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2型DM長期管理、週1回insulin icodec vs. 1日1回インスリン グラルギン/Lancet

 長期にわたり基礎・追加インスリン(basal-bolus)療法を受けている2型糖尿病(DM)患者において、週1回投与のinsulin icodec(icodec)は1日1回投与のインスリン グラルギン100単位と比較して、血糖コントロールの改善は同等であるが、ボーラス投与量は減り、低血糖の発現率を上昇させないことが示された。ベルギー・ルーベン・カトリック大学のChantal Mathieu氏らが、試験期間26週の第IIIa相無作為化非盲検多施設共同治療目標設定非劣性試験「ONWARDS 4試験」の結果を報告した。結果について著者は、「今回の試験の主な長所は、マスクされた連続血糖モニタリングの使用、高い試験完了率、大規模で多様な国際的集団を対象としている点であるが、比較的短い試験期間および非盲検デザインという点では結果が限定的である」としている。Lancet誌オンライン版2023年5月5日号掲載の報告。9ヵ国80施設で試験 ONWARDS 4試験は、9ヵ国(ベルギー、インド、イタリア、日本、メキシコ、オランダ、ルーマニア、ロシア、米国)の80施設(外来クリニックおよび病院診療部門)で、2型DM(糖化ヘモグロビン[HbA1c]7.0~10.0%)の成人患者を登録して行われた。 被験者は1対1の割合で無作為に、週1回icodecまたは、1日1回インスリン グラルギン100単位+2~4回/日インスリン アスパルトのボーラス注射、いずれかの投与を受けるよう割り付けられた。 主要アウトカムは、ベースラインから26週目までのHbA1cの変化量(非劣性マージン0.3ポイント)であった。主要アウトカムは全解析セット(無作為化を受けた全被験者)で評価した。安全性は、安全性解析セット(割り付け治療薬を少なくとも1回受けた全被験者)で評価した。26週時点で、血糖コンロトール改善は同等 2021年5月14日~10月29日に、746例が適格性のスクリーニングを受け、582例(78%)が無作為化された(icodec群291例[50%]、グラルギン群291例[50%])。被験者の2型DM罹病期間は平均17.1年(SD 8.4)。 26週時点で、推定HbA1cの平均変化量は、icodec群-1.16ポイント(ベースライン8.29%)、グラルギン群-1.18ポイント(8.31%)で、icodec群のグラルギン群に対する非劣性が示された(推定群間差:0.02ポイント[95%信頼区間[CI]:-0.11~0.15]、p<0.0001)。 有害事象の発現は、icodec群171/291例(59%)、グラルギン群167/291例(57%)であった。重篤な有害事象は、icodec群22/291例(8%)の35件、グラルギン群25/291例(9%)の33件が報告された。 全体として、低血糖のレベル2および3の複合発生率は、両群で類似していた。icodecに関する安全性の新たな懸念は確認されなかった。

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日本人は低炭水化物食で糖尿病リスクが上がる?下がる?~JACC研究

 低炭水化物食(LCD)スコアと2型糖尿病発症リスクの関連を検討したメタ解析では、LCDスコアが高い(炭水化物が少なくタンパク質と脂質が多い)ほど2型糖尿病発症リスクが高い傾向がみられたことが報告されている1)。しかし、メタ解析の対象となった研究のほとんどがアジア人以外での研究である。今回、日本の大規模な全国コホート研究であるJACC(Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk)研究の約2万人のデータを用いて、北海道大学の八重樫 昭徳氏らが前向きに検討したところ、日本人ではLCDスコアが高い食事で2型糖尿病リスクが上昇する可能性は低いことが示唆された。Journal of Nutritional Science誌2023年4月14日号に掲載。 本研究は、1988~90年にJACC研究に登録した参加者のうち、糖尿病ではない40~79歳の日本人1万9,084人(男性7,052人、女性1万2,032人)を解析対象とした。食事摂取量は食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて評価した。炭水化物、タンパク質、脂質からの摂取エネルギーの割合により参加者を11カテゴリーに分類し、全体、動物性、植物性のLCDスコアを算出した。動物性LCDスコアは炭水化物、動物性タンパク質、動物性脂質に由来するエネルギーの割合から、また植物性LCDスコアは炭水化物、植物性タンパク質、植物性脂質に由来するエネルギーの割合から計算した。2型糖尿病発症率は自記式質問票を使用して評価した。多変量ロジスティック回帰分析により、各LCDスコアの五分位における2型糖尿病発症のオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・5年間に490人(男性247人、女性243人)が2型糖尿病を発症した。・LCDスコアの最低五分位を基準とした最高五分位における2型糖尿病発症の多変量調整ORは、全体LCDスコアでは男性が0.64(95%CI:0.42~0.99)、女性が0.78(同:0.51~1.18)であり、動物性LCDスコアでは男性が0.83(同:0.55~1.27)、女性が0.84(同:0.57~1.24)だった。・植物性LCDスコアは男性において2型糖尿病発症リスクの低下と関連していた(OR:0.51、95%CI:0.33~0.77)。 本研究では、動物性LCDスコアは男女共に2型糖尿病発症リスクと関連せず、植物性LCDスコアは男性で発症率が低いことに関連していた。この結果から、八重樫氏らは「日本人のように魚と肉の摂取量が少ない集団では、炭水化物が少なく脂肪とタンパク質が多い食事で2型糖尿病リスクが上昇する可能性は低いことが示唆される」と考察している。

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早食いは身長が縮みやすい?~日本人での研究

 早食いは体重増加の独立したリスク因子であり、また先行研究で過体重が身長低下の独立したリスク因子であることが報告されている。では、早食いと身長低下は関連するだろうか。今回、大阪健康安全基盤研究所の清水 悠路氏らによる日本人労働者での後ろ向き研究の結果、早食いが過体重と関連し、過体重は身長低下と関連していたが、早食いと身長低下については、過体重の人とそうでない人で異なっていた。すなわち、過体重でない人は食べるのが速い人が、過体重の人では食べるのが遅い人が、身長が低下する確率が高かった。PLOS ONE誌2023年4月26日号に掲載。 本研究の対象は、日本人労働者8,982人で平均年齢は50.6歳(標準偏差8.3歳)だった。過体重はBMI 25.0kg/m2以上、身長低下は1年当たりの身長低下が最高五分位と定義した。 主な結果は以下のとおり。・既知の交絡因子にかかわらず、食べる速度と過体重には正の相関が認められ、遅いグループを基準とした場合、過体重の完全調整後オッズ比(OR)は、中程度に速いグループで1.96(95%信頼区間[CI]:1.54~2.50)、速いグループで2.92(同:2.29~3.72)だった。・過体重でない人は、食べる速度が速い人のほうが身長低下のオッズが高かった(完全調整後OR:1.34、95%CI:1.05~1.71)。一方、過体重の人は、食べる速度が速い人のほうが身長低下のオッズが低かった(完全調整後OR:0.52、95%CI:0.33~0.82)。・過体重は身長低下と有意に関連していた(完全調整後OR:1.17、95%CI:1.03~1.32)。 この結果から、著者らは「早食いの人の身長低下の主な原因が体重増加ではないことを示唆している」とした。また「早食いは過体重と関連し、過体重は身長低下と関連していた。中年期以降の身長低下は心血管疾患による死亡の独立した危険因子であるため、食べる速度を遅くすることは身長低下と心血管疾患の予防に有用な可能性がある」と述べている。

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2型糖尿病の薬物療法で最適な追加オプションは?(解説:小川大輔氏)

 GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬の登場により、近年2型糖尿病の薬物療法が大きく変わった。既存の糖尿病治療薬では認められなかった、心血管イベントや腎不全を抑制する効果が数多く報告されたからだ。さまざまな糖尿病治療薬の中からどの薬剤を選択するか、その判断の一助になるネットワークメタ解析の論文がBMJ誌に発表された1)。 この論文の背景として、2年前の2021年に同じBMJ誌に掲載された論文について少し触れたい。この当時すでにGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬のエビデンスは集積しており、これら2製剤がこれまでの糖尿病治療薬と比較して全死亡、心血管死、非致死的心筋梗塞、腎不全、体重減少などのベネフィットがあることがネットワークメタ解析により明らかになった2)。また桑島 巖先生(J-CLEAR理事長)がこの論文に対するコメントを執筆しているのでご一読いただきたい3)。 今回の論文の新しい点は、従来治療薬に追加するオプションとして、最近登場したGIP/GLP-1受容体作動薬とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)の2製剤が加わったことである。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬、MR拮抗薬を含む13種類の薬剤の中から追加投与した場合の、死亡や心血管系および腎臓系の有害アウトカムの減少、体重減少などについてシステマティックレビューとネットワークメタ解析が実施された。 解析の結果、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬については全死亡、心血管死、非致死性心筋梗塞、心不全による入院、末期腎不全の抑制に有効であることが示されたが、これまでのRCTやネットワークメタ解析の結果と同様であり新規性はない。一方、MR拮抗薬のフィネレノンが全死亡、心不全による入院、末期腎不全の減少に効果的である可能性が示された点は新しい知見である。MR拮抗薬は糖尿病治療薬ではないが、腎臓系の有害アウトカムについてはSGLT2阻害薬より劣るものの効果がある可能性があり、心不全による入院や全死亡も低下させる可能性が示されたため、今後日常診療で使用される頻度が増えるだろう。 今回の解析で、13種類の製剤の中でGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬が心血管系および腎臓系の有害アウトカムや死亡の減少、さらにQOLの改善に最も効果があることが確認された。一方、GIP/GLP-1受容体作動薬については、体重減少効果は最も大きかったが、GLP-1受容体作動薬で認められる死亡や心血管・腎イベントの抑制効果は認められなかった。新しい薬剤のため解析対象となった試験が少ないことが影響しているのかもしれない。今後のGIP/GLP-1受容体作動薬の臨床研究に期待したい。 有害事象については、SGLT2阻害薬では性器感染症、GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬では胃腸障害、MR拮抗薬では入院を要する高カリウム血症のリスクが高かった。いずれも薬剤クラス固有のものであり、とくに目新しい有害事象の報告はなかった。 近年、ネットワークメタ解析を用いた臨床研究の論文が増えていると感じる。従来のメタ解析では2種類の治療薬の比較しかできないが、今回の論文のように3種類以上の比較を行うことができるのがネットワークメタ解析のメリットである。しかし、このネットワークメタ解析により、新たに大きなエビデンスが生み出されるというわけではないことに注意しなければならない4)。ネットワークメタ解析は、RCTよりエビデンスレベルは下がるものの、今回のように比較したい糖尿病治療薬が多数あるような場合には、治療の「次の一手」を選択する際に参考となるデータを提供してくれる手法である。

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心不全患者とポリファーマシーの本質を考える【心不全診療Up to Date】第8回

第8回 心不全患者とポリファーマシーの本質を考えるKey Pointsポリファーマシーの「質」と「量」を考えるポリファーマシーへの対策潜在的不適切処方、有害事象を起こす可能性のある薬剤はないか?本気の多職種連携で各施設・地域に合った効率良い対策を考えるはじめにこれまで、心不全患者において、診療ガイドラインに準じた標準的心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)を行うことの重要性を詳しく説明してきた。ただ、その際、常に議論となるのが、ポリファーマシー(多剤併用)問題である。この問題の本質は何か、そしてその対策としてすぐにできることは何か、本稿ではこのポリファーマシーを取り上げてみたい。 ポリファーマシーの「質」と「量」を考えるポリファーマシーを考える上で大切になってくるのが、「質」と「量」という視点である。「質」的なポリファーマシーとは、臨床的に必要とされる以上に多くの薬剤を処方されている状態であり、「量」的なポリファーマシーとは、5種類以上の薬剤内服と定義される。「量」的なポリファーマシーの中でも、10種類以上を内服している場合を“ハイパーポリファーマシー”と呼ぶが、TOPCAT試験(EF≥45%、平均69歳)のサブ解析1)にて、このような症例では入院のリスクが1.2倍であったという報告もあり(図1)、数が多いということも予後に大きく関連することがわかっている。つまり、「質」と「量」の両面から、このポリファーマシーというものをしっかり考えることが、薬剤数を適切に減らすうえで、極めて重要となる。(図1)心不全患者のポリファーマシー画像を拡大するでは、「質」的なポリファーマシーを考えるうえで何が一番重要となるか。それは、患者の生命予後やQOLに最も影響を及ぼす疾患・病態をしっかり把握し、薬剤の中でもできる限りの優先順位をつけておくことであろう。この連載のテーマは、心不全診療であるので、今回は、患者の生命予後やQOLに最も影響を及ぼすものが心不全である場合を考えていきたい。たとえば、駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者においては、第1回で説明した通り、生命予後・QOL改善のために、原則4剤(RAS阻害薬/ARNi、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬)の投与が推奨されており、どれだけ薬剤数が多くて何かを減らしたいとしても、この4剤は原則最後まで残しておくべきである。もちろん、食事摂取状況やADLなどの患者背景、腎機能などの検査所見などから、この4剤のうちどれかを中止せざるを得ない場面に遭遇することもあるが、安易な中断はかえって予後を悪化させるリスクもあり、注意が必要である。さらに例えて言うと、高カリウム血症よりも心不全予後改善薬を中止するほうが、長期的には予後やQOLを悪化させる可能性もあり2)、一旦中止してもその後に再開できないかを常に検討することが重要と考えられる。そして、もしその4剤の中のどれか1つでも投与開始や再開を見送る場合は、その薬剤を『投与しないリスク』についても患者側としっかり共有しておくことも忘れてはならない。そして、ポリファーマシーを考える上で、もう一つのキーとなる言葉が、『服薬アドヒアランス』である。この大きな原因は、患者自身がなぜその薬剤を飲んでいるか理解していないことが挙げられる。ある研究では、心不全患者の41%において、服薬アドヒアランスの低下を認め、この群では、アドヒアランス良好な群と比較して、心不全入院または死亡のリスクが2.2倍に上昇していたと報告されている3) 。つまり、ポリファーマシー対策を考える上で、患者といかに共同意思決定(Shared Decision Making)を行うか、など服薬アドヒアランス向上のための戦略もセットで、それぞれの施設や地域に適した形で考えることも大変意義のあることである。では少し具体的な対策について考えてみたい。ポリファーマシーへの対策1. 潜在的不適切処方(Potentially inappropriate medications:PIMs)、有害事象を起こす可能性がある薬剤(Potentially harmful drug:PHD)はないか?ポリファーマシー改善の第一歩は、PIMsがないか、適宜、処方されているすべての薬剤の見直しを行うことである。とくに、外来主治医が一人ではない場合、システム上それが漏れてしまうことが多く、年に1回でもよいので、総点検を実施することが大切である(できれば病院のシステムとして)。その際に参考となるプロトコル、アルゴリズムを表と図2に示す。(表)処方中止プロトコル画像を拡大する(図2)処方薬の中止/継続を判断するためのアルゴリズム画像を拡大するこのようなものをベースに、それぞれの施設に合った形で実施していただければ、大変効果的であると考える。そして、もう一つ重要なのが、心不全患者で注意すべき有害事象を起こす可能性がある薬剤(PHD)を服用していないか、ということにも注意を払うことである。その薬剤については、米国のガイドラインに明記されており、(1)抗不整脈薬、(2)Ca拮抗薬(アムロジピン以外)、(3)NSAIDs、(4)チアゾリジン薬(商品名:アクトスほか)である10)。とくに、抗不整脈薬は、加齢に伴い生理・代謝機能が低下することで、体内の薬物動態が変化し、本来の目的ではない催不整脈作用や併用薬の相互作用が顕在化するリスクがあるので、きわめて注意が必要である。また、NSAIDsは、腎臓の血管拡張を抑制(低下)させる腎プロスタグランジンの合成を阻害し、太いヘンレ係蹄上行脚や集合管でのナトリウム再吸収を直接阻害することで、ナトリウムと水分の貯留を引き起こし、利尿薬の効果を鈍らせる可能性がある4-9)。いくつかのコホート研究にて、心不全患者がNSAIDsを使用することで罹患率、死亡率が増加すること、また2型糖尿病患者のデータで、1ヵ月以内の短期のNSAIDsの使用であっても、その後の心不全新規発症率上昇と有意に関連していたという報告も最近されており、たとえ短期の使用であっても定期内服はかなり注意が必要と言える11)。 なお、心不全入院からの退院後90日以内に処方された潜在的有害薬物と再入院・死亡との関連をみた観察研究によると、潜在的有害薬物が実際に処方されていた割合は約12%で、最も頻繁に処方されていた薬剤はNSAIDs(6.7%)であった。次に多かったのが、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(4.7%)で、Ca拮抗薬はその後の再入院とも有意に関連していた12)。これらのことから、とくに高齢心不全患者では、上記4種の薬剤のなかでも、抗不整脈薬、NSAIDsの定期投与は、必要最小限に留め、処方する場合も常に中止を検討することが望ましいと考える。2. 本気の多職種連携で、それぞれの施設、地域に合った効率良い対策を考えるこれまで述べてきたポリファーマシー対策を効率よく実施し、それを長続きさせるには、医師だけでできることは時間的にも大変限られており、薬剤師、看護師、心不全療養指導士の皆さまにも積極的に介入してもらえるようなシステム作りが重要と考える。薬剤師による介入は、高齢者における薬剤有害事象のリスクを軽減することに有用であるという報告もあるし13)、これらのスタッフ全員がうまく役割分担をして、尊重し合い、サポートし合いながら、ポリファーマシー対策を実施することが、高齢心不全患者が増加しているわが国ではとくに必要であり、今後その重要性はますます増してくるであろう。このような多職種が介入する心不全の疾病管理プログラムの重要性は本邦の心不全診療ガイドラインでも明記されており14)、ぜひ、年に1回は、『処方薬、総点検週間』を設けるなど、積極的なポリファーマシーへの介入を実施していただければ幸いである。1)Minamisawa M, et al. Circ Heart Fail. 2021;14:e008293.2)Rossignol P, et al. Eur Heart Fail. 2020;22:1378-1389.3)Wu JR, et al. J Cardiovasc Nurs. 2018;33:40-46.4)Gislason GH, et al. Arch Intern Med. 2009;169:141-149.5)Heerdink ER, et al. Arch Intern Med. 1998;158:1108-1112.6)Hudson M, et al. BMJ. 2005;330:1370.7)Page J, et al. Arch Intern Med. 2000;160:777-784.8)Feenstra J, et al. Arch Intern Med. 2002;162:265-270.9)Mamdani M, et al. Lancet. 2004;363:1751-1756.10)Yancy CW, et al. J Am Coll Cardiol. 2013;62:e147-239.11)Holt A, et al. J Am Coll Cardiol. 2023;81:1459–1470.12)Alvarez PA, et al. ESC Heart Fail. 2020;7:1862-1871.13)Vinks THAM, et al. Drugs Aging. 2009;26:123-133.14)日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

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釣り針が刺さった【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第2回

皆さんは釣りをしますか? 私は学生時代に釣りの楽しさを知り、よく遠征していました。「魚の引き」に快感を覚えるタイプで、学生時代はカジキマグロ、福井で働いているときは玄達瀬でアジ科最大種のヒラマサを釣り上げました。地域にもよると思いますが、救急外来で働いていると釣り針が刺さった患者を診る機会がしばしばあります。一般の方は釣り針が刺さったときに何科を受診したらよいかわからないため、かかりつけ医や意外な診療科にふらっとやって来ることもあります。そういうときに対処方法やコツを知らないと本当に困ることになりますよ! 下記は私が経験した苦い経験です。指に釣り針の刺さった強面のお兄さんが受診。疑似餌を用いて釣りをしていたようで、ゴム製の疑似餌が付いたままであった。除去しようとして疲れたのか、ややイライラしながら「痛くないようにしてくださいよ!」とプレッシャーをかけてくる。String pull technique(後述)による抜去に慣れてきたころだったのでトライしてみたが、緊張のためか変な力が入って釣り針はうまく抜けない。激しい痛みが生じたようで、顔をゆがめながらものすごい目つきでこちらを見てくる…。皆さんなら初めの段階に、もしくはこの後どうされますか? このようなことにならないように、今回は釣り針が刺さったときの対処方法とそのコツを紹介します。釣り針の構造釣りをされる方であれば一度は経験すると思いますが、釣り中に釣り針が服に引っ掛かって取れなくなってしまうことがあります。服を傷つけないように取ろうとしてもなかなか難しいですよね。釣り針には下図のように「カエシ」という突起があり、釣り針を抜こうとするとカエシが引っかかって抜けない仕組みになっています。強引に抜こうとすると皮下組織を損傷してしまい、かなりの痛みが伴います。また、餌が外れにくくするための突起である「ケン」にも注意しなければいけません。これらの複雑な構造が釣り針の抜去を難しくしています。画像を拡大する釣り針の抜去方法4選一般的に指に刺さった釣り針を抜去する手法は4つあります1)。(1)Retrograde techniqueRetrograde techniqueは、釣り針を刺さった方向と逆向きにそのまま引き抜くという方法です。釣り針を指側に押して、カエシが引っかからないように抜去します。報告によると成功率は74%とありますが、私の印象ではなかなかこの方法で釣り針を抜去することは難しいです2)。魚を簡単に逃がさないための人類の工夫ですので簡単に取れても困りますもんね…。画像を拡大する(2)String pull techniqueString pull techniqueは、最も傷が小さいと言われる方法です。釣り針を糸で結び、指側に押しながら、釣り針が刺さった方向と逆向きに糸を引っ張ります。屋外でもできることが利点ですが、しっかりとした固定が必要なので耳たぶなどの固定が難しい部位では行えません。画像を拡大する(3)Needle cover techniqueNeedle cover techniqueは、釣り針の針穴に18Gの注射針を挿入し、内腔にカエシを入れ、カエシが皮下組織に引っ掛からないようにカバーしながら抜去する方法です。注射針の先端を直接見ることができないのが難点で、成功率は高くない(47%)という報告があります。私は一度トライしましたが、カエシに注射針が入っているのかよくわからず、「かぶさった」という感覚があったものの結局皮下で引っかかって断念しました。それ以降はやっていません。画像を拡大する(4)Advance and cut techniqueAdvance and cut techniqueは、釣り針を刺さった方向に押し進め、カエシを皮膚から出してペンチなどで切断する方法です。カエシの手前で釣り針を切りますが、切った瞬間に断端が飛んでしまう危険があるため、私は釣り針をガーゼなどで覆ってから切るようにしています。カエシがなくなれば釣り針は逆向きから簡単に抜けるようになります。デメリットは釣り針による穴が2ヵ所できることでしょうか。画像を拡大するケンがある釣り針の場合は注意が必要で、刺さった方向に押し進める際に最初の針穴にケンが入り込んでしまうとそこで抜けなくなります。そのため、あらかじめケンを切っておくか、釣り針の根元を切断して、そのまま刺さった方向に押し進めて針先側から釣り針を抜く方法もあります。画像を拡大する私は基本的には(1)か(2)をトライしてダメなら(4)で抜去しています。(4)で抜けないということはまずないです。鎮痛釣り針の抜去の手技には痛みが生じることが多いため、私は処置の前に局所麻酔(1%キシロカイン)で鎮痛しています。(2)の処置では鎮痛は必要ないとも言われていますが、失敗したときの痛みはかなりのものなので私は鎮痛しています。インターネットで「String pull technique, fish hook」と検索すると動画が見れますが、なかなか簡単にはいきません。なお、痛みを抑えるコツは釣り針を素早く引っ張ることです!抗菌薬と創部処置抗菌薬に関しては基本的に推奨されていません。しかし、免疫抑制状態や糖尿病、肝硬変がある場合や、釣り針が関節内や靭帯や皮下の深いところまで到達している場合は予防投与が検討されます。予防の目的の1つに最近注目を集めるようになったエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)があります。これは淡水、河口部、海水に広く常在するグラム陰性の通性嫌気性桿菌であり、治療にはフルオロキノロンが適応となります。海や川で使用した釣り針で傷を負い、抗菌薬の予防投与が必要な場合はフルオロキノロンを検討しましょう。また、患者の予防接種歴を確認し、基礎免疫がある場合は最終接種から5年以上経過している場合は破傷風トキソイドを投与し、基礎免疫がない場合は破傷風トキソイドに加えて抗破傷風人免疫グロブリンの投与を検討します3)。創部処置では、針穴を密閉すると感染リスクが高まるので控え、軟膏を塗布もしくは通気性がよいガーゼなどで保護します1)。もし、院外で釣り針が刺さった患者に遭遇した場合、私は(2)のString pull techniqueはあまり推奨しません。冒頭の苦い経験のように、うまくいかないとどうしても強い痛みが生じるからです。院外で遭遇したら無理をせず病院受診を促し、院内ではどの手法を使うにしても鎮痛をしっかりしたほうがよいでしょう。ちなみに、冒頭の強面のお兄さんの釣り針は、結局(4)のadvance and cut techniqueで抜去しましたが、最後に一言「最初からこれでやれよ」と言われてしまいました。ものすごい目つきでにらまれた記憶が今でも残っています…。1)Gammons MG, et al. Am Fam Physician. 2001:63;2231-2236.2)McMaster S, et al. Wilderness Environ Med. 2014:25;416-424.3)Callison C, et al. In:StatPearls [Internet]. Tetanus Prophylaxis. Treasure Island(FL):StatPearls Publishing. 2022.

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糖質過剰摂取は糖尿病患者のみならず万人にとって生活習慣病リスクを高める危険性がある?―(解説:島田俊夫氏)

 私たちは生きるために食物を食べることでエネルギーを獲得している。その主要なエネルギー源は3大栄養素であり、その中でも代表的なエネルギー源が糖質である。 糖質の摂り過ぎは糖尿病患者では禁忌だということは周知されている。しかし健康人においてさえ、糖の摂り過ぎには注意が必要だとの警鐘を告げる論文も散見され、その中には糖質過剰摂取1,2)が3大死因に密接に関連し、生活習慣病を引き起こす可能性について言及した論文も少なくない。しかしながら、エビデンスレベル不ぞろいの論文が混在しており、玉石混交の中で可能な限り厳密に分析・評価し、糖質過剰摂取に関する情報の真実を明らかにすべく行われた、中国・四川大学のYin Huang氏らにより解析されたUmbrella Review(包括的Review)が、BMJ誌の2023年4月5日号に期せずして掲載された。一読に値するとの思いで取り上げた。Umbrella Reviewの概略 今回のUmbrella Reviewのデータソースは、検索により、観察研究のメタアナリシスにおける74のユニークなアウトカムと無作為化対照試験のメタアナリシスでの9アウトカムを含む、8,601のユニークな論文から73のメタアナリシスと83の健康アウトカムを特定した。健康に関するアウトカム83項目中、食事由来の糖質摂取と有意な関連を認めた45項目の内訳、内分泌/代謝系18項目、心血管系10項目、がん7項目、その他10項目(神経精神、歯科、肝臓、骨、アレルギーなど)に関して有害性が確認された。 食事の砂糖消費量の最高と最低では、体重の増加(加糖飲料)(クラスIVエビデンス)および異所性脂肪の蓄積(加糖)(クラスIVエビデンス)と関連していることを示唆した。低品質のエビデンスでは、1食分/週の砂糖入り飲料消費の増加は、痛風の4%リスク(クラスIIIエビデンス)増加と関連し、250mL/日の砂糖入り飲料消費の増加は、冠動脈疾患(クラスIIエビデンス)および全死因死亡(クラスIIIエビデンス)のそれぞれ17%および4%のリスク増加と関連することを示した。さらに、低品質のエビデンスでは、フルクトース消費量が25g/日増加するごとに、膵臓がんのリスクが22%増加(クラスIIIエビデンス)することを示した。 現時点では糖質過剰摂取の有害性をすなおに受け入れることが賢い選択だと考えるが、全面的に信じることはせず、多少の疑問を残しておくことが大事である。糖質の過剰摂取が肥満を招くことは欧米ではすでに受け入れられており、糖尿病のみならず肥満是正に糖質制限食が好んで使用されていることを考えれば、今回の解析結果は理にかなっている。その反面、長期にわたる糖質制限食に関しては議論の多いところであり3,4)、安全性への不安が根強く残っていることも忘れてはならない。現時点では、長期の糖質制限食への不安が払拭されない限りは、この結果を無条件に受け入れるのは時期尚早ではないかと考える。

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英語で「臨機応変」は?【1分★医療英語】第79回

第79回 英語で「臨機応変」は?I was wondering how much fluid we should give.(補液をどのくらい投与すればよいか悩んでいました)It depends on his urine output, so let’s play it by ear.(それは尿量によるから、臨機応変にやろう)《例文1》I’m not sure what time the round starts, but let’s play things by ear.(回診が何時に始まるかわからないけど、臨機応変にやろう)《例文2》She didn’t know what to do on the first day, but she played things by ear.(彼女は初日に何をすべきかわからなかったが、臨機応変に対応した)《解説》この“play it by ear”というのは、「状況に応じてやることを決めていく」、「臨機応変に対応する」という意味を持つイディオムです。このイディオムは、元々は音楽の世界から来たものです。楽器を演奏する際に、決められた音を予定どおりにきっちり演奏するには、楽譜をしっかりと目で追いかけなければならないでしょう。一方、“by ear”すなわち「耳で演奏する」という場合には、楽譜は見ないということになり、耳で聞こえる音だけを頼りにフレキシブルに演奏することになりますよね。そこから転じて、「状況に応じて臨機応変に対応する」という意味で用いられるようになりました。医療現場でも、物事が全て予定通りに進むわけではなく、患者さんの容態が突然変化した際など、状況に応じた臨機応変な対応が求められることは多いと思います。そんなとき、シンプルに“Let’s play it by ear.”(臨機応変にやろうよ)と、チームに声を掛けられれば、フレキシブルに動く心の準備ができるかもしれません。これは、院内外で耳にすることの多い表現だと思います。TPOに合わせてこのイディオムを使えれば、まるでネイティブのような“音色”を奏でられることでしょう。講師紹介

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モルヌピラビル、高リスクコロナ患者の後遺症リスク低減/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染し、重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に進行する危険因子を少なくとも1つ有する患者において、感染後5日以内のモルヌピラビル投与は無治療と比較し、ワクチン接種歴や感染歴にかかわらず、急性期以降の罹患後症状(いわゆる後遺症)(post-acute sequelae of SARS-CoV-2:PASC)のリスク低下と関連していた。米国・VA Saint Louis Health Care SystemのYan Xie氏らが、退役軍人医療データベースを用いたコホート研究で明らかにした。著者は、「COVID-19の重症化リスクが高い患者では、SARS-CoV-2感染後5日以内のモルヌピラビル投与がPASCのリスクを低下する有効なアプローチとなりうる」とまとめている。BMJ誌2023年4月25日号掲載の報告。検査陽性後30日以降の死亡、入院、PASCについて無治療と比較 研究グループは、退役軍人医療データベースを用い、2022年1月5日~2023年1月15日の間にSARS-CoV-2陽性と判定され、重症化リスク(年齢>60歳、BMI>30、がん、心血管疾患、慢性腎疾患、慢性肺疾患、糖尿病、免疫機能障害)を1つ以上有し、陽性判定後30日間生存していた患者のうち、陽性判定後5日以内にモルヌピラビルを投与された患者(モルヌピラビル群)1万1,472例と、陽性判定後30日以内にCOVID-19に対する抗ウイルス薬または抗体治療を受けなかった患者(無治療群)21万7,814例、合計22万9,286例を特定し解析した。 評価項目は、急性期以降の死亡、急性期以降の入院、および急性期以降の死亡または入院の複合である。また、事前に規定した13のPASC(虚血性心疾患発症、不整脈、深部静脈血栓症、肺塞栓症、疲労・倦怠感、肝疾患、急性腎障害、筋肉痛、糖尿病、神経認知障害、自律神経失調症、息切れ、咳)の発症リスクも検討した。すべての急性期以降のアウトカムは、最初のSARS-CoV-2陽性判定後30日から2023年2月15日(追跡調査終了日)まで調査した。 相対スケール(相対リスク[RR]またはハザード比[HR])および絶対スケール(180日後の絶対リスク減少)のリスクが推定された。陽性後5日以内での投与で、急性期以降の死亡、入院、PASCのリスク低下 無治療群と比較してモルヌピラビル群では、PASCのリスク低下(RR:0.86、95%信頼区間[CI]:0.83~0.89、180日後の絶対リスク低下:2.97%、95%CI:2.31~3.60)、急性期以降死亡のリスク低下(HR:0.62、95%CI:0.52~0.74、180日後の絶対リスク低下:0.87%、95%CI:0.62~1.13)、急性期以降入院のリスク低下(HR:0.86、95%CI:0.80~0.93、180日後の絶対リスク低下:1.32%、95%CI:0.72~1.92)が認められた。 モルヌピラビルは、13のPASCのうち、不整脈、肺塞栓症、深部静脈血栓症、疲労・倦怠感、肝疾患、急性腎障害、筋肉痛、神経認知障害の8つのリスク低下と関連していた。また、サブグループ解析の結果、COVID-19ワクチン未接種者、1回または2回のワクチン接種者、ブースター接種者、SARS-CoV-2初感染者および再感染者のいずれにおいても、モルヌピラビル群でPASCのリスク低下が示された。

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英語で「脂っこい食べ物」は?【1分★医療英語】第78回

第78回 英語で「脂っこい食べ物」は?How can I control my cholesterol?(コレステロールをコントロールするにはどうしたらよいですか?)That is a good question. Don't eat greasy food too much.(良い質問ですね。脂っこいものを食べ過ぎないようにしましょう)《例文1》My stomach pain gets worse when I eat greasy food.(脂っこいものを食べると、お腹の痛みが悪化します)《例文2》How often do you eat greasy food?(どれくらいの頻度で脂っこいものを食べますか?)《解説》“greasy”は馴染みのない単語かもしれませんが、「脂っこい」「ギトギトした」という意味の単語で、“greasy food”は「脂っこい食べ物」を表します。発音は「グリースィー」で、“r”の発音に注意して話すと伝わりやすくなります。患者さんへの栄養指導や、食事摂取歴を聞く際によく使います。“oily”や“fatty”も同様に「脂っこい」という意味の単語ですので、一緒に覚えておくとよいでしょう。米国では日本のコンビニのように安くヘルシーな食べ物を入手できる場所が少なく、安い食べ物はピザやハンバーガー、フライドポテトなどの“greasy food”ばかり…。生活水準の差が肥満や糖尿病などの健康問題に直結している印象です。講師紹介

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5月2日 カルシウムの日【今日は何の日?】

【5月2日 カルシウムの日】〔由来〕丈夫な骨を作るために欠かせない「カルシウム」を摂ることの大切さを多くの人に知ってもらうことを目的に、骨(コ[5]ツ[2])の語呂合わせからワダカルシウム製薬が制定。関連コンテンツ高齢糖尿病患者の骨折リスク、骨粗鬆症にどう対応する?【高齢者糖尿病診療のコツ】カルシウム製剤について【患者説明用スライド】カルシウムを含む食材は何【患者説明用スライド】カルシウムってなあに?【患者説明用スライド】

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5月4日 ゴーシェ病の日【今日は何の日?】

【5月4日 ゴーシェ病の日】〔由来〕非常にまれな疾患であるゴーシェ病を、多くの人に知ってもらうことを目的に同疾患の啓発活動や患者の早期の診療への活動を行っている「日本ゴーシェ病の会」が制定。同会の活動開始日(2015年)と「ゴ(5)ーシ(4)ェ」と読む語呂合わせからこの日になった。関連コンテンツゴーシェ病【ダイジェスト版】ゴーシェ病【希少疾病ライブラリ】早期診断が重症化を遅らせるゴーシェ病

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5月5日 熱中症対策の日【今日は何の日?】

【5月5日 熱中症対策の日】〔由来〕「立夏」(5月5日頃)の頃から熱中症患者の報道が出始めることから、早期の注意と熱中症予防にはこまめな水分補給が大切であることの啓発を目的に「熱中症ゼロへ」プロジェクト(日本気象協会)と日本コカ・コーラが共同で2014年に制定。関連コンテンツ自分でつくる経口補液で熱中症を予防する【患者指導画集 Part2】熱中症の予防に適切な水分は?【一目でわかる診療ビフォーアフター】覚えておきたい熱中症の基本事項【救急診療の基礎知識】「エアコン28℃設定」にこだわらないで!医師が患者に伝えたい熱中症対策コロナ疑い熱中症患者への最新対応法/日本救急医学会

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糖尿病のある人を知らずに傷つける糖尿病スティグマ/糖尿病学の進歩

 2月17日・18日に東京・東京国際フォーラムで「第57回 糖尿病学の進歩」(世話人:馬場園 哲也氏[東京女子医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝内科学分野 教授・基幹分野長])が開催された。 近年、「糖尿病」という病名について患者や医療者から疑問の声が出され、糖尿病というネガティブなイメージからさまざまな不利益を受けていることも表面化している。そこで本稿では、「糖尿病診療に必要な知識」より「糖尿病スティグマとアドボカシー活動」(田中 永昭氏[国家公務員共済組合 枚方公済病院 内分泌代謝内科])の内容をお届けする。医療者は糖尿病のある人を知らずに傷つけているかもしれない 糖尿病という「スティグマ=烙印」は、マイナスイメージであり、今では「『恥』や『不信用』の烙印となっている」と田中氏は指摘する。また、糖尿病というだけで就職できない、保険への加入ができないなど糖尿病のある人には社会的な不利益が起こっているだけでなく、本人の自尊感情の低下や治療機会の喪失なども散見されるという。 これらの偏見や差別は、社会の糖尿病の知識と理解の不足から起こるものであり、実際、糖尿病のある人の多くは決して「食べ過ぎ」などの不健康な生活習慣が起因するものではなく、最近の調査では40歳からの平均余命も糖尿病のない人と変わらないと報告されている。 そして、「医療者から糖尿病のある人へのスティグマもみられることも重要な課題である」と田中氏は指摘する。たとえば、いわゆる「療養指導」がうまくいかないときに「やっぱり糖尿病だから」と相手をみてしまったり、口走ってしまったりすることがみられるという。糖尿病のある人と話し合うときに、医療者が理想の患者像を勝手に創造し、糖尿病のある人を低くみていることが問題とされる。そして、こうした行動や発言がされることで、糖尿病のある人に自己スティグマを負わせ、自分は誰かに相談したり、誰かの助けを求めたりするに値しない人間だと思わせてしまい、ひいては糖尿病治療の中断や医療機関への通院を止めるなど、さらに糖尿病治療へ悪い影響をもたらすと田中氏は懸念を示す。 実際、田中氏らが信頼性と妥当性を担保したスティグマ質問票「KISS(Kanden Institute Stigma Scale)」を開発・調査したところ、糖尿病のある人は糖尿病のない人と比べてKISSの総スコアが有意に高値であったことから、糖尿病のある人は糖尿病というスティグマに苦しんでいる状況がうかがえたという。糖尿病スティグマ解消のためにできること こうした、病気へのスティグマへの解決方法の1つに“Shared decision-making”がある。これは、医療者と糖尿病のある人がエビデンスに基づく治療や糖尿病のある人の人生観を共有することで、一緒に治療方針や目標を決定するというものである。「糖尿病のある人との面談の際、医療者は尊厳を持ち、相手の話をよく聞き、行動の禁止や拒否、指示、命令などは避けるように心がける必要がある」と田中氏は提案する。 アドボカシー(提言)活動については、日本糖尿病協会が行っており、糖尿病の特性などについて社会に認知してもらうために数々の提言を行っている。とりわけ近年では、「糖尿病」という病名に対して、糖尿病のある人にとって心理的な負担が大きいことから、見直しの議論が始められている。同会ではそのほかにも、糖尿病という病気の誤った認識の是正や正しい理解の内容を発信している。また、すぐにできることとして医療用語の改訂なども提案している。たとえば、「アドヒアランス」を「実施率」へ、「血糖コントロール」を「血糖マネジメント」などへの言い換えである。「血糖マネジメント」については、「『糖尿病のある人と医師が共通の目標を立てて、その達成のための計画を話し合うこと』という、本来医療者が実施したいことを適切に表現する言葉を使うべきだ」と田中氏は提言する。 最後に田中氏は、「糖尿病スティグマを認識することで、医療者も糖尿病のある人を模範的な患者像に押し込めるような関わり方は止めて、スティグマ解消に立ち上がってもらいたい」と期待を寄せた。

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骨粗鬆症患者の2型DM発症リスク、デノスマブvs 経口ビスホスホネート製剤/BMJ

 骨粗鬆症患者において、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤デノスマブの投与は経口ビスホスホネート製剤を投与した場合と比較して2型糖尿病(DM)の発症リスクが32%低下したことが、中国・The Chinese PLA General HospitalのHouchen Lyu氏らによるコホート研究で示された。2型DMのリスクが高い前糖尿病状態または肥満の患者では、デノスマブにより糖尿病発症リスクはさらに低下することも示唆され、著者は、「本研究は、デノスマブが経口ビスホスホネート製剤と比較し、糖代謝に対して付加的な有益性をもたらすというエビデンスを示している」とまとめている。これまで、観察研究や無作為化臨床試験の事後解析において、血糖変動に対するデノスマブの効果が示唆されていたが、デノスマブが2型DMのリスクを減少させるかどうかは明らかになっていなかった。BMJ誌2023年4月18日号掲載の報告。デノスマブで治療を開始/切り替えた患者vs.経口ビスホスホネート製剤投与患者で検討 研究グループは、英国のプライマリケアデータベースであるIQVIA Medical Research Data(IMRD)を用い、1995年1月1日~2021年12月31日に骨粗鬆症治療薬を初めて処方された45歳以上の患者を抽出し、このコホートの中からさらに2010年7月1日~2021年12月31日の間にデノスマブの投与を開始した患者(ビスホスホネートから切り替え、または未治療でデノスマブによる治療を開始)と、経口ビスホスホネート製剤の投与を受けた患者を特定し研究コホートとした。 デノスマブへ切り替えた症例1例に対し、切り替え日時点で同じ期間経口ビスホスホネート製剤を使用しておりかつ継続した症例を最大5例、未治療でデノスマブによる治療を開始した症例1例に対し、未治療で経口ビスホスホネート製剤による治療を開始した症例を最大5例、傾向スコアを用いてマッチングさせた。 主要アウトカムは、診断コードにより定義された2型DMの発症で、Cox比例ハザードモデルによりデノスマブ新規投与患者と経口ビスホスホネート製剤投与患者を比較し、補正後ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出し評価した。デノスマブ投与群で2型DM発症リスクが32%低下 解析対象は、デノスマブ新規投与患者4,301例および経口ビスホスホネート製剤投与患者2万1,038例で、平均2.2年間追跡調査された。 2型DM発症頻度は、デノスマブ群で5.7/1,000人年(95%CI:4.3~7.3)、経口ビスホスホネート製剤群で8.3/1,000人年(95%CI:7.4~9.2)であり、デノスマブの投与開始は2型DMの発症リスク低下と関連していることが認められた(HR:0.68、95%CI:0.52~0.89)。 サブグループ解析の結果、前糖尿病状態の患者において、経口ビスホスホネート製剤と比較しデノスマブによる有益性がより高いことが示され(HR:0.54、95%CI:0.35~0.82)、BMI≧30の患者においても同様の結果であった(0.65、0.40~1.06)。

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オンライン学会、質疑応答中に使える表現【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第14回

オンライン学会、質疑応答中に使える表現コロナ禍で急増したオンライン学会。オンラインのプレゼンでは、オフライン(現地)とはまた違った特有の言い回しを知っておく必要があります。ここでは、前回のトラブル編に続いて、「オンライン学会ならでは」のフレーズを取り上げます。質疑応答の際のフレーズCould you type it in the chat?(チャット欄に書き込んでもらえますか?)これも、プレゼンテーションに限らず、オンライン会議をしている時には頻出のフレーズです。質問が十分聞き取れなかったなどの場合には、こうやって文字に誘導できるのもオンライン会議の強みですね。May I chime in?(お話し中ですが、一言いいですか?)“chime in”の“chime”は音の通り「チャイム(鐘)」を意味する言葉です。しかし、ここでは“chime”に“in”が付いているので、「チャイムを鳴らして入り込む」という意味合いを持つことになります。ここで入り込むのは家ではなく、会話や議論。そこから転じて、「会話に入り込む」、「口を挟む」などの意味合いで用いることができるフレーズになります。Please feel free to unmute yourself and stop me anytime for questions or comments.(質問やコメントがあれば、いつでも音声をオンにしてプレゼンを遮ってください)先に出てきた“mute”とは逆に、音声を「オン」にするというときには、“mute”に“un-”という否定の接頭辞を付けて、“unmute”という動詞を使います。“Please feel free to”というのは「ご自由にどうぞ」という意味を持つフレーズで、使い勝手がいいので合わせて覚えてしまいましょう。In the interest of time, please save your questions till the end.For the sake of time, I would like to take questions at the end of my talk.(時間の都合上、質問は最後にしてください)質問を途中では取らずに、最後に取りたいことを伝えたい時には、このような表現もできます。“In the interest of time”や“For the sake of time”で「時間の都合上」という意味になります。途中退室が必要な際のフレーズ“Sorry, I need to jump off for another session at 3 pm.”(申し訳ないのですが、次のセッションのために3時に退出します)オンラインの画面で“jump”という動詞はなかなか出てこないかもしれませんが、とても自然でよく使われる表現です。知らないとなかなか使いこなせないので、こういった表現も覚えておくと便利です。講師紹介

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2型DM患者、砂糖入り飲料多飲で死亡リスク2割増/BMJ

 2型糖尿病(DM)患者における飲料別の全死因死亡および心血管疾患(CVD)アウトカムとの関連が明らかにされた。砂糖入り飲料の多量摂取が全死因死亡およびCVDの発症・死亡と関連する一方で、コーヒー・紅茶・淡水・低脂肪乳の摂取は、摂取量と全死因死亡が逆相関であるという。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のLe Ma氏らが、2つの大規模前向きコホート試験、Nurses' Health StudyとHealth Professionals Follow-Up Studyの解析結果を報告した。著者は、「示された結果は、成人2型DM患者におけるCVDおよび早期死亡のリスクを管理するうえで、飲料の健康的な選択が果たす潜在的な役割を強調するものであった」とまとめている。BMJ誌2023年4月19日号掲載の報告。1万5,000例の飲料摂取内容・量を2~4年ごとに調査 研究グループは、1980~2018年のNurses' Health Studyと1986~2018年のHealth Professionals Follow-Up Studyに参加し、ベースラインおよび追跡期間中に2型DMの診断を受けていた男女1万5,486例を対象に、飲料別の摂取と死亡およびCVDアウトカムの関連を調べた。飲料の摂取量は、食品摂取頻度に関する質問票を用いて評価し、2~4年ごとに更新した。 主要アウトカムは全死因死亡。副次アウトカムはCVDの発症と死亡とした。砂糖入り飲料の多量摂取、死亡リスク1.2倍 平均追跡期間18.5年の間に、CVDの発症は3,447例(22.3%)、死亡は7,638例(49.3%)が報告された。多変量補正後、各種飲料摂取量の5分類中、最高量群の最低量群に対する死亡に関するプール解析ハザード比(HR)は、砂糖入り飲料では1.20(95%信頼区間[CI]:1.04~1.37)だった。一方で、コーヒーでは0.74(0.63~0.86)、紅茶0.79(0.71~0.89)、淡水0.77(0.70~0.85)、低脂肪乳0.88(0.80~0.96)だった。 同様の関連は、各種飲料摂取量とCVD発症・死亡との間にも認められた。とくに、砂糖入り飲料については、摂取の最高量群の最低量群に対するCVD発症に関するHRは1.25(95%CI:1.03~1.51)、同じくCVD死のHRは1.29(1.02~1.63)と、摂取量と正の関連がみられた。一方で、コーヒー、低脂肪乳については、摂取量と同リスクに逆相関が認められた。 さらに、2型DMの診断後にコーヒーの摂取量が増えた人は増えなかった人に比べ、全死因死亡は低いことが観察された。同様の関連性は、紅茶と低脂肪乳についてもみられた。 砂糖入り飲料から人工甘味料入り飲料への変更で、全死因死亡やCVD死の有意な低下が認められた。砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料、フルーツジュース、全脂肪乳から、コーヒー、紅茶、淡水への変更でも、一貫して全死因死亡の低下が認められた。

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