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サル痘とは?(2023年4月更新版)

サル痘とは?2023年4月版出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘とは? オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症 1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)でヒトでの初めての感染が確認され、中央アフリカ~西アフリカにかけて流行している。 国内では感染症法上の4類感染症に指定されている。 2022年5月以降、従前のサル痘流行国への海外渡航歴のないサル痘患者が世界各地で報告されているが、2023年3月時点では全体の症例の報告数は減少傾向にある。 国内では2022年7月に1例目の患者が確認され、その後散発的に発生が報告されていたが、2023年に入り患者の報告数が増加している。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.感染経路は? アフリカに生息するリスなどの齧歯類をはじめ、サルやウサギなどウイルスを保有する動物との接触によりヒトに感染する。 感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触(性的接触を含む)、患者と接近した対面での飛沫への長時間の曝露、患者が使用した寝具などとの接触などにより感染する。 皮疹の痂皮をエアロゾル化することで空気感染させた動物実験の報告があるものの、実際に空気感染を起こした事例は確認されていない。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.発生状況は?<国内> 2022年7月25日に1例目の患者が報告された。 2023年以降、患者の発生が増加しており、2023年4月25日時点で120例が報告されている。<世界> 2022年5月以降の流行で8万6千人以上の感染例が報告されている(2023年3月24日時点)。 WHOによると、現在報告されている患者の大部分は男性であるが、小児や女性の感染も報告されている。※特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は人権の侵害につながります。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は? 発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状が0~5日程度持続し、発熱1~3日後に発疹が出現する。 リンパ節腫脹は顎下、頸部、鼠径部に見られる。 皮疹は顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮となる。 多くの場合2~4週間持続し自然軽快するが、小児、曝露の程度・健康状態・合併症などにより、重症化することがある。 皮膚の2次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの合併症を起こすことがある。 手掌や足底にも各皮疹が出現する。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は?(続き)2022年5月以降の欧米を中心とした流行では、従来の報告とは異なる症状が指摘されている。 発熱やリンパ節腫脹などの前駆症状が見られない場合がある。 病変が局所(会陰部、肛門周囲や口腔など)に集中しており、全身性の発疹が見られない場合がある。 異なる段階の皮疹が同時に見られる場合がある。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q. 治療方法は? 対症療法(症状に応じた治療) 国内で承認された治療薬はない。 欧州では、特異的治療薬としてテコビリマットが承認されており、日本でも同薬を用いた特定臨床研究が実施されている。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.予防法は? 天然痘ワクチンによって約85%発症予防効果があるとされている。 流行地では感受性のある動物や感染者との接触を避けることが大切である。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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コロナ5類化、もう不要だと思う感染対策は?/医師1,000人アンケート

 5月8日より、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に移行となり、今後の感染対策は個人の判断に委ねられるものが増える。今後も必要、または、もう不要だと思う感染対策、5類移行に伴い懸念していること、新型コロナが収束したと思える状況などについて、会員医師1,000人を対象に『新型コロナ5類移行に伴う感染対策、まだ必要・やめてもよいと思うものアンケート』を4月10日に実施した。なお、本アンケートは、東京iCDC(東京感染症対策センター)リスコミチームによって実施された都民アンケート調査1)を参考に作成した。5類移行に伴いマスク着用は18%減少 「Q. プライベートでの新型コロナの感染対策について」という設問では、4月現在行っているものと、5類移行後も必要だと思う一般的な感染対策11項目についてそれぞれ聞いた。現時点で最も多かったのは「マスクの着用」(83%)、続いて「こまめに手を洗う」(76%)であった。一方、5類移行後については、「マスクの着用」が必要だと考える人の割合が18%減少して65%となり、「こまめに手を洗う」(72%)ことが必要だと考える人の割合と順位が逆転した。 年代別の結果では、ほとんどの項目で50歳未満よりも50代、60代以上と、年代が上がるにつれて一般的な感染対策が必要と考える人の割合が多くなっていた。とくに5類移行後のマスク着用について、50歳未満は60%弱であったが、50代は71%、60代以上は76%と、10%以上の差がみられた。もう不要な感染対策、1位はハンドドライヤーの禁止、2位はアクリル板 「Q. もうやめたほうがよいと思う感染対策は?」という設問では、とくにコロナ禍になって顕著に行われるようになった、飲食店などでのアクリル板やビニールの仕切りの設置、黙食、トイレのハンドドライヤー使用禁止、病院での面会禁止などの15項目の感染対策について聞いた。約半数の人が不要と思う感染対策としては、「トイレのハンドドライヤー使用禁止」(55%)、「飲食店などでのアクリル板などの設置」(51%)、「学校での授業中のマスク着用」(47%)、「黙食」(47%)であった。 この設問での年代別の傾向として、40歳未満よりも40代以上のほうが、項目に挙げた感染対策についてもう不要だと考える人の割合が全体的に多かった。また、病床数別の傾向では、0~19床の診療所では、「黙食」(53%)、「病院の面会の禁止」(47%)となり、20床以上の病院よりも10%ほど高くなっており、医療機関の規模により不要だと思う感染対策の傾向に若干の違いがみられた。 ちなみに、本アンケートの参考とした東京iCDCリスコミチームによる同様の項目についてのアンケート結果では、もうやめたほうがよい感染対策の上位は、多い順に「卒業式、入学式のマスク着用」(38.6%)、「授業中のマスク着用」(36.9%)、「黙食」(35.6%)といった学生に関わるものとなっており、続いて「トイレのハンドドライヤー使用禁止」(29.7%)、「飲食店などでのアクリル板などの設置」(29.1%)となっている。都民の結果と比べると、医師のほうが不要だと思う感染対策をやめることについてより積極的であった。半数が感染の再拡大を不安視、5類化により人々の意識が衝突か 「Q. 新型コロナが収束したと思える状況」については、全体の3分の1が「インフルエンザと同じような感覚で捉えられるようになったら」(33%)と答えている。続いて、「感染しても普通のことと思えるようになったら」(22%)、「治療薬が普及したら」(13%)の順に多かった。 今後の新型コロナについて、全体の半数の医師が「感染が再び拡大する不安がある」(51%)としている。また、新型コロナの5類への移行に伴い懸念していることとして、具体的に以下のような意見が挙げられた。<感染の再拡大>・さまざまな行事もコロナ以前の形式で再開して、ゴールデンウィークで人流が激しくなり、ちょうど5類になったところでコロナ患者がどっと増えると思う。(外科・50代)・基礎疾患のある人や高齢者の感染が増加して重症化しないか心配。(臨床研修医・20代)・後遺症を伴う人の増加や、バランスの取れない疾患対策。(精神科・40代)<病院の体制>・医療施設側がゼロコロナ対応を続ける限り、医療逼迫の問題はなくならない。(救急科・60代)<受診控え>・治療費が自己負担になることで未治療の感染者が増え、感染拡大につながる懸念がある。(精神科・50代)<人々の意識>・コロナに対する考えの違いによりトラブルが生じる可能性がある。(形成外科・30代)<情報の把握>・死亡者数、感染者数のリアルタイムでの報道がされなくなり、感染対策、予防が過小評価されることが懸念される。(総合診療科・30代)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。コロナ感染対策、もう不要と思うものは?/医師1,000人アンケート

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過去のSARS-CoV-2感染に伴う再感染に対する防御効果:系統的レビューとメタアナリシス(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、2022年9月31日まで(原文ママ)に報告されたプレプリントを含む、後ろ向きコホート研究、前向きコホート研究および検査陰性症例対照研究の中で、SARS-CoV-2罹患歴の有無によるCOVID-19感染のリスクを比較した研究を特定し、システマティックレビューおよびメタ解析を行っている。 結果の要約は、「コロナ感染による免疫、変異株ごとの効果は~メタ解析/Lancet」で紹介されているが、簡潔に研究結果をまとめると、「再感染や症候性再感染は、初期株、アルファ株、ベータ株、デルタ株に対しては高い予防効果を示したが、オミクロンBA.1株では再感染や症候性再感染の予防効果が低かった。ただし、重症化予防効果については、既感染1年後までアルファ株、ベータ株、デルタ株、オミクロンBA.1株のいずれも維持していた」と筆者は論じている。 現在、SARS-CoV-2の主流株は世界でも本邦でも、オミクロン株であり、COVID-19患者が増加した際の対策を考える場合は、オミクロン株を対象に想定するべきであろう。 さて、医療現場の感覚としても、本研究結果のとおり、オミクロン株では、COVID-19に罹患してから数ヵ月で再感染するケースが増えたことを実感しているのではないだろうか。また、オミクロン株の1年以内の再感染患者で、高齢者などの余力が乏しい患者やワクチン未接種のリスク患者でなければ、重症化することがほとんどなくなったことも感覚と合致するのではないだろうか。 今後のCOVID-19再流行に備える場合に、本研究を参考にすることができる事項として、(1)新型コロナワクチンの追加接種タイミング、(2)抗ウイルス薬の投与判断、(3)病院や高齢者施設における感染対策があると考える。 1つ目の、新型コロナワクチンの接種タイミングについて考える。 直近の本邦における、COVID-19に対するワクチン接種は、「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の議論を踏まえた方針」を参考にすると、高齢者(65歳以上)、基礎疾患を有する者(5~64歳)、医療従事者・介護従事者等(5~64歳)を対象に5~8月以降の追加接種が議論されている(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001069231.pdf)。WHOの方針では、高優先集団である高齢者や高度な免疫不全のある若年者や医療従事者では4回目以降の追加ブースターは12ヵ月おき、超高齢者や重症化リスクのある高齢者、月齢6ヵ月以上の小児と中等度以上の免疫不全を伴う成人では6ヵ月おきでの定期接種を推奨している(WHO SAGE Roadmap for prioritizing uses of COVID-19 vaccines.https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-Vaccines-SAGE-Roadmap,(参照2023-04-02).)。 新型コロナウイルスワクチンの効果は、感染予防効果や発症予防効果もあるが、オミクロン株流行以降はこれらに対するワクチンの効果も時間経過とともに低下し、重症化予防効果を期待して接種する面も大きいように思われる。本研究の結果を参考にすると、オミクロン株流行下におけるCOVID-19罹患後は、再感染時の重症化リスクは低下していると考えられる。本論文の筆者も指摘しているように、ワクチンのメリットと副反応のデメリットを勘案のうえ、COVID-19に罹患した場合、その患者のリスクの程度によってはワクチン接種をするタイミングを遅らせるという選択肢もでてくるのではないかと考える。 次に2つ目の抗ウイルス薬治療対象の判断について考える。 NIHガイドラインでは、軽症から中等症Iで治療薬の使用を優先させるべきリスク集団として3つの優先度を設けている(Prioritization of Anti-SARS-CoV-2 Therapies for the Treatment and Prevention of COVID-19 When There Are Logistical or Supply Constraints. https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/overview/prioritization-of-therapeutics/ Last Updated: December 1, 2022, (参照2023-04-02).)。このガイドラインでは、ワクチン接種の有無はリスク評価に用いられているが、COVID-19罹患歴はリスク評価に用いられていない。抗ウイルス薬のニルマトレルビル/リトナビルやモルヌピラビルは、重症化予防効果を期待して投与されているが、本研究を参考にすると、COVID-19罹患後は、1年近く重症化予防効果が低下することを期待できる。抗ウイルス薬の投与目的が、重症化予防効果である場合は、過去の感染歴の有無も抗ウイルス薬投与の判断時に参考としてよいかもしれない。 さて、上記の2つについては重症化リスク軽減の観点のみから議論を展開したが、COVID-19がインフルエンザなどの他のウイルス感染症と異なる点として後遺症や自己免疫疾患のリスク増加(Chang R, et al. EClinicalMedicine. 2023;56:101783.)といった問題がある。後遺症に関しては、オミクロン株になり、デルタ株より頻度は低下したものの(Antonelli M, et al. Lancet. 2022;399:2263-2264.)、生活に影響を与える後遺症のために通院を要する患者もいる。COVID-19後遺症は、ワクチンや(Tsampasian V, et al. JAMA Intern Med. 2023 Mar 23. [Epub ahead of print])、抗ウイルス薬(Suran M. JAMA. 2022;328:2386.)(Xie Y, et al. JAMA Intern Med. 2023 Mar 23. [Epub ahead of print])の効果も報告されている。現時点では、COVID-19罹患後後遺症を主目的にワクチン接種や抗ウイルス薬の投与はされていないと思うが、今後、COVID-19罹患後後遺症や免疫異常のハイリスク患者グループが特定され、ワクチンや抗ウイルス薬に伴う明らかなメリットが判明したり、薬剤の費用が安価になったりする場合は、重症化予防効果以外の目的で投与されることがあるかもしれない。 最後に、病院や高齢者施設における感染対策について考える。 かつては、COVID-19感染後、3ヵ月間は再感染しないと考えられていた時期があった。しかし、プレプリントではあるが、デンマークのグループから、オミクロン株であるBA.1やBA.2では1ヵ月以内でも再感染を起こしうることが報告された(Stegger M, et al. medRxiv. 2022 Feb 22.)。同時期頃から本邦でも、短期間で再燃を来す患者の診療をする機会がみられるようになったように感じている。PCR検査は、COVID-19の診断に有用な検査ではあるが、一度罹患すると、高齢者や幼児、細胞性免疫が低下している患者で、陰性化にしばらく時間がかかることがある。かつてのように、原則90日間は再感染しないと考えることができた場合は、罹患後90日以内の発熱、感冒様症状はCOVID-19以外を考えることができたが、短期間で再感染すると考える場合は、PCR検査だけではなく、患者の症状や行動歴、COVID-19接触歴などを把握し、他の鑑別疾患も考慮しながら総合的に判断する必要がでてくる。 今後、オミクロン株の再流行がみられた際には、2~3ヵ月以内に感染を起こしたからといって、安易にCOVID-19の再感染ではないだろうと考えるのは、病院や高齢者施設の感染管理としては避けたほうがよいだろう。 さて、本邦の第8波も落ち着いてきたが、今後はXBB.1.5を含めたXBB系統などの株が流行する可能性もあるだろう(CLEAR!ジャーナル四天王-1648「2022年11月以降の中国・北京における新型コロナウイルス流行株の特徴」)。米国(Vogel L. CMAJ. 2023;195:E127-E128.)やシンガポール(Ministry of Health,Shingapore. UPDATE ON COVID-19 SITUATION AND MEASURES TO PROTECT HEALTHCARE CAPACITY. 15 OCTOBER 2022.)でXBB.1.5が流行したころのデータからは、重症化リスクに大きな変化はなさそうだが、再感染を起こしやすい株であることが想定される。新型コロナウイルス感染症は、オミクロン株となって、重症化リスクは低下したとはいえ、感染力はインフルエンザなどの呼吸器感染症よりも強く、また高齢者、免疫不全者を含めたハイリスク患者ではいまだに重症化しうる感染症であることも考えると、医療機関では、新型コロナウイルス感染症が院内で流行することがないよう、適切な感染対策を継続する必要がある。

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第160回 アミノ酸服用がコロナ疲労に有効

たかがアミノ酸、されどアミノ酸。6種類のアミノ酸とその誘導体を成分とする経口薬の新型コロナウイルス感染症罹患後症状(以下、コロナ後遺症)改善効果が被験者41例の無作為化試験で示唆されました1)。コロナ後遺症は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染からずいぶん経つにもかかわらず疲労などの不調が続くことを特徴とし、いくつか示唆されている原因にはミトコンドリア機能低下や細胞のエネルギー生成障害が含まれます。SARS-CoV-2は自身の複製のためにミトコンドリアを乗っ取り、そのせいで代謝がより不効率な解糖系に切り替わってしまって慢性の疲労が現れると考えられています。その仮説に一致し、アミノ酸などを原料とするエネルギー生成障害がコロナ後遺症によく似た病態である慢性疲労症候群(CFS)の患者に生じることが知られています。今回紹介する試験で検討されたのは米国のバイオテクノロジー企業であるAxcella Therapeutics社がAXA1125という名称で開発している経口薬で、アミノ酸5つ(ロイシン、イソロイシン、バリン、アルギニン、グルタミン)とアミノ酸誘導体1つ(N-アセチルシステイン)を成分とします。AXA1125はより燃費のよいエネルギー生成反応である酸化的リン酸化の原料を生み出すβ酸化を促し、ミトコンドリア機能を改善します。試験には疲労を主徴とするコロナ後遺症患者41例が参加し、AXA1125を1日2回4週間服用する群とプラセボ群におよそ均等に振り分けられました。試験の一番の目的であったミトコンドリア機能指標の変化はAXA1125とプラセボで差がありませんでしたが、CFQ-11検査に基づく疲労の程度がプラセボに比べてAXA1125投与群のほうがより改善しました。CFQ-11検査は11の質問によって疲労の程度を見積もります。11の質問のうち7つは肉体的疲労、残り4つは精神的疲労を調べるものです。それぞれの質問への回答は0~3の4択で、患者は無症状なら0、最も重症なら3を選びます。すなわちCFQ-11合計点数の幅は0~33点で、点数が大きいほど深刻であり、24点以上は中等症~重症と判定されます。AXA1125投与群のCFQ-11合計点数の平均は投与開始前は中等症~重症域の26.2点でしたが、4週間の投与後にはその水準を脱して21.0点に落ち着きました。一方、プラセボ投与群ではほとんど変化がなく中等症~重症の水準のままでした。AXA1125投与のかいあって肉体的疲労が改善した患者ではミトコンドリア機能や6分間歩行距離(6MWD)の改善も認められました。プラセボ群ではそのような関連はありませんでした。Axcella社はより大人数を募る第IIb/III相試験の準備を進めており、本年2月にはその試験の開始が米国FDAに許可されています2)。となればすぐに始めたいところですが、いかんせん懐具合が寂しく、さらなる開発には救いの手や提携が必要との苦しい胸の内を同社が最近明かしています3)。資金難を乗り越えてAXA1125の開発が前進することは今回の試験を担った英国・オックスフォード大学のチームも望んでおり、コロナ後遺症に広く有効なことがさらなる試験で判明することを期待しています4)。 参考1)Finnigan LEM, et al. eClinicalMedicine. April 14, 2023. [Epub ahead of print] 2)Axcella Announces FDA IND Clearance Supporting Regulatory Path to Registration of AXA1125 for Long COVID Fatigue / BusinessWire3)Axcella seeks 'light speed' swing at long Covid, but needs cash / Endpoints4)Trial investigating potential treatment for fatigue relief in people with long COVID reports results / University of Oxford

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第144回 大学病院医師の時間外労働、2024年以降も3割が年間960時間を超える/文科省

<先週の動き>1.大学病院医師の時間外労働、2024年以降も3割が年間960時間を超える/文科省2.国内初の経口中絶薬メフィーゴパック承認へ/厚労省3.健保財政が急速に悪化、今年度は5,600億円超の大幅赤字/健保連4.内閣法改正で危機管理庁を設置、今年の秋発足/国会5.75歳以上も保険料引き上げの健康保険法改正案が参議院で審議入り/国会6.マイナンバーカード、受給者証の機能も追加へ/河野デジタル相1.大学病院医師の時間外労働、2024年以降も3割が年間960時間を超える/文科省2024年4月から労働基準法に基づく時間外労働時間の上限が適応されるのを前に、大学病院の勤務医の働き方に関する調査結果が公表された。この調査は、文部科学省の委託事業として、全国の81の国公私立の大学病院や医師を対象にアンケート形式で2022(令和4)年7月~8月に実施された。その結果、大学病院で働く医師の4万9,791人のうちおよそ3割の1万5,070人が、来年度、時間外労働の上限となる年間960時間を超える見込み。また、研究時間では、助教の約65%が週5時間以下で、まったく行っていない者も15%に上るなど、深刻な状況であることが判明している。ヒアリングでは、臨床業務のタスクシフトが働き方改革につながるとして、事務や看護師、コメディカルスタッフへのタスクシフトを行うことが必要というコメントも寄せられている。(参考)大学病院、研究13%どまり 週当たり平均労働時間 文科省調査(時事通信)大学病院の医師3割、残業960時間超の見込み 研究の時間不足(朝日新聞)大学病院における医師の働き方に関する調査研究報告書(全国医学部長病院長会議)2.国内初の経口中絶薬メフィーゴパック承認へ/厚労省イギリスの製薬企業ラインファーマが薬事申請していた経口中絶薬「メフィーゴパック」(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)について、4月21日に開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会において、製造販売の承認を了承した。国内初の経口中絶薬については、先月の審議会の開催前のパブリックコメントに、通常の100倍もの意見が集まったため、3月24日の審議が延期された経緯がある。日本国内で中絶手術で行われている掻爬術などと比べて、母体への負担が少なく母体保護の観点からも早期の承認が求められてきた。海外ではすでに70ヵ国以上で承認されており、世界保健機関(WHO)は、安全で効果的だとして「必須医薬品」に指定している。(参考)「経口中絶薬」 厚労省の分科会が了承 国内初の承認へ(NHK)国内初、経口妊娠中絶薬を承認へ 薬食審・分科会が了承(CB news)飲む中絶薬製造販売の承認を了承 国内初の経口中絶薬 厚労省分科会(毎日新聞)3.健保財政が急速に悪化、今年度は5,600億円超の大幅赤字/健保連健康保険組合連合会(健保連)は4月20日に、大企業の従業員と家族が加入する健保組合の2023年度の予算の集計結果を発表した。約1,400組合の健康保険組合の経常収支は5,623億円の赤字となり、過去最大で前年度の2倍が見込まれている。赤字が予想されている健保組合は2022年度から130組合増えて1,093組合と、全体の8割近くになる。赤字の原因は、医療費の伸びに加え、高齢者医療への拠出金が増大しており、現役世代にとって負担が増している。政府は、少子化対策の財源を社会保険料からの拠出を検討しており、今後、現役世代にとって負担増となる可能性がある。また、社会保障制度の持続可能性のため、政府は全世代型社会保障構築会議などを通して、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を急いでいる。(参考)大企業健保、赤字最大に 今年度見通し 5600億円超へ倍増(日経新聞)健保組合、8割が赤字見通し 実質保険料は10%超えに 23年度(朝日新聞)健保組合 今年度収支 5600億円余の赤字の見通し 前年度の2倍に(NHK)健保組合、過去最大の赤字5,600億円超に 23年度見込み、約8割が赤字(CB news)健康保険組合 予算編成状況-早期集計結果(概要)について-(健保連)4.内閣法改正で危機管理庁を設置、今年の秋発足/国会新たな感染症危機に備える目的で、感染症対応の司令塔として新たに「内閣感染症危機管理統括庁」を内閣官房に新設する改正内閣法と新型コロナウイルス対策特別措置法が4月21日に参議院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。感染症危機管理統括庁は、内閣府に設置され、トップの内閣感染症危機管理監には官房副長官が就く。早ければ9月1日にも発足する。新たな感染症が発生した際に、省庁横断して初動対応を担う。平時は専従職員38人、救急時は101人体制で対応する。(参考)感染症で首相権限強化=危機管理庁設置、改正法成立(時事通信)危機管理庁、今秋めどに 改正法成立 感染症対策の司令塔(日経新聞)感染症対応の司令塔、内閣官房に秋ごろ設置へ 改正インフル特措法・内閣法が成立(CB news)5.75歳以上も保険料引き上げの健康保険法改正案が参議院で審議入り/国会75歳以上が加入する「後期高齢者医療制度」の保険料引き上げと、「出産育児一時金」の増額などを盛り込んだ健康保険法などの改正案が4月19日から参議院で審議が開始された。岸田総理は「すべての世代が能力に応じて社会保障制度を支え合う仕組みの構築は重要だ」と述べ、早期成立に理解を求めた。一方、野党からは高齢者の保険料から出産費用を捻出する案に対して批判する声が上がり、これに対して岸田総理は、高齢者も含めた全世代で支え合う仕組みに転換を図りたいと答弁した。(参考)医療保険料の75歳以上負担増、参院審議入り 首相出席(産経新聞)健康保険法などの改正案 参院で審議始まる(NHK)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案[概要](厚労省)6.マイナンバーカード、受給者証の機能も追加へ/河野デジタル相河野太郎デジタル相は記者会見で、マイナンバーカードと健康保険証との一体化を進めるに当たり、従来は紙で行われていた子供の医療費の医療費助成の「受給者証」を、マイナンバーカードを活用して機能を追加できるように取り組むことを発表した。また、マイナンバーカードを予防接種の接種券や妊婦健診の受診券として活用することも目指す。これらの取り組みを全国展開する前に、今年度中に希望する自治体を募り、試行する予定。(参考)「受給者証」もマイナカードに 医療分野の活用促進 河野デジタル相(時事通信)医療費助成にマイナカード 一部自治体で先行へ(産経新聞)河野大臣記者会見(デジタル庁)

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患者集団を対象とした医療からの脱却法は?(解説:後藤信哉氏)

 ランダム化比較試験は、患者集団の標準治療の確立に役立った。しかし、新型コロナウイルス感染症などの病名にて患者集団を規定しても、集団を構成している個別症例の病態、予後には不均一性がある。たとえば、新型コロナウイルス感染症の入院例においてヘパリン治療がECMOなどを避けるために有効であることはランダム化比較試験にて示されたが、標準治療が集団を構成する全例に対して有効・安全なわけではない。 本研究はヘパリン治療の不均一性を検証するために3つの方法を利用した。(1)は通常のサブグループ解析である。新薬開発の臨床試験では事前に設定した年齢、性別、腎機能などにより分けたサブグループにて不均一性がないことを示している。本研究ではサブグループ解析にて結果の不均一性に注目した。(2)はrisk based model法である。集団からリスクに寄与する因子を抽出して、その因子により個別症例のリスクを事前に予測してグループ分けした。(3)はEffect-Based Approachである。いわゆるrandom forest plotにて効果を予測してグループ分けする方法である。 集団の不均一性を定量化する(1)~(3)の方法とも、新型コロナウイルス感染症による入院例に対するヘパリンの効果の不均一性を示した。 ランダム化比較試験は患者集団に対する標準治療の確立には効果があった。今後は、集団の不均一性に注目して、未来の個別最適化医療を目指すことになる。

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事例022 SARS-CoV-2検査過剰による返戻【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、発熱患者にSARS-CoV-2抗原検出定性とSARS-CoV-2核酸検出を同時に行っていたところ、複数件が返戻となりました。支払機関からの返戻理由には、「検査前の確率が低いときには感度・特異度の高い検査方法での実施が望ましいとされております。状況に応じた適切な検査の実施をご検討ください。上記の場合であって、どうしても同一日に施行しなければならない必要性がある場合などでは、患者ごとにその医学的根拠を記載してください。記載のない場合や画一的・傾向的なコメントの場合は査定の対象となりますのでご注意ください」とありました。「新型コロナウィルス感染症病原体検査の指針」(第6版)には、「抗原定性検査は、発症から9日目以内の症例では確定診断に用いることができる」とあり、核酸検出、抗原定量、抗原定性の実施が推奨されています。核酸検出と抗原定性の同一検体同時測定は問題ないと考えていました。実際は抗原定性または核酸検出いずれかの実施のみでことが足りると判断されているようです。数件のレセプトのコメントには「抗原検出定性結果の確定のため核酸検出を行った」と記載されていましたが、同じコメントがついていて返戻となっていました。患者ごとに医学的な詳しい状況の記載が必要になるものと考えられますので、この点はご留意ください。医師にはこのことを伝え、検査オーダー時に検査重複のアラートが表示されるように改修して査定対策としました。

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第156回 コロナで収益を得た製薬企業が次々と買収発表、思わずうなる戦略とは

国際的な製薬大手企業による企業買収が再び活発化している。3月13日に米・ファイザー社ががんの抗体薬物複合体(ADC)技術を有するシージェン社を約430億ドル(約5兆7,000億円)で買収すると発表。さらに4月16日には米・メルク社もベンチャーで自己免疫疾患治療薬を手がけるプロメテウス社を約108億ドル(約1兆4,500億円)で買収すると発表した。両社が現在抱える事情はほぼ似通っている。まず、共に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)パンデミックで特需を経験した。ファイザー社はご存じのように新型コロナワクチン(商品名:コミナティほか)、経口新型コロナ治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)の売上が伸長した。2022年の売上高は、前年比23%増収の1,003億3,000万ドル(約13兆4,400億円)と、前年に引き続き製薬企業で世界1位となっただけでなく、製薬企業史上初の1,000億ドルプレーヤーとなった。この売上高の6割弱はコロナワクチンと治療薬で占められている。一方の米・メルク社も2022年度売上高が前年比22%増収の592億8,300万ドル。前年からの増収分の44%は、新型コロナ治療薬のモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)の売上伸長が占める。この両者のコロナ関連特需が今後急速にしぼんでいくことは確実である。実際、ファイザー社はすでに2023年通期で、コロナ関連売上高が約60%減少するとの予想を発表している。またメルク社のモルヌピラビルはニルマトレルビル/リトナビルに比べ、効果が劣ることが各種の研究で明らかにされつつあるため、治療選択肢としてのプライオリティは、今後、一層低下していくことは避けられない。さらに両社に共通するのがコロナ関連以外の主力品の特許権失効である。ファイザー社の場合、コロナ関連を除いた売上筆頭製品が抗凝固薬のアピキサバン(商品名:エリキュース)の約65億ドル(約8,700億円)。その特許権は2025~26年にかけて失効すると言われており、もう目前に迫っている。経口薬の場合、アメリカなどではジェネリック医薬品登場から半年程度で先発品市場の約7割がジェネリック医薬品に置き換わるのが一般的だ。ファイザー社にとって事態は深刻である。前述のシージェン社は現在ADC技術を利用したがん治療薬で年間20億ドル程度の売上があるため、これをファイザー社の巨大販路で売上を伸長させ、ファイザー社側としてはアピキサバンの特許権の失効に伴う急速な売上減の穴埋めにしようという腹積もりなのだろう。一方、メルク社の売上高の筆頭は、ご存じの免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の209億ドル(約2兆8,000億円)。実に現在のメルク社の総売上高の約3分の1を占める。そのペムブロリズマブのアメリカでの特許権失効見込みは2028年である。私が今回やや驚いたのはこのメルク社の買収決断である。まず、特許権の失効まではまだ5年はある。かつ、注射剤のペムブロリズマブは抗体医薬品であり、いわゆるバイオ医薬品のジェネリックは「バイオシミラー」と称されるが、経口の低分子薬に比べ、開発難易度も高い。確かにペムブロリズマブの特許権失効後は同薬のバイオシミラーが登場すると思われるが、現状はアメリカですらバイオシミラーの普及が進まず、先発品市場の20%程度しか市場を奪えていない。にもかかわらず、日本円にして1兆円を超える金額を使い、まだ市場投入製品がないプロメテウス社を買収するのは何ともすごい決断と言わざるを得ない。ただ、よくよく考えれば、この決断は一つひとつが頷けてしまう。まず、アメリカでは近年、バイオシミラーの浸透をより容易にする規制変更の動きがある。オール・オア・ナッシング的に急激な政策決定が進みやすいアメリカの特性を考えれば、今後、バイオシミラーが急速に浸透する可能性はある。また、もしペムブロリズマブの特許権失効時にバイオシミラーの市場侵食が現状の20%程度だったとしても、もともとの売上高が巨大過ぎるため、日本円換算で4,000億円ほどの売上喪失となり、メルク社はかなり打撃をこうむることになるのは確かである。その意味で、この段階から手を打つというのも方策としてはあり得る。とりわけ近年の新薬開発の所要期間、開発費、開発難易度が年々増していることを考えればなおさらだ。そしてプロメテウス社が現在開発中の新薬候補は、潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)に対する抗体医薬品。この領域は近年、市場拡大中である。この新薬候補の開発段階は現在第II相試験。今後順調に開発が進めば、3~5年後の2026~28年に上市となるはず。そうすると、ペムブロリズマブの特許権失効への備えとしては時期的にも間に合うだろう。さらにIBDのような自己免疫性疾患の抗体医薬品は、ほかの自己免疫性疾患への適応拡大が容易なことは、アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)などの例を見れば明らか。つまりプロメテウス社は今後、全世界で数千億~1兆円規模の売上高を生み出す可能性を秘めているというわけだ。たしかに不確定要素はあるものの、現状からロジカルにさまざまな想定をすると1兆円の買収は十分割に合う可能性がある。すでに四半世紀近く製薬業界を眺めている自分も、一瞬、発表内容をぎょっとして受け止めたが、中身を考えるほど久々にうならされる買収発表だった。ただ、このニュースに接して、あえて残念と思うことがあるとするならば、それは日本の製薬企業の多くが、このような大胆かつ機動的な戦略が取れないことである。

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5月8日から何が変わる? コロナ5類化に向けた医療機関の対策まとめ

2023年5月8日から、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置付けられる。医療機関や医師は、どう対応すればいいのか。ケアネットでは「COVID-19 5類移行でどう変わる?」と題したCareNeTVライブを3月22日に配信した1)。講師の黒田 浩一氏(神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 副医長)が、制度の変更点、院内感染対策の工夫、早期診断・早期治療の重要性、発症早期の治療における薬剤の選択などについて解説した。臨床面における対応策を中心に、ポイントをまとめて紹介する(フル動画はこちらから[60分・CareNeTVプレミアムの登録要])。5月8日以降、医療体制における主な変更点1)医療提供体制【全体】入院措置を原則とした行政の関与を前提とする限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な通常の対応へ。ほかの疾病同様に、入院可否を医療期間が判断し、医療機関同士での調整を基本とする。COVID-19診療に対応する医療機関の維持・拡大を強力に促す。「地域包括ケア病棟」も含めた幅広い医療機関での受け入れを促進する。病床稼働状況を地域の医療機関で共有するためのIT(例:新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム:G-MIS)の活用を推進する。マスク着用は個人の判断に委ねられるが、医療機関・介護施設は「マスクの着用が効果的である場面」とされ、医療者は引き続きマスク着用が推奨される。事業者(病院・高齢者施設)が利用者にマスクの着用を求めることは許容される(新型コロナウイルス感染症対策本部方針より)。【個別事項】【外来】COVID-19(疑いを含む)を理由とした診療拒否は「正当な事由」に該当せず、応召義務違反となる(診療体制が整っていない場合は、他機関を紹介する必要がある)。【外来】現在約4.2万のCOVID-19対応医療機関を最大6.4万(インフルエンザ対応と同数)まで増やすことを目標とする。【入院】行政による入院措置・勧告がなくなる。【入院】全病院でのCOVID-19対応を目指しつつ、病院機能ごとの役割分担や、高齢者を中心とした地域包括ケア病棟での受け入れを推進する。2)診療報酬・病床確保料【外来】発熱外来標榜:250点→終了、COVID-19患者診療:950点→147点【在宅】緊急往診2,850点→950点など減額【入院】中等症~重症患者の入院:従前の半額、病床確保料:従前の半額など減額(2023年9月まで。10月以降の措置は今後検討される)3)患者に対する公費支援【外来医療費】2023年9月まで抗ウイルス薬は公費負担継続(10月以降の措置は今後検討される)【入院医療費】高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額検査費用の公費支援は終了相談窓口は継続、宿泊療養施設は終了医療機関が準備すべきこと1)院内感染対策の継続とレベル向上【基本】職員のワクチン接種(3回以上かつオミクロン対応2価ワクチン1回以上。医療従事者は2023年5~8月と9月以降に2価ワクチン接種が可能となる)施設内でのユニバーサルマスキング(症状にかかわらず全員がマスク着用)と適切な換気目の防護のルーティン化、手指衛生の徹底体調不良時にすぐに休める文化・制度の醸成スタッフの旅行・会食制限は不要。但し、職員の感染者・濃厚接触者増加のため病院機能を維持できなくなる可能性がある場合は期間を決めて検討体液・排泄物を浴びる可能性が低い場合(問診/診察/検温、環境整備、患者搬送)はガウン・手袋は不要【流行期に検討される追加の対策】ルーティンでN95マスクを使用大部屋にHEPAフィルターを設置2)診療体制の構築行政による入院調整がなくなるため、これまで以上に地域の病病連携・病診連携が重要となる。大規模な流行が起こった場合に、入院患者の受け入れ先が見つからない可能性があるため、早期診断・早期治療を可能とする外来診療体制の構築(重症化予防)、夜間も含めた施設連携医・往診医による診療の充実、行政機関による病床利用率共有システムの構築と入院・紹介ルールの明確化(円滑な医療機関の連携)、COVID-19入院対応可能な病院を増やすことが重要である。現在、保健所が行う療養中の患者の健康観察と受診調整も診断した医療機関が対応することになるため、医療機関の業務は増加する見込み。【外来】診察スペースの確保検査能力の確保(抗原/PCRの使い分けも医療機関ごとに検討)治療ガイドラインの作成電話/オンライン診療によるフォローアップの検討【入院】COVID-19対応可能な病床の適切な運用職員・COVID-19以外の理由で入院した患者がCOVID-19に感染していたとしても、院内感染伝播が起こりにくい感染対策の実施院内感染事例への対応(早期診断、早期隔離、早期治療の徹底)COVID-19治療薬の最新情報医療ひっ迫の原因となる救急搬送・入院症例・高次医療機関への搬送を減らすためには、ワクチン接種と並び、軽症・中等症Iの患者に対する早期診断・早期治療が非常に重要となる。患者の年齢、ワクチン接種回数、重症化リスク因子、免疫不全の有無などから薬物治療の必要性を判断し、ガイドライン、および現在の科学的証拠に基づいて、適切な抗ウイルス治療を選択する。現在軽症~中等症Iの患者で重症化リスクがある場合に適応となる、承認済の抗ウイルス薬は以下のとおり。なお、2023年4月時点では、軽症・中等症Iの患者に対する中和抗体薬・抗炎症薬の使用は推奨されていない。・ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビット、内服)発症5日以内、成人または12歳以上かつ40kg以上。重症化予防効果は非常に高い。呼吸不全、腎障害等の場合は使用できず、併用注意薬も多いものの、実際に使用できないケースは限られる。・レムデシビル(商品名:ベクルリー、点滴)発症7日以内、成人または12歳以上かつ40kg以上。ワクチン未接種者に対する重症化予防効果は非常に高いことが示されているが、ワクチン接種者への効果はほとんど検討されていない。3日間の点滴投与となり、入院が必要。・モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ、内服)発症5日以内、18歳以上。重症化予防効果は上記2剤に劣るため、上記2剤が利用できない場合に使用する。・エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ、内服)発症3日以内、成人または12歳以上。妊婦または妊娠の可能性のある女性は禁忌。現時点ではワクチン接種者への重症化予防効果の有無やほかの薬剤との使い分けははっきりしていない。参考1)COVID-19 5類移行でどう変わる?/CareNeTV(※視聴はCareNeTVプレミアムへの登録が必要)(配信:2023年3月22日、再構成:ケアネット 杉崎 真名)

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重症コロナ患者、ACEI/ARBで生存率低下か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症成人患者において、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与は臨床アウトカムを改善せず、むしろ悪化させる可能性が高いことを、カナダ・University Health NetworkのPatrick R. Lawler氏ら「Randomized, Embedded, Multifactorial, Adaptive Platform Trial for Community-Acquired Pneumonia trial:REMAP-CAP試験」の研究グループが報告した。レニン-アンジオテンシン系(RAS)の中心的な調節因子であるACE2は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の受容体であることから、RASの過剰活性化がCOVID-19患者の臨床アウトカム不良につながると考えられていた。JAMA誌2023年4月11日号掲載の報告。RAS阻害薬または非RAS阻害薬による治療で21日間の無臓器補助日数を評価 REMAP-CAP試験は、現在も進行中の、重症市中肺炎およびCOVID-19を含む新興・再興感染症に対する複数の治療を評価する国際多施設共同無作為化アダプティブプラットフォーム試験で、今回はその治療ドメインの1つである。 研究グループは、2021年3月16日~2022年2月25日の期間に、7ヵ国69施設において18歳以上のCOVID-19入院患者を登録し、重症群と非重症群に層別化するとともに、参加施設をACEI群、ARB群、ARB+DMX-200(ケモカイン受容体2型阻害薬)群、非RAS阻害薬(対照)群に無作為に割り付け、治療を行った。治療は最大10日間または退院までのいずれか早いほうまでとした。 主要評価項目は、21日時点における無臓器補助日数(呼吸器系および循環器系の臓器補助を要しなかった生存日数)で、院内死亡は「-1」、臓器補助なしでの21日間の生存は「22」とした。 主解析では、累積ロジスティックモデルのベイズ解析を用い、オッズ比が1を超える場合に改善と判定した。無臓器補助日数はACEI群10日、ARB群8日、対照群12日 2022年2月25日で、予定された564例の安全性データの評価に基づき、対照群と比較しACEI群およびARB群で死亡および急性腎障害が高頻度であることが懸念されたため、データ安全性モニタリング委員会の勧告により重症患者の登録が中止された。非重症患者の登録も同時に一時中断され、その後、2022年6月8日に試験は中止となった。最終追跡調査日は2022年6月1日であった。 全体で779例が登録され、ACEI群に257例、ARB群に248例、ARB+DMX-200群に10例、対照群に264例が割り付けられた。このうち、同意撤回やアウトカム不明、ならびにARB+DMX-200群を除く各群の重症患者計679例(平均年齢56歳、女性35.2%)が解析対象となった。 重症患者における無臓器補助日数の中央値(IQR)は、ACEI群(231例)で10日(-1~16)、ARB群(217例)で8日(-1~17)、対照群(231例)で12日(0~17)であった。 対照群に対する改善の調整オッズ比中央値は、ACEI群0.77(95%信用区間[CrI]:0.58~1.06)、ARB群0.76(0.56~1.05)であり、治療により無臓器補助日数が対照群より悪化する事後確率はそれぞれ94.9%および95.4%であった。 入院生存率は、ACEI群71.9%(166/231例)、ARB群70.0%(152/217例)、対照群78.8%(182/231)であり、対照群と比較して入院生存率が悪化する事後確率は、ACEI群95.3%、ARB群98.1%であった。

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重症コロナ患者へのRAS調節薬、酸素投与日数を短縮せず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院し低酸素症を呈した重症の成人患者において、開発中の「TXA-127」(合成アンジオテンシン1-7)または「TRV-027」(アンジオテンシンII受容体タイプ1に対するβアレスチンバイアス作動薬)投与によるレニン-アンジオテンシン系(RAS)の調節は、プラセボ投与と比較して酸素投与日数を短縮しなかった。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのWesley H. Self氏らが、2つの無作為化試験の結果を報告した。前臨床モデルで、SARS-CoV-2感染によってRASの調節不全(アンジオテンシン1-7に比べてIIの活性が増大)が引き起こされることが示唆され、新型コロナ病態生理の重要な要因である可能性が仮説として示されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「重症COVID-19患者へのRAS調節薬投与を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2023年4月11日号掲載の報告。「TXA-127」「TRV-027」をそれぞれ5日間静脈内投与 研究グループは2021年7月22日~2022年4月20日に米国35病院で、急性COVID-19で入院し低酸素血症を呈した成人を対象に、2つの無作為化比較試験(TXA-127試験、TRV-027試験)を行った。TXA-127試験では、開発中のTXA-127の静脈内投与(0.5mg/kg/日)を、TRV-027試験では同様に開発中のTRV-027の持続的静脈内投与(12mg/時)をいずれも5日間実施し、それぞれプラセボ投与と比較した。  主要アウトカムは酸素非投与日数で、28日時点における死亡と酸素投与期間に基づく患者の状態の分類序数的アウトカムを評価した(RAS調節薬vs.プラセボの優越性は調整オッズ比[aOR]が1.0超)。主要副次アウトカムは、28日全死因死亡だった。安全性アウトカムは、アレルギー反応、腎代替療法導入、低血圧などだった。酸素非投与日数は両群ともにプラセボと有意差なし 両試験ともに、事前規定の基準で両薬剤が有効である可能性は低いことが示唆され、早期に中止となった。 TXA-127試験は、被験者数343例(31~64歳226例[65.9%]、男性200例[58.3%]、白人225例[65.6%]、非ヒスパニック系274例[79.9%])で、TXA-127群170例、プラセボ群173例だった。TRV-027試験は、被験者数290例(31~64歳199例[68.6%]、男性168例[57.9%]、白人195例[67.2%]、非ヒスパニック系225例[77.6%])で、TRV-027群145例、プラセボ群145例だった。 プラセボ群と比較して、TXA-127群(調整前平均群間差:-2.3[95%信用区間[CrI]:-4.8~0.2]、aOR:0.88、95%CrI:0.59~1.30)、TRV-027群(調整前平均群間差:-2.4[95%CrI:-5.1~0.3]、aOR:0.74、95%CrI:0.48~1.13)ともに、主要アウトカムの酸素非投与日数について有意差は認められなかった。 TXA-127試験では、28日全死因死亡はTXA-127群22/163例(13.5%)、プラセボ群22/166例(13.3%)報告された(aOR:0.83、95%CrI:0.41~1.66)。TRV-027試験では、28日全死因死亡はTRV-027群29/141例(20.6%)、プラセボ群18/140例(12.9%)報告された(aOR:1.52、95%CrI:0.75~3.08)。 安全性アウトカムの発生頻度については、TXA-127、TRV-027ともに、対プラセボについて同程度だった。

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第157回 新教授の下、体制立て直し再スタート切った三重大麻酔科。小野薬品は奨学寄附金中止、寄附講座への拠出も終了へ

汚職事件で壊滅的なダメージを被った三重大病院麻酔科こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週の4月14日金曜夜は、千葉ロッテマリーンズの佐々木 朗希投手と、オリックス・バファローズの山本 由伸投手の投げ合いを観戦するため、千葉のZOZOマリンスタジアムに行ってきました。同球場は、昨年のちょうど今頃、“野球感染”リスクの取材で訪れて以来です(参考:第105回 進まないリフィル処方に首相も「使用促進」を明言、日医や現場の“抵抗”の行方は?)。試合は、両投手合わせて20奪三振(うち佐々木投手11)という素晴らしい投手戦で、佐々木投手が7回1安打無失点の好投で今季2勝目をあげました。MLBに行ってしまうまでにどこまで成長するのか。これからがますます楽しみです。ちなみにコロナでさまざまな制限が行われていた応援ですが、マリンスタジアムではジェット風船以外、ほとんどが解禁されていました。それにしても同球場の2階席最上段は風が強く、春山並みに寒くて風邪をひきそうでした。さて、今回はランジオロール塩酸塩(商品名:オノアクト)の積極的な使用や医療機器の納入に便宜を図る見返りに現金を受け取ったなどとして、元臨床麻酔部教授や准教授、講師などが次々逮捕され、壊滅的なダメージを被った三重大病院の麻酔科の現在について書いてみたいと思います。同病院の麻酔科には、昨年4月に新任教授が着任、体制も抜本的に見直され、今年4月からは麻酔科の専門医を育成する研修プログラムもスタートしています。懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を不服として元教授は控訴この事件については、事件発覚直後の2020年9月からこの連載でも度々取り上げて来ました。元教授の裁判の判決が下った今年1月には、「第145回 三重大臨床麻酔部汚職事件、元教授に懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の有罪判決、賄賂は『オノアクト使用の見返りだった』」で、元教授に対する判決の内容を詳説しました。判決では、元教授に懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決が言い渡されました。裁判で最大の争点となったのは小野薬品工業からの寄附金200万円が賄賂に当たるかどうでした。判決は、被告が小野薬品の薬剤「オノアクト」の使用を増やす見返りを約束した上で寄附を求めたと認め、賄賂に当たると結論付けました。なお、元教授はこの判決を不服として、2月1日付で名古屋高等裁判所に控訴しています。三重大病院の年間手術数は約5,000件程度まで激減さて、一連の事件で三重大病院の麻酔科は大きなダメージを受けました。日経メディカル Onlineは4月6日付で「事件で手術や地域医療に多大な影響、再スタートの三重大麻酔科の今後 三重大麻酔科学講座教授、賀来隆治氏に聞く」と題するインタビュー記事を掲載しています。岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 麻酔蘇生学講師だった賀来氏が、教授選を勝ち抜き三重大学大学院 医学系研究科臨床医学系講座 麻酔科学教授となったのがちょうど1年前の2022年4月でした。インタビュー記事では、事件が三重大病院に及ぼした影響や、麻酔科の新体制について語っていて、とても興味深いです。同記事によれば、事件の影響などで、手術の麻酔を担当する臨床麻酔部だけでもピーク時には18人いた麻酔医は3人まで減ったとのことです。一方、麻酔科医が担当するもう一つの部門であった麻酔集中治療科も、賀来教授着任直前には2人まで減っていました。そうした影響もあって、三重大病院の手術数は激減、事件前は年間7,000件以上、8,000件に迫るほどだった手術件数は、新型コロナウイルス感染症の影響も加わり、2020年、2021年度は約5,000件程度にまで激減していたそうです。麻酔集中治療科と臨床麻酔部の2つの部署を統合賀来教授の着任した昨年4月から、麻酔科の体制変更が行われました。それまであった麻酔集中治療科(ペインクリニック外来、集中治療部の管理などを担当)と臨床麻酔部(手術の麻酔を担当)の2つの部署を統合、名称も麻酔科として運営していくことになりました。それまで、2つの部署は完全に分かれており、どちらかの麻酔科医がもう1つの部署の業務を手伝うこともなかったそうです。このように非常にいびつな形で麻酔科が運営されていた遠因は、20年近く前の麻酔科医大量退職にあったと考えられます。三重大病院では、2000年代初めに当時の麻酔科学教室教授から離反する形で麻酔科医の大量退職が起こっています。大学病院の手術にも影響が及んだため、2006年に麻酔科学教室とは独立した組織として麻酔管理と臨床実習に業務を特化した臨床麻酔部が新設され、2009年には大学医学部の講座(臨床麻酔学講座)も設けられました。その講座を率いていた元教授が今回の一連の事件を引き起こしました。2つの部署統合によって、2006年以前の元の体制(多くの大学病院と同様の体制)に戻ったことになります。麻酔科医の専門医研修プログラムも2023年度から再開麻酔科医については、賀来教授含め、岡山大から3人の麻酔科医が着任、8人体制となりました。専門研修指導医の数も満たしたため、事件を機に2020年10月から停止していた麻酔科医の専門医研修プログラムも2023年度から再開しました。今年度は、三重大関連施設で初期臨床研修を修了した医師1人が、プログラムに参加したとのことです。インタビュー記事で賀来教授は、「6人まで対応できると考えていましたが、今回は残念ながら1人でした。やはりかなりインパクトの強い事件が起こった医局なので、教授が替わったからといって、そのイメージはすぐにはマイナスからプラスには変わりません。(中略)私が医学部の学生と関わったとしても、それが専門医研修プログラムへの参加につながってくるのは何年か後になります。ですから、長い目で取り組んで行こうと考えています」と語っています。結果として岡山大のジッツとなったわけですが、麻酔科医も揃い、専門医研修プログラムも再開できたことは、地域医療にとっては喜ばしいことです。“黒歴史”が繰り返されないことを願うばかりです。小野薬品、寄附講座への拠出を全て終了へところで、事件のもう一方の“主役”とも言える小野薬品工業は、今回の事件で問題となった寄附講座について、2023年度に拠出予定の2件をもってすべて終了することを4月14日に同社サイト上で明らかにしました。公表された「コンプライアンス体制強化のための取り組み」と題する文書によれば、「2020年度に起こした不祥事以降、再発防止に向け取り組んできた」として、コンプライアンス体制をより強化するとともに、社員教育を充実させ、奨学寄附金の取り扱いの見直しを行うとしています。具体的には、「奨学寄附金(一般講座への寄附)の拠出に関しては、まず2021年度の寄附は中止とし、さらに、2022年度以降も引き続き行わないことを社内決定」したとしています。その上で、「アカデミアへの貢献の必要性や研究振興の社会的意義を鑑みながら、独立性、公平性を担保し得る新たな貢献方法を引き続き検討してきた結果、財団(小野薬品がん・免疫・神経研究財団)を設立し、2023年度より研究助成事業を行うことを決定」したとのことです。また、寄附講座への寄附については「2020年10月以降新たな寄附依頼に対して全てお断りし、それ以前に拠出を約束していた先、および複数年契約のもとに拠出を約束していた先のみへの対応としました。なお、これら寄附に関しても、2023年度中に全ての対応を終了します(2021年度の実施:21件、2022年度の実施:8件、2023年度実施予定:2件)」としています。実際、この事件をきっかけとして、製薬企業の奨学寄附金や寄附講座への寄附を廃止する動きは加速しているようです。これらは基本的に使い道を定めず無償提供されるため、大学や研究室にとっては使い勝手が良い研究費でした。奨学寄附金の廃止傾向が強まれば、研究力が弱い大学の資金調達がこれまで以上に難しくなるでしょう。もともと国からの研究費が少ない地方大学の教授たちの中には、三重大の事件を「とんでもないことをしてくれた」と苦々しく思っている人も少なくないはずです。大学間、医局間の研究力の差が、今後ますます広がっていくことが懸念されます。

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添付文書改訂:フォシーガが左室駆出率にかかわらず使用可能に、アセトアミノフェンが疾患・症状の縛りなく使用可能に ほか【下平博士のDIノート】第119回

フォシーガ:左室駆出率にかかわらず使用可能に<対象薬剤>ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ錠5mg/10mg、製造販売元:アストラゼネカ)<承認年月>2023年1月<改訂項目>[削除]効能・効果に関連する注意左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。[追加]臨床成績左室駆出率の保たれた慢性心不全患者を対象とした国際共同第III相試験(DELIVER試験)の結果を追記。<Shimo's eyes>これまで、本剤は「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること」とされていましたが、この記載は削除され、左室駆出率を問わず使用可能となりました。これは、左室駆出率が40%超の慢性心不全患者を対象に行われた国際共同第III相試験(DELIVER試験)の結果に基づいた変更です。なお、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)も、2022年4月に左室駆出率にかかわらず使用可能となっています。アセトアミノフェン:疾患や症状の縛りなく「鎮痛」で使用可能に<対象薬剤>アセトアミノフェン製剤(商品名:カロナールほか)<承認年月>2023年2月<改訂項目>[削除]効能・効果下記の疾患ならびに症状の鎮痛頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、変形性関節症[追加]効能・効果各種疾患および症状における鎮痛<Shimo's eyes>アセトアミノフェン製剤(カロナールほか)について、疾患や症状の縛りなく「鎮痛」の目的での使用が認められました。厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を踏まえた変更です。欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品がわが国では保険診療において使用できない「ドラッグラグ」解消の1つであり、効能または効果は疾患名の列挙ではなく「各種疾患および症状における鎮痛」とすることが適切とされました。シルガード9:2回接種が追加され、接種無料に<対象薬剤>組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来)(商品名:シルガード9水性懸濁筋注シリンジ、製造販売元:MSD)<承認年月>2023年3月<改訂項目>[追加]用法・用量9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6~12ヵ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができる。[追加]用法・用量に関連する注意9歳以上15歳未満の女性に合計2回の接種をする場合、13ヵ月後までに接種することが望ましい。なお、本剤の2回目の接種を初回接種から6ヵ月以上間隔を置いて実施できない場合、2回目の接種は初回接種から少なくとも5ヵ月以上間隔を置いて実施すること。2回目の接種が初回接種から5ヵ月後未満であった場合、3回目の接種を実施すること。この場合、3回目の接種は2回目の接種から少なくとも3ヵ月以上間隔を置いて実施すること。<Shimo's eyes>本剤は、わが国で3番目に発売されたHPVワクチンです。既存薬の1つである2価ワクチン(商品名:サーバリックス)は、子宮頸がんの主な原因となるHPV16型と18型の感染を、もう1つの既存薬である4価ワクチン(同:ガーダシル)は上記に加えて尖圭コンジローマなどの原因となる6型と11型の感染を予防します。本剤は、これら4つのHPV型に加えて、31型・33型・45型・52型・58型の感染も予防する9価のHPVワクチンです。本剤について、9歳以上15歳未満の女性に対する計2回接種の用法および用量を追加する一変承認が取得されました。これまでは計3回接種となっていましたが、接種回数が減ることで、ワクチン接種者や医療者の負担軽減が期待できます。また、既存の2価/4価ワクチンは定期接種の対象で、小学6年生~高校1年生相当の女子は公費助成によって無料で接種を受けることができますが、これまで本剤は任意接種で自費での接種でした。2023年3月7日の厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で、小学校6年生~15歳未満までに対する9価HPVワクチンの2回接種も、4月1日から定期接種化することが決定され、自費から公費接種に移行する準備が進められます。エンハーツ:HER2低発現乳がんにも使用可能に<対象薬剤>トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ点滴静注用100mg、製造販売元:第一三共)<承認年月>2023年3月<追記項目>[追加]効能・効果化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能または再発乳癌<Shimo's eyes>HER2低発現乳がんを標的にしたわが国初の治療薬となります。HER2低発現乳がんとはHER2陰性乳がんの新たな下位分類で、細胞膜上にHER2タンパクがある程度発現しているものの、HER2陽性に分類するほどの量ではない乳がんのことを指し、再発・転移のある乳がんの約50%を占めるとされます。本剤はこれまで有効な治療選択肢のなかったHER2低発現乳がんに対する薬剤となります。化学療法による前治療を受けたHER2低発現の乳がん患者を対象としたグローバル第III相臨床試験(DESTINY-Breast04)の結果に基づく申請となりました。この試験では、再発・転移のあるHER2低発現乳がん患者557例(494例はホルモン受容体[HR]陽性、63例人はHR陰性)が、3週間ごとにT-DXdを投与する群(373例)と、医師の選択した化学療法を受ける群(184例)にランダムに割り付けられました。その結果、エンハーツ投与群では、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)のいずれにも改善が認められました。PFSとOSの中央値は、T-DXd投与群で9.9ヵ月と23.4ヵ月、医師の選択した化学療法群で5.1ヵ月と16.8ヵ月でした。なお、本適応追加に関連して、ロシュ・ダイアグノスティックスのがん組織または細胞中のHER2タンパク検出に用いる組織検査用腫瘍マーカーキット「ベンタナultraView パスウェーHER2(4B5)」が3月3日に一変承認され、HER2低発現の乳がん患者を対象とした本剤のコンパニオン診断薬として使用できることになりました。

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第159回 アルツハイマー病行動障害の初の承認薬誕生近し?/コロナ肺炎患者への欧米認可薬の効果示せず

アルツハイマー型認知症の難儀な振る舞いの初の承認薬誕生が近づいているアルツハイマー型認知症患者の半数近い約45%、多ければ60%にも生じうる厄介な行動障害であるアジテーション(過剰行動、暴言、暴力など)の治療薬が米国・FDAの審査を順調に進んでいます。大塚製薬がデンマークを本拠とするLundbeck社と開発した抗精神病薬ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ)は昨夏2022年6月に速報された第III相試験結果でアルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(agitation associated with Alzheimer’s dementia、以下:AAD)を抑制する効果を示し1)、今年初めにその効能追加の承認申請がFDAに優先審査扱いで受理されました2)。アジテーションは誰もが生まれつき持つ感情や振る舞いが過度になることや場違いに現れてしまうことであり、多動や言動・振る舞いが攻撃的になることを特徴とします。アジテーションは患者本人の生きやすさを大いに妨げるのみならずその親しい人々をも困らせます。第III相試験では徘徊、怒鳴る、叩く、そわそわしているなどの29のアジテーション症状の頻度がプラセボと比較してどれだけ減ったかがCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)という採点法によって調べられました。29のアジテーション症状それぞれの点数は1~7点で、点数が大きいほど悪く、症状がない(Never)場合が1点で、1時間に繰り返し認められる場合(Several times an hour)は最大の7点となります。試験にはAAD患者345例が参加し、ブレクスピプラゾール投与群の12週時点のCMAI総点がプラセボ群に比べて5点ほど多く低下し、統計学的な有意差を示しました(22.6点低下 vs.17.3点低下)3)。同試験結果をもとに承認申請されたその用途での米国審査は順調に進んでおり、先週14日に開催された専門家検討会では同剤が有益な患者が判明しているとの肯定的判断が得られています4)。FDAの審査官も肯定的で、同剤の効果はかなり確からしいとの見解を検討会の資料に記しています5)。AADを治療するFDA承認薬はありません。ブレクスピプラゾールのその用途のFDA審査結果は間もなく来月5月10日までに判明します。首尾よく承認に至れば、同剤はFDAが承認した初めてのAAD治療薬の座につくことになります。その承認は歴史的価値に加えて経済的価値もどうやら大きく、その効能追加で同剤の最大年間売り上げが5億ドル増えるとアナリストは予想しています6)。重症コロナ肺炎患者へのIL-1拮抗薬anakinraの効果示せずスペインでの非盲検の無作為化第II/III相試験でIL-1受容体拮抗薬anakinraが重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎患者の人工呼吸管理への移行を防ぐことができませんでした7)。ANA-COVID-GEASという名称の同試験は炎症指標の値が高い(hyperinflammation)の重症コロナ肺炎患者を募り、179例がanakinraといつもの治療(標準治療)または標準治療のみの群に割り振られました。プラセボ対照試験ではありません。主要転帰は15日間を人工呼吸なしで過ごせた患者の割合で、解析対象の161例のうちanakinra使用群では77%、標準治療のみの群では85.9%でした。すなわちanakinraなしのほうがその割合はむしろ高く、人工呼吸の出番を減らすanakinraの効果は残念ながら認められませんでした。侵襲性の人工呼吸を要した患者の割合、集中治療室(ICU)を要した患者の割合、ICU滞在期間にも有意差はありませんでした。それに死亡率にも差はなく、28日間の生存率はanakinra使用群と標準治療のみの群とも93%ほどでした。試験の最大の欠点は非盲検であることで、他に使われた治療薬の差などが結果に影響した恐れがあります。同試験の結果はanakinraが有効だった二重盲検のプラセボ対照第III相試験(SAVE-MORE)の結果と対照的です。欧州は600例近くが参加したそのSAVE-MORE試験結果に基づいてコロナ肺炎患者へのanakinraの使用を2021年12月に承認しています8)。SAVE-MORE試験は重度呼吸不全か死亡に至りやすいことと関連する可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(suPAR)上昇(6ng/mL以上)患者を対象としました。今回発表されたスペインでの試験結果と異なり、SAVE-MORE試験では重症呼吸不全への進展か死亡がanakinra使用群ではプラセボ群に比べて少なく済みました(20.7% vs.31.7%)9)。また、生存の改善も認められ、anakinraは28日間の死亡率をプラセボ群の半分以下に抑えました(3.2% vs.6.9%)。SAVE-MORE試験の被験者選定基準にならい、欧州はsuPARが6ng/mL以上の酸素投与コロナ肺炎患者への同剤使用を認めています10)。米国もsuPARが上昇しているコロナ肺炎患者への同剤使用を取り急ぎ認可しています11)。参考1)Otsuka Pharmaceutical and Lundbeck Announce Positive Results Showing Reduced Agitation in Patients with Alzheimer’s Dementia Treated with Brexpiprazole / BusinessWire 2)Otsuka and Lundbeck Announce FDA Acceptance and Priority Review of sNDA for Brexpiprazole for the Treatment of Agitation Associated With Alzheimer’s Dementia / BusinessWire3)Otsuka Pharmaceutical and Lundbeck present positive results showing reduced agitation in patients with Alzheimer’s dementia treated with brexpiprazole at the 2022 Alzheimer's Association International Conference / BusinessWire4)Otsuka and Lundbeck Issue Statement on U.S. Food and Drug Administration (FDA) Advisory Committee Meeting on REXULTI® (brexpiprazole) for the Treatment of Agitation Associated with Alzheimer’s Dementia / BusinessWire5)FDA Briefing Document6)Otsuka, Lundbeck head into key FDA panel meeting with agency support for their Rexulti application / FiercePharma7)Fanlo P, et al. JAMA Netw Open. 2023;6:e237243.8)COVID-19 treatments: authorised / EMA9)Kyriazopoulou E, et al. Nature Medicine. 2021;27:1752-1760.10)Kineret / EMA11)Kineret® authorised for emergency use by FDA for the treatment of COVID-19 related pneumonia / PRNewswire

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医療者の無症候コロナ感染が増加、既感染の割合は?/順大

 本邦では、ワクチン接種率が高いにもかかわらず、多くの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が確認されている。しかし、感染の既往を示す抗体の陽性率に関する研究は限られている。そこで順天堂大学では、医療者をはじめとした職員を対象として、2020年から年次健康診断時に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査を実施している。2020年、2021年における抗N抗体※陽性率はそれぞれ0.34%、1.59%と低かったが、今回報告された2022年の調査結果では、17.7%に増加していた。また、抗N抗体陽性者のうち、約半数は感染の自覚がなかったことが明らかになった。本研究結果は、順天堂大学の金森 里英氏らによって、Scientific Reports誌2023年3月27日号で報告された。※ワクチンを接種した場合は抗S抗体が陽性となり、SARS-CoV-2に感染した場合は、抗N抗体と抗S抗体の両方が陽性になる。無症候コロナ感染が医療機関においても多く認められた 順天堂大学の年次健康診断(2022年7月17日~8月21日)を受診した3,788人(医師1,497人、看護師1,080人、検査技師182人、その他の医療従事者320人、事務職員542人、研究者157人、その他10人)を対象に、SARS-CoV-2抗体検査を実施した。 無症候コロナ感染を調査した主な結果は以下のとおり。・対象者3,788人の年齢(中央値)は36歳(範囲:20~86)で、女性が62.8%であった。ワクチン3回接種は89.3%であった。・2022年の年次健康診断時までに、357人がPCR検査に基づく新型コロナ感染歴を有していた。・2022年における抗N抗体陽性率は17.7%(669/3,788人)であった(2020年:0.34%、2021年:1.59%)。・抗N抗体陽性者669人のうち48.6%(325人)は、過去にPCR検査に基づく新型コロナ感染歴がなかった。また、抗N抗体陽性で、過去にPCR検査に基づく新型コロナ感染歴のある344人のうち、40人は無症候感染であった。・PCR検査に基づく新型コロナ感染歴のある357人のうち、79.0%(282人)は2022年1月以降(東京でのオミクロン株の初確認後)に感染していた。 著者らは、「ワクチン接種率が高く、徹底した感染対策がとられている医療機関においても無症候コロナ感染が多く認められたことから、無症候感染率の高さが急速な感染拡大を引き起こす要因となっている可能性がある。医療現場での感染拡大を完全に抑制することは難しいかもしれないが、医療現場では定期的な検温、衛生管理、マスクなどの継続的な取り組みが必要になる」とまとめた。

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第143回 コロナ5類へ移行後、療養期間は5日間に短縮を/厚労省

<先週の動き>1.コロナ5類へ移行後、療養期間は5日間に短縮を/厚労省2.新興感染症対策を加えた第8次医療計画のパブコメ募集/厚労省3.医療・介護人材不足につけ込む悪質な紹介業者へ対策を/規制改革推進会議WG4.出産費用の自己負担ゼロに向けて検討開始へ/岸田総理5.整形外科医の過労死を認定、病院側に賠償金4900万円の判決/群馬県6.花粉症への効果をうたう健康茶からステロイドを検出、販売停止へ/国民生活センター1.コロナ5類へ移行後、療養期間は5日間に短縮を/厚労省厚生労働省は、4月14日に令和5年5月8日以降の感染症法の取扱いに関する事前の情報提供として、各都道府県、保健所設置市などに対して「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の療養期間の考え方等について」の事務連絡を発出した。この中で、新型コロナウイルスが感染症法の5類へ移行した後は、感染者の療養の目安を発症翌日から原則5日とするほか、医療体制については、発熱患者に対応する医療機関を約1.5倍の6万4千施設に増やすこと、医療費については高額な治療薬代以外は自己負担が発生するとしている。また、感染者数については5月8日以降、定点把握となり、毎週金曜日の公表となるほか、死亡者数は毎日の公表も中止し、5ヵ月後にまとめる人口動態統計により月単位での公表となる。5類への移行については今月後半に開催される感染症部会で最終確認の上、決定される見込み。(参考)コロナ死者数の公表、5か月後に月単位で…感染者数は毎週金曜日(読売新聞)療養期間やマスク、同居家族の感染は コロナ5類移行後の考え方公表(朝日新聞)コロナ5類移行後、感染者の外出自粛義務はなくなるが、「発症から5日間は外出を控える」などの留意を-厚労省(Gem Med)新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の療養期間の考え方等について[令和5年5月8日以降の取扱いに関する事前の情報提供](厚労省)感染症法上の位置づけ変更後の療養に関するQ&A(同)2.新興感染症対策を加えた第8次医療計画のパブコメ募集/厚労省厚生労働省は、4月14日に「医療提供体制の確保に関する基本方針の見直し案」を公表し、同日、パブリックコメントの募集を開始した。去年12月にまとめた「第8次医療計画等に関する意見のとりまとめ」とは別にとりまとめられた「新興感染症発生・まん延時における医療」を含めて、第8次医療計画の「医療計画作成指針」などの策定で、新興感染症の発生・まん延時に、通常医療と両立しながら対応できる体制を確保するため、各都道府県に対して、病床確保について医療機関との協定を締結するよう求めている。パブリックコメントは4月20日まで受付け、適用開始は令和6年4月1日の予定。(参考)新興感染症対応、通常の医療と両立 医療体制確保へ基本方針案、厚労省(CB news)医療提供体制の確保に関する基本方針の一部を改正する件(案)について(概要)(厚労省)第8次医療計画等に関する意見のとりまとめ(同)医療提供体制の確保に関する基本方針の一部を改正する件(案)に関する御意見の募集について(同)3.医療・介護人材不足につけ込む悪質な紹介業者へ対策を/規制改革推進会議WG政府は4月14日に開催した規制改革推進会議のワーキンググループにおいて「医療・介護」の人材紹介業者について、質の向上や適正な競争の促進を図る方針を確認した。医療、介護分野では、人手不足が深刻な中、人材紹介会社が高額な手数料を提示して、介護事業者らの経営を圧迫しており、診療報酬や介護報酬の引き上げが賃上げにつながらないなど批判が上がっていた。今後は、お祝い金制度の提示や斡旋した就職者に対して就職後2年以内に転職勧奨する悪質な人材紹介会社への対策を強化する。(参考)医療・介護で人材紹介会社への対策を検討 政府方針 悪質業者が「悪循環を招いている」(Joint)医療・介護、悪質人材業にメス 許可要件厳格化を検討(日経新聞)2022 年度特別養護老人ホームの人材確保および処遇改善に関する調査について(福祉医療機構[WAM])特養の8割が人材紹介会社に「不満」 大多数が「手数料高い」と回答=WAM調(Joint)4.出産費用の自己負担ゼロに向けて検討開始へ/岸田総理岸田 文雄総理大臣は、4月13日に衆議院の厚生労働委員会で、出産費用に公的医療保険を適用する検討をめぐる議論で、「保険適用する際には原則、自己負担をゼロにする」意向を示した。公明党の吉田 久美子衆院議員の質問に対して、「出産育児一時金を引き上げることによって、平均的な費用をすべて賄えるようにするとしたわけでありますから、保険適用にあたっても、こうした基本的な考え方、これは踏襲していきたい」と答弁した。一方、全国一律の診療報酬となるとサービスの選択の幅を狭めることになるとして、「出産費用の見える化を進め、効果などの検証を行うことが大事だ」と強調した。これを受けて、自民党は13日、政務調査会などの合同会議を開き、財源を含め議論していく方向を確認し、政策に盛り込む議論に着手した。一方、日本産婦人科医会の石渡 勇会長は記者懇談会で、「正常分娩の出産費用への公的医療保険の適用を検討する政府の方針を受けて、保険を適用するなら、全国で分娩を行える体制を維持することが最優先課題だ」と見解を述べた。(参考)出産費用 “保険適用の場合 自己負担生じない制度検討” 首相(NHK)自民 少子化対策の強化 政策の優先順位や予算など議論開始(同)「出産費用の自己負担ゼロ」、岸田首相が実現に意欲 消極姿勢を転換(朝日新聞)出産保険適用、分娩可能な体制維持が最優先 日本産婦人科医会会長(CB news)5.整形外科医の過労死を認定、病院側に賠償金4900万円の判決/群馬県群馬県伊勢崎市の病院で、勤務していた整形外科医(当時46歳)が、手術後の執刀後に意識を消失し、1ヵ月後に心筋梗塞で死亡したのは、過労死だとして、運営していた法人を遺族が約3億円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が4月14日に前橋地方裁判所で言い渡された。杉山裁判官は「著しい疲労の蓄積を認識できたのに、人員の補充や業務の軽減を怠った」として、法人側に計約4,900万円の賠償を命じた。同院では、男性医師を含め常勤医2名の体制であったが、もう1人の医師が休職したため、1名での勤務による長時間労働が常態化していた。死亡の直前1ヵ月間の時間外労働は107時間であった。(参考)その日4回目の手術後に倒れ…医師の過労死を認定、病院側に賠償命令(朝日新聞)医師過労死で病院側に4900万円の賠償命令 手術終え心肺停止(毎日新聞)6.花粉症の効果をうたう健康茶からステロイドが検出、販売停止へ/国民生活センター国民生活センターは、健康茶にステロイド成分が混入されていることが判明したと発表した。花粉症に効くとして販売されていた健康茶を飲用し、劇的に花粉症が改善した患者の血液検査で、副腎皮質ホルモンの値が低下するなど異常があったとの報告が、医師からの事故情報に連絡があったことがきっかけ。国民生活センターの調査の結果、お茶1gあたりデキサメタゾンが3μg含まれていたため、医薬品医療機器法違反の恐れがあるため、国民生活センターは厚生労働省と消費者庁に対して、事業者への指導を求めた。また、国民生活センターは飲用している人に対して、医療機関に受診して医師に相談するよう求めている。(参考)花粉症への効果をほのめかした健康茶にステロイドが含有-飲用されている方は、医療機関にご相談を-(国民生活センター)花粉症への効果うたう健康茶からステロイド検出…「血液検査に異常」と報告あり判明(読売新聞)

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ドキシサイクリン曝露後予防、男性間性交渉者の細菌性性感染症に有効か/NEJM

 男性間性交渉者(MSM)では、ドキシサイクリン曝露後予防(doxy-PEP)は標準治療と比較して、細菌性性感染症(STI)の発生率が有意に低く、有害事象プロファイルや安全性、受容性に関する懸念はないことが、米国・ザッカーバーグ・サンフランシスコ総合病院・外傷センターのAnne F. Luetkemeyer氏らが実施した「DoxyPEP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年4月6日号で報告された。米国4施設の無作為化試験 DoxyPEP試験は、サンフランシスコ市とシアトル市の4つの施設で実施された非盲検無作為化試験であり、2020年8月~2022年5月の期間に参加者の登録が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に対する曝露前予防(PrEP)を行っている人々(PrEPコホート)、またはHIVに感染している人々(PLWHコホート)で、過去1年間にNeisseria gonorrhoeae(淋菌)、Chlamydia trachomatis(クラミジア・トラコマチス)の感染、または梅毒を有したことのあるMSMおよびトランスジェンダー女性であった。 被験者は、コンドームを使用しない性交から72時間以内にドキシサイクリン(200mg)の錠剤を内服する群、またはドキシサイクリンを使用しない標準治療を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。STI検査は年4回(3ヵ月ごと)行った。 主要エンドポイントは、追跡期間の四半期当たり1件以上のSTI(淋病、クラミジア、梅毒)の発生とした。1例予防のための四半期当たり治療必要数は約5件 501例が登録された。PrEPコホートが327例(ドキシサイクリン群 220例、標準治療群107例)、PLWHコホートは174例(119例、55例)であった。全体の67%が白人で、7%が黒人、11%がアジア人/太平洋諸島系、30%がヒスパニック系/ラテン系だった。 PrEPコホートにおいては、STIの診断は、ドキシサイクリン群では四半期の受診570件のうち61件(10.7%)、標準治療群では257件のうち82件(31.9%)であり、両群間の絶対差は-21.2ポイント、相対リスクは0.34(95%信頼区間[CI]:0.24~0.46、p<0.001)であった。 また、PLWHコホートにおけるSTIの診断は、ドキシサイクリン群では四半期の受診305件のうち36件(11.8%)、標準治療群では128件のうち39件(30.5%)であり、絶対差は-18.7ポイント、相対リスクは0.38(95%CI:0.24~0.60、p<0.001)だった。 1例のSTI発生の予防に要する四半期当たりの治療必要数は、PrEPコホートが4.7、PLWHコホートは5.3であった。 3種のSTIの発生率は、いずれもドキシサイクリン群が標準治療群に比べて低かった。PrEPコホートにおける相対リスクは、淋病が0.45(95%CI:0.32~0.65)、クラミジアが0.12(0.05~0.25)、梅毒が0.13(0.03~0.59)であり、PLWHコホートでは、それぞれ0.43(0.26~0.71)、0.26(0.12~0.57)、0.23(0.04~1.29)だった。 ドキシサイクリンに起因するGrade3の有害事象は5件みられたが(下痢性イベント3件、頭痛/片頭痛2件)、ドキシサイクリンによる重篤な有害事象は発現しなかった。ドキシサイクリン群では、参加者の2%が許容できない有害事象または好みにより投与を中止した。また、淋菌の培養が可能であった参加者においては、テトラサイクリン耐性の淋菌が、ドキシサイクリン群では13例中5例、標準治療群では16例中2例で発生した。 著者は、「これらの結果は、社会経済的、人種的に多様な集団において、HIV感染の状況にかかわらず、MSMでの細菌性STI予防におけるdoxy-PEPの有効性を示すものである」としている。

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新型コロナ、5類感染症変更後の療養期間を発表/厚労省

 厚生労働省は4月14日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症に変更される5月8日以降の取り扱いについて発表した。5類変更後の療養期間は、法律に基づく外出自粛は求められず個人の判断に委ねられる。そのうえで外出を控えることが推奨される期間として、発症日を0日目として5日間は外出を控えること、かつ、5日目に症状が続いている場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは外出を控え様子を見ることとした。なお、学校における取り扱いについては、文部科学省にてパブリックコメントを実施予定。 国立感染症研究所のデータに基づいた厚労省の発表によると、新型コロナウイルスを人にうつす期間には個人差があるが、発症2日前から発症後7~10日間は感染性のウイルスを排出する。発症後3日間は、感染性のウイルスの平均的な排出量が非常に多く、5日間経過後は大きく減少することから、とくに発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことに注意が必要だとしている。 5月8日以降の新型コロナ患者の外出自粛については以下の情報を参考とし、各医療機関や高齢者施設等でも、同情報を参考に新型コロナに罹患した従事者の就業制限を考慮するよう推奨している。なお、感染が大きく拡大している場合には、一時的により強い「お願い」を行う場合もあるという。(1)外出を控えることが推奨される期間・とくに発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことから、発症日を0日目(無症状の場合は検体採取日を0日目とする)として5日間は外出を控えること。※この期間にやむを得ず外出する場合でも、症状がないことを確認し、マスク着用等を徹底する。・5日目に症状が続いている場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは、外出を控え様子を見ること。(2)周りの方への配慮・10日間が経過するまでは、ウイルス排出の可能性があることから、不織布マスクの着用や、高齢者等ハイリスク者と接触は控える等、周りの方へうつさないよう配慮する。発症後10日を過ぎても咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、マスクの着用など咳エチケットを心掛ける。 5月8日以降の「濃厚接触者」の取り扱いについては、一般に保健所から新型コロナ患者の「濃厚接触者」として特定されることはない。また、「濃厚接触者」として法律に基づく外出自粛は求められない。

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第155回 「サル痘」感染対策、やってはいけない患者啓発とは

先日、京都滞在中、ある1通のメールを受信した。国立国際医療研究センター広報企画室からだ。フリーライターでも過去に取材をしたことがある医療機関・研究機関の広報部門に名刺を渡すと、ニュースリリースをはじめとするお知らせが届くようになる。私に国立国際医療研究センターからメールが届くようになったのは、2014年に扶桑社から発刊されている「週刊SPA!」で、知人を介して新興・再興感染症の特集を企画している編集者を紹介され、同特集の執筆者として同センターに取材に行ったのがきっかけである。ちなみにこの時は異例づくしだった。そもそも初対面となる担当編集者から指定された打合せ場所が同センターの結核病棟だった。なんと、担当編集者自らが結核にかかり、この病棟に入院中という。そこで私は同センターに赴き、1階の自動販売機でN95マスクを購入して装着。結核病棟に入院する編集者のもとを訪ねて打ち合わせをした。当時、アフリカではエボラウイルス病(旧エボラ出血熱)が流行していたことに加え、編集者本人が結核にかかったことで企画を思いついたという。なんともアグレッシブな企画立案経緯だが、実は雑誌の特集などでは編集者本人が当事者だったことがきっかけで企画が生まれることはよくある。結局、この時は編集者から病棟内を案内され、そこにあるオープンスペースで打ち合わせをした。編集者曰く、まずは特集内でエボラウイルス病と結核を取り上げることは決まっているので、それ以外にふさわしい感染症をリストアップして欲しいという。そこで私が挙げたのが「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」「デング熱」「E型肝炎」。最終的にはデング熱は外され、それ以外の2つをやることとなった。そこでSFTSの取材で再び同センターを訪れたのだった。取材当日、対象者である医師と向かい合った瞬間、開口一番に「なんかさっきデング熱の国内発生が報じられてました」と聞かされた。そのニュースをまだ知らなかった私は「え?」となった。何とも間が悪い。髭面のこの医師に企画段階でデング熱が外されたことを話すと、「あははは」と笑われた。この医師こそが今回のコロナ禍で全国区の有名人となり、現在は大阪大学大学院医学系研究科の感染制御医学講座教授に転身された忽那 賢志氏である。さて前置きが長くなったが、同センターからのメールには、今年に入ってから国内で急増している「サル痘」に関して、厚生労働省がメディア向けのハイブリット勉強会を開催する旨が記載されていた。同センターの医師が参加するため、情報提供のためリリースを行ったとある。私個人としても興味を持っていた事象だったので、ぜひ参加したかったが、基本は省内の記者クラブ所属記者向けである。開催日は金曜日夕方で、この日の午前中まで私は京都にいて夕刻までには東京に戻る予定だった。十分参加可能だ。とりあえずリリースにあった結核感染症課の担当者に電話連絡し、クラブ外からの参加が可能かを尋ねたところ、現在確認中なので決まり次第連絡をするとのこと。翌日午前中、京都最後のワーケーションとして仁和寺で満開だった御室桜を見ている時に参加可との着信が入り、その足で京都駅に向かい、新幹線に飛び乗った。さて、国内でのサル痘患者については4月12日現在108例が報告されており、うち100例が2023年になってからの発生報告例だ。とりわけ3月以降増加している。2022年内に報告された8例では、うち5例は海外渡航歴あるいは国内来訪中の外国人と接触があったが、2023年以降報告されている100例のうち海外渡航歴などがあったのはわずか1例。その意味では輸入感染症から土着性の感染症になりつつあるステージである。これまで判明した患者はすべて男性である。世界保健機関(WHO)がサル痘のハイリスク群として指摘しているのがMSM(Men who have Sex with Men)である。この辺の定義をより厳格に記述しておくと、MSMは男性同性愛者とイコールではなく、バイセクシャルも含む。現在、日本国内で報告されているサル痘患者が全員男性であることからもわかるように、MSMは明らかなハイリスク群である。勉強会でもこのような国内での感染状況などの事実関係や代表的な症状、予防法、現在の治療法などが簡潔に解説され、あとは出席した記者と厚労省担当者や国立国際医療研究センターからの出席医師と質疑応答になった。実は特筆すべきだったのがこの場のプレゼン側の出席者として、厚労省が新宿でHIV/エイズ、性感染症などのセクシャルヘルス情報センターを運営するNPO法人の代表を呼んだことである。NPO法人代表からは、参加した記者達に向けて、「報道時に感染者や感染経路と関連した特定の属性の人達への差別・偏見に十分にご注意いただきたい」とのお願いがあった。代表はより具体的に次のように語った。「特定の人たちに対する差別・偏見が生まれることは人権の視点で当然避けられるべきです。さらに過去40年にわたるエイズ対策の中で私達が学んできたことは、社会での差別・偏見が高まれば、感染する可能性のある人が(差別・偏見を受けやすい)その属性と関連付けられてしまうことを気にして、たとえば医療機関の受診や検査・相談を受けることを避けてしまう。それによって、必要な人が必要な予防やケアに繋がらなくなってしまう。その結果、感染症の流行を終わらせることがさらに遅くなってしまう」この点はその通りである。もっとも報道としては悩みが深い部分でもある。というのも前述のような国内発生例が現状では全員男性、WHOがMSMをハイリスク群と指摘している事実は報じないわけにはいかない。ところが事実を単純に報じるだけでは、少なからぬ人がサル痘を「男性同性愛者特有の性感染症」と受け止めて他人事と思い、一部ではそれが先鋭化してMSMへの偏見・差別につながることは十分起こり得るからだ。もちろん報道を含めた情報発信側により突っ込んだ努力は求められる。たとえば実際のサル痘の感染経路である▽げっ歯類をはじめサルやウサギなどウイルスを保有する動物との接触▽感染者や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触(性的接触を含む)▽感染者とかなり接近した対面での飛沫への長時間の曝露▽感染者が使用した寝具などとの接触、を具体的に報じることがその1つである。また、この感染経路を考えれば性感染症というのも正確ではないので、そうした表現は使わない。さらに、感染経路と現状の国内での感染急増を考慮すれば現在は女性も含めて多くの人が感染リスクにさらされているステージになっていることを報じることも必要だろう。しかし、そこまでしてもなお人は自分にわかりやすく解釈してしまう。報道は個人の解釈までには手が及ばないのである。たぶんこうした歯がゆい思いはMSMの人達に接したことがある医療従事者ならば経験していることではないだろうか。確かにかつてと比べれば、性的マイノリティに関する認識や議論はかなり進化している。とはいえ、政治家の不穏当発言に代表されるように、今も差別・偏見は各所に根強く残っている。差別・偏見を肯定するつもりはさらさらないが、社会全体でみると、少数派への理解がどうしても遅れてしまうのは世の常である。これを少しでも変えていくためには、ある程度のトップダウン型の対応が必要になると個人的には考えている。具体的には教育や法整備を実施することで、やや強制的に社会を変えていくのである。つまり「外堀」を埋めて否が応でも理解をしなければならない環境を作り出す。その意味で、今回このサル痘のメディア勉強会に厚労省がMSMを支援する当事者を呼んだことは、私は英断だと思っている。一方、サル痘の件も含め、性的マイノリティの人達が抱える心身のリスクに接する機会が社会のほかのクラスターよりも明らかに多いのは医療従事者である。この環境を考えれば、医療従事者向けにこうした性的マイノリティに関する理解を深めるための教育も国が率先して取り組んでいく時期に差し掛かっているのではないだろうかとも思っている。

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60歳以上への2価RSVワクチン、下気道・急性呼吸器疾患を予防/NEJM

 呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症に対する2価融合前F蛋白ベース(RSVpreF)ワクチンは、60歳以上の高齢者において、RSV関連下気道感染症およびRSV関連急性呼吸器疾患を予防し、安全性への明らかな懸念はないことが示された。米国・ロチェスター大学医療センターのEdward E. Walsh氏らが、日本を含む7ヵ国240施設が参加し行われた無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「RENOIR試験」の中間解析結果を報告した。RSV感染症は、高齢者に重大な疾患を引き起こすが、高齢者集団におけるRSVpreFワクチンの有効性と安全性は不明であった。NEJM誌オンライン版2023年4月5日号掲載の報告。60歳以上の約3万5,000例を対象に、RSVpreFワクチンの有効性と安全性を評価 研究グループは2021年8月31日~2022年7月14日に、60歳以上の高齢者合計3万5,971例を、RSVpreFワクチン120μg(RSVサブグループ、RSV-AおよびRSV-B、各60μg)群(ワクチン群)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、単回筋肉内投与した。 主要エンドポイントは2つで、少なくとも2つまたは3つの兆候/症状(咳、喘鳴、喀痰、息切れ、頻呼吸など)が1日以上持続し、かつ症状発現後7日以内にRT-PCR検査でRSV感染が確認されたRSV関連下気道感染症(すなわち急性呼吸器疾患)に対するワクチンの有効性であった。副次エンドポイントは、RSV関連急性呼吸器疾患に対するワクチンの有効性とした。 中間解析(カットオフ日2022年7月14日)時点で、3万4,284例がRSVpreFワクチン(1万7,215例)またはプラセボ(1万7,069例)の接種を受けた。兆候/症状を伴うRSV関連下気道感染症の予防効果(ワクチンの有効率)は67~86% 少なくとも2つの兆候/症状を伴うRSV関連下気道感染症は、ワクチン群11例(1.19例/1,000人年)、プラセボ群33例(3.58例/1,000人年)に認められ、ワクチンの有効率は66.7%(96.66%信頼区間[CI]:28.8~85.8)であった。また、少なくとも3つの兆候/症状を伴う同疾患はそれぞれ2例(0.22例/1,000人年)および14例(1.52例/1,000人年)で確認され、ワクチンの有効率は85.7%(96.66%CI:32.0~98.7)であった。 RSV関連急性呼吸器疾患は、ワクチン群22例(2.83例/1,000人年)、プラセボ群58例(6.30例/1,000人年)に発生し、ワクチンの有効率は62.1%(95%CI:37.1~77.9)であった。 注射部位反応の発現率はワクチン群(12%)がプラセボ群(7%)より高かったが、全身性のイベント発現率は同程度であった(それぞれ27%、26%)。ワクチン接種後1ヵ月までに報告された有害事象の発現率は同程度で(それぞれ9.0%、8.5%)、治験担当医師によって接種に関連した有害事象と判断されたのはそれぞれ1.4%、1.0%であった。 重症または生命を脅かす有害事象は、ワクチン群0.5%、プラセボ群0.4%で報告された。データカットオフ日までに報告された重篤な有害事象は、各群2.3%であった。

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