聞いたところ、「風邪で37.5℃以上の発熱」が9.7%、「インフルエンザ」が5.7%、「出勤停止を伴う伝染病、ウイルス感染症」が2.3%、「COVID-19」が1.0%、「肺炎」が0.3%の回答であり、「いずれにもあてはまらない」が81.7%と8割を超える回答者がCOVID-19流行の中でも健康を維持していた。 「最近1年間で、日頃行っていること」の問いでは、「手洗い」が79.0%、「マスク着用」が77.0%、「うがい」が63.7%と続き、上位はCOVID-19予防対策の内容が占めた。 最後に回答者へ「平熱はいくつか」という問いでは、「 36.3℃~36.5℃」が42.3%で最も多く、「36.0℃~36.2℃」が31.7%、35.9℃以下が15.0%と続いた。 同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。参考2020年11月 インフルエンザ予防接種に関するアンケート調査

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がん診療病院でのCOVID-19クラスター、その教訓は/日本癌治療学会

 市中感染が広がる状況下では、感染者が院内に入り込む可能性や病院内感染発生のリスクが常にある。リスクをいかに減らし、万が一予期せぬ感染者が発覚した場合にどのような対応が必要か、がん診療をどのように維持していけばよいのか。第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)で、「COVID-19蔓延期の癌治療―体験と教訓―」と題した会長企画シンポジウムが開かれ、がん診療を担う病院での今春からの経験、実施している対策が相互に共有された。本稿では、加藤 秀則氏(北海道がんセンター)、佐藤 悠城氏(神戸市立医療センター中央市民病院)による発表内容を中心に紹介する。北海道がんセンターでクラスターが発生した原因 北海道がんセンターでは、4月13日に消化器内科病棟で看護師1名と患者1名が発熱、翌日には同病棟勤務の看護師2名も発熱した。当時院内ではPCR検査が実施できなかったため、保健所を通じPCR検査を実施したところ、16日に4名で新型コロナウイルス陽性を確認。これを契機に、同病棟および隣接する泌尿器科(同フロア)の患者、勤務する看護師、医師らの間で集団感染が発生した。厚生労働省クラスター班による調査・指導等を経て、5月16日に看護師1名の感染が確認されたのを最後に、6月13日の終息宣言に至った。 北海道がんセンターの加藤氏は、クラスターが発生してしまった原因として下記を挙げている:・病院の収益を確保するため、病床稼働率を上げなければならず病棟は密な状態であった・がん患者はさまざまな病態で熱発していることも多く、最初からコロナ肺炎を疑わない症例も多い・がん患者はPSの悪いことも多く、看護師が密着せざるを得ない看護も多い・築40年程度経過した病院で全体にスペースも狭く、空調も悪く、陰圧室もない・PCR検査は市の保健所でしか実施できず、疑い症例を自由に、迅速に行える状況ではなかった 北海道がんセンターのクラスターの端緒となったと考えられる患者は感染発覚前に、消化器内科から泌尿器科の病室に移っており、その隣室患者および看護した看護師へと伝播していった。加藤氏は、「進行がんで看護必要度の高い患者さんが多く、主に看護師を通して伝播したと考えられる」と話した。感染者の中には清掃やリネン、放射線技師といった病棟横断的に業務を行う者も含まれており、院内感染防止の観点から注意が必要な部分と振り返った。 また、消化器内科病棟勤務で感染した看護師19名のうち、1回目のPCR検査で陽性となったのは13名。2回目が5名で、症状だけが続き4回目ではじめて陽性となった者も1名いたという。加藤氏は、PCR検査の感度、タイミングの問題も考えていかなければいけないと話した。北海道がんセンターでの感染対策の改善点 北海道がんセンターでは、外来・病棟それぞれにおいて、下記を中心とした感染対策の改善を行っている。[外来での改善点]・待合室の3密対策・入口を1ヵ所にしてサーモグラフィチェック・発熱者の隔離部屋を用意・採血室、外来化学療法室の増設・過密回避、外来診察室の医師と患者の間にスクリーンの設置・各受付にスクリーンの設置・CTなどの検査機器、X線照射装置、胃カメラ、ベッドなどは毎回消毒・電カル、キーボード、マウスのアルコールペーパーでの消毒など職員の衛生意識改善[病棟での改善点]・定期入院はすべて事前にPCRと肺CT検査を行い陰性者のみ入院・PCRは自院の装置、検査会社との契約により件数拡充・臨時入院は個室隔離し、PCR結果が出るまではPPE対応・病室は過密対策で稼働を50%にコントロール・看護師休憩室の増設・面会の全面禁止 また、復帰した医療者のメンタルケアの重要性を感じたと加藤氏。感染症から回復して復帰しても、精神的に回復するまでには時間を要したという。「プライバシー保護にも配慮が必要であるし、回復には時間がかかる。専門の心理療法士に依頼し、病院全体を挙げてのケアの必要性を感じた」と話した。神戸市立医療センター中央市民病院の院内感染の原因 神戸市立医療センター中央市民病院は、地域がん診療拠点病院であるとともに第一種感染症指定医療機関で、神戸市でCOVID-19が初発した3月上旬より、約200例のCOVID-19患者を受け入れている。うち、7例が院内感染によるもの。佐藤氏は、院内感染発生の原因として、1)COVID-19患者の在院日数の長さ、2)ゾーニングの問題、3)強い感染力を挙げて考察した。 1)については、酸素投与を要した患者における在院日数の中央値は31日、ICU在室日数の中央値は9日と長く、病床がひっ迫していた状況があった。2)10床の感染症病床(陰圧個室)を有し、専門看護師が感染者の看護に従事していたが、ナースステーションと休憩室は一般病床を担当する看護師と共通で、ここで医療従事者間での感染が起こったと推測される。3)同院での院内感染の伝播において重要な役割を果たしたと考えられる患者は、透析患者で当初感染が疑われておらず、せん妄があったことなどからナースステーションでの大声での発話などがあり、PCRでは高ウイルス量が検出されるなどの因子が重なって、複数の医療従事者の感染につながったことが推測される。多いCOVID-19疑似症、対策はあるのか 神戸市立医療センター中央市民病院では、ビニールシートによる職員の保護等ゾーニングの徹底や、全例PCRを実施する入院前検査のほか、COVID-19合同診療チームを立ち上げて対策にあたっている。重症例はICUで一括管理できるものの、軽症~中等症例はICUを出た後各科の持ち回りになるため、1人の医師が感染者と非感染者の診療を行うことに対するリスクを減らすため、このチームが立ち上げられた。全科から選抜、各科業務を完全に外れ、2週間勤務後1週間の自宅待機を経て復帰する。 2月はじめから院内感染により病院が機能停止した4月中旬までの約2ヵ月半で、救急外来と感染症外来を受診したCOVID-19疑似症患者は286例に及ぶ。そこで同院では、感染拡大期には感染疑い病棟を設置。PCR検査が陰性であっても、類似症状や胸部異常影がある患者についてはいったん同病棟に収容し、担当医も分ける形をとるようにした。感染対策解除基準のフローを作り、どうしても臨床的な疑いが解除できない患者においては何度でもPCR検査を行い、それまで感染症対応を解除しないという方法をとっている。「今後のがん診療では、COVID-19疑似症の対応は必須になるのではないかと考えている」と佐藤氏。胸部CTにおいて、一見器質化肺炎が疑われた患者でCOVID-19陽性であった例や、末梢側のすりガラス影がみられる患者で薬剤性肺障害であった例など、いくつか自験例を示して解説した。 自院の症例約100例でCOVID-19と薬剤性肺障害の背景因子を後ろ向きに比較した結果では、COVID-19症例では陰影のある肺葉数が多いという傾向はみられたものの、大きな臨床所見の差はみられなかった。呼吸器内科医としては、今後これらの鑑別をしっかり行っていかなければならないと話し、またCOVID-19後遺症として罹患後に間質陰影を呈した肺がん症例での治療再開の判断の難しさにも触れ、後遺症に関してもエビデンスの蓄積が待たれるとした。

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2つの心保護作用で心不全の悪化を防ぐ「エンレスト錠50mg/100mg/200mg」【下平博士のDIノート】第61回

2つの心保護作用で心不全の悪化を防ぐ「エンレスト錠50mg/100mg/200mg」今回は、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)「サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト錠50mg/100mg/200mg、製造販売元:ノバルティスファーマ)」を紹介します。本剤は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA系)の抑制作用と、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)系の増強作用を併せ持つことで、心不全の進行を抑えます。<効能・効果>本剤は、慢性心不全(慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。※また、2021年9月、100mg・200mg錠に「高血圧症」の適応が追加されました。<用法・用量>《慢性心不全》通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として、1日2回経口投与します。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量します。忍容性に応じて適宜減量しますが、1回投与量は50mg、100mg、200mgとし、いずれにおいても1日2回投与です。なお、本剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)から切り替えて投与します。※《高血圧症》通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与します。年齢、症状により適宜増減しますが、最大投与量は1日1回400mgです。なお、本剤の投与により過度な血圧低下の恐れなどがあり、原則、高血圧治療の第一選択薬としては使えません。<安全性>慢性心不全患者を対象とした国内および海外の第III相臨床試験において、調査症例4,314例中966例(22.4%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、低血圧448例(10.4%)、高カリウム血症201例(4.7%)、腎機能障害124例(2.9%)、咳嗽67例(1.6%)、浮動性めまい63例(1.5%)、腎不全34例(0.8%)、心不全31例(0.7%)、起立性低血圧31例(0.7%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、血管浮腫(0.2%)、腎機能障害(2.9%)、腎不全(0.8%)、低血圧(10.4%)、高カリウム血症(4.7%)、ショック(0.1%未満)、失神(0.2%)、意識消失(0.1%未満)、間質性肺炎(0.1%未満)、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少、低血糖、横紋筋融解症、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、Stevens-Johnson症候群、多形紅斑、天疱瘡、類天疱瘡、肝炎(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、心臓の負担を減らし血圧を下げる作用によって、心不全の悪化を抑えます。2.血圧が下がることで、めまいやふらつきが現れることがあるので、高所での作業、自動車の運転などの危険を伴う機械を操作する場合には注意してください。3.唇・まぶた・舌・口の中・顔・首が急に腫れる、喉がつまる感じ、息苦しい、声が出にくいなどの症状が現れた場合は、すぐに連絡してください。4.体のしびれ、脱力感、吐き気、嘔吐などの症状が現れた場合、体内のカリウム値が高くなっている可能性があるので、すぐにご相談ください。<Shimo's eyes>心不全が進行すると、心臓のポンプ機能が低下して循環血液量が減少し、これを補うためにレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系と心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)系の働きが亢進します。そして、その状態が続くと心臓に負担がかかり、心不全がさらに悪化するという悪循環に陥ります。本剤の有効成分はサクビトリルおよびバルサルタンですが、いわゆる配合薬ではなく、サクビトリルとバルサルタンを1対1のモル比で含む医薬品であり、経口投与後に速やかにサクビトリルとバルサルタンに解離します。サクビトリルは、ANPを不活化するネプリライシン(NEP)を阻害してANP系を増強し、心室肥大の抑制や抗線維化などの心保護作用をもたらします。しかし、NEPはアンジオテンシンII(AII)の不活化作用も有するため、阻害されるとRAA系の働きを強めてしまいます。そこで、本剤はサクビトリルとバルサルタン(ARB)を組み合わせることでRAA系を抑え、心保護作用と降圧作用を得ることができる薬剤となり、すでに欧米を含む世界100ヵ国以上で承認されています。初回投与時は、ACE阻害薬またはARBから切り替えて使用します。ただし、ACE阻害薬との併用は血管浮腫が現れる恐れがあるため禁忌であり、ACE阻害薬から切り替える、もしくは本剤からACE阻害薬に切り替える場合は、少なくとも36時間空ける必要があります。初期投与量は50mgから開始して、忍容性を確認しながら維持量まで増量します。増量時の注意点として、50mg錠は100mg錠・200mg錠との生物学的同等性が確認されていないため、100mg以上の投与量の場合では50mg錠を使用することはできません。また、1回50mgから100mgへ増量時の基準として、(1)症候性低血圧がなく、収縮期血圧が95mmHg以上、(2)血清カリウム値5.4mEq/L以下、(3)eGFR 30mL/min/1.73m2以上かつeGFR低下率35%以下が示されています。注意すべき副作用として、本剤のブラジキニン分解阻害作用による血管浮腫、脱水(ナトリウム利尿)などがあります。臨床試験での発現頻度は低いものの、重症化すると生命を脅かす可能性がありますので、十分に注意して経過を観察しましょう。※2021年9月、添付文書改訂に伴い一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 エンレスト錠50mg/エンレスト錠100mg/エンレスト錠200mg

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COVID-19の入院/死亡の新予測アルゴリズムが有望/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院と死亡を予測するリスクアルゴリズム「QCOVID」は、良好に機能し識別能は非常に高いことが認められた。英国・Radcliffe Observatory QuarterのAsh K. Clift氏らは、成人COVID-19患者を含む患者データを用いたコホート研究により「QCOVID」を開発し、検証結果を報告した。これまでに論文発表されたCOVID-19のリスク予測モデルは、バイアスリスクが高く、実臨床に適用する際には信頼できない可能性があることが懸念されていた。今回のリスクアルゴリズムについて著者は、「提示された絶対リスクは、SARS-CoV-2感染率やソーシャルディスタンスの取り方などに応じて時間とともに変化する可能性があるので、解釈には注意すべきである」と述べたうえで、「本モデルは、異なる期間で再較正することができ、流行拡大に合わせて動的にアップデートされる可能性がある」としている。BMJ誌2020年10月20日号掲載の報告。英国の608万人のデータからリスクアルゴリズムを開発、217万人で検証 研究グループは、英国のプライマリケア1,205施設のデータベースで、COVID-19検査結果、Hospital Episode Statisticsおよび死亡登録データとも連携しているQResearchを用い、19~100歳の成人608万人を開発コホート、217万人を検証コホートに組み込み解析した。 開発コホートおよび第1期検証コホートは2020年1月24日~4月30日、第2期検証コホートは2020年5月1日~6月30日をそれぞれ試験期間とした。 主要評価項目は、COVID-19(確定または疑い)による死亡までの期間で、2020年1月24日~4月30日にSARS-CoV-2感染が確認された人における死亡診断または死亡発生と定義した。また、副次評価項目は、SARS-CoV-2感染確定による入院までの期間とした。 開発コホートにモデルを適合し、各種予測変数を用いてリスク方程式を導き出し、各検証コホートで識別および較正の性能を評価した。「QCOVID」の識別能および較正能は良好 追跡期間中、COVID-19による死亡は、開発コホートで4,384例、第1期検証コホートで1,722例、第2期検証コホートで621例発生した。最終的なリスクアルゴリズムには、年齢、人種、貧困、BMIおよびさまざまな併存疾患を組み込んだ。 このアルゴリズムは、第1期検証コホートにおいて較正精度は良好であることが示され、男性COVID-19患者の死亡に関して、死亡までの期間の変動の73.1%(95%信頼区間[CI]:71.9~74.3)を説明した。D統計量は3.37(95%CI:3.27~3.47)、Harrell’s Cは0.928(95%CI:0.919~0.938)であった。女性について、また両転帰および両期間においても、同様の結果が得られた。 予測死亡リスクが最上位5%の患者では、97日以内の死亡を特定する感度は75.7%であった。また、予測死亡リスクの上位20%の患者が、COVID-19による全死亡の94%を占めた。

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普段から気を付けたい身体診察のうっかり/日本感染症学会

 第94回日本感染症学会総会・学術講演会(会長:館田 一博氏[東邦大学医学部 教授])が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下、8月19日~21日の期日でインターネット配信との併用で東京にて開催された。 本稿では、特別企画「感染症を究める」より徳田 安春氏(群星沖縄臨床研修センター長)の「診察」の概要をお届けする。時にリスクとなる抗菌薬 「感染症です」と外来に訪れる患者はいない。その多くは「熱っぽい、だるい、寒気がする」などの訴えから医師が知識と経験を通じて総合的に診断をする。徳田氏の講演では、こうした診断の際に忘れがちなポイントや見落としやすい身体部位などについて症例を交え、レクチャーを行った。以下にレクチャーされた症例を抜粋して紹介する。 はじめに2つの表情の画像を並べ顔貌から読み取れる身体の不調を示し、“General appearance”から患者の全身状態を診る重要性を指摘した。 症例(1)では97歳・男性について、高齢者の無熱性肺炎について述べた。患者は平熱が35.4度で、診察時36.9度。主訴は「3日前からせきと痰」で、最終的に肺炎と診断された。高齢者の風邪診断では、患者の平熱のベースラインが異なるので、バイタル表では本人のベースライン体温にプラス1度の赤線を引くことで背後のリスクに気付くことができると説明した。 症例(2)では50歳・女性について、尿路感染症治療後に、バレーボールで左足首を痛め受診した。トンプソン検査は陽性で「アキレス腱断裂」と診断されたが、原因はバレーボールだけではなく、実は感染症治療で処方されたシプロフロキサシンに関連したアキレス腱断裂だったという症例を紹介した。フルオロキノロン系抗菌薬はよく使用される抗菌薬だが、もともと日本人では大動脈解離の発症頻度も多く、高用量、長期間の使用では注意が必要だと促した。 症例(3)では45歳・男性について、草野球で外傷性開放骨折を負い、術後7日後に急激な血圧低下により紹介された症例。患者の身体所見は「腫脹、発赤、発熱、圧痛」があり、びまん性に全身性の発赤があった。当初、手術部位感染(SSI)疑いで診療されたが、全身の発赤などからトキシクショック症候群(TSS)の合併もあると診断された。こうしたショックを伴う感染症について、「『急激に起こるショック』の感染症」(皮疹ないことあり)を示し、外来で想起できるように注意を促した。・「急激に起こるショック」の感染症」 “SMARTTT”S:SepsisM:MeningococcemiaA:Acute endocarditisR:RickettsiaT:Toxic shock syndromeT:Toxic epidermal necrolysis T:Travel-related infection普段診ない部位の身体所見は診断のカギになる 症例(4)では30歳代女性について、発熱、意識障害、肺炎、X線所見を提示し、髄膜刺激徴候、後部硬直があるという症例を説明した。身体診察でのケルニッヒ徴候検査の重要性を示し、普段の診療から診察し、経験を重ねておく大切さを伝えた。なお、この患者は、以前に交通外傷で脾摘後であり、髄液検査により肺炎球菌による髄膜炎の診断となった。 症例(5)では40歳代男性について、主訴として、咽頭痛、発熱、嚥下痛、よだれのほか喘息様の呼吸音があり、上気道の狭窄病変を示唆する所見があった例を提示した。患者の状態から挿管となったが、その際の注意点として上気道閉塞を塞がないために仰臥位にせず、座位で診察と挿管を施行するケースもあること、体位によっては、手技が患者にとって大きなリスクになることを説明した。患者はその後の診断で後咽頭腫瘍に伴う壊死性縦隔炎と診断され、手術対応となった。また、「咽頭痛で見逃してはいけない疾患」として次の5つの疾患を掲げ、生命予後に係わる疾患もあるので覚えておいてほしいと注意を促した。1 急性咽頭蓋炎2 後咽頭腫瘍3 扁桃周囲腫瘍4 レミエール症候群(内頸静脈の血栓性静脈炎)5 Ludwig angina(口腔底蜂窩織炎)6 無顆粒球症 症例(6)では20歳代男性について、主訴に2週間にわたる発熱、咳嗽、労作時の息苦しさなどがあった。口腔内のカンジタ所見から性生活歴を聴取し、男性同性愛者であることが判明した。諸検査によって、AIDSによるニューモスチス肺炎と口腔カンジタ症と診断し、ただちにST合剤とステロイド療法で呼吸状態は改善したという。患者の社会的背景の聴取の重要性も診断の一助となると指摘した。 症例(7)では60歳・男性について、3週間前から寝汗、AR雑音があり、爪下線状出血に加えオスラー結節とJaneway紅斑が足の裏にあり、眼底ではRoth斑が観察された。心エコーで疣贅を確認し、血液培養で腸球菌が検出されて感染性心内膜炎の診断がなされた。診断での目印の1つは「寝汗」であり、また、普段なかなか診ることのない足の裏の所見を診ることも大切だと説明した。

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中等度COVID-19へのトシリズマブ、挿管・死亡リスク低減せず/NEJM

 これまで明らかになっていなかった、人工呼吸器を要しない中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対するIL-6受容体遮断薬トシリズマブの有効性について、挿管または死亡のリスクを低減しないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJohn H. Stone氏らが行った、COVID-19入院患者243例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験で示された。ただし、有効性比較の信頼区間(CI)値が幅広く、一部の有益性と有害性は排除できないとしている。NEJM誌オンライン版2020年10月21日号掲載の報告。トシリズマブを単回投与し、挿管または死亡アウトカムを比較 研究グループは、COVID-19による過剰炎症反応期(38度超の発熱、肺浸潤、酸素飽和度92%超の維持のための酸素補充療法を必要とする、これらのうち2つ以上を認める)243例を対象に試験を行った。 被験者を2対1の割合で2群に分け、標準治療に加えて、一方にはトシリズマブ(8mg/kg体重)を、もう一方にはプラセボをそれぞれ単回投与した。 主要アウトカムは挿管または死亡で、time-to-event解析で評価した。有効性に関する副次アウトカムは、臨床的増悪および、ベースラインで酸素補充療法を行っていた患者における同療法の中止で、いずれもtime-to-even解析で評価した。臨床的増悪リスクに有意差なし 被験者243例のうち、男性は141例(58%)、女性は102例(42%)、年齢中央値は59.8歳(範囲:21.7~85.4)だった。ヒスパニック系または中南米系の患者が45%を占めた。 挿管または死亡に関する、トシリズマブ群のプラセボ群に対するハザード比(HR)は0.83(95%CI:0.38~1.81、p=0.64)、臨床的増悪のHRは1.11(0.59~2.10、p=0.73)で、いずれも有意差はなかった。14日時点で増悪が認められたのは、トシリズマブ群18.0%、プラセボ群14.9%だった。 酸素補充療法中止までの期間中央値は、それぞれ5.0日と4.9日で同等だった(p=0.69)。また、14日時点で酸素補充療法を受け続けていたのは、トシリズマブ群24.6%、プラセボ群21.2%だった。 なお、Grade3以上の重篤な感染症発生率については、プラセボ群17.1%に対し、トシリズマブ群は8.1%と有意に低率だった(p=0.03)。

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ロピナビル/リトナビル合剤が新型コロナに対して無効であった理由は?(解説:山口佳寿博氏)-1308

 新型コロナ感染症が中国・武漢において発生してから10ヵ月が経過した。この10ヵ月の間、感染症の分子生物学的/生理学的病態解明が進み、治療法に関しても抗ウイルス薬、ウイルス誘発免疫過剰状態(血栓過形成を含む)に対する多数の薬物に関する治験、ウイルスに対する不活化ワクチン、遺伝子工学的ワクチンの製造が驚くべきスピードで進行している。それらの結果として、新型コロナ感染症に対する有効な治療方針が整理されつつあり、同一施設における入院死亡率はパンデミック初期に比べ明らかに低下している(Horwitz L, et al. medRxiv. doi.org/10.1101/2020.08.11.20172775.)。初期治療に重要な抗ウイルス薬に関しては、種々の薬物が“篩(ふるい)”にかけられ、RNA-dependent RNA polymerase(RdRp)阻害薬であるレムデシビル(商品名:ベクルリー、Beigel JH, et al. N Engl J Med. 2020 Oct 8. [Epub ahead of print] , Wang Y, et al. Lancet. 2020;395:1569-1578.)ならびにファビピラビル(商品名:アビガン、Ivashchenko AA, et al. Clin Infect Dis. 2020 Aug 9. [Epub ahead of print], Cai Q, et al. Engineering (Beijing). 2020 Mar 18. [Epub ahead of print], 富士フイルム富山化学 9月23日付 News Release)が一定の効果を有することが確認された。一方、RdRpより上位で作用するウイルス―宿主細胞膜融合阻害薬であるクロロキン/ヒドロキシクロロキンならびに3-chymotrypsin protease阻害薬(Protease inhibitor)であるロピナビル/リトナビル(商品名:カレトラ、以下L/R合剤)の効果は確認されなかった。本論評においてはL/R合剤に焦点を合わせ、この薬物が臨床的効果を発揮できなかった理由について考察する。 抗ウイルス薬に関するメタ解析では、L/R合剤が新型コロナ患者の入院日数を短縮する可能性が示唆された(Siemieniuk RA, et al. BMJ. 2020;370:m2980.)。しかしながら、中国ならびに英国で施行された信憑性の高いRCTではL/R合剤の臨床的に意義のある有効性は確認されなかった(中国・LOTUS Study[Cao B, et al. N Engl J Med. 2020;382: 1787-1799.]対照群:100例、L/R群:99例、英国・RECOVERY Trial[RECOVERY Collaborative Group. Lancet. 2020 Oct 5. [Epub ahead of print]]対照群:3,424例、L/R群:1,616例)。 L/R合剤は、HIV-1(コロナと同様に1本鎖RNAウイルス)に対するキードラッグの1つとして、本邦では2000年12月に厚労省の薬事承認を受けたProtease inhibitorである。リトナビルは肝臓の薬物代謝酵素であるCYP3A4の活性を競合的に阻害しロピナビルの血中濃度を維持する。しかしながら、ロピナビルの95%以上は血漿タンパクと結合・不活化されるため、ロピナビルの生体内薬物活性はリトナビル共存下においても高く維持することは難しい。コロナウイルスが感染源である2002年のSARS、2012年のMERSが発生した時には、in vitroの検討でL/R合剤がSARS、MERSウイルスに対して感受性を有する可能性が示唆された。この時の検討結果(in vitro)では、ウイルス感染を50%抑制するL/R合剤の有効血中濃度(EC50)はSARSで17.1 μmol/L、MERSで6.6 μmol/Lであると報告された(日本小児科学会)。HIV-1を抑制するL/R合剤の血中濃度が7.2~12.1 μmol/Lであることを考慮すると(Lopez-Cortes LF, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2013;57:3746-3751.)、通常量のL/R合剤投与でMERSは抑制される可能性があるもののSARSの抑制は難しい。新型コロナに対するL/R合剤のin vitro EC50は26.1 μmol/Lであり(Choy KT, et al. Antiviral Res. 2020;178:104786.)、HIV-1を抑制する通常量のL/R合剤投与では到底到達できない濃度であることが理解できる。L/R合剤の投与量を増加すれば臨床的有効性が認められる可能性があるが、その場合には、生命を脅かす重篤な有害事象の発生が予想され臨床の現場で施行すべきものではない。以上のように、生体にとって安全な投与量が低く制限されていることがL/R合剤によって新型コロナ感染症を制御できなかった理由であり、L/R合剤が新型コロナウイルスに対して薬理学的にまったく無効であることを意味するものではない。  結論として、現状のL/R合剤を用いたこれ以上の臨床治験は無意味である。今後HIV-1をターゲットとしたProtease inhibitorを用いて新型コロナに対する臨床治験を実施するならば、近年新たに開発されたダルナビル製剤(商品名:プリジスタ、シムツーザ)などの新型コロナに対するEC50の測定を含めたin vitroの検討とその基礎的/薬理学的結果を踏まえた臨床治験を計画すべきである。

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第23回 軽症の肺炎は入院適応ではないのか?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)スコアだけで判断するのではなく、患者背景を意識したマネジメントを!2)再発予防も忘れずに!【症例】81歳女性、肺炎●受診時のバイタルサイン意識清明血圧139/75mmHg脈拍72回/分(不整)呼吸21回/分SpO296%(RA)体温36.9℃既往歴高血圧、心筋梗塞、心房細動内服薬タケルダ(一般名:アスピリン・ランソプラゾール配合剤錠)、リピトール(同:アトルバスタチン)、ラシックス(同:フロセミド)、エリキュース(同:アピキサバン)肺炎の重症度の判断みなさん、肺炎の重症度はどのように判断しているでしょうか?酸素化が悪くリザーバーマスクでの酸素投与を要する場合には、重症と判断することは可能ですが、指標は酸素投与量のみでは判断できませんよね。市中肺炎の重症度の指標としてCURB-65スコア(表1)、A-DROPスコア(表2)が有名です1)。A-DROPスコアは、わが国の高い平均寿命を考慮して年齢が修正されていますが、項目はほぼCURB-65スコアと同様です。A-DROPスコアでは、CURB-65スコアで呼吸数だった項目がSpO2になっていますが、必ず呼吸数は意識するようにしてください。意識障害の程度が項目に含まれているのも重要です。Sepsis-3で導入されたqSOFAでも呼吸数と意識状態は大事なバイタルサインでしたね2)。A-DROPスコアの5項目のうち、実臨床で軽視されがちなのが意識状態、そして脱水の有無でしょう。他の項目は簡単に評価できるのに対して、意識障害は発熱や認知症のせい、水分は摂れそうだから脱水はないだろうなどと考えてしまいがちですが、どちらも客観的な評価が必要です。普段の意識状態との比較、身体所見で脱水を示唆する所見を認めないかはきちんと確認しましょう。また、体温と重症度は比例せず、むしろ低い方が重症であることを覚えておきましょう。高熱だから重症、発熱を認めないから軽症というわけではありません。表1 CURB-65スコア画像を拡大する表2 A-DROPスコア画像を拡大する誤嚥性肺炎の重症度高齢者で多い肺炎の原因に誤嚥性肺炎が挙げられます。誤嚥性肺炎の重症度も市中肺炎と同様にCURB-65スコアやA-DROPスコアで評価してよいかというと注意が必要です。誤嚥性肺炎は嚥下機能障害などを認める患者に起こるが故に、患者背景に予後は大きく依存します。そのため、重症度評価は患者背景が含まれるPSI(Pneumonia Severity Index)スコア(表3)が有効とされます3、4)。PSIはA-DROPスコアと比較すると評価項目が多く、点数をつけるのは面倒と思うかもしれませんが、患者背景を意識しなければ適切な評価はできません。簡単に計算できるアプリケーション(MDCalc etc.)もあるので利用するとよいでしょう。表3 PSIスコア画像を拡大する軽症ならば帰宅?酸素投与が必要な症例は原則として入院となりますが、酸素需要がなく軽症であれば帰宅可能でしょうか。例えば本症例の81歳の女性が肺炎球菌性肺炎でA-DROPスコアが年齢のみの1点であれば帰宅は可能なのでしょうか。結論から言えば、スコアだけで判断することはできません。歩行可能で経口摂取が問題ない患者さんと、A-DROPスコアこそ1点であるものの食事が十分摂れず自身では動くことができない患者さんでは、対応が一緒のはずがないからです。また、既存の疾患によって複数の薬剤を内服している患者さんでは、食事摂取量によって、また抗菌薬投与によって薬剤の効果に変動がみられるかもしれません。高齢者総合的機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)など患者さんの日常生活動作の評価だけでなく精神心理機能や社会経済因子、さらには服薬状況や事前指示取得など複数の項目を評価することが重要なのです。救急外来で診療をしていると多くの患者さんを対応し、軽症患者をなんとか帰宅させようとしてしまうものです。また、ベッド状況も厳しく入院の閾値は上がっているかもしれません。しかし、無理矢理帰して重症化して再受診となっては、入院期間はさらに延びてしまうでしょう。「急がば回れ」の精神で、初診時に先を見据えた適切な対応を行うことを心掛けましょう。1)日本呼吸器学会. 成人肺炎診療ガイドライン2017.2017.2)Singer M, et al. JAMA. 2016;315:801-810.3)Lanspa MJ,et al. J Hosp Med. 2015.10;2:90-96.4)Fine MJ, et al. N Engl J Med. 1997;336:243-250.

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COVID-19検査法と結果どう考えるか/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:舘田 一博氏[東邦大学医学部 教授])は、10月12日に「COVID-19検査法および結果の考え方」を提言としてまとめ、同会のホームページで公開した。 提言では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でさまざまな検査法、検査機器の登場により日々新しい情報が次々と発表されて行く中で、遺伝子検査で陽性を示す患者の感染性をどのように評価していくのかが検査の重要な課題として定義。その中でもCt値(Cycle Threshold)が重要な項目の1つとして将来的に遺伝子検査陽性が持続する患者に対し、Ct値や特異抗体の検出などを併用することで、正確に感染性を評価することができるようになると示唆している。 以下に「COVID-19検査法および結果の考え方」の概要をまとめた。なお、この内容は2020年10月初めの情報であり、今後変更される可能性があることも留意いただきたい。検査の適用は4つのタイプ 「検査の適用に関する基本的考え方」として、新型コロナウイルス感染症対策分科会から、COVID-19に対する検査の基本的考え方が下記のように示されている。(1)有症状者(COVID-19 を疑う症状がある患者)(2)無症状者 a 感染リスクおよび検査前確率が高い場合(例:クラスター発生時、医療機関や高齢者施設など) b 感染リスクおよび検査前確率が低い場合(例:海外渡航時、スポーツ選手、文化・芸能など) また、検査法ごとに使用できる検体および対象者として、検査法では「遺伝子検査」「高感度抗原検査」「簡易抗原検査」の3つが、検体では「鼻咽頭」「鼻腔」「唾液」の3つがあり、有症状者、無症状者により使い分けて使用することが厚生労働省より発表されている。 とくにインフルエンザ流行の秋冬においては、鼻咽頭あるいは鼻腔検体を用いてインフルエンザとCOVID-19 の検査を同時に実施することも想定し、同学会の過去の提言やCOVID-19病原体検査の指針を参考にしてほしいと述べている。各検査法の特徴と注意点・遺伝子検査法 特徴:数十コピーのウイルス遺伝子を検出できるほど感度が高い 注意点:検査時間が比較的長い(1~5時間)、専用機器・熟練した人材が必要、高コストなど おおむね感度90%以上、特異度はほぼ100%・抗原検査 特徴:検体採取ののち約30分で目視による判定が可能である(定性試験) 注意点:イムノクロマトグラフィー法では感度が低く、唾液検査は認められていない。ルミパルスは、遺伝子検査に近い感度が得られるとされている。高感度抗原検出検査は、無症状者の鼻咽頭拭い液および唾液を用いた検査でも承認・抗体測定法 特徴:COVID-19では抗体産生が、発症から受診まで2週間(通常、特異抗体産生は感染後2~3週間必要)ほどの経過である症例もあり、このような場合、患者血液の抗体の検出が診断に役立つ 注意点:感染・発症していても抗体検査が陽性にならない症例があることに注意。感度・特異度ともに他の方法と比較して劣り、製品ごとのばらつきも大きい感染性を評価するための指標としてCt値を提言 症状が軽快したのちも、数週間にわたって遺伝子検査が陽性を示すことが報告されている。長期間の遺伝子検査陽性を示す患者において、いつまで隔離を行う必要があるのか(感染性はいつまで続いているのか)の判断に苦慮することが多い。 そこで、感染性を評価するための指標として遺伝子コピー数(Ct値)を提言している。408症例の検討から発症時点でのCt値は20前後であったものが、日数が経過するごとにCt値は高くなり(ウイルス遺伝子数が減少)、発症9日の時点でCt値は30.1となっている1)。また、発症からの日数とCt値およびウイルス培養結果の関連では、Ct値が高くなるにしたがい(ウイルス遺伝子数が減少)、検体からのウイルスの分離率が低下していることがわかる。 これらの研究からウイルスの分離(すなわち感染性)は発症からの日数およびウイルスRNA量に強く依存している可能性を示すものであると説明している。退院基準の考え方 遺伝子検査がなかなか陰性化しないことで、無症状であっても退院させられない症例の増加が問題となっている。そこで、遺伝子検査の陰性結果(Test-based strategy)とともに、発症および症状消失からの日数を参考に退院を判断するSymptom-based strategy の導入が検討されている。 下記に「COVID-19陽性者の退院基準・解除基準」を示す。 1)有症状者の場合 (1)発症日から10日間経過し、かつ症状軽快後、72時間経過した場合 (2)症状軽快の24時間後、2回のPCR検査(24時間間隔)で陰性確認 2)無症状者の病原体保有者の場合 (1)検体採取日から10日間経過した場合 (2)検体採取日から6日間経過後、2回のPCR検査(24時間間隔)で陰性確認 以上今後の検査、退院などに際し参考としていただきたい。■参考COVID-19検査法および結果の考え方

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