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コロナ2価ワクチンのブースター接種、安全性が示される/BMJ

 50歳以上の成人において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する4回目ブースター接種ワクチンとしてのオミクロン株対応2価mRNAワクチンは、事前規定の27種の有害事象に関するリスク増大との関連は認められなかったことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らによる同国の50歳以上の接種者を対象に行った試験で示された。BMJ誌2023年7月25日号掲載の報告。接種後28日間の27種の有害事象による病院受診率を評価 研究グループは2021年1月1日~2022年12月10日に、COVID-19ワクチンを3回接種した50歳以上の成人222万5,567人を対象とするコホート試験を行った。 主要アウトカムは、オミクロン株対応2価mRNAワクチンの4回目ブースター接種後28日間(主要リスク期間)の27種の有害事象による病院受診率で、同ワクチン3回目あるいは4回目接種後29日以降(参照期間)の同受診率と比較した。27種の有害アウトカムいずれも増大せず 2価mRNAワクチンの4回目接種者は、174万417人(平均年齢67.8[SD 10.7]歳)だった。 2価mRNAワクチンの4回目接種は、参照期間と比較して、主要リスク期間の全27種の有害アウトカムの統計学的に有意な増大と関連していなかった。たとえば、虚血性心イベントの発生件数は、主要リスク期間で672件、参照期間では9,992件で、発生率比は0.95(95%信頼区間[CI]:0.87~1.04)だった。 年齢や性別、ワクチンタイプに基づく解析や、別の解析手法を用いた場合でも、同様の結果が得られた。 ただし事後分析で、心筋炎のリスクが検出されたが(女性被験者では統計学的に有意に関連)、発現はまれで少数の症例に基づく所見だった。また、脳梗塞リスクの増大はみられなかった(主要リスク期間644件vs.参照期間9,687件、発生率比:0.95、95%CI:0.87~1.05)。

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オズウイルス感染症に気をつけろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さん、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。さて、前回その1では、世界初のオズウイルス感染症の事例についてご紹介しました。症例を簡単に説明しますと、「茨城県在住の70代女性が、マダニ刺咬後に発熱を呈し、血小板減少、肝障害、腎障害、CK上昇、フェリチン高値、凝固障害などがみられ、最終的には心筋炎によると思われる心室細動で亡くなられてしまった」という事例でした。オズウイルスはどこにいるか?このオズウイルスですが、すでにヒトと動物について血清疫学調査が行われています1)。まず、2013~2019年にかけて山口県の猟師24人と野生動物240頭(ニホンザル40頭、イノシシ124頭、ニホンジカ76頭)から血清サンプルを採取し、猟師2人、そしてサル47.5%、イノシシ60.5%、ニホンジカ73.7%に中和抗体が確認されました。動物における陽性率の高さは驚きですね。そして、ヒトでも抗体陽性例がみつかっていることから、他にも診断されずに感染している事例が潜在しているものと推測されます。さらにこの研究では、確立したELISA法を用いて、他の都道府県のニホンザル、イノシシ、ニホンジカのオズウイルス感染も調査しています。2007~2019年に山口県、和歌山県、三重県、大分県、岐阜県、富山県、岐阜県、千葉県で捕獲された動物の血清陽性率は以下の通りでした。ニホンザル山口県47.5%、和歌山県33.3%、三重県6.3%イノシシ山口県55.8%、和歌山県34.8%、岐阜県10.5%、大分県10.3%、富山県・栃木県ともに0%ニホンジカ山口県37.8%、千葉県30%、和歌山県11.1%、岐阜県8.3%富山県、栃木県からはオズウイルスの抗体陽性の動物はみつかっていませんが、それ以外の山口県、和歌山県、三重県、岐阜県、大分県、千葉県からは割合の違いはあれど抗体陽性の動物がみつかっています。このことからは、オズウイルスは世界初の症例が報告された茨城県、そしてマダニからウイルスがみつかった愛媛県だけでなく、より広範囲に分布していると考えられます。また、元々ウイルスがみつかったマダニがタカサゴキララマダニというマダニであったことから、このタカサゴキララマダニの分布と同じく関東以南にオズウイルスも分布している可能性があります(基本的にマダニ媒介感染症の流行地域は、媒介するマダニの分布する地域に規定されます)。ということで、今後新たなオズウイルス感染症の症例がみつかる可能性は高いと考えられます。オズウイルスの検査に困ったらでは、「どのようなときにオズウイルス感染症を疑うか」について、アプローチとしては2つあると考えられます。1つはマダニ媒介感染症が疑われるけれども原因不明の場合、もう1つは原因不明の心筋炎を診た場合です。マダニ媒介感染症が疑われる場合(たとえばマダニ刺咬歴がある、フォーカス不明で肝障害を伴う発熱があるなど)は、その地域で流行しているマダニ媒介感染症、たとえばツツガムシ病、日本紅斑熱、SFTSなど保健所を介して地方衛生研究所で検査をしてもらいます。それでも診断がつかない場合は、オズウイルス感染症が鑑別に挙がってくるかもしれません。オズウイルスの検査は国立感染症研究所で行えるはずですが、お願いすれば全例検査をしてもらえるかはわかりません。参考までに、私忽那は、日本医療研究開発機構(AMED)の海老原班「新興ダニ媒介性ウイルス重症熱に対する総合的な対策スキームの構築」の分担研究において、ダニ媒介感染症が疑われるものの診断が不明な発熱患者の症例を集積し、新興ウイルスの検査や未知の病原体の探索をするためのレジストリを構築するプロジェクトを実施しています。研究班は国立感染症研究所の先生方と行っているものですので、このレジストリに登録していただき、オズウイルスの検査に回すというフローは可能ですので、疑わしい症例があればぜひ忽那までお問い合わせください。(お問い合わせ先アドレス:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp)基本的には「地方衛生研究所で検査できるマダニ媒介感染症が除外されている症例」が対象になります。時はマダニ戦国時代ッ!図2 日本国内のマダニからみつかっている新興ウイルス画像を拡大する(筆者作成)さて、オズウイルスが注目を集めていますが、実はオズウイルスだけでなく、他にもわが国にはマダニ媒介性ウイルス感染症が潜在しています。オズウイルスが、ヒトでの感染例が報告される前から存在が知られていたように、わが国のマダニから、まだヒトでの感染例が報告されていないウイルスがたくさんみつかっているのです。その1でも触れましたがSFTSの発見以降、ヒトでの感染例がみつかる前からマダニの持っているウイルスを先に調べるという手法が行われるようになりました。オズウイルス以外にも、日本国内のマダニからは、Tarumizu tick virus2)、Muko virus3)、Kabuto Mountain virus4)、Okutama tick virus5)、Mukawa virus6)などさまざまなウイルスがみつかっています。垂水…奥多摩…甲山(かぶとやま)…そう、これらはすべて日本の地名です。日本のいろんなところに、まだヒトでの感染例が報告されていないマダニ媒介ウイルス感染症が存在しているのです…ちなみにヒトでの病原性があるのかどうかについても現時点では不明です。もちろん、これ以外にも未知のマダニ媒介ウイルスも存在しているでしょう。原因不明の発熱疾患をみた場合に、こうしたマダニ媒介感染症の可能性についてもぜひ頭の片隅に置いておいていただけましたら幸いです。1)Tran NTB, et al. Emerg Infect Dis. 2022;28:436-439.2)Fujita R, et al. Virus Res. 2017;242:131-140.3)Ejiri H, et al. Arch Virol. 2015;160:2965-2977.4)Ejiri H, et al. Virus Res. 2018;244:252-261.5)Matsumoto N, et al. J Vet Med Sci. 2018;80:638-641.6)Matsuno K, et al. mSphere. 2018;3.

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12歳から使用可能な経口の円形脱毛症治療薬「リットフーロカプセル50mg」【下平博士のDIノート】第127回

12歳から使用可能な経口の円形脱毛症治療薬「リットフーロカプセル50mg」今回は、JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬「リトレシチニブ(商品名:リットフーロカプセル50mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、12歳以上の小児から使用できる円形脱毛症治療の経口薬であり、広い患者におけるQOL向上が期待されます。<効能・効果>円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)の適応で、2023年6月26日に製造販売承認を取得しました。本剤投与開始時に、頭部全体のおおむね50%以上に脱毛が認められ、過去6ヵ月程度毛髪に自然再生が認められない患者に投与します。<用法・用量>通常、成人および12歳以上の小児には、リトレシチニブとして50mgを1日1回経口投与しますなお、本剤による治療反応は、通常投与開始から48週までには得られるため、48週までに治療反応が得られない場合は投与中止を考慮します。<安全性>1%以上に認められた臨床検査値異常を含む副作用として、悪心、下痢、腹痛、疲労、気道感染、咽頭炎、毛包炎、尿路感染、頭痛、ざ瘡、蕁麻疹が報告されています。なお、重大な副作用として、感染症(帯状疱疹[0.9%]、口腔ヘルペス[0.8%]、単純ヘルペス[0.5%]、COVID-19[0.2%]、敗血症[0.1%]など)、リンパ球減少(1.6%)、血小板減少(0.3%)、ヘモグロビン減少(0.2%)、好中球減少(0.2%)、静脈血栓塞栓症(頻度不明)、肝機能障害(ALT上昇[0.9%]、AST上昇[0.5%])、出血(鼻出血[0.5%]、尿中血陽性[0.1%]、挫傷[0.1%]など)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脱毛の原因となる免疫関連の酵素の働きを抑えることで、円形脱毛症の症状を改善します。2.免疫を抑える作用があるため、発熱、寒気、体のだるさ、咳の継続などの一般的な感染症症状のほか、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意し、気になる症状が現れた場合は速やかにご相談ください。3.本剤を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種ができないので、接種の必要がある場合は医師にご相談ください。4.妊婦または妊娠している可能性がある人はこの薬を使用することはできません。妊娠する可能性のある人は、この薬を使用している間および使用終了後1ヵ月間は、適切な避妊を行ってください。5.ふくらはぎの色の変化、痛み、腫れ、息苦しさなどの症状が現れた場合は、すぐに医師にご連絡ください。<Shimo's eyes>円形脱毛症は、ストレスや疲労、感染症などをきっかけとして、自己の免疫細胞が毛包を攻撃することで脱毛症状が起こる疾患です。急性期と症状固定期(脱毛症状が約半年超)に分けられ、急性期で脱毛斑が単発または少数の場合には発症後1年以内の回復が期待できます。一方、急性期後に自然再生が認められず、脱毛症状が継続する重症の円形脱毛症では回復率は低いとされ、診療ガイドラインには局所免疫療法や紫外線療法などの治療が記載されていますが、より簡便で効果的な治療法が求められていました。本剤は、JAK3および5種類のTECファミリーキナーゼを不可逆的に阻害する共有結合形成型の経口投与可能な低分子製剤です。円形脱毛症の病態に関与するIL-15、IL-21などの共通γ鎖受容体のシグナル伝達をJAK3阻害により強力に抑制し、CD8陽性T細胞およびNK細胞の細胞溶解能をTECファミリーキナーゼ阻害により抑制することで治療効果を発揮します。全頭型および汎発型を含む円形脱毛症を有する患者を対象とした国際共同治験(ALLEGRO-2b/3、ALLEGRO-LT)で、本剤投与群は、24週時のSALT≦20(頭部脱毛が20%以下)達成割合はプラセボと比較して統計的に有意な改善を示しました。なお、円形脱毛症に使用する経口JAK阻害薬として、すでにバリシチニブ(商品名:オルミエント)が2022年6月に適応追加になっています。バリシチニブは15歳以上が対象ですが、本剤は12歳以上の小児でも使用可能です。本剤はほかのJAK阻害薬と同様に、活動性結核、妊娠中、血球減少は禁忌となっています。また、感染症の発症、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化の懸念もあるため、症状の発現が認められた場合にはすぐに受診するよう患者さんに説明しましょう。円形脱毛症は、多くの場合は頭皮で脱毛しますが、ときには眉毛、まつ毛を含む頭部全体や全身に症状が出ることでQOLが著しく低下する疾患です。ストレスが多い現代社会で、ニーズの高い医薬品と言えます。

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コロナ急性期、葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏の症状消失までの期間は?/東北大

 コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期症状を有する患者に、対症療法に加えて葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を投与した結果、有意差はなかったもののすべての症状の消失までの期間は対照群よりも早い傾向にあり、息切れの消失は補足的評価において有意に早かったことを、東北大学の高山 真氏らが明らかにした。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2023年7月26日号の報告。コロナ患者に葛根湯2.5g+小柴胡湯加桔梗石膏2.5gを1日3回投与 高山氏らが2021年2月22日~2022年2月16日にかけて実施した多施設共同ランダム化比較試験1)において、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏の併用により、軽症~中等症I患者の発熱が早期に緩和され、とくに中等症I患者では呼吸不全への悪化が抑制傾向にあったことが報告されている。コロナウイルス感染症の症状や病状悪化のリスクはワクチン接種の有無によって異なる可能性があるため、今回はこのランダム化比較試験のデータを用いて、ワクチン接種の有無も加味した症状の消失に焦点を当てた事後分析を行った。 研究グループは、20歳以上で軽症~中等症Iのコロナウイルス感染症患者を対象に、通常の対症療法(解熱薬、鎮咳薬、去痰薬投与)を行うグループ(対照群)と、対症療法に加えて葛根湯2.5g+小柴胡湯加桔梗石膏2.5gを1日3回14日間経口投与するグループ(漢方群)の風邪様症状(発熱、咳、痰、倦怠感、息切れ)が消失するまでの日数を解析した。 コロナウイルス感染症患者に対症療法に加えて葛根湯2.5g+小柴胡湯加桔梗石膏2.5gを1日3回14日間経口投与した主な結果は以下のとおり。・解析には、漢方群73例(男性64.4%、年齢中央値35.0歳)、対照群75例(65.3%、36.0歳)が含まれた。そのうち、コロナワクチン接種者は、漢方群7例(9.6%)、対照群8例(10.7%)であった。初回診察時のリスク因子や重症度は両群で同等であった。・少なくとも1つ以上の症状が消失した割合は、漢方群84.9%、対照群84.0%であった。消失までに要した日数の中央値は漢方群2日(90%信頼区間[CI]:2.0~3.0)、対照群3日(90%CI:3.0~4.0)で、有意差は認められなかったものの漢方群のほうが短い傾向にあった(ハザード比[HR]:1.28、90%CI:0.95~1.72、p=0.0603)。コロナワクチン接種の有無別では、ワクチン未接種の漢方群のHRは1.31(90%CI:0.96~1.79、p=0.0538)でほぼ同等であった。・すべての症状が消失した割合は、漢方群47.1%、対照群9.1%であった。消失までに要した日数の中央値は、漢方群9日(6.0~NA)、対照群NAで、同様に漢方群のほうが短い傾向にあった(HR:3.73、95%CI:0.46~29.98、p=0.1763)。コロナワクチン未接種の漢方群のHRは4.17(95%CI:0.52~33.64、p=0.1368)であった。・競合リスクを考慮した共変量調整後の補足的評価において、息切れの消失は漢方群のほうが対照群よりも有意に早かった(HR:1.92、95%CI:1.07~3.42、p=0.0278)。コロナワクチン未接種の漢方群では、発熱(HR:1.68、95%CI:1.00~2.83、p=0.0498)および息切れ(HR:2.15、95%CI:1.17~3.96、p=0.0141)の消失が有意に早かった。 これらの結果より、研究グループは「軽症~中等症Iのコロナウイルス感染症患者に対する漢方治療の分析において、すべての症状の評価においても各症状の評価においても、対照群よりも漢方群のほうが早く症状が消失していた。これらの結果は、急性期のコロナウイルス感染症患者に対する漢方治療の利点を示すものである」とまとめた。

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C型肝炎にDAA治療成功も死亡率高い、その理由は/BMJ

 インターフェロンを使用せず直接作用型抗ウイルス薬(DAA)で治療に成功したC型肝炎患者では、一般集団と比較して死亡率が高く、この過剰な死亡の主な要因は薬物や肝臓関連死であることが、英国・グラスゴー・カレドニアン大学のVictoria Hamill氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年8月2日号に掲載された。カナダと英国の3地域のコホート研究 本研究は、ブリティッシュコロンビア州(カナダ)、スコットランド(英国)、イングランド(英国)の3つの地域のデータを用いた住民ベースのコホート研究である(研究資金は主に、責任著者のHamish Innes氏[グラスゴー・カレドニアン大学]が英国のMedical Research Foundationから受けたウイルス性肝炎フェローシップの報奨金が充てられた)。 対象は、インターフェロンフリーの抗ウイルス薬治療の時期(2014~19年)に、C型肝炎の治療に成功(ウイルス学的著効[SVR]を達成)した2万1,790例であった。 これらの参加者を肝疾患の重症度で、肝硬変なし(肝硬変前)、代償性肝硬変、末期肝疾患(ESLD)の3つの群に分けた(イングランドは肝硬変とESLDのみ)。追跡調査は、抗ウイルス薬治療の終了後12週の時点から開始し、死亡日または2019年12月31日に終了した。 主要アウトカムは、粗死亡率と年齢・性別標準化死亡率、および標準化死亡率比であり、年齢、性別、年度で調整した一般集団と比較した。ポアソン回帰分析で、全死因死亡率と関連する因子を同定した。3地域とも、肝疾患の重症度の上昇と共に死亡率増加 追跡期間中に1,572例(7%)が死亡した。主な死因は、薬物関連死(383例、24%)、肝不全(286例、18%)、肝がん(250例、16%)だった。 粗全死因死亡率(1,000人年当たりの死亡数)は、ブリティッシュコロンビア州が31.4(95%信頼区間[CI]:29.3~33.7)、スコットランドが22.7(20.7~25.0)、イングランドが39.6(35.4~44.3)であった。また、標準化死亡率はそれぞれ31.4(95%CI:29.3~33.7)、28.6(24.7~32.5)、38.5(34.1~42.9)だった。 全死因死亡率は、各コホートおよびすべての重症度の群において、一般集団に比べC型肝炎治療成功者でかなり高かった。たとえば、ブリティッシュコロンビア州の全死因死亡率は、肝硬変のない集団では一般集団の約3倍(標準化死亡率比:2.96、95%CI:2.71~3.23、p<0.001)、肝硬変の集団では約4倍(3.96、3.26~4.82、p<0.001)、ESLDの集団では10倍以上(13.61、11.94~15.49、p<0.001)であった。 また、スコットランドとイングランドでも同様に、疾患の重症度が上がるに従って全死因死亡率の標準化死亡率比が高くなり、いずれも有意な差が認められた(すべてのp<0.001)。 回帰分析では、高齢、最近の薬物乱用による入院、アルコール乱用による入院、併存疾患が死亡率の上昇と関連していた。 著者は、「これらの知見は、直接作用型抗ウイルス薬の効果を最大限に発揮させるためには、C型肝炎の治療が成功した後も、継続的な支援と追跡調査が必要であることを強調するものである」としている。

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第159回 新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省2.コロナワクチン接種、定期接種移行の議論に着手/厚労省3.ポストコロナで動き出す病院再編、地域住民が抗議相次ぐ/厚労省4.子宮頸がん検診の指針見直し、5年毎のHPV検査の導入も検討/厚労省5.医療資源を活用する「紹介受診重点医療機関」を初公表/厚労省6.地域に根ざした医師会活動プロジェクトを始動/日医1.新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルス感染拡大時の都道府県の注意喚起のための指標を示し、全国の自治体などに通知した。これによると、医療機関の外来が逼迫している割合が25%を超えたり、病床使用率が50%を超えたりした場合に注意喚起が行われることとなる。また、感染者数については、最近のオミクロン型感染拡大で外来の逼迫状況がピークとなる2週間前の感染者数を基準としている。さらに、感染拡大の際、医療機関の受診者数などを報告するシステムが外来逼迫割合が25%を超えるなどの指標に達した場合、各都道府県は住民に対して注意喚起や医療提供体制の強化を行うよう求めている。すでに都道府県で独自の基準を設けているところもあり、国の目安を使用するかどうかは、自治体が地域の医療提供体制や特性を踏まえて判断することになる。これらの指標は、新型コロナウイルス感染拡大の進行による医療逼迫に備えるための措置であり、今後、変更される可能性がある。各都道府県はこうした指標を参考にし、適切な注意喚起や対策を実施していくことが求められている。参考1)新型コロナウイルス感染症に関する住民への注意喚起等の目安について(厚労省)2)コロナ感染拡大時の注意喚起に目安 厚労省、医療逼迫で判断(日経新聞)3)コロナ感染拡大時“注意喚起の目安”4指標作成 厚生労働省(NHK)2.コロナワクチン接種、定期接種移行の議論に着手/厚労省厚生労働省は、8月9日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、新型コロナウイルスワクチン接種に関する議論を行った。新型コロナウイルスのワクチン接種は、オミクロン株の流行と重症化率の低下から、定期接種化を検討しているが、現在の公費負担による臨時接種であり、今後は自己負担が発生する定期接種への移行を視野に入れ、年内に結論を出す予定。9月20日から行われるオミクロン株の派生型に対応したワクチン接種は、生後6ヵ月以上のすべての人を対象に無料で来年3月まで行うことが承認されたが、積極的な勧奨は高齢者や重症化リスクの高い人に限定して行う。来年度以降の接種について厚労省は、WHOの新指針に基づき、定期的な追加接種を推奨せず、努力義務や接種勧奨は重症化リスクの高い人にのみ適用する。なお、定期接種化は2024年度からの実施を検討しており、今年中に部会で対象者や費用負担について結論を出す予定。参考1)第49回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(厚労省)2)今後の新型コロナワクチン接種について(その7)(同)3)コロナワクチン、来年度以降のあり方議論始まる 定期接種化も視野に(朝日新聞)4)新型コロナワクチン 秋接種、高齢者や重症化リスクのみ勧奨(毎日新聞)3.ポストコロナで動き出す病院再編、地域住民が抗議相次ぐ/厚労省厚生労働省が、新型コロナウイルス感染拡大前から取り組んでいる、「地域医療構想に基づいた病院再編・統合の方針」に対して、地域住民から地域医療の充実を求める意見が相次いでいる。岩手県の県立病院の再編、新潟県では上越市の新潟労災病院の閉院に伴う再編など、人口減少に伴う地域の医療機関の再編はコロナ対策でも必要とする行政側の方針に対して、地域住民からは医療態勢の確保と充実が求める声があげられている。今後、行政では地域のニーズに即した対応が求められている。参考1)県立病院の縮小・統合に反対 署名1万8千筆を県に提出 いわて労連など(デーリー東北)2)上越の病院再編 安心できる将来像確実に(新潟日報)3)三田市民病院の存続求める 市民団体が神戸市長に申し入れ(サンテレビ)4)病院の再編って必要なの? 感染症・高齢化対応で重要に(日経新聞)4.子宮頸がん検診の指針見直し、5年毎のHPV検査の導入も検討/厚労省厚生労働省はがん検診のあり方に関する検討会を開き、子宮頸がんの早期発見を促すため、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染を調べる検査を公的検診に導入するため、指針を改正する方針を決定した。厚労省は、30歳以上の女性に対しては2年毎の細胞診と5年おきのHPV検査のどちらかを選ぶことができるように提案。これにより、検診間隔が長くなり、受診者の負担が軽減される一方で、精度管理体制の整備が必要となる。新たな指針は2023年度中に見直され、24年度から導入される見通し。ただし、細胞診とHPV検査は異なるアプローチで、受診者の特定と負担軽減を図るための選択肢として提供される。新たな検診方法では、がんの発症前に高リスクな人を特定し、受診者の負担を軽減する上でのメリットがある。ただし、導入には自治体ごとの準備期間や陽性者のフォローが必要であり、実際の導入は限定的となる可能性がある。HPV検査導入については、自治体が従来の細胞診とHPV検査のどちらかを選択できる形で実施する予定。また、従来通りHPV感染を防ぐワクチンの定期接種も行われる。参考1)HPV検査導入へ指針改正、子宮頸がん早期発見に期待 厚労省検討会(産経新聞)2)指針での子宮頸がん検診、30歳以上にHPV検査も可 各自治体が判断、年度内に指針見直し(CB news)3)子宮頸がん検診、「2年毎の細胞診単独法」のほか、体制整った市町村では「5年毎のHPV検査単独法」も可能に-がん検診あり方検討会(Gem Med)4)第39回がん検診のあり方に関する検討会[資料](厚労省)5.医療資源を活用する「紹介受診重点医療機関」を初公表/厚労省東京都は、医療資源を重点的に活用するための外来施設である「紹介受診重点医療機関」83ヵ所を初めて公表した。この制度は、外来機能報告をもとに地域ごとの「協議の場」で承認されており、病院や診療所の医療実績データを使って医療関係者の協議を通じて決定される。紹介受診重点医療機関は、外来での特定の領域に特化した医療を提供する施設で、病院の外来診療の役割分担と連携を進め、患者の受診をスムーズにし、医療従事者の負担を軽減することを目指している。区中央部では大規模病院が多く、一方、医療資源の少ない地域では施設数は限られている。紹介受診重点医療機関の明示によって、東京都は医療資源の集中と均衡を促進し、地域医療の充実を図りたい考え、また、紹介受診重点医療機関では、病院の外来患者の待ち時間の短縮や勤務医の外来負担の軽減等の効果を見込んでいる。東京都以外の各道府県でも公表を進めており、厚生労働省はこれらをまとめた一覧を掲載している。参考1)紹介受診重点医療機関を都が初公表、計83カ所 1日時点(CB news)2)紹介受診重点医療機関について(厚労省)3)都道府県紹介受診重点医療機関リスト(同)4)紹介受診重点医療機関になると何が変わるのか?(PRRISM)6.地域に根ざした医師会活動プロジェクトを始動/日本医師会日本医師会は「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」を発表し、市民への理解を深めることを目指すことを明らかにした。プロジェクトはシンポジウム形式で、実地とWebのハイブリッド開催を予定している。第1回のテーマは「有事の医師会活動」で、大規模災害時の対応や新型コロナウイルス感染症の対策などを取り上げる。シンポジウムはアーカイブ動画や電子パンフレットで提供され、多くの市民が参加できるようにする。プロジェクトを通して、医師会の活動の周知と理解を促進し、地域医療の充実に寄与する目的を持つ。渡辺 弘司常任理事は、地域の時間外や災害時の医療対応など、医師会の多様な活動を通じて地域を支える重要性を語った。また、地域医師会と専門基幹病院の連携事例も紹介され、全国の医師会の活動を通じて地域の医療を支える取り組みを広く知らしめる狙いがある。参考1)日医、市民への新規プロジェクトを開始(時事通信)2)地域に根ざした医師会活動プロジェクトについて(日本医師会)

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新型コロナ、住民への注意喚起のタイミングの目安を発表/厚労省

 厚生労働省は8月9日の事務連絡にて、感染拡大する新型コロナウイルス感染症の早期対応のため、各都道府県に向けて住民等に注意喚起を行う際の検討の参考となるタイミングの目安を発表した1)。 なお、本目安は、新型コロナ流行時において医療への負荷が主たる課題となることから、感染拡大が継続したとしても医療提供体制を確保するために設定されたものであり、感染症サーベイランスにおける感染症の流行の程度に関する注意報・警報レベルとは考え方が異なる。また、本目安は暫定的に設定されたもので、今後の流行状況等を踏まえ、変更される可能性もあるという。 今回設定された住民への注意喚起等の目安は以下のとおり。1 住民への注意喚起等として考えられる内容(1)住民への注意喚起 都道府県において、住民に対し、医療に負荷がかかっている状況とあわせて、以下の注意喚起を行うことが考えられる。1. 発熱等の体調不良時、発症後5日間、症状軽快後24時間経過するまで外出を控えること2. 手洗いや換気などの基本的な感染対策の強化3. マスク着用推奨場面(医療機関や高齢者施設等の訪問時)でのマスク着用の徹底4. 軽症時や検査、診断書発行等のための救急受診を控えること5. 軽症の場合の自宅療養(食料、医薬品、検査キット等の準備)(2)医療提供体制等の強化 「今夏の新型コロナウイルス感染症等の感染拡大に備えた保健・医療提供体制の確認等について」(令和5年7月14日付事務連絡)で示されたとおり2)、感染拡大が継続したとしても医療提供体制を確保するため、以下の事項が徹底されるよう、各都道府県において、改めて病院長会議等を通じた医療関係者等との協議、入院先決定における助言等の必要な支援を行うことが考えられる。 1. 医療機関間の入院先の決定にあたり、重症者等を優先すること2. 地域における医療機関の役割に応じた受け入れを行うこと(重症者を受け入れる急性期病院、状態改善後の転院先として軽症者を受け入れる回復期病院等)3. 新型コロナ以外の疾患により入院している患者が新型コロナに感染した場合に、転院させず、継続的に診療を行うこと4. 円滑な入院調整を行うためのG-MIS等の活用5. 自宅等における療養体制を確保すること(薬局、訪問看護事業所、ケアマネジャー等との連携、酸素濃縮装置の確保等)6. 高齢者施設等における療養体制を確保すること2 都道府県による住民への注意喚起等の目安について 各都道府県において、1に示した住民への注意喚起や医療提供体制の強化(医療機関等への呼びかけ)を行う場合に、その参考となりうる目安を以下のとおり示すこととする。下記の目安も参考にして、過去の流行及びこれに伴う医療への負荷も含めて総合的に勘案し、必要に応じて基準を設定する(※)など、地域の実情に応じた対応をお願いしたい。(※)既に独自の基準等を設定して対応している都道府県に対して、変更を求めるものではない。また本目安は暫定的であり、今後変更される可能性がある。(1)目安の設定の考え方 これまでの考え方3,4)や直近の沖縄県における感染拡大の状況等を踏まえ、感染者数のピークの2週間前、在院者数及び確保病床使用率のピークの3週間前の数値を参考に目安を設定。(2)考えられる目安・外来の状況:「外来逼迫あり」割合(※)が25%を超えるとき・定点あたり報告数:直近のオミクロン株による感染拡大時の「外来逼迫あり」割合(※)のピーク時から2週間前の「定点当たり報告数」を超えるとき注 なお、足下の医療提供体制の状況も踏まえ、直近のピーク時を参照するのではなく、別途、個別に設定することも考えられる。(※)「外来逼迫あり」割合とは、医療機関等情報支援システム(G-MIS)の週次調査において、診療枠の関係で、当日中の来院を断っているかどうかを目安に、逼迫が生じていたかについて、該当ありと回答した医療機関の割合を指す。・在院者数:これまでのオミクロン株による感染拡大ピーク時の当該数の1/2を超えるとき(過去の感染拡大ピーク時と比較して軽症者の割合が高い場合は除くなど、入院患者の重症度等に応じて判断)。※欠勤している医療従事者数5)、救急搬送困難事案件数の増加傾向も参考とする。・確保病床使用率:50%を超えるとき(確保病床外の在院者数も留意すること。また、過去の感染拡大ピーク時と比較して軽症者の割合が高い場合は除くなど、入院患者の重症度等に応じて判断)。※(2)で記載した目安については、すべての目安を活用して各都道府県において基準の設定を求めるものではなく、これらを参考にして、総合的に勘案した上で必要に応じて基準を設定し、注意喚起などに活用することを想定している。※厚生労働省においても、各都道府県と密接に連携するとともに、感染拡大や医療提供体制の状況を踏まえて、必要に応じてリエゾン派遣等の支援を行うこととしている。■参考文献・参考サイト1)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に関する住民への注意喚起等の目安について(令和5年8月9日)2)厚生労働省:今夏の新型コロナウイルス感染症等の感染拡大に備えた保健・医療提供体制の確認等について(令和5年7月14日)3)BA.5強化宣言(令和4年7月新型コロナウイルス感染症対策本部決定)4)今秋以降の感染拡大で保健医療への負荷が高まった場合に想定される対応(令和4年11月新型コロナウイルス感染症対策分科会)5)重点医療機関における新型コロナウイルス感染症に関連して休んでいる看護職員数

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第57回 9月以降の「秋開始接種」の概要は?

XBB.1.5対応1価ワクチンが登場ソコストより使用医療従事者では最多で新型コロナワクチンを6回接種している方がいると思います。私も2023年6月に6回目接種を終えています。現在「令和5年春開始接種」が終盤になっていますが、新型コロナワクチンの接種率がかなり下がってきた印象です。1年以上経過すると、さすがに重症化リスクも上がってくるようなので、前回からの接種期間が空いている人は接種してもよいのではないかと思いますが。65歳以上の高齢者および5歳以上の基礎疾患を有する人やその他重症化リスクが高いと医師が認める方の場合は、基本的に接種が推奨されます。これ以外の健康な人は、予防接種法による接種勧奨・努力義務のいずれの適用もありません。「看護学生がワクチン接種していないと実習に参加できない」問題がわりとSNSで炎上していますが、デリケートな問題ですよね…(遠い目)。さて、9月20日以降使用されるXBB.1.5対応1価ワクチンは、マウスを用いた非臨床試験において、XBB.1.5に対して現行2価ワクチンよりも高い中和抗体価を誘導することが報告されています。XBB.1.5対応1価ワクチンの契約は、モデルナ社とファイザー社を合わせて2,500万回分がすでに済んでいます。数が少し少な目な気がしますが、第一三共の「ダイチロナ」がXBB.1.5対応1価ワクチンとして早期に参入してくるのかどうかは不明です。従来株でのダイチロナ承認となっていますが、変異ウイルス用のものを次々に出してくるのではないかと期待しています。「秋開始接種」の概要9月20日から始まる「秋開始接種」の概要は図のとおりになります。春開始接種では基礎疾患のない12~64歳は接種対象外だったのですが、今回再び対象になっています。とはいえ、「もう接種はいいや」と思っている人がかなり多いので、ヘタするとインフルエンザワクチンよりも打たれないという未来が待っているかもしれません。画像を拡大する図.新型コロナワクチン接種スケジュール(筆者作成)8月7日からオミクロン株対応2価ワクチンが初回接種可能にところで、あまり報道すらされていませんが、8月7日からオミクロン株対応2価ワクチンを初回接種できるようになりました。現状流通するのは5歳以上になります。生後6ヵ月~4歳に対するオミクロン株対応2価ワクチンも書面上は接種可能ですが、いずれXBB.1.5対応1価ワクチンを接種することになるため、こちらについては流通させない方針のようです。現在流行しているのはXBB系統ですが、従来型ワクチンと比べるとオミクロン株対応2価ワクチンでは、約7割の死亡予防効果が確認されています1)。そのため、「系統が違うから効かないのでは」と懸念しなくてもよいと思います。参考文献・参考サイト1)Lin DY, et al. Durability of Bivalent Boosters against Omicron Subvariants. N Engl J Med. 2023;388:1818-1820.

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わが国の平均寿命、コロナの影響などで男女とも低下/厚生労働省

 厚生労働省は、7月28日に令和4年の簡易生命表の概況を発表した。これによると男性の平均寿命は81.05歳、女性の平均寿命は87.09歳となり、前年と比較し男性は0.42年、女は0.4年下回ったほか、平均寿命の男女差は6.03年で前年より0.07年縮小した。 平均寿命の前年との差を死因別に分解すると、男性は悪性新生物(腫瘍)などの死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働いていたが、男女とも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、心疾患(高血圧性を除く)、老衰などの死亡率の変化が平均寿命を縮める方向に働いていた。 死因別死亡確率(主要死因)について、65歳では男女とも悪性新生物(腫瘍)の死亡確率が低く、心疾患、老衰の死亡確率が高くなっており、75歳および90歳ではさらにこの傾向が強くなっていた。前年と比較すると、悪性新生物(腫瘍)、心疾患、脳血管疾患および肺炎の死亡確率は、65歳、75歳および90歳のすべての年齢で男女とも低下していた。老衰の死亡確率は、男性はすべての年齢で上昇、女性は65歳および75歳で低下、90歳で上昇していた。平均寿命の男女差は年々縮小【平均寿命の年次推移】( )内は男女差令和2年 男性81.56歳 女性87.71歳(6.15年)令和3年 男性81.47歳 女性87.57歳(6.10年)令和4年 男性81.05歳 女性87.09歳(6.03年)【平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数】・平均寿命の延長に寄与した死因 男性:悪性新生物[腫瘍](0.06年)、肺炎(0.01年) 女性:肺炎(0.01年)・平均寿命の短縮に寄与した死因 男性:COVID-19(0.12年)、心疾患(0.07年)、老衰(0.05年) 女性:COVID-19(0.13年)、老衰(0.10年)、心疾患(0.06年)【死因別死亡確率(主要死因)上位3つ】・65歳 男性:悪性新生物[腫瘍](26.16%)、心疾患(14.31%)、老衰(8.31%) 女性:老衰(19.79%)、悪性新生物[腫瘍](17.72%)、心疾患(16.32%)・75歳 男性:悪性新生物[腫瘍](24.49%)、心疾患(14.50%)、老衰(9.73%) 女性:老衰(21.18%)、心疾患(16.76%)、悪性新生物[腫瘍](15.50%)・90歳 男性:老衰(17.91%)、心疾患(15.94%)、悪性新生物[腫瘍](14.43%) 女性:老衰(29.51%)、心疾患(17.61%)、悪性新生物[腫瘍](9.02%)【平均寿命の国際比較】※入手可能な資料より算出 日本 男性81.05歳 女性87.09歳 男性の最高:スイス(81.6歳)/男性の最低:コンゴ民主共和国(56.5歳)  女性の最高:日本(87.09歳)/女性の最低:コンゴ民主共和国(59.7歳)

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第175回 コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始

コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)を治療しうる手段をいくつかに分類して次々に検討する第II相試験の2つが米国で始まりました1)。それら試験はCOVID-19の長期経過の把握、治療、予防を目指す米国国立衛生研究所(NIH)の取り組みであるResearching COVID to Enhance Recovery(RECOVER)の一環として実施されています。早速始まった2試験の1つはRECOVER-VITAL2)と呼ばれます。ウイルス感染の持続、ウイルスの再活性化、過剰あるいは慢性的な免疫反応や炎症がlong COVIDに寄与し、ウイルスの除去や炎症の抑制をもたらす治療でlong COVIDが改善しうるという仮説の検証を目的としています。RECOVER-VITAL試験でプラセボと対決する治療の先鋒として白羽の矢が立てられたのはファイザーの抗ウイルス薬であるニルマトレルビル・リトナビル(日本での商品名:パキロビッドパック)です。より長期(25日間)の同剤投与によるlong COVID症状改善効果の検討への被験者組み入れはすでに始まっています。RECOVER-VITALとともに始まったRECOVER-NEURO3)という名称のもう1つの試験は遂行機能や注意などのlong COVID絡みの認知機能の低下を改善しうる治療手段の検討を目当てとしています。RECOVER-NEUROで検討される手段はすでに3つが決まっています。1つはインターネットを介した脳トレで、BrainHQと呼ばれます。BrainHQは認知障害の改善手段としてすでに普及しています。もう1つはPASC-Cognitive Recovery(PASC CoRE)と呼ばれ、BrainHQと同様にインターネットを介した脳トレであり、注意や遂行機能を改善する効果があります。3つ目は脳の活動や血流増加を助けることが知られるSoterix Medical社の製品を利用した脳の電気刺激です。同社の経頭蓋直流刺激(tDCS)製品は自宅で簡単にできるように作られています。睡眠や自律神経に注目した2つの試験RECOVER-SLEEPとRECOVER-AUTONOMICも準備段階にあり、間もなく始まります。RECOVER-SLEEPはコロナ感染後に変化した睡眠習慣や寝付きに対処しうる手段を検討します。同試験の一環として過眠や日中の過度の眠気への覚醒促進薬2種の効果がプラセボと比較されます。また、入眠や睡眠の維持の困難などの睡眠障害に睡眠の質を改善する手段が有効かどうかも検討されます。準備段階のもう1つの試験はRECOVER-AUTONOMICと呼ばれ、心拍、呼吸、消化などの生理機能ひとそろいを制御する自律神経系の失調と関連する症状への対処法を調べます。心拍異常、めまい、疲労などの症状を特徴とする体位性頻脈症候群の治療手段いくつかが手始めに検討されます。免疫疾患治療薬とプラセボの比較がその1つで、心拍亢進を伴う慢性心不全の治療薬とプラセボの比較も予定されています。運動できなくなることや疲労への手段を検討する試験も患者や専門家からの意見を取り入れて開発されています。今後次々に始まっていくRECOVER試験はlong COVIDの影響が最も大きい地域を含めて被験者を募っていきます。試験参加施設は自治体と協力してlong COVIDについての理解を促し、RECOVER試験への参加の普及に努めます。効果的な治療や手当てを検討する臨床試験はlong COVIDへの政府の取り組みの肝であり、苦労が絶えない患者やその家族が楽になるように努力していくと米国政府の役員は言っています1)。参考1)NIH launches long COVID clinical trials through RECOVER Initiative, opening enrollment / NIH 2)RECOVER-VITAL試験(ClinivalTrials.gov) 3)RECOVER-NEURO試験(ClinivalTrials.gov)

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不要な抗菌薬処方、60歳以上の医師に多く特定の医師に集中か

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含むウイルス感染症には、抗菌薬が無効であるにもかかわらず、抗菌薬が処方されている実態が報告されている1,2)。ただし、抗菌薬処方に関連する医師や患者の特徴については明らかになっていない。そこで、東京大学大学院医学系研究科の宮脇 敦士氏らは、本邦の一般開業医を対象としたデータベース(Japan Medical Data Survey:JAMDAS)を用いて、COVID-19の外来受診データを分析した。その結果、本邦の新型コロナのプライマリケアにおいて、抗菌薬の処方は少数の診療所に集中していた。また、60歳以上の医師は抗菌薬の処方が多かった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月25日号のリサーチレターで報告された。新型コロナの抗菌薬処方の傾向についてJAMDASを用いて解析 2020年4月1日~2023年2月28日の期間において、継続観察された843診療所の新型コロナの外来受診データ(JAMDAS)を分析し、抗菌薬処方の傾向について検討した。ロジスティック回帰モデル(月と都道府県で調整)を用いて、患者特性(性、年齢、合併症の有無)や医師特性(性、年齢)と抗菌薬処方の関連を調べた。なお、抗菌薬の処方が適切である可能性のある疾患の診断を有する患者の受診データは除外した。 JAMDASを用いて新型コロナの抗菌薬処方の傾向について検討した主な結果は以下のとおり。・COVID-19患者52万8,676例(年齢中央値33歳[四分位範囲:15~49]、女性51.6%)のうち、4万7,329例(9.0%)に抗菌薬が処方された。・新型コロナで最も多く処方された抗菌薬は、クラリスロマイシン(25.1%)であった。次いで、セフカペン(19.9%)、セフジトレン(10.2%)、レボフロキサシン(9.9%)、アモキシシリン(9.4%)の順に多かった。・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所で、全体の処方数の85.2%を占めていた。・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所における抗菌薬の平均処方率が29.0%であったのに対し、残りの90%の診療所における抗菌薬の平均処方率は1.9%であった。・医師が新型コロナに抗菌薬を処方する割合は、44歳以下の医師と比較して、60歳以上の医師で高かった(調整オッズ比[aOR]:2.38、95%信頼区間[CI]:1.19~4.47、p=0.03)。医師の性別によって、抗菌薬の処方に違いはなかった。・新型コロナ患者が抗菌薬を処方される割合は、18歳未満の患者と比較して、18~39歳(aOR:1.69、95%CI:1.37~2.09、p<0.001)および40~64歳(aOR:1.36、95%CI:1.11~1.66、p=0.01)の患者で高かった。・併存疾患のない新型コロナ患者と比較して、併存疾患を有する患者は抗菌薬を処方される割合が高かった(aOR:1.48、95%CI:1.09~2.00、p=0.03)。 本研究結果について、著者らは「本研究の限界として、患者の重症度など、未測定の交絡因子の影響を十分に考慮できないこと、JAMDASに含まれない診療所などへの一般化可能性には限界があることなどが挙げられる」としたうえで、「本研究結果は、抗菌薬の適正使用促進の取り組みに役立つ可能性がある」とまとめた。

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コロナ異種ワクチンによる追加接種を支持するエビデンス/BMJ

 オミクロン株が優勢な時期における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種では、プライマリ接種スケジュール(2回接種)や同種ブースター接種(3回)と比較して、異種ブースター接種(3回)はCOVID-19による入院や死亡の予防効果が優れていたことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2023年7月24日号に掲載された。3種のワクチンを比較する北欧のコホート研究 本研究は、北欧の4ヵ国(デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン)のデータを用いた住民ベースのコホート研究である(欧州医薬品庁[EMA]の助成を受けた)。 対象は、初回接種時に年齢18歳以上で、2020年12月27日~2022年12月31日に、プライマリ接種スケジュールとして、AZD1222(アストラゼネカ製)、BNT162b2(1価、ファイザー製)、mRNA-1273(モデルナ製)、あるいはこれらの任意の組み合わせで、少なくとも1回の接種を受けた集団であった。 主要アウトカムは、4ヵ国を合わせたCOVID-19関連入院とCOVID-19による死亡とした。フォローアップはブースター接種後14日目から75日間行い、相対的なワクチンの有効性を75日目の累積発生率を用いて(1-リスク比)として算出した。異種接種戦略を支持する新たなエビデンス 北欧4ヵ国全体で、108万6,418人がAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273による異種ブースター接種(3回)を、250万5,093人がBNT162b2+mRNA-1273による異種ブースター接種(3回)を受けた。 プライマリ接種(2回)のみと比較して異種ブースター接種は有効性に優れ、COVID-19関連入院の予防に関する有効性はAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273が82.7%(95%信頼区間[CI]:77.1~88.2)、BNT162b2+mRNA-1273は81.5%(78.9~84.2)であり、COVID-19による死亡の予防に関する有効性はそれぞれ95.9%(91.6~100.0)、87.5%(82.5~92.6)であった。 また、同種ブースター接種(BNT162b2またはmRNA-1273の3回接種)も同様に、プライマリ接種のみの場合に比べCOVID-19関連入院(≧76.5%)およびCOVID-19による死亡(≧84.1%)の予防効果の向上と関連が認められた。 異種ブースター接種を同種ブースター接種と比較すると、COVID-19関連入院の予防に関してはAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273が27.2%(95%CI:3.7~50.6)、BNT162b2+mRNA-1273が23.3%(15.8~30.8)で、COVID-19による死亡の予防ではそれぞれ21.7%(−8.3~51.7)、18.4%(−15.7~52.5)であり、小幅ながら異種ブースター接種で良好だった。 著者は、「COVID-19ワクチン接種は現在、異種接種スケジュールへの依存が高くなり、この傾向は今後も続くと考えられるが、本研究の結果はこの戦略を支持する新たなエビデンスを付け加えるものである」としている。

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第158回 コロナ新規患者報告数、今後も感染拡大の見通し/厚労省

<先週の動き>1.コロナ新規患者報告数、今後も感染拡大の見通し/厚労省2.膨らみ続ける社会保障給付費、高齢化とコロナ対策で過去最高額に/厚労省3.マイナンバーカード一体化続行、健康保険証の来秋廃止は延期に含み-岸田首相/政府4.診療報酬改定時期が6月に変更、医療機関などの負担軽減を目指す/厚労省5.不正アクセスで患者情報が4万8千件以上流出/福岡6.市民病院が経営難から来年3月に閉院へ/大阪1.コロナ新規患者報告数、今後も感染拡大の見通し/厚労省厚生労働省は、8月4日に新型コロナウイルス感染症の発生状況(7/24~7/30)を公表した。その結果、5類移行後も11週連続で増加が継続し、直近では全国約5,000の定点医療機関1施設当たり15.91人と前週比1.14倍に増加していた。地域別の新規患者数は、42都府県で前週より増加傾向にあり、沖縄県では7月上旬以降、減少傾向がみられていた(沖縄県、前週比0.78)が、全国の年代別新規患者数は、10歳代を除きすべての年代で前週より増加傾向にある。定点医療機関の報告に基づく過去の推計値と比較すると、全国で感染者が約10万人に上っていた2022年11月中旬と同水準であり、感染症法上の分類が5類に移行したことで、感染者数は8.8倍となっており、とくに西日本で感染が急速に拡大、新規入院者数も増加していることが明らかになっている。新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード座長の脇田 隆字氏(国立感染症研究所長)は「今後も感染が拡大する」と見通しを公表し、「冷房中でもなるべく換気するように」と発言した。参考1)第124回 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(厚労省)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料等(第116回~)新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況の評価等2)コロナ新規患者報告数、42都府県で増加-厚労省が第30週の発生状況を公表(CB news)3)新型コロナ 感染警戒レベルの基準設定を検討 厚労省(毎日新聞)4)コロナ感染、定点あたり15人超 全国で1日10万人規模か(日経新聞)2.膨らみ続ける社会保障給付費、高齢化とコロナ対策で過去最高額に/厚労省厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は、日本の社会保障給付費が2021(令和3)年度に過去最高の138兆7,000億円を記録したことを明らかにした。社会保障給付費の内訳は、年金(55兆8,151億円)、医療(47兆4,205億円)、介護・福祉(35兆5,076億円)。1人当たりの給付費は110万5,500円で、前年度と比べ5万7,400円、5.5%増加していたほか、国内総生産(GDP)比では25.2%と、初めて25%を超えていた。増加の原因として、高齢化による医療費の増加と新型コロナウイルスワクチン接種関連費用などのコロナ対策、子育て世帯への給付金などがあげられている。参考1)令和3(2021)年度 社会保障費用統計の集計結果を公表します(国立社会保障・人口問題研究所)2)社会保障給付費138兆円 コロナ影響で過去最高(産経新聞)3)社会保障給付費138兆円、過去最高 21年度(日経新聞)3.マイナンバーカード一体化続行、健康保険証の来秋廃止は延期に含み-岸田首相/政府岸田文雄総理大臣は、8月4日に記者会見を開き、2024年秋に予定されている健康保険証の廃止は当面は延期せず、マイナンバーカードの問題に対応する施策を続ける考えを示した。しかし、トラブルの総点検の結果によっては廃止を延期する可能性も示した。また、国民の不安を払拭するため、マイナンバーカードと一体化した保険証を持っていない人には「資格確認書」を発行する方針を明らかにした。さらに、デジタル化を進めて国民がメリットを実感できるように広報にも力を入れると述べた。岸田首相は、総点検の中間報告を近く公表する予定。ただ、資格確認書を有資格者全員に交付することについては、多額のコストを要するとして効率化の批判が集まっている。参考1)岸田首相、健康保険証の廃止時期など「適切に対応」-延期に含み(CNET)2)岸田首相会見 “健康保険証廃止は当面維持 不安払拭に努力”(NHK)3)資格確認書、有資格者全員交付は多額のコスト 遠のく効率化(産経新聞)4)保険証、来秋廃止を維持 岸田首相「総点検踏まえ判断」(日経新聞)4.診療報酬改定時期が6月に変更、医療機関などの負担軽減を目指す/厚労省厚生労働省は、8月2日に中央社会保険医療協議会の総会を開き、2024年度以降の診療報酬の改定時期を、従来の4月から6月に変更することを提案し、了承された。診療報酬の改定内容が早く決まることで医療機関などが対応しやすくなるよう準備期間が長くなる。これまで改定の時期は4月で医療機関や薬局、システム改修業者は短期間で準備をしなければならず、負担が大きいとして改善を求める声があったため、厚労省では6月に後ろ倒しすることで負担軽減を図る方針。一方、薬価の改定はこれまで通り4月に実施される予定で、24年度以降も引き続き4月となる見込み。診療側の委員からは、診療報酬と薬価の2回の改定を行うことに対する医療現場への負担や影響についての懸念が示された。参考1)中央社会保険医療協議会 総会[第551回]議事次第(厚労省)2)診療報酬改定、来年度から「6月実施」へ 2カ月後ろ倒し(朝日新聞)3)診療報酬改定6月1日施行、24年度から 薬価改定は4月1日施行を維持(CB news)5.不正アクセスで患者情報が4万8千件以上流出/福岡福岡徳洲会病院は、第三者から不正アクセスを受け、データベースに保存されていた患者の個人情報について、最大で約4万8,983件が流出した可能性を明らかにした。病院の発表によると、流出した情報には、病名や検査値も含まれていたが、悪用は確認されていない。不正アクセスは今年4月4日に、職員が業務用のパソコンで外部のホームページを閲覧していた際に、警告画面に記載された電話番号に連絡して指示に従って操作したところ、パソコンが遠隔操作に切り替わり、金銭を要求されたとしている。同病院はただちにシステムを中止し、より高度なセキュリティー水準のシステムに切り替えている。病院は福岡県警や厚生労働省、個人情報保護委員会へ報告し、専門業者に調査を依頼している。対象の患者には個別に謝罪し、専用の相談窓口を設けて対応しているほか、「再発防止に向けて、管理体制の強化に努める」とコメントしている。参考1)不正アクセスによる個人情報流出の可能性についてお知らせとお詫び(福岡徳洲会病院)2)福岡徳洲会病院、患者情報4万8千件流出か データベースに不正アクセス(産経新聞)3)福岡徳洲会病院 個人情報など5万件余が一時閲覧可能な状態に(NHK)4)福岡徳洲会病院で患者などの個人情報5万件が流出か 不正アクセス受け病名や検査の値も(福岡放送)6.市民病院が経営難から来年3月に閉院へ/藤井寺市民病院大阪府藤井寺市は市立藤井寺市民病院(病床数98床)を、令和6年3月31日で閉院する基本方針案を公表し、市民からの意見を募集している。同病院は厚生労働省から再検証要請対象医療機関に挙げられ、総務省の公立病院改革ガイドラインに基づき、改革(経営)プランを策定してきたが、経常損益も5年度で約8億5千万円、6年度も約9億2千万円の赤字が見込まれている。藤井寺市は平成10年頃から施設の更新を検討してきたが、老朽化も進み、建て替えに多額の費用が必要とされ、さらに医師派遣の減少で診療に制限が出ており、赤字が続くことから、市民病院の経営継続は困難と判断され、閉院が避けられないと結論付けられた。市側は市民説明会を開催し、閉院後の小児科の入院診療機能、災害医療などの機能移転に向けて努めるとしている。なお、「市立藤井寺市民病院のあり方に関する基本方針」に対するパブリックコメントの締め切りは8月16日まで。参考1)「市立藤井寺市民病院のあり方に関する基本方針」(案)についてパブリックコメントを実施します(藤井寺市)2)市民病院を来年3月に閉院案公表 大阪・藤井寺市(産経新聞)3)市民病院、経営難で3月に閉院へ 藤井寺市が方針(朝日新聞)

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小児の16%にコロナ後遺症、多くみられる症状は?~メタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を経験した小児でも、コロナ後遺症(コロナ罹患後症状、long COVID)の報告が増加している。19歳以下の小児におけるSARS-CoV-2感染の長期的な臨床的特徴を明らかにするために、カナダ・トロントのThe Hospital for Sick ChildrenのLi Jiang氏らによって系統的レビューとメタ解析が実施された。その結果COVID-19小児患者の16.2%がコロナ後遺症を経験し、男児よりも女児に特定の症状が発生するリスクが高いことなどが判明した。Pediatrics誌オンライン版2023年7月21日号掲載の報告。女児は男児よりも睡眠障害や頭痛のコロナ後遺症を発症するリスクが高い 本研究では、2019年12月~2022年12月に発表された論文およびプレプリントの論文で、小児および青年(0~19歳)でSARS-CoV-2感染が確認されてから3ヵ月以降に新たに発生、再発、または持続する徴候、症状、検査所見を検討した研究が対象となった。使用したデータベースは、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Library、WHO COVID-19 Research Database、China National Knowledge Infrastructure Database、WanFang Database、Latin American and Caribbean Health Sciences Literature、Google Scholar、medRxiv、bioRxiv、ChinaXiv。27 件のコホート研究(前向き19件、後ろ向き8件)と4件の横断研究が最終的な統計的レビューに含まれた。これらの研究から、2値転帰について加重平均有病率と95%信頼区間(CI)を算出した。転帰に関して複数の測定法が報告されている場合は、最も一般的に報告されている測定法を使用した。ランダム効果モデルを用いてメタ解析を行い、異質性はI2統計量、χ2検定、フォレストプロットを用いて評価した。 小児におけるコロナ後遺症の特徴を明らかにするために実施したメタ解析の主な結果は以下のとおり。・19件の前向きコホート研究で、COVID-19と診断されてから少なくとも3ヵ月以上の追跡調査を受けた小児および青年の総数は1万5,000例以上だった。追跡期間の範囲は3~12ヵ月以上とさまざまだった。地域別に、ヨーロッパ13件、イラン2件、オーストラリア1件、中国1件、米国1件。・COVID-19の持続的症状の絶対数を報告した12件の前向きコホート研究(6,000例以上)をメタ解析したところ、COVID-19と診断された小児および青年の16.2%(95%CI:8.5~28.6)が、3~13ヵ月の追跡期間中に1つ以上の持続的症状を経験していた。・この集団において、COVID-19の長期的な症状として多かったのは、咽頭痛(n=3,106、統合推定値14.8%[95%CI:4.8~37.5])、持続的な発熱(n=5,128、10.9%[2.4~38.2])、睡眠障害(n=697、10.3%[4.9~20.4])、疲労(n=6,110、9.4%[4.1~20.2])、筋力低下(n=196、8.7%[5.5~13.6])、咳嗽(n=5,890、6.8%[2.4~17.7])、頭痛(n=5,809、4.6%[1.2~16.2])、呼吸困難(n=5,560、4.3%[1.1~15.1])、腹痛(n=3,718、3.7%[2.3~5.8])、下痢(n=3,564、3.5%[1.3~8.9])。・バイアスリスクの低い研究2件と中程度の研究5件から感度分析を行ったところ、長期的な症状として多かったのは、持続的な発熱(n=559、統合推定値7.9%)、疲労(n=5,654、7.4%)、嗅覚/味覚の変化(n=5,433、6.1%)、呼吸困難(n=5,560、4.3%)、頭痛(n=5,493、3.9%)であった。・追跡期間別のサブグループ解析では、3~6ヵ月で一般的な持続症状は、咽頭痛、持続的な発熱、筋力低下、疲労、咳嗽。6~12ヵ月では、睡眠障害、体重減少、持続的な発熱、疲労、筋力低下。12ヵ月以上では、疲労、動悸、関節痛、筋肉痛。・5件の研究をメタ回帰分析し、コロナ後遺症の潜在的なリスクを調べたところ、女児は男児よりも、COVID-19の長期的な症状として睡眠障害や頭痛を発症するリスクが高かった(p<0.01)。 著者は小児におけるコロナ後遺症の解析結果について「COVID-19小児患者は3ヵ月以上症状が持続することが一般的であり、症状は広範囲に及ぶ。今後も適切な管理のもと質の高い前向き研究が必要だ」と述べている。

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HIV感染者からパートナーへの性感染、低ウイルス量ならほぼゼロ/Lancet

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者では、ウイルス量が低レベル(1,000コピー/mL未満)であれば、パートナーへのHIV性感染のリスクはほぼゼロであることが、米国・Global Health Impact GroupのLaura N. Broyles氏らの調査で示された。これにより、医療資源が限られた環境でHIVと共に生きる人(people living with HIV)のウイルス量検査へのアクセスが促進される可能性があるという。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月23日号で報告された。ウイルス量別のHIV性感染リスクを系統的レビューで評価 研究グループは、HIVと共に生きる人やそのパートナー、医療従事者、より広く一般の人々へのメッセージの発信にとって有益な情報を提供するために、HIVのさまざまなウイルス量におけるHIV性感染のリスクに関するエビデンスを要約する目的で、系統的レビューを行った(ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成を受けた)。 医学関連データベースを用いて、2010年1月1日~2022年11月17日までに発表された論文を検索した。対象は、「さまざまなレベルのウイルス血症におけるセロディスコーダント・カップル(serodiscordant couple[血清不一致カップル]:一方がHIV陽性、もう一方が陰性のカップル)間のHIV性感染」「検出限界値未満=感染力がない(undetectable = untransmittable)の科学的評価」「低レベルのウイルス血症が公衆衛生に及ぼす影響」について検討した研究であった。 個々の研究のエビデンスの確実性はGRADE、バイアスの潜在的なリスクはROBINS-Iの枠組に基づいて評価した。さまざまなウイルス量におけるHIVの性感染に焦点を当ててデータを抽出し、要約した。強力な予防キャンペーンの展開をもたらす可能性 低レベルのウイルス血症におけるHIVの性感染に焦点を当てた8編の論文(コホート研究4件、無作為化対照比較試験3件、25ヵ国の横断研究1件)が系統的レビューに含まれ、7,762組のセロディスコーダント・カップル(ほとんどが男女のカップル)が解析の対象となった。全体のエビデンスの確実性は「中」、バイアスのリスクは「低」であった。 3件の研究では、HIV陽性のパートナーのウイルス量が200コピー/mL未満の場合、セロディスコーダント・カップル間のHIV感染は認めなかった。また、4件の前向き研究では、323件の感染イベントがみられたが、抗レトロウイルス療法(ART)でHIVが安定的に抑制されていると考えられる患者では、感染イベントは発生しなかった。 8件すべての研究では、指標患者(HIV感染の診断歴がある患者)の直近のウイルス量が1,000コピー/mL未満の場合に、感染の可能性が示唆されたのは2例のみであったが、いずれも感染日から直近のウイルス量の検査までの間隔が長かった(50日と53日)ため、解釈を単純化することはできなかった。 著者は、「ARTを受けているすべてのHIVと共に生きる人にとって、ウイルス量が検出限界値未満であることは目標であるが、今回のデータは、低レベルのウイルス血症であればHIV性感染のリスクはほぼゼロであることを示しており、この公衆衛生上好ましいメッセージの普及を通じて、HIVのスティグマから脱却し、ARTのアドヒアランスを強力に促進する機会をもたらすだろう」としている。 また、「これらの結果は、従来のウイルス量の検査に継続的にアクセスできない人々を含め、あらゆる状況に強い影響を及ぼす予防キャンペーンの展開と、その広範な普及を可能にすると考えられる」と指摘している。

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肝細胞がん1次治療、camrelizumab+rivoceranibがPFS改善/Lancet

 切除不能な肝細胞がんの1次治療において、抗PD-1抗体camrelizumabとVEGFR-2を標的とするチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)rivoceranibの併用療法は、標準治療であるソラフェニブと比較して、無増悪生存期間(PFS)が有意に長く、全生存期間(OS)も延長しており、安全性は管理可能で新たな安全性シグナルは確認されなかったことが、中国・Nanjing Medical UniversityのShukui Qin氏らが実施した「CARES-310試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月24日号に掲載された。13の国と地域の無作為化試験、8割以上がアジア人 CARES-310試験は、13の国と地域の95施設で実施された非盲検無作為化第III相試験であり、2019年6月28日~2021年3月24日に参加者の無作為化が行われた(中国・Jiangsu Hengrui Pharmaceuticalsと米国・Elevar Therapeuticsの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上の肝細胞がん患者で、バルセロナ臨床肝がん(Barcelona Clinic Liver Cancer:BCLC)病期分類のBまたはCであり、手術または局所領域療法後に病勢が進行し、全身療法による治療歴がなく、肝機能の障害度がChild-Pugh分類A、全身状態が良好(ECOG PS 0/1)な患者であった。 被験者を、camrelizumab(200mg、静注、2週ごと)+rivoceranib(250mg、経口、1日1回)、またはソラフェニブ(400mg、経口、1日2回)の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、PFS(RECIST 1.1に基づき盲検下に独立審査委員会が評価)とOSの2つであり、後者は中間解析の結果を報告した。 543例を登録し、camrelizumab+rivoceranib併用群に272例(年齢中央値58歳[四分位範囲[IQR]:48~66]、男性83%、アジア人83%)、ソラフェニブ群に271例(56歳[47~64]、85%、83%)を割り付けた。全体の75%がB型肝炎ウイルスに起因する肝細胞がんであり、74%が脈管浸潤または肝外転移、あるいはこれら双方を有していた。客観的奏効率も良好 追跡期間中央値7.8ヵ月(IQR:4.1~10.6)の時点におけるPFS中央値は、ソラフェニブ群が3.7ヵ月(IQR:2.8~3.7)であったのに対し、併用群は5.6ヵ月(5.5~6.3)と有意に改善した(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.41~0.65、片側検定のp<0.0001)。 また、追跡期間中央値14.5ヵ月(IQR:9.1~18.7)の時点(2022年2月8日のOSに関する中間解析)でのOS中央値は、ソラフェニブ群の15.2ヵ月(IQR:13.0~18.5)に対し、併用群は22.1ヵ月(19.1~27.2)であり、有意に長かった(HR:0.62、95%CI:0.49~0.80、片側検定のp<0.0001)。 客観的奏効率(最良総合効果としての完全奏効または部分奏効の割合)は、併用群が25%(69/272例)、ソラフェニブ群は6%(16/271例)であり、併用群で有意に優れた(群間差:19%、95%CI:14~25、片側検定のp<0.0001)。 最も頻度の高いGrade3/4の治療関連有害事象は、高血圧(併用群38%[102/272例]vs.ソラフェニブ群15%[40/269例])、手掌・足底発赤知覚不全症候群(12%[33例]vs.15%[41例])、AST値上昇(17%[45例]vs.5%[14例])であった。 重篤な治療関連有害事象は、併用群24%(66例)、ソラフェニブ群6%(16例)で報告された。治療関連死が各群で1例ずつ認められた(併用群:多臓器不全症候群、ソラフェニブ群:呼吸不全と循環虚脱)。 著者は、「camrelizumab+rivoceranib併用療法は良好なベネフィット-リスクプロファイルを示したことから、切除不能肝細胞がんに対する新たな1次治療の選択肢となると考えられる。免疫併用レジメンに経口投与の抗血管新生TKIを組み込むことで、臨床医がより柔軟に治療法を選択できるようになる可能性がある」としている。

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第171回 「ダイチロナ」承認の裏で継続審議の塩野義ワクチン、その理由は…

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチンとして最も早く承認されたファイザーのコミナティから遅れること約2年半、ついに国産の新型コロナワクチンが承認される見通しだ。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会・医薬品第二部会は7月31日、第一三共の新型コロナメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンである『ダイチロナ筋注』を承認することを了承した(8月2日付で正式承認取得)。その一方で塩野義製薬が承認申請をしていた遺伝子組み換えタンパクワクチン『コブゴーズ筋注』について、「現在までに評価された臨床試験成績のみでは、本ワクチンの有効性を明確に説明することが難しい」と判断され、継続審議となった。明暗を分けた両ワクチンだが、少なくともダイチロナに関しては公開された一部データを見る限り、承認が了承されたことは傍目にも妥当と思える。公開されたデータは、18歳以上を対象に追加免疫としてダイチロナとファイザーのコミナティ、モデルナのスパイクバックスを比較した非劣性試験の結果だ。非劣性基準は、中和抗体価の幾何平均上昇倍率(GMFR)の両側97.5%信頼区間(CI)の下限値が0.67 を上回ることとなっている。公表されたGMFRは、対コミナティの試験ではダイチロナが58.690(95%CI:49.643~69.386)、コミナティが38.044(95%CI:29.704~48.726)、対スパイクバックスの試験ではダイチロナが36.074(95%CI:29.292~44.426)、スパイクバックスが25.402(95%CI:19.163~33.671)。GMFR比は対コミナティで1.464(両側97.5%CI:1.112~1.927)、対スパイクバックスで1.772(両側97.5%CI:1.335~2.353)。一方の安全性については、データは今のところ開示されていないが、厚生労働省が報道向けに公開した資料では、ダイチロナの安全性プロファイルは、コミナティ、スパイクバックスと同様。主な副反応は注射部位疼痛、倦怠感、頭痛、発熱で、ほとんどが軽度あるいは中等度で回復性が認められているという。もっとも有効性については起源株(武漢株)に対する結果で、今後、第一三共はオミクロン株XBB.1系統への一部変更申請で対応していく方針。この点は従来のコミナティ、スパイクバックスと同様だ。コミナティとスパイクバックスでは、起源株1価ワクチンからオミクロン株BA.4/5系統対応も含めた2価ワクチンへ変更された際、非臨床試験のみで一部変更承認となった点が理論上は理解できても違和感を持ってしまった人は医療関係者でも少なくなかったと理解している。しかし、今ではこの対応が国際的にスタンダードとなっている。今年5月に開催された日本も参加する薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)では、現在承認されているワクチンについてはプラットフォームとしての対応を適応可能とし、対応株変更時は確認的な品質と非臨床データのみの資料提出で承認審査が行えるとの見解がまとめられている。なお、第一三共によると、製造は埼玉県北本市にあるグループ会社の第一三共バイオテックの工場で行う。既存のmRNAワクチンはいずれも冷凍保存だが、ダイチロナに関しては冷蔵保存(2~8℃)が可能。もっともmRNAは振動などに弱いため輸送には一定の配慮が必要と言われているが、第一三共によると、流通を担当する卸については、インフルエンザワクチンなどと同様に既存の卸各社で対応する計画で、特定卸への絞り込みは考えていないという。一方、継続審議となった塩野義製薬のコブゴーズでは、審査評価資料として提出されていた国内臨床試験の比較対照薬は、初回免疫(優越性検証)がアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンであるバキスゼブリア、追加免疫(非劣性検証)がファイザーのコミナティだった。厚生労働省によると、部会の審議では「コブゴーズの接種により中和抗体価の上昇は一定程度認められるものの、初回免疫、追加免疫の両試験とも比較対照薬接種群の中和抗体価が通常想定されるよりも相当程度低く、当該試験に基づいて有効性を明確に評価することは困難との議論があった」と説明した。このため今回の申請資料中に参考資料として提出されていた海外などでの臨床試験成績などを新たに評価対象に追加して、改めて評価することになったと話している。私見を言えば、この結果はやや“不可解”とも言える。まず、初回免疫の比較対照薬がなぜバキスゼブリアだったかという点だ。塩野義製薬がこの臨床試験を開始した時期は、既に国内での新型コロナワクチン接種はコミナティやスパイクバックスを軸に実施されていた。バキスゼブリアに関しては、日本よりも先行して使用されたヨーロッパで発生頻度は稀ながら、死亡例も含む重篤な血栓症の報告があり、当初日本では公的接種に用いられなかった。しかし、国内では接種開始後にコミナティとスパイクバックスの供給不足が表面化したことなどから、途中から血栓症の発現頻度が低い40歳以上に限定で公的接種に用いられたという経緯がある。現状も公的接種はmRNAワクチンの2種類が用いられており、バキスゼブリアによる公的接種は2022年9月30日をもって終了している。現在のこうした接種状況、さらに今後も高齢者や基礎疾患保有者に対しては公的接種が継続するだろうという見通しに立てば、その選択肢になり得るワクチンは既存のmRNAのいずれかに対する非劣性検証を行うのが臨床上は筋だと個人的には考えるのだ。もっとも今回のコブゴーズの初回免疫の試験は起源株に対するものであり、コミナティ、スパイクバックスが起源株での発症予防の有効率が95%前後と驚異的とも言える結果だったことを考えれば、これらを比較対照薬とすることは、コブゴーズを含むその他のモダリティを用いたワクチンの有効性を不当に低く評価する可能性はある。この点を考えれば、バキスゼブリアを比較対照薬にするのもわからぬわけではない。この点を塩野義製薬広報部に確認したところ「試験実施時のワクチン接種状況から比較対照として利用でき、相手企業から利用許可が得られたことからバキスゼブリアになりました。また、これは当局とも相談をしながら、当局からもそれで良いだろうという判断で決定しています。他社(ファイザー、モデルナ)から許可が得られなかったのかどうかについては、こちら(広報部)では伺っていないので、ご回答できない状況です」とのことだった。さらに今回の審議結果は、解釈次第では同社の臨床試験実施体制そのものに疑義を呈されたと言えなくもない。今回の審議結果の受け止めについて尋ねたところ、「部会での審議内容については当社も確認中であること、また現状は継続審議となって審議中ですので、コメントすることは差し控えさせていただきます」との回答。新型コロナ治療薬のエンシトレルビルの緊急承認審議に続いて物言いが付いてしまった塩野義製薬だが、ここからどのような展開になるのか。しばらく目が離せそうにない。

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小児の急性副鼻腔炎、鼻汁の色で判断せず細菌検査を/JAMA

 急性副鼻腔炎の小児において、鼻咽頭から細菌が検出されなかった患児は検出された患児に比べ抗菌薬による治療効果が有意に低く、その有意差を鼻汁の色では認められなかったことが、米国・ピッツバーグ大学のNader Shaikh氏らによる多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験で示された。急性副鼻腔炎とウイルス性上気道感染症の症状の大半は見分けることができない。そのため小児の中には、急性副鼻腔炎と診断されて抗菌薬による治療を受けても有益性がない集団が存在することが示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「診察時に特異的な細菌検査をすることが、急性副鼻腔炎の小児における抗菌薬の不適切使用を減らす戦略となりうる」とまとめている。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。急性副鼻腔炎の持続・増悪患児約500例を、抗菌薬群とプラセボ群に無作為化 研究グループは2016年2月~2022年4月に、米国の6機関に付属するプライマリケア診療所において、米国小児科学会の臨床診療ガイドラインに基づいて急性副鼻腔炎と診断された2~11歳の小児で、急性副鼻腔炎が持続または増悪している症例515例を、アモキシシリン(90mg/kg/日)+クラブラン酸(6.4mg/kg/日)投与群(抗菌薬群)またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、1日2回10日間経口投与した。 割り付けは、鼻汁の色の有無(黄色または緑色と透明)によって層別化した。また、試験開始前および試験終了時の来院時に鼻咽頭スワブを採取し、肺炎球菌、インフルエンザ菌およびモラクセラ・カタラーリスの同定を行った。 主要アウトカムは、適格患者(症状日誌の記入が1日以上あり)における診断後10日間の症状負荷で、小児鼻副鼻腔炎症状スコア(Pediatric Rhinosinusitis Symptom Scale:PRSS、範囲:0~40)に基づき判定した。また、鼻咽頭スワブ培養での細菌検出の有無、ならびに鼻汁色でサブグループ解析を行うことを事前に規定した。副次アウトカムは、治療失敗、臨床的に重大な下痢を含む有害事象などとした。診断時の鼻咽頭からの細菌検出の有無で治療効果に有意差あり 無作為化後に不適格であることが判明した5例を除く510例(抗菌薬群254例、プラセボ群256例)が試験対象集団となった。患者背景は、2~5歳が64%、男児54%、白人52%、非ヒスパニック系89%であった。このうち、主要アウトカムの解析対象は、抗菌薬群246例、プラセボ群250例であった。 平均症状スコアは、抗菌薬群9.04(95%信頼区間[CI]:8.71~9.37)、プラセボ群10.60(10.27~10.93)であり、抗菌薬群が有意に低かった(群間差:-1.69、95%CI:-2.07~-1.31)。症状消失までの期間(中央値)は、抗菌薬群(7.0日)がプラセボ群(9.0日)より有意に短縮した(p=0.003)。 サブグループ解析の結果、治療効果は細菌が検出された患児(抗菌薬群173例、プラセボ群182例)と検出されなかった患児(それぞれ73例、65例)で有意差が認められた。平均症状スコアの群間差は、検出群では-1.95(95%CI:-2.40~-1.51)に対し、非検出群では-0.88(95%CI:-1.63~-0.12)であった(交互作用のp=0.02)。 一方、色あり鼻汁の患児(抗菌薬群166例、プラセボ群167例)と透明の鼻汁の患児(それぞれ80例、83例)では、平均症状スコアの群間差はそれぞれ-1.62(95%CI:-2.09~-1.16)、-1.70(95%CI:-2.38~-1.03)であり、治療効果に差はなかった(交互作用のp=0.52)。 なお、著者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により試験登録が中断され症例数が目標に達しなかったこと、重症副鼻腔炎の小児は除外されたことなどを研究の限界として挙げている。

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コロナ肺炎からの回復、アバタセプトやインフリキシマブ追加で短縮せず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に起因する肺炎による入院患者において、アバタセプト、cenicrivirocまたはインフリキシマブはCOVID-19肺炎からの回復までの期間を短縮しなかった。米国・セントルイス・ワシントン大学のJane A. O'Halloran氏らが、米国および中南米の95病院で実施したマスタープロトコルデザインによる無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines(ACTIV)-1 Immune Modulator:ACTIV-1 IM試験」の結果を報告した。本検討は、COVID-19の予後不良の一因として免疫調節異常が示唆されていたことから実施された。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。標準治療へのアバタセプト、cenicrivirocまたはインフリキシマブ追加の有効性をプラセボと比較 研究グループは2020年10月16日~2021年12月31日に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確認されてから14日以内で肺病変が認められる18歳以上の入院患者を、3つのサブスタディにおいてそれぞれアバタセプト(10mg/kg、最大1,000mg、単回投与)群またはプラセボ群、cenicriviroc(300mg負荷投与後、150mgを1日2回、28日間経口投与)群またはプラセボ群、インフリキシマブ(5mg/kg、単回投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、標準治療(レムデシビルおよび副腎皮質ステロイド)に追加して投与した。 主要アウトカムは、28日以内における回復までの期間で、8段階の順序尺度(スコアが高いほど健康状態が良好であることを示す)を用いて評価した。回復日は、順序尺度が6点以上となった初日と定義した。主な副次アウトカムは28日全死因死亡率などであった。 3つのサブスタディで無作為化された全患者1,971例の背景は、平均(±SD)年齢54.8±14.6歳、男性1,218例(61.8%)であった。いずれの追加投与も、COVID-19肺炎の回復期間は短縮せず COVID-19肺炎からの回復までの期間の中央値は、アバタセプト群vs.プラセボ群でいずれも9日(95%信頼区間[CI]:8~10)、cenicriviroc群vs.プラセボ群でどちらも8日(95%CIは8~9 vs.8~10)、インフリキシマブ群vs.プラセボ群でそれぞれ8日(95%CI:7~9)vs.9日(95%CI:8~10)であり、アバタセプト、cenicrivirocおよびインフリキシマブのいずれも、プラセボと比較して有意差は認められなかった。 28日全死因死亡率は、アバタセプト群11.0% vs.プラセボ群15.1%(オッズ比[OR]:0.62、95%CI:0.41~0.94)、cenicriviroc群13.8% vs.プラセボ群11.9%(OR:1.18、95%CI:0.72~1.94)、インフリキシマブ群10.1% vs.プラセボ群14.5%(OR:0.59、95%CI:0.39~0.90)であった。 安全性は、3つのサブスタディすべてにおいて、2次感染を含め実薬とプラセボで同等であった。

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モデルナとファイザーのコロナワクチン、対象年齢や初回免疫の一変承認取得

 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンを提供するモデルナおよびファイザーは、8月2日に各社のプレスリリースにて、ワクチンの接種対象年齢や初回免疫について一部変更承認を取得したことを発表した。 モデルナ・ジャパンのプレスリリースによると、同社の新型コロナワクチン「スパイクバックス筋注」について、これまで接種対象年齢が12歳以上だったものを、6歳以上に引き下げ、6~11歳の用法用量を変更する承認事項の一変承認を取得した。今回の一変承認は、「スパイクバックス筋注(1価:起源株)」の6~11歳における初回免疫、および「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」と「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」の6~11歳における追加免疫を対象としている。 ファイザーとビオンテックの新型コロナワクチンについては、今回の一変承認で2価ワクチンも初回免疫に使用することができるようになった。ファイザーのプレスリリースによると、初回免疫に関わる製造販売承認事項の一変承認を取得した。対象のワクチンは、これまで追加免疫のみに適応だった「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」、「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」、「コミナティ筋注5~11歳用(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」。 また、「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用(1価:起源株)」の追加免疫、および「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」の初回免疫と追加免疫に関わる一変承認も今回取得したが、並行して2023年7月7日に厚生労働省にオミクロン株XBB.1.5系統対応の1価ワクチンに関わる製造販売承認事項一部変更を申請している状況を踏まえ、日本国内において供給の予定はないという。

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