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診療ガイドラインは医療の質向上に寄与するが、米国では順守率が依然として低く、時間的制約のある疾患の典型とされる外傷のトリアージ、とくに高齢者の治療では順守率が50%を下回るという。米国・ピッツバーグ大学のDeepika Mohan氏らは、医師の誤診の低減を目指して開発されたシリアスゲーム(serious game、娯楽以外の目的[知識習得、技術向上、行動変容など]を志向するビデオゲーム)が、救急医による高齢者の外傷トリアージのガイドライン順守状況を改善するかを無作為化試験で検討した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月20日号に掲載された。米国の非外傷専門施設の救急医800人が参加 本試験は研究者主導型にて行われ(米国国立老化研究所[NIA]などの助成を受けた)、米国の非外傷専門施設の救急部門で、メディケアの出来高払い制度(fee-for-service)に加入している65歳以上の外傷患者のトリアージを担当する救急医800人(男性563人[71%]、臨床経験年数中央値10年[四分位範囲[IQR]:6~17]、Advanced Trauma Life Support[ATLS]修了者750人[94%])を対象とした。 介入群(400人)の医師は、タブレットPCを用いたゲーム形式の訓練(初回に2時間の研修、その後四半期ごとに20分の研修を3回、合計4回)を受け、対照群の医師(400人)は通常の教育を受けた。 ゲームは、行動変容理論に基づいて構築され、トリアージが十分でない場合の結果を明示する症例ベースの物語形式の記事や、迅速かつ正確なパターン認識を習得するためのフィードバック機能を備えた時間制限型パズルなどが組み込まれた。また、あらゆる重症外傷のパターンを網羅する一方で、とくに年齢およびフレイルの程度が患者アウトカムに及ぼす影響に重点が置かれた。 主要アウトカムは、無作為化から1年間のアンダートリアージ(緊急度の過小評価:重症患者のうち高次の外傷専門施設へ搬送されなかった患者の割合)であった。また、副次アウトカムは、オーバートリアージ(緊急度の過大評価:軽症でありながら高次施設へ搬送された患者の割合)、および30日以内の死亡と再入院の複合とした。重症例のうち47%を搬送、過小評価が有意に低減し過大評価は増加せず 1,147病院の医師が、65歳以上のメディケア受給患者4万1,073例(平均年齢79[SD 8.4]歳、白人3万6,927例[93%]、Charlson併存疾患指数≧1点が3万918例[74%])を治療した。このうち1,738例(4.2%)が重症で、外傷性脳損傷(1,343例[77%])、肋骨骨折(552例[32%])、四肢骨折(313例[18%])の頻度が高かった。 介入群の99%(397/399人)が少なくとも1回のゲームを用いた研修を受け、67%(268/399人)が4回の研修のすべてを修了した。 1,738例の重症外傷患者のうち、809例(47%)が高次施設に搬送され、初回入院日から30日以内に273例(16%)が死亡し、30日以内に865例(50%)が再入院した。入院日数中央値は4日(IQR:2~8)だった。 重症外傷患者のうちアンダートリアージの割合は、対照群(救急医399人、年齢中央値41歳)が57%(527/919例)であったのに対し、介入群(398人、42歳)は49%(402/819例)と有意に低率であった(モデル補正後絶対群間差:-7%、95%信頼区間[CI]:-13~-0.8、p=0.02)。 一方、オーバートリアージ(介入群71%[1,038/1,455例]vs.対照群74%[1,132/1,524例]、モデル補正後絶対群間差:-3%[95%CI:-6~1]、p=0.14)、および30日以内の死亡と再入院の複合アウトカム(63%[516/819例]vs.64%[584/919例]、-0.4%[95%CI:-5~4]、p=0.87)には、両群間に差を認めなかった。ゲーム回数、経過期間が効果と関連 著者は、「これらの知見は、シリアスゲームが、救急医のガイドラインに準拠した外傷トリアージを改善し、ガイドライン順守率を向上させる新たなアプローチとなることを示唆する」としている。 また、「1回または2回だけゲームを行った医師に比べ、4回の研修すべてでゲームを行った医師はアンダートリアージの割合が低かった(交互作用のp=0.047)」「ゲームを行っていない、あるいは30日以上前に行った医師に比べ、ゲームを行ってから30日以内に診察した医師はアンダートリアージの割合が低かった(同p<0.001)」と指摘している。