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第15回 治療編(1)薬物療法・その2【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第15回 治療編(1)薬物療法・その2前回は、主として末梢性疼痛に用いられる薬物療法について解説しましたが、今回は、末梢性神経障害性疼痛への除痛適応を持つ、新薬ミロガバリンとプレガバリン、そして比較的副作用の少ない鎮痛薬ノイロトロピンについて説明しましょう。表に神経障害性疼痛の原因になりうる疾患を示しております。この中でも、末梢性神経障害性疼痛の代表症例として、糖尿病性末梢神経障害性疼痛、帯状疱疹後神経痛、椎間板ヘルニアによる慢性疼痛が挙げられます。画像を拡大する(1)ミロガバリン<作用機序>神経前シナプスの電位依存性カルシウムイオン(Ca2+)チャネルから流入したCa2+により神経が興奮して、サブスタンスP、グルタミン酸、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)など、いわゆる神経伝達物質が放出されます。このCa2+チャネルにはいくつかのサブユニットで構成されておりますが、ミロガバリンはそのうちのでもα2δサブユニットに結合することによりCa2+チャネルの活動が抑制されることでCa2+の流入が低下します。その効果により、神経伝達物質の放出が抑制されて痛みが緩和されると考えられています。<投与上の注意>1日2回投与が基準です。2.5mg、5mg、10mg、15mg錠がありますが、基本的には5mgX2で開始しますが、患者さんが少しきついと感じられた時には2.5mgX2で開始し、副作用あるいは疼痛緩和効果が見られなければ、1~2週間ごとに10mgX2、15mgX2と漸増し、最終的には1日30mgまで投与します。副作用としては、傾眠、浮動性めまい、体重増加などがあります。高齢者では転倒・骨折の恐れがあるので、細心の注意が必要です。また、自動車運転などの機械操作は回避する必要があります。(2)プレガバリン<作用機序>前述のミロガバリンと同様の作用機序、鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>ミロガバリンと同様ですが、中枢性神経障害に対する適応も有しています。元はカプセル剤でしたが、和製でOD錠になりましたので、疼痛時にはそのまま服用できるのが魅力です。25、75、150mgOD錠があり、1日4回まで、最高600mgまで処方できます。副作用もミロガバリンと同様で、眠気には注意が必要です。眠前に服用するとよく眠れるようです。(3)ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)<作用機序>ノイロトロピンは、ワクシニアウイルスを摂取した家兎の炎症性皮膚組織から抽出した300種類以上非蛋白性生体活性物質を含んでおり、単一での効果成分は不明です。作用機序としては、下行性疼痛抑制系の活性化が考えられております。その他、抗炎症作用、興奮性神経ペプチドの放出の抑制、交感神経作用抑制、血流改善、神経保護作用などが推測されています。<投与上の注意>副作用には発疹、掻痒、悪心、眠気などが認められていますが、その発現頻度や重症度は極端に低いため、高齢者や長期療養者に対しても使いやすいことが特徴です。1日4錠(1錠4単位)を朝夕2回に分けて経口投与します。注射薬では1日1回1管を静脈内、筋肉内または皮下に注射します。以上、痛み治療の第1段階における薬物を取り上げ、その作用機序、投与における注意点などを述べさせていただきました。痛みの患者さんに接しておられる読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。1)花岡一雄. ペインクリニック. 2013; 34: 1227-12372)花岡一雄. ペインクリニック. 2011; 143: 441-4443)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S168

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COVID-19診療の手引きの改訂版を公開/厚生労働省

 5月18日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、全国の関係機関ならびに医療機関に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 2 版」を事務連絡として発出した。 同手引きの第1版は、3月17日に発出されているが、第2版となる改訂版では、国内外の最新知見を更新し、ページ数も約2倍となるなど、大幅に改訂されている。約3割の患者で嗅覚異常、味覚異常がある 追加された項目として「臨床像」では、「初期症状はインフルエンザや感冒に似ており、この時期にこれらとCOVID-19を区別することは困難である」とし、「嗅覚障害・味覚障害を訴える患者さんが多いことも分かってきた。イタリアからの報告によると約3割の患者で嗅覚異常または味覚異常があり、特に若年者、女性に多い」など追加の症状が述べられている。 「合併症」では、「若年患者であっても脳梗塞を起こした事例が報告されており、血栓症を合併する可能性が指摘されている。また、軽症患者として経過観察中に突然死を起こすことがあり、これも血栓症との関連が示唆される。小児では、川崎病様の症状を呈する事例もあることが欧米から報告されている」と血栓に関する注意も追加された。 「重症化マーカー」では、(1)D ダイマーの上昇、(2)CRP の上昇、(3)LDH の上昇、(4)フェリチンの上昇、(5)リンパ球の低下、(6)クレアチニンの上昇などが挙げられるが、「全体的な臨床像を重視して、臨床判断の一部として活用する必要がある」としている。 「薬物療法」では、「日本国内で入手できる適応薬」としてRNA合成酵素阻害薬 レムデシビル(2020 年5 月7日に特定薬事承認)を示すとともに、「日本国内で入手できる薬剤の適応外使用」として「RNA合成酵素阻害薬 ファビピラビル」「吸入ステロイド薬 シクレソニド」「蛋白質分解酵素阻害剤 ナファモスタット」「ヒト化抗IL-6 受容体モノクローナル抗体 トシリズマブ」「同 サリルマブ」を紹介している。目次 第2版1 病原体・臨床像伝播様式/臨床像/重症化マーカー/画像所見2 症例定義・診断・届出症例定義/病原体診断/抗原検査/抗体検査/届出3 重症度分類とマネジメント重症度分類/軽症/中等症/重症4 薬物療法5 院内感染対策個人防護具/換気/環境整備/廃棄物/患者寝具類の洗濯/食器の取り扱い/死後のケア/職員の健康管理/非常事態におけるN95マスクの例外的取扱い/非常事態におけるサージカルマスク、長袖ガウン、ゴーグルおよびフェイスシールドの例外的取扱い6 退院・生活指導退院等基準/生活指導引用・参考文献 診療の手引き検討委員会・作成班は「はじめに」で、「再流行のリスクもあり、予断を許しません。本手引きが広く医療現場で参考にされ、患者の予後改善と流行の制圧の一助となることを期待します」と活用を呼び掛けている。

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COVID-19治療薬「拙速な特例的承認」に懸念、日医有識者会議が緊急提言

 日本医師会COVID-19有識者会議は5月18日、「新型コロナウィルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言」と題し、有事といえども科学的根拠の不十分な候補薬を、治療薬として承認すべきでないとする旨の声明を発表した1)。 声明では、特別承認制度により5月7日付で国内初のCOVID-19治療薬となったレムデシビル(商品名:ベクルリー)の承認過程に言及。米国立衛生研究所アレルギー感染症研究所(NIH/NIAID)が主導し、日本からも登録参加した国際共同臨床試験(ACTT1試験)において、「周到な研究デザインのもとにレムデシビルの効果を証明」しており、「高いエビデンス・レベルでCOVID-19に対する有効性が確認された初めての薬剤」であると強調している。 一方で、治療薬候補として現在複数の薬剤が検討されているが、「有事だからエビデンスが不十分でも良い、ということには断じてならない」と指摘。「COVID-19のように、重症化例の一方で自然軽快もある未知の疾患を対象とする場合には、症例数の規模がある程度大きな臨床試験が必要」と提言している。 これに加え、著名人が既存薬の服用によりCOVID-19の症状が改善したことを公表したり、“有効”とされる既存薬の使用を巡って扇動的に報じたりするマスコミの姿勢にも疑問を呈し、「エビデンスが十分でない候補薬、特に既存薬については拙速に特例的な承認を行うことなく、十分な科学的エビデンスが得られるまで、臨床試験や適用外使用の枠組みで安全性に留意した投与を継続すべき」との見解を示している。 COVID-19を巡っては、国内外で新規治療薬の研究・開発が進められる一方、国内では、新型・再興型インフルエンザ治療薬として2014年に承認されたファビピラビル(商品名:アビガン)を転用、COVID-19治療薬として月内にも早期承認を目指すことを政府が明言している。また、厚生労働省は5月12日付で、COVID-19に関する医薬品の承認審査の際、公的な研究事業により実施される研究の成果において医薬品等の一定の有効性および安全性が確認されている場合には、治験等の臨床試験成績の提出を承認後でも可とする旨の通知を出している2)。

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COVID-19軽~中等症、早期の3剤併用療法が有効/Lancet

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者に対し、早期に開始したインターフェロン(INF)-β-1b+ロピナビル・リトナビル配合剤+リバビリンの3剤併用療法は、ロピナビル・リトナビル配合剤単独療法に比べ、SARS-CoV-2ウイルス陰性化までの期間および入院期間を有意に短縮し、安全性にも問題がないことが確認された。香港・Queen Mary HospitalのIvan Fan-Ngai Hung氏らが、127例の入院患者を対象に行った第II相の多施設共同前向き非盲検無作為化試験の結果を報告した。COVID-19パンデミックを制圧するため、効果的な抗ウイルス薬治療を見いだすことに1つの重点が置かれている。今回の結果について著者は、「さらなる臨床研究で、INF-β-1bをバックボーンとする2剤併用抗ウイルス薬療法の検討も行う必要がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2020年5月8日号掲載の報告。鼻咽頭スワブによるRT-PCR検査で陰性化までの期間を比較 研究グループは2020年2月10日~3月20日に、香港の6病院を通じて、ウイルス検査でCOVID-19が確認され入院した18歳以上の患者127例を対象に試験を行った。INF-β-1b+ロピナビル・リトナビル配合剤+リバビリンの3剤併用抗ウイルス薬療法と、ロピナビル・リトナビル配合剤単独療法を比較し、その有効性と安全性を評価した。被験者の症状の程度は、軽症~中等症だった。 被験者を無作為に2対1の割合で2群に分け、一方にはロピナビル400mg・リトナビル100mg、リバビリン400mgをいずれも12時間ごと14日間投与し、併せてINF-β-1b 800万IUを隔日3回投与した(3剤併用群、86例)。もう一方の群には、ロピナビル400mg・リトナビル100mgを12時間ごとに14日間投与した(対照群、41例)。 主要エンドポイントは、鼻咽頭スワブによる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査の結果でSARS-CoV-2ウイルスが陰性化するまでの期間とし、ITT解析で評価した。陰性化に関する3剤併用群のハザード比は4.37 発症から治療開始までの期間中央値は、5日(IQR:3~7)だった。 鼻咽頭スワブ検査でSARS-CoV-2ウイルスが陰性化するまでの期間中央値は、対照群12日(IQR:8~15)に対し、3剤併用群は7日(同:5~11)と有意に短かった(ハザード比:4.37、95%信頼区間:1.86~10.24、p=0.0010)。 有害事象は吐き気や下痢などが認められたが、両群間で有意差はなかった。対照群の1例が、肝炎のため治療を中止した。試験期間中の死亡は報告されなかった。

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SARS-CoV-2 は便中に長く排泄される(解説:浦島充佳氏)-1230

 対象は2020年1月から3月の間、中国・浙江省にて痰ないし咽頭深くの粘液より採取した検体にてPCRを用いて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確定診断を受け入院した連続症例96例(軽症:22例、重症:74例)である。SARS-Cov-2ウイルスRNA量を、呼吸器、便、血清、尿検体のウイルス量のCt値で定量解析している。 以下がポイントである。1. 検出場所  痰・唾液中検出割合:100% 研究対象定義  便中検出割合:59%  血清中検出割合:41%  尿中検出割合:1例のみ2. 検出期間  痰・唾液中:18日(13~29日)  便中検出割合:22日(17~31日)  血清中検出割合:16日(11~21日)3. 重症度  重症:21日(14~30日)発症後2~3週がピーク  軽症:14日(10~21日)発症後2週がピーク4. 他のウイルス量増多の因子  60歳以上  男性 SARS-CoV-2ウイルスが便中に最も長く検出されたことは注目に値する。呼吸器から検出されるウイルスは会話や咳などを介した飛沫で感染するが、便中では接触感染が考えられる。重症例では発症後2~3週間がウイルス排泄のピークとなることから、院内感染や高齢者施設では、排泄物の扱いやトイレの清掃には細心の注意を払うべきであろう。 中国・武漢の医師らが新型コロナウイルス肺炎で入院した138例についてまとめている1)。138例中57例(41.3%)が院内感染と思われた。17例(12.3%)は新型コロナウイルス肺炎以外の理由で入院していた患者、40例(29.0%)は医療スタッフであった。外科病棟に入院していた腹部症状を認めた1人の患者から10人以上に感染させたと思われる。患者間でも感染が広がった。少なくとも4人の患者が同じ病棟で感染を広げている。4人すべての患者は非定型の腹部症状を示していた。138例中、下痢は14例(10%)に認められる。院内で感染した患者は重症化しやすい傾向にあった。ICUに入院する重症化リスクは院外感染で入院した患者の2.4倍である。 また血清中でも想像以上の頻度でウイルスが検知されていた。無症状者では理論上ウイルス血症になりにくいとは思われるが、軽症でも25%にみられていることから、COVID-19流行地での献血は要注意かもしれない。1)Wang D, et al. JAMA. 2020;323:1061-1069.

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降圧薬の処方内容はCOVID-19予後に影響するか?(解説:冨山博史氏)-1231

はじめに COVID-19発生から半年近くが過ぎようとしている。しかし、まだまだ収束そして終息にも時間を要する。COVID-19では肺炎に加え、脳心血管疾患、血栓症など生命に影響する重大な合併症を発生する。そうした合併症は、高齢者や脳心血管疾患・悪性疾患など基礎疾患を有する症例で多い。ゆえに、そうした症例における合併症発生予防に細心の注意を払う必要がある。中国では高血圧症例でCOVID-19症例の予後が不良であることが報告された1)。SARS-CoV-2ウイルスの細胞内侵入にはangiotensin converting enzyme 2(ACE2)が重要な役割を果たす。このため、renin-angiotensin系に影響する降圧薬ACE inhibitor(ACEi)やangiotensin II receptor blocker(ARB)がACE2発現に影響し、ウイルス侵入を増悪させることが懸念されていた。しかし、懸念はあくまで仮説であり、3月13日発表の欧州高血圧学会Position Statement of the ESC Council on Hypertension on ACE-Inhibitors and Angiotensin Receptor Blockersでは、同危険性の十分な根拠がないため両降圧薬のむやみな中止・変更は控えるように推奨された。今回の知見 2019年12月から2020年3月の期間で、欧州、北米、アジアで計169の病院にCOVID-19で入院した8,910例を対象とした多施設共同登録研究が実施された2)。#COVID-19の診断:咽頭ぬぐい液のPCR検査で感染を診断#解析方法:入院後転帰の院内死亡例と生存例で降圧薬処方内容を含む臨床背景を比較#結果とコメント:生存例(8,395例、平均年齢49歳)、院内死亡例(515例、平均年齢56歳)であり、院内死亡例は高齢で男性が有意に多かった。また、これまでの報告と同様、院内死亡例で冠動脈疾患、心不全、不整脈(心疾患の院内死亡のODDS比は約2倍)、糖尿病、脂質異常症、慢性閉塞性肺疾患(院内死亡のODDS比は約3倍)、現在喫煙の合併比率が有意に高かった(脳卒中に関しては評価されていない)。本検討では、高血圧合併頻度は生存例(2,216/8,395例:26.4%)と院内死亡例(130/515例:25.2%)で有意な差を示さなかった。これは上述の中国の報告1)と異なる結果である。そしてACEiおよびARBの処方率は、生存例{ACEi(754/8,395例:9%)、ARB(518/8,395例:6.2%)}、院内死亡例{ACEi(16/515例:3.1%)、ARB(38/515例:7.4%)}であり、ARB処方頻度は両群に差はなく、ACEiはむしろ生存例での処方頻度が高かった。 本試験は、短期間の登録研究であり、すでにCOVID-19の症例である。ゆえに、COVID-19がすでに診断されている症例では、感染に関連する病態増悪を懸念してACEi・ARBの他の降圧薬への変更は必要ないことが支持される。同様の結果はイタリアからも報告されている3)。今回の研究では、ACEiおよびARBのCOVID-19の易感染性については検証されていない。しかし、同イタリアの研究では両降圧薬が易感染性にも影響しない可能性を報告している3)。 中国と欧米では蔓延するSARS-CoV-2ウイルスの亜型が異なる。この差異が高血圧合併の感染性への影響に関連した可能性は否定できない。ゆえに、今後、武漢株での感染例においても高血圧合併の有無および降圧薬の予後への影響について検証する必要がある。追記:ACE2について SARS-CoV-2ウイルスは細胞表面の受容体ACE2を介して細胞内に取り込まれる。ACE2は、膜内存在性蛋白で気管支、肺、心臓、腎臓、消化器等の多くの組織に発現している。ACE2はACE(angiotensin Iからangiotensin IIへ変換する酵素)と構造が類似しているが、別の作用を有し、angiotensin IIからangiotensin-(1-7)への変換を行う。このangiotensin 1-7は降圧や心血管保護作用を有すると考えられている。

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第7回 リモート出演で気になったタレントの“ナメクジ腫れ”

こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。5月14日、47都道府県のうち39県で新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が解除されました。残る宣言の対象区域は北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫の8都道府県ですが、政府は5月21日を目処に解除の可否を改めて判断するとのことです。そんな自粛解除の流れの中、最近気になったのが、テレビのバラエティ番組に出ている女性タレントの顔です。タレントが自宅からリモート出演するバラエティ番組が増えていますが、ある若手女性タレントの目の下、いわゆる「下眼瞼」と呼ばれる部分が、ナメクジが付いたように腫れているのです。気になり出すとそこばかり目が行くもので、ここ2週間ばかりの間にもう1人、“ナメクジ腫れ”が生じている女性タレントを見つけました。“ナメクジ腫れ”の正体はいったい何でしょう? 知人に聞いたところ、「うかつなことは言えないけれど、ヒアルロン酸注射か二重(ふたえ)手術の痕では」との見立てでした。つまり、彼女たちはつい最近、美容整形の手術を受けたのではないか、というわけです。「不要の医療ではないが、不急の医療」私自身は美容整形の現場を取材したことはほとんどないので、「タレントも仕事が暇になったので、美容整形を受けに行ったのかな」と思っていただけなのですが、先週、あるニュースを読んでコロナの影響はこんなところにまで、と驚きました。それは共同通信が配信し、日本経済新聞(5月12日)や地方紙に掲載された「美容整形『多くは不急、今は控えて』」というニュースです。そのニュースによれば、記者が複数の美容関係者に取材したところ、新型コロナウイルス感染症の影響で外出自粛が続く中、美容整形を申し込む人が増えている、とのこと。記事は、「在宅勤務や休校、マスク着用で、手術後の顔の腫れや容姿の急変を他人に知られずに済むためではないか」と分析、「大学などが休みになり始める1月後半から予約が増えるのは例年通りだが、今年はとくに予約申し込みが多い」とのことでした。記事では、ある美容外科のケースも紹介、医療資材の不足から、消毒液の入手が困難な時期もあり、施術で通常10枚ほど用意するガーゼも2~5枚に制限、半分に切って使ったこともあった、としています。実際、外出自粛が続いた結果、今年の春の美容整形人気は本当のようです。日本美容外科学会はホームページで、一般の人に対して「美容医療をお受けになろうとお考えの方へ  新型コロナウィルス(COVID-19)感染予防に関するお願い」を掲示、「美容医療は不要の医療ではありませんが、多くの方にとって不急の医療と考えます」として「今お考えの美容医療は感染が収束するまでお待ちいただきたい」と訴えています。学会が「不急の医療」と言ってしまっている点が、なかなか興味深いです。一方、同学会は会員の医療機関にも、「美容外科診療の対応について」として、「待機可能な侵襲的美容外科治療を希望する患者に対しては、事態が収束に向かうまでは、実施内容の低侵襲化、あるいは実施の延期や中止を検討する」「新型コロナウィルス感染患者の治療に必要な医療資源(医療物資、輸液、抗生剤、ベンチレーター、医療スタッフ等)を感染症指定医療機関等へ供給することを最優先に考え、使用を最小限にすること」の2点を提言しています。国難と呼ばれる事態に不急の自由診療美容整形のプチブームに、私がとやかく言うことはありません。ただ、一つ気になったのは、美容整形外科の医師たちは、新型コロナウイルス感染症で医療リソース(モノもヒトも)が全国的に払底する時期にどう動いていたか、ということです。急性期病院勤務の医師は病院で新型コロナウイルスと戦い、都道府県医師会・郡市区医師会の医師は行政検査の委託を受け、PCR検査に携わるなどしています。たとえば、東京都医師会はPCR検査の体制を強化しようと、かかりつけ医の紹介で検査を受けられる「PCR検査センター」の設置を進めています。美容整形外科は自由診療がほとんどですから、地域の医師会に加入している医師も少ないでしょう。そうなると、ほとんどの美容整形外科医は、新型コロナウイルス感染症の診断・治療とは何の接点もないまま、自らの日常診療を続けていると思われます。先の日本美容外科学会の会員への呼びかけも「提言」となっており、会員に何らかのアクションを要請するものでもないからです。日本は自由標榜制なので、医師が自分の専門に美容整形外科を選ぶことは何の問題もありません。ただし、医師の教育・養成には相当の税金が投入されていることを考えると、“国難”と呼ばれる事態において、不急の自由診療だけに注力する医師の姿勢には、いささか疑問を覚えます。もっとも、新型コロナウイルス感染症の診断数がピークの頃、外来診療を止めてしまっていた、うちの近所の診療所(何科まではここでは書きません)も同類かもしれませんが…。

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COVID-19の流行による性生活の変化

 トルコ・Esenler Maternity and Children's HospitalのBahar Yuksel氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行がトルコ人女性の性行動にどのように影響するのかを評価するため、COVID-19流行前に行われた研究データと流行中のデータを用いて観察研究を行った。その結果、性的欲求と性交頻度はCOVID-19流行中に大幅に増加したが、性生活の質は大幅に低下したことが明らかになった。さらに、COVID-19の流行は妊娠に対する欲求の減少、女性の避妊低下、および月経不順の増加に関連することが示された。International Journal of Gynecology & Obstetrics誌オンライン版5月11日号掲載の報告。 2020年5月13日時点、トルコの感染者数は14万1,475人、死者数は3,894人と感染者は世界で9番目に多い。 研究者らは性交の頻度、妊娠の欲求、女性の性機能指数(FSFI:Female Sexual Function Index)、避妊法、月経不順について、COVID-19流行中と流行6〜12ヵ月前とを比較した。 主な結果は以下のとおり。・性交の平均頻度について、流行中と流行前で比較したところ、流行中に大幅に増加した(2.4 vs.1.9、p=0.001)。・流行前は19人(32.7%)が妊娠を望んでいたが、流行中は3人(5.1%)に減少した(p=0.001)。・一方、流行前と比べ、流行中の避妊具などの使用は有意に減少した(24 vs.10、p=0.004)。・月経不順は流行前よりも流行中で多くみられた(27.6% vs.12.1%、p=0.008)。・FSFIを流行前と流行中とで比較したところ、 流行前のほうが有意に高かった(20.52 vs.17.56、p=0.001)。

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第8回 話して生じる飛沫は空中を8分間漂い、新たなCOVID-19感染の火種となりうる

はしか(麻疹)、インフルエンザウィルス、結核菌等の呼吸器ウイルスは咳やくしゃみで放たれた飛沫を介して感染を広げます。飛沫のもとである口腔液に大量に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が存在することが発症患者1)のみならず無症状の患者2)でも確認されており、おそらくSARS-CoV-2も飛沫に収まって浮遊できるでしょう。普通に話しても飛沫が生じることは、咳やくしゃみによる飛沫ほどは広く知られておらず、話したときに生じてしばらく浮遊しうる直径30μm未満の飛沫の意義はこれまで蚊帳の外に置かれていました。しかし米国NIH支部の国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)の研究者らの試験結果によると、その認識は改める必要があるようです。先週水曜日にPNAS誌に掲載されたその報告によると、話したときに生じる飛沫は空中に8分間は浮遊し、新たなSARS-CoV-2感染の火種になるおそれがあるといいます3,4)。研究者は被験者に“stay healthy(健康でいよう)”というフレーズを25秒間繰り返し言ってもらい、そのときに発生する飛沫の浮遊(30cm落下)時間半減期を測定しました。その時間が8分間であり、話して生じた飛沫の直径はおよそ4 μm、口を出る前の乾燥前の粒子の直径は12μm以上と推定されました。この結果によると、1分間大声で話せば、ウイルスを含有する少なくとも1,000粒の飛沫が8分を超えて空中に留まり、その量はそれらを吸い込んだ誰かにCOVID-19を誘発しうるレベルだといいます。今回の研究を実施した研究チームは、話しているときの飛沫を撮影した結果を先月4月中旬にNEJM誌に報告しており5)、その試験では、布マスクをして話せば前方への飛沫の発散を抑えられることが示されています。アメリカ疾病管理センター(CDC)も推奨するマスク着用が、SARS-CoV-2の広がりを遅らせうる大事な役割を担うことを、前回のその報告と今回のPNAS報告は示していると、NIDDK広報担当者は米国の新聞USA TODAY紙に話しています6)。マスクの効果に関するこれまでの試験を集めて検討したPNAS誌投稿査読前報告7,8)の著者の見解はさらに揺るぎなく、公共の場でのマスク着用は、皆が守ればSARS-CoV-2の広まりを確実に防ぐ(Public mask wearing is most effective at stopping spread of the virus when compliance is high)と結論しています。参考1)Chan JF,et al. J Clin Microbiol. 2020 Apr 23;58.2)Wolfel R,et al. Nature. 2020 Apr 1. [Epub ahead of print]3)Droplets from Speech Can Float in Air for Eight Minutes: Study / TheScientist4)Stadnytskyi V,et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2020 May 13. [Epub ahead of print]5)Anfinrud P,et al. N Engl J Med. 2020 Apr 15. [Epub ahead of print]6)Simply talking in confined spaces may be enough to spread the coronavirus, researchers say / USAToday7)If 80% of Americans Wore Masks, COVID-19 Infections Would Plummet, New Study Says / VanityFair8)Face Masks Against COVID-19: An Evidence Review. Preprints. Version 2 : Received: 12 May 2020

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コロナウイルス感染と血栓症の関係(解説:後藤信哉氏)-1229

オリジナルニュース【NEJM】Lupus Anticoagulant and Abnormal Coagulation Tests in Patients with Covid-19 本稿執筆時点で日本では大きく問題とされていないが、中国、米国、欧州ではコロナウイルス感染と血栓イベントの深い関係が注目されている。血栓イベント増加の主要原因として、コロナウイルスの血管内皮細胞への浸潤などが想定されているがメカニズムの詳細は未知である。確かに、本稿の著者に指摘されてみればa-PTTは延長していることが多い。PT、a-PTTが延長してD-dimerの高い症例が多いというのが筆者の認識であるが、ICUに入院する時点にてヘパリンを投与されている症例が多いのでヘパリンの影響かと思っていた。 本研究では血液凝固関連因子を詳細に時系列にて調べている。全例にて同レベルの詳細な検討がなされているわけではない。平時であればNEJM誌に掲載される論文ではない。しかし、コロナウイルスは詳細未知のウイルスである。本論文にて示されたLupus anticoagulant陽性例が多いことは、コロナウイルス感染における血栓性亢進の原因として魅力的な仮説である。 a-PTTが延長しているからといって抗凝固薬を躊躇すべきでないとの著者の主張は現時点では正しいように思える。コロナウイルスと免疫調節の関係などが今後の研究のテーマとなると想定される。

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新型コロナ陽性率とBCG接種歴の関係は?/JAMA

 一時期、BCGワクチン接種(以下、BCG接種)をしている人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかりにくい、というニュースが世界中を賑わした。ドイツやアメリカではBCG接種によるCOVID-19予防の有用性を検証するために臨床試験も始まっており、動向が気になるところである。このような状況に先駆け、今回、イスラエル・テルアビブ大学のUri Hamiel氏らは「小児期のBCG接種が成人期のCOVID-19に対して保護効果があるという考えを支持しない」という研究結果を発表。本研究で小児期のBCG接種群と非接種群での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性の結果割合が類似していたことを明らかにした。ただし、重症者の症例数が少ないため、BCG接種状況と疾患重症度との関連については結論付けられないとしている。JAMA誌オンライン版5月13日号のリサーチレターに報告した。 イスラエルでは1955~1982年の間、国家政策として新生児に対する BCG接種を行い、接種率は90%以上だった。しかし、1982年以降のBCG接種対象者は結核流行地からの移住者に限定されていた。 本研究は2020年3月1日~4月5日の期間、COVID-19症状(咳嗽、呼吸苦、発熱)を有する全症例を対象にRT-PCR法を実施、検査陽性率を1979〜1981年生まれ(39〜41歳)と1983~1985年生まれ(35〜37歳)で比較検討した大規模な人口ベースコホート。本研究の限界はイスラエルで出生しておらずワクチン接種状況が不明な人口が含まれたことだった。 主な結果は以下のとおり。・検査結果7万2,060件のうち、1979~1981年に生まれの結果は3,064件(出生コホート:1.02%、男性:49.2%、平均年齢40歳)、BCG非接種である1983~1985年生まれの結果は2,869件であった(同:0.96%、男性:50.8%、平均年齢35歳)。・SARS-CoV-2陽性となった割合について、BCG接種群とBCG非接種群で統計的有意差はなかった(361例[11.7%] vs. 299例[10.4%]、接種群との差1.3%、95%信頼区間[CI]:-0.3~2.9%、p=0.09)。・また、10万人あたりの検査陽性の割合にも統計的有意差はなかった(BCG接種群121 vs.BCG非接種群100、各群差:21、95%CI:-10〜50、p=0.15) 。・各群において重症疾患(機械的換気またはICU入室)は1例いたものの、死亡は報告されなかった。

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看護施設のCOVID-19の感染拡大を阻止するポイント/NEJM

 高度看護施設内では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染症が急速に拡大する可能性があるという。米国・疾病管理予防センター(CDC)COVID-19緊急対策部のMelissa M. Arons氏らは、2020年2月下旬にCOVID-19の集団発生を認めた同国ワシントン州キング郡の高度看護施設でSARS-CoV-2の伝播状況を調査し、入所者の感染の同定における、症状に基づくスクリーニングの妥当性を評価した。その結果、施設内でのSARS-CoV-2の迅速かつ広範囲の伝播が実証されるとともに、検査結果が陽性であった入所者の半数以上が検査時に無症状であり、感染を広める原因となった可能性が示唆された。また、症状にのみ重点を置いた感染制御戦略は、感染の防止には十分でなく、検査に基づく戦略の導入を考慮する必要があることがわかった。NEJM誌オンライン版2020年4月24日号掲載の報告。2回の点有病率調査、症状で4群に分類 研究グループは、キング郡の116床の高度看護施設(4つのユニットで構成)において、1週間間隔で点有病率調査を2回連続で行った。 施設入所者の同意を得て、鼻咽頭および口咽頭の拭い液を用いたSARS-CoV-2検査(リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法[rRT-PCR]、ウイルス培養、配列決定[sequencing])を実施した。また、直近の14日間に入所者が発症した症状を記録した。検査陽性で無症状の入所者は、7日後に再評価した。 SARS-CoV-2に感染した入所者は、典型的症状(発熱[>37.8℃]、咳、息切れ)、非典型的症状(悪寒、倦怠感、錯乱、鼻漏、鼻閉、咽頭痛、筋肉痛、めまい、頭痛、吐き気、下痢)、症状発現前、無症状の4つに分けられた。56%が無症状、無症状者の半数以上に認知機能障害 2020年3月5日、最初のSARS-CoV-2陽性の入所者1人が特定された(3月2日に症状が出て3日に検査)。この最初の検査が行われた3月3日の時点で、施設には89人が入所していたが、23日後の3月26日現在、点有病率調査や臨床評価、死後の検査で57人(64%)がSARS-CoV-2陽性となった。 1回目の点有病率調査(3月13日)には76人が参加した。このうち、1回目または2回目(3月19~20日)の調査で48人(63%)がSARS-CoV-2陽性と判定され、28人は陰性だった。陽性者(平均年齢78.6±9.5歳、併存疾患罹患率98%、有症状率44%)と陰性者(73.8±11.5歳、100%、39%)で、人口統計学的背景因子や併存疾患、症状は類似していた。 陽性者48人のうち、検査時に17人(35%)が「典型的症状」、4人(8%)が「非典型的症状」を呈し、27人(56%)は「無症状(安定した慢性症状の12人を含む)」だった。無症状の27人のうち15人(56%)には認知障害が認められ、有症状者でもほぼ同様の割合であった。 検査陽性から7日後には、「無症状」の27人のうち24人(89%)で症状が発現し、「症状発現前」に再分類された。症状発現までの期間中央値は4日(IQR:3~5)。無症状者で最も多かった新規症状は、発熱(71%)、咳(54%)、倦怠感(42%)だった。症状発現前や無症状でもウイルス増殖、症状発現の-6~9日で分離 rRT-PCR陽性の46検体のうち31検体でSARS-CoV-2の増殖が確認された。ウイルス増殖は、典型的症状の16人中10人、非典型的症状の4人中3人でみられたが、症状発現前の24人中17人と、無症状群の3人中1人でも認められた。 生存ウイルスは、典型的症状の最初のエビデンスが得られた日の6日前から9日後までに採取した検体から分離された。倍加時間3.4日、死亡率26% 入所者の感染倍加時間は3.4日(95%信頼区間[CI]:2.5~5.3)で、施設周辺のキング郡の倍加時間5.5日(4.8~6.7)に比べ急速だった。また、4月3日現在、3月26日までに確認されたSARS-CoV-2感染者57人のうち11人が入院し(3人は集中治療を要した)、15人が死亡した(死亡率26%)。 施設の4つのユニットのうち、最初の感染が起こったと推定され、最初のSARS-CoV-2感染者が居住していた第1ユニットは、1回目の点有病率調査終了時に施設内で最も高い有病率を示した。その後、第2~4ユニットでもSARS-CoV-2感染が確認され、その有病率は持続的に増加した。常勤職員の19%が陽性、検査に基づく戦略が必要 1回目の点有病率調査(3月13日)までに、施設の常勤職員138人中11人(8%)がSARS-CoV-2陽性となった。 3月26日までに、138人中55人(40%)が症状を訴え、51人(37%)が検査を受け、26人(19%)が陽性であった。この検査陽性26人のうち17人が看護職員で、9人は勤務時間中に複数のユニットを通じてサービスを提供する職種(セラピスト、環境サービス、食事サービス)であった。COVID-19罹患職員に入院した者はいなかった。 34人の入所者の39の検体で塩基配列の解析が行われた。すべての配列は、ワシントン州におけるCOVID-19患者の過去の解析で報告された配列と同一または著しく類似していた。34人の入所者のうち、27人(79%)が1ヌクレオチド差の2つの遺伝子クラスターに適合する配列を持っていた。 著者は、「これらの知見は、ほぼ同時期に同じ郡の別の看護施設で起きたCOVID-19集団感染ときわめて類似している」とし、「看護施設の職員は、施設内でSARS-CoV-2感染が確認された場合、症状の有無にかかわらず、個人用保護具(PPE)を使用するなど、さらなる伝播を防御するための追加戦略を実施すべきであり、感染した入所者と職員を同定して隔離するために、検査に基づく戦略を考慮する必要がある」と指摘している。

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第7回 緊急事態宣言解除、補正予算案で医療機関は救われるか?

<先週の動き>1.緊急事態宣言解除、補正予算案で医療機関は救われるか?2.感染予防と経済活性化の両立を目指し、提言が取りまとめられた3.新型コロナ感染の第二波に備え、大都市で病床整備の動き4.マスクに続き、消毒液なども転売禁止に5.国内の新型コロナウイルスによる超過死亡とは1.緊急事態宣言解除、補正予算案で医療機関は救われるか?政府は、大都市などを除く39県において緊急事態宣言の解除を行った一方で、解除されなかった地域における、宣言解除の基準を検討している。感染状況や医療提供体制などから総合的な判断を行うとされ、「直近1週間で人口10万人当たりの新規感染者が0.5人以下」が目安となる見込み。今回の新型コロナ感染拡大は、国民の生活基盤にも大きな影響が出ており、医療機関の定期受診や検診などが延期され、遠隔診療などが普及するきっかけとなった。今後の影響についは、定期的な検査を含め、受診が必須となる患者のアクセス向上が予想される一方、病状が安定している患者については、診療間隔が開いたことで、疾病管理やアドヒアランスの低下など、患者が不利益を被ることがないようにサポートする必要があると考えられる。また、経営悪化による閉院・廃業に追い込まれる医療機関や介護施設が増えることで、地域医療体制の悪化が懸念されており、政府は今後、第二次補正予算案の取りまとめに動く。日本医師会は医療機関の窮状を訴え、財政的な支援を求めている。(参考)39県で“宣言解除” 「解除基準」提言へ(日テレNEWS24)首相、第2次補正予算案は経済対策と医療体制の充実を柱に 参院本会議(毎日新聞)第2次補正予算に向けた医療機関等への支援に関する要望について(日本医師会)2.感染予防と経済活性化の両立を目指し、提言が取りまとめられた緊急事態宣言が解除された翌日に開催された内閣府の経済財政諮問会議では、「攻めの政策運営で感染予防と経済活性化の両立を図る~経済活動の再起動と将来見通し明確化への提言~」が取りまとめられた。経済活動の再起動に向けて、感染拡大防止のための医療体制のボトルネック解消に全力を挙げつつ、より経済活動を拡大させる必要があるとし、国民や企業が安心できる将来見通しを示すことを目指し、骨太の方針に盛り込まれる見込み。「新型コロナウイルス感染症を踏まえた科学技術・イノベーション政策」における具体的な施策として、新型コロナ追跡アプリなどによる感染拡大防止に資するIT活用や、研究のデジタル化・リモート化、AIなどへの研究開発投資が盛り込まれている。これらが実現されれば、今後の日本社会には大きな変革がもたらされるだろう。(参考)令和2年 第7回経済財政諮問会議 資料(内閣府)資料3-1 攻めの政策運営で感染予防と経済活性化の両立を図る資料7 新型コロナウイルス感染症を踏まえた科学技術・イノベーション政策3.新型コロナ感染の第二波に備え、大都市で病床整備の動き4月の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大ピーク時、大都市圏の自治体において、患者の受け入れに際して病床不足があったため、第二波の襲来に備え、大阪や神奈川県、千葉県などで独自の動きが見られる。大阪府では、他疾患で入院していた患者を他院に転院させた上で、大阪市立十三市民病院をCOVID-19専門病院として稼働させ、22日より本格的に始動させる方針である。神奈川県では、COVID-19重点医療機関を受託した湘南鎌倉総合病院が、県の指示下、敷地に隣接する湘南ヘルスイノベーションパークに180床の仮設専用病床を新たに建設し、千葉県においても、千葉西総合病院が、新型コロナ患者を受け入れるための独立した伝染性感染症病棟を3週間で建設するなど、受け入れ態勢を整えている。(参考)「新型コロナウイルス感染症」中等症患者を専門的に受入れることに伴う影響について(大阪市立十三市民病院)COVID-19重点医療機関受託に関して(湘南鎌倉総合病院)伝染性感染症病棟について(千葉西総合病院)4.マスクに続き、消毒液なども転売禁止に民間における高額取引が問題となり、3月15日にマスクの転売禁止が行われているが、医療・介護現場において不足が続く消毒液についても、転売規制がかかることになった。消毒液やアルコール含有ジェルのほか、除菌シート、消毒用に代用できるアルコール濃度の高い酒などが対象となる見通しで、この法律に違反すると、1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられる。政令は22日に閣議決定する見通し。(参考)消毒液の転売禁止へ、経済活動再開で品薄拍車を懸念(福井新聞)5.国内の新型コロナウイルスによる超過死亡とは世界では、新型コロナウイルスによる死亡者数がすでに31万人を超えるとされているが、検査体制の不備などがあり、実態を反映していないという指摘もある。このため、各国の死亡統計を元に全死亡数を前年などと比較して「超過死亡」を調べ、新型コロナウイルスの影響を評価する動きがある。超過死亡には、新型コロナとは直接関連のない死亡(医療崩壊などによってほかの疾患の治療を受けられなかった患者などの死亡)を含む。わが国においては、最も感染者数の多い東京都の4月1日時点の推計人口データが公表され、それを元に横浜市立大学の五十嵐 中准教授らが考察している。国内の状況を例年と比較すると、インフルエンザの収束が早かったことも影響するかもしれないが、現在のデータからは、海外のような急速な死亡者数の増加は認められていない。今後、4月以降の死亡数などを含めた検討が必要だろう。(参考)東京都の人口(推計)トップページ(東京都の統計)東京都内の死亡者数、新型コロナ感染症拡大局面でも急増見られず(ブルームバーグ)東京都の死亡率、3月も超過はみられず(横浜市立大学 五十嵐 中准教授)Global coronavirus death toll could be 60% higher than reported

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企業発の取り組み その1 ピジョン株式会社【風疹ゼロチャレンジ~医師2020人の会~】

その1 ピジョン株式会社2018年より、厚生労働省は現時点で41~58歳の男性を対象に、「風しんの追加的対策」として抗体検査とワクチン接種を公費で助成している。しかし、対象世代の認知度は低く、受診者は狙い通りには増えていないのが現状だ。そうした中で期待されるのが、企業発の取り組みだ。ターゲット世代の男性は働き盛りであり、勤務先からの要請があれば高い受診率が期待できる。すでに複数の企業が、定期健康診断へ抗体検査を盛り込む、社員に抗体検査を呼びかけるなどの活動をはじめている。その中で、社業とのシナジーを生み出しつつ、多角的な活動を行っているのが育児用品メーカーのピジョンだ。同社は2019年秋から「ピジョン風疹ゼロアクション」と銘打ったプロジェクトを立ち上げ、活動を開始している。担当者の一人である、コーポレートコミュニケーション室 広報・ESGグループの半澤 ふみ江氏は、「ピジョンが社会に存在している意義である『赤ちゃんいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にする』を体現する具体的なアクションを検討していました。社会課題は数多くありますが、先天性風疹症候群 (CRS)は直接に赤ちゃんに関係する課題なので、風疹ゼロに向けた活動に取り組むことを決めました。また、社員とその家族の健康を守るという健康経営のためにも意義がある活動だと考えました」と活動のきっかけを語る。事業内容との親和性が高いことから経営陣の理解も早く、疑問や反対の声は全く出なかったという。ピジョン・コーポレートコミュニケーション室 広報・ESGグループの半澤 ふみ江氏(新型コロナウイルス感染拡大を鑑み、オンラインにて取材)具体的には、2019年秋から2020年春までに3つの活動を行った。1)会社の費用負担での抗体検査・ワクチン接種全従業員約500名を対象に、抗体検査・ワクチン接種を会社負担とし、受診を呼びかけた。前年度から妊婦と接する機会のある職種の社員を対象に同様の取り組みを行っており、それを一歩広げた。「風しんの追加的対策」のターゲット世代の男性社員にはクーポンの使用を呼びかけつつ、世代や性別を限定せず全員を対象とした。2)風疹撲滅の活動を行う団体への募金活動風疹撲滅の活動をサポートするため、CRSの子供を持つ保護者を中心に風疹撲滅の啓蒙を行う団体「風疹をなくそうの会 hand in hand」への募金活動を行った。各フロアに募金箱を置き、活動内容を伝えるチラシやポスターを掲示したところ、期待以上の金額が集まったという。 3)社内講演会募金活動とあわせ、なぜ風疹ゼロアクションに取り組むのかを社員に周知し、理解を深めるために、「風疹をなくそうの会 hand in hand」の役員3名を招き、講演会を開催した。全社員を対象に希望者が参加する形式にしたところ、約60名が参加した。「年齢・性別関係なく、幅広い層の社員が集まりました。強いて言えば若手が多く、社会問題への関心の高さを感じました」(半澤氏)。2019年年末に開催された社内講演会活動を進める中で、課題も浮かび上がった。1つは、活動の意義を伝える難しさだ。赤ちゃんとその家族を顧客とするピジョンでも、全社員に風疹撲滅の意義を自分ごととして理解してもらうことは簡単ではなかったという。身近な病気で怖さが伝わりにくい面もあり、「自分が加害者になるかもしれない」など、いろいろな伝え方を工夫した。もう1つは、抗体検査やワクチン接種をどこまで推奨すべきか、という点だ。医療・社会的に推奨されることではあっても、最終的には個人の身体や信条に関わることでもあり、そのメッセージの強さをどの程度にするべきか、悩むことも多いという。2019年秋から開始したプロジェクトは複数のメディアで紹介され、2020年2月には日本産婦人科医会などが主催する「風疹ゼロ”プロジェクト」から風疹対策を積極的に行った企業として表彰されるといった実績も出た。風疹ゼロ”プロジェクト表彰式の様子半澤氏は「活動開始から日も浅く、今後の継続こそが大事だと考えています」とし、息の長い活動にすべく、今年度の活動内容を詰めているという。参考サイトピジョン株式会社|風疹ゼロアクション日本産婦人科医会|2020年“風疹ゼロ”プロジェクト宣言!!風疹をなくそうの会『hand in hand』

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COVID-19と乳がん診療ガイドライン―欧米学会発表まとめ(吉村吾郎氏)

新型コロナウイルス (COVID-19) パンデミック下での乳がん診療の優先順位をどう考えるべきか。欧米関連学会が発表したガイドラインを市立岸和田市民病院 乳腺外科部長 吉村 吾郎氏が解説する。新型コロナウイルス (COVID-19) パンデミック下での乳がん診療について、欧州臨床腫瘍学会 European Society for Medical Oncology Cancer (ESMO) 1) と米国乳がん関連学会2)がガイドラインを作成している。いずれのガイドラインも COVID-19 リスクの最小化と診療利益の最大化を目的とする、乳がん患者の優先順位付けを推奨している。その内容に大差はなく、診療内容別に高優先度/中優先度/低優先度に分類し、米国ガイドラインは中および低優先度をさらに3段階に細分している。本邦の臨床事情に合わせて若干改変した両ガイドラインの概略を以下に記載する。【外来診療】○高優先度感染や血腫などで病状が不安定な術後患者発熱性好中球減少症や難治性疼痛など腫瘍学的緊急事態浸潤性乳がんの新規診断○中優先度非浸潤性乳がんの新規診断化学療法や放射線療法中の患者病状が安定している術後患者○低優先度良性疾患の定期診察経口アジュバント剤投与中、あるいは治療を受けていない乳がん患者の定期診察生存確認を目的とする乳がん患者の定期診察【診断】○高優先度重症乳房膿瘍や深刻な術後合併症評価目的の診断しこりやその他乳がんが疑われる自覚症状を有する症例に対する診断臨床的に明らかな局所再発で、根治切除が可能な病変に対する診断○中優先度マンモグラフィ検診で BI-RADS カテゴリ4または5病変の診断転移再発が疑われ、生検が必要とされる乳がん患者への診断○低優先度マンモグラフィ検診BRCAキャリアなど高リスク例に対する検診マンモグラフィ検診で BI-RADS カテゴリ3病変の診断無症状の初期乳がん患者に対するフォローアップ診断【手術療法】○高優先度緊急で切開ドレナージを要する乳房膿瘍および乳房血腫自家組織乳房再建の全層虚血術前化学療法を終了した、あるいは術前化学療法中に病状が進行した乳がん患者トリプルネガティブ乳がん、あるいはHER2陽性乳がん患者で、術前化学療法を選択しない場合○中優先度ホルモンレセプター陽性/HER2陰性/低グレード/低増殖性のがんで、術前ホルモン療法の適応となる乳がん患者臨床診断と針生検結果が不一致で、浸潤性乳がんの可能性が高い病変に対する外科生検○低優先度良性病変に対する外科切除広範囲高グレード非浸潤性乳管がんを除く、非浸潤性乳がん臨床診断と針生検結果が不一致で、良性の可能性が高い病変に対する外科生検二次乳房再建手術乳がん高リスク例に対するリスク軽減手術【放射線療法】○高優先度出血や疼痛を伴う手術適応のない局所領域病変に対する緩和照射急性脊髄圧迫、症候性脳転移、その他の腫瘍学的緊急事態症例に対する緩和照射高リスク乳がん症例に対する術後照射 (炎症性乳がん/リンパ節転移陽性/トリプルネガティブ乳がん/HER2陽性乳がん/術前化学療法後に残存病変あり/40歳未満)○中優先度65歳未満でホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性の中間リスク乳がんに対する術後照射○低優先度非浸潤性乳がんに対する術後照射65歳以上でホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性の低リスク乳がんに対する術後照射【初期乳がんに対する薬物療法】○高優先度トリプルネガティブ乳がんに対する術前および術後化学療法HER2 陽性乳がん患者に対する抗 HER2 療法併用の術前および術後化学療法炎症性乳がん患者に対する術前化学療法すでに開始された術前/術後化学療法高リスクのホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性乳がんに対する術前および術後ホルモン療法±化学療法術前ホルモン療法○具体的推奨事項化学療法と放射線療法の適応となるホルモンレセプター陽性症例において、放射線療法の先行は許容されるホルモンレセプター陽性かつHER2 陰性で臨床ステージI-II乳がんでは、6~12ヶ月間の術前ホルモン療法がオプションとなるホルモンレセプター陽性かつHER2 陰性で化学療法の適応となる乳がん症例では、術前化学療法がオプションとなる通院回数を減らす目的での化学療法スケジュール変更 (毎週投与を2週間または3週間毎投与に変更) は許容される。好中球減少症リスクを最小限とするため、G-CSF 製剤を併用し、抗生剤投与も行うべきである。免疫抑制を避けるため、デキサメタゾンは必要に応じて制限すべきである低リスク、あるいは心大血管疾患やその他の合併症を有する HER2 陽性乳がん症例では、術後の抗 HER2 療法の期間を6ヵ月に短縮することはオプションとなるLHRH アナログ製剤を、通院回数を減らすために長時間作用型へ変更すること、患者自身または訪問看護師による在宅投与することを、ケースバイケースで相談するアロマターゼ阻害剤を投与されている症例では、骨量検査を中止する (ベースラインおよびフォローアップとも)可能であれば、自宅の近くの医療機関で画像検査や血液検査を実施する可能であれば、遠隔医療による副作用のモニタリングを実施する【進行再発乳がんに対する薬物療法】○高優先度高カルシウム血症、耐えられない痛み、有症状の胸水貯留、脳転移など、腫瘍学的緊急事態症例に対する薬物療法重篤内蔵転移に対する薬物療法予後を改善する可能性の高い一次治療ラインでの化学療法、内分泌療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬○中優先度予後を改善する可能性のある二次、三次以降の治療ラインでの薬物療法○低優先度緊急性の低い高Ca血症や疼痛コントロール目的での骨修飾薬 (ゾレドロン酸、デノスマブ)○具体的推奨事項化学療法が推奨される場合、通院回数を減らす目的での経口薬治療は許容される通院回数を減らす目的での化学療法スケジュール変更 (毎週投与を2週間または3週間毎投与に変更) は許容される発熱性好中球減少症リスクの低いレジメンを選択することは許容される化学療法による好中球減少症リスクを最小限とするため、G-CSF 製剤を併用し、抗生剤投与も行うべきである。免疫抑制を避けるため、デキサメタゾンは必要に応じて制限すべきであるトラスツズマブとペルツズマブの投与間隔を延長することは許容される (例:4週毎投与)腫瘍量の少ない HER2 陽性転移性乳がんでトラスツズマブやペルツズマブによる治療が2年間以上にわたり行われている症例では、病状経過を3〜6ヵ月ごとにモニターしながら抗 HER2 療法の中止を考慮する耐容性を最適化し、有害事象を最小化するため、標的治療剤を減量投与することは許容される転移再発乳がん一次治療としての標的治療剤 (CDK4/6阻害剤、mTOR阻害剤、PIK3CA 阻害剤) とホルモン療法の併用を、ホルモン療法単独とすることは許容されるCDK4/6阻害剤による好中球減少症と COVID-19 発症リスクの関連は明らかではなく、感染徴候を注意深く観察し、COVID-19 を疑い症状が出現した場合は速やかに治療を中止する免疫チェックポイント阻害剤とCOVID-19 発症リスクの関連は明らかではなく、感染徴候を注意深く観察し、COVID-19 を疑い症状が出現した場合は速やかに治療を中止するLHRH アナログ製剤を、通院回数を減らすために長時間作用型へ変更すること、患者自身または訪問看護師による在宅投与することを、ケースバイケースで相談する多職種キャンサーボードでの議論と患者の希望を踏まえて、晩期治療ラインにおける休薬、最善支持療法、投与間隔の拡大、低容量維持療法は許容される骨転移患者に対する骨修飾薬は、通院回数を最小限にして投与されるべきである病状が安定している転移性乳がん症例では、ステージング目的の定期診察や画像検査の間隔を空ける抗 HER2療法中の心機能モニター検査は、臨床的に安定していれば遅らせることが許容される可能であれば、自宅の近くの医療機関で画像検査や血液検査を実施する可能であれば、遠隔医療による副作用のモニタリングを実施する1.ESMO magagement and treastment adapeted recommentaions in the COVID-19 ERA: Breast cancer. 2.Recommendations for prioritization, treatment, and triage of breast cancer patients during the COVID‐19 pandemic. the COVID‐19 pandemic breast cancer consortium.

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心血管疾患を持つCOVID-19患者、院内死亡リスク高い/NEJM

※本論文は6月4日に撤回されました。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心血管疾患を有する集団で過度に大きな影響を及ぼす可能性が示唆され、この臨床状況におけるACE阻害薬やARBによる潜在的な有害作用の懸念が高まっている。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らは、国際的なレジストリに登録された入院患者8,910例(日本の1施設24例を含む)のデータを解析し、基礎疾患として心血管疾患を有するCOVID-19患者は院内死亡のリスクが高いことを示した。また、院内死亡へのACE阻害薬およびARBの有害な影響は確認できなかったとしている。NEJM誌オンライン版2020年5月1日号掲載の報告。11ヵ国169病院のデータを用いた観察研究 研究グループは、Surgical Outcomes Collaborative(Surgisphere)に登録されたアジア、欧州、北米の11ヵ国169病院のデータを用いた観察研究を行った(ブリガム&ウィメンズ病院の助成による)。 対象は、2019年12月20日~2020年3月15日の期間に、COVID-19で入院し、2020年3月28日の時点で院内で死亡または生存退院した患者であった。 解析時に退院状況が確認できたCOVID-19患者8,910例(北米1,536例、欧州5,755例、アジア1,619例)のうち、515例(5.8%)が院内で死亡し、8,395例は生存退院した。ベースライン時に有意差がみられた背景因子 院内死亡例は生存例に比べ、高齢(平均年齢55.8±15.1歳vs.48.7±16.6歳、群間差:-7.1、95%信頼区間[CI]:-8.4~-5.7)で、白人(68.2% vs.63.2%、-5.0、-9.1~-0.8)および男性(女性34.8% vs.40.4%、5.6、1.3~10.0)が多く、糖尿病(18.8% vs.14.0%、-4.8、-8.3~-1.3)、脂質異常症(35.0% vs.30.2%、-4.8、-9.0~-0.5)、冠動脈疾患(20.0% vs.10.8%、-9.2、-12.8~-5.7)、心不全(5.6% vs.1.9%、-3.7、-5.8~-1.8)、心臓不整脈(6.8% vs.3.2%、-3.6、-5.8~-1.4)の有病率が高く、COPD(6.2% vs.2.3%、-3.9、-6.1~-1.8)や現喫煙者(8.9% vs.5.3%、-3.6、-6.2~-1.1)の割合が高かった。 入院時の薬物療法は、院内死亡例に比べ生存例でACE阻害薬(3.1% vs.9.0%、5.9、4.3~7.5)とスタチン(7.0% vs.9.8%、2.8、0.5~5.1)の使用が多かった。独立のリスク因子は高齢、冠動脈疾患、心不全、喫煙など 院内死亡リスクの増加と独立の関連が認められた因子は以下のとおり。 年齢65歳超(院内死亡率:65歳超10.0% vs.65歳以下4.9%、オッズ比[OR]:1.93、95%CI:1.60~2.41)、冠動脈疾患(10.2% vs.冠動脈疾患のない患者5.2%、2.70、2.08~3.51)、心不全(15.3% vs.心不全のない患者5.6%、2.48、1.62~3.79)、心臓不整脈(11.5% vs.心臓不整脈のない患者5.6%、1.95、1.33~2.86)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(14.2% vs.COPDのない患者5.6%、2.96、2.00~4.40)、現喫煙者(9.4% vs.元喫煙/非喫煙者5.6%、1.79、1.29~2.47)。 院内死亡の増加には、ACE阻害薬(院内死亡率:2.1% vs.ACE阻害薬非投与例6.1%、OR:0.33、95%CI:0.20~0.54)およびARB(6.8% vs.ARB非投与例5.7%、1.23、0.87~1.74)の使用との関連はみられなかった。スタチンの使用(4.2% vs.スタチン非投与例6.0%、0.35、0.24~0.52)は、ACE阻害薬と同様に、院内死亡のリスクが低かった。 また、女性は男性に比べ、院内死亡リスクが低かった(5.0% vs.6.3%、OR:0.79、95%CI:0.65~0.95)。 著者は、「これらの知見は、COVID-19で入院した患者では、基礎疾患としての心血管疾患は院内死亡リスクの増加と独立の関連を示したとする既報の観察研究の結果を裏付けるものである」としている。

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第6回 感度の低さを認めた抗原検査キットは国民の不安を拭えるか?

「一難去ってまた一難」ということわざはあるが、「一難生じてまた一難」ということわざはない。しかし、現実の世の中では後者の事例は少なくない。しかも、この「一難」が事態を改善すべく行った結果として起きる予期せぬ難事ということも稀ではない。ヨーロッパのことわざを借りれば「地獄への道は善意で舗装されている」というものだ。このような思いを巡らすのは、先週取り上げた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬・レムデシビルの特例承認に続いて、みらかホールディングス傘下の富士レビオが申請した新型コロナウイルスの抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」が迅速承認されたからだ。新規抗原検査登場で起こる一般からの誤解新型コロナウイルスの抗原検査としては国内初の承認だが、一般紙の誌面やテレビのスーパーで比較的ポジティブな印象を与える「国内初」の表現が曲者である。これに加え、結果判明まで最短で4~6時間のPCR検査に対し、抗原検査は約15~30分なので「迅速」、さらに「医療機関で行っている通常のインフルエンザの検査と同じ」という言葉が加われば、一般読者・視聴者の脳内では「新型コロナが疑わしければ、近くのクリニックですぐに検査してもらえるのね?」との変換が起こる。しかし、検査を実施する側としてはインフルエンザ検査と同じとはいえ鼻咽頭に細長い綿棒を挿入しての検体採取では飛沫感染の危険性がある。しかも、インフルエンザとは違い、現時点でCOVID-19に特異的な治療薬もワクチンも存在しない。つまるところ現状は十分な感染防止策が取られた医療機関など、現在のPCR検査実施施設で発熱や乾性咳嗽などの症状がある人に行うことが前提となる。実際、この抗原検査キットはまだ生産が本格化していないため、当面は患者発生数の多い都道府県における帰国者・接触者外来、地域・外来検査センターや全国の特定機能病院に供給し、順次供給対象を拡大していくとのこと。一般向けの報道でもそのような内容を紹介している事例もあるが、読者・視聴者は見出しや印象的キーワードで把握しがちなので、前述のような脳内変換が起きてしまう。実はかなり低い抗原検査の感度そしてこの抗原検査キット、承認申請データを見ると何とも頼りない。PCR法との比較に基づく国内臨床性能試験成績(n=72)では、陰性一致率は98%(44/45例)、陽性一致率は37%(10/27例)。陽性検体での陽性一致率を、PCR法テスト試料中の換算RNAコピー数(推定値)に応じて比較すると、100コピー/テスト以上の検体に対する陽性一致率は83%(5/6例)。また、国内の検査検体でのPCR 法との比較に基づく試験成績(n=124)では、陰性一致率は100%(100/100例)、陽性一致率は66.7%(16/24例)、PCR法テスト試料中の換算RNAコピー数(推定値)に応じて比較した場合の100コピー/テスト以上の検体に対する陽性一致率は83%(15/18例)。簡単に言ってしまえば「PCR検査よりも感度は低く、ウイルス量が少なければ大量の偽陰性が出る」ということだ。実際、国は陽性例をこのキットで確定診断として良いが、陰性例に対しては引き続きPCR検査の実施を前提にしている。少なくともこれまでCOVID-19の診療最前線にいる医療機関にとっては、疑わしい症状の患者が来院時に使用すれば、より厳重な隔離をすべきかどうかを迅速に判断できるため、一定の利益があることは確かだろう。抗原検査の登場は検査拡充に寄与しない?一般紙では、今回の承認は、これまで一部の医師から指摘されていた「疑わしい症例のPCR検査が迅速に行われない」ことの解消、その結果としての検査件数の増加を意図していると報じている。ただ、その通りになるかは甚だ疑問を感じざるを得ない。まず、検体採取方法は従来のPCR検査と変わらないため、検査に伴う煩雑さはまったく同じ。検体採取者にとって、より簡便でリスクが低い採取方法に変更しない限り、検体採取段階で目詰まりを起こす。また、迅速診断であるがゆえに検査を受けた人は結果待ちのために実施場所に待機することになる。ソーシャル・ディスタンスを取れる待合スペースがなければ、待機者間での接触・飛沫感染リスクが増加する。十分な待合スペースがなければ、感染予防対策として検査場所への入場制限が必要になり、その結果として検査実施件数の制限も必要になるという目詰まりファクターもある。さらに「迅速診断」ゆえに風邪のような類似の症状を持つ人が幅広く対象になり、結果と検査対象者の増加とそれに伴い発生する陰性者の増加が、確認用PCR検査件数を増やし、逆に現場に負荷をかけて目詰まりを起こすことも考えられる。一方で、最も面倒なのは当面はこの検査の実施機関とはならないプライマリーケアを主体とするクリニックにちょっと風邪様症状がある人が駆け付け、「テレビでやっていた簡単な新型コロナの検査をやってください」と哀願し、現場の多忙さに拍車をかけることだ。そうして来院する人の中には真正のCOVID-19の患者がいる可能性も考慮すると、院内感染の危険性も増す。COVID-19との暗闘に似たあの大事故前回紹介したレムデシビルの特例承認、今回の抗原検査キットの迅速承認とも前例がなくとも部分的でも改善できるなら、いかなるものでも投入するという戦略のようだ。その意味で非常に似た様相を感じるのは、私が過去から取材し、現在も進行中の東京電力・福島第一原発の収束作業である。福島第一原発事故は原子力事故の評価尺度である「国際原子力事象評価尺度 (INES)」 による影響度の指標で「レベル7」と判定された世界最悪の原子力事故である。同じレベルと評価されたのは1986年に発生した旧ソ連(現・ウクライナ)のチェルノブイリ原発事故のみ。チェルノブイリ原発事故は核燃料の除去を断念して石棺で封印しただけだが、福島第一原発の収束作業は、残る核燃料を取り出して廃炉に持ち込もうという有史以来前例のない事態に取り組んでいる。その意味ではすべてがトライ・アンド・エラーの連続である。私は過去にこの作業を「100個の鍵がついた扉の開け方がわからず、とりあえず鍵と名の付くものをありとあらゆるところから集め、1つ1つ鍵穴に入れて開くかどうか確かめるような作業」と表現したことがある。COVID-19に対する戦いも半ば似ていると感じるのだ。奇々怪々な国の対応から透けて見えるもの「だったら徒手空拳からようやく前向きになりつつあるときに、一個一個の『武器』についてネチネチとあげつらうな」との意見もあるかもしれない。だが、今回の事態を見ていると、国の「迅速な対応」と言えば聞こえは良いが、むしろ「拙速な対応」にも見えてしまうのである。そもそもこうした新たな武器を国が特例的に投入するならば、そのメリット・デメリットを一般に広く伝えるのはメディア以上に国側の責務である。とりわけ昨今のようにメディアの多様性が増し、テレビ・新聞といった古典的メディアの役割が相対的に低下しているなかでは、なおのこと国の発信力の位置づけは小さくない。にもかかわらず、記者会見等を見ていると、どうにも中途半端な説明が先行しているように見受けられる。また、かつてはドラッグ・ラグに代表される慎重な審査体制で知られていた厚生労働省がかくも特例承認、迅速承認を「乱発」するのはやや解せない。安倍晋三首相自ら新型インフルエンザ治療薬・アビガンのCOVID-19治療薬としての承認に言及する辺りから推察するに、こうした措置にはかなり政治主導もあるのだろう。もしそうだとするならば、非常事態の名の下に行われる政治の猪突猛進にブレーキをかける存在がいないということにもなる。そんなこんなでレムデシビルの特例承認も、抗原検査キットの迅速承認はすんなりと腹落ちがしないのである。

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COVID-19、主要5種の降圧薬との関連認められず/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が重症化するリスク、あるいはCOVID-19陽性となるリスクの増加と、降圧薬の一般的な5クラスの薬剤との関連は確認されなかった。米国・ニューヨーク大学のHarmony R. Reynolds氏らが、ニューヨーク市の大規模コホートにおいて、降圧薬の使用とCOVID-19陽性の可能性ならびにCOVID-19重症化の可能性との関連性を評価した観察研究の結果を報告した。COVID-19患者では、このウイルス受容体がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)であることから、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)に作用する薬剤の使用に関連するリスク増加の可能性が懸念されていた。NEJM誌オンライン版2020年5月1日号掲載の報告。患者1万2,594例について、降圧薬とCOVID-19陽性および重症化との関連を解析 研究グループは、ニューヨーク大学の電子カルテを用い、2020年3月1日~4月15日にCOVID-19の検査結果が記録された全患者1万2,594例を特定し検討を行った。 ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、Ca拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬の治療歴と、COVID-19検査の陽性/陰性の可能性、ならびに陽性と判定された患者における重症化(集中治療室への入室、非侵襲的/侵襲的人工呼吸器の使用または死亡と定義)の可能性との関連を評価した。 解析はベイズ法を用い、上記降圧薬による治療歴がある患者と未治療患者のアウトカムを、投与された薬剤クラスについて傾向スコアマッチング後に、全体および高血圧症患者とで比較した。事前に、10ポイント以上の差を重要な差と定義した。陽性率は全体46.8%/高血圧患者34.6%、重症化率17.0%/24.6% COVID-19の検査を受けた1万2,594例中5,894例(46.8%)が陽性で、このうち重症化したのは1,002例(17.0%)であった。高血圧症の既往歴を有する患者は4,357例(34.6%)で、うち2,573例(59.1%)が陽性、さらにこのうち634例(24.6%)が重症化した。 薬剤のクラスとCOVID-19陽性率増加との間に、関連性は確認されなかった。また、検討した薬剤のいずれも、陽性患者における重症化リスクの重要な増加と関連がなかった。 なお著者は、COVID-19検査の診断特性の多様性、検査の真の感度が不明なままであること、COVID-19の重症例の割合が過大評価されている可能性などを挙げ、本研究の結果は限定的であるとしている。

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新型コロナ、抗原検出用キットの活用に関するガイドライン発表/厚労省

 5月13日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」(富士レビオ)が製造販売承認を取得した。これを受け、厚生労働省では同日開催された第40回厚生科学審議会感染症部会において、「SARS-CoV-2 抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」について審議、了承した。ガイドラインでは、これまでに得られている科学的知見に基づき、同キットの最適な使用を推進する観点から、考え方や留意事項が示されている。陽性の場合は確定診断に使用可、無症状者や陰性確認には適さない 同キットは、酵素免疫反応を測定原理としたイムノクロマト法による、鼻咽頭ぬぐい液中に含まれるSARS-CoV-2の抗原を、迅速かつ簡便に検出するもの。特別な検査機器を要さず、簡便かつ短時間(約30分間)で検査結果を得ることができる。使用対象となる患者については、「医師が、新型コロナウイルス感染症を疑う症状があると判断した者に対して、必要性を認めた時に使用する」と明記。同キットで陽性となった場合は、確定診断とすることができる。 一方で、核酸増幅法(PCR)と比較して検出に一定以上のウイルス量が必要であることから、「現時点では、無症状者に対する使用、無症状者に対するスクリーニング検査目的の使用、陰性確認等目的の使用は、適切な検出性能を発揮できず、適さない」とされている。ただし、緊急入院を要する患者で症状の有無の判断が困難な場合については、症状があるものと判断される。また、陰性の場合には、確定診断のため、医師の判断においてPCR検査を行う必要があるとされ、当面は、PCR検査と抗原検査を併用して使用することを求めている。 退院判定の際の活用については、検出にPCR検査と比較して一定以上のウイルス量が必要なこと、PCR検査との一致性に関するエビデンスが十分ではないことから、適さないとされている。クラスターが発生している医療機関、施設等の濃厚接触者等に対する検査については、感染の疑いが高い者はPCR検査との併用、それ以外の者は抗原検査を実施することも検討されるとしている。臨床試験でのPCR検査との陽性一致率は? RT-PCR法と性能を比較した2つの試験結果が示されており、国内臨床検体(72例)を用いた試験では、陽性一致率37%(10/27例)、陰性一致率98%(44/45例)、であった。陽性検体についての陽性一致率を、RT-PCR法テスト試料中の換算RNAコピー数(推定値)に応じて比較すると、100コピー/テスト以上の検体に対して一致率83%(5/6例)、30コピー/テスト以上の検体に対しては一致率50%(6/12例)であった。  行政検査検体(124例)を用いた試験では、陽性一致率66.7%(16/24例)、陰性一致率 100%(100例/100例)、全体一致率94%(116例/12例)であった。1,600コピー/テスト以上の検体に対して一致率100%(12/1例)、400コピー/テスト以上の検体に対しては一致率93%(14/15例)、100コピー/テスト以上の検体に対しては 一致率83%(15/18例)であった。 本キットでは承認条件として、・承認時のデータが極めて限られていることから、製造販売後に臨床性能を評価可能な適切な試験を実施すること。・製造販売後に実保存条件での安定性試験を実施すること。 の2点が求められており1)、ガイドラインでも、今後、臨床研究によりさらなる評価を実施することとしており、評価結果が得られた場合には、速やかに反映させると明記されている。まずは発生数の多い地域の帰国者・接触者外来、特定機能病院から供給開始 本キットの供給が十分になるまでは、検査の需給がひっ迫することを想定し、また、陰性時はPCR検査での確認が必要になるケースも想定されることから、患者発生数の多い都道府県における帰国者・接触者外来(地域・外来検査センターを含む)および全国の特定機能病院から供給を開始し、生産量の拡大状況を確認しつつ、対象地域およびPCR検査を実施できる医療機関を中心に供給対象を拡大していく。富士レビオのプレスリリースによると、週20万テストの生産体制を国内に構築しているという2)。 ガイドラインでは上記のほか、検体採取方法なども図示されている、また、今回示された運用は、当面の間のものであり、本キットに係る知見等は、引き続き研究により、知見を収集すると明記され、最新の知見をもとにガイドラインの見直しが適宜行われるとされている。

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