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Dr.ゴン流ポケットエコー簡単活用術

第1回 心臓へのアプローチと評価第2回 肺・下大静脈・下肢へのアプローチと評価第3回 腹部へのアプローチ第4回 腹部の評価(1)第5回 腹部の評価(2)第6回 心肺エコー鑑別法とUB-FAST第7回 医学的管理・処置への活用法第8回 在宅医療でのポケットエコー活用法 日常診療に手軽に使えるポケットエコーが普及しつつあります。ポケットエコーを身体所見の一部として、体の中を診る聴診器のように活用することで、在宅をはじめ、救急、外来、病棟などあらゆるシーンでの診療スタイルが大きく変わることでしょう。ポケットエコーの上達のコツは繰り返し練習すること。失敗しても「なんくるないさ~(なんとかなるさ)!」の精神で、何度もチャレンジしてください。様々な活用術を網羅したこの番組を参考にして、あなたもポケットエコーの名人に!第1回 心臓へのアプローチと評価心臓を胸骨左縁と心尖部からアプローチする方法について、プローブの実演とエコー画像の2画面を用いてわかりやすく解説します。ポケットエコーは肋間などの狭い窓から体内を観察するのに適しています。その特徴を生かしたDr.ゴン流のアプローチ方法・ポイントは必見です。さらに心エコー像評価の基本となる左室機能、弁膜疾患、右心系の評価方法を、実際の症例を用いて解説します。第2回 肺・下大静脈・下肢へのアプローチと評価肺炎・心原性肺水腫・関節性肺炎など、代表的な肺疾患のエコー像を提示し、鑑別のポイントを指導します。さらに8カ所測定で行うポケットエコーの定量的評価の具体的なテクニックを実演。実際の症例を用いた評価方法と、肺・下大静脈・下肢へアプローチするわかりやすい実演を見れば、そのテクニックが確実に実に付きます。第3回 腹部へのアプローチ通常のエコー走査とは異なるポケットエコーならではの腹部アプローチを指南します。ポケットエコーではその特性上、距離の近い胆嚢が見えにくいのですが、通常目印にする胆嚢の検出にこだわらないのがDr.ゴン流。上腹部の走査方法を手元のプローブの実演とエコー画像の2画面を用いてわかりやすく説明します。さらに肋間~下腹部も合わせて、腹部への全体的なアプローチ方法を解説します。第4回 腹部の評価(1)腹部疾患の代表的なエコー画像をたっぷりと提示し、その画像の読み方・ポイントをお教えします。臓器が複雑に絡み合う腹部。臓器ごとの代表的な疾患の鑑別方法、ポケットエコー画像での特徴などを詳細に説明してきます。これだけのたくさんの症例を知っておけば、画像診断に自信がつくことでしょう。第5回 腹部の評価(2)卵巣腫瘍や妊娠の判別、腹部大動脈流もポケットエコーで観察することができます。ポケットエコーで検査をするときに大切なのは症状と理学所見を頭に置くこと。今回もたっぷりご紹介する代表的な腹部疾患鑑別の特徴を知っておくと、診断に役立つこと間違いなしです。第6回 心肺エコー鑑別法とUB-FAST呼吸困難の患者に対して行う心肺エコー鑑別法と熱発の原因検索に有効なUB-FAST法。臨床現場で実際に行っているゴン先生の、実演と演習を交えた解説はとても簡潔明瞭です。これまで学んできたアプローチ法や評価法を統合したこの2つの手法をぜひ覚えて、実践に役立ててください。第7回 医学的管理・処置への活用法胃瘻の管理やドレナージの処置をする際にもポケットエコーは有用です。すでに習った左肋骨弓下走査で胃瘻交換後のカテーテルの位置や形状を確認したり、ドレナージ可能箇所をエコーでチェックすることができます。手軽に使えるポケットエコーを活用し、より安全・正確な処置を学んでください。第8回 在宅医療でのポケットエコー活用法最終回はゴン先生の訪問診療に密着します。患者さんに対するエコー検査についての説明、ご家族への検査準備のお願い、検査の実施、そして結果の説明。在宅医療の現場でどのようにポケットエコーを使い役立てるのか?第7回までに学んだポケットエコーのテクニックを、ゴン先生のように、ぜひ臨床現場で生かしてください。

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急性喉頭蓋炎を風邪と診断して死亡に至ったケース(2)

救急医療最終判決判例時報 1510号144-150頁概要発熱、喉の痛みを主訴に内科開業医を受診した45歳男性。急性気管支炎、扁桃腺炎と診断して解熱鎮痛薬などを投与した。帰宅後状態は改善せず息苦しくなり、薬も喉をつかえて飲み込むことができないため約2時間後に再度受診、ネブライザーなどの処置が行われた。しかし、病状は急激に進行性のため救急センターへの転院を手配し、約10分後に到着したものの、その時点で心肺停止状態。救急蘇生には反応せず、死亡確認となった。詳細な経過患者情報45歳男性経過1986年5月8日17:3045歳男性、3日前からの37℃程度の発熱、喉の痛み、易疲労感を主訴に救急指定の内科開業医を受診。診察の結果、体温37.0℃、扁桃腺が赤く腫れていたが、呼吸音には異常はなく、急性気管支炎、扁桃腺炎と診断し、扁桃へのルゴール®塗布、解熱消炎薬プラノプロフェン(商品名:ニフラン)などの内服を3日分投与し帰宅させた。19:30帰宅後も症状は改善せず、薬も喉をつかえて飲み込めず、息が苦しくなり、妻が開業医へ電話したところ、看護師からすぐに来院するようにいわれた。19:55再度診察。問診に対し「息苦しい」と答えるのがやっとであり、聴診の結果弱い乾性ラ音を聴取した。呼吸は荒く起座呼吸であったので、ネブライザー(イソプレナリン 同:アスプール2mL、チロキサポール 同:アレベール1mL)吸入をしたが改善なし。そのため肺水腫、咽後膿瘍、喉頭浮腫などの重篤な疾患を疑い、救急センターへの転院を手配した。その際、救急車の利用は時間がかかる恐れがあったので、妻の運転する乗用車で搬送することにし、担当医は自ら自動車を運転して同行した。20:25約10分で救急センターに到着。搬入時意識はなく心肺停止状態。ただちに気管内挿管などの救急蘇生術が行われたが効果なし。21:30死亡確認。当事者の主張患者側(原告)の主張1.呼吸困難、起座呼吸の患者に対し、十分な問診・全身状態の観察を行わなかった2.咽頭や喉頭を喉頭鏡などを用いて観察しなかったため重症度・緊急度を判断できず、放置すれば搬送中に気道閉塞・窒息する危険があることを予知できなかったその結果、自ら気管内挿管を行うか、救急車に同上して気道確保の措置をするべきであったのに、漫然と患者を搬送させたために死亡に至った。病院側(被告)の主張1.救急車を呼んで搬送するよりも、ただちに自家用車で出発したほうが救急センターへの到着が早いと判断したのは、医師の裁量範囲に属することである2.内科医師に耳鼻咽喉科医師が扱う間接喉頭鏡や喉頭ファイバースコープの使用を期待するのは医療水準を越えている3.当時喉頭展開用の喉頭鏡はあったが、人的物的設備を備えていない状況では使用困難であった4.独歩で来院し、意識障害やチアノーゼがない患者が、その後30分以内に喉頭浮腫による気道閉塞・窒息となることを予見するのは不可能であった裁判所の判断2回目の受診の際に、呼吸困難を訴える患者に当然要求される診察(呼吸、脈拍、血圧、意識状態やチアノーゼの有無など)を怠ったため、患者の重症度や緊急性の判定ができず、呼吸困難の急激な進行により窒息状態に陥る可能性を予見できなかった注意義務違反がある。しかも、気道確保の準備をして救急車を要請し自ら同乗していれば救命の可能性があったため、死亡という結果に対する過失があるといわざるを得ない。原告側合計1億2,009万円の請求に対し、7,282万円の判決考察このケースは前出の「急性喉頭蓋炎を風邪と診断して死亡に至ったケース(1)」と同様、一見「単なる風邪だろう」という印象を受けても、なかには急激に死亡に至るきわめて危険なケースがあることを示す教訓的な事例だと思います。本件の担当医師は、「自分の手には負えない」ということを察知して救急センターに電話を入れ、受け入れ体制を確認したところまでは適切でしたが、救急車を要請しなかった点が最大の問題点でした。もし、その当時ほかの患者さんが大勢待っていて、医院を空けることがためらわれたのであればまだしも、わざわざ自らの自動車を運転して「一刻も早く患者を救急センターに転送するため、患者の妻が運転する自動車のあとを追尾した」ということでしたので、どちらかというととても親切な医師という印象さえ受けます。しかし、せっかく患者に付き添って転送するのであれば、自家用車で搬送するよりも救急車を要請した方が酸素、吸引装置などの設備の面からいって有利なのはいうまでもありません。そして、もし救急車を要請して自らが気管内挿管などの救急蘇生を行っていれば、たとえ最悪の結果になろうとも、これほど高額の判決には至らなかった可能性が考えられます。今回のケースから得られる教訓としては、(1)一見風邪と思われる症例にも、急死に至る危険なケースが含まれていること(2)患者を搬送する場合には、可能な限り救急車を要請することと思われます。救急医療

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Vol. 2 No. 2 心房中隔欠損症の最新治療戦略

赤木 禎治 氏岡山大学病院循環器疾患集中治療部はじめに国内におけるAMPLATZER® Septal Occluderを用いた心房中隔欠損症(atrial septal defect:ASD)に対するカテーテル治療は、治療症例数が3,500例を超え、成績も安定してきた。治療経験が増加していく中で、開始当初の小児を中心とした治療対象から、成人さらに高齢者までの幅広い年齢層が治療対象になってきた。本症は年齢によってその臨床像が大きく異なるため、特に成人期の患者では不整脈を中心とした心合併症に対する対応が重要となる。カテーテル治療に伴う合併症も報告されており、治療適応と合併症に対する知識と対応策を十分に理解しておく必要がある。カテーテル治療では経食道エコーを主体とする心エコー図の役割は極めて大きく、治療の安全な実施と確実な成功を直接左右する要素となる。心房中隔欠損症に対するカテーテル治療の歴史AMPLATZER® Septal Occluderはニッケル・チタン合金からできた形状記憶合金(Nitinol®)のメッシュで構成された円形の閉鎖栓である。金属メッシュ内部には血栓形成性を高めるポリエステル製の布製パッチが縫着されており、より速やかな完全閉鎖を導くことが可能である。閉鎖栓の末端は、ねじ状の接続部でデリバリーケーブルとつながっているため、閉鎖術中に閉鎖栓の位置を変更したり、カテーテル内に回収したりすることが可能である。日本への導入は欧米に比べ大幅に遅れたが、2005年に承認され2006年からは保険診療として収載された。2012年末までに国内での留置実績は約3,500例であり、年々症例数も増加している。国際的にはすでに10万例をはるかに超える実績があり、安定した治療成績が実証されている1)。海外にはこのほかにもゴアテックス膜とNitinol®ワイヤーから構成されるHELEX® Device、その改良型となるGORE® Septal Occluder、AMPLATZER®Septal Occluderと同じNitinol®メッシュで構成されるOcclutech®などさまざまなデバイスが存在する。カテーテル治療の適応基準AMPLATZER® Septal Occluderを用いたASDのインターベンション治療対象は、2次孔型心房中隔欠損症で、(1)欠損孔のバルーン伸展径が38 mm以下、(2)肺体血流比が1.5以上、(3)前縁を除く欠損孔周囲縁が5mm以上あるもの、または(4)肺体血流比が1.5未満であってもASDに伴う心房性不整脈や奇異性塞栓症を合併するもの、である。高度の肺高血圧を合併する例などASDの治療そのものが適応にならない場合は、インターベンション治療も適応とはならない。欠損孔の正確な部位診断と欠損孔周囲縁の評価には、経食道エコーによる評価が重要である2)。欠損孔周囲縁の評価で常に問題となるのは、大動脈周囲縁(前上縁)欠損例に対する適応判断である。経食道心エコー図で大動脈周囲縁が欠損した症例は、後述する心びらん穿孔を合併する可能性があるとして慎重な判断を要求されている。ただ、欠損孔の解剖学的特徴のみで、心びらん穿孔の発生をすべて説明することは困難である。また、大動脈周囲縁欠損は最も頻度の高いタイプであり、治療対象例の多くを占める。このような事実を踏まえ、2012年に米国FDAよりAMPLATZER® Septal Occluderの取扱説明書(instruction for use)の改訂が行われ、「前上縁欠損症例をカテーテル治療する場合には心びらん穿孔合併の発生に十分注意し、慎重なフォローアップを行うこと」という警告が表示されることになった。カテーテル治療の実際閉鎖術は、原則として全身麻酔下に施行する。サイジングバルーンを用いて欠損孔の伸展径を測定し、この径と同一もしくは1サイズ大きめの閉鎖栓を選択する。大腿静脈から左心房へ8~12 Fr(閉鎖栓の大きさで異なる)のデリバリーシースを挿入し、このデリバリーシース内に閉鎖栓を挿入し、留置部位までアプローチする。まず左心房側のディスクを開き、つづいて右心房側のディスクを開いて心房中隔の閉鎖を行う(図1)。それぞれのディスクが適切な位置で開いているかどうかを確認するためには、経食道エコーによるモニターが重要なポイントとなる。最近では、心腔内エコーによるガイド下に閉鎖術を施行する試みも行われている3)。 閉鎖栓が適切な位置に留置されたことが透視像および経食道エコーで確認されたら、デリバリーケーブルを回転させデバイスを離脱し、閉鎖術を終了する。閉鎖術後は抗血栓を目的に、アスピリンを6か月間服用する2)。心房性不整脈の合併などがなければ、ワルファリンなど抗血栓療法を用いる必要はない。図1 閉鎖術の実際画像を拡大するa. サイジングバルーンを用いて 欠損孔の伸展径の測定b. 左房側ディスクの展開c. 右房側ディスクの展開d. 留置形態が安定したのを確認して、ケーブルから離脱させる治療成績と合併症国内では、2012年末までに約3,500例のASDに対してカテーテル治療が実施されている。多くは小児期の患者であるが、80歳を超す高齢者まで幅広い年齢層で治療が実施されている。使用されたデバイスの平均径は17.5mmであり、30mmを超える閉鎖栓も数は限られるが使用されている。術中の急性期合併症として、留置術中のデバイスの脱落がある。脱落した閉鎖栓は経皮的、もしくは外科的に回収されている。また心びらん穿孔は術後72時間以内に発生する可能性の高い重要な合併症(発生率約0.2%)である。米国における外科治療との比較検討によるとカテーテル治療による重大な合併症(処置が必要な合併症)として、不整脈(心房細動や房室ブロック)、デバイスの脱落、脳血管塞栓症が報告されている4)。これら合併症の発生率は、外科手術の合併症発生率と比較し有意に低いものであったと報告されている。成人における心房中隔欠損症の特徴ASD患者の多くは、成人期までほとんど無症状に経過する。しかし、その生命予後は必ずしも良好であるとは限らない5)。未治療でも20歳までの自然歴は比較的良好であるが、30歳を過ぎると心不全死が増加し、生存率は急速に低下する。高齢者の卵円孔開存で明らかなように、欠損孔自体が加齢とともに拡大していくことも知られている。40歳以降には心房細動や心房粗動を合併する頻度が増し、それによって心不全が増強する6)。成人期ASD患者では、50代で15%、70代以降では60%以上と非常に高率に心房細動(atrial fibrillation:AF)を合併する。近年カテーテルアブレーションの技術が進歩しており、AFに対する肺静脈隔離術(pulmonary vein isolation:PVI)が一定の有効性を示している。このため、われわれはAFを合併したASD患者では、アブレーションの適応がある状態であればカテーテル閉鎖術に先立ってPVIを行い、再発がないことを確認して(通常3か月)、その後にASDのカテーテル閉鎖を実施している。一方、カテーテルアブレーションの適応とならない永続性AFの場合には、抗血栓療法を継続しながらASDのカテーテル治療を実施することができる。永続性AFを合併したASD患者においても、カテーテルによるASD閉鎖を行うことで、通常の成人症例と同様に有意な自覚症状の改善、BNP低下や心室のリモデリングが得られる7)。早期治療が重要であることに変わりはないが、AFが慢性化した病期においても、カテーテル治療は有用であり、積極的に考慮すべきである(図2)。図2 慢性心房細動患者に対するASDのカテーテル閉鎖術の効果画像を拡大する心房細動は継続しているが、ASDを閉鎖することでNYHA classは有意に改善する。肺高血圧合併例に対するアプローチ肺高血圧症はASDの約6~37%に認められ、予後、自覚症状、心房性不整脈発症に影響を及ぼす。一方でASD患者における肺高血圧の多くは非可逆性ではなく、閉鎖後にほとんどの症例において有意な肺動脈圧の低下が認められる。これまで、一般に肺血管抵抗が8~10単位以上の症例は、外科的閉鎖の禁忌とされてきた。しかしながら近年、エポプロステノール、シルデナフィル、ボセンタンなど肺高血圧に対する画期的な薬物治療が進歩しており、カテーテル治療を併用することにより、これまで治療の難しかった高度肺高血圧を合併した症例に対する治療適応の拡大が起こってくる可能性がある8)。高齢者に対するカテーテル治療の問題点高齢者ASDにおいて常に危惧される血行動態変化は、欠損孔閉鎖に伴う急性左心室容量負荷に対して、加齢のために拡張機能の低下した左心室がスムーズに対応できるかどうかである。実際にこれまでの閉鎖による急性期合併症として急性左心不全、肺水腫が懸念される。これはASD閉鎖による左室への急激な前負荷の増加に対し、左室が急性適応できないことが原因とされる。これらの疾患を有する症例や左心不全の既往がある症例において、われわれはSwan-Ganzカテーテルによる肺動脈楔入圧モニタリング下にASD閉鎖を施行している(図3)。術後術中のみならず術後急性期の管理も重要であるため、このようなハイリスク症例の術後は原則としてICU管理としている9)。図3 高齢者(82歳女性)ASDに対するカテーテル治療画像を拡大するa. 術前の胸部レントゲン像b. 左房側のディスクを開いたところ。36mmの閉鎖栓を留置している。c. 右房側のディスクを開いたところ。手技中は肺動脈楔入圧をモニターしている。d. 術後6か月の胸部レントゲン像特殊な心房中隔欠損症例(周囲縁欠損、多発性欠損)に対するカテーテル治療これまでのわれわれの検討から、従来カテーテル治療に適したと考えられていた心房中隔の中心部、あるいは欠損孔周囲縁がすべて5mm以上あるASDは治療対象全体の24%に過ぎず、多くの欠損孔は周囲縁の一部あるいは複数部の周囲縁が欠損していることがわかってきた(図4)。最も多いケースは大動脈側縁(前上縁)が欠損したタイプである。このような形態の欠損孔では、たとえ前上縁が欠損していても閉鎖栓が大動脈をまたぐように留置して閉鎖することが可能である(図5)。反対に、後縁が欠損したタイプでは、欠損した領域が小さい場合であれば閉鎖栓が心房壁を摘み上げるように留置され、閉鎖可能である。後下縁の欠損の場合も同様に、多くの場合は閉鎖栓の留置は可能であるが、広範囲な下縁欠損では留置を断念する症例も経験している。欠損孔が複数個存在する多発性欠損例では、欠損孔の位置関係、閉鎖栓の選択で慎重な判断が要求される。お互いの欠損孔が近接し(通常7mm以内)、1個の閉鎖栓で同時に覆うことが可能な場合には、1個の閉鎖栓を留置することで閉鎖可能である。しかしながら、それぞれの欠損孔が独立して存在する場合には、それぞれの欠損孔に別々の閉鎖栓を同時に留置して閉鎖する。さらにより多数の欠損孔がメッシュ状に存在する欠損孔の場合には、AMPLATZER® Cribriform Deviceを用いて、1個の閉鎖栓で同時にカバーすることも可能である。図4 カテーテル治療を実施したASD症例の欠損症周囲縁の評価(n=227)画像を拡大するすべての周囲縁が存在するのは全体の23%で、最も多い症例は大動脈周囲縁の欠損例である。図5a. 大動脈周囲縁欠損例の経食道心エコー図所見画像を拡大するb. 閉鎖栓留置後の所見。閉鎖栓が大動脈にまたがるように(Aサイン)留置されているのがわかる画像を拡大する心びらん穿孔(cardiac erosion)遠隔期合併症としては、閉鎖栓の脱落、不整脈や房室ブロックの合併などが報告されてきたが、最も注目されているのはデバイスに起因する心臓壁のびらん穿孔(erosion)の問題である10)。Aminらは、製造元のAGA Medical社に報告された合併症をもとにその成因を検討している。それによると28例中25例(89%)は大動脈側の辺縁(rim)が欠損していた症例であった。デバイスに起因するerosionで直接死亡した症例は断定されていないが、erosionそのものが全症例の0.1~ 0.2%に発生しているのは事実であり、慎重な対応が必要である。Erosion発生時期の多くは術後72時間以内である。術直後は穿孔に伴う胸痛、息苦しさなどの症状に注意し、さらに術後のエコー所見で心嚢液の貯留についての評価が重要である。Erosionを起こした症例は、欠損孔に対する使用デバイスのサイズが明らかに大きかったことが指摘されている。欠損孔に対して大きすぎるデバイスの選択・留置により(over sizing)、デバイスと心房壁の過度の圧迫、さらに大動脈壁との間の経時的な摩擦によって、心房もしくは大動脈壁の穿孔が起こるのではないかと推測されている。心房中隔欠損症に対するカテーテル治療の今後ASDに対する治療は、今後カテーテル治療が主流となることは間違いないと思われる。AMPLATZER® Septal Occluderは安全性が高くデバイスとしての完成度も高いが、今後より安定した治療効果が得られるような技術改善も期待される。カテーテル治療の場合、心腔内に金属異物を留置することが将来的な不整脈の原因となるのではないかとの危惧もあるが、これまでのわれわれの検討では、少なくとも成人期のASDでは、カテーテル治療は外科治療よりも術後の不整脈の発生率は有意に低いことが確認されている。カテーテル治療では、術後の不整脈の大きな原因である心房切開線を避けられることが大きな要因であると思われる。今後はカテーテル治療と外科治療の適応をどのように判断するかが主要なテーマになってくると思われる。成人例(特に高齢者)のカテーテル治療では、循環器内科医、心臓外科医、麻酔科医による同時に存在する併発症の管理、術後合併症の管理が重要であり、複数の領域にまたがる新しいチーム医療の構築が重要である。文献1)Akagi T. Catheter intervention of adult patients with congenital heart disease. J Cardiol 2012; 60: 151-159. 2)Oho S et al. Transcatheter closure of atrial septal defects with the Amplatzer Septal Occluder –A Japanese clinical trial–. Circ J 2002; 66: 791-794. 3)Kim NK et al . Eight-french intracardiac echocardiography: safe and effective guidance for transcatheter closure in atrial septal defects. Circ J 2012; 76: 2119-2123. 4)Du ZD et al. Comparison between transcatheter and surgical closure of secundum atrial septal defect in children and adults. J Am Coll Cardiol 2002; 39: 1836- 1844. 5)Murphy JG et al. Long-term outcome after the surgical repair of isolated atrial septal defect. N Engl J Med 1990; 323: 1645-1650. 6)Gatzoulis MA et al. Atrial arrhythmia after surgical closure of atrial septal defects in adults. N Engl J Med 1999; 340: 839-846. 7)Taniguchi M et al. Transcatheter closure of atrial septal defect in elderly patients with permanent atrial fibrillation. Catheter Cardiovasc Interv 2009; 73: 682–686. 8)Hirabayashi A et al. Continuous epoprostenol therapy and septal defect closure in a patient with severe pulmonary hypertension. Catheter Cardiovasc Interv 2009; 73: 688-691. 9)Nakagawa K et al. Transcatheter closure of atrial septal defect in a geriatric population. Catheter Cardiovasc Interv 2012; 80: 84-90. 10)Amin Z et al. Erosion of amplatzer septal occluder device after closure of secundum atrial septal defects: Review of registry of complications and recommendations to minimize future risk. Catheter Cardiovasc Interv 2004; 63: 496-502.

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検査所見の確認が遅れて心筋炎を見落とし手遅れとなったケース

循環器最終判決判例時報 1698号98-107頁概要潰瘍性大腸炎に対しステロイドを投与されていた19歳男性。4日前から出現した頭痛、吐き気、血の混じった痰を主訴に近医受診、急性咽頭気管支炎と診断して抗菌薬、鎮咳薬などを処方した。この時胸部X線写真や血液検査を行ったが、結果は後日説明することにして帰宅を指示した。ところが翌日になっても容態は変わらず外来再診、担当医が前日の胸部X線写真を確認したところ肺水腫、心不全の状態であった。急性心筋炎と診断してただちに入院治療を開始したが、やがて急性腎不全を合併。翌日には大学病院へ転送し、人工透析を行うが、意識不明の状態が続き、初診から3日後に死亡した。詳細な経過患者情報19歳予備校生経過1992年4月10日潰瘍性大腸炎と診断されて近所の被告病院(77床、常勤内科医3名)に入院、サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリン)が処方された。1993年1月上旬感冒症状に続き、発熱、皮膚の発赤、肝機能障害、リンパ球増多がみられたため、被告病院から大学病院に紹介。2月9日大学病院に入院、サラゾピリン®による中毒疹と診断されるとともに、ステロイドの内服治療が開始された。退院後も大学病院に通院し、ステロイドは7.5mg/日にまで減量されていた。7月10日頭痛を訴えて予備校を休む。次第に食欲が落ち、頭痛、吐き気が増強、血の混じった痰がでるようになった。7月14日10:00近所の被告病院を初診(以前担当した消化器内科医が診察)。咽頭発赤を認めたが、聴診では心音・肺音に異常はないと判断(カルテにはchest clearと記載)し、急性咽頭気管支炎の診断で、抗菌薬セフテラムピボキシル(同:トミロン)、制吐薬ドンペリドン(同:ナウゼリン)、鎮咳薬エプラジノン(同:レスプレン)、胃薬ジサイクロミン(同:コランチル)を処方。さらに胸部X線写真、血液検査、尿検査、喀痰培養(一般細菌・結核菌)を指示し、この日は検査結果を待つことなくそのまま帰宅させた(診察時間は約5分)。帰宅後嘔気・嘔吐は治まらず一段と症状は悪化。7月15日10:30被告病院に入院。11:00診察時顔面蒼白、軽度のチアノーゼあり。血圧70/50mmHg、湿性ラ音、奔馬調律(gallop rhythm)を聴取。ただちに前日に行った検査を取り寄せたところ、胸部X線写真:心臓の拡大(心胸郭比53%)、肺胞性浮腫、バタフライシャドウ、カーリーA・Bラインがみられた血液検査:CPK 162(20-100)、LDH 1,008(100-500)、白血球数15,300、尿アセトン体(4+)心電図検査:心筋梗塞様所見であり急性心不全、急性心筋炎(疑い)、上気道感染による肺炎と診断してただちに酸素投与、塩酸ドパミン(同:イノバン)、利尿薬フロセミド(同:ラシックス)、抗菌薬フロモキセフナトリウム(同:フルマリン)とトブラマイシン(同:トブラシン)の点滴、ニトログリセリン(同:ニトロダームTTS)貼付を行う。家族へは、ステロイドを服用していたため症状が隠されやすくなっていた可能性を説明した(この日主治医は定時に帰宅)。入院後も吐き気が続くとともに乏尿状態となったため、非常勤の当直医は制吐薬、昇圧剤および利尿薬を追加指示したが効果はなく、人工透析を含むより高度の治療が必要と判断した。7月16日主治医の出勤を待って転院の手配を行い、大学病院へ転送。11:00大学病院到着。腎不全、心不全、肺水腫の合併であると家族に説明。14:00人工透析開始。18:00容態急変し、意識不明となる。7月17日01:19死亡確認。当事者の主張患者側(原告)の主張1.病因解明義務初診時に胸部X線写真を撮っておきながら、それを当日確認せず心筋炎、肺水腫を診断できなかったのは明らかな過失である。そして、胸部X線で肺水腫があれば湿性ラ音を聴取することができたはずなのに、異常なしとしたのは聞き漏らしたからである2.転院義務初診時の病態はただちに入院させたうえで集中治療を開始しなければならない重篤なものであり、しかも適切な治療設備がない被告病院であればただちに治療可能な施設へ転院させるべきなのに、病因解明義務を怠ったために転院措置をとることができなかった初診時はいまだ危機的状況とまではいえなかったので、適切な診断を行って転院措置をとっていれば救命することができた病院側(被告)の主張1.病因解明義務初診時には急性咽頭気管支炎以外の異常所見がみられなかったので、その場でX線写真を検討しなかったのはやむを得なかった。また、心筋炎があったからといって必ず異常音が聴取されるとはいえないし、患者個人の身体的原因から異常音が聴取されなかった可能性がある2.転院義務初診時の症状を急性咽頭気管支炎と診断した点に過失がない以上、設備の整った病院に転院させる義務はない。仮に当初から心筋炎と診断して転院させたとしても、その重篤度からみて救命の可能性は低かったさらに大学病院の医師から提案されたPCPS(循環補助システム)による治療を家族らが拒否したことも、死亡に寄与していることは疑いない裁判所の判断当時の状況から推定して、初診時から胸部の異常音を聴取できるはずであり、さらにその時実施した胸部X線写真をすぐに確認することによって、肺水腫や急性心筋炎を診断することは可能であった。この時点ではKillip分類class 3であったのでただちに入院として薬物療法を開始し、1時間程度で病態の改善がない時には機械的補助循環法を行うことができる高度機能病院に転院させる必要があり、そうしていれば高度の蓋然性をもって救命することができた。初診患者に上記のような判断を求めるのは、主治医にとって酷に過ぎるのではないかという感もあるが、いやしくも人の生命および健康を管理する医業に従事する医師に対しては、その業務の性質に照らし、危険防止のため必要とされる最善の注意義務を尽くすことが要求されることはやむを得ない。原告側合計7,998万円の請求に対し、7,655万円の判決考察「朝から混雑している外来に、『頭痛、吐き気、食欲がなく、痰に血が混じる』という若者が来院した。診察したところ喉が赤く腫れていて、肺音は悪くない。まず風邪だろう、ということでいつも良く出す風邪薬を処方。ただカルテをみると、半年前に潰瘍性大腸炎でうちの病院に入院し、その後大学病院に移ってしまった子だ。どんな治療をしているの?と聞くと、ステロイドを7.5mg内服しているという。それならば念のため胸部X線写真や採血、痰培をとっおけば安心だ。ハイ次の患者さんどうぞ・・・」初診時の診察時間は約5分間とのことですので、このようなやりとりがあったと思います。おそらくどこでも普通に行われているような治療であり、ほとんどの患者さんがこのような対処方法で大きな問題へと発展することはないと思います。ところが、本件では重篤な心筋炎という病態が背後に潜んでいて、それを早期に発見するチャンスはあったのに見逃してしまうことになりました。おそらく、プライマリケアを担当する医師すべてがこのような落とし穴にはまってしまうリスクを抱えていると思います。ではどのような対処方法を採ればリスク回避につながるかを考えてみると、次の2点が重要であると思います。1. 風邪と思っても基本的診察を慎重に行うこと今回の担当医は消化器内科が専門でした。もし循環器専門医が患者の心音を聴取していれば、裁判官のいうようにgallop rhythmや肺野の湿性ラ音をきちんと聴取できていたかも知れません。つまり、混雑している外来で、それもわずか5分間という限定された時間内に、循環器専門医ではない医師が、あとで判明した心筋炎・心不全に関する必要な情報を漏れなく入手することはかなり困難であったと思われます。ところが裁判では、「いやしくも人の生命および健康を管理する医業に従事する医師である以上、危険防止のため必要とされる最善の注意義務を尽くさなければいけない」と判定されますので、医学生の時に勉強した聴打診などの基本的診察はけっしておろそかにしてはいけないということだと思います。私自身も反省しなければいけませんが、たとえば外来で看護師に「先生、風邪の患者さんをみてください」などといわれると、最初から風邪という先入観に支配されてしまい、とりあえずは聴診器をあてるけれどもざっと肺野を聞くだけで、つい心音を聞き漏らしてしまうこともあるのではないでしょうか。今回の担当医はカルテに「chest clear」と記載し、「心音・肺音は確かに聞いたけれども異常はなかった」と主張しました。ところが、この時撮影した胸部X線写真にはひどい肺水腫がみられたので、「異常音が聴取されなければおかしいし、それを聞こえなかったなどというのはけしからん」と判断されています。多分、このような危険は外来患者のわずか数%程度の頻度とは思いますが、たとえ厳しい条件のなかでも背後に潜む重篤な病気を見落とさないように、慎重かつ冷静な診察を行うことが、われわれ医師に求められることではないかと思います。2. 異常所見のバックアップ体制もう一つ本件では、せっかく外来で胸部X線写真を撮影しておきながら「急現」扱いとせず、フィルムをその日のうちに読影しなかった点が咎められました。そして、そのフィルムには誰がみてもわかるほどの異常所見(バタフライシャドウ)があっただけに、ほんの少しの配慮によってリスクが回避できたことになります。多くの先生方は、ご自身がオーダーした検査はなるべく早く事後処理されていることと思いますが、本件のように異常所見の確認が遅れて医事紛争へと発展すると、「見落とし」あるいは「注意義務違反」と判断される可能性が高いと思います。一方で、多忙な外来では次々と外来患者をこなさなければならないというような事情もありますので、すべての情報を担当医師一人が把握するにはどうしても限界があると思います。そこで考えられることは、普段からX線技師や看護師、臨床検査技師などのコメデイカルと連携を密にしておき、検査担当者が「おかしい」と感じたら(たとえ結果的に異常所見ではなくても)すぐに医師へ報告するような体制を準備しておくことが重要ではないかと思います。本件でも、撮影を担当したX線技師が19歳男子の真っ白なX線写真をみて緊急性を認識し、担当医師の注意を少しでも喚起していれば、医事紛争とはならないばかりか救命することができた可能性すらあると思います。往々にして組織が大きくなると縦割りの考え方が主流となり、医師とX線技師、医師と看護師の間には目にみえない壁ができてセクショナリズムに陥りやすいと思います。しかし、現代の医療はチームで行わなければならない面が多々ありますので、普段から勉強会を開いたり、症例検討会を行うなどして医療職同士がコミュニケーションを深めておく必要があると思います。循環器

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CORAL研究が動脈硬化性腎動脈狭窄症の診療にもたらすもの(コメンテーター:冨山 博史 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(163)より-

CORAL研究は、重症動脈硬化性腎動脈狭窄(血管造影で80%以上狭窄あるいは60~80%未満狭窄で圧格差20mmHg以上と定義)で、高血圧(2剤以上の降圧薬服用だが収縮期血圧[SBP]155mmHg以上と定義)あるいは慢性腎臓病(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)を有する症例に対する腎動脈形成術・ステント留置術(renal revasculalization stenting: RRVS)の効果を検討した多施設共同前向き研究である。  被験者は、薬物療法+腎動脈ステントを受ける群(467例)と薬物療法のみを受ける群(480例)に割り付けられ、重大心血管・腎イベント(心血管あるいは腎イベントが原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院、進行性腎障害、腎代替療法の必要性の複合エンドポイント発生)について平均3.5年の追跡を受けた。 動脈硬化性腎動脈狭窄に対するRRVSは、腎機能障害増悪を予防し、透析導入回避、血圧コントロール改善、さらに心血管疾患発症予防に有用である可能性が報告されてきた1)。たしかに、RRVSにて腎機能改善、血圧コントロール改善、心不全改善の症例を経験する。しかし、われわれがRRVSの効果を認める症例は一部であり、多くの症例はRRVSの効果を明確に確認できないことを経験的に知っている。しかし、RRVSの恩恵を受ける症例を選別する方法がなく、一方、RRVS実施がデメリットである十分な根拠もない。ゆえに、血圧・腎機能が安定した動脈硬化性腎動脈狭窄症例について、その診療方針は十分確立されていなかった1)。 ASTRAL研究は、2009年に報告された動脈硬化性腎動脈狭窄症例における腎機能・血圧に対するRRVSの効果を検討する前向き研究であり、RRVSの効果に否定的な研究結果であった2)。しかし、ASTRAL研究では、“腎動脈狭窄の程度評価が厳密でなく”、“重症狭窄例は各施設試験担当者がRRVSを実施していた”などの問題が指摘されていた。 CORAL研究は、こうした先行研究の限界に解答を提示した。CORAL研究は、腎動脈狭窄の程度はCore laboで確認され、薬物治療群、薬物+RRVS群の割り振りもランダム化して実施された。そして血圧コントロールが不良でなく、かつ、腎機能障害がないか軽度で増悪を認めない動脈硬化性腎動脈症例では、RRVSを実施する大きなメリット(腎機能障害改善、心血管疾患発症予防、顕著な降圧効果)がないことを示した。 一方、高齢者では潜在性の動脈硬化性腎臓脈狭窄の症例は多数存在するとする報告がある(65歳以上では6%に腎動脈狭窄を合併する)3)。しかし、そういった症例を積極的に検出する臨床的意義は明確にされていなかった。CORAL研究の結果は、高齢者で腎機能・血圧が安定している症例では、積極的に腎動脈狭窄を検出する必要性が少ないことも示唆している。 これまでRRVS実施が推奨される症例として、1.血圧コントロールが不良になった。2.腎機能障害が進展増悪している。3.原因不明の肺水腫、心不全を繰り返す。などが挙げられていた1)。 しかし、CORAL研究では難治性高血圧、3ヵ月以内の心不全発症、血清クレアチニン 3.0mg/dL以上の症例は除外している。ゆえに、CORAL研究はこのようなRRVS実施推奨例へのRRVS実施の妥当性を検証する研究ではない。 CORAL研究の結果を踏まえてわれわれができることは、1.降圧薬で血圧がコントロールされ、血清クレアチニン 3.0mg/dL以下で腎機能障害の増悪のない症例にはRRVS実施の必要はなく、慎重な経過観察を行う。そして、血圧コントロール不良・腎機能の増悪を認めた場合にRRVS実施の可否を検討する。ただし、今後こういった症例に対する新たな治療法が開発される可能性もある4)。2.難治性高血圧、腎機能障害増悪、原因不明の肺水腫・繰り返しの心不全の症例については基本、これまでと同様の診療方針となる。ただし、CORAL研究では、RRVS施行は薬物治療単独実施群にくらべて有意に血圧を低下させるが、顕著な降圧は得られなかった。ゆえに、難治性高血圧症例にはRRVSと腎交感神経焼灼術の併用も将来的に検討する必要がある1)。また、CORAL研究では3ヵ月以上前に発症した心不全の既往はRRVSの効果への有意な影響因子でないことが確認されている。ゆえに、単に心不全の既往のみでRRVS実施の有用性を判断するのは否定的と考えられる。原因不明の肺水腫・繰り返しの心不全をRRVS実施の根拠とする場合は慎重に適応を検討する必要がある。さらに、腎機能増悪については血清クレアチニン 3.0mg/dL以上への増加が一つの目安となるかも知れない。 いずれにしても、CORAL研究にて、動脈硬化性腎動脈狭窄に対するRRVS実施の可否をIntervention実施医師のみで決定することは終焉を迎えた。今後、動脈硬化性腎動脈狭窄症例の診療には、高血圧専門医、腎臓専門医、循環器専門医が、密接なコミュニケーションをもってあたることが適切である。

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院外心停止搬送中の低体温治療、転帰改善せず/JAMA

 心室細動(VF)有無を問わない病院搬送中の心停止蘇生後患者への低体温治療施行の有効性について、病院到着までに深部体温を低下し34℃に到達するまでの時間を短縮したが、生存または神経学的アウトカムは改善しなかったことが示された。米国・ワシントン大学のFrancis Kim氏らが、1,359例を対象とした無作為化試験の結果、報告した。心停止後の脳外傷は後遺症や死亡と関連し覚醒しない患者も多い。低体温治療は脳機能回復に有望な治療とされ、現在、VFあり蘇生後の昏睡状態の患者に対する入院ベースの導入は推奨されているが、プレホスピタルでの最適な導入のタイミングは不確かであった。JAMA誌オンライン版2013年11月17日号掲載の報告より。VFあり・なし1,359例を、低体温治療を行う介入群と標準的ケアの対照群に無作為化 研究グループは、プレホスピタルでの低体温治療が、VF有無それぞれの患者で蘇生後のアウトカムを改善するかどうかを検討する無作為化試験を行った。ワシントン州キング郡で2007年12月15日~2012年12月7日に、院外心停止が起き救急隊員による蘇生術を受けた成人1,359例(VFあり583例、VFなし776例)が無作為化を受けた。 低体温治療を受けるよう割り付けられた介入群には、標準的ケアと自己心拍再開後できるだけ速やかに2~4℃の標準生理食塩水の静脈内投与を行った。介入群には、VFあり群は292例(対照群291例)、VFなし群は396例(対照群380例)が割り付けられた。なお、それら割り付けとは関係なく、ほぼ全員が搬送先の病院で低体温治療を受けた。 患者は2013年5月1日までフォローアップを受けた。主要アウトカムは、退院時の生存率および神経学的状態であった。退院時の生存率、神経学的状態の改善について有意差みられず 結果、介入群は平均深部体温が病院到着時までに、VFあり群(1.20℃低下、95%信頼区間[CI]:-1.33~-1.07℃)、VFなし群(1.30℃低下、-1.40~-1.20℃)ともに低下した。また、対照群と比較して約1時間、体温34℃以下に到達する時間を短縮した。 しかし、退院時の生存率は介入群と対照群で同等であった。VFあり群では、介入群62.7%(95%CI:57.0~68.0%)、対照群64.3%(同:58.6~69.5%)であり(p=0.69)、VFなし群ではそれぞれ19.2%(同:15.6~23.4%)、16.3%(同:12.9~20.4%)であった(p=0.30)。 また、介入は、退院時の神経学的状態(完全回復あるいは軽度機能障害)の改善と関連していなかった。改善した人の割合は、VFあり群では、介入群57.5%(95%CI:51.8~63.1%)、対照群61.9%(同:56.2~67.2%)であり(p=0.69)、VFなし群では、介入群14.4%(同:11.3~18.2%)、対照群13.4%(同:10.4~17.2%)であった(p=0.30)。 全体として、介入群は対照群よりも再度心停止となった割合が有意に高く(26%対21%、p=0.008)、また入院後12時間までの利尿薬の使用率および初回X線での肺水腫の有病率が高かった。それらは入院後24時間以内に回復していた。 以上の結果を踏まえて著者は、「低体温療法は心停止後の脳機能回復に有望な治療戦略ではあるが、今回の結果は、臨床アウトカムを改善するためにプレホスピタルでの低体温療法をルーチンに行うことを支持しないものであった」と結論している。

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糖尿病ケトアシドーシスの輸液管理ミスで死亡したケース

糖尿病・代謝・内分泌最終判決平成15年4月11日 前橋地方裁判所 判決概要25歳、体重130kgの肥満男性。約2週間前から出現した体調不良で入院し、糖尿病ケトアシドーシス(初診時血糖値580mg/dL)と診断されてIVHによる輸液管理が始まった。ところが、IVH挿入から12時間後の深夜に不穏状態となってIVHを自己抜去。自宅で報告を受けた担当医師は「仕方ないでしょう」と看護師に話し、翌日午後に再度挿入を予定した。ところが、挿入直前に心肺停止状態となり、翌日他院へ転送されたが、3日後に多臓器不全で死亡した。詳細な経過患者情報昭和49年9月3日生まれの25歳、体重130kgの肥満男性経過平成12年3月16日胃部不快感と痛みが出現、その後徐々に固形物がのどを通らなくなる。3月28日動悸、呼吸困難、嘔気、嘔吐が出現。3月30日10:30被告病院受診。歩行困難のため車いす使用。ぐったりとして意識も明瞭でなく、顔面蒼白、ろれつが回らず、医師の診察に対してうまく言葉を発することができなかった。血糖値580mg/dL、「脱水、糖尿病ケトアシドーシス、消化管通過障害疑い」と診断、「持続点滴、インスリン投与」を行う必要があり、2週間程度の入院と説明。家族が看護師に対し付添いを申し入れたが、完全看護であるからその必要はないといわれた。11:15左鎖骨下静脈にIVHを挿入して輸液を開始。約12時間で2,000mLの輸液を行う方針で看護師に指示。18:00当直医への申し送りなく担当医師は帰宅。このとき患者には意識障害がみられ、看護師に対し「今日で入院して3日目になるんですけど、管は取ってもらえませんか」などと要領を得ない発言あり。20:30ひっきりなしに水を欲しがり、呼吸促迫が出現。ナースコール頻回。17:20水分摂取時に嘔吐あり。22:45膀胱カテーテル自己抜去。看護師の制止にもかかわらず、IVHも外しかけてベッドのわきに座っていた。22:55IVH自己抜去。不穏状態のため当直医はIVHを再挿入できず。看護師から電話報告を受けた担当医師は、「仕方ないでしょう」と回答。翌日3月31日14:00頃に出勤してからIVHの再挿入を予定し、輸液再開を指示しないまま鎮静目的でハロペリドール(商品名:セレネース)を筋注。3月31日03:00肩で大きく息をし、口を開けたまま舌が奥に入ってしまうような状態で、大きないびきをかいていた。11:00呼吸困難、のどの渇きを訴えたが、意識障害のため自力で水分摂取不能。家族の要望で看護師が末梢血管を確保し、点滴が再開された(約12時間輸液なし)。14:20担当医師が出勤。再びIVHを挿入しようとしたところで呼吸停止、心停止。ただちに気管内挿管して心肺蘇生を行ったところ、5分ほどで心拍は再開した。しかし糖尿病性昏睡による意識障害が持続。15:30膀胱カテーテル留置。17:20家族から無尿を指摘され、フロセミド(同:ラシックス)を投与。その後6時間で尿量は175cc。さらに明け方までの6時間で尿量はわずか20ccであった。4月1日10:25救急車で別の総合病院へ搬送。糖尿病ケトアシドーシスによる糖尿病性昏睡と診断され、急激なアシドーシスや脱水の進行により急性腎不全を発症していた。4月4日19:44多臓器不全により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張糖尿病ケトアシドーシスで脱水状態改善の生理食塩水投与は、14~20mL/kg/hr程度が妥当なので、130kgの体重では1,820~2,600mL/hrの点滴が必要だった。ところが、入院してから47時間の輸液量は、入院注射指示簿によれば合計わずか2,000mLで必要量を大幅に下回った。しかも途中でIVHを外してしまったので、輸液量はさらに少なかったことになる。IVHを自己抜去するような状況であったのに、輸液もせずセレネース®投与を指示した(セレネース®は昏睡状態の患者に禁忌)だけであった。また、家族から無尿を指摘されて利尿薬を用いたが、脱水症状が原因で尿が出なくなっているのに利尿薬を用いた。糖尿病を早期に発見して適切な治療を続ければ、糖尿病患者が健康で長生きできることは公知の事実である。被告病院が適切な治療を施していれば、死亡することはなかった。病院側(被告)の主張入院時の血液検査により糖尿病ケトアシドーシスと診断し、高血糖状態に対する処置としてインスリンを適宜投与した。ただし急激な血糖値の改善を行うと脳浮腫を起こす危険があるので、当面は血糖値300mg/dLを目標とし、消化管通過障害も考えて内視鏡の検査も視野に入れた慎重な診療を行っていた。原告らは脱水治療の初期段階で1,820~2,600mL/hrもの輸液をする必要があると主張するが、そのような大量輸液は不適切で、500~1,000mLを最初の1時間で、その後3~4時間は200~500mL/hrで輸液を行うのが通常である。患者の心機能を考慮すると、体重が平均人の2倍あるから2倍の速度で輸液を行うことができるというものではない。しかもIVHを患者が自己抜去したため適切な治療ができなくなり、当時は不穏状態でIVHの再挿入は不可能であった。このような状況下でIVH挿入をくり返せば、気胸などの合併症が生じる可能性がありかえって危険。セレネース®の筋注を指示したのは不穏状態の鎮静化を目的としたものであり適正である。そもそも入院時に、糖尿病の急性合併症である重度の糖尿病ケトアシドーシスによる昏睡状態であったから、短期の治療では改善できないほどの重篤、手遅れの状態であった。心停止の原因は、高度のアシドーシスに感染が加わり、敗血症性ショックないしエンドトキシンショック、さらには横紋筋融解症を来し、これにより多臓器不全を併発したためと推測される。裁判所の判断平成12年当時の医療水準として各種文献によれば、糖尿病ケトアシドーシスの患者に症状の大幅な改善が認められない限り、通常成人で1日当たり少なくとも5,000mL程度の輸液量が必要であった。ところが本件では、3月30日11:15のIVH挿入から転院した4月1日10:25までの47時間余りで、多くても総輸液量は4,420mLにすぎず、130kgもの肥満を呈していた患者にとって必要輸液量に満たなかった。したがって、輸液量が大幅に不足していたという点で担当医師の判断および処置に誤りがあった。被告らは治療当初に500~1,000mL/hrもの輸液を行うと急性心不全や肺水腫を起こす可能性もあり危険であると主張するが、その程度の輸液を行っても急性心不全や肺水腫を起こす可能性はほとんどないし、実際に治療初日の30日においても輸液を160mL/hr程度しか試みていないのであるから、急性心不全や肺水腫を起こす危険性を考慮に入れても、担当医師の試みた輸液量は明らかに少なかった。さらに看護師からIVHを自己抜去したという電話連絡を受けた時点で、意識障害がみられていて、その原因は糖尿病ケトアシドーシスによるものと判断していたにもかかわらず、「仕方ないでしょう」などといって当直医ないし看護師に対し輸液を再開するよう指示せず、そのまま放置したのは明らかな過失である。これに対し担当医師は、不穏状態の患者にIVH再挿入をくり返せば気胸が生じる可能性があり、かえって危険であったと主張するが、IVHの抜去後セレネース®によって鎮静されていることから、入眠しておとなしくなった時点でIVHを挿入することは可能であった。しかもそのまま放置すれば糖尿病性昏睡や急性腎不全、急性心不全により死亡する危険性があったことから、気胸が生じる可能性を考慮に入れても、IVHによる輸液再開を優先して行うべきであった。本件では入院時から腹痛、嘔気、嘔吐などがみられ、意識が明瞭でないなど、すでに糖尿病性昏睡への予兆が現れていた。一方で入院時の血液生化学検査は血糖値以外ほぼ正常であり、当初は腎機能にも問題はなく、いまだ糖尿病性昏睡の初期症状の段階にとどまっていた。ところが輸液が中断された後で意識レベルが悪化し、やがて呼吸停止、心停止状態となった。そして、転院時には、もはや糖尿病性昏睡の症状は治癒不可能な状態まで悪化し、死亡が避けられない状況にあった。担当医師の輸液に関する過失、とりわけIVHの抜去後看護師らに対しIVHの再挿入を指示せずに放置した過失と死亡との間には明らかな因果関係が認められる。原告側合計8,267万円の請求に対し、合計7,672万円の判決考察夜中に不穏状態となってIVHを自己抜去した患者に対し、どのような指示を出しますでしょうか。今回のケースでは、内科医にとってかなり厳しい判断が下されました。体重が130kgにも及ぶ超肥満男性が、糖尿病・脱水で入院してきて、苦労して鎖骨下静脈穿刺を行い、やっとの思いでIVHを挿入しました。とりあえず輸液の指示を出したところで、ひととおりの診断と治療方針決定は終了し、あとは治療への反応を期待してその日は帰宅しました。ところが当日深夜に看護師から電話があり、「本日入院の患者さんですが、IVHを自己抜去し、当直の先生にお願いしましたが、患者さんが暴れていて挿入できません。どうしましょうか」と連絡がありました。そのような時、深夜にもかかわらずすぐに病院に駆けつけ、鎮静薬を投与したうえで再度IVHを挿入するというような判断はできますでしょうか。このように自分から治療拒否するような患者を前にした場合、「仕方ないでしょう」と考える気持ちは十分に理解できます。こちらが誠意を尽くして血管確保を行い、そのままいけば無事回復するものが、「どうして命綱でもある大事なIVHを抜いてしまうのか!」と考えたくなるのも十分に理解できます。ところが本件では、糖尿病ケトアシドーシスの病態が担当医師の予想以上に悪化していて、結果的には不適切な治療となってしまいました。まず第一に、IVHを自己抜去したという異常行動自体が糖尿病性昏睡の始まりだったにもかかわらず、「せっかく入れたIVHなのに、本当にしょうがない患者だ」と考えて、輸液開始・IVH再挿入を翌日午後まで延期してしまったことが最大の問題点であったと思います。担当医師は翌日午前中にほかの用事があり、午後になるまで出勤できませんでした。そのような特別な事情があれば、とりあえずはIVHではなく末梢の血管を確保するよう当直スタッフに指示してIVH再挿入まで何とか輸液を維持するとか、場合によってはほかの医師に依頼して、早めにIVHを挿入しておくべきだったと考えられます。また、担当医師が不在時のバックアップ体制についても再考が必要でしょう。そして、第二に、そもそもの輸液オーダーが少なすぎ、糖尿病ケトアシドーシスの治療としては不十分であった点は、標準治療から外れているといわれても抗弁するのは難しくなります。「日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2000」によれば、糖尿病ケトアシドーシス(インスリン依存状態)の輸液として、「ただちに生理食塩水を1,000mL/hr(14~20mL/kg/hr)の速度で点滴静注を開始」と明記されているので、体重が130kgにも及ぶ肥満男性であった患者に対しては、1時間に500mLのボトルで少なくとも2本は投与すべきであったことになります。ところが本件では、当初の輸液オーダーが少なすぎ、3時間で500mLのボトル1本のペースでした。1時間に500mLの点滴を2本も投与するという輸液量は、かなりのハイペースとなりますので、一般的な感触では「ここまで多くしなくても良いのでは」という印象です。しかし、数々のエビデンスをもとに推奨されている治療ガイドラインで「ただちに生理食塩水を1,000mL/hr(14~20mL/kg/hr)の速度で点滴静注を開始」とされている以上、今回の少なすぎる輸液量では標準から大きく外れていることになります。本件では入院当初から糖尿病性ケトアシドーシス、脱水という診断がついていたのですから、「インスリンによる血糖値管理」と「多めの輸液」という治療方針を立てるのが医学的常識でしょう。しかし、経験的な感覚で治療を行っていると、今回の輸液のように、結果的には最近の知見から外れた治療となってしまう危険性が潜んでいるので注意が必要です。本件でも、ひととおりの処置が終了した後で、治療方針や点滴内容が正しかったのかどうか、成書を参照したり同僚に聞いてみるといった時間的余裕はあったと思われます。最近の傾向として、各種医療行為の結果が思わしくなく、患者本人または家族がその事実を受け入れられないと、ほとんどのケースで紛争へ発展するような印象があります。その場合には、医学書、論文、各種ガイドラインなどの記述をもとに、その時の医療行為が正しかったかどうか細かな検証が行われ、「医師の裁量範囲内」という考え方はなかなか採用されません。そのため、日頃から学会での話題や治療ガイドラインを確認して知識をアップデートしておくことが望まれます。糖尿病・代謝・内分泌

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重症感染症児への輸液ボーラス投与、48時間死亡率を上昇

 ショック患者への急速早期の輸液蘇生術は、救急治療ガイドラインに示されており、小児科における生命維持訓練プログラムでも支持されている。しかし、処置法、用量、輸液の種類に留意したエビデンスはなく、集中ケア施設がまず利用できないアフリカのような、医療資源が限られた環境下でのショック患児や生命に関わるような重症感染症児への治療に対する輸液蘇生の役割は確立されていない。そこでケニア中央医学研究所(KEMRI)のKathryn Maitland氏らは、アフリカ東部3ヵ国で輸液蘇生の効果を調べる無作為化試験を行った。NEJM誌2011年6月30日号(オンライン版2011年5月26日号)掲載より。アルブミンボーラス、生食ボーラスと対照群の3群に無作為化し48時間後の転帰を比較 研究グループは、ウガンダ、ケニア、タンザニアで、重症熱性疾患と循環不全で入院した小児を、5%アルブミン溶液20~40mL/kg体重ボーラス投与(アルブミンボーラス群)もしくは0.9%生食液20~40mL/kg体重ボーラス投与(生食ボーラス群)する群か、ボーラス投与しない群(対照群)の3群に無作為に割り付け検討した(A層試験)。このA層試験では、重症低血圧の小児は除外されB層試験にて、いずれかのボーラス投与群に無作為に割り付けられ検討された。 >被験児は全員、ガイドラインに基づく、適切な抗菌薬治療や静脈内維持輸液ならびに生命維持のためのトリアージや救急療法を受けた。なお、栄養失調または胃腸炎の患児は除外された。 主要エンドポイントは、48時間時点の死亡率とし、副次エンドポイントには、肺水腫、頭蓋内圧亢進、4週時点の死亡または神経学的後遺症の発生率などが含まれた。 A層試験は3,600例の登録を計画していたが、3,141例(アルブミンボーラス群1,050例、生食ボーラス群1,047例、対照群1,044例)が登録された時点でデータ安全モニタリング委員会の勧告により補充が停止された。 マラリアの保有率(全体で57%)、臨床的重症度は全群で同程度だった。ボーラス後48時間死亡率が有意に上昇 A層における48時間死亡率は、アルブミンボーラス群10.6%(1,050例中111例)、生食ボーラス群10.5%(1,047例中110例)、対照群7.3%(1,044例中76例)だった。生食ボーラス群 vs. 対照群の相対リスクは1.44(95%信頼区間:1.09~1.90、P=0.01)、アルブミンボーラス群vs.生食ボーラス群の相対リスクは1.01(同:0.78~1.29、P=0.96)、両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.45(同:1.13~1.86、P=0.003)だった。 4週時点の死亡率は、それぞれ12.2%、12.0%、8.7%だった(両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.39、P=0.004)。神経学的後遺症発生率は、2.2%、1.9%、2.0%だった(同1.03、P=0.92)だった。肺水腫または頭蓋内圧亢進の発生率は、2.6%、2.2%、1.7%だった(同1.46、P=0.17)。 B層では、死亡率がアルブミンボーラス群69%(13例中9例)、生食ボーラス群56%(16例中9例)だった(アルブミンボーラスの相対リスク:1.23、95%信頼区間:0.70~2.16、P=0.45)。 これらの結果は、施設間、サブグループ間(ショック重症度や、マラリア、昏睡、敗血症、アシドーシス、重症貧血の状態に基づく)で一貫して認められた。 研究グループは「医療資源が限られたアフリカでの重症循環不全児に対する輸液ボーラスは、48時間死亡率を有意に高める」と報告をまとめている。

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院外心停止に対するACD-CPR、標準的CPRよりも有効

院外心停止例に対する能動的圧迫-減圧心肺蘇生法(ACD-CPR)は、標準的CPRよりも神経機能温存退院率および1年生存率が優れることが、アメリカ・ウィスコンシン医科大学救急医療部のTom P Aufderheide氏らが行った無作為化試験で示された。ACD-CPRは、1)胸部に吸着させる吸引カップ、2)胸部の押し下げ/引き上げ用のハンドル、3)80拍/分にセットされた可聴式メトロノーム、4)操作中に圧迫、減圧の程度を表示するゲージからなる携帯式医療機器で、インピーダンス閾値弁装置(より効果的に心臓に陰圧をかけるための装置)を併用するとより高い効果が得られるとされる。胸骨圧迫が解除された拡張期圧に胸腔内圧の陰圧が増強された状態でACD-CPRを施行すると、標準的なCPRに比べ良好な血行動態が得られる可能性があるという。Lancet誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月19日号)掲載の報告。退院時の良好な神経機能温存率を評価する無作為化試験研究グループは、院外心停止に対するACD-CPRが、良好な神経機能を温存した生存に及ぼす効果および安全性を評価する多施設共同無作為化試験を実施した。アメリカの都市部、都市周辺部、地方部の46の救急医療施設(地域住人:230万人)において、院外心停止患者のアウトカムをUtsteinガイドラインに準拠して評価した。対象患者は、標準的CPRあるいはインピーダンス閾値弁装置で胸腔内圧の陰圧を増強させた状態でACD-CPRを施行する群に無作為に、暫定的に割り付けられた。心臓が原因と推定される非外傷性の心停止で、初期的および最終的な選択基準を満たした成人患者(18歳以上、確認できない場合は推定年齢)が、割り付けられたCPRを受け、最終解析の対象とされた。主要評価項目は、退院時の良好な神経機能温存率(modified Rankin scaleスコア≦3)とし、初期救助者以外の全研究者には治療割り付け情報は知らされなかった。神経機能温存退院率:6% vs. 9%、1年生存率:6% vs. 9%仮登録された2,470例が無作為に各CPRに割り付けられ、標準的CPR群(対照群)1,201例のうち813例(68%)が、ACD-CPR群1,269例のうち840例(66%)が実際に治療を受け、最終解析の対象となった。対照群では6%(47/813例)が良好な神経機能を温存した状態で退院したのに対し、ACD-CPR群は9%(75/840例)であり、有意な差が認められた(オッズ比:1.58、95%信頼区間:1.07~2.36、p=0.019)。1年生存率も対照群が6%(48/813例)、ACD-CPR群は9%(74/840例)と有意差を認め(p=0.03)、この間の認知能力、身体障害度、情緒的/心理的状態は両群で同等に保持されていた。全般に重篤な有害事象の発現率は両群間に差はなかったが、肺水腫は対照群[7%(62/813例)]よりもACD-CPR群[11%(94/840例)]で多くみられた(p=0.015)。著者は、「ACD-CPRは標準的CPRに比べ高い有効性と一般化可能性(generalizability)を有することが示された」と結論し、「この知見に基づくと、心停止後の長期生存を改善するには、標準的CPRの代替治療として胸腔内圧の陰圧増強下におけるACD-CPRの施行を考慮すべきと考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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重症急性腎障害患者への透析療法、強度を変えても90日死亡率は44.7%

米国から最近報告された急性腎障害(AKI)患者に有効とされる透析療法の強度について、オーストラリアとニュージーランドの共同研究グループ(RENAL Replacement Therapy Study)が、高低2つの強度による多施設共同無作為化試験を行い検証した。強度を高めたほうが有益ではないかとの仮説を立てての試験だったが、主要評価項目の90日死亡率に、強度による差はなかったと報告している。NEJM誌2009年10月22日号掲載より。40mL/kg体重/時と25mL/kg体重/時とで比較試験は、2005年12月30日~2008年11月28日の間に、オーストラリアとニュージーランドの35施設のICUから、18歳以上の重症のAKI患者(6時間で尿100mL未満、血清カリウム濃度6.5mmol/L超、pH 7.2未満、プラズマ尿素窒素レベル70mg/dL超、血清クレアチニン値3.4mg/dL超、肺水腫等の所見、のいずれかを満たす)が登録され行われた。被験者(1,508例)は、後希釈の持続的静静脈血液濾過透析を、高強度で受ける群(40mL/kg体重/時、747例)と、低強度で受ける群(25mL/kg体重/時、761例)に、無作為に割り付けられ追跡された。主要評価項目は、無作為化後90日以内の死亡とした。90日死亡率、両群ともに44.7%主要評価項目に関するデータは、高強度群721例、低強度群743例、計1,464例(97.1%)から得られた。両群の基線時の特徴は同様で、平均治療期間は高強度群6.3日、低強度群5.9日(P = 0.35)。無作為化後90日以内の死亡は、高強度群322例、低強度群332例で、両群とも死亡率は44.7%で差はなかった(オッズ比:1.00、95%信頼区間:0.81~1.23、P = 0.99)。一方で、90日時点で生存していた人のうち透析療法を継続していたのは、高強度群6.8%(27/399例)だったのに対し、低強度群は4.4%(18/411例)だった(オッズ比:1.59、95%信頼区間:0.86~2.92、P = 0.14)。低リン酸血症は、高強度群のほうが低強度群に比べて、より多く見られた(65%対54%、P

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急性心原性肺水腫への非侵襲的換気療法、死亡率は改善せず

急性心原性肺水腫患者に対して、気管切開・挿管によらない非侵襲的換気療法(持続気道陽圧換気療法:CPAP、または非侵襲的間欠陽圧換気療法:NIPPV)は有効で、死亡率を低下させる可能性があるとされる。そこで、英国エジンバラ王立病院のAlasdair Gray氏らThree Interventions in Cardiogenic Pulmonary Oedema:3CPOの研究グループは、気管挿管による標準酸素療法とCPAP、NIPPVを比較検討した。NEJM誌2008年7月10日号より。患者1,069例を3療法に割り付け7日間の転帰を比較非侵襲的換気療法が死亡率を低下させるかどうか、CPAPとNIPPVの転帰に重大な違いがあるかどうかを見極めるため、多施設共同公開前向き無作為化試験を行った。患者合計1,069例(平均年齢±SD:77.7±9.7歳、女性56.9%)を、標準酸素療法367例、CPAP(5~15cm H2O)346例、NIPPV(吸気圧:8~20cm H2O、呼気圧:4~10cm H2O)356例に、それぞれ割り付けた。非侵襲的換気療法と標準酸素療法を比較する主要エンドポイントは処置後7日以内の死亡。NIPPVとCPAPを比較する主要エンドポイントは同7日以内の死亡または挿管実施とした。呼吸困難と代謝障害は急速に改善するが7日後の死亡率では、標準酸素療法群(9.8%)と非侵襲的換気療法群(9.5%)に有意差はなかった(P=0.87)。非侵襲的換気療法の7日以内の死亡または挿管実施の複合エンドポイントは、CPAP(11.7%)とNIPPV(11.1%)の間に有意差はなかった(P=0.81)。非侵襲的換気療法は標準酸素療法と比較して、患者自身の申告による呼吸困難(療法差:1~10の視覚アナログスケールで0.7、95%信頼区間:0.2~1.3、P=0.008)、心拍数(療法差:毎分4拍、95%信頼区間:1~6、P=0.004)、アシドーシス(療法差:pH 0.03、95%信頼区間:0.02~0.04、P

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