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ハンタウイルス感染症に気を付けろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。大阪大学の忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。もはや誰も覚えていない不定期連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」ですが、読者の皆さまが忘れたころに新興再興感染症というものは起こるものなのです。そうです、現在世間では「ハンタウイルス感染症」なるものが毎日ニュースをにぎわせています。今回はこの「ハンタウイルス感染症」の気を付け方について学んでいきましょう。感染症学習に使えるアプリさて、ハンタウイルス感染症について知りたい場合、一番手っ取り早いのは、そう、私が自作したiPhoneアプリ「くつ王感染症クイックリファレンス」で調べることです!トップ画面で「ハンタウイルス」と入れれば、あっという間に要点が丸わかり!App Storeで「くつ王感染症クイックリファレンス」を検索してみよう!アプリの詳細は最後の方をご覧ください!ハンタウイルスの概要宣伝はこれくらいにしておきまして…ハンタウイルス感染症は、ウイルス性出血熱の一群に含まれる重要な人獣共通感染症であり、世界各地に分布しています。まず、大事な事実として本疾患は臨床的に2つの主要な症候群を呈します。ヨーロッパおよびアジアでは腎症候性出血熱(HFRS)が、アメリカ大陸ではハンタウイルス肺症候群(HCPS)(またはハンタウイルス心肺症候群)が主に報告されています1, 2)。これらは別の疾患として捉えられていますが、血管透過性の亢進という共通の病態生理を基盤としており、臨床像においても多くの重複が見られるのが特徴です。図 ハンタウイルス感染症の流行地域と感染経路(文献1よりNotebookLMで作成)さらに、ハンタウイルスは、Bunyavirales目Hantaviridae科のOrthohantavirus属に分類されるウイルスの総称であり、表のようにヨーロッパ・アジアでHFRSを起こすハンタウイルス、そして、アメリカ大陸でHCPSを起こすハンタウイルスにもそれぞれ複数の種類が知られています。表 主要な原因ウイルスと臨床的特徴の比較画像を拡大する(文献1より作成)ハンタウイルスの症状、診断と治療なんか急に話がややこしくなってきたと思われるかもしれませんが、それぞれの細かいウイルスまで覚える必要はありません。主な自然宿主は齧歯類です。ウイルスは宿主の唾液、尿、糞便中に排泄され、人間はそれらが含まれるエアロゾルを吸入することで感染します。特筆すべき例外として、中南米のアンデスウイルス(ANDV)は、例外的にヒトからヒトへの感染が確認されている唯一のハンタウイルスであり、密接な接触がリスク要因となります3,4)。たとえば、誕生日のパーティーやお通夜への参加、同じ車内で長時間一緒に過ごしたなどの場面での感染が報告されています。注意すべき点としては、これまでに患者から医療従事者への感染例も報告されていることです。症状ですが、まず潜伏期間が長いのが特徴です。今回問題になっているANDVでは平均18日程度と報告されており、正確な渡航歴・接触歴・曝露歴の聴取が不可欠です。HFRS(腎症候性出血熱)では典型的には5つの病期(発熱期、低血圧期、乏尿期、利尿期、回復期)をたどります。高熱、頭痛、腹痛、背部痛に加え、視覚異常が感染者の最大70%に見られます。HCPS(ハンタウイルス肺症候群)では2~7日間の前駆症状(発熱、筋肉痛など)を経て、呼吸不全が急激に進行します。これは肺血管透過性の亢進により、数時間以内に非心原性肺水腫、呼吸不全、心原性ショックが進行するというものです。画像所見では、両側性の隔壁肥厚やすりガラス影、胸水貯留が急速に拡大します。どちらの病型にも共通している病態が「血管透過性の亢進」でありまして、HFRSでは主に腎髄質の毛細血管が、HCPSでは主に肺の毛細血管が強く影響を受けることがわかっています。先述の表にも記載していますが、致死率はHFRSでは1~12%、HCPSではなんと最大45%にも及びます。きわめて重症度の高い感染症です。診断は抗体検査またはPCRによって行います。IgMは通常、発症初期から検出可能とされます。RT-qPCRは高感度であり、抗体出現前の早期診断にきわめて有用です5)。治療については、リバビリンや高用量ステロイド、回復者血漿療法などが検討されてきましたが、現時点で確立した治療法はありません6,7)。体外式膜型人工肺(ECMO)が注目されており、血管透過性亢進が回復するまでECMOを使用することで予後が改善したという報告があります8)。とまあ、このように恐ろしいハンタウイルス感染症ですが、果たしてわが国に持ち込まれるリスクはどれくらいあるのでしょうか?次回はそこんとこを検討していきたいと思います。1)Vial PA, et al. Lancet Infect Dis. 2023;23:e371-e382.2)Manigold T, Vial P. Swiss Med Wkly. 2014:144:w13937.3)Padula PJ, et al. Virology. 1998;241:323-330.4)Martinez VP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2230-2241.5)Guzman C, et al. Expert Rev Anti Infect Ther. 2015;13:939-946.6)Mertz GJ, et al. Clin Infect Dis. 2004;39:1307-1313.7)Vial PA, et al. Antivir Ther. 2015;20:377-386.8)Wernly JA, et al. Eur J Cardiothorac Surg. 2011;40:1334-1340.

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第295回 MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省

<先週の動き> 1.MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省 2.備蓄手袋を医療機関向けに供給 18日から申請開始/厚労省 3.がん拠点病院の整備指針見直しへ 2030年度から実績要件を強化/厚労省 4.東京都で麻しん急増、緊急ワクチン接種開始 接触後72時間以内が鍵/JIHS 5.電子カルテ停止で診療一時停止 市立奈良病院、再発防止へ検証/奈良県 6.病院再編に現場反発、4割が退職希望 静岡市立清水病院/静岡県 1.MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省厚生労働省は5月11日、第一三共の麻しん・おたふくかぜ・風しん混合ワクチン「ミムリット皮下注用」を承認した。3疾患を1度に予防するMMRワクチンで、効能・効果は「麻しん、おたふくかぜ及び風しんの予防」。国内でMMRワクチンが使用されるのは約30年ぶりとなる。ミムリットは、現在定期接種の対象となっている第一三共の麻しん・風しん2種混合ワクチンに、世界で広く用いられているおたふくかぜワクチン株を組み合わせた3種混合の弱毒生ワクチンである。添付の溶剤0.7mLで溶解し、その0.5mLを1回皮下に注射する。接種対象は生後12ヵ月以上で、性別や年齢にかかわらず接種可能とされるが、具体的な接種年齢は学会などの最新情報を踏まえ総合的に判断する。明らかな発熱がある人、免疫機能に異常がある人や免疫抑制治療中の人、妊娠していることが明らかな人などは接種不適当者とされる。わが国では1989年に別のMMRワクチンが定期接種に導入されたが、含有されていたおたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎の発生が社会問題となり、1993年に事実上中止された。今回のミムリットについて厚労省は、国内第III相臨床試験で小児約400例に無菌性髄膜炎の発現は認められなかったこと、含まれるムンプスウイルス株がWHOで事前認定された株の1つであること、海外で豊富な使用実績があり、無菌性髄膜炎の発現率が相対的に低いとの報告がある株を選択したことなどを踏まえ、リスクは許容可能と判断した。現在、麻しん・風しんはMRワクチンとして定期接種の対象だが、おたふくかぜワクチンは任意接種で自己負担となっている。おたふくかぜは無菌性髄膜炎、脳炎、難聴などの合併症を起こし得る。2015~16年の流行では成人を含め少なくとも359例がムンプス難聴と診断され、医学系学会が定期接種化を要望してきた。海外では120ヵ国以上で定期接種化されており、ミムリットの承認により、接種回数の削減と保護者負担の軽減、さらにおたふくかぜ対策の前進が期待される。 参考 1) 麻疹・おたふく・風疹のMMRワクチン承認 約30年ぶり使用へ(毎日新聞) 2) MMRワクチン、国内でも使用可能に-第一三共の「ミムリット」承認取得(日本医事新報) 3) 第一三共の3種混合ワクチン承認 はしかと風疹におたふく追加(日経新聞) 4) 厚労省 第一三共のMMRワクチン・ミムリット皮下注用を承認 2つの再生医療等製品も(ミクスオンライン) 2.備蓄手袋を医療機関向けに供給 18日から申請開始/厚労省厚生労働省は、中東情勢悪化による医療用物資の供給不安を踏まえ、国が備蓄する医療用手袋のうち、まず5,000万枚を医療機関向けに放出する。医療用手袋は現時点で全体としてただちに不足する状況ではないが、通常量を超える発注や一般のネット通販で取引が停止されており、歯科診療所など一部の医療機関で確保困難が生じている。国は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、非滅菌手袋などの個人防護具を備蓄しており、今回の放出は需給の偏在を緩和する措置となる。要請は医療機関等情報支援システム「G-MIS」を通じて行う。医療機関は週次調査で在庫量、1週間の想定消費量、1週間の購入見込み量を入力し、あわせて販売業者であるアスクルの専用サイトに施設名、住所、医療機関コード、メールアドレスなどを登録する。都道府県が要請内容と配布要否、枚数を確認し、厚労省が承認した後、対象医療機関のリストが販売業者に送られ、医療機関は案内メールを受けて購入手続きを行う。G-MISでの申請が困難な場合は、都道府県への相談による個別シート対応も用意されている。対象となるのは、在庫量が「今後1週間の想定消費量から購入見込み量を差し引いた量の4週間分」を下回る医療機関である。購入可能数は想定消費量2週間分を基準に1,000枚単位で切り上げ、1セット1,000枚から購入できるほか、セット単位でサイズ指定も可能とされる。第1弾は5月18日午前9時から20日午後5時まで申請を受け付け、以後も毎週水曜午後5時締めで受け付ける予定。感染対策資材の不足は、病院、歯科、在宅、訪問看護など幅広い診療継続に直結する。医療機関には、在庫と使用量を踏まえた適正申請が求められ、国と都道府県には配送状況や追加放出の情報を迅速に示す対応が求められる。 参考 1) 中東情勢を踏まえた医療用手袋の放出について(厚労省) 2) 上野厚労相「国備蓄の手袋5千万枚を放出」 中東情勢影響による医療機関での不足受け(産経新聞) 3) 医療用手袋 5月18日から購入申請受け付け開始 政府備蓄放出分(NHK) 4) 国備蓄の医療用手袋放出発表うけ 看護現場からは安堵の声(日本テレビ) 3.がん拠点病院の整備指針見直しへ 2030年度から実績要件を強化/厚労省厚生労働省は5月14日に「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」を開き、がん診療連携拠点病院などの整備指針見直し案を示した。柱となるのは、がん医療の高度化と人口減少を踏まえた「集約化」と「均てん化」の切り分けである。2026年夏ごろに新たな整備指針を取りまとめ、2027年度から新体制を始める見通し。とくに注目されるのは、がんゲノム医療体制の強化である。厚労省は2026年度の指針改定で、がん診療連携拠点病院などが「がんゲノム医療中核拠点病院」「同拠点病院」「同連携病院」のいずれかに指定されていることを「望ましい要件」とし、2029年度の改定時には必須要件化する方針を示した。がんゲノム医療の進展により、患者ごとに最適な薬物療法を選択する重要性が高まっているためである。ただ、2026年4月1日時点で地域がん診療連携拠点病院357施設のうち、がんゲノム医療中核拠点病院などの指定を受けているのは7割弱にとどまる。別資料でも、2026年3月時点で拠点病院等463施設のうち指定済みは295施設(63.7%)とされ、遺伝カウンセリング体制、C-CATへのデータ登録、エキスパートパネル実施などが課題となっている。手術療法と放射線療法についても、実績要件の厳格化が進む。現行指針では、地域拠点病院の要件として、悪性腫瘍の手術年400件以上、放射線治療の延べ患者年200人以上などの絶対数要件がある一方で、同一がん医療圏に1施設のみの場合は、地域患者の約2割を診療していれば要件を満たす「カバー率要件」も認められている。厚労省は2029年度の見直しでこの緩和要件を廃止し、2030年度から手術年400件以上、放射線治療年200人以上を必須要件とする方向。現在、手術件数を満たさず、カバー率で指定されている施設は13施設、放射線治療の基準を下回る地域拠点病院は38施設ある。また、手術、放射線治療、薬物療法の実績や専門職配置、機器情報などを都道府県に報告し、都道府県がん診療連携協議会の求めに応じて情報提供すること、診療実績をウェブサイトなどで公表することも必須要件とする。協議会には、地域でどの医療を集約し、どの医療を身近に提供するかを議論する役割が期待される。その一方で、ワーキンググループでは、拠点病院が減少した場合の地域医療の質や患者アクセスへの影響を懸念する意見も出た。集約化は質の維持や人材確保には不可欠だが、患者や住民に必要性をわかりやすく説明し、地域がん診療病院や周辺医療機関との連携を強めることが求められる。今回の見直しは、がん医療を「どこでも同じ」から「高度医療は集約し、継続診療は地域で支える」体制へ再編する転換点となる。 参考 1) 第10回がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ(厚労省) 2) がん拠点病院、ゲノム中核指定を「望ましい要件」に 整備指針改定で 29年度からは必須要件化(CB news) 3) がん診療連携拠点病院、2030年度から「ゲノム中核拠点病院等であること」を必須要件へ-がん拠点病院指定要件WG(Gem Med) 4.東京都で麻しん急増、緊急ワクチン接種開始 接触後72時間以内が鍵/JIHS国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、2026年第18週(4月27日~5月3日)の麻しん(はしか)報告数は23例で、年初からの累計は462例となった。過去10年で患者数が最多だった2019年の同時期467例に迫る水準で、感染は首都圏を中心に広がっている。累計では東京都226例が最多であり、神奈川県41例、鹿児島県34例、埼玉県33例、千葉県28例、愛知県25例と続く。東京都では5月14日までに239例の患者が確認され、現在の集計方法となった2008年以降で過去2番目、過去10年では最多となった。麻しんは空気感染する極めて感染力の強い感染症で、免疫を持たない人が同じ空間にいれば、ほぼ感染するとされる。発熱、咳、発疹などを来し、肺炎、中耳炎、脳炎などを合併し、重症化すれば死亡することもある。国内は麻しんウイルスが定着していない「排除状態」とされるが、今年の患者の約7割は国内感染とみられ、海外から持ち込まれたウイルスが国内で連鎖している可能性がある。5月5日には埼玉県所沢市のベルーナドームで野球観戦した来場者の麻しん陽性が判明し、ゴールデンウイーク後の拡大が警戒されている。東京都は感染拡大を受け、保健所が接触者と特定した都民のうち、接触から72時間以内で、麻しんの既往がなく、接種歴が不明または1回以下の人を対象に、5月18日から都内8ヵ所の感染症指定医療機関で無料の緊急ワクチン接種を始める。接触後72時間以内の接種により、発症を予防できる可能性があるためだ。厚生労働省も、子どもの定期接種の徹底に加え、乳幼児や渡航者と接する機会の多い職種で未接種者に接種検討を呼びかけている。医療機関での対応も重要になっている。国立国際医療センターでは、病棟勤務の医療従事者2人と外来受診患者1人の麻しん陽性が判明した。職員2人は麻しん含有ワクチンを複数回接種済みで、修飾麻しんでは典型例より症状や感染性が低い傾向があるとされるが、同院は通常の麻しん発生時に準じ、接触者調査、免疫確認、健康観察を実施している。疑い患者には事前連絡を求め、一般患者と動線や診察時間を分け、医療従事者はN95マスクを着用するなど、院内感染対策の徹底が求められる。背景には、世界的なワクチン接種率の低下がある。新型コロナ禍で接種機会が失われ、医療資源もコロナ対応に偏った。麻しん流行国は2024年に59ヵ国と2022年の1.6倍に増え、集団免疫に必要とされる95%以上の接種率を1回目接種で達成した国・地域は、2019年の84から2024年には69に減少した。わが国でも麻しんワクチン1回目の接種率は2024年度に92%と、2008年度以降で最低となった。ワクチン供給の混乱に加え、否定的な印象の拡大も指摘されており、麻しん対策は国内流行への対応にとどまらず、予防接種への信頼回復を含む公衆衛生上の課題となっている。 参考 1) 世界でワクチン離れ、接種率「コロナ前」遠く はしか流行1.6倍の59カ国(日経新聞) 2) 麻疹報告数462例に、過去10年で最多だった2019年同時期に迫る(日経メディカル) 3) はしか感染者 過去10年で最多の2019年に迫るペースで増加(NHK) 4) 東京都 はしか感染拡大で接触者に無料ワクチン接種の緊急対策(同) 5) はしか患者10年で最多の東京都、ワクチン緊急接種の開始を発表…患者との接触者が対象(読売新聞) 6) 当院職員の麻しん発症に関するご報告(国立国際医療センター) 7) 当院受診患者の麻しん発症に関するご報告(同) 5.電子カルテ停止で診療一時停止 市立奈良病院、再発防止へ検証/奈良県奈良市の市立奈良病院で4月に電子カルテなどのシステムに異常が検知され、外来診療や救急受け入れが一時停止した問題で、市は原因究明と再発防止に向け、情報セキュリティーの専門家らによる第三者委員会を設置する方針を明らかにした。病院では4月21日夜、ネットワーク監視装置が異常な通信を検知。電子カルテなどに関係するサーバーをネットワークから切り離したため、電子カルテの入力や閲覧ができなくなった。これを受け、同病院は翌22日から2日間にわたり、救急患者と一般外来患者の新規受け入れを停止した。外来診療や救急搬送の受け入れは4月24日朝から通常通り再開したが、その後も受付、会計、一部診療、診療報酬関連システムなどで復旧作業が続き、業務に遅れが生じていた。奈良市は5月13日午後、残っていたシステムを含め、すべての復旧作業が完了したと発表した。現時点で、異常の原因は明らかになっていない。サイバー攻撃の疑いも含めて検証が必要とされており、市は6月初めごろにも第三者委員会を開き、病院側の分析の妥当性を外部の専門家が確認する。仲川 げん市長は記者会見で、「日常の病院業務がいとも簡単に止まってしまうリスクを今回感じた」と述べ、原因を分析した上で国に報告し、全国の自治体にも事例を共有できるよう取り組む考えを示した。今回の障害は、電子カルテや会計、診療報酬請求など、病院運営の基盤となる情報システムが停止した場合、地域の救急・外来機能にただちに影響が及ぶことを改めて示した。医療機関では、サイバー攻撃対策だけでなく、異常検知後の初動対応、ネットワーク遮断時の診療継続体制、紙運用への切り替え、復旧手順、自治体や国への報告体制などを含めた事業継続計画の実効性が問われている。第三者委員会の検証結果は、自治体病院を含む全国の医療機関にとっても重要な教訓となりそうだ。 参考 1) サイバー攻撃疑いで診療停止の市立奈良病院 原因究明に向け、奈良市が第三者委員会設置へ(産経新聞) 2) 市立奈良病院のシステム障害 完全復旧し原因解明へ(NHK) 3) 電子カルテシステムの大規模障害、市立奈良病院は全てのシステムが復旧したと明らかに…第三者委員会で検証(読売新聞) 6.病院再編に現場反発、4割が退職希望 静岡市立清水病院/静岡県静岡市は、20年連続で赤字が続く市立清水病院について、清水厚生病院との一体的運用と指定管理者制度の導入により、市立病院としての存続を図る方針を示した。開始目標は2027年4月。市立清水病院は463床、29診療科を持つ総合病院だが、稼働病床は291床にとどまる。2025年度の赤字額は29.5億円、赤字率は29.9%に達する見込みで、市は従来型の改善策では再建困難と判断した。背景には、清水区全体の医療需要の縮小がある。市立清水病院のほか、154床の清水厚生病院、159床の清水さくら病院が存在するが、人口減少下で各病院が同じ機能を維持すれば、患者と症例が分散し、医師確保や若手医師育成にも悪影響を及ぼす。市は「共倒れ」を避けるため、清水厚生病院の入院機能を市立清水病院に集約し、約400床規模で一体運用する計画。清水厚生病院は外来診療所として地域医療を継続し、指定管理者の最有力候補には同院を運営するJA静岡厚生連が挙がっている。その一方で、現場の反発は大きい。労働組合のアンケートでは、指定管理導入後も継続勤務を希望する職員は12.0%にとどまり、「退職したい」が41.4%、「悩んでいる」が44.1%を占めた。退職希望の理由は「給与が下がる可能性」が95.5%、「手当がなくなる可能性」が87.2%と、処遇悪化への不安が中心となっている。職員からは、「説明が突然で、行政から見放されたようだ」との声もある。難波 喬司市長は説明不足を認め、職員説明会や個別相談窓口の設置を表明した。市は、指定管理者への転籍に際して数年間の給与水準保障や、市職員としての配置転換も検討する。病院再編は地域医療を守るための選択肢となり得るが、医療提供体制の根幹である職員の納得と定着を欠けば、かえって診療機能の低下を招きかねない。今回の事例は、再編の成否が病床数の最適化だけでなく、雇用不安への対応と現場との合意形成に左右されることを示している。 参考 1) 静岡市、指定管理で赤字病院の存続図る 清水区の市立・公的病院を一体的運用(CB news) 2) 市立病院で職員の4割が「退職したい」 突然の方針表明に「あまりに突然。行政から見放されたような思い」 指定管理者制度の導入で待遇面の悪化を危惧 不十分な説明に怒りと困惑(FNNプライムオンライン) 3) 民営化待遇低下不安視 「退職したい」4割 職員向け説明会へ 静岡市立清水病院(読売新聞) 4) 市立清水病院・清水厚生病院の一体的運営方針発表の静岡市…病院職員反発に市長“説明不足”を謝罪し詳細説明会開催へ(静岡第一テレビ)

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血培で「マジックマッシュルーム」が陽性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第306回

血培で「マジックマッシュルーム」が陽性「マジックマッシュルーム」と聞くと、なんとなく危ない薬物、というイメージはあるかもしれません。幻覚作用をもつ成分を含むキノコの俗称で、知覚の変化や幻覚、多幸感、不安、混乱などを引き起こします。つまり、いわゆる“毒キノコ”のように食べたらすぐ重い臓器障害を起こすタイプとは少し違い、主に中枢神経系に作用するキノコです。Giancola NB, et al. A "Trip" to the Intensive Care Unit: An Intravenous Injection of Psilocybin. J Acad Consult Liaison Psychiatry. 2021 May-Jun;62(3):370-371.主人公は30歳男性。背景には双極性障害と静注薬物使用歴があり、処方されていた薬もきちんと飲めていませんでした。本人はオピオイド依存や抑うつを自分で何とかしようとしており、ネット上で見つけた情報をもとに、自己流の“治療”としてマジックマッシュルームを使って「ある方法」を試したようです。ある方法というのは、マジックマッシュルームを「飲んだ」ことではなく、「煮出したキノコ液をそのまま静脈に入れた」ことです。ひぃぃぃぃぃ!!!患者さんはその後、傾眠、黄疸、下痢、悪心、吐血を来し、救急外来を受診した時点で血圧は75/47mmHgまで低下していました。検査では血小板減少、電解質異常、急性腎障害、急性肝障害がみられ、多臓器不全として集中治療室に入室しました。敗血症性ショック、急性呼吸不全、播種性血管内凝固まで合併し、挿管や血漿交換を要しました。血液培養では、細菌だけでなく真菌も検出され、その真菌はPsilocybe cubensis、つまり本人が注射したマジックマッシュルームそのものと同定されました。怖すぎる…。皆さんも、マジックマッシュルームを静注しないように気を付けてください!

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第313回 ハンタウイルス、日本の暗黒史と国内で注意したい場所とは?

INDEXハンタウイルスの最新状況旧日本軍との深いかかわり後に明らかになった2つの国内事例日本のネズミも抗体陽性、注意したい場所とは…ハンタウイルスの最新状況オランダのオーシャン・エクスペディション社が運営しているクルーズ船「MVホンディウス号」でのハンタウイルス(アンデスウイルス)感染騒動は、その後、乗員乗客の大半がスペイン領カナリア諸島で下船し、現在同号は乗員25人と彼らのモニタリングを行う医療者2人を乗せてオランダに向けて航行中である。世界保健機関(WHO)の発表では、13日までに判明している感染者が8例、感染の疑いが2例、検査結果保留(検査機関2ヵ所でそれぞれ陽性と陰性の結果のため)が1例の計11例で、うち死者3例。ちなみに、最初にWHOに状況が報告された時点で既に死亡していた2例は、いずれも疑いに分類されている。WHOは発生状況の分析から、船内でヒト-ヒト感染が起きた可能性を指摘している。前出の数字で単純に致死率を算出するならば27.3%であり、アンデスウイルスに関しては、状況次第ではかなり悲惨な結果となることが改めて示されたといえる。なお、乗客の中に含まれていた日本人1人はイギリスに移送され、現地の医療機関で隔離中。最大で45日間の健康観察下に置かれる予定と報じられている。「45日間」には驚くが、これはアンデスウイルスの潜伏期間が最大6週間であるためだ。WHOは今後、乗員乗客からの追加感染例の発生の可能性に言及しつつも、「下船した人々の隔離、新たな感染疑い例の迅速な隔離、接触者の監視といった現在の対応により、さらなる感染拡大のリスクは抑制されるだろう」との見解を示している。この件では各国が乗客の経過観察にかなり神経をとがらせている現状を考えれば、私見ながら彼らを起点にした各地でのアウトブレイク発生という最悪の状況は避けられるのではないかと予想している。旧日本軍との深いかかわりさて、前回はハンタウイルスの分離・同定がアジアで始まったことや、ウイルスの特性などの概略に触れたが、今回は日本でのハンタウイルス感染症史に触れておきたい。実はハンタウイルスと日本とのかかわりは、ウイルス同定以前の1932年、日本が中国東北部に建国した傀儡国家・旧満州国で始まっている。1938年に同国内の旧ソ連国境に近い孫呉県(現黒竜江省黒河市)付近で流行性出血熱、通称「孫呉熱」が大流行し、1940年代に旧満州国内では旧日本軍兵士を中心に約1万例の患者が発生、死者は約3,000例だったと報告されている。ここで登場するのが、旧日本軍の暗部の1つと言える関東軍防疫給水部(通称731部隊)である。同部は捕虜を使った生体実験という非人道的な活動を行っていた秘密部隊として知られているが、その1つが孫呉熱の研究である。研究の中身は、孫呉熱に感染した日本軍兵士から採取した血液を捕虜に注射して感染確認を行うなど、聞いただけで身の毛もよだつものだ。研究結果の一部は、サルを対象に行った実験と偽装して論文発表もされている。当時、孫呉熱はウイルス感染症の可能性が指摘されたが、ウイルス同定には至っておらず、自然宿主も現地に土着するセスジネズミに寄生するダニが疑われていた。しかし、前回も触れたように、後年、韓国でハンタウイルスの1種であるハンターンウイルスが同定され、過去の臨床記録、疫学記録、病理所見の再検討が行われた結果、孫呉熱がハンタウイルス感染症の1種だったと臨床的に分類されるようになった。後に明らかになった2つの国内事例また、同様に過去に遡ってハンタウイルス感染症と認定されたのが、1960年代に大阪・梅田周辺で起こった通称「梅田熱」である。約10年間にわたって断続的に報告された患者数は119例でうち2例が死亡。後に発症後7~17年経過した患者から採取した血清検体から、ハンタウイルスの1種であるソウルウイルスの抗体が検出された。ちなみにソウルウイルスはドブネズミやクマネズミが自然宿主で、セスジネズミを自然宿主とするハンターンウイルスと比較し、同じ腎症候性出血熱(HFRS)の症状もより軽度といわれている。実際、大阪の事例は単純計算なら致死率1.7%であり、過去の報告での致死率下限が5%のハンターンウイルスよりも低率だ。さらに1970~84年にかけて、ハンタウイルスに汚染された実験ラットを通じたハンタウイルス感染症が全国の研究施設で報告された。報告された患者ほぼ全員に共通していたのが、ラットの飼育やケージ交換、ラットによる動物実験実施に従事していたこと。報告された感染者数は札幌医科大学、東北大学、名古屋市立大学をはじめとした全国21施設で126例に上り、このうち1981年に札幌医科大学の動物飼育担当職員1例が死亡した。時期からわかるように、このケースはハンタウイルス同定時期をまたいでおり、後になって国内の実験用ラットの供給網が全般的にソウルウイルスに汚染されていたことが明らかになった。この事例は特定された微生物や寄生虫が存在しないSpecific Pathogen Free(SPF)実験動物や動物実験施設のバリア化の普及につながる大きな契機になったと言われている。日本のネズミも抗体陽性、注意したい場所とは…これ以降、半世紀超にわたって日本ではハンタウイルス感染症の報告はないが、完全に安全とも言えない。たとえば、1996~98年にかけて全国の18検疫所が港湾地域で行った捕獲ネズミでの調査1)では、ハンタウイルス抗体陽性率は12.9%だった。また、2000~03年に北海道大学のグループが北海道、本州、四国、九州で行ったネズミの捕獲調査2)では、ネズミの種類別の抗体陽性率はアカネズミが1.0%、エゾヤチネズミが3.6%、ドブネズミが1.1%、クマネズミが6.7%。多くはないが、国内にもハンタウイルスは存在するのである。さらにもう1つ、ぎょっとする報告がある。実は1999年に米国・メイヨークリニックのグループが急性・慢性腎炎の約26%は、ハンタウイルス感染が原因の可能性があることを指摘した研究3)を発表した。これを受けて厚生労働省の研究班が、ハンタウイルス抗体陽性のネズミが確認された大阪港・神戸港近隣の大阪府・大阪市・神戸市・広島県・岡山県地域の8施設530例の透析患者に協力を得て、ハンタウイルスの抗体価を調査1)したところ、抗体陽性率は1.5%だったことがわかったのだ。概観すると、極めてまれとは言え、国内でも水面下でハンタウイルス感染症が発生している可能性が高いことになる。繰り返しになるが、むやみやたらと怖がるべきものではないし、恐怖訴求のつもりもないが、ネズミの排せつ物による汚染の可能性がある場所には近づかない、どうしても避けられない場合はマスクや手袋を着用するなどの対策は必要だろう。「ネズミの排せつ物による汚染の可能性がある場所」と聞いてもピンとこない人もいるかもしれないが、たとえば、亡くなった身内が居住し、長らく放置されていた家屋での遺品整理、ネズミが入り込む余地がある屋外の物置やガレージの整理・清掃などは、これに該当する。意外と身近に危険は潜んでいると言えるかもしれない。1)厚生労働科学研究成果データベース:我が国におけるハンタウイルス感染症(腎症候性出血熱)の疫学的検証(中間報告)2)Lokugamage N, et al. Microbiol Immunol. 2004;48:843-851.3)Patnaik M, et al. Am J Kidney Dis. 1999;33:734-737.

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第61回 クルーズ船で広がったハンタウイルス。「アンデスウイルス」の正体と私たちが知っておきたいこと

2026年4月、アルゼンチンを出港したクルーズ船で発生したハンタウイルスの集団感染が、世界中の関心を集めています。WHOによれば、これまでに少なくとも8人が感染し、うち3人が亡くなっています。原因として同定されたのは、南米で知られる「アンデスウイルス」と呼ばれるウイルスでした。この聞き慣れないウイルスは、これまで知られているハンタウイルスの中で唯一、ヒトからヒトへの感染が確認されているという、少し特殊な存在でもあります。今回はその全体像を整理してみたいと思います。ネズミからヒトへ、そしてヒトからヒトへハンタウイルスは、Hantaviridae科Orthohantavirus属に属するRNAウイルスの総称で、世界に40種以上、そのうち22種ほどがヒトに感染することが知られています。共通しているのは、いずれも野生のげっ歯類を自然宿主としている点です。アンデスウイルスの宿主は、南米南部に生息する「コリラルゴ」と呼ばれる小型のネズミで、アルゼンチンとチリのアンデス山脈周辺に広く分布しているそうです。通常の感染ルートは、ネズミの尿・糞・唾液に含まれるウイルスがエアロゾル化し、それをヒトが吸い込むことです。換気の悪い物置や山小屋の掃除など、屋内での曝露がとりわけ危険とされています。典型的には、ネズミに咬まれたり直接触れたりした記憶がなく、知らないうちに吸入してしまっていたケースが大半のようです。ここで重要になるのが、アンデスウイルスだけが備える「ヒト-ヒト感染」の能力です。アルゼンチンで起きた大規模アウトブレイクでは34人が感染し、11人が亡くなりました。家族内、とくに性的パートナー間での感染リスクが、ほかの同居者の十数倍高いことも疫学研究から報告されています。最も感染伝播しやすいのは発症前後の初期段階で、血液・唾液・呼吸器分泌物・尿からウイルスRNAが検出されるため、症状が出る前から感染源になり得るのです。とはいえ伝播には「濃厚かつ長時間の接触」が必要とされており、新型コロナウイルスのように街中で容易に広がるものではないと報告されています。今回のクルーズ船の事例で問題になっているのも、まさに長期航海という限定された空間で乗員乗客が密に過ごしたという特殊な条件です。WHOは濃厚接触者に対して、1潜伏期分にあたる約45日間の健康監視や隔離を勧告しており、複数の国にまたがる追跡調査が現在も進められています1, 2, 3)。風邪のような症状から数時間で急変する「ハンタウイルス心肺症候群」潜伏期間は感染源への曝露から2〜3週間(中央値14〜18日、最長で7週間)と長く、初期の症状はそれほど特徴的ではありません。発熱・悪寒・激しい筋肉痛(とくに大腿や腰背部)、頭痛、悪心、嘔吐、腹痛、下痢といった、いわゆる「胃腸症状を伴うインフルエンザのような」経過をたどります。鼻水や咽頭痛など、上気道の症状をほとんど欠くというのが、いわゆる「風邪」との区別のヒントになります。この「前駆期」は2〜8日ほど続きます。問題はその後です。「ハンタウイルス心肺症候群」と呼ばれるこの病態の本質は、血管内皮の機能不全によるびまん性の毛細血管漏出にあります。ウイルスはβ3インテグリンなどを介して血管内皮細胞や血小板に侵入し、サイトカインの放出と血管透過性の亢進を引き起こします。その結果、肺胞内に大量の血漿成分が漏れ出して非心原性肺水腫を生じ、同時に心筋抑制から心原性ショックに陥ります。乾性咳嗽と呼吸困難の出現を皮切りに、数時間という単位で肺水腫、ショック、不整脈、凝固障害へと急速に進行し、亡くなる方の多くは心肺期に入ってから最初の24時間以内に命を落としてしまいます。検査では、血小板減少、白血球増多と幼若球の出現、免疫芽球の増加、血液濃縮、LDHの上昇といった所見が鋭敏な手がかりになります。確定診断は、ELISAによる血清IgM/IgG抗体検出と、PCRによるウイルスRNA検出で行います。致死率は、アンデスウイルスなどの重症型で30〜50%、軽症型でも10〜30%と非常に高いのが特徴です。生存できた場合でも、倦怠感や息切れが数ヵ月にわたって残ることがあり、急性期を乗り越えても回復には時間がかかると報告されています1, 4)。治療の鍵は「早期搬送」、そして私たちにできる予防策ハンタウイルスに対する特効薬は、残念ながらありません。リバビリンは腎症候性出血熱には有効ですが、心肺症候群に対する効果は複数の臨床試験で否定されています。ステロイドの有用性も示されていません。したがって治療の中心は、集中治療による全身管理になります。人工呼吸器、循環作動薬、そして体外式膜型人工肺(ECMO)を用いた呼吸循環補助が、命を救う鍵を握ります。毛細血管漏出が進む病態のため、敗血症と異なり「輸液は控えめに、昇圧薬は早めに」というのが治療の原則です。実際、ECMOを要する重症例でも救命率は60%を超えると報告されており、「疑った段階で、ECMOが使える施設へ早く搬送する」ことが予後を左右する最重要事項のようです。予防はまず、ネズミとの接触を断つことに尽きますが、アンデスウイルス患者を診る医療従事者には、N95マスク、ゴーグル、ガウン、手袋による空気感染予防策が推奨され、濃厚接触者は1潜伏期分(約45日)の健康監視あるいは隔離が求められます。ワクチンは現時点で承認されておらず、曝露を避けることが唯一の現実解と言ってよいでしょう2, 4, 5)。パンデミックに至るリスクをどう見るかここで気になるのが、「ハンタウイルス、とくにアンデスウイルスがパンデミックを引き起こす可能性はあるのか」という点ではないでしょうか。結論からお伝えすると、現時点でその可能性は低いと考えられています。理由は大きく2つあります。1つ目は感染経路の特性です。ハンタウイルスの主たる感染経路は、あくまでネズミからのエアロゾルです。アンデスウイルスは唯一ヒト-ヒト感染を起こしますが、それも「濃厚かつ長時間の接触」が必要で、咳やくしゃみで広がる新型コロナやインフルエンザのような効率の良い飛沫感染ではありません。実際、基本再生産数(R0)は1前後と推定されており、適切な隔離下であれば速やかに収束しやすい性質を持ちます。2つ目は、「重症度の高さ」そのものが拡大の歯止めになっているという点です。30〜50%という致死率はこのウイルスの恐ろしさを示すものですが、感染者は急速に発症し、短時間で歩行すら困難な状態に陥ります。社会の中を動き回って他人に伝播させるという、パンデミックを成立させる動線がきわめて作りにくいのです。ただし、安心しきってよいわけでもありません。発症前から感染伝播する可能性があること、気候変動や森林伐採で宿主となるネズミの分布が変動していること、そして今回のように長期クルーズや国際移動によって、本来「南米南部の風土病」だったウイルスが思わぬ場所に運ばれ得ること。これらは公衆衛生上の警戒シグナルとして決して軽視できません。今後アンデスウイルスの新たな変異の獲得により、効率的な飛沫感染能を獲得すれば、状況は一変する可能性もないわけではありません。だからこそ、WHO・CDC・各国当局による監視と早期対応が欠かせないでしょう2, 3, 5)。クルーズ船という閉鎖空間で起きた今回のアウトブレイクは、本来「南米の風土病」と思われていたウイルスが、国境を越えて広がり得ることを示す出来事です。日本国内での流行リスクは依然として低いと考えられますが、流行地への渡航歴がある発熱患者さん、とくに筋肉痛と血小板減少を伴う症例では、本疾患を鑑別の片隅に置いておきたいところです。早く疑い、早く動くこと。それが、この致死率の高い感染症と向き合うために大切なアクションです。1)Vial PA, et al. Pathogenesis, epidemiology, and diagnosis of hantavirus infections. UpToDate. 2026 May 8.2)World Health Organization. Disease Outbreak News: Hantavirus cluster linked to cruise ship travel, Multi-country. 2026 May 4.3)Martinez VP, et al. "Super-Spreaders" and Person-to-Person Transmission of Andes Virus in Argentina. N Engl J Med. 2020;383:2230-2241.4)Harkins M, et al. Hantavirus cardiopulmonary syndrome. UpToDate. 2026 May 8.5)Shmerling RH. Hantavirus explained: What to know after the cruise ship outbreak. Harvard Health Publishing. 2026 May 6.

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「MASLD診療ガイドライン」改訂、脂肪肝を全身疾患として再定義/日本消化器病学会

 2026年4月、「MASLD診療ガイドライン」が改訂された1)。2020年に発刊した前版の「NAFLD/NASH診療ガイドライン」から6年ぶりの改訂で、第3版となる。2026年4月16~18日に開催された第112回日本消化器病学会総会では、改訂ポイントを解説するパネルディスカッションが開催された。 今改訂の最大のトピックスは、疾患名の変更とその定義だ。従来、脂肪性肝疾患に用いられてきた「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」の疾患名は国際的コンセンサスに基づき、2023年に「MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)」「MASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)」に変更された。日本でも日本消化器病学会・日本肝臓学会がこれに賛同し、2024年8月に「MASLD:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」「MASH:代謝機能障害関連脂肪肝炎」との日本語名を発表している。改訂版ガイドラインでは、これらの新たな疾患名・定義を踏まえた診断・診療体系が提唱された。疾患定義:世界的な名称変更 NAFLDという名称は1980年代に提唱され、その後40年以上にわたり使用されてきた。しかし「non-alcoholic(非アルコール性)」という否定形表現や、「fatty」という言葉が患者へのスティグマにつながるとの指摘が国際的に強まっていた。これを受け、脂肪性肝疾患を「SLD(steatotic liver disease)」という1つの大きな疾患群として捉え直し、そのなかで心代謝系危険因子(CMRF)の有無、飲酒量、その他(薬物、ウイルス、遺伝子など)の要因に応じて疾患を再分類したうえで、その中心的な病態としてMASLDが位置付けられた。従来のNAFLD/NASHとMASLD/MASHの臨床像や診断アルゴリズムはおおむね一致しており、従来のエビデンスは引き続き活用される。診断フローチャート:新たに「MetALD」を設定 新たな疾患分類では、SLDを認めた患者に対し、まず、CMRFの有無を評価する。ガイドラインではCMRFとして 1)肥満:BMI≧23kg/m2 or 腹囲男性>94cm・女性>80cm 2)血糖:空腹時≧100mg/dL or 食後2時間≧140mg/dL or HbA1c≧5.7% or 2型糖尿病 or その治療 3)血圧:収縮期≧130mmHg or 拡張期≧85mmHg or 降圧薬内服 4)中性脂肪:≧150mg/dL or 脂質異常症治療薬内服 5)HDL:男性≦40mg/dL、女性≦50mg/dL or 脂質異常症治療薬内服の5項目を採用している。これらのリスク因子が1つ以上あり、かつ飲酒量が基準未満(純エタノール量:男性30g/日未満・女性20g/日未満)であればMASLDと診断される。 今回のガイドラインでは、新たな疾患カテゴリとして、CMRFが1つ以上の中等量飲酒例(男性30~60g/日・女性20~50g/日)を「MetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)」として独立して規定した。これを超える飲酒量であれば「ALD(アルコール関連肝疾患)」となる。MetALDは従来ではNAFLDから除外されていた群だが、近年、代謝異常とアルコール双方が病態進展に関与すると示されたことを背景に設定され、MASLDよりも肝関連イベントリスクが高いことが報告されている。さらに心血管イベントも増加するとの報告もあることがFRQで示され(FRQ1-1)、今後はこれらの病態に応じた治療法やサーベイランス法の開発が重要となる。診断:肝生検が「必須」から外れる BQ4-1 MASLDの診断に肝生検は必須か? MASLDの診断に肝生検は必須ではない。 今回の改訂で大きな変更点が、確定診断にあたって「肝生検は必須ではない」とされた点だ。これは近年のNIT(非侵襲的検査)の発達によるもので、NITには血液検査による肝線維化マーカー、年齢と検査値を組み合わせたスコアリングシステム(FIB-4 indexなど)、画像検査、そしてこれらの組み合わせがあり、非侵襲的かつ繰り返し評価できることが大きなメリットとなる。とくに複数の線維化マーカーが保険収載されているのは世界中で日本だけであり、この点に関するエビデンスを蓄積することも求められている。一方、肝生検を必要とするケースも依然として存在しており、高リスクMASHの確定診断、炎症の程度の把握が必要なケース、複数のNITの不一致例などが挙げられている。 今回、診断フローチャートのほかに「肝疾患高リスク症例の絞り込み・フォローアップのフローチャート」が作成された。これはNITと肝生検を組み合わせて高リスク症例を絞り込む手順と、その検査や重症度別の患者のフォローアップをかかりつけ医と専門医でどう分担すべきか、という2軸のマトリクスからなる。NITを使った2段階のハイリスク症例の絞り込み、2次リスク評価で使用できるNITのリストアップ、肝生検・超音波エラストグラフィ・MRエラストグラフィによる最終評価と治療方針の決定、その後のリスクに応じたフォローアップ体制など、診断の全体像と医師の役割分担の提唱が可視化されている。非専門医が押さえるべきポイント・従来、「飲酒歴を確認し、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害を除外した残り」としてNAFLDを診断していたが、MASLDにおいてはBMI、糖代謝異常、高血圧、脂質異常症などのCMRFの確認が診断プロセスの中心となる。・飲酒評価の重要性も増した。とくにMetALD概念の導入により、「少量飲酒であれば問題ない」と一律に扱うことは難しくなった。ガイドラインではMASLDを男性30g/日未満、女性20g/日未満、MetALDを男性30~60g/日、女性20~50g/日の飲酒群として整理しているが、実際にはMASLD基準内の少量飲酒でも線維化リスク上昇が報告されており、診療現場では飲酒量を細かく聴取することが重要になる。・「MASLD患者の消化器科へのコンサルテーション基準は?」という設問(BQ4-2)に対しては、「FIB-4 index>2.67(65歳以下の場合)」の高リスク群を紹介基準とし、同1.3~2.67の中間リスク群でも「血小板数<20万/μL」「AST値・ALT値が持続高値」「画像検査で肝硬変の所見を認める」場合には紹介が望ましいとされている。全身疾患としてのMASLD MASLDは多くの疾患と関連するが、診断基準となるCMRF関連4疾患である「2型糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧」についてはBQが設定され、相互補完関係にあることが示されている(BQ3-1~3-4)。さらに、慢性腎障害、内分泌異常、睡眠時無呼吸症候群など、多様な合併症との関連も整理された(BQ3-5、3-6)。また、肝臓以外の悪性腫瘍リスク上昇についても大腸がんを中心に、胃がん、食道がん、婦人科がんとの関連が解説された(BQ3-7)。中でも心血管疾患はMASLD患者の主要死因の1つであり、大規模メタ解析では、MASLD患者の心不全新規発症リスクは一般人口の約1.5倍と報告されている。一方で、肝線維化が心血管リスクを上昇させる独立した因子であるかについては現時点ではまだ明確ではなく、今後探索していくべき課題とされた(FRQ3-1、3-2)。 治療面では、生活習慣介入が中心である点は従来と変わらないが、「単純性脂肪肝だから経過観察のみ」という従来型対応は見直されつつある。肥満、糖尿病の合併例、線維化進展を伴う例では、早期から積極的介入を行う方向性がより明確になっている。GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬など代謝改善薬への期待も高まっており、今後の承認に向けての動きやエビデンス蓄積が注目される。

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ある種の抗うつ薬がLong-COVIDの疲労改善に有効か

 抗うつ薬の一種が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後に持続する疲労の改善に有効な可能性が報告された。マクマスター大学(カナダ)のEdward Mills氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に3月31日掲載された。同時に評価された血糖降下薬のメトホルミンに関しては、有効性が示されなかったという。 COVID-19の急性期以降にさまざまな症状が遷延化する、いわゆる「Long COVID」は、いまだ世界中の多くの人の生活の質(QOL)を低下させている。特に疲労は、最も一般的で生活機能に大きな影響を及ぼす症状とされる。Long COVIDの治療手段としてこれまでに、抗うつ薬のフルボキサミンと血糖降下薬のメトホルミンが有効な可能性が、観察研究などで示唆されている。ただし、ランダム化比較試験(RCT)による確固たるエビデンスは確立されていない。これを背景にMills氏らは、Long COVIDに伴う代表的な症状である疲労に焦点を当てRCTを実施した。 研究参加者は、ブラジル国内の医療機関の外来患者のうち、新型コロナウイルスに感染後90日以上経過しても疲労が持続している成人399人だった。フルボキサミン群、メトホルミン群、およびプラセボ群の3群にランダムに割り付けて、各薬剤を60日間投与した。 その結果、フルボキサミン群では、60日後の疲労がプラセボ群より改善しており(疲労重症度尺度〔FSS〕の平均差-0.43〔95%信用区間-0.80~-0.07〕)、優越性の事後確率(プラセボより優れている可能性)は99.0%と計算された。また90日後にもその効果が持続しており(同-0.58〔-0.98~-0.16〕)、優越性の事後確率は99.7%と計算された。 一方、メトホルミンに関しては、60日後のFSSの平均差が-0.03(-0.42~0.37)で優越性の事後確率が56.0%、90日後は-0.04(-0.47~0.38)で同57.8%であり、プラセボとの差が示されなかった。なお、フルボキサミン群の有害事象の発生率は20.0%であり、メトホルミン群の28.8%やプラセボ群の29.7%より低かった。 論文の上席著者であるMills氏は、「本研究はエビデンスに基づく治療法につながる重要な前進だ。フルボキサミンとメトホルミンは、どちらも比較的安価で入手しやすく、かつLong COVIDによる疲労に有効な可能性が報告されていたが、その有効性の検証を目的とした厳格な臨床試験はこれまで行われていなかった」と述べている。 また、論文の責任著者であるブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のJamie Forrest氏は、「今回の試験結果はLong COVIDに伴う疲労を軽減する薬物治療に関する初めての有力なエビデンスと言える。患者は今すぐに試すことのできる薬剤を求めており、われわれの発見によってその実現に近づいた」としている。 なお、研究者らは、フルボキサミンが最も有効と考えられる患者の特徴を明らかにすること、および、疲労改善のメカニズムを理解するために、今後のさらなる研究の必要性を強調している。

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薬剤性過敏症症候群〔DIHS:drug-induced hypersensitivity syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)は、発熱と多臓器障害を伴う重症型薬疹の1つである。抗けいれん薬など特定の薬剤を内服開始後、遅発性に発症し、原因薬剤を中止しても症状の再燃や遷延化がみられることが特徴である。多くの場合、発症後3週間前後でヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)に代表されるヘルペスウイルスの再活性化を伴うことから、薬剤アレルギーとヘルペスウイルス感染症が複合して生じる新たな病態として認識されている(図1)。DIHSのもう1つの特徴として、回復期に1型糖尿病や慢性甲状腺炎などの自己免疫疾患を発症することが知られている。なお、欧米を中心にDRESS(drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms)という疾患概念が用いられるが、DRESSの診断基準にはヘルペスウイルスの再活性化については言及されておらず、DIHSよりも広い範囲の薬疹が含まれる。図1 DIHSの病態の仮説■ 疫学2021年の全国調査によれば、年間受療患者数は人口100万人当たり2.82人と推計されている。男女比は1:1で、発症年齢は40~60代(中央値58歳)が最多である。原因薬剤は比較的限定的であり、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニサミドなどの抗てんかん薬のほか、アロプリノール、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、メキシレチンなどが代表的である。DIHSの致死率は約10%程度と高く、死因の多くはサイトメガロウイルス(CMV)肺炎やニューモシスチス肺炎などの感染症である。■ 病因本症は、原因薬剤を通常2~6週間(平均1ヵ月)内服した後に発症する。病態は、T細胞を主体とする薬物アレルギー反応とヘルペスウイルスの再活性化が中心である。急性期にはTARC/CCL17の著明な上昇や好酸球増多に象徴されるTh2反応の亢進がみられる。また、急性期には制御性T細胞(Treg)の増加がみられるが、経過中にその機能やバランスが崩れることが、ウイルス再活性化や後遺症としての自己免疫疾患発症に関与すると考えられている。さらに、急性期には末梢血のCD4陽性T細胞表面にHHV-6の受容体であるCD134/OX40の発現が亢進しており、これがウイルスの効率的な感染拡大を許容する一因である可能性が示唆されている。■ 症状初期症状として発熱、頸部リンパ節腫脹、顔面や躯幹の紅斑が生じる。皮疹は播種状紅斑丘疹型や多形紅斑型で始まり、急速に拡大してしばしば紅皮症状態に移行する(図2)。特徴的な顔貌として、顔面の浮腫を伴う紅斑、眼周囲の蒼白、鼻孔・口周囲に鱗屑・痂皮を伴う丘疹や小膿疱がみられる(図3)。肝機能障害や腎機能障害などの内臓病変や、異型リンパ球の出現、好酸球増多、白血球増多などの血液学的異常を伴う。図2 DIHSにおける紅皮症状態画像を拡大する図3 DIHSに特徴的な顔貌■ 予後原因薬剤を中止しても皮疹や臓器障害が遷延し、経過中に再燃を繰り返す。発症3~5週間前後にCMVの再活性化が生じ、肺炎、腸炎、消化管出血、肝障害などの致死的な合併症を引き起こすことがある。また、DIHSの症状が軽快した数ヵ月から数年後に、橋本病、劇症1型糖尿病、円形脱毛症、白斑などの自己免疫疾患を発症することがあり、長期的な経過観察が必要である。2 診断診断は、厚生労働省研究班による診断基準(2005年)(表)に基づいて行う。表 薬剤性過敏症症候群(DIHS)診断基準(2005)■ 概念高熱と臓器障害を伴う薬疹で、薬剤中止後も遷延化する。多くの場合、発症2~3週間後にHHV-6の再活性化を生じる。■ 主要所見1. 限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑、多くの場合紅皮症に移行する。2. 原因薬剤中止後も2週間以上遷延する。3. 38℃以上の発熱4. 肝機能障害5. 血液学的異常:a、b、cのうち1つ以上a. 白血球増多(11,000/mm3以上)b. 異型リンパ球の出現(5%以上)c. 好酸球増多(1,500/mm3以上)6. リンパ節腫脹7. HHV-6の再活性化典型DIHS1~7すべて非典型DIHS1~5すべて、ただし4に関しては、その他の重篤な臓器障害をもって代えることができる。■ 参考所見1. 原因医薬品は、抗けいれん薬、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、アロプリノール、ミノサイクリン、メキシレチンであることが多く、発症までの内服期間は2~6週間が多い。2. 皮疹は、初期には紅斑丘疹型、多形紅斑型で、後に紅皮症に移行することがある。顔面の浮腫、口囲の紅色丘疹、膿疱、小水疱、鱗屑は特徴的である。粘膜には発赤、点状紫斑、軽度のびらんがみられることがある。3. 臨床症状の再燃がしばしばみられる。4. HHV-6の再活性化は、(1)ペア血清でHHV-6 IgG抗体価が4倍(2管)以上の上昇、(2)血清(血漿)中のHHV-6 DNAの検出、(3)末梢血単核球あるいは全血中の明らかなHHV-6 DNAの増加のいずれかにより判断する。ペア血清は発症後14日以内と28日以降(21日以降で可能な場合も多い)の2点で確認するのが確実である。5. HHV-6以外に、サイトメガロウイルス、HHV-7、EBウイルスの再活性化も認められる。6. 多臓器障害として、腎障害、糖尿病、脳炎、肺炎、甲状腺炎、心筋炎も生じうる。■ 早期診断の補助検査診断基準項目に「中止後2週間以上の症状の遷延」や「発症2~3週間後のHHV-6再活性化」が含まれるため、発症早期の確定診断は困難である。早期にDIHSを疑う指標として、急性期の血清TARC値の測定が有用であり(4,000pg/mL以上で疑う)、2023年に「DIHS/DRESSの診断の補助」としての保険適用が追加された。■ 鑑別診断と原因薬剤の特定通常の薬疹や、麻しん・風しんなどのウイルス性発疹症との鑑別を要する。DIHSを疑う臨床的ポイントとして、原因薬剤が比較的限られていることから、詳細な薬剤内服歴(2~6週間の服用歴)の聴取が不可欠である。また、原因薬剤中止後も皮疹や臓器障害が遷延・悪化することも、他の薬疹との重要な鑑別点となる。特有の顔貌(図3)や、皮疹が急速に紅皮症化する経過(図2)も診断の有力な手掛かりとなる。HHV-6の再活性化は、一般に末梢血液中のHHV-6 DNAの定量(リアルタイムPCR法)によって判断するが、現時点では保険適用外の検査である。被疑薬の特定には、薬剤添加リンパ球刺激試験(DLST)やパッチテストが有用である。ただし、DLSTは発症早期には偽陰性となりやすく、発症後5週目以降の回復期に実施する必要がある。なお、重症化リスクを考慮し、薬剤の再投与試験(誘発試験)は行わない。3 治療■ 治療の実際DIHSを疑った場合は、第一に被疑薬を中止し、原則として入院加療とする。病初期に起こる全身症状と臓器障害の寛解を目指し、副腎皮質ステロイドの全身投与が治療の基本となる。中等~高用量(プレドニゾロン換算0.5~1mg/kg/日)で開始し、症状が十分に改善するまで(通常7~14日間)維持する。その後は、症状をみながら1~2週間ごとに5~10mg/日ずつ緩徐に漸減する。急激なステロイドの減量は、免疫再構築症候群を招きCMV感染症を顕在化させるリスクがあるため避けるべきである。臓器病変を伴わない軽症例に対しては、ステロイド全身投与を行わず、局所ステロイド外用や補液などの支持療法(supportive therapy)で経過観察することもある。ステロイドパルス療法は、CMVの再活性化や自己免疫疾患の発症に関与するとの否定的見解が主流であり、重篤な臓器障害への進展など特殊な状況に限り検討される。■ CMV感染症への対応発症3~5週前後にCMVが再活性化し、ステロイドの減量を契機として突然、肺炎や消化管出血などの致死的合併症を発症することがある。経過中は常にCMVのモニタリングを行い、顕性感染症を認めた場合には、抗ウイルス薬(ガンシクロビル)の投与による積極的な介入を行う。■ 多剤感作への配慮DIHSの経過中は多剤感作を引き起こしやすいため、解熱や感染予防目的での非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗菌薬の新たな投与は可能な限り避けるべきである。4 今後の展望DIHSの病態については、HHV-6やCMV再活性化の病態への関与について多くの知見が得られてきたものの、依然として未解明な点が残されている。とくに、最適なステロイド減量プロトコールの確立は急務であり、大規模な症例レジストリに基づくエビデンスの蓄積と治療指針の更新が期待される。また、回復期に発症する自己免疫疾患などの遅発性合併症は、患者の長期予後を左右する重要な課題である。今後は、これらの合併症を予測するバイオマーカーの同定や、その発症を制御する新たな介入法の開発が望まれる。5 主たる診療科皮膚科(重篤な臓器障害を伴うため、十分な検査と全身管理を行える施設への早期のコンサルテーションが重要である)。6 参考になるサイト診療、研究に関する情報薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン 2023(日本皮膚科学会/重症多形滲出性紅斑に関する厚労省調査研究班)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)医薬品副作用被害救済制度(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)  (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2026年5月12日

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薬剤耐性菌の防御システムを乗り越える「ファージ」の仕組みを解明/JIHS

 薬剤耐性菌は世界的に深刻な脅威となっている。対策の1つとして注目されているのが、細菌に感染して溶菌させるウイルス(バクテリオファージ、以下ファージ)だ。国立健康危機管理研究機構(JIHS)/国立感染症研究所の千原 康太郎氏、氣駕 恒太朗氏らは、ファージが細菌の防御システムを回避して原因菌を破壊する仕組みを明らかにした。その詳細をJIHS開催の記者ブリーフィングで紹介している。薬剤耐性菌対策に期待されるファージ療法 薬剤耐性菌による感染症は全世界で急速に増加している。2025~50年における薬剤耐性菌を直接原因とする累積死者数は3,900万人以上、関連死者数は1億6,900万人以上に上ると推定される1)。 ファージは細菌に対して高い特異性を持って感染し、内部で増殖することで溶菌する。ファージ療法の研究は抗菌薬以外の新たな治療として進んでいる。欧州の多施設後ろ向き観察研究では、標準治療抵抗性の感染症100例に対して、臨床的改善77%、除菌率61%という成績が報告されている2)。 一方で、細菌は多様な防御システムでファージの感染を強力に阻止する。ファージはピンポイントで細菌を狙う。そのため、有効なファージを選ぶには、さまざまな原因菌の防御機構をファージがどのように突破するかを分子レベルで理解することが不可欠である。細菌の防御システムを乗り越えるファージの機能 同研究チームは大腸菌T6ファージに注目し、細菌の防御機能の回避メカニズムを調査した。実験ではファージの防御システムであるSeptuを有する大腸菌に感染できるT6ファージの株を分離してゲノムを解析している※。※Septuが存在しているため通常ファージは感染できないが、その中から感染したファージを抽出して解析。 SeptuはチロシンtRNA(tRNA-Tyr)を切断してファージの増殖を妨げる。解析の結果、Septuを回避するT6ファージはtRNA-Tyrを含む遺伝子領域が増幅していることが明らかになった。言い換えれば、防御機能で減少したtRNA-Tyrを補うことで、ファージ感染を成立させていることになる。 ファージが細菌の防御機能を突破するためには、DNA切断酵素SegBが重要であることも明らかになった。SegBは前出のSeptu以外の防御システム(OLD、ToxIN)に対しても、それぞれに対応した関連遺伝子領域を増幅させる。すなわち、SegBはそれぞれの防御システムに対応し、乗り越えているのだ。 防御システムの回避機構が明らかになったことで、細菌とファージのマッチングが実現しやすくなっていくであろう。この研究は「抗菌薬の使用削減、薬剤耐性菌の克服につながる成果」と氣駕氏は結んだ。 この研究結果はNature Communications誌2026年4月20日号(オンライン版)に掲載されている。

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麻疹・風疹の違いは?

麻疹・風疹の違いは?麻疹(はしか)風疹(3日はしか)原因ウイルス 麻疹ウイルス(Paramyxovirus科Morbillivirus属)風疹ウイルス(Togavirus科Rubivirus属)感染経路空気感染、飛沫感染、接触感染感染力が非常に強い飛沫感染感染力が強い潜伏期間10~12日間14~21日間症状発熱(38℃前後、発疹期は39.5℃以上)、上気道炎症状(せき、鼻みず、のどの痛み)、結膜炎症状(結膜充血、目やに、まぶしさ)、消化器症状(下痢、腹痛)、発疹、コプリック斑(口腔内の白色の小斑点)など発熱(約半数)、発疹、リンパ節の腫れが3つの特徴的な症状とされる関節炎が出る場合もある(成人の5~30%)麻疹より症状は軽く、無症状が15~30%注意が必要な合併症肺炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎(麻疹の二大死因は肺炎と脳炎)中耳炎、クループ症候群(喉頭炎、喉頭気管支炎など)、心筋炎など先天性風疹症候群(妊娠20週までの妊婦さんが感染すると、生まれた子が発症して、先天異常など、さまざまな症状があらわれる)血小板減少性紫斑病、急性脳炎分類(1人の感染者が12~17人感染させる)(1人の感染者が5~7人感染させる)5類感染症国立感染症研究所. 風疹とは(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/430-rubella-intro.html)国立感染症研究所. 麻疹とは(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/518-measles.html)より作成Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.麻疹・風疹の発生状況(2026年4月30日現在)麻疹(例)(例)3,0003,0002,5002,5002,0002,0001,5001,5001,000風疹2,9412,2981,000744※5000165 18627910 66 28 45265436500126 910年101※12 15 12 9 11 1年※:第17週(2026年4月30日現在)の速報値国立感染症研究所. 感染症発生動向調査(IDWR):2026年4月30日現在(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/diseases/measles/graph/index.html)(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/diseases/rubella/graph/index.html)より作成Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ハンタウイルスとは

ハンタウイルスとは?患者さんからの質問に答える(2026年5月7日時点)出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.ハンタウイルスとは?⚫ ハンタウイルスとは、ブニヤウイルス科のハンタウイルス属の総称。⚫ 南北アメリカ大陸(カナダ、米国、アルゼンチン、チリ、パラグアイ、ボリビア、ペルー)でさまざまなウイルス種が特定されているが、いずれも特定のげっ歯類を宿主とする。⚫ ハンタウイルス肺症候群(HPS)と腎症候性出血熱(HFRS)を引き起こす。⚫ HFRSの原因ウイルスは1976年に韓国で同定・分離され、HPSは1993年に米国南西部の砂漠地帯で発生し、初報告された。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.感染経路は?⚫ 自然宿主であるネズミの排泄物(糞、尿、唾液)の吸入により感染するが、汚染された巣材や物品を直接触る、汚染された食事を飲食する、感染したネズミに咬まれる/引っかかれるなどで感染する。⚫ 基本的にヒトからヒトへの感染はまれだが、例外的にハンタウイルスの一種のアンデスウイルスによるヒト-ヒト感染事例が報告されている。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.流行地は?⚫ 世界全体では、毎年1万~10万人以上の感染が発生していると推定されている。⚫ 欧州では、ハンタウイルス属プーマラウイルスが流行している北部および中部地域を中心に、毎年数千例が報告されている。⚫ 南米諸国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、パラグアイなど)では、発生率は米国に比べて低いが、ハンタウイルス肺症候群(HPS)による致死率は米国よりも高いとされる。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は?(1)⚫ ハンタウイルスの潜伏期間は1~5週間程度(通常約2週間)とされ、症状は感染後1~8週間で出現するとされる。⚫ ハンタウイルス肺症候群(HPS)の主な初期症状には、倦怠感、発熱、筋肉痛(とくに太もも、腰、背中)があり、頭痛、めまい、悪寒、消化器症状(腹痛、吐き気、嘔吐、下痢)などを呈する。⚫ HPSの場合、発症初期から4~10日後に咳、息切れ、肺への体液貯留、ショックなどの症状が急速に進行する可能性がある。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は?(2)⚫ ハンタウイルスによる腎症候性出血熱(HFRS)は通常、感染後1~2週間以内に出現するが、まれに症状出現までに8週間かかる場合もある。⚫ HFRSの主な初期症状は、頭痛、背中や腹部の痛み、発熱、悪寒、吐き気、顔面紅潮、目の炎症や充血、発疹などの出血症状など。⚫ HFRSの重症例は、有熱期、低血圧・急性ショック期(4~10日)、乏尿期(尿量減少、8~13日)、利尿期(尿量増加、20~28日)、回復期に分けられ、内出血、急性腎不全などがみられることがある。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.予後は?⚫ ハンタウイルス肺症候群(HPS)の致死率は40%程度**国内の発生例や輸入例の報告はない⚫ 腎症候性出血熱(HFRS)の致死率は、原因となるウイルスにより異なる**ため、1%未満から最大15%と言われている。**ハンタウイルスの一種であるプーマラウイルス、ハンターンウイルスなども原因となる出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.診断方法、届け出は?⚫ 初期症状が類似する疾患(インフルエンザ、COVID-19、ウイルス性肺炎、レプトスピラ症、デング熱、敗血症)との鑑別が必要になる。⚫ 渡航歴、接触歴、臨床像などから本疾患を疑った場合には、行政検査が依頼される。⚫ 血液、肺組織からウイルスの分離・同定による病原体の検出、PCR法による病原体遺伝子の検出、血清学的検査が行われる。⚫ 感染症法で4類感染症に指定されており、診断した医師はただちに最寄りの保健所に届け出を行う。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.治療方法は?⚫ 対症療法(安静、水分補給、症状に対する治療)が行われる。⚫ 早期の集中治療管理(とくに肺浮腫、低酸素血症、低血圧に対する治療)が重要である。また、HFRSの場合は血液透析が必要になることもある。⚫ 現時点でハンタウイルスに対する特異的な抗ウイルス治療薬やワクチンは存在しない。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.予防・感染対策は?⚫ 流行地域では、げっ歯類との接触を避け、とくにネズミの尿、糞、唾液、巣材への接触を避ける。⚫ ネズミの糞を片付ける際には、清掃前に汚染部分を漂白剤で十分に湿らせ、その後ペーパータオルなどで拭き取り、ごみ袋に入れて廃棄する。乾拭きしたり、掃除機で吸い取ったりすることは避ける。⚫ ネズミが建物に侵入できる開口部を塞いだり、食品を安全に保管するために、容器に蓋をして管理する。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第312回 過熱報道が続くハンタウイルス、その起源はアジアだった!

INDEXハンタウイルス感染が明らかになるまでウイルスの由来主な症状とは過去の論文報告を見ると…ハンタウイルス感染が明らかになるまでここ数日、世間の報道では「ハンタウイルス」の言葉が飛び交っている。オランダのオーシャンワイド・エクスペディションズ社(以下、OE社)が運営するクルーズ船「MVホンディウス号」の乗客から、げっ歯類の排せつ物を通じて感染することが一般的なハンタウイルスに感染したと思われる死亡者が発生したためだ。この件に関する同社ホームページのニュースリリースの第1報は5月3日。その内容は、アフリカ西部の島国カーボベルデ沖に停泊中の同号船内で乗客3名が死亡、別の乗客1名が現在南アフリカ・ヨハネスブルグの病院において集中治療室(ICU)で治療を受けており、さらに乗組員2名が救急治療を必要としているというもの。ちなみにカーボベルデという国名を聞いたことがない人も多いだろうが、アフリカにある旧ポルトガル領の島国だ。人口は約60万人で、独立(1975年)からまだ半世紀しかたっていない。ただ、クーデターが頻発するアフリカ各国の中で数少ない、未遂も含めクーデター経験ゼロで複数政党制を採用している国である。5月4日の第2報で明らかにされたのが以下の事実関係だ。(1)4月11日:乗船中のオランダ人乗客1人が死亡(当時は死因不明)(2)4月24日:英領セントヘレナ島で死亡した乗客のオランダ人の妻が遺体とともに帰国のため下船(3)4月27日:OE社は、セントヘレナ島で下船した死亡乗客の妻も帰国中に体調が悪化し、死亡したとの報告を受けた。また乗船中のイギリス人乗客の容体が悪化し、南アフリカに搬送。後にこの乗客からハンタウイルスの変異株が検出された(4)5月2日:乗船中のドイツ人乗客が死亡(5)イギリス人とオランダ人の乗組員2名が急性呼吸器症状を呈する。1名が軽症、もう1名が重症。5月6日、中央ヨーロッパ時間14:45発表の最新のニュースリリースまでの状況は、船内での医療搬送必要者は前出の乗組員2名を含む3名に増加。乗組員の重症度はともに重症となり、新たな搬送必要者は5月2日に死亡したドイツ人乗客の近親者で無症候だという。すでに乗組員2人はオランダに搬送され、残る1名も現在航空機で搬送中。さらにMVホンディウス号はカーボベルデを離れ、現在はスペイン領カナリア諸島に向かっている。また、スイス政府は6日、同号を下船してスイスに帰国した(上記とは別の)夫婦の夫がハンタウイルスに感染したことを発表している。ウイルスの由来さて、今回のハンタウイルス騒動に関する国内の報道については、私自身はやや過熱しすぎだと感じている。厚生労働省も冷静な対応を呼びかけるポストをX(旧Twitter)に投稿しているほどだ。確かにOE社の5月4日の発表では、この日時点での乗員乗客149人(死者1人を含む)の中に日本人乗客1人が含まれてはいる。ただ、現在船内にいる乗員・乗客には不快に思える表現になってしまうかもしれないが、現状は感染がクルーズ船内に事実上封じ込められているため、各国にとってただちに公衆衛生上の問題に発展することは少ないと考えられる。私個人は「ネズミの排せつ物を介して感染するハンタウイルスというウイルスがあり、国内外でネズミなどの排せつ物などを見かけた場合、あるいはそういう可能性があるとわかった場所は避けましょう」という知識を持っておけばよいぐらいに考えている。さてそのハンタウイルス、医療者の中でも初めて聞いたという人もいるかもしれない。たまたま私は簡単な知識は有していた。以前から繰り返し言及しているが、私の取材領域の1つが国際紛争だからである。というのも、ハンタウイルスが同定されたきっかけは1950年に勃発した朝鮮戦争であり、同戦争は第2次世界大戦後から現在までにアジア圏で起きた最も大規模な戦争であるため、そこそこ以上にその戦史には目を通しているからだ。さらに余談になるが、現在の南北朝鮮の事実上の国境となっている休戦ライン「軍事境界線」上にある双方の共同警備区域「板門店」には南北双方から訪れた経験がある。ハンタウイルス発見のきっかけとなったのは、朝鮮戦争中の1951年春から初夏にかけて、北緯38度線周辺の朝鮮半島中部の激戦地帯で、原因不明の腎性出血熱が多発した件である。とくに患者が集中したのは、現在の韓国北部を流れる漢灘江(ハンタンガン)周辺で、1951~54年の間に発生した患者数は3,000例前後と伝わっている。当時は「韓国出血熱」と呼ばれていたが、韓国・高麗大学校名誉教授の李 鎬汪(イ・ホワン)氏が1976年にウイルスの同定・分離に成功し、発生地帯だった漢灘江にちなんで「ハンターンウイルス」と命名された。李氏の発見は、既往者の血清が漢灘江周辺で捕獲されたセスジネズミの肺組織中の抗原に反応したことに起因しており、ネズミが自然宿主であることも同時にわかっている。この流行が起きた朝鮮戦争当時は、兵士が山岳地帯や野戦陣地・塹壕で長期間活動しており、そこに入り込んだネズミの排せつ物の乾燥粉塵を吸い込んだ結果と現在では考えられている。その後、同類のウイルスの発見が相次ぎ、1987年に国際ウイルス分類委員会(ICTV)によって、これらのウイルス群をまとめる新しい分類として「ハンタウイルス属」が新設された。その後、自然宿主別の分類変更が行われ、現在ハンタウイルスと報道されているものは、小型哺乳類を自然宿主とする「オルトハンタウイルス属」を指している。主な症状とはオルトハンタウイルス属に入るウイルスは、種類として60種類あり、主なものとしては、前出のハンターンウイルスのほかにソウルウイルス、アンデスウイルス、シンノンブレウイルスなどがある。ハンタウイルス感染症はウイルスの種類によって病型に違いがあり、前出の4種類のウイルスに関して言えば、前者2種類が俗にヨーロッパ・アジア型ともいわれる腎症候性出血熱(HFRS)、後者2種類が俗に南北アメリカ型と呼ばれるハンタウイルス肺症候群(HPS)の原因となっている。HFRSの初期症状は発熱、頭痛、軽度の血尿などで重症化すると低血圧や急性腎不全に至る。感染者の約3分の1では出血傾向が認められ、致死率はソウルウイルスでは1%未満といわれ、ハンターンウイルスでは5~15%。一方、HPSの初期症状は発熱や咳、筋肉痛などで、時に嘔吐や下痢も出現する。HPSは急速に呼吸不全につながることも少なくなく、呼吸器症状を呈した人での致死率は約38%。HPSの致死率については4割を超えるとの報告もある。HFRS、HPSとも少なくとも致死率だけはかなり高い。ただ、HFRSの10%を超える致死率報告は、透析技術なども進化していなかった発見当初のデータともいわれ、現状は限りなく最小値の5%前後に近づいているとの指摘もある。過去の論文報告を見ると…冒頭で述べたように、ハンタウイルスの感染はほとんどが宿主のげっ歯類、単純に言えばネズミの排せつ物のエアロゾルを吸い込むことで起こるが、アンデスウイルス(報道では「アンデス型」との用語も使用)に関しては、ヒト-ヒト感染も報告されている。そしてやや困ったことは、南アフリカ保健省は南アフリカに搬送され、ハンタウイルス感染が確認された症例からは、このアンデスウイルスが分離されたと発表している。もっとも、アンデスウイルスでのヒト-ヒト感染は、過去の報告を見ると、▽長時間接触▽同居▽治療・ケア担当▽体液曝露などがあったケースに限られる。また、ざっくりと論文検索すると、過去に報告されたヒト-ヒト感染例の主な発生地域は南米のチリとアルゼンチンであり、直近で公表されたアンデスウイルスでのヒト-ヒト感染のシステマティックレビューで抽出された症例数も30例に満たない1)。こうして見ると、やはり世の中全体として、「ハンタウイルス」と騒ぐほどではないのが実際ではないだろうか? もちろん今現在MVホンディウス号に乗船中の人にとっては気が気でないことは想像に難くない。そしてすでに報じられていることだが、ハンタウイルスをターゲットとした治療薬は存在しない。ただ、1991年に中国で行われたHFRS患者242例を対象としたリバビリン静注の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果では、死亡率や出血症状の有意な減少が認められたと報告されている2)。また、アメリカではHPSに対するリバビリンの無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験が行われたが、こちらは症例集積に時間を要して研究は途中で終了となり、途中までエントリーされた症例での群間比較では、有意差は認められなかったと報告されている3)。これ以外ではハンタウイルスがRNAウイルスということもあり、基礎研究などでは厄介な感染症に対する“何でも屋”的な存在になりつつあるファビピラビルの効果も研究されているようだ。そしてこのウイルスの「ワクチンはない」と報じられているが、実は中国、韓国では独自のワクチンが承認されている。このうちハンタウイルスの第1発見国である韓国で開発された「ハンタバックス」(3回接種)の臨床研究を見ると、急性腎障害(AKI)のステージ3への進展予防(重症化予防効果)が58.1%と算出されたものの、非接種群と比べ有意差がないという結果になっている。この研究は症例数が少ないため、有意差が出なかったと指摘されているが、もし有意差があったとしてもエンドポイントとの兼ね合いから考えれば、効果が限定的ともいえる。また、あくまでHFRSの原因となるハンタウイルスへの効果に過ぎず、HPSの原因となるアンデスウイルスなどへの効果は疑問視され、汎用性は低いと指摘されている。いずれにせよ厄介な感染症であることには変わりないが、今回の事案は冷静に知識を蓄える機会と割り切るのが一番よいかもしれない。参考1)Toledo J, et al. J Infect Dis. 2022;226:1362-1371.2)Huggins JW, et al. J Infect Dis. 1991;164:1119-1127.3)Mertz GJ, et al. Clin Infect Dis. 2004;39:1307-1313.

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糞便微生物移植で重症C. difficile感染症の生存率が改善か

 生命を脅かすClostridioides difficile感染症(C. difficile感染症)の患者では、糞便微生物移植(fecal microbiota transplantation;FMT)を迅速に行うことで生存率が改善する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。FMTは、健康なドナーの腸内細菌を患者の消化管に移植し、腸内細菌叢のバランス回復を目指す治療法である。米ミネソタ大学医学部マイクロバイオータ治療プログラムディレクターのAlexander Khoruts氏らによるこの研究結果は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に4月6日掲載された。 C. difficile感染症は、抗菌薬の使用によって腸内細菌叢が乱れると、日和見病原菌であるC. difficileが増殖して発症する。主な症状は重度の下痢や大腸炎などである。米疾病対策センター(CDC)によれば、抗菌薬の使用中または使用後3カ月以内では、C. difficileに感染するリスクが最大で10倍に高まる。米国では、C. difficile感染症により年間約1万5,000人が死亡しているという。 今回の研究では、C. difficile感染症の重症患者18人を対象に、ミネソタ大学で開発された「重症患者向けの標準化されたFMTプロトコル」の有効性が検討された。患者の平均年齢は74歳で、集中的な抗菌薬治療にもかかわらず病状が悪化し続けており、手術が困難なほど状態が不安定だった。 医師は大腸内視鏡を用いてFMTを実施し、健康な腸内細菌を患者の腸管内に移植した。移植前24時間は抗菌薬の投与を中止し、移植後約3日で再開した。この点について研究グループは、FMT後に4日以上抗菌薬を中断すると、C. difficileの再増殖リスクが高まる可能性があるためだと説明している。その結果、FMT後にC反応性蛋白(CRP)や白血球数などの炎症マーカーが急速に低下し、30日後の生存率は78%であった。 Khoruts氏は、「今回の研究結果には重要な注意点がある。それは、C. difficile感染症の重症患者は極めて重篤であることが多く、FMT介入のタイミングは非常に限られているため、FMT製剤は、すぐに使用できる状態でなければならないという点だ。当大学には、医薬品基準に準拠したFMT製品製造施設が備わっており、凍結保存バンクに治療用ユニットを常備している点で、類を見ない環境が整っている」とニュースリリースで述べている。 研究グループは、C. difficile感染症に対するFMTの有効性を十分に検証するためには、より大規模な研究が必要であると強調している。

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尿路感染症治療の新しい迅速抗菌薬検査が登場

 新しい迅速尿検査により、尿路感染症(UTI)の治療がより的確で効果的になる可能性が新たな研究で示された。現状の検査では、個々のUTIに効果的な抗菌薬を特定するまでに2~3日かかるが、新しい検査では約6時間で結果が得られるため、検査当日に適切な抗菌薬を処方できる可能性がある。英レディング大学発のスピンアウト企業であるAstratus Limited社のCEOで、同大学薬学部のOliver Hancox氏らによるこの研究は、「JAC-Antimicrobial Resistance」4月号に掲載された。 Hancox氏は、「現行の検査方法では、結果が届く頃には患者がすでに抗菌薬の服用を終えていたり、効果のない薬を処方されていたりすることがあった。検査当日に適切な抗菌薬を医師に伝えることができれば、患者はより早く適切な治療を受けることができる。その結果、耐性菌の発生リスクや、感染症が重篤な敗血症へ進行するリスクを低減できる」とニュースリリースで説明している。 現行の検査では、尿サンプルを一晩培養して細菌を識別可能なレベルまで増殖させる必要がある。一方、新しい検査(Rapid Microcapillary Direct-from-Urine Antibiotic Susceptibility Testing;RMD AST)では、あらかじめ複数の抗菌薬が入った細いチューブ状のカートリッジを使用する。このカートリッジを直接尿サンプルに浸して機器に設置し、光学イメージングにより、それぞれの管の中で細菌が増殖するかどうかを6時間追跡する。細菌の増殖が抑えられればその抗菌薬は有効、増殖すれば無効と判断される。 Hancox氏らは今回、この新しい検査の精度を確認するために、UTIが疑われる患者から採取した352件の尿サンプルの残余を用いて解析した。評価対象の抗菌薬は、UTIの第一選択薬として用いられるアンピシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、トリメトプリム、ニトロフラントイン、シプロフロキサシン、セファレキシン、セフォキシチンの7種類であった。 その結果、細菌と抗菌薬の組み合わせに対するRMD ASTと従来の検査法との一致率は96.95%で(572/590)あることが示された。RMD ASTの結果が得られるまでの時間は、平均5.85時間だった。さらに、尿サンプルに防腐・保存剤として用いられることのあるホウ酸がRMD ASTに及ぼす影響を検討するため、サンプルをホウ酸の有無で分けて直接比較した。その結果、ホウ酸の有無にかかわらず一致率は98.75%であった。 今回の研究には関与していない英サウサンプトン大学のMatthew Inada-Kim氏は、「UTIは抗菌薬が必要となる一般的な疾患であり、最初から適切な治療を行うことは、患者にとって大きなメリットになる。通常の診療の中で採取されている検体をそのまま利用でき、かつ同日に結果が得られる検査は、実臨床における感染症管理を大きく変える可能性がある」と述べている。 Astratus Limited社は、2024年11月に本検査を開発した研究グループにより設立され、現在、この検査の市場投入に向けた取り組みが進められている。本研究は、英国政府の資金提供を受けて実施された。

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ボリコナゾールによる皮膚障害【1分間で学べる感染症】第40回

画像を拡大するTake home messageボリコナゾールによる副作用としては肝障害や幻視が知られているが、皮膚障害も重要である。光線過敏症や重症皮膚副作用に加え、長期使用では皮膚悪性腫瘍のリスクも報告されており、皮膚症状の早期発見と長期モニタリングが重要である。ボリコナゾールは侵襲性アスペルギルス症などの治療において中心的役割を担う抗真菌薬ですが、肝障害、幻視を中心とした眼科的副作用はよく知られています。今回は一歩踏み込んで、もう1つの重要な副作用である「皮膚障害」について学習しましょう。光線過敏症(Photosensitivity)ボリコナゾールの皮膚副作用で最もよく知られているのが光線過敏症です。発症機序は完全には解明されていませんが、投与量や投与期間に関連する可能性が指摘されています。とくに高用量使用、小児、メトトレキサート併用などがリスク因子とされています。発症時期は幅広く、1週間程度の早期から数年後までの報告があります。臨床的には日光曝露部位の紅斑、色素沈着、光線角化症様の病変として現れることがあり、遮光対策や皮膚科的フォローが重要です。重症薬疹(TEN、DRESS)まれではあるものの、TEN(中毒性表皮壊死症)やDRESS症候群などの重症薬疹が報告されています。これらはT細胞を介した免疫学的反応と考えられており、用量とは関連しないとされています。通常は投与開始1~8週間以内に発症しますが、再投与では1~4日で急速に再発することがあるため、注意が必要です。疑われた場合には速やかな薬剤中止と専門的治療が必要となります。皮膚悪性腫瘍(悪性メラノーマ、扁平上皮がん)長期使用において最も重要な副作用として、皮膚悪性腫瘍が挙げられます。とくに扁平上皮がんの発症リスクが高いことが報告されており、悪性メラノーマも重要です。平均発症期間は約3年とされています。リスク因子としては、高用量、長期使用、免疫抑制状態(とくに移植患者)、薬物代謝の個人差などが挙げられます。臨床では、光線角化症から扁平上皮がんへ進展するケースもあるため、長期投与患者では定期的な皮膚診察が推奨されます。ボリコナゾールは重篤な真菌感染症の治療に不可欠な薬剤ですが、皮膚関連副作用は多様であり、とくに長期治療では注意が必要です。投与前には光線過敏症の可能性を患者に説明し、長期使用例では皮膚病変の定期的な観察を行うことが重要です。また、新たな皮疹や皮膚変化を認めた場合には、早期に評価を行い、必要に応じてほかの抗真菌薬への変更も検討することが重要です。1)Voriconazole/UpToDate2)Williams K, et al. Clin Infect Dis. 2014;58:997-1002.3)Levine MT, et al. Clin Transplant. 2016;30:1377-1386.4)Tang H, et al. J Am Acad Dermatol. 2019;80:500-507.e10.

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第59回 新たな変異コロナウイルス「セミ」について私たちが知っておくべきこと

パンデミックから数年が経過し、私たちの生活はすっかり日常を取り戻しました。いわゆる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のニュースを目にする機会もすっかり減ったと感じている方が多いのではないでしょうか。しかし、ウイルスは私たちの見えないところで今も静かに進化を続けています。そんな中、現在、新しい変異ウイルスが注目を集めています。その名は「BA.3.2」。そして、このウイルスに付けられたニックネームは「Cicada(シカダ)」、日本語で「セミ」です。なぜ、「セミ」という名前が付けられたのでしょうか? そして、このウイルスに対して私たちはどう向き合うべきなのでしょうか。JAMAの記事をもとに解説します1)。なぜ「セミ」?異例の長き沈黙を破った変異ウイルスコロナの変異ウイルスの多くは、現れては消えるまでのサイクルが非常に短く、通常は数週間から数ヵ月しか流行しません。かつて猛威を振るったオミクロンのBA.1も、数ヵ月で別の変異ウイルスに置き換わりました。しかし、今回の「セミ(BA.3.2)」は、これまでの常識とはまったく異なる変わり種のウイルスです。実はこのウイルス、最初に発見されたのは1年半以上も前の2024年11月、南アフリカでのことでした。その後、モザンビークやヨーロッパなどで散発的・局地的に見つかり、こちらアメリカで最初の感染者が確認されたのは2025年6月のことです。長らく目立った動きを見せなかったこのウイルスですが、2025年12月に世界保健機関(WHO)の「監視下の変異ウイルス(Variant Under Monitoring)」に指定され、2026年に入り、アメリカ各地の排水調査などから検出が報告されるようになりました。何年も土の中でじっと身を潜め、ある時期が来ると一斉に地上へ姿を現す「周期ゼミ」。この変異ウイルスが長期間の沈黙の後に急増した奇妙な振る舞いが、まさに「セミ」に似ていることから、このユニークなニックネームが付けられたのです。免疫を逃れる力と、感染しやすさの「トレードオフ」新しい変異ウイルスと聞くと、「また強い感染の波が来るのでは?」「重症化しやすいのでは?」と不安になるかもしれません。確かにこの「セミ」は、現在のワクチン抗原(例:JN.1など)と比べて、スパイクタンパク質の遺伝子配列に70〜75程度の置換・欠失などの変化があると報告されています。こうした変化のため、これまでの感染やワクチンで得られた抗体による中和が低下しうる(免疫回避の可能性がある)と考えられ、監視が続けられています。しかし、ここで紹介したい興味深い生物学的な現象があります。それは「適応度のトレードオフ」と呼ばれるものです。コロナウイルスが人間の細胞に感染するためには、細胞の表面にある「ACE2」という受け皿にくっつく必要があります。BA.3.2は免疫の監視を潜り抜けるように変異を多く持っているため、スパイクタンパクの構造が大きく変わってしまい、逆にACE2への結合のしやすさや細胞への侵入のしやすさについては、大きく落ちている可能性があると指摘されています。このように、ウイルスの進化では「免疫回避」と「感染のしやすさ」の間で「トレードオフ」が生じることがあるというわけです。少なくとも現時点では、WHOの初期評価などで、この変異ウイルスが重症化や入院、死亡のリスクを明確に増加させるという一貫したデータは見られない、とされています。また、ワクチンについては、抗体による中和が低下し得る一方で、重症化に対する防御は一定程度維持されることが期待されています。したがって、必要以上に恐れる必要はないでしょう。子供たちの間で感染が広がりやすい?ただし、研究者が注視している点の一つとして、BA.3.2の検出が子供に多く見られることが挙げられます。なぜ子供に多いのかについては、現在も専門家の間で議論が続いています。大人のように過去の感染経験がなく、ワクチン接種の回数が多くないため、免疫を持たない子供たちが単に感染しやすいだけだという意見もあれば、ウイルスが持つ特定の変異が子供への感染を有利にしているのではないかと疑う専門家もいます。これについては、今後のさらなるデータの収集が待たれるところです。いずれにせよ、とくに小さなお子さんがいるご家庭では、日頃からお子さんの体調変化に気を配っていただくことが大切です。ウイルスとの共存は続く今回登場した「セミ」ことBA.3.2について、現時点で直ちに大規模な医療逼迫を引き起こすような懸念はされていません。もしかすると、先のトレードオフが実際にあり、感染が広がりにくいかもしれないという楽観的な見方ができる可能性もあります。しかし、流行の度合いや重症度については引き続き監視が必要で、排水調査やゲノム解析などのデータが今後さらに蓄積されていく見込みです。いずれにせよ、コロナウイルスは、決して消え去ったわけではありません。私たちの社会が日常を取り戻した今も、ウイルスは(実際にそのような意思があるわけではありませんが)環境に適応しようと試行錯誤を続けています。過度な不安を抱く必要はありませんが、ウイルスがまだ身近に存在しているという事実は心の片隅に留めておいたほうがいいでしょう。1)Rubin R. What to Know About Cicada, or BA.3.2, the Latest SARS-CoV-2 Variant Under Monitoring. JAMA. 2026 Apr 17. [Epub ahead of print]

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造血細胞移植におけるEmergency/日本造血・免疫細胞療法学会

 造血細胞移植は、急性白血病や悪性リンパ腫などに対して根治を目指しうる治療法である。一方で、移植前処置や強力な免疫抑制療法、長期にわたる好中球減少状態などを背景に、早急な対応を講じなければ不可逆的な臓器障害を来し、致命的となりうる重篤な病態(Emergency)が急速に進行することもある。そのため移植医療の現場では、数日単位で生命予後が左右されるEmergencyに備える姿勢が不可欠であり、事態への即応力が強く求められることになる。 2026年2月27日~3月1日に開催された第48回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「造血細胞移植におけるEmergency」をテーマとした教育講演が行われた。造血細胞移植特有の緊急病態に焦点を当て、実臨床で遭遇した症例と文献的エビデンスを基に、見逃してはならない重篤合併症と初期対応の要点について、田中 喬氏(大阪国際メディカル&サイエンスセンター 大阪けいさつ病院 血液内科)が講演した。シクロホスファミド(Cy)心筋症―死亡リスクの高い劇症型の心合併症 近年、移植後シクロホスファミド(PTCy)は、ヒト白血球抗原(HLA)半合致血縁者間移植にとどまらず、HLA一致血縁者間移植や非血縁者間移植にも応用が広がり、移植片対宿主病(GVHD)予防の新たな標準治療となりつつあるPTCyは優れたGVHD予防効果をもたらす一方で、シクロホスファミド(Cy)心筋症という重篤な合併症のリスクも伴う。大量Cy投与後に発症するCy心筋症は、基本的には可逆的であるが、進行がきわめて速く、重症例では体外式膜型人工肺(ECMO)管理を要し、命に関わることもある。その希少性ゆえに、初めて遭遇した際には診断が遅れ、気付いたときにはすでに重症化しているケースが少なくない。発症率は近年の報告では1~5%前後と頻度こそ高くはないものの、ひとたび発症すれば急速に循環破綻へ至る死亡率の高い致死的合併症である。心不全と診断されてから死亡までの中央値が約3日とされる報告もあり、遭遇すれば重篤となる典型的な移植Emergencyである。 Cy心筋症の病態は完全には解明されていないが、代謝産物による血管内皮障害が起点と考えられている。血管内皮が障害されると血管透過性亢進により心筋の浮腫・壁肥厚が生じ、最終的に心筋障害を来す。ここで重要なことは、Cy心筋症発症初期の主病態が収縮不全ではなく拡張障害であるという点である。心筋の伸展性が浮腫によって低下し、拡張できなくなることで心拍出量が維持できなくなる。 アントラサイクリン心筋症が累積投与量依存であるのに対し、Cy心筋症は1回投与量と投与スケジュールに依存する用量依存性毒性である。安全な投与量の閾値は明確ではなく、既往のアントラサイクリン投与量や放射線治療歴がリスク因子として挙げられるものの、確立した予測因子は存在しない。 発症時期はCyの初回投与から10日以内が多く、症状出現までの中央値は2日(1~6日)、心不全診断までの中央値は4日(3~8日)とする報告がある。心電図ではvoltageの低下やST上昇、T波の陰転化を認めることが多い。胸部X線で心拡大を呈するが、これを容量過多と誤認してはならない。ただちに心エコーを施行し、著明な心筋壁肥厚と心嚢水貯留の有無を確認することが重要である。 特徴的なのは、初期には左室駆出率(EF)が保たれている症例が少なくない点である。心不全診断時にEFが50%以上に保たれていても、心筋壁が急速に肥厚し、拡張障害が進行している可能性がある。EFのみに依存した評価は危険である。 バイオマーカーに関して、トロポニンは必ずしも早期に上昇しない。一方、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)やNT-proBNPは比較的早期から上昇する可能性が報告されている。大量Cy投与後の症例では、投与後数日間のBNPモニタリングが早期発見に寄与する可能性がある。 Cy心筋症に対する確立した治療法はなく、一般的な心不全治療を行いながら心機能の回復を待つ。カテコラミン反応性は乏しいことが多く、循環動態が急速に悪化する場合には、早期からECMOや補助循環装置の導入を検討する必要がある。また、診断した時点で循環器内科や集中治療部門へ速やかにコンサルトする体制整備が不可欠となる。なお、ECMOが自施設で実施できない場合は、対応可能な施設への転院を躊躇してはならない。重症類洞閉塞症候群(SOS)―増悪因子となる腹部コンパートメント症候群(ACS) 重症類洞閉塞症候群(SOS)は、移植後早期に発症する重篤な肝合併症である。体重増加、腹水貯留、右季肋部痛、血小板減少などを呈し、重症例では多臓器不全へ進展する。 重症SOSの増悪因子として、腹部コンパートメント症候群(ACS)が注目される。腹腔内圧の上昇により静脈還流が障害され、腎機能低下や呼吸不全を来す。腹腔内圧は膀胱内圧で代用可能であり、簡便に測定できる。一般に腹腔内圧が20mmHgを超え、かつ臓器障害を伴う場合にACSと定義されるが、それ未満でも臓器障害を呈することがある。 病態の中心は腹腔内圧上昇による静脈うっ血であり、とくに腎静脈圧迫による腎不全が重要である。腹水ドレナージにより腹腔内圧を低下させることで、尿量や酸素化、門脈血流が改善する症例がある。腹部膨隆が目立つ重症SOSでは、膀胱内圧測定を積極的に行い、減圧治療を検討すべきである。重症消化管GVHD―評価すべき粘膜障害の程度と範囲 GVHDの中でも消化管病変は高頻度に認められるが、重症下部消化管GVHDは依然として予後不良である。従来は下痢量で重症度が評価されてきたが、下痢は炎症の結果にすぎない。本質的には粘膜障害の程度と範囲を評価すべきである。 多くの症例において病変は回盲部から始まり、口側および肛門側へ拡大する。重症例では炎症が小腸全体に及び、粘膜脱落を呈する。カプセル内視鏡による小腸粘膜の直接評価から、全周性の粘膜脱落(グレード4)や炎症が空腸まで及ぶ病変はきわめて予後不良であることが示されている。100日以内の非再発死亡率が約6割に達するとの報告もある。このような症例では、ステロイドを中心とした抗炎症療法のみでは不十分な可能性が高い。間葉系幹細胞(MSC)は免疫調整作用に加え、粘膜修復促進作用が期待されている。さらに、腸管粘膜維持に関与するGLP-2アナログなど、組織再生を意識した治療戦略も検討されている。炎症抑制と組織修復を両輪としたアプローチが今後の鍵となる。難治性感染症―想定外の病原体を疑う 造血細胞移植患者では、通常はまれな病原体による感染症が致命的経過をたどることがある。 Stenotrophomonas maltophiliaはグラム陰性桿菌であり、カルバペネムやグリコペプチドではカバーできない。移植患者では一定の頻度で菌血症を来し、肺出血を合併すると救命はきわめて困難である。持続する発熱性好中球減少症では、レボフロキサシンなど有効な抗菌薬による治療を検討する必要がある。 移植後のムーコル症も、致死率の高い真菌感染症である。βDグルカンは陰性のことが多く、確定診断には生検による組織診断が必須である。重症GVHDや長期ステロイド使用例で、原因不明の疼痛を伴う皮疹や急速進行性肺陰影を認めた場合はムーコル症を疑い、生検を積極的に行い、検査結果を待たずに有効な抗真菌薬による治療を開始すべきである。敗血症対応―基本を徹底する 敗血症では、乳酸値測定、血液培養採取、広域抗菌薬投与、必要に応じた急速輸液負荷や昇圧薬投与が基本となる。近年ガイドラインは若干修正されているが、移植患者では迅速な広域抗菌薬投与の重要性は変わらない。初期対応の遅れは予後に直結する。結語―「Emergencyを知って行動に移すこと」が重要 造血細胞移植におけるEmergencyは頻度こそ高くないものの、ひとたび発症すれば急速に悪化し、生命予後を左右する。Cy心筋症、重症SOS、重症消化管GVHD、難治性感染症、敗血症など、いずれも早期診断と迅速な初期対応が救命の鍵となる。「まれでも致命的となりうる病態を疑う」という姿勢を常に持っておく必要がある。とくにCy心筋症は診断後わずか数日で致命的経過をたどりうることを念頭に、心拡大を容量過多と安易に判断せず、速やかに心エコー評価と専門科連携を行うことが重要であり、BNPなどの指標も早期把握の一助となる。 重症SOSでは、腹腔内圧上昇に伴うACSが臓器不全を増悪させることがあり、膀胱内圧測定や適切な減圧介入を行う必要がある。厳密な定義上はACSに該当しない数値であっても、臓器障害を伴う場合には腹腔ドレナージを行うことで劇的に改善する可能性がある。 重症消化管GVHDは、下痢量ではなく、粘膜障害の程度と範囲を見ることが重要となる。カプセル内視鏡を用いた小腸評価では、全周性の粘膜脱落例や炎症が空腸まで及ぶ症例がきわめて予後不良であることから、抗炎症治療のみならず粘膜修復という視点で治療介入を行いたい。 感染症領域では、Stenotrophomonas maltophilia菌血症やムーコル症といった、頻度は高くないが致死率の高い病態があり、常に疑う姿勢が重要となる。敗血症対応は基本を徹底し、疑った場合は、乳酸値測定、血液培養採取、広域抗菌薬投与、急速輸液、昇圧薬投与を1時間以内に実施するいわゆる1時間バンドルの実施が求められ、常に迅速な対応を心掛けたい。 田中氏は講演を通じて、「移植医には腫瘍制御にとどまらず、全身状態を総合的に評価する集中治療的視点が必要である」と強調していた。さらに、「Emergencyについてよく知り、それを即座に想起し行動に移せる能力こそが、患者さんの命を守る最大の武器である」と一貫して述べていた。

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グラム陰性菌の菌血症、迅速抗菌薬感受性試験は臨床的に有効か/JAMA

 グラム陰性桿菌による血流感染症患者において、迅速抗菌薬感受性試験(AST)の追加は標準ASTと比較し、「desirability of outcome ranking(望ましい順位のアウトカム):DOOR」による評価では優越性は認められなかったことが、米国・Vanderbilt University Medical Center大学のRitu Banerjee氏らが行った「FAST試験」の結果で示された。血液培養時の陽性血液培養ボトルを用いて直接、感受性の表現型を評価する迅速ASTについて、その結果に基づき抗菌薬治療を行うことで臨床アウトカムを改善するかどうか、臨床的意義は不明であった。著者は、DOORでは差がなかったものの副次アウトカムや事前に規定した探索的アウトカムでは差がみられたことから、「今回の知見は、他の有効性および安全性のアウトカムと併せれば、迅速ASTの使用に関して役立つ可能性がある」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年4月18日号掲載の報告。主要アウトカムは、より望ましいアウトカムが得られる確率 FAST試験は、多剤耐性グラム陰性菌の有病率が高い4ヵ国の7施設(ギリシャ2、インド1、イスラエル3、スペイン1)で実施された無作為化非盲検優越性試験。 対象は、血液培養でグラム陰性桿菌が検出され、かつ血液培養の結果通知時点で入院中の患者で、年齢は問わなかった。ただし、直近7日以内のグラム陰性桿菌検出、血液培養結果通知時点で死亡、血液培養グラム染色でグラム陽性桿菌・グラム陽性球菌・グラム陰性球菌・酵母菌・真菌・複数の形態のグラム陰性桿菌を認めた患者などは除外した。 研究グループは、血液培養判定から16時間以内に対象患者を迅速AST群または標準AST群に無作為に割り付け、迅速AST群では各施設の標準ASTに加えVITEK REVEAL(bioMerieux製)を用いて迅速ASTを行った。 両群とも、全例、各施設の抗菌薬適正使用プログラムによる評価を受け、臨床チームで治療変更や抗菌薬の選択、用法および用量などを決定した。 主要アウトカムは、無作為化後30日時点のDOORであった。DOORは「有害イベントなしで生存」、「1つ以上の有害イベントを伴う生存」、「死亡」の3段階で順位付けし、有害イベントは入院継続または退院後30日以内の再入院、臨床効果なし、望ましくない事象(腎不全、多剤耐性菌の院内感染など)と定義した。迅速AST群で標準AST群より良好なDOORが得られる確率の95%信頼区間の下限が50%を超えた場合に、標準AST群に対する優越性が認められることとした。 副次アウトカムは、30日死亡、30日までの入院期間、集中治療室入室、院内感染、3日以内の有効な抗菌薬治療開始までの時間、3日以内の抗菌薬の増量または減量などであった。カルバペネム耐性菌感染症患者で、有効な抗菌薬治療開始までの時間が早まる 2023年12月~2025年5月に899例が無作為化され、このうち850例が解析対象集団となった(迅速AST群413例、標準AST群437例)。年齢中央値72歳、女性が43%であった。 迅速AST群で標準AST群より良好なDOORが得られる確率は48.8%(95%CI:45.3~52.4)であり、優越性は示されなかった。 有効な抗菌薬治療開始までの時間の中央値は両群で差はなく、抗菌薬の増量または減量までの時間の中央値は迅速AST群(22時間)が標準AST群(36時間)より14時間(95%信頼区間[CI]:6~22)短かった。その他の副次アウトカムは両群で差は認められなかった。 事前に規定されたサブグループ解析では、カルバペネム耐性菌感染症患者集団において有効な抗菌薬治療開始までの時間の中央値は迅速AST群で9.5時間、標準AST群で28時間であった(群間差:-18時間、95%CI:-42~6)。

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イヌリンにより変形性膝関節症の痛みが軽減か

 腸内環境を整えることで関節炎の痛みが和らぐかもしれない──そんな研究結果が報告された。変形性膝関節症(OA)患者を対象としたランダム化比較試験で、難消化性食品成分であるプレバイオティクスの摂取が痛みの軽減に寄与する可能性が示された。英ノッティンガム大学NIHRノッティンガム生物医学研究センターのAfroditi Kouraki氏らによるこの研究は、「Nutrients」に2月24日掲載された。 研究グループは、腸の健康を改善することがOAの新しい治療法になる可能性があると考えている。Kouraki氏は、「この研究は、朝食やヨーグルトにサプリメント(以下、サプリ)を加えるだけで、痛みが和らぎ、身体機能も改善される可能性があるという、わくわくするような可能性を示した」とニュースリリースで述べている。 腸内には何兆もの細菌が生息し、健康に幅広く影響を与えることが知られている。今回の研究では、チコリの根や菊芋などに含まれる天然食物繊維であるイヌリンに着目し、イヌリンのサプリと理学療法士の指導下で実施される運動プログラム(physiotherapy-supported exercise;PSE)が、OAの痛みにどのような影響を及ぼすのかを評価した。対象とされたOA患者117人(平均年齢67.5±9.4歳、女性58.1%)は、6週間にわたって、1)イヌリンのサプリ(20g/日)を摂取する群、2)イヌリン摂取とPSEを受ける群、3)PSEのみを受ける群、4)プラセボ(マルトデキストリン10g/日)を摂取する群の4群に、ランダムに割り付けられた。 その結果、イヌリンと理学療法は、いずれも単独で膝の痛みを軽減する効果のあることが明らかになった。Numerical Rating Scale(NRS)で評価した痛みは、プラセボ群と比較して、イヌリン群で−1.11ポイント(95%信頼区間−2.18〜−0.04、P=0.045)、PSE群で−1.55ポイント(同−2.52〜−0.58、P=0.002)改善した。また、イヌリン群では握力と、痛みに対する感受性(圧痛閾値、時間的荷重〔同じ強さの刺激を短時間で繰り返し受けると、痛みが次第に強く感じられる現象〕)に改善が見られた一方で、PSE群では、30秒立ち上がりテスト(30-CST)とTimed Up and Go(TUG)に改善が認められた。さらに、介入離脱率は、イヌリン群で3.6%だったのに対し、PSE群では21%だった。研究グループは、毎日のサプリ摂取は、定期的な運動よりも継続しやすい可能性があると指摘している。 このほか、イヌリン摂取群では、腸から分泌されるホルモンであるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の血中濃度の上昇と腸で産生される脂肪酸である酪酸レベルの上昇も確認された。GLP-1は、痛みの調節や筋肉の健康に関与しており、新しい肥満症治療薬でも標的とされている。一方、酪酸は全身の炎症や痛みの経路に影響を与えると考えられている。論文の上席著者であるNIHRノッティンガム生物医学研究センターAna Valdes氏は、「GLP-1と握力の関係は特に興味深く、腸-筋肉-痛みの相互作用が関連している可能性を示しており、今後、さらに調査する価値がある」と述べている。 本研究には関与していない、Arthritis UKで研究部長を務めるLucy Donaldson氏は、「研究者らは腸内細菌が痛みの感じ方にどのように関与するかを探り始めている。この予備的な研究は、食事と理学療法が異なるメカニズムで関節炎の症状を改善できる可能性を示しており、とても興味深い。バランスの取れた食事、食物繊維の摂取、定期的な運動が大切であることは分かっているが、それらがどのように作用して痛みを軽減するのかを理解するための研究をサポートできることをうれしく思う」とコメントしている。

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第316回 米国でサイケデリック薬が超速優先審査に

毎年20人に1人以上もの米国成人が生きるのを辛くし、活動を妨げる深刻な精神不調を被ります。その治療を推進する取り組みの一環として、今月18日にドナルド・トランプ大統領がサイケデリック薬(psychedelic drug)の超速優先審査(Commissioner’s National Priority Vouchers:CNPV)を米国FDAに命じました1,2)。大統領からのその通知によると、1,400万例を超える米国成人が深刻な精神不調を患い、およそ800万例にそれらの治療薬が処方されています。精神疾患の最悪の帰結の自殺率は2000~18年に37%も上昇しましたが、トランプ大統領の1期目に精神疾患患者を助ける取り組みが進展し、2018~20年には幸いにも5%低下しました3)。しかし、トランプ大統領曰く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延とバイデン政権下での停滞のせいで進捗は止まり、自殺率は再び上昇して2022年には2018年と同じ最悪の水準に逆戻りしてしまいました。感じ方を変える(perception-altering)とFDAが説明4)するサイケデリック薬は、一通りの標準治療後も不調が続く深刻な精神疾患患者を対象とする試験で有望な成績を上げており、開発中のいくつかはすでに画期性優遇(Breakthrough Therapy)の指定を受けています。トランプ大統領は画期性優遇の指定を得ているサイケデリック薬の目ぼしいものにCNPV権利を付与することを18日に命じました。それを受けてFDA長官Marty Makary氏はLSDやマジックマッシュルームの活性成分のpsilocybinなどが属するセロトニン2A受容体作動薬の3つに権利を付与すると同日の記者会見で述べています5)。いわば大統領の「推し」となり、FDAの厚遇も約束されたサイケデリック薬への投資家の期待は当然ながら一気に膨らみ、AtaiBeckley、Compass Pathways、Enveric BioSciences、GH Research、Definium Therapeutics、Cybinなどのその界隈の会社の株価が軒並み上昇しています6)。そして、大統領命令からおよそ1週間後の先週金曜日24日に、FDAはサイケデリック薬を開発する3社に約束どおりCNPV権利を付与しました4,7)。FDAの発表では具体的な社名は明かされませんでしたが、大統領命令後に株価上昇の恩恵を得た一堂のうちの一社のCompass Pathwaysがその幸運に恵まれたことを明らかにしています8)。Compass社によるとCNPV権利を使うことで承認申請後の審査期間が超速の1~2ヵ月に短縮されます。Compass社はCOMP360という名称の人工のpsilocybinを開発しています。COMP360は治療抵抗性うつ病患者が参加した2つの第III相試験で目標の効果を示しており、先月の同社の発表によるとFDAへの承認申請が今年中に完了する見込みです9)。FDAがCNPV権利を付与したあとの2社の1つは大うつ病へのpsilocybin開発会社、もう1つは心的外傷後ストレス障害(PTSD)へのmethylone開発会社です。Usona InstituteとTranscend Therapeuticsがそれらの治療を開発しており、Reutersからの問い合わせに対してUsona Instituteは権利を得たと回答しています7)。一方、Transcend社はReutersに回答していません。Transcend社が開発しているmethyloneは植物成分のカチノンの類いです。カチノンはアンフェタミン様の作用を求めて使われているアラビア南部やアフリカ東部で育つ植物のカート(Catha edulis)の葉に含まれています10)。Transcend社はTSND-201という名称でmethyloneを開発しており、PTSD患者を対象とした第III相試験が進行中です11)。サイケデリック薬の時代の到来を予想していたのか、わが国の大塚製薬はほかでもないそのTranscend社の買収をつい先月末に発表しています12)。日本でサイケデリック薬が日の目を見ることもそう遠くないうちに実現するかもしれません。参考1)ACCELERATING MEDICAL TREATMENTS FOR SERIOUS MENTAL ILLNESS / THE WHITE HOUSE2)Trump orders FDA to fast-track reviews of psychedelic drugs after lobbying by podcaster / FierceBiotech3)Suicide Data and Statistics / CDC4)FDA Accelerates Action on Treatments for Serious Mental Illness Following Executive Order / FDA5)Trump orders FDA to fast-track reviews of psychedelic drugs after lobbying by podcaster. FierceBiotech.6)Psychedelic drug developers rally after Trump orders FDA to expedite reviews / Reuters7)US FDA moves to fast-track psychedelic drugs after Trump order / Reuters8)Compass Pathways Announces FDA Granted NDA Rolling Review Request and Awarded Commissioner's National Priority Voucher / BusinessWire9)Compass Pathways Announces Fourth Quarter and Full-Year 2025 Financial Results and Business Highlights / BusinessWire10)Effects of Synthetic Cathinones Contained in “Bath Salts” on Motor Behavior and a Functional Observational Battery in Mice NIH11)EMPOWER-1試験(ClinicalTrials.gov)12)大塚製薬のTranscend Therapeutics社買収について

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