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デキサメタゾン1日投与の制吐効果は?/Oncologist

 化学療法誘発性悪心・嘔吐(CINV)の予防に用いられるデキサメタゾンについて、投与日短縮法の制吐効果が明らかにされた。松下記念病院の岡田優基氏らは、パロノセトロン併用下でのデキサメタゾンの適切な投与期間について、個々の患者データに基づいたメタ解析を行った。Oncologist誌オンライン版2019年6月19日掲載の報告。 研究グループは、中等度催吐性リスク化学療法またはアントラサイクリン+シクロホスファミドを含む化学療法を受ける化学療法未治療の成人患者を対象に、パロノセトロン+デキサメタゾンday1(d1群)とパロノセトロン+デキサメタゾンday1~3(d3群)のCINVに対する効果を比較検討した無作為化臨床試験について、PubMedおよびMEDLINEを用いて検索するとともに手作業でも検索し、システマティックレビューを行った。 主要評価項目は、全期間(化学療法開始後5日間)における嘔吐なし・救済治療なしの嘔吐完全抑制率(CR率)で、非劣性マージンは-8.0%(d1群-d3群)とした。 主な結果は以下のとおり。・無作為化臨床試験5件(計1,194例)が解析に組み込まれ、個々の患者データが収集された。・d1群のCR率は、d3群に対して非劣性であることが示された(リスク差:-1.5%、95%CI:-7.0~4.0%、I2=0%)。・デキサメタゾンのレジメンと、リスク因子(化学療法の種類、性別、年齢、アルコール消費)との間に有意な相互作用はなかった。

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加熱式タバコによる受動喫煙の害は?【新型タバコの基礎知識】第8回

第8回 加熱式タバコによる受動喫煙の害は?Key Points加熱式タバコによる受動喫煙のリスクは、あるかないかで言えば、ある。ただし、紙巻タバコと比べると程度は低いと考えられる。すでに禁煙になっている場所を加熱式タバコはOKとすべきではない。加熱式タバコによる受動喫煙はどれぐらい発生するのでしょうか?屋内空間で加熱式タバコを使用したときにどれぐらいの濃度で、粒子状物質や有害物質が検出されるのか、調べた研究がこれまでに3つあります。その3つの文献の結果をまとめたのが表です。画像を拡大する一番左の文献を例として表の見かたを説明します。Ruprechtらによる2017年の研究は、イタリア国立がんセンターの研究者らが実施した研究です。アイコス・スティックと紙巻タバコのそれぞれを用いた場合に、屋内空間に充満する有害物質の濃度を1時間に1.5回換気するという設定で測定しています。基準となる紙巻タバコの場合の有害物質の濃度を100%とした場合に、アイコス・スティックの場合の有害物質濃度が何%に相当するのか、が表されています。たとえば、PM2.5の濃度は1.3~1.5%であり、アセトアルデヒドは5.0~5.9%、ホルムアルデヒドは6.9~7.1%でした。100%より小さな値=加熱式タバコの場合の濃度が低いことを表しています。3つの文献の結果をみると、右2つのタバコ会社からの報告では、粒子状物質(PM:particulate matter)が検出されていないのに対して、タバコ会社から資金提供のない研究機関からの報告では検出されていると分かります。しかも、タバコ会社による研究では測定されていなかったPM nmという10~1,000nmの大きさの粒子状物質が比較的多く出ていると分かりました。ただし、比較的多いといっても紙巻タバコと比べると4分の1から5分の1というレベルであり、他の大きさの粒子状物質の濃度は紙巻タバコに比べてかなり低く、PM2.5で100分の1から50分の1というレベルでした。3種のアルデヒド類の濃度を比較すると、タバコ会社による研究ではアクロレインが検出されていませんが、イタリア国立がんセンターの研究では検出されています。アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドについては3つの研究すべてで検出されており、紙巻タバコの場合と比較して、おおよそ10分の1から20分の1の濃度でした。それでは、加熱式タバコによる受動喫煙の被害はあるといえるのでしょうか? あるかないかで言えば、あるが答えだといえるでしょう。ただし、程度が問題でもあります。加熱式タバコでは副流煙(吸っていない時にタバコの先端から出る煙のこと)がないため、受動喫煙は紙巻タバコと比べれば、かなり少なくなります。加熱式タバコであれば、屋内に発生する粒子状物質の濃度は紙巻タバコの数%というレベルに減らすことができるのです。とはいえ、受動喫煙がまったくないわけではなく、加熱式タバコからもホルムアルデヒドなどの有害物質が放出されています。加熱式タバコによる受動喫煙の被害については、それぞれケースバイケースで考える必要があるといえるでしょう。もともと屋内で紙巻タバコを吸っていた人が加熱式タバコに完全にスイッチできれば、受動喫煙の害は減らせるかもしれません。屋内での紙巻タバコの喫煙は、皆が考えているよりもはるかに危険といえます。屋内で喫煙すると、すぐに大気汚染の緊急事態レベルとなっているのです。たとえば、屋内で3人が喫煙するレストランではPM2.5濃度が600μg/m3となり、この値は大気汚染の緊急事態レベル濃度500μg/m3よりも高いものです*。また、喫煙する自動車内では、PM2.5の1時間平均値は750μg/m3と非常に高い値となります。紙巻タバコを加熱式タバコに置き換えることができれば、PM2.5を減らすことができるでしょう。一方、もともと禁煙だった場所なのに、加熱式タバコが使われるようになるケースもあることに、注意が必要です。自宅内ではタバコを吸わないルールだったのに、加熱式タバコならいいだろうと言って、禁煙から加熱式OKへと後退してしまうケースなどです。そういったケースが続出しているのです。その場合には、いままでなかった受動喫煙の被害が発生してしまうこととなります。家庭では、子どもや家族が受動喫煙の危険にさらされてしまうのです。また、世の中には、タバコの煙やエアロゾルから被害を受けやすい人もいます。狭心症などの虚血性心疾患、気管支喘息や化学物質過敏症の患者さんが代表例です。少量の曝露でも、発作を起こしたり、体調を崩したりするなどの健康被害が起きてしまう可能性があります。受動喫煙に関しては、加熱式タバコの方がましかもしれないからといって、単純に加熱式タバコならOK、とは考えるべきではないのです。第9回は、「新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?」です。*微小粒子状物質(PM2.5):大気中に浮遊する小さな粒子のうち、粒子の大きさが2.5µm以下の非常に小さな粒子のこと。PM2.5の健康影響について、米国の研究では、大気中のPM2.5値が10μg/m3増えると、心臓や肺の疾患による死亡率が9%、肺がん死亡率が14%、全死亡率が6%増えると報告された。2013年、日本の環境省は「健康影響が出現する可能性が高くなる濃度水準」をPM2.5日平均値で70μg/m3と定め、それを超えた場合には、不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らすこと、呼吸器系や循環器系疾患のある者・小児・高齢者などにおいては体調に応じてより慎重に行動することが望まれるとしている。

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化学療法誘発性悪心嘔吐に対するオランザピン5mgの追加効果(J-FORCE)/日本がんサポーティブケア学会

 オランザピンは化学療法誘発性悪心嘔吐(CINV)に対して有効であるが、国際的に使用されている用量10mgでは過度の鎮静が懸念されている。NCCNやMASCC/ESMOの制吐療法ガイドラインでは、5mgへの減量について言及しているもののエビデンスはない。わが国では、標準制吐療法へのオランザピン5mgの上乗せ効果を検証した3つの第II相試験が行われ、その有効性が示唆されている。そこで、シスプラチン(CDDP)を含む化学療法に対する標準制吐療法へのオランザピン5mg上乗せの有用性の検証を目的としたプラセボ対照二重盲検無作為化第III相J-FORCE試験が行われた。その結果を第4回日本がんサポーティブケア学会学術集会において、静岡県立静岡がんセンターの安部 正和氏が発表した。・対象:CDDP50mg/m2以上を含む高度催吐性化学療法(HEC)を受ける固形がん患者・試験群:オランザピン5mg(day1~4)+標準制吐療法(パロノセトロン0.75mg[day1]+アプレピタント125mg[day1]、80mg[day2~3]+デキサメタゾン12mg[day1]、8mg[day2~4])・対照群:プラセボ(day1~4)+標準制吐療法(同上)・評価項目:[主要評価項目]遅発期CR(Complete Response=嘔吐なし、救済治療なし)割合。[副次評価項目]急性期(CDDP開始~24時間)および全期間(CDDP開始~120時間)のCR割合、各期間のCC(Complete Control=CRかつ悪心なしまたは軽度)割合とTC(Total Control=CRかつ悪心なし)割合、治療成功期間、眠気と食欲不振割合、患者満足度など 主な結果は以下のとおり。・710例の患者が登録され、オランザピン群356例、プラセボ群354例に無作為に割り付けられた。安全性解析は706例、有効性解析は705例で行われた。・遅発期CR割合はオランザピン群79%、プラセボ群66%とオランザピン群で有意に良好であった(p<0.001)。また、その差は13.5%と国際的コンセンサスで有効とされる10%を満たした。・副次評価項目である急性期および全期間のCR割合、各期間のCC割合はいずれも有意にオランザピン群で良好であった。各期間のTC割合は、急性期を除き有意にオランザピン群で良好であった。・治療関連有害事象である眠気、口喝、浮遊性めまいはオランザピン群で多くみられた。・「日中の眠気あり」の頻度は両群で大きな差はなく、「不眠なし」と「食欲低下あり」の頻度はオランザピン群で良好であった。・患者満足度は、「とても満足・満足」の割合は有意にオランザピン群で良好であった(p<0.001)。

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PD-1阻害薬による免疫関連肺臓炎はNSCLC患者の予後を悪化させる

 PD-1阻害薬の免疫関連有害事象の1つである肺臓炎は、時に致命的となることが知られるが、予後にどの程度影響するのかは明らかになっていない。名古屋大学大学院医学部の富貴原 淳氏らは、PD-1阻害薬の投与を受けた非小細胞肺がん(NSCLC)患者を後ろ向きに解析し、免疫関連肺臓炎(IRP)の発症と予後の関係を検討した。Clinical Lung Cancer誌オンライン版2019年8月1日号掲載の報告。 研究グループは、2016年1月~2018年3月の間に、PD-1阻害薬(ニボルマブまたはペムブロリズマブ単剤療法)を用いた再発/進行NSCLC患者について、後ろ向きに解析した。 胸部X線画像上の片側浸潤陰影も、PD-1阻害薬に関連すると考えられる場合はIRPとした。 主な結果は以下のとおり。・170例中27例(16%)がIRPを発症した。・IRPを発症した27例中22例(81%)が、副腎皮質ステロイドの有無にかかわらずPD-1阻害薬の投与中止で回復した。・8週間のランドマーク解析の結果、PD-1阻害薬投与後の全生存期間は、IRP発症群が非発症群より有意に短かった(8.7ヵ月vs.23.0ヵ月、p=0.015)。・IRP発症群は、PD-1阻害薬中止後は後方治療を受けずに支持療法(BSC)を選択する傾向がみられた。・多変量解析では、ペムブロリズマブ(対ニボルマブ)および血清アルブミン低値が、IRPの独立したリスク因子であることが示された。

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医療ベンチャーバブルが弾けたとき、本物だけが残る【Doctors' Picksインタビュー】第2回

自治医科大学から地域医療の現場を経て米国・スタンフォード大学に渡り、研究と教育に携わってきた池野 文昭氏。本拠地を米国に置きつつ、日本において医療アントレプレナー育成プログラムの普及、政府系研究開発機関の支援、医療ベンチャーキャピタルの経営など、八面六臂の活躍を見せる。さらに、業務の合間を縫って日本全国の医学部、工学部、文系学部に赴き、起業を志す学生を鼓舞する。精力的な活動の根底にあるのは「医療という切り口で日本をデザインしたい」との思い。米国から見た日本の起業家教育・医療ベンチャーの現状と問題点を鋭く語る。――日本の医療ベンチャーに多方面から関わっていらっしゃいますが、現状をどうご覧になりますか?日本の医療ベンチャー界隈は、完全に「バブル」の様相を呈しています。これまで、コンシューマ系、ソーシャル・ネットワーク系の企業に投資されていた資金が「医療系なら有望では」といった曖昧な基準で流れ込み、会社の価値に対して時価総額が上がり過ぎているベンチャーが多数あります。医療は、医師などの資格を持った人間が購入し使用する「医業領域」、健康人が購入し使用する「ウェルネス領域」、そして、その中間に位置する「患者が購入し、使用する領域」(介護、福祉関連など)に分けられます。このうち、「ウェルネス領域」は、当局の許可を得る必要がないため参入障壁は低いですが、その分、レッド・オーシャンかつ新しい市場なので、なかなか持続性のあるビジネスモデルをつくることができません。逆に「医業領域」は、その専門性により、参入障壁は非常に高いですが、一度壁を乗り越えれば国の制度にのっとり、それなりの市場獲得が期待できます。しかし、ここでも、昨今の医療費高騰のあおりを受けて保険償還価格は下がっており、決してバラ色の未来が待っているわけではありません。こうした状況にもかかわらず、医療ベンチャーに資金が集まる理由はいくつかあります。1つ目は、医療ベンチャーの目利きをするベンチャーキャピタル(VC)が、その役割を果たせていないこと。その原因は「人材」です。米国では医療VCにはM.D.やPh.D.保有者が一定の割合で在籍しています。医療・科学の専門家とビジネス・投資の専門家、ときにはその両方の専門性を持つ人材が判断するからこそ筋の良いものだけが残る。しかし、日本はまだそうなっていません。2つ目は、プレーヤーの変化です。これまでの医療機器開発は「医業領域から患者・健康人向け領域へ」という道筋をたどってきました。たとえば、かつて医療者しか使えなかった血圧計は、患者・健康人向けの製品として普及しました。つまり、専門家向け製品を作るプレーヤーしか市場にいなかったのです。それが、今はスマホアプリやゲームをはじめ、健康人向けを起点としたプロダクトが多数あります。プレーヤーが多様になったのと同時に、これらのIT企業への投資で利益を得てきたVCも一緒に市場に入ってきた。これは非常に良いことではあるのですが、市場規模を誤って判断し、本来の市場規模を無視した投資も行われるようになったと感じます。3つ目は、国策です。2018年に経済産業省が「世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出す」ことをうたって「J-Startup」プログラムを開始しました。ここでは「2023年までに企業価値または時価総額が10億ドル以上となる未上場・ベンチャー企業(ユニコーン)または上場ベンチャー企業を20社創出」という目標を検討しているそうです。官の後ろ盾を得てさらに資金が集まりやすくなっている、という構造です。ここで思い出すのが、2001年に小泉 純一郎内閣の「骨太の方針」の一環として掲げられた「大学発ベンチャー1000社計画」です。実際、2006年までに1,600近いベンチャーが立ち上がったのですが、その多くは立ち消えとなりました。国策としてのベンチャー支援は重要ですが、数だけを追っても意味がないことを学んでいないのです。「数」とともに「規模」目標も疑問です。ソーシャル・ネットワーク系、ゲーム系、シェアエコノミー、自動運転などの領域では、企業価値10億ドル超の「ユニコーン」輩出も十分ありうると思いますが、医療系でこの規模を目指せ、というのは無理があります。国内の医療市場を考えるとおかしな企業価値になってしまい、結局ベンチャー自身の首を絞めることを危惧しています。――こうした状況は続くのでしょうか?市場の実態に見合っていないバブルですから、いつかは弾けます。米国でもTheranos(セラノス)の例がありました。2003年、19歳の若手創業者による「指先から採取した一滴の血液で200種もの疾病を検査できる」という画期的なプロダクトアイデアを基に登場した同社は大きな注目を集め、一時は時価総額が90億ドル(約1兆円)にもなりました。しかし、2015年に検査技術に疑念を呈す報道が出て、過去の検査結果を偽造していたことがわかり、創業者は不正に市場から資金を調達した罪で有罪となる見込みです。上がり続ける期待と集まり過ぎた資金に、技術力が付いていかなかったがための悲劇です。日本でもこうした例が出て市場が一気に冷え込んでしまうのでは、と懸念しています。ただ、バブルは悪いことばかりではありません。大型の株式上場や資金調達は国内外の注目を集めますし、資金が集まることで研究開発の裾野も広がるでしょう。大切なのはバブルが弾けた後、きちんと「本物」が残ることです。そのために、本当に画期的なアイデアと技術力のあるベンチャーを見極め、適切な規模の資金を調達し、身の丈に合った成長を支援していかねばなりません。私自身が関わる会社は、そうした本当のVCの役割を果たしてきたつもりです。――残る「本物」とは、どういったベンチャーでしょうか?私自身は、高い研究開発力を基盤とし、資金も時間もかけてプロダクトを開発する、医業領域の「ディープテック」を応援したいと考えています。製薬などもここに含まれるでしょう。これらの事業は開発に時間もお金もかかり、投資的な妙味は薄いかもしれません。しかし、成功すれば治らなかった病気が治るなど本当に世界を変えることができます。加えて、これからはAI技術を使って開発精度やスピードが格段に向上する可能性があることも大きなプラス材料です。一方、ウェルネス領域のアプリなどのビジネスは初期投資が少なく、専門性や技術力もそこまでは要しない。米国でもダイエットアプリを手掛ける企業が数え切れないほど登場しています。同国ではBMIが30%超の人が3割もいて「痩せ」は巨大な市場です。でも、実際の効果はどうでしょう? 1つのアプリでは効果が出ないので、次々にアプリを乗り換え、結果的に複数の会社のビジネスが成り立っている、というのが現状ではないでしょうか。これでは、ビジネスとしては成り立っていても、何ら社会に変化を与えていません。医療分野でビジネスをするなら、人を健康にし、社会を良い方向に変えることに寄与すべきだと思うのです。――日本でも多くのベンチャー支援や起業家教育に関わっていらっしゃいますね。日本のベンチャーを巡る環境に変化は出ていますが、米国とはまだ比べものになりません。例えるならば、オリンピック金メダリストと中学生代表くらいのレベル差がまだある。教育は非常に重要ですが成果が出るまで時間がかかりますし、ビジネスにも選挙の票にもなりにくいので後回しにされがちですが、今踏ん張って取り組めば、後からじわじわと効果が出てくるはずです。今、日本の15大学で客員教授を務め、帰国のたびに各地を回ってイノベーションにまつわる講義をしています。私が学生の頃は「起業」という選択はまったく現実味がありませんでしたし、ましてや「医師の起業」は、正気の沙汰ではないとされた時代です。しかし、今の学生は違います。起業を現実的な選択肢として捉える人が増えたことを実感します。ただ、起業は「手段」であって「目的」ではない。そこを勘違いしている方も多いので、「何の社会問題を解決するために起業するのか」と絶えず問い掛けるようにしています。――現役の医師に伝えたいことは?起業に興味がある方がいれば、ぜひトライしてみてほしい。もちろん向き不向きがありますから、皆にやれとは言いません。でも、皆さんは国内のトップライセンス、医師免許を持っています。仮に起業に失敗したとしても、食べてはいけるでしょう。その恵まれた立場を活かさない手はないと思うのです。このインタビューに登場する医師は医師専用のニュース・SNSサイトDoctors’ PicksのExpertPickerです。Doctors’ Picksとは?著名医師が目利きした医療ニュースをチェックできる自分が薦めたい記事をPICK&コメントできる今すぐこの先生のPICKした記事をチェック!私のPICKした記事Apple, Microsoft and Google to test new standard for patient access to digital health data – TechCrunch7月末に発表された「Apple、Google、Microsoftがヘルスデータに関する新標準規格をテストする」というニュース。日本でも健康診断結果や検査データを医療機関が共有したり、患者本人に閲覧・管理権限を与えたり、という試みは多く行われているが、規格統一やセキュリティの問題から、広がりに欠けるのが実情。巨大IT企業と米政府の推進で実用化にどこまで近づくか。関連サービスの広がりも期待できる。医師から関心も高く、多くのコメントが付いた。

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StageIV NSCLC、全身治療に局所治療を併用するベネフィット

 非小細胞肺がん(NSCLC)は広がりやすい傾向にあり、診断時すでに55%の患者が遠隔転移を有するStageIVだとされる。全身治療が中心であるStageIVのNSCLCにおいて、ドイツ・ゲッティンゲン大学医療センターのJohannes Uhlig氏らは、National Cancer Database(NCDB)に登録された3万4,887例について解析し、全身治療単独よりも、原発腫瘍の外科的切除、もしくは体外照射療法または熱腫瘍アブレーション(EBRT/TA)との併用による、生存ベネフィット改善の可能性が示されたと発表した。JAMA Network Open誌2019年8月2日号掲載の報告。 研究グループは、StageIVのNSCLCの原発腫瘍に対する局所治療の追加が、全身治療単独よりも生存ベネフィットを上乗せするかを評価する検討を行った。NCDBの2018バージョンを後ろ向きに検索し、2010年1月1日~2015年12月31日に、病理組織学的にStageIVと診断されたNSCLCの患者を特定した。 2018年11月1日~2019年1月1日にデータを解析。(1)外科的切除+全身治療(手術併用群)、(2)EBRT/TA+全身治療(EBRT/TA併用群)、(3)全身治療単独について比較検討した。TAには、凍結療法とラジオ波凝固療法が含まれた。 主要評価項目は、全生存期間(OS)。多変量Cox比例ハザード回帰モデル法を用いて療法群間の比較検討を行い、その後に傾向スコアマッチング法にてEBRT/TA併用群と全身治療単独群について比較検討した。 なお治療割付は、人口統計学的因子およびがん特異的因子が関係しており、手術併用群への割付尤度は、オリゴメタスタシスのNSCLCで高かった。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした対象者は、3万4,887例であった。男性1万9,002例(54.4%)、年齢中央値68歳。・手術併用群835例、EBRT/TA併用群9,539例、全身治療単独群2万4,513例であった。追跡期間中央値は39.4ヵ月。・手術併用群のOSは他の2つの治療群と比べて有意に優れていた(EBRT/TA併用群に対するハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.57~0.67、p<0.001、全身治療単独群に対するHR:0.59、95%CI:0.55~0.64、p<0.001)。・EBRT/TA併用群のOSは全身治療単独群と比べて有意に優れていた(HR:0.95、95%CI:0.93~0.98、p=0.002)。・交互作用の解析において、治療効果にはばらつきがあることが確認され、EBRT/TA併用は、T(腫瘍径)とN(リンパ節転移)が限定された腫瘍およびオリゴメタスタシスを有するStageIVの扁平上皮がんで、とくに生存ベネフィットをもたらした(HR:0.68、95%CI:0.57~0.80、p<0.001)。・同患者における全生存率(EBRT/TA併用vs.全身治療単独)は、1年時点で60.4% vs.45.4%、2年時点で32.6% vs.19.2%、3年時点で20.2% vs.10.6%であった。

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診断時に6割が悪液質の基準満たす!高齢者肺がん シリーズがん悪液質(4)【Oncologyインタビュー】第10回

近年、肺がん治療は急速に進化し、生命予後も顕著に改善している。しかし、肺がん患者におけるがん悪液質の発症頻度は高く、その生命予後への影響は現在においても大きい事が報告されている。肺がんと悪液質の発現と、その弊害について、静岡県立静岡がんセンターの内藤 立暁氏に聞いた。肺がんにおける悪液質はどのような形で現れるのでしょうか。進行肺がんを有する患者さんは、診断の時点で半数以上ががん悪液質を有していますが、そのことは本人も、家族も、診療している医療従事者も気づいていない場合が多いようです。がん悪液質を有する肺がん患者さんは、身体機能が低下し、化学療法の副作用が多く、生存期間が短いことがわかっています。したがって、化学療法などによって腫瘍を制御することはできても、全体的にみると臨床転帰は悪いということをしばしば経験するのです。このような患者さんにおいては、がん悪液質の存在をできるだけ早く診断し、適切な栄養療法や運動療法などの支持療法を併用することで、がん治療を長く継続でき、身体機能も維持されるのではないかと考えられています。肺がんと悪液質について今までの研究について教えていただけますか。私たちは、70才以上の高齢の進行肺がんの患者さん60例の体重、骨格筋量、身体機能、日常生活動作を定期的に測定する観察研究「進行肺癌を有する高齢者の日常生活動作の観察研究」(UMIN000009768)を実施しました。画像を拡大するその結果、がんの診断の時点で約6割(58%)の患者さんが悪液質の基準(スライド参照)を満たし、3割(28%)の患者さんが前液質の状態(2~5%の体重減少)にありました。つまり、約9割は初診時に前悪液質以上の状態だったことになります。表に示すように、診断の時点において、前悪液質あるいは悪液質の患者さんは、PS良好で、食欲もあり、体格や食欲についても非悪液質の患者さんと大差はなく、外見上は非常に鑑別の難しい状態にあります。体重減少という簡単な指標に注目することで、これだけ多くの患者さんで栄養障害が潜在的に存在していることがわかるのです。ちなみに、1年後には状況はさらに悪化し、8割程度が悪液質の基準を満たしてしまいます。画像を拡大するこの研究の副解析で、高齢の肺がん患者さんにおいて、がんの診断から死亡に至るまで、どのような順序で体の変化が生じるかを調査しました。体重減少以外にどのような身体的なイベントが起きるのでしょうか。さまざまイベントが起きますが、その発現には順番があります。各イベント発現の中央値をみると、体重減少は進行がんの早期、最初のイべントとして起きます。それに続いて起こるのが歩行機能障害です。抗がん剤治療開始後3ヵ月の段階で、半数以上の患者さんに歩行機能障害が起きています。約半年で筋力(握力)低下し、約1年後には要介護状態となります。また要介護から約半年後に、死亡の最終イベントが生じます。画像を拡大する画像を拡大するがんの治療では生存に目が行きがちですが、その間に体重減少から始まるさまざまな身体的イベントが起こっていることが、この観察研究でおわかりいただけるのではないかと思います。悪液質が起こることによる弊害は?同じ研究のステージIVの集団の解析から、診断時に悪液質であった患者さんは、そうでなかった患者さんに比べると、同じ生存期間であっても要介護状態の方が顕著に多いことがわかります。つまり、悪液質の患者さんは健康寿命も短いのです。画像を拡大するまた、がん悪液質の存在は医療依存度にも関連があります。非悪液質患者さんの診断から1年間の入院日数は60日間であるのに対し、悪液質患者さんは92日間も入院しています。1年間で1ヵ月も入院期間が長いことが明らかになりました。それに伴い、悪液質患者さんの医療費は年間150万円、非悪液質患者さんよりも多くなります。その医療費の追加分の内訳は、合併症による予定外受診や緊急入院、緩和治療に対する用途が多くを占めていました。このようなところにも悪液質の弊害は表れています。画像を拡大する肺がんの中でも悪液質の発現には違いがあるのでしょうか。腫瘍熱を有していたり、血清CRP値の高い症例では、慢性的炎症とそれに伴うサイトカインの分泌などから、がん悪液質を起こしやすいと考えられています。高齢者の肺がんでは、悪液質をケアし身体機能を良好に保ちつつ、がん治療を行うことが必要ですね。その通りです。これらの研究結果から、特に高齢者の担がん患者さんにおいては、管理栄養士、理学療法士、看護師、医師が連携し、栄養サポートやリハビリを組み合わせた支持医療を提供していくことが重要と考えています。このようながん悪液質に対する集学的支持医療は、患者さんの生命予後の延長だけでなく、機能予後の改善も期待できるのではないかと思います。1)内藤立暁, 髙山浩一, 田村和夫 日本がんサポーティブケア学会2019年3月2)森 麻理子, 青山 高, 内藤 立暁ほか 日本病態栄養学会誌.2017:20:205-213.3)Naito T. Evaluation of the True Endpoint of Clinical Trials for Cancer Cachexia. Asia Pac J Oncol Nurs.2019;6:227-233.4)Naito T, Okayama T, Aoyama T, et.al. Unfavorable impact of cancer cachexia on activity of daily living and need for inpatient care in elderly patients with advanced non-small-cell lung cancer in Japan: a prospective longitudinal observational study. BMC Cancer.2017;17:800.5)Naito T, Okayama T, Aoyama T, et.al. Skeletal muscle depletion during chemotherapy has a large impact on physical function in elderly Japanese patients with advanced non-small-cell lung cancer. BMC Cancer.2017;17:571.

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NSCLC免疫治療のバイオマーカーと生存期間の関係

 非小細胞肺がん(NSCLC)における免疫療法の役割や現在のバイオマーカーの臨床的関連について、興味深い知見が示された。中国・中山大学のYunfang Yu氏らは臨床試験計31件のメタ解析を行い、免疫療法はNSCLC患者の予後改善が期待できること、免疫療法の有効性を評価するバイオマーカーとしてはPD-L1発現と腫瘍遺伝子変異量(TMB)の併用が有用で、CD8+T細胞腫瘍浸潤リンパ球も加えることでさらに信頼性が高い予後予測が可能となることを示した。著者は、「これらを併用した予測値について、前向き大規模臨床試験で確認する必要がある」とまとめている。JAMA Network Open誌2019年7月号掲載の報告。 研究グループは、進行NSCLC患者における免疫チェックポイント阻害薬、腫瘍ワクチンおよび細胞性免疫療法と臨床転帰との関連を評価し、適切な治療戦略、対象および予測因子を探索する目的で、メタ解析を行った。 PubMed、EMBASEおよびCochrane Central Register of Controlled Trialsのデータベースを用い、2018年6月までに発表された論文について、tumor vaccine、cellular immunotherapy、immune checkpoint inhibitor、cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4、programmed death-ligand 1、programmed death receptor 1、non-small cell lung carcinomaを含むキーワードおよびMeSH用語で検索するとともに、システマティックレビュー、メタ解析、参考文献、学会抄録集は手作業で検索した。進行/転移NSCLC患者を対象に、免疫チェックポイント阻害薬、腫瘍ワクチンまたは細胞性免疫療法と従来の治療法について、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)または奏効率(ORR)を比較している無作為化臨床試験で、英語の論文を解析に組み込んだ。解析は2018年2月1日~8月31日に行われた。 主要評価項目は、OSおよびPFSであった。 主な結果は以下のとおり。・無作為化臨床試験31件、計1万4,395例(男性66%)がメタ解析に組み込まれた。・従来の治療法と比較して、免疫療法はOS(HR:0.76、95%CI:0.71~0.82、p<0.001)およびPFS(HR:0.76、95%CI:0.70~0.83、p<0.001)の有意な延長と関連した。・PD-L1発現とTMBを併用した予後予測は、それぞれの単独よりも有用であった。全エクソームシークエンス実施群では、併用法による1年PFSに関するROC(receiver operating characteristic curve)のAUC(area under the curve)が0.829、3年PFSのAUCが0.839、ターゲット次世代シークエンス実施群では、それぞれ0.826および0.948であった。・さらにCD8+T細胞腫瘍浸潤リンパ球も加えた併用法は、OSの予測値が最も高かった(3年OSのAUC:0.659、5年OSのAUC:0.665)。・RYR1またはMGAM遺伝子変異は、持続的臨床効果(DCB)、高TMBおよびPD-L1高発現と有意に関連していた。・RYR1遺伝子変異の頻度は、DCBあり群で24%(12/51例)、DCBなし群で4%(2/55例)(p<0.001)、高TMB群で23%(12/53例)、低TMB群で3.8%(2/53例)(p<0.001)、PD-L1高発現群で27%(8/30例)、PD-L1低発現群で7.1%(6/85例)(p<0.001)であった。・MGAM遺伝子変異の頻度は、DCBあり群で24%(12/51例)、DCBなし群で0%(p<0.001)、高TMB群で17%(9/53例)、低TMB群で0%(p<0.001)、PD-L1高発現群で20%(6/30例)、PD-L1低発現群で6%(5/85例)(p<0.001)であった。

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既治療の非小細胞肺がんにおけるニボルマブの4年生存/Lancet Oncol

 ニボルマブの既治療の進行期非小細胞肺がん(NSCLC)患者における長期的な利益および奏効状態とその後の生存に対する影響を評価することを目的としたプール解析が行われた。Lancet Oncology誌2019年8月14日号オンライン版掲載の報告。 既治療のNSCLC患者におけるニボルマブの 生存転帰を評価するために、4つの臨床研究 (CheckMate 017、057、063、003) からデータを蓄積した。生存結果の決定にあたっては、 6ヵ月の奏効状態によるランドマーク解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・4つの研究を通し、ニボルマブの4年全生存(OS)率は全患者(n=664)では14%、PD-L1発現1%以上の患者では19%、PD-L1発現1%未満の患者では11%であった。・CheckMate 017および057試験におけるニボルマブ治療患者の4年OS率は14%、ドセタキセル治療患者では5%であった。・ニボルマブ、ドセタキセル治療群とも、6ヵ月時点で奏効していた患者の生存は 6ヵ月時点でPDだった患者よりも長かった。・ニボルマブ治療群において6ヵ月時点で奏効していた患者とPDだった患者のハザード比(HR)は0.18(0.12~0.27)、ドセタキセル治療群における同比較のHRは0.43(0.29~0.65)であった。・ニボルマブ治療群において6ヵ月時点でSDだった患者とPDだった患者のHRは0.52(0.37~0.71)、ドセタキセル治療群における同比較のHRは0.80(0.61~1.04)であった。・長期データにおいても新たな安全性の問題はみられなかった。

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IV期でも積極的な局所治療を?その2―オリゴメタのコンセンサスレポート【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第9回

第9回 IV期でも積極的な局所治療を?その2―オリゴメタのコンセンサスレポート1)Dingemans AC, et al. Definition of synchronous oligo-metastatic non-small cell lung cancer – a consensus report. J Thorac Oncol 2019 Aug 6.[Epub ahead of print]IV期でも腫瘍量の少ない「オリゴメタ」に対する積極的な局所治療の可能性について前回紹介したが、その後もいくつか興味深い追加報告がなされている。一方で、いつも議論されるのが「オリゴメタをどう定義付けるのか」という話題。今回EORTCを中心としたグループからJ Thoracic Oncol誌にコンセンサスレポートが報告されているので、成立過程とともに紹介する。1)について本報告は欧州においてEORTCが主導した、オリゴメタに関するコンセンサスレポートであるが、議論が割れる対象だけにその成立過程にいくつかの工夫がみられる。また、少数派の意見も存分に記載されている。検討内容は大きく3本立てで進んでいる。王道であるシステマティックレビューに加え、webベースでのクリニカルクエスチョン作成とこれに関するサーベイ、さらには学会でのケースディスカッションを加え、最終的にコンセンサス会議でひとまずの合意形成がなされたとのこと。内科・外科・放射線科といった多職種が参加した中でWebを活用した体制構築もさることながら、2017年10月から開始され翌2018年には最終の会議まで持ってきているというスピードも素晴らしい。検討事項の詳細は以下の通り。1.システマティックレビュー;1125報から最終的に21報(総患者数1215人)を抽出。2.インターネットサーベイ;34か国から423人が参加。3.ケースディスカッション;24施設から26人の研究者が参加し、10症例について検討した。100%の合意が得られたのは1例のみ。3例で90%以上の合意が得られた一方で、その他の症例での合意形成は30~60%台と専門家間でもかなり意見が割れた様子がうかがえる。最終的なコンセンサスの内容について1.オリゴメタに対する治療は、すべての転移巣について根治的局所治療が技術的に可能かつ毒性が許容可能と考えられる場合に検討する。2.オリゴメタの定義は「転移巣5つ、転移臓器3つまで」。胸水や骨髄への転移はオリゴメタからは除外する一方で、脳・副腎転移は特別視しない。同一肺葉内転移(T3)、原発巣と同一肺内転移(T4)、縦郭リンパ節転移は転移巣としてカウントしない。一方でインターネットサーベイでは転移巣は3個までという意見が最多であった。3.画像評価として、PET-CT・頭部MRIは必須とする。これについては100%の賛同が得られた。4.将来的な検討事項として、組織型や遺伝子変異をどのように組み込むか、また転移巣だけではなく腫瘍量も考慮すべきなのかが議論された。また、転移巣の個数を元にしたより詳細な検討が可能か、などの意見が出た。解説局所治療の発展とともに「やろうと思えば施術はできる、しかしどの程度のメリットがあるのかわからない」というジレンマに悩む場面が増えてきた。全体からすると多くない集団ではありながら、オリゴメタに対する臨床試験が続々と報告されていることからも、世界的に重要なクリニカルクエスチョンとしてとらえられている事がわかる。一方で前向き試験の対象も一定ではなく、定義付けが明確でない事が一番の課題でもあった。それなら皆が同じ土俵で議論するためのたたき台としてコンセンサスを作ろう、というのが今回の試みである。ありきたりなシステマティックレビューのみでなく、多くの職種・国をまたいだインターネットサーベイ、実際の症例を用いたケースディスカッションを含めつつ、短期間でコンセンサスを形成し論文の形まで持ってきたところに関係者の熱意を感じる。ちなみに、本文中に記載されているが、最終的なとりまとめには若手が多く関わっているようであり、わが国でもこのような試みができるはずでは、と思ってしまった。本筋に戻るが、この論文の白眉は臨床医の実感とエビデンスをうまく融合させて落としどころを付けている点である。転移巣の数については「最新の技術を用いれば多くの転移巣にも施術が可能」という意見も紹介しつつ、「システマティックレビューでは5つ以内が最多であった」とバランスよく結論付けている(転移巣を有する患者については、今回定義したものとは別の集団として考えるべきでは、という意見も紹介されていた)。脳転移は特別視しない一方で、肺内転移・縦郭リンパ節転移をすべからくカウントしなくてよいのか、などやや違和感はあるものの、おおむね本邦の臨床医も納得できる内容になっていると思われる。現在米国を中心に第III相試験が進行中であるが、欧州では大規模レジストリー(EORTC-RP-1822)を行っているようである。一筋縄ではいかないクリニカルクエスチョンをどのように解決していくか、体制作りが有効に機能していることをうかがわせる報告である。

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加熱式タバコの害をどう考えるか?【新型タバコの基礎知識】第7回

第7回 加熱式タバコの害をどう考えるか?Key Points加熱式タバコを吸うと、循環器疾患などの疾患罹患リスクがあり、そのリスクは紙巻タバコよりも低いとは言えない。米国では、アイコスを「リスク低減タバコ」としてではなく、「従来からのタバコ製品」の1つとして販売することを決定した。アイコスが血管内皮機能に悪影響を与えることが、米国カリフォルニア大学のグループによる、最近のラットによる研究で報告されました1)。アイコスのエアロゾルにさらされたラットの血管内皮機能は、紙巻タバコの煙にさらされたラットと同程度に低下していました。この研究では、ラットを(1)アイコスのエアロゾル、(2)紙巻タバコ(マルボロ)の煙、(3)清浄な空気のいずれかに曝露させたうえで、血流依存性血管拡張反応検査により血管内皮機能を評価しています。曝露は1回15秒間とし、5分間に10回行っています。その結果、血管内皮機能はアイコス群で58%、マルボロ群では57%低下しました。曝露を1回5秒間に減らしても同じ結果でした。アイコスのエアロゾルへの曝露は、マルボロの場合と同程度の血管内皮機能の低下をもたらすことが示されたのです。血管内皮機能の低下は動脈硬化をもたらし、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めると分かっています。循環器系におけるタバコの煙への反応は、人とラットでほとんど同じだと考えられており、もちろん検証は必要ですが、人でも同じことが起きるものと考えられています。加熱式タバコを吸っていると、紙巻タバコを吸っている人と同様に、循環器疾患リスクが高まる可能性があります。確かに、現状では加熱式タバコに関する情報は十分とは言えませんが、あまりに分かっていないと強調しすぎるのは、デメリットが大きいと考えます。現状、成人の10%以上が加熱式タバコを使用しており、非常に多くの人がその影響下にすでに置かれています。判断を先延ばしにしすぎるのはよくないでしょう。加熱式タバコの害を判断するうえで、役立つ情報は他にもあります。これまでに数多く実施されてきた紙巻タバコの害に関する研究です。吸っていない人と比べると、紙巻タバコを1日1本しか吸っていなくても、心筋梗塞や脳卒中といった重篤な循環器疾患のリスクが有意に高まります。図1に示すように、タバコのリスクは吸う本数によって異なります。この図では、横軸が紙巻きタバコを吸う本数で、縦軸が心筋梗塞などの虚血性心疾患に罹るリスクの大きさを表しています。たいていの喫煙者は1日当たり20本のタバコを吸っています。1日20本吸う人の循環器疾患リスクは約1.8倍です。喫煙本数がその4分の1の、1日5本吸う人のリスクは約1.5倍です。1日5本吸う人のリスクは、1日20本吸う人のリスクの約63%(50÷80×100=62.5%)です。すなわち、喫煙本数を1日5本、4分の1にしても、循環器疾患リスクは1日20本吸う人のリスクの半分にもならないのです。喫煙本数を減らしても、循環器疾患リスクは高いと言えるでしょう。また、肺がんリスクの研究から、喫煙本数が多いことよりも、喫煙期間が長いことがよりリスクを高めると判定されています。喫煙本数を減らしたとしても喫煙期間が長ければ、肺がんにかかるリスクは大きいのです。現時点で得られる情報から総合的に考えて、加熱式タバコを吸っている人のリスクは、紙巻タバコよりも低いとは言えません。画像を拡大する米国の専門家たちも、同意見のようです。米国におけるルールに基づき、フィリップモリス社はアイコスを「リスク低減タバコ」として米国食品医薬品局(FDA)に申請しましたが認可されなかったという経緯があります。新たなタバコ製品についてはFDAの許可がないと販売できず、とくに健康へのリスクが少ない可能性などを謳う場合には、その科学的根拠や社会への負荷の減少について証明した上で申請することが、タバコ会社に求められています。そのため、フィリップモリス社が提出したアイコスに関する資料が詳細に検討されました。そして、2018年1月に実施されたFDAの諮問委員会では、フィリップモリス社の承認申請資料に対するFDA諮問委員会の委員らの見解(2018年1月24~25日)が示されました。フィリップモリス社が提出したアイコスに関する資料について、次の質問(Q)に対する委員9人の回答(Yes or No)は次の通りでした。Q1:紙巻タバコから、完全に加熱式タバコに切り替えれば、有害性物質への曝露は減らすことができるか?Yes - 8人 No - 1人 棄権 - 0人Q2:Q1でYesと回答した場合に、その曝露の減少により、疾病の罹患率や致死率が減ると考えられるか?Yes - 2人 No - 5人 棄権 - 1人Q3:紙巻タバコから、完全に加熱式タバコに切り替えれば、タバコ関連疾患のリスクを減らせるか?Yes - 0人 No - 8人  棄権 - 1人Q3への回答から分かるように、棄権した1人を除き、米国の専門家8人が、加熱式タバコに切り替えても、タバコ関連疾患に罹患するリスクを減らせない、と判定しました。こういった判定により、アイコスは「リスク低減タバコ」としては認められませんでした。しかし、2019年4月30日、米国でも加熱式タバコ・アイコスは「リスク低減タバコ」としてではなく、「従来からのタバコ製品」の1つとして販売されることが決定しました。この決定を受けて、加熱式タバコ問題への世界的な関心はさらに高まりつつあるといえるでしょう。第8回は「加熱式タバコによる受動喫煙の害は?」です。1)Nabavizadeh P, et al. Tob Control.2018; 27: s13-s9.

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がんサバイバーの多くが中長期のCVDリスク増加/Lancet

 がんサバイバーのほとんどで、がん部位別でかなり違いはあるものの、一般集団と比較して心血管疾患の中~長期リスクの増加が確認された。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のHelen Strongman氏らが、がんサバイバーにおける心血管リスクの定量化を目的とする電子医療記録データベースを用いたコホート研究の結果を報告した。過去数十年で、がんの生存率は顕著に改善してきたが、サバイバーの長期的な心血管リスクについては懸念が指摘されている。しかし、さまざまながんサバイバーにおける心血管疾患の予防や管理に関するエビデンスが不足していた。Lancet誌オンライン版2019年8月20日号掲載の報告。英国の大規模臨床データベースを用い、がんサバイバー約10万人について解析 研究グループは、英国の入院やがん登録のデータベースと連携しているUK Clinical Practice Research Datalink(CPRD GOLD)を用い、一般的な20種類のがんについて診断後12ヵ月時点で生存している18歳以上のサバイバー、ならびに年齢、性別などをマッチさせたがんの既往がない対照群のコホートを特定し、Coxモデルによりさまざまな心血管疾患のリスクを比較した。 交互作用を適合させ効果修正を行い、フレキシブル・パラメトリック生存モデルで経時的な過剰絶対リスクを推定した。 1990年1月1日から2015年12月31日の期間で、1年以上の追跡調査を受け対象がんの診断を受けた患者12万6,120例と、対照群の患者63万144例が特定され、除外基準に合致した症例を除き、がんサバイバー群10万8,215例と対照群52万3,541例が主要解析に組み込まれた。血液、食道、肺、腎、卵巣等のがんサバイバーで心不全や心筋症のリスクが増加 静脈血栓塞栓症のリスクは、対照群と比較して、20種類のがんのうち18種のサバイバー群で増加した。補正ハザード比(aHR)の範囲は、前立腺がん患者の1.72(95%信頼区間[CI]:1.57~1.89)から、膵臓がん患者の9.72(95%CI:5.50~17.18)にわたっていた。aHRは経時的に減少したものの、診断後5年超は増加が続いていた。 20種類のがんのうち、10種のがんサバイバーで心不全や心筋症のリスクが増加することが確認された。それぞれのaHR(95%CI)は、非ホジキンリンパ腫1.94(1.66~2.25)、白血病1.77(1.50~2.09)、多発性骨髄腫3.29(2.59~4.18)、食道がん1.96(1.46~2.64)、肺がん1.82(1.52~2.17)、腎がん1.73(1.38~2.17)、卵巣がん1.59(1.19~2.12)などであった。 不整脈、心膜炎、冠動脈疾患、脳卒中、心臓弁膜症のリスク増加は、血液悪性腫瘍などで同様に確認された。心不全または心筋症、および静脈血栓塞栓症のHRは、心血管疾患の既往歴がない患者および若年患者において高かった。しかし、過剰絶対リスクは、年齢の上昇に伴い徐々に増加し、これらのリスク増加は化学療法を受けた患者において最も顕著であった。 なお、著者は今回の研究の限界として、投与された化学療法の種類や投与量に関する情報がないこと、がんの再発、家族の心血管疾患歴、人種、食事やアルコール消費量などの重要な情報に関する信頼できるデータがなかったことなどを指摘している。

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低線量CT肺がんスクリーニング、毎年と隔年の比較/Eur J Cancer

 2011年、米国のNLST試験(National Lung Screening Trial)では、低線量CT(LDCT)スクリーニングによる前/現喫煙者における肺がん死亡率の低下が示された。また、イタリアのMulticentric Italian Lung Detection(MILD)試験では、長期のLDCTスクリーニングが、肺がん死亡率を39%減少させることを示している。イタリア・Istituto Nazionale Dei TumoriのPastorino氏らは、MILD試験をさらに毎年と隔年のスクリーニングに分け、スクリーニング強度が10年後の全死亡および肺がん特異的死亡にもたらす影響を評価した。European Journal of Cancer誌2019年9月号掲載の報告。 MILD試験は2005年に開始された無作為化比較試験で、対象は5年以内にがんの既往のない49~75歳の前/現喫煙者。主要評価項目は10年の全死亡率と肺がん特異的死亡率。副次評価項目は進行期肺がんおよび中間期がんの頻度。 主な結果は以下のとおり。・2005~2018年にかけて、前向きに登録した2,376名を、毎年スクリーニング群(n=1,190)と隔年スクリーニング群(n=1,186)に無作為に割り付けた。・スクリーニング期間中央値は6.2年、追跡は2万3,083人年であった。・隔年スクリーニング群では、毎年スクリーニング群と同等の10年全死亡率(HR:0.80、95%CI:0.57~1.12)と肺がん特異的死亡率(HR 1.10、95%CI 0.59~2.05)が示された。・LDCTの繰り返しは、隔年スクリーニングにより、全集団では38%、ベースラインLDCT陰性の被験者では44%減少した・Stage II~IVまたは中間がんの発生は隔年スクリーニング群で増加することはなかった。

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アテゾリズマブ、小細胞肺がんに国内承認/中外製薬

 中外製薬株式会社は、2019年08月22日、PD-L1ヒト化モノクローナル抗体アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)に関し、「進展型小細胞肺がん」に対する適応拡大について厚生労働省より承認を取得したと発表。 今回の承認は、国際共同第I/III相臨床試験(IMpower133試験)の成績に基づくもの。IMpower133試験では、アテゾリズマブと化学療法(カルボプラチンおよびエトポシド)の併用は、ITT解析集団において、化学療法単独に比べ主要評価項目である全生存期間の延長を示すとともに(OS中央値:12.3ヵ月 vs.10.3ヵ月、HR:0.70、95%CI:0.54~0.91、p=0.0069)、同じく主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の延長を示した(PFS中央値:5.2ヵ月 vs.4.3ヵ月、HR:0.77、95%CI:0.62~0.96、p=0.017)。アテゾリズマブと化学療法の併用療法による安全性プロファイルは、これまで各薬剤で認められている安全性プロファイルと一致しており、本併用療法で新たな安全性のシグナルは確認されなかった。

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ラムシルマブ適応拡大、肝細胞がんは薬を使い切る戦略が鍵に

 ラムシルマブの登場で、肝細胞がんの薬物治療は4剤が使用可能となったが、治療アルゴリズムはどう変化するのか。2019年6月、化学療法後に増悪した血清AFP値400ng/mL以上の切除不能な肝細胞がんに対して、ラムシルマブが適応拡大された。これを受けて8月1日、都内でメディアセミナー(主催:日本イーライリリー)が開催され、工藤 正俊氏(近畿大学医学部消化器内科 教授)が講演した。肝細胞がん薬物治療は、2次治療の選択肢が課題 本邦における肝がんの年間罹患数は約4万人、年間死亡数は約2万7,000人となっている。性別ごとの年間死亡数では、男性では肺、胃、大腸に次ぐ4番目、女性では大腸、肺、膵臓、胃、乳房に次ぐ6番目と、今もって死亡の多いがんといえる1)。肝がんの主要な背景疾患であるC型肝炎の新たな感染が減ったことで、死亡数は漸減の傾向にあるが、食事の欧米化などの影響から、B型/C型ウイルス由来ではない肝細胞がんが増加傾向にある。 肝細胞がんの治療アルゴリズムは、肝予備能(Child-Pugh分類)、肝外転移や脈管侵襲の有無、腫瘍数や腫瘍径から判断される。早期~中間期肝がんでは切除やラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)が検討され、進行期(肝外転移もしくは脈管侵襲あり)あるいは腫瘍数4個以上でTACE不応の場合は、分子標的薬による治療が行われる2)。 2009年、肝細胞がんで初めて生存延長を示した分子標的薬として、マルチチロシンキナーゼ阻害薬(mTKI)ソラフェニブが承認された。以降、2017年にソラフェニブ後の2次治療薬としてレゴラフェニブ、2018年にソラフェニブに対する非劣性を証明したレンバチニブが1次治療薬として承認されている。 しかし、ソラフェニブによる治療を受けた患者のうち、レゴラフェニブに適格となる症例は約3割に限られる。そのため、臨床試験は存在しないが、実臨床ではソラフェニブ後のレンバチニブもよく用いられている。また、1次治療でレンバチニブを投与した場合の2次治療薬についても、臨床試験が行われておらず、忍容性の高い2次治療の選択肢が求められている。ラムシルマブの臨床成績(REACH試験/ REACH-2試験) 抗VEGFR-2抗体ラムシルマブは、これまでに胃がん、結腸・直腸がん、非小細胞肺がんで承認されている血管新生阻害薬。投与方法は2週間に1回、60分の点滴静注となっている。肝細胞がんに対するラムシルマブの有効性を検討した最初の第III相試験であるREACH試験は、1次治療でソラフェニブ投与を受けた、BCLC Stage B/C、Child-Pugh分類A、PS 0~1の進行肝細胞がん患者を対象としている。主要評価項目の1つ、全体集団でのOS中央値は、ラムシルマブ群9.2ヵ月 vs.プラセボ群7.6ヵ月と有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.72~1.05、p=0.14)。しかし、事前規定されたサブグループであるAFP(α-フェトプロテイン)≧400ng/mL以上の患者では、7.8ヵ月 vs.4.2ヵ月とラムシルマブ群でOS中央値を有意に延長した(HR:0.674、95%CI:0.508~0.895、p=0.0059)3)。 AFPは肝細胞がんの早期発見に有用とされる腫瘍マーカーの1つで、基準値は10.0ng/mL以下。AFP高値は強力な予後不良因子とされており、肝細胞がんの肝切除例についてみたデータでは、AFP値が高くなればなるほど、生存期間が短くなっている4)。これらのことから、REACH-2試験ではAFP≧400ng/mLの患者に対象を絞って、ラムシルマブの有効性が検討された。その結果、ベースライン時のAFP値が3,920ng/mL vs.2,741ng/mLとラムシルマブ群で高かったにもかかわらず、OS中央値は8.5ヵ月 vs.7.3ヵ月とラムシルマブ群で有意に延長した(HR:0.710、95%CI:0.531~0.949、p=0.0199)。 ラムシルマブ群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、高血圧(12.2% vs.5.3%)、腹水(4.1% vs.2.1%)、肝性脳症(3.0% vs.0%)など5)。工藤氏は、高血圧については薬でコントロール可能とし、腹水や肝性脳症に注意が必要と話した。また、同氏はラムシルマブによる治療の大きな特徴として、dose-intensityの高さを挙げた。REACH-2試験では、ラムシルマブの投与期間中央値は12.0週間、投与サイクル数中央値は6.0サイクルで、相対dose-intensity中央値は97.9%と非常に高かった。他のTKI3剤で8~9割弱なことと比較して高いほか、日本人サブセットでも同等の高い数値が得られている。ラムシルマブ含めた分子標的薬をTACEを行うことなく選択 レンバチニブ後のラムシルマブ投与については、臨床試験で確認されたものではない。しかし、レンバチニブと比較してVEGFR-2に対する同薬の50%阻害濃度(IC50)が数倍高いこと、抗体薬であることなどから期待できるとし、工藤氏はAFP≧400ng/mL以上の患者に対して実臨床でその有用性を確認していく必要があると話した。 ラムシルマブを含め、肝細胞がん治療に使える4剤は、すべて適応がChild-Pugh分類Aの患者に限られる。つまり、肝予備能を維持しながら次の治療につなげて、薬剤を使い切ることが予後延長の鍵になる、と同氏は説明。これまでは、TACE不応となるのを待って分子標的薬を導入してきたが、今後はより早い段階から、場合によってはTACEを行うことなく薬物療法を選択していくようなケースも出てくるのではないかと話し、薬物療法開始の機会を逃さない戦略が必要になると指摘して締めくくった。 なお、肝癌治療ガイドラインは2021年改訂予定で作業が進められており、ラムシルマブの適応拡大については、日本肝臓学会のホームページ上での追加が予定されている。

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第26回 Stage IのNSCLC、術後補助療法実施の規準は?【肺がんインタビュー】

第26回 Stage IのNSCLC、術後補助療法実施の規準は?Stage Iの非小細胞肺がん(NSCLC)における術後補助療法は、議論の余地があるテーマである。そのような中、ASCO2019で術後補助療法の恩恵をリスク別に分析した研究が報告された。発表者である広島大学呼吸器外科の津谷 康大氏に、研究の背景と結果について聞いた。実臨床で迷うStage I NSCLCの術後補助療法導入この研究を行った背景について教えていただけますか。Stage IのNSCLCに術後補助療法をするか否かは、世界的にみても意見の分かれるところです。日本のデータでは2 cmを超えるStage Iの腺がんに対するUFTによる術後補助療法の有効性が示されており、ガイドラインでも推奨されています。しかし、この研究の2cmは腫瘍全体径での定義です。現在のTNM-8では、腫瘍サイズを浸潤径(浸潤がんだけの大きさ)で定義しており、新しい基準で考えると、違った結果になる可能性もあります。また、海外ではTNM-8によるStage Iの術後補助療法のエビデンスはありません。つまり、やらないという方向です。日本と海外のスタンダードはまったく異なっています。たとえば、実臨床で腫瘍径3 cmでも浸潤部分が1cmの腺がんに遭遇した場合、術後補助療法はどうすべきか。これほど浸潤がんの成分が小さければ、やらなくてよいという感覚の先生方が多いと思いますが、データはまったくありません。Stage Iの術後補助療法をやるべき患者とやらなくてよい患者をどう分けるべきか、後ろ向きに解析しました。どのようなデータを活用されたのですか?肺がんの手術症例についてさまざまな研究をするために、広島大学、神奈川県立がんセンター、東京医大の3施設で2010年から前向きに全例登録しているデータベースがあります。このデータベースには腺がんの浸潤がんと非浸潤がんの成分が別々に記録されているので、今回の研究では、それを用い、新しいデータに差し替えて研究しました。高リスク患者のStage I患者は術後補助療法の恩恵を受ける今回の試験の結果について紹介いただけますか。当該データベースにおけるStage IのNSCLC症例に対し、病理学的な再発因子を多変量解析したところ、浸潤径2 cm超、リンパ管侵襲、血管侵襲、臓側胸膜浸潤という4つの因子が再発に関わっていることがわかりました。そのうち1つでも該当した症例を高リスク、4項目どれも該当しない症例を低リスクと分類し解析を行いました。その結果、低リスク患者は再発をほとんど起こさず(5年無再発生存率[RFS]96%)、きわめて予後良好で、高リスク患者は低リスク患者に比べ予後不良(5年RFS 77%)でした。術後補助療法の有無と予後をみたところ、低リスク患者では、術後補助療法実施のいかんにかかわらず、きわめて予後良好でした(5年RFS:実施群98%対観察群96%)。一方、高リスク患者は術後補助療法実施により予後が改善しました(5年RFS:実施群81%対観察群74%)。同じStage Iでも、高リスクと低リスクに分けることによって、術後補助療法実施によるメリットが異なることがわかりました。高リスクの術後補助療法の内容をみると、併用化学療法よりも単剤化学療法のほうが、予後が良いという結果でしたが?この試験の結果だけでは何とも言えませんが、少なくともプラチナ併用のほうが良かったという結果ではありません。ただし、治療期間(UFTは2年間内服、プラチナ化学療法は長くて4サイクル[3~4ヵ月])なども影響している可能性があると思います。病理レポートがStage I術後補助療法導入の判断材料にこの試験での知見は、臨床でどう活かすことができるでしょうか。日本では腫瘍全体径2 cmを超えるStage Iの腺がんにはUFTの術後補助療法が推奨されますが、その中でも浸潤径2 cm以下の低リスクの患者に対しては、術後補助療法の導入は慎重に考えてよいかもしれません。逆に、腫瘍全体は小さくても、リンパ管侵襲や血管侵襲があるなど悪性度が高そうな患者では、術後補助療法導入の余地があるかもしれません。今回の研究で用いた再発リスク因子は、通常各施設の病理レポートに記載されています。それを参考にすることで、Stage I腺がんに術後補助療法をするか否かの判断基準になると思います。海外の医学メディアでも紹介されていましたが、海外からの反響はありましたか。ASCO発表の後、海外の病理医から連絡があり、今までリンパ侵襲や血管侵襲を測っていないが、どう測るのかという問い合わせがありました。Stage Iの術後補助療法は海外でも議論を呼ぶテーマなのだと、あらためて感じました。

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肺がん2剤併用療法、ベースはシスプラチン?カルボプラチン?/Lung Cancer

 進行期非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、プラチナベース化学療法はいまだ大きな柱である。実臨床においてはシスプラチンとカルボプラチンの2つのプラチナ製剤が多く使われる。すでに、Cohchraneグループによるカルボプラチンとシスプラチンベースの化学療法を比較するメタアナリシスが行われているが、NSCLCにおける急速な治療の変化と拡大する臨床試験の中、新たなデータの反映が求められていた。そのような中、ドイツのGriesingerらは、2013年〜2018年1月に発表されたNSCLC1次治療におけるカルボプラチンとシスプラチンの無作為化比較試験のシステマチックリサーチを⾏い、解析結果を更新した。評価項⽬は全⽣存期間(OS)、1年⽣存率(1yOS)、客観的奏効率(ORR)、Grade3/4の薬物関連有害事象など。Lung Cancer誌2019年9⽉号掲載の報告。肺がん2剤併用療法、プラチナ製剤はシスプラチンがカルボプラチンよりORRわずかに良好 進行期非小細胞肺がんの1次治療の2剤併用療法において、プラチナ製剤をカルボプラチンとシスプラチンで比較した主な結果は以下のとおり。・適格となった無作為化⽐較試験は12、患者数は2,048例であった。・OSはカルボプラチンとシスプラチン両群で差はなかった(HR:1.08、95%CI:0.96~1.21)。・1yOSも両群で差がなかった(RR:0.97、95%CI:0.97~1.0)。・ORRについては、シスプラチン群でわずかに良好であった(RR:0.88、95%CI:0.78~0.99)。・薬物関連有害事象については、血小板減少、貧血、神経障害、悪心・嘔吐で両群に差異が発生した。・HRQoLを比較した3つのRCTでは、両群に差は認められなかった。

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非扁平上皮NSCLCの維持療法、ベバシズマブかペメトレキセドか併用か/JCO

 進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の維持療法にはベバシズマブまたはペメトレキセドの単剤投与か併用投与なのか、あるいはいずれも有効なのか。米国・エモリー大学ウィンシップがん研究所のSuresh S. Ramalingam氏らは、それらを直接比較する「ECOG-ACRIN 5508試験」の結果、ベバシズマブ単剤またはペメトレキセド単剤は有効であるが、生存ベネフィットの不足とその毒性から、ベバシズマブ・ペメトレキセドの併用療法は推奨できないとまとめている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年7月30日号掲載の報告。 研究グループは、進行非扁平上皮NSCLCの最適な維持療法を決定するために無作為化試験を実施した。 対象は、全身療法の治療歴のない進行非扁平上皮NSCLC患者で、カルボプラチン(AUC 6)、パクリタキセル(200mg/m2)およびベバシズマブ(15mg/kg)を最大4サイクル投与した後、病勢進行が認められなかった患者をベバシズマブ(15mg/kg)群、ペメトレキセド(500mg/m2)群、または両剤の併用群に無作為に割り付け、維持療法を行った。 主要評価項目は全生存期間(OS)で、ベバシズマブ群を対照とした。 主な結果は以下のとおり。・登録された1,516例中874例(57%)を、導入療法後に3つの維持療法群に無作為に割り付けた。・追跡期間中央値50.6ヵ月において、OS中央値はベバシズマブ群14.4ヵ月、ペメトレキセド群15.9ヵ月(HR:0.86、p=0.12)、併用群16.4ヵ月(HR:0.90、p=0.28)であった。・無増悪生存期間中央値は、ベバシズマブ群4.2ヵ月、ペメトレキセド群5.1ヵ月(HR:0.85、p=0.06)、併用群7.5ヵ月(HR:0.67、p<0.001)であった。・Grade3/4の有害事象の発現率は、ベバシズマブ群29%、ペメトレキセド群37%、併用群51%であった。

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