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CORAL研究が動脈硬化性腎動脈狭窄症の診療にもたらすもの(コメンテーター:冨山 博史 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(163)より-

CORAL研究は、重症動脈硬化性腎動脈狭窄(血管造影で80%以上狭窄あるいは60~80%未満狭窄で圧格差20mmHg以上と定義)で、高血圧(2剤以上の降圧薬服用だが収縮期血圧[SBP]155mmHg以上と定義)あるいは慢性腎臓病(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)を有する症例に対する腎動脈形成術・ステント留置術(renal revasculalization stenting: RRVS)の効果を検討した多施設共同前向き研究である。  被験者は、薬物療法+腎動脈ステントを受ける群(467例)と薬物療法のみを受ける群(480例)に割り付けられ、重大心血管・腎イベント(心血管あるいは腎イベントが原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院、進行性腎障害、腎代替療法の必要性の複合エンドポイント発生)について平均3.5年の追跡を受けた。 動脈硬化性腎動脈狭窄に対するRRVSは、腎機能障害増悪を予防し、透析導入回避、血圧コントロール改善、さらに心血管疾患発症予防に有用である可能性が報告されてきた1)。たしかに、RRVSにて腎機能改善、血圧コントロール改善、心不全改善の症例を経験する。しかし、われわれがRRVSの効果を認める症例は一部であり、多くの症例はRRVSの効果を明確に確認できないことを経験的に知っている。しかし、RRVSの恩恵を受ける症例を選別する方法がなく、一方、RRVS実施がデメリットである十分な根拠もない。ゆえに、血圧・腎機能が安定した動脈硬化性腎動脈狭窄症例について、その診療方針は十分確立されていなかった1)。 ASTRAL研究は、2009年に報告された動脈硬化性腎動脈狭窄症例における腎機能・血圧に対するRRVSの効果を検討する前向き研究であり、RRVSの効果に否定的な研究結果であった2)。しかし、ASTRAL研究では、“腎動脈狭窄の程度評価が厳密でなく”、“重症狭窄例は各施設試験担当者がRRVSを実施していた”などの問題が指摘されていた。 CORAL研究は、こうした先行研究の限界に解答を提示した。CORAL研究は、腎動脈狭窄の程度はCore laboで確認され、薬物治療群、薬物+RRVS群の割り振りもランダム化して実施された。そして血圧コントロールが不良でなく、かつ、腎機能障害がないか軽度で増悪を認めない動脈硬化性腎動脈症例では、RRVSを実施する大きなメリット(腎機能障害改善、心血管疾患発症予防、顕著な降圧効果)がないことを示した。 一方、高齢者では潜在性の動脈硬化性腎臓脈狭窄の症例は多数存在するとする報告がある(65歳以上では6%に腎動脈狭窄を合併する)3)。しかし、そういった症例を積極的に検出する臨床的意義は明確にされていなかった。CORAL研究の結果は、高齢者で腎機能・血圧が安定している症例では、積極的に腎動脈狭窄を検出する必要性が少ないことも示唆している。 これまでRRVS実施が推奨される症例として、1.血圧コントロールが不良になった。2.腎機能障害が進展増悪している。3.原因不明の肺水腫、心不全を繰り返す。などが挙げられていた1)。 しかし、CORAL研究では難治性高血圧、3ヵ月以内の心不全発症、血清クレアチニン 3.0mg/dL以上の症例は除外している。ゆえに、CORAL研究はこのようなRRVS実施推奨例へのRRVS実施の妥当性を検証する研究ではない。 CORAL研究の結果を踏まえてわれわれができることは、1.降圧薬で血圧がコントロールされ、血清クレアチニン 3.0mg/dL以下で腎機能障害の増悪のない症例にはRRVS実施の必要はなく、慎重な経過観察を行う。そして、血圧コントロール不良・腎機能の増悪を認めた場合にRRVS実施の可否を検討する。ただし、今後こういった症例に対する新たな治療法が開発される可能性もある4)。2.難治性高血圧、腎機能障害増悪、原因不明の肺水腫・繰り返しの心不全の症例については基本、これまでと同様の診療方針となる。ただし、CORAL研究では、RRVS施行は薬物治療単独実施群にくらべて有意に血圧を低下させるが、顕著な降圧は得られなかった。ゆえに、難治性高血圧症例にはRRVSと腎交感神経焼灼術の併用も将来的に検討する必要がある1)。また、CORAL研究では3ヵ月以上前に発症した心不全の既往はRRVSの効果への有意な影響因子でないことが確認されている。ゆえに、単に心不全の既往のみでRRVS実施の有用性を判断するのは否定的と考えられる。原因不明の肺水腫・繰り返しの心不全をRRVS実施の根拠とする場合は慎重に適応を検討する必要がある。さらに、腎機能増悪については血清クレアチニン 3.0mg/dL以上への増加が一つの目安となるかも知れない。 いずれにしても、CORAL研究にて、動脈硬化性腎動脈狭窄に対するRRVS実施の可否をIntervention実施医師のみで決定することは終焉を迎えた。今後、動脈硬化性腎動脈狭窄症例の診療には、高血圧専門医、腎臓専門医、循環器専門医が、密接なコミュニケーションをもってあたることが適切である。

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院外心停止搬送中の低体温治療、転帰改善せず/JAMA

 心室細動(VF)有無を問わない病院搬送中の心停止蘇生後患者への低体温治療施行の有効性について、病院到着までに深部体温を低下し34℃に到達するまでの時間を短縮したが、生存または神経学的アウトカムは改善しなかったことが示された。米国・ワシントン大学のFrancis Kim氏らが、1,359例を対象とした無作為化試験の結果、報告した。心停止後の脳外傷は後遺症や死亡と関連し覚醒しない患者も多い。低体温治療は脳機能回復に有望な治療とされ、現在、VFあり蘇生後の昏睡状態の患者に対する入院ベースの導入は推奨されているが、プレホスピタルでの最適な導入のタイミングは不確かであった。JAMA誌オンライン版2013年11月17日号掲載の報告より。VFあり・なし1,359例を、低体温治療を行う介入群と標準的ケアの対照群に無作為化 研究グループは、プレホスピタルでの低体温治療が、VF有無それぞれの患者で蘇生後のアウトカムを改善するかどうかを検討する無作為化試験を行った。ワシントン州キング郡で2007年12月15日~2012年12月7日に、院外心停止が起き救急隊員による蘇生術を受けた成人1,359例(VFあり583例、VFなし776例)が無作為化を受けた。 低体温治療を受けるよう割り付けられた介入群には、標準的ケアと自己心拍再開後できるだけ速やかに2~4℃の標準生理食塩水の静脈内投与を行った。介入群には、VFあり群は292例(対照群291例)、VFなし群は396例(対照群380例)が割り付けられた。なお、それら割り付けとは関係なく、ほぼ全員が搬送先の病院で低体温治療を受けた。 患者は2013年5月1日までフォローアップを受けた。主要アウトカムは、退院時の生存率および神経学的状態であった。退院時の生存率、神経学的状態の改善について有意差みられず 結果、介入群は平均深部体温が病院到着時までに、VFあり群(1.20℃低下、95%信頼区間[CI]:-1.33~-1.07℃)、VFなし群(1.30℃低下、-1.40~-1.20℃)ともに低下した。また、対照群と比較して約1時間、体温34℃以下に到達する時間を短縮した。 しかし、退院時の生存率は介入群と対照群で同等であった。VFあり群では、介入群62.7%(95%CI:57.0~68.0%)、対照群64.3%(同:58.6~69.5%)であり(p=0.69)、VFなし群ではそれぞれ19.2%(同:15.6~23.4%)、16.3%(同:12.9~20.4%)であった(p=0.30)。 また、介入は、退院時の神経学的状態(完全回復あるいは軽度機能障害)の改善と関連していなかった。改善した人の割合は、VFあり群では、介入群57.5%(95%CI:51.8~63.1%)、対照群61.9%(同:56.2~67.2%)であり(p=0.69)、VFなし群では、介入群14.4%(同:11.3~18.2%)、対照群13.4%(同:10.4~17.2%)であった(p=0.30)。 全体として、介入群は対照群よりも再度心停止となった割合が有意に高く(26%対21%、p=0.008)、また入院後12時間までの利尿薬の使用率および初回X線での肺水腫の有病率が高かった。それらは入院後24時間以内に回復していた。 以上の結果を踏まえて著者は、「低体温療法は心停止後の脳機能回復に有望な治療戦略ではあるが、今回の結果は、臨床アウトカムを改善するためにプレホスピタルでの低体温療法をルーチンに行うことを支持しないものであった」と結論している。

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糖尿病ケトアシドーシスの輸液管理ミスで死亡したケース

糖尿病・代謝・内分泌最終判決平成15年4月11日 前橋地方裁判所 判決概要25歳、体重130kgの肥満男性。約2週間前から出現した体調不良で入院し、糖尿病ケトアシドーシス(初診時血糖値580mg/dL)と診断されてIVHによる輸液管理が始まった。ところが、IVH挿入から12時間後の深夜に不穏状態となってIVHを自己抜去。自宅で報告を受けた担当医師は「仕方ないでしょう」と看護師に話し、翌日午後に再度挿入を予定した。ところが、挿入直前に心肺停止状態となり、翌日他院へ転送されたが、3日後に多臓器不全で死亡した。詳細な経過患者情報昭和49年9月3日生まれの25歳、体重130kgの肥満男性経過平成12年3月16日胃部不快感と痛みが出現、その後徐々に固形物がのどを通らなくなる。3月28日動悸、呼吸困難、嘔気、嘔吐が出現。3月30日10:30被告病院受診。歩行困難のため車いす使用。ぐったりとして意識も明瞭でなく、顔面蒼白、ろれつが回らず、医師の診察に対してうまく言葉を発することができなかった。血糖値580mg/dL、「脱水、糖尿病ケトアシドーシス、消化管通過障害疑い」と診断、「持続点滴、インスリン投与」を行う必要があり、2週間程度の入院と説明。家族が看護師に対し付添いを申し入れたが、完全看護であるからその必要はないといわれた。11:15左鎖骨下静脈にIVHを挿入して輸液を開始。約12時間で2,000mLの輸液を行う方針で看護師に指示。18:00当直医への申し送りなく担当医師は帰宅。このとき患者には意識障害がみられ、看護師に対し「今日で入院して3日目になるんですけど、管は取ってもらえませんか」などと要領を得ない発言あり。20:30ひっきりなしに水を欲しがり、呼吸促迫が出現。ナースコール頻回。17:20水分摂取時に嘔吐あり。22:45膀胱カテーテル自己抜去。看護師の制止にもかかわらず、IVHも外しかけてベッドのわきに座っていた。22:55IVH自己抜去。不穏状態のため当直医はIVHを再挿入できず。看護師から電話報告を受けた担当医師は、「仕方ないでしょう」と回答。翌日3月31日14:00頃に出勤してからIVHの再挿入を予定し、輸液再開を指示しないまま鎮静目的でハロペリドール(商品名:セレネース)を筋注。3月31日03:00肩で大きく息をし、口を開けたまま舌が奥に入ってしまうような状態で、大きないびきをかいていた。11:00呼吸困難、のどの渇きを訴えたが、意識障害のため自力で水分摂取不能。家族の要望で看護師が末梢血管を確保し、点滴が再開された(約12時間輸液なし)。14:20担当医師が出勤。再びIVHを挿入しようとしたところで呼吸停止、心停止。ただちに気管内挿管して心肺蘇生を行ったところ、5分ほどで心拍は再開した。しかし糖尿病性昏睡による意識障害が持続。15:30膀胱カテーテル留置。17:20家族から無尿を指摘され、フロセミド(同:ラシックス)を投与。その後6時間で尿量は175cc。さらに明け方までの6時間で尿量はわずか20ccであった。4月1日10:25救急車で別の総合病院へ搬送。糖尿病ケトアシドーシスによる糖尿病性昏睡と診断され、急激なアシドーシスや脱水の進行により急性腎不全を発症していた。4月4日19:44多臓器不全により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張糖尿病ケトアシドーシスで脱水状態改善の生理食塩水投与は、14~20mL/kg/hr程度が妥当なので、130kgの体重では1,820~2,600mL/hrの点滴が必要だった。ところが、入院してから47時間の輸液量は、入院注射指示簿によれば合計わずか2,000mLで必要量を大幅に下回った。しかも途中でIVHを外してしまったので、輸液量はさらに少なかったことになる。IVHを自己抜去するような状況であったのに、輸液もせずセレネース®投与を指示した(セレネース®は昏睡状態の患者に禁忌)だけであった。また、家族から無尿を指摘されて利尿薬を用いたが、脱水症状が原因で尿が出なくなっているのに利尿薬を用いた。糖尿病を早期に発見して適切な治療を続ければ、糖尿病患者が健康で長生きできることは公知の事実である。被告病院が適切な治療を施していれば、死亡することはなかった。病院側(被告)の主張入院時の血液検査により糖尿病ケトアシドーシスと診断し、高血糖状態に対する処置としてインスリンを適宜投与した。ただし急激な血糖値の改善を行うと脳浮腫を起こす危険があるので、当面は血糖値300mg/dLを目標とし、消化管通過障害も考えて内視鏡の検査も視野に入れた慎重な診療を行っていた。原告らは脱水治療の初期段階で1,820~2,600mL/hrもの輸液をする必要があると主張するが、そのような大量輸液は不適切で、500~1,000mLを最初の1時間で、その後3~4時間は200~500mL/hrで輸液を行うのが通常である。患者の心機能を考慮すると、体重が平均人の2倍あるから2倍の速度で輸液を行うことができるというものではない。しかもIVHを患者が自己抜去したため適切な治療ができなくなり、当時は不穏状態でIVHの再挿入は不可能であった。このような状況下でIVH挿入をくり返せば、気胸などの合併症が生じる可能性がありかえって危険。セレネース®の筋注を指示したのは不穏状態の鎮静化を目的としたものであり適正である。そもそも入院時に、糖尿病の急性合併症である重度の糖尿病ケトアシドーシスによる昏睡状態であったから、短期の治療では改善できないほどの重篤、手遅れの状態であった。心停止の原因は、高度のアシドーシスに感染が加わり、敗血症性ショックないしエンドトキシンショック、さらには横紋筋融解症を来し、これにより多臓器不全を併発したためと推測される。裁判所の判断平成12年当時の医療水準として各種文献によれば、糖尿病ケトアシドーシスの患者に症状の大幅な改善が認められない限り、通常成人で1日当たり少なくとも5,000mL程度の輸液量が必要であった。ところが本件では、3月30日11:15のIVH挿入から転院した4月1日10:25までの47時間余りで、多くても総輸液量は4,420mLにすぎず、130kgもの肥満を呈していた患者にとって必要輸液量に満たなかった。したがって、輸液量が大幅に不足していたという点で担当医師の判断および処置に誤りがあった。被告らは治療当初に500~1,000mL/hrもの輸液を行うと急性心不全や肺水腫を起こす可能性もあり危険であると主張するが、その程度の輸液を行っても急性心不全や肺水腫を起こす可能性はほとんどないし、実際に治療初日の30日においても輸液を160mL/hr程度しか試みていないのであるから、急性心不全や肺水腫を起こす危険性を考慮に入れても、担当医師の試みた輸液量は明らかに少なかった。さらに看護師からIVHを自己抜去したという電話連絡を受けた時点で、意識障害がみられていて、その原因は糖尿病ケトアシドーシスによるものと判断していたにもかかわらず、「仕方ないでしょう」などといって当直医ないし看護師に対し輸液を再開するよう指示せず、そのまま放置したのは明らかな過失である。これに対し担当医師は、不穏状態の患者にIVH再挿入をくり返せば気胸が生じる可能性があり、かえって危険であったと主張するが、IVHの抜去後セレネース®によって鎮静されていることから、入眠しておとなしくなった時点でIVHを挿入することは可能であった。しかもそのまま放置すれば糖尿病性昏睡や急性腎不全、急性心不全により死亡する危険性があったことから、気胸が生じる可能性を考慮に入れても、IVHによる輸液再開を優先して行うべきであった。本件では入院時から腹痛、嘔気、嘔吐などがみられ、意識が明瞭でないなど、すでに糖尿病性昏睡への予兆が現れていた。一方で入院時の血液生化学検査は血糖値以外ほぼ正常であり、当初は腎機能にも問題はなく、いまだ糖尿病性昏睡の初期症状の段階にとどまっていた。ところが輸液が中断された後で意識レベルが悪化し、やがて呼吸停止、心停止状態となった。そして、転院時には、もはや糖尿病性昏睡の症状は治癒不可能な状態まで悪化し、死亡が避けられない状況にあった。担当医師の輸液に関する過失、とりわけIVHの抜去後看護師らに対しIVHの再挿入を指示せずに放置した過失と死亡との間には明らかな因果関係が認められる。原告側合計8,267万円の請求に対し、合計7,672万円の判決考察夜中に不穏状態となってIVHを自己抜去した患者に対し、どのような指示を出しますでしょうか。今回のケースでは、内科医にとってかなり厳しい判断が下されました。体重が130kgにも及ぶ超肥満男性が、糖尿病・脱水で入院してきて、苦労して鎖骨下静脈穿刺を行い、やっとの思いでIVHを挿入しました。とりあえず輸液の指示を出したところで、ひととおりの診断と治療方針決定は終了し、あとは治療への反応を期待してその日は帰宅しました。ところが当日深夜に看護師から電話があり、「本日入院の患者さんですが、IVHを自己抜去し、当直の先生にお願いしましたが、患者さんが暴れていて挿入できません。どうしましょうか」と連絡がありました。そのような時、深夜にもかかわらずすぐに病院に駆けつけ、鎮静薬を投与したうえで再度IVHを挿入するというような判断はできますでしょうか。このように自分から治療拒否するような患者を前にした場合、「仕方ないでしょう」と考える気持ちは十分に理解できます。こちらが誠意を尽くして血管確保を行い、そのままいけば無事回復するものが、「どうして命綱でもある大事なIVHを抜いてしまうのか!」と考えたくなるのも十分に理解できます。ところが本件では、糖尿病ケトアシドーシスの病態が担当医師の予想以上に悪化していて、結果的には不適切な治療となってしまいました。まず第一に、IVHを自己抜去したという異常行動自体が糖尿病性昏睡の始まりだったにもかかわらず、「せっかく入れたIVHなのに、本当にしょうがない患者だ」と考えて、輸液開始・IVH再挿入を翌日午後まで延期してしまったことが最大の問題点であったと思います。担当医師は翌日午前中にほかの用事があり、午後になるまで出勤できませんでした。そのような特別な事情があれば、とりあえずはIVHではなく末梢の血管を確保するよう当直スタッフに指示してIVH再挿入まで何とか輸液を維持するとか、場合によってはほかの医師に依頼して、早めにIVHを挿入しておくべきだったと考えられます。また、担当医師が不在時のバックアップ体制についても再考が必要でしょう。そして、第二に、そもそもの輸液オーダーが少なすぎ、糖尿病ケトアシドーシスの治療としては不十分であった点は、標準治療から外れているといわれても抗弁するのは難しくなります。「日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2000」によれば、糖尿病ケトアシドーシス(インスリン依存状態)の輸液として、「ただちに生理食塩水を1,000mL/hr(14~20mL/kg/hr)の速度で点滴静注を開始」と明記されているので、体重が130kgにも及ぶ肥満男性であった患者に対しては、1時間に500mLのボトルで少なくとも2本は投与すべきであったことになります。ところが本件では、当初の輸液オーダーが少なすぎ、3時間で500mLのボトル1本のペースでした。1時間に500mLの点滴を2本も投与するという輸液量は、かなりのハイペースとなりますので、一般的な感触では「ここまで多くしなくても良いのでは」という印象です。しかし、数々のエビデンスをもとに推奨されている治療ガイドラインで「ただちに生理食塩水を1,000mL/hr(14~20mL/kg/hr)の速度で点滴静注を開始」とされている以上、今回の少なすぎる輸液量では標準から大きく外れていることになります。本件では入院当初から糖尿病性ケトアシドーシス、脱水という診断がついていたのですから、「インスリンによる血糖値管理」と「多めの輸液」という治療方針を立てるのが医学的常識でしょう。しかし、経験的な感覚で治療を行っていると、今回の輸液のように、結果的には最近の知見から外れた治療となってしまう危険性が潜んでいるので注意が必要です。本件でも、ひととおりの処置が終了した後で、治療方針や点滴内容が正しかったのかどうか、成書を参照したり同僚に聞いてみるといった時間的余裕はあったと思われます。最近の傾向として、各種医療行為の結果が思わしくなく、患者本人または家族がその事実を受け入れられないと、ほとんどのケースで紛争へ発展するような印象があります。その場合には、医学書、論文、各種ガイドラインなどの記述をもとに、その時の医療行為が正しかったかどうか細かな検証が行われ、「医師の裁量範囲内」という考え方はなかなか採用されません。そのため、日頃から学会での話題や治療ガイドラインを確認して知識をアップデートしておくことが望まれます。糖尿病・代謝・内分泌

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重症感染症児への輸液ボーラス投与、48時間死亡率を上昇

 ショック患者への急速早期の輸液蘇生術は、救急治療ガイドラインに示されており、小児科における生命維持訓練プログラムでも支持されている。しかし、処置法、用量、輸液の種類に留意したエビデンスはなく、集中ケア施設がまず利用できないアフリカのような、医療資源が限られた環境下でのショック患児や生命に関わるような重症感染症児への治療に対する輸液蘇生の役割は確立されていない。そこでケニア中央医学研究所(KEMRI)のKathryn Maitland氏らは、アフリカ東部3ヵ国で輸液蘇生の効果を調べる無作為化試験を行った。NEJM誌2011年6月30日号(オンライン版2011年5月26日号)掲載より。アルブミンボーラス、生食ボーラスと対照群の3群に無作為化し48時間後の転帰を比較 研究グループは、ウガンダ、ケニア、タンザニアで、重症熱性疾患と循環不全で入院した小児を、5%アルブミン溶液20~40mL/kg体重ボーラス投与(アルブミンボーラス群)もしくは0.9%生食液20~40mL/kg体重ボーラス投与(生食ボーラス群)する群か、ボーラス投与しない群(対照群)の3群に無作為に割り付け検討した(A層試験)。このA層試験では、重症低血圧の小児は除外されB層試験にて、いずれかのボーラス投与群に無作為に割り付けられ検討された。 >被験児は全員、ガイドラインに基づく、適切な抗菌薬治療や静脈内維持輸液ならびに生命維持のためのトリアージや救急療法を受けた。なお、栄養失調または胃腸炎の患児は除外された。 主要エンドポイントは、48時間時点の死亡率とし、副次エンドポイントには、肺水腫、頭蓋内圧亢進、4週時点の死亡または神経学的後遺症の発生率などが含まれた。 A層試験は3,600例の登録を計画していたが、3,141例(アルブミンボーラス群1,050例、生食ボーラス群1,047例、対照群1,044例)が登録された時点でデータ安全モニタリング委員会の勧告により補充が停止された。 マラリアの保有率(全体で57%)、臨床的重症度は全群で同程度だった。ボーラス後48時間死亡率が有意に上昇 A層における48時間死亡率は、アルブミンボーラス群10.6%(1,050例中111例)、生食ボーラス群10.5%(1,047例中110例)、対照群7.3%(1,044例中76例)だった。生食ボーラス群 vs. 対照群の相対リスクは1.44(95%信頼区間:1.09~1.90、P=0.01)、アルブミンボーラス群vs.生食ボーラス群の相対リスクは1.01(同:0.78~1.29、P=0.96)、両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.45(同:1.13~1.86、P=0.003)だった。 4週時点の死亡率は、それぞれ12.2%、12.0%、8.7%だった(両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.39、P=0.004)。神経学的後遺症発生率は、2.2%、1.9%、2.0%だった(同1.03、P=0.92)だった。肺水腫または頭蓋内圧亢進の発生率は、2.6%、2.2%、1.7%だった(同1.46、P=0.17)。 B層では、死亡率がアルブミンボーラス群69%(13例中9例)、生食ボーラス群56%(16例中9例)だった(アルブミンボーラスの相対リスク:1.23、95%信頼区間:0.70~2.16、P=0.45)。 これらの結果は、施設間、サブグループ間(ショック重症度や、マラリア、昏睡、敗血症、アシドーシス、重症貧血の状態に基づく)で一貫して認められた。 研究グループは「医療資源が限られたアフリカでの重症循環不全児に対する輸液ボーラスは、48時間死亡率を有意に高める」と報告をまとめている。

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院外心停止に対するACD-CPR、標準的CPRよりも有効

院外心停止例に対する能動的圧迫-減圧心肺蘇生法(ACD-CPR)は、標準的CPRよりも神経機能温存退院率および1年生存率が優れることが、アメリカ・ウィスコンシン医科大学救急医療部のTom P Aufderheide氏らが行った無作為化試験で示された。ACD-CPRは、1)胸部に吸着させる吸引カップ、2)胸部の押し下げ/引き上げ用のハンドル、3)80拍/分にセットされた可聴式メトロノーム、4)操作中に圧迫、減圧の程度を表示するゲージからなる携帯式医療機器で、インピーダンス閾値弁装置(より効果的に心臓に陰圧をかけるための装置)を併用するとより高い効果が得られるとされる。胸骨圧迫が解除された拡張期圧に胸腔内圧の陰圧が増強された状態でACD-CPRを施行すると、標準的なCPRに比べ良好な血行動態が得られる可能性があるという。Lancet誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月19日号)掲載の報告。退院時の良好な神経機能温存率を評価する無作為化試験研究グループは、院外心停止に対するACD-CPRが、良好な神経機能を温存した生存に及ぼす効果および安全性を評価する多施設共同無作為化試験を実施した。アメリカの都市部、都市周辺部、地方部の46の救急医療施設(地域住人:230万人)において、院外心停止患者のアウトカムをUtsteinガイドラインに準拠して評価した。対象患者は、標準的CPRあるいはインピーダンス閾値弁装置で胸腔内圧の陰圧を増強させた状態でACD-CPRを施行する群に無作為に、暫定的に割り付けられた。心臓が原因と推定される非外傷性の心停止で、初期的および最終的な選択基準を満たした成人患者(18歳以上、確認できない場合は推定年齢)が、割り付けられたCPRを受け、最終解析の対象とされた。主要評価項目は、退院時の良好な神経機能温存率(modified Rankin scaleスコア≦3)とし、初期救助者以外の全研究者には治療割り付け情報は知らされなかった。神経機能温存退院率:6% vs. 9%、1年生存率:6% vs. 9%仮登録された2,470例が無作為に各CPRに割り付けられ、標準的CPR群(対照群)1,201例のうち813例(68%)が、ACD-CPR群1,269例のうち840例(66%)が実際に治療を受け、最終解析の対象となった。対照群では6%(47/813例)が良好な神経機能を温存した状態で退院したのに対し、ACD-CPR群は9%(75/840例)であり、有意な差が認められた(オッズ比:1.58、95%信頼区間:1.07~2.36、p=0.019)。1年生存率も対照群が6%(48/813例)、ACD-CPR群は9%(74/840例)と有意差を認め(p=0.03)、この間の認知能力、身体障害度、情緒的/心理的状態は両群で同等に保持されていた。全般に重篤な有害事象の発現率は両群間に差はなかったが、肺水腫は対照群[7%(62/813例)]よりもACD-CPR群[11%(94/840例)]で多くみられた(p=0.015)。著者は、「ACD-CPRは標準的CPRに比べ高い有効性と一般化可能性(generalizability)を有することが示された」と結論し、「この知見に基づくと、心停止後の長期生存を改善するには、標準的CPRの代替治療として胸腔内圧の陰圧増強下におけるACD-CPRの施行を考慮すべきと考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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重症急性腎障害患者への透析療法、強度を変えても90日死亡率は44.7%

米国から最近報告された急性腎障害(AKI)患者に有効とされる透析療法の強度について、オーストラリアとニュージーランドの共同研究グループ(RENAL Replacement Therapy Study)が、高低2つの強度による多施設共同無作為化試験を行い検証した。強度を高めたほうが有益ではないかとの仮説を立てての試験だったが、主要評価項目の90日死亡率に、強度による差はなかったと報告している。NEJM誌2009年10月22日号掲載より。40mL/kg体重/時と25mL/kg体重/時とで比較試験は、2005年12月30日~2008年11月28日の間に、オーストラリアとニュージーランドの35施設のICUから、18歳以上の重症のAKI患者(6時間で尿100mL未満、血清カリウム濃度6.5mmol/L超、pH 7.2未満、プラズマ尿素窒素レベル70mg/dL超、血清クレアチニン値3.4mg/dL超、肺水腫等の所見、のいずれかを満たす)が登録され行われた。被験者(1,508例)は、後希釈の持続的静静脈血液濾過透析を、高強度で受ける群(40mL/kg体重/時、747例)と、低強度で受ける群(25mL/kg体重/時、761例)に、無作為に割り付けられ追跡された。主要評価項目は、無作為化後90日以内の死亡とした。90日死亡率、両群ともに44.7%主要評価項目に関するデータは、高強度群721例、低強度群743例、計1,464例(97.1%)から得られた。両群の基線時の特徴は同様で、平均治療期間は高強度群6.3日、低強度群5.9日(P = 0.35)。無作為化後90日以内の死亡は、高強度群322例、低強度群332例で、両群とも死亡率は44.7%で差はなかった(オッズ比:1.00、95%信頼区間:0.81~1.23、P = 0.99)。一方で、90日時点で生存していた人のうち透析療法を継続していたのは、高強度群6.8%(27/399例)だったのに対し、低強度群は4.4%(18/411例)だった(オッズ比:1.59、95%信頼区間:0.86~2.92、P = 0.14)。低リン酸血症は、高強度群のほうが低強度群に比べて、より多く見られた(65%対54%、P

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急性心原性肺水腫への非侵襲的換気療法、死亡率は改善せず

急性心原性肺水腫患者に対して、気管切開・挿管によらない非侵襲的換気療法(持続気道陽圧換気療法:CPAP、または非侵襲的間欠陽圧換気療法:NIPPV)は有効で、死亡率を低下させる可能性があるとされる。そこで、英国エジンバラ王立病院のAlasdair Gray氏らThree Interventions in Cardiogenic Pulmonary Oedema:3CPOの研究グループは、気管挿管による標準酸素療法とCPAP、NIPPVを比較検討した。NEJM誌2008年7月10日号より。患者1,069例を3療法に割り付け7日間の転帰を比較非侵襲的換気療法が死亡率を低下させるかどうか、CPAPとNIPPVの転帰に重大な違いがあるかどうかを見極めるため、多施設共同公開前向き無作為化試験を行った。患者合計1,069例(平均年齢±SD:77.7±9.7歳、女性56.9%)を、標準酸素療法367例、CPAP(5~15cm H2O)346例、NIPPV(吸気圧:8~20cm H2O、呼気圧:4~10cm H2O)356例に、それぞれ割り付けた。非侵襲的換気療法と標準酸素療法を比較する主要エンドポイントは処置後7日以内の死亡。NIPPVとCPAPを比較する主要エンドポイントは同7日以内の死亡または挿管実施とした。呼吸困難と代謝障害は急速に改善するが7日後の死亡率では、標準酸素療法群(9.8%)と非侵襲的換気療法群(9.5%)に有意差はなかった(P=0.87)。非侵襲的換気療法の7日以内の死亡または挿管実施の複合エンドポイントは、CPAP(11.7%)とNIPPV(11.1%)の間に有意差はなかった(P=0.81)。非侵襲的換気療法は標準酸素療法と比較して、患者自身の申告による呼吸困難(療法差:1~10の視覚アナログスケールで0.7、95%信頼区間:0.2~1.3、P=0.008)、心拍数(療法差:毎分4拍、95%信頼区間:1~6、P=0.004)、アシドーシス(療法差:pH 0.03、95%信頼区間:0.02~0.04、P

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