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肺炎での不要な抗菌薬、プロカルシトニン+肺超音波の診療現場検査で減らせるか/BMJ

 プライマリケアにおける下気道感染症患者への抗菌薬処方に関して、プロカルシトニンによるpoint-of-care検査は通常治療と比較して、28日の時点で患者の安全性に影響を及ぼさずに抗菌薬処方を26%減少させるが、これに肺超音波によるpoint-of-care検査を加えても、それ以上の処方率の減少は得られないとの研究結果が、スイス・ローザンヌ大学病院のLoic Lhopitallier氏らによって報告された。研究の詳細は、BMJ誌2021年9月21日号に掲載された。3群を比較するスイスの総合診療施設のクラスター無作為化試験 本研究は、プライマリケアの下気道感染症患者における、プロカルシトニンpoint-of-care検査と肺超音波point-of-care検査は安全性を保持しつつ不要な抗菌薬処方を削減できるかの検証を目的とする、スイスの実践的な非盲検クラスター無作為化試験であり、2018年9月に開始されたが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染爆発の影響で、2020年3月10日に早期中止となった(スイス国立科学財団[SNSF]などの助成による)。 本試験には、スイスの60の総合診療施設から、それぞれ1人の総合診療医(肺炎の診断にプロカルシトニンpoint-of-care検査や肺超音波point-of-care検査を使用した経験がない医師)が参加した。総合診療医は、急性咳嗽(≦21日)を呈する年齢18歳以上の患者をスクリーニングし、臨床的肺炎(急性咳嗽のほか、4日以上持続する発熱、呼吸困難、頻呼吸[>22回/分]、異常肺音の聴診のうち1つ以上を呈する)と診断した患者を選出した。 60の総合診療施設は、次の3つの群に20施設ずつ無作為に割り付けられた。(1)プロカルシトニンpoint-of-care検査を行い、濃度上昇(≧0.25μg/L)がみられた場合は、引き続き肺超音波point-of-care検査を行い、肺のコンソリデーションを認めた場合にのみ、抗菌薬の処方を推奨する群(UltraPro群)、(2)プロカルシトニンpoint-of-care検査を行い、濃度上昇(≧0.25μg/L)がみられた場合にのみ、抗菌薬の処方を推奨する群(プロカルシトニン群)、(3)通常治療群。 主要アウトカムは、28日の時点における抗菌薬処方が行われた患者の割合とされた。副次アウトカムは、14日以内における下気道感染症による活動制限の期間などであった。抗菌薬処方率:41% vs.40% vs.70%、活動制限の非劣性は証明できず 各群20人の総合診療医のうち、女性医師はUltraPro群が8人、プロカルシトニン群が8人、通常治療群が9人で、10年以上の臨床経験を持つ医師はそれぞれ8人、11人、10人だった。 解析に含まれた患者は469例(UltraPro群152例、プロカルシトニン群195例、通常治療群122例、intention-to-treat集団)で、このうち435例(93%)が電話によるフォローアップを完了した。全体の年齢中央値は53歳(IQR:38~66)、59%が女性であった。 UltraPro群では、9例(6%)がプロカルシトニン濃度≧0.25μg/Lであり、引き続き肺超音波検査を受けた。6例(67%)で肺浸潤影が確認された。肺超音波検査の所要時間中央値は15分(IQR:15~20)だった。プロカルシトニン群では、19例(10%)がプロカルシトニン濃度≧0.25μg/Lであった。 プロカルシトニン群は通常治療群に比べ、28日までの抗菌薬処方率が低かった(0.4[78/195例]vs.0.7[86/122例]、クラスター補正後群間差:-0.26[95%信頼区間[CI]:-0.41~-0.10]、オッズ比[OR]:0.29[95%CI:0.13~0.65]、p=0.001)。 UltraPro群とプロカルシトニン群には、28日の時点での抗菌薬処方率に差は認められなかった(0.41[62/152例]vs.0.40[78/195例]、クラスター補正後群間差:-0.03[95%CI:-0.17~0.12]、OR:0.89[95%CI:0.43~1.67]、p=0.71)。 14日までの活動制限日数中央値は、プロカルシトニン群が4日、通常治療群は3日であり(群間差:1日[95%CI:-0.23~2.32]、ハザード比[HR]:0.75[95%CI:0.58~0.97])、95%CIの上限値が事前に規定された非劣性マージンを超えたためプロカルシトニン群の通常治療群に対する非劣性は証明されなかった。UltraPro群とプロカルシトニン群にも差はみられなかった(4日vs.4日、群間差:0日[95%CI:-1.48~1.43]、HR:1.01[95%CI:0.80~1.29])。 抗菌薬の処方が減少しても、患者の臨床アウトカムや満足度に影響はなかった。 著者は、「肺超音波point-of-care検査からは、さらなる抗菌薬処方の減少は得られなかったが、CIの範囲が広いことから、肺超音波が新たな価値をもたらす可能性は排除できない」としている。

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新型コロナでのECMO治療開始後の死亡率、流行初期より増加/Lancet

 体外式膜型人工肺(ECMO)治療の初期導入施設では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者におけるECMO治療開始後の死亡率が2020年に約15%上昇し、治療期間が約6日延長したことが、米国・ミシガン大学のRyan P. Barbaro氏らExtracorporeal Life Support Organization(ELSO)が世界41ヵ国で実施した調査で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年10月2日号に掲載された。レジストリデータで3群を後ろ向きに比較解析 研究グループは、2020年5月1日以前にECMOによる治療を受けた患者と、これ以降にECMO治療を受けた患者で、ベースラインの患者特性やECMO治療を行った施設の特性、患者アウトカムなどを比較する目的で、ELSOレジストリのデータを後ろ向きに解析した(研究助成は受けていない)。 対象は、年齢16歳以上、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性と診断され、2020年1月1日~12月31日の期間にECMO治療を受けた患者であった。 患者は、ECMO治療を開始した時期と施設で次の3つの群に分けられた。(1)初期導入施設(2020年1月1日~12月31日にECMO導入)で2020年1月1日~5月1日の期間にECMO治療を開始した患者(A1群)、(2)初期導入施設で2020年5月2日~12月31日の期間にECMO治療を開始した患者(A2群)、(3)後期導入施設(2020年5月2日~12月31日にECMO導入)でECMO治療を開始した患者(B群)。 主要アウトカムは、ECMO治療開始から90日後に生存時間(time-to-event)解析で評価した院内死亡率とされた。Cox比例ハザードモデルを用いて、3群間の補正後の相対的死亡リスクを患者および施設レベルで比較した。同じ5月2日以降でも、後期導入施設は死亡リスクが高い 2020年に、日本を含む41ヵ国349施設(初期導入236施設、後期導入113施設)でECMO治療を受けたCOVID-19患者4,812例が解析に含まれた。A1群が1,182例(年齢中央値50歳、男性74%)、A2群が2,824例(51歳、73%)、B群は806例(49歳、74%)であった。 ECMO治療開始後90日時の院内死亡の累積発生率は、A1群の36.9%(95%信頼区間[CI]:34.1~39.7)から、A2群では51.9%(50.0~53.8)へと15%増加した。また、B群の90日累積院内死亡率は58.9%(55.4~62.3)であり、同じ5月2日以降のECMO開始であったA2群よりも約7%高率だった。これらの差は、患者および施設レベルの背景因子で補正後にも認められた。 A1群はA2群に比べ、90日院内死亡の補正後相対リスクが低かった(ハザード比:0.82、95%CI:0.70~0.96)。一方、B群はA2群よりも、90日院内死亡の補正後相対リスクが高かった(1.42、1.17~1.73)。また、ECMO治療開始前の年齢(高齢になるほど高リスク)、がん・心停止の既往歴、および開始時の急性腎障害の存在は、死亡の相対リスクの上昇と関連していた。 A1群はA2群に比べ、自宅退院や急性期リハビリテーション施設への転院(32% vs.22%)および他院への転院(18% vs.11%)の割合が高かった(並べ替え検定のp=0.01)。また、ECMO治療期間中央値は、A1群では14.1日(IQR:7.9~24.1)であったが、A2群では20.0日(9.7~35.1)へと、約6日延長していた(p<0.001)。ECMO治療開始後の入院期間中央値は、A1群の27.1日(15.8~44.2)から、A2群では30.7日(17.6~50.7)へと延長した。 著者は、「COVID-19の世界的大流行の進行中にECMO治療を開始した患者の死亡率は悪化していることから、今後もECMOの転帰の継続的な監視が求められる。ECMOは限られた資源であり、COVID-19患者の25%が5週間以上のECMO治療を受けていることを考慮すると、各施設は資源が限定的な場合のECMOの倫理的な配分に関する自施設の指針の策定を検討する必要がある」と指摘している。

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COVID-19外来患者へのロナプリーブ、第III相試験結果/NEJM

 重症化リスクを有する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の外来患者の治療において、REGEN-COV(モノクローナル抗体カシリビマブとイムデビマブの混合静注薬、商品名:ロナプリーブ)はプラセボと比較して、COVID-19による入院/全死因死亡のリスクを低減するとともに、症状消退までの期間を短縮し、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルス量を迅速に低下させることが、米国・Regeneron PharmaceuticalsのDavid M. Weinreich氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年9月29日号に掲載された。外来患者4,000例の無作為化プラセボ対照第III相試験 本研究は、COVID-19外来患者におけるREGEN-COVの有用性の評価を目的とする適応的デザインを用いた第I~III相の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、今回は、第III相試験の初期結果が報告された(米国・Regeneron Pharmaceuticalsなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、SARS-CoV-2陽性と診断され、COVID-19の重症化のリスク因子を1つ以上有する非入院患者であった。被験者は、いくつかの用量のREGEN-COVまたはプラセボを単回静脈内投与する群に無作為に割り付けられ、29日間のフォローアップが行われた。 事前に規定された階層的解析法を用いて、エンドポイントであるCOVID-19による入院または全死因死亡、症状消退までの期間、安全性の評価が行われた。 解析には、2020年9月24日~2021年1月17日の期間に米国とメキシコの施設で登録された4,057例(修正最大解析対象集団[mFAS])が含まれた。全体の年齢中央値は50歳(IQR:38~59)、14%が65歳以上で、49%が男性、35%がヒスパニック系であり、最も頻度の高い重症化のリスク因子は肥満(BMI≧30、58%)、年齢50歳以上(52%)、心血管疾患(36%)であった。重篤な有害事象の発現はプラセボより少ない 投与後29日の時点でのCOVID-19による入院または全死因死亡は、REGEN-COV 2,400mg(カシリビマブ1,200mg+イムデビマブ1,200mg)群では1,355例中18例(1.3%)で発生し、プラセボ群の1,341例中62例(4.6%)に比べ有意に低かった(相対リスク減少率[1から相対リスクを引いた値]:71.3%、p<0.001)。 また、REGEN-COV 1,200mg(同600mg+600mg)群では736例中7例(1.0%)でCOVID-19による入院または全死因死亡が発生し、プラセボ群の748例中24例(3.2%)に比し有意に良好だった(相対リスク減少率:70.4%、p=0.002)。 同様に、ベースラインの血清SARS-CoV-2抗体陽性例を含む全サブグループで、REGEN-COV群はプラセボ群に比べ、COVID-19による入院または全死因死亡の低下が認められた。 一方、症状消退までの期間中央値は、REGEN-COV群の2つの用量(1,200mg、2,400mg)ともプラセボ群よりも短縮され、4日早く消退した(2つの用量群とも10日vs.プラセボ群14日、いずれもp<0.001)。 また、ウイルス量は、2つの用量のREGEN-COV群とも、プラセボ群に比べ迅速に減少した。すなわち、ウイルス量のベースラインから7日までの最小二乗平均値のプラセボ群との差は、1,200mg群が-0.71 log10コピー/mL(95%信頼区間[CI]:-0.90~-0.53)、2,400mg群は-0.86 log10コピー/mL(-1.00~-0.72)であった。 重篤な有害事象の頻度は、プラセボ群が4.0%と、REGEN-COV 1,200mg群の1.1%、2,400mg群の1.3%に比べて高かった(Grade2以上の注入に伴う反応の発生率は3群とも0.3%未満)。死亡の原因となった有害事象の頻度は、プラセボ群が0.3%であり、1,200mg群の0.1%、2,400mg群の<0.1%に比し高率だった。REGEN-COV群の2つ用量の安全性プロファイルはほぼ同様で、安全性のイベントに目立った不均衡はなかった。 REGEN-COVの2,400mg投与は、2020年11月、軽症~中等症の高リスクCOVID-19外来患者の治療において、米国食品医薬品局の緊急使用許可(EUA)を取得しており、本試験で1,200mgでも2,400mgと同程度の入院/死亡リスクの低減とウイルス学的有効性が示されたことから、2021年6月、2,400mgに代わり1,200mgでEUAを受けた。また、REGEN-COVは、高リスクCOVID-19外来患者の治療法として、米国国立衛生研究所(NIH)の診療ガイドラインにも含まれている。 著者は、「軽症例などではさまざまな程度で回復までの期間が長引くとのエビデンスが増えているため、今回のREGEN-COVはCOVID-19からの回復を早めるとの知見は、患者にとって新たな利点になると考えられる」としている。

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CRP POCT、介護施設入居者の抗菌薬処方を削減/BMJ

 下気道感染症が疑われる介護施設入居者において、C反応性蛋白(CRP)の臨床現場即時検査(point-of-care testing:POCT)は通常ケアと比較して、完全回復率や全死因死亡率、入院率には差がないものの、抗菌薬の処方を安全に削減することが、オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのTjarda M. Boere氏らが実施した「UPCARE試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年9月21日号で報告された。オランダの11施設のクラスター無作為化対照比較試験 研究グループは、介護施設入居者に対するCRP POCTが、下気道感染症への抗菌薬処方を安全に削減できるかを検証する目的で、実践的なクラスター無作為化対照比較試験を行った(オランダ・保健研究開発機構[ZonMw]の助成による)。 本試験には、オランダの11の介護施設(平均入居者数400人)が参加し、CRP POCT(QuikRead go、フィンランド・Aidian製)を行う介入群に6施設、CRP POCTを行わずに通常ケアを実施する対照群に5施設が無作為に割り付けられた。これらの施設に所属する医師84人が、2018年9月~2020年3月の期間に、下気道感染症が疑われる参加者241例の診療に当たった。 初診時(=ベースライン)、1週後、3週後に、臨床的状態や新たな診断結果、管理法のデータが収集された。また、介入群では、診断検査の一環としてCRP POCTを行うかの決定は治療医の裁量に委ねられ、CRP POCTは必須ではなかった。 主要アウトカムは初診時の抗菌薬処方とされた。副次アウトカムは3週時の完全回復などであった。初診時抗菌薬の非処方率、介入群は対照群の4.93倍に 参加者241例(平均年齢84.4歳、女性64%)のうち、162例が介入群、79例は対照群に割り付けられた。全体で慢性閉塞性肺疾患が32%、うっ血性心不全が29%、認知症が29%にみられ、77%は中等度の病態であった。初診時に咳が73%、異常肺音が63%、呼吸困難が60%に認められた。介入群の87.4%でCRP POCTが行われ、ベースラインのCRP値中央値は32.5mg/L(IQR:13~82)だった。 初診時に抗菌薬が処方されたのは、介入群が84例(53.5%)、対照群は65例(82.3%)であった。治療医とベースラインの背景因子で補正した、初診時の介入群の対照群に対する抗菌薬非処方のオッズは、4.93(95%信頼区間[CI]:1.91~12.73、p=0.001)であった。 初診からフォローアップ期間(1週後、3週後)のすべての時点での初回抗菌薬処方開始の割合は、介入群が62.5%、対照群は86.1%であり、その差は23.6%であった。 初診時の抗菌薬の処方率は、CRP値が低い患者では低値(0~20mg/L:6.38%、20~40mg/L:35.00%)であったが、40~60mg/Lの患者(66.67%)で増加し始め、60mg/L以上ではほとんどの患者で処方されていた(60~80mg/L:100%、80~100mg/L:100%、100~200mg/L:96.00%)。 両群間の3週時の完全回復率(介入群86.4% vs.対照群90.8%、オッズ比:0.49、95%CI:0.21~1.12、p=0.09)の差は4.4%、初診からフォローアップ期間(1週後、3週後)のすべての時点での全死因死亡率(3.5% vs.1.3%、2.76、0.32~24.04、p=0.36)の差は2.2%、すべての時点での入院率(7.2% vs.6.5%、1.12、0.37~3.39、p=0.85)の差は0.7%であり、いずれも有意な差はなかった。 著者は、「これらの知見により、介護施設におけるCRP POCTの実施は抗菌薬使用の削減に寄与し、抗菌薬耐性の対策として有効となる可能性が示唆される」としている。

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COVID-19に有効な治療は?抗体薬4剤を含むメタ解析/BMJ

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、カシリビマブ/イムデビマブはほぼ確実に入院を減少させ、bamlanivimab/etesevimab、bamlanivimab、ソトロビマブは入院を減少させる可能性があるが、回復期血漿、IVIg、他の抗体および細胞治療は、いかなる意味のあるベネフィットをも与えない可能性がある。カナダ・マックマスター大学のReed Ac Siemieniuk氏らが、COVID-19の試験に関するデータベースを基にリビング・システマティック・レビューとネットワークメタ解析を行い明らかにした。BMJ誌2021年9月23日号掲載の報告。2021年7月21日時点でRCTを対象にネットワークメタ解析 研究グループは、2021年7月21日時点のWHOのCOVID-19データベースと中国のデータベース6件を用い、COVID-19の疑いや可能性が高い患者または確定診断を受けた患者を対象に、抗ウイルス抗体治療、血液製剤、標準治療またはプラセボを比較した無作為化臨床試験を抽出した。 2人のレビュアーが独立して試験の適格性を判断し、重複データを削除後、ベイズ変量効果モデルを用いたネットワークメタ解析を行った。改訂版コクランバイアスリスクツールv.2.0を用いて各試験のバイアスリスクを評価し、GRADEシステムを用いてエビデンスの確実性(質)を評価した。なお、メタ解析は、無作為化された患者数が100例以上、または治療群当たりのイベント数が20以上の介入を対象とした。カシリビマブ/イムデビマブ、非重症COVID-19患者の入院リスクを低下 2021年7月21日時点で、抗ウイルス抗体治療または細胞治療を評価した無作為化試験47件が特定された。内訳は、回復期血漿21件、免疫グロブリン(IVIg)5件、臍帯間葉系幹細胞治療5件、bamlanivimab 4件、カシリビマブ/イムデビマブ4件、bamlanivimab-etesevimab 2件、control plasma 2件、末梢血非造血濃縮幹細胞治療2件、ソトロビマブ1件、抗SARS-CoV-2 IVIg 1件、血漿交換療法1件、XAV-19ポリクローナル抗体1件、CT-P59モノクローナル抗体1件、INM005ポリクローナル抗体1件。 抗ウイルス抗体治療に割り付けられた非重症患者は、プラセボ群と比較して入院リスクが低下した。オッズ比(OR)ならびにリスク差(RD)は、カシリビマブ/イムデビマブが0.29(95%信頼区間[CI]:0.17~0.47)および-4.2%(エビデンスの質:中)、bamlanivimabが0.24(0.06~0.86)および-4.1%(エビデンスの質:低)、bamlanivimab/etesevimabが0.31(0.11~0.81)および-3.8%(エビデンスの質:低)、ソトロビマブが0.17(0.04~0.57)および-4.8%(エビデンスの質:低)であった。 他のアウトカムに関しては重要な影響はなかった。また、モノクローナル抗体薬の間に顕著な差は確認されなかった。他の介入は、非重症のCOVID-19患者においてすべてのアウトカムについて意味のある影響が認められなかった。 抗ウイルス抗体薬を含め、重症または重篤なCOVID-19患者の転帰に重要な影響を及ぼす介入はなかったが、カシリビマブ/イムデビマブは血清陰性患者の死亡率を低下させる可能性が示唆された。

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高齢者がCOVID-19に感染する場所と感染対策/感染研

 国立感染症研究所実地疫学研究センターは、9月29日に同研究所のウェブサイト上で「高齢者の会合等、人が集う場面での新型コロナウイルス感染症に関する感染事例の所見と公民館や体育館等を利用する際の感染対策についての提案」を発表した。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第5波はピークアウトし、全国的に緊急事態宣言も解除され、今後秋祭りなどの行事がCOVID-19に警戒しながら行われていくことが予想されている。「とくに多くの高齢者は、新型コロナワクチンの接種も進んでいるが、高齢者が集った場合に発生したCOVID-19のクラスター事例を再度振り返り、これまでに得られた知見や必要な対策について考えてみたい」と同研究所は提案の目的を示している。<これまでに得られた主な所見>・高齢者が日常生活で集合して楽しむ場での感染としては、昼カラオケ、フィットネスクラブ、サークル・クラブ活動など、が知られていた。・主に高齢者を対象とした催事場(ショッピングモールでの対面販売など)での数週間程度の比較的長期間のイベントにおいて、アルファ株流行下より、複数のクラスター事例の発生を認めた。・イベントでは、物品の無料体験会、説明会などの場面で、地域の高齢者が連日、時に繰り返し訪れている様子が観察された。・上記のようなイベントでは、地域の高齢者が集まり、参加者(利用者)同士での談笑、飲食を通した憩いの場になっていた。そのプラス面を考慮する必要がある一方で、調査により、感染した高齢者が、他の感染機会を認めなかった場合も多く、対策上の重要性が認められた・利用者のマスクについては、一般に着用が推奨されていたが、とくに飲食時やそれ以外のマスク着用の状況は詳細な情報が得られていない。・説明会などにおける講師や他の大会関係者のマスク着用に関する情報は乏しかった。・とくに扱う対象が食品の場合、試飲や試食などマスクを外す機会があった。・一部密な状態(狭い空間に多数の者がいた状態)があったことが観察され、換気についても不十分であった可能性が見受けられた(CO2センサーなどでの測定情報無し)。・感染者の店舗利用日が共通していない事例があり、利用者間ではなく、感染した従業員が感染伝播に寄与した事例があった可能性が考えられた。<これまでの所見に基づく主な提案:公民館ガイドラインを踏まえて> 高齢者を含む地域住民が集う場としての公民館における新型コロナウイルスへの対応に関しては、公益社団法人全国公民館連合会により作成された、「公民館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」(2020年10月2日)が同会ホームページ上で公開されている。本ガイドラインは、「感染防止のための基本的な考え方」の中で、いわゆる3つの密(密閉、密集、密接)を徹底して避けることの重要性について触れ、リスク評価の項では、接触感染・飛まつ感染それぞれの対策、集客施設としてのリスク評価、地域における感染状況のリスク評価の重要性について言及している。具体的には、イベント・講座などの実施で講じるべき具体的対策、公民館における公演などの開催に際して、公演主催者が講じるべき具体的対策(対人距離を最低1m(出来れば2m)確保する、入館時に検温する、直接手で触れることができる展示物などは展示しない、トイレの管理などの注意点が分かりやすく列挙されている。 以上を踏まえ、同研究所は、「利用者自身が注意すべき事項」「従業員の感染予防が重要であることに関する注意事項」「施設の換気に関する注意点」の3つに大別して注意事項を説明している。◯利用者に対して・屋内で複数の者が集まる機会では密集・密接になる場面を避けることを徹底する。具体的には、良好な換気への対策が十分に行われているイベントに参加することを心がける。マスク着用は必須である。イベント終了後の談笑や長時間の利用を避けることが必要。また、対人距離は最低1m(できるだけ2m)を確保する。座席の配置についても同様。高齢者では耳が聞こえにくい、見にくいなどで距離を保てない状況からどうしても近い距離の接触となりがちではあるが、適切なマスク着用をさらに徹底し、参加は短時間に留めるなどの工夫を行う。・試飲や試食を伴う屋内のイベントへは、できる限り参加を控える。参加する場合、マスクを外す時間を短時間に留め、その間は会話しない。適切なアルコール消毒剤を用いた手指衛生を適切に行う。◯運営者(開催されているイベントがある場合の主催者を含む)・従業員に対して・従業員は施設内感染拡大の要因となり得ることから感染予防ができるように指導を徹底する。・具体的には従来通りの基本として、適切なマスク着用、手指衛生、換気を徹底する。・説明会や講演会の開催にあたっては、運営者・主催者は、屋内で、長時間に渡り、参加者が集まってしまうことを避け、屋外での開催やオンラインを組み入れたイベントとなるように工夫する。換気が十分に実施できる環境の整備を行う。◯換気を十分に実施する具体的方法(林 基哉氏[北海道大学]による補足)・機械換気設備がある場合には、施設使用時には常時運転する。・寒さや暑さに配慮しながら、窓とドアをなるべく常時開放して、部屋の空気がこもらないようにする(暖冷房の利用や着衣に配慮しながら、より換気を確保する)。・扇風機、サーキュレーターなどで、屋内の空気を動かして空気の淀みを少なくする。・とくに換気が十分ではない場合、滞在時間を最小限にすることが望ましい。・二酸化炭素濃度の測定機器(CO2センサー)を利用して、換気の確認を行うことができる。杜撰な感染対策下では再度感染する恐れも 本提案では、最後に2021年9月末現在、新型コロナワクチンの接種が進む中での医療機関や高齢者施設における、いわゆる「ブレークスルー感染事例」やワクチンの有効性について触れ、「『適切なマスクの着用をしない、手指衛生を怠る、換気をきちんと行わない』などの杜撰な感染対策下においては、デルタ株はたやすく人々に感染し、大きな脅威をもたらす」と警鐘を鳴らすとともに、「高齢者を中心とする年齢層の方が集う場をどのように安全に運営するか、は運営者のみならず、利用者である市民も一体となって取り組むべき課題」と問題を提起している。 また、「屋外においても3つのうち1つの密でも発生すると、感染リスクが増大することが観察されている。付設する広場などにおいても、常に警戒を怠らず、十分な間隔をおきながら交流を楽しむことが求められる」とさらなる注意を促している。

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ヒブ(Hib)ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第10回

今回は、ワクチンで予防できる疾患、VPD(vaccine preventable disease)としてヒブを取り上げる。ヒブ(Hib)は、“Haemophilus influenzae type b”(インフルエンザ菌b型)の頭文字をとった呼称で、髄膜炎などにより多くの子供たちの命を奪ってきた病原体の1つである。しかし、2008年にワクチンが国内に導入されてからHib感染症の報告数は激減し、2014年以降、5歳未満のHib侵襲性感染症は報告されていない。あまりに目覚ましい発症予防効果のため、Hib感染症そのものが忘れ去られつつある今、本稿では改めてこの疾患の特徴と疫学、成人におけるワクチンの活用について取り上げる。ヒブワクチンで予防できる疾患Hibは気道を介して感染する(飛沫感染と接触感染)。乳幼児の上気道に定着し、ほとんどの場合は無症状である。ワクチンが導入される前の保菌率は、15歳以下の17%、16~30歳の5.1%であった。しかし、気道から血流感染を起こすと、図に示すように髄膜炎、肺炎、敗血症、喉頭蓋炎、中耳炎などさまざまな臓器に侵襲性感染症を起こす。なかでもHib髄膜炎の致死率は5%と高く、4人に1人にてんかん、難聴、発育障害などの後遺症を残す1)。1996~1998年の調査ではHib髄膜炎は年間約600人で、罹患リスクの高い生後2ヵ月~5歳までの間に2,000人に1人の割合で罹患していると推測されていた。インフルエンザ菌による侵襲性感染症は感染症法において、第5類感染症全数届出疾患となっている2)。図 ワクチン導入前のHib感染症の病型画像を拡大する細菌学的にみるとHibはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の1つで、インフルエンザ菌はa~f型の6つの莢膜菌型と、これらに該当しない型別不能の菌(Non-typable H. influenzae:NTHi)に分かれる。感染防御にあたって最も重要な宿主因子は莢膜多糖体(PRP/polyribosylribitol phosphate)に対する抗体である。通常は5歳以上になるとワクチン未接種であっても抗PRP抗体価が自然に上昇するため、感染リスクが低くなる。逆に乳児は感染リスクが高く、実際にワクチン導入前の侵襲性感染症の93%が5歳未満で、ピークは生後8ヵ月であった。このことから、生後早期に免疫を獲得しておくことが重要であるとわかる。ワクチンの概要表 ワクチンの概要と接種スケジュール画像を拡大する1)開発、普及の歴史ヒブワクチンは1980年代に開発が進んだ。はじめに開発されたのは莢膜多糖体(PRP)を抗原としたワクチンで、18ヵ月以上の小児を対象として導入されたが、効果は限定的で、また最も侵襲性感染症のリスクが高い2歳未満の小児への免疫原性が弱かった。その後、2歳未満の小児への免疫原性が改善された、PRPにキャリア蛋白を結合させた結合型ワクチン(conjugate vaccine)が開発され、現在わが国ではこのワクチンが採用されている。2006年、WHOが乳児期のワクチンとして推奨し、日本では2008年12月に販売開始となった。2010年11月には「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」により多くの自治体で公費助成の対象となり、さらに2013年4月からは定期接種(A型疾病)が開始された。2)効果発症予防効果は90%以上と高い。米国ではワクチン導入5年で、5歳未満の侵襲性感染症の罹患率が99%減少したと報告されている。日本でも1道9県における疫学調査により、公費助成後のHib髄膜炎の減少率は100%と示されている3,4)。3)副反応ワクチン接種による一般的な副反応のみで、特異的な副反応は報告されていない。複数回の接種により、副反応の発現率が上昇することはない。4)注意点ヒブワクチンによるアナフィラキシーを起こしたことがある場合には禁忌である。日常診療で役立つ接種ポイント【5歳以上のワクチンについて】無脾症、待機的脾摘手術予定者、脾機能低下症、造血幹細胞移植者において、ヒブワクチンの接種が推奨される。前述の通り通常5歳以上では、ワクチン未接種であっても抗RPR抗体が上昇するため、ワクチン接種が不要である。しかしながら、上記のハイリスク群では、ワクチンによって十分な抗体価を維持する必要がある。米国の予防接種の実施に関する諮問委員会(ACIP)では、ヒブワクチン未接種の無脾症、待機的脾摘手術予定者では1回接種(脾摘術の場合は、術前14日前に接種)、造血幹細胞移植者ではヒブワクチン接種歴に関わらず移植後6~12ヵ月からの3回接種を推奨している。今度の課題、展望ヒブワクチンは、侵襲性Hib感染症の発症予防効果が非常に高く、Hib髄膜炎は今や過去の病気になりつつある。しかしながら臨床で遭遇することが減ったのは、高いワクチン接種率の恩恵であることを忘れてはならない。今後も肺炎球菌ワクチンと共に、ヒブワクチンの重要性を伝え、乳児期および高リスク者への接種を推奨してもらいたい。Hib感染症の減少とともに、非b型のインフルエンザ菌および無莢膜型(non-typable H. infuenzae:NTHi)による侵襲性感染症の増加が報告されている。2019年度感染症流行予測調査では、検討された58株のうち、3株がe型、4株がf型、その他の51株はNTHi であった。臨床診断名では26名が肺炎で最も多く(45%)、NTHiによる高齢者の肺炎が課題となっている。現在NTHiに対する複数のワクチン開発が進んでおり、今後の実用化が期待される。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト日本ワクチン産業協会 予防接種に関するQ&A集2020.インフルエンザ菌b型(Hib)感染(pdf)1)Plotkin SA, et al(eds). Plotkin's Vaccines (Seventh Edition).Elsevier.2018.2)国立感染症研究所. 令和元年度(2019年度)感染症流行予測調査報告書.(最終アクセス2021.7.15)3)厚生労働科学研究費補助金. 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業 Hib、肺炎球菌、HPV及びロタウイルスワクチンの各ワクチンの有効性、安全性並びにその投与方法に関する基礎的・臨床的研究 平成26年度 総括・分担研究報告書 庵原俊昭、「小児細菌性髄膜炎および侵襲性感染症調査」に関する研究(全国調査結果)(厚生労働科学研究成果データベース閲覧システム)4)菅秀. ワクチンの実地使用下における有効性・安全性及びその投与方法に関する基礎的 ・ 臨床的研究 平成28年度 委託研究開 発成果報告書(国立研究開発法人 日本医療研究開発機構)(最終アクセス2021.7.27)5)CDC. MMWR. 2014;63:1-14.講師紹介

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COVID-19の積極的疫学調査の最終報告/感染研

 国立感染症研究所は、9月27日に同研究所のホームページにおいて、「新型コロナウイルス感染症における積極的疫学調査の結果について(最終報告)」を公開した。 この報告は、感染症法(第15条第1項)に基づいた積極的疫学調査で集約された、各自治体・医療機関から寄せられた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の退院患者の情報に関する最終報告である。 なお、「本情報は統一的に収集されたものではなく、各医療機関の退院サマリーの様式によるため解釈には注意が必要」と解析の読み方に注意を喚起している。調査は一定の情報が得られたことにより5月25日をもって停止している。【集計データ概要】・COVID-19患者数:770例・入院開始日:2020年1月25日~2021年5月6日・入院期間の中央値:12.0日・性別:男性440例(57%)/女性330例(43%)・年齢:中央値51.0歳(四分位範囲30.0-68.5歳)・基礎疾患の有無:有した症例は270例(35%)【発症時の症状】 多い順に発熱404例(52%)、呼吸器症状224例(29%)、倦怠感108例(14%)、頭痛63例(8%)、消化器症状45例(6%)、鼻汁31例(4%)、味覚異常26例(3%)、嗅覚異常24例(3%)、関節痛24例(3%)、筋肉痛11例(1%)の順だった。 入院時の症状は、発熱288例(37%)、呼吸器症状199例(26%)、倦怠感83例(11%)、消化器症状58例(8%)、味覚異常45例(6%)、頭痛46例(6%)、嗅覚異常43例(6%)、鼻汁28例(4%)、関節痛19例(2%)、筋肉痛6例(<1%)、意識障害1例(<1%)の順だった。 そのほか入院中、29例(4%)において合併症の記載があり、その内訳(重複を含む)は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)14例(2%)、急性腎障害7例(<1%)、人工呼吸器関連肺炎4例(<1%)、播種性血管内凝固症候群(DIC)3例(<1%)、多臓器不全2例(<1%)、誤嚥性肺炎2例(<1%)、カテーテル関連血流感染2例(<1%)、細菌性肺炎1例(<1%)であり、このうち19例が死亡した。【画像所見】(※サイト本文では所見画像もリンクされている) 所見画像は、2名の放射線科医師によって、2020年9月時点で集められた396例の読影が行われた。 入院時(入院日の前後3日を含む期間)に胸部単純X線写真が撮像された168症例のうち、異常所見の認められた79症例(47%)について主な所見を示す。 網状粒状影、心拡大、浸潤影は60歳以上に多く認められた。異常所見は両側(81%)、末梢肺野(75%)、下肺野優位(92%)に分布した。一方、入院時にCT画像が撮像された269例のうち、異常所見の認められた182例(68%)について、異常所見が5肺葉に及んだものが67例(37%)、陰影のサイズは3cmから肺葉の50%未満を占める場合が94例(52%)と最も多かった。また、異常陰影は、両側肺野145例(80%)、末梢性178例(98%)に認められ、とくに右下葉152例(84%)、左下葉149例(82%)と下葉優位であるものの、上葉にも分布していた。陰影所見として、すりガラス陰影182例(100%)、気管支透亮像(air bronchogram)98例(54%)、気管支拡張90例(49%)、胸膜下線状影80例(44%)が多く認められた。また、入院時に胸部単純X線写真およびCT画像ともに撮像されていた161例において、CT画像で異常陰影を認めた症例で、胸部単純X線写真で異常陰影を認めた症例の割合は、両側陰影58/90(64%)、右肺野陰影69/98(70%)、左肺野陰影61/98(62%)であった。CT画像で異常陰影が末梢にあった症例のうち、胸部単純X線写真でも末梢に異常陰影を認めた症例は56/102(55%)であった。また、CT画像で異常所見が確認されなかった症例のうち、胸部単純X線写真で異常所見ありと診断された症例はごくわずかであった。死亡例11例に限ると、両側陰影10/11(91%)、右肺野陰影10/11(91%)、左肺野陰影11/11(100%)、末梢肺野陰影8/11(73%)であった。また、入院時に胸部単純X線写真を撮像し、その後死亡した15例のうち10例(67%)に心拡大が認められた。 これらの結果から、入院時の胸部単純X線写真で認められた両側・末梢優位の異常陰影はCT所見とおおむね同様であった。退院時死亡した重症例に限定すると、胸部単純X線写真で認められた異常陰影は、CT所見とより一致する傾向が認められ、さらに死亡例の多くが胸部単純X線写真で心拡大を呈していた。【治療など】 全770例のうち、対症療法ではなくCOVID-19への直接的な効果を期待して231例(30%)で抗ウイルス薬投与などの治療介入が行われていた。うち、新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第5版)に記載され、日本国内で承認されている医薬品としてレムデシビルは24例、ステロイドは20例が投与されていた。酸素投与は107例(14%)に実施され、その投与方法は、マスク55例、カニューラ12例、リザーバーマスク13例、非侵襲的陽圧換気(NPPV)2例、人工呼吸器22例、体外式膜型人工肺(ECMO)3例であった。

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プロバイオティクス、ICUでの人工呼吸器関連肺炎を抑制せず/JAMA

 人工呼吸器を要する重症患者において、プロバイオティクスであるLactobacillus rhamnosus GGの投与はプラセボと比較して、集中治療室(ICU)における人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生に関して有意な改善効果はなく、有害事象の頻度は高いことが、カナダ・トロント大学のJennie Johnstone氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2021年9月21日号で報告された。3ヵ国の44のICUの無作為化プラセボ対照比較試験 本研究は、ICUにおけるVAPや新たな感染症、その他の臨床的に重要なアウトカムの予防におけるL. rhamnosus GG投与の有効性の評価を目的とする無作為化プラセボ対照比較試験であり、2013年10月~2019年3月の期間にカナダと米国、サウジアラビアの44のICUで患者登録が行われた(カナダ健康研究所[CIHR]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、ICUの治療チームによって72時間以上の機械的換気を要すると予測された患者であった。被験者は、ICUで1日2回、L. rhamnosus GG(1×1010コロニー形成単位)を投与する群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、二重盲検下の中央判定によるVAPの発生とされた。VAPは、2日以上の機械的換気の後に、胸部X線上で新たな進行性または持続性の浸潤所見がみられ、次の3項目のうち2つ以上を満たした場合とされた。(1)発熱(中核体温>38℃)または低体温(体温<36℃)、(2)白血球数<3.0×106/Lまたは>10×106/L、(3)膿性痰。感染症、死亡、ICU入室日数などにも差はない 2,650例(平均年齢[SD]59.8[16.5]歳、女性40.1%)が登録され、プロバイオティクス群に1,318例、プラセボ群に1,332例が割り付けられた。平均APACHE IIスコア(ICU入室の指標0~71点、点数が高いほど重症度および死亡リスクが高い)は22.0(SD 7.8)点で、61.2%が強心薬または昇圧薬を投与され、8.1%は腎代替療法を受けていた。82.5%が、無作為化の日に抗菌薬を処方または投与されていた。試験薬の投与期間中央値は9日(IQR:5~15)だった。 VAPの発生率は、プロバイオティクス群が21.9%(289/1,318例)、プラセボ群は21.3%(284/1,332例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.87~1.22、p=0.73、絶対群間差:0.6%、95%CI:-2.5~3.7)。 約20項目の副次アウトカム(ICU関連感染症、下痢、死亡、ICU入室日数など)のうち、統計学的に有意な差がみられたものはなかった。 また、有害事象(無菌部位の培養でのL. rhamnosus単離、非無菌部位の培養での単独または優勢な微生物)は、プロバイオティクス群が15例(1.1%)、プラセボ群は1例(0.1%)で発現した(オッズ比:14.02、95%CI:1.79~109.58、p<0.001)。 著者は、「今回の結果は、機械的換気を要する重篤な病態の患者における、VAPの予防を目的とするL. rhamnosus GGの使用を支持しない。これらの知見は、日常診療や施策に影響を及ぼすもので、重篤な病態へのプロバイオティクスの処方には慎重さが求められることが示唆される」としている。

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EGFR変異陽性肺がん1次治療、オシメルチニブ+ベバシズマブ併用の結果は?(WJOG9717L)/ESMO2021

 未治療の進行EGFR変異陽性非扁平上皮非小細胞肺がん(Ns-NSCLC)に対して、オシメルチニブとベバシズマブの併用療法はオシメルチニブ単剤と比べて、無増悪生存(PFS)を有意に改善できなかった。静岡県立静岡がんセンターの釼持広知氏が、日本で行われた「WJOG9717L試験」の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)プレジデンシャル・シンポジウムで発表した。 WJOG9717L試験は、2018年1月~9月に21医療機関で行われた第II相無作為化試験。・対象:未治療の進行EGFR変異陽性Ns-NSCLCで、Stage IIIB、IIIC、IVまたは外科的切除後再発なし、ECOG PS 0-1、有症状の脳転移がない20歳以上の患者・試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+ベバシズマブ(15mg/kg、3週ごと)・対照群:オシメルチニブ単剤(80mg/日)・評価項目[主要評価項目]PFS(BICR評価による)[副次評価項目]PFS(治験医評価による)、全奏効率(ORR)、全生存(OS)、有害事象(AE) 主な結果は以下のとおり。・122例が登録され、1対1の割合で併用群(61例)、単剤群(61例)に割り付けられた。・追跡期間中央値30.4ヵ月時点で、PFS(BICR評価)は併用群22.1ヵ月、単剤群20.2ヵ月で有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.86[60%信頼区間[CI]:0.700~1.060、95%CI:0.531~1.397]、片側p=0.213)。・ITT集団のサブグループ解析で、併用療法が喫煙歴ありの患者(あり群HR:0.481 vs.なし群同1.444)、del19の患者(del19患者のHR:0.622 vs. Leu858Arg患者の同1.246)で、有益である傾向が示された。PFS中央値は、喫煙歴あり併用群32.4ヵ月、単剤群13.6ヵ月、del19患者で併用群NE、単剤群20.3ヵ月であった。・ORRは、併用群82%(95%CI:72~92)、単剤群86%(77~96)であった。・OSは、両群ともにNEで、HR:0.970(95%CI:0.505~1.866)であった。・各群の投与期間中央値は併用群94.0週、単剤群57.6週であり、ベバシズマブは同33.4週であった。治療に関連する死亡の報告は両群ともになかった。・全Gradeの肺炎の発現頻度が、併用群3.3%に対し単剤群18.3%であった。 釼持氏は、「未治療のEGFR変異陽性Ns-NSCLC患者において、オシメルチニブ+ベバシズマブ併用療法の有効性を示すことができなかったが、喫煙歴のある患者やdel19患者の初回治療として有益である可能性と、併用療法はオシメルチニブ関連肺炎のリスクを低減する可能性が示唆された」とまとめた。

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第80回 COVID-19入院患者の半数に高血糖~脂肪細胞ホルモンの減少が寄与?

糖尿病の主徴である高血糖は炎症や感染に対抗する免疫の低下と関連し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の早くからその重症化要因の一つと認識されていました。その逆に、COVID-19は糖尿病と無縁だった人の高血糖と関連することも最近になって知られるようになっています。米国でCOVID-19が流行りはじめたころの数ヵ月間(2020年3月1日~5月15日)にCOVID-19と診断されてニューヨーク州の病院に入院したおよそ4千人(3,854人)を調べたところ、実におよそ半数(49.7%)に高血糖が生じていました1,2)。高血糖だと予後はより不良で、正常血糖の患者に比べて重度呼吸器不全・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は9倍、人工呼吸器使用は15倍、死亡は3倍多いことと関連しました。高血糖はCOVID-19以外の重度肺機能不全でも認められ、インフルエンザや細菌性肺炎などのCOVID-19以外の病態によるARDS患者とCOVID-19と関連するARDS患者の高血糖の割合は似たようなものでした。しかし高血糖の仕組みには違いがあり、前者ではインスリンを作るβ細胞の死や機能不全がどうやら主因であるのに対し、COVID-19と関連するARDS患者の高血糖は主にインスリン抵抗性によって生じていました。インスリン抵抗性はインスリンが出回っているにもかかわらずそれに反応できなくなることで生じます。COVID-19患者のインスリン抵抗性の原因を探るべく糖調節ホルモンを調べたところ血液中のアディポネクチンがひどく減っていました。アディポネクチンは脂肪細胞で作られるホルモンであり、インスリンへの反応を高めて糖尿病を生じにくくする役割を担います。SARS-CoV-2はヒトやマウスの脂肪細胞に感染可能であり、じかに脂肪細胞に手を下してアディポネクチン生成を妨害しているのかもしれません。SARS-CoV-2が脂肪細胞に影響を及ぼしうることはハムスターへの感染実験で示されています。SARS-CoV-2をハムスターに感染させたところウイルスに対抗する遺伝子が脂肪組織で強く発現し、アディポネクチンの発現が減じました。糖の扱いや糖尿病とCOVID-19を結びつける仕組みのさらなる把握にSARS-CoV-2感染ハムスターは今後重宝されるでしょう。今回の研究は治療の可能性も示唆しています。たとえばピオグリタゾンなどのアディポネクチン生成を増やすチアゾリジンジオン糖尿病薬は高血糖を伴うCOVID-19の治療に役立つかもしれません2)。メトホルミンなどの他のインスリン感受性亢進薬で糖代謝を底上げしてインスリン投与を回避することも期待できそうです1)。安全性や効果を調べる今後の試験でそれら薬剤のCOVID-19治療での価値が定まるでしょう。参考1)Reiterer M, et al.Cell Metab. 2021 Sep 16:S1550-4131,00428-9.2)COVID-19 may trigger hyperglycemia and worsen disease by harming fat cells / Eurekalert

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IgG monoclonal抗体製剤はワクチンの代替薬になりえるか?(解説:山口佳寿博氏、田中希宇人氏)

 本論評では、遺伝子組み換えIgG monoclonal抗体治療の基礎をなす回復期血漿治療の変遷を考慮しながらmonoclonal抗体治療の臨床的意義について考察する。コロナ感染症に対する回復期血漿治療-無効かつ有害? 長年、インフルエンザ肺炎に対して古典的回復期血漿治療が施行されてきた。また、2002~03年のSARSに対しても回復期血漿治療が試みられたが満足いく結果が得られず、抗体依存感染増強(ADE:antibody-dependent enhancement of infection)を呈した症例が少なからず存在した。新型コロナに対しても回復期血漿治療が試行錯誤されたが、今年になって発表された2つの論文は新型コロナに対する回復期血漿治療が無効、あるいは、逆に、病態を悪化させる可能性があることを指摘した。RECOVERY Trialでは、ランダム化から28日目までの死亡率、機械呼吸導入率、腎透析導入率など重要な指標は血漿投与群と対照群の間で有意差を認めず、回復期血漿治療は無効であることが示された(RECOVERY Collaborative Group. Lancet 2021;397:2049-2059.)。Begin氏らの報告によると、ランダム化から30日以内の気管挿管と死亡の比率は血漿投与群と対照群の間で有意差はなく、さらに、重要な知見としてADEに相当する重篤な副反応の頻度が血漿投与群で高いことが示された(Begin P, et al. Nat Med. 2021 Sep 9. [Epub ahead of print])。 回復期血漿はコロナ以外の微生物などに由来する種々の抗原に対するIgG、IgA、IgMなどの抗体を含有する。たとえば、IgAはIgGと拮抗しHIVワクチン接種時にHIV感染を増悪させることが報告されている(Haynes BF, et al. Engl J Med. 2012;366:1275-1286.)。また、回復期血漿が含有するS蛋白に対するIgG抗体には中和作用を有さない“非機能的(不完全)IgG抗体”が含まれる。非機能的IgG抗体のFc(fragment crystallizable)部位と免疫細胞/食細胞に発現しているFc受容体(FcγR)との結合は不完全で、ウイルスは免疫細胞/食細胞内で完全に処理されず、その一部は感染性を有したまま細胞外に排出される(回復期血漿投与時のADE発生)。一方、S蛋白を構成する種々なる抗原決定基(epitope)に対するIgG monoclonal抗体はウイルスに対する中和作用が強く、非機能的IgG抗体は基本的に存在しない。それ故、IgG monoclonal抗体投与時にはADEが発生し難い。以上の考察を支持する知見として、S蛋白に対するIgG monoclonal抗体に関する複数の治験においてADE発症の報告がない事実を強調しておきたい。半減期が短いIgG monoclonal抗体-抗ウイルス薬 現在、米国では6種類のIgG monoclonal抗体が緊急使用の許可を得ている。その中の2種類ずつを併用する2つの抗体カクテル療法(カシリビマブ+イムデビマブ[REGEN-COV]とbamlanivimab+etesevimab[BEカクテル])の緊急使用をFDAは承認している。本邦においても2021年7月19日、REGEN-COVが特例承認された(商品名:ロナプリーブ点滴静注セット)。 カシリビマブとイムデビマブ(REGEN-COV)はウイルスが生体に侵入する際生体細胞のACE2と結合するRBD-motif(RBM)に存在する互いに重なりがない複数のepitopeと非競合的に結合し抗ウイルス作用を発現する(Baum A, et al. Science 2020;369:1014-1018.)。本論評で取り上げたコロナ感染患者と濃厚接触した家族を対象としたREGN-COV 2069治験において(O'Brien MP, et al. N Engl J Med. 2021;385:1184-1195.)、対照群の全感染リスクが14.2%であったのに対しREGEN-COV群では4.8%と有意に低かった。さらに、感染者の症状持続期間もREGEN-COV群で2週間短縮されるなど抗ウイルス薬として高い効果が示された。この治験で特記すべき事項はREGEN-COVを従来の点滴投与ではなく皮下注で投与しても何ら問題となる不都合が観察されなかったことである。以上の結果はIgG monoclonal抗体を簡便な皮下注で投与できる可能性を示した点で臨床的に価値がある。 Monoclonal抗体治療の最も魅力的側面はDelta株を中心とする変異株に対する抗ウイルス作用である。変異株における免疫回避作用を発現するS蛋白遺伝子変異の主たる部位は417位(Beta株、Gamma株)、452位(Delta株)、478位(Delta株)、484位(Beta株、Gamma株)である(山口. 日本医事新報 2021;5053:32-38,)。REGEN-COVにあって、カシリビマブは417位、478位、484位をepitopeとして認識するがイムデビマブはこれら部位を認識しない。両monoclonal抗体ともDelta株にあって最も重要な452位を認識せずREGEN-COVはDelta株に対して高い中和作用を示すことが示唆された(Corti D, et al. Cell. 2021;184:3086-3108.)。 REGEN-COVを構成する2つのmonoclonal抗体の血中半減期は約30日で抗ウイルス薬としては十分な期間有効性が持続する(O'Brien MP, et al. N Engl J Med. 2021;385:1184-1195.)。しかしながら、以下に提示するIgG monoclonal抗体をワクチン代替え療法として考えていく場合には30日という半減期は短過ぎる。 REGEN-COV使用に関する本邦の指針は米国FDAの指針に追従したもので、本薬剤の投与対象が“重症化リスク因子を有する酸素投与を要しない患者(軽症~中等症-I)”となっており、“重症例”は基本的に対象外とされた(厚生労働省. Aug. 13, 2021)。この記述は、回復期血漿治療で認められるADEがIgG monoclonal抗体投与時にも発生する可能性を配慮したものであるが、monoclonal抗体薬投与に起因するADEの発生が非常にまれであることが判明しつつある現在、REGEN-COVの投与対象を重症例にも広げていくべきであろう。さらに、ワクチン接種で中和抗体価が上昇しない免疫不全患者のコロナ感染時の治療にはIgG monoclonal抗体治療が最優先されるべきことも明記されるべきである(米国FDA. Press Release Aug. 12, 2021)。 BEカクテルにあってbamlanivimabはRBDの452位、484位を、etesevimabは452位近傍をepitopeとして認識するため(Corti D, et al. Cell 2021;184:3086-3108.)、BEカクテルはBeta株、Gamma株、Delta株に対する中和作用が弱く、変異株抑制を目的とした抗ウイルス薬としてはREGEN-COVよりも劣る。REGEN-COVと同様BEカクテルの半減期も短い。半減期が長いIgG monoclonal抗体-抗ウイルス薬、ワクチン代替え薬 2021年9月6日、グラクソ・スミスクラインは単剤で使用できるIgG monoclonal抗体ソトロビマブの特例承認を厚生労働省に申請し、9月27日に承認された(商品名:ゼビュディ点滴静注液500mg)。この製剤は他のmonoclonal抗体製剤と異なり、変異が発生しやすいRBMではなく変異が起こり難く多くのコロナウイルスでアミノ酸配列が普遍的に保存されている部位(S蛋白の332~361位)を抗体の標的として設計されている(Corti D, et al. Cell 2021;184:3086-3108.)。すなわち、ソトロビマブが認識するepitopeはDelta株を中心とする変異株を特徴付ける種々なる変異とは無関係な部位に位置する。それ故、ソトロビマブは現状の変異株のみならず今後形成されることが予想される新たな変異株に対しても高い中和作用を発揮するものと考えられる(Gupta A, et al. medRxiv. 2021 May 28.)。ソトロビマブのもう一つの特徴はIgGの分解を抑制し血中IgG抗体価の半減期を延長させるためにIgG抗体のFc領域に人工的変異が挿入されていることである(Cathcart AL, et al. bioRxiv. 2021 Aug 6.)。その結果、ソトロビマブは投与後少なくとも6~8ヵ月間は抗ウイルス作用を持続するものと考えられ、ワクチン接種が困難な人、あるいは、免疫不全でワクチンによる抗体産生が期待できない人に対するワクチン代替え療法になりえるものと期待できる。ただし、IgG monoclonal抗体治療の費用はワクチン2回接種の100倍に達する高額治療であることに留意する必要がある。 AstraZenecaの抗体カクテル(AZD7442:AZD1061+AZD8895)も注目に値する製剤である。AZD7442を構成する2つのIgG monoclonal抗体のFc領域には人工的変異が挿入されておりソトロビマブと同様にIgGの半減期が延長する(抗ウイルス作用:約1年持続)。それ故、AZD7442もソトロビマブと同様にワクチン代替え療法として期待できる。

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新規の抗HER2抗体薬物複合体、複数の治療歴のあるHER2+乳がんのPFSを延長 (TULIP)/ESMO2021

 複数の治療歴のある転移を有するHER2陽性乳がんに対し、新規の抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるtrastuzumab-duocarmazine (SYD985)は、従来の標準治療に比較し、有意に無増悪生存期間(PFS)を延長することが示唆された。これは国際共同第III相比較試験であるTULIP試験の結果で、スペイン・Hospital Universitari Vall d’HebronのCristina Saura Manich氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表された。SYD985はトラスツズマブにアルキル化剤であるduocarmazineを結合したADC薬である。・対象:T-DM1または2レジメン以上の抗HER2の治療歴のあるHER2陽性の局所進行または転移を有する症例 437例・試験群:SYD985(1.2mg/kg)を3週ごとに投与(SYD群 291例)・対照群:主治医の選択治療(PC群 146例)治療レジメンはラパチニブ+カペシタビン、トラスツズマブ+カペシタビン、トラスツズマブ+ビノレルビン、トラスツズマブ+エリブリンから選択・評価項目[主要評価項目]中央判定によるPFS[副次評価項目]主治医評価による無イベント生存期間(EFS)と全生存期間(OS)、奏効率、QOL 主な結果は以下のとおり。・症例の前治療ライン数の中央値はSYD群が4、PC群が5であった。内訳は、86~89%がトラスツズマブかT-DM1、58~61%がペルツズマブ、1~7%がtucatinib、margetuximab、T-DXdであった。・年齢中央値はSYD投与群が56歳、PC群は58歳であった。・中央判定によるPFS中央値は、SYD群が7.0ヵ月、PC群が4.9ヵ月で、ハザード比(HR)は0.64(95%信頼区間[CI]:0.49~0.84)、p=0.002と統計学的に有意であった。・主治医判定によるPFS中央値は、SYD群が6.9ヵ月、PC群が4.6ヵ月で、HRは0.60(95%CI:0.47~0.74)、p<0.001であった。・初回中間解析でのOS中央値は、SYD群が20.4ヵ月、PC群が16.3ヵ月、HRは0.83(95%CI:0.62~1.09)、p=0.153であった。・奏効率はSYD群27.8%、PC群29.5%と、両群間に有意な差はなかった。・頻度の高い治療関連有害事象は、SYD群では結膜炎(全Grade:38.2%、Grade3以上:5.6%)、角膜炎(全Grade:38.2%、Grade3以上:12.2%)であった。PC群では、下痢(全Grade:35.8%、Grade3以上:2.2%)、好中球減少(全Grade:24.1%、Grade3以上:18.2%)であった。・さらに、SYD群で間質性肺炎/肺臓炎が7.6%(Grade3以上:2.4%)に認められた。間質性肺炎/肺臓炎により治療中止となったのは5.2%、減量が行われたのは2.1%の症例であった。 最後に演者は「SYD985は、複数の治療歴のある転移を有するHER2陽性乳がんに対する新しい治療オプションとなり得る」と結んだ。

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重症化リスクのある外来COVID-19に対し吸入ステロイドであるブデソニドが症状回復期間を3日短縮(解説:田中希宇人氏、山口佳寿博氏)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ではエビデンスの乏しかった2020年初頭からサイトカインストームによる影響がいわれていたことや、COVID-19の重症例のCT所見では気管支拡張を伴うびまん性すりガラス陰影、いわゆるDAD(diffuse alveolar damage)パターンを呈していたことから実臨床ではステロイドによる加療を行っていた。2020年7月に英国から報告された大規模多施設ランダム化オープンラベル試験である『RECOVERY試験』のpreliminary reportが報告されてからCOVID-19の治療として適切にステロイド治療が使用されることとなった。『RECOVERY試験』では、デキサメタゾン6mgを10日間投与した群が標準治療群と比較して試験登録後28日での死亡率を有意に減少(21.6% vs.24.6%)させた(Horby P, et al. N Engl J Med. 2021;384:693-704. )。とくに人工呼吸管理を要した症例でデキサメタゾン投与群の死亡率が29.0%と、対照群の死亡率40.7%と比較して高い効果を認めた。ただし試験登録時に酸素を必要としなかった群では予後改善効果が認められず、実際の現場では酸素投与が必要な「中等症II」以上のCOVID-19に対して、デキサメタゾン6mgあるいは同力価のステロイド加療を行っている。 また日本感染症学会に「COVID-19肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した3例」のケースシリーズが報告されたことから、吸入ステロイドであるシクレソニド(商品名:オルベスコ®)がCOVID-19の肺障害に有効である可能性が期待され、COVID-19に対する吸入ステロイドが話題となった。シクレソニドはin vitroで抗ウイルス薬であるロピナビルと同等以上のウイルス増殖防止効果を示していたことからその効果は期待されていたが、前述のケースシリーズを受けて厚生労働科学研究として本邦で行われたCOVID-19に対するシクレソニド吸入の有効性および安全性を検討した多施設共同第II相試験である『RACCO試験』でその効果は否定的という結果だった(国立国際医療研究センター 吸入ステロイド薬シクレソニドのCOVID-19を対象とした特定臨床研究結果速報について. 2020年12月23日)。本試験は90例の肺炎のない軽症COVID-19症例に対して、シクレソニド吸入群41例と対症療法群48例に割り付け肺炎の増悪率を評価した研究であるが、シクレソニド吸入群の肺炎増悪率が39%であり、対症療法群の19%と比較しリスク差0.20、リスク比2.08と有意差をもってシクレソニド吸入群の肺炎増悪率が高かったと結論付けられた。以降、無症状や軽症のCOVID-19に対するシクレソニド吸入は『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3版』においても推奨されていない。 その他の吸入ステロイド薬としては、本論評でも取り上げるブデソニド吸入薬(商品名:パルミコート®)のCOVID-19に対する有効性が示唆されている。英国のオックスフォードシャーで行われた多施設共同オープンラベル第II相試験『STOIC試験』では、酸素が不要で入院を必要としない軽症COVID-19症例を対象にブデソニド吸入の効果が検証された(Ramakrishnan S, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:763-772. )。本研究ではper-protocol集団およびITT集団におけるCOVID-19による救急受診や入院、自己申告での症状の回復までの日数、解熱薬が必要な日数などが評価された。結果、ブデソニド吸入群が通常治療群と比較して有意差をもってCOVID-19関連受診を低下(per-protocol集団:1% vs.14%、ITT集団:3% vs.15%)、症状の回復までの日数の短縮(7日vs.8日)、解熱剤が必要な日数の割合の減少(27% vs.50%)を認める結果であった。 本論評で取り上げた英国のオックスフォード大学Yu氏らの論文『PRINCIPLE試験』では、65歳以上あるいは併存症のある50歳以上のCOVID-19疑いの非入院症例4,700例を対象に行われた。結果は吸入ステロイドであるブデソニド吸入の14日間の投与で回復までの期間を通常治療群と比較して2.94日短縮した、とのことであった。本研究は英国のプライマリケア施設で実施され、ブデソニド吸入群への割り付けは2020年11月27日~2021日3月31日に行われた。 4,700例の被検者は通常治療群1,988例、通常治療+ブデソニド吸入群1,073例、通常治療+その他の治療群1,639例にランダムに割り付けられた。ブデソニド吸入は800μgを1日2回吸入し、最大14日間投与するという治療で、喘息でいう高用量の吸入ステロイド用量で行われた。症状回復までの期間推定値は被検者の自己申告が採用されたが、通常治療群14.7日に対してブデソニド吸入群11.8日と2.94日の短縮効果(ハザード比1.21)を認めている。同時に評価された入院や死亡については通常治療群8.8%、ブデソニド吸入群6.8%と2ポイントの低下を認めたが、優越性閾値を満たさない結果であった。 今までの吸入ステロイドの研究では主に明らかな肺炎のない症例や外来で管理できる症例に限った報告がほとんどであり、前述の『STOIC試験』においても酸素化の保たれている症例が対照となっている。本研究ではCOVID-19の重症化リスクである高齢者や併存症を有する症例が対照となっており、高リスク群に対する効果が示されたことは大変期待できる結果であった考えることができる。ただしCOPDに対する吸入ステロイドは新型コロナウイルスが気道上皮に感染する際に必要となるACE2受容体の発現を減少させ、COVID-19の感染予防に効果を示す(Finney L, et al. J Allergy Clin Immunol. 2021;147:510-519. )ことがいわれており、本研究でもブデソニド吸入群に現喫煙者や過去喫煙者が46%含まれていることや、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)症例が9%含まれていることは差し引いて考える必要がある。そして吸入薬であり「タービュヘイラー」というデバイスを用いてブデソニドを投与する必要がある特性上、呼吸促拍している症例や人工呼吸管理がなされている症例に対してはこの治療が困難であることは言うまでもない。 また心配事として、重症度の高いCOPD症例に対する吸入ステロイドは肺炎のリスクが高まるという報告がある(Vogelmeier C, et al. N Engl J Med. 2011;364:1093-1103.、Crim C, et al. Ann Am Thorac Soc. 2015;12:27-34. )ことである。この論評で取り上げたYu氏らの論文では重篤な有害事象としてブデソニド吸入群で肋骨骨折とアルコールによる膵炎によるものの2例が有害事象として報告されており治療薬とはまったく関係ないものとされ、肺炎リスクの上昇は取り上げられていない。ただもともと吸入ステロイド薬であるブデソニドは、気管支喘息や閉塞性換気障害の程度の強いCOPDや増悪を繰り返すCOPDに使用されうる薬剤であり、ステロイドの煩雑な使用は吸入剤とはいえ呼吸器内科医としては一抹の不安は拭うことができない。 心配事の2つ目として吸入薬の適切な使用やアドヒアランスの面が挙げられる。この『PRINCIPLE試験』で用いられているブデソニド吸入は800μgを1日2回吸入、最大14日間であるが、症状の乏しいCOVID-19症例に、しかも普段吸入薬を使用していない症例に対しての治療であるので実臨床で治療薬が適切に使用できるかは考えるところがある。COVID-19症例や発熱症例に対して対面で時間をかけて吸入指導を行うことは非現実的なので、紙面やデジタルデバイスでの吸入指導を理解できる症例に治療選択肢は限られることになるであろう。 最後に本研究が評価されて吸入ステロイドであるブデソニドがコロナの治療薬として承認されたとしても、その適正使用に関しては慎重に行うべきであると考える。日本感染症学会に前述のシクレソニド吸入のケースシリーズが報告された際も、一部メディアで大々的に紹介され、一時的に本邦でもCOVID-19の症例や発熱症例に幅広く処方された期間がある。その期間に薬局からシクレソニドがなくなり、以前から喘息の治療で使用していた患者に処方ができないケースが散見されたことは、多くの呼吸器内科医が実臨床で困惑されたはずである。COVID-19の治療選択肢として検討されることは重要であるが、本来吸入ステロイドを処方すべき気管支喘息や増悪を繰り返すCOPD症例に薬剤が行き渡らないことは絶対に避けなければいけない。

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「ザイボックス」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第71回

第71回 「ザイボックス」の名称の由来は?販売名ザイボックス注射液600mgザイボックス錠600mg一般名(和名[命名法])リネゾリド(JAN)効能又は効果○〈適応菌種〉本剤に感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)〈適応症〉敗血症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肺炎○〈適応菌種〉本剤に感性のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム〈適応症〉各種感染症用法及び用量<ザイボックス注射液 600mg>通常、成人及び12歳以上の小児にはリネゾリドとして1日1200mgを2回に分け、1回600mgを12時間ごとに、それぞれ30分~2時間かけて点滴静注する。通常、12歳未満の小児にはリネゾリドとして1回10mg/kgを8時間ごとに、それぞれ30分~2時間かけて点滴静注する。なお、1回投与量として600mgを超えないこと。<ザイボックス錠 600mg>通常、成人及び12歳以上の小児にはリネゾリドとして1日1200mgを2回に分け、1回600mgを12時間ごとに経口投与する。通常、12歳未満の小児にはリネゾリドとして1回10mg/kgを8時間ごとに経口投与する。なお、1回投与量として600mgを超えないこと。警告内容とその理由警告本剤の耐性菌の発現を防ぐため、「5.効能又は効果に関連する注意」、「8.重要な基本的注意」 の項を熟読の上、適正使用に努めること。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年9月29日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年6月改訂(第17版)医薬品インタビューフォーム「ザイボックス®注射液600mg・ザイボックス®錠600mg」2)Pfizer for Professionals:製品情報

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コロナ治療用:ステロイド各種の換算表/患者の不安軽減のためのスライド

新型コロナウイルス感染症では、酸素が必要な中等症II以上の患者さんに対し、ステロイド投与が必要になるケースもあります。その際、デキサメタゾンの供給不足や個々の体調に応じて代替処方が予想される場合も。そんな時に「換算表」があればオーダー時の悩みが解決されるのではないでしょうか。 今回の換算表は日本鋼管病院の薬剤部医薬品情報室の方々、田中 希宇人氏(日本鋼管病院 呼吸器内科医長)にご協力いただき、一部改変して公開しています。 また 、自宅療養を余儀なくされる患者さんのステロイドに対する不安軽減には「患者向けスライド」をお役立てください。医師向け患者さん向け参考日本感染症学会:COVID-19に対する薬物治療の考え方 第8版

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ファイザー製ワクチン、3回目接種後の副反応は?

 米国食品医薬品局(FDA)は9月22日、ファイザー/ビオンテック社製COVID-19ワクチン(BNT162b2)の3回目接種(ブースター接種)について、65歳以上や重症化リスクの高い人などを対象に緊急使用許可を承認した1)。この承認に当たり開催されたFDAの諮問委員会でファイザー社が提出した資料2)には、ブースター接種による免疫応答と安全性についてのデータが含まれた。本稿では、安全性データについてまとめる。※なお、9月30日更新の米国疾病予防管理センター(CDC)からの推奨事項では3)、BNT162b2ブースター接種の対象は、65歳以上、18歳以上の介護施設の居住者、基礎疾患のある者、リスクの高い環境で働く者、リスクの高い環境に住む者とされている。対象:phase1試験から12人(65~85歳)、phase2/3試験から306人(18~55歳)試験概要:参加者はBNT162b2 30μgの2回接種の後、phase1試験参加者は約7~9ヵ月後、phase2/3試験参加者は約6ヵ月後にBNT162b2 30μgの3回目接種を受けた。安全性の評価:参加者はブースター接種後1日~7日目まで副反応と解熱鎮痛薬の使用についてe-diaryで報告した。副反応には、接種部位反応(痛み、発赤、腫れ)および全身性反応(発熱、倦怠感、頭痛、悪寒、吐き気、下痢、筋肉痛、関節痛)が含まれる。その他の安全性評価には、各投与後30分以内に発生する副反応、1回目投与からブースター接種後1ヵ月間の非重篤な未確認の副反応、およびブースター接種からデータカットオフ日(phase1:2021年5月13日、phase2/3:2021年6月17日)までの重篤な副反応が含まれた。 dose1(16~55歳、2,899人)、dose2(16~55歳、2,682人)のデータと比較したdose3接種後の副反応報告は以下のとおり。・phase1試験の12人(65~85歳)、phase2/3試験の289人(18~55歳)からe-diaryによる報告が得られた。接種部位反応・痛み:dose1(83.7%)、2(78.3%)、3(18~55歳:83.0%、65~85歳:66.7%)・腫れ:dose1(6.3%)、2(6.8%)、3(18~55歳:8.0%、65~85歳:0.0%)・発赤:dose1(5.4%)、2(5.6%)、3(18~55歳:5.9%、65~85歳:0.0%)全身性反応・倦怠感:dose1(49.4%)、2(61.5%)、3(18~55歳:63.8%、65~85歳:41.7%)・頭痛:dose1(43.5%)、2(54.0%)、3(18~55歳:48.4%、65~85歳:41.7%)・筋肉痛:dose1(22.9%)、2(39.3%)、3(18~55歳:39.1%、65~85歳:33.3%)・悪寒:dose1(16.5%)、2(37.8%)、3(18~55歳:29.1%、65~85歳:16.7%)・関節痛:dose1(11.8%)、2(23.8%)、3(18~55歳:25.3%、65~85歳:16.7%)・下痢:dose1(10.7%)、2(10.0%)、3(18~55歳:8.7%、65~85歳:0.0%)・嘔吐:dose1(1.2%)、2(2.2%)、3(18~55歳:1.7%、65~85歳:0.0%)・発熱(≧38.0℃):dose1(4.1%)、2(16.4%)、3(18~55歳:8.7%、65~85歳:0.0%)・解熱鎮痛薬の使用:dose1(27.8%)、2(45.2%)、3(18~55歳:46.7%、65~85歳:33.3%) ブースター接種から1ヵ月後までのphase2/3試験参加者(306人)において報告された副反応のうち、最も多かったのはリンパ節腫脹(5.2%)で、最初の2回(0.4%)よりも多かった。その他複数の参加者で報告されたのは、悪心(0.7%)、注射部位の痛み(0.7%)、痛み(0.7%)、腰痛(0.7%)、首の痛み(0.7%)、頭痛(0.7%)、 不安感(0.7%)、および接触性皮膚炎(0.7%)だった。 ブースター接種後1ヵ月以上が経過した後のモニタリング期間中に、1件の急性心筋梗塞が重篤な副反応として報告されたが、ファイザー社は因果関係は認められないと評価し、FDAもそれに同意している。その他の重篤な副反応、死亡例は報告されていない。 報告書では、ブースター接種後に報告された副反応の頻度および重症度は、2回目接種後と差がみられなかったとしている。(2021年10月1日 記事内容を一部修正いたしました)

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第76回 総裁選でも気になるコロナ対策、4氏の具体策は現実的?

最近はテレビのニュースの時間になると同じ4人の顔を見ることが増えてきた。言わずと知れた自民党総裁選に出馬した岸田 文雄氏、河野 太郎氏、高市 早苗氏、野田 聖子氏の4人のことである。ちなみにこの順番で表記したのは男尊女卑でも何でもなく、単純に50音順である。総裁選後には任期満了に伴う衆議院選挙が控えているが、現在の衆議院で政権与党の自民党と公明党の占める議席が465議席中304議席(竹下 亘氏の死去による欠員分を除く)であり、現下の情勢では多少議席を減らしたとしても与党側が過半数を大きく割る可能性はほぼないと思われる。つまるところ、この総裁選の勝者が当面の次期総理大臣となることは99%確実である。実は過去の本連載でも取り上げたことがあるが、この総裁選立候補者の政策を新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策に限定して俯瞰してみたい。ちなみに4氏のうち野田氏以外は全員が総裁選用の特設サイトを開設している。岸田氏:声をかたちに。信頼ある政治河野氏:日本を前にすすめる。温もりのある国へ高市氏:政策9つの柱これと、各人の著書、具体的には岸田氏の「岸田ビジョン 分断から強調へ」(講談社)、河野氏の「日本を前に進める」(PHP新書)、高市氏の「美しく、強く、成長する国へ。―私の『日本経済強靱化計画』―」(WAC)、野田氏の「みらいを、つかめ 多様なみんなが活躍する時代に」(CCCメディアハウス)や、日本記者クラブでの総裁選候補討論会の動画、テレビ朝日での全員出演動画などを参考に各人の主張を紹介するとともに、そこに若干の論評を加えてみたい。ちなみに予め言っておくと、私がこれら候補に関する主張や報道を読んで、各人の底流に流れる政治思想を「○○主義」と名づけるなら、岸田氏は「協調主義」、河野氏は「合理主義」、高市氏は「国粋主義」、野田氏は「女性活躍主義」と表現する。さてその各人の考える新型コロナ対策だが、実はテレビ朝日への出演では、番組サイドが「何をコロナ対策の一丁目一番地と考えるか?」を尋ねている。岸田氏は「病床・医療人材の確保を徹底」を挙げた。これについてはこれまでの岸田氏の主張やそれにかかわる報道から解説が必要だろう。まず、岸田氏は今後もワクチン接種を推進して行く中で11月には希望者全員のワクチン接種が終了し、経口治療薬の登場までの間隙を縫って第6波が来ることも想定し、そこに向けた対策として病床・人材の確保を主張する。この点は岸田氏の政策集の『コロナ対策 岸田4本柱』にもあるように、重症者は国公立病院のコロナ重点病院化、一般的な発熱患者や新型コロナの自宅療養者は開業医で対応し、この間をつなぐものとして政府による野戦病院的臨時医療施設の開設や借り上げした大規模宿泊施設などを中間設置して第6波に備えるというもの。基本は現状とあまり変わらないが、「病床・医療人材の確保を徹底」とは、要はこの中間施設のハードとソフトの確保を謳っていると思われる。もっとも東京都の例を挙げると、開設を予定した臨時医療施設の一部で稼働が遅れた主な原因が人員確保に手間取ったゆえだった。このことを考えると、それをここ2~3ヵ月で解決するのは容易ではない。そして今回のコロナ禍では第5波まで経験しながら、感染拡大局面で病床がひっ迫することについて世論からは一貫して疑問を呈せられてきた。この点の解決策については日本記者クラブでの記者会見で各人が考えを表明している。「臨時病院の設置も含め非常時の指揮命令系統と権限というのは、これは見直さなければいけない。今回痛切に感じたのは、ベッドはあるけれども高度な治療ができる人材やチームがいないこと。また、重症から回復した人を臨時病院や軽症・中等症の病床に移していくことがうまく動かなかった。そこはやはり国や都道府県の調整をしなければならなかった。国と都道府県、どちらが何をやるのかというのを決めなければいけない」(河野氏)「病床確保については国が総合調整機能を持って調整することになっているが、将来的により強力な調整機能を発揮のために新たなこの工夫が必要になる。一方的に強制すると現場の反発を買ってしまう。平素から診療報酬等の上乗せで優遇を与える『感染症危機中核病院』のようなものを設置し、危機の際には国のコントロールによって 半強制的にこうした病院に病床を提供してもらい、それに応じない場合はペナルティも考えていく仕掛けも必要」(岸田氏)「国民皆保険制度の下である以上、緊急事態では国や地方自治体が医療機関や医療従事者に対して、病床確保等の必要な対応を命令する権限を持つことも含めて法案化を考えたい」(高市氏)「急変時に医療の手が届かないことを考えると自宅療養という仕組みはもう無理。入院できないならば危機的な時だけ国がサブホスピタルを作る必要がある」(野田氏)4氏のコロナ政策、主張あれこれテレビ朝日で「コロナ対策一丁目一番地」として河野氏が主張したのは「政府による製造支援も念頭に置いた、簡易検査キットの低コストでの大量調達と供給。薬局での販売解禁」である。簡易検査はたぶん抗原検査を意味していると思われる。河野氏は「どんどん検査をすることで、見える景色が大きく変わってくると思います」と述べているが、どのような着地点を持ってこの主張をしているかが不明である。第5波では膨大な数の検査陽性者が発生したことで、保健所も医療機関もキャパシティーをオーバーし、半ば機能不全に陥った例もある。実際、河野氏が言う簡易検査を不特定多数に行った場合、かなりの陽性者が判明するはずで、そうした人を自宅待機にするのか、その場合誰がどうフォローアップするのかなど抱えている課題は多い。ちなみに岸田氏も『コロナ対策 岸田4本柱』で「予約不要の無料PCR 検査所の拡大と、簡易な抗原検査など在宅検査手段の普及促進」を謳っているが、PCR検査ともなるとそこにも人材の配置が必要になるため、前述の河野氏のところで指摘した課題に加え、再び人材確保という壁にぶち当たる。一方、高市氏と野田氏がテレビ朝日で第一に主張したのは、ともに感染者の重症化を予防するための「治療薬の確保」。ちなみに高市氏はわざわざ「国産の治療薬」としていたのが、彼女らしいとも言える。日本記者クラブでの討論会では「ワクチンまた治療薬の国産化に向けてとくに生産設備に対するしっかりとした投資(支援)をする」との考えも示している。この点は政策集などで河野氏も「治療薬と国産ワクチンの確保」を主張し、岸田氏も年内の治療薬登場に期待するコメントを日本記者クラブでの会見で述べている。現在、第III相試験中と最も開発が先行しているmolnupiravirは外資系のメルク社のものであり、それも年内中の上市については未知の部分は残されている。そして国産の治療薬、ワクチンに関しては、塩野義製薬のプロテアーゼ阻害薬が第I/II相、第一三共のmRNAワクチン、塩野義製薬の組み換えタンパクワクチン、KMバイオロジクスの不活化ワクチンのいずれもがやはり第I/II相と初期段階に過ぎない。アンジェスのDNAワクチンが第II/III相だが、最近になって高用量での第I/II相を開始したことから考えると、第II/III相まで進行した当初の用量での臨床試験は芳しいものとは言えなかったと見る向きもある。いずれにせよ国産化まではまだ相当時間を要する見通しで、この点は各人ともやや楽観的過ぎるともいえる。なおワクチン接種に関しては各人とも推進の方針。この中で河野氏はワクチン担当相ということもあってか、3回目のブースター接種開始への意欲を示したほか、来年以降に現行のmRNAワクチンが生後6ヵ月以上に適応拡大が進む見通しについて言及。野田氏も現在ワクチン接種対象外の11歳以下の小児に対し、希望者へのワクチン接種推進を訴えている。ちなみに野田氏のこの主張の背景には2010年にアメリカで卵子提供を受け妊娠、2011年1月に出産した障害児の息子を抱えることも念頭にあっての発言だろうと推察される。コロナの先を見据える女性陣その意味ではテレビ朝日での4氏討論の際は次なる感染拡大時のロックダウンの可否について、野田氏だけが否定的な見解を示した。その理由については現時点で法制度上不可能なこと、ワクチン接種、病床確保などそれ以前に行うべきものがあると挙げながら、「人がウイルスを運んでいるようなものですが、人は生きていくために動かなければいけません。とくに子供は動き回らなければいけないので、そこは冷静に判断していかなければいけません」と述べている。やはりここでも「子供」が出てくるところは少子化対策に熱心な野田氏らしい視座とも言える。一方、高市氏と河野氏は、どちらかというとより強力な新興感染症が登場することを念頭に法令上の整備が必要という考え。岸田氏はいわゆる外出禁止やそれに伴う刑事罰などを含めた厳密な意味でのロックダウンは日本に合わないとして、「ワクチン接種証明や陰性証明を組み合わせて、人流抑制をお願いする日本型のロックダウン政策」を述主張する。岸田氏は「電子的なワクチン接種証明の積極活用」も政策として掲げていることから、先日政府が発表した行動制限緩和策の「ワクチン・検査パッケージ」に何らかの法的な位置付けを与えて人流抑制に活用しようというものらしい。菅首相にチクリの男性陣今回の自民党総裁選で菅首相の不出馬というサプライズが起こる前から一番手で立候補に名乗りを上げていただけあって、岸田氏の場合、政策集に書かれていることは実現の可否は別にして充実している。その中で公衆衛生上の危機発生時に国・地方を通じた強い司令塔機能を有する「健康危機管理庁(仮称)」と「臨床医療」「疫学調査」「基礎研究」を一体的に扱う「健康危機管理機構(仮称)」の創設を謳っている。また、菅首相の対応をやんわり批判した発言も目に付く。今回のコロナ対応について岸田氏は「国民への丁寧な説明」と「楽観的な見通し」が課題だったと各所で指摘している。この点について日本記者クラブでの公開討論会では「国民の協力が必要な中では納得感のある説明、(政策決定の)結果だけではなく、そこに至るプロセスなどを丁寧に説明する必要があった」と指摘している。これは菅首相による複数回の緊急事態宣言の発出時のことが念頭にあることは明らかである。同時に別の場所では、楽観的な見通しについて緊急事態宣言解除の時期などを挙げている。もし、岸田氏が自民党総裁となり、その後総理大臣となることがあったら、この点がどの程度実現できるかは注視したいところである。一方、河野氏も国民への説明については自らの政策集で「新型コロナウイルスについて、最新の科学的知見に基づいたわかっていること、わからないこと、できること、できないことをしっかりと国民と共有し、謙虚に、わかりやすい対話をしながら決めていきます」としている。時にはスタンドプレーになりがちな河野氏のことは本連載でも指摘してきたが、一大臣と総理大臣では求められるものの質と許容されることの幅も異なってくる。さてさて最終的にどうなることやら。個人的にはかなり注目しているところである。

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交互接種・コアリング防止など追記、新型コロナ予防接種の手引き/厚労省

 厚生労働省は、2021年9月21日に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(4.1版)」を公開した。 この手引きは、2020(令和2)年12月17日に初版が公開され、逐次新しい知見やエビデンスを追加し、ほぼ毎月改訂を重ねてきた。妊婦や交互接種、接種時のコアリングについて追記 今回の主な改訂点は下記の通りである。【第3章 3(10):妊娠中の者等への接種体制の確保について追記】 妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、特に妊娠後期は重症化しやすく、早産のリスクも高まるとされている。妊娠中の者及び配偶者等(以下「妊娠中の者等」という)が希望する場合には、できるだけ早期に、円滑に新型コロナワクチンの接種を受けることができるよう、例えば、予約やキャンセル待ちに当たって妊娠中の者等を可能な範囲で優先する、現時点で妊娠中の者等が年齢等によって必ずしも接種予約の対象となっていない場合には妊娠中の者等を接種予約の対象とする、といった方法により、特段の配慮をすること。【第3章 3(11):交互接種への対応について追記】(交互接種への対応) 新型コロナワクチンについては、原則として同一の者には、同一のワクチンを使用することとしているが、被接種者に対し1回目及び2回目に同一の新型コロナウイルスワクチンを接種することが困難である場合については、1回目に接種した新型コロナワクチンと異なる新型コロナワクチンを2回目に接種すること(以下「交互接種」という)ができる。そのため、やむを得ず交互接種を受ける者に対して、適切に接種機会を提供できるよう予約対応やコールセンターでの対応等に留意すること。【第4章 3(1)ア:新型コロナワクチンの接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかである者を追記】 予防接種を行うことが不適当な状態にある者※1 明らかな発熱を呈している者とは、通常37.5℃以上の発熱をいう。※2 いずれかの新型コロナワクチンの接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかである者については、当該者に対し、当該新型コロナワクチンと同一の新型コロナワクチンの接種を行うことができない。※3 アストラゼネカ社ワクチンの接種を行う接種会場では、上記血栓症及び毛細血管漏出症候群の既往歴の有無を確実に確認するために、必ずアストラゼネカ社ワクチン専用の予診票を用いて予診を尽くすこと。【第4章 3(5):コアリングの防止について追記】 コアリング(ゴム栓に対して斜めに針を刺すと、針のあご部でゴム栓が削り取られてしまうこと)を防ぐために、注射針をバイアルに穿刺する際は、ガイドマーク(中心円)の内側に、針を垂直に押し込むこと。また、刺しながら注射針を回転させたり、同じ場所に何度も穿刺したりしないこと。【第6章 4:交互接種について追記】(交互接種) 新型コロナワクチンについては、原則として、同一の者には、同一のワクチンを使用すること。ただし、新型コロナワクチンの接種を受けた後に重篤な副反応を呈したことがある場合や必要がある場合には、1回目に接種した新型コロナワクチンと異なる新型コロナワクチンを2回目に接種すること(交互接種)ができること。「必要がある場合」とは、以下の場合をいう。(1)接種対象者が1回目に接種を受けた新型コロナワクチンの国内の流通の減少や転居等により、当該者が2回目に当該新型コロナワクチンの接種を受けることが困難である場合(2)医師が医学的見地から、接種対象者が1回目に接種を受けた新型コロナワクチンと同一の新型コロナワクチンを2回目に接種することが困難であると判断した場合(接種間隔) 交互接種をする場合においては、1回目の接種から27日以上の間隔をおいて2回目の接種を実施すること。前後に他の予防接種を行う場合においては、原則として13日以上の間隔をおくこととし、他の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行わないこと。 以上のほかにも図の改訂、予診票、16歳未満の接種の保護者の同意なども改訂されているので、一読を願いたい。

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