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ワクチン接種の目的は“次世代の健康”/EFPIA Japan

 EFPIA(欧州製薬団体連合会)Japanは、2021年11月22日に感染症領域のエキスパートである岡部 信彦氏(川崎市健康安全研究所 所長)を講師に迎え、ワクチンに関するオンラインプレスセミナーを開催した。セミナーでは、ワクチンが人類に果たしてきた役割について、その軌跡をたどるとともに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の盾を担うmRNAワクチンにも触れて講演が行われた。ワクチンギャップは解消しつつある日本 岡部氏を講師に「生涯を通じての感染症予防(Life Course Immunization)-COVID-19の経験を含めて-」をテーマにレクチャーが行われた。 はじめに予防接種の歴史について振り返り、天然痘の予防としてわが国では江戸時代末期から種痘が行われたこと、その際に種痘後にお土産を渡すなど予防接種へのインセンティブをもたらす取り組みがこの時代から行われていたことを現代のCOVID-19ワクチン接種の現状と重ねて説明した。 次に戦後のわが国の予防接種制度と社会状況の変化との関連について振り返り、その時代時代と予防接種は強い関係にあると説明した。現在、日本で接種できるワクチンは定時/臨時接種で21種類、任意接種で10種類、計31種類の接種ができ、世界から遅れていたワクチンギャップも解消に向かいつつあるという(2021年9月現在)。また、近年では「院内感染対策としてのワクチンガイドライン」(日本環境感染学会)や「医療関係者のためのワクチンガイドライン」(同学会)も整備され、医療者の感染予防と他者への感染源とならないための予防などの指針も整備されていると解説を行った。子供がかかる感染症に大人がかかるとリスクが上がる 次にCOVID-19を例にとり、現在までのクラスターの発生状況を振り返った上で、「ワクチン接種のターゲットとして、まず医療機関が守られることであり、医療が動くことが重要」と述べ、ワクチンのポリシーとしては「死亡者を出さないことが大事だ」と語った。 次に大人がかかる子供の感染症について解説を行った。 大人がかかるとリスクが高い感染症として、「水ぼうそう」「はしか」「おたふくかぜ」「ポリオ」「手足口病」「伝染性紅斑」「百日咳」などを代表感染症に挙げ、沖縄県で起こった麻疹のクラスター、近年の風疹のクラスターについて解説。いずれもワクチン接種をしていない、接種不明や1回のみ接種などで抗体ができていない大人が感染し、拡大させていたことを報告した。大人でもワクチンを接種しておけばクラスターを予防できた可能性を述べるとともに、社会的事象としておたふくかぜと難聴の関係、大規模災害と破傷風の流行なども示し、ワクチンの重要性を強調した。これからのワクチン接種で大切な“ISRR” 予防接種の目的は、「感染症罹患予防」「個人の健康保持」「次世代の健康を守る」「社会を守る」「感染症の制圧・根絶」「がんの予防」などさまざまな目的があることを示し、とくに「次世代の健康を守る」「社会を守る」ことが重要だと同氏は語る。また、COVID-19ワクチンとして現在広く接種されているmRNAワクチンについても触れ、開発は過去の研究から積み重ねられて製作されたこと、新しいものを含めワクチンの接種では、感染症患者、健康被害者、健康な人のどこに視点をおいて守るかにより接種機会は変わってくることを説明し、ワクチンの接種では、「いつも接種のメリットとデメリットを衡量することが重要」と同氏は指摘した。また、最近ワクチン接種で注目されているトピックスとして、予防接種ストレス関連反応(Immunization stress related response:ISRR)について触れ、「接種時に医療者はISRRも考慮し、丁寧な説明、接種手技、科学的・医学的対応をする必要がある」と警鐘を鳴らした。 最後に同氏は成人のワクチンの課題として、「効果・安全性に関する説明法やその内容、費用の負担、接種への動機付けなどがある」と指摘し、「ワクチンの安全性を高めるためにも医療者も被接種者も『焦らない・慌てない・数を競わない』ようにしてほしい」と結びレクチャーを終えた。

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3回目のワクチンは2回目完了から8ヵ月/厚労省

 11月17日、厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンについて、今後のCOVID-19ワクチンの追加接種などに関する自治体向け説明会を開催した。追加接種については11月15日開催のワクチン分科会を踏まえた対応方針をもとに行われる。本稿では資料より抜粋した主要項目を示す。ワクチン追加接種のスケジュール(1)3回目の追加接種について【ワクチンの対象者】・感染拡大防止及び重症化予防の観点から、1回目・2回目の接種が完了していない者への接種機会の提供を継続するとともに、2回接種完了者すべてに対して追加接種の機会を提供する。・18歳以上の者に対する追加接種としてファイザー社ワクチンが薬事承認されたことを踏まえ、まずは18歳以上の者を予防接種法上の特例臨時接種に位置付ける。・重症化リスクの高い者、重症化リスクの高い者と接触の多い者、職業上の理由などによりウイルス曝露リスクの高い者については、とくに追加接種を推奨する。【使用するワクチン】・1回目・2回目に用いたワクチンの種類にかかわらず、mRNAワクチン(ファイザー社ワクチンまたモデルナ社ワクチン)を用いることが適当。(※mRNAワクチン以外のワクチンの使用は科学的知見を踏まえ引き続き検討)・当面は、薬事承認されているファイザー社ワクチンを使用することとし、追加接種にモデルナ社ワクチンを使用することに関しては、薬事審査の結果を待って改めて議論する。【2回目接種完了からの接種間隔】・2回目接種完了から原則8ヵ月以上とする。(2)小児(5~11歳)の新型コロナワクチンの接種について 小児の感染状況、諸外国の対応状況および小児に対するワクチンの有効性・安全性を整理した上で、議論する。(3)特例臨時接種の期間について 現行の期間(令和4年2月28日まで)を延長し、令和4年9月30日までとする。小児への接種では学校集団接種は推奨せず 小児への接種体制については、事前承認前であり、すべて予定の情報である。【小児用(5~11歳用)ファイザー社ワクチンの特性について】 5~11歳用のファイザー社ワクチンは、12歳以上用の(既存の)ファイザー社ワクチンとは濃度や用量が異なる。5~11歳の方には、必ず5~11歳用のワクチンを使用のこと。 とくに希釈が必要(1.3mLの薬液を1.3mLの生理食塩液で希釈)で、1回当たり0.2mLを接種する。小分けルールは12歳以上用の製剤と同様。【基本的な考え方】 小児への接種についても、(1)1機関で複数ワクチンを取り扱うことを許容するほか、(2)12歳以上と同様に小児用ワクチンを取り扱う医療機関間での小分け配送が可能。 また、12歳以上用と小児用で取扱いルールが異なることから、別種類のワクチンとして扱う。複数ワクチンを取り扱う場合には、混同しないような接種体制が必要。 (3)学校集団接種については、「保護者への説明機会が乏しい」「体調不良時の対応の困難性」などの制約から現時点では推奨するものではない。若年に多い副反応報告 アナフィラキシーなどの副反応に関する報告を次のようにまとめている。【アナフィラキシーについて】(1)引き続き国際的な基準(ブライトン分類)に基づく評価を実施。(2)ファイザー社ワクチンのアナフィラキシー疑いとして報告されたものは、接種開始から10月24日までに2,922件(うちブライトン分類で555件がアナフィラキシー)と評価された。(3)武田モデルナ社ワクチンは10月24日までに製造販売業者報告は491件だった(うちブライトン分類に基づく評価においては、アナフィラキシーと評価されたものは50件)。(4)アストラゼネカ社ワクチンは10月24日までに医療機関報告は3件あり、いずれもブライトン分類4だった。(5)年齢、性別別の解析結果では、若年の女性においてアナフィラキシーの報告頻度が多い傾向がみられている。(6)アナフィラキシー疑いとして報告され、転帰が確認されたほとんどの例で軽快したことが判明している。【心筋炎関連事象について】(1)集団としての分析に関し、以下の状況が認められる。・COVID19感染症により心筋炎を合併する確率は、ワクチン接種後に心筋炎を発症する確率と比較して高い。ワクチン接種後の心筋炎については、国内外において、若年男性で2回目接種後4日以内の発症報告が多い。・(ワクチン間の被接種者の属性が異なることに留意が必要として)国内における年齢、性別別の報告頻度に係る集団的な解析で、10歳代および20歳代男性の報告頻度が多く、10歳代および20歳代男性についてファイザー社ワクチンに比べて、モデルナ社ワクチン接種後の報告頻度が高い。・心筋炎関連事象疑い事例の死亡の報告頻度は一般人口と比べて高かったが、若年の年代別の死亡全体の報告頻度は一般人口と比べて低かった。(2)心筋炎関連事象の転帰は、発症しても軽症であることが多いとされている。国内で報告があった若年男性の事例では、死亡例や重症例も報告されているが、引き続き、転帰が確認可能であった多くの事例で、軽快または回復が確認されている。【血小板減少症を伴う血栓症について】 ファイザー社ワクチンについては12件、モデルナ社ワクチンについては2件、アストラゼネカ社ワクチンについては1件が、ブライトン分類に基づき血小板減少症を伴う血栓症と評価された。【年齢・性別に関して】(1)mRNAワクチンにおいては、アナフィラキシーおよび心筋炎関連事象以外の副反応疑い報告全体の報告頻度についても、若年者において報告頻度が多い傾向がみられている。(2)死亡報告については高齢者において報告頻度が多い傾向がみられてれいる。 なお、上記の報告内容は発表時点の内容であり、接種対応などについては、12月1日以降の改正された省令・大臣指示により行われる。

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コロナワクチン3回接種、抗体はどのくらい増える?/JAMA

 新型コロナのファイザー製ワクチン(BNT162b2:以下、ワクチン)の60歳以上での抗体価の持続については、まだ不明瞭な点が多い。そこで今回、イスラエル・テルアビブ大学のNoa Eliakim-Raz氏らは、60歳以上を対象に3回目ワクチンの接種前後の抗体価を調査した。その結果、3回目接種が接種10~19日後のIgG抗体価の増加と有意に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版11月5日号のリサーチレターに掲載された。ワクチン3回目接種前と接種10~19日後のIgG抗体価をを測定 ワクチンを2回接種した人の免疫応答を年齢で見た場合、65~85歳では18~55歳よりも低いことが明らかになっている。さらに、2回目のワクチンを接種した4,868人の医療従事者でとくに65歳以上では、2回目接種から6ヵ月以内に液性免疫(IgG抗体、中和抗体)の有意な低下が観察されている。また、イスラエルのある研究1)で、3回目接種が新型コロナウイルス感染と重症者の発生率低下との関連性を示唆していたことから、本研究では60歳以上の3回目接種による免疫反応を見るために、血清学的検査データを評価項目として追加した。 イスラエルでのワクチン3回目接種が世界で初めて承認後、Rabin Medical Center(RMC)のワクチン接種センターで60歳以上の研究参加者を募集、97例が適格だった。除外基準は、新型コロナウイルス既感染者と活動性の悪性腫瘍を有する者だった。IgG抗体価を3回目の接種前(2021年8月4~12日)と接種10~19日後(2021年8月16〜24日)にSARS-CoV-2 IgG II Quant assayを用いて測定した。血清陽性は、50任意単位(AU:arbitrary units)/mL以上と定義された。 ワクチン3回目接種前と接種10~19日後の抗体価を調査した主な結果は以下のとおり。・97例の年齢中央値は70歳(四分位数[IQR]:67~74)で、61%が女性だった。・3回目の投与前(最初のワクチン接種後の中央値:221日、IQR:218~225)の段階で、94例(97%)が陽性だった。・IgG抗体価の中央値は、3回目接種後に有意に増加し、440AU/mL(IQR:294~923)から2万5,468AU/mL(IQR:1万4,203~3万6,618、p

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ワクチン接種はコロナ重症化リスクを減らすか?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン接種は、COVID-19による入院ならびにCOVID-19入院患者の死亡/人工呼吸器装着への進行を有意に低下させる可能性が認められた。米国疾病予防管理センターのMark W. Tenforde氏らが、米国の21施設で実施した症例コントロール研究の結果を報告した。COVID-19ワクチン接種の有益性を包括的に理解するためには、ワクチン接種にもかかわらずCOVID-19を発症した人の疾患重症度が、ワクチン未接種者よりも低いかどうかを判断する疾患軽減について検討する必要があった。著者は、「今回の結果は、ワクチン未接種の場合と比較すればワクチン接種後のブレークスルー感染のリスクが低いことと一致している」とまとめている。JAMA誌オンライン版2021年11月4日号掲載の報告。死亡/人工呼吸器装着のデータがある入院患者4,513例について解析 研究グループは、2021年7月14日までに登録され、2021年3月11日~8月15日の期間に入院し、死亡と人工呼吸器装着の28日転帰に関するデータを入手できた成人4,513例について解析した。最終追跡調査日は2021年8月8日。 主要評価項目は、(1)COVID-19による入院(症例:COVID-19の診断で入院した患者、対照:他の診断で入院した患者)、(2)COVID-19で入院した患者の疾患進行(症例:死亡または人工呼吸器を装着した患者、対照:それらへの進行なしの患者)で、これらとワクチン接種との関連について多重ロジスティック回帰を用いて検討した。 解析対象4,513例の患者背景は、年齢中央値59歳(IQR:45~69)、女性が2,202例(48.8%)、非ヒスパニック系黒人23.0%、ヒスパニック系15.9%、また免疫抑制状態の患者20.1%などであった。COVID-19入院患者、疾患重症化はワクチン接種者で有意に低下 4,513例中、COVID-19入院患者が1,983例、他の診断による入院患者が2,530例であった。COVID-19入院患者1,983例のうち、84.2%(1,669例)がワクチン未接種者であった。 COVID-19による入院は、ワクチン接種より未接種と有意に関連しており(症例15.8% vs.対照54.8%、補正後オッズ比[aOR]:0.15、95%信頼区間[CI]:0.13~0.18)、SARS-CoV-2がアルファ株(8.7% vs.51.7%、0.10、0.06~0.16)、デルタ株(21.9% vs. 61.8%、0.14、0.10~0.21)でも同様に認められた。 また、この関連性は、免疫正常者(11.2% vs.53.5%、aOR:0.10、95%CI:0.09~0.13)のほうが、免疫抑制患者(40.1% vs.58.8%、0.49、0.35~0.69)より強く(p<0.001)、BNT162b2ワクチン(Pfizer/BioNTech製)接種後120日以降(5.8% vs.11.5%、0.36、0.27~0.49)のほうが、mRNA-1273ワクチン(Moderna製)接種後120日以降(1.9% vs.8.3%、0.15、0.09~0.23)より弱かった(p<0.001)。 COVID-19入院患者のうち2021年3月14日~7月14日に登録された1,197例において、28日までの死亡または人工呼吸器装着は、ワクチン接種よりワクチン未接種に有意に関連していた(12.0% vs.24.7%、aOR:0.33、95%CI:0.19~0.58)。

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HER2陽性大腸がんのトラスツズマブ デルクステカン第II相試験最終解析 (DESTINY-CRC01)/ 日本癌治療学会

 HER2陽性大腸がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の多施設共同第II相試験DESTINY-CRC01の最終解析が第59回日本癌治療学会学術集会で発表された。中間解析に引き続き、良好な成績が示されている。 転移のある大腸がんのうち、HER2陽性腫瘍は2~3%と少ない。また、標的治療は承認されておらず、薬物治療の主体はいまだに化学療法である。そのような中、T-DXdは中間解析で良好な結果を残していた。・対象:2次治療以上の治療歴を有するHER2陽性切除不能・転移大腸がん患者78例 コホートA(53例):HER2 IHC3+またはIHC2+/ISH+ コホートB(15例):HER2 IHC2+/ISH- コホートC(18例):HER2 IHC1+・介入:T-DXd 6.4mg/kg 3週ごと・評価項目:[主要評価項目]コホートAでの独立中央判定による確定奏効率(confirmed ORR)[副次評価項目]ORR(コホートBとC)、病勢制御率(DCR)、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性と忍容性 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は、コホートA 62.4週、コホートB 27.0週、コホートCは16.9週であった。・独立中央判定によるconfirmed ORRは、コホートA 45.3% 、コホートBとコホートCはともに0%であった。 ・DCRは、コホートA 83.6%、コホートB 60.0%、コホートCは22.2%であった。・DoRは、コホートA 7.0ヵ月、コホートBとコートCはともに評価不能であった。 ・PFS中央値は、コホートA 6.9ヵ月、コホートB 2.1ヵ月、コホートCは1.4ヵ月であった。・OS中央値は、コホートA 15.5ヵ月、コホートB 7.3ヵ月、コホートCは7.7ヵ月であった。・安全性は従来のT-Dxdの報告と一貫しており、主なものは低Gradeの消化器系の有害事象であった。 ・間質性肺炎/肺臓炎の発現は全Gradeで9.3%、Grade5は3.5%であった。 T-DXd(6.4mg/kg 3週ごと)は、長期追跡においても、HER2陽性大腸がんに対し良好な抗腫瘍活性と持続性を示していた。発表者である近畿大学の川上 尚人氏は、この探索的研究の結果は、HER2陽性の転移を有する大腸がんへのT-DXdの有用性を引き続き支持するものだと述べている。

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5~11歳へのファイザー製ワクチンの安全性と有効性~第II/III相試験/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の5~11歳への投与(21日間隔で10μgを2回投与)は、安全で、免疫原性を有し、有効率も約91%と高いことが示された。米国・Duke Human Vaccine InstituteのEmmanuel B. Walter氏らによる、5~11歳を対象とした第I相および進行中の第II/III相の無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2021年11月9日号で発表された。第I相で投与量を10μgに、第II/III相で有効率を評価 第I相無作為化試験は2021年3月24日~4月14日に米国内4地点でスクリーニングをして包含した5~11歳の48例を対象に行われた。1対1対1の割合で3群に無作為に割り付け、BNT162b2ワクチン10μg、20μg、30μgをそれぞれ投与し、安全性と免疫原性の所見から適切な投与量を決定した。 そのうえで、2021年6月7日~19日に計2,316例の5~11歳児についてスクリーニングを行い第II/III相無作為化試験を開始。対象児を2対1の割合で2群に割り付け第I相試験で同定した投与量のBNT162b2ワクチンまたはプラセボを投与し、有効率などを検証した。 BNT162b2ワクチン2回投与後1ヵ月の免疫応答を、16~25歳を対象に30μgを投与した主研究とイミュノブリッジングし、免疫原性データから有効率を推測した。COVID-19に対するワクチン有効率は、BNT162b2ワクチン2回投与後7日以降について評価した。5~11歳児2,268例を中央値2.3ヵ月追跡 第I相試験の反応原性と免疫原性に基づき、5~11歳への投与量は10μgが選定された。 第II/III相試験では、5~11歳児2,268例が無作為化され、BNT162b2ワクチン(10μg、1,517例)、またはプラセボ(751例)を、21日間隔で投与された。2021年9月6日のカットオフ時点で、追跡期間中央値は2.3ヵ月だった。 他の年齢と同様5~11歳でも、安全性プロファイルは良好で、ワクチン関連の重篤な有害イベントは認められなかった。 ワクチン2回投与から1ヵ月後の、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)中和抗体価の、16~25歳群に対する5~11歳群の幾何平均比は1.04(95%信頼区間[CI]:0.93~1.18)で、事前に規定した免疫原性の成功基準(両側95%CIの下限値:0.67超、推定幾何平均比:0.8以上)を満たした。 2回投与後7日以降のCOVID-19の発症は、BNT162b2群3例、プラセボ群16例が報告された(ワクチン有効率:90.7%、95%CI:67.7~98.3)。

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糖尿病、心不全、CKDと拡大するダパグリフロジン/AZ・小野薬品

 アストラゼネカと小野薬品工業は、選択的SGLT2阻害剤ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が2021年8月25日に2型糖尿病合併の有無にかかわらず、わが国で初めて「慢性腎臓病(CKD)」の効能または効果の追加承認を取得したことを受けて、「国内における慢性腎臓病治療の新たなアプローチ -SGLT2阻害剤フォシーガの慢性腎臓病治療への貢献-」をテーマにメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、今回の追加承認のもとになった“DAPA-CKD STUDY”などの概要などが説明された。人工透析の医療費は年1.6兆円 セミナーでは、柏原 直樹氏(川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学 教授)を講師に迎え、「腎臓病の克服を目指して」をテーマに講演が行われた。 慢性腎臓病(CKD)の推定患者は、全国で約1,300万人と推定され、2017年時点での慢性透析患者数も約33万4,000人に上り、年間1.57兆円に上る医療費が人工透析に使用されている。CKDは加齢とともに増加し、高齢化社会の日本では腎機能症障害への対応は今後も大きな課題となる。 そこで、近年、腎疾患対策の推進のために厚生労働省は、全体目標として「CKDの早期発見・診断、良質で適切な治療の実施と継続」「重症化予防」「患者のQOLに維持向上」を掲げ、成果目標として2028年までに新規透析導入患者数を35,000人以下に減少させるという目標を謳っている。DAPA-CKD試験の概要 こうしたCKDの克服に期待されているのが治療薬である。今回、CKDへの効能または効果の追加承認を取得したダパグリフロジンは、DAPA-CKD試験でその効果が検証された。 本試験は、国際多施設共同試験として18歳以上の慢性腎臓病患者4,304例(うち日本人244例)を対象に行われ、対象患者をダパグリフロジン10mg群とプラセボ群に1:1に無作為に割付、標準治療に追加して1日1回経口投与した。主要複合エンドポイントは「eGFRの50%以上の持続的な低下、末期腎不全への進展、心血管死または腎臓死」のうち、いずれかのイベント初回発現までの期間で実施された。 その結果、32ヵ月時点での各エンドポイントの成績は以下の通りだった。・主要複合エンドポイントの累積発現率がプラセボ群で約20%だったのに対し、ダパグリフロジン群では約12%であり、ハザード比は0.61(95%CI:0.51、0.72)だった。・腎複合エンドポイントの累積発現率がプラセボ群が約17%だったのに対し、ダパグリフロジン群は約9%であり、ハザード比は0.56(95%CI:0.45、0.68)だった。・心血管複合エンドポイントの累積発現率がプラセボ群が約7%だったのに対し、ダパグリフロジン群は約6%であり、ハザード比は0.71(95%CI:0.55、0.92)だった。・全死亡までの期間の累積発現率がプラセボ群が約8.5%だったのに対し、ダパグリフロジン群は約5.5%であり、ハザード比は0.69(95%CI:0.53、0.88)だった。 また、サブグループ解析では、「糖尿病の有無」、「心不全の有無」、「腎機能低下例」、「IgA腎症」が行われた。 安全性としてダパグリフロジンでは、2,149例中で重篤な有害事象は594例(27.6%)が報告され、急性腎障害、肺炎、心不全、急性心筋梗塞、末期腎不全の順で多かったが、顕著な有害事象はなかった。 最後に柏原氏は、今回の適応拡大について私見としながら「ようやくわが国も世界に追いついた。今後既存薬の見直しの機運が上がる可能性がある。“DAPA STUDY”によりさらなる疾病の克服や患者への希望の共有がなされることを望む」と述べレクチャーを終えた。

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避けたいワクチン接種時のケアレスミス/厚労省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が全国で順調に行われ、満12歳以上への接種も始まり、3回目の接種についても細部が決まりつつある。また、インフルエンザの流行を控え、COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンの接種というケースも散見されるようになってきた。こうした環境の中ではワクチン接種時の事故は避けたいものである。 厚生労働省は、令和3年9月30日までに報告された予防接種の間違いの概要をまとめた「新型コロナ予防接種の間違いの防止について(その3)」を10月29日に全国の自治体に発出し、注意を喚起した。 同省では、インフルエンザワクチンが多く接種される時期でもあり、これらの留意点を参考に、あらためて予防接種の手順を再確認することにより、間違いの発生防止とCOVID-19ワクチン接種の適切な実施に向けた取り組みを進めてほしいと記している。一番多い接種上の間違いは「接種間隔」1)間違いとして報告のあった回数(10万回当たり数)延べ接種回数163,738,220回のうち・間違い報告件数:1,805回(1.102)・重大な報告件数:739回(0.451)・上記以外の報告件数:1,066回(0.651)2)間違いの態様別の上位5つ(10万回当たり数)(1)接種間隔の間違い:526件(0.321)(2)接種器具の扱いが不適切:350件(0.214)(3)不必要な接種:246件(0.15)(4)血液感染を起こし得る間違い:170件(0.104)(5)接種量の間違い:99件(0.06)トレイを分ける、声を出すなどでミスを防ぐ COVID-19ワクチン接種の具体的な3つの事例と対策、これら問題の背景を下記に紹介する。〔事例1〕1日の同じ時間帯の中で、COVID-19ワクチンの接種と他のワクチンの接種の両方が行われていた。〔対策〕可能な限り、COVID-19ワクチンと他のワクチンを接種する曜日や時間帯を分ける。〔事例2〕次のようなさまざまな理由により、同一の診察室内に、COVID-19ワクチンと他のワクチンが持ち込まれ、接種者の手が届く範囲に複数種類のワクチンが置かれた。・同一の診察室で、新型コロナワクチンと他のワクチンの両方を接種している。・本来は、COVID-19と他のワクチンと接種用の診察室を分けていたが、院内の都合でCOVID-19ワクチン仕様になり他のワクチンが持ち込まれた。・本来は、ワクチンにより接種用の診察室を分けていたが、たまたま誘導員が間違えて誤った診察室に案内してしまった。〔対策〕1トレイに1種類(可能な限り、1トレイに1人分)のワクチンを準備することとし、診察室内において、接種者の手が届く範囲に異なる種類のワクチンを置かない。〔事例3〕接種者は、予診票の確認を行い他のワクチンの接種を受ける者であることを認識しながらも、無意識にCOVID-19ワクチンを手にとり接種してしまった。〔対策〕接種直前は一呼吸おき、接種者と被接種者とで接種するワクチン名を声に出して確認する。【間違いの背景】・同じ時間帯に新型コロナワクチンと他のワクチンの予約を受け付けており、物理的に患者が混在していた。・接種者の手が届く範囲に、複数の異なる種類のワクチンが置かれていた。・新型コロナワクチンの接種数が多く、接種に慣れてしまっていた(無意識、惰性で打ってしまった)。・接種者が、接種直前に接種するワクチン名を確認していなかった。※インフルエンザワクチンなどのバイアル製剤だけでなく、シリンジ製剤でも接種間違いは起こっている。

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中和抗体薬の発症抑制での投与時の注意など、コロナ薬物治療の考え方10版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、11月4日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第10版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、前回9版以降の新しい知見などの追加のほか、中和抗体薬カシリビマブ/イムデビマブに関しての追記が行われた。確認しておきたいカシリビマブ/イムデビマブの適用要件 主な改訂点は下記の通りである。抗ウイルス薬 レムデシビル 入手方法につき2021年10月18日より一般流通が開始されたこと。中和抗体薬 カシリビマブ/イムデビマブ【海外での臨床報告の追加】96時間以内に感染者と家庭内接触のあった被験者1,505例を対象としたランダム化比較試験で、カシリビマブ/イムデビマブの単回皮下投与により、発症に至った被験者の割合は、本剤群11/753例、プラセボ群59/752例であり、プラセボと比較し、発症のリスクが81.4%有意に減少。【発症抑制での投与時の注意点を追加】1)SARS-CoV-2による感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては下記のすべてに該当する者とされている。(1)SARS-CoV-2による感染症患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者、または無症状のSARS-CoV-2病原体保有者(2)原則として、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する者(3)SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者 このうち、(1)の「濃厚接触者」(例:同居家族、共同生活者に加え、高齢者施設や医療機関勤務者など)および(3)の「SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者」(例:ハイリスク患者のうち、免疫抑制状態[悪性腫瘍治療中、骨髄または臓器移植後、原発性免疫不全症候群など]にある患者など)は、中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。 なお、SARS-CoV-2の既感染やワクチン接種等により自己の抗体を有すると考えられる患者では中和抗体薬の必要性、有効性が低くなる可能性があると考えられるが、現時点ではその臨床的意義は必ずしも明らかではなく、国内で使用可能な抗体検査薬は承認されていないため、今後の知見が待たれる。 本稿の詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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小児市中肺炎、退院後の経口アモキシシリン投与量と期間/JAMA

 救急部門または入院病棟から退院(48時間以内)した市中肺炎の小児患者において、外来での経口アモキシシリン投与は、低用量群は高用量群に対して、また3日間群は7日間群に対して、いずれも非劣性であることが示された。英国・ロンドン大学セントジョージ校のJulia A. Bielicki氏らが、患児824例を対象に行った多施設共同2×2要因デザイン非劣性無作為化試験の結果を報告した。なお著者は、「今回の試験結果の解釈については、重症度、治療環境、抗菌薬投与歴、非劣性マージンの受容性について考慮する必要がある」と指摘している。JAMA誌2021年11月2日号掲載の報告。英国28ヵ所、アイルランド1ヵ所で小児824例を対象に試験 研究グループは、英国28ヵ所、アイルランド1ヵ所の医療機関を通じ、市中肺炎の臨床診断を受け、救急部門・入院病棟からの退院後に外来でアモキシシリン治療を受けた月齢6ヵ月以上の小児824例を対象に試験を行った。 被験児を、アモキシシリン低用量(35~50mg/kg/日、410例)、または高用量(70~90mg/kg/日、404例)投与群と、両群について投与期間を3日間(413例)、7日間(401例)とする群に、それぞれ無作為化した。 主要アウトカムは、無作為化後28日以内の、呼吸器感染症に対する抗菌薬再投与(非劣性マージン8%)。副次アウトカムは、保護者の9項目の市中肺炎症状の報告に基づく重症度/期間、3項目の抗菌薬関連有害事象、肺炎球菌分離株のコロニー形成における表現型耐性などだった。重症市中肺炎児の再投与発生率も有意差なし 被験児824例が4群のいずれか1群に無作為化され、814例(年齢中央値2.5歳[IQR:1.6~2.7]、男児421例[52%])が少なくとも1回の試験薬投与を受けた。主要アウトカムは789例(97%)で入手できた。 低用量群vs.高用量群の主要アウトカムの発生率は12.6% vs.12.4%(群間差:0.2%[片側95%信頼区間[CI]:-∞~4.0])、3日間投与群vs.7日間投与群の同発生率はともに12.5%だった(0.1%[-∞~3.9])。投与量、投与期間ともに非劣性が示され、投与量と投与期間に有意な交互作用は認められなかった(p=0.63)。 事前に規定した14項目の副次アウトカムのうち、有意差が認められたのは、3日間投与群vs.7日間投与群の咳症状の期間(それぞれ、中央値12日vs.10日、ハザード比[HR]:1.2[95%CI:1.0~1.4]、p=0.04)と、咳による睡眠障害の期間(中央値4日vs.4日、HR:1.2[95%CI:1.0~1.4]、p=0.03)だった。 また、サブグループ解析での重症市中肺炎児の主要アウトカム発生率も有意差は示されなかった。低用量群17.3% vs.高用量群13.5%(群間差:3.8%[片側95%CI:-∞~10]、交互作用に関するp=0.18)、3日間投与群16.0% vs.7日間投与群14.8%(1.2%[-∞~7.4]、p=0.73)だった。

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子供へのマスクはどうするの?疑問に回答/成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は社会生活を混乱させただけでなく、子供たちの日常も奪った。12歳未満の子供にはCOVID-19ワクチンの接種も、現在わが国ではできないことから、今後の感染の増加について子供の保護者や学校関係者などは危惧をしている。また、この時期に妊娠した妊婦は情報が少ない中での生活に不安を抱えている。 こうした不安や心配の声に応えるべく国立成育医療研究センター(理事長:五十嵐 隆氏)は、11月5日に同センターのホームページに「コロナ禍の今、あらためて伝えたいお子さんと妊婦さんのためのQ&A」を公開し、COVID-19やそれ以外の感染症対策や症状、こころの問題について、情報発信を開始した。感染症、精神、耳鼻咽喉、産科のエキスパートが回答するQ&A このQ&Aでは、大きく4つの分野について、同センターの専門医が解説し、回答を行っている。 主な質問項目は次のとおり。【感染対策について】(感染症科)・コロナ禍になって2年。これまでのデータから分かるコロナウイルスについて教えてください(症状や感染対策、変異株、コロナ初期と変わったことなど)・マスクができない子どもへの感染症対策はどうすればいいですか?・医療的ケア児の感染対策で、特に気を付けた方がいいことはありますか?・子どものワクチン接種について教えてください(安全性や副反応、リスクについて、インフルエンザワクチンと一緒に打っていい?)・デルタ株で子どもの感染者も増えていましたが、子どもでも重症化するのでしょうか?【こころについて ~子どもとご家族~】(こころの診療部)・友達と話せなかったり、自由に外で遊べなかったり、コロナ禍のストレスは子どもの心に将来的にどんな影響を及ぼしますか?・フィジカルディスタンスやマスクを常につける生活で、子どもとのコミュニケーションがうまく取れないこともあります。どうしたらいいですか?・子どもが新型コロナウイルスをとても怖がっています。どうしたらいいですか?・子どもがコロナ太りを気にしてあまりご飯を食べてくれません。どうしたらいいですか?・保護者の不安やストレス解消法について教えてください【身体について】(眼科、耳鼻咽喉科)・オンライン授業になったり、また、ゲームをするためにスマホやタブレットばかり見ています。子どもの視力などに影響はありませんか?・子どもが部屋でゲームをするときなど、イヤホンを長時間使っています。聴力への影響はありますか?【妊婦さんについて】(妊娠と薬情報センター)・妊婦、また授乳中のワクチン接種について教えてください。・今、妊娠しても大丈夫でしょうか? なお、Q&Aの情報は2021年11月現在の情報で公開している。

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治療薬にソトロビマブを追加した診療の手引き6版/厚労省

 11月2日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第6版」を公開した。 第6版の主な改訂点は以下の通り。【1 病原体・疫学】・変異株について、VUM(監視下の変異株)を追加・感染経路・エアロゾル感染について更新・国内/海外発生状況を更新【2 臨床像】・重症化リスク因子に日本COVIREGI-JPの解析を追加(入院時酸素投与が必要である割合のリスクと入院中の死亡率が高い基礎疾患)・小児の重症度について、日本小児科学会のレジストリ調査を追加・妊婦例の特徴について、日本産婦人科学会の調査を追加・症状の遷延(いわゆる後遺症)について、国内の調査を追加【3 症例定義・診断・届出】・血清診断について国立医薬品食品衛生研究所の報告を追加・世界のインフルエンザ流行状況を追加【4 重症度分類とマネジメント】・CPAP使用時の感染対策についての注意喚起を追加【5 薬物療法】・ソトロビマブ(商品名:セビュディ)について追加(9月27日に特例承認)・妊婦に対する薬物療法を追加・国内で開発中の薬剤について整理【6 院内感染対策】・マスクのJIS規格を追加・職員の健康管理についてワクチンの効果を追加

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ミュー変異株、ワクチン接種者が持つ中和抗体にきわめて高い抵抗性/NEJM

 新型コロナウイルスの注目すべき変異株の1つであるミュー株(B.1.621系統)が、新型コロナウイルスに感染した人およびワクチン接種した人の血清に含まれる中和抗体に対し、きわめて高い抵抗性を示したことが明らかになった。本結果は東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究によるもので、NEJM誌オンライン版2021年11月3日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 ミュー株の発生源はコロンビアで、最初に分離されたのは2021年1月11日。2021年8月30日時点で南米諸国など39ヵ国から検出されている。 本試験では、ミュー株のスパイクタンパク質を有するシュードウイルス*と、従来株の新型コロナウイルスに感染した人の回復後の血清(13例)、およびファイザー製ワクチン接種を完了した人の血清(14例)を用いた中和試験を実施。その結果、ミュー株は従来株に比して、感染者が持つ中和抗体に対して10.6倍、ファイザー製ワクチン接種者が持つ中和抗体に対して9.1倍の抵抗性を示した。これにより、ミュー株はベータ株よりも高い抵抗性を有する、既存の変異株の中で最も抵抗性の高い変異株であることが明らかとなった。*新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を被り、レポーター遺伝子を保有する擬似ウイルス ただし、研究者らは「本結果が“ワクチンが効かない”ことを短絡的に意味するものではないことに留意すべき」と注意を促すとともに「ワクチン接種の効果は、血液中に中和抗体を産生させることだけが目的ではない。ワクチンは、血液中への中和抗体の産生だけではなく、細胞性免疫や免疫の記憶を構築することにより、複合的に免疫力を獲得するために接種するもの。中和抗体が充分な効果を発揮できないとしても、ワクチン接種による感染予防効果、重症化を防ぐ効果は、ミュー株に対しても十分に発揮されるものと思われる」としている。

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統合失調症における呼吸器系疾患の有病率~メタ解析

 統合失調症患者は、死亡リスクが高く、その主な原因は呼吸器系疾患であるにもかかわらず、有病率などの調査は十分に行われていない。オーストラリア・クイーンズランド大学のShuichi Suetani氏らは、統合失調症患者における呼吸器系疾患の有病率を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Schizophrenia Research誌オンライン版2021年9月11日号の報告。統合失調症患者の呼吸器系疾患の有病率は有意に高かった 2020年4月27日までに公表された統合失調症患者(可能であれば対照群を含む)の呼吸器系疾患について調査した研究を、主要な電子データベースより検索した。分析では、ランダム効果メタ解析を実施した。 統合失調症患者における呼吸器系疾患の有病率を分析した主な結果は以下のとおり。・引用文献1,569件中21件をメタ解析に含めた。対象数は、統合失調症患者61万9,214例、対照群5,215万9,551例であった。・統合失調症患者は、対照群と比較し、COPD(オッズ比[OR]:1.82、95%CI:1.28~2.57)、喘息(OR:1.70、95%CI:1.02~2.83)、肺炎(OR:2.62、95%CI:1.10~6.23)の発症率が有意に高かった。・統合失調症患者の主な呼吸器系疾患の有病率は、以下のとおりであった。 ●COPD:7.7%(95%CI:4.0~14.4) ●喘息:7.5%(95%CI:4.9~11.3) ●肺炎:10.3%(95%CI:5.4~18.6) ●結核:0.3%(95%CI:0.1~0.8)・出版バイアスで調整した後、統合失調症患者のCOPD有病率は、19.9%(95%CI:9.6~36.7)まで増加した。 著者らは「今回調査した呼吸器系疾患の有病率は、一般集団よりも統合失調症患者において有意に高かった。統合失調症患者の死亡リスクを軽減するためにも、呼吸器系疾患の予防やマネジメントの改善に焦点を当てる必要がある」としている。

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COVID-19の血栓症は本当の問題なのか?(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染は血管内皮細胞にも起こる。血管内皮細胞障害を介して深部静脈血栓症、脳血栓症などが増える。とくに、最初の武漢からのレポートでは入院例にヘパリンの抗凝固療法を施行していないこともあり、約半数の症例に静脈血栓イベントを認めたと注目された。米国、欧州などでは静脈血栓イベント予防のための低分子ヘパリンがルーチンになっていたが、それでも10~20%の症例に静脈血栓イベントを認めた。また、最近のランダム化比較試験にて静脈血栓の治療量を用いても、予防量投与時と重症化後には重篤な予後イベント発症率に差がないとされた。 本研究では症候性ではあるが外来症例が対象とされた。新型コロナウイルス感染の予後が血栓症により規定されているのであれば、従来確立された抗血栓療法である抗血小板薬アスピリン、抗凝固薬アピキサバンは有効なように思われる。考えられた仮説に対してランダム化比較試験による検証をするのが欧米人の偉いところである。登録された症例はPCR陽性、有症候性の40~80歳の男女であった。コントロール、アスピリン、予防量、治療量のアピキサバンの4群比較試験であった。死亡、血栓症などをエンドポイントとした実臨床ベースのランダム化比較試験であった。当初7,000例の登録を目標としたが、予想よりもイベントが著しく少なかったため、657例が対象になったときにDSMBの勧告により試験は中止となった。登録症例のうち22例が45日以内に肺炎にて入院となった。アスピリンまたはアピキサバンを服用した症例のうち、血栓イベントなどの有効性1次エンドポントを発現したのは3例であった。136例のコントロールでの血栓イベントも1例にすぎなかった。 新型コロナウイルス感染の入院例にて血栓イベントが多かったことは事実であった。しかし、有症候であっても外来通院中の症例の血栓イベントは決して多くはない。新型コロナウイルス感染による血栓イベントのメカニズムの解明には本研究は大きく期待できた。しかし、コントロールの血栓イベントの少なさから考えると、アスピリンとアピキサバンの比較まで行うためには数万人の登録が必要と思われる。有症候であっても外来通院中の症例には必ずしも抗血栓療法は必要ないらしい、くらいが本論文が示した結果と思う。

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やせ過ぎは尿路感染症の死亡の危険因子に/国立国際医療研究センター

 尿路感染症のために入院している患者は年間約10万人と推定され、高齢になるほど患者は増え、90歳以上では1年間で100人に1人が入院し、その入院医療費は年間660億円にのぼると見積もられている。その実態はどのようなものであろう。 国立国際医療研究センターの酒匂 赤人氏(国府台病院総合内科)らは、東京大学などとの共同研究により、尿路感染症で入院した23万人の大規模入院データをもとに、尿路感染症による入院の発生率、患者の特徴、死亡率などを明らかにすることを目的に調査を行い、今回その結果を発表した。 その結果、年間約10万人が入院し、患者平均年齢は73.5歳で、女性が64.9%を占め、入院中の死亡率は4.5%だった。また、年代や性別にかかわらず、夏に入院患者が多く、冬と春に少ないという季節変動がみられた。23万人のデータを解析【研究の背景・目的】 尿路感染症は敗血症やDIC(播種性血管内凝固症候群)といった重篤な状態に至ることもあり、死亡率は1~20%程度と報告され、高齢、免疫機能の低下、敗血症などが死亡の危険因子だと言われているが、日本での大規模なデータはなかった。わが国の大規模入院データベースであるDPCデータを利用し、尿路感染症による入院の発生率などを明らかにすることを目的に研究を行った。【方法】 DPCデータベースを用い、2010~15年に退院した約3,100万人のうち、尿路感染症や腎盂腎炎の診断により入院した15歳以上の患者23万人のデータを後ろ向きに調査(除く膀胱炎)。年間入院患者数を推定し、患者の特徴や治療内容、死亡率とその危険因子などを調査した。【結果】・患者の平均年齢は73.5歳、女性が64.9%を占めた・年代や性別にかかわらず、夏に入院患者が多く、冬と春に少ないという季節変動がみられた・尿路感染症による入院の発生率は人口1万人当たりで男性は6.8回、女性は12.4回・高齢になるほど入院の発生率が高くなり、70代では1万人当たり約20回、80代では約60回、90歳以上では約100回・15~39歳の女性のうち、11%が妊娠していた・入院初日に使用した抗菌薬はペニシリン系21.6%、第1世代セフェム5.1%、第2世代セフェム18.5%、第3世代セフェム37.9%、第4世代セフェム4.4%、カルバペネム10.7%、フルオロキノロン4.5%・集中治療室に入ったのは2%、結石や腫瘍による尿路閉塞に対して尿管ステントを要したのは8%だった・入院日数の中央値は12日で、医療費の中央値は43万円・入院中の死亡率は4.5%で、男性、高齢、小規模病院、市中病院、冬の入院、合併症の多さ・重さ、低BMI、入院時の意識障害、救急搬送、DIC、敗血症、腎不全、心不全、心血管疾患、肺炎、悪性腫瘍、糖尿病薬の使用、ステロイドや免疫抑制薬の使用などが危険因子だった尿路感染症の死亡の危険因子で体型が関係 今回の調査を踏まえ、酒匂氏らは次のようにコメントしている。「尿路感染症は女性に多いことが知られているが、高齢者では人口当たりの男性患者は女性と同程度であることもわかった。夏に尿路感染症が多いことが、今回の研究でも確かめられ、さらに年代や性別によらないことがわかった。また、冬に死亡率が高いこともわかった。一方で、なぜ季節による変化があるのかについてはわからず、今後の他の研究が待たれる。患者一人当たりの平均入院医療費は約62万円(日本全体で年間約660億円と推定)がかかっており、医療経済的な観点でも重要な疾患であることが確かめられた。尿路感染症には軽症から重症なものまであり、死亡率は1~20%とかなり幅があるが、今回の研究では4.5%だった。死亡の危険因子として、従来わかっている年齢や免疫抑制などのほかにBMIが低いことも危険因子であることがわかった。近年、さまざまな疾患で太り過ぎよりもやせ過ぎていることが体によくないということがわかってきたが、今回の研究でもBMI18.5未満の低体重ではそれ以上と比べて死亡率が高いことがわかった」。 なお、今回の研究にはいくつかの限界があり、内容を解釈するうえで注意を要するとしている。

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COVID-19アルファ株とデルタ株の組換え体を検出/感染研

 国立感染症研究所は、10月18日に同研究所のホームページでアルファ株とデルタ株の組換え体のウイルスを6体検出したと発表した。 この検体は8月12日~9月1日に採取された検体で、検体の遺伝子配列のアライメント解析を行ったところ、21A(デルタ)系統であるものの、ORF6遺伝子からN遺伝子にかけて、20I(アルファ、V1)系統と同一の変異プロファイルを有する配列が存在した。また、ORF6遺伝子とORF7a遺伝子の間に組換えが起きた箇所と考えられる部位が存在した。 遺伝子解読において、当該検体に2種類のウイルスが混入していた可能性を示す所見はなく、両変異株の同時感染や他検体の混入によるものではないと考えられる。 6検体の遺伝子配列はほぼ同一で、共通起源を有するウイルスと考えられ、デルタ株の部分は国内で流行するデルタ株由来と考えられ、組換えが生じた箇所はORF6遺伝子以降で、感染性・免疫逃避に影響が生じる箇所ではなく、デルタ株と比較して感染・伝播性や免疫等への影響が強くなる可能性はないと考えられるという。よって、現時点では、本組換え体による追加的な公衆衛生リスクはないと考えられるが、今後の動向に注意するとしている。 異なる系統間のSARS-CoV-2ウイルスの組換え事例については、英国から報告があるが、アルファ株とデルタ株の組換え事例はこれまで報告がなかった。 これらの遺伝子配列はすべてGISAIDに登録済みであり、当該ウイルスの分離に成功しており、現在配列の確認作業を行っているという。 研究所では、引き続きゲノムサーベイランスによる発生動向の監視を行っていくとしている。

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COVID-19に対する薬物治療の考え方 第9版公開/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、10月11日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第9版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、前回8版以降の新しい知見やエビデンスの追加のほか、抗ウイルス薬、中和抗体薬に関しての追記、とくにソトロビマブが新しく追加された。中和抗体薬の項目をさらに厚く解説 新しく改訂、追加された項目は下記の通り。【抗ウイルス薬】 レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液100mgなど)についてRCTの記載が追加。軽症肺炎例を対象にしたレムデシビル5日投与群、レムデシビル10日投与群、標準治療群の3群に割り付け、11日目の評価にて5日投与群は標準治療群と比較し有意に臨床的改善を認めた患者が多かったものの、10日治療群ではプラセボ群に比し有意差が認められなかった。また、入手方法についても、2021年10月18日より一般流通することが追加された。 ファビピラビル(商品名:アビガン錠200mg)については、海外での臨床報告が追加された。 インドで行われたRCTで、主要評価項目であるPCR陰性化までの期間の中央値がファビピラビル投与群で5日、標準治療群では7日だった(P=0.129)。また、副次評価項目である臨床的軽快までの期間の中央値が前者で3日、後者で5日(P=0.030)だった。 また、国内での臨床報告として発熱から10日以内の中等症I患者156例を対象としたプラセボ対照単盲検RCT(企業治験)では、主要評価項目(解熱、酸素飽和度改善、胸部画像改善、PCR陰性化の複合アウトカム)の達成がファビピラビル群で11.9日、プラセボ群で14.7日であった(P=0.0136)ことが追加された。【中和抗体薬】 新しく特例承認されたソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)が追加された。ソトロビマブはSARS(重症急性呼吸器症候群)に感染した患者から得られた抗体を基にしたモノクローナル抗体。少なくとも1つ以上の重症化リスク因子を持つ軽症COVID-19患者を対象とした第III相のランダム化比較試験では、中間解析においてソトロビマブ500mg単回投与群(291例)では、プラセボ投与群(292例)と比較して、主要評価項目である投与29日目までの入院または死亡が85%減少した(p=0.002)。また、重篤な有害事象は,ソトロビマブ投与群で2%、プラセボ投与群で6%と,ソトロビマブ投与群のほうが少なかった。・投与方法通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ソトロビマブ(遺伝子組換え)として 500mg を単回点滴静注する。・投与時の注意点カシリビマブ/イムデビマブ参照・入手方法本剤は、一般流通は行わず、厚生労働省が所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡される。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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ESMO2021レポート 肺がん

レポーター紹介2021年のESMOは、6月のASCO、8月のWCLCに続く9月開催ということもあり、肺がん領域では大きなインパクトのある発表はないと思われましたが、重要な試験のアップデート、EGFR-TKIや免疫チェックポイント阻害薬の耐性後の治療開発、希少ドライバー変異に対する新薬や、がん免疫療法の第III相試験など、新たな知見の報告が多くありました。今回はその中から、とくに実臨床や近い将来に影響すると思われる演題について概括します。WJOG9717L試験EGFR遺伝子変異陽性、未治療進行再発、非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、オシメルチニブを標準治療に、オシメルチニブ+ベバシズマブの優越性を評価した無作為化第II相試験である。活性型EGFR遺伝子変異タイプの割合や約2割の術後再発症例を含むなど、患者背景は同じ対象の過去の試験と同様であった。122例が登録され1:1に割り付けられた。主要評価項目は中央判定による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は主治医判定のPFS、全生存期間、奏効割合が設定されている。第1世代のEGFR-TKIであるエルロチニブにベバシズマブ(BEV)を併用することでPFS延長効果が第III相試験で示されており、オシメルチニブにBEVを併用することでPFSのさらなる延長効果に大きな期待が集まっていた試験である。BEV併用効果を示すことができなかった本試験の結果は、BEV併用群のPFS中央値22.1ヵ月、オシメルチニブ単剤群20.2ヵ月であった。生存曲線を見ると、治療開始早期から離れていたが24ヵ月あたりでほぼ重なってしまい、ハザード比0.862(95%信頼区間0.531~1.397)という結果だった。医師判定による結果も同様で、BEV併用群24.3ヵ月、オシメルチニブ単剤群17.1ヵ月であり、ハザード比0.801(95%信頼区間0.504~1.272)で差がなかった。サブ解析では、喫煙歴のある集団、del19の集団で併用群のPFSが良い傾向が認められた。奏効率は、BEV併用群82%、オシメルチニブ単剤群86%で同等であるが、Waterfall plotでは併用群は全例で縮小が認められた。しかし、血管新生阻害薬併用時に見られる腫瘍縮小の深さは見られなかった。有害事象で1つ興味深い結果があった。併用群でオシメルチニブに関連する肺臓炎発症頻度が少ないことである。オシメルチニブ単剤群18.3%、併用群3.3%であり、肺臓炎発症リスクを低減させる可能性が示唆される。この傾向は血管新生阻害薬併用の他試験でも見られている。本試験以外に、オシメルチニブにBEVを併用した試験は、T790M遺伝子変異陽性既治療症例を対象に実施された比較試験が2つあり(BOOSTER、WJOG8715L)、いずれも併用によるPFS延長効果を示すことができていない。血管新生阻害薬併用は単純ではなく、EGFR変異タイプ、胸水貯留や間質性肺炎の懸念など、使いどころを考える必要がある。DESTINY-Lung01試験HER2を標的としたADC(Antibody Drug Conjugate活性を:抗体薬物複合体)トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)の第II相試験である。本試験には、標的とするHER2の免疫染色による、HER2過剰発現、またはHER2遺伝子変異を対象とした2つのコホートがある。2020年のASCOでHER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん42例の中間解析結果が発表されたが、今回は91例の結果が発表された。主要評価項目は独立評価による奏効割合である。観察期間中央値は13.1ヵ月、年齢中央値60歳、36.3%に脳転移を有し、変異部位はキナーゼドメインが93.4%であった。ほぼ全例が標準治療を受けた既治療例で、HER2-TKI既治療例も一部いた。解析時、15例(16.5%)が治療継続していた。CR 1.1%を含む、54.9%の奏効割合、病勢制御率は92.3%。HER2変異部位、蛋白発現や遺伝子増幅レベル、TKI既治療の有無に関係なく奏効していた。PFS中央値は8.2ヵ月、生存期間中央値は17.8ヵ月で、標準治療後の成績として有望な結果である。有害事象において特筆すべきは間質性肺疾患(ILD)である。24例(26.4%)に薬剤関連のILDが発現し、多く(75%)はGrade1/2であるが、死亡2例(2.2%)を認めた。細胞傷害性抗がん剤がリンカーで結合している薬剤のため、30%を超える消化器毒性と骨髄抑制の発現があり、50%を超える嘔気と倦怠感が最も多い減量理由であった。RET阻害薬が最近承認され、KRAS阻害薬は承認申請中であり、希少ドライバー変異に対する分子標的治療薬が臨床に届き始めた。HER2を標的にする阻害薬はなく、この試験結果から間違いなく期待される薬剤であるが、リスクベネフィットを考慮する必要がある。本研究は発表と同時にNEJM誌に掲載されている。ZENITH20試験(コホート4)HER2エクソン20挿入変異陽性、未治療の非小細胞肺がんを対象にした、経口の汎HERチロシンキナーゼ阻害薬poziotinibの第II相試験である。EGFRとHER2のエクソン20の挿入変異は、非小細胞肺がんにおいてそれぞれ約2~4%に認められ、変異全体の約10%を占めている。またエクソン20挿入変異は既存のTKIに対して耐性を示すことが知られている。HER2エクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんに対し有効な治療はない。本試験には7つのコホートがあり、主に既治療・未治療、EGFR・HER2のそれぞれに対する有効性を検討している。今回のコホートでは、最初の48例にpoziotinib 16mgを1日1回経口投与、以後登録される被験者には8mgが1日2回投与された。年齢中央値は60歳で肺がん試験では比較的若い。未治療48例中21例が奏効し、奏効率43.8%(95%信頼区間:29.5~58.8)であり、主要評価項目を達成した。PFS中央値は5.6ヵ月、そのうち26%の症例はPFSが12ヵ月を超えて持続していた。有害事象は、下痢(83%)、口内炎(81%)、皮疹(69%)、爪囲炎(46%)が認められ、投与中断割合88%、減量割合77%で治療中止割合は13%、と既存の第2世代EGFR-TKIと同程度であり、毒性がやや強いと思われる。治療薬がないドライバー変異に対する新規治療として有効性を示しているが、初回治療成績として臨床的に意義のある有効性とは言い難い。IMpower010試験完全切除された術後IBからIIIA期(UICC第7版)の非小細胞肺がんで、術後化学療法を最大で4サイクル受けた患者を対象に、アテゾリズマブを16サイクル投与する試験治療を経過観察と比較した第III相試験である。PD-L1(SP263)発現陽性54.6%、EGFRまたはALK遺伝子陽性例14.9%が含まれていた。無病生存期間(DFS)を主要評価項目とした中間解析の結果がすでにASCO2021で発表されており、アテゾリズマブは経過観察に比べて、再発または死亡リスクを34%低下させた(ハザード比:0.66、95%信頼区間0.50~0.88)。ASCO、WCLCでの発表に続く今回は、再発の詳細と再発後の治療についての発表で、少しずつ試験の全貌が明らかになってきている。再発率は、PD-L1 TC 1%以上でII~IIIA期の集団で、アテゾリズマブ群29.4%、経過観察群44.7%であった。PD-L1発現を問わずII~IIIA期の全集団では33.3%と43.0%、ITT集団(IB~IIIA期)では30.8%と40.8%であった。再発形式は局所または遠隔のみ、その両方と中枢神経再発別で比較しているが、2群間で大きな差はない。再発形式は、PD-L1 TC 1%以上のII~IIIA期の集団で、局所領域のみの再発はアテゾリズマブ群47.9%、経過観察群41.2%、遠隔再発のみは38.4%と39.2%、局所と遠隔再発は12.3%と16.7%、中枢神経再発のみは11.0%と11.8%だった。PD-L1発現を問わずII~IIIA期の全集団やITT集団でも、再発形式、その割合はほとんど一緒であり、2群間に大きな差はなかった。無作為化から再発までの期間は、PD-L1 TC 1%以上のII~IIIA期集団でアテゾリズマブ群のほうが経過観察群より長く、中央値がそれぞれ、アテゾリズマブ群17.6ヵ月(0.7~42.3ヵ月)、経過観察群10.9ヵ月(1.3~37.3ヵ月)であった。また、同集団の再発形式別に見た再発までの期間は、いずれもアテゾリズマブ群のほうが長かった。しかし、無作為化されたII~IIIA期の集団やITT集団では、2群間の再発までの期間中央値は差が小さかった。再発後の治療においても外科治療、放射線治療、化学療法いずれも2群ともほとんど同じ割合であり、免疫療法を受けた割合は経過観察群(35.3%)で、アテゾリズマブ群(11.0%)より多かった。アテゾリズマブ群の再発に関しては経過観察群と比べて特徴のある因子はなく、局所から脳転移などの遠隔転移まで、満遍なく制御していることでDFS延長効果を示した結果であった。また、PD-L1発現50%以上の強発現集団では、DFSのハザード比は0.43と報告されている。現在、アテゾリズマブは術後化学療法に対して承認申請を行っている。本試験の観察期間中央値が32ヵ月であり、生存曲線もテイルプラトーが見られておらず、本当の意味での術後治療の有効性を見極めるためにはもうしばらく時間が要りそうである。IMpower010試験のデータは、Lancet誌に掲載されている。PACIFIC-R Real-World Study切除不能III期非小細胞肺がんを対象として、根治的同時化学放射線療法(CRT)後にデュルバルマブ維持療法を1年間投与する治療を、プラセボと比較して検証したPACIFIC試験のリアルワールドデータである。今年のASCO2021でデュルバルマブ投与による5年生存割合40%と長期生存改善効果が報告され、切除不能III期の予後を大きく改善しているが、試験データがこの1つしかない。良好な治療成績を示したPACIFIC試験だが、プラセボ群の治療成績も良い。そのため、試験に登録された対象全体が全身状態を含め条件の良い症例であると考えられ、患者背景もさまざまな実臨床で治験と同様の成績が証明できるのか疑問があった。この試験は、PACIFICレジメンの実臨床における有効性を後ろ向きに評価した観察研究である。11ヵ国、29施設から登録された1,399例が解析対象となった。患者背景は年齢中央値66歳、StageIIIA 43.2%、扁平上皮がん35.5%、CRT同時併用は76.6%、PD-L1≧1%は72.5%であった。放射線治療終了からデュルバルマブ投与までの期間中央値は56日、デュルバルマブ投与回数中央値22回、PFS中央値は21.7ヵ月で治験成績(16.9ヵ月)より良好であった。デュルバルマブ投与完遂率47.1%、有害事象による中止率16.7%、PDによる中止率26.9%も治験と同様であった。切除不能III期非小細胞肺がんに対するCRT後のデュルバルマブ維持療法の有用性は、リアルワールドでも裏付けられた結果といえる。CASPIAN試験進展型小細胞肺がんを対象に、プラチナ+エトポシドを標準治療とし、デュルバルマブの併用、デュルバルマブ+tremelimumabの併用をそれぞれ評価した第III相試験である。主要評価項目である全生存期間の延長効果がデュルバルマブの上乗せによって示され、肺がん診療ガイドラインで推奨されている。最近、Lancet Oncology誌に掲載された2年フォローアップ解析の生存データの報告も新しい。今回の発表では、追跡期間中央値39.4ヵ月の3年生存割合のアップデート結果が示された。進展型小細胞肺がんで3年生存まで解析するのは珍しい。報告された生存に関する解析では、両群のハザード比が0.71、95%信頼区間0.60~0.86、3年生存割合が試験治療群17.6%、標準治療群5.8%という結果で、生存曲線の開きを維持しつつ、3年生存率の差が3倍になりテイルプラトーも見られた。小細胞肺がんにおいても免疫チェックポイント阻害薬の上乗せによる長期生存効果が確認できたが、非小細胞肺がんと違い、有望なバイオマーカーがなく、開発に期待したい。CheckMate-743試験切除不能進行、未治療悪性胸膜中皮腫の1次治療に対して、ニボルマブとイピリムマブ併用療法の試験治療を、標準化学療法であるペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンと比較した第III相試験である。観察期間中央値29.7ヵ月で実施された事前指定の中間解析においてハザード比0.74(96.6%信頼区間:0.60~0.91、p=0.0020)と、ニボルマブとイピリムマブ併用療法による生存延長効果が示されているが、今回、観察期間中央値43.1ヵ月の3年長期生存結果と探索的バイオマーカーの解析結果が発表された。生存期間中央値は、ニボルマブとイピリムマブ併用群18.1ヵ月、標準治療群14.1ヵ月でハザード比0.73(95%信頼区間0.61~0.87)であった。3年生存割合は、23%と15%で、少しずつ年次生存率の差は小さくなっている。生存曲線はしっかり離れているがテイルプラトーは見え始めたような印象である。腫瘍組織のRNAシークエンスを用いてCD8A、STAT-1、LAG-3、PD-L1の4遺伝子の発現スコア、TMB、LIPI(Lung immune prognostic index、好中球/リンパ球比とLDHから算出される)と生存の関連が解析された。ニボルマブとイピリムマブ治療を受けた集団において、4遺伝子の発現スコアが高い集団で生存が良かった(21.8ヵ月vs.16.8ヵ月)。一方、化学療法群ではスコアによって生存に差がなかった。TMBやLIPIスコアに関係なく、ニボルマブとイピリムマブ群の生存が良い傾向が示された。WJOG9616L試験PD-1(L1)抗体が有効であった進行再発非小細胞肺がんに対して、ニボルマブ投与の有効性を検討した第II相試験である。主要評価項目は奏効割合、副次評価項目は無増悪生存期間、全生存期間などとなっている。標準治療を受けた既治療進行肺がんでは、前治療で奏効が得られた抗がん剤の再投与による治療は、比較的広く受け入れられている。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の再投与の有効性は、症例報告で散見されている程度である。対象は、CR、PRもしくは6ヵ月以上のSDの臨床的有効性が得られ、その後に増悪し、最終投与から60日以上経過している61症例で、59例で有効性が解析された。奏効割合は8.5%、無増悪生存期間中央値2.6ヵ月、全生存期間中央値は11.0ヵ月だった。診断時のPD-L1発現や前治療ICIの効果(41例がCRまたはPR)と有効性は関連性がなかった。ICI無効後のリチャレンジの有効性はない結果となったが、irAEなどで中止後の再投与とは違うと思われる。おわりに今回取り上げた演題以外にも知っていただきたい発表がたくさんありますが、臨床に反映できる内容が良いと考えて演題を選び概括させていただきました。まずはこのレポートが、多くの先生方に読んでいただき、今の臨床に役立つ内容になっていれば幸いです。

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