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既治療の進展型小細胞肺がん、I-DXdの奏効率48.2%(IDeate-Lung01)/WCLC2025

 既治療の進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)患者を対象に、抗B7-H3(CD276)抗体薬物複合体ifinatamab deruxtecan(I-DXd;DS-7300)の有用性を検討する国際共同第II相試験「IDeate-Lung01試験」。本試験において、I-DXdは有望な治療効果と忍容性が示された。世界肺がん学会(WCLC2025)において、韓国・Samsung Medical CenterのMyung-Ju Ahn氏が本試験の主解析の結果を報告した。試験デザイン:国際共同第II相試験(パート1:用量最適化パート、パート2:用量拡張パート)対象:プラチナ製剤を含む化学療法による治療歴を有し、治療歴が3ライン以下のED-SCLC患者183例<用量最適化パート>試験群1:I-DXd 8mg/kgを3週ごと(46例)試験群2:I-DXd 12mg/kgを3週ごと(42例)<用量拡大パート>試験群:I-DXd 12mg/kgを3週ごと(95例)評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、病勢コントロール率(DCR)、安全性など 今回は、I-DXd 12mg/kgを投与された137例の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は63歳、男性の割合は90%、PS1の割合は77.4%であった。ベースライン時に脳転移、肝転移を有していた割合はそれぞれ38.0%、40.1%であった。治療ライン数が1/2/3の割合は23.4%/54.7%/21.9%であり、抗PD-L1/PD-1抗体による治療歴を有する割合は81.0%であった。・データカットオフ時点(2025年3月3日)のBICRによるORRは48.2%(CR 3例、PR 63例)、DCRは87.6%であった。治療ライン数1、2以上の集団のORRはそれぞれ56.3%、45.7%であり、DCRはそれぞれ96.9%、84.8%であった。・ORRに関するサブグループ解析では、化学療法無治療期間(CTFI)、治療ライン数、脳転移の有無、肝転移の有無などのほとんどのサブグループで一貫した効果がみられた。ただし、CTFIが30日以下(化学療法抵抗性)の集団では、ORRが11.1%と低かった。・BICRによるTTR中央値は1.4ヵ月、DOR中央値は5.3ヵ月であった。・BICRによるPFS中央値は4.9ヵ月であった。3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点のPFS率は68.0%、35.3%、19.3%であった。・OS中央値は10.3ヵ月であった。3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点のOS率は89.1%、77.4%、59.1%であった。・治療期間中央値は4.8ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は36.5%に発現し、治療中止に至ったTRAEの発現割合は9.5%であった。TRAEとしてのILD/肺臓炎は12.4%に発現した(Grade1/2が11例、Grade3が4例、Grade5が2例)。 本試験結果について、Ahn氏は「I-DXd 12mg/kgは既治療のED-SCLC患者において高い有効性を示した。CTFIが30日以下、脳転移ありなどの臨床試験では通常除外されることの多い患者集団も含まれていた点を考えると、特筆すべき結果といえる」とまとめた。なお、既治療のED-SCLC患者を対象として、I-DXdと化学療法(トポテカン、アムルビシン、lurbinectedinのいずれか)を比較する国際共同第III相試験「IDeate-Lung02試験」が進行中である。

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死前喘鳴に対する薬物療法【非専門医のための緩和ケアTips】第107回

死前喘鳴に対する薬物療法死亡直前期の症状の1つである「死前喘鳴」は終末期(とくに死の数時間〜数日前)に見られる呼吸音で、咽頭や気道に貯留した分泌物が振動して生じる「ゼーゼー」という呼吸音です。亡くなる方の40%前後で生じるとされていますので、見たことがある方も多いかもしれません。患者自身に苦痛はないとされますが、周囲の家族にとっては苦しそうに見え、不安や苦悩の原因になります。家族を安心させるために薬剤による治療を行うことが多いですが、供給状況の変化により、手に入りにくいケースも出ています。今回の質問亡くなりそうな患者さんで死前喘鳴を経験することがあります。以前はハイスコを使っていたのですが、発売中止になったと聞きました。これからはどのような対応をするのが良いのでしょうか?ご質問ありがとうございます。抗コリン薬ハイスコ(一般名:スコポラミン臭化水素酸塩水和物)は、「採算が合わない」として製造元が製造発売停止を発表し、経過措置を経て2024年3月に完全に販売が停止しています。さて、ご質問に対して直接的に回答させていただくと、「気道分泌が亢進していることによる喘鳴に対しては、ブスコパン(一般名:ブチルスコポラミン臭化物)の投与が一般的」となります。ハイスコ販売中止の発表以後、どのように対応するかというのは緩和ケア専門家の中で話題になりました。研究においてハイスコとブスコパンの有効率にはあまり差がないことが明らかになっており、実臨床でもブスコパンで代替している医師が多いと思います。亡くなる直前の患者さんの様子は、家族にとって非常に印象深いものです。場合によっては何年も「あの時、苦しそうだったなあ」という思いを抱いて過ごすこともありえます。そういった観点から、何らかの薬物療法を試してみることは、患者の症状緩和はもちろん、家族にとっても重要だと思います。死前喘鳴における「意識はない状態で、苦しそうに見える症状は本当のところ苦しいのか」という問題にはいろいろ意見があり、まだ答えはありません。ただ、「おそらく、ご本人は、苦しさはわからない状況だと思います」というように、ご家族に説明している方が多いのではないでしょうか。また、こういった家族のつらさを和らげるという観点からは、薬物療法以外の対応も重要です。体位を調整したり、口腔ケアを提供したりすることや、苦痛を気に掛け、家族の心配に誠実に対応しようとする姿勢を見せることが大切です。患者だけでなく家族にとっても大切な時間を心穏やかに過ごせるように、支援できると良いですね。今回のTips今回のTips死前喘鳴、ブスコパンのほかに薬物以外のケアも検討しよう。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法がOS改善(FLAURA2)/WCLC2025

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブ+化学療法とオシメルチニブ単剤を比較する国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」が実施されている。世界肺がん学会(WCLC2025)において、本試験の全生存期間(OS)の最終解析結果がDavid Planchard氏(フランス・Institut Gustave Roussy/パリ・サクレー大学)によって報告され、併用群でOSの有意な改善が認められた。すでに主解析の結果、併用群で無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したことが報告されており(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79)1)、OSも第2回中間解析の結果から併用群が良好な傾向が示されていた。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)でStageIIIB、IIIC、IVの未治療の非扁平上皮NSCLC成人患者557例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例)評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OSなど 主な結果は以下のとおり。・本試験の対象患者は、ベースライン時に約4割が脳転移を有していた(併用群42%、単独群40%)。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、併用群61%/38%、単独群60%/38%であった。・データカットオフ時点(2025年6月12日)のOS中央値は、併用群47.5ヵ月、単独群37.6ヵ月であり、併用群が有意に改善した(HR:0.77、95%CI:0.61〜0.96、p=0.02)。・2年、3年、4年時のOS率は、併用群がそれぞれ80%、63%、49%であり、単独群がそれぞれ72%、51%、41%であった。・OSに関するサブグループ解析では、ほとんどのサブグループで併用群が良好な傾向にあったが、中国人を除くアジア人のサブグループのHRは1.00(95%CI:0.71~1.40)であった。・治療期間中央値は、併用群がプラチナ製剤2.8ヵ月、ペメトレキセド8.3ヵ月、オシメルチニブ30.5ヵ月であった。単独群のオシメルチニブによる治療期間中央値は21.2ヵ月であった。・進行後に後治療を受けた割合は、併用群69%、単独群77%であった。後治療を受けた患者のうち、化学療法を用いた割合は、併用群74%、単独群75%であった。・Grade3以上の有害事象は併用群70%、単独群34%に発現したが、主解析時から2年超の追跡期間を経ても、安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。・オシメルチニブの中止に至った有害事象は、併用群12%、単独群7%に発現した。 本試験結果について、Planchard氏は「オシメルチニブ+化学療法はOSを有意に改善したことから、EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療の標準治療であることが確認された」とまとめた。

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肺切除後の肺瘻リスク、低侵襲開胸手術で軽減の可能性

 肺切除術は肺がん治療の要となるが、術後早期に肺瘻(空気漏れ)が生じることも少なくない。今回、手術アプローチの違いが肺瘻の発生率や転帰に影響する可能性があるとする研究結果が報告された。ILO1805試験の事後解析で、胸腔鏡手術(TS)の方が低侵襲開胸手術(MIOS)よりも肺瘻の発生率が有意に高く、その持続期間やドレーン留置期間も長くなる傾向が示されたという。研究は山形大学医学部附属病院第二外科の渡辺光氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に7月21日掲載された。 肺切除後の遷延性肺瘻は患者の5〜25%に発生し、膿胸や再手術、入院延長を招く代表的な合併症である。肺瘻のリスクを抑えるためには、術中の適切な空気漏れの修復が重要だが、TSでは視野が限られ、処置が難しい場合がある。一方、直接視野と胸腔鏡補助を組み合わせたハイブリッド胸腔鏡補助下手術(VATS)やMIOSは、空気漏れの修復を容易にする可能性がある。しかし、これらの手術アプローチと術後の肺瘻との関連は十分に検証されていない。ILO1805試験は国内21施設で実施された、肺切除後の肺瘻に対するドレーン管理法を検討する前向き観察研究であるが、手術アプローチや周術期管理に関する統一プロトコルは設けられていなかった。このような背景から著者らは、この試験の事後解析として、手術アプローチが術後転帰に及ぼす影響を検討した。 本解析には、ILO1805試験参加者2,187名のうち、皮膚切開8cm以下で解剖学的肺切除術を受けた1,168名が含まれた。患者は手術アプローチに基づき、TS群(皮膚切開5cm以下で肋骨開排なし)とMIOS群(皮膚切開5〜8cm)の2群に分類された。両群のバランスを調整するため2:1の傾向スコアマッチングを行い、最終的な解析対象はTS群284名、MIOS群142名となった。早期の術後肺瘻(E-AL)は術後0日または1日に発生した空気漏れと定義し、単変量および多変量のロジスティック回帰モデルにより、E-ALと有意に関連するリスク因子を特定した。 参加者の年齢中央値は71歳で、男性は683名(58.5%)含まれた。手術アプローチについては1022名(87.5%)がTS手術を受けていた。肺切除後のE-ALは290名(24.8%)に認められた。 E-ALのリスク因子を特定するために単変量ロジスティック回帰解析を行った結果、E-ALを認めた患者は、男性(P<0.001)、喫煙歴あり(P=0.007)、BMI<18.5 kg/m2(P=0.024)、FEV1.0%≦70%(P=0.013)、胸膜癒着あり(P<0.001)、TS(P=0.024)、およびフィブリンシーラント使用(P<0.001)である可能性が高かった。対応する多変量モデルでは、男性、BMI<18.5 kg/m2、TS、胸膜癒着、フィブリンシーラント使用がE-ALに関連する因子として同定された。 傾向スコアマッチング後の解析では、術後0日目のE-AL発生率はTS群でMIOS群より有意に高かった(33.8% vs. 16.9%、P<0.001)。この差は術後1日目でも認められた(28.2% vs. 16.2%、P=0.009)。術後の空気漏れの平均持続期間は、TS群よりMIOS群で有意に短かった(1.2±2.0日 vs. 0.6±1.7日、P=0.003)。ドレーン留置期間の平均も同様に、MIOS群で短かった(2.9±1.8日 vs. 2.4±1.9日、P=0.009)。 本研究について著者らは、「本研究は、MIOSアプローチが術中の空気漏れの修復においてより有効であり、結果として肺瘻のリスクを低下させる可能性を示唆している。ただし、E-ALの頻度低下が合併症の減少や入院期間の短縮といった臨床的な利点につながるかどうかは明らかではない。空気漏れの持続期間の差は小さいものの、E-ALを抑制することで、MIOSアプローチは術後の早期退院に寄与する可能性がある。これらの利点を検証するには、今後の前向き研究が必要である」と述べている。

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irAE治療中のNSAIDs多重リスク回避を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第68回

 今回は、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(irAE)の治療でステロイド投与中の高齢がん患者に対し、NSAIDsによる多重リスクを評価して段階的中止を提案した事例を紹介します。複数のリスクファクターが併存する患者では、アカデミック・ディテーリング資材を用いたエビデンスに基づくアプローチが効果的な処方調整につながります。患者情報93歳、男性基礎疾患肺がん(ニボルマブ投与歴あり)、急性心不全、狭心症、閉塞性動脈硬化症、脊柱管狭窄症ADL自立、息子・嫁と同居喫煙歴40本/日×40年(現在禁煙)介入前の経過2020年~肺がんに対してニボルマブ投与開始2025年3月irAEでプレドニゾロン40mg/日開始、その後前医指示で中止2025年6月3日irAE再燃でプレドニゾロン40mg/日再開処方内容1.プレドニゾロン錠5mg 8錠 分1 朝食後2.テルミサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後3.クロピドグレル錠75mg 1錠 分1 朝食後4.エソメプラゾールカプセル10mg 2カプセル 分1 朝食後5.フロセミド錠20mg 1錠 分1 朝食後6.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後7.フェブキソスタット錠10mg 1錠 分1 朝食後8.リナクロチド錠0.25mg 2錠 分1 朝食前9.ジクトルテープ75mg 2枚 1日1回貼付本症例のポイント本症例は、93歳という超高齢で複数の基礎疾患を有するがん患者であり、irAE治療のステロイド投与とNSAIDsの併用が引き起こす可能性のある多重リスクに着目しました。患者は肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の副作用であるirAEに対して、プレドニゾロン40mg/日という高用量ステロイドの投与を受けていました。同時に疼痛管理としてNSAIDsであるジクトルテープ2枚を使用していました。一見すると症状は安定していましたが、薬剤師の視点で患者背景を詳細に評価したところ、見過ごされがちな重大なリスクが潜んでいることが判明しました。第1に胃腸障害リスクです。高用量ステロイドとNSAIDsの併用は消化性潰瘍の発生率を相乗的に増加させることが知られており、93歳という高齢に加え、既往歴も有する本患者ではとくにリスクが高い状況でした。第2に心血管リスクです。患者には急性心不全や狭心症の既往があり、さらに閉塞性動脈硬化症も併存していました。NSAIDsは心疾患患者において心血管イベントのリスクを増加させるため、この併用は極めて危険な状態といえました。第3の最も注意すべきは腎臓リスク、いわゆる「Triple whammy」の状況です。NSAIDs、ループ利尿薬(フロセミド)、ARB(テルミサルタン)の3剤併用は急性腎障害の発生率を著しく高めることが報告されており、高齢者ではとくに致命的な合併症につながる可能性がありました。これらの多重リスクは単独では見落とされがちですが、患者の全体像を包括的に評価することで初めて明らかになる重要な安全性の問題です。医師への提案と経過患者の多重リスクを評価し、服薬情報提供書を用いて医師に処方調整を提案しました。現状報告として、irAE治療でプレドニゾロン40mg/日投与中であり、ジクトルテープ2枚使用で疼痛は安定しているものの、複数のリスクファクターが併存していることを伝えました。懸念事項については、アカデミック・ディテーリング※資材を用いて消化性潰瘍リスク(ステロイドとNSAIDsの併用は潰瘍発生率を有意に増加)、心血管リスク(NSAIDsは既存心疾患患者で心血管イベントリスクを増加)、Triple whammyリスク(3剤併用による急性腎障害発生率の増加)について説明しました。※アカデミック・ディテーリング:コマーシャルベースではない、基礎科学と臨床のエビデンスを基に医薬品比較情報を能動的に発信する新たな医薬品情報提供アプローチ 。薬剤師の処方提案力を向上させ、処方の最適化を目指す。提案内容として段階的中止プロトコールを提示し、ジクトルテープ2枚から1枚に減量、2週間の疼痛評価期間を設定、疼痛悪化がないことを確認後に完全中止するという方針を説明しました。将来的な疼痛悪化時のオピオイド導入準備と疼痛モニタリング体制の強化についても提案しました。医師にはエビデンス資料の提示により多重リスクの危険性について理解が得られ、段階的中止プロトコールが採用となり、患者の安全性を優先した方針変更となりました。経過観察では1週間後にジクトルテープ1枚に減量しましたが疼痛悪化はなく、2週間後も疼痛コントロールが良好であることを確認し、3週間後にジクトルテープを完全中止しましたが疼痛の悪化はありませんでした。現在も疼痛コントロールは良好で、多重リスクからの回避を達成しています。参考文献1)日本消化器病学会編. 消化性潰瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版). 南山堂;2020.2)Masclee GMC, et al. Gastroenterology. 2014;147:784-792.3)Lapi F, et al. BMJ. 2013;346:e8525.

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早期浸潤性乳がん、2次がんのリスクは?/BMJ

 英国・オックスフォード大学のPaul McGale氏らは、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた観察コホート研究の結果、早期浸潤性乳がん治療を受けた女性の2次原発がんリスクは一般集団の女性よりわずかに高いものの、リスク増加全体の約6割は対側乳がんであり、術後補助療法に伴うリスクは低いことを報告した。乳がんサバイバーは2次原発がんを発症するリスクが高いが、そのリスクの推定方法は一貫しておらず、2次原発がんのリスクと患者・腫瘍特性、および治療との関係は明確にはなっていない。BMJ誌2025年8月27日号掲載の報告。早期浸潤性乳がん女性約47万6,000例について解析 研究グループは、英国・NCRASのデータを用い1993年1月~2016年12月に登録された、最初の浸潤がんとして早期乳がん(乳房のみ、または腋窩リンパ節陽性であるが遠隔転移なし)の診断を受け乳房温存術または乳房切除術を受けた女性を特定し、2021年10月まで追跡調査を行った。 診断時年齢が20歳未満または75歳超、追跡期間3ヵ月未満、初回乳がん診断後3ヵ月以内に他の種類の浸潤がん発症、術前補助療法を受けた患者等は除外し、47万6,373例を評価対象とした。 主要評価項目は、2次原発がんの発生率および累積リスクで、一般集団と比較するとともに、患者特性、初発腫瘍の特徴、術後補助療法との関連性を評価した。2次がんリスクは20年で一般集団よりわずかに増加 評価対象47万6,373例のうち、22%が1993~99年に、21%が2000~04年に、24%が2005~09年に、33%が2010~16年に診断を受けた。初回乳がん診断時の年齢は、20~39歳が7%、40~49歳が20%、50~59歳が31%、60~69歳が30%、70~75歳が12%であった。 2次浸潤性原発がんは6万7,064例に確認され、このうち同側新規乳がんは新規原発がんか初回がんの再発かを区別することが困難であるため解析から除外し、6万4,747例を解析対象集団とした。 これら2次原発がんを発症した計6万4,747例の女性は、一般集団と比較した過剰絶対リスクは小さかった。 初回乳がん診断後20年間で、乳がん以外のがんを発症した女性は13.6%(95%信頼区間[CI]:13.5~13.7)で、英国一般集団の予測値より2.1%(95%CI:2.0~2.3)高かった。 対側乳がんの発症率は5.6%(95%CI:5.5~5.6)で、予測値より3.1%(95%CI:3.0~3.2)高く、過剰絶対リスクは若年女性のほうが高齢女性より高かった。 乳がん以外のがんで20年間の過剰絶対リスクが最も高かったのは、子宮体がんと肺がんであった。子宮体がん、軟部組織がん、骨・関節がん、唾液腺がん、および急性白血病については、標準化罹患比が一般集団の1.5倍以上であったものの、20年間の過剰絶対リスクはいずれも1%未満であった。 術後補助療法別の解析では、放射線療法は対側乳がんおよび肺がんの増加、内分泌療法は子宮体がんの増加(ただし対側乳がんは減少)、化学療法は急性白血病の増加と関連していた。これらは無作為化試験の報告と一致していたが、今回の検討で新たに軟部組織、頭頸部、卵巣および胃がんとの正の関連性が認められた。 これらの結果から、2次がんコホート6万4,747例のうち約2%が、また過剰2次がんコホート1万5,813例のうち7%が、術後補助療法に起因する可能性があることが示唆された。

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「苦しいのは仕方がない」という患者さん【非専門医のための緩和ケアTips】第106回

「苦しいのは仕方がない」という患者さん私たち医療者は、臨床を通じ、さまざまな患者さんと関わります。今回は私がかつて経験し、対応に悩んだ状況を振り返ってみようと思います。今回の質問訪問診療で関わる多発性骨髄腫の患者さん。骨病変による痛みが強いのですが鎮痛薬の使用を拒否します。理由を尋ねると「苦しいのは自分に与えられた試練だから、薬でごまかすことはしたくない」と言います。そうした考えも認めつつ、やはり痛みは緩和したく、苦しく感じます。「苦痛を緩和する」ことの大切さを重視して緩和ケアを実践しているわれわれにとって、考えさせられる状況です。私がかつて担当した、このケースに似た患者さんの場合、診療拒否などはなく、感謝の言葉も口にするのですが、身体症状を和らげる提案に対しては「それは遠慮します」と反応をします。理由を尋ねると、「神に与えられたものだから」と宗教観に基づく返答がありました。私たちはこのような患者さんに対し、どのように対応すれば良いのでしょうか。私自身、今でも明確な答えは持ち合わせていませんが、基本的なスタンスをまとめてみたいと思います。まずは、「私たちも、基本的には患者さんの意向を尊重したい」との考えを明確に伝えます。医療者の推奨に同意しない患者さんに対応する際、大切なのは「対立構造にしない」ことです。推奨に従わない患者に対し、ネガティブな感情を抱く医療者もいるでしょう。患者は医療者のそうした感情を敏感に感じ取り、「自分の気持ちをわかってもらえない」と考えます。そのため、まずは「推奨に応じても応じなくても、あなたは大切な患者であり、あなたの意思を尊重する」と伝えるのです。一方で苦痛が強いというのは、見守る家族にはもちろん、医療者にもつらいことです。そのことも率直に伝え、「なんとか苦痛が和らぐ方法がないか、諦めずに考えていく」とお伝えします。具体的な言葉として、「苦痛との向き合い方は人それぞれだと思います。だから無理に鎮痛薬を飲まなくても大丈夫ですよ。ただ、すごくつらそうに見える時には、やはり薬の調整について、お声掛けさせてもらえませんか? 苦しそうな様子を見ているのは私自身もつらいので…」といったお声掛けをしました。ただ、私が経験した患者さんは、それでも「先生にそうして心配をかけるのも申し訳ないので、私のことでつらく感じないでください」と言い、最期まで鎮痛薬は使用しませんでした。今でも、「あの時どう対応すべきだったか」「この患者さんが本質的に大切にしていたことは何か」など、十分に理解できていないところがあります。緩和ケアの実践では、さまざまな価値観や想いに触れることがあります。自分なりに振り返り、時にはほかのスタッフとディスカッションして、できることに取り組みながら、関わることを諦めない態度を持ち続けることが大切なのだと思います。今回のTips今回のTips患者の意向を尊重しながら、関わることを諦めない態度が重要。

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人工甘味料はがん免疫療法の治療効果を妨げる?

 マウスを用いた新たな研究で、一般的な人工甘味料であるスクラロースの使用は、がん患者の特定の免疫療法による治療を妨げる可能性のあることが示唆された。この研究ではまた、マウスに天然アミノ酸であるアルギニンのレベルを高めるサプリメントを与えると、スクラロースの悪影響を打ち消せる可能性があることも示された。米ピッツバーグ大学免疫学分野のAbby Overacre氏らによるこの研究結果は、「Cancer Discovery」に7月30日掲載された。 Overacre氏は、「『ダイエットソーダを飲むのをやめなさい』と言うのは簡単だが、がん治療を受けている患者はすでに多くの困難に直面しているため、食生活を大幅に変えるよう求めるのは現実的ではないだろう」と話す。同氏はさらに、「われわれは、患者の現状に寄り添う必要がある。だからこそ、アルギニンの補給が免疫療法におけるスクラロースの悪影響を打ち消すシンプルなアプローチとなり得るのは非常に喜ばしいことだ」と述べている。 研究グループによると、がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の効果は患者の腸内細菌の組成と関連付けられている。しかし、食事がどのように腸内細菌や免疫反応に影響を及ぼすのかについては明確になっていないという。今回の研究では、一般的な人工甘味料であるスクラロースの摂取が腸内細菌叢やT細胞の機能、免疫療法に対する反応に与える影響を、マウスおよび進行がん患者を対象に検討した。 まず、抗PD-1抗体による治療を受けた進行性メラノーマ患者91人と、進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者41人、および術前に抗PD-1抗体とTLR9アゴニスト(vidutolimod)による治療を受けた高リスク切除可能メラノーマ患者25人を対象に、スクラロースの摂取が抗PD-1抗体による治療効果に与える影響を検討した。自記式食事歴法質問票(DHQ III)を用いて評価したスクラロース摂取量に基づき、対象者を高摂取群と低摂取群に分類し、客観的奏効率(ORR)と無増悪生存期間(PFS)を評価した。 解析の結果、高摂取群ではメラノーマ患者でORRの低下傾向が認められ、NSCLC患者ではORRが有意に低下していた。PFSについては、メラノーマ患者(低摂取群:中央値13.0カ月、高摂取群:同8.0カ月、P=0.037)とNSCLC患者(低摂取群:同18.0カ月、高摂取群:同7.0カ月、P=0.034)の双方で有意な短縮が認められた。一方、高リスク切除可能メラノーマ患者では、病理学的奏効率(MPR)の低下、およびPFSの有意な短縮(低摂取群:中央値25.0カ月、高摂取群:同19.0カ月、P=0.012)が確認された。 次に、マウスを用いた実験で、腺がんやメラノーマなどのがんを意図的に発症させたマウスの食事にスクラロースを加え、その影響を観察した。その結果、マウスの腸内細菌叢の組成に変化が生じ、免疫機能の向上に重要なアミノ酸であるアルギニンが腸内細菌により代謝されて減少し、その結果、抗PD-1抗体による治療が阻害されて腫瘍の増大と生存率の低下につながることが示された。一方、スクラロースを摂取したマウスに、アルギニンや、より効率的に血中アルギニン濃度を上げると考えられているシトルリンを投与したところ、免疫療法の効果が回復した。 Overacre氏は、「スクラロースが引き起こした腸内細菌叢の組成の変化によってアルギニンレベルが低下すると、T細胞は正常に機能しなくなる。その結果、スクラロースを摂取したマウスでは免疫療法の効果が低下した」と説明する。 もちろんマウスでの実験と同じ結果が人間でも得られるとは限らない。それでも、論文の共著者であるピッツバーグ大学医学部のDiwakar Davar氏は、「これらの結果は、高レベルのスクラロースを摂取する患者に的を絞った栄養補給など、プレバイオティクスによる介入の設計を検討すべきことを示唆している」との見方を示している。同氏によると、シトルリンの補給が、がん免疫療法におけるスクラロースの有害な影響を逆転させ得るかを検討する試験を計画中であるという。

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若年者の大腸がん検診受診率を上げる方法は?(解説:上村 直実 氏)

 わが国における2023年の部位別がん死亡数は、男性では肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がんの順に多く、女性では大腸がん、肺がん、膵臓がんの順となっている。同年の大腸がん罹患者数は推定14万8,000例で死亡者数が5万3,000例とされており、罹患者のうち3例に1例が死亡すると推測される。大腸がんの場合、早期がんの完治率は90%以上であり、早期発見とくに検診ないしはスクリーニングの整備が喫緊の課題となっている。 西欧諸国では免疫学的便潜血検査(FIT)、便中の多標的RNA検査、直接の大腸内視鏡検査などさまざまな検診方法の有効性を比較する臨床研究が盛んに報告されている。しかし、いずれの検診方法を行っても、大腸がんの死亡率低下には検診の受診率がキーポイントとなっている。今回、大腸がんの著明な増加が報告されているものの検診受診率がきわめて低い若年者(45~49歳)を対象として、最も効果的なリクルート法を模索した臨床研究が施行された結果、電子媒体を用いてFITのみまたは大腸内視鏡検査のみの推奨に対して受諾または拒否を選択する方法に比べて、FITと大腸内視鏡検査2種類を送付したものから患者が能動的に選択する方法の検診受診率が有意に高く、さらにFITのキットを直接郵送して患者に受諾または拒否を選択してもらう方法が最も有効であることが2025年8月のJAMA誌に報告された。 人口が日本の約3倍である米国と本邦の年間大腸がん死亡者数は5万例強でほぼ同数で、大腸がん死亡率は本邦のほうが著明に高いことが明らかになっているが、その原因は検診受診率の差であるとされている。すなわち、米国は自由診療のため大腸内視鏡検査は数十万円を要するが、50歳を過ぎた国民に大腸内視鏡検査を1回のみ無償で提供しており、便潜血検査による検診と合わせると、大腸がん検診受診率は約70%とされている。一方、本邦の1次検診受検率は20%で、便潜血検査の陽性者のうち精査の大腸内視鏡検査を受けているのは60%であり(日本大腸肛門病学会)、検診受診率は10%強にすぎず米国と比較して著しく低いといえる。このように、米国と本邦の大腸がん死亡率の差は検診受診率の差によるものと考えられる。 今回の論文にある臨床研究に関しては、方法自体が電子媒体を用いた患者伝達法など日本の現状とは大きく異なるものがあり、一概に参考にならないと思われるが、上述したように大腸がんは早期発見により90%以上が完治可能な疾患であることから、日本で行われている1次検診(FIT)から精密検査の大腸内視鏡検査へ誘導する過程でも便潜血キットの送付による方法も考慮して、大腸がん死亡者を減らすために住民検診や企業健診で用いられているFITによる1次検診の参加率を向上する新たな方策を検討すべき時である。

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既治療KRAS G12C変異陽性NSCLC、adagrasib vs.ドセタキセル/Lancet

 既治療のKRASG12C変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、adagrasibはドセタキセルと比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に延長し、新たな安全性上の懸念は認められなかった。フランス・パリ・サクレー大学のFabrice Barlesi氏らKRYSTAL-12 Investigatorsが、22ヵ国230施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「KRYSTAL-12試験」の結果を報告した。adagrasibはKRASG12C阻害薬で、KRASG12C変異を有する進行NSCLC患者を対象とした第II相試験において有望な結果が示されていた。Lancet誌2025年8月9日号掲載の報告。化学療法と免疫療法の前治療歴があるNSCLC患者を対象、主要評価項目はPFS KRYSTAL-12試験の対象は、KRASG12C変異を有する局所進行または転移のあるNSCLCで、プラチナ製剤を含む化学療法および抗PD-1または抗PD-L1抗体による前治療歴があり、ECOG PSが0または1の成人患者であった。 研究グループは適格患者を、adagrasib(1回600mg、1日2回経口投与)群またはドセタキセル(75mg/m2、3週ごとに静脈内投与)群に2対1の割合で無作為に割り付け、病勢進行、許容できない毒性発現、担当医師または患者の判断、あるいは死亡まで投与を継続した。無作為化は中央双方向Web応答システムを用い、地域(アジア太平洋地域以外vs.アジア太平洋地域)および前治療(逐次投与vs.併用投与)で層別化した。 ドセタキセル群では、盲検下独立中央判定(BICR)によるRECIST 1.1に基づく病勢進行が認められた場合、adagrasibへのクロスオーバーを可とした。 主要評価項目は、ITT集団(無作為化した全患者)におけるBICRによるRECIST 1.1に基づくPFSであった。安全性は、試験薬が投与されたすべての患者を対象に評価した。本試験は現在も進行中である(新規登録は終了)。PFS中央値はadagrasib群5.5ヵ月、ドセタキセル群3.8ヵ月 2021年2月23日~2023年11月16日に1,021例がスクリーニングされ、453例がadagrasib群(301例、66%)またはドセタキセル群(152例、34%)に無作為化された。それぞれ298例(99%)および140例(92%)が試験薬の投与を受けた。 追跡期間中央値7.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.8~8.7)において、ITT集団でのBICRによるPFS中央値はadagrasib群5.5ヵ月(95%CI:4.5~6.7)、ドセタキセル群3.8ヵ月(2.7~4.7)であり、ハザード比(HR)は0.58(95%CI:0.45~0.76、p<0.0001)であった。治験担当医師評価によるPFSも同様の結果が得られた(5.4ヵ月vs.2.9ヵ月、HR:0.57)。 副次評価項目であるBICRによる奏効率も、adagrasib群がドセタキセル群と比較し有意に高かった(32%[95%CI:26.7~37.5]vs.9%[5.1~15.0]、オッズ比:4.68[95%CI:2.56~8.56]、p<0.0001)。 治療関連有害事象(TRAE)は、adagrasib群(298例)で280件(94%)、ドセタキセル群(140例)で121件(86%)報告された。Grade3以上のTRAEは、adagrasib群で140件(47%)、ドセタキセル群で64件(46%)報告され、主なものはadagrasib群でALT上昇(8%)、AST上昇(6%)、下痢(5%)、ドセタキセル群で好中球数減少(11%)、好中球減少症(10%)、無力症(10%)であった。 治療関連死は、adagrasib群で4例(1%、てんかん、肝不全、肝虚血および原因不明が各1例)、ドセタキセル群で1例(1%、敗血症)が報告された。

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がん免疫療法の効果に自己抗体が影響か

 がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(CPI)を用いた治療は、一部の患者では非常に高い効果を示す一方でほとんど効果が得られない患者もおり、その理由は不明である。しかし、その解明につながる可能性のある知見が得られたとする研究結果が報告された。患者自身の自己抗体(自分の細胞や組織の成分を標的として産生される抗体)が、CPIに対する反応に極めて大きな影響を及ぼしている可能性のあることが示されたという。米フレッド・ハッチンソンがんセンターの免疫療法学科長であるAaron Ring氏らによるこの研究結果は、「Nature」に7月23日掲載された。 Ring氏は、「われわれの研究は、体内で自然に産生される自己抗体が腫瘍を縮小させる可能性を劇的に高め得ることを示している。自己抗体によって患者がCPIに反応する確率が5~10倍も高まるケースがいくつか確認された」と同センターのニュースリリースで述べている。 CPIは、メラノーマや特定の種類の肺がんを含む幅広いがんの治療に革命をもたらしたが、全ての患者がこれらの薬剤に反応するわけではない。そこでRing氏らは今回、CPIによる治療を受けたがん患者374人と健康な対照者131人から採取した血液サンプルを用い、Rapid Extracellular Antigen Profiling(REAP)法によって、6,172種類の細胞外および分泌タンパク質に対する自己抗体の結合パターンを調べた。Ring氏は、「長年、自己抗体は自己免疫疾患の原因となる悪玉と見なされてきた。しかし近年では、体内に備わった強力な治療薬として作用する可能性も明らかにされつつある。われわれの研究室では、自己抗体のこのような薬理作用を解明し、これらの天然分子をがんなどの疾患に対する新たな治療薬として応用することを目指している」と話す。 その結果、がん患者の血液では、健康な人に比べて自己抗体のレベルが著しく高いことが示された。また、特定の自己抗体が患者の予後改善と関連していることも判明した。例えば、サイトカインの一種であるインターフェロン(IFN)のシグナル伝達を遮断する自己抗体は、CPIによる抗腫瘍効果の改善と関連していた。この知見は、IFNが多過ぎると免疫系が疲弊し、CPIによる治療効果が制限される可能性があることを意味すると研究グループは説明している。 Ring氏は、「一部の患者では、免疫系が自ら併用薬を作り出したかのようだ。その自己抗体がIFNを中和することでCPIの効果を増強している。この発見は、全ての患者に対し、IFNのシグナル伝達経路を意図的に調節する併用療法を考案するための明確な指針となるだろう」と述べている。 一方で、いくつかの自己抗体は患者の予後悪化と関連していた。これは、がんと闘うために不可欠な免疫系の重要な経路を自己抗体が阻害するためだと考えられた。研究グループは、「こうした自己抗体を排除したり、その作用を打ち消したりする方法を見つけることでCPIの有効性を高められる可能性がある」と述べている。 Ring氏は、「これはまだ始まりに過ぎない。現在われわれは、他のがんや治療法にも対象を広げ、自己抗体を活用あるいは回避することで、より多くの患者に免疫療法を届けられるよう取り組んでいるところだ」と話している。

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高齢者がん診療で悩ましいこと【高齢者がん治療 虎の巻】第1回

(1)「何歳まで治療すべきか」に明確な答えはあるのか?<今回のPoint>「何歳まで治療すべきか」に明確な答えはない高齢者は臨床試験で過小評価されており、エビデンスの外にいることが多い構造化された意思決定プロセスはSDMの質を高める<症例>88歳、女性。進行肺がんと診断され、本人は『できることがあるなら治療したい』と希望している。既往に高血圧症、糖尿病と軽度の認知機能低下があり、パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は1〜2。診察には娘が同席し、『年齢的にも無理はさせたくない。でも本人が治療を望んでいるなら…』と戸惑いを見せる。遺伝子変異検査ではドライバー変異なし、PD-L1発現25%。cancer silver tsunamiが到達する前に解決すべき課題標準的な薬物療法を勧めるべきか、毒性の少ない治療にとどめるべきか。あるいは支持療法を中心とした方針とするか――。どの選択肢にも正解・不正解があるわけではなく、医師としての判断が問われる場面です。しかも、こうしたケースは珍しくありません。むしろ、今、多くの医師が、日々の診療の中で「何歳まで治療をすべきか?」という問いと向き合っているのではないでしょうか。日本は世界有数の長寿国であり、すでに65歳以上の人口割合(高齢化率)は世界最高水準に達しています。2023年時点でその割合は29.1%、2050年には37.1%に上ると推計されており1)、今後も高齢化のさらなる進行が見込まれます。がんは高齢化とともに増加する代表的な疾患であり、都市部を除く多くの地域で「高齢のがん患者が当たり前」という時代がすでに到来しています。現場の臨床医は、いわば“cancer silver tsunami”への対応を迫られているのが現状です。各種がんの診療ガイドラインでは、「暦年齢のみを理由に治療を控えるべきではない」と明記されており、患者の身体的・認知的背景や併存疾患、フレイルの有無などを総合的に判断することが求められています2,3)。たとえば大腸がんの診療ガイドラインでは、年齢にかかわらず適応となる(fit)/問題がある(vulnerable)/適応とならない(frail)の層別化を行うための評価フローも提示されています(図1)4)。(図1)一次治療の方針を決定する際のプロセス画像を拡大するとはいえ、実際の臨床では「何歳まで手術や薬物療法を提案すべきか」「治療リスクはどう見積もるのか」といった問いに、明確に答えてくれるガイドラインはほとんどありません。さらに、薬物療法を選択するとしても、レジメンの選定・投与量・期間の調整など、悩ましい判断は尽きません。臨床試験データは“選ばれし高齢者”のものこの難しさの背景には、高齢者が臨床試験で過小評価されている現実があります。多くのpivotal studyでは年齢制限は設けられていないものの、実際に登録される高齢者は非常に少数に留まっています。米国では65歳以上のがん罹患率は全体の約42%を占めますが、FDA登録試験で高齢者の登録割合は24%、NCI主導試験では10%未満に過ぎないと報告されています5)。たとえ高齢者に限定した第III相試験が行われたとしても、登録されるのは臓器機能が良好でPSも問題ない“選ばれた高齢者”です。つまり、目の前の患者が試験対象者と同じかどうか判断するための“物差し”が、われわれの手元にも臨床試験報告の中にも存在しない、という現実があるのです。米国・National Comprehensive Cancer Network(NCCN)の高齢者がん診療ガイドラインでは、治療を始めるにあたっての意思決定プロセスがフローチャートで示されており、その中でShared Decision-Making(SDM)の重要性が段階的に整理されています(図2)。(図2)意思決定プロセスのフローチャート画像を拡大する多くの臨床医は、日々の診療の中で個々の患者に応じた判断を経験的に行っていると思われますが、このような構造化されたプロセスを意識的に辿ることで、GA(Geriatric Assessment)の実施や、その結果の解釈にも自然とつながっていきます。そしてそれは、最終的にSDMの質を高めることにも寄与するはずです。とくに、治療開始前(あるいは診断時点)から「治療の目標」と「患者の価値観」をすり合わせておくことは、がん診療における極めて重要なステップです。私自身の経験からも、たとえ緩和的治療であっても、患者が「治る」と期待していたことで、医師との間で治療のゴールに齟齬が生じるケースを数多く見てきました。本連載では、高齢者がん診療における実際の“悩みどころ”を共有しながら、そのヒントや手がかりをお届けしていきます。次回は「高齢者がん診療のキホン」として、治療開始前の評価、とくにGAの実践方法について取り上げる予定です。高齢者機能評価(GA)とは高齢がん患者においては、暦年齢やPerformance Status(PS)だけでは捉えきれない身体的・精神的・社会的な多様性が、治療の選択や予後に大きく影響する。高齢者機能評価(GA:Geriatric Assessment)は、身体機能、認知機能、併存疾患、栄養状態、社会的支援などを多面的に把握するツールであり、がん治療に伴うリスクの評価や治療方針の決定に活用される。老年医学の領域で用いられるCGA(Comprehensive Geriatric Assessment)は、医師・看護師・リハビリスタッフなど多職種による包括的介入を前提とし、継続的な評価を通じてケアプランを策定することを目的とする。一方、がん領域におけるGAは、薬物療法開始前に脆弱性をスクリーニングし、治療強度の調整や必要な介入を検討する「意思決定支援のツール」として位置付けられる。近年では、GAの実施とそれに基づく介入が患者に利益をもたらすことを示す無作為化比較試験(RCT)の結果が多数報告され、国内外のガイドラインにおいても、高齢者のがん薬物療法前にGAを実施することが強く推奨されている。さらに、短時間で実施可能な簡易GAツールの普及や、iPadなどを活用した電子化も進み、臨床現場での実践が広がりつつある。1)内閣府:令和6年版高齢社会白書(全体版)2)日本肺癌学会編. 肺癌診療ガイドライン2024年版 ver.1.1. 2024.3)日本乳癌学会編. 乳癌診療ガイドライン2022年版. 金原出版. 2022.4)大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2024年版. 金原出版. 2024.5)Sedrak MS et al, CA Cancer J Clin. 2021;71:78-92.6)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines): Older Adult Oncology Version 2.2025 — May 13, 2025講師紹介

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進展型小細胞肺がんへの免疫化学療法、日本の実臨床データ

 進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)に対する1次治療として、抗PD-L1抗体とプラチナ製剤を含む化学療法の併用療法(免疫化学療法)が標準治療となっているが、実臨床における報告は限定的である。そこで、平林 太郎氏(信州大学)らの研究グループは、実臨床において免疫化学療法を受けたED-SCLC患者と、化学療法を受けたED-SCLC患者の臨床背景や治療成績などを比較した。その結果、免疫化学療法が選択された患者は、化学療法が選択された患者よりも全生存期間(OS)が良好な傾向にあったが、免疫化学療法が選択された患者は約半数であり、実臨床におけるED-SCLC治療にはさまざまな課題が存在することが示された。本研究結果は、Respiratory Investigation誌2025年9月号に掲載された。 本研究は、日本の11施設が参加した多施設共同後ろ向き研究である。2019年8月~2023年6月に、1次治療として免疫化学療法または化学療法を受けたED-SCLC患者181例を対象とした。対象患者を、免疫化学療法を受けた群(免疫化学療法群、96例)と、プラチナ製剤を含む化学療法のみを受けた群(化学療法群、85例)に分け、患者背景、治療成績、免疫化学療法が選択されなかった理由などを後ろ向きに調べた。 主な結果は以下のとおり。・免疫化学療法群は化学療法群と比較して、75歳以上の割合(28.1%vs.56.5%、p<0.001)、間質性肺炎(IP)合併の割合(9.4%vs.41.2%、p<0.001)が有意に低かった。・OS中央値は、免疫化学療法群15.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.3~17.6)、化学療法群9.7ヵ月(同:7.3~12.2)であった。1年OS率は、それぞれ59.9%、34.5%であり、2年OS率は、それぞれ17.7%、2.9%であった。・無増悪生存期間中央値は、免疫化学療法群5.1ヵ月(95%CI:4.7~5.5)、化学療法群4.9ヵ月(同:4.5~5.3)であった。・奏効率は、免疫化学療法群80.2%、化学療法群64.7%であり、病勢コントロール率は、それぞれ90.6%、88.2%であった。・1次治療で免疫化学療法が選択されなかった理由として多かったのは、IP合併(18.8%)、高齢(14.9%)、PS不良(13.3%)であった。・治療中止に至った有害事象は、免疫化学療法群12.5%、化学療法群9.4%に発現した。肺臓炎による治療中止の割合は、それぞれ7.3%、1.2%であった。 本研究結果について、著者らは「ED-SCLC患者に対する免疫化学療法の有効性が実臨床でも示唆されたものの、実際にこの治療法が選択されているのは約半数にとどまっていた」と指摘し「IP合併、高齢、PS不良といった背景を有する患者に対して、免疫化学療法と化学療法のいずれを選択すべきか明確な結論は得られておらず、臨床背景や併存疾患に応じた治療選択にはさまざまな課題があり、今後の検証が必要である」と結論付けている。

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オランザピンの制吐薬としての普及率は?ガイドライン発刊後の状況を聞く

 『制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂第3版』が発刊され、約2年が経過しようとしている。改訂による大きな変更点の一つは、“高度催吐性リスク抗がん薬に対するオランザピン5mgの使用を強く推奨する“ことであったが、今現在での医師や医療者への改訂点の普及率はどの程度だろうか。前回の取材に応じた青儀 健二郎氏(四国がんセンター乳腺外科 臨床研究推進部長)が、日本癌治療学会のWebアンケート調査「初回調査結果報告書」とケアネットがCareNet.com医師会員を対象に行ったアンケート「ガイドライン発刊から6ヵ月が経過した現在の制吐薬の使用状況について」を踏まえ、実臨床での実態や適正使用の普及に対する課題を語った。 なお、日本癌治療学会は『制吐薬適正使用ガイドライン』普及率に関するWebアンケート調査(第2回)』を現在実施しており、医師・看護師・薬剤師の方々からのアンケート回答を募集している(回答期間は2025年8月22日まで)。発刊6ヵ月後にはオランザピン処方の意義浸透か ガイドライン発刊直前に行われた日本癌治療学会による初回調査は、制吐療法の情報均てん化などの検討を考慮するため、論文等で公表されているエビデンスと実診療の乖離(Evidence-Practice Gap:EPG)の程度、職種、診療科、所属施設ごとの結果を解析した。その調査とケアネットが独自で行った調査を比較し、青儀氏は「乳がん治療での制吐薬処方に関し、われわれの初回調査ではFECでの4剤の処方率は16.8%だった。ガイドライン発刊から半年後の(CareNet.com)調査では、90%以上(該当レジメンを使用する全員に処方している:44%、患者背景を考慮して処方している:50%)であることが明らかとなり、オランザピンを推奨する意義が結果となってみられた印象」と話した。全体的にオランザピン処方の際に患者背景を考慮して処方していると回答した割合が多かった理由について、同氏は「糖尿病や耐糖能異常に加え、ふらつきのリスクを有する、睡眠薬を服用中の患者に処方しづいからではないか」とコメントした。患者の吐き気への不安と医師の処方不安、優先順位を間違えてはいけない オランザピンが向精神薬の位置付けで使用される薬剤であることが処方を慎重にさせる要因と考えられるが、実際に処方医が感じる不安は「糖尿病に禁忌」「耐糖能異常」に対してであることが今回の調査から明らかになった。これについて同氏は、「すでに制吐薬としてステロイドを処方している患者はステロイドによる耐糖能異常リスクを有している。また、オランザピンが推奨される以前より化学療法中の耐糖能異常に対するフォロー不足は問題視されていたので、このフォロー体制をしっかり構築したうえで、オランザピン投与を行ってほしい」とコメント。「オランザピンの制吐薬としての有用性の理解が進めばこの問題はクリアできるのではないか」と有害事象の発生を観察、コントロールしながら使用する価値について説明した。ただし、禁忌とされる糖尿病患者への対応については、従来の3剤併用療法を行うことがガイドラインに示されている(CQ1「高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として、3剤併用療法[5-HT3受容体拮抗薬+NK1受容体拮抗薬+デキサメタゾン]へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか?」参照)。 また、実臨床で多く経験する傾眠への具体的な対応策として、「推奨は5mgではあるが、今後、各施設での使用経験や研究などを基に日本人に適切な投与量を決定していきたい。たとえば、当院ではオランザピン5mgを処方する際、調節できるように2.5mg×2錠で処方している。薬剤師と相談し、副作用を回避しつつ制吐に対する効果が得られるのであれば、2.5mgで処方している」と述べた。適切な制吐薬治療の普及に必要なツール 学会側の調査項目の1つである患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome:PRO)の利用状況や頻度については、「PROについてはまだまだ開発途上。臨床研究などでPROを活用して有害事象を拾い上げることについては広がりつつある。さまざまなPROが出てきていることからも、今後の臨床研究に欠かせないツールになっていくことは間違いないだろう。患者の情報が一つひとつアップデートされて入ってくることが重要なポイント」と述べた。その一方で、PROには紙媒体のものとネット環境が必要なものがあるが、後者はセキュリティー問題やコスト面の影響がある。「紙媒体での評価にも十分な有用性が示されている。当院ではICI投与患者の免疫関連副作用(immune-related Adverse Events:irAE)に関する評価ツールを導入しているが、ネット導入のハードルが高いことから紙媒体で実施している」と述べ、「現状、PROが限られた施設や学会でしか利用されていないため、抗がん剤全般での利用を広めていくことが次の課題」と説明し、まずは紙媒体で評価を進めていくことを推奨した。 最後に同氏は「制吐療法については、単に処方薬を増やすことが良いとは考えていない。次回の改訂までに綿密な使い分けができるようなエビデンスが出てくるのではないか」と締めくくった。<日本癌治療学会アンケート概要>調査内容:発刊直前と発刊1年後に同じ項目のアンケートを実施することで、ガイドラインによる診療動向の変化を調査実施期間:2023年10月2~18日調査方法:インターネット対象:日本癌治療学会ほか、各学会(日本臨床腫瘍学会、日本サイコオンコロジー学会、日本がんサポーティブケア学会、日本放射線腫瘍学会、日本医療薬学会、日本がん看護学会)所属の1,276人《CareNet.comアンケート概要》調査内容:ガイドライン発刊から6ヵ月経過時点の制吐薬の使用状況について実施期間:2024年5月23~29日調査方法:インターネット対象:20床以上の施設に所属するケアネット会員医師206人(乳腺外科:50人、血液内科:50人、呼吸器科:52人、消化器科:36人、外科:18人)

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肺がん個別化医療のさらなる進展を目指し、サーモフィッシャーと戦略的提携/国立がん研究センター

 国立がん研究センター東病院は、2025年7月28日、サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループと戦略的提携を締結。非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした新たなマルチ遺伝子検査システム「Oncomine Dx Express Test」の臨床導入を目指す。 このシステムはサーモフィッシャーサイエンティフィックの次世代シーケンサー(NGS)「Ion Torrent Genexusシステム」を用いており、高速自動解析により24時間以内に解析結果を提供可能である。これにより、進行肺がん患者の検体から複数の遺伝子を迅速に診断できるようになり、最適な精密医療の推進が期待される。 現在、進行肺がんの治療にはEGFR、ALK、ROS1、BRAF、RET、MET、HER2、KRAS、NTRK1-3などの遺伝子異常を標的とする分子標的薬が推奨されている。しかし、既存のNGS検査は結果判明までに約2~3週間かかることから、結果を確認する前に分子標的薬以外の通常の抗がん剤で治療を開始しなければならない状況もあったという。 国立がん研究センター東病院が主導する「LC-SCRUM-Asia」では、同システムの研究用プロトタイプを2020年9月から導入し、約1万1,000例の肺がん臨床検体の解析実績がある。今回の提携では、この蓄積データを活用し、「Oncomine Dx Express Test」の臨床性能を検証することで、早期の臨床応用、薬事承認、保険収載、そして全国的な普及を目指す。 今回の提携により、日本における肺がんのプレシジョンメディシンを一層推進するものと期待される。

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小細胞肺がんへのタルラタマブ、プラチナ製剤後の2次治療に有効(DeLLPhi-304)/NEJM

 白金製剤ベースの化学療法の施行中または終了後に病勢が進行した小細胞肺がん(SCLC)の2次治療において、化学療法と比較してタルラタマブ(二重特異性T細胞誘導[BiTE]分子製剤)は、全生存期間(OS)が有意に延長し、無増悪生存期間(PFS)も有意に良好で、がん関連呼吸困難や咳嗽が少ないことが、ギリシャ・Henry Dunant Hospital CenterのGiannis Mountzios氏らDeLLphi-304 Investigatorsが実施した「DeLLphi-304試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年7月24日号で報告された。30ヵ国の第III相無作為化試験の中間解析 DeLLphi-304試験は、SCLCの2次治療におけるタルラタマブの有効性と安全性の評価を目的とする第III相非盲検無作為化対照比較試験であり、2023年5月~2024年7月に日本を含む30ヵ国166施設で参加者を登録した(Amgenの助成を受けた)。今回は、事前に規定された中間解析の結果が報告された(データカットオフ日:2025年1月29日)。 年齢18歳以上、白金製剤ベースの化学療法による1次治療中または終了後に病勢が進行したPS0~1のSCLC患者を対象とした。脳転移を有する場合も症状がなく、病態が臨床的に安定していれば組み入れ可能とした。被験者を、タルラタマブまたは化学療法薬(トポテカン[和名:ノギテカン]、lurbinectedin、アムルビシンから選択[日本での選択肢はアムルビシンのみ])の投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目はOSであった。客観的奏効、奏効期間も良好 509例を登録し、タルラタマブ群に254例、化学療法群に255例を割り付けた。化学療法は、185例(73%)でトポテカン、47例(18%)でlurbinectedin、23例(9%)でアムルビシンが投与された。ベースラインの全体の年齢中央値は65歳(範囲:20~86)で、45%が脳転移を、35%が肝転移を有しており、71%が過去にPD-1またはPD-L1阻害薬による治療を受けていた。 ITT集団におけるOS中央値は、化学療法群が8.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.0~10.2)であったのに対し、タルラタマブ群は13.6ヵ月(11.1~未到達)と有意に延長した(死亡の層別化ハザード比[HR]:0.60[95%CI:0.47~0.77]、p<0.001)。6ヵ月OS率は、タルラタマブ群が76%、化学療法群が62%、12ヵ月OS率はそれぞれ53%および37%だった。 また、12ヵ月時のPFSの境界内平均生存期間(restricted mean survival time:RMST)は、化学療法群の4.3ヵ月に比べ、タルラタマブ群は5.3ヵ月であり有意に優れた(p=0.002)。無作為化から3ヵ月の前後のイベント数で重み付けした、病勢進行または死亡の区分加重平均HRは0.71(95%CI:0.59~0.86)であった。6ヵ月PFS率は、タルラタマブ群が31%、化学療法群が23%、12ヵ月PFS率はそれぞれ20%および4%だった。 客観的奏効率は、タルラタマブ群35%(完全奏効3例[1%]、部分奏効86例[34%])、化学療法群20%(同0例、52例[20%])、奏効期間中央値はそれぞれ6.9ヵ月および5.5ヵ月であった。サイトカイン放出症候群、ICANSはほとんどが軽度 患者報告アウトカムのうち、ベースラインから19週までに化学療法群に比べタルラタマブ群で有意な改善を示したものとして、呼吸困難(症状スコアの変化量の群間差:-9.14点[95%CI:-12.64~-5.64]、p<0.001)と、咳嗽(咳スコア低下のオッズ比:2.04[95%CI:1.17~3.55]、p=0.01、咳スコア低下のリスク比:1.74[95%CI:0.99~2.49])を認めた。 Grade3以上の有害事象(54%vs.80%)、投与中止に至った有害事象(5%vs.12%)は、いずれもタルラタマブ群のほうが低頻度であった。治療関連のGrade3以上の有害事象(27%vs.62%)、投与中止に至った治療関連の有害事象(3%vs.6%)もタルラタマブ群で少なかった。また、治療関連の重篤な有害事象は、タルラタマブ群の28%、化学療法群の31%に認めた。 タルラタマブ群では、サイトカイン放出症候群を56%に認めたが、多くがGrade1(42%)または2(13%)で、Grade3は1%、Grade4/5は発現しなかった。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)はタルラタマブ群の6%(15例)にみられ、1例(Grade5)を除きGrade1または2であった。 著者は、「この再発例を対象とした研究の結果は、より早期の治療ラインにおいてタルラタマブの評価を行うことの重要性を強調しており、そのような試験(DeLLphi-305、DeLLphi-306、DeLLphi-312)が進行中である」としている。

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セマグルチドやペムブロリズマブなど、重大な副作用追加/厚労省

 厚生労働省は7月30日、セマグルチドやペムブロリズマブなどに対して、添付文書の改訂指示を発出。該当医薬品の添付文書の副作用の項に、重大な副作用が追記されることとなった。 該当医薬品と改訂内容は以下のとおり。GLP-1受容体作動薬:セマグルチド(商品名:ウゴービ、オゼンピック、リベルサス)GIP/GLP-1受容体作動薬:チルゼパチド(同:マンジャロ、ゼップバウンド)インスリン/GLP-1受容体作動薬配合薬:インスリン グラルギン/リキシセナチド(同:ソリクア配合注ソロスター) イレウス関連症例を評価した結果、重大な副作用の項に「イレウス」(腸閉塞を含むイレウスを起こすおそれがある。高度の便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと)を追記。また、合併症・既往歴等のある患者の項に「腹部手術の既往又はイレウスの既往のある患者」を追記した。抗PD-1抗体:ペムブロリズマブ(同:キイトルーダ) 血管炎関連症例を評価した結果、重大な副作用の項に「血管炎」(大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎[ANCA関連血管炎、IgA血管炎を含む]があらわれることがある)を追記した。抗PD-L1抗体:アベルマブ(同:バベンチオ) 硬化性胆管炎関連症例を評価した結果、重大な副作用の項の「肝不全、肝機能障害、肝炎」に「硬化性胆管炎」を追記した。また、重要な基本的注意の項の「肝不全、肝機能障害、肝炎」に関する記載に「硬化性胆管炎」に関する注意を追記した。チロシンキナーゼ阻害薬:アファチニブマレイン酸塩(同:ジオトリフ)抗エストロゲン薬:フルベストラント(同:フェソロデックス) 各製剤においてアナフィラキシー関連症例を評価した結果、重大な副作用の項に「アナフィラキシー」を追記した。キナーゼ阻害薬:スニチニブリンゴ酸塩(同:スーテント) 高アンモニア血症関連症例を評価、専門委員の意見も聴取した結果、肝機能異常を伴わずに発現する高アンモニア血症の症例が認められ、本剤との因果関係が否定できない症例が集積したことから、重大な副作用の項に「高アンモニア血症」を追記した。

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第21回 タバコを吸わないのになぜ? 見えてきた肺がんの「真犯人」―大規模ゲノム解析が暴く肺がんの身近なリスク

「タバコは吸わないから、肺がんの心配はない」。そう考えている人は少なくないかもしれません。しかし近年、喫煙経験のない人、とくに女性やアジア人での肺がんが世界的に増加しており、大きな謎とされてきました。なぜ、最大の原因であるタバコを避けてきた人々の肺が蝕まれるのでしょうか。この長年の疑問に、ゲノム科学の力で迫った画期的な研究1)がNature誌に発表されました。世界4大陸28地域から集められた871例の非喫煙者肺がん患者の「がんゲノム(がん細胞の全遺伝情報)」を解読。その設計図に刻まれた無数の傷跡から、がんを引き起こした「犯人の指紋」を探し出すという、前例のない規模の研究です。この研究は、これまで原因として疑われてきた大気汚染や受動喫煙の影響をDNAレベルで初めて検証し、私たちの常識を覆すような数々の事実を明らかにしました。発見1:大気汚染PM2.5は、がんの「種を蒔き、育てる」二重の脅威だった研究チームはまず、大気汚染の指標である微小粒子状物質「PM2.5」とがんゲノムの関係に着目しました。PM2.5は工場や自動車の排ガスなどに含まれるきわめて小さな粒子で、吸い込むと肺の奥深くまで到達します。また、血管の壁まで通過し、血液中からも検出されることが知られています。患者が住む地域のPM2.5濃度で「高汚染」と「低汚染」のグループに分けてゲノムを比較したところ、意外な結果がみられました。高汚染地域の患者のがん細胞では、DNAの変異(遺伝子の傷)の総量が明らかに増加していたのです。さらに、PM2.5濃度が高いほど変異の数も比例して増える「用量反応関係」も確認されました。これは、因果関係に迫る上で大切な知見です。とくに重要だったのが、「変異シグネチャー」の解析です。これは、がんゲノムに残された変異のパターンを分析し、その原因(紫外線、タバコ、特定の化学物質など)を特定する技術で、いわば「犯行手口を示す指紋」のようなものです。この解析により、高汚染地域の患者からは、主に2つの特徴的な「指紋」が検出されました。1.シグネチャー「SBS4」の増加これは本来、タバコ喫煙者のがんに典型的な指紋です。この「指紋」が非喫煙者から見つかったことは、大気汚染物質の中に、タバコの煙に含まれるような発がん性物質が含まれており、それがDNAに直接傷をつけている(イニシエーターとして機能している)可能性を強く示唆します。2.シグネチャー「SBS5」の増加これは「時計様シグネチャー」と呼ばれ、細胞が分裂するたびに一定の割合で刻まれる、加齢に伴う自然な傷です。この「時計」の進みが速いということは、大気汚染が肺に慢性的な炎症を引き起こし、傷ついた細胞の修復のために細胞分裂を異常に活発化させていることを意味します。これにより、がんの元となる細胞の増殖が促されている(プロモーターとしても機能している)と考えられます。つまり、PM2.5はDNAを直接傷つけてがんの“種”を蒔くだけでなく、細胞分裂を促してその“芽”を育てるという、二重の役割を担っている可能性が考えられたのです。発見2:受動喫煙の意外な事実――ゲノムに残る「指紋」は薄かったこれまで非喫煙者肺がんの有力な原因とされてきた受動喫煙。しかし、今回のゲノム解析では、意外な結果が出ました。受動喫煙にさらされた患者とそうでない患者の間で、ゲノム上の変異の量やパターンに明確な差はみられなかったのです。タバコ由来の「SBS4」の指紋も、受動喫煙との関連は認められませんでした。これは、受動喫煙にリスクがないという意味ではありません。むしろ、「受動喫煙による発がんのメカニズムは、これまで考えられていた直接的なDNA変異誘発とは異なる可能性がある」ことを示唆しています。たとえば、DNAを傷つけるのではなく、主に炎症を介してがんの発生を促進しているのかもしれません。この発見は、今後のリスク評価に新たな視点をもたらすものです。発見3:世界各地で異なるリスク――台湾で見つかった「漢方薬」の影この研究のもう一つの大きな成果は、非喫煙者肺がんの原因が世界共通ではないことを示した点です。とくに台湾の患者のがんゲノムからは、「アリストロキア酸」という化学物質に特徴的な変異シグネチャー「SBS22a」が多数見つかりました。アリストロキア酸は、かつて一部の漢方薬などに含まれていた強い発がん性を持つ物質です。この発見は、台湾などの地域で非喫煙者肺がんが多い一因を解明する手がかりとなり、地域に根差した公衆衛生や予防策の重要性を浮き彫りにしました。暮らしの中のPM2.5対策――最も身近な発生源「家庭料理」に注意大気汚染やPM2.5と聞くと環境破壊の話、屋外の話で個人レベルでは防ぎようがないと考えがちですが、実は私たちの暮らしの中で最も高濃度のPM2.5にさらされる瞬間の一つが「料理」です。とくに、油を使った炒め物や揚げ物では、屋外の汚染レベルをはるかに超えるPM2.5が発生します2)。では、なぜ料理でPM2.5が発生するのでしょうか。鍵を握るのは「油の種類と温度」です3)。1.植物油(サラダ油、ごま油など)これらに多く含まれる不飽和脂肪酸は、化学構造が不安定で熱に弱い性質があります。高温で加熱されると酸化・分解しやすく、その過程で有害なアルデヒド類などと共に、油の微粒子としてPM2.5を大量に発生させます。2.動物性脂肪(ラード、バターなど)こちらに多い飽和脂肪酸は構造が安定しており、比較的高温に強いため、植物油に比べてPM2.5の発生量は少なくなります。だからといって動物性脂肪を使うのは、心臓病など別の健康問題につながるため、重要なのは換気です。以下にできる対策をまとめます。料理中は換気扇をつける調理開始前から終了後しばらくまで回し続けるのが理想です。窓を開けて換気する可能なら窓も開け、空気の通り道を作りましょう。低PM2.5調理法を選ぶ炒め物や揚げ物より、「蒸す」「茹でる」「煮る」といった調理法や、エアフライヤーの活用はPM2.5の発生を大幅に抑制できます。空気清浄機の活用HEPAフィルター付きの空気清浄機を稼働させるのも有効かもしれません。ただし、これらが直接発がんリスクなどの低下につながるかについては、追加の研究が必要です。今回ご紹介した研究は、非喫煙者肺がんという病気の複雑な全体像を初めて描き出しました。その原因は一つではなく、大気汚染のようなグローバルな要因、地域特有の環境要因、そしてまだ解明されていない内なる要因が複雑に絡み合っているようです。 1) Diaz-Gay M, et al. The mutagenic forces shaping the genomes of lung cancer in never smokers. Nature. 2025 Jul 2. [Epub ahead of print] 2) Tang R, et al. Impact of Cooking Methods on Indoor Air Quality: A Comparative Study of Particulate Matter (PM) and Volatile Organic Compound (VOC) Emissions. Indoor Air. 2024 Nov 25. [Epub ahead of print] 3) Torkmahalleh MA, et al. PM2.5 and ultrafine particles emitted during heating of commercial cooking oils. Indoor Air. 2012;22:483-491.

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肺がんに対する免疫療法、ステロイド薬の使用で効果減か

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対しては、がんに関連した症状の軽減目的でステロイド薬が処方されることが多い。しかし新たな研究で、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療開始時にステロイド薬を使用していると、ICIの治療効果が低下する可能性のあることが示された。米南カリフォルニア大学(USC)ケック・メディシンの腫瘍内科医であり免疫学者でもある伊藤史人氏らによるこの研究の詳細は、「Cancer Research Communications」に7月7日掲載された。伊藤氏は、「がんの病期や進行度といった複数の要因を考慮しても、ステロイド薬の使用は特定の免疫療法で効果が得られないことの最も強い予測因子であった」と話している。 伊藤氏らはこの研究で、ICI単独、またはICIと他の治療法の併用のいずれかによる治療を受けたNSCLC患者277人(USCの患者189人、ロズウェルパーク総合がんセンターの患者88人)の医療記録を分析した。これらの患者のうちの21人(8%)は、ICI開始時にステロイド薬を使用していた。ステロイド薬はがん患者の倦怠感や嘔吐、脳の腫れ、肺の炎症といった症状を軽減するために広く使用されており、免疫系を抑制することで炎症を軽減する作用がある。 分析の結果、ICIによる治療開始時にステロイド薬を使用していることは奏効率の低下と関連することが明らかになった。また、ICIによる治療開始時にステロイド薬を使用していた患者では、使用していなかった患者に比べて無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が有意に短いことも示された。さらに、ICIによる治療開始時のステロイド薬の使用はPFSとOSの独立した予後不良因子であり、ステロイド使用者では非使用者と比べて、病態の進行リスクが2.7〜4.3倍、死亡リスクが2.4〜3.2倍高かった。 ステロイド薬を使用している患者では、ベースライン時にがん進行の指標となる血液中を循環する免疫のバイオマーカー(CX3CR1+CD8+T細胞)が有意に少ないことも示された。伊藤氏は、「この血中バイオマーカーがないと、がんの治療方針を判断する手がかりを得ることができず、腫瘍内科医は最適な治療を行えなくなる。その結果、患者が最善の治療を受けられなくなる可能性がある」と言う。このほか、実験用マウスを用いた検討からは、ICIによる治療前または治療中にステロイド薬を投与すると、T細胞が成熟する過程が妨げられることも示された。 伊藤氏は、「この研究結果から、ステロイド薬は体にもともと存在している免疫細胞であるT細胞の成熟を妨げることが明らかになった。その結果、T細胞は通常のようにがん細胞を攻撃することができず、患者の予後が悪化するのだ」と言う。同氏はまた、「ステロイド薬が免疫療法に干渉する可能性があることは他の研究でも示されているが、本研究は、その推定される因果関係を示した最初の研究の一つだ」と話している。 伊藤氏らは、本研究で認められた関連性をより深く理解するためには、さらなる研究が必要であるとの見解を示している。伊藤氏は、「患者によっては、がんの症状を管理する上でステロイド薬が不可欠だ。ステロイド薬が今後も肺がん治療において重要な役割を果たすことは間違いないが、その限界についても理解しておくことが重要である。自身のニーズに最も適した治療計画を立てるために、どの患者も主治医とよく話し合うべきだ」と助言している。

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