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NAFLDの肝線維化ステージが肝合併症・死亡リスクに影響か/NEJM

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の組織学的スペクトラム全体の死亡や肝臓・肝臓以外のアウトカムの予後は十分に解明されていないという。米国・バージニア・コモンウェルス大学のArun J. Sanyal氏らNASH Clinical Research Network(CRN)は「NAFLD DB2試験」において、NAFLDの中でも肝線維化stageが高い(F3、F4)患者は低い(F0~2)患者に比べ、肝関連合併症や死亡のリスクが高く、F4では糖尿病や推算糸球体濾過量が40%超低下した患者の割合が高いことを明らかにした。研究の成果は、NEJM誌2021年10月21日号で報告された。米国の前向きレジストリ研究 研究グループは、NAFLDのすべての組織学的スペクトラムが含まれる米国の患者集団における、肝線維化の進展度別のアウトカムの評価を目的に、多施設共同前向きレジストリ研究を行った(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所[NIDDK]などの助成を受けた)。 本研究には、NASH CRNのレジストリから2009年12月~2019年4月の期間に登録された患者が選出され、FLINT試験(オベチコール酸とプラセボを比較した無作為化試験)を終了した患者も含まれた。 対象は、肝生検でNAFLDが確認され、48週後までに少なくとも1回の診察を受けた成人患者であった。死亡と他のアウトカムの発生率が、ベースラインの組織学的特徴に基づいて比較された。 主要アウトカムは、全死因死亡、肝代償不全(臨床的に明らかな腹水、脳症、静脈瘤出血)、肝細胞がん、肝臓以外のがん、心血管イベント、脳血管イベントなどとされた。新たな肝代償不全イベントの発生で全死因死亡率上昇 解析には1,773例(平均年齢52歳、女性64%)が含まれ、肝線維化stage(NASH CRN分類)はF4(肝硬変)が167例、F3(架橋線維化[bridging fibrosis])が369例、F0~2(F0:線維化なし、F1:軽度、F2:中等度)が1,237例であった。診断名は、脂肪性肝炎が55%、境界型脂肪性肝炎が20%、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のない脂肪肝が25%だった。 追跡期間中央値4年(IQR:2.1~7.4)の期間に全体で47例(3%)が死亡し、100人年当たりの死亡率は0.57件であった。全死因死亡率は、肝線維化stageが上がるに従って増加し、100人年当たりF0~2で0.32件、F3で0.89件、F4では1.76件であった(F4のF0~2に対するハザード比[HR]:3.9、95%信頼区間[CI]:1.8~8.4、F3のF0~2に対するHR:1.9、95%CI:0.9~3.7)。 また、100人年当たりの肝関連合併症の発生率も、肝線維化stageの上昇に伴って増加した([静脈瘤出血]F0~2:0.00件、F3:0.06件、F4:0.70件、[腹水]0.04件、0.52件、1.20件、[脳症]0.02件、0.75件、2.39件、[肝細胞がん]0.04件、0.34件、0.14件)。 さらに、肝線維化stageがF4の患者はF0~2に比べ、2型糖尿病の発生率が高く(7.53件vs.4.45件/100人年)、推算糸球体濾過量が40%超低下した患者の割合が高かった(2.98件vs.0.97件/100人年)。一方、心イベントや肝臓以外のがんの発生には、肝線維化stageの違いによる差は認められなかった。 年齢、性、人種、およびベースラインの糖尿病、NASH、非アルコール性脂肪肝の有無、組織学的重症度で補正すると、新たな肝代償不全イベント(腹水、脳症、静脈瘤出血)の発生は全死因死亡率の上昇と関連していた(補正後HR:6.8、95%CI:2.2~21.3)。 著者は、「本研究は観察研究であるため、線維化の重症度と全死因死亡との因果関係を証明するものではない」と指摘し、「F3はF0~2に比べ肝代償不全イベントや肝細胞がんの発生率が高かったことから、線維化stageをF3からF2へと1段階下げることで肝代償不全イベントが減少するとの仮説の理論的根拠をもたらし、これを検証するための試験が進行中である」としている。

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汎PPAR作動薬のlanifibranor、活動性NASHに有効/NEJM

 活動性非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者において、汎ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)作動薬lanifibranorの1,200mg、1日1回24週間経口投与は、プラセボと比較して肝線維化が増悪することなく脂肪変性・活動性・線維化(SAF)評価スコアの活動性(SAF-A)が2点以上低下した患者の割合を有意に増加させた。ベルギー・アントワープ大学のSven M. Francque氏ら、lanifibranorの無作為化二重盲検プラセボ対照第IIb相試験「NATIVE試験」の結果を報告した。NASHの治療はアンメットニーズであるが、lanifibranorはNASHの発症に重要な役割を果たす代謝、炎症および線維形成の各経路を調節し、前臨床研究では1種類または2種類のPPARに対する作動薬より高い効果が示唆されていた。今回の結果を受けて著者は、「第III相試験におけるlanifibranorのさらなる評価が期待される」とまとめている。NEJM誌2021年10月21日号掲載の報告。lanifibranor 1,200mg群、800mg群、またはプラセボ群を比較 研究グループは、18歳以上で活動性が高い非肝硬変NASH患者247例を、lanifibranor 1,200mg、800mg、またはプラセボ群に1対1対1の割合に無作為に割り付け、それぞれ1日1回24週間投与した。 主要評価項目は、線維化の悪化を伴わないSAF-Aスコア(肝細胞の風船様変性と炎症性細胞浸潤;スコアの範囲は0~4、スコアが高いほど疾患活動性が高いことを示す)の2ポイント以上の低下。副次評価項目は、NASHの消失と線維化の退縮であった。1,200mg群でプラセボ群より活動性(SAF-Aスコア)が有意に低下 無作為化された247例中、103例(42%)が2型糖尿病、188例(76%)が中等度または高度の線維化を有していた。 線維化の悪化を伴わないSAF-Aスコアの2ポイント以上低下を達成した患者の割合は、lanifibranorの1,200mg群がプラセボ群より有意に高く(55% vs.33%、リスク比[RR]:1.69、95%信頼区間[CI]:1.22~2.34、p=0.007)、800mg群では差はなかった(48% vs.33%、1.45、1.00~2.10、p=0.07)。 lanifibranorの1,200mg群および800mg群はいずれもプラセボ群と比較し、線維化の悪化を伴わないNASH消失率(49%および39%、vs.22%)、NASH悪化を伴わない線維化ステージ1段階以上改善率(48%および34%、vs.29%)、NASH消失かつ線維化ステージ1段階以上改善率(35%および25%、vs.9%)が高率であった。また、lanifibranorの両群で肝酵素値が低下し、ほとんどの脂質、炎症、線維化のバイオマーカーが改善した。 有害事象による投与中止の発現率はすべての群で5%未満であり、群間で類似していた(1,200mg群4%、800mg群5%、プラセボ群4%)。プラセボ群に比べてlanifibranor群で発現率が高かった主な有害事象は、下痢、悪心、末梢性浮腫、貧血、体重増加であった。

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浮腫の見分け方、発症形式と部位を押さえよう!【Dr.山中の攻める!問診3step】第7回

第7回 浮腫の見分け方、発症形式と部位を押さえよう!―Key Point―片側性の下腿浮腫は、深部静脈血栓症の可能性を第一に考える突然発症の浮腫はアナフィラキシーや血管浮腫を想起する薬剤が原因で浮腫を起こすことがある症例:73歳女性主訴)左下肢腫脹現病歴)4日前から左下肢が腫れてきた。膝背部や大腿が椅子に座ると痛む。近くの診療所からリンパ浮腫の疑いと紹介があった。胸痛や歩行時の息切れはない。既往歴)特になし身体所見)バイタルサインは体温:36.4℃、血圧111/59mmHg、心拍数63回/分、呼吸数20回/分、SpO2 95%(室内気)。意識清明、左下肢全体に浮腫と発赤があった。経過)鑑別診断として深部静脈血栓症と蜂窩織炎を考えた。骨盤造影CT検査を行い左総腸骨静脈血栓症と診断した。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!どの部位に浮腫があるか発症形式(時期)病態生理【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】浮腫の部位、発症形式に注目し、病態生理を考える全身性浮腫心不全、肝硬変、腎不全、ネフローゼ症候群などによる低アルブミン血症、甲状腺機能低下症、薬剤(Ca拮抗薬、NSAIDs、ステロイド、シクロスポリン)局所性浮腫口唇(血管浮腫)、上肢(上大静脈症候群)、片側下肢(深部静脈血栓症、蜂窩織炎、リンパ浮腫)発症形式(時期)突然発症(数分以内)アナフィラキシー、血管浮腫急性発症(数日)深部静脈血栓症、蜂窩織炎、急性糸球体腎炎慢性(数ヵ月)心不全、肝硬変、静脈不全病態生理1)患部を指で圧迫する非圧痕性浮腫甲状腺機能低下症、リンパ浮腫圧痕性浮腫fast edema(40秒以内に圧痕が消失)なら低アルブミン血症、slow edema (40秒経っても圧痕が残る)なら心不全、静脈不全2)血栓の有無や静脈不全を見逃さない血栓片側性下腿浮腫では、深部静脈血栓症→肺塞栓の可能性を第一に考える。悪性腫瘍(とくに腺がん)に伴う過凝固が原因で深部静脈血栓症ができることもある。静脈不全見逃されていることが多い。内果の血管拡張、うっ滞性皮膚炎、静脈瘤、足関節付近の色素沈着、下腿潰瘍があれば疑う。3)浮腫の原因は複合的なことが多い1)[例]薬剤(Ca拮抗薬)+静脈不全+塩分過多+長時間の立位図)正常と静脈不全の下肢2)画像を拡大する【STEP3】治療を検討する● 深部静脈血栓症抗凝固療法● 静脈不全塩分制限、下肢挙上、弾性ストッキング● 薬剤性薬剤の中止<参考文献・資料>1)高橋良. 本当に使える症候学の話をしよう. じほう.2020.p.124-154.2)Thai KE, at al. Fitzpatrick’s Dermatology in General Medicine. 7th. 2007.p.1680.

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ブレークスルー感染、死亡・入院リスクが高い因子/BMJ

 英国・オックスフォード大学のJulia Hippisley-Cox氏らは、英国政府の委託で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行の第2波のデータを基に作成した、ワクチン接種後の死亡・入院のリスクを予測するアルゴリズム(QCovid3モデル)の有用性の検証を行った。その結果、ワクチンを接種しても、COVID-19関連の重症の転帰をもたらすいくつかの臨床的なリスク因子が同定され、このアルゴリズムは、接種後の死亡や入院のリスクが最も高い集団を、高度な判別能で特定することが示された。研究の成果は、BMJ誌2021年9月17日号に掲載された。アルゴリズムの妥当性を検証する英国の前向きコホート研究 本研究は、COVID-19ワクチンを1回または2回接種後のCOVID-19関連の死亡・入院のリスクを推定するリスク予測アルゴリズムの妥当性の検証を目的とする、英国の全国的な人口ベースの前向きコホート研究である(英国国立健康研究所[NIHR]の助成を受けた)。 解析にはQResearchデータベースが用いられた。このデータベースには、約1,200万例の臨床研究および薬剤の安全性研究に基づく個々の患者の臨床・薬剤に関するデータが含まれ、COVID-19ワクチン接種、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の検査結果、入院、全身性抗がん薬治療、放射線治療、全国的な死亡・がんのレジストリデータと関連付けられた。 2020年12月8日~2021年6月15日の期間に、COVID-19ワクチンを1回または2回接種した年齢19~100歳の集団(解析コホート)が対象となった。 主要アウトカムはCOVID-19関連死、副次アウトカムはCOVID-19関連入院とされ、ワクチンの初回および2回目の接種後14日から評価が行われた。また、解析コホートとは別の一般診療の検証コホートで、妥当性の評価が実施された。 ワクチンを接種した解析コホート695万2,440人(平均年齢[SD]52.46[17.73]歳、女性52.23%)のうち、515万310人(74.1%)が2回の接種を完了した。COVID-19関連死は2,031人、COVID-19関連入院は1,929人(最終的に446人[23.1%]が死亡)で認められ、2回目の接種後14日以降の発生はそれぞれ81人(4.0%)および71人(3.7%)だった。 最終的なCOVID-19関連死のリスク予測アルゴリズムには、年齢、性別、民族的出自、貧困状態(Townsend剥奪スコア[点数が高いほど貧困度が高い])、BMI、合併症の種類、SARS-CoV-2感染率が含まれた。早期介入の優先患者の選択に有用な可能性 COVID-19関連死の発生率は、年齢および貧困度が上がるに従って上昇し、男性、インド系とパキスタン系住民で高かった。COVID-19関連死のハザード比が最も高い原因別の因子として、ダウン症(12.7倍)、腎移植(慢性腎臓病[CKD]ステージ5、8.1倍)、鎌状赤血球症(7.7倍)、介護施設入居(4.1倍)、化学療法(4.3倍)、HIV/AIDS(3.3倍)、肝硬変(3.0倍)、神経疾患(2.6倍)、直近の骨髄移植または固形臓器移植の既往(2.5倍)、認知症(2.2倍)、パーキンソン病(2.2倍)が挙げられた。 また、これら以外の高リスクの病態(ハザード比で1.2~2.0倍)として、CKD、血液がん、てんかん、慢性閉塞性肺疾患、冠動脈性心疾患、脳卒中、心房細動、心不全、血栓塞栓症、末梢血管疾患、2型糖尿病が認められた。 一方、イベント数が少な過ぎて解析できなかった疾患を除き、COVID-19関連入院にも死亡と類似のパターンの関連性がみられた。 初回と2回目の接種後で、死亡・入院との関連性が異なるとのエビデンスは得られなかったが、2回目以降のほうが絶対リスクは低かった(初回接種のみと比較した2回目接種の死亡ハザード比[HR]:0.17[95%信頼区間[CI]:0.13~0.22]、入院HR:0.21[0.16~0.27])。 検証コホートでは、QCovid3アルゴリズムにより、COVID-19関連死までの期間の変動の74.1%(95%CI:71.1~77.0)が説明可能であった。D統計量は3.46(95%CI:3.19~3.73)、C統計量は92.5と、判別能も良好だった。このモデルの性能は、ワクチンの初回と2回目の接種後も同程度であった。また、COVID-19関連死のリスクが高い上位5%の集団では、70日以内のCOVID-19関連死を同定する感度は78.7%だった。 著者は、「このリスク層別化の方法は、公衆衛生上の施策の推進に役立ち、早期介入の対象となる患者の優先的な選択に有用となる可能性がある」としている。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 消化器(肝胆膵)

第1回 ウイルス性肝炎第2回 アルコール性肝疾患とNAFLD第3回 自己免疫性肝炎の原発性胆汁性胆管炎第4回 肝硬変第5回 急性胆嚢炎・胆管炎第6回 急性膵炎第7回 慢性膵炎 IPMN 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医11名を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。消化器の肝胆膵については、東京医科歯科大学の山田徹先生がレクチャー。最新のガイドラインに合わせて、変更された標準治療など要点を押さえます。肝胆膵のいずれ疾患も、アルコール性か否かによって異なる治療法を整理します。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 ウイルス性肝炎ウイルス性肝炎では、まず最も多いB型とC型を解説。B型肝炎は各種抗原抗体と一般的な感染パターンを相関図で整理。C型肝炎は、新しい直接型抗ウイルス薬(DAA)の開発が進み、慢性肝炎・代償期肝硬変だけでなく、非代償期肝硬変を含むすべてが治療対象となっています。最新のガイドラインに記載されている重症度別の第1選択薬を押さえます。日常臨床ではあまり見られない、A型・D型・E型肝炎についてもポイントを確認。第2回 アルコール性肝疾患とNAFLDウイルス性や自己免疫性が除外された肝疾患は、アルコール性と非アルコール性に分けられます。非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLDの日本での有病率はおよそ30%で、現在増加傾向。肥満でない人にも多いのがポイント。NAFLD のうち、NASHは肝硬変への進展や肝がんの発生母地になるため、臨床的に重要な疾患概念です。バイオマーカーは未確定で、鑑別には原則肝生検が必要です。肝生検を行う目安を確認します。第3回 自己免疫性肝炎の原発性胆汁性胆管炎自己免疫性肝炎AIHは中年以降の女性に好発する肝疾患で、約30%に慢性甲状腺炎やシェーグレン症候群といった他の自己免疫性疾患を合併。AIHの10~20%に原発性胆汁性胆管炎PBCを合併したオーバーラップ症候群がみられます。PBCも中年以降の女性に好発し、他の自己免疫性疾患と合併する場合があります。ともに無症状から非特異的な症状が多く、診断のポイントとなる血液検査と病理検査が問題を解くカギです。第4回 肝硬変肝硬変の主な原因は、これまではC型肝炎でしたが、直接型抗ウイルス薬(DAA)の進歩により減少が予想されており、対してNASHの割合が増加傾向です。特徴的な身体所見を確認します。診断と予後予測には肝線維化を評価。肝硬変は低栄養や低血糖に陥りやすく、死亡率増加や各種合併症につながります。合併症となる食道静脈瘤、肝性脳症、腹水、特発性細菌性腹膜炎、肝腎症候群、肝細胞がんの各治療法も試験で問われるポイント。第5回 急性胆嚢炎・胆管炎急性胆嚢炎と急性胆管炎を比較しながら解説します。まず原因に胆石性の有無を確認することが重要。無石胆嚢炎は、症状は胆石性胆嚢炎と同じですが、外傷、心臓手術後、敗血症など高ストレス下で発症し、重症化しやすく死亡率が高いため、早期発見・早期治療が必須。急性胆嚢炎の画像診断は、腹部エコーが第1選択。診断基準となる数値を押さえます。急性胆嚢炎・胆管炎の治療は、抗菌薬・ドレナージ・手術の使い分けがポイント。第6回 急性膵炎急性膵炎の2大原因はアルコールと胆石。強い腹痛を伴う疾患で、約7割が心窩部痛です。重症度診断のスコアとともに、重症垂炎を除外するためのHAPSというスコアも有用です。発症早期の多量輸液が死亡率を下げるため重要。治療については、抗菌薬や蛋白分解酵素阻害薬の有効性について、最新の見解を整理します。膵周囲の液体貯留の定義である「改訂Atlanta分類」を踏まえて、感染性膵壊死の治療法を押さえます。第7回 慢性膵炎 IPMN慢性膵炎の原因はアルコールが68%を占めています。飲酒と喫煙がリスク因子で、原因が不明瞭な場合は遺伝子検査の対象になります。試験で出題されやすい画像診断では、膵石・石灰化、主膵管不整拡張といった所見が重要。無症状で偶発的に見つかることが多い膵管内乳頭粘液性腫瘍IPMN。画像診断はMRCPが第1選択。浸潤がんや悪性所見を見落とさないように、MCNやSCNとの鑑別ポイントを確認します。

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肝発がんのリスク評価で共同声明/日本肝臓学会・日本糖尿病学会

 5月20日~22日まで完全WEB開催で開催された「第64回 日本糖尿病学会年次学術集会」(会長:戸邉 一之氏)の中で「第7回 肝臓と糖尿病・代謝研究会」(会長:同)が22日に併催された。その中で、日本肝臓学会(理事長:竹原 徹郎氏)と日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏)の共同声明が発表された。 両学会は 2012 年より合同で委員会を設置し、研究会の開催のほか、共同研究として糖尿病外来における肝がんの発生実態の調査、糖尿病外来における肝がん高危険群の同定を目的とし、糖尿病外来における肝細胞がん発生の実態調査を行ってきた。 そこで、今回の研究会で両学会理事長による「肝がんのリスク評価指標に関する共同声明」が発表された。糖尿病患者で注意すべきがんの種類 糖尿病罹患によって全がん罹患のリスクは、1.2倍になるとされ、臓器別では、肝がん1.97倍、膵がん1.85倍、大腸がん1.4倍の順にリスクが高いことが報告され、悪性新生物は、糖尿病外来において注意すべき合併疾患とみなされていること、そして、最近ではウイルス肝炎を合併しない肝細胞がんが急増しており、背景に肥満・糖尿病患者の増加があると考えられている(日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会による調査報告)。今後、糖尿病外来診療において、肥満関連肝障害およびそれを母体とした肝細胞がんの発生は、注意を払うべき合併疾患となりうることが提起されている。「FIB-4インデックス」が肝発がんのリスク評価に有効 糖尿病外来における肝がんの発生実態の調査、糖尿病外来における肝がん高危険群の同定を目的とし、両学会は2012年より合同で委員会を設置し、「糖尿病外来における肝細胞がん発生の実態調査を行ってきた」と報告。これを受けて、下記のように声明を行った。「糖尿病学会・肝臓学会双方の研修指定病院において通院歴のある2型糖尿病患者のうち、通院中に肝がんを発症したものを調査した。その結果、糖尿病患者における肝がんの発生率は、年0.1%程度であることが判明した。肝発がんの危険因子について分析したところ、『FIB-4インデックス』と呼ばれる肝臓の線維化を示す指標がリスク評価に極めて有効である事が判明した。有意な肝線維化を示す2.67以上で年発がん率0.6%、肝硬変を示唆する3.5以上で1.0%の高危険群を囲い込むことができる。FIB-4インデックスは、年齢、AST、ALT、血小板という日常臨床で用いられる項目のみで構成されており、日本肝臓学会のホームページでも計算できる」 糖尿病患者における今後の肝がん、肝炎の合併症の診療に活用いただきたい。

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認知症、脳・心血管疾患、1型糖尿病などがCOVID-19重症化リスクに追加/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)は、3月29日、成人において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクとなる病状リストにいくつかの新しい項目を追加した。以前から可能性が指摘されていた、「1型糖尿病(2型糖尿病に追加)」「中等度~重度の喘息」「肝疾患」「認知症またはその他の神経学的疾患」「脳卒中・脳血管疾患」「HIV感染症」「嚢胞性線維症」「過体重(肥満に追加)」のほか、新しく「薬物依存症」がリストアップされた。新しいリストでは、特定のカテゴリごとに病状が記載されている。COVID-19重症化リスクとなる成人の病状リスト(アルファベット順)・がん・慢性腎臓病・慢性肺疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(中等度~重度)、間質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺高血圧症など・認知症またはその他の神経学的疾患・糖尿病(1型または2型)・ダウン症・心臓病(心不全、冠状動脈疾患、心筋症、高血圧など)・HIV感染・免疫不全状態(免疫力の低下)・慢性肝疾患:アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患[NAFLD]、とくに肝硬変、肝線維化など・過体重と肥満:BMI>25(過体重)、BMI>30(肥満)、BMI>40(重度の肥満)・妊娠・鎌状赤血球症またはサラセミアなどの異常ヘモグロビン症・喫煙(現在または以前)・臓器または造血幹細胞の移植・脳卒中または脳血管障害・薬物依存症(アルコール、オピオイド、コカインの中毒など) CDCは、これらの病状がある人は、周りの人の協力を得ながら注意深く安全に管理することが重要だとし、「現在の処方・治療計画の継続」「(病状に対応できる)常温保存食品の用意」「病状悪化のトリガーを避ける」「ストレスへの対処」「異変があった場合の迅速な救急要請」などを呼び掛けている。

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特発性門脈圧亢進症〔IPH:Idiopathic portal hypertension〕

1 疾患概要■ 概念・定義特発性門脈圧亢進症(idiopathic portal hypertension:IPH)とは、肝硬変、肝外門脈閉塞、肝静脈閉塞、およびその他の原因となるべき疾患を認めずに門脈圧亢進症を呈するもので、肝内末梢門脈枝の閉塞、狭窄により門脈圧亢進症に至る症候群をいう。なお、門脈圧亢進症とは門脈系の血行動態の変化により、門脈圧(正常値100~150mmH2O)が常に200mmH2O(14.7mmHg)以上に上昇した状態である。■ 疫学IPHは比較的まれな疾患で、年間受療患者数(2004年)は640~1,070人と推定され、人口100万人当たり7.3人の有病率と推定されている(2005年全国疫学調査)。男女比は約1:2.7と女性に多く、発症のピークは40~50歳代で平均年齢は49歳である。欧米より日本にやや多い傾向があり、また都会より農村に多い傾向がある。■ 病因本症の病因はいまだ不明であるが、肝内末梢門脈血栓説、脾原説、自己免疫異常説などがある。中年女性に多発し、血清学的検査で自己免疫疾患と類似した特徴が認められ、自己免疫疾患を合併する頻度も高いことからその病因として自己免疫異常、特にT細胞の自己認識機構に問題があると考えられている。■ 症状重症度に応じ食道胃静脈瘤、門脈圧亢進症性胃腸症、腹水、肝性脳症、汎血球減少、脾腫、貧血、肝機能障害などの症候、つまり門脈圧亢進症の症状を呈す。通常、肝硬変に至ることはなく、肝細胞がんの母地にはならない。■ 予後IPH患者の予後は静脈瘤(出血)のコントロールによって規定され、コントロール良好ならば肝がんの発生や肝不全死はほとんどなく、5年および10年累積生存率は80~90%と極めて良好である。また、長期観察例での肝実質の変化は少なく、肝機能異常も軽度である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ IPH診断のガイドラインIPHの診断基準は、厚生労働省特定疾患:門脈血行異常症調査研究班の定めた「門脈血行異常症ガイドライン2018年改訂版」1)のIPH診断のガイドラインに則る。1)一般検査所見(1)血液検査 1つ以上の血球成分の減少を示し、特に血小板数減少は顕著である。(2)肝機能検査正常または軽度異常が多い。(3)内視鏡検査食道胃静脈瘤を認めることが多い。門脈圧亢進症性胃腸症や十二指腸、胆管周囲、下部消化管などにいわゆる異所性静脈瘤を認めることもある。2)画像検査所見(1)超音波、CT、MRI、腹腔鏡検査a)巨脾を認めることが多い。b)肝臓は病期の進行とともに、辺縁萎縮と代償性中心性腫大となる。c)肝臓の表面は平滑なことが多いが、全体に波打ち状(大きな隆起と陥凹)を呈するときもある。d)結節性再生性過形成や限局性結節性過形成などの肝内結節を認めることがある。e)脾動静脈は著明に拡張している。f)著しい門脈・脾静脈血流量の増加を認める。g)二次的に門脈に血栓を認めることがある。(2)上腸間膜動脈造影門脈相ないし経皮経肝門脈造影肝内末梢門脈枝の走行異常、分岐異常を認め、その造影能は不良で、時に門脈血栓を認めることがある。(3)肝静脈造影しばしば肝静脈枝相互間吻合と「しだれ柳様」所見を認める。閉塞肝静脈圧は正常または軽度上昇にとどまる。(4)Scintiphotosplenoportography (SSP)SSPは経皮的に脾臓より放射性物質を注入し、その動態で最も生理的に近い脾静 脈血行動態のdynamic imageが得られるだけではなく、そのデータ処理にてさまざまな情報が得られる検査法である。SSPにより門脈血に占める脾静脈血の割合を求めると、正常では18.6%、慢性肝炎では48.0%、肝硬変では47.8%、IPHでは73.8%であった2)。つまりIPHでは、脾静脈血流が著明に増加している。3)病理検査所見(1)肝臓の肉眼所見時に萎縮を認める。表面平滑な場合、波打ち状や凹凸不整を示す場合、変形を示す場合がある。割面は被膜下の実質の脱落をしばしば認める。門脈に二次性の血栓を認める例がある。また、過形成結節を認める症例がある。肝硬変の所見はない。(2)肝臓の組織所見肝内末梢門脈枝の潰れ・狭小化、肝内門脈枝の硬化症および側副血行路を呈する例が多い。門脈域の緻密な線維化を認め、しばしば円形の線維性拡大を呈する。肝細胞の過形成像がみられ結節状過形成を呈することがあるが、周囲に線維化はなく、肝硬変の再生結節とは異なる。(3)脾臓の肉眼所見著しい腫大を認める。(4)脾臓の組織所見赤脾髄における脾洞(静脈洞)の増生、細網線維や膠原線維の増加、脾柱におけるGamna-Gandy結節を認める。本症は症候群であり、また病期により病態が異なることから、一般検査所見、画像検査所見、病理検査所見によって総合的に診断されるべきである。確定診断は肝臓の病理組織学的所見の合致が望ましい。除外疾患は肝硬変症、肝外門脈閉塞症、バッド・キアリ症候群、血液疾患、寄生虫疾患、肉芽腫性肝疾患、先天性肝線維症、慢性ウイルス性肝炎、非硬変期の原発性胆汁性胆管炎などが挙げられる。■ 重症度分類「門脈血行異常症ガイドライン2018年改訂版」1)ではIPHの重症度分類も定められている。重症度I  診断可能だが、所見は認めない。重症度II 所見は認めるものの、治療を要しない。重症度III所見を認め、治療を要する。重症度IV身体活動が制限され、介護も含めた治療を要する。重症度V 肝不全ないし消化管出血を認め、集中治療を要する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療適応IPHの治療対象は、門脈圧亢進症に伴う食道胃静脈瘤、脾機能亢進に伴う汎血球滅少症、脾腫である。治療法としては、食道胃静脈瘤症例では内視鏡的治療、塞栓術、手術療法など、内科的治療が難しい脾腫・脾機能亢進症例では塞栓術または手術療法を施行する。■ 食道静脈瘤1)食道静脈瘤破裂では輸血、輸液などで循環動態を安定させながら、内視鏡的静脈瘤結紮術(または内視鏡的硬化療法)にて一時止血を行う。内視鏡的治療が施行できない場合や止血困難な場合はバルーンタンポナーデ法を施行し、それでも止血できない場合は緊急手術も考慮する。2)一時止血が得られた症例では、全身状態改善後、内視鏡的治療や待期手術を考慮する。3)未出血の症例(予防例)では、「門脈圧亢進症取扱い規約【第3版】」3)に従って静脈瘤所見を判定し、F2、3またはRC陽性の場合、内視鏡的治療や手術を考慮する。4)手術療法としては、選択的シャント手術として選択的遠位脾腎静脈吻合術(DSRS)や、直達手術として下部食道離断+脾摘+下部食道・胃上部血行郭清を加えた食道離断術または内視鏡的治療と併用して脾摘術+下部食道・胃上部の血行郭清(ハッサブ手術)を行う。■ 胃静脈瘤1)食道静脈瘤と連続して存在する噴門部静脈瘤に対しては食道静脈瘤の治療に準じて対処する。2)孤立性胃静脈瘤破裂例では輸血、輸液などで循環動態を安定させながら、内視鏡的硬化療法にて一時止血を行う。内視鏡的治療が施行できない場合や止血困難な場合はバルーンタンポナーデ法を施行し、それでも止血できない場合はバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:B-RTO)などの塞栓術や緊急手術も検討する。 3)一時止血が得られた症例では、全身状態改善後、内視鏡的治療追加やB-RTO などの塞栓術、待期手術(DSRSやハッサブ手術)を検討する。4)未出血症例(予防例)では、胃内視鏡所見を参考にして内視鏡的治療、塞栓術、手術(DSRSやハッサブ手術)を検討する。■ 脾腫、脾機能亢進症巨脾に合併する症状(疼痛、圧迫)が著しい場合および脾機能亢進症(汎血球減少)による高度の血球減少(血小板5×104以下、白血球3,000以下、赤血球300×104以下のいずれか1項目)で出血傾向を認める場合は部分的脾動脈塞栓術(PSE)または脾摘術を検討する。PSEは施行後に血小板数は12~24時間後に上昇し始め、ピークは1~2週間後である。2ヵ月後に安定し、長期的には前値の平均2倍を維持する。4 今後の展望IPHの原因はいまだ解明されていない。しかし、静脈瘤のコントロールが良好ならば、予後は良好であるため静脈瘤のコントロールが重要である。予後が良いため長期的に効果が持続する手術療法が施行されている。近年、低侵襲手術として腹腔鏡下手術が行われており、食道胃静脈瘤に対する手術も腹腔鏡下手術が中心となっていくであろう。5 主たる診療科消化器外科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病センター 特発性門脈亢進症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 門脈血行異常症ガイドライン 2018年改訂版. 2018.2)吉田寛. 日消誌. 1991;88:2763-2770.3)日本門脈圧亢進症学会. 門脈圧亢進症取扱い規約 第3版. 金原出版.2013.公開履歴初回2021年03月29日

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非代償性肝硬変へのアルブミン、予後を改善せず/NEJM

 非代償性肝硬変の入院患者の治療において、目標血清アルブミン値を30g/L以上に設定したアルブミン投与は、英国の現在の標準治療と比較して感染症や腎機能障害、死亡の発生を改善せず、重症度の高い有害事象や生命を脅かす重篤な有害事象の頻度が高いことが、同国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのLouise China氏らが実施した「ATTIRE試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2021年3月4日号に掲載された。非代償性肝硬変患者では、感染症や全身性炎症の亢進が臓器障害や死亡の原因となる。前臨床試験ではアルブミンの抗炎症作用が示されているが、検証のための大規模臨床試験は行われていなかった。英国35病院の非盲検無作為化試験 本研究は、非代償性肝硬変の入院患者において、目標血清アルブミン値を30g/L以上とし、20%ヒトアルブミン溶液を連日静注することで、標準治療に比べ感染症や腎機能障害、死亡の発生率が低下するかを検証する非盲検無作為化試験であり、2016年1月~2019年6月の期間にイングランド、スコットランド、ウェールズの35の病院で患者登録が行われた(英国Health Innovation Challenge Fund[HICF]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、非代償性肝硬変による急性合併症の診断で入院し、入院後72時間以内(早期の投与は後期の投与よりも有効である可能性が高いため)の血清アルブミン値が30g/L未満で、無作為化の時点で入院期間が5日以上と予測される患者であった。 被験者は、アルブミン値35g/L以上での維持を目標に20%ヒトアルブミン溶液の投与(100mL/時)を最長で14日間、あるいは退院のいずれか早い時点まで受ける群、または標準治療を受ける群に無作為に割り付けられた。治療は入院後3日以内に開始された。 主要エンドポイントは、入院後3~15日または退院日(15日より前の場合)に発生した新規の感染症(原因は問わない)、腎機能障害、死亡の複合であった。複合主要エンドポイント:29.7% vs.30.2%、個々の要素にも差はない 777例が無作為化の対象となり、アルブミン群に380例(平均年齢[±SD]53.8±10.6歳、女性123例[32.4%])、標準治療群には397例(53.8±10.7歳、104例[26.2%])が割り付けられた。 肝硬変の原因は、アルコールがアルブミン群91.3%、標準治療群88.2%で、C型肝炎がそれぞれ6.3%および8.8%、非アルコール性脂肪性肝疾患が6.8%および7.3%であった。全体では、26.4%がアルコール離脱の治療を受けており、24.9%がアルコール性肝炎で、平均アルブミン値は23.2±3.7g/Lであった。試験期間中の平均入院日数は、アルブミン群が8日(IQR:6~15)、標準治療群は9日(6~15)だった。 標準治療群の49.4%がアルブミンの投与を受けず、試験期間中の患者1例当たりのアルブミン総投与量中央値は、アルブミン群が200g(IQR:140~280)であったのに対し、標準治療群は20g(0~120)であった(補正後平均群間差:143g、95%信頼区間[CI]:127~158.2)。アルブミン群は、3~15日目の期間の平均アルブミン値が30g/Lを超えたが、標準治療群が30g/Lを超えた日はなかった。 intention-to-treat解析では、主要エンドポイントのイベントが発生した患者の割合はアルブミン群が29.7%(113/380例)、標準治療群は30.2%(120/397例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後オッズ比[OR]:0.98、95%CI:0.71~1.33、p=0.87)。また、退院時または15日目でデータを打ち切りとする生存時間解析を行ったところ、同様に、両群間に有意な差はみられなかった(ハザード比[HR]:1.04、95%CI:0.81~1.35)。 主要エンドポイントの個々の構成要素は、いずれも両群間に有意な差はなかった(新規感染症:アルブミン群20.8% vs.標準治療群17.9%、補正後OR:1.22[95%CI:0.85~1.75]、腎機能障害:10.5% vs.14.4%、0.68[0.44~1.11]、死亡:7.9% vs.8.3%、0.95[0.56~1.59])。 重症度の高い有害事象(Grade3:アルブミン群28例、標準治療群11例)および生命を脅かす重篤な有害事象(Grade4:17例、13例)の頻度は、アルブミン群が標準治療群よりも高かった。とくに、アルブミン群では重篤な肺水腫/体液過剰(アルブミン群23例、標準治療群8例)が高頻度に認められた。 著者は、「これらのデータは、肝硬変患者におけるアルブミン投与の再評価の必要性を支持する」としている。

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『NAFLD/NASH診療ガイドライン2020』発刊―肝線維化の早期発見へ

 日本消化器病学会と日本肝臓学会が合同制作した『NAFLD/NASH診療ガイドライン2020』が2020年11月に発刊された。今回5年ぶりの改訂を迎えたNAFLD/NASH診療ガイドラインには、非ウイルス性肝疾患、とくに非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の増加を背景とした診療の進歩が取り入れられている。そこで今回、作成委員長を務めた徳重 克年氏(東京女子医科大学消化器病センター消化器内科 教授・講座主任)にNAFLD/NASH診療ガイドラインの改訂ポイントや活用方法を伺った。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020、非専門医にも活用意義あり 今回のNAFLD/NASH診療ガイドライン改訂における注目ポイントは、NAFLDの進展に深く関わっている『肝線維化進展例の絞り込み』『脳・心血管系疾患リスクの絞り込み』に関するフローチャートやClinical Question(CQ)が追加された点である。 NAFLD/NASHの予後や肝硬変への病態進展に影響を及ぼす肝線維化は、診断時に肝生検を要するなど非専門医による診断が難しく取りこぼしの多い病態であった。しかし、肝線維化の有病率は日本でもNAFLDの増加に比例し、線維化ステージ3以上のNAFLDは2016年時点で66万人、2030年では99万人に達すると予測されているくらい深刻な状況である(BQ1-2:NAFLD/NASHの有病率は増加しているか?)。また、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病、高齢化が線維化進展のリスクであることから、このような患者を診察する非専門医にも「NAFLD/NASH診療ガイドラインを役立ててほしい」と徳重氏は話した。 そこで、今回のNAFLD/NASH診療ガイドライン2020より肝線維化進展例の絞り込みフローチャートを非専門医向け(1)と専門医向け(2)の2種類設けることで、それぞれの視点で線維化を評価できるようになっている。今回のフローチャート作りでは「肝線維化を拾い上げ、早期治療に介入できることで肝硬変や肝がんへの進展を抑え込む」ことを目的としているため、非専門医と専門医の評価方法を分けることで評価時の負担軽減につながる工夫もなされている。たとえば、評価時のネックになっていたエラストグラフィや肝生検を、かかりつけ医らによる1次スクリーニングではFIB-4 indexや線維化マーカー(ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7S…)に留めている。これについて、「FIB-4 indexは血液検査の4項目(AST、ALT、血小板数、年齢)から算出されたデータを基に線維化の進展を評価する方法。肝線維化の進展を調べるのに肝生検を全例に実施するのは現実的ではないが、このスコアリングシステムを用いれば、おおよその予後をステージ区分できたり、肝生検実施の絞り込みを行ったりするのに役立つ。さらには非専門医が専門医へコンサルテーションする手立てにも有用」と同氏はこの評価基準に期待を示した。一方で、「80歳以上の高齢者やアルコール性肝疾患はスコアの整合性がとれないためFIB-4 indexの使用は控えたほうが良い」とデメリットも挙げた(CQ3-3:NAFLD/NASH患者の肝線維化進行度の評価に血液学的バイオマーカーおよびスコアリングシステムは有用か?)。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020では心血管リスク考慮のフローチャートが追加 NAFLD/NASH診療ガイドライン2020の第5章『予後、発癌、follow up』のBackground Question(BQ)で述べられているように、NAFLDでは心血管イベントのリスクが増加すると多数報告されている。これを踏まえ、肝線維化の程度に応じ、肝関連疾患(肝硬変・肝がん)だけではなく心血管イベントなどを考慮したフォローが必要であることが明記、フローチャートが追加された(CQ5-1 NAFLD/NASHのfollow upは、どのように行うのが適当か?)。これについては、「心血管リスクが現段階でなかったとしても、前述のFIB-4 indexを活用して2~3年ごとに確認を行ってほしい」と説明した。SGLT2阻害薬やGLP-1アナログほか、将来に期待する薬剤多数 NASH症例は患者の約50%以上が肥満である。それを逆手にとり、現在では体重減少作用のあるSGLT2阻害薬や糖尿病治療薬GLP-1アナログを使用したNAFLDに対する治験が進行中である。SGLT2阻害薬は血液生化学検査での改善や脂肪肝の減少が見られることからNAFLD/NASH患者に対し弱い推奨(CQ4-5 SGLT2阻害薬はNAFLD/NASHに有用か?)、GLP-1アナログは血液生化学検査や肝組織検査でも有用性が示されているもののデータ不十分なため、現時点では糖尿病を有するNASH患者において、弱い推奨となっている(CQ4-6 GLP-1アナログ、DPP-4阻害薬などのインクレチン関連薬はNAFLD/NASHに有用か?)。今後、多数例での検討結果が期待される。 このほか、将来性のある薬剤として、高脂血症治療剤ペマフィブラート(商品名:パルモディア)をはじめ14品目の臨床研究が進行中である。同氏は「ペマフィブラートは国内治験のサブ解析でも肝機能改善効果が得られているので、脂質異常症を併存する患者に使用するのは有用ではないか」とコメントした。NAFLD/NASHの線維化が進行した肝がんスクリーニングに課題 NAFLD/NASHの線維化が進行すれば肝がんを発症しかねないが、その発症率の少なさや医療経済的な側面が壁となり全症例への肝がんスクリーニングはそぐわないという。それゆえ、これまで同氏が述べてきたような線維化の早期発見や線維化進展抑制のための治療が功を奏する。“沈黙の臓器”の所以ともいえる自覚症状なき肝臓の線維化。その進展食い止めの重要性を強調してきた同氏は、「ぜひ、肝線維化の理解を深めてもらいたい」と述べるとともに「より簡便な肝がんスクリーニング方法の確立を目指したい」と締めくくった。

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第25回 その吐血、緊急内視鏡は必要ですか?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)上部消化管出血を疑うサインを知ろう!2)緊急内視鏡の判断を適切に行えるようになろう!【症例】45歳男性。自宅で洗面器1杯分の吐血を認めたため、両親の運転する車で救急外来を受診した。独歩可能な状態で、その後吐血は認めていない。どのようなマネジメントが適切だろうか?●受診時のバイタルサイン意識清明/JCS血圧128/51mmHg脈拍95回/分(整)呼吸20回/分SpO297%(RA)体温36.0℃瞳孔3/3 +/+既往歴高血圧内服薬定期内服薬なしはじめに吐血を主訴に救急外来を受診する患者さんは多く、救急外来が血の海になることも珍しくありません。バイタルサインの管理、内視鏡のタイミング、輸血のタイミングなど悩んだ経験があるのではないでしょうか?今回はまず押さえておくべき上部消化管出血の管理についてまとめておきます。上部消化管出血を疑うサインとは新鮮血の吐血やコーヒー残渣様の嘔吐を認める場合には、誰もが上部消化管出血を疑うと思いますが、それ以外にはどのような場合に疑うべきでしょうか。黒色便、鉄欠乏性貧血などは有名ですね。救急外来などの外来で見逃しがちなのが、訴えがはっきりしない場合です。脱力など自宅で動けない、元気がない、倦怠感などの主訴で来院した場合には、消化管出血に代表される出血性病変を考えるようにしましょう。その他、急性冠症候群、カリウムやカルシウムなどの電解質異常、そして敗血症や菌血症を考えるとよいでしょう。[失神・前失神を見逃すな]失神は以前に「第13回 頭部外傷その原因は?」でも取り上げましたが、診察時には状態は安定しており重症度を見誤りがちです。しかし、心血管性失神を見逃してしまうと致死的となり得ます。また、出血に伴う起立性低血圧も対応が遅れれば、予後はぐっと悪くなってしまうため必ず出血源を意識した対応が必要になります。ちなみに、前失神は失神と同様に危険なサインであり、完全に意識を失っていなくても体内で起こっていることは同様であり軽視してはいけません。意識を失ったか、失いそうになったかは必ず確認しましょう。緊急内視鏡の適応は?目の前の上部消化管出血疑い患者さんの内視鏡はいつ行うべきでしょうか?ショックバイタルでマズい場合には誰もが緊急内視鏡が必要と判断できると思いますが、本症例のように、一見するとバイタルサインが安定している場合には意外と判断は難しいものです。いくつかの指標が存在しますが、今回は“Glasgow Blatchford score(GBS)”(表1)を覚えておきましょう。GBS≦1の場合には入院の必要性はなく、緊急での対応は一般的には不要です1,2)。前述した通り、失神は重要なサインであり、点数も2点と黒色便よりも高く設定されています。失神を認める上部消化管出血は早期の内視鏡治療が必要と覚えておきましょう。1分1秒を争うわけではありませんが、血圧が普段よりも低めであるが故に止まっているだけですので、処置を行うことなく帰宅の判断はお勧めできません。表1  Glasgow Blatchford score(GBS)画像を拡大するちなみに、Hb値は濃度であり、また早期に変化は認められないため、Hb値が問題ないからと出血はたいしたことないと判断してはいけません。黒色便を認める場合には、数日の経過が経っていることが多く、Hb値も普段よりも低下しています。GBSも2点以上となりますが、即刻内視鏡なのか、24時間以内に内視鏡なのか、より具体的な緊急度は、その他バイタルサインやNSAIDs、抗血栓薬などのリスク因子も考慮し判断します。[抗血栓薬内服中の患者ではどうする?]絶対的な指標はありませんが、頭部外傷患者の対応と同様に、内服しているから緊急かというとそうではありません。しかし、リスクの1つではあるため、具体的な処方薬と用量、内服している理由、効果の評価(PT-INRなど)などと共に慎重な経過観察が必要となります。抗血栓薬を止めるのは簡単ですが、そのおかげで脳梗塞などを引き起こしてしまっては困りますよね。明らかな出血を認めている場合に内服を中止することはもちろんですが、その後の具体的な対応をきちんと決めておく必要があります。GBS以外の有名なリスクスコアに“AIMS65”(表2)がありますが、それにはPT-INRの項目が含まれており、緊急度に関わるとされます3)。また、PT-INRが1.5未満であってもDOAC(Direct oral anticoagulants)内服中の患者では、早期の内視鏡が推奨されています。そのような理由から、抗血栓薬を内服している患者さんでは、早期の内視鏡(24時間以内)を行うのが理想的でしょう。※GBSもAIMS65も覚えるのは大変ですよね。私は“MDCalc”というアプリをスマホに入れて計算しています。表2 AIMS65画像を拡大する現実問題として、夜間や時間外などに来院した患者の内視鏡をすぐに行うのか、一晩様子をみてOKなのかどうかを判断する必要があります。上記の内容を頭に入れつつ、施設毎の対応を構築しておきましょう。消化器内科医師などがいつでもすぐに対応可能な施設であれば、GBS≧2でも輸液や輸血でバイタルサインが安定している場合には一晩待てるかもしれませんが、そうではない場合には、「GBSで◯点以上の場合」、「肝硬変患者の吐血の場合」、「抗血栓薬を内服している場合」には緊急で行うなど、具体的なプランを立てておくとよいでしょう。スコアは絶対的なものではありませんが、GBSやAIMS65などを意識しておくと、確認すべき項目を見落とさなくなるでしょう。失神の有無は前述の通り重要ですし、抗血栓薬などの影響から凝固線溶機能に異常を来している場合には拮抗薬など追加の対応が必要なこともありますからね。最後に、上部消化管出血に伴い緊急内視鏡の判断をした場合には、気管挿管など気道の管理が必要ないかは必ず意識してください。ショックや重度の意識障害は気管挿管の適応であり、バイタルサインが不安定な場合には確実な気道確保目的の気管挿管が必須となります。慌てて内視鏡室へ移動し、不穏になり急変、誤嚥して酸素化低下などは避けなければなりません。救急外来で人数をかけ対応することができればベストですが、どうしても少ない人数で対応しなければならない場合には、確実な気道確保を行い万全の状態で内視鏡を行うようにしましょう。まとめ失神・前失神を伴う上部消化管出血は緊急性が高い!GBSやAIMS65を参考に、患者背景・薬の内服理由も考慮し対応を!緊急内視鏡を行う場合には、気管挿管など気道管理の徹底を!1)Blatchford O, et al. Lancet. 2000;356:1318-1321.2)Stanley AJ, et al. BMJ. 2017;356:i6432.3)Saltzman JR, et al. Gastrointest Endosc. 2011;74:1215-1224.

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治療フローが様変わり、「肝硬変診療ガイドライン2020」の変更点とは

 肝硬変の非代償期と聞けば誰しもが諦めていたものだが、時代遅れと言われぬよう、この感覚をアップデートさせねばならないようだー。2020年11月、『肝硬変診療ガイドライン2020(改定第3版)』が発刊された。第2版が発刊された2015年から5年もの間に肝硬変治療に関する知見が数多く報告され、治療法は目まぐるしく変化している。そのため、海外の最新治療ガイドライン(GL)と齟齬がないように、かつ日本の実地診療に即したフローとなるよう留意し、日本肝臓学会と日本消化器病学会が対等の立場で初めて合同作成した。今回、その作成委員長を務めた吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器・代謝内科 教授)に非専門医もおさえておくべき変更点やGLの活用方法についてインタビューした。肝硬変症状、プライマリケアでも早期発見を 今回の改訂において、“実地医家(プライマリケア医)にも使いやすい”を基本に作成を進めたと話した吉治氏。同氏によると、肝硬変は肝臓専門医による診療だけではなく、実地医家による日々の診療からの気付きが重要だという。「これまで非代償期の患者は予後不良で治療も困難であった。しかし、肝硬変は非代償期からも可逆性である事が明らかとなると共に、この5~10年の間に新薬が次々と登場し肝硬変治療に対する概念が変わったことで、非代償期を含めた肝硬変を非専門医にも診察してもらう意味がある」と説明した。 今回のフローチャートの見やすさや検査項目の算出のしやすさは、そんな状況変化を反映させ刷新しており、肝硬変診断のフローチャートの身体所見に『黄疸』『掻痒感』が追加されたのもその一例である。同氏は「黄疸は進行例で発見されることが多く実地医家では診療が困難であったため、これまで所見として含まれていなかったが、現況を顧みて追加した」と補足した。一方、掻痒感については「多くの非専門医は肝臓疾患がもたらす痒みの認識が薄いように感じる。そのため、抗ヒスタミン薬などで経過観察され、その間に肝疾患が進行してしまう場合も散見される。冬場は乾燥によるかゆみを訴える患者も多いが、肝疾患によるかゆみは抗ヒスタミン薬が無効である例が多く、ほかの所見もあれば血液検査を行い肝臓疾患の有無について判別を行ってほしい」と訴えた。栄養療法を簡単に個別化できるフローチャートへ 肝硬変治療で重要となる栄養療法もフローチャートが明確になり非専門医でも利用しやすくなっているが、これには近年の肝硬変患者の成因変化が影響している。2008年の肝硬変成因別調査

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COVID-19の院内死亡率、10代はインフルの10倍にも

 インフルエンザとCOVID-19は、類似した感染様式を伴う呼吸器疾患である。そのため、インフルエンザの流行モデルは、COVID-19の流行モデルの検証にもなり得ると考えられる。ただし、両者を直接比較するデータはほとんどない。フランス・ディジョンのUniversity of Bourgogne-Franche-Comté(UBFC)のLionel Piroth氏ら研究グループが、国の行政データベース(PMSI)を用いて後ろ向きコホート研究を実施したところ、入院を要するCOVID-19患者と季節性インフルエンザの患者の症状にはかなりの差異があり、11〜17歳におけるCOVID-19の院内死亡率は、インフルエンザの10倍にも上ることが明らかになった。The Lancet Respiratory Medicine誌2020年12月17日付のオンライン版に掲載。 本研究には、2020年3月1日~4月30日にCOVID-19で入院した全患者、および2018年12月1日~2019年2月28日にインフルエンザで入院した全患者が含まれ、年齢層ごとに層別化されたデータを基に、患者間の危険因子、臨床的特徴、および転帰の比較が行われた。 主な調査結果は以下のとおり。・8万9,530例のCOVID-19患者および4万5,819例のインフルエンザ患者が、それぞれの研究期間中にフランス国内で入院した。患者の年齢中央値は、COVID-19で68歳(四分位範囲[IQR]:52~82)、インフルエンザでは71歳(IQR:34~84)だった。 ・COVID-19患者は、インフルエンザ患者よりも肥満または太り過ぎの傾向があり、糖尿病、高血圧および脂質異常症が多く見られたのに対し、インフルエンザ患者は、心不全、慢性呼吸器疾患、肝硬変、および欠乏性貧血が多かった。 ・COVID-19の入院患者では、インフルエンザと比べ急性呼吸不全、肺塞栓症、敗血症性ショック、または出血性脳卒中の発症頻度が高かったが、心筋梗塞や心房細動の発症頻度は低かった。・院内死亡率は、COVID-19患者のほうがインフルエンザ患者よりも高く(1万5,104例[16.9%]/8万9,530例 vs.2,640例[5.8%]/4万5,819例)、相対死亡リスクは2.9(95%信頼区間[CI]:2.8~3.0)、年齢標準化死亡比は2.82であった。・入院患者のうち、18歳未満の小児の割合はインフルエンザよりもCOVID-19のほうが少なかった(1,227例[1.4%] vs.8,942例[19.5%])。・5歳未満では、インフルエンザよりもCOVID-19のほうが集中治療を要する頻度が高かった(14/613例[2.3%] vs.65/6973例[0.9%])。・11〜17歳におけるCOVID-19の院内死亡率は、インフルエンザよりも10倍高かった(5/458例[1.1%] vs.1/804例[0.1%])。 本結果について著者らは、対象患者数が少ないため、限定的な知見ではあるものの、入院を要するCOVID-19患者と季節性インフルエンザ患者の症状にはかなりの差異があること、小児においてはCOVID-19の入院率はインフルエンザよりも低いが、院内死亡率が高いことを指摘。本結果により、COVID-19の適切な感染予防策の重要性およびワクチンや治療の必要性が浮き彫りになったと述べている。

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重症低血糖に迅速対応できる初の点鼻グルカゴン製剤「バクスミー点鼻粉末剤3mg」【下平博士のDIノート】第65回

重症低血糖に迅速対応できる初の点鼻グルカゴン製剤「バクスミー点鼻粉末剤3mg」今回は、重症低血糖治療薬「グルカゴン点鼻粉末(商品名:バクスミー点鼻粉末剤3mg、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、患者の意識がない場合であっても家族などが使いやすい経鼻投与のグルカゴン製剤で、重症低血糖の迅速な救急処置が可能になると期待されています。<効能・効果>本剤は、低血糖時の救急処置の適応で、2020年3月25日に承認され、同年10月2日より発売されています。<用法・用量>通常、グルカゴンとして1回3mgを鼻腔内に投与します。なお、飢餓状態、副腎機能低下症、頻発する低血糖、一部糖原病、肝硬変などの場合は血糖上昇効果がほとんど期待できず、アルコール性低血糖の場合は血糖上昇効果がみられません。<安全性>日本人1型および2型糖尿病患者を対象とした国内第III相臨床試験(IGBJ試験)において、安全性評価対象症例71例中12例(16.9%)に副作用が報告されました。主な副作用は、鼻痛6例(8.5%)、血圧上昇、悪心各4例(5.6%)、嘔吐、耳痛各2例(2.8%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)が現れる恐れがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、低血糖を起こした際の救急処置に用います。肝臓に働きかけてブドウ糖の放出を促すことで、血糖を一時的に上げます。2.「意識がはっきりしない」「口から糖分を摂れない」など、周りの人の助けが必要な低血糖状態になったときに使用する1回使い切りタイプの点鼻粉末薬です。3.包装フィルムは使用する直前まではがさないでください。使用時は、赤い部分を引っ張って、容器から噴霧器を取り出します。噴霧器を支える人差し指また中指が鼻に当たるまで、点鼻容器の先端を片方の鼻の穴にゆっくり差し込んでから、注入ボタンを緑色の線が見えなくなるまで押し切ってください。4.噴霧後は、すぐに主治医に連絡し、医療機関を受診してください。その際、低血糖の発生状況や使用した結果などを主治医に伝えてください。5.本剤の効果は一時的なものなので、意識がある場合は速やかに糖分を摂取してください。追加投与による効果は期待できないため、本剤またはほかのグルカゴン製剤の追加投与は行わないでください。<Shimo's eyes>糖尿病治療による低血糖は、症状が起きたときに速やかかつ適切に対処することができれば回復が見込めますが、進行すると重症低血糖に陥り、昏睡や痙攣、脳障害などの後遺症を起こすほか、死に至ることもあります。従来、医療機関外であっても緊急時に対処できるようにグルカゴン注射薬が用いられていますが、使用時の手順が複雑で、患者およびその看護者(家族など)の負担が大きいという問題があります。本剤は、注射薬以外の低血糖治療薬として初のグルカゴン製剤です。室温で持ち運びができる1回使い切りタイプの点鼻粉末製剤で、看護者などが投与することで重症低血糖の救急処置を行うことができます。本剤は鼻粘膜から吸収されるため吸入や深呼吸の必要がなく、意識がない患者にも使用可能です。患者およびその看護者が、本剤を必要とする場面で迅速に対処できるように、投与方法・保管方法について十分に指導する必要があります。いざという場面で戸惑わないために、デモ機などを活用して理解度に合わせた指導を行いましょう。参考1)PMDA 添付文書 バクスミー点鼻粉末剤3mg

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