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わが国の肺がんの静脈血栓塞栓症の発生率(Rising-VTE)/WCLC2019

 静脈血栓塞栓症(VTE)は、悪性腫瘍でよくみられる合併症である。しかし、肺がんの診断時のVTEの発生率についてはほとんど知られていない。日本の40施設を対象とした多施設前向き観察研究Rising-VTE/NEJ037について、県立広島病院の濱井 宏介氏が世界肺癌学会(WCLC2019)で発表した。 Rising-VTE/NEJ037の対象は、切除または放射線治療不能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者。VTEは造影CTまたは下肢エコー検査に基づき診断された。試験の主要評価項目は、中央判定委員会が評価する登録後2年間の症候性および無症候性の再発または新たに診断されたVTEの発症率である。  主な結果は以下のとおり。・2016年6月〜2018年8月に手術または放射線療法不能なNSCLC患者1,021例が登録され、ベースラインデータとして1,013例の患者のデータが利用可能であった。・年齢の中央値は71歳、組織型は、腺がん(63.7%)、扁平上皮がん(17.8%)、小細胞肺がん(13.5%)、その他(5.1%)であった。・VTEの発生は6.0%(61例)であった。・VTEの内訳は、深部静脈血栓症(DVT)が47.5%、肺塞栓症(PE)が12.1%、DVTとPEの併存が27.9%であった。・ VTEの90.2%は腺がんであった。 同研究の主要評価項目は、登録から2年間の症候性/非症候性VTEの再発または新規発症率。最終結果は2021年の予定で、現在追跡調査が進行中。

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WCLC(World Conference on Lung Cancer)2019 レポート

レポーター紹介世界肺がん学会WCLC(World Conference on Lung Cancer)2019はスペインのバルセロナで、2019年9月7~10日の期間に行われた。今年は9月末に欧州臨床腫瘍学会が同じスペインのバルセロナで行われることもあり、例年のWCLCと比べるとトピックスが少ない印象ではあったが、公式発表では100ヵ国以上から7,000例以上がWCLCに参加し、多くの演題(2,853演題)が報告された。学会初日の印象では参加人数が例年よりも少なそうで寂しい印象を受けたが、Presidential Symposiumの発表時には、会場はほぼ満席であり活気に満ちたものであった。このレポートでは、私的に選んだ今学会でのトピックスをいくつか紹介する。外科手術のトピックVIOLET試験の効果と安全性に関する探索的検討clinical stage cT1~3、N0~1、M0の肺がん、もしくは肺がんが強く疑われる患者を対象に、開胸手術とVATSを比較する第III相試験における早期の効果と安全性の結果が報告された。入院中の死亡率は、VATS群で1.4%(VATS治療から開胸手術の移行率5.7%)であった。また、完全切除率については、VATS群で98.8%、開胸切除で97.4%であり、有意差を認めなかった(p=0.839)。術後の疼痛についてmedian(visual analogue)pain scoreで評価が行われており、術後1日では術後疼痛についてmedian scoreに差を認めなかったが、術後2日では術後疼痛の強さがVATS群で有意に改善され、入院期間についてもVATS群が4日、開胸手術群が5日と有意に短くなる(p=0.008)ことが報告された。また、入院中の術後合併症がVATS群で32.8%、開胸手術群で44.3%と有意に低下する(p=0.008)という結果であった。今回の報告では、VATSと開胸手術において、侵襲の少ないVATSが開胸手術と比較しても根治率が変わらないことが報告され、合併症や入院期間、術後疼痛が良好であることが報告され、日常臨床で広く浸透しているVATSが短期的な指標では有用であることが検証された試験である。今後の長期予後データなどの報告が待たれる。(Lim E, et al. PL 02-06)分子標的療法におけるトピックスLIBRETTO-001 study進行非小細胞肺がんのRET-fusion遺伝子変異に対する分子標的療法で、保険償還承認が得られた治療はまだ存在しない。LIBRETTO-001試験で使用されたLOXO-292はRETを選択的に強く阻害する分子標的薬であり、脳への移行性も高く、RET-fusion遺伝子変異に対する治療薬として期待されている。今学会ではLIBRETTO-001試験における、LOXO-292療法の効果と安全性についての第I/II相試験の結果が報告された。253例のRET-fusion陽性の非小細胞肺がんの患者が参加し、うちprimary analysis set (PAS) に139例が登録された。105例が初回にプラチナ製剤併用化学療法を受け、58例がPD-1/PD-L1阻害薬療法を受けていた。奏効率(ORR)は68%(95%CI:58~76%、n=71/105)であり、RET fusionのパートナーにかかわらず治療効果を認めた。また治療奏効期間は20.3ヵ月(95%CI:13.8~24.0ヵ月)であり、脳転移のある患者における脳転移のORRは91%(n=10/11:2 confirmed CRs、8 confirmed PRs)であった。さらに未治療のRET-fusion陽性の患者ではORR85%(95%CI:69~95%、n=29/34)であった。毒性(AEs)は、ほとんどがGrade1/2と軽微であり、頻度では口腔内乾燥、下痢、高血圧、AST/ALTの上昇が多かった。今回のLOXO-292のデータは非常に良好であり、RET-fusion陽性肺がんの標準療法になりうると考えられ早期での臨床導入が期待される。(Drilon A, et al. PL 02-08)免疫チェックポイント阻害薬のトピックスCASPIAN study進展型小細胞肺がんに対し、初回治療でのプラチナ(シスプラチンもしくはカルボプラチン)+エトポシド(EP)療法の標準療法と、デュルバルマブもしくはデュルバルマブ+tremelimumabの上乗せ治療を比較するオープンラベル下での第III相試験である。この試験はプレスリリースにおいて、デュルバルマブ上乗せ群が標準療法群に対してOSを有意に改善したと発表しており、今学会の最注目演題であった。今学会ではCASPIAN試験における、標準療法群とデュルバルマブ併用療法群の結果が報告された。PS 0~1の未治療進展型小細胞肺がんの患者を対象に、デュルバルマブ1,500mg+EP療法を3週ごと、デュルバルマブ1,500mg+tremelimumab 75mg+EP療法を3週ごと、もしくはEP療法を3週ごと4コースの治療を行った。免疫療法群では、4コース終了後のデュルバルマブ維持療法が認められており、EP療法では6コースまで投与をすることが認められていた。また、主治医判断での予防的全能照射(prophylactic cranial irradiation [PCI])も認められていた。EP+デュルバルマブ療法群に268例、EP療法群に269例が割り付けられ、56.8%の患者が6コースのEP療法を受けていた。全生存期間においてEP+デュルバルマブ群がEP療法群と比較して、HR0.73、95%CIは0.591~0.909、p=0.0047と生存期間を有意に延長し、生存期間中央値(mOS)はEP+デュルバルマブ療法群で13ヵ月、EP療法群で10.3ヵ月であった。また18ヵ月の時点で、EP+デュルバルマブ療法群では33.9%の患者が生存しており、EP療法群では24.7%の患者が生存していた。無増悪生存期間(PFS)や奏効率(ORR)においてもEP+デュルバルマブ療法群がEP療法群よりも優れた結果であった。EP+デュルバルマブ療法群とEP療法群でそれぞれ、mPFSが5.1ヵ月と5.4ヵ月、PFSはHR0.78、95%CIは0.645~0.936、12ヵ月PFS rateが17.5%と4.7%、ORR(RECIST v1.1:unconfirmed)が79.5%と70.3%(odds ratio:1.64、95%CI:1.106~2.443)であった。毒性(AEs)ではEP+デュルバルマブ療法群とEP療法群でGrade3/4 AEsが61.5%と62.4%、AEsによる治療中断率は各9.4%と差を認めなかった。この試験では、先行するIMpower133試験(カルボプラチン+エトポシド療法にアテゾリズマブの上乗せの有効性が証明された)と同様にPD-L1阻害薬の標準療法への上乗せが証明された。この試験では、EP+デュルバルマブ+tremelimumab療法群の結果、すなわちPD-L1阻害薬+CTLA-4阻害薬の標準療法への上乗せ効果は公表されておらず、いまだ不明のままである。(Luis Paz-Ares, et al. PL 02-11)CheckMate 817試験(Cohort A1)PS 2や肝障害やHIV感染症を持つPS 0~1(all other special population:AOSP)のIV期非小細胞肺がんの初回治療として、ニボルマブ(PD-1阻害薬)+イピリムマブ(CTLA-4阻害薬)併用療法の効果と安全性を確認する第IIIb/IV相試験の結果が報告された。この試験での治療方法はニボルマブ240mg(2週ごと)、イピリムマブ1mg/kg(6週ごと)の固定容量での治療である。この試験ではPS 2の患者139例とAOSPの患者59例が試験に登録された。安全性についてはPS 2の患者でも、AOSPの患者でも、通常のPS 0~1の患者と比較して、治療関連有害事象や治療関連有害事象による治療中断、治療関連死に差がないことが示された。奏効率は、PS 2で20%、AOSPで37%であり、PS 0~1で35%であったが、PFSはPS 2やAOSPの患者で、PS 0~1の患者より有意に短かった。免疫チェックポイント阻害薬の併用において、PS不良の患者でも安全性はPS良好な患者と同様であり、初回治療の選択肢となりうることが示されたと考えてよいだろう。(Valette CA, et al. OA 04-02)その他の免疫チェックポイント阻害薬のトピック今回の学会では、以前に発表された第III相試験の長期予後データについていくつかの報告があった。PD-L1 50%陽性、EGFRやALK変異陰性の患者で行われた第III相試験であるKEYNOTE-024試験の3年目解析データが報告された。生存期間中央値(mOS)はペムブロリズマブ群26.3ヵ月(18.3~40.4)、殺細胞性抗がん剤治療群14.2ヵ月(9.8~18.3)で、OSはHR0.65、95%CIは0.50~0.86、p=0.001であり、長期間の観察期間でも有意にOSを延長していることが報告された。また、この発表では抗がん剤治療群からのペムブロリズマブのクロスオーバーしたペムブロリズマブの治療成績が報告されており、奏効率(ORR)は20.7%であり、治療奏効期間の中央値は20.9ヵ月と報告された。(Reck M, et al. OA 14-01)また、扁平上皮がんに対するプラチナ+タキサン療法へのアテゾリズマブの上乗せを検討しているIMpower131試験の最終解析結果も報告された。この試験は、ASCO2018においてOSの有意な延長が示されておらず、PD-L1 1~49%群でのOSがプラチナ製剤併用療法群と比較してクロスすることが報告されていた。今回の最終解析において、カルボプラチン+nabパクリタキセル+アテゾリズマブ群とカルボプラチン+nabパクリタキセル群の生存期間中央値(mOS)は14.2ヵ月vs.13.5ヵ月で、OSはHR0.88、95%CIは0.73~1.05、p=0.158で、OSの延長効果は示されなかった。ただし、PD-L1TPS 50%以上の高発現群においては、mOSは23.4ヵ月vs.10.2ヵ月、OSはHR0.48、95%CIが0.29~0.81とサブグループ解析ではあるが有意に延長していることが報告された。同じ扁平上皮がんを対象としたプラチナ+タキサン療法へのペムブロリズマブの上乗せを検討したKEYNOTE-407試験では、ペムブロリズマブの上乗せの生存延長効果が示されているだけに、PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬で扁平上皮がんに効果に違いが出るのか興味深いところではある。(Cappuzzo F, et al. OA 14-02)小細胞肺がんのトピックスSensitive Relapse小細胞肺がんを対象にカルボプラチン+エトポシドとトポテカンを比較した第III相試験トポテカンはヨーロッパでは小細胞肺がんの2次療法で承認されている数少ない抗がん剤であり、ヨーロッパだけでなく本邦含めグローバルで標準療法として広く用いられている。この試験では、初回治療から90日以上たってから再燃してきた小細胞肺がんをsensitive relapse小細胞肺がんとして定義しており、この対象を満たし初回治療でプラチナ+エトポシド療法が施行されている患者に対して、カルボプラチン+エトポシドとトポテカンの比較試験が行われた。この試験での意義は初回治療のre-challengeと標準療法であるトポテカンのどちらが良いかを比較している点で、今までのクリニカル・クエスチョンを確認する試験である。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)については、中央値がre-challenge群で4.7ヵ月(95%CI:3.9~5.5)、トポテカン群で2.7ヵ月(95%CI:2.3~3.2)、PFSがHR0.6、95%CIは0.4~0.8、p<0.002であり、re-challenge群が有意にPFSを延長していた。またre-challenge群とトポテカン群の比較において、他の主な評価項目では、奏効率が49% vs.25%(p<0.002)とre-challenge群で有意に奏効率が高かったが、全生存期間ではmOSが7.5ヵ月(95%CI:5.4~8.7)vs.7.4ヵ月(95%CI:6.0~9.3)であり、両群で有意な差を認めなかった。毒性では、トポテカン群はGrade3/4の好中球減少が35.8% vs.19.7%(p<0.001)と有意に高かったが、発熱性好中球減少症が13.6% vs.6.2% (p=0.19)で両群に有意な差を認めず、その他の毒性も両群で差を認めなかった。この試験の結果からは、日常臨床で行われることが多いsensitive relapse小細胞肺がんにおけるre-challenge療法を、標準療法の一つとして考えてもよいのかもしれない。(Monnet I, et al. OA 15-02)

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局所進行NSCLCのCRT、10年でどこまでcure?(WJTOG0105)/ESMO2019

 WJTOG0105は、切除不能Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)における、胸部放射線治療(TRT)の併用化学療法として、第3世代レジメン(イリノテカン+カルボプラチン、パクリタキセル+カルボプラチン)と第2世代レジメン(マイトマイシンC+ビンデシン+シスプラチン)を比較した第III相試験である。この試験の結果、第3世代レジメンによる化学放射線療法(CRT)は切除不能Stage III NSCLCの標準治療の1つとして確立された。しかし、CRTによる累積毒性と長期生存はまだ明らかになっていない。国立がん研究センター東病院の善家 義孝氏は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、わが国のStage III NSCLCにおけるCRTの生存と毒性の10年間追跡調査の結果を報告した。・対象:切除不能Stage IIIA/B NSCLC(70歳未満、PS 0~1)・対照群[A群]シスプラチン+ビンデシン+MMC(4週ごと2サイクル)+TRT(60Gy)→シスプラチン+ビンデシン+MMC(4週ごと2サイクル)・試験群[B群]イリノテカン+カルボプラチン(毎週6週間)+TRT(60Gy)→カルボプラチン+イリノテカン(3週ごと2サイクル)[C群]パクリタキセル+カルボプラチン(毎週6週間)+TRT(60Gy)→パクリタキセル+カルボプラチン(3週ごと2サイクル)。・評価項目:5年および10年の全生存(OS)率、晩期毒性(CRT開始後90日以降に発生) 主な結果は以下のとおり。・2001年9月~2005年9月に440例が登録され、A群(n=146)、B群(n=147)、C群(n=147)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は140ヵ月であった。・OSはA群20.5ヵ月に対しB群19.8ヵ月(ハザード比[HR]:1.18、95%信頼区間[CI]:0.82~1.51)、C群22.0ヵ月(HR:1.01、95%CI:0.79~1.30)であった。・5年OS率はA群20.8%、B群16.0%、C群18.3%、10年OS率はそれぞれ13.6%、7.5%、15.2%であった。・5年無増悪生存(PFS)率はA群10.2%、B群10.8%、C群12.3%、10年PFS率はそれぞれ8.5%、5.9%、11.1%であった。・Grade3/4の晩期毒性はA群3.4%(心臓0.7%、肺2.7%)、B群で3.4%(肺のみ)、C群4.1%(肺のみ)、Grade5は、C群で0.7%(肺のみ)であった。 C群のカルボプラチン+パクリタキセルは、A群と同程度の効果と毒性プロファイルを有していることが示された。10年OS率15%、PFS率11%という結果から、免疫療法を含めた新たな治療戦略が必要だとしている。 発表者の善家義貴氏との1問1答はこちら。この試験を行った背景について教えてください。 Stage IIIのCRTは従来5年生存をcureの指標としていましたが、がん患者さんの生存が延長した現在、cureは10年生存でみるべきだといえます。しかし、CRTを10年間観察した大規模研究はありませんでした。そこで、今回初めて、CRTが10年という長期のcureを実現しているのかを追跡評価しました。この結果をどう評価されますか。 今までCRT後の生存率は5年で20%と言われていましたが、その後はどのようになるのか明らかになっていませんでした。今回の試験で、10年で15%というデータが出たことは重要だと思います。 また現在、実臨床で使われているCRTの化学療法は、ほとんどがC群のカルボプラチン+パクリタキセルだと思います。当試験の結果からも、このレジメンが効果、安全性ともにスタンダードであると言えると思います。この試験で苦労されたことは? 10年間、患者さんの生存調査をすることは大変な作業でした。しかし、この難しい作業を研究者の先生方は快く協力していただけました。その背景には、この研究の結果をぜひ知りたいという強い興味が、肺がん診療医にあったのではないかと思います。 CRTはcureを目指す治療です。10年生存15%は満足な数字だとは言えません。今後は免疫療法などで、どこまで引き上げられるかが課題です。

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進行NSCLCの初回治療、ニボルマブ+イピリムマブが有効/NEJM

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法による初回治療はPD-L1発現レベルを問わず、化学療法と比較して全生存(OS)期間を延長することが認められた。また、長期追跡において新たな安全性の懸念は生じなかった。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのMatthew D. Hellmann氏らが、第III相の無作為化非盲検試験「CheckMate-227試験」の結果を報告した。進行NSCLC患者を対象とした第I相試験において、とくにPD-L1陽性患者で、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法がニボルマブ単剤療法よりも奏効率が良好であることが示され、NSCLC患者におけるニボルマブ+イピリムマブの長期的な有効性を評価するデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2019年9月28日号掲載の報告。進行NSCLC患者約1,700例についてOSで評価 研究グループは2015年8月~2016年11月に、StageIVまたは再発NSCLCでPD-L1発現率1%以上の患者1,189例を、ニボルマブ+イピリムマブ併用群、ニボルマブ単剤群、化学療法群のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けた。また、PD-L1発現率1%未満の患者550例について、ニボルマブ+イピリムマブ併用群、ニボルマブ+化学療法併用群、化学療法単独群のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けた。患者は全例、化学療法歴がなかった。 主要評価項目は、PD-L1発現率1%以上の患者における化学療法群と比較したニボルマブ+イピリムマブ併用群のOSであった。PD-L1発現率を問わず、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法でOSが延長 PD-L1発現率1%以上の患者において、OS中央値はニボルマブ+イピリムマブ併用群17.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.0~20.1)、化学療法群14.9ヵ月(95%CI:12.7~16.7)であった(p=0.007)。2年OS率は、それぞれ40.0%および32.8%、奏効期間中央値は23.2ヵ月および6.2ヵ月であった。 OSの延長は、PD-L1発現率1%未満の患者においても確認され、ニボルマブ+イピリムマブ併用群17.2ヵ月(95%CI:12.8~22.0)、化学療法群12.2ヵ月(95%CI:9.2~14.3)であった。 本試験に組み込まれた全患者のOS中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ併用群17.1ヵ月(95%CI:15.2~19.9)、化学療法群13.9ヵ月(95%CI:12.2~15.1)であった。 Grade3/4の治療関連有害事象が発現した患者の割合は、ニボルマブ+イピリムマブ併用群32.8%、化学療法群36.0%であった。

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進行肺がん患者への緩和ケアは生存ベネフィットあり/JAMA Oncol

 緩和ケアは進行肺がん患者の生存ベネフィットと関連していることが、米国・オレゴン健康科学大学のDonald R. Sullivan氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、示唆された。緩和ケアは患者中心のアプローチでQOL改善と関連するが、これまで生存ベネフィットとの関連については、さまざまな結果が示されていた。また、そのことが、緩和ケアが十分活用されない要因ともされている。今回の結果を踏まえて著者は、「緩和ケアは、進行肺がん患者において、疾患修飾治療を補完するアプローチとして考慮されるべきである」と述べている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。 研究グループは、早期の緩和ケアが進行肺がん患者の生存利益と関連しているかどうかを評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った。対象は、2007年1月1日~2013年12月31日までに肺がんと診断され、退役軍人ヘルスシステムで治療を受けた進行肺がん(StageIIIB/IV)患者2万3,154例で、2017年1月23日まで追跡した。解析は、2019年2月15日~4月28日に行った。 緩和ケアは、肺がん診断後に受けた専門医による緩和ケアと定義し、主要評価項目は生存とした。緩和ケアと死亡した場所との関連も解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象2万3,154例のうち、57%が緩和ケアを受けた。・患者背景は、平均年齢68歳、98%が男性であった。・がんの診断と緩和ケアの受診のタイミングを調査した結果、緩和ケアを受けなかった患者と比較して、診断後0~30日での緩和ケア受診は生存率の低下と関連し(補正後ハザード比[aHR]:2.13、95%信頼区間[CI]:1.97~2.30)、診断後31~365日の緩和ケア受診は生存率の増加と関連し(0.47、0.45~0.49)、診断後365日以降では生存率に差は認められなかった(1.00、0.94~1.07)。・緩和ケアの受診は、救急受診での死亡リスク低下とも関連していた(補正後オッズ比:0.57、95%CI:0.52~0.64)。

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最近の話題:AMG-501とFLAURA【侍オンコロジスト奮闘記】第81回

第81回:最近の話題:AMG-501とFLAURAWEB会議システムで直接録画しているため、画像音声が乱れております。ご了承ください。KRAS変異肺がんに対するKRAS阻害薬AMG510の成績/WCLC2019HR0.799、オシメルチニブ1次治療、肺がんのOS有意に改善(FLAURA)/ESMO2019

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再発悪性胸膜中皮腫に対するペムブロリズマブの成績/ESMO2019

 悪性胸膜中皮腫(MPM)はアグレッシブな腫瘍で、予後も不良である。プラチナベース化学療法の再発後は生存を改善する治療法はないが、実臨床ではビノレルビンやゲムシタビンが用いられる。そのような中、KEYNOTE-028の拡大コホートなどで免疫チェックポイント阻害薬の有効性が示されている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)ではペムブロリズマブ単剤による既治療のMPMに対する無作為化比較第III相試験ETOP PROMISE-mesoの結果が発表された。・対象:プラチナベース化学療法で進行したMPM(PS 0~1)・試験群:ペムブロリズマブ200mg/日3週ごと・対照群:任意の化学療法(ゲムシタビンまたはビノレルビン)・評価項目: [主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]奏効率(ORR)、治療成功期間(TTF)、全生存期間(OS)、治験担当医評価のPFS、有害事象 治療は病勢進行(PD)となるまで続けられ(最大2年間)、化学療法群ではPD後のペムブロリズマブへのクロスオーバーが許容された。 主な結果は以下のとおり。・151例が登録され、ペムブロリズマブ群73例と化学療法群71例に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は11.8ヵ月であった。・化学療法群の63%がペムブロリズマブにクロスオーバーした。・主要評価項目であるBICR評価のPFSは、ペムブロリズマブ群2.5ヵ月、化学療法群は3.4ヵ月と、両群に差はみられなかった(ハザード比[HR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.73~1.53、p=0.76)。・ORRは、ペムブロリズマブ群22%、化学療法群6%と、ペムブロリズマブ群で有意に良好であった(p=0.004)。・OSはペムブロリズマブ群10.7ヵ月、化学療法群11.7ヵ月と、両群に差はみられなかった(HR:1.04、95%CI:0.66~1.67)。・PD-L1別のPFS[PD-L1 1%未満]ペムブロリズマブ群4.2ヵ月に対し、化学療法群は4.4ヵ月(HR:1.26、p=0.57)[PD-L1 1%以上]両群とも3.2ヵ月であった(HR:1.06、p=0.82)。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)は、ペムブロリズマブ群69.4%、化学療法群は72.9%であった。Grade3以上のTRAEは、ペムブロリズマフ群19.4%、化学療法群は24.3%であった。 ペムブロリズマブ単剤は化学療法に比べOS、PFSとも違いは示されなかったものの、MPMのORRは有意に改善した。さらに、ペムブロリズマブのベネフィットを特定する探索的トランスレーショナル研究が進行中だという。

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ペムブロリズマブ単剤のNSCLC1次治療、日本の実臨床での成績/ESMO2019

 ペムブロリズマブと化学療法の併用は、PD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の初回治療において、化学療法に比べ著明な生存ベネフィット効果を示す。しかし、その毒性はペムブロリズマブ単剤に比べ高い。そのため、実臨床において、PD-L1 50%以上のNSCLC患者にペムブロリズマブ単剤を用いるか、化学療法との併用を用いるか、その判断は難しい。加えて、それらの試験対象は良好な状態の患者であり、その結果は実臨床の状況を完全に反映しているとは限らない。 そのため、実臨床においてペムブロリズマブ単剤が適合する患者を特定するとともに、多様な患者におけるペムブロリズマブ単剤の効果と安全性を評価することを目的に、Hanshin Oncology critical Problem Evaluate group(HOPE)の11施設で、多施設後ろ向きコホート研究を実施している。その第2回解析の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、大阪国際医療センターの田宮 基裕氏が発表した。 主な結果は以下のとおり。・2017年2月1日~2018年4月30日に213例の患者が登録された。年齢中央値は71歳、男性が176例(82.6%)、ECOG PS0~1が172例(80.8%)であった。・PD-L1はTPS50~74%が97例(45.5%)、75~89%が55例(22.1%)、90~100%が69例(32.4%)であった。・Grade3以上の有害事象(AE)は39例(18.3%)に発現した。頻度の高い重篤なAEは肺炎(10例、4.7%)であったが、死亡患者はいなかった。・全奏効率は51.2%、病勢コントロール率は73.2%であった。・無増悪生存期間(PFS)中央値は8.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.0~10.7)、全生存期間(OS)中央値は17.8ヵ月(95%CI:17.8~NA)であった。・単変量解析では、ECOG PS(0~1対2以上のハザード比[HR]:2.11、p=0.00061)、炎症CRP/ALB(0.3未満対0.3以上のHR:1.88、p=0.00148)、およびステロイド使用(使用なし対使用のHR:3.17、p=0.00034)が、ペムブロリズマブのPFSと有意な相関を示した。・多変量解析では、ECOG PS(0~1対2以上のHR:1.69、p=0.03138)、CRP/ALB(0.3未満対0.3以上のHR:1.92、p = 0.00153)、ステロイド使用(使用なし対使用のHR:2.94、p=0.00267)、PD-L1(50~89%対90~100%のHR:0.65、p=0.04984)が、ペムブロリズマブのPFSと有意な相関を示した。 この研究では、患者背景はさまざまであったが、結果は以前の主要な臨床試験の有効性と安全性と一致していた。また、PS不良、高炎症状態(CRP/ALB≥0.3)、およびペムブロリズマブ治療開始時のステロイド使用は、より短いPFSと独立して相関していた。 発表者の田宮 基裕氏との一問一答はこちら。この試験を実施した理由はどのようなものですか。 KEYNOTE-024、042など、ペムブロリズマブ単剤の1次治療のデータは治験のデータが多く、リアルワールドのデータはあまりありません。さまざまな患者が含まれるリアルワールドデータをいち早く出したいと考え、関西を中心に、肺がん診療を行うアクティブな先生方を集め、この試験を計画・実施しました。この試験でのサバイバルの結果をどう思われますか。 今後、長くみていくと、もう少し落ちてくるとは思いますが1年のOSが7~8割ですし、PFSも40%でテールを引いているので、全体的に良好だと思います。PD-L1のカットオフを90%にしていますが。 Annals of Oncologyなど海外ジャーナルでも、PD-L1 90%以上でデータが報告されています。自分たちも実際にやってみると、差が出たのは90%でした。本研究のPD-L1超高発現の研究は、現在、大阪大学に勤務されている枝廣先生が、さらに詳しくPLOS ONEにて報告しております。1次治療でもステロイドが入っている患者さんがいらっしゃいますね。 初回治療なのであまり入っていないと思っていたのですが、少しおられますね。喘息など自己免疫疾患の患者さんにはペムブロリズマブが使われないことが多いので、食欲不振、PS不良、疼痛、脳転移などで使われていることが多いと思います。試験で苦労したことはどのようなことですか。 まずはデータを集めることです。アクティブな先生方に集まっていただいたとはいえ、リアルワールドではさまざまなデータが入ってきます。早くデータを出すために、結果として何を出すのか、事前にかなり検討しました。また、データの収集・解析には非常に労力がかかります。協力施設の先生方には、日常業務の中、そういう厳しい仕事をしていただきました。苦労した先生方にも恩恵が出るようにしようと考え、共同演者としてお名前を出さしていただいております。また、今後も、協力施設の先生方からも本研究のデータを用いた論文が出る事を期待しています。この研究は今後も継続されるのでしょうか 今回は第2回のデータ解析ですが、今後第3回の解析を行い、さまざまな角度から発表していきたいと思います。 なお、この研究結果は、Investigatoinal New Drugs誌8月7日号オンライン版に発表されている。

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小細胞肺がんに対するデュルバルマブ+化学療法の成績(CASPIAN)/ESMO2019

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)においてデュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)と化学療法の併用を評価する第III相CASPIAN試験の結果が、世界肺がん学会(WCLC2019)で発表され、化学療法へのデュルバルマブの追加により、全生存期間(OS)の有意な改善が示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)では、最新の解析結果が、スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis Paz-Ares氏により報告された。・対象:未治療のES-SCLC患者(WHO PS 0/1)・試験群: デュルバルマブ+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+EP群) デュルバルマブ+tremelimumab+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+T+EP群)・対照群:  エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(EP群)・評価項目: [主要評価項目]OS [副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)、安全性、忍容性 ESMO2019での発表は、D+EP群とEP群における、臨床関連分析(Clinically relevant analysis)の結果である。 主な結果は以下のとおり。・2019年3月11日の時点で、D+EP群265例とEP群266例が各治療を受けた。・OS中央値はD+EP群13.0ヵ月、EP群10.3ヵ月で、D+EP群が有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.591~0.090、p=0.0047)・PFS中央値はD+EP群5.1ヵ月、EP群5.4ヵ月であった(HR:0.78、95%CI:0.645~0.936)・PD-L1評価可能な症例277例(D+EP群151例、EP群126例)のうちPD-L1発現が1%未満の症例は、TCで94.9%、ICで77.6%と、PD-L1発現症例は少なかった。・PD-L1発現とOSの関係は示されなかった(TCのp=0.54、ICのp=0.23)。・患者報告アウトカム(PRO)による症状悪化までの期間(TTD)は、すべての項目においてD + EP群が長かった。 ES-SCLCの1次治療におけるデュルバルマブのエトポシド+シスプラチン/カルボプラチンへの追加は、有意にOSを改善する一方、QOLを維持し、症状悪化までの時間を延長した。

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血糖降下薬ピオグリタゾンの肺がん予防効果?

 経口血糖降下薬にがん予防効果があるのか。米国・ロッキーマウンテン地方退役軍人医療センターのRobert L. Keith氏らは、肺がんの発症リスクが高い現喫煙者や元喫煙者において、経口血糖降下薬ピオグリタゾンに肺がんの発症予防効果があるかを検討する第II相無作為化試験を行った。その結果、有意ではないがわずかに効果が期待できる所見や、特異的病変で組織学的改善が認められたという。著者は「さらなる試験を行い、反応性異形成の特徴を明らかにする必要がある」と述べている。これまでに、前臨床試験でチアゾリジン系薬が肺がんを予防することが、また同薬を服用する糖尿病患者で肺がんの割合が低いことが示唆されていた。Cancer Prevention Research誌2019年10月号掲載の報告。 研究グループは、喀痰細胞診で異型性または気管支鏡検査で異形成が認められた、肺がんの発症リスクが高い現喫煙者または元喫煙者において、経口ピオグリタゾンの肺がん発症予防効果を検討する、二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。 被験者は、試験登録時および6ヵ月の治療完遂後に気管支鏡検査を受け、生検組織スコアが記録された。 主要評価項目は、両群間の最も不良な生検スコア(Max)。副次評価項目は、異形成指標(DI)、平均スコア(Avg)の変化であった。また、炎症スコアも評価した。 主な結果は以下のとおり。・試験には92例(ピオグリタゾン群47例、対照群45例)が参加し、76例が2回の気管支鏡検査を完了した(ピオグリタゾン群39例、対照群37例)。・ベースラインで異形成が認められたのは現喫煙者で有意に多く、同被験者の64%が試験登録時に軽度以上の異形成を有していた。・ピオグリタゾン治療を受けた元喫煙者は、わずかだがMax値の改善が認められた。一方、現喫煙者は、わずかだが増悪が認められた。・Avg値とDI値については、治療群で統計的に有意な変化は認められなかったが、元喫煙者では、両値ともにわずかな低下が観察された。また、現喫煙者では両値についてごくわずかな変化が認められた。・細胞増殖マーカーのKi-67値は、ベースラインで異形成が認められピオグリタゾン治療を受けた元喫煙者で、減少の傾向がみられた。

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小細胞肺がんに対するアテゾリズマブ+化学療法の成績(IMpower133)/ESMO2019

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対する、カルボプラチン・エトポシドへのアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)の追加効果を評価する第III相試験IMpower133では、アテゾリズマブの追加による生存改善が、世界肺がん学会(WCLC2019)で示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)では、同試験の全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、奏効率(ORR)、安全性について最新のデータが発表され、ドイツ・Lung Clinic GrosshansdorのMartin Rech氏が報告した。 IMpower133は、未治療のES-SCLC患者403例を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検第I/III相試験。・対象:全身治療未実施のES-SCLC患者(症状がない既治療のCNS病変を有する患者を含む、PS 0~1)・試験薬:アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル(アテゾリズマブ群)・対照薬:プラセボ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル(プラセボ群)・評価項目: [主要評価項目]OS、治験医師評価による無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]ORR、DOR、安全性 主な結果は以下のとおり。・今回の追跡期間中央値は22.9ヵ月であった。・OS中央値はアテゾリズマブ群12.3ヵ月、プラセボ群10.3ヵ月と有意にアテゾリズマブ群で良好であった(HR:0.76、95%CI:0.60~0.95、p=0.0154)。・ORRはアテゾリズマブ群60.2%、プラセボ64.4%であった。・DORはアテゾリズマブ群4.2ヵ月、プラセボ3.9ヵ月であった。・PD-L1 1%以上(TC or IC)のOSはアテゾリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群10.6ヵ月(HR:0.87)、PD-L1 1%未満(TC or IC)OSはアテゾリズマブ群10.2ヵ月、プラセボ群8.3ヵ月(HR:0.51)であった。・Grade3/4の有害事象はアテゾリズマブ群67.7%、プラセボ群63.3%、Grade5は共に1.5%の発現率であった。

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ALK陽性肺がんの脳転移例に特化したセリチニブの臨床効果(ASCEND-7)/ESMO2019

 脳転移は、ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(ALK陽性NSCLC)の30~50%に発生し、予後も不良である。第2世代ALK-TKIセリチニブは、ALK陽性NSCLCの脳転移病変に対する抗腫瘍活性が報告されている。そのような中、脳転移のあるALK陽性NSCLCのみを対象に、セリチニブの抗腫瘍活性を評価する第II相多施設オープンラベル試験ASCEND-7が行われ、その結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、ワシントン大学のLaura QM Chaw氏が発表した。・対象:進行性の脳and/or髄膜転移を有するALK融合遺伝子陽性NSCLC(PS0~2)・試験群: ARM1:脳照射あり、ALKi投与あり(n=42) ARM2:脳照射なし、ALKi投与あり(n=40) ARM3:脳照射あり、ALKi投与なし(n=12) ARM4:脳照射なし、ALKi投与なし(n=44) ARM5:髄膜がん腫症(n=18) 各群ともセリチニブ750mg/日(空腹時服用)を28日ごとに投与された。当発表では、ARM1~4の解析について報告された。・評価項目: [主要評価項目]全身の奏効率(ORR) [副次評価項目]治験担当医評価による全身のDCR;脳内/脳外のORR、病勢制御率(DCR)、奏効期間(DOR);全身のDOR、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性、薬物動態(PK)など 主な結果は以下のとおり。・全身ORRはARM1 35.7%、ARM2 30.0%、ARM3 50.0%、ARM4 59.1%であった。・全身DCRはARM1 66.7%、ARM2 82.5%、ARM3 66.7%、ARM4 70.5%であった。・全身DORはARM1 10.8ヵ月、ARM2 12.8ヵ月、ARM3 NE、ARM4 9.2ヵ月であった。・全身PFSはARM1 7.2ヵ月、ARM2 5.6ヵ月、ARM3 NE、ARM4 7.9ヵ月であった。・脳内ORRはARM1 39.3%、ARM2 27.6%、ARM3 28.6%、ARM4 51.5%であった。・脳内DCRはARM1 75.0%、ARM2 82.8%、ARM3 85.7%、ARM4 75.8%であった。・有害事象は従来の報告と同様であった。 セリチニブは、脳転移に対する、高く持続的な効果を、すべてのARMで示したが、その効果はとくにALKi未投与患者でより高かった。 Discussantであるオランダ・Maastricht UMCのLizza Hendriks氏は、当試験のセリチニブの用法は750mg空腹時投与だが、薬物動態から考え、現在の用法である450mg食後投与でも同様の脳転移への結果が期待できるであろうと述べた。

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PD-L1陽性肺がん、ペムブロリズマブ+化学療法の有効性とTMBに関連性示されず/ESMO2019

 ペムブロリズマブ+プラチナベース化学療法は組織型、PD-L1発現の有無にかかわらず、転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)に生存ベネフィットをもたらす。また、腫瘍変異負荷はNSCLCを含む固形がんの潜在的バイオマーカーとして興味を持たれている。スペイン・Hospital Universitario Doce de OctubreのLuis Paz-Ares氏らは、KEYNOTE-021(コホートCおよびG)、-189、-407のNSCLC患者における組織腫瘍変異負荷(tTMB)とペムブロリズマブ+化学療法の効果との関係を評価する探索的研究を行い、その結果を欧州臨床学会(ESMO2019)で発表した。 主要評価項目は、KEYNOTE-021のORR、KEYNOTE-189および-407のORR、PFS、OSであった。tTMBは全エクソンシーケンスにより決定され、事前に設定したカットポイントは175mut/exonである。 主な結果は以下のとおり。・tTMBが評価可能な症例は、KEYNOTE-021では145例中70例、-189では616例中293例、扁平上皮がんを対象にした407では559例中312例であった。・tTMBとペムブロリズマブ+化学療法との効果の関係を全奏効率(ORR)のp値、無増悪期間(PFS)のp値、全生存期間(OS)のp値でみると、KEYNOTE-021、-189、-407いずれの研究でもtTMBとペムブロリズマブ+化学療法の効果の有意な関係は示されなかった。・KEYNOTE-021におけるtTMB175mut/exon以上のOORはペムブロリズマブ+化学療法群71%対化学療法単独群30%、一方、175mut未満では61%対44%であった。KEYNOTE-189におけるtMTB175mut/exon以上のORRはペムブロリズマブ+化学療法群50%対化学療法単独群12%、一方、175mut未満では40%対19%であった。KEYNOTE-407におけるtMTB175mut/exon以上のORRはペムブロリズマブ+化学療法群59%対化学療法単独群45%、一方、175mut未満では64%対39%であった。・KEYNOTE-189におけるtTMB175mut/exon以上のPFSはペムブロリズマブ+化学療法群9.2ヵ月対化学療法単独群4.7ヵ月(HR:0.32)、一方、175mut未満では9.0ヵ月対4.8ヵ月であった(HR:0.51)。KEYNOTE-407におけるtMTB175mut/exon以上のPFSはペムブロリズマブ+化学療法群8.3ヵ月対化学療法単独群4.4ヵ月(HR:0.57)、一方、175mut未満では6.3ヵ月対4.9ヵ月であった(HR:0.68)。・KEYNOTE-189におけるtTMB175mut/exon以上のOSはペムブロリズマブ+化学療法群23.5ヵ月対化学療法単独群13.5ヵ月(HR:0.64)、一方、175mut未満では20.2ヵ月対9.9ヵ月であった(HR:0.64)。KEYNOTE-407におけるtMTB175mut/exon以上のOSはペムブロリズマブ+化学療法群17.1ヵ月対化学療法単独群11.6ヵ月(HR:0.74)、一方、175mut未満では15.0ヵ月対10.4ヵ月であった(HR:0.86)。 同日に発表されたRoy S. Herbs氏らによる探索的研究では、ペムブロリズマブ単剤の効果とtTMBに関係が示された。しかし、Paz-Ares氏らによるこの探索的分析では、ペムブロリズマブ+化学療法の効果とtTMBに有意な関係は組織型、tTMBの高低にかかわりなく、示されなかった。

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PD-L1陽性肺がん、ペムブロリズマブ単剤治療の有効性とTMBに関連/ESMO2019

 PD-L1阻害薬単独およびCTLA-4阻害薬との併用において、組織腫瘍変異負荷(tTMB)がバイオマーカーとして活用できる可能性が示唆されている。しかし、高TMBレベルと生存の関係は前向きに検討されていない。米国・イェール大学のRoy S. Herbst氏らは、KEYNOTE-010およびKEYNOTE-042試験のTMB評価可能患者のサブセットにおける、tTMBと臨床アウトカムの関係を評価する探索的研究を行い、その結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。tTMBは全エクソンシーケンスにより決定され、事前に設定したカットポイントは175mut/exonである。 主な結果は以下のとおり。・tTMBが評価可能な症例は、KEYNOTE-010では1,034例中254例、KEYNOTE-042では1,275例中793例であった。これらの患者の背景因子、アウトカムはいずれも全体集団と変わらなかった・tTMBとペムブロリズマブ単剤との効果の関係みると、KEYNOTE-010での全生存期間(OS)のp値は0.006、無増悪生存期間(PFS)は0.001、全奏効率(ORR)が0.009、KEYNOTE-042でのOSのpは<0.001、PFSは<0.001、ORRが<0.001と、tTMBとペムブロリズマブ単剤との効果は相関した。一方、化学療法ではtTMBと効果との相関は見られなかった。・KEYNOTE-010におけるtTMB175mut/exon以上のOSはペムブロリズマブ単剤群14.1ヵ月対化学療法群7.6ヵ月(HR:0.56)、一方、175mut未満では9.3ヵ月対7.2ヵ月(HR:0.85)であった。KEYNOTE-042におけるtTMB175mut/exon以上のOSはペムブロリズマブ単剤群21.9ヵ月対化学療法群11.6ヵ月(HR:0.62)、一方、175mut未満では12.0ヵ月対12.3ヵ月(HR:1.09)であった。・KEYNOTE-010におけるtTMB175mut/exon以上のPFSはペムブロリズマブ単剤群4.2ヵ月対化学療法群2.4ヵ月(HR:0.59)、一方、175mut未満では3.7ヵ月対3.4ヵ月(HR:1.09)であった。KEYNOTE-042におけるtTMB175mut/exon以上のPFSはペムブロリズマブ単剤群6.3ヵ月対化学療法群6.5ヵ月(HR:0.62)一方、175mut未満では4.1ヵ月対6.3ヵ月(HR:1.27)であった。・KEYNOTE-010におけるtTMB175mut/exon以上のORRはペムブロリズマブ群23.5%対化学療法群9.8%、175mut未満では16.9%対21.1%であった。KEYNOTE-042におけるtTMB175mut/exon以上のORRはペムブロリズマブ群34.4%対化学療法群30.9%、175mut未満では18.8%対22.4%であった。 この探索的研究では、高tTMBレベルは、PD-L1陽性NSCLCにおける、ペムブロリズマブ単剤治療の臨床結果の改善と相関した。Herbst氏は、この結果から、tTMBはPD-L1陽性進行NSCLCに対するペムブロリズマブ単剤治療に追加の情報を提供する可能性が示唆されると述べた。

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医師も学会も「発信体質」になろう【Doctors' Picksインタビュー】第4回

――ご自身のブログ「肺癌勉強会」で新たな研究結果を紹介しているほか、FacebookやTwitterでも頻繁に情報を発信していらっしゃいます。多忙の中ここまでされる理由をお聞かせください。私が勤務している川崎市立 川崎病院は公立の総合病院なので、肺がんだけでなく、喘息やCOPD、肺炎などの一般的な呼吸器の疾患も診ています。しかし昨年のデータでは、呼吸器内科で受け持った約1,500人の入院患者のうち、約半数は肺がんでした。地域の中核病院ですから、紹介で来院されるがん患者さんは多く、がんは肺炎などの呼吸器疾患より求められる専門性が高いので、それに応える必要があります。この病院に来たころから、自分の肺がん治療への知識不足を感じるようになりました。どの疾患も日々治療法は進化しており、日々の勉強が大事なのは同じですが、肺がん領域はとくにその変化が激しい。日々論文が発表され、ガイドラインの変更も多く、昨年勉強した治療のストラテジーがもう使えなくなる。この変化の大きさが、喘息や肺炎とは大きく異なる点だと思います。こと肺がんに関しては、自分に負荷を課して勉強しないと診療に当たれない、目の前の患者さんを助けられない、という切迫感がありました。それが5年ほど前のことです。そこから、肺がん関連の論文を片っ端から読みはじめました。PubMedで肺がん関連の気になる単語を検索し、上から順に読むのです。あまりに大量なので、自分の中で整理するために各論文の要点をメモにまとめたことがブログのスタートになりました。自分の勉強の記録を残すツールにすぎなかったものが、こんなに続くとは思っていませんでしたし、ほかの方に見てもらえるとはさらに思っていなかったですね。――ブログのほかにもFacebookやTwitterを使われ、まめに更新されています。毎日の負荷は相当だと思うのですが、どんな風にサイクルを回しているのでしょうか?勉強することはインプットに当たりますが、それを自分の頭に保持するにはアウトプットが重要です。「人に教えたこと」や「文章に書いたこと」は忘れにくい、というアレです。よって、私の中でインプットとアウトプットは完全にセットです。ベストセラーになった、樺沢 紫苑先生の『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版. 2018年)やマイクロソフト日本法人元社長の成毛 眞氏の『黄金のアウトプット術』(ポプラ社. 2018年)などにも、「インプットだけでなくアウトプットの重要性」が書かれていて納得しました。これらの本で気付いたというよりは、「自分なりにずっとやってきたことを再確認した」という感覚です。――実際に論文を読む時間は、どうやって確保されているのでしょう?1本の論文を読み込むのにかかる時間はトータルで2時間ほど。病院への通勤時間、電車の中で読むことが一番多いですね。とはいえ、一度に連続した2時間はとれないので、スキマ時間をかき集めています。具体的には、平日の勤務後や週末の時間を使い、PubMedで気になるキーワードを入れて論文を検索します。そうして集めた論文はすべてPDF化してプリントアウトし、クリアファイルに挟んでおきます。出勤時にはそこから数枚取り、手帳などに挟んでおくのです。また、手帳だけでなく、かばんや白衣のポケットなどあちこちに挟んでおき、休憩時間や勤務中のエレベーターの待ち時間などで30秒程度あればさっと目を通すのです。気になったところにマーカーを引き、再び夜や週末に見返してブログなどにアップする、という流れです。読み込みを始めた当初は、最初から最後まで和訳していたのですが、次第に時間的に厳しくなり、かつ意味も薄いことがわかったので、最近はAbstract、ポイントになるfigure、discussionの部分を中心に見ています。筆者はどんな点に着目してこのデータを解析したのかという部分が大事なので、そこは落とさず確認するようにしています。――読むべき論文は、どのように選んでいるのでしょう?ブログを始めた当初はLancetやNEJMなど一流誌を中心に読んでいたのですが、やっていくうちに気付いたのは、こうした主要誌の論文は日本の医療雑誌やサイトがすぐ翻訳し、高名な先生が解説も付けてくれるのです。それらと速さで張り合っても意味がないので、一流誌はそちらで目を通しつつ、いま現在の私は、医療メディアがあまり取り上げない、最先端というよりは明日の臨床で活かせる本邦での研究やリアルワールドな論文を中心に探しています。たとえば、高齢者に対象を絞っている研究、間質性肺炎の併存症のある症例、がん性髄膜炎や脳転移のある症例を集めた研究であったりします。大規模スタディには載らないセッティングや、小規模であっても日本で行われたデータが臨床の場では貴重なので、こうしたものに目を光らせているのです。私は英語がネイティブではなく、肺がんを専門に勉強したこともなかったので、最初は用語を調べるのにかなりの時間を要しました。それでも、数年も続けていれば人は慣れます。今ではずいぶん速く読めるようになりましたし、読みはじめて興味がなければゴミ箱へ、面白いと思ったものだけを熟読する、といった判別もすぐにつくようになりました。――ブログ、Facebook、Twitterなど、ツールごとの使い分けはどうされているのでしょう?自分のブログは、医療者・専門家が見ることを前提に専門性の高い内容にしています。「EGFR」「複合免疫療法」などの用語も注釈なしでそのまま使っています。Facebookはつながりのある人との少し狭いコミュニティなので、「ブログにこんなことを書いた」「こんな面白い記事があった」といった活動や情報をシェアする場として使っています。Facebookでは読んだ本の書評も書いているのですが、肺がんを患われた医師がご自身の病期について書かれた本1)に感銘を受けて感想を上げたところ、ご本人から直接メッセージをいただくことができました。こうしたつながりがSNSの面白さであり、楽しさですね。Twitterの場合は匿名性が高く、自分のフォロワーが誰なのか、すべては把握できません。看護師や薬剤師などの医療関係者ともつながっていますし、患者さんやご家族もいるかもしれません。拡散力が高いのも特徴なので、より一般的な話題を、わかりやすい言葉で発信することを意識しています。このほかにも医療者向けSNS2)やメディアでも発信しているので、1つの論文をいくつか切り口を変えて取り上げることも多いですね。――医療者の情報発信についてどうお考えですか?今の時代、ネットに医療情報はあふれかえっており、患者さんは病院や自身の疾患について膨大な量の情報に接して来院されます。それなのに、医師サイドはまだまだ情報弱者が多い。ごくごく限られた医師が多大な労力を払って発信を続けている、というのが現状でしょう。Twitter上には多くの有名医師の方々がいますが、パパ小児科医(ぱぱしょー)先生(@papa_syo222)、アレルギーご専門のほむほむ先生(@ped_allergy)は長く続けられているだけあって、一般の方が興味を持つネタや言葉の選び方が上手で参考になります。一般の読者やフォロワーが増えると、自分の発言にはとくに気を付けねばならなくなります。私はどのツールでも名前や立場をオープンにしているので、発言は「医師が発信している情報」として見られます。質の低い情報を発信することは許されません。医療情報をアップするときは、慎重に見直すようにしています。医療者のネットリテラシー向上のためには、学会から変わるといいのでは、と思います。私がTwitterを本格的に始めたのは、2019年の呼吸器学会がきっかけでした。一緒に参加した親しい医師と「Twitterで学会中のトピックスをツイートしてみよう」という話になったのです。思い立ったのは学会の2週間前と時間はなかったのですが、学会事務局に連絡して快諾をいただきました。ハッシュタグをつくり、知り合いの製薬会社の方に呼び掛けたり、母校のメーリングリストで告知するなど、急ごしらえながら準備をしました。会期中のツイートは全部で200ツイート程度でしたが、リツイートも多く、当事者としては大きな満足感がありました。そこまで関心を持っていない発表であっても「伝えなければ」と思えば本腰を入れて聴講しますし、ポイントを捉えようとします。「新しい学会の楽しみ方」という感じがありました。また、ツイートしている同士で同じ演題への見方・捉え方が違うなどの点も、興味深いものがありました。さまざまな知見がたまったので、また別の学会でも取り組みたいと考えています。欧米の学会では、アプリやネットに上がった抄録からすぐに感想をツイートし、発表者自身もキースライドを即時に投稿して世界中から反応が集まる、という時代になっています。日本の研究者・学会も、どんどん情報発信をしないと世界から置いていかれてしまうでしょう。電話帳のような学会抄録とはお別れし、講演スライドも公開したり販売したりすればいい。知見はシェアすることでさらに入ってくる時代になっているのですから。1)『Passion(パッション)~受難を情熱に変えて~』(前田恵理子/著. 医学と看護社. 2019年)2)Doctors’Picksこのインタビューに登場する医師は医師専用のニュース・SNSサイトDoctors’ PicksのExpertPickerです。Doctors’ Picksとは?著名医師が目利きした医療ニュースをチェックできる自分が薦めたい記事をPICK&コメントできる今すぐこの先生のPICKした記事をチェック!私のPICKした記事悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブの本邦での効果と安全性中皮腫に対するニボルマブの投与は、日本においては2018年に適応拡大が承認され、まさに今、実臨床で使われはじめたところです。本研究の広島大学・岡田 守人先生をはじめ、全国で症例を集めている途上にあります。呼吸器を専門とする医師であれば、誰もが注目するトピックスでしょう。私が重視する「明日の臨床に役立つデータ」だと判断し、発表後すぐに自分のブログで取り上げ、多くの方の目に留まるようDoctors'PicksでもPickしました。

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免疫チェックポイント阻害薬の効果、抗菌薬投与で減弱?

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果を左右する興味深い知見が発表された。広域抗菌薬(ATB)療法によって引き起こされるディスバイオシス(dysbiosis、腸内細菌叢の破綻)が、ICIの効果を減弱する可能性があるという。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドン、ハマースミス病院のDavid J. Pinato氏らが、実臨床でICI治療を受ける患者を対象に前向き多施設コホート研究を行い、ICI投与前のATB投与により、全生存期間(OS)および奏効率が悪化したことを示した。著者は「ICI治療予後不良の決定要因として、ATBを介した腸内細菌叢の変化の解明が喫緊の課題である」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月12日号掲載の報告。 研究グループは、ICI治療と同時またはICI投与前のATB療法と、通常の臨床診療にてICI治療を受けたがん患者のOSおよび奏効との間に関連があるかどうかを評価する目的で、3次医療施設2施設にて前向き多施設コホート研究を実施した。 対象は、臨床試験ではなく通常診療でICI治療を受けるがん患者で、2015年1月1日~2018年4月1日に196例が登録された。 主要評価項目は、ICI治療開始からのOS、RECIST(ver. 1.1)に基づく奏効、ICI治療抵抗性(ICI初回投与後、pseudo-progressionを認めることなく6~8週で進行と定義)であった。 主な結果は以下のとおり。・196例の患者背景は、男性137例、女性59例、年齢中央値68歳(範囲:27~93歳)で、がん種別では非小細胞肺がん119例、悪性黒色腫38例、その他39例であった。・OSは、ATB事前投与例2ヵ月、同時投与例26ヵ月(ハザード比[HR]:7.4、95%CI:4.2~12.9)であった。・同時投与はOSと関連しなかったが(HR:0.9、95%CI:0.5~1.4、p=0.76)、ATB事前投与は事前投与なしと比較してOSの有意な悪化が認められた(HR:7.4、95%CI:4.3~12.8、p<0.001)。・ICI治療抵抗性は、事前投与例が21/26(81%)で、同時投与例の66/151(44%)と比較して有意に高率であった(p<0.001)。・事前投与ありは事前投与なしと比較して、がん種にかかわらず一貫してOSが不良であった(非小細胞肺がん:2.5 vs.26ヵ月[p<0.001]、悪性黒色腫:3.9 vs.14ヵ月[p<0.001]、その他の腫瘍:1.1 vs.11ヵ月[p<0.001])。・多変量解析の結果、ATB事前投与(HR:3.4、95%CI:1.9~6.1、p<0.001)およびICI治療奏効(HR:8.2、95%CI:4.0~16.9、p<0.001)は、腫瘍部位、腫瘍量およびPSとは独立してOSと関連していることが認められた。

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アテゾリズマブ単剤、PD-L1高発現NSCLCで生存改善(IMpower110)/ESMO2019

 PD-L1発現非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療において、アテゾリズマブ単剤と化学療法を比較する第III相試験IMpower110の中間解析の結果が、スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、米国:Sarah Connon Research IncstituteのDavid R Spigel氏が発表した。IMpower110の中間解析でアテゾリズマブ単剤療法は有効な選択肢 ・対象:PD-L1陽性のStage IVNSCLC(扁平上皮および非扁平上皮)・試験群:アテゾリズマブ 3週ごと→アテゾリズマブ 3週ごと・対照群: [非扁平上皮がん]シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド 4または6週ごと→ペメトレキセド [扁平上皮がん]シスプラチン/カルボプラチン+ゲムシタビン4または6週ごと→BSC 各群のレジメンに従いPDとなるまで薬剤を投与した。・評価項目: [主要評価項目]EGFRまたはALK遺伝子野生型集団(WT)のOS [副次評価項目]治験担当医評価の無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR) IMpower110の中間解析の主な結果は以下のとおり。・572例が登録され、アテゾリズマブ群と化学療法群に1:1に無作為に割り付けされた。・PD-L1高発現(TC3またはIC3[TC 50%以上またはIC 10%以上])WT集団におけるOSは、アテゾリズマブ群20.2ヵ月、化学療法群13.1ヵ月で、アテゾリズマブ群で有意に延長した(HR:0.59、95%CI:0.40~0.89、p=0.0106)。・PD-L1中等~高度発現(TC2/3またはIC2/3[TCまたはIC 5%以上])WT集団におけるOSは、アテゾリズマブ群18.2ヵ月、化学療法群14.9月(HR:0.72、95%CI:0.52~0.99、p=0.0416)であったが、事前に決定したα水準を超えなかった。・全PD-L1発現(TC1/2/3またはIC1/2/3[TCまたはIC 1%以上])WT集団におけるOSは、アテゾリズマブ群17.5ヵ月、化学療法群14.1ヵ月であった(HR:0.83、95%CI:0.65~1.07、p=0.148)(TC2/3またはIC2/3集団において事前に設定した水準を超えなかったため、正式に検討されていない)。・PD-L1高発現WT集団におけるPFSは、アテゾリズマブ群8.1ヵ月、化学療法群5.0ヵ月で、アテゾリズマブ群で有意に延長した(HR:0.63、95%CI:0.45~0.88、p=0.007)。・PD-L1高発現WT集団のORRはアテゾリズマブ群38.3%、化学療法群28.6%、DORはアテゾリズマブ群未達、化学療法群6.7ヵ月であった。・全有害事象(AE)はアテゾリズマブ群90.2%、化学療法群94.7%、Grade3~4のAEはアテゾリズマブ群31.8%、化学療法群53.6%で新たに報告されたものはなかった。 発表者のSpigel氏は、アテゾリズマブ単剤療法はPD-L1高発現1次治療の有効な選択肢である可能性を示したと結論付けた。

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CDK4/6阻害薬trilaciclibの小細胞肺がん化学療法における骨髄保護作用/Ann Oncol

 小細胞肺がんの治療においても、化学療法の骨髄毒性は大きな問題である。trilaciclibは、化学療法中の造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)および免疫系機能保護を目的に開発中のCDK4/6阻害薬であり、前臨床において、HSPCのG1期からの移行を一時的に制御し、化学療法のダメージから保護することで、骨髄毒性からの回復を早め抗腫瘍免疫を強化するとされる。trilaciclibの骨髄保存の利点に対する概念実証を強固に示した 未治療の進展型小細胞肺がんにおける、trilaciclibの有効性、安全性および薬物動態を検証した第I/II相試験の結果が発表された。Annals of Oncology誌2019年8月27日号掲載の報告。 同試験はPart1(非盲検、用量設定)とPart2(無作為化、二重盲検プラセボ対照)からなる。Part2では、被験者は無作為に割り付けられ、エトポシド+カルボプラチン(E/P)の各サイクル前にtrilaciclibまたはプラセボを投与された。評価項目は骨髄抑制に対するtrilaciclibの効果と抗腫瘍効果であった。 trilaciclibの有効性を検証した主な結果は以下の通り。・122例の患者が登録された(Part1に19例、Part2に75例)。・trilaciclib群では好中球数、赤血球数、リンパ球の改善が確認された。・Grade3以上の有害事象(AE)はtrilaciclib+E/P群50%、プラセボ+E/P群83.8%とtrilaciclib群で良好であった。その結果は主に血液毒性の減少によるものであった。・trilaciclibに関連するGrade3以上のAEは発生しなかった。・全奏効率はtrilaciclib+E/P群 66.7%、プラセボ+E/P群56.8%であった(p=0.3831)。・無増悪生存期間PFS中央値はtrilaciclib+E/P群 6.2ヵ月、プラセボ+E/P群5.0ヵ月であった(HR:0.71、p=0.1695)。・全生存期間中央値はtrilaciclib+E/P群 10.9ヵ月、プラセボ+E/P群10.6ヵ月であった(HR:0.87、p=0.6107)。 筆者は「この試験の結果はtrilaciclibの骨髄保存の利点に対する概念実証を強固に示した」と結論付けた。

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