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Dr.大山のがんレク!すべての医療者に捧ぐがん種別薬物療法講義(下巻)

第7回 頭頸部がん 第8回 食道がん 第9回 肝胆膵がん 第10回 婦人科がん 第11回 泌尿器がん 第12回 造血器腫瘍 第13回 脳腫瘍 第14回 緊急症 第15回 緩和ケア がん化学療法が一般的な治療となり、一般内科でもがん患者を診る機会が多くなりました。この番組では、がん種ごとに、基本的知識、ステージ、主な治療法、化学療法とその副作用をコンパクトに解説。下巻では7つのがんとオンコロジックエマージェンシー、緩和ケアを収録。すべての医療者が自信を持ってがん患者と向き合えるための知識を、腫瘍内科 大山優先生がレクチャーします!第7回 頭頸部がん 咽頭、口腔、鼻腔など発現部位によって予後や治療法が異なる頭頸部がん。技術的・機能的に可能な場合は外科的切除、不可能な場合はケモラジ、すなわち放射線治療と化学療法の合わせ技で対応します。発見前には舌の違和感や出血などで来院することもあり、治療後には口腔内の合併症など、一般医のフォローも必要ですので、ぜひポイントを押さえてください。 第8回 食道がん 食道がんの手術後には、吻合部が狭窄し、嚥下障害を起こすことがあります。唾液が飲み込めないなど、生活に支障を来す患者のQOL改善には一般内科医のフォローが必須!食道がんは気管、大動脈、心膜、椎体に接するため、浸潤しやすいのが恐ろしい点です。症状のある患者は進行している場合が多く、治癒率も高くないなど、基礎知識も押さえておきましょう。第9回 肝胆膵がん 肝胆膵がんは病態が多様で、患者ごとの治療選択がとても重要です。肝がんは慢性肝炎や肝硬変の進行具合によって治療が異なり、殺細胞薬はほとんど効果がないこと、膵がんは早期発見が難しく約4%の患者しか完治できないことなど、一般内科医でもこれだけは知っておきたい肝胆膵がんの基本的知識、治療方法、副作用をコンパクトに解説します。第10回 婦人科がん 今回は子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんをぎゅっとまとめてレクチャー。この3つは共通してカルボプラチンとパクリタキセルを使用した化学療法を行います。これだけでも覚えておきたいポイントです。そのほかHPV(ヒト乳頭腫ウイルス)など、一般内科医にも最低限知っておいてほしい婦人科がん知識をお伝えします!第11回 泌尿器がん 今回は腎がん、尿路上皮がん、前立腺がん、精巣がんをまとめてレクチャーします。泌尿器がんは患者によって進行のスピードや薬剤反応性などに大きな個人差があるのが特徴です。とくに前立腺がんは緩徐進行性のため治療不要となる場合があり、PSA検診の可否が問題となっています。新薬開発の目覚しい化学療法や、QOL確保のための膀胱温存療法、ホルモン療法など、一般内科医でも知っておきたいがん知識が満載です!第12回 造血器腫瘍 造血器腫瘍は遺伝子レベルで病型が細分化され、新薬の登場とともに、治療も複雑化しています。急性白血病や悪性リンパ腫でも、化学療法は比較的有効で、的確な治療と全身管理によって完治できるタイプもあります。初診時に見逃してはならない、メディカルエマージェンシーのポイントを解説します!第13回 脳腫瘍 脳腫瘍は原発性と転移性に分けられます。原発性の悪性腫瘍は境界が不明瞭なため完全摘出が難しく、手術後に化学放射線療法を行います。転移性脳腫瘍は、原発腫瘍の部位や状態によって治療方法が異なります。なかでも、EGFR遺伝子変異性肺がんのように化学療法高度感受性の原発腫瘍の場合は、転移巣も化学療法が有効となるケースがあります。このように最近は脳腫瘍でも長期予後が期待できる場合もあるので、脳腫瘍治療のエッセンスを一通り覚えておきましょう!第14回 緊急症 がん患者の容態悪化、Oncologic Emergencyに対応できますか?一般内科でも外来でがん治療中の患者に遭遇する機会が多くなりました。専門医でなくとも、抗がん剤の副作用や合併症に対応しなければなりません。今回は一般内科医でも是非知っておいてほしい、経過観察してはいけないがんの緊急症について解説します!第15回 緩和ケア 最終回はがん診療においては必須となる緩和ケア。とくに疼痛治療の要となるオピオイドについて、開始方法や副作用を説明します。一般内科でも疼痛ケアや術後のフォローなどを行う機会が増えています。これだけは知っておきたい緩和ケア知識をぜひチェックしてください。

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C肝に8週投与でSVR99%:マヴィレット第III相試験/NEJM

 肝硬変を伴わないC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型または3型感染患者において、グレカプレビル・ピブレンタスビル合剤(商品名:マヴィレット配合錠)の1日1回8週間治療および12週間治療のいずれについても、高率の持続性ウイルス学的著効(SVR)を達成(それぞれ99%、95%)したことが、ドイツ・フランクフルト大学病院のStefan Zeuzem氏らが行った検討の結果、示された。NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬グレカプレビルとNS5A阻害薬ピブレンタスビルは、すべてのHCV遺伝子型(1~6型)に活性を示し、耐性に対して高いバリアを持つ直接作用型抗ウイルス薬である。両薬合剤の第II相試験では、12週間治療のSVRが全遺伝子型で93%以上を達成し、1/3型のSVRは97%を示していた。NEJM誌2018年1月25日号掲載の報告。グレカプレビル300mg+ピブレンタスビル120mgを遺伝子型1/3型感染患者に 大半のHCV感染患者への治療レジメンは12週間である。しかし、患者のアドヒアランスは、8週間を過ぎると下がる可能性があり、服薬期間はできるだけ短いほうがアドヒアランスを改善することが示唆されていた。 研究グループは、2件の第III相多施設共同無作為化非盲検試験(ENDURANCE-1試験とENDURANCE-3試験)にて、肝硬変を伴わないHCV遺伝子型1/3型感染患者に対するグレカプレビル300mg+ピブレンタスビル120mgの、8週間治療および12週間治療の有効性と安全性を評価した。 ENDURANCE-1試験では、1型感染患者を対象にグレカプレビル・ピブレンタスビルの8週間治療と12週間治療の有効性と安全性を比較評価した(割り付け1対1)。ENDURANCE-3試験では、3型感染患者を対象にグレカプレビル・ピブレンタスビルとソホスブビル・ダクラタスビル(SOF+DCV)の有効性と安全性を比較検討した(治療は12週間、割り付けは2対1)。さらに、3型感染患者を追加登録し、非無作為にてグレカプレビル・ピブレンタスビルの8週間治療を受ける群に割り付けた。 主要評価項目は、治療終了後12週時点のSVR(SVR12)とした。SVR12、95~99.1% 2015年10月21日~2016年5月4日に1,051例が無作為化治療を受けた。その内訳は、1型で8週間治療群351例、1型(352例)/3型(233例)の12週間治療群585例、3型で12週間SOF+DCV治療群115例であった。また、追加登録(非無作為割り付け)の3型で8週間治療群は157例で、総計1,208例の患者が試験治療を受けた。 SVR12は、1型8週間治療群が99.1%(95%信頼区間[CI]:98~100)、1型12週間治療群は99.7%(95%CI:99~100)であった。3型8週間治療群は95%(95%CI:91~98)(149/157例)。3型12週間治療群は95%(95%CI:93~98)(222/233例)、3型で12週間SOF+DCV治療群は97%(95%CI:93~99.9)(111/115例)であった。 なお、治療中止に至った有害事象の発生は、いずれの治療群でも1%以下であった。

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シェーグレン症候群〔SS:Sjogren's syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義眼・口腔乾燥を主症状とし、多彩な全身臓器症状を呈し、慢性に経過する全身性自己免疫疾患である。疾患名は1933年に報告したスウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレン(Henrik Sjogren *oはウムラウト)に由来する。■ 疫学中年以降の女性に好発(女性 vs.男性 14 vs.1)し、国内に少なくとも数万人(厚生労働省研究班推定)の罹患数とされ、潜在例はさらに多いと推定されている。■ 病因病理学的には、涙腺・唾液腺などの外分泌腺にリンパ球浸潤とそれに伴う腺構造破壊、線維化が認められる。免疫学的には、リンパ球・サイトカイン・ケモカイン異常、高IgG血症、多彩な自己抗体産生が認められる。■ 症状1)腺症状ドライアイ(眼乾燥)、ドライマウス(口腔乾燥)が二大症状である。気道粘膜、胃腸、膣、汗腺などの分泌腺障害に起因する乾燥症状を認める例もある。2)全身症状・腺外臓器病変(1)全身:微熱、倦怠感(2)甲状腺:慢性甲状腺炎(3)心血管:肺高血圧症(4)肺:間質性肺疾患(5)消化器:慢性胃炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変(6)腎臓:間質性腎炎、腎尿細管性アシドーシス(7)神経:末梢神経障害(三叉神経障害)、中枢神経障害(無菌性髄膜炎、横断性脊髄炎)(8)関節:多関節炎(9)皮膚:環状紅斑(疾患特異性が高い)、高ガンマグロブリン性紫斑(下腿点状出血斑)、薬疹(10)リンパ:単クローン性病変、悪性リンパ腫(11)精神:うつ病■ 分類本疾患のみを認める一次性(原発性)とほかの膠原病を合併する二次性(続発性)に分類される。■ 予後腺症状のみであれば生命予後は一般に良好である。腺外症状、とくに悪性リンパ腫を認める例では予後が不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査所見1)血液検査異常(1)腺障害:血清唾液腺アミラーゼ上昇(2)免疫異常:疾患標識自己抗体(抗SSA抗体、抗SSB抗体)・リウマトイド因子・抗核抗体陽性、高ガンマグロブリン血症、末梢リンパ球数減少を認める。2)腺機能検査異常涙液分泌低下は、シルマーテスト、涙液層破壊時間(BUT)により評価する。乾燥性角結膜炎は、ローズベンガル染色、フルオレセイン染色、リサミングリーン染色を用いて評価する。唾液分泌低下は、ガムテスト、サクソンテストにより評価、より客観的には唾液腺シンチグラフィーが用いられる。涙腺、唾液腺の形態は、超音波あるいはMRI検査により評価される。3)腺外臓器病変に応じた各種検査肺野およびリンパ節の評価についてはCT検査が有用である。また、間質性腎炎の評価には尿検査が行われる。● 診断で考慮すべき点潜在例も多く、その可能性を疑うことが診断への第一歩である。ドライアイ、ドライマウスの有無を問診し、典型例では問診のみで診断がつくこともある。本疾患が疑われた際は、診断基準に沿って確定診断を行うことが望ましい。しばしば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)などの他の自己免疫疾患を合併する。診断のための検査が困難である場合には、専門施設への紹介を考慮する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 腺症状1)眼点眼薬(人工涙液、ムチン/水分分泌促進薬、自己血清)、涙点プラグ挿入術、ドライアイ保護眼鏡装用2)口腔催唾薬(M3ムスカリン作動性アセチルコリン受容体刺激薬)、唾液噴霧薬がそれぞれ用いられる。■ 腺外症状 全身症状に対しては非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられる。免疫学的な活動性が高く、臓器障害を呈する症例では、ステロイドおよび免疫抑制薬が用いられる。● 治療で考慮すべき点眼症状に対しては治療が比較的奏功する一方で、口腔乾燥症状は改善が乏しい例も多い。腺症状に対するステロイドの有用性は否定的である。リンパ増殖性疾患、悪性リンパ腫を含む腺外症状もまれではないため、注意深く経過観察する。腺外臓器病変、ほかの膠原病を有する例は、リウマチ内科専門医へのコンサルトを考慮する。不定愁訴が多い例もあるが、本疾患を正しく理解をしてもらえるようによく患者に説明する。4 今後の展望欧米では、抗CD20モノクローナル抗体の臨床試験が報告されているが、その有用性については十分確立されていない。リンパ球などの免疫担当細胞を標的とした新規治療薬の臨床試験が国際的に進められている。5 主たる診療科リウマチ科(全身倦怠感、関節痛、リンパ節腫脹)、眼科(眼乾燥症状)耳鼻咽喉科(リンパ節腫脹、唾液腺症状)、歯科・口腔外科(口腔・乾燥症状)、小児科(小児例)6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難病情報センター シェーグレン症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本シェーグレン症候群学会(医療従事者向けのまとまった情報)シェーグレン症候群財団ホームページ(米国)(医療従事者向けのまとまった情報)Up to date(医療従事者向けのまとまった情報)1)Firestein GS, et al. Kelley and Firestein’s Textbook of Rheumatology 10th edition.Philadelphia;Elsevier Saunders:2016.2)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究班 編集. シェーグレン症候群診療ガイドライン2017年版.診断と治療社;2017.3)日本シェーグレン症候群学会 編集.シェーグレン症候群の診断と治療マニュアル 改訂第2版.診断と治療社;2014.公開履歴初回2017年12月12日

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最短8週間治療が可能なC型肝炎治療薬が登場

 アッヴィ合同会社は、すべての主要なジェノタイプ(GT1~6型)のC型肝炎ウイルス(HCV)に感染した成人患者に対して1日1回投与、リバビリンフリーの治療薬であるマヴィレット配合錠(一般名:グレカプレビル/ピブレンタスビル、以下マヴィレット)を11月27日に発売した。マヴィレットは肝硬変を有さない、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)未治療のジェノタイプ1型(GT1)および2型(GT2)のC型慢性肝炎(HCV)感染患者にとって、最初で唯一の最短8週間治療となる。薬価は1錠24,210.40円。 日本は先進国の中でC型肝炎ウイルスの感染率が最も高い国の1つで、感染患者のうちGT1型およびGT2型が97%を占める。また日本は、C型慢性肝炎とその合併症が主な原因となり発症する肝臓がんの罹患率が先進国の中で最も高い。 虎の門病院分院長の熊田 博光氏は、「今回のマヴィレットの発売により、DAA治療は第3世代へと移行し日本のC型肝炎治療は最終章を迎えると考えている。これまでのDAA療法は、ジェノタイプ、ウイルス耐性の有無、過去のDAA治療歴、または透析など、患者さんの状態によりDAA療法を使い分けていたが、マヴィレットの登場により1つの治療レジメンでそのほとんどがカバーされることになる」と述べている。 マヴィレットは今年2月に製造販売承認申請後、3月に優先審査品目に指定され、9月27日に承認された。 マヴィレットは、「肝硬変を有さない、DAA未治療のGT1型およびGT2型のHCVに感染した日本人患者」を対象とした第III相試験(CERTAIN試験)において、8週間の治療で99%(226例/229例)のウイルス学的著効率(SVR12)を達成した。また、他剤DAAで治癒しなかった患者において93.9%(31例/33例)のSVR12の達成となり、患者背景によらず、いずれも高い著効率を示した。副作用(臨床検査異常を含む)は、国内第III相試験において332例中80例(24.1%)に認められ、主な副作用は、そう痒症16例(4.8%)、頭痛14例(4.2%)、倦怠感10例(3.0%)および血中ビリルビン増加8例(2.4%)であった。 <効能・効果>C型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善<用法・用量>○セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎の場合 通常、成人には1回3錠(グレカプレビルとして300mg及びピブレンタスビルとして120mg)を1日1回、食後に経口投与する。 投与期間は8週間とする。なお、C型慢性肝炎に対する前治療歴に応じて投与期間は12週間とすることができる。○セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のC型代償性肝硬変の場合○セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しないC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変の場合 通常、成人には1回3錠(グレカプレビルとして300mg及びピブレンタスビルとして120mg)を1日1回、食後に経口投与する。投与期間は12週間とする。

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重度CKDのHCV感染患者、グレカプレビル+ピブレンタスビルが有益/NEJM

 C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しステージ4または5の慢性腎臓病(CKD)を有する患者に対し、NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬グレカプレビル+NS5A阻害薬ピブレンタスビル(商品名:マヴィレット配合錠)の12週間投与により、98%と高いウイルス学的著効(SVR)が得られることが示された。ニュージーランド・オークランド市立病院のEdward Gane氏らが、患者104例を対象に行った第III相多施設共同非盲検試験の結果で、NEJM誌2017年10月12日号で発表した。1日グレカプレビル300mg+ピブレンタスビル120mgを12週間投与 研究グループは、HCV遺伝型1、2、3、4、5、6型のいずれかに感染し、肝硬変の有無を問わず代償性肝疾患を有し、重度腎機能障害または透析依存、あるいは両状態が認められる成人患者104例を対象に試験を行った。 被験者に対し、グレカプレビル(100mg)+ピブレンタスビル(40mg)の配合薬を1日3錠、12週間投与し、その有効性と安全性を評価した。 被験者は、ステージ4または5のCKDを有し、HCV感染に対する治療歴がない、またはインターフェロン、ペグインターフェロン、リバビリン、ソホスブビルのいずれかまたは併用による治療歴があった。 主要エンドポイントは、治療終了後12週時点のSVR率だった。104例中102例で治療後12週時点のSVR達成 被験者のHCV遺伝型1、2、3、4、5、6型への感染率は、それぞれ52%、16%、11%、19%、2%、2%だった。 主要エンドポイントのSVRが認められたのは、104例中102例(98%、95%信頼区間[CI]:95~100)だった。治療中にウイルス学的失敗を来した患者、治療終了後にウイルス学的再発を来した患者はいなかった。 有害事象のうち、被験者の10%以上で報告されたのは、かゆみ、倦怠感、悪心だった。重篤な有害事象の発現は24%。また、4例が有害事象のため試験治療を早期に中止したが、そのうち3例ではSVRが得られていた。

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乾癬患者はアルコール関連死亡リスクが高い

 乾癬と診断された人々は早期死亡のリスクが高いが、その根底にある原因はわかっていない。英国・マンチェスター大学のRosa Parisi氏らは、集団ベースのコホート研究において、乾癬を有する人々は、同じ年齢および性別の一般集団と比較し、アルコールが関連した原因により死亡するリスクが約1.6倍になることを明らかにした。このことは、早期死亡率の差の鍵を握る1つの原因であると思われ、著者は「乾癬患者に対しては、一次および二次医療のいずれにおいても、飲酒習慣スクリーニングテスト(Alcohol Use Disorders Identification Test:AUDIT-C)を用いアルコール消費および乱用についてルーティンにスクリーニングを行い、リスクの高い患者の特定と治療が必要である」と指摘している。JAMA Dermatology誌オンライン版2017年9月15日号掲載の報告。 研究グループは、臨床診療研究データリンク(Clinical Practice Research Datalink:CPRD)、ならびに英国の病院データ(Hospital Episode Statistics:HES)および国家統計局(Office for National Statistics:ONS)の死亡記録を用い、乾癬患者はアルコール関連死亡のリスクが高いかどうかを調査した。上記データから、1998~2014年における18歳以上の乾癬患者、および乾癬患者と年齢・性別・一般診療をマッチさせた乾癬のない患者を特定し、アルコール関連死亡について解析した。 アルコール関連死亡の原因別ハザード比は、層別化Cox比例ハザードモデルを用いて、社会経済的状態を補正し算出した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、乾癬患者5万5,537例、非乾癬患者(対照)85万4,314例であった。・指標日の年齢中央値(四分位範囲)は47(27)歳、全体の44.9%(40万8,230例)は男性であった。・追跡期間中央値(四分位範囲)4.4(6.2)年において、アルコール関連死亡頻度は、乾癬患者群4.8/1万人年(95%信頼区間[CI]:4.1~5.6、152例)、対照群2.5/1万人年(95%CI:2.4~2.7、1,118例)であった。・乾癬患者群におけるアルコール関連死亡のハザード比は1.58(95%CI:1.31~1.91)で、主な原因はアルコール性肝疾患(65.1%)、肝線維化および肝硬変(23.7%)、アルコールによる精神および行動障害(7.9%)であった。

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問16

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問16 重回帰分析はなぜ変数相互の影響を除去した真の関係を見いだせるか?前回は、重回帰式で求められた回帰係数をどのように解釈すればよいのかについて、ご説明しました。今回は、重回帰分析は、変数相互の影響を除去した真の関係について見いだすことができる、とても便利なツールであることをご説明いたします。■変数相互の影響を除去した真の関係健康診断の検査値の1つにγ-GTPがあります。γ-GTPの値が100を超えると、肝硬変、肝がん、脂肪肝、胆道疾患の可能性があるといわれています。表1は成人男性20例について、γ-GTP、飲酒量、喫煙の有無、ギャンブル嗜好を調べたものです。γ-GTPを目的変数、飲酒量、喫煙の有無、ギャンブル嗜好を説明変数として重回帰分析を行い、γ-GTPを予測する関係式を作成します。表1 成人男性20例の生活嗜好に関する諸データ重回帰分析を行う前に、γ-GTPと飲酒量、喫煙の有無、ギャンブル嗜好との相関図の作成(図1)、相関係数の算出(図2)をしました。図1 諸データの相関図と相関係数γ-GTPとの相関係数は、ギャンブル嗜好で最も高くなっています。では、ギャンブル嗜好はγ-GTPの影響要因といってよいのでしょうか?図2に変数間相互の相関を調べてみました。図2 変数間相互の相関関係ギャンブル好きには喫煙者が多いので相関係数が高くなっています。ギャンブル好きだからγ-GTPが高いのでなく、ギャンブル好きは喫煙するからγ-GTPが高くなっているといえます。ギャンブル嗜好とγ-GTPの相関0.74は真の相関でなく、見かけの相関だと思われます。そこで、この事例のデータに重回帰分析を行ってみました。標準回帰係数は、説明変数の重要度を把握できる指標であることを前回述べました。標準回帰係数から、γ-GTPの影響要因の1位は飲酒量、2位は喫煙の有無で、ギャンブル嗜好は3位であることがわかりました。重回帰分析は、変数相互の影響を除去して重回帰式、標準回帰係数を算出します。この事例ではギャンブル嗜好とγ-GTPとの関係を見るとき、喫煙の有無の影響を除去しているということです。表2で示すように真の関係を見いだすことは至難の業ですが、標準回帰係数は、変数相互の影響を除去した真の関係を見いだすツールといえます。表2 標準回帰係数でみたγ-GTPの影響要因次回は、重回帰分析を行うときにしばしば発生する符号の逆転現象について、ご説明いたします。今回のポイント1)目的変数と説明変数相互間の相関係数は、見かけの相関であり真の相関ではない!2)基準化したデータに重回帰分析を行い求められた回帰係数である標準回帰係数は、説明変数の重要度を把握できる指標である!3)標準回帰係数は変数相互の影響を除去した真の関係を見いだすツール!インデックスページへ戻る

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2017年度 総合内科専門医試験、直前対策ダイジェスト(後編)

【第1回】~【第6回】は こちら【第7回 消化器(消化管)】 全5問消化管領域で最も出題される可能性が高いのは、(1)相次ぐ新薬の上市、(2)胃がんガイドライン改訂に向けた動き、(3)消化器がんの化学療法、である。治療の進歩が著しい炎症性腸疾患、2016年にRome IV基準が発表された過敏性腸症候群と機能性胃腸症については、必ず押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)上部消化管疾患に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)食道粘膜傷害の内視鏡的重症度と自覚症状の間には相関を認める(b)食道アカラシアは高い非同期性収縮を認めることが多い(c)食道静脈瘤出血時にバソプレシン、テルリプレシン、オクトレオチドは有効であるが、ソマトスタチンは無効である(d)好酸球性胃腸炎の診断基準の1つに、「腹水が存在し腹水中に多数の好酸球が存在している」がある(e)ボノプラザンは、ヘリコバクター・ピロリ菌除菌治療には保険適用となっていない例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第8回 消化器(肝胆膵)】 全5問肝臓の領域では、B型肝炎をはじめ、体質性黄疸、肝膿瘍、自己免疫性肝炎などのマイナー疾患からの出題も予想される。膵臓では嚢胞腫瘍、自己免疫性膵炎、膵がんの化学療法などがポイントとなる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)HBV感染に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)B型慢性肝炎の治療対象は、HBe抗原の陽性・陰性にかかわらずALT 31U/L以上かつHBV DNA 2,000IU/mL以上である(b)本邦におけるB型肝硬変は、代償性/非代償性肝硬変にかかわらずIFN治療が第1選択となる(c)HBV持続感染者に対する抗ウイルス療法の長期目標は、ALT持続正常化・HBe抗原陰性かつHBe抗体陽性・HBV DNA増加抑制の3項目である(d)テノホビルの長期投与では、腎機能障害・高リン血症・骨密度低下に注意する必要があり、定期的に腎機能と血清リンの測定を行うことが推奨される(e)テノホビルアラフェミナド(TAF)はテノホビル(TFV)の新規プロドラッグであり、テノホビルジソプロキシル(TDF)に比べ少ない用量で同等の高い抗ウイルス効果を示すが、TDFと比較して腎機能障害および骨密度低下を来しやすいと報告されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第9回 血液】 全7問血液領域は、認定内科医試験では出題比率が低いものの、総合内科専門医試験では高い傾向がある。本試験の対策としては、個々の薬剤名とその適応をしっかり覚えることがポイントとなる。頻出テーマは、鉄過剰症、悪性リンパ腫の治療前感染症スクリーニング、特発性血小板減少性紫斑病など。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)貧血に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)鉄欠乏性貧血では、生体内鉄制御を担う血中ヘプシジン増加を認めることが報告されている(b)鉄欠乏性貧血の原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌感染が関与している可能性が指摘されている(c)鉄欠乏性貧血の診断基準は(1)ヘモグロビン12g/dL未満(2)血清鉄30µg/dL未満(3)血清フェリチン12ng/mL未満である(d)温式自己免疫性溶血性貧血(温式AIHA)は、全例直接クームス試験陽性である(e)特発性温式AIHAの治療は、副腎皮質ステロイドを第1選択とするが、ステロイド無効の場合にはリツキシマブ(ヒト化抗CD20モノクローナル抗体)が保険適用となっている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第10回 神経】 全5問神経領域では、総合内科専門医試験特有のテーマとして、抗NMDA受容体抗体脳炎、多発性硬化症と神経脊髄炎との違い、筋強直性ジストロフィーがある。この3つのテーマは、毎年複数題出題されているので、確実に押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)末梢神経障害に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)膝蓋腱反射とアキレス腱反射の反射中枢は同じである(b)起床時に手首に力が入らず、垂れてしまう。これは睡眠中の尺骨神経麻痺が原因である(c)フローマンサイン陽性は、橈骨神経麻痺の診断に有用である(d)手根管症候群の診断に有用な所見として、ファレンテスト陽性・ティネル様サイン陽性がある(e)足を組んで寝ていたら、翌朝足首(足関節)と足の指(趾)が背屈できなくなり受診。診察所見で下垂足(drop foot)を認める。脛骨神経麻痺が原因である例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第11回 循環器】 全7問循環器領域では、心筋梗塞、心不全治療に加えて、心アミロイドーシス、心サルコイドーシス、大動脈炎症候群が、本試験における特徴的なテーマといえる。また、新しいデバイスが登場すると出題される傾向がある。今年要注意なのは、リードレスペースメーカー、最近適応拡大されたループレコーダーなど。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)心不全について正しいものはどれか?1つ選べ(a)NYHA分類I度は「軽度の身体活動の制限があるが、安静時には無症状」の状態である(b)NYHA分類II度はAHA/ACC心不全ステージBに相当する(c)クリニカルシナリオ(CS)は急性心不全患者の入院早期管理に用いられる指標で、CS4は右心不全、CS5は急性冠症候群に分類されている(d)NT-proBNP(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心筋細胞内のproBNPがBNPに分解される際に産生され、心不全診断の基準値はBNPと同じ値である(e)日本循環器学会/日本心不全学会のステートメント(心不全症例におけるASV適正使用に関するステートメント第2報)に、中枢型有意の睡眠時無呼吸を伴い、安定状態にある左室収縮機能低下に基づく心不全患者に対しては、ASVの導入・継続は禁忌ではないが、慎重を期する必要があると記載されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第12回 総合内科/救急】 全3問総合内科/救急の領域で確実に出題されるのは「意識レベル」。JCSとGCSについては、どちらも確実に解答できるようにしておきたい。また、JMECCに関する問題と脳死判定基準も出題のヤマとなると思われる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)救急・脳死に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)覚醒しているが、見当識障害を認めればJapan Coma Scale(JCS)は3とする(b)「痛み刺激で開眼・不適当な発語・指示には従えないが痛み刺激から逃避する」でGlasgow Coma Scale(GCS)は8点となる(c)病歴聴取で使用されるSAMPLE historyの「M」は「Meal(最終食事時間)」である(d)脳死判定基準の除外基準では、深昏睡および自発呼吸の消失が「低体温によるもの」「代謝/内分泌障害によるもの」とともに「急性薬物中毒によるもの」が含まれている(e)脳死判定基準の1つに「前庭反射の消失」があり、聴性脳幹誘発反応にて確認することとなっている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第7回~第12回の解答】第7回:(d)、第8回:(a)、第9回:(b)、第10回:(d)、第11回:(e)、第12回:(d)【第1回】~【第6回】は こちら

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口腔がんになりやすい職業

 フィンランド・ヘルシンキ大学のLaura Tarvainen氏らが、舌・口腔(oral cavity)・咽頭がんにおける職業別リスクについて、飲酒・喫煙を調整し評価したところ、歯科医師などいくつかの職業で舌がんの相対リスクが高いことがわかった。著者らは、職業的な化学物質への曝露、飲酒や喫煙の増加、ヒトパピローマウイルス感染が関連する可能性を示唆している。Anticancer research誌2017年6月号に掲載。 著者らは、1961~2005 年における北欧諸国の1,490万人と、舌・口腔・咽頭がん2万8,623例のデータを調査。職業別の飲酒については肝硬変による死亡率と肝臓がん発症率に基づいて推定し、職業別の喫煙については肺がん発症率に基づいて推定した。 飲酒・喫煙について調整後、舌・口腔・咽頭がんの相対リスクが1.5を超えた職業は、歯科医師、芸術系職、美容師、ジャーナリスト、司厨、船員、ウエイターなどであった。

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DAAレジメン無効のHCVに3剤合剤が効果/NEJM

 C型肝炎ウイルス(HCV)慢性感染患者で、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)を含むレジメンで治療を行っても持続的ウイルス学的著効(SVR)が得られない患者に対し、ヌクレオチドポリメラーゼ阻害薬ソホスブビル+NS5A阻害薬velpatasvir+プロテアーゼ阻害薬voxilaprevirの配合剤を12週間投与することで、9割超のSVRが達成できることが示された。フランス・セントジョセフ病院のMarc Bourliere氏らが、2件の第III相無作為化比較試験を行って明らかにしたもので、NEJM誌2017年6月1日号で発表した。現状では、DAAを含む治療でSVRが達成できない場合には、次の治療選択肢は限られているという。「POLARIS-1」と「POLARIS-4」の2試験で評価 研究グループは2015年11月~2016年5月にかけて、DAAを含むレジメン治療歴のある患者を対象に、2件の第III相試験「POLARIS-1」と「POLARIS-4」を行った。 「POLARIS-1」試験では、HCV遺伝型1型に感染しNS5A阻害薬を含むレジメンの治療歴がある患者を無作為に2群に分け、一方にはソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの配合錠を(150例)、もう一方にはプラセボを(150例)、それぞれ1日1回12週間投与した。また、その他のHCV遺伝型の患者については、ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの配合錠を投与した(114例)。 「POLARIS-4」試験では、HCV遺伝型1型、2型、3型に感染しNS5A阻害薬を含まないDAAレジメンで治療歴のある患者を無作為に2群に分け、ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの配合錠(163例)、またはソホスブビル+velpatasvirの配合錠を(151例)、それぞれ12週間投与した。また、HCV遺伝型4型の患者については、ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの配合錠を投与した(19例)。 主要エンドポイントは、治療終了12週時点のSVR率とした。ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirでSVR率は96~98% 被験者のうち、実薬を投与した3群では、その46%が代償性肝硬変だった。 POLARIS-1試験では、SVR率はプラセボ群で0%だったのに対し、ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの3剤合剤群では96%(95%信頼区間[CI]:93~98)と、事前に規定した効果目標の85%に比べ、有意に高かった(p<0.001)。 POLARIS-4試験ではまた、ソホスブビル+velpatasvirの2剤合剤群のSVR率は90%だったのに対し、ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの3剤合剤群では98%(95%CI:95~99)と、同じく効果目標の85%に比べ有意に高率だった(p<0.001)。 発生頻度の高かった有害事象は、頭痛、疲労、下痢、悪心などだった。実薬を投与した群で、有害事象により治療を中断した人の割合は1%以下だった。

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亜鉛欠乏症のあなどれない影響

 2017年4月26日、都内においてノーベルファーマ株式会社は、「見落とされがちな『亜鉛不足』の最新治療~日本初となる低亜鉛血症治療薬の登場~」と題してプレスセミナーを開催した。セミナーでは、2008年に承認された同社の酢酸亜鉛水和物(商品名:ノベルジン)が2017年3月に低亜鉛血症にも追加承認されたことから、小児に多い亜鉛欠乏症の概要を小児科専門医の視点から、そして、亜鉛が肝疾患に与える影響について消化器専門医の視点から講演が行われた。亜鉛欠乏症はサプリメントでは補えない はじめに「けっして稀ではない亜鉛欠乏」と題し児玉浩子氏(帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 学科長・教授/帝京大学医学部小児科)が、亜鉛欠乏症の概要を説明した。 亜鉛は、人にとり必須微量ミネラルであり、成人男性なら約2gが体内に存在、各種酵素の形成や造血機能、皮膚代謝、味覚維持などの働きを担っている。亜鉛が欠乏すると、皮膚炎や脱毛、貧血、味覚障害、下痢、食欲低下、骨粗鬆症などの症状がみられ、性腺機能低下やとくに小児であれば発育障害を引き起こす。 「こうした身近にあるはずの亜鉛欠乏について、一般臨床ではあまり知られておらず、主な教科書や論文でも本症の症状が鑑別診断の対象とされていない。そのため、多くの場合、医療現場で見逃されている可能性がある」と児玉氏は指摘する。 「亜鉛欠乏症の診断指針」では、一定の症状(たとえば皮膚炎、口内炎、食欲低下、発育障害、易感染性、味覚障害など)があり、血清アルカリホスファターゼ(ALP)が低値で、症状の原因となる他の疾患が否定され、血清亜鉛値が60μg/dL未満で、亜鉛補充により症状が改善する場合を本症と確定診断する。 そして、亜鉛欠乏症と診断された場合、食事療法やサプリメントの摂取では改善しないことが多く、亜鉛製剤による治療が必要となる。亜鉛欠乏症の治療薬であるノベルジンを使用する際は、患者の病状や血清亜鉛値を参考としながら、成人および体重30kg以上の小児ならば1回25~50mgを開始用量としつつ、1日2回食後に経口投与する(最大150mg/日)。体重30kg未満の小児(なお、新生児は、現在臨床試験中)であれば1回25mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与する(最大75mg/日)。また、投与時に気を付けたい有害事象としては、嘔気、腹痛などの消化器症状、銅欠乏による貧血、白血球減少がある。いずれも重篤なものではないが、投与中は定期的血清亜鉛値の測定とこれによる減量と中止、必要な銅や鉄の補充を行う必要がある。 最後に児玉氏は「小児で食欲不振、低身長があれば亜鉛不足が推定される。また、成人であれば味覚異常、脱毛、貧血、長期の薬剤使用などがあれば亜鉛欠乏症を疑うサインとなる。日常診療でも本症を思い浮かべてもらい、疑ったら血清亜鉛値を検査するなど診療に生かしてもらいたい」と思いを語った。亜鉛欠乏が肝疾患に与える影響 次に片山和宏氏(大阪国際がんセンター 副院長/臨床研究センター長 肝胆膵内科)が、「亜鉛と肝疾患」をテーマに亜鉛欠乏が肝疾患に与える影響について解説した。 亜鉛には、タンパク合成を行う重要な働きがあり、欠乏すると肝臓の代謝不良から慢性肝疾患へ至るとされている。実際、亜鉛が不足し、肝臓でタンパク質の代謝が鈍るとアンモニアの処理ができず、肝性脳症になることが知られている。 そこで、片山氏が肝硬変患者の亜鉛欠乏の度合いを調べた研究では、血中アルブミン濃度が3.5g/dLまで下がると亜鉛欠乏(<70μg/dL)率は約90%になったという。また、肝硬変のタンパク代謝(アルブミン)と生命予後の関係の調査では、タンパク質合成がうまく働かず血中アルブミン濃度が下がると3.5g/dLを境に5年生存率にも大きく影響する。 そのほか、C型肝炎患者に亜鉛製剤投与の長期間経過観察(2,500日超)では、亜鉛濃度が80μg/dL以上維持できた場合、有意に発がん率が少なかったこと、動物モデルではあるが亜鉛投与で肝臓の線維化が抑制されたことなどが報告された。 臨床現場で使用されている「肝硬変診療ガイドライン2015(栄養編)」の中では、亜鉛補充は「中等度のエビデンス」とされ、亜鉛の必要性は認識されているもののエビデンスレベルが低く、今後エビデンスの集積が待たれるという。 最後に片山氏は「次回の改訂では、ガイドラインの栄養療法の項目で、エネルギー低栄養を認めたら低亜鉛血症への診療へと移る項目ができることを期待したい」と抱負を述べ、レクチャーを終えた。

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肝性脳症に抗菌薬?新たな治療戦略

 40~50万程度いると推定される肝硬変患者、その合併症の1つである肝性脳症の治療に進歩がみられている。あすか製薬主催のプレスセミナー「知られざる肝性脳症の病態と最新治療」にて2017年1月18日、大阪市立大学 肝胆膵病態内科学 河田則文氏が新たな肝性脳症治療についての講演を行った。 肝性脳症の初期症状として、人格や行動の微妙な変化、判断力低下、睡眠パターンの乱れ、認知症、うつ病などの精神症状が現れる。初期では患者に自覚症状がないこともあり、家族もほとんど気付かない。その後、羽ばたき振戦、見当識障害、肝性口臭などの特徴的な症状が出て徐々に悪化し、最終的に昏睡に陥り寝たきり状態となる。 肝性脳症は、血中のアンモニアが高くなることで引き起こされると考えられている。アンモニアは食物を腸内細菌が代謝する過程で産生される。肝硬変になると、肝臓機能が低下しアンモニア解毒能が下がる、門脈―大循環シャントのためアンモニアが直接体循環内に入る、などが誘因となり高アンモニア血症から脳症を惹起すると考えられている。 肝性脳症の治療では、腸管内pHの低下や排便促進などによりアンモニア産生・吸収を抑制する合成二糖類、筋肉でのアミノ酸代謝を促進する分岐鎖アミノ酸製剤(以下、BCAA)、尿素回路を活性化させるカルニチン製剤などが用いられていた。そこに、腸内細菌に対し抗菌作用を示す難吸収性抗菌薬リファキシミン(商品名:リフキシマ)が登場した。リファキシミンは、BCAAや合成二糖類など既存の治療法で十分な効果が認められなかった場合に、治療効果を向上させるために用いられる。 リファキシミンは、腸内細菌叢におけるアンモニア酸性菌として報告されている菌群に対し抗菌活性を示すと共に、そのほとんどが体で吸収されず、消化管細菌叢に移行するという特徴を有する。二重盲検試験の結果、リファキシミン群の血中アンモニアレベルはプラセボ群に比べ有意に低下し(p=0.008)、肝性脳症の点数であるPSEインデックスもプラセボに比べ、有意に低下することが明らかとなった(p=0.0103)。また、肝性脳症による入院までの期間も、プラセボに比べ有意に延長した(p=0.01)。さらに、肝硬変患者の生存率も、プラセボに比べ有意に延長した(p=0.012)。 肝硬変が完治できない現在、肝性脳症も完治することはできない。しかし、難吸収性抗菌薬という新たな選択肢が加わった今、非代償性あっても代償性に近い時期であれば、高アンモニア血症の改善やアルブミン改善など治療を組み合わせることで代償性に戻る患者もいるという。症状が軽微な初期の段階から、肝臓専門医と他診療科医が連携し、肝性脳症の早期発見が進むことを期待したい。

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慢性C型肝炎に対するRG-101の忍容性と安全性/Lancet

 慢性C型肝炎に対するRG-101の第IB相二重盲検無作為化試験の結果が、オランダ・Academic Medical CenterのMeike H van der Ree氏らにより報告された。2mg/kgまたは4mg/kgの単回投与は、いずれも忍容性良好であり、投与を受けた全患者28例で4週間にわたってウイルス量の低下が認められ、3例については76週にわたるウイルス量低下の持続が認められた。RG-101は、C型肝炎ウイルス(HCV)複製の重要な宿主因子であるmiR-122を拮抗するN-アセチルガラクトサミン抱合オリゴヌクレオチドをターゲットとする。Lancet誌オンライン版2017年1月10日号掲載の報告。2mg/kgまたは4mg/kgとプラセボを投与し評価 試験は、さまざまなHCV遺伝子型の患者を多施設から登録し、RG-101またはプラセボに7対1の割合で無作為に割り付けて行われた。被験者は、年齢18~65歳、男性および閉経後または子宮摘出後の女性で、HCV遺伝子型1、3または4に24週以上感染していると診断され、インターフェロンαベース未治療患者と同治療後再発患者を対象とした。複数ウイルスに感染(B型肝炎ウイルスやHIVウイルス)、非代償性肝硬変や肝細胞がん歴のある患者は除外した。無作為化はSAS procedure Proc Planを用いて独立的に非盲検下で統計家によって行われた。 試験は、第1コホートにはRG-101の2mg/kg皮下注またはプラセボを、第2コホートには4mg/kg皮下注またはプラセボをそれぞれ投与して行われた。 被験者は、無作為化後8週間のフォローアップ(全患者対象)と、最長76週間のフォローアップ(ウイルス増殖のない患者、プラセボ群への割り付け患者は除く)を受けた。試験の主要目的は、RG-101の安全性と忍容性の評価であった。2mg/kg、4mg/kgとも忍容性良好でウイルス量は持続的に低下 2014年6月4日~10月27日の間に32例が登録された。年齢中央値は52歳(IQR:49~57)、男性被験者が24例、女性は8例で、HCV遺伝子型別では1型16例、3型10例、4型6例であった。 第1コホートでは、14例がRG-101の2mg/kg皮下注群に、2例がプラセボ群に割り付けられた。第2コホートでは14例がRG-101の4mg/kg皮下注群に、2例がプラセボ群に割り付けられた。 結果、1つ以上の治療関連有害事象を報告したのは、28例中26例であった。 4週時点で、ベースラインからのウイルス量の持続的低下中央値は、2mg/kg皮下注群が4.42(IQR:3.23~5.00)log10IU/mL、4mg/kg皮下注群が5.07(IQR:4.19~5.35)log10IU/mLであった。また3例の患者については、RG-101単回投与後76週間、HCV RNAが検出されなかった。12週時点またはそれ以前のウイルス増殖は耐性出現と関連しており、HCV遺伝子の5’UTRにおけるmiR-122結合領域の代替と関わるものであった。

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米国の死因別死亡率、州で大きな違い/JAMA

 1980~2014年における、米国の州レベルの特異的死亡率を分析した結果、いずれの死因についても州間差が大きいことが認められ、死因特性が地域によってかなり異なることが、米国・ワシントン大学のLaura Dwyer-Lindgren氏らによる検討の結果、明らかにされた。州レベルの死亡パターンをみることは、公衆衛生当局、医師および研究者にとって、健康増進や健康地域格差の縮小に役立つとみられているが、これまで系統的な分析がされていなかったという。研究グループは、新たな手法を開発し21の死因について州単位で年率を算出した。著者は、「今回の研究で用いた、小地域モデルによる州レベル分析のアプローチは、米国の特異的疾患死亡率の経時的変化やその地域差に、新たな洞察を提供するものと思われる」と述べている。JAMA誌2016年12月13日号掲載の報告。小地域を母集団に21の死因について州レベルの年次死亡率を推算 研究グループは、米国人口動態統計の死亡登録データに、garbage codes(あり得ないもしくは不十分な死因コード)の再分配法と小地域評価法(小地域を母集団に率を算出する統計法)を適用し、21の死因について州レベルの年次死亡率を推算した。それら推算データを集めて(複数のディメンションで測定されたもの)、原因と既存の国家レベルの推定値との整合性を調べた。また、最高負荷の10の死因に関する2014年の年齢標準化死亡率の地理的パターンと、1980~2014年の年齢標準化死亡率の変化の地理的パターンを確認した。 主要評価項目は、原因特異的年齢標準化死亡率であった。詳細な地域差が明らかに 米国における1980年1月1日~2014年12月31日の死亡は、8,041万2,524例であった。 このうち1,940万例の死がgarbage codesであった。死亡率の分析は、3,110の郡または群のグループについて行った。 郡間差の大きさは、死因ごとに、年齢標準化死亡率のギャップとして明白に認められた。すなわち10万人当たりの死亡数(最小値、10thパーセンタイル値、中央値、90thパーセンタイル値、最大値)の90thパーセンタイル値と10thパーセンタイル値の差は、14.0(肝硬変と慢性肝疾患)から147.0(心血管疾患)にわたっていた。 死亡率上昇の地理的パターンも、死因によって異なっていた。たとえば、心血管疾患死亡率は、ミシシッピ川の南半分の地域で高い傾向がみられ、自傷行為や対人暴力は南西部の州で上昇がみられ、慢性呼吸器疾患による死亡率はケンタッキー州の東部の郡およびウェストバージニア州の西部の郡で高かった。 1980~2014年の間の疾患特異的死亡率の変化に関しては、郡レベルの変化も大きかった。また、大半の死因(がん、神経障害、自傷行為・対人暴力など)について、州レベルの死亡率の増加および減少の両方が観察された。

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なぜ必要? 4番目のIFNフリーC肝治療薬の価値とは

 インターフェロン(IFN)フリーのジェノタイプ1型C型肝炎治療薬として、これまでにダクラタスビル/アスナプレビル(商品名:ダクルインザ/スンベプラ)、ソホスブビル/レジパスビル(同:ハーボニー)、オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル(同:ヴィキラックス)の3つが発売されている。そこに、今年3月の申請から半年後の9月に承認されたエルバスビル/グラゾプレビル(同:エレルサ/グラジナ)が、11月18日に発売された。治療効果の高い薬剤があるなかで、新薬が発売される価値はどこにあるのか。11月29日、MSD株式会社主催の発売メディアセミナーにて、熊田 博光氏(虎の門病院分院長)がその価値について、今後の治療戦略とともに紹介した。患者背景によらず一貫した有効性 エレルサ/グラジナは、国内第III相試験において、SVR12(投与終了後12週時点のウイルス持続陰性化)率が慢性肝炎患者で96.5%、代償性肝硬変患者で97.1%と高いことが認められている。また、サブグループ解析では、前治療歴、性別、IL28Bの遺伝子型、ジェノタイプ(1a、1b)、耐性変異の有無にかかわらず、一貫した有効性が認められており、慢性腎臓病合併患者、HIV合併患者においても、海外第III相試験で95%以上のSVR12率を示している。IFNフリー治療薬4剤の効果を比較 しかしながら、すでにIFNフリー治療薬が3剤ある状況で、新薬が発売される価値はあるのかという疑問に、熊田氏はまず4剤の効果を治験成績と市販後成績で比較した。 薬剤耐性(NS5A)なしの症例では、治験時の各薬剤の効果(SVR24率)は、ダクルインザ/スンベプラが91.3%、ハーボニーが100%、ヴィキラックスが98.6%、エレルサ/グラジナが98.9%であり、実臨床である虎の門病院での市販後成績でも、ダクルインザ/スンベプラが94.0%、ハーボニーが98.2%、ヴィキラックスが97.7%(SVR12率)と、どの薬剤も良好であった。 一方、薬剤耐性(NS5A)保有例の治験時の成績は、ダクルインザ/スンベプラが38%、ハーボニーが100%、ヴィキラックスが83%、エレルサ/グラジナが93.2%であり、虎の門病院の市販後成績では、ダクルインザ/スンベプラが63.7%、ハーボニーが89.6%、ヴィキラックスが80.0%(SVR12率)であった。熊田氏は、「治験時の100%よりは低いがハーボニーが3剤の中では良好であるのは確かであり、実際に使用している患者も多い」と述べた。副作用はそれぞれ異なる 次に、熊田氏は虎の門病院での症例の有害事象の集計から、各薬剤の副作用の特徴と注意点について説明した。 最初に発売されたダクルインザ/スンベプラは、ALT上昇と発熱が多く、風邪のような症状が多いのが特徴という。 ハーボニーは、ALT上昇は少ないが、心臓・腎臓への影響があるため、高血圧・糖尿病・高齢者への投与には十分注意する必要があり、熊田氏は「これがエレルサ/グラジナが発売される価値があることにつながる」と指摘した。 ヴィキラックスは、心臓系の副作用はないが、腎障害やビリルビンの上昇がみられるのが特徴である。また、Ca拮抗薬併用患者で死亡例が出ているため、高血圧症合併例では必ず他の降圧薬に変更することが必要という。 発売されたばかりのエレルサ/グラジナについては、今後、症例数が増えてくれば他の副作用が発現するかもしれないが、現在のところ、ALT上昇と下痢が多く、脳出血や心筋梗塞などの重篤な副作用がないのが特徴、と熊田氏は述べた。 このように、各薬剤の副作用の特徴は大きく異なるため、合併症による薬剤選択が必要となってくる。今後の薬剤選択 熊田氏は、各種治療薬の薬剤耐性の有無別の治療効果と腎臓・心臓・肝臓への影響をまとめ、「エレルサ/グラジナは、耐性変異の有無にかかわらず、ハーボニーと同等の高い治療効果を示すが、ハーボニーで注意すべき腎臓や心臓への影響が少なく、ここに新しい薬剤が発売される価値がある」と述べた。 また、今後の虎の門病院におけるジェノタイプ1型C型肝炎の薬剤選択について、「耐性変異なし、心臓・腎臓の合併症なし」の患者にはハーボニーまたはヴィキラックスまたはエレルサ/グラジナ、「NS5A耐性変異あり」の患者にはハーボニーまたはエレルサ/グラジナ、「腎障害」のある患者にはヴィキラックスまたはエレルサ/グラジナ(透析症例はダクルインザ/スンベプラ)という方針を紹介した。さらに、「NS5A耐性変異あり」の患者には、「これまではハーボニー以外に選択肢がなかったが、今後はエレルサ/グラジナが使用できるようになる。とくに心臓の合併症がある場合には安全かもしれない」と期待を示した。

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世界の平均寿命、35年で約10年延長:GBD2015/Lancet

 1980年から35年間に、世界の年齢別死亡率は着実に改善し、この進展パターンは過去10年間持続しており、多くの国では当初の予測よりも迅速であったが、期待余命が短縮し、いくつかの死因の年齢標準化死亡率が上昇した国もあることが、米国・ワシントン大学のChristopher J L Murray氏らが実施したGlobal Burden of Disease Study 2015(GBD 2015)で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2016年10月8日号に掲載された。生存期間を改善し、寿命を延長するには、その時々の地域の死亡率や傾向に関する頑健なエビデンスが求められる。GBD 2015は、195の国と領地における1980~2015年の全死因死亡および249項目の原因別死亡を包括的に評価する世界的な調査である。新たな解析法による検討、GATHERに準拠 研究グループは、GBD 2013およびGBD 2010のために開発された解析法の改良版を用いて、年齢、性、地理、年代別の全死因死亡率を推算した(ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成による)。 GBD 2015では、エボラウイルス病を含む8つの死因が新たに加えられた。ほとんどの死因の予測値を生成するCause of Death Ensemble Model(CODEm)のほか、6つのモデリング法を用いて、原因別死亡率の評価を行った。 「保健推計報告の正確性、透明性のためのガイドライン(Guidelines for Accurate and Transparent Health Estimates Reporting; GATHER)」に準拠し、データ源とともに、解析過程の各段階を記述した。出生時期待余命が61.7歳から71.8歳へ、死亡数が増加し年齢標準化死亡率は低下 世界的な出生時の期待余命(寿命)は、1980年の61.7歳から、2015年には71.8歳に延長した。サハラ以南のアフリカ諸国では、2005年から2015年に期待余命が大幅に延長した国があり、HIV/AIDSによる大規模な生命の喪失の時代からの回復が認められた。 同時に、とくに戦争や対人暴力により死亡率が上昇した国など、期待余命が停滞または短縮した地域も多かった。シリアでは、2005年から2015年に期待余命が11.3年短縮し、62.6歳にまで低下した。 2005年から2015年に、全死亡数は4%増加したが、年齢標準化死亡率は17.0%低下しており、この間の人口増加と年齢構成の転換が示された。この結果は、全死亡数が14.1%増加したのに対し年齢標準化死亡率が13.1%低下した非感染性疾患(NCD)と類似していた。このパターンは、いくつかのがん種、虚血性心疾患、肝硬変、アルツハイマー病、その他の認知症にみられた。 これに対し、感染性疾患、妊産婦、新生児、栄養障害による全死亡数および年齢標準化死亡率は、いずれも2005年から2015年に有意に低下しており、その主な要因はHIV/AIDS(年齢標準化死亡率の低下率:42.1%)、マラリア(同:43.1%)、早産による新生児合併症(同:29.8%)、妊産婦の疾患(同:29.1%)による死亡率の低下であった。また、外傷による年齢標準化死亡率は、この間に有意に低下したが、例外として、とくに中東地域では対人暴力や戦争による外傷で多くの人命が失われた。 2015年における5歳以下の下痢による死亡の主な原因はロタウイルス性腸炎であり、下気道感染症による死亡の主原因は肺炎球菌性肺炎であったが、病原体別死亡率は地域によってばらつきがみられた。 全体として、人口増加、高齢化、年齢標準化死亡率の変化の影響は、死因ごとに実質的に異なっていた。SDIによるYLLの予測値と実測値 原因別死亡率と社会人口学的指標(SDI:学歴、出生率、1人当たりの所得に基づくサマリー指標)の関連の解析では、SDIの上昇にともなって、死因や年齢の構成が規則的に変化することが示された。 若年死亡率(損失生存年数[YLL]の指標)の国別のパターンには、SDIのみに基づくYLLの予測値との間にずれがあり、国や地域によって高度に不均一なパターンが明確に認められた。ほとんどの地域では、YLL増加の主要な原因は虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病であったが、多くの場合、地域内のSDIに基づくYLLの実測値と予測値の比には、顕著な不一致が認められた。 サハラ以南のアフリカのすべての国では、感染性疾患、妊産婦、新生児、栄養障害がほとんどのYLLの原因であり、依然としてマラリアやHIV/AIDSが早期死亡の主要原因の国では、YLLの実測値が予測値をはるかに超えていた。 著者は、「年齢標準化死亡率は改善したが、人口増加や高齢化が進んだため、多くの国でNCDによる死亡数が増加しており、これが保健システムへの需要の増加を招いている」とまとめ、「これらの知見は、SDIに基づく死亡のパターンを、より深く研究するための参考になるだろう」としている。

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原発性胆汁性胆管炎に対するオベチコール酸治療に関するプラセボ群を対照とした治験(解説:中村 郁夫 氏)-595

 本論文は、原発性胆汁性胆管炎(従来の病名:原発性胆汁性肝硬変)に対するオベチコール酸の効果を、二重盲検でプラセボを対照群とした12ヵ月間の第III相試験で検討した結果の報告である。 オベチコール酸は、Farnesoid X核内受容体の作動薬である。ウルソデオキシコール酸(UDCA)が十分な効果を示さなかった、あるいは、UDCAの副作用のために内服できなかった217例をランダムに3群に割り付けた。(1)オベチコール酸の容量10mg(10mg群)、(2) オベチコール酸を5mgで開始し可能であれば10mgまで増量する群(5~10mg群)、(3) プラセボ群の3群である。 Primary endpoiont(主要評価項目)は、ALP(アルカリホスファターゼ)値が基準値上限の1.67倍未満で、基礎値の少なくとも15%以上の低下、総ビリルビン値の正常化とした。 オベチコール酸またはプラセボを内服した216例のうち、93%が背景の治療としてUDCAを内服していた。結果としてのPrimary endpointは、5~10mg群で46%、10mg群で47%で達成され、プラセボ群(10%)と比較して有意に高かった(p<0.001)。5~10mg群と10mg群において、プラセボ群と比較して、ALP値の大きな低下(最小二乗平均:-113U/L、-130U/L vs.-14U/L;p<0.001)、および、総ビリルビン値の大きな低下(-0.02 mg/dL、-0.05 mg/dL vs.0.12mg/dL;p<0.001)が認められた。一方、瘙痒感は、オベチコール酸群においてプラセボ群と比べて出現の頻度が高かった(5~10mg群で56%、10mg群で68% vs.プラセボ群で38%)。重篤な有害事象の頻度は、5~10mg群で16%、10mg群で11%、プラセボ群で4%であった。 結論として、原発性胆汁性胆管炎における12ヵ月間のオベチコール酸のUDCAとの併用、あるいは、単独投与により、ALP値および総ビリルビン値の低下がプラセボ群と比べて有意に大きかった。一方で、有害事象の頻度は、オベチコール酸群において多かった。 わが国における原発性胆汁性胆管炎の治療は、UDCAを中心として、さらに、ベザフィブラートや茵陳蒿湯などが用いられている。将来、オベチコール酸も治療薬の1つとなる可能性があると考える。

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