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今年はどうなる?抗インフルエンザ薬

QLifeは18日、同社が行った調査『抗インフルエンザウイルス剤の処方動向調査2011』の結果を発表した。昨シーズンに抗インフルエンザイウルス剤を処方した全国の医師にアンケートを行い、内科・小児科を中心とする505人から回答を得た。今年のインフルエンザは、厚生労働省からワクチン供給予定量が当初見込みより下回ることが発表された直後に、例年よりも早い流行入りの可能性がマスコミによって報道されていた。2009~2010年の新型インフルエンザ(A/H1N1)発生以降、インフルエンザ情報に対して敏感になっている人も多いため、医師は、受診した患者や家族に対してインフルエンザの正しい対処法を説明することがより重要になっている。ところが、医師の間でも耐性ウイルスに関しては情報・認識が錯綜しているのが現状だ。「耐性ウイルスが市中で広く流行しているとお考えですか」との設問に対して、「流行している」「流行していない」の両回答が21%と拮抗した。また増殖性、病原性についても、「耐性ウイルスの方が強い」が18%と、「通常のウイルスの方が強い」回答12%を上回る結果となった。昨シーズンに処方した抗ウイルス剤の比率をきいたところ、タミフルが57%と最も多く、次いでイナビル20%、リレンザ19%、ラピアクタ2%の順であった。今後の処方意向に関しても「対成人」「対10歳未満」の両方でタミフルが最も多く、リレンザは対成人と対10歳未満とで大きく異なる結果となった。また、自由回答コメントのなかには「必要ないと思われる場合でも、薬を強く希望する人が増えた」という医師からの回答もあった。詳細はプレスリリースへhttp://www.qlife.co.jp/news/2417.html

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ヘルスケア施設関連C. difficile感染と保菌、宿主因子と病原菌因子が異なる

 ヘルスケア施設関連での集団下痢症の主な原因であるClostridium difficile(C. difficile)感染症について、感染と保菌では、宿主因子および病原菌因子が異なることが明らかにされた。施設関連の同感染については、無症候でも保菌が認められる場合がある。カナダ・McGill大学ヘルスセンターのVivian G. Loo氏らが、カナダの6つの病院で15ヵ月間にわたり、C. difficile感染症患者と保菌患者の宿主因子および細菌因子の同定を行った前向き研究の結果、報告した。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。カナダ6病院で前向き研究研究グループは、2006年3月6日~2007年6月25日にわたり、カナダのケベック州とオンタリオ州にある6つの国立病院で15ヵ月間にわたる前向き研究を行った。対象病院の患者に関して、人口統計学的情報、既知のリスク因子、潜在的な交絡因子などの情報収集と、週1回の便検体または直腸スワブの収集を行い解析した。C. difficile分離株の遺伝子型の同定はパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)にて行い、C. difficile毒素AおよびBの血清抗体値測定なども行った。合計4,143例の患者の情報が収集され解析された。感染例2.8%、保菌例3.0%で、北米PFGE1型(NAP1)株は感染例では62.7%、保菌例36.1%ヘルスケア施設関連C. difficile感染例は117例(2.8%)、保菌例は123例(3.0%)だった。ヘルスケア施設関連C. difficile感染例は、「より高齢」「抗菌薬・PPI使用」と有意な関連が認められた。一方保菌例については、「以前に2ヵ月間入院したことがある」「化学療法・PPI・H2ブロッカーを使用」「毒素Bに対する抗体」が関連していた。また、北米PFGE1型(NAP1)株を有していたのは、感染例では62.7%であったが、保菌例では36.1%だった。(武藤まき:医療ライター)

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臓器移植レシピエントのがん発症リスクは2倍以上、最大は非ホジキンリンパ腫の7.5倍

臓器移植を受けた人(レシピエント)のがん発症リスクは、一般の人の2倍以上に増大することが明らかにされた。32種類のがんについてレシピエントの発症リスク増大が認められ、なかでも最も発症頻度が高かったのは非ホジキンリンパ腫で、発症リスクは約7.5倍に上った。米国国立がん研究所(NCI)のEric A. Engels氏らが、約18万人のレシピエントと、13州のがんに関する登録簿を調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月2日号で発表した。これまでの研究から、レシピエントは、免疫機能低下や臓器ウイルス感染が原因で、がんの発症リスクが増大することは知られていた。がん全体の標準化罹患比は2.10、過剰絶対リスクは10万人・年当たり719.3研究グループは、1987~2008年の米国移植レシピエントの登録簿「US Scientific Registry of Transplant Recipient」に登録された17万5,732人の臓器移植レシピエントを元に、多種のがん発症リスクについて分析した。同レシピエントのうち、腎臓が58.4%、肝臓が21.6%、心臓が10.0%、肺が4.0%だった。全体では、がんを発症したのは1万656人で、発症率は1,375人/10万人・年、標準化罹患比は2.10(95%信頼区間:2.06~2.14)、過剰絶対リスクは719.3/10万人・年(同:693.3~745.6)だった。肝臓移植後6ヵ月以内の肝臓がん発症リスクは500倍超なかでも、非ホジキンリンパ腫の発症頻度が最も高く、発症者数は1,504人、発症率は194.0/10万人・年、標準化罹患比は7.54(同:7.17~7.93)、過剰絶対リスクは168.3/10万人・年(同:158.6~178.4)だった。次いで頻度が高かったのは肺がんで、発症者数は1,344人、発症率は173.4/10万人・年、標準化罹患比は1.97(同:1.86~2.08)、過剰絶対リスクは85.3/10万人・年(同:76.2~94.8)。続いて肝臓がんで、発症者数は930人、発症率は120.0/10万人・年、標準化罹患比は11.56(同:10.83~12.33)、過剰絶対リスクは109.6/10万人・年(同:102.0~117.6)、腎臓がんの、発症者数752人、発症率は97.0/10万人・年、標準化罹患比は4.65(同:4.32~4.99)、過剰絶対リスクは76.1/10万人・年(同:69.3~83.3)だった。肺がんについては、肺移植レシピエントで最も発症リスクが高く標準化罹患比は6.13だったが、他の臓器移植レシピエントでも高く、心臓2.67、肝臓1.95、腎臓1.46であった。肝臓がんについては、肝移植レシピエントでのみ発症リスクが増大し、標準化罹患比は43.83、なかでも移植後6ヵ月の同リスクは著しく高く同比508.97に上った。術後10~15年のリスクも2倍以上に上った(標準化罹患比:2.22、95%信頼区間:1.57~3.04)。腎臓がんは、腎移植レシピエントで高く標準化罹患比は6.66で、その値は追跡期間中に上昇したり下降したりした。また肝移植レシピエント(同1.80)、心移植レシピエント(同2.90)でもリスク増大が認められた。

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プライマリ・ケア施設でのCD4ポイント・オブ・ケア検査、HIV陽性例の治療前追跡不能率が低下

HIV陽性例におけるCD4細胞検査を、検査施設ではなくプライマリ・ケアの現場でのポイント・オブ・ケア検査とすることで、患者登録後の迅速なCD4ステージングが可能となり、抗レトロウイルス療法開始前に追跡不能となる患者が減少したことが、モザンビークInstituto Nacional da SaúdeのIlesh V Jani氏らの調査で明らかとなった。低所得国では抗レトロウイルス療法開始前に追跡不能となるHIV陽性例が増加しており、治療普及上の課題となっている。追跡不能となった患者を見つけ出すことは困難で、費用がかかり、非効率的でもあるため、追跡不能の防止に焦点を当てた検討が進められている。Lancet誌2011年10月29日号(オンライン版2011年9月26日号)掲載の報告。治療導入前の患者保持を評価するコホート試験研究グループはアフリカ・モザンビークにおいて、CD4細胞のポイント・オブ・ケア検査が、免疫学的診断や治療導入の前に追跡不能となる患者の保持に及ぼす影響を検討する観察的コホート試験を行った。HIV治療およびCD4のポイント・オブ・ケア検査を行う4つのプライマリ・ケア施設の患者記録から、HIVの管理や抗レトロウイルス療法導入の登録データをレトロスペクティブに抽出した。治療導入前の準備段階における追跡不能率および準備期間を調査し、CD4ポイント・オブ・ケア検査開始前のベースラインのデータと比較した。治療前の追跡不能患者率が半分に低下CD4のステージングを完了する前に追跡不能となった患者の割合は、CD4ポイント・オブ・ケア検査導入前の57%(278/492例)から導入後は21%(92/437例)まで低下した(調整オッズ比:0.2、95%信頼区間:0.15~0.27)。抗レトロウイルス療法開始前の追跡不能患者率も、CD4ポイント・オブ・ケア検査導入前の64%(314/492例)から導入後には33%(142/437例)まで低下した(調整オッズ比:0.27、95%信頼区間:0.21~0.36)。抗レトロウイルス療法導入患者の登録率は、12%(57/492例)から22%(94/437例)へ上昇した(調整オッズ比:2.05、95%信頼区間:1.42~2.96)。登録から抗レトロウイルス療法導入までの期間(中央値)は、CD4ポイント・オブ・ケア検査導入の前後で48日から20日へと短縮しており(p<0.0001)、その主な理由はCD4ステージングに要する期間(中央値)が32日から3日まで低下したためであった(p<0.0001)。CD4ステージングから抗レトロウイルス療法開始までの期間における追跡不能患者率には有意な変化は認めなかった(調整オッズ比:0.84、95%信頼区間:0.49~1.45)。著者は、「CD4ポイント・オブ・ケア検査の導入により、患者登録後の診療所の現場における迅速なCD4ステージングが可能となり、治療前に追跡不能となる患者が減少した」と結論し、「CD4ポイント・オブ・ケア検査は治療前の追跡不能率の改善に有効な介入法となる可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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史上最多の患者報告数を更新―RSウイルス感染症 大流行の恐れ―

全国約3,000の小児科定点医療機関から報告されるRSウイルス感染症(Respiratory syncytial virus infection)の患者数が増え続けている。2011年の第42週(10月17日~23日)時点ですでに1,800例に迫り1)、この冬の大流行が現実になりつつある。RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスに感染することで発症する呼吸器感染症である。年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返し、特に乳幼児の場合は生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%が感染するとされ、細気管支炎や肺炎など下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす。例年、RSウイルス感染症の患者報告数は夏期に少なく、冬期にピークを迎える。しかし、2011年は夏ごろから例年を大きく上回るペースで増加し続け、2004年以降の同時期の報告数としては史上最多であり、現在こうした状況が第16週以降継続している(図)。第42週の都道府県別の報告数をみると、大阪府(130)、東京都(128)、愛知県(95)、北海道(90)、埼玉県(82)、福岡県(75)となっている。RSウイルス感染症は、乳幼児にとっては重症化すれば生命を奪われかねない、臨床的および公衆衛生的にきわめて重要な感染症である。今冬の大流行に備え、よりいっそうの注意が求められる。出典:1)IDWR(Infectious Diseases Weekly Report Japan)2011年第42週(10月17日~23日):通巻第13巻 第42号.(ケアネット 呉 晨)

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4価HPVワクチン、男性同性愛者の肛門上皮内腫瘍予防に有効

男性との性交渉を持つ男性のHPV感染関連の肛門上皮内腫瘍に対する、4価HPVワクチンの有効性と安全性を検討した試験の結果、グレード2または3の腫瘍の発生率低下が認められ、安全性プロファイルも良好であり、肛門がんリスクの低下に役立つ可能性が示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJoel M. Palefsky氏らが、ワクチンに関する大規模無作為化試験に参加した男性との性交渉を持つ男性602例についてサブ解析を行った結果、報告した。肛門がんは男女ともに増えており、特に男性との性交渉を持つ男性で増大している。HPV-16、-18を主としたHPV感染によって引き起こされる肛門がんは、先行して高度な(グレード2または3)肛門上皮内腫瘍が認められることから、本検討が行われた。NEJM誌2011年10月27日号掲載より。602例対象に有効性と安全性を検討対象となった602例は、7ヵ国(オーストラリア、ブラジル、カナダ、クロアチア、ドイツ、スペイン、米国)から参加した16~26歳の男性との性交渉を持つ男性で、無作為に4価ワクチンを受ける群とプラセボを受ける群に割り付けられ36ヵ月間追跡された。主要な有効性評価項目は、HPVの4つのウイルスタイプ(6、11、16、18)感染に関連した肛門上皮内腫瘍または肛門がんの予防とした。有効性に関する解析はintention-to-treatと、per-protocol有効性集団(フォローアップを完遂した432例、71.8%)にて行われた。有害事象の発生率についても文書化された。4価ワクチンタイプのHPV肛門持続感染リスク、59.4%低下4価ワクチンの有効率は、intention-to-treatでは50.3%(95%信頼区間:25.7~67.2)、per-protocol集団では77.5%(同:39.6~93.3)であった。HPVのタイプを問わない場合の有効率は、intention-to-treatでは25.7%(95%信頼区間:-1.1~45.6)、per-protocol集団では54.9%(同:8.4~79.1)であった。肛門上皮内腫瘍の発生率は、100人・年当たり、intention-to-treatではプラセボ群17.5に対しワクチン群13.0であった。per-protocol集団ではプラセボ群8.9、ワクチン群4.0だった。4タイプのHPV感染関連のグレード2または3の肛門上皮内腫瘍の発生率は、intention-to-treatでは54.2%(同:18.0~75.3)減少、per-protocol集団では74.9%(同:8.8~95.4)減少した。4タイプのHPVの肛門への持続感染リスクは、intention-to-treatでは59.4%(同:43.0~71.4)低下、per-protocol集団では94.9%(同:80.4~99.4)低下した。ワクチン関連の重篤な有害事象は報告されなかった。(武藤まき:医療ライター)

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RSウイルスはなぜ脅威となるのか

 RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、生体外でも長時間の感染力を保つ。通常は鼻炎などの上気道炎の原因となるが、乳児や高齢者が感染すると、下気道炎を発症させることが問題 RSウイルスの潜伏期間は2~8日、典型的には4~6日とされているが、咳嗽、鼻汁などの上気道症状が2~3日続いた後、感染が下気道に及ぶ。細気管支が狭くなるに従い、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などを呈するがあり、心肺に基礎疾患を有する児においては、しばしば遷延化、重症化し、喀痰の貯留により無気肺を起こしやすくなる。初期症状としては発熱が多くみられるが、入院時には38℃以下、もしくは消失していることが多い。 また、RSウイルス感染症は、乳幼児における肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるという報告もあるが、乳児期がRSウイルス感染症に罹患すると、喘鳴および喘息を発症するリスクが高くなることも報告されている。 2011年第1~39週のRSウイルス感染症患者累積報告数(38,041)における年齢群別割合をみると、0歳児42.1%(0~5ヵ月19.4%、6~11ヵ月22.6%)、1歳児32.6%、2歳児13.5%、3歳児6.4%、4歳児3.0%の順となっており、1歳児以下が全報告数の約70%以上を、3歳児以下が全報告数の90%以上を占めているのは、2004年以降変わっていない(図)1)。 RSウイルス感染症は乳幼児において重症化しやすいが、そのなかでも早産児の入院率は正期産児よりも大幅に高いことが知られている。その原因の一つとして、早産児は正期産児に比べ肺の発達が不完全なため、下気道感染症を発症すると無気肺などが生じやすくなることが挙げられる。また、もう一つの原因として、早産児は気管支が狭いため、RSウイルス感染によって細気管支の気道上皮に炎症や浮腫が発生したり、気道分泌が亢進したりすると、気道狭窄に発展しやすいことが挙げられる。さらに、母親からの移行抗体の濃度が正期産児に比べて大きく下回るため、早産児のRSウイルスに対する中和抗体を含むIgGの濃度が正期産児より低いことも原因の一つとなる。 RSウイルス感染症には、いまだワクチンや有効な治療法がないが、現在、重症化を抑制する唯一の薬剤として、RSウイルスに対し特異的な中和活性を示すモノクローナル抗体であるパリビズマブ(商品名:シナジス)が使用されている。その使用対象は以下のようになっている。1)在胎期間28週以下の早産で、12ヵ月齢以下の新生児及び乳児 2)在胎期間29週~35週の早産で、6ヵ月齢以下の新生児及び乳児3)過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児、乳児及び幼児4)24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、乳児及び幼児(パリビズマブ添付文書より)RSウイルス感染症には有効な治療法がなく、重症化した乳児に対しては酸素テントに収容するなどの対症療法を行うしかなく、乳幼児の感染予防は困難とされている。そのため、とくに重症化しやすい早産児に対しては、徹底した感染予防対策のほか、重症化の抑制も重要となる。出典:1)IDWR(Infectious Diseases Weekly Report Japan)2011年第39週:通巻第13巻 第39号.

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結核/HIV二重感染患者へのART療法開始時期 その1

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で結核感染が認められた二重感染患者について、抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期に関する試験結果が報告された。フランス・ビセートル病院(パリ)のFrancois-Xavier Blanc氏らCAMELIA試験グループによる本報告は、ART開始時期について抗結核療法開始2週後と8週後を比較したもので、2週後のほうが生存が有意に改善されたという。本報告の被験者のCD4+T細胞数中央値は25個/mm(3)だった。NEJM誌2011年10月20日号掲載報告より。カンボジアの5病院から被験者を募り、2週後開始vs. 8週後開始を検討CAMELIA(Cambodian Early versus Late Introduction of Antiretrovirals)試験グループは、カンボジアの5つの病院から被験者を募り、ART開始について抗結核療法開始2週後と8週後とを比較する多施設共同前向き無作為化非盲検優越性試験を行った。具体的には、2006年1月31日~2009年5月27日に被験者を募り、「新たに結核と診断されたCD4+T細胞数200個/mm(3)以下のARTを受けていないHIV患者では、ARTの開始時期が死亡率に有意な影響をもたらす」との仮説検証を目的とした。ART療法は、スタブジン+ラミブジン+エファビレンツの3剤併用療法だった。被験者は、結核の標準治療(6ヵ月間の抗結核療法)開始後、無作為に早期ART開始群(抗結核療法開始2週±4日後に開始)か待機的ART開始群(同8週±4日後に開始)に割り付けられ、生存を主要エンドポイントに追跡された。待機的ART群と比べた早期ART群の死亡リスクは0.62倍と有意に低下試験には661例(早期ART群332例、待機的ART群329例)が登録され、中央値25ヵ月間追跡された。被験者のCD4+T細胞数中央値は25個/mm(3)、ウイルス量中央値は5.64 log(10)コピー/mLだった。結果、各群の死亡は、早期ART群は59/332例(18%)だったのに対し、待機的ART群は90/329例(27%)で、早期ART群のハザード比0.62(95%信頼区間:0.44~0.86、P=0.006)と同群死亡リスクが有意に低かった。一方で、結核関連の免疫再構築症候群(IRIS)リスクは、早期ART群の有意な上昇が認められた(ハザード比:2.51、95%信頼区間:1.78~3.59、P<0.001)。また両群とも、CD4+T細胞数増大の中央値は114個/mm(3)であり、50週時点でウイルス量は患者の96.5%で検出されなくなっていた。(武藤まき:医療ライター)

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結核/HIV二重感染患者へのART療法開始時期 その2

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で結核感染が認められた二重感染患者について、抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期に関する試験結果が報告された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDiane V. Havlir氏らAIDS Clinical Trials Group Study A5221試験グループによる本報告は、ART開始時期について抗結核療法開始2週以内の早期開始群と同8~12週以内の待機的開始群とを比較したもので、AIDS疾患の新規発症率および死亡率に両群間で有意差は認められなかったという。被験者のCD4+T細胞数中央値は77個/mm(3)だった。なお試験では無作為化の際、CD4+T細胞数50個/mm(3)未満と50個/mm(3)以上とで階層化しての検討も行っており、その結果50個/mm(3)未満群においては早期開始群でのAIDS疾患の新規発症率および死亡率は有意な低下が認められたという。NEJM誌2011年10月20日号掲載報告より。ART開始について抗結核療法開始後2週以内開始vs. 8~12週開始を比較本試験は、2006年9月~2009年8月に4ヵ国26施設から被験者809例が登録されて行われた非盲検無作為化試験だった。被験者は、CD4+T細胞数250個/mm(3)以下の、ARTを受けていない、結核感染が確認または疑われる患者だった。被験者は、抗結核療法開始後、2週間以内にARTを開始する早期ART群と、同8~12週以内開始の待機的ART群に無作為化され追跡された。また無作為化に際し、被験者をCD4+T細胞数50個/mm(3)未満と50個/mm(3)以上とで階層化した。なおART療法は、エファビレンツ+エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシル フマル酸の併用療法だった。主要エンドポイントは、48週時点で生存および新規AIDS疾患の発症が認められなかった患者の割合とした。CD4+T細胞数50個/mm(3)未満群では早期ART群の生存が有意被験者809例の基線でのCD4+T細胞数中央値は77個/mm(3)、HIV-1 RNAウイルス量中央値は5.43 log(10)コピー/mLだった。48週時点までのAIDS疾患新規発症および死亡の発生率は、早期ART群12.9%、待機的ART群16.1%で、早期ART群の有意な低下は認められなかった(発生率差の95%信頼区間:-1.8~8.1、P=0.45)。しかしCD4+T細胞数50個/mm(3)未満の患者における同値は、早期ART群15.5%、待機的ART群26.6%で、早期ART群での有意な低下が認められた(同:1.5~20.5、P=0.02)。結核関連の免疫再構築症候群(IRIS)は、早期ART群のほうが待機的ART群より頻度が高かった(11%対5%、P=0.002)。ウイルス抑制率は48週時点で74%で、両群間の差はなかった(P=0.38)。(武藤まき:医療ライター)

3970.

MF59アジュバント不活化インフルエンザワクチン、乳幼児への有効性確認

新たなアジュバント製法によって開発された不活化インフルエンザワクチンについて、乳幼児に対する有効性が無作為化試験によって確認されたことが報告された。不活化インフルエンザワクチンは、乳幼児においては有効性が乏しいことが知られている。新たなアジュバントは水中油型乳剤のMF59で、成人用季節性インフルエンザに対する三価不活化インフルエンザワクチン(TIV)のアジュバントとして1997年以降27ヵ国で利用接種が承認されている。乳幼児に対する有効性を検討した無作為化試験は、2ヵ国2シーズンにわたって行われた。NEJM誌2011年10月13日号掲載報告より。アジュバントワクチン(ATIV)、非アジュバントワクチン(TIV)、対照群で無作為化試験乳幼児(生後6ヵ月以上72ヵ月未満)におけるMF59アジュバントの三価不活化インフルエンザワクチンの有効性に及ぼす影響について検討した試験は、2回のインフルエンザ流行期にわたり、2007~2008年シーズンにドイツ(654例)、2008~2009年シーズンにドイツ(2,104例)、フィンランド(1,949例)の、合計4,707例の健常児を対象に行われた。被験児は、MF59アジュバント添加ワクチン(ATIV)接種群、アジュバント非添加ワクチン(TIV)接種群、非インフルエンザワクチン接種(対照)群に無作為化され接種を受け、インフルエンザ様疾患に対する絶対効果と相対効果について評価された。インフルエンザ様疾患の確認はPCR法にて行われた。なお接種間隔・回数はいずれも、28日間隔の2回で行われ、またアジュバント用量は年齢(生後6~36ヵ月未満、36~72ヵ月未満)により調整がされた。インフルエンザ様疾患発症率、ATIV群0.7%、TIV群2.8%、対照群4.7%PCR法にて確認されたインフルエンザ様疾患の発症率は、2回の流行期を合わせて、ATIV群0.7%、TIV群2.8%、対照群4.7%であった。全インフルエンザ株110例中94例はワクチンと一致するH3N2ウイルスだった。それら(全インフルエンザ株)に対する絶対効果は、ATIV群86%(95%信頼区間:74~93)、TIV群43%(同:15~61)であり、ATIVのTIVに対する相対効果は75%(同:55~87)だった。対象年齢別にみた有効率は、ATIV群は、生後6~36ヵ月未満児群79%(同:55~90)、36~72ヵ月未満児群92%(同:77~97)であったが、TIV群はそれぞれ40%(同:-6~66)、45%(同:6~68)だった。抗体反応はATIVのほうが高く、その状態は181日目まで持続した。ATIVとTIVそれぞれの、全身反応・局所反応の発現率は、生後6~36ヵ月未満児群においては同程度であったが、36~72ヵ月未満児群では全身性イベントの頻度がATIV群では63%と、TIV群44%、対照群50%より高かった。重篤な有害事象は3群で同程度だった。(武藤まき:医療ライター)

3971.

新生児単純ヘルペスウイルス感染症への経口アシクロビルによる抑制療法

病変が中枢神経系に及んだ新生児単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症に対して、経口アシクロビル(商品名:ゾビラックスほか)の6ヵ月間にわたる抑制療法が、神経発達アウトカムを改善することが報告された。新生児単純HSV感染症の生存例では、神経発達のアウトカム不良や皮膚病変の再発が、容認できないほど高頻度にみられることから、米国・アラバマ大学小児学部門のDavid W. Kimberlin氏らが、経口アシクロビルによる抑制療法のアウトカムへの効果を検討した。NEJM誌2011年10月6日号掲載報告より。中枢神経系型と表在型それぞれに同一治療を行い有効性と長期安全性を評価試験は、治療は同一ながら対象を異にした2つの二重盲検プラセボ対照試験を並行して行う方法で検討された。HSV感染症が中枢神経系に及んだ新生児は第1試験に、皮膚・目・口腔のみの表在型発症の新生児は第2試験にそれぞれ登録された。治療は、まず非経口アシクロビルを中枢神経系型群は21日間、表在型群は14日間それぞれ投与完了後、ただちに、経口アシクロビル抑制療法(300mg/m2体表面積の経口投与を1日3回×6ヵ月間)を開始する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、有効性と長期使用の安全性について評価が行われた。なお皮膚病変再発時には、オープンラベルで治療が行われた。中枢神経系群では、アシクロビル抑制療法群はプラセボ群より有意にスコア上昇登録された新生児は、中枢神経系型群45例、表在型群29例の合計74例だった。中枢神経系型群45例中28例(62%)について、生後12ヵ月時点での新生児発達スコアのベイリー・スケール神経発達指数(スコア範囲:50~150、平均値100、それ以上のスコアは良好な神経発達アウトカムを示す)を評価した。共変量補正後の同指数は、アシクロビル抑制療法を受けるよう無作為に割り付けられた群は88.24で、プラセボに割り付けられた群68.12よりも有意にスコアが高かった(P=0.046)。なお全体的に、アシクロビル群のほうが、プラセボ群よりも好中球減少症を呈する傾向が認められた(P=0.09)。(武藤まき:医療ライター)

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腸管出血性大腸菌O104: H4感染による重度神経症状に免疫吸着療法が有効

腸管出血性大腸菌O104: H4感染に起因する溶血性尿毒症症候群(HUS)患者にみられる重篤な神経症状のレスキュー治療として免疫吸着療法が有効なことが、ドイツ、エルンスト・モーリッツ・アルント大学のAndreas Greinacher氏らの検討で明らかとなった。2011年5月の北ドイツ地方におけるShiga毒素産生性腸管出血性大腸菌O104: H4の感染拡大により、血漿交換療法や抗補体抗体(eculizumab)に反応しない腸炎後の溶血性尿毒症症候群や血栓性微小血管症が多発した。患者の中には、腸炎発症の1週間後に発現した重篤な神経学的合併症のために人工呼吸を要する者がおり、これは症状の発現機序に抗体が介在することを示唆するという。Lancet誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月5日号)掲載の報告。免疫吸着療法の有用性を評価するプロスペクティブな非対照試験研究グループは、大腸菌O104: H4感染に関連して重度神経症状がみられる患者に対する、レスキュー治療としての免疫吸着療法の有用性を評価するプロスペクティブな非対照試験を実施した。重篤な神経学的症状を呈し、大腸菌O104: H4感染が確認され、他の急性の細菌性感染症やプロカルシトニン値の上昇がみられない患者を対象とした。12Lの血漿量のIgG免疫吸着処置を2日間行った後、IgG補充(0.5g/kgの静脈内IgG投与)を実施した。連日、複合的神経症状スコア(低いほど良好)を算出し、免疫吸着療法前後の変化を評価した。12例中10例で神経症状、腎機能が完全回復初期症状として腸炎を発症したのち腎不全を来した12例が登録された。そのうち10例(83%)は、中央値8.0日(5~12日)までに腎代替療法を要した。神経学的合併症(患者の50%にせん妄、刺激感受性ミオクローヌス、失語、てんかん発作がみられた)の発症までの期間は中央値で8.0日(5~15日)であり、9例で人工呼吸を要した。免疫吸着療法開始の3日前の時点で3.0(SD 1.1、p=0.038)まで上昇した複合的神経症状スコアは、免疫吸着療法施行後3日目には1.0(SD 1.2、p=0.0006)まで改善した。人工呼吸を必要としなかった患者では、免疫吸着療法中に失語の消失など明らかな改善がみられた。人工呼吸を要した9例のうち5例は48時間以内に、2例は4日までに機器が外されたが、残る2例は呼吸障害のために人工呼吸が継続された。12例全例が生存し、10例は神経症状および腎機能が完全に回復した。著者は、「大腸菌O104: H4感染に起因する溶血性尿毒症症候群患者の重篤な神経症状の病因として抗体の関与が示唆される。免疫吸着療法は、これらの重篤な合併症を迅速に改善するレスキュー治療として安全に施行可能である」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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ロタウイルスワクチン導入後、5歳未満児の入院、医療コストが激減

米国で2006年から開始された、乳児への5価ロタウイルスワクチン(RV5;2、4、6ヵ月齢に経口投与が標準)の直接的、間接的ベネフィットについて、米国疾病管理予防センター(CDC)のJennifer E. Cortes氏らが調査を行った結果、導入後3年間で入院が推定で約6万5千件減少、医療コストは2億7,800万ドル削減と、いずれも激減したことが報告された。ワクチン導入時は、年間の下痢関連受診が約40万人、救急外来受診20万人、入院は5万5千件で、年間20~60人の5歳未満児が死亡しており、医療コストは年間3億ドルを要していたという。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。導入2年で、1歳未満児の接種率は73%調査は、MarketScanデータベースを使って、5歳未満児のRV5接種率および下痢関連の医療利用について、2007年7月~2009年6月と2001年7月~2006年6月とを比較して行われた。また、未接種児の下痢関連の医療利用の割合について、2008年と2009年それぞれの1~6月期とワクチン導入前とを比較し、間接的なベネフィットについて推定評価した。そして下痢関連の入院の全米的な減少数、およびコストについて外挿法で推定した。2008年12月31日時点で、少なくとも1回接種済みの1歳未満児は73%、1歳児は64%、2~4歳児は8%であった。ロタウイルス感染症入院、導入前と比べて導入2年目75%減、3年目60%減各年の5歳未満児の1万人・年当たりの下痢関連入院は、2001~2006年(導入前)52件、2007~2008年35件、2008~2009年39例となっており、2001~2006年と比べて相対的に、2007~2008は33%減少(95%信頼区間:31~35)、2008~2009年は25%減少(同:23~27)していた。同じく、ロタウイルス感染症と特定された入院は各年、14例、4例、6例で、75%減少(同:72~77)、60%減少(同:58~63)となっていた。2007~2009年で、入院6万4,855件減、医療費2億7,800万ドル減2008年と2009年それぞれ1~6月期の、相対的減少の接種児vs.未接種児の比較は、以下のとおりだった。下痢入院:44%(同:33~53)vs. 58%(同:52~64)、ロタウイルス感染症と診断入院:89%(同:79~94)vs. 89%(同:84~93)、下痢で救急外来受診:37%(同:31~43)vs. 48%(同:44~51)、下痢で外来受診:9%(同:6~11)vs. 12%(同:10~15)。未接種児の間接的なベネフィットは、2007~2008年は認められたが2008~2009年には認められなかった。一方で、2007~2009年の間に米国全体で、入院が推定6万4,855件減少、医療費は2億7,800万ドル削減したと推定された。(武藤まき:医療ライター)

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戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

1985年新潟大学医学部卒業。現在、廿日市記念病院リハビリテーション科勤務。2001年1月~2004年2月までアメリカ国立衛生研究所に勤務した際、線維筋痛症に出会い、日本の現状を知る。帰国後、線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群などの治療にあたっている。日本線維筋痛症学会評議員。著書に『線維筋痛症がわかる本』(主婦の友社)。線維筋痛症の現状先進国の線維筋痛症(fibromyalgia : FM)の有病率はわずか2%だが、グレーゾーンを含めると約20%になる。そのため、患者数が多いと予想される。また、先進国や少なくない非先進国ではFMは常識だが、日本ではまだよく知られていない。この疾患特有の愁訴を訴える患者さんを、プライマリ・ケア医や勤務医が診察する機会が多いと予測される。今回、FMの標準的な診療について、正しく理解していただくために診療のサマリーと診療スライドを公開させていただく。よりよい治療成績を求めることが臨床医の努めと考えているので、是非実践していただきたい。線維筋痛症の疫学・病態画像を拡大する腰痛症や肩こりから慢性局所痛症(chronic regional pain: CRP)や慢性広範痛症(chronic widespread pain: CWP)を経由してFMは発症するが、それまで通常10~20年かかる(図1)。FMの有病率は先進国では約2%、FMを含むCWPの有病率は約10%、CRPの有病率はCWPのそれの1-2倍である*1。FMの原因は不明だが、中枢神経の過敏状態(中枢性過敏)が原因であるという説が定説である*1。中枢性過敏によって起こった中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome)にはうつ病、不安障害、慢性疲労症候群、むずむず脚症候群などが含まれるが、FMはその代表的疾患である(図2)。画像を拡大する女性がFM患者の約8割を占める。未就学児にも発生するが、絶対数としては30歳代~60歳代が多数を占める。線維筋痛症の症状全身痛、しびれ、疲労感、感覚異常(過敏や鈍麻)、睡眠障害、記憶力や認知機能の障害などいわゆる不定愁訴を呈する。中枢性過敏症候群に含まれる疾患の合併が多い。痛みや感覚異常の分布は神経分布とは一致せず、痛みやしびれの範囲は移動する。天候が悪化する前や月経前後に症状がしばしば悪化する。症状の程度はCRP<CWP<FMとなる(図1)。線維筋痛症の検査・診断(2012年1月30日に内容を更新)画像を拡大する圧痛以外の他覚所見は通常存在せず、理学検査、血液検査、画像検査も通常正常である。従来はアメリカリウマチ学会(ACR)による1990年の分類基準(図3)が実質的に唯一の診断基準となっていたが、2010年(図4)*2と2011年*3に予備的診断基準が報告された。ACRが認めた2010年の基準は臨床基準であり、医師が問診する必要がある。ACRが現時点では認めていない2011年の基準は研究基準であり、医師の問診なしで患者の回答のみでも許容されるが、患者の自己診断に用いてはならない。2011年の基準は2010年の基準とほぼ同じであるが、「身体症状」が過去6カ月の頭痛、下腹部の痛みや痙攣、抑うつの3つになった。共に「痛みを説明できる他の疾患が存在しない」という条件がある*2、*3。1990年の分類基準は廃止ではなく、使用可能である*2、*3。CRPやCWPにFMと同じ治療を行う限り、FMの臨床基準には存在意義がほとんどない。どの診断基準がどのくらいの頻度で、どのように使用されるのかは現時点では不明である。画像を拡大する1990年の分類基準によると、身体5カ所、つまり、左半身、右半身、腰を含まない上半身、腰を含む下半身、体幹部(頚椎、前胸部、胸椎、腰部)に3カ月以上痛みがあり、18カ所の圧痛点を約4kgで圧迫して11カ所以上で患者が「痛い」といえば他にいかなる疾患が存在しても自動的にFMと診断される*1(図3)。つまり、圧痛以外の理学検査、血液検査、画像検査の結果は、診断基準にも除外基準にもならない。通常、身体5カ所に3カ月以上痛みがあれば広義のCWPと、CWPの基準を満たさないが腰痛症のみや肩こりのみより痛みの範囲が広い場合にはCRPと診断される。FMとは異なり他の疾患で症状が説明できる場合には、通常CRPやCWPとは診断されない。~~ ここまで2012年1月30日に内容を更新~~従来の基準を使う限り、FMには鑑別疾患は存在しないが、合併する疾患を見つけることは重要である。従来、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)、心因性疼痛、仮面うつ病と診断されたかなりの患者はCRP、CWP、FMに該当する。線維筋痛症の治療(2012年7月24日に内容を更新)画像を拡大する世界ではCWPに対して通常FMと同じ治療が行われており、CRPやCWPにFMと同じ治療を行うとFM以上の治療成績を得ることができる*1。FMの治療は肩こり、慢性腰痛症、慢性掻痒症、FM以外の慢性痛にもしばしば有効である。他の疾患を合併している場合、一方のみの治療をまず行うのか、両方の治療を同時に行うのかの判断は重要である。FMの治療の基本は薬物治療と非薬物治療の組み合わせである。非薬物治療には認知行動療法、有酸素運動、減量、禁煙(受動喫煙の回避を含む)、人工甘味料アスパルテームの摂取中止*4が含まれる(図5)。鍼の有効性の根拠は弱く高額であるため、週1回合計5回行っても一時的な効果のみであれば、中止するか一時的な効果しかないことを了解して継続すべきである。薬物治療の基本は一つずつ薬の効果を確認することである。一つの薬を少量から上限量まで漸増する必要がある。効果と副作用の両面から最適量を決定し、それでも不十分な鎮痛効果しか得られなければ次の薬を追加する。上限量を1-2週間投与しても無効であれば漸減中止すべきで、上限量を使用せず無効と判断してはならない。メタ解析や系統的総説により有効性が示された薬はアミトリプチリン〔トリプタノール〕、ミルナシプラン〔トレドミン〕、プレガバリン〔リリカ〕、デュロキセチン〔サインバルタ〕である*1、4。二重盲検法により有効性が示された薬はガバペンチン〔ガバペン〕、デキストロメトルファン〔メジコン〕、トラマドールとアセトアミノフェンの合剤〔トラムセット配合錠〕などである*1、4。ノルトリプチリン〔ノリトレン〕は体内で多くがアミトリプチリンに代謝され、有効性のエビデンスは低いが実際に使用すると有効例が多い。ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕、ラフチジン〔プロテカジン〕は対照群のない研究での有効性しか示されていないが、有効例が多く副作用が少ない。抗不安薬はFMに有効という証拠がないばかりか常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的で使用すべきではない*1、4。また、ステロイドが有効な疾患を合併しない限りステロイドはFMには有害無益である*1。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は通常無効であるが、個々の患者では有効なことがある。個々の薬物の有効性のレベルは文献*1、4を参照していただきたい。論文上の効果や副作用、私自身が経験した効果や副作用、費用の点を総合的に考慮した私の個人的な優先順位は〔ノイロトロピン〕、アミトリプチリン、デキストロメトルファン、ノリトレン、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、ミルナシプラン、ガバペンチン、デュロキセチン、プレガバリンである。これには科学的根拠はないが、薬物治療が単純になる。不都合があれば各医師が優先順位を変更すればよい。日本のガイドラインにも科学的根拠がないことはガイドラインに記載されている*5。筋付着部炎型にステロイドやサラゾスフファピリジン〔アザルフィジン〕が推奨されているが、それらはFMに有効なのではなくFMとは別の疾患に有効なのである。肺炎型FMに抗生物質を推奨することと同じである。線維筋痛症の治療成績画像を拡大する2007年4月の時点で3カ月以上私が治療を行った34人のFM患者のうち薬物を中止できた人は5人(15%)、痛みが7割以上改善した人が4人(12%)、痛みが1割以上7割未満改善した人が17人(50%)、不変・悪化の人が8人(24%)であった*1。CRPやCWPにFMとまったく同じ治療を行えば、有意差はないがFMよりはよい治療成績であった*1(図6)。※〔 〕内の名称は商品名です文献*1 戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.*2 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: The American College of Rheumatology preliminary diagnostic criteria for fibromyalgia and measurement of symptom severity. Arthritis Care Res (Hoboken) 62: 600-610, 2010. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20461783*3 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: Fibromyalgia Criteria and Severity Scales for Clinical and Epidemiological Studies: A Modification of the ACR Preliminary Diagnostic Criteria for Fibromyalgia. J Rheumatol 38: 1113-1122, 2011. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21285161*4 戸田克広: エビデンスに基づく薬物治療(海外の事例を含む). 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 93-105.*5 西岡久寿樹: 治療総論. 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 82-92.質問と回答を公開中!

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戸田克広 先生の答え

麻薬の使用法治療としていわゆる麻薬はどのような状況、症状の時に使うべきなのでしょうか。また、投与中止はどのようにおこなうべきでしょうか。非癌性慢性痛に麻薬を使用することは依存を引き起こすのではないかと危惧する意見があります。しかし、痛みがある患者さんに適切に使用する限りは、依存は起こらないと考えられています。後者の仮説には明確なデータはないため麻薬の使用は慎重におこなうべきです。しかし、適切な治療を1年以上おこなっても鎮痛効果が不十分な場合や、初診時に激烈な痛みがあり、自殺の恐れがある場合には麻薬を使用してもよいと思います。喫煙者などの物質依存者や約束を守らない人格と判断される場合には麻薬を使用しないことが望ましいと思います。モルヒネには「天井効果がないため上限量はない」という考えもありますが、「200mg / 日を超える場合にはさらに十分な評価が必要」という意見もあります。ペインクリニック専門医ではない場合には200mg / 日を超えるモルヒネは査定される可能性が高いという非公式の制度があるため注意が必要です。ブプレノルフィン、ペンタゾシンは使用すべきではありません。トラマドール塩酸塩〔トラムセット〕またはコデイン、モルヒネ、フェンタニル〔デュロテップパッチ〕の順で使用することが一般的です。モルヒネは薬価が高いため、1回量が20mgになれば薬価の安い散剤にした方が良いと思います。麻薬が有効な場合、その他に有効な薬を見つけて麻薬を減量または中止する努力が必要です。減量とは1回量の減量であって、投与間隔を延長してはいけません。モルヒネであれば1回量を2-4週間ごとに10mgずつ減量し、痛みが悪化すれば再び増量することが望ましいと思います。※〔 〕内の名称は商品名です 中枢性過敏についてこの概念と定義はどなたが提唱したものなのでしょう。概念をもう少し詳しくお聞かせください。御多忙中とは存じますが、どうぞ宜しくお願いいたします。Woolfが中枢性過敏(central sensitization: CS)を提唱しました。CSにはさまざまな定義があります。Woolfは「侵害受容刺激により中枢の侵害受容経路のシナプス効果と興奮性が長期間ではあるが可逆的に増加すること」と定義していますが、国際疼痛学会は「正常あるいは閾値下の求心性入力に対する中枢神経系内の侵害受容ニューロンの反応性の増加」と定義しています。私は次のように考えています。侵害受容性疼痛や末梢性神経障害性疼痛という痛み刺激のみならず、精神的ストレスなどの刺激が繰り返し脳に送られ続けると、中枢神経に機能障害が起こってしまいます。機能障害ではなく器質的障害なのかもしれませんが、現時点の医学レベルではよくわかっていません。中枢神経に機能障害が起こるとさまざまな刺激に対して過敏になり、痛みを感じない程度の刺激が中枢神経に入っても痛みを感じさせてしまいます。また、中枢神経に起こった機能障害の部位そのものが痛みなどの症状の原因になる、つまり機能障害の部位から痛みなどの情報が流れてしまうと推測しています。一方、Yunusが中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome: CSS)を提唱しました。CSSの主な原因はCSと推測されています。CSは主に痛みに関する理論ですが、CSSには痛みを主訴とするFM以外にも、慢性疲労症候群、異常感覚を主訴とするむずむず脚症候群、化学物質過敏症、うつ病、外傷後ストレス障害なども含まれます。CSSの代表疾患の一つがFMなのです。CSは日本でも知られていますが、CSSはFM以上に日本では知られていません。CSSに含まれる疾患は定まっていません。不安障害、皮膚掻痒症、機能性胃腸障害、更年期障害、慢性広範痛症、慢性局所痛症などもCSSに含まれると私は考えています。(日本医事新報No4553, 84-88, 2011)FMの症状について口の中が痛くて、硬いものがかめない症状や、下肢痛があり車や電車に乗ると悪化するような症状はFMに該当するでしょうか?口の症状はFMの症状です。FMでは身体のどこにでもアロジニア(通常痛みを引き起こさない程度の刺激により痛みが起こること)が起こります。口腔内にそれが起これば、硬いものをかめない症状が生じます。口の症状のみがある場合には舌痛症と診断すべきかもしれませんが、舌痛症はFMの部分症状と考えることも可能です。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化すると訴えるFM患者を私は知りませんが、FMの症状と考えても矛盾はありません。FMでは、歩行時より下肢を動かさない状態の時に痛みが強い場合が多いからです。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化する場合には、むずむず脚症候群の可能性もあります。むずむず脚症候群では歩行時よりも安静時に下肢のむずむず感が強くなるため、自動車や電車に乗るとそれが強くなる場合があります。むずむず感などの違和感を痛みと表現する患者さんもいます。FMとむずむず脚症候群はしばしば合併するため注意が必要です。者の性差について患者で女性が8割を占める理由について病態の解明は進んでおりますでしょうか。現在わかっている範囲でお教えください。FMの原因は脳の機能障害という説が定説ですが、厳密にはわかっていません。そのため、女性が8割を占める理由も当然わかっていません。FMの原因解明が進めば、その理由もわかるのではないかと期待しています。FMを含むFMよりも広い概念の慢性広範痛症においては双子を用いた研究により半分が遺伝要因、半分が環境要因と報告されています。性ホルモンはFMに影響を及ぼす要因の一つと考えられています。ただし、性ホルモンは遺伝子により大きな影響を受けるため、性ホルモンの差と遺伝子の差を厳密に区別することは困難です。なお、FM患者の中で女性と男性でどちらの症状が強いかに関しては、男女差はないという報告、女性の症状が強いという報告、男性の症状が強いという報告があり、何ともいえません。治療選択について非薬物療法を患者さんが選択し、希望する場合、一番効果的なものはどれでしょうか。先生の私見でも結構ですのでご教示願えますか。非薬物療法の中では禁煙、有酸素運動、認知行動療法、温熱療法、減量、患者教育が有用です。激しい受動喫煙を含めた喫煙者では、禁煙が一番有効と考えていますが、非喫煙者では有酸素運動が一番有効と考えています。患者本人の喫煙継続は論外ですが、間接受動喫煙防止のため配偶者には禁煙、その他の家族には屋外喫煙が必要です。有酸素運動は、技術や人手が不要、安価で、誰でもできるという長所があるため、非喫煙者では最も有効と考えています。散歩や水中歩行のみならずヨガ、太極拳も有効です。歩行すると痛みが悪化する人では、深呼吸で代用も可能です。安静が有効な場合もありますが、これは痛みが起こらない程度の安静を保つことを意味するのであって、過度な安静は逆に有害です。痛みに対する認知行動療法は、論文上有効なのですが、実際に何をすれば良いのかよくわからないこと、適切な治療を行う施設が少ないこと、費用が高いことが欠点です。欧米を中心にしたインターネットによる調査では約8%の人しか認知行動療法を受けておらず、患者さんが自己評価した有効性もあまりよくありませんでした。温熱療法には、温泉療法、温水中の訓練、遠赤外線サウナ、近赤外線の照射などが含まれます。FMは心因性疼痛ではなく、恐らく脳の機能障害が原因であろうことの説明や痛いときには無理をしないことの説明などが患者教育です。星状神経節ブロックを含む交感神経ブロックが有効という根拠はありません。対照群のない研究では鍼は有効なのですが、適切な対照群のある研究では鍼の有効性が証明されていません。交感神経ブロックも鍼も、5回行って一時的な鎮痛効果しかなければ、それ以上継続しても一時的な効果しかないと私は考えています。トリガーポイントブロックの長期成績は不明です。非薬物治療は組み合わせて行うことが望ましく、さらに言えば、非薬物治療は薬物治療と併用することが望ましいと報告されています。線維筋痛症の患者とうつ病同症の患者では精神疾患(特にうつ病)を併発されている方も多いと聞きます。その場合のケアと薬剤の処方のポイントについてご教示ください。抑うつ症状あるいはうつ病に痛みが合併した場合、痛みはうつ病の一症状であるという理論は捨てる必要があります。痛みと、抑うつや不安症状は対等の症状と見なすことが重要です。FMとうつ病(または不安障害)が合併した場合、当初はより重症な症状のみを治療することをお勧めします。一方の症状がある程度軽減した後に、他方の症状を治療した方が治療は容易です。抗うつ作用がまったくない薬で痛みが軽減しても、抑うつ症状が軽減することはありふれたことです。しかし、両症状とも強い場合には、両方を同時に治療せざるを得ないこともあります。その場合には抑うつ症状に対する治療と、痛みに対する治療は分けた方がよいと思います。SSRIと短期間の抗不安薬を抑うつ症状に対する治療と考え、その他の薬は痛みに対する治療と考えた方がよいと思います。三環系抗うつ薬とSNRIは抑うつにも痛みにも有効ですが、痛みのみに有効と見なし、抑うつがついでに軽減すれば「儲け物」という程度に考えた方がよいと思います。なお、三環系抗うつ薬では鎮痛効果を発揮する投与量より抗うつ効果を発揮する投与量の方が多いのですが、SNRIでは両効果を発揮する投与量は同程度です。SSRIも痛みに対する薬も通常漸増する必要があります。それらを同日投与や同日増量すると副作用が生じた場合に、原因薬物の特定が困難になる場合があります。そのため、投与開始や増量は少なくとも中2日は空けたほうがよいと思います。抗不安薬は、SSRIが抗うつ効果や抗不安効果を発揮するまでの一時しのぎとして抗不安薬を使用すべきです。抗不安薬を半年以上投薬する場合には、転倒や骨折の増加、運動機能の低下、理解力の低下、認知機能の低下、抑うつ症状の悪化、新たな骨粗鬆症の発症、女性での死亡率の増加を説明する必要があります。抗不安薬を半年以上使用すると常用量依存が起こりやすく、その場合中止が困難になります。薬物療法とガイドライン解説の中で薬物療法について「ガイドラインでは科学的根拠がない」と記されていますが、近々に発表される、または欧米のものが翻訳される見込みはございますか。教えていただける範囲でお願いします。「線維筋痛症のガイドライン」は、アメリカ、ドイツ、ヨーロッパ、カナダ、スペインから発表されています。日本語に翻訳されて発表される見込みは現在不明です。日本のガイドラインの改訂版は今後発表される予定ですが、いつになるのか未定です。アメリカ、ドイツ、ヨーロッパのガイドラインは各治療方法の有効性のエビデンスを記載しています。カナダのガイドラインはエッセイ様式です。スペインと日本のガイドラインはサブグループに分けています。スペインのガイドラインは修正デルフィ法(参加者の匿名のアンケートとそれに対する評価を繰り返し一つの結論を出す方法)によりGieseckeらの分類方法を採用しています。日本のガイドラインの最大の特徴はFMをサブグループに分けて、サブグループごとに治療方法を変える点です。世界では、FMのサブグループ分けは多くの研究者により行われています。痛み、抑うつ状態などのさまざまな指標により得られたデータによりサブグループ分けが行われていますが、報告により異なるサブグループに分けられています。ただし、日本のガイドラインに含まれる「筋付着部炎型」は私が知る限り、報告された分類方法のどのサブグループにも存在しません。また、前回と今回の日本のガイドラインでは同じサブグループの推奨薬物が異なっていますが、その変更の根拠が記載されていません。「分類の根拠、およびサブグループごとに推奨する薬物が異なる根拠は論文化されていない」由が、今回のガイドラインに記載されています。日本のガイドラインでは各執筆者は自分自身の執筆した部分のみに責任を持つことも特徴の一つです。睡眠薬との関連痛みがひどくて眠れない患者さんに睡眠薬を処方することもあるかと思います。その場合、注意する点などご教示ください。FMに限らず、痛みのために不眠の患者さんの睡眠改善目的にまず処方する薬は、睡眠薬ではなく鎮痛薬です。もちろん非ステロイド性抗炎症薬ではなく神経障害性疼痛に対する鎮痛薬です。鎮痛薬が主で、睡眠薬は従の関係です。当初は睡眠薬を処方せず、鎮痛薬を私は処方しています。三環系抗うつ薬、ガバペンチン〔ガバペン〕、プレガバリン〔リリカ〕は鎮痛効果が強い上に、眠気の副作用が強いのでその副作用を睡眠改善に使用することも可能です。しかし、眠気の副作用がほとんどないワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕やデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物〔メジコン〕により痛みが改善すれば、結果的に睡眠が改善することもあります。FMの不眠に有効な睡眠薬はゾピクロン〔アモバン〕、ゾルピデム酒石酸塩〔マイスリー〕ですが、副作用報告の少ないゾピクロンを私は優先使用しています。FMの睡眠障害に対して抗不安薬を使用することは避けるべきです。常用量依存を作りやすいからです。特に、作用時間が短く抗不安作用が強いため常用量依存を作りやすいエチゾラム〔デパス〕を睡眠薬として使用することは避けるべきです。※〔 〕内の名称は商品名です。日本での患者数わが国における患者の推定数はどのくらい見積もられておりますでしょうか、また、欧米の患者数、人種差、性差なども合わせてお教え下さい。日本における地域住民の有病率は約1.7%と報告されていますが、その報告には調査人数や具体的な調査方法が記載されていません。今後、科学的根拠の高い日本人の有病率が世界に知られることを期待しています。日本の病院敷地内での女性就労者の2.0%、男性就労者の0.5%がFMと報告されています。アジア、欧米を中心とした報告によるとFMの有病率は約2%、そのグレーゾーンの有病率は約20%と推測されます。圧痛点の数は経時的に変動することや論文上の有病率は一時点の有病率であることを考えると、真の有病率は約2%、日本では250万人程度のFM患者がいると推測しています。中国での有病率は0.05%という報告がありますが、調査方法や診断能力に原因があるのかもしれません。同一の研究チームが異人種を調べた研究は3つあり、ブラジル(非白人2.65%と白人2.26%)とイラン(Caucasians0.6%とトルコ人0.7%)では人種差がなく、マレーシア(マレー系1.19%、インド系2.58%、中国系0.33%)では人種差がありました。そのため有病率に人種差があるのかどうかは不明です。FM患者の約8割は女性であり、性比には大きな人種差はないようです。医師以外の関与線維筋痛症について、ナースやコメディカルが介入できる余地はありますでしょうか。例えば理学療法士がストレッチを指導する、ナースが話を聞くなどで患者の日常生活から改善していくなどです。その際の保険点数など参考になるものがございましたらご教示お願いします。薬物治療以外では、コメディカルが介入できる余地がたくさんあります。ただし、FMという病名では保険点数はつきません。理学療法士や作業療法士は、有酸素運動、筋力増強訓練、ストレッチ、水中訓練などを指導できます。しかし、FMなどの痛みを引き起こす疾患では保険点数は取れません。関節の変性疾患、関節の炎症性疾患、運動器不安定症などが合併していれば運動器リハビリテーション料を請求することができます。ナースが患者の話を聞いたり、患者の痛みや生活の質を評価するアンケートの記載方法の説明を行うことができます。ただし、ナースが患者の話を聞いても保険点数を請求できません。うつ病に対する認知行動療法に対して、厳しい条件はあるものの2010年から保険点数が取れるようになりました。しかし、FMなどの痛みに対する認知行動療法では保険点数を請求できません。総括FMが知られていない日本医学は世界の標準医学から大きく乖離しています。FM以上に中枢性過敏症候群は、日本では知られていません。FMのみならず中枢性過敏症候群を認めて世界の標準医学に追いつく必要があります。FMの治療はFMのみならずそのグレーゾーン、つまり人口の約20%に有効です。グレーゾーンにもFMの治療を行うのですから、臨床の観点ではFMの診断は厳密に行う必要はありません。心因性疼痛、仮面うつ病、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)と診断するより、FMやそのグレーゾーンと診断する方が、有効な治療方法が多いためほぼ間違いなく治療成績が向上します。異なる医学理論が衝突した場合には、「脚気論争」と同様に治療成績がよい医学理論を採用すべきです。自分が長年信じていた医学理論を捨てることは困難ですが、臨床医は自分が信じる医学理論を守ることより、よりよい治療成績を求めるべきです。戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

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COPD患者への増悪予防としてのアジスロマイシン

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への増悪予防を目的としたアジスロマイシン(AZM)投与は、急性増悪の頻度を減らしQOLを改善することが、プラセボ対照無作為化試験の結果、報告された。米国・コロラド大学デンバー健康科学センターのRichard K. Albert氏らCOPD Clinical Research Networkが、増悪リスクの高い特定の患者1,557例を対象に、標準治療に加えアジスロマイシン250mg/日を1年間投与した結果による。ただし、被験者の一部で聴覚障害が認められたという。NEJM誌2011年8月25日号掲載報告より。250mg/日を1年間投与COPDの急性増悪は、死亡リスクの上昇や肺機能の急速な低下はもとより、本人の労働機会を奪い、開業医やER受診、入院機会の頻度を増し治療コストを上昇させる。標準治療〔吸入ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬〕も頻度は減らすものの、なお年平均1.4回の急性増悪が認められることから、Albert氏らは、種々の炎症性気道疾患に有効なマクロライド系抗菌薬の予防的投与について検討した。試験対象となったのは、40歳以上のCOPDの増悪リスクは高いが、聴覚障害、安静時頻脈または補正QT間隔延長の著明なリスクはない患者であった。合計1,577例がスクリーニングを受け、うち1,142例(72%)が、標準治療に加えてアジスロマイシン250mg/日を1年間受ける群(570例)、または同プラセボを受ける群(572例)に無作為に割り付けられた。試験登録は2006年3月から始まり、1年間投与後2010年6月末まで追跡評価された。主要アウトカムは、初回急性増悪までの期間。副次アウトカムには、QOL、黄色ブドウ球菌や肺炎レンサ球菌などの鼻咽頭細菌コロニー形成、服薬アドヒアランスが含まれた。急性増悪の頻度減少、QOL改善も、一部患者で聴覚障害、耐性菌出現の影響は不明1年間の追跡調査を完了した患者は、アジスロマイシン群89%、プラセボ群90%であった。初回増悪までの期間の中央値は、アジスロマイシン群266日(95%信頼区間:227~313)に対して、プラセボ投与群は174日(同:143~215)で有意な延長が認められた(P

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ビフィズス菌「LKM512」摂取による寿命伸長効果を発見

協同乳業株式会社は17日、同社の松本光晴主任研究員らが、(独)農業・食品産業技術総合研究機構・生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出基礎的研究推進事業」の平成21年度課題「健康寿命伸長のための腸内ポリアミン濃度コントロール食品の開発」(研究代表者:同氏)の研究において、プロバイオティクス ビフィズス菌「LKM512」の摂取により、マウスの寿命伸長効果が得られることを発見したと発表した。今回の研究は、プロバイオティクスビフィズス菌「LKM512」を摂取し、腸内細菌にポリアミンを生成させることで、老年病の原因である慢性炎症を抑えることが可能になるという仮説を検証するために実施した。実験は、10ヶ月齢のマウス(ヒト換算:30-35歳)を用い、LKM512投与、ポリアミンの経口投与、生理食塩水との比較試験の形式で行った。その結果、LKM512は、大腸内のポリアミン濃度を上昇させることで、大腸バリア機能が維持され、抗炎症効果が得られ、寿命を伸長させることが明らかになった。一方、ポリアミンの経口投与でも一定の寿命伸長効果はあったものの、LKM512と比較すると弱いものだった。今回の研究成果は、カロリー制限以外の方法で、マウスの寿命伸長効果が得られることを証明した数少ない成果となっている。なお、同研究結果は、米国オンライン科学誌「PLoS ONE(プロスワン)」で8月17日に公開された。詳細はプレスリリースへhttp://www.meito.co.jp/press_144.htm

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インドでのロタウイルス自然感染防御効果の研究からわかったこと

ロタウイルス自然感染の防御効果について、ロタウイルス感染死者数が世界で最も多いと報告されているインドでコホート研究を行ったインド・キリスト教医科大学のBeryl P. Gladstone氏ら研究グループは、「アジアやアフリカで、ロタウイルスのワクチン効果が、なぜ予想よりも低いかを説明し得るか」について知見を得られたことを、NEJM誌2011年7月28日号で発表した。「インドでは早期感染、再発頻度が高く、ウイルスが多様であり、結果として、その他地域で報告されているよりも防御効果を低くしている」という。ロタウイルスの防御効果については、メキシコの出生コホート研究で、2度の連続自然感染により、その後に感染しても中等度~重度の下痢症状を完全に防御できるという報告が寄せられていた。Gladstone氏らは、その報告を踏まえて、インド(経口ワクチン効果が一般的に期待されるより低い)の出生コホートについて調査を行った。インドの都市部スラム街の小児373例を3年間追跡研究グループが対象としたのは、インド・Velloreの都市部のスラム街で生まれた小児で、出生後3年間、週2回往診して追跡した。追跡調査期間は2002年3月~2003年8月で、当初452例が登録され、追跡が完了したのは373例だった。調査は、便検体を2週間ごとに集め、酵素免疫測定(ELISA)法およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法でロタウイルス抗原を同定する検査が行われた。なお、下痢症状が認められる期間は2日ごとに便検体を集め検査が行われた。また、血清検体を6ヵ月ごとに採取し、セロコンバージョンの評価(IgG抗体価4倍上昇またはIgA抗体価3倍上昇と定義)が行われた。全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%結果、インドの都市部スラム街では、概して生まれて間もなくロタウイルスに感染している実態が明らかになった。生後6ヵ月までの感染率は56%だった。再感染率は高く、調査期間中の全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%だった。中等度~重度疾患に対する防御効果は、感染回数が増すごとに高まってはいたが、感染3回後も防御率は79%にとどまっていた。最もよくみられたウイルス株の遺伝子型はG1P[8](15.9%)で、G2P[4](13.6%)、G10P[11](8.7%)、G9P[8](7.2%)、G1P[4](4.4%)、G10P[4](1.7%)、G9P[4](1.5%)、G12P[6](1.1%)、G1P[6](0.6%)と続いた。同一タイプのウイルス株への初回、再感染リスクについて評価した結果、遺伝子型に基づく明らかな防御効果は認められなかった。これら結果を踏まえGladstone氏は最後に、「インドや同等の地域では、ロタウイルスワクチン戦略を見直すべきことを示す結果であった。投与量や回数を増加したり、ワクチン接種を早期に行う(たとえば新生児のうちの接種、あるいは母親への接種など)ことも考慮していく必要があるだろう」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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未治療HIV-1感染患者に対するrilpivirine、エファビレンツに非劣性、安全性良好(1):THRIVE試験

未治療のHIV-1感染成人患者に対するHIV治療薬として、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)rilpivirineが新たな治療オプションとなり得ることが示された。同一クラスのエファビレンツ(商品名:ストックリン)に対する非劣性を検討した第3相無作為化試験の結果による。本論は、米国・Community Research Initiative of New England(ボストン)のCalvin J Cohen氏らによる、全被験者がヌクレオシド系またはヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)レジメンも同時に受けていることを前提に行われた「THRIVE」試験の結果報告で、主要アウトカムとした48週時点でのrilpivirineの非劣性が認められ、安全性も良好であったという。Lancet誌2011年7月16日号掲載報告より。NRTIレジメンを受けた患者をrilpivirine群もしくはエファビレンツ群に無作為化THRIVE試験は、96週にわたる第3相無作為化二重盲検二重ダミー非劣性試験で、21ヵ国98医療施設から被験者を募って行われた。被験者は、18歳以上成人で抗レトロウイルス治療を受けたことがなく、スクリーニングで血漿ウイルス量5,000コピー/mL以上、NRTIに対するウイルス感度を有する患者とし、コンピュータシステムを使って1対1の割合で、rilpivirine群(25mgを1日1回)とエファビレンツ群(600mgを1日1回)に無作為化された。また全患者が、治験参加医師の選択により、いずれかのNRTIレジメン[テノホビル ジソプロキシルフマル酸(商品名:ビリアード)+エムトリシタビン(同:エムトリバ)、ジドブジン(同:レトロビル)+ラミブジン(同:エピビル)、アバカビル(同:ザイアジェン)+ラミブジン]を受けた。主要アウトカムは、全患者が治験薬を1回以上投与され反応が確認(ウイルス量<50コピー/mL、ウイルス学的失敗がintention-to-treat解析で確認)された48週時点の非劣性(ロジスティック回帰分析のマージン12%)とした。48週時点の有効性、rilpivirine群86%、エファビレンツ群82%2008年5月から947例がスクリーニングを受け、主要アウトカム検証のためにデータを打ち切った2010年1月までに340例が登録された。結果、1回以上投与での反応(ウイルス量<50コピー/mL)が認められたのはrilpivirine群86%(291/340例)、エファビレンツ群82%(276/338例)であり、両群差3.5%(95%信頼区間:1.7~8.8)でrilpivirine群の非劣性(p<0.0001)が認められた。基線から48週までのCD4細胞数増大は、両群でほぼ同等であった(rilpivirine群:189個/μL、エファビレンツ群:171個/μL、p=0.09)。一方、ウイルス学的失敗率はrilpivirine群7%、エファビレンツ群5%であった。投与中止となった有害事象の発生は、rilpivirine群4%、エファビレンツ群7%であった。治療関連のグレード2~4の有害事象は、rilpivirine群のほうが少なかった(rilpivirine群16%、エファビレンツ群31%、p<0.0001)。特に、発疹とめまいが少なかった(いずれもp<0.0001)。また、血漿脂質の増大が、エファビレンツ群に比べrilpivirine群のほうが有意に低かった(p<0.0001)。Cohen氏は、「ウイルス学的失敗はわずかに多かったが、rilpivirineはエファビレンツに比し、良好な安全性、有効性については非劣性であることが示され、未治療のHIV-1感染患者に対する新たな治療の選択肢と成り得るであろう」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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未治療HIV-1感染患者に対するrilpivirine、エファビレンツに非劣性、安全性良好(2):ECHO試験

未治療のHIV-1感染成人患者に対するHIV治療薬として、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)rilpivirineが新たな治療オプションとなり得ることが示された。同一クラスのエファビレンツ(商品名:ストックリン)に対する非劣性を検討した第3相無作為化試験の結果による。本論は、フランス・Paris Diderot大学Saint-Louis病院感染症部門のJean-Michel Molina氏らによる、全被験者がヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)レジメンのテノホビル ジソプロキシルフマル酸(商品名:ビリアード)+エムトリシタビン(同:エムトリバ)も同時に受けていることを前提に行われた「ECHO」試験の結果報告で、主要アウトカムとした48週時点でのrilpivirineの非劣性が認められ、安全性も良好であったという。Lancet誌2011年7月16日号掲載報告より。テノホビル +エムトリシタビン投与を受けた患者をrilpivirine群もしくはエファビレンツ群に無作為化ECHO試験は、96週にわたる第3相無作為化二重盲検二重ダミー実薬対照試験で、21ヵ国112医療施設から被験者を募って行われた。被験者は、18歳以上成人で抗レトロウイルス治療を受けたことがなく、スクリーニングで血漿ウイルス量5,000コピー/mL以上、全治験薬に対するウイルス感度を有する患者とし、コンピュータシステムを使って1対1の割合で、rilpivirine群(25mgを1日1回)とエファビレンツ群(600mgを1日1回)に無作為化された。また全患者に、テノホビル ジソプロキシルフマル酸+エムトリシタビンが投与された。主要アウトカムは、全患者が治験薬を1回以上投与され反応が確認(ウイルス量<50コピー/mL、ウイルス学的失敗がintention-to-treat解析で確認)された48週時点の非劣性(ロジスティック回帰分析のマージン12%)とした。48週時点の有効性の非劣性確認2008年4月から2011年1月までに948例がスクリーニングを受け、690例が登録、intention-to-treat解析された。結果、1回以上投与での反応(ウイルス量<50コピー/mL)が認められたのはrilpivirine群83%(287/346例)、エファビレンツ群83%(285/344例)であり、ロジスティック回帰分析モデルでの推定両群差は、rilpivirine群が-0.4%(95%信頼区間:-5.9~5.2)で非劣性(マージン:12%)が確認された。一方、ウイルス学的失敗率はrilpivirine群13%、エファビレンツ群6%であった。投与中止となった有害事象の発生は、rilpivirine群2%、エファビレンツ群8%であった。治療関連のグレード2~4の有害事象は、rilpivirine群のほうが少なかった(rilpivirine群16%、エファビレンツ群31%、p<0.0001)。エファビレンツ群では、発疹、めまい、異常な夢やナイトメアの頻度が高かった。また、血漿脂質の増大が、エファビレンツ群に比べrilpivirine群のほうが有意に低かった。Molina氏は、「rilpivirineはエファビレンツに比し、有効性について非劣性であることが示された。ウイルス学的失敗は高かったが、安全性と忍容性プロフィールはより良好であることが示された」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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