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4101.

ICUにおける耐性菌伝播を減らすには?

 MRSAとバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、医療施設における感染症の主要な要因であり、これら細菌に起因する感染症は通常、患者の粘膜や皮膚などへの保菌(colonization)後に発症がみられ、保菌は医療従事者の手指や汚染媒介物などを介した患者から患者への間接的な伝播や、保菌医療従事者からのダイレクトな伝播によって発生することが知られる。米国・メイヨークリニックのW. Charles Huskins氏らICUにおける耐性菌伝播を減らす戦略研究グループは、MRSA、VREの伝播リスクが最も大きいICUにおいては、積極的監視培養やバリア・プリコーション(ガウン、手袋着用による)の徹底により、ICUにおけるMRSA、VREの保菌・感染発生率を低下すると仮定し、それら介入効果を検討する無作為化試験を実施した。NEJM誌2011年4月14日号掲載より。MRSA、VREの保菌および感染発生率を介入群と対照群で比較 研究グループは、MRSAやVREの保菌に対する監視培養とバリア・プリコーション徹底(介入)の効果について、ICU成人患者におけるMRSA、VREの保菌・感染発生率を通常実践(対照)との比較で検討することで評価するクラスター無作為化試験を行った。 介入群に割り付けられたのは10ヵ所のICUで、対照群には8ヵ所のICUが割り付けられた。 監視培養(MRSAは鼻腔内検査、VREは便・肛囲スワブ)は、被験者全員に行った。ただしその結果報告は、介入ICU群にのみ行われた。 また介入ICU群で、MRSAやVREの保菌または感染が認められた患者は、コンタクト・プリコーション(接触感染に注意する)・ケア群に割り付け、その他すべての患者は、退院もしくは入院時に獲得した監視培養の結果が陰性と報告されるまで、ユニバーサル・グロービング(手袋着用の徹底)群に割り付けた。 介入による伝播減少の効果は認められず、医療従事者のプリコーション実行が低い 介入は6ヵ月間行われた。その間に、介入ICU群には5,434例が、対照ICU群には3,705例が入院した。 ICU入室患者にMRSA、VREの保菌または感染を認めバリア・プリコーションに割り付けた頻度は、対照ICU群(中央値38%)よりも介入ICU群(中央値92%)のほうが高かった(P<0.001)。しかし、介入ICU群の保菌または感染患者が、コンタクト・プリコーションに割り付けられた頻度は51%、ユニバーサル・グロービングに割り付けられた頻度は43%だった。 また介入ICU群における医療従事者の、滅菌手袋・ガウンテクニック・手指衛生の実行頻度は、要求レベルよりも低いものだった。コンタクト・プリコーション群に割り付けられた患者への滅菌手袋の実行頻度は中央値82%、ガウンテクニックは同77%、手指衛生は同69%で、またユニバーサル・グロービング群患者への滅菌手袋実行は同72%、手指衛生は同62%だった。 介入ICU群と対照ICU群で、MRSAまたはVREの保菌または感染イベント発生リスクに有意差は認められなかった。基線補正後の、MRSAまたはVREの保菌・感染イベントの平均(±SE)発生率は、1,000患者・日当たり、介入ICU群40.4±3.3、対照ICU群35.6±3.7だった(P=0.35)。 Huskins氏は、「介入による伝播減少の効果は認められなかった。そもそも医療従事者によるバリア・プリコーションの実行が要求されたものよりも低かった」と結論。医療施設における伝播減少を確実のものとするには、隔離プリコーションの徹底が重要であり、身体部位の保菌密度を減らしたり環境汚染を減らす追加介入が必要かもしれないとまとめている。

4102.

肺結核患者へは、4種固定用量合剤が個別投与よりも好ましい

新たに肺結核の診断を受けた患者に対する、リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、エタンブトールを含む固定用量合剤(FDC)の投与と、各薬剤の個別投与とを比較するオープンラベル非劣性無作為化試験「Study C」が、WHOのChristian Lienhardt氏ら研究グループにより、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの9ヵ国11ヵ所で行われた。FDCは薬剤耐性の出現を防ぐ方法として提唱されたものだが、これまで有効性や安全性の評価に関する無作為化試験はほとんど行われていなかった。JAMA誌2011年4月13日号掲載より。4種FDC投与か個別薬剤投与を8週間毎日投与、18ヵ月後の細菌培養陰性率を比較研究グループは、2003~2008年にかけて、新たに診断を受けた塗抹陽性肺結核の成人1,585人について試験を行った。研究グループは被験者を無作為に二群に分け、一方の群(798人)には4種FDCを、もう一方の群(787人)には4種の薬剤を個別に、それぞれ8週間毎日投与した。両群ともに、投与量はWHOの勧告に従って、被験者の体重により調整した。その後18ヵ月は、両群ともに、2種(リファンピシン、イソニアジド)FDCを週3回投与した。主要アウトカムは、治療開始18ヵ月後の細菌培養陰性の割合だった。プロトコルに沿った被験者のみを分析したPPB分析と、治療を試みた全員を分析したITT分析2種の合わせて3種の分析を行い、非劣性マージンは4%と定義した。3分析中2分析で、FDCの非劣性を示す結果、PPB分析において18ヵ月後に細菌培養が陰性であったのは、FDC群は591人中555人(93.9%)に対し、個別投与群は579人中548人(94.6%)だった(リスク差:-0.7%、90%信頼区間:-3.0~1.5)。ITT分析の一つ目の分析方法では、細菌培養が陰性だったのは、FDC群684人中570人(83.3%)、個別投与群664人中563人(84.8%)だった(リスク格差:-1.5%、90%信頼区間:-4.7~1.8)。二つ目のITT分析では、同陰性は、FDC群658人中591人(89.8%)に対し個別投与群647人中589人(91.0%)だった(同:-1.2%、-3.9~1.5)。研究グループは、「3つの分析結果のうち2つで、FDCの個別投与に対する非劣性が示された。非劣性の証明は完全ではなかったが、FDC投与のほうが優位である可能性が示されたことにより、FDC投与のほうが好ましく優先される」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4103.

HPVワクチン接種スケジュール、0・3・9ヵ月または0・6・12ヵ月でも

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチン接種について、3回の接種を標準スケジュールの初回接種0・2・6ヵ月ばかりでなく、0・3・9ヵ月や0・6・12ヵ月で行っても、効果は非劣性であることが確認された。米国・ワシントン州シアトルのPATHに所属するKathleen M. Neuzil氏らが行った無作為化非劣性試験によるもので、JAMA誌2011年4月13日号で発表した。ベトナム21ヵ所の学校に通う11~13歳903人を対象に試験研究グループは、2007年10月~2010年1月にかけて、ベトナム21ヵ所の学校に通う11~13歳の女生徒903人について、オープンラベルクラスター無作為化試験を行った。研究グループは被験者を無作為に、HPVワクチンを「標準接種(0・2・6ヵ月)」「0・3・9ヵ月」「0・6・12ヵ月」「0・12・24ヵ月」のスケジュールで接種する4群に割り付けた。3回目接種後1ヵ月に血清抗HPVの幾何平均抗体価(GMT)を調べ、標準接種に対する非劣性試験を行った。各接種群GMT値の標準接種群GMT値に対する割合を調べ、95%信頼区間の下限値が0.5以上であれば非劣性が認められると定義した。被験者のうち、HPVワクチン接種を1回以上受け、3回接種後1ヵ月の時点で血清検査を行ったのは809人だった。0・12・24ヵ月の接種スケジュールでは非劣性は認められず結果、標準接種群の3回接種後のGMT値は、HPV-16が5808.0(95%信頼区間:4961.4~6799.0)、HPV-18が1729.9(同:1504.0~1989.7)だった。それに対し、9ヵ月スケジュール群のGMT値はそれぞれ5368.5(同:4632.4~6221.5)と1502.3(同:1302.1~1733.2)、12ヵ月スケジュール群はそれぞれ5716.4(同:4876.7~6700.6)と1581.5(同:1363.4~1834.6)と、いずれも標準スケジュール群に対する非劣性が認められた。一方で、24ヵ月スケジュール群については、3692.5(同:3145.3~4334.9)と1335.7(同:1191.6~1497.3)で、標準スケジュール群に対する非劣性は認められなかった。Neuzil氏は「このベトナムの青年期女児において、HPVワクチン投与は標準または選択スケジュールにおいても、免疫原性、忍容性ともに良好であった。標準接種法(0・2・6ヵ月)と比較して、2つのスケジュール法(0・3・9ヵ月、0・6・12ヵ月)は、抗体濃度について非劣性であった」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4104.

移植患者へのサイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチン接種でウイルス血症が減少

腎/肝移植患者では、サイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチンの接種で誘導された液性免疫によってウイルス血症が減少することが、イギリス・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのPaul D Griffiths氏らの検討で示された。サイトメガロウイルスによるウイルス血症がみられる同種移植患者では、ガンシクロビル(商品名:デノシン)あるいはそのプロドラッグであるバルガンシクロビル(同:バリキサ)の投与によりウイルスに起因する肝炎、肺炎、胃腸炎、網膜炎などの末梢臓器障害の予防が可能である。末梢臓器障害の発現はウイルス量と関連し、ウイルス量は既存の自然免疫の影響を受けるが、ワクチンで誘導された免疫にも同様の作用を認めるかは不明だという。Lancet誌2011年4月9日号掲載の報告。糖蛋白Bワクチンの免疫原性を評価する無作為化第II相試験研究グループは、イギリス・ロンドンのRoyal Free Hospitalの腎臓あるいは肝臓の移植術待機患者を対象に、MF59アジュバント添加サイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチンの、安全性と免疫原性を評価する無作為化プラセボ対照第II相試験を実施した。妊婦、直近3ヵ月以内に血液製剤(アルブミンを除く)の投与を受けた患者、多臓器の同時移植患者は除外した。サイトメガロウイルス血清反応陰性の70例と陽性の70例が、MF59アジュバント添加サイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチンあるいはプラセボを接種する群に無作為に割り付けられた。接種はベースライン、1ヵ月後、6ヵ月後に行い、移植が実施された場合はそれ以上の接種は行わないこととし、定量的real-time PCR法で血液サンプル中のウイルスDNAを解析した。サイトメガロウイルスのゲノムが200/mL以上(全血)の場合にウイルス血症と定義し、3,000/mL以上に達した患者にガンシクロビル5mg/kgの1日2回静注投与(あるいはバルガンシクロビル900mg 1日2回経口投与)を行い、2回の血液サンプルの検査でウイルスDNAが測定限界以下になるまで継続することとした。安全性と免疫原性の2つを主要エンドポイント(coprimary endpoints)とし、両群とも1回以上の接種を受けた患者についてintention-to-treat解析を行った。ワクチン群で、糖蛋白B抗体価が有意に上昇ワクチン群に67例(血清反応陽性例32例、陰性例35例)が、プラセボ群には73例(38例、35例)が割り付けられ、全例が評価可能であった。実際に移植を受けたのはワクチン群が41例(18例、23例)、プラセボ群は37例(22例、15例)であった。ワクチン群では、血清反応陰性例、陽性例ともに糖蛋白B抗体価がプラセボ群に比べ有意に上昇した。すなわち、血清反応陰性例の幾何平均抗体価(GMT)は、ワクチン群12,537(95%信頼区間:6,593~23,840)、プラセボ群86(同:63~118)、陽性例のGMTはそれぞれ118,395(同:64,503~217,272)、24,682(同:17,909~34,017)であり、いずれも有意差を認めた(いずれもp<0.0001)。移植後にウイルス血症を発症した患者では、糖蛋白B抗体価がウイルス血症の期間と逆相関を示した(p=0.0022)。血清反応陽性ドナーから移植を受けた血清反応陰性の移植患者では、ワクチン群がプラセボ群よりも、ウイルス血症の期間(p=0.0480)、ガンシクロビル治療日数(p=0.0287)が有意に短かった。著者は、「移植後の細胞性免疫の抑制を背景にサイトメガロウイルス症が起きるが、サイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチンで誘導された液性免疫によってウイルス血症が減少することが示された」と結論し、「ワクチン群で有意に増加した有害事象は、事前に健常ボランティアで確認したとおり、注射部位の疼痛のみであった。それゆえ、本ワクチンは移植患者においてさらなる検討を進める価値がある」としている。(菅野守:医学ライター)

4105.

男性の発がん性HPV感染率は30%、パートナー数と密接に関連

 男性の発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)感染率は30%に及び、性交パートナー数が多いほど感染率が高く、かつウイルス消失率が低いことが、アメリカ・H Lee MoffittがんセンターのAnna R Giuliano氏らの検討で示された。HPVは男性の陰部疣贅やがんの原因となるが、男性におけるHPVの自然経過はほとんど知られていないという。HPVは男性から女性に感染することで女性の疾患リスクに大きな影響を及ぼし、男性の性行動は女性パートナーのHPV感染率や関連疾患にも影響することから、男性におけるHPV感染状況の解明が急がれている。Lancet誌2011年3月12日号(オンライン版2011年3月1日号)掲載の報告。3ヵ国の男性のHPV感染状況を検討する前向きコホート試験 研究グループは、男性性器のHPV感染の発生状況を検討し、関連因子を評価する前向きコホート試験を実施した。 ブラジル、メキシコ、アメリカに居住するHIV陰性で、がんの既往歴がない18~70歳の男性を対象とし、フォローアップ期間中に6ヵ月ごとの検査が行われた。亀頭冠状溝、亀頭、陰茎、陰嚢から試料を採取し、HPV遺伝子型の評価を行った。男性のHPVワクチン接種の費用効果モデル開発に有用な可能性 2005年7月~2009年9月までに4,299人(ブラジル:1,443人、メキシコ:1,429人、アメリカ:1,427人)が登録された。そのうち、2006年12月までに登録され少なくとも2週間以上のフォローアップを完遂した1,159人の男性(平均年齢32.1歳、フォローアップ期間中央値27.5ヵ月)について解析を行った。 発がん性および非発がん性を含むHPV感染率は50%(584/1,159人)であり、13種の発がん性HPVへの感染は30%(345/1,159人)に認められた。新規のHPV感染率は、1,000人・月当たり38.4(95%信頼区間:34.3~43.0)であった。 多変量解析を行ったところ、発がん性HPV感染率は、女性の性交パートナー数が0~1人の男性に比べ、10~49人の男性(ハザード比:2.18、95%信頼区間:1.53~3.12)および50人以上の男性(同:2.40、1.38~4.18)では2倍以上に達しており、有意な差が認められた。また、直近の3ヵ月間に男性の肛門性交パートナーがいなかった男性に比べ、3人以上のパートナーがいた男性では発がん性HPV感染率が有意に高かった(同:2.57、1.46~4.49)。 発がん性/非発がん性HPV感染者の感染期間中央値は7.52(同:6.80~8.61)ヵ月であり、HPV-16感染者では12.19(同:7.16~18.17)ヵ月であった。 発がん性HPVの消失率は、女性の性交パートナー数が0~1人の男性に比し50人以上の男性で有意に低く(ハザード比:0.49、95%信頼区間:0.31~0.76)、アメリカ在住の男性よりもブラジル在住男性(同:0.71、0.56~0.91)、メキシコ在住男性(同:0.73、0.57~0.94)は有意に低値を示した。また、発がん性HPVの消失速度は加齢に伴って迅速化した(同:1.02、1.01~1.03)。 著者は、「男性の性器HPV感染は3ヵ国のどの年齢層においても同様に高率であり、新規感染やウイルス消失はパートナーの性別にかかわらずその数と密接な関連を示した」とし、「これらのデータは、男性のHPVワクチン接種に関する現実的な費用効果モデルの開発に有用と考えられる」と指摘している。

4106.

HIV感染の母親から生まれた非感染乳児、Hibなど抗体低値だがワクチン投与反応は良好

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染する母親から生まれたHIV非感染の乳児は、出生時のインフルエンザ菌b型ワクチン(Hib)や百日咳、肺炎球菌などの抗体値が、HIV非感染の母親から生まれた乳児に比べ、低いことが明らかになった。同時に、そうした乳児の、ルーチンのワクチン投与に対する反応は良好だったことも示されたという。英国Imperial College LondonのChristine E. Jones氏らが、南アフリカで100人超の妊婦とその乳児について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月9日号で発表した。母親がHIV感染の乳児、Hib、百日咳、肺炎球菌、破傷風の抗体値がいずれも低値Jones氏らは、2009年3月3日~2010年4月28日にかけて、南アフリカの首都ケープタウン近郊の旧黒人居住区であるカエリチャで、HIV感染・非感染の妊婦109人とその乳児について、地域ベースのコホート試験を行った。対象者のうち、HIVに感染する母親は47人(43%)だった。出生後に検査を行った幼児でHIV非感染だった100児について、出生時と出生後16週間の時点で抗体値を調べ比較した。これら被験者100児のうち、HIV感染の母親から生まれた乳児は46児だった。出生時の検査では、母親HIV感染群は非感染群に比べ、Hib(母親HIV感染群:0.37mg/L、 vs. 非感染群:1.02 mg/L、p<0.001)、百日咳(同16.07 FDA U/mL vs. 36.11 FDA U/mL、p<0.001)、肺炎球菌(同17.24mg/L vs. 31.97 mg/L、p=0.02)、破傷風(同0.08 IU/mL vs. 0.24 IU/mL、p=0.006)の抗体値が、いずれも低かった。ルーチン予防接種後の百日咳と肺炎球菌の抗体値は、母親HIV感染群の方が高値母親についても比較したところ、HIV感染群(46人)は非感染群(58人)に比べ、Hib(HIV感染群:0.67mg/L vs. 非感染群1.34mg/L、p=0.009)と、肺炎球菌(同33.47mg/L vs. 50.84mg/L、p=0.03)の抗体値は低かった。百日咳や破傷風の抗体値については、両群で同等だった。一方で、母親がHIV感染者の乳児はルーチンの予防接種に対する反応は良好だった。百日咳(母親HIV感染群:270.1 FDA U/mL vs. 非感染群:91.7 FDA U/mL、p=0.006)と肺炎球菌(同47.32mg/L vs. 14.77mg/L、p=0.001)については、母親HIV感染群の幼児の方が、接種後の抗体値が高かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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教授 富田剛司 先生の答え

緑内障手術を受けた患者さんの細菌感染について日本緑内障学会からの災害時の注意を読みました。緑内障手術を受けた患者様では、衛生環境の悪化や抵抗力の低下によって細菌感染(濾過胞炎・眼内炎)を生じる危険があります。とありますが、術後どのくらいの期間までを指すのでしょうか?術後1年以上であれば危険がないのか、そもそも緑内障手術を受けた患者さんは常に細菌感染のリスクがあるのか?教えていただけると助かります。私の地域でも被災地からの避難者(疎開?)が増えてきました。整形外科(クリニック)をやっていますが、できることは全てやって差し上げようと他の領域についても勉強を始めた次第です。初歩的なことかとは思いますが宜しくお願いします。緑内障手術の中でも術部位に濾過胞が形成される線維柱帯切除手術後の、濾過胞関連感染症の発症頻度は、報告にもよりますが、1から3%とされており、感染のリスクは濾過胞が形成されている限り(これがあるために眼圧が下がるのですが)続きます。濾過胞の壁(結膜)が非常に薄くそこから房水が漏出しているような状況の場合、濾過胞が眼球下方に形成されている場合は、特に感染のリスクは高くなります。逆に、十分に壁の厚い(厚い結膜で覆われている)濾過胞の場合はリスクはほとんど無くなります。眼科医にすぐ診察を受けられないような状況下で緑内障術後の患者さんがいらした場合は、点眼中止が可能かどうかの判断は難しいと思いますので、念のため抗生物質の点眼薬を継続して使用していただく方がよいと思います。 眼底三次元画像解析装置について眼底三次元画像解析装置については3,4年前に記事を読んだ記憶があります。(確か富田先生の記事でした。)まだ完成に至ってないとのことですが、完成度としてはどの程度まできているのか教えてください。眼底三次元画像解析装置は、すでに検査技術料が保険収載されており、そういう意味では眼科診療に一般的に受け入れられています。完成に至っていないとの記事内容ですが、画像解析装置のみを用いて緑内障を100%自動診断するには至っていない、という意味で書きました。画像解析装置の使用目的として、健康診断などで眼科医がいないような状況下においても緑内障を早期に自動診断することが究極的な目標の一つに挙げられています。しかし、今のところ装置のみによる診断精度は80%から90%くらいであり、現時点では画像解析結果の最終判断は眼科専門医に委ねられるべきであると考えています。心身不安からくる疾患(眼科領域)について災害時などでは心身不安から急性緑内障発作をおこす方がいるとのことですが、他にも気をつけるべき疾患はありますでしょうか?眼科分野において、緑内障の急性発作以外に急激に発症し早急な治療を要する疾患としては、網膜剥離、網膜中心動脈あるいは静脈閉塞症、視神経炎(眼を動かすと眼の奥が痛いなどの症状を伴って、強い視力低下を自覚する)、ぶどう膜炎の発作(ベーチェット病など)等々がありますが、自覚症状としては通常、眼の症状に限定されるので、少なくとも眼疾患であることは比較的分かりやすいと思います。災害時の心身不安ということを考えた場合、逆に目に関する不定愁訴のようなものが増える可能性もあると思います。緊急性を見分ける検査としては、やはり視力検査が重要と思いますので、どこかに視力表があるとよいと思います。この場合、メガネを掛けた状態で矯正視力を評価するのが重要な点です。急性緑内障先生の記事大変勉強になりました。大橋病院さんで、救急に運ばれてきて、結果、急性緑内障だったケースは年間何例くらいあるのでしょうか?私は、強い頭痛、吐き気を訴えてきた患者さんは、まず近くの脳神経外科に直ぐ行かせていました。今のところ、結果急性緑内障と診断されたことはないのですが、先生の記事を拝見する限りでは、眼科もある病院を紹介した方がよいのでは?と考え直しているところです。緑内障の発作であると最初はわからなくて体調不良として救急を受診される方はさすがに少なくて、ほとんどがすでに眼科医を受診された上で緊急紹介されるか、救急で受診されても眼の症状ということで最初から眼科に廻されてくることが多いです。大橋病院で救急に運ばれてきて、最初はわからなくて脳外科的検査も受けた後、結果、急性緑内障だったケースは私の記憶では、この5年間でお一人くらいだったと思います。なので、ほとんどの場合は問題とはならないと思いますが、眼科医が眼をみて初めて、「あ、緑内障の発作だ」という事例はありますので、やはり、可能であれば眼科もある施設にご紹介されるのがベストと考えます。40歳からの眼科健診先生が推奨されている「40歳からの眼科健診」は私も賛成です。先生も他でご指摘されているように、生活習慣病に焦点があてられている住民健診では眼科健診を取り入れることは難しい、と考えますが…。しかし一方で、全ての自治体が動き、住民健診の中に眼科健診が取り入れられた場合、現状の眼科医でさばけるのでしょうか?緑内障の診断は難しいと聞きます。健診を標準化できるように眼底三次元画像解析装置など開発されているかと思いますが、住民健診の場全てにその装置を配備することは難しいのでは?と思います。この点について先生の見解をお聞かせいただければと思います。先生のご指摘はまったくその通りだと思います。先の眼底画像解析装置のご質問にもお答えしましたが、画像解析装置での眼底スクリーニングには限界がありますので、住民健診の場で使用できる現状にはまだ至っていません。現時点で私が考える最も効率的な緑内障を含めての眼底疾患スクリーニング法は、無散瞳眼底写真撮影です。考え方としては、胸部レ線による疾患のスクリーニングに近いと思います。眼底カメラの価格は300から500万円くらい。熟練した技師であれば眼底写真撮影は数分ですみますので、畳一畳分くらいの暗室があればOKです。写真はカラープリント(あるはスライド)にして眼底読影医(眼科専門医が望ましい)が判定することになります。したがって、健診の場に眼科医がかならずしも常駐する必要はありません。問題は、先生もご指摘のように、眼科医が対応できるのか、ということです。眼底読影という点については、各健診地区で読影の拠点施設(眼科医会の協力が必要か)を確立できれば良いように思いますが、スクリーニングで精密検査が必要となった場合が問題となります。緑内障で言うと有病率は5%であり、おそらく日本人全体で350万人くらいの緑内障が患者いると想定されます。日本眼科学会に登録している眼科医は現在1万5千名くらいですので、単純計算で眼科医すべて(後期研修医も含め)が200人強の緑内障患者を受け持つことになります。残念ながらこれは眼科医からみれば無理な数字です。誰が緑内障を診るのか、ということについては今後の議論を待たねばなりませんが、"40歳以降の目の健診"については、現在は会社の健康診断や各病院の人間ドックメニューに眼底写真撮影を取り入れてもらうようにすることから健診者を増やしていければと思っています。手術時の患者さん対応について目の手術となると患者さんの不安は大きく(当然ながらメスが近づいてくるのが見えるんですよね?)、しかも局所麻酔なので、周囲の音も聞こえ、ますます不安が大きくなるのかと想像します。手術の時に患者さんをリラックスさせるために行っていることや、気をつけていることがあればご教示ください。大変重要なご質問です。手術前の患者さんをリラックスさせるための手段として、多くの眼科施設でBGMを流しています。私の施設でもクラッシックやヒーリング系の音楽を流すようにしています。子供や若い患者さんには、あらかじめ自分の好きなCDなどを持ってきてもらって、それを流しています。また、洗眼などの手術準備中はできるだけ声を掛けながら、場合によっては世間話をしながら、患者さんの緊張をほぐすようにしています。富田先生は最初から眼科医を目指していたのでしょうか?富田先生は最初から眼科医を目指していたのでしょうか?また眼科医を目指そうと思ったきっかけなどあれば教えていただければと思います。私は学生の頃は、循環器内科に興味を持っていました。心電図を読むのが好きで、先生に褒められたのも一因です。ただ、眼科のポリクリの時に、アメリカのNIHでの留学から帰ってきたばかりの講師の先生が、眼科の疾患の説明はそっちのけで、人間の眼と、魚やカタツムリの眼の構造上の違いや類似点を楽しそうに話してくれたのが強い印象となって、父が眼科医であることもありましたが、眼科医の道を選びました。日本人と欧米人の眼の違い外科系の先生からは日本人と欧米人では体質が違う(肉食系の欧米人は血がドロドロ、でも止まりやすい、日本人は臓器が小ぶりなので欧米人よりも手術に気を遣う)ので、注意するようにと教わりました。眼もそのような質の違いがあるのでしょうか?(医学生)確かに日本人の眼と欧米人の眼で違いがあるように感じます。眼球は、眼窩という頭蓋骨のくぼみの中に収まっていますが、欧米人の眼窩は広くゆったりしており、日本人の眼窩はそれよりは狭い感じがあります。眼球の大きさはさほど違わないので、日本人の眼は眼窩周囲の組織に圧迫されているような感じがあります。したがって、硝子体圧が高めです。これは、白内障手術などをする場合、水晶体がせりあがってくる感覚があり、やや、手術がやりにくいと感じる場合があります。ただ、日本人の眼で慣れてしまうと、逆に白人の手術をする場合、眼球内がふにゃふにゃしている感じがあります。したがって、白人の眼はそっと丁寧に扱う必要性があるように思います。ただ、これは微妙な違いなので、ものすごく問題になることはありません。眼科医以外が眼科のことを学べる取り組み「どの科の専門であっても医師ならば必ず眼科の講義は受けているはずですが、眼の疾患がおざなりになっている現状を危惧せずにはいられません。」全くその通りです。私も講義を受けた記憶はありますが…。数年前から大学を離れ、診療所で患者を診るようになり、今更ながら後悔しています。プライマリー・ケア医に役立つ眼科セミナーや、勉強会など、眼科医以外が眼科のことを学べる取り組みがあれば参加したいと思います。もしご存知でしたらご教示お願いします。真摯なご姿勢に敬意を表します。大変重要なポイントをご指摘いただいたと思います。残念ながら、日本眼科学会や眼科医会には、他科の医師を対象とした眼科プライマリー・ケアに関する講習プログラムはこれまで存在しておりません。今回のような大震災を経験しますと、専門科を超えて医師が最低限知っておくべきプライマリー・ケアの知識と技量の生涯教育の必要性を痛感します。他科医師を対象とした眼科のプライマリー・ケア―のセミナーに関して、一度、学会に提言してみたいと思います。海外と日本の違い富田先生は海外留学のご経験も豊富とのこと。富田先生が思う、世界で一番眼科医療が進んでいる国はどこでしょうか?またその理由もご教示ください。失明率(一定人口中の失明者の数)や人口あたりの眼科医の数、眼科診療器械の普及度、眼科手術の件数、等々でその国の眼科医療を評価した場合、日本の眼科医療が実は世界一という結果が出ています。これは、日本の保険医療制度が大きく貢献しているとも言われていますが、日本の眼科医の質の高さを示す、誇るべきことであると思っています。近年、岐阜県の多治見市と沖縄の久米島で緑内障に関する疫学調査が行われましたが、それに付随するデーターとして、両地域間の失明率に違いはないことが明らかになりました。このことは、すくなくとも眼科医療に関しては、日本のどの地域であっても遜色なく普遍的に行われていることが示されており、日本の眼科医療が世界一であることを裏付けるものであると思います。総括大変多くの方からご質問をいただき感激しました。今回の質問にもありましたが、何と言っても、東日本大震災に関することで、眼科医療の重要性が再認識されていることをお伝えしたいと思います。今回、被災地から点眼薬やコンタクトレンズ用品、眼科医の不足を訴える声が大きいと聞きます。災害地が広範囲にわたるため、とりあえず近隣の眼科医を受診するということが出来なくなっているのです。災害では救急救命が重要なことは言うまでもありませんが、避難生活が長期化しだすと、やはり慢性疾患や、視覚などの生活の質を左右する要素に関するする対応も重要であることが痛切に感じられました。現在、産科医や小児科医の不足が問題になっていますが、実は、眼科医の数も年々減っています。今後日本が超高齢化社会を迎えるにあたり、物がみえているという最低限の生活のクオリティーを守るべき人がもっと増えてもいいのではないかと思っています。教授 富田剛司 先生「全身の疾患が眼に現れることは明確 眼を診るのは診断の第一歩である」

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農家で育つ子どもは喘息、アトピーの有病率が低い:ドイツ

微生物に曝される環境下であることと、喘息や花粉症のようなアレルギー性疾患の発症が少ないこととの関連が繰り返し報告されているが、それらはロシアとフィンランドというように近接する生活環境が異なる集団からの知見であった。そこでドイツ・ミュンヘン大学小児病院のMarkus J. Ege氏ら「GABRIELA Transregio 22」研究グループは、同一地域に住んでいる子どもで、農家の子どもとそれ以外の子どもとの喘息・アトピー有病率を比較し、微生物に曝されることとの関連を調べた。NEJM誌2011年2月24日号掲載より。農家とそれ以外の子どもの喘息・アトピー有病率と微生物曝露のデータを解析研究グループは、二つのスタディデータを用いて、農家とそれ以外の子どもの喘息・アトピー有病率と微生物曝露について検討した。一つは「PARSIFAL」(アレルギー予防―農業とアントロポゾフィー〈人智学〉を基盤とした生活環境下にいる子どもの感作の危険因子)のデータ。PARSIFALでは、マットレスダストをサンプルに、細菌DNAのスクリーニングがSSCP法(培養法では測定できない環境細菌を検出するための解析法:一本鎖高次構造多型解析)にて行われた。もう一つは「GABRIELA」(欧州共同体における喘息の遺伝的・環境要因特定のための集学的研究「GABRIEL」の先端研究)のデータで、GABRIELAでは、子ども部屋の降下ダストをサンプルに、培養法にて細菌真菌の分類評価が行われた。スタディ母集団は、PARSIFALはドイツ南部のバイエルン地方の6~13歳の児童6,843人、GABRIELAはオーストリア・ドイツ南部・スイスの6~12歳の児童9,668人だった。そのうち、両スタディのバイエルン地方に住む子どものデータ(PARSIFAL:489例、GABRIELA:444例)を解析した。曝される環境微生物が多様なほど、喘息リスクが低い結果、両スタディとも、喘息およびアトピーの有病率が、バイエルン地方の農家で暮らす子ども(PARSIFAL:52%、GABRIELA:16%)の方が、対照(農家以外の子ども)群と比べて低かった。喘息に関する補正後オッズ比は、PARSIFALでは0.49、GABRIELAでは0.76、アトピーに関する補正後オッズ比は両スタディ間でより開きが大きく、それぞれ0.24、0.51だった。また、農家の子どもの方が多様な環境微生物に曝露されていた。そして曝露される微生物が多様であるほど、喘息リスクが低くなるという逆相関の関連が認められた(PARSIFALでのオッズ比:0.62、GABRIELAのオッズ比:0.86)。さらに、特定の微生物への曝露について、喘息リスクとの逆相関が認められた。その微生物は、真菌分類群ユーロチウム属の種(補正後オッズ比:0.37)や、リステリア菌、桿菌、コリネバクテリウム属その他の細菌種(補正オッズ比:0.57)などだった。Ege氏は、「農家で暮らす子どもは、それ以外で暮らす子どもより広範な微生物に曝露されていた。そしてこの曝露が、喘息と農家で育つ子どもとの逆相関の関連について大部分の理由づけとなっている」と結論、また今後は、どのような種の微生物曝露が喘息予防に結びつくのかを特定するための試験に挑んでいくつもりだとまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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吸入コルチコステロイド連日投与、小児の軽症持続型喘息に有効:TREXA試験

小児の軽症持続型喘息の治療では、増悪の抑制効果は吸入コルチコステロイド(ICS)の連日投与が優れることが、米国・アリゾナ大学のFernando D Martinez氏らが実施したTREXA試験で示された。軽症持続型喘息の小児における症状のコントロールや増悪の抑制に望ましい治療法として、低用量ICS連用が推奨されているが、コントロール良好でも増悪する例が存在し、無症状の期間が長期に持続すれば服薬の遵守が極めて困難となる。1)コントロール良好例におけるICS連用の中止は増悪のリスクを増大させるか、2)レスキュー治療としてのICS/アルブテロール(別名サルブタモール:β2アドレナリン受容体刺激薬)併用とアルブテロール単独の増悪抑制効果が、ICS連用の有無で異なるかという課題は未解決だという。Lancet誌2011年2月19日号(オンライン版2011年2月15日号)掲載の報告。4つの治療群を比較する2×2ファクトリアル・デザインのプラセボ対照無作為化試験TREXA試験の研究グループは、小児の軽症持続型喘息に対するレスキュー治療としてのICS(ジプロピオン酸ベクロメタゾン)の有用性を評価する2×2ファクトリアル・デザインの二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。2007年1月~2009年5月までにアメリカの5施設から5~18歳の軽症持続型喘息の症例が登録され、4週間の導入期間の後、以下の4つの治療群に無作為に割り付けられ、44週間の治療が行われた。1)併用群:ベクロメタゾン1日2回+ベクロメタゾン/アルブテロールによるレスキュー治療、2)ベクロメタゾン連用群:ベクロメタゾン1日2回+プラセボ/アルブテロールによるレスキュー治療、3)レスキューベクロメタゾン群:プラセボ1日2回+ベクロメタゾン/アルブテロールによるレスキュー治療、4)プラセボ群:プラセボ1日2回+プラセボ/アルブテロールによるレスキュー治療。ベクロメタゾン治療は1パフ(40μg)を朝夕2回吸入し、レスキュー治療は症状が軽減するまでアルブテロール(180μg)2パフ当たりベクロメタゾン2パフとした。主要評価項目は経口ステロイド薬を要する初回増悪までの期間、副次的評価項目はICSの副作用である成長障害の指標としての線形成長とし、intention-to-treat解析を行った。増悪率、治療失敗率は連用群が最も低い843例が登録され、事前に規定された判定基準に従って導入期間中に555例が除外された。残りの288例のうち、71例が併用群に、72例がベクロメタゾン連用群に、71例がレスキューベクロメタゾン群に、74例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。増悪率は、プラセボ群の49%(95%信頼区間:37~61)に比し、ベクロメタゾン連用群が28%(同:18~40、p=0.03)、併用群が31%(同:21~43、p=0.07)、レスキュー群は35%(同:24~47、p=0.07)といずれも低下しており、連用群では有意差を認めた。治療失敗率は、プラセボ群の23%(95%信頼区間:14~43)に比べ、併用群は5.6%(同:1.6~14、p=0.012)、連用群は2.8%(同:0~10、p=0.009)、レスキュー群が8.5%(同:2~15、p=0.024)であり、いずれも有意に良好であった。線形成長の平均値は、ベクロメタゾンを連用した併用群と連用群はプラセボ群に比べて1.1cm(SD 0.3)有意に低下した(p<0.0001)が、連用していないレスキュー群は0.3cm(SD 0.2)の低下でありプラセボ群と同等であった(p=0.26)。重篤な有害事象は2例(連用群の1例でウイルス性髄膜炎、併用群の1例で気管支炎)にのみ認められた。著者は、「軽症持続型喘息の小児にはアルブテロール単独によるレスキュー治療は行うべきではなく、増悪の予防に最も効果的な治療はICS連日投与である」と結論し、「レスキューとしてのICSをアルブテロールと併用する治療は、アルブテロール単独によるレスキュー治療に比べ増悪率が低い点で有効性が高く、コントロール良好な患児に対するステップダウン治療として有効な可能性がある。それゆえ、ICS連用は回避可能であり、それによる成長障害などの副作用も避けられると考えられる」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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新型インフルエンザワクチンの安全性、市販後調査で確認:中国

中国・疾病管理予防センターのXiao-Feng Liang氏らは、2009年9月21日に優先すべき集団を対象に、新型インフルエンザ[インフルエンザA(H1N1)ウイルス]感染に対するワクチン(異なるメーカー10社から入手)接種が開始された予防接種プログラムの、安全性に関する評価を行った。結果、同プログラムにおいて有害事象例は観察されず、ギランバレー症候群のリスク増加のエビデンスも認められなかったと報告した。NEJM誌2011年2月17日号掲載より。接種後の有害事象発生率は90件/100万回研究グループは、インフルエンザA(H1N1)ワクチン接種後の有害事象を調査するため、受動的サーベイランス計画を作成し、医師または予防接種提供者に対し、ワクチン接種者数とすべての有害事象数を、地元の疾病管理予防センター(CDC)に報告するよう求めた。報告データは、オンラインで全国予防接種情報システム(National Immunization Information System)内の全国予防接種後有害事象追跡評価システム(National Adverse Event Following Immunization Surveillance System)に集められ、中国CDCにより検証・分析された。検証・分析されたデータは、2010年3月21日までに集まったものであった。結果、ワクチン接種は、2009年9月21日から2010年3月21日まで合計8,960万回行われ、ワクチン接種後の有害事象の発生は8,067例で、接種100万回当たり90.0件の発生率だった。年齢別有害事象発生率は、60歳以上の100万回当たり31.4件から、9歳以下の100万回当たり130.6件まで幅があった。ワクチンのメーカー別の発生率は、100万回当たり4.6~185.4回まで幅があった。懸念される重篤な有害事象は低率報告された8,067件の有害事象のうち、6,552件(81.2%、発生率は100万回接種当たり73.1件)はワクチン反応であることが確認された。また8,067件のうちの1,083件(13.4%、同100万回当たり12.1件)は、発生が稀で、より重篤なものであった。その大半(1,050件)は、アレルギー性反応だった。ギランバレー症候群は11例報告されたが、発生率は接種100万回当たり0.1件と低率で、中国における背景発生率より低かった。(朝田哲明:医療ライター)

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4価HPVワクチンは男性にも有効

 ヒトパピローマウイルス(HPV)感染に対するHPVワクチン接種は、男性に対しても有効で、外性器病変の予防に有効であることが示された。米国H. Lee Moffittがんセンター研究所のAnna R. Giuliano氏らが16~26歳の男性を対象に、女性において持続感染や生殖器疾患に有効な4価ワクチンの有効性を検討した試験の結果による。少年および男性の生殖器HPV感染の割合は女性と同等だが、免疫応答に性差があり、自然感染では男性の方が抗体の力価は低い(HPV血清陽性:女性17.9%、男性7.9%)という。NEJM誌2011年2月3日号掲載より。18ヵ国・16~26歳男性4,065例を対象に無作為プラセボ対照二重盲検試験 Giuliano氏らは、少年および男性における、4価ワクチン(HPV 6型、11型、16型、18型に対して活性)の安全性と、外性器病変と肛門性器HPV感染の予防における有効性について、無作為プラセボ対照二重盲検試験を行った。試験には18ヵ国から、16~26歳の健康な4,065例が登録された。 主要有効性評価項目は、4価HPVワクチンが、HPV 6、11、16、18に関連する外性器病変の発生率低下を示すこととされた。有効性解析は、per-protocol集団(ワクチン接種を3回受けており登録時に関連HPVに非感染)と、intention-to-treat集団(ワクチンもしくはプラセボ接種を受けており、登録時のHPV感染状態は不問)を対象に行われた。intention-to-treat解析における外性器病変への有効率は60.2% intention-to-treat集団における外性器病変の発生率は、ワクチン群36例に対し、プラセボ群は89例で、ワクチン有効率は60.2%(95%信頼区間:40.8~73.8)だった。HPV 6、11、16、18に関連する外性器病変に対する有効率は65.5%(同:45.8~78.6)だった。 per-protocol集団においては、HPV 6、11、16、18に関連する外性器病変に対する有効率は90.4%(同:69.2~98.1)だった。 安全性に関しては、注射部位疼痛が、ワクチン接種群の方がプラセボ群に比べて有意に高頻度に認められた(57%対51%、P<0.001)。

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2009年新型インフルエンザワクチンの安全性と有効性:中国・北京

中国・北京における、2009年の新型インフルエンザ(H1N1)ワクチン接種の安全性と有効性について、安全性プロファイルは季節性インフルエンザワクチンと同等であり、また新型インフルエンザウイルス感染が確定した学童期の子どもで有効だったとの報告が、北京疾病管理予防センターのJiang Wu氏により発表された。中国では、2009年9月以降に単価ワクチンが利用可能となり、ただちに当局による北京での集団ワクチン接種のプログラム実行が指示されたという。Wu氏らは、同ワクチンの安全性と有効性について評価を行った。NEJM誌2010年12月16日号掲載より。北京のワクチン接種者、小児・成人9万5,244例を評価Wu氏らは、2009年9月21~25日の5日間で、PANFLU.1ワクチン(Sinovac Biotech社製)の接種を受けた、北京の小児および成人合計9万5,244例を対象に評価を行った。ワクチンは非アジュバンドの赤血球凝集素抗原15μg含有単価スプリットビリオンワクチンであった。評価は、強化受動サーベイランスシステム(日記)とアクティブサーベイ(電話インタビュー)を用いて、接種後の有害事象について行われた。また神経疾患のアクティブサーベイを、市内全病院で行った。ワクチン有効性の評価は、学生を対象に行われ、集団予防接種の2週間後から報告された、2009年新型インフルエンザウイルス感染の検査確定例の発生率を、ワクチン接種群と非接種群とで比較した。推定ワクチン有効率は87.3%結果、2009年12月31日時点で、接種者の有害事象の報告例は193例あった。病院ベースのアクティブサーベイの結果では、集団予防接種後10週間以内で、362例の新規神経疾患が発生していたことが明らかになった。そのうち27例がギラン・バレー症候群であった。神経疾患の発症例にワクチン接種者はいなかった。学生の評価は、245校を対象に行われた。集団接種を受けた学生は2万5,037例、非接種の学生は24万4,091例であった。そのうち2009年10月9日~11月15日の間に、2009年新型インフルエンザ感染確定症例の発生率は、接種学生群では10万人あたり35.9例(9/25,037例)、非接種学生群は同281.4例(687/244,091例)であり、推定ワクチン有効率は87.3%(95%信頼区間:75.4~93.4)であった。(武藤まき:医療ライター)

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抗菌性創傷被覆・保護材「アルジサイト銀」新発売

 スミス・アンド・ネフュー ウンド マネジメント株式会社は、本邦初のアルギン酸カルシウム繊維に銀イオン効果をプラスさせた抗菌性創傷被覆・保護材『アルジサイト銀』を2011年1月1日に発売した。アルジサイト銀は滲出液と細菌の両方をコントロール アルジサイト銀は、創傷の治癒を遅らせる過剰な滲出液と細菌の両方をコントロールできる製品。天然素材由来のアルギン酸繊維が創傷の滲出液を吸収し、ゲル化することにより創傷に適切な湿潤環境を提供し、治癒を促進するという。また、滲出液の吸収と同時に放出された銀イオンには、滲出液と共に被覆材内に流入した細菌や創傷接触面の細菌に対し抗菌効果を発揮することにより、創傷を清浄化し、治癒を促進する効果があるという。また、血液凝固第IV因子であるカルシウムイオンの効果も期待できるとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://wound.smith-nephew.com/jp/node.asp?NodeId=4117

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教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

1981年滋賀医科大学卒業後、千葉大学医学部第二内科入局。アイルランド・トリニティ大学留学。2003年東邦大学医学部付属佐倉病院内科助教授、2004年同院消化器センター長、2006年より現職。日本消化器内視鏡学会認定指導医、日本消化器病学会認定専門医。難病「潰瘍性大腸炎」「クローン病」が日本で急増中「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」は、日本ではまだ歴史が浅い病気で、元々は欧米諸国の白色人種に多いことで知られています。特に北欧・西欧・北米地域で広がりをみせており、クローン病は近代化された地域の人たちに多く発症している病気であると認知されています。しかし、今、日本でこれら両疾患が急増しています。当院の診療科では約800人以上の患者さんを診療しており、外来には多い時で1日約100人位の患者さんが来院します。患者さんの絶対数は欧米諸国に比べまだまだ少ないのですが、増加率が他の国に比べ高いのが特徴です。私は日本人を取り巻く食生活、ライフスタイル、衛生環境などの変化が影響していると考えています。我々が最近注目している発症要因の一つに、腸内細菌のバランスがあります。まだ研究している段階ですが、腸というのは実は複雑な臓器で腸内の各種要因、特に細菌叢のバランスが重要で、それらは大脳へも強く影響している可能性もあることがわかってきました。最近話題にされるメタボリックシンドロームですが、その病因にも腸が関係している可能性があり、腸の働きがクローズアップされています。私たち人間の体は腸の働きによって健康を保っているとも考えられているのです。よって、我々は「潰瘍性大腸炎」「クローン病」と、腸内細菌叢のバランスとの因果関係に注目しているのです。難病相談、講演活動の日々が臨床開発のヒントに十数年前まで、千葉県には「潰瘍性大腸炎」「クローン病」を専門に診察する医師がいなかったこともあり、現在では急増する患者さんに対応が追いつかない医療機関が多くあります。また、最近では治療方法の選択肢が多くなったため、治療の質を上げてもらうために、それぞれの治療成績、治療戦略、対処方法などについて講演して回っている状況です。また、講演活動とともに地域での難病相談にも20年近く携わっています。県内全域を一人で回っていたこともありました。講演・難病相談とともに年々回数が増加していますが、今では後輩の専門医が参加してくれるようになり、手分けして対応できるようになりました。悩み相談に応じることにより、多くのことを学ぶことができました。病院の外来では、多い時で1日100人の患者さんを診察しなければならないため、残念ながら一人の患者さんに多くの時間を割くことができません。一方、難病相談では一人ひとりに時間を割けるため、様々なことを知ることができます。その中から研究開発のヒントを得たことは数多く、まさに臨床は研究の基礎でもありますね。患者さんには情報を開示して治療の道を迷わせない「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」はとても手ごわく、またきめ細かい診断が必要です。そのため私は内視鏡を用いた検査から診断まで、一貫して自分で行うようにしています。その他はチームで治療にあたることになりますが、良質のチーム医療を行うためにはスタッフ同士の意思統一が必要不可欠です。また、最近ではインターネット上に疾患の情報が氾濫しているため、疾患や治療方法に対する誤った認識をもたらしているようです。そのため、私は医師をはじめ、看護師、薬剤師、栄養士と患者さんたちが一堂に会する会合をもち、栄養・薬剤・治療などに関する正確な情報開示を行い、当院での治療方針を説明し共有してもらうようにしています。スタッフの意思を統一し、また患者さんの気持ちをきちんと落ち着かせるためにも、このような会合を大切にしています。海外研究留学でクローン病患者と再度出会ったことで私が入局した頃は、海外留学をして欧米から学ぶというスタイルがほとんどでした。私はEPAの抗炎症効果に関する共同研究をすることになり、アイルランドに研究留学しました。研修医として初めての受け持ち患者さんがクローン病だったのですが、不思議な御縁で、留学でクローン病とまた出会うことになりました。留学するまで、クローン病はまだまだ日本では珍しい病気でしたのであまり意識したことはありませんでした。また、それまでの私は、当時の先端医療をリードしていた内視鏡が好きで、特にがん領域での内視鏡治療に携わっていきたいとの強い思いがありました。しかし、この留学で2年間内視鏡から離れたこと、多くのクローン病の患者さんたちに出会い、おそらくこれから日本でも増加する病気の一つになるだろうと思うようになったことから、「潰瘍性大腸炎」「クローン病」の臨床研究をしていきたいと考えるようになりました。そして帰国後は、困っている難病患者さんを前にして留学での経験を生かして貢献したいという気持ちが日に日に大きくなり、今に至っています。今の若い人たちは海外留学を希望する人が少ないと聞いていますが、自分の専門分野がどこで一番臨床研究されているかと考えると、やはり留学は重要な位置を占めるのではないでしょうか。そういった意味でも後輩たちに留学を勧めています。海外の生活は苦労が多いのですが、その苦労が人生のプラスにもなりその後の医師としてのキャリアに大いに役立つと思います。若い人にはもっと外へ出かけ、知識や技術を磨くきっかけにして欲しいと考えています。グローバルに活躍できる医療現場がここにはある今現在、当院では世界同時進行で、新薬の臨床製薬治験を行っています。病院のある佐倉市は都市部からは離れていますが、この地で欧米諸国と肩を並べられる、最先端の診療体制を構築することができたと自負しております。私の場合、身近にこの分野の先輩・指導者はいませんでした。そのため積極的に外へ出かけていき専門医の先生たちとコミュニケーションを取る、海外に出向き最新治療の情報を入手するなどして勉強することが多かったです。特に難病の専門分野を極めるにはこれが一番大事だと私は思います。医師としてこの分野で頑張るという強い思い、志は高く持ち、視線は患者さんと同じでいるというのが私のいつも信条としていることです。患者さんと同じ目線で病気を診ていると、わからなかったこともみえてくるものです。医師は自分の思い込みだけで診療をしていては駄目ですね。困っている患者さんは大勢います。私が若い時は欧米からただ学ぶだけでしたが、今の日本は他国をリードすることができると思います。目の前で困っている患者さんのためにも、今まで以上に世界に先駆けた臨床研究を行って欲しいと思うのです。最近、診療など上手くこなせる若い医師は多いのですが、一歩踏み出していける人が少ないと感じています。難病は先がみえず、特にこの病気は再発を繰り返す特徴があり、患者さんにとっては一生を通じて苦痛が伴いますから、患者さんの情報をしっかり把握できることが望ましいでしょうね。私はチームスタッフや若い医師に、「私たちの治療は世界で肩を並べられるものである。自信を持つよう」と常々言い聞かせています。佐倉から世界へ最新治療・治験の発信を行っており、これからもここ佐倉から発信していくつもりです。これからの医療を創っていく若い医師たちには、どんな場所でも、どんな環境でも、自信を持って世界に通じる医療創りに挑戦していただきたいと思います。質問と回答を公開中!

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教授 鈴木康夫先生の答え

気分転換方法について潰瘍性大腸炎やクローン病などは、ある意味患者さんと一生の付き合いかと思います。私も慢性疾患を診ていますが、患者、家族とのコミュニケーション疲れから、医局を去る後輩もいます。先生のところでは、息抜きといいますか、コミュニケーション疲れを取り除くような気分転換について、何か取り組まれているでしょうか?もし極秘のノウハウ等あれば是非ご教示ください!残念ながら特別なノウハウはありませんし、特別な息抜き法もありません。確かに慢性疾患患者さん特有の気質があり、外来診療時間は長く神経を使う度合いも多いのはそれぞれ担当医の辛いところかもしれません。しかし、教科書や論文では判らない知識を個々の患者さんとの直接的対話や診療で初めて会得できることが未だ多くあるのも炎症性腸疾患の特徴ではないかと感じています。患者さんは日々の辛い思いを主治医に吐き出した時に初めて救われるのだ、と自分を納得させ、目の前の患者さんこそが生きた教材と知識の源だ、と思い日々の診療を楽しんでください。幸い、炎症性腸疾患は治療法が適切であれば患者さんは明らかに改善し満足いたします。患者さんが寛解し喜ぶ瞬間こそが我々主治医にとっての本当の息抜きを与えてくれる瞬間なのです。講演会の予定について是非先生の講演会に参加させていただきたいのですが、どこかに講演会のスケジュールなど掲載されているのでしょうか?ホームページなどがあれば教えていただきたく思います。宜しくお願いします。残念ながら、私個人の講演会のスケジュールをまとめてホームページでは掲載してはおりません。ただし、各市町村保健所が主催する講演会に関しては、各市町村の難病ホームページで開示している筈ですので参考にしてください。また、炎症性腸疾患に関するサイトがいくつか設立運営されており、そのようなサイト上に講演会の日程などが開示される場合もあるかもしれませんので、チェックして参考にしてください。患者・家族対応慢性疾患、特に難病だと、診断結果を患者・家族へ伝える瞬間が特に重要かと思います。先生が診断結果を伝えるときに気をつけていることや工夫していることをご教示ください。突然、難病と言い出すのは大変な誤りです。炎症性腸疾患患者さんに対して、いきなり難病ですと切り出すことは絶対にしてはならないことです。まずは病気の特徴や一般的な長期経過、そして治療法の説明をすること、個々の患者さんによって病状は様々であることを告げることも必要です。そして最終的には、現状では病因が不明であり完治が難しいという意味で、俗にいう難病に指定されている、ということを説明するべきです。難病といえども、以前に比べ格段に治療法は進歩し完治に近い治癒も可能であることも教えてあげる必要があります。後期研修について後期研修医は募集しておりますでしょうか?卒後4年目、肛門科にいますが、炎症性腸疾患の患者を多くみるようになり、興味を持っています。できれば専門としたいと考えております。情報あれば教えていただきたく存じます。当科では後期研修医制度を設け、積極的な受け入れ態勢を十分に準備しております。詳細は佐倉病院内科のホームページを参考にしてください。判りにくい場合には、ご連絡いただければいつでも対応いたしますし、参考のために来院され見学することや体験学習も可能です。 研究について現在行われている研究について教えてください。ホームページには、C型慢性肝疾患の発表資料は掲載されていますが、それ以外の情報がありません。他に何の研究を行っているのか教えてください。(医学部5年)炎症性腸疾患に関しては、基礎研究・臨床研究を含め多くの様々な研究を行なっています。その主な研究は:遺伝子工学技術を応用した細菌分析法により潰瘍性大腸炎・クローン病患者における腸内細菌叢変動の分析、その研究法を応用したprobioticsとsynbioticsの治療効果の解析、顆粒球吸着除去療法における有効性発現機序の解明、潰瘍性大腸炎病態形成と顆粒球機能異常の関連性、抗TNF-α抗体測定キットの開発、炎症性腸疾患患者抗TNF-α抗体製剤二次無効発現機序の解明、クローン病におけるre-set therapyの開発、免疫抑制剤至適投与法の開発、サイトメガロウイルス腸炎の診断と治療、新規内視鏡画像診断法の開発などを実施しています。その他、肝臓癌・膵臓癌に対する多剤併用カクテル療法の開発、肝炎・肝硬変に対するインターフェロン療法の開発なども行なっています。小児潰瘍性大腸炎記事拝見しました。毎日100人ほどの診察、恐れ入ります。外来患者のうち、小児潰瘍性大腸炎の患者さんはどの位いるのでしょうか?最近は小児潰瘍性大腸炎が増えてきたと聞くのですが、やはり増加傾向にあるのでしょうか?実際に診療されている先生の感覚値をお聞きしたく思います。私自身は内科医で小児科が専門ではありませんので、特段に潰瘍性大腸炎小児患者を多く診ているわけではありません。しかし、近隣の病院から小学生高学年以上の中学生・高校生で潰瘍性大腸炎・クローン病と診断された場合に私のところへ紹介されてくる場合が多いようです。最近では、以前に比べそのような若年者潰瘍性大腸炎患者さんの紹介率が増加傾向にあると感じています。以前には詳細な統計が存在していなかったようですが、最近炎症性腸疾患を専門にしている小児科の先生達が集計した全国統計では、小児潰瘍性大腸炎患者数は近年増加傾向にあり、重症化・難治化しやすい特徴があると報告されています。潰瘍性大腸炎罹患後の瘢痕症例は24歳男性。12年前潰瘍性大腸炎に罹患し、ステロイドパルスなどの治療を受け、現在は緩解。内服薬も必要としない。2年前のCFで、罹患時の影響か(?)5cmくらいの線状の瘢痕を認めた。この部分は将来、悪性化の可能性が他の部分に較べて高くなるのでしょうか。よろしくお願い致します。重症の潰瘍性大腸炎では、治癒寛解後も強い炎症部位に一致して瘢痕が残る場合があります。そのような部位が完全に瘢痕化したままで再燃を生じない限り、癌化の心配は通常はありません。潰瘍性大腸炎に関連した大腸癌の発生は、慢性的炎症が持続する結果として癌化を生じることが推測されています。従って、瘢痕化した部位は通常炎症が全く消失していますので特段に癌化の恐れはありません。潰瘍性大腸炎と他の腸炎との鑑別、治療方針について30代女性が粘血便で外来受診し、大腸内視鏡検査実施、所見としては盲腸と直腸にやや易出血性の発赤した粘膜があり、数か所を生検しました。病理診断は潰瘍性大腸炎の寛解期に矛盾しないがUCとの確定診断はできずとのことでした。ペンタサの投与で患者さんの症状は一旦軽減しましたが、ペンタサを中止して半年後くらいから、時に粘血便があり、なんとなく腹がすっきりしないとの訴えです。下痢はなく著名な下血はありません。再度CF生検でもUCの寛解期に矛盾せずとの診断です。現在、ペンタサを再度処方して様子を見ております。特に悪化するわけではありませんが、すっきりと良くなるわけでもなく、診断もはっきりせず、対応に苦慮しております。今後どのような方針あるいは検査、治療で臨めばよいのかご教示いただけるとありがたくよろしくお願いいします。実際の大腸内視鏡写真がないので明確なお答えは困難ですが、文面から推測すると直腸炎型潰瘍性大腸炎と診断されます。直腸炎型では盲腸にも同時に炎症所見を伴うことがよく観察されますので、潰瘍性大腸炎としては矛盾がありません。潰瘍性大腸炎では多くの患者さんが寛解後も再燃を繰り返しますので、症状が改善しても直ぐに服用は中止せずそのまま継続することが望まれます。直腸炎型でペンタサ服用によっても改善を認めない場合には、ペンタサ注腸剤の併用をお勧めいたします。ペンタサ剤の特性として病変部位に直接到達作用する必要があり、直腸炎型では注腸剤によるペンタサあるいはステロイド剤の直接的注入法が内服に比べ副作用が少なく有効性をさらに発揮してくれる可能性があります。潰瘍性大腸炎の食事私は管理栄養士です。先日潰瘍性大腸炎の患者さんから「生寿司を食べたい」の質問を受けました。潰瘍性大腸炎の症状にもよると思いますが時節がらノロウィルスの流行している時期であり、ノロウィルスに感染し下痢をすることは潰瘍性大腸炎にとって好ましくないと考えます。果物、大根おろし等は生で食べてもおかずになるものは原則加熱して食べることが必要と考えますがいかがでしょうか。アドバイスを頂きたく投稿しました。潰瘍性大腸炎の患者さんが、ウイルス細菌感染による各種感染性腸炎や抗生剤・消炎鎮痛剤服用に伴う薬剤性腸炎の発症に注意することは、病状の再燃予防には重要であります。しかし、通常の感染予防・衛生管理を怠らなければ必要以上に過剰な食事管理をすることが医学的な意味を持つとは思えません。本来生で食することが可能である、新鮮で衛生的な食材であれば、加熱など必要ないと考えます。個々の患者・個々の病状に応じて適切な食事指導を実施すべきであり、科学的根拠のない画一的食事指導は人生の大事な要素である食の楽しみを奪いストレスを誘引してむしろマイナスになることを肝に銘じるべきです。潰瘍性大腸炎の合併症について潰瘍性大腸炎を発症3ヶ月で大腸の全摘出を受けた患者さん術後、膵炎を発症されたとのこと医師からは潰瘍性大腸炎の合併症で免疫性の膵炎だろうと診断されたとのことです現在は症状も治まっており、ときおりある自覚症状にフオイパンの服用をしているとのことでしたただ、膵炎が悪化した場合はステロイドを再開する必要がでてくるかもしれないと医師より言われているそうですせっかく大腸を全摘出しステロイドを中止することができたのにまた服用しなければならないのかと心配されています大腸を全摘出しても合併症は軽減されないのでしょうかまた、膵炎が悪化した場合の治療方法について伺えれば幸いですよろしくお願いいたします通常は膵炎を含めた様々な潰瘍性大腸炎の腸管外合併症は大腸全摘術によって改善するものですが、稀に大腸全摘術後に発症する場合もあります。その様な場合は、発現している症状・臓器に応じ限定した治療法も考慮されますが一般的にはステロイド剤を中心にした全身的治療薬の投与が必要となってきます。そして、ステロイド剤投与を避けたい場合には代わりに免疫抑制剤・免疫調節薬投与が有効性を発揮します。今回の場合、仮にフォイパンを服用しているにも関わらず自己免疫性膵炎が悪化しステロイド剤投与を避けたいとお考えであれば、主治医と相談し免疫抑制剤治療をご考慮してはいかがでしょうか。総括炎症性腸疾患は多彩な病像を形成する複雑な疾患群です。画一的にならず個々の患者さんの病状・病態を的確に判断し、適切な判断に基づいたきめ細かな医療の実践が望まれます。最近、炎症性腸疾患に関する情報が氾濫し一部には不適切な情報も含まれて患者さんに誤解を生んでいます。炎症性腸疾患における診療レベルは近年、著しいスピードで進化しています。我々主治医は勿論、薬剤師・看護師や栄養士といった患者さんに関わる全ての医療人は、科学的根拠に基づいた正確な情報を患者さんに対して迅速に適切に開示する努力を怠ってはなりません。教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

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携帯電話のショートメールサービスのサポートで患者のアウトカムが改善

ケニアのHIV感染患者を対象とした無作為化試験で、患者に携帯電話のショートメールサービス(SMS)を使ったサポート介入を行ったところ、非介入群と比べ抗レトロウイルス治療(ART)のアドヒアランスおよびウイルス抑制の割合が改善されたことが報告された。ケニア・ナイロビ大学医療微生物学部門のRichard T Lester氏らが実施報告したもので、「医療資源が不十分な環境で、携帯電話は患者のアウトカムを改善する効果的なツールとなる可能性がある」と結論している。Lancet誌2010年11月27日(オンライン版2010年11月9日号)掲載より。週1回メッセージを送信、12ヵ月間の介入効果を検証医療サービス提供を改善する手段として携帯電話が提案されているが、医療資源が不十分な環境で、携帯電話が患者のアウトカムにもたらす効果に関するデータは限られているという。そこでLester氏らはケニアで、医療従事者とARTを開始する患者との携帯電話を介したコミュニケーションが、服薬アドヒアランスおよび血漿HIV-1 RNA量を改善するかを目的とする、多施設共同無作為化試験「WelTel Kenya1」を行った。試験は2007年5月~2008年10月の間に、ケニアの3つのクリニックで行われ、538例の患者が、SMS介入群(273例)か通常ケア群(265例)に無作為化された。SMS介入群の患者には、週1回、クリニックのナースからメッセージが送信され、患者は48時間以内に返信をすることになっていた。主要評価項目は、追跡12ヵ月時点での、自己申告によるARTアドヒアランス(追跡6ヵ月と12ヵ月時点で尋ねた過去30日間の処方薬の服薬割合が95%超)、血漿HIV-1 RNA量の抑制(<400コピー/mL)とした。アドヒアランス、ウイルス抑制ともに改善ARTアドヒアランスは、SMS介入群では168/273例、通常ケア群では132/265例が報告され、非アドヒアランスの相対リスクは0.81(95%信頼区間:0.69~0.94、p=0.006)だった。ウイルス抑制は、SMS介入群では156/273例、通常ケア群では128/265例が報告され、ウイルス学的な治療失敗の相対リスクは0.84(同:0.71~0.99、p=0.04)だった。95%超のアドヒアランス達成に要する治療数(NNT)は9例(95%信頼区間:5.0~29.5)であり、ウイルス抑制についての同NNTは11例(同:5.8~227.3)だった。

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今後の対策のため2009新型インフルの小児死亡例を解析:英国保健省

英国保健省のNabihah Sachedina氏らは、今後の新型インフルエンザ(H1N1ウイルス)対策のため、昨シーズンの小児死亡例についての解析を行った。背景には、0~18歳の新型インフルの罹患に関してバラつきがみられたことがある。Lancet誌2010年11月27日号(オンライン版2010年10月27日号)掲載より。小児(0~17歳)の全死亡70例を解析解析は、2009年6月26日~2010年3月22日に英国で報告された新型インフルに関する小児(0~17歳)の全死亡70例(平均年齢7歳)について行われた。いずれもデイリーレポートシステムによって報告され、カルテとの照合が行われた症例であり、新型インフル感染のラボ報告もしくは死亡診断書がある症例だった。症例個々の病歴、症状、急性疾患の臨床経過はそれぞれの担当医から提供されており、新型インフルと推定された症例のデータは英国健康保護局(Health Protection Agency:HPA)から入手された。主要評価項目は、集団死亡率と致死率だった。死亡率は1歳未満児で最も高い結果、昨シーズンの小児死亡率は、100万あたり6例だった。死亡率は、1歳未満児で最も高く、100万あたり14例だった。死亡率は人種間で異なる傾向がみられ、英国白人小児の100万あたり4例(95%信頼区間:3~6)に比べ、バングラデシュ系小児(同47例、17~103)とパキスタン系小児(同36例、18~64)で高かった。死亡した小児のうち15例(21%)は、新型インフルに感染する前は健康児だった。一方で、45例(64%)は、慢性神経学的、胃腸系、呼吸器系など重度な疾患を有していた。なかでも、慢性神経学的疾患を有する子どもの年齢標準化死亡率が最も高く、100万あたり1,536例だった。また、入院中の死亡例は19例(27%)だった。これらは、退院後に死亡した例よりも、健康的で既存疾患もごく軽症であることが有意に認められた(p=0.0109)。なお、オセルタミビル(商品名:タミフル)を投与されていたのは全体で45例(64%)で、症状発症から48時間以内に投与を受けていたのは7例だった。これら解析結果を受け、Sachedina氏は、「ワクチン接種は、重症疾患および死亡リスクの高い小児に優先して行わなくてはならない。これら小児には、特定の既存疾患を有する子どもやいくつかの少数民族の子どもも対象に含まれる。また、入院前早期からのサポート的また治療的ケアも重要である」と報告をまとめている。

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HIV感染者への腎移植、課題は優れた免疫抑制薬の開発

欧米の末期腎不全(ESRD)患者の約1%はHIV感染者であるなど、HIV感染者にESRDが増加しており、そうした患者にも腎移植が期待されるようになっている。しかし、HIV感染者への腎移植や免疫抑制のアウトカムについては十分には明らかになっていない。そこで米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のPeter G. Stock氏らの研究グループが、腎移植を希望するHIV感染者を対象に、安全性と有効性について多施設共同の前向き非無作為化試験を行った。NEJM誌2010年11月18日号掲載より。HIV感染レシピエント150例を中央値1.7年追跡試験は、抗レトロウイルス療法が安定しており、CD4+T細胞数が≧200個/mm3、血漿HIV1型(HIV-1)RNAが検出されないHIV感染者の腎移植希望者を対象とした。被験者は移植後、あらかじめ決められた試験プロトコルに従い、日和見感染に対する予防処置、生検処置、許容可能な範囲での免疫抑制療法、拒絶反応に対する管理、抗レトロウイルス療法などの移植後管理が行われ追跡された。被験者は2003年11月~2009年6月の間に、米国19施設で腎移植を受け生存した150例で、期間中央値1.7年間追跡された。生存率・生着率は高い移植後1年、3年時点の患者生存率(±SD)は、それぞれ94.6±2.0%、88.2±3.8%であり、平均生着率はそれぞれ90.4%、73.7%であった。これらの割合は、65歳以上の高齢腎移植レシピエントまたは全腎移植レシピエントに関する結果が集約されている全米データベース(SRTR)に報告されている結果の範囲内のものだった。多変量比例ハザード解析の結果、graft lossのリスク増加は、拒絶反応が起きて治療を受けた患者(ハザード比:2.8、95%信頼区間:1.2~6.6、P=0.02)、抗胸腺細胞グロブリン導入療法を受けた患者(同:2.5、1.1~5.6、P=0.03)で認められ、生体腎移植の場合は、保護効果が認められた(同:0.2、0.04~0.8、P=0.02)。拒絶反応は、予想以上に高率で観察された。推定値で1年時点31%(95%信頼区間:24~40)、3年時点41%(同:32~52)であった。HIV感染状態についてはコントロールが良好で、CD4+T細胞数は安定しており、HIV関連の合併症もほとんど認められなかった。Stock氏は、「慎重に選別したHIV感染集団における腎移植は、術後1年、3年時点の生存率および生着率ともに高く、HIV感染に関連する合併症の増加もみられなかった。しかし、拒絶反応が予想以上に高く重大な懸念事項であり、より優れた免疫抑制薬の開発が必要であることが示された」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

1951年東京都生まれ。76年北里大学医学部卒業。81年同大皮膚科助手、84年同大皮膚科講師兼医局長。91年横浜労災病院皮膚科部長。2007年より現職。日本皮膚科学会専門医・代議員、日本アレルギー学会専門医・指導医・代議員、日本皮膚悪性腫瘍学会評議員他。皮膚科医に求められるもの人と話すことが好きな私は、本当は神経内科医になりたかったのですが、師匠である教授との出会いがきっかけで皮膚科医を選択しました。教授が「向井君、この患者さんはγ-GTP100だよ」と、手や皮膚の状態を見ただけで内臓のことまで言い当てたのです。皮膚科医としての知識を元に視診で内臓までを診てしまう。私はそこに魅力を感じたのです。皮膚疾患は目に見える症状がほとんどのため、そこから発生する患者さんの精神的ストレスは深刻な問題となっています。したがって、皮膚科医には患者さんのメンタルをケアすることも重要な治療の一つなのです。その点からみても、話好きな私にはとてもよい選択だったと考えています。「皮膚科は死なないからいいよね」と言われることがありますが、決してそうではありません。病としての生き死にではなく、病状による精神的苦痛で自殺してしまうケースもあります。だからこそ、精神面でのサポートも考慮しつつケアしてあげるという心構えで、皮膚疾患を治していくことが常に求められているのです。たかが皮膚病ではなく、それに伴う精神的苦痛は個々によりレベルが違うもので測り知れません。今後も私はそこを踏まえた上での最善の治療を、皮膚科医として追求していきたいと考えています。患者さんと医師の信頼関係を構築する間違った情報を鵜呑みにしてステロイドへの偏見を持ち、薬を処方通りに使わなかったり、誤った民間療法に頼ったり、医師との信頼関係を築けないまま治療にも専念できない患者さんもいます。その結果、かえって症状を悪化させているケースも少なくありません。東邦大学ではアトピー性皮膚炎の思い切った治療として、入院をすすめています。これは、仕事などで忙しくて毎日のスキンケアがままならず、症状が悪化して不眠状態になっている状態をクールダウンさせる意味もあります。皮膚炎が起こる原因の中には生活習慣や住環境も関わりますから、その点でも改善指導できますし、日常のストレスからの解放も期待できます。その上で、すべての治療をこちらに任せてもらい、ディスカッションしながら薬の塗り方、包帯の巻き方等まで、こまごまと指導できる利点があります。そうすれば患者さんは退院した後も、症状が悪化した場合には自分で処置することができるようになる。つまり、治療をしながら生活全般の教育指導もできるのが入院の利点です。将来的には、栄養士による食事指導も加えたいと考えています。ステロイドへの偏見をなくしたいステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。では、実際にアトピー性皮膚炎の入院患者さんに多量のステロイドを使用した場合、安全塗布量を超えると副腎機能に影響を与えるのかどうか、私は入院時と退院時の血液や尿を採取して調べました。驚いたことに、入院時のコルチゾール値は平均3.7μg/dLと正常値より明らかに低く、0.1μg/dL以下と極めて強く副腎機能が抑制されている患者さんは半数以上でした。つまり、入院を要するほどの患者さんは、ステロイド治療をする前に皮膚状態の悪化で、すでに副腎機能が強く抑制されていたのです。入院を要しない軽症例では抑制がかかっていないことから、副腎機能の抑制は重症度に起因するという新事実をみつけました。さらに、入院中大量のステロイドを使用したにもかかわらず、退院時のコルチゾール値は11.5μg/dLと正常化していました。入院中に皮膚状態を改善するために使用したステロイドの量は、臨床効果とともに漸減し薬効ランクも落としています。この治療法によって副腎機能に及ぼす副作用は認められず、安全性の高いものといえる結果となりました。同時に測定したACTH値も同様で、退院時には正常値に回復していました。入院での治療は皮膚症状を劇的に改善させるだけでなく、抑制されていた副腎・下垂体機能を大幅に正常化するという画期的なデータでした。しかし、なぜ副腎機能が抑制されてしまうのかはまだ不明で、これからの研究課題です。ホルモンが分泌されない原因のファクターとしては、ストレスや睡眠障害などが挙げられています。確かに来院した患者さんから「眠れなくて、体がだるくて、成績が落ちたり、仕事上でのミスが多くなったりして上司から怒られる。でも、睡眠薬を使うと寝坊してしまう」との意見が大半でした。ところが、入院することによってまず不眠が解消され、リラックスした精神状態になり、熟睡できた喜びを口にした患者さんが7割から8割を占めたのです。これによってインペアード・パフォーマンスも大きく改善されました。尋常性乾癬における最新治療乾癬に関しては劇的な治療薬ができました。これまで患者さんは、お風呂から出て、時間をかけて全身に薬を塗って、包帯を巻いて……という作業を毎日繰り返していました。患者さんの負担はかなり重いものでした。それが、TNF-α阻害薬が出てきたお陰で、今では注射1本で済んでしまう。患者さんのQOLは飛躍的に向上しました。これは大変画期的なことだと思います。私が東邦大学に来る前の病院で、5、6回入退院を繰り返している、30代の関節症性乾癬の男性がいました。それまで、できうる限りの治療を行ったのにもかかわらず、結局車椅子の生活を余儀なくされた患者さんです。TNF-α阻害薬が治験できるとなった時に、真っ先にその彼に声をかけました。しかし、彼には「これまで先生の言うことはすべて聞いてきたが、結局治らなかった。訳のわからない治療法で、もっと悪くなるかもしれない」と断られてしまいました。それでも私は1時間以上かけて説得しました。やっと彼を治せるかもしれない治療薬が出てきたからです。今、彼は杖で歩けるまで回復しています。少し前までは治せなかった難病も、今では治せてしまう。医学の進歩にはいつも驚かされます。ただし、このTNF-α阻害薬ですが、高い臨床効果の一方、免疫を抑えることにより副作用として細菌性肺炎や肺結核など重篤な感染症の発現が危惧されています。日本皮膚科学会では"TNF-α阻害薬の使用指針および安全対策マニュアル"を作成し、本薬の使用に際して、(1)乾癬の診断・治療や合併症対策に精通した皮膚科専門医が行うこと (2)副作用発現に留意して、定期的な検査および重篤な合併症に対して迅速な対応すなわち呼吸器内科や放射線医と密接な連携で対処すること、の2点を挙げていますので注意が必要です。私ども東邦大学大橋病院皮膚科はTNF-α阻害薬使用施設として正式に認定され、すでに2例の患者さんに治療を開始しております。病気の原因究明こそ臨床の醍醐味外来で若手医師に指導する時は「なぜこういう現象が起きたのか?」を自分の頭でよく考えさせるようにしています。単に病状や治療についての説明をするのではなく、なぜこの患者さんはこうなったのか、その"なぜ"を考えさせるようにしています。ありふれた皮膚病は、生活習慣に起因していることが多いのです。だからこそ患者さんのライフスタイルを知り、なぜそうなったのか? 原因となっているものは何か? を見極めないことには治療もできません。たとえば、道を歩いているだけなのに、急にアナフィラキシーショックを起こして倒れた人がいました。朝食にパンを食べて、その後に運動をする。満員電車の中でどっと汗をかいたらアナフィラキシーショックを起こして倒れた。ご飯ならば発作は起こらないのに、パンだとなぜだかショックを起こす。また、就寝時にアナフィラキシーショックを起こす例がありました。なぜか納豆を食べた日に限り、発作を起こしていました。いずれの方も発作を2、3回繰り返し、そのつど救急搬送されるのですが、病名どころか何が原因かさえわからない。前者は小麦アレルギーでした。小麦を食べて運動をする、抗炎症薬のアスピリンを服用する、飲酒、疲労、ストレスといったファクターが加わるとアナフィラキシーショックを起こす。また後者は、まだ10例ほどしか発見されていませんが、納豆アレルギーでした。納豆を食べて30分や1時間で症状が出れば誰でも納豆アレルギーとわかりますが、食べてから10何時間か経って就寝時に出てくるので、何が原因なのかわからなかった。実は納豆のネバネバ成分がアレルゲンをコーティングしているため、腸管からの吸収が遅れ、すぐには症状が出なかったのです。このような患者さんが今まで原因がわからず病院を転々としてきて、それを自分が究明できた時の喜びは大きいですね。臨床の面白さや醍醐味はそこにあると思います。また、最近の技術的進歩も著しいものがあります。これまで皮膚科領域で治療に難渋していた疾患が、上述した生物学的製剤のような画期的な薬剤の登場で治療できてしまう。虚血性壊死を起こした状態でも、皮膚や筋肉に注射して血管を新生する遺伝子治療もそろそろ世に出てくる。たとえば、糖尿病で足先がすでに壊死を起こしている場合、まず内科で糖尿病のコントロールを行い、皮膚科で外用療法をし、最終的には整形外科や形成外科で切断するのが主流となっていたのが、この遺伝子治療により血管を再生することによって指先を切断しなくても済むようなるというものです。これまで、難病といわれてきたものが、最新の治療によって難病ではなくなる時代に変わってきています。これからの皮膚科学は、ますます面白くなってくると思います。質問と回答を公開中!

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教授 向井秀樹先生の答え

アトピー性皮膚炎30年間悩まされています。昨年近医にてネオーラル処方され、症状改善し漸減中止しました。が、症状悪化しネオーラル再開(一回50mg一日2回)しました。この量でないと有効でないようで…飲み続けてもいいのでしょうか?皮膚の良い状態がこんなに楽なのもかと思い知り、ステロイドだろうが免疫抑制剤だろうが(副作用が多少あっても)なんでも使いたい!という思いです。 シクロスポリンは使用ガイドラインが出来ており、体重当たり3mg換算とされています。効果があれば12週間を1クールにして、最低2週間以上の休薬とあります。スタンダードな治療法として有用だと思います。但し、極めて重症度の高い方には中止が出来ない、再度内服するという方も少なくありません。さらに高価なお薬のため経済的にも再燃時のショックは大きいのは理解できます。文章からは十分に理解しているとは言えないかも知れませんが、ダラダラと服用しているより、2クール目&3クール目と繰り返すうちに症状が安定する場合も経験します。焦らず頑張って下さい。そして併用している外用剤ですが、内服していると痒くないからといって使用していない、使用量が大幅に減っていないことはありませんか? こんな高級品を使っているのです、今こそ徹底的に改善して寛解状態を得て元を取るぞ!という覚悟で頑張って下さい。そして、悪化時の原因を考え悪化要因の対処法などの工夫、アドバイスを貰うなどの積極性を出すこと!綺麗な肌を取り戻して下さい!発汗異常について手汗がひどく悩んでいる方がいます。来年4月から社会人になりますが事務関係で書類を触るのに用紙がくしゃくしゃになってしまい、仕事に支障がでてしまうのではないかと・・手術以外になにか方法がありませんか?漢方 刑芥蓮ぎょう湯を服用して様子を見ています。程度は個人差がありますが、お悩みのことと推察いたします。大学時代の友人がひどい汗かきで、いつもタオル持参で授業内容を記載していました。現在会って話をすると昔より良くなっているそうですが完治はしていないとのことです。一般的に自律神経を安定させる内服薬を飲み続け、汗を抑える塩化アルミニウム溶液を外用します。漢方薬を試されているようですが、防己黄耆湯や補中益気湯はお飲みになりましたでしょうか?漢方薬は一般的にすぐに効果がでる訳ではありません、最低1~2ヶ月間は内服してみて下さい。手術に関しては現在しない方向です。脇の下の交感神経を切断するは一時流行りました。確かに手の効果はありますが、背中や胸などが代償性に発汗するようになり患者さんの生活の質が低下するので行わない方が良いようと思います。専門に手術する施設が増えましたが、医療問題にまで発展し陰が薄くなりました。発汗を専門とする施設は少ないですが、東京医科歯科大学皮膚科には専門外来があります。塩化アルミニウム溶液を器械で皮膚に導入するイオントフォレーシス法を行っており、それなりの有用性を報告しています。機会があれば受診してみて下さい。まずは、一般初診を受診して専門外来にまわしてくれるそうです。研究分野について東邦大学大橋病院での研究分野について教えてください。どのような研究をされているのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、「研究について」のページを見ても、「爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討」しかなかったので、もう少し情報を頂きたく思います。(後期研修先を探している研修医です)大橋皮膚科はアトピー性皮膚炎の治療を専門にしております。1~2週間の入院療法は、短期間で急速&確実に改善する方法を言えます。しかし、入院期間に多量に使用する極めて強いステロイド外用剤の副腎機能に関する影響に関して、明らかな文献は見当たりません。そこで、入院前後の血中コルチゾール値を測定してみました。その結果は予想に反して、重症例では入院前のステロイド外用量と関係がなく血中コルチゾール値は大幅に低下。この変化は不可逆性で退院時には上昇して正常値に戻るという結果が得られました。そこで次に、血中ACTHや1日尿中コルチゾール値を測定しました。両者とも同様の推移を呈することより、皮疹の重症度に相関して不可逆性の副腎機能抑制状態が生じていることを昨年11月の日本皮膚科学会誌に報告いたしました。これから入院する患者さんにもその結果をお話して、入院で使用するステロイドの安全性を強調する共に検査し確認を取る旨を了承して頂いております。なお、このデータは昨年の第26回日本臨床皮膚科学会で金賞そして学内の柴田奨学助成金をめでたく選考授賞&授与することが出来ました。次に、この入院期間の前後で治療効果を判定できる"短期的な治療マーカー検査"を検討し、昨年日本アレルギー学会で発表しました。皮膚の改善やかゆみの程度で患者さんは退院を希望されます。明らかな検査データを示し改善度を示すことは疾患の理解を更に深めると思います。大橋皮膚科で行っている入院療法の有用性を評価するために、患者さんを対象にしたアンケート調査を行いこの2月に行なわれる東京支部学術大会で発表します。今年度からは重症例に多くみられる睡眠障害に関して研究を始めます。激しい痒みに伴うものと基礎にある心因反応に伴うものに大別できます。そこで、入院前後の睡眠障害を詳細に分析しその違いを見つけ、後者の人に関しては早期に入眠剤や心療内科的アプローチを検討します。さらに、外来患者にも行い重症度の違い、罹患率など調査していく予定です。ホームページにある"爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討"は、日本真菌学会および国際学会で報告したので掲載したものです。動物モデルを使って、爪に感染後の経過を臨床面と爪の病理組織像を同時に立体的に観察した興味あるデータです。近く真菌専門の英文誌に掲載されますので、機会があればご一読下さい。この他に、帯状疱疹後の神経痛に関する薬剤間の比較、各種皮膚良性腫瘍におけるダーモスコープ所見の検討、炭酸ガスレーザーを用いた難治性皮膚疾患の治療の試みなどいろいろと考えて行っています。化粧品会社や製薬会社の研究所とも連携して研究し、その成果を順次発表しております。大橋皮膚科では目の前にいる患者さんの疾患をみて、その病態を考えどのようなアプローチをすべきか、解明のための臨床研究を積極的に行っています。珍しい疾患の解明ばかりでなく、ありふれた疾患の新しい考え方や治療法なども発信できればと思っています。やる気のある方は大歓迎です、是非とも来て下さい。アトピー性皮膚炎、診断のコツ研修中なので基本的な質問ですみません。アトピー性皮膚炎の診断について、治療ガイドラインの診断基準を見ながら勉強しているのですが、確信を持って診断を下すことができません。診断間違ってステロイドを処方すると悪化する症例もあるので、少し怖くなっています。今は当然ながら自分一人で診察をして診断を下すわけではないのですが、皮膚科を目指しているので、どうにかしたいです。診断のコツや、先生がどのように勉強されてきたか?などアドバイスいただけると幸いです。難しい問題だと思います。でも専門とする私でも治療&診断ガイドラインは講演のときに使う程度で診療の際に見ることはありません。患者さんを見れば検査をしなくとも100%診断が付きます。皮膚科の醍醐味とはそういうもので、見たことがある、本で読んだ、学会で聞いたなどで診断が出来るのです。要するに、長年たくさんの患者さんを見ることで感じ覚えていくのだと思います。とくにアトピーの難しさは年齢によって皮膚症状の好発部位や臨床像も変化します。時期ごとに出やすい部位、臨床像を整理して覚え、鑑別疾患を挙げその違いを頭の中で除外していく必要性があります。アトピー素因の有無は必要です、そして皮膚所見が有用で湿疹病変と分かってもかぶれもありますし,自家感作性皮膚炎や皮脂減少性皮膚炎もあります。年齢や部位などが役立ちます。血清IgEや各種アレルゲン特異抗体価も診断に有用です。症例をたくさん見て、いろいろな鑑別疾患を整理して頭の中に入れることが重要です。疑問があれば上級医を呼んで,診断の決め手や考え方を教えてもらうのも良いと思います。重症のアトピーとして治療していたら皮膚リンフォーマという事例もあります、皮膚生検も時として有用です。よく見てよく考え疾患の特性を理解して下さい。患者さんを診て、患者さんから教えられる、学ぶものです。民間療法との戦いについて皮膚の疾患、特にアトピーなどは民間療法が多くて困っています。全てを否定するわけではないですが、処方した薬を使わなくなったり、通院しなくなったりするので(大体症状が悪化して戻ってきますが…)かなり厄介です。先生も当然同じような状況かと思います。先生のこれまでのご経験から「このように民間療法と戦っている!」「こんな説明をすると有効だ!」というものがあれば是非ご伝授いただきたく思っております。宜しくお願いします。日本皮膚科学会の努力もあり民間療法は20年前に比べるとかなり淘汰された感はあります。随分日常診療でその対策と説明に苦労させられて来ましたし、重症で入院を要する患者さんの半数以上が民間療法経験者でした。皮膚科医以外の医師や医療関係者が行っている場合が多いようです。患者自身が現在の治療法に不満を抱いているのは事実だと思います。頭ごなしに否定することなく、ゆっくり時間を掛けて話をする・聞くことを心掛けています。どうしてもしたいと言ってくるものに関しては、現在の治療を中止せず併用することや部分使用を認めています。専門家の私が冷静に判断してその効果を認めるなら、継続すべきだし、効果が見えない場合にこだわって皮膚が悪化することは避けたいと話します。ただ、使用しているステロイド剤の副作用を強調して中止を強要し高額な治療費を請求するものは絶対的に反対します。ステロイド治療に不満や不安が強い人が多いので、ステロイドの使用法や安全性を十分説明する必要はあると思います。いずれにせよ、本人は悩んでの事ですから、頭ごなしに叱らない、救済方法を残すやり方で指導しております。 電子付加治療は効きますか?患者より、アトピー性疾患治療として電子付加治療というものがあると聞きました。私も調べてみたのですが、日本アトピー治療学会という聞きなれない学会が推奨しているようです。一見理にかなっているようには見えるのですが、実際のところ如何なものでしょうか?もし電子付加治療について何かご存知でしたらご教示お願いします。残念ながら実態は良く分かりません。私の外来では慢性かつ難治性の重症例が多く受診されますが、受診前の治療法としても電子付加治療は初耳です。アトピー性皮膚炎の治療&診断ガイドラインにも電子付加治療などは記載されていません。日本アトピー治療学会と実にもっともそうなネーミングですが、所属会員がどれほどいるのか?我々のような皮膚科専門医、アレルギー専門医や指導医がいるのか疑問です。これでは質問のお返事とはなりません。丁度インフルエンザAに罹患して自宅待機の身ですので、ホームページをしっかりと拝見しました。基本的におかしいのがアトピーの原因を酸化アレルゲンとして一つに括っていることだと思います。この論理はアトピー性皮膚炎診療&治療ガイドラインをご一読されればすぐ分かります。どこにも記載されている言葉ではありません。アトピーの発生機序は、最近北大皮膚科が皮膚の角層に日本特有のフィラグリン遺伝子多型を30%の症例に発見以来、バリア機能の破綻が発症の第一要因とされました。これに伴い、環境にいるダニやハウスダストが経皮的に侵入してアレルギー炎症が生じるのです。但し乳児は卵など食事の関与が強い時期ですし、年齢的&季節的にアレルゲンや増悪因子は変化します。また最近ではフィラグリン遺伝子多型がなく血清IgE値が正常&主に金属アレルギー関与が示唆される内因性という概念も出ていますし、現代人が抱える心理的なストレスも大きな要因の一つです。またいくつかの要因が複雑に絡み合い病態を複雑にしています。酸化が皮膚の老化以外に種々の炎症を起こすことは知られています。同じ論理で四国の方では活性酸素の除去を目的とした外用剤や内服を行っています。理論は同じで酸素の毒を取り除くというもので、当初大した効果はありませんでした。そこでステロイドを外用剤に混ぜるようになりました。アトピーの機序はすでにお話したように実に複雑で、単に酸素の毒を抑えられても寛解できるか疑問です。理論とシェーマと治療前後の臨床写真だけで基礎的な実験データがありません。ところで、以前中国で何にもよく効く漢方薬がネット上で評判になり日本のアトピー患者も購入者が続発しました。とにかくステロイド張りのすごい臨床効果なのです。そこで成分を調査したところ、何と最強のステロイドが入っていたのです。われわれ専門家でも滅多に使用しない最強のステロイド入りとは驚きです。本当に良い薬は正式に承認され薬価が付きます、新薬の欲しい薬品会社がほっとくわけはありません。入院療法の期間アトピー性皮膚炎に対する治療として「入院療法」が紹介されていましたが、入院期間はどの程度必要なのでしょうか?全国で少数ですが入院療法を当科のように展開しているところはあります。ばらばらで決まり残念ながらありません。治療ガイドラインをみても、マニュアル通りの治療で効果のない場合は入院とありますが期間に関する記載はありません。以前私のいた横浜労災病院では徹底的に良くなるまで入院させました。全国から多数の患者さんが来られたので皮膚症状や検査所見の改善、試験外泊で悪化症状のなしを目安にしたところ平均26.5日という入院期間でした。入院後のアンケート結果をみると、退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は93.3%で極めて高く、不変や悪化例はいません。また、調査時の皮膚症状に関しても88.1%と高率に症状が改善維持できていることが判明しました。一方で10%の患者さんが入院期間の長さを指摘、33.3%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。確かに仕事を持つ社会人が1ヶ月近く休むということは問題ですし、家庭を任された主婦そして通学、受験や試験などの問題を抱えた学生にとって長すぎます。そこで、東邦大学に来てからは2週間を原則に致しました。1週間で徹底的に皮膚症状を抑え、残りの1週間で安定化を図る。退院後しばらく頑張ればコントロールできると考えたからです。その結果は2月の東京支部学術大会で発表します。退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は92%で極めて高く、調査時の皮膚症状に関しても76%の方が改善維持できていました。一方で9%の患者さんが入院期間の長さを指摘、43%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。重症度や対象患者の遠距離度が異なるかも知れませんが、平均年齢は30歳代と同様でした。やはり2週間でも患者さんにとって長すぎるのかもしれません。そこで次の裏付けデータをもとに1週間に減らしています。そのデータとは、質問3でお答えした入院前後で血中のコルチゾール値を測定した結果を参考にしました。重症度と血中コルチゾール値が相関するなら、入院時に正常値以下まで低下したものが何日入院すると正常値に戻るのか?入院期間と血中のコルチゾール値の推移で計算すると4.8日という値が出ました。そこで、約1週間の入院期間で一過性の副腎機能低下状態は改善できると判断しました。現在、極めて治しにくい重症度の極めて高い皮膚症状を有する例を除き、1週間の入院を基本として初診患者に説明しております。TNF-α阻害薬について乾癬の患者さんがTNF-α阻害薬での治療に興味をもっております。乾癬であれば全て有効なのでしょうか?また、感染症の発現が危惧されると聞きましたが、大橋病院さんではどのような体制で望んでいるのでしょうか?差し支えなければ、これまでの成績も含めて教えていただけると大変参考になります。この治療はどこの施設でも自由に行える訳ではありません。副作用として重要な感染症に対して、診療体制のとれる呼吸器内科医や放射線医の常勤が必要で、皮膚科学会に正式に申請してTNF-α阻害薬使用施設として認定される必要があります。TNF-α阻害薬は2種類あり、多少適応疾患が異なります。詳細は大橋病院皮膚科のホームページを参考にして頂くと役立ちます。本剤の副作用の最も多いのが感染症です。潜在的に持っている、感染しやすいものを発症させます。日本は結核が多く、治験段階で最も危惧されたところです。ところが、しっかりとした体制が奏功したのか肺結核はおらず、細菌性肺炎が見られています。致死的な副作用は今のところありません。勿論、私どもの症例も毎回診察していますが副作用はありません。対象は、重症、難治性&治療抵抗性の乾癬および関節症性乾癬の患者さんです。罹患部位が全身で外用剤のみでコントロール不良な症例、ネオーラルやチガソンの内服でも不安定ないしその薬剤の副作用で中止した例、関節症状のコントロール不良例、さらにステロイド外用剤による局所の副作用が生じている例などです。今後あちこちの施設から有用性のデータが報告されると思いますが、有用率90%は全国の諸施設で行った治験結果の驚異的な数字です。私の経験でとくに驚いたのが、関節症性乾癬の患者さん達です。その効果は患者さんのQOL向上に素晴らしいものです。但し、最大の難点が支払い額の高さです。高額療養費制度を用いて医療費が還付されますが、それでも負担金は極めて高く、投与前に概算を示し了解を得ないと継続した治療が受けられなくなります。また、今後判明してくると思いますが予後が問題です。投与中は良いのですが、中止できるのか再燃しやすいのか、検討課題だと思います。また新薬も開発中で楽しみです。ステロイドの安全塗布量、参考文献先生の記事を拝見して「ステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。」ということを初めて知りました。大変びっくりしています。ステロイドの安全塗布量について他に参考になる文献等がありましたらご教示お願いします。本においてステロイド(ス)外用剤は1953年から登場し、現在までに30種類以上の外用剤が開発。薬効の強さから上位からI~V群の5つに分類され使用されています。幅広い皮膚疾患に有効で、従来まで治療法のなかった疾病の治療薬として大いに役立ったことは事実です。全身皮膚が障害し多量の外用を必要とする症例の中で、Cushing様症状、骨粗しょう症や小児の発育遅延など極めて少ない確率ですが起こることが判明。多量にス外用剤を使用例が突然中止すると、皮疹悪化以外に発熱、悪寒、悪心、嘔吐などの全身症状を呈するものを離脱反応、これは一種の副腎クリーゼの状態です。質問5でお答えした民間療法が横行した時期に、ス外用剤を中止してこの反応を起こしQOLが大幅に悪化、私どもの病院に入院した症例を数多く経験しました。外用を再開し症状を改善させました。全身的な副作用を知るには、主に視床下部-下垂体-副腎皮質機能がどの程度抑制されるのかをチェックします。日常で処方される外用量、成人で10~30g/週程度では抑制は起こりません。この全身的な副作用に関しては1960~1970年代に精力的に研究されたのですが、それ以降はほとんど行われていません。薬効ランクⅢ群(リンデロン)を成人入院に1日30g、幼小児に1日13gと大量塗布した結果。1.副腎皮疹機能は一過性に生じるが、中止後1~2日で回復。2.症例によっては継続中でも抑制が回復。その理由は、皮膚が改善して経皮吸収率が低下する。3.密封療法を行うと経皮吸収率が高まり、臨床効果も上がるが抑制は顕著となる。4.小児では成人より抑制は起こりやすいので強い薬効ランクのものは控える。また、外用方法として1日5~10gで開始し、症状に合わせて漸減し3ヶ月間使用しても、一過性&可逆性の抑制は生じても不可逆性の抑制は生じないとされています。私どもの入院を要する重症例では1日12gも投与しましたが、抑制例は2例と少なくしかも正常範囲内で何ら身体的にも問題は起きませんでした。それどころが、正常値以下に抑制された症例の多くが逆に正常に復したという事実は大きな驚きでした。十分な診察もせず漫然と使い続けるのではなく、メリとハリの要領で使用量や部位別に上手に使うことが大切です。最近外来で勧めているのがプロアクティブ治療です。適切な薬剤で十分量の使用で寛解状態を作り、その後すぐに休薬するのではなく、週2回は外用することで再燃効果を大幅に減少することが出来ます。何も全身同時に開始することはありません。顔からでも、腕からでも良くなった場所はスタートO.K !眼に見えない副作用に怯えることなく、上手に使うことが重要なのです。尋常性ざ瘡(にきび)の食事療法について最近、20~30代の女性の患者様から肌に関するちょっとした質問を受けます。医者なので、ある程度はアドバイスしてあげたいのですが、尋常性ざ瘡の方の食事に気をつけることや最近の新しい治療の動向を、他科医師として知っておくべき事はありますでしょうか?御教示よろしくお願いします。一般的によく言われていることですが、甘いものや脂っこいものは避けるべきです。スナック菓子も同様です。ただ、肌に良くないからといって全部やめようと話しても難しいと思います。食べる回数や量を減らすことが大切です。また女性には生理があります。ホルモンバランスの変化する生理前に悪化する例が多く、イライラする精神的なストレス以外にヤケ食いや飲酒など食生活が悪化要因の場合があります。ディフェリンと言う新しいにきび用の外用薬が発売されています。効果は従来品のアクアチムクリームやダラシンゲルより期待出来ます。但し、皮膚のカサツキがでる場合がありますので注意して下さい。基本的なこととして、入浴時の洗顔が大切です。オイリー肌用の石鹸で十分に洗うこと、とくにベタツク&症状の強い部位は2度洗いを勧めます。入浴後、ご自身の肌にあった化粧水を塗るとかさつきは予防できますが、べたつくクリームやローションは毛穴をつぶしてしまうので禁止です。難治性の症例には、このほかピーリングが行なわれています。毛穴が詰まって角質の溜まった白ニキビや炎症の強い赤ニキビに有効です。自費診療になりますが、皮膚科専門医で行なっている施設は少なくありません。総括いろいろとご質問を頂き感謝しております。話すのは自信が多少あるのですが、文章では相手の理解度が伝わりません。また質問があれば聞いて下さい。実は私が大橋病院ホームページ委員会の責任者なのですが、機械音痴と雑用が多く皮膚科ホームページの更新が遅れ気味なのです。時間があるときに更新いたしますので、時々見て下さい。研修希望者に:どんどん大橋皮膚科を見学に来て下さい。大橋病院は歴史的な作りで驚くかもしれませんが、アットホームな環境で仲良く頑張っています。教える体制はしっかりしています。何をしたいのかをはっきり明示してそれが努力に値する仕事なら全面的にサポートします。ただ、まず皮膚科医としての基本を覚えなければいけません。皮膚科は奥が深く、自己完結型の科と言えます。ある程度オールラウンドの皮膚科医を目指し、その上で疑問、難問の解決を同時進行で行うと臨床が100倍楽しくなります。教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

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