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生活改善にサポートが必要な患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第39回

■外来NGワード「意思を強く持ちなさい!」(長くは続かない)「ご家族の言うことに従いなさい!」(本人の気持ちを尋ねず)「きちんとしないと合併症が出ますよ!」(医学的脅し)■解説 誰の助けも必要とせず、意思を強く持って一人で頑張る患者さんがいる一方で、家族や知人のサポートが必要な患者さんもいます。こういった社会的サポートについて、ハウス(J.S.House)は4つの分類を提唱しています。金銭面の援助や車による送迎など、直接的に力を貸すのは『道具的サポート』、知識や情報を「こんな運動をしたらいいよ!」「近くのフィットネスジムに行ってみれば?」などと提供するのは『情報的サポート』といいます。また、「頑張っているね!」と励ましたり、愚痴を聞いたりして相談に乗るのは『情緒的サポート』、食事や運動、服薬がうまくいっているかどうかの確認は『評価的サポート』といいます。これらの社会的サポートを必要としているにもかかわらず、うまく得られていない患者さんには、サポーター向けの文書(手紙)を作るという手があります。 たとえば、「一緒に運動しませんか?」「お菓子は週1回までがいいですね?」など、自分にできることについての問い掛けや、「頑張っているわね。応援しています」など、励ましの声掛けをお願いします。逆に、「ダイエットしているのにあまり変わらないわね」「私は普通に食べるけど」などと言って、モチベーションを下げるような言動には気を付けていただけると助かります。などの内容が有効です。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師調子はいかがですか?患者頑張っていますが、なかなか一人では難しいですね。医師どなたか、身近で○○さんをサポートしてくれる人はいませんか?患者うーん、旦那と娘ですかね。医師そうですか。では、お二人に対して思うことはありますか?患者娘は甘いものをよく買ってくるので、つい食べてしまうんですよね。医師なるほど。お母さんの分まで買って来るんですね。旦那さんは?患者少し痩せたのに「あまり変わらないな」ですって…。医師それでは、今の気持ちを基にして、旦那さんと娘さんにお手紙を書いておきますね。患者本当ですか。ありがとうございます。(うれしそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「○○さんをサポートしてくれる人はいますか?」(サポーターの確認)「サポーターさんへのお願いのお手紙を作っておきますね」(サポートの内容、やる気が出る声掛けとNGワードを記載)Williams DR, House JS. WHO Reg Publ Eur Ser. 1991;37:147-172.

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スタチン+降圧薬のポリピル、アスピリン併用で心血管イベント抑制/NEJM

 心血管疾患がなく、中等度以上の心血管リスクを有する集団において、スタチンと3つの降圧薬の合剤であるポリピル(polypill)とアスピリンの併用療法はプラセボ+プラセボと比較して、心血管イベントの発生率が約3割低いことが、カナダ・マックマスター大学のSalim Yusuf氏らが行ったTIPS-3試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月13日号に掲載された。世界では毎年、心血管疾患による死亡が約1,800万件発生しており、その80%以上を低~中所得国が占めるという。血圧上昇とLDLコレステロール値上昇は、心血管疾患の最も重要な修正可能なリスク因子であり、降圧薬と脂質低下薬を組み合わせたポリピルが有益な可能性が示唆されている。一方、アスピリンは、心血管疾患患者に対する有用性が証明されているが、心血管疾患の1次予防における単独での役割、あるいはポリピルに含まれる1剤としての役割は明らかにされていない。ポリピル単独とアスピリン単独とポリピル+アスピリン併用を比較 本研究は、2×2×2ファクトリアルデザインの二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、9ヵ国(インド、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、コロンビア、カナダ、タンザニア、チュニジア)の86施設が参加し、2012年7月~2017年8月の期間に患者登録が行われた(Wellcome Trustなどの助成による)。 対象は、心血管疾患がなく、INTERHEARTリスクスコア(0~48点、点数が高いほど心血管リスクが高い)で中等度または高リスクの50歳以上の男性および55歳以上の女性であった。被験者は、ポリピル(シンバスタチン40mg、アテノロール100mg、ヒドロクロロチアジド25mg、ramipril 10mgを含有)またはプラセボを毎日、アスピリン75mgまたはプラセボを毎日、ビタミンDまたはプラセボを毎月投与する群に無作為に割り付けられた。 今回は、ポリピル単独とプラセボ、アスピリン単独とプラセボ、ポリピル+アスピリンとダブルプラセボの比較の結果が報告された。 ポリピル単独およびポリピル+アスピリンとそれぞれのプラセボとの比較における主要アウトカムは、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心停止への蘇生術、心不全、動脈血行再建)の複合とした。アスピリンとプラセボの比較における主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合であった。ポリピル+アスピリン併用群の主要アウトカム:4.1% vs.5.8% 5,713例が無作為化の対象となり、平均フォローアップ期間は4.6年であった。参加者はインドが47.9%と最も多く、次いでフィリピンが29.3%であった。ベースラインの平均年齢は63.9歳、52.9%が女性で、高血圧/血圧上昇が83.8%、糖尿病/血糖値上昇が36.7%で認められ、平均収縮期血圧は144.5mmHg、平均心拍数は77.0拍/分、平均LDLコレステロール値は120.7mg/dL(3.1mmol/L)だった。 試験期間中、ポリピル単独とポリピル+アスピリン併用を合わせた群はプラセボ群と比較して、平均収縮期血圧が5.8mmHg低く、平均心拍数が4.6拍/分少なく、平均LDLコレステロール値が19.0mg/dL(0.50mmol/L)低かった。 ポリピル比較の主要アウトカムは、ポリピル群(2,861例)が126例(4.4%)、プラセボ群(2,852例)は157例(5.5%)で発生した(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.63~1.00)。また、アスピリン比較の主要アウトカムは、アスピリン群(2,860例)が116例(4.1%)、プラセボ群(2,853例)は134例(4.7%)で発生した(HR:0.86、95%CI:0.67~1.10)。 ポリピル+アスピリン比較の主要アウトカム(初発)は、ポリピル+アスピリン群(1,429例)が59例(4.1%)、ダブルプラセボ群(1,421例)は83例(5.8%)で発生した(HR:0.69、95%CI:0.50~0.97)。初発と再発を合わせた主要アウトカムは、ポリピル+アスピリン群が64例、ダブルプラセボ群は93例で発生した(HR:0.68、95%CI:0.48〜0.96)。 副作用により試験を中止した参加者数は、ポリピル+アスピリン群とダブルプラセボ群で同程度であった(筋肉症状:5例、7例、消化管出血:3例、1例、胃腸症[dyspepsia]:3例、3例、胃炎:19例、22例、消化性潰瘍:3例、3例)。また、低血圧およびめまいの発生率は、ポリピルを投与された群が、それぞれに対応するプラセボ群に比べて高かった。低血圧およびめまいにより試験薬を中止した参加者は、ポリピル+アスピリン群が45例、ダブルプラセボ群は22例だった。大出血は、ポリピル+アスピリン群が9例、ダブルプラセボ群は12例で報告された。 著者は、「併用群の心血管イベントに関する有益性は、LDLコレステロール値と血圧の適度な低下に、アスピリンによる有益性が加わった場合に予測されたものと一致していた」としている。

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第32回 新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足

<先週の動き>1.新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足2.財政制度等審議会、受益者と負担のバランスを求める建議を提出3.政府、後期高齢者の窓口2割負担へ見直しに議論を加速4.経済財政諮問会議で、厚生労働大臣、令和3年度介護報酬改定に向けた方針を発表5.コロナ感染拡大第3波、患者団体から要望書相次ぐ6.医療計画の見直し、新興感染症に対する医療を6事業目に追加1.新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足新型コロナウイルス感染に対応する医療機関で働く医療従事者を支援する「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度」が新しく11月より発足した。この制度は、新型コロナウイルスと向き合う医療従事者の支援として寄せられた寄付金を活用して、万が一コロナウイルスに感染した場合でも一定の収入を補償することを目的に、新型コロナウイルス感染症患者に対応した医療従事者が感染し休業した場合の支援制度(医療従事者支援制度)に対する補助を要望して発足したもの。医療機関の開設者・管理者から加入の申し込みによって、政府労災などの認定を受けて4日以上休業した場合、休業補償保険金20万円、死亡すれば死亡補償金最大500万円を受け取れる。保険料は医療従事者1名あたり1,000円/年と負担も軽く、医療資格者以外も補償対象となる。加入できるのは国内の病院や診療所(共に保険医療機関)、介護医療院、助産所、訪問看護ステーションで、募集期間は4期に分かれ、最終締め切りは2021年2月15日。詳細は下記を参照されたい。(参考)日本医療機能評価機構新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度特設サイト2.財政制度等審議会、受益者と負担のバランスを求める建議を提出財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会は、11月25日に2021年度予算の編成に向けて「秋の建議」をまとめ、麻生財務相に提出した。この中で、社会保障については、2022年に団塊の世代が後期高齢者となることを見据え、給付が高齢者中心・負担は現役世代中心となっている患者負担の仕組みの見直しを求め、後期高齢者の自己負担を、可能な限り広範囲で8割給付(2割負担)の導入と現役世代の拠出金負担の軽減を求めている。また、薬価については2021年度から毎年改定を行うため、初年度にあたっては全品改定の実施を求めている。このほか都道府県医療費適正化計画の見直し、国保の都道府県単位化の趣旨の徹底やデジタル化の推進、医療扶助については、頻回受診や長期入院への対策を求める内容となっている。(参考)令和3年度予算の編成等に関する建議3.政府、後期高齢者の窓口2割負担へ見直しに議論を加速11月24日、菅内閣は全世代型社会保障検討会議を首相官邸で開催し、75歳以上の後期高齢者が医療機関で支払う窓口負担をめぐる問題について議論を行い、1割負担から負担増となる後期高齢者の対象範囲について、菅総理からは「能力に応じた負担」について、年内に取りまとめる最終報告を求めた。日本医師会からは、後期高齢者は1人当たり医療費が高いので、患者負担の割合はすでに十分に高いとし、患者負担の引き上げによって、受診控えや負担増による必要な医療を遠慮する可能性を指摘していた。厚生労働省は11月26日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、医療保険制度改革について討論し、現状の75歳以上の後期高齢者医療を支援するために、現役世代の保険料で負担を見直さないままでいると、今年度6兆8,000億円が5年後には8兆2,000億円になるという見通しを示した。会議では、現状の高齢者医療の持続可能とするために、現役世代の負担軽減を図る改革は待ったなしの課題としており、現行の窓口負担1割のままでは現役世代の負担が急増することから先送りは認めない、とする意見も出たものの、コロナ感染拡大の中、国民の不安を増す制度改正について異論が出され、結論は出ないまま引き続き検討を行なうこととなった。(参考)全世代型社会保障検討会議(第11回)配布資料 令和2年11月24日第135回社会保障審議会医療保険部会 資料 令和2年11月26日4.経済財政諮問会議で、厚生労働大臣、令和3年度介護報酬改定に向けた方針を発表11月27日、内閣府は経済財政諮問会議を開催し、この中で田村 憲久厚生労働大臣が医療・介護分野の取り組みを発表した。コロナ感染拡大下でも「地域医療構想」は、基本的な枠組み(病床必要量の推計等)を維持した上で、着実に取り組みを実施し、病床機能再編支援制度等に消費税財源を充当するなどの対応を実施するとした。また令和3年度介護報酬改定については、感染症や災害への対応力強化、地域包括ケアシステムの推進、自立支援・重度化防止の取組の推進、介護人材の確保・介護現場の革新を実現し、制度の安定性・持続可能性の確保を求めるために改訂を行っていくことを明らかにした。このほかオンライン資格確認、オンライン診療、後発薬の使用促進などについて述べた。(参考)第17回経済財政諮問会議  田村臨時議員提出資料 令和2年11月27日 令和3年度予算に向けた社会保障の課題・取組と今後の雇用政策の方向性第17回経済財政諮問会議 令和2年11月27日 会議資料5.コロナ感染拡大第3波、患者団体から要望書相次ぐ急速な新型コロナウイルスの感染拡大により、大学病院などの病床が逼迫しつつあることなどを背景に、がん患者や難病患者の団体は、治療継続が困難にならないよう、国に対策を求める要望書を提出した。2020年11月25日は難病患者の団体である日本難病・疾病団体協議会が、27日には全国がん患者団体連合会が、国に対し「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急要望書」を提出している。要望書では、感染対策強化と、手術や検査、オンライン診療の実施と拡充を求め、コロナ対策の病床確保のためにがん患者が転院せざるを得ない状況を回避するために、速やかに必要な施策をとることを求める内容となっている。(参考)全国がん患者団体連合会 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急要望書2020年11月27日日本難病・疾病団体協議会 緊急要望書2020年11月25日6.医療計画の見直し、新興感染症に対する医療を6事業目に追加厚生労働省は11月19日に「医療計画の見直し等に関する検討会」を開催し、現行の医療計画の5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患.)・5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療)に、新たに「新興感染症等の感染拡大時における医療」への対応を6事業目として加えることで合意した。今後は、医療法の改正し、2024年度に策定する第8次医療計画に盛り込まれることになる。また「外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等について」も議論され、医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関を明確にするために、各医療機関から都道府県に、外来機能のうち、「医療資源を重点的に活用する外来」(仮称)に関する医療機能の報告(=外来機能報告〈仮称〉)を行うこととし、これにより、地域ごとに、どの医療機関で、どの程度、「医療資源を重点的に活用する外来」が実施されているかの明確化を図ることになる。(参考)第23回 医療計画の見直し等に関する検討会 令和2年11月19日

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蟻の一穴が全身の代謝と機能不全を改善するとは(SGLT2阻害薬とHFrEFの話)(解説:絹川弘一郎氏)-1322

 EMPEROR-Reducedは心血管死亡を抑制できず、DAPA-HFほどのインパクトは正直なかったが、メタ解析しても本質的違いは認められず、SGLT2阻害薬は完全にクラスエフェクトかどうかは微妙だが、この2剤(とカナグリフロジンも?)を考えている限り、HFrEFのNYHA IIには必ず使用すべきものとなった。あらためて言うまでもないが、糖尿病の有無にはまったく関係ない。まず、EMPEROR-ReducedとDAPA-HFの違いを説明する。EMPEROR-ReducedでEF30~40%の患者で全然イベントが減っていない。これが差をもたらしている。DAPA-HFでのEF別解析を見ると微妙にEF40%近くでHRが1の方向に向かっており、DECLARE-TIMI58のサブ解析(ちなみにこの京大加藤先生のCirculationは素晴らしいの一言、読んでいない人は一読を!)でも示されているようにSGLT2阻害薬はどうやらHFrEF(あとはMI後―これはHFrEFと考え方は同じ―これもDECLARE-TIMI58のサブ解析でCirculationになってる)の薬剤であるようだが、さすがにEF35%で効きませんと言われたらびっくりである。これはEMPEROR-Reducedのエントリー基準が悪い。EFが30%以上の患者ではイベント発生率を均てん化するという目的でNT-proBNP高値(EF31~35%で1,000以上、36~40%で2,500以上)の患者しかエントリーしないとしてしまった。おそらくその場合NYHA的には重症であろうし、腎機能低下例も多いはずで、DAPA-HFはこのような訳のわからないことはしていない。EFもBNPも予後のサロゲートマーカーであり、イベント発生率を調整するために全体でEF<40%プラスNT-proBNP>600などとするのは最近一般化しているが、今回あまりにいじり過ぎで失敗したといえよう。そもそも1,000とか2,500になんの根拠があるのか全然わからない。なお、DAPA-HFとのメタ解析を見てもNYHA III-IVにはSGLT2阻害薬は予後改善効果がほとんどないので、あまりBNPが高い症例は不向きである。そのための薬剤はvericiguatとomecamtiv mecarbilが待っている。 上記でも触れたようにSGLT2阻害薬はそんなに重症でないNYHA IIのHFrEF患者がスイートスポットである。ある意味ARNIと同じくらい(もちろん、併用すべき)。EF別のDAPA-HFの解析を見てもEF<15%ではあまり効いていない。心筋梗塞後の少しEFが低下した症例などはミッドレンジEF40~50%でも効くかもしれない(これは今後検証される予定)。私はSGLT2阻害薬をHFrEF治療のファーストラインドラッグ(ARNI/β遮断薬/MRAに加えて)と考える理由は、この薬剤の有効性のメカニズムが交感神経系やRAAS系とほとんどオーバーラップしていないながら、HFrEFの予後改善の作法どおり、リバースリモデリングを起こしているからである。まずカプランマイヤー曲線を見ても投与直後から心不全入院を抑制するメカニズムはいろいろ考えてもやはり利尿しかない。交感神経系については利尿後に心拍数が上がらないところからある程度の抑制的作用があると思われるが、さほど強い交感神経抑制作用は今まで報告はないようである(仮にあってもβ遮断薬が要りませんということはありえない、ちなみにCANVASではβ遮断薬不使用でイベント抑制効果が消える)。RAAS系についてはこの利尿期にむしろわずかながら活性化されることは私たちも示しているが、他のグループも同様の結果を得ている(だからARNIとMRAは入れておく必要あり)。つまり、今までの神経体液性因子のストーリーとは別の作用点があるはずである。また遠隔期の予後改善効果を利尿一本やりではやはり無理がある。さらに急性期の利尿効果は(自明ともいえるが)血糖依存性であることはわれわれも示しており、non-DMの患者でのEMPEROR-Reducedの解析を見ると最初の3ヵ月心不全入院のカプランマイヤー曲線が分離していないことは非糖尿病心不全患者での急性期利尿作用の貢献度が相対的に低いことは感じられる。 ケトン体増加による心筋代謝改善については一定の役割はあると思われる。しかし、問題もある。糖尿病を有しないHFrEFで糖代謝依存になっているときにケトン体が代替燃料というのはわかりやすいが、そうたくさんはケトン体は増えていない。一方糖尿病患者ではSGLT2阻害薬でケトン体は増えるものの、インスリン抵抗性で糖代謝が減少しているときにそれで糖代謝が改善するというVerma論文のロジックがよくわからない。さらに糖尿病とHFrEFが共存するとき、代謝がどうなっているのか、ほとんど知られていない。心筋代謝は百人いれば百の説があるくらい混乱を極めており、まだまだこれからの分野である。 近位尿細管細胞のATP消費抑制とhypoxia改善によるHIF-1α減少と腎保護効果に合わせてエリスロポエチンとヘモグロビンの増加についてはHIF-2α増加を介するといわれてきているが、ヘモグロビンの増加自体は0.5程度であり、以前のRED-HF試験の結果(ダルベポエチンで1.5増加させた)を見てもその程度で心不全の予後は改善しない。補助的には効いているかもしれないが、ヘモグロビン値はHIF-2αシグナリングのマーカーと考えるのが良いと思われる。HIF-2αの活性化はSGLT2阻害薬による擬似飢餓状態のシグナリングSIRT1から来るようである(SIRT1シグナリングからオートファジーの活性化とか酸化ストレス障害の抑制とかなってくるとホント?感が強くなってくるが)。ここが臨床的に検証されるのはとても困難であろうし、この擬似飢餓状態シグナリングが心筋細胞でも生じるというのが必要であるが、少なくともエリスロポエチンとヘモグロビンとヘマトクリットが増えているという部分は間違いない事実であり、mediation解析でも心血管死を説明するのにヘモグロビンが最強の因子であるわけで、擬似飢餓状態のシグナリングが一番魅力的な仮説のように思われる。SGLT2阻害薬は近位尿細管にのみ直接作用点があるにしてはその蟻の一穴を通して全身への波及効果が力強く、糖尿病治療薬から脱皮して、今までに遭遇したことのないCKD治療薬(DAPA-CKD)と心不全治療薬となったようである。

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セマグルチド、NASH治療に有効な可能性/NEJM

 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療において、セマグルチドはプラセボに比べ、肝線維化の悪化を伴わないNASH消散が達成された患者の割合が有意に高いが、肝線維化の改善効果には差がないことが、英国・バーミンガム大学のPhilip N. Newsome氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月13日号で報告された。NASHは、脂肪蓄積と肝細胞損傷、炎症を特徴とする重度の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)であり、肝線維化や肝硬変と関連し、肝細胞がんや心血管疾患、慢性腎臓病、死亡のリスク増大をもたらす。また、インスリン抵抗性は2型糖尿病と肥満に共通の特徴で、NASHの主要な病因とされる。2型糖尿病治療薬であるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチドは、肥満および2型糖尿病患者の減量に有効で、血糖コントロールを改善し、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値や炎症マーカーを抑制すると報告されているが、NASH治療における安全性や有効性は明らかにされていない。16ヵ国143施設が参加したプラセボ対照無作為化第II相試験 本研究は、セマグルチドが組織学的なNASHの消散に及ぼす効果を評価する目的で実施された二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、日本を含む16ヵ国、143施設が参加し、2017年1月~2018年9月の期間に患者登録が行われた(Novo Nordiskの助成による)。 対象は、年齢18~75歳(日本は20~75歳)、生検でNASHが証明され、ステージF1、F2、F3の肝線維化を有し、2型糖尿病の有無は問われず、BMI>25の患者であった。被験者は、3つの用量(0.1、0.2、0.4mg)のセマグルチドまたはそれぞれに対応するプラセボを1日1回皮下投与する群に、各用量群とも3対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、72週の時点における肝線維化の悪化のないNASHの消散とした。NASH消散は、NASH Clinical Research Networkの分類で炎症性細胞の軽度残存以下(スコア0~1点)で、かつ肝細胞の風船様腫大がない(スコア0点)場合と定義された。副次エンドポイントは、NASHの悪化がなく、かつ肝線維化の1ステージ以上の改善であった。これらのエンドポイントの解析は、肝線維化がステージF2またはF3の患者に限定して行われ、他の解析は全ステージの患者で実施された。肝酵素や体重減少も用量依存性に改善 320例(肝線維化のステージF2、F3は230例)が登録され、セマグルチド0.1mg群に80例、同0.2mg群に78例、同0.4mg群に82例、プラセボ群には80例が割り付けられた。全体の平均年齢は55歳、61%が女性、62%が2型糖尿病であり、平均体重は98.4kg、平均BMIは35.8であった。肝線維化のステージ別では、F1が90例(28%)、F2が72例(22%)、F3は158例(49%)だった。 72週時において線維化の悪化がなくNASHが消散した患者の割合は、0.1mg群が40%、0.2mg群が36%、0.4mg群が59%で、プラセボ群は17%であった。0.4mg群のプラセボ群に対するオッズ比(OR)は、6.87(95%信頼区間[CI]:2.60~17.63)であり、0.4mg群で有意に優れた(p<0.001)。一方、72週時の肝線維化の1ステージ以上の改善は、0.4mg群では43%、プラセボ群では33%の患者で達成されたが、両群間に有意な差は認められなかった(OR:1.42、95%CI:0.62~3.28、p=0.48)。 ALTおよびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は、いずれもセマグルチドの用量依存性に低下し、72週時のベースライン時に対する測定値の比は、0.4mg群が0.42であったのに対し、プラセボ群は0.81だった(比が小さいほど、低下率が大きい)。また、72週時の体重減少率は用量依存性に増加し、0.4mg群が12.51%、プラセボ群は0.61%であった。セマグルチド群では、2型糖尿病の有無を問わず、糖化ヘモグロビン値の低下率が大きかった。 0.4mg群はプラセボ群に比べ、悪心(42% vs.11%)、便秘(22% vs.12%)、嘔吐(15% vs.2%)の発生率が高かった。悪性新生物は、セマグルチド群で3例(1%)報告されたが、プラセボ群ではみられなかった。全体として、新生物(良性、悪性、詳細不明)の発生率はセマグルチド群で15%、プラセボ群では8%と報告され、特定の臓器での発生のパターンは観察されなかった。 著者は、「NASH消散と用量依存性の体重減少に関して大きな有益性が得られたとはいえ、肝線維化の改善に有意差がなかったという事実は予想外であった。肝線維化の重症度が高い患者が多かったことから、72週という期間では、肝線維化のステージの改善が明確になるまでの時間が十分でなかった可能性がある」としている。

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間食がなかなかやめられない患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第38回

■外来NGワード「間食をやめなさい!」(できたら苦労しない)「お菓子を買わないようにしなさい!」(わかっているけどできない)「もう一生分のお菓子は食べたでしょ!」(非論理的)■解説 血糖コントロール不良の原因が明らかに間食のし過ぎにもかかわらず、なかなかやめられない患者さんがいます。そういった患者さんに「間食をやめなさい!」「お菓子を買わないようにしなさい!」と一方的に伝えても、行動に移してくれないでしょう。食べることが好きな患者さんは、目の前に食べ物があると、つい手が出てしまいます。そして、一度食べ始めるとなくなるまで食べてしまいます。つまり、そもそもの“食べたくなる刺激”を減らすことが大切なのです。これを「刺激統制法」といいます。しかし、「食べ物を目に付かないところに置きなさい!」と指導したところで、患者さんは自分で置いた場所を覚えています。ただ隠してもらうだけでなく、たとえば戸棚の奥、高い場所、ガムテープ張りの開けにくい箱の中にしまって、「1つまで!」と張り紙をするなど、食べることに困難を加える工夫が必要です。さらに、本当に食べたいのかを自問自答してもらうことも大切です。刺激統制法に認知の再構成を組み合わせることで、間食の機会が減らせるとよいですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師最近、間食はしていますか?患者なるべく控えるようにと思いながら、実際はなかなか…。医師そうですか。では、どんな工夫をされていますか?患者低カロリーの食品を選ぶようにしたり、小袋のお菓子を買うようにしたりしています。医師なるほど。いろいろ工夫されていますね。けど、結局食べちゃう…と。患者そうなんです。あると食べちゃうんですよね。医師ものは考えようですが、空腹感は脂肪が燃え始めている証拠ですよ。患者えっ、そうなんですか?医師はい。なので、少しおなかが空いてきたタイミングがダイエットの分かれ道です。そこで、自問自答してみてください。患者自問自答…?医師たとえば、おなかを少しつまんでみて、「今、本当に食べたいか」を自分に問い掛けるんです。食べたら、つまんだ脂肪は減らずに、さらに増えるんじゃないでしょうか…。患者なるほど、それは効果がありそうです。頑張ってやってみます。(うれしそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「空腹感は脂肪が燃え始めた証拠です。食べる前におなかをつまんでみて、本当に食べたいかどうかを自問自答してみてもいいかもしれませんね」

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英国ガイドラインにおける年齢・人種別の降圧薬選択は適切か/BMJ

 非糖尿病高血圧症患者の降圧治療第1選択薬について、英国の臨床ガイドラインでは、カルシウム拮抗薬(CCB)は55歳以上の患者と黒人(アフリカ系、アフリカ-カリブ系など)に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ACEI/ARB)は55歳未満の非黒人に推奨されている。しかし、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のSarah-Jo Sinnott氏らによる同国プライマリケア患者を対象としたコホート試験の結果、非黒人患者におけるCCBの新規使用者とACEI/ARBの新規使用者における降圧の程度は、55歳未満群と55歳以上群で同等であることが示された。また、黒人患者については、CCB投与群の降圧効果がACEI/ARB投与群と比べて数値的には大きかったが、信頼区間(CI)値は両群間で重複していたことも示された。著者は、「今回の結果は、最近の英国の臨床ガイドラインに基づき選択した第1選択薬では、大幅な血圧低下には結び付かないことを示唆するものであった」とまとめている。BMJ誌2020年11月18日号掲載の報告。12、26、52週後の収縮期血圧値の変化を比較 研究グループは、英国臨床ガイドラインに基づく推奨降圧薬が、最近の日常診療における降圧に結び付いているかを調べるため観察コホート試験を行った。英国プライマリケア診療所を通じて2007年1月1日~2017年12月31日に、新規に降圧薬(CCB、ACEI/ARB、サイアザイド系利尿薬)の処方を受けた患者を対象とした。 主要アウトカムは、ベースラインから12、26、52週後の収縮期血圧値の変化で、ACEI/ARB群vs.CCB群について、年齢(55歳未満、または以上)、人種(黒人またはそれ以外)で層別化し比較した。2次解析では、CCB群vs.サイアザイド系利尿薬群の新規使用者群の比較も行った。 ネガティブなアウトカム(帯状疱疹の発症など)を用いて、残余交絡因子を検出するとともに、一連の肯定的なアウトカム(期待される薬物効果など)を用いて、試験デザインが期待される関連性を特定できるかを判定した。ACEI/ARB服用約8万8,000例、CCB約6万7,000例、利尿薬約2万2,000例を追跡 52週のフォローアップに包含された各薬剤の新規使用者は、ACEI/ARBが8万7,440例、CCBは6万7,274例、サイアザイド系利尿薬は2万2,040例だった(新規使用者1例当たりの血圧測定回数は4回[IQR:2~6])。 非糖尿病・非黒人・55歳未満の患者について、CCB群の収縮期血圧の低下幅はACEI/ARB群よりも大きく相対差で1.69mmHg(99%CI:-2.52~-0.86)だった。また、55歳以上の患者の同低下幅は0.40mmHg(-0.98~0.18)だった。 非糖尿病・非黒人について6つの年齢群別で見たサブグループ解析では、CCB群がACEI/ARB群より収縮期血圧値の減少幅が大きかったのは、75歳以上群のみだった。 非糖尿病患者において、12週後のCCB群とACEI/ARB群の収縮期血圧値の減少幅の差は、黒人群では-2.15mmHg(99%CI:-6.17~1.87)、非黒人では-0.98mmHg(-1.49~-0.47)と、いずれもCCB群でACEI/ARB群より減少幅が大きかった。

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永遠の命題PCI vs.CABG、SYNTAXスコアII 2020開発は、本当に進化か?(解説:中川義久氏)-1318

 冠血行再建におけるPCI vs.CABGは永遠の命題なのであろう。次々と情報が提供される。その度に、霧が晴れるようにスッキリしていくのではなく、出口のない迷宮をさまよう気持ちになる。 PCI vs.CABGの比較において、最も重要で代表的な臨床試験が2005年から2007年に施行されたSYNTAX試験である。3枝疾患または左主幹部病変を有する患者を、PCIかCABGに無作為に割り付けて比較したものである。このSYNTAX試験の登録患者を10年後まで追跡するSYNTAX Extended Survival(SYNTAXES)試験から、長期予後の予測モデルである「SYNTAXスコアII 2020」が開発されたことが、2020年10月8日付のLancet誌に報告された。筆頭著者は、当該施設に留学していた日本人であり、その努力と貢献はうれしく、賞賛に値する。 ここで復習してみよう。古典的には、冠動脈病変の重症度は1枝疾患、2枝疾患や3枝疾患といった罹患病変枝数や左前下行枝近位部の有無によって評価されてきた。しかし、同じ3枝病変であっても重症度に幅があることは臨床現場で認識されていた。これを受け、冠動脈病変の形態と重症度について、とくにPCIを実施する立場から客観点にスコア化したものがSYNTAXスコアである。病変枝数や部位だけでなく、完全閉塞・分岐部・入口部・屈曲・石灰化病変などに応じて点数を付ける。 次に開発されたのが、SYNTAXスコアIIである。SYNTAXスコアに患者背景を組み入れた指標として提唱された。SYNTAXスコアに加えて年齢、性別、クレアチニンクリアランス、左室駆出率、左主幹部病変、末梢動脈疾患、COPDなどを背景因子として組み入れて算出する。これはCABGまたはPCI術後の4年後の予測に有用であるという。 今回、SYNTAXスコアIIを基に「SYNTAXスコアII 2020」が開発された。この、SYNTAXスコアII 2020は、SYNTAXスコアに加えて、3枝病変か左主幹部病変かの分類、年齢、クレアチニンクリアランス、左室駆出率、末梢動脈疾患、COPD、喫煙、糖尿病などの背景因子から算出される。このスコアは、その患者にPCIを適用した場合とCABGを適用した場合の、10年後の総死亡予測および5年後の主要心血管イベントの予測に有用であるという。 「SYNTAXスコア」から「SYNTAXスコアII」そして「SYNTAXスコアII 2020」への推移は、本当にモデル構築の進化なのだろうか? この進化によって日常臨床のレベルが向上し、患者がより幸せになることに貢献するのであろうか。確かにモデルに組み入れる因子の数が多いほど緻密にモデルを構築できるであろう。これは、ある種当然といえる。最初にSYNTAXスコアが紹介されたときには、大きな感動を覚えた。これまで、1枝疾患、2枝疾患や3枝疾患といった大雑把な評価しかなかったが、臨床現場では動脈硬化の進行度や複雑性の違いを実感していた。「SYNTAXスコアすごい! これが、俺たちが表現したかったものだ!」という気持ちであった。SYNTAXスコアII 2020には、残念ながらこの感動はない。糖尿病患者の予後が不良であること、それもCABGに比してPCI患者において顕著に作用する因子であることなど先刻承知のことであり、現時点でも治療方針選択においては当然のように考慮されている因子である。それを、わざわざ組み込んだモデルだからといっても、その斬新性は低い。  数多くの因子から複雑に算出するモデルを構築して、ようやく差異を認識できるまでに、PCIとCABGが拮抗してきたのである。その場合に、モデルの示す数値の差よりも、患者の希望(選好)のほうが実臨床の現場では大切なのではないだろうか。考え出すと迷宮から抜け出すことは一層困難となる。いっそのこと判断は、AI様に任せる時代になるのであろうか。

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再び複数形で祝福だ!高齢者を国の宝とするために【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第30回

第30回 再び複数形で祝福だ!高齢者を国の宝とするために日本で行われた素晴らしい臨床研究であるELDERCARE-AF試験の結果がNEJM誌に掲載されました(N Engl J Med 2020;383:1735-1745)。心房細動があるとはいえ、通常用量の抗凝固療法がためらわれるような、出血リスクが高い80歳以上の高齢日本人を対象とした試験です。低用量NOACによる抗凝固療法が、大出血を増やすことなく脳卒中/全身性塞栓症を抑制することを示しました。この研究の参加者の平均年齢は86.6歳で、過半数の54.6%が85歳超えでした。このような高齢者は、ランダマイズ研究の除外基準に該当するのが常でした。高齢者に適応可能なエビデンスが存在しない中で、現場の医師は高齢の心房細動患者への対応を迫られています。脳卒中の減少と出血増加のバランスにおいて、試験の結果を慎重に解釈する必要がありますが、高齢者を対象としたエビデンスが登場したことは高く評価されます。日本社会は、高齢化において世界のトップランナーです。65歳以上の高齢者が全人口に占める割合である高齢化率が、7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」とされます。日本は1970年に高齢化社会、1994年に高齢社会、2007年に超高齢社会へと突入しました。高齢化社会から高齢社会となるまでの期間は、ドイツは42年、フランスは114年を要したのに対し、日本はわずか24年で到達しています。今後も高齢化率は上昇し、2025年には約30%、2060年には約40%に達すると予測されます。ある日の小生の外来診察室の風景です。「昨日、誕生日だったんですね。おめでとうございます!」電子カルテの年齢欄に、87歳0ヵ月と表示された女性患者さんに誕生祝いの声がけをしたのです。電子カルテは、誕生日を迎えたばかりの方や、間もなく誕生日の方が簡単にわかるので便利です。「87歳にもなって、めでたくなんかないですよ。これ以上、年はとりたくない」患者さんは、一見ネガティブな返答をしますが満面の笑みです。「今日まで長生きできてよかったね。年をとれることは素晴らしいことですね。おめでとう」外来では、誕生日の患者さんに必ず祝意を伝えることにしています。誕生日を祝福する意味はなんでしょうか。その意味は、その方の存在を肯定することにあります。子供の誕生日に成長を祝うこととは、少し意味合いが違います。自己の存在を肯定されることは、人間にとって最も満足度の高いことで、その節目が誕生日です。高齢人口が急速に増加する中で、医療、福祉などをどのように運用していくかは喫緊の課題です。逃げることなく正確に現状を把握し、次の方策を練ることは大切です。その議論の過程で、負の側面を捉えて嘆いていてもはじまりません。歴史上に類を見ない超高齢化社会の日本を世界が注目しています。対応に過ちがあれば同じ轍を踏むことがないようにするためです。今、必要なのは高齢者の存在を肯定する前向き思考です。高齢者を国の宝として活用するのです。その具体的成功例が、このELDERCARE-AF試験ではないでしょうか。高齢者医療のエビデンスを創出し、世界に向けて発信していくことは、高齢化社会のトップランナーである日本であるからこそ可能であり、むしろ責務です。あらためて、ELDERCARE-AF試験に関与された皆様に敬意を表し、複数形で祝福させていただきます。Congratulations!

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70歳以上、ビタミンD・ω3・運動による疾患予防効果なし/JAMA

 併存疾患のない70歳以上の高齢者において、ビタミンD3、オメガ3脂肪酸、または筋力トレーニングの運動プログラムによる介入は、拡張期または収縮期血圧、非脊椎骨折、身体能力、感染症罹患率や認知機能の改善について、統計学的な有意差をもたらさなかったことが、スイス・チューリッヒ大学のHeike A. Bischoff-Ferrari氏らが行った無作為化試験「DO-HEALTH試験」の結果で示された。ビタミンD、オメガ3および運動の疾患予防効果は明らかになっていなかったが、著者は「今回の結果は、これら3つの介入が臨床アウトカムに効果的ではないことを支持するものである」とまとめている。JAMA誌2020年11月10日号掲載の報告。8群に分けて3年間介入、血圧、身体・認知機能、骨折、感染症などへの影響を評価 研究グループは、ビタミンD3、オメガ3、筋力トレーニングの運動プログラムについて、単独または複合的介入が、高齢者における6つの健康アウトカムを改善するかを検討した。70歳以上で登録前5年間に重大な健康イベントを有しておらず、十分な活動性があり認知機能が良好な高齢者2,157例を対象に、二重盲検プラセボ対照2×2×2要因無作為化試験を実施した(2012年12月~2014年11月に登録、最終フォローアップは2017年11月)。 被験者は無作為に、次の8群のうちの1つに割り付けられ3年間にわたり介入を受けた。2,000 IU/日のビタミンD3投与・1g/日のオメガ3投与・筋力トレーニングの運動プログラム実施群(264例)、ビタミンD3・オメガ3投与群(265例)、ビタミンD3投与・筋トレ実施群(275例)、ビタミンD3投与のみ群(272例)、オメガ3投与・筋トレ実施群(275例)、オメガ3投与のみ群(269例)、筋トレ実施のみ群(267例)、プラセボ群(270例)。 主要アウトカムは6つで、3年間にわたる収縮期・拡張期血圧(BP)の変化、Short Physical Performance Battery(SPPB)、Montreal Cognitive Assessment(MoCA)、非脊椎骨折および感染症罹患率(IR)であった。6つの主要エンドポイントを複合比較し、99%信頼区間(CI)を示し、p<0.01を統計学的有意差と定義した。いずれも有意な影響はみられず 無作為化を受けた2,157例(平均年齢74.9歳、女性61.7%)のうち、1,900例(88%)が試験を完了した。フォローアップ期間中央値は2.99年であった。 全体的に、3年間の個別の介入または複合介入について、6つの主要エンドポイントに対する統計学的に有意なベネフィットは認められなかった。 たとえば、収縮期BPの平均変化差は、ビタミンDあり群とビタミンDなし群の比較では-0.8(99%CI:-2.1~0.5)mmHgで有意差なし(p=0.13)、オメガ3あり群とオメガ3なし群の比較では-0.8(-2.1~0.5)mmHgで有意差なし(p=0.11)であった。拡張期BPの平均変化差は、オメガ3あり群とオメガ3なし群では-0.5(-1.2~0.2)mmHgで有意差なし(p=0.06)であり、また、オメガ3あり群とオメガ3なし群の感染症罹患率の絶対差は-0.13(-0.23~-0.03)、IR比は0.89(0.78~1.01)で有意差はなかった(p=0.02)。 SPPB、MoCA、非脊椎骨折のアウトカムへの影響は認められなかった。 全体で死亡は25例で、群間で差はなかった。

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75歳以上への脂質低下療法、心血管イベントの抑制に有効/Lancet

 脂質低下療法は、75歳以上の患者においても、75歳未満の患者と同様に心血管イベントの抑制に効果的で、スタチン治療とスタチン以外の脂質低下薬による治療の双方が有効であることが、米国・ハーバード大学医学大学院のBaris Gencer氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年11月10日号に掲載された。高齢患者におけるLDLコレステロール低下療法の臨床的有益性に関する議論が続いている。2018年の米国心臓病学会と米国心臓協会(ACC/AHA)のコレステロールガイドラインでは、高齢患者に対する脂質低下療法の推奨度が若年患者よりも低く、2019年の欧州心臓病学会(ESC)と欧州動脈硬化学会(EAS)の脂質異常症ガイドラインは、高齢患者の治療を支持しているが、治療開始前に併存疾患を評価するための具体的な考慮事項を追加している。75歳以上における主要血管イベントをメタ解析で評価 研究グループは、高齢患者におけるLDLコレステロール低下療法のエビデンスを要約する目的で、系統的レビューとメタ解析を実施した(研究助成は受けていない)。 医学データベース(MEDLINE、Embase)を用いて、2015年3月1日~2020年8月14日の期間に発表された論文を検索した。対象は、2018年のACC/AHAガイドラインで推奨されているLDLコレステロール低下療法の心血管アウトカムを検討した無作為化対照比較試験のうち、フォローアップ期間中央値が2年以上で、高齢患者(75歳以上)のデータを含む試験であった。心不全または透析患者だけを登録した試験は、これらの患者にはガイドラインで脂質低下療法が推奨されていないため除外した。標準化されたデータ形式を用いて高齢患者のデータを抽出した。 メタ解析では、LDLコレステロール値の1mmol/L(38.67mg/dL)低下当たりの主要血管イベント(心血管死、心筋梗塞/他の急性冠症候群、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合)のリスク比(RR)を算出した。主要血管イベントの個々の構成要素のすべてで有益性を確認 系統的レビューとメタ解析には、スタチン/強化スタチンによる1次/2次治療に関するCholesterol Treatment Trialists' Collaboration(CTTC)のメタ解析(24試験)と、5つの単独の試験(Treat Stroke to Target試験[スタチンによる2次予防]、IMPROVE-IT試験[エゼチミブ+シンバスタチンによる2次予防]、EWTOPIA 75試験[エゼチミブによる1次予防、日本の試験]、FOURIER試験[スタチンを基礎治療とするエボロクマブによる2次予防]、ODYSSEY OUTCOMES試験[スタチンを基礎治療とするアリロクマブによる2次予防])の6つの論文のデータが含まれた。 合計29件の試験に参加した24万4,090例のうち、2万1,492例(8.8%)が75歳以上であった。このうち1万1,750例(54.7%)がスタチンの試験、6,209例(28.9%)がエゼチミブの試験、3,533例(16.4%)はPCSK9阻害薬の試験の参加者であった。フォローアップ期間中央値の範囲は2.2~6.0年だった。 LDLコレステロール低下療法により、高齢患者における主要血管イベントのリスクが、LDLコレステロール値の1mmol/L低下当たり26%有意に低下した(RR:0.74、95%信頼区間[CI]:0.61~0.89、p=0.0019)。これに対し、75歳未満の患者では、15%のリスク低下(0.85、0.78~0.92、p=0.0001)が認められ、高齢患者との間に統計学的に有意な差はみられなかった(pinteraction=0.37)。 高齢患者では、スタチン治療(RR:0.82、95%CI:0.73~0.91)とスタチン以外の脂質低下療法(0.67、0.47~0.95)のいずれもが主要血管イベントを有意に抑制し、これらの間には有意な差はなかった(pinteraction=0.64)。また、高齢患者におけるLDLコレステロール低下療法の有益性は、主要血管イベントの個々の構成要素のすべてで観察された(心血管死[0.85、0.74~0.98]、心筋梗塞[0.80、0.71~0.90]、脳卒中[0.73、0.61~0.87]、冠動脈血行再建術[0.80、0.66~0.96])。 著者は、「これらの結果は、高齢患者におけるスタチン以外の薬物療法を含む脂質低下療法の使用に関するガイドラインの推奨を強化するものである」としている。

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第47回 祝2周年!心電図クイズで腕試し(後編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第47回:祝2周年!心電図クイズで腕試し(後編)先月に引き続き、今回も連載2周年記念のクイズを出題します。今までに習った知識を総動員して、問題にチャレンジしてみてください。そして、できなかったところは、該当回のレクチャーをもう一度丁寧に読み直してみましょう。では、後編をどうぞ!症例提示1 18歳、女性。中学生時代に労作時息切れ、失神を契機に特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)と診断され、現在、投薬加療中。血圧84/50mmHg、脈拍数76/分・整、酸素飽和度(SpO2)94%。定期外来診察時の心電図を示す(図1)*:クイズの性格上、自動診断結果の一部を非表示にしている。(図1)定期外来診察時の心電図画像を拡大する【問題1】QRS電気軸の定性評価を与え、適切な数値として最も近いものを以下から1つ選べ。1)+0°2)+40°3)+90°4)+110°5)-70°解答はこちら定性評価:右軸偏位数値:4)解説はこちら電気軸と言えば、QRS波の「向き」に注目ですね。I誘導:下向き(陰性)、II(またはaVF)誘導:上向き(陽性)ですから、定性的な評価としては「右軸偏位」となります。この時点で「+90°~+180°」のゾーンに入ると予想されるので、何も考えずに4)が選べると思います。ただし、仮に「6)いずれでもない」という選択肢があっても、自身で定量的に(数値として)電気軸の位置を推定できるほうが望ましいです。実臨床では“選択肢”から選ぶわけではありませんからね。“肢誘導界”の円座標は覚えていますか?aVL(-30°) → I(0°) → 「-aVR」(+30°) → II(+60°) → aVF(+90°) → III(+120°) → 「-aVL」(+150°)「-aVR」と「-aVL」はそれぞれaVRとaVLを“真逆”(180°方向)にしたものです。見事に30°ずつ半周をカバーしており、それぞれの正反対を考えれば、実は円一周分“30°刻み”のアンテナが立っているわけです(図2)。(図2)肢誘導円座標とQRS電気軸偏位(再掲)画像を拡大する電気軸を求めるには、肢誘導の中で“(上下)トントン”に近いQRS波を探すのがミソでしたが、強いて言えばaVR(または-aVR)誘導でしょうか。それと直交方向で“右向き”(I誘導と反対)な「+120°」を選択するのが初心者にお勧めな方法です(“トントン法”)。レクチャーでは、もう少し細かい見方も紹介しました。この心電図(図1)では、I誘導と「-aVR」誘導の間で極性転換(下向き→上向き)を生じています。正味で見た方向はI:-4mm程度、-aVR:+4mm程度ですから、“トントン・ポイント”(TP)は両者の中間(+15°)あたりと予想され、上と同様に考え「+105°」と予想できれば一歩進歩でしょうか(自動診断では「107度」と表示されていました)。さらに、ボクの肉眼(フィーリング?)では、I誘導よりも「-aVR」誘導のほうがより“トントン”チックに見えるため、TPをそちら寄りの「+20°」と予想して、電気軸は「+110°」(これを選択肢としました)としてもOKではないでしょうか(“トントン法Neo”)。参考レクチャー:第9回、第11回【問題2】心電図(図1)に関するその他の所見として、正しいものをすべて選べ。1)時計回転2)反時計回転3)右房拡大4)左房拡大5)不完全右脚ブロック6)完全右脚ブロック7)完全左脚ブロック8)右室肥大9)左室肥大10)上肢電極の左右つけ間違え解答はこちら1)、5)、8)※3)を選んでも正解とする。解説はこちらこの問題が本題です。各々のYES・NOを判断してゆくのもいいですが、Dr.ヒロの心は一つ、 “系統的判読”をすることなので、選択肢がなくとも自分で所見を言えるようになりたいものです。1)と2)は「回転」についてです。単独のレクチャーでは解説していませんが、胸部誘導におけるR波の増高プロセスに関係します。通常、V1→V2→…→V5→V6にかけてR波が高くなり、S波が浅くなっていくのですが、今回はR波の成長が悪く、V5誘導の段階でも「R<S」となっていますから、1)「時計回転」のほうです。逆に2)は、V1とかV2でR波がどデカくなり過ぎな場合です。ただ、たとえそうでも、今回のように5)や8)があるような時は、そうは言いません。「心房拡大」はII(、III、aVF)とV1(V2)誘導の波形からチェックしますが、今回の左房は大丈夫そうです。「右房拡大」のほうは微妙。下壁誘導に関しては「2.5mm以上」なので満たしませんが、V1・V2誘導は“2±0.5mm”。本によって「1.5~2.5mm以上」とされており、V1誘導あたりは満たすかもしれません。後述するように「右室肥大」の心電図ですから、関連病態として3)を拾っていくのは悪くない姿勢だと思います(ただ、個人的には選ぶほどではないと思いますが)。この心電図のQRS幅はワイド(幅広)ではありませんので、7)、8)はNG。しかし、6)の「不完全右脚ブロック」ではありそうです(V2、V6誘導に着目)。これも右心系負荷の代表的所見ではあります。「心室肥大」について、今回の心電図から9)を疑う人はいないでしょう。もう一つの“まれなほう”の8)「右室肥大」であるかがポイントです。前問でまぁまぁ高度の「右軸偏位」がありましたので、「時計回転」などを見たら抱くべき疑問が『これって「右室肥大」かなぁ?』です。レクチャーではDr.ヒロ・オリジナルの診断フローチャートも提示しましたが、その時はじめに注意すべきが「脚ブロック」の有無でした。今回は「120ミリ秒(ms)以上」の“完全”レベルではないので、診断要件としたアイテムを使ってもらって大丈夫です。“見るな!”と言ったMilnor基準が、QRS幅が狭い(narrow)時とほぼ同じでしたね。V1誘導は“ノッチ”でギザついてますから、ボクが紹介したのはValencia基準で、「R'≧10mm」(通常の“7mm基準”の1.5倍[×1.5])でした。今回、これを満たすので、8)はYESです。心電図を勉強したての頃は、なかなかここまで考えが至らないかもしれませんが、「右室肥大」を疑う時に、“もしかして”と考えられるようになったら、ボクがレクチャーした甲斐があるというものです。最後の10)はオマケです。I誘導で陰性(下向き)QRS波を見た時、必ず鑑別に挙げるべきですが、P波・T波の極性から違うでしょう。参考レクチャー:第43回、第44回、第45回症例提示283歳、男性。一週間前から増悪傾向を示す左下肢脱力と構音障害のため来院。糖尿病および高血圧症にて内科フォロー中であった。血圧139/59mmHg、脈拍90/分・不整。患者コメント:「歩こうと思ったら歩けるけど、足の運びがしんどくてね。あとしゃべりがおかしいって家族の者に言われたな。あと食事でよくむせるんだ。」入院時に記録された心電図を示す(図3)。(図3)入院時の心電図画像を拡大する【問題3】心電図(図3)の肢誘導5拍目に関して、正しいものを1つ選べ。1)心房期外収縮、代償性休止期2)心房期外収縮、非代償性休止期3)房室接合部期外収縮、代償性休止期4)房室接合部期外収縮、非代償性休止期5)心室期外収縮、代償性休止期6)心室期外収縮、非代償性休止期解答はこちら5)解説はこちらこれは期外収縮の基本事項の復習です。普通に見たらQRS幅もワイドで洞収縮波形と似ても似つかぬ形状、そしてP波の先行もないようです。ですから、これは「心室期外収縮」(PVC)でいいですね。1)~4)の「心房」期外収縮(PAC)と「房室接合部」期外収縮(PJC)とは、まとめて「上室」期外収縮(“性”はつけない)と称されますが、QRS波形が洞収縮と類似していることが多いです。P波の先行の有無については、とくに前心拍のT波部分をほかと比べられるようになるといいですね。今回は「なし」で良いと思います。PVCだとわかったら、5)と6)の最終“ジャッジ”は「休止期」の様子で決めましょう。これは期外収縮により洞周期が影響を受けるかということです。(図4)のようにPVCを挟むP-P間隔が洞周期のピッタリ2個分であることが確認できたら、休止期は「代償性」であると言い、前症例でも述べたPVCの“上品さ”を表す特徴の一つです。Dr.ヒロ流では“ニバイニバーイの法則”というのでした。以上から、正解は5)ということになりますね。(図4)図3よりII誘導のみ抜粋画像を拡大する参考レクチャー:第21回【問題4】心電図(図3)の胸部誘導4拍目に関して、正しいものを1つ選べ。1)心房期外収縮、代償性休止期2)心房期外収縮、非代償性休止期3)房室接合部期外収縮、代償性休止期4)房室接合部期外収縮、非代償性休止期5)心室期外収縮、代償性休止期6)心室期外収縮、非代償性休止期解答はこちら2)解説はこちら前問に引き続き、期外収縮を扱います。あまり深く考えないと、QRS幅も狭く(正常)「心房期外収縮」(PAC)で、どうせ休止期は「非代償性」でしょ…と考えて、2)を選ぶ人が多いかもしれません。クイズ的にはそれで“正解”ですが、たとえばV1誘導を抜粋してみましょう(図5)。(図5)図3よりV1誘導のみ抜粋画像を拡大するQRS波形はほかの洞収縮波形とまったく同じですか?…違いますよね。V2誘導なども見ると、なーんか違う気もします。差はわずかですが、“その目”で見れば、QRS幅も若干ですが広く見えます。これはボクが無理矢理言っているのではありません。普段からこのような視点を持つべきなんです。ここをいい加減にしてしまうと、なかなか不整脈、心電図を見る目は育ちません。3)~6)のPVCやPJCも、まさかコレ? と、悩み鑑別しようとするクセをつけましょう。繰り返しますが、期外収縮を考える際は『線香とカタチと法被(はっぴ)が大事よね』ですよ。洞収縮波形との相同性やQRS幅は述べたので、残りは「先行P波の有無」と「休止期」です。これは“P波探し”にかかっています。V1とV6誘導とを並んで示します。(図6)図3よりV1、V6誘導のみ抜粋画像を拡大するこういう時のテッパンは、直前のT波に着目せよ! ずばりコレです。そこを網掛けで示しています。ほかの収縮波形に随伴するT波と比べてどうですか? V1-T波の頂上付近にある“ちょいギザ”、あるいはV6-T波はほかよりホッソリ尖って見えませんか? そう、これがP波です。これが真髄! ゴミの山からほんの少ーしだけ頭を出した“金塊”を見つけるような作業に慣れればこれが自然とできるようになり、そのアクションがアナタの診断力を変えます。レクチャーでも何度か登場し、Dr.ヒロの愛読書の著者でもある“達人”Dr. Marriottもこの操作を『Cherchez le P on let T』と表現しているそうです。日本語や英語では“T波の上のP波を探せ”(Search for the P on the T)ということですが、フランス語で聞くとオシャレな響きを感じます(笑)。一方の休止期に関しては、期外収縮の前後のP-P間隔を見ればいいので、洞収縮の連続する1~3拍目のP1-P3間隔、つまり洞周期の“2倍(ニバーイ)”と比較します。すると、「P1-P3>P3-P5」ですから、これは休止期が「非代償性」であることを示しています。「洞周期が“リセット”されている」というのも同義の表現ですので、この表現も確認しておきましょう。つまり、やや「心室内変行伝導」を疑う、変形のあるPACが正解です。参考レクチャー:第21回、第26回さて、前回とあわせて計10問の心電図クイズ、いかがだったでしょうか。既に50回近く講義していますので、すべて扱うだけの問題を用意することはできませんでしたが、良い復習になったのではないでしょうか。次回からは、このレクチャーも終盤戦に入ります。臨床的な重要性の高い冠動脈疾患について考えていこうと思います。では、また!【古都のこと~延暦寺:根本中堂】「世の中に山てふ山は多かれど、山とは比叡の御山(みやま)をぞいふ」天台宗座主を4度も務めた慈円*1はこう崇め詠みました。偉大さがストレートに伝わってきます。慈円曰く“日本一”の霊山、比叡山にある延暦寺について話しましょう。仏教各宗各派の祖師高僧を輩出した“母山”ですから、知らない人はいないでしょう。京都の秋をご紹介する時、個人的には外せません。京都に来て何度行ったことか。車のほか、バスやケーブル・ロープウェイで行くことができますよ。眼下に琵琶湖、京都市街まで一望できる最高のパノラマ・ビューを保証します。しかも空気も最高! 写真奥方の白壁の建物は根本中堂(国宝)です。平成28年から約10年かけての大改修真っ最中です。延暦寺は実に広いですから、本堂以外に、東塔(とうどう)、西塔(さいとう)、そして北方の横川(よかわ)まで相当の健脚でも一日で回れるか…。でも、拝観料が安く思えるほど、丸1日“大人の秋旅行”が楽しめます。令和3年は、最澄御遷化([ご]せんげ)1200年に当たる年。皆さん、ぜひとも秋とは言わずに訪れて欲しいです。なお、昼食は延暦寺会館で最高の眺望とともに比叡御膳(精進料理)をいただきました!*1:前大僧正(さきのだいそうじょう)慈円。小倉百人一首にも登場する。『おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖』(95番)。『愚管抄』の著者としても有名。』

1934.

糖尿病患者は自殺死のリスクが○倍?

 糖尿病は、正常血糖と比較して自殺死のリスクが高かったことが、国立国際医療研究センターの福永 亜美氏らによって報告された。Journal of Psychosomatic Research誌2020年11月号に掲載。 本研究は、日本の労働人口における糖尿病および境界型糖尿病と自殺の関連を調査する目的で、労働衛生研究のデータを使用し実施された。 8年間の追跡調査中に、自殺前の過去3年間の健康診断で、空腹時血糖値またはHbA1cに関する情報があった56例の自殺死の症例を特定。年齢、性別、職場が一致する5つのコントロールをランダムに選択。分析には最新の健康診断データを使用した。米国糖尿病学会の基準に基づき糖尿病の状態を定義し、条件付きロジスティック回帰モデルを使用して関連を調査した。 正常血糖と比較した糖尿病と境界型糖尿病における自殺死の関連性については以下のとおりである。・正常血糖と比較した自殺死は、境界型糖尿病で0.67倍、糖尿病で3.53倍であった。・糖尿病の状態を空腹時血糖値またはHbA1cで定義した場合でも、自殺の関連性は同様の結果であった。

1935.

心血管リスク患者へのフェブキソスタット、アロプリノールに非劣性/Lancet

 心血管リスク因子を有する痛風患者において、フェブキソスタットはアロプリノールと比較し、主要評価項目である複合心血管イベントに関して非劣性であることが示された。長期投与による死亡あるいは重篤な有害事象のリスク増加も確認されなかった。英国・ダンディー大学のIsla S. Mackenzie氏らが、多施設共同前向き無作為化非盲検非劣性試験「FAST試験」の結果を報告した。フェブキソスタットとアロプリノールはともに痛風の治療に用いられる尿酸降下薬であるが、フェブキソスタットの心血管系への安全性に懸念があり、欧州医薬品庁は安全性をアロプリノールと比較する市販後臨床試験の実施を勧告していた。Lancet誌オンライン版2020年11月9日号掲載の報告。心血管リスク因子を有する60歳以上の痛風患者約6千例が対象 FAST試験は、英国、デンマークおよびスウェーデンの18施設で実施された。対象は、すでにアロプリノールの投与を受け、少なくとも1つの心血管リスク因子を有する60歳以上の痛風患者で、過去6ヵ月間に心筋梗塞または脳卒中を発症した患者、重度うっ血性心不全または重度腎機能障害を有する患者は除外された。導入期として血清尿酸値0.357mmol/L(6mg/dL)未満を達成するためにアロプリノールの投与量を最適化した後、アロプリノール継続投与(最適化された投与量)群、またはフェブキソスタット群(80mg/日から投与を開始し、目標の血清尿酸値を達成するため必要に応じて120mg/日まで増量)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。心血管イベントの既往の有無による層別化も行った。 主要評価項目は、非致死的心筋梗塞またはバイオマーカー陽性急性冠症候群による入院、非致死的脳卒中、または心血管死の複合エンドポイントであった。層別化因子と国で調整したCox比例ハザードモデルを用い、on-treatment解析でアロプリノールに対するフェブキソスタットのハザード比(HR)を算出し非劣性を評価した(非劣性マージン:HR=1.3)。 2011年12月20日~2018年1月26日の期間に、6,128例(平均年齢71.0歳、男性85.3%/女性14.7%、心血管疾患既往歴あり33.4%)が、アロプリノール群(3,065例)およびフェブキソスタット群(3,063例)に割り付けられた。100人年当たり主要評価項目イベント発現頻度、1.72 vs.2.05 試験終了(2019年12月31日)までに、すべての追跡調査を撤回したのは、フェブキソスタット群189例(6.2%)、アロプリノール群169例(5.5%)であった。追跡期間中央値は1,467日(IQR:1,029~2,052)、on-treatment解析の追跡期間中央値は1,324日(IQR:870~1,919)であった。 主要評価項目のイベント発生は、on-treatment解析でフェブキソスタット群172例(100人年当たり1.72件)、アロプリノール群241例(100人年当たり2.05件)で、補正後HRは0.85(95%信頼区間[CI]:0.70~1.03、p<0.0001)で非劣性が認められた。 フェブキソスタット群では、3,063例中222例(7.2%)が死亡し、安全性解析対象集団3,001例中1,720例(57.3%)に重篤な有害事象が発現した(治療に関連した事象は19例[0.6%]に23件発現)。一方、アロプリノール群では、3,065例中263例(8.6%)が死亡し、安全性解析対象集団3,050例中1,812例(59.4%)に重篤な有害事象を認めた(治療に関連した事象は5例[0.2%]に5件発現)。フェブキソスタット群で973例(32.4%)、アロプリノール群で503例(16.5%)が治療を中止した。

1936.

基礎インスリン週1回投与の時代は目前に来ている(解説:住谷哲氏)-1317

 1921年にカナダ・トロント大学のバンティングとベストがインスリンを発見してから来年で100年になる。1922年にはインスリンを含むウシの膵臓抽出液がLeonard Thompsonに投与されて劇的な効果をもたらした。同年に米国のイーライリリーが世界で初めてインスリンの製剤化に成功し、1923年にインスリン製剤「アイレチン」が発売された。また北欧での製造許可を得たデンマークのノルディスク(ノボ ノルディスクの前身、以下ノボ社)から「インスリンレオ」が発売された。膵臓抽出物から精製されたこれらのインスリンは正規インスリン(regular insulin)と呼ばれ、われわれが現在R(regularの頭文字)と称しているインスリンである。 レギュラーインスリンは作用時間が約6時間程度であり、血中有効濃度を維持するためには頻回の注射が必要となる。そこで作用時間を延長するための技術開発が開始され、最初に世に出たのがNPH(neutral protamine Hagedorn)で、これはレギュラーインスリンにプロタミンを添加することで作用時間の延長を可能とした。その後は遺伝子工学が導入されてインスリンのアミノ酸配列の変更や側鎖の追加が可能となり、われわれが現在持効型インスリンと称しているグラルギン、デグルデクが登場した。ノボ社のデグルデクはインスリン分子に脂肪酸側鎖を追加することでアルブミンとの結合を増強し、それにより血中有効濃度の維持を可能とした。この技術は同社のGLP-1受容体作動薬のリラグルチド、セマグルチドの開発にも応用された。とくにセマグルチドは週1回投与を可能としたものであり、この技術がインスリンに応用されるのも時間の問題であったが、本論文で週1回投与のinsulin icodecが報告された。 結果は、26週の観察期間において、毎日投与のグラルギンと比較して血糖降下作用、安全性の点で同等であることが明らかとなった。試験デザインとしてdouble-dummy法(被験者はグラルギン実薬毎日投与+icodecプラセボ週1回投与またはグラルギンプラセボ投与+icodec実薬投与のいずれかに振り分けられた)を用いることでmaskingは確保されているので、結果の内的妥当性に問題はない。 おそらくわが国では数年後にinsulin icodecが発売されると思われる。現在ある週1回投与のセマグルチドとの配合剤も遠からず登場してくるだろう。ひょっとすると月1回投与の基礎インスリンが登場するのも夢物語ではないかもしれない。一方で持続時間のより短い改良型超速効型インスリンもすでに2剤が発売されている。われわれ医療者はこれら多くの選択肢から目の前の患者に最も適したインスリン製剤を選択する腕が問われる時代になってきたといえるだろう。

1937.

新型コロナ、どの国のワクチンを希望する?医師1,000人アンケート

 新型コロナワクチン接種の優先対象について、厚生労働省は11月9日の厚生科学審議会において、高齢者や基礎疾患がある人を優先的に接種する方針を固めた。今後はどのような基礎疾患を有する人を対象にするのかが話し合われる予定だ。今回の話し合いでは医療者への優先接種が見送りとなったが、医療者では接種を求める者と接種に抵抗を示す者はどの程度いるのだろうかー。そこで、ケアネットでは10月15日(木)~21日(水)の期間、会員医師1,000人に対し「医師のワクチン接種に対する心境について」に関するアンケートを実施。その結果、全回答者のうち接種を希望するのは61.2%だった。 本アンケートでは30代以上の医師(勤務医、開業医問わず)を対象とし、新型コロナワクチン接種希望の有無や投与する際の懸念点などについて調査、集計結果を年代や病床数、診療科で比較した。接種を希望する医師の年代や診療科に違いはほとんど見られなかったが、脳神経外科(44%)、神経内科(42%)、糖尿病・代謝・内分泌内科(46%)、救急科(36%)で接種希望者が半数を下回っていた。  このほか、「どこの国が開発したワクチンを希望するか」「接種したくない理由」「接種希望者が投与する上で気になること」「これまでのインフルエンザウイルスワクチンの接種状況」などを聞いた。どこの国が開発したワクチンを希望するかで最多は国内開発 接種を希望すると回答した629例(61.2%)に対し「どこの国が開発したワクチンを希望するか(複数回答可)」を聞いたところ、日本国内で開発を進めるアンジェスに票を投じたのは396人、続いて英国(アストラゼネカ/GSK)231人、米国(ファイザー/モデルナ)222人と続いた。どこ国が開発したワクチンがいいかのアンケートでは、国内開発ワクチンへの期待の高さが伺えた。 接種したくない理由、接種希望者が投与する上で気になることについては、安全性などのエビデンス不足と回答した方が863人と圧倒的に多かった。次いで、安定性の供給(151人)、投与量・投与回数の問題(134人)と続いた。ワクチン接種優先対象の基礎疾患を有する医師は約2割 今回、ワクチン接種の優先対象に基礎疾患がある人が含まれたことを踏まえ、基礎疾患を有する医師数を把握するため「医師の持病の有無」についても調査した。その結果、持病があると回答したのは26.7%(274人)だった。年代別で見ると、30代、40代ではそれぞれ15%程度に留まっていたが、50代では30%、60代では47%、70代以上では半数の46%が持病を抱えながら医療に携わっていることが明らかになった。インフルエンザワクチンは医師の9割が毎年接種 インフルエンザワクチンの接種状況が新型コロナワクチン接種の希望にどの程度影響するかを見るため、これまでのインフルエンザワクチンの接種状況を聞いたところ、年代や診療科を問わず約9割の医師が毎年接種していた。 アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中

1938.

Moderna社の新型コロナワクチン、有効率94.5%を示す/第III相試験中間解析

 Moderna社は、COVID-19に対するワクチン候補であるmRNA-1273の第III相試験(COVE試験)の最初の中間分析において、ワクチンの有効率が94.5%と統計学的な有意差を示したことを11月16日に発表した。今後数週間以内に米国食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請する予定という。 第III相COVE試験は、米国で18歳以上の参加者を対象に、用量100μgで28日間隔・2回投与でmRNA-1273の有効性を評価する無作為化1:1プラセボ対照試験。10月22日に3万人の登録を完了した。参加者には7千人以上の高齢者(65歳以上)、5千人以上の慢性疾患(糖尿病、重度の肥満、心臓病など)を有する患者が含まれる。 主要評価項目は症候性COVID-19の予防で、主要な副次的評価項目には、重症COVID-19の予防、およびSARS-CoV-2による感染の予防が含まれる。今回の中間分析は、ワクチンの2回目の投与から2週間後に確認されたCOVID-19症例の分析に基づき、独立データ安全性モニタリング委員会(DSMB)が実施した。95例のCOVID-19発症が確認され、そのうち90例がプラセボ群、5例はmRNA-1273群で観察され、ワクチン有効性の点推定値は94.5%であった(p<0.0001)。 副次評価項目として重症例を分析し、この最初の中間分析では11例の重症例(研究プロトコルでの定義による)が含まれた。11例すべてがプラセボ群で発生し、mRNA-1273ワクチン接種群では発生しなかった。中間分析には、DSMBによる安全性データのレビューが含まれ、重大な安全性の懸念は報告されていない。有害事象の多くは軽度または中等度で、1回目の投与後の頻度が2%以上のGrade 3の有害事象としては注射部位の痛み(2.7%)が、2回目の投与後は倦怠感(9.7%)、筋肉痛(8.9%)、関節痛(5.2%)、頭痛(4.5%)、痛み(4.1%)、注射部位の紅斑/発赤(2.0%)が含まれた。 今後の研究の進行に応じて、最終的な有効性の点推定値および安全性データは変更される可能性がある。2020年末までに約2千万回分を米国で、2021年に世界で5億から10億回分を製造する準備が整うと見込んでいる。 なお、同社はmRNA-1273の貯蔵について、標準的な家庭用または医療用冷蔵庫の温度である2~8℃(36~46°F)で30日間安定していることが確認されたと発表している。

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添付文書改訂:フォシーガ適応に慢性心不全/フルティフォームに小児用量/メマリー副作用に徐脈性不整脈/ネオーラル内用液適応に川崎病【下平博士のDIノート】第62回

フォシーガ:SGLT2阻害薬で初の心不全適応<対象薬剤>ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物錠(商品名:フォシーガ錠5mg/10mg、製造販売元:アストラゼネカ)<改訂年月>2020年11月(予定)<改訂項目>[追加]効能・効果慢性心不全。ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。<Shimo's eyes>SGLT2阻害薬は、近年、心血管予後や腎予後の改善に関する報告が次々となされています。本剤は、20ヵ国410施設で左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者を対象に実施した無作為化二重盲検第III相試験「DAPA-HF試験」の探索的解析結果において、推奨治療への追加が、糖尿病の有無にかかわらず心血管死または心不全増悪のリスクをプラセボと比較して有意に低下させたことが示されました。今回の改訂により、わが国で初めての心不全適応を持つSGLT2阻害薬となります。作用機序は不明ですが、製造販売元のアストラゼネカは、体液量調節を介した血行動態に対する作用などが心不全の改善に寄与する可能性に言及しています。本剤は、HFrEF患者であれば、糖尿病合併の有無によらず、標準治療に併用して使用することができます。なお、左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)における本剤の有効性および安全性は確立していません。参考アストラゼネカのSGLT2阻害剤フォシーガ、DAPA-HF試験サブ解析で心不全悪化または心血管死の発現率の低下を示すフルティフォーム:新たに小児適応が追加<対象薬剤>フルチカゾンプロピオン酸エステル・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入薬(商品名:フルティフォーム50エアゾール56吸入用/120吸入用、製造販売元:杏林製薬)<改訂年月>2020年6月<改訂項目>[追加]用法および用量小児:通常、小児には、フルティフォーム50エアゾール(フルチカゾンプロピオン酸エステルとして50μgおよびホルモテロールフマル酸塩水和物として5μg)を1回2吸入、1日2回投与する。<Shimo's eyes>本剤は、ステロイド吸入薬(ICS)フルチカゾンプロピオン酸エステル(商品名:フルタイド)と、長時間作用型β2刺激薬(LABA)ホルモテロールフマル酸塩(同:オーキシス)の配合吸入薬です。小児適応のある吸入薬は成人と比べるとまだ少ないですが、今回の改訂により小児気管支喘息の新たな治療選択肢が増えました。なお、高用量製剤(フルティフォーム125)には小児への適応がないので注意しましょう。小児は1回2吸入、1日2回の投与となっており、それ以上の増量はできません。また、5歳未満の小児では臨床試験が未実施のため注意喚起がされています。ボンベをうまく押せない場合は吸入補助器具(フルプッシュ)、吸気の同調が難しい場合にはスペーサーを用いるなど、適正に使用できるようにしっかりサポートしましょう。参考杏林製薬 添付文書改訂のお知らせメマリー:重大な副作用に徐脈性不整脈が追加<対象薬剤>メマンチン塩酸塩製剤(製品名:メマリー錠・OD錠 5mg/10mg/20mg、製造販売元:第一三共)メマンチン塩酸塩ドライシロップ(同:メマリードライシロップ2%、製造販売元:第一三共)<改訂年月>2020年6月<改訂項目>[新設]重大な副作用不整脈(頻度不明):完全房室ブロック、高度な洞徐脈などの徐脈性不整脈が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。<Shimo's eyes>国内で本剤との関連性が否定できない重篤な徐脈性不整脈関連の報告が集積したことから、「重大な副作用」の項に「完全房室ブロック、高度な洞徐脈などの徐脈性不整脈」が追記されました。めまい、気を失う、立ちくらみ、脈が遅くなる、息切れ、脈が飛ぶというような症状が現れていないかどうかの聞き取りが重要です。速やかな投与中止が求められる副作用ですので、異常が見られた場合はすぐに処方医に報告・相談しましょう。参考PMDA メマンチン塩酸塩の「使用上の注意」の改訂について第一三共 使用上の注意改訂のお知らせネオーラル内用液:効能・効果に川崎病の急性期が追加<対象薬剤>シクロスポリン製剤(製品名:ネオーラル内用液10%、製造販売元:ノバルティス ファーマ)<改訂年月>2020年2月<改訂項目>[追加]効能または効果川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)[追加]用法および用量〈川崎病の急性期〉通常、シクロスポリンとして1日量5mg/kgを1日2回に分けて原則5日間経口投与する。<Shimo's eyes>川崎病は、主に乳幼児が罹患する原因不明の血管炎症候群です。冠動脈が侵襲されることによる冠動脈病変(CAL)の合併が知られており、CALは突然死や心筋梗塞を引き起こすことがあります。急性期の標準治療として、静注用免疫グロブリン(IVIG)の単回静脈内投与とアスピリンの経口投与の併用療法が行われます。しかし、約20%の患児は十分な効果を得られず、CAL合併のリスクが高くなることが指摘されています。そこで、川崎病の過剰な炎症反応を免疫抑制薬で制御することで、CALの進行を抑制できるのではないかという考えから、本剤の国内第III相医師主導治験が行われました。その結果、CALの合併割合が、標準治療群の31.0%(27例/87例)に対し、本剤併用群では14.0%(12例/86例)と有意に低下したため、川崎病のIVIG不応例またはIVIG不応予測例には、従来の標準治療に本剤を併用できることになりました。なお、発病後7日以内に投与を開始することが望ましいとされています。参考ノバルティス ファーマ 添付文書改訂のお知らせ

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高血圧や2型DM合併の肥満、オンラインプログラム+PHMが有効/JAMA

 高血圧または2型糖尿病を有する過体重/肥満の患者では、プライマリケア施設による集団健康管理(population health management:PHM)とオンライン体重管理プログラムを組み合わせたアプローチは、オンラインプログラム単独および通常治療単独と比較して、12ヵ月後の減量効果が、差は小さいものの統計学的に有意に優れることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のHeather J. Baer氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年11月3日号で報告された。わずかな体重減少(たとえば3~5%)であっても、重要な健康上の利益をもたらす可能性があることから、米国の診療ガイドラインでは、肥満および過体重の患者の生活様式への介入や助言が推奨されているが、プライマリケア医は時間の制約や研修、医療システムが原因で、患者と体重に関する話し合いをしないことが多いという。また、オンラインプログラムはプライマリケアにおいて効果的で、費用対効果が優れる可能性が示されているが、日常診療での有効性や拡張性は不明とされる。米国の24の診療所が参加した3群クラスター無作為化試験 本研究は、PHMとオンライン体重管理プログラムの併用による介入の減量効果を、オンラインプログラム単独および通常治療単独と比較する3群クラスター無作為化試験であり、米国の15のプライマリケア施設(合計24の診療所、約170人のプライマリケア医)が参加し、2016年7月~2017年8月の期間に患者登録が行われた(患者中心アウトカム研究所[PCORI]の助成による)。 対象は、年齢20~70歳、プライマリケア施設を受診予定で、BMIが27~40であり、高血圧または2型糖尿病の診断を受けている患者であった。通常治療群には、体重管理に関する一般的な情報が郵送された。オンラインプログラム単独群と併用介入群の参加者は、BMIQと呼ばれるオンラインプログラムに登録された。併用介入群は、さらに体重に関連するPHMを受けたが、これにはオンラインプログラムの進捗状況を監視し、定期的にアウトリーチを行うプライマリケア施設の非臨床系の職員による支援が含まれた。 主要アウトカムは、12ヵ月の時点における電子健康記録(EHR)に記載された数値に基づく体重の変化とした。副次アウトカムは18ヵ月時の体重変化であった。併用介入群の約3分の1が5%以上の減量を達成 3つの群にそれぞれ8つの診療所が割り付けられた。840例(平均年齢59.3[SD 8.6]歳、女性60%、白人76.8%)が登録され、通常治療群は326例、オンラインプログラム単独群は216例、併用介入群は298例であった。このうち732例(87.1%)で12ヵ月後の体重が記録されており、残りの患者の欠損データは多重代入法で補完された。ベースラインの平均体重はそれぞれ92.3kg、91.4kg、92.1kgだった。 12ヵ月の時点における体重の変化の平均値は、通常治療群が-1.2kg(95%信頼区間[CI]:-2.1~-0.3)、オンラインプログラム単独群が-1.9kg(-2.6~-1.1)、併用介入群は-3.1kg(-3.7~-2.5)であり、有意な差が認められた(p<0.001)。併用介入群と通常治療群の体重変化の差は-1.9kg(97.5%CI:-2.9~-0.9、p<0.001)、併用介入群とオンラインプログラム単独群の体重変化の差は-1.2kg(95%CI:-2.2~-0.3、p=0.01)であった。 また、12ヵ月時の体重の変化の割合は、通常治療群が-1.4%(95%CI:-2.3%~-0.6%)、オンラインプログラム単独群が-1.9%(-2.8~-1.0)、併用介入群は-3.0%(-3.8~-2.1)であった(p<0.001)。12ヵ月時に5%以上の減量を達成した患者の割合は、それぞれ14.9%、20.8%、32.3%だった(p<0.001)。 18ヵ月の時点における体重変化の平均値は、通常治療群が-1.9kg(95%CI:-2.8~-1.0)、オンラインプログラム単独群が-1.1kg(-2.0~-0.3)、併用介入群は-2.8kg(-3.5~-2.0)であり、有意差がみられた(p<0.001)。併用介入群と通常治療群の体重変化の差は-0.9kg(-1.9~0.2、p=0.10)、併用介入群とオンラインプログラム単独群の体重変化の差は-1.6kg(-2.7~-0.5、p=0.003)であった。 著者は、「これらの知見の一般化可能性、拡張性、持続性を理解するために、さらなる研究を要する」としている。

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