院外心停止に対するACD-CPR、標準的CPRよりも有効

提供元:ケアネット

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公開日:2011/02/03

 



院外心停止例に対する能動的圧迫-減圧心肺蘇生法(ACD-CPR)は、標準的CPRよりも神経機能温存退院率および1年生存率が優れることが、アメリカ・ウィスコンシン医科大学救急医療部のTom P Aufderheide氏らが行った無作為化試験で示された。ACD-CPRは、1)胸部に吸着させる吸引カップ、2)胸部の押し下げ/引き上げ用のハンドル、3)80拍/分にセットされた可聴式メトロノーム、4)操作中に圧迫、減圧の程度を表示するゲージからなる携帯式医療機器で、インピーダンス閾値弁装置(より効果的に心臓に陰圧をかけるための装置)を併用するとより高い効果が得られるとされる。胸骨圧迫が解除された拡張期圧に胸腔内圧の陰圧が増強された状態でACD-CPRを施行すると、標準的なCPRに比べ良好な血行動態が得られる可能性があるという。Lancet誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月19日号)掲載の報告。

退院時の良好な神経機能温存率を評価する無作為化試験




研究グループは、院外心停止に対するACD-CPRが、良好な神経機能を温存した生存に及ぼす効果および安全性を評価する多施設共同無作為化試験を実施した。

アメリカの都市部、都市周辺部、地方部の46の救急医療施設(地域住人:230万人)において、院外心停止患者のアウトカムをUtsteinガイドラインに準拠して評価した。対象患者は、標準的CPRあるいはインピーダンス閾値弁装置で胸腔内圧の陰圧を増強させた状態でACD-CPRを施行する群に無作為に、暫定的に割り付けられた。

心臓が原因と推定される非外傷性の心停止で、初期的および最終的な選択基準を満たした成人患者(18歳以上、確認できない場合は推定年齢)が、割り付けられたCPRを受け、最終解析の対象とされた。

主要評価項目は、退院時の良好な神経機能温存率(modified Rankin scaleスコア≦3)とし、初期救助者以外の全研究者には治療割り付け情報は知らされなかった。

神経機能温存退院率:6% vs. 9%、1年生存率:6% vs. 9%




仮登録された2,470例が無作為に各CPRに割り付けられ、標準的CPR群(対照群)1,201例のうち813例(68%)が、ACD-CPR群1,269例のうち840例(66%)が実際に治療を受け、最終解析の対象となった。

対照群では6%(47/813例)が良好な神経機能を温存した状態で退院したのに対し、ACD-CPR群は9%(75/840例)であり、有意な差が認められた(オッズ比:1.58、95%信頼区間:1.07~2.36、p=0.019)。

1年生存率も対照群が6%(48/813例)、ACD-CPR群は9%(74/840例)と有意差を認め(p=0.03)、この間の認知能力、身体障害度、情緒的/心理的状態は両群で同等に保持されていた。

全般に重篤な有害事象の発現率は両群間に差はなかったが、肺水腫は対照群[7%(62/813例)]よりもACD-CPR群[11%(94/840例)]で多くみられた(p=0.015)。

著者は、「ACD-CPRは標準的CPRに比べ高い有効性と一般化可能性(generalizability)を有することが示された」と結論し、「この知見に基づくと、心停止後の長期生存を改善するには、標準的CPRの代替治療として胸腔内圧の陰圧増強下におけるACD-CPRの施行を考慮すべきと考えられる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)