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末梢性めまいで“最も頻度の高い”良性発作性頭位めまい症、BPPV診療ガイドライン改訂

 『良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン』の初版が2009年に発刊されて以来、15年ぶりとなる改訂が行われた。今回、BPPV診療ガイドラインの作成委員長を務めた今井 貴夫氏(ベルランド総合病院)に専門医が押さえておくべきClinical Question(CQ)やBPPV診療ガイドラインでは触れられていない一般内科医が良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo)を疑う際に役立つ方法などについて話を聞いた。BPPVは末梢性めまいのなかで最も頻度が高い疾患 BPPVは末梢性めまいのなかで最も頻度が高い疾患である。治療法は確立しており予後は良好であるが、日常動作によって強いめまいが発現したり、症状が週単位で持続したりする点で患者を不安に追い込むことがある。また、BPPVはCa代謝の異常により耳石器の耳石膜から耳石がはがれやすくなって症状が出現することから、加齢(50代~)、骨粗鬆症のようなCa代謝異常が生じる疾患への罹患、高血圧、高脂血症、喫煙、肥満、脳卒中、片頭痛などの既往により好発するため、さまざまな診療科の医師による理解が必要になる。 よって、BPPV診療ガイドラインは耳鼻咽喉科や神経内科などめまいを扱う医療者向けにMinds診療ガイドライン作成マニュアルに準拠し作成されているが、BPPVの疫学(p.20)や鑑別診断(p.25~27)はぜひ多くの医師に一読いただきたい。 以下、BPPV診療ガイドラインの治療に関する全10項目のCQを示す。―――CQ1:後半規管型BPPVに耳石置換法は有効か?CQ2:後半規管型BPPVに対する耳石置換術中に乳突部バイブレーションを併用すると効果が高いか?CQ3:後半規管型BPPVに対する耳石置換法後に頭部の運動制限を行うと効果が高いか?CQ4:外側半規管型BPPV(半規管結石症)に耳石置換法は有効か?CQ5:外側半規管型BPPV(クプラ結石症)に耳石置換法は有効か?CQ6:BPPVは自然治癒するので経過観察のみでもよいか?CQ7:BPPV発症のリスクファクターは?CQ8:BPPVの再発率と再発防止法は?CQ9:BPPVに半規管遮断術は有効か?CQ10:BPPVに薬物治療は有効か?――― 今回、今井氏は「めまい診療を行う医師にはCQ5とCQ8に目を通して欲しい」と述べており、その理由として「両者に共通するのは、諸外国では積極的に行われているにもかかわらず日本ではまだ実績が少ない治療法という点」と話した。「たとえば、CQ8のBPPVの再発防止については、ビタミンDとカルシウム摂取が有効であると報告されているが、国内でのエビデンスがないため推奨度は低く設定された。次回のBPPV診療ガイドライン改訂までにエビデンスが得られ、推奨度が高くなることを期待する」とも話した。BPPVと鑑別すべきめまいを伴う疾患 めまいを伴う疾患はBPPVのほか、脳卒中やメニエール病をはじめ、前庭神経炎、めまいを伴う突発性難聴、起立性調節障害、起立性低血圧が挙げられる。とくに起立性低血圧はBPPVの34%で合併しており鑑別が困難であるので注意したい。なお、めまいの訴えが初回で単発性の場合、高血圧・心疾患・糖尿病が既往にある患者では脳卒中も鑑別診断に挙げるべきである。BPPVを疑う鍵は「めまいが5分以内で治まる」か否か BPPVの確定診断のためには特異的な“眼振”を確認することが必要であるので、フレンツェル眼鏡や赤外線CCDカメラといった特殊機材を有している施設でしか診断できないが、同氏は「BPPV診療ガイドラインには掲載されていないが、非専門医でもBPPVを疑うことは可能」とコメントしている。「眼振が確認できない施設では、われわれが開発した採点システム1)を用いて患者の症状をスコア化し、合計2点以上であればBPPVを疑って専門医に紹介して欲しい」と説明した。 本採点システムを開発するにあたり、同氏らは大阪大学医学部附属病院の耳鼻咽喉科およびその関連病院のめまい患者571例を対象に共通の問診を行い、χ2検定を実施。BPPV患者とそれ以外の患者で答えに有意差のあった問診項目を10個抽出した。同氏はこれについて「10個の項目に0~10点を付け、患者の答えから求めた合計点によりBPPVか否かを判断した際、感度、特異度の和が最も高くなるように点数を決定し、0点の項目を除外すると最終的に4項目に絞ることができた。なかでも“めまいが5分以内で治まる”は点数が2点と高く、BPPV診断で最も重要な問診項目であることも示された」と説明した。なお、本採点システムによる BPPVの診断の感度は81%、特異度は69%だった。 以下より、そのツールを基にケアネットで作成した患者向けスライドをダウンロードできるので、非専門医の方にはぜひ利用して欲しい。『良性発作性頭位めまい症の判別ツール』(患者向け説明スライド) なお、CareNeTVでは『ガイドラインから学ぶ良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療のポイント』を配信中。話術でも定評のある新井 基洋氏(横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科 部長)が改訂BPPV診療ガイドラインを基に豊富な写真・イラストや動画を用いて解説している。

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LDL-Cが高い人ほど心筋梗塞の予後良好!? 

 低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)高値であると、冠動脈疾患(CVD)の発症や死亡のリスクが高いことが知られている。しかし、急性冠症候群患者のLDL-C低値が死亡リスクを上昇させることを示唆する観察研究の結果が複数報告されており1-4)、「LDL-Cパラドックス」と呼ばれている。そこで、スウェーデン・ウプサラ大学のJessica Schubert氏らの研究グループは、初発の心筋梗塞で入院した患者のうち、スタチン未使用であった6万3,168例を対象としたデータベース研究を実施した。その結果、LDL-C高値の患者は死亡リスクが低く、非心血管疾患による入院リスクも低かった。本研究結果は、Journal of Internal Medicine誌オンライン版2023年5月31日号に掲載された。LDL-C値が低い群ほど心筋梗塞入院後の死亡率が高かった 研究グループは、心筋梗塞疑いで専門施設に入院した患者を登録したスウェーデンのデータベース(SWEDEHEART)を用いて、2006年1月~2016年12月に初発の心筋梗塞で入院した18歳以上の患者のうち、スタチン未使用であった6万3,168例を対象とした観察研究を実施した。対象患者は、ベースライン時のLDL-C値(mmol/L)で四分位に分類された(Q1:2.4以下、Q2:2.4超~3.0、Q3:3.0超~3.6、Q4:3.6超)。主要評価項目は全死亡率、非致死的心筋梗塞の再発率であった。LDL-Cとは無関係とされる非心血管疾患(肺炎、大腿骨近位部骨折、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、新規がん診断)による入院についても検討した。LDL-C値と転帰の関連はCox比例ハザードモデルを用いて評価した。 心筋梗塞で入院した患者のLDL-C値についての観察研究の主な結果は以下のとおり。・心筋梗塞で入院した対象患者のベースライン時の年齢中央値は66歳、LDL-C中央値は3.0mmol/L(約116.1mg/dL)であり、LDL-C値が低いほど患者の年齢と併存疾患が増加した。・追跡期間(中央値:4.5年)中に1万236例が死亡し、4,973例に非致死的心筋梗塞の再発が認められた。・全死亡率(/1000人年)は、ベースライン時のLDL-C値が低い群ほど高く(Q1:56、Q2:35、Q3:26、Q4:20)、ベースライン時のLDL-C値が最も高い(Q4)群は最も低い(Q1)群と比較して、全死亡リスクが低かった(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.71~0.80)。・一方、ベースライン時のLDL-C値が最も高い(Q4)群は最も低い(Q1)群と比較して、非致死的心筋梗塞の再発リスクが高かった(HR:1.16、95%CI:1.07~1.26)。・ベースライン時のLDL-C値が最も高い(Q4)群は最も低い(Q1)群と比較して、肺炎、大腿骨近位部骨折、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、新規がん診断による入院のリスクがいずれも低かった(それぞれ、HR[95%CI]:0.54[0.46~0.62]、0.69[0.55~0.87]、0.40[0.31~0.50]、0.81[0.71~0.93])。・退院時にスタチンを使用していなかった患者の50%が追跡終了前に死亡した。全死亡患者の47%は、死亡前6ヵ月間にスタチンが処方されていなかった。・ベースライン時のLDL-C値が中央値以下の集団において、退院後6~10週後のLDL-C値の変化量で四分位に分類した結果、最もLDL-C値が低下した群において、全死亡率と致死的心筋梗塞の再発率が低かった。 本研究結果について、著者らは「LDL-C低値にもかかわらず心筋梗塞を発症した患者には、動脈硬化性CVDを促進するほかの要因が存在することが示唆される。これは、心筋梗塞発症時のLDL-C値にかかわらず、脂質低下療法を継続することの重要性を強調するものである。とくに心筋梗塞発症時にLDL-C低値で未治療である場合には、過少治療のリスクが高まる可能性があるため、非常に重要である」と考察している。

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英語で「利益が不利益を上回る」は?【1分★医療英語】第84回

第84回 英語で「利益が不利益を上回る」は?I feel my new medication is causing lots of problems. Can we stop it?(私の新しく始めた薬は問題が大きいように感じます。服用を中止してもよいですか?)I understand that this medication has side effects, but I still believe the benefits outweigh the harm.(この薬に副作用があることは理解しています。それでも、利益が不利益を上回っていると信じています)《例文1》We should continue this therapy as long as the benefits outweigh the harm.(利益が不利益を上回っている限りは、この治療を続けるべきです)《例文2》Unfortunately, the potential benefits do not seem to outweigh the obvious risks for that alternative medicine.(残念ながら、その代替療法の潜在的な利益は、明らかである不利益を上回らないと思います)《解説》“the benefits outweigh the harm”(利益が不利益を上回る)というこの表現は、さまざまな場面で頻用できて便利です。とくに医療現場では、利益と不利益を天秤にかけて議論する場面が多くあります。“the benefits outweigh the risks”も同様の文脈で頻用します。元になっている動詞は、“重さを測る”という意味の“weigh”(wayと同じ発音)であり、“outweight”ではないことに注意が必要です。同様に、“weigh the benefits and harms”もしくは、“weigh the risk-benefit balance”などのようにも言い換えられます。講師紹介

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第167回 帯状疱疹ワクチンで認知症発現率低下 / タウリンでより健康に長生きできるかも

無作為化試験様の解析で帯状疱疹ワクチンと認知症が生じ難いことが関連おのずと無作為化試験のようになった英国・ウェールズの2集団の比較で帯状疱疹ワクチンzostavax接種と認知症が生じ難いことの関連が示されました1)。同地では2013年9月1日からzostavaxの接種が始まりました。zostavaxは80歳までの人にどうやらより有効とのことで、1933年9月2日以降に生まれた80歳未満の人が接種の対象となり、1933年9月2日より前に生まれた人は対象外でした。その日を挟む1925~42年生まれの約30万人(29万6,603人)の電子診療情報が解析され、zostavax接種対象の人はそうでない人に比べて認知症の発現率が8.5%低いことが示されました。接種対象者のうち実際に接種したのは半数ほどであることを踏まえた解析結果によるとワクチン接種は認知症発現率の約20%(19.9%)低下をもたらしました。生まれが1933年9月2日以降かその前かで区切った2集団の誕生日以外の全般的な違いといえばzostavax接種対象かそうでないかのみであり、その2集団はおのずから無作為化試験のような集団となっています。とはいえあくまでも診療録の解析結果であり、その効果の確証には試験が必要です。より新しい帯状疱疹ワクチンの試験がいくつか進行中で、それらの被験者の認知機能を検査してみたらどうだろうと著者は言っています2)。アミノ酸・タウリン補給でマウスの寿命が伸び、中年サルの体調が改善真核生物の世界で最も豊富なアミノ酸の1つであるタウリンはイカやタコそれに貝類などに多く含まれ、多くの栄養ドリンクやエナジードリンクの成分としても知られ、サプリメントとしても販売されています。ヒトにとってタウリンは準必須アミノ酸で、合成できるものの発達に十分な量を作ることができない幼いころには体外から取り込まねばなりません3)。幼いころのタウリン不足は老化関連疾患と関連する骨格筋、眼、中枢神経系(CNS)機能障害を引き起こします。そのタウリンの体内の巡りが老化に伴って減ることがマウス、サル、さらにはヒトで認められ、タウリンの体内の巡りを増やすことでマウスの健康で生きられる期間や寿命が伸び、中年サルの体調が改善しました4,5,6,7)。マウスやサルで認められたようなタウリンの健康増進効果がヒトでも期待しうることも英国の試験の記録の解析で示唆されました。解析されたのは英国・ノーフォーク州でのEPIC-Norfolk試験の被験者1万人超(1万1,966人)の記録で、血中のタウリンやタウリン関連代謝物が多いことはより痩身であることを示す体型指標と関連しました。また、2型糖尿病の有病率が低いこと、糖濃度が低いこと、炎症指標であるC反応性タンパク質(CRP)が少ないことなどとも関連し、タウリン欠乏のヒトの老化への寄与に見合う結果が得られています。アスリートやそうでない人を募って実施した試験で運動が血中のタウリンやタウリン関連代謝物を増やしうることも確認され、運動の健康向上効果のいくらかにタウリンやタウリン関連代謝物が寄与しているという予想に沿う結果も得られています。しかし早まってタウリンを補給するのは得策ではありません。ヒトがタウリンを補給することで健康が改善するかどうかや寿命が伸びるかどうかはわかっておらず、店頭で売られているタウリン含有サプリメントを健康維持や老化を遅らせることを目当てに早まって服用すべきでないと著者は言っています7)。タウリンの健康や寿命への効果は無作為化試験で検証しなければなりません5)。参考1)Causal evidence that herpes zoster vaccination prevents a proportion of dementia cases, May 25 2023. medRxiv.2)Does shingles vaccination cut dementia risk? Large study hints at a link / Nature3)MCGAUNN J, et al. Science. 2023;1010:380.4)SINGH P, et al. Science. 1012;380:eabn9257.5)Taurine May Be a Key to Longer and Healthier Life / Columbia University6)Amino acid in energy drinks makes mice live longer and healthier / Science7)Taurine supplement makes animals live longer - what it means for people is unclear / Nature

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フォシーガ、心不全の罹患期間によらず、循環器・腎・代謝関連の併存疾患で一貫したベネフィット/AZ

 AstraZeneca(英国)は、チェコのプラハで開催された欧州心臓病学会の心不全2023年次総会において、第III相DELIVER試験の2つの新たな解析結果から、心不全(HF)の罹患期間にかかわらず、循環器・腎・代謝(CVRM)疾患のさまざまな併存状態におけるフォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)の一貫したベネフィットが裏付けられたと発表した。 第III相DELIVER試験の事前規定された解析として、左室駆出率(LVEF)が40%超の心不全患者におけるフォシーガの治療効果を、HFの罹患期間(6ヵ月以内、6ヵ月超~12ヵ月以内、1年超~2年以内、2年超~5年以内、および5年超)別に検討した。その結果、フォシーガのベネフィットがHFの罹患期間にかかわらず一貫していることが示された。さらに、高齢かつ1つ以上の併存疾患を有し、HF悪化および死亡率の高い、罹患期間が長期にわたるHF患者において、絶対利益が増加した(治療必要数[NNT]:HF罹患期間5年超の患者と6ヵ月以内の患者との比較で24:32)。 CVRM関連の併存疾患の有病率およびさまざまな併存状態でのフォシーガに対する被験者の反応を評価した第III相DELIVER試験の事後解析結果も発表され、同時にJACC Heart Failure誌に掲載された。本解析結果によると、LVEFが40%超のHF患者では、5例中4例以上の割合で他のCVRM疾患を少なくとも1つ併発しており、5例中1例の割合でHFに加えて3つのCVRM疾患を併発していた。また、フォシーガは忍容性が良好であり、その治療ベネフィットはCVRM疾患の併存状態に関係なく一貫していた。 ハーバード大学医学部およびブリガム&ウィメンズ病院の内科学教授で、第III相DELIVER試験の主任治験責任医師を務めるScott Solomon氏は「現在の診療では、罹患期間が長期にわたる心不全患者は、新しい治療を追加しても反応しない、または忍容性が低い進行性疾患に罹患していると見なされる可能性がある。第III相DELIVER試験のデータは、SGLT2阻害薬であるダパグリフロジンによる治療ベネフィットは心不全の罹患期間にかかわらず一貫しており、患者にとって治療が決して遅すぎることがないことを示している。このデータは、心不全におけるダパグリフロジンの有効性に関するエビデンスの拡大を裏付け、ダパグリフロジンが、新たに診断された患者と同じように長期に罹患している患者に対しても役立つことを実証している」と述べた。 また、AstraZenecaのバイオ医薬品事業部門担当、エグゼクティブバイスプレジデントであるRuud Dobber氏は「CVRM疾患が患者そして社会に及ぼす影響は計り知れない。しかしながら、これらの患者に対する診断、治療は不十分であり、CVRM疾患における相互関係も十分に認識されていない。第III相DELIVER試験の結果から、心不全患者が2型糖尿病や慢性腎臓病といった他のCVRM疾患を併発していることがいかに一般的であるかが浮き彫りとなった。今回発表された新たな解析は、あらゆる心・腎疾患に対してベネフィットをもたらすフォシーガの価値をさらに示しており、心不全や他のCVRM疾患を有する何百万人もの患者の治療を根本的に変えるという私たちのコミットメントを強調している」とした。

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血圧管理ケアバンドル、脳内出血の機能的アウトカムを改善/Lancet

 脳内出血の症状発現から数時間以内に、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムとの組み合わせで早期に集中的に降圧治療を行うケアバンドルは、通常ケアと比較して、機能的アウトカムを有意に改善し、重篤な有害事象が少ないことが、中国・四川大学のLu Ma氏らが実施した「INTERACT3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年5月25日号で報告された。10ヵ国121病院のstepped wedgeクラスター無作為化試験 INTERACT3試験は、早期に集中的に血圧を下げるプロトコールと、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムを組み込んだ目標指向型ケアバンドルの有効性の評価を目的に、10ヵ国(低・中所得国9、高所得国1)の121病院で実施された実践的なエンドポイント盲検stepped wedgeクラスター無作為化試験であり、2017年5月27日~2021年7月8日に参加施設の無作為化が、2017年12月12日~2021年12月31日に患者のスクリーニングが行われた(英国保健省などの助成を受けた)。 参加施設は、ケアバンドルと通常ケアを行う時期が異なる3つのシークエンスに無作為に割り付けられた。各シークエンスは、4つの治療期間から成り、3シークエンスとも1期目は通常ケアが行われ、ケアバンドルはシークエンス1が2~4期目、シークエンス2は3~4期目、シークエンス3は4期目に行われた。 ケアバンドルのプロトコールには、収縮期血圧の早期厳格な降圧(目標値:治療開始から1時間以内に140mmHg未満)、厳格な血糖コントロール(目標値:糖尿病がない場合6.1~7.8mmol/L、糖尿病がある場合7.8~10.0mmol/L)、解熱治療(目標体温:治療開始から1時間以内に37.5°C以下)、ワルファリンによる抗凝固療法(目標値:国際標準化比<1.5)の開始から1時間以内の迅速解除が含まれ、これらの値が異常な場合に実施された。 主要アウトカムは、マスクされた研究者による6ヵ月後の修正Rankin尺度(mRS、0[症状なし]~6[死亡]点)で評価した機能回復であった。6ヵ月以内の死亡、7日以内の退院も良好 7,036例(平均年齢62.0[SD 12.6]歳、女性36.0%、中国人90.3%)が登録され、ケアバンドル群に3,221例、通常ケア群に3,815例が割り付けられ、主要アウトカムのデータはそれぞれ2,892例と3,363例で得られた。 6ヵ月後のmRSスコアは、通常ケア群に比べケアバンドル群で良好で、不良な機能的アウトカムの可能性が有意に低かった(共通オッズ比[OR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.76~0.97、p=0.015)。 ケアバンドル群におけるmRSスコアの良好な変化は、国や患者(年齢、性別など)による追加補正を含む感度分析でも、全般に一致して認められた(共通OR:0.84、95%CI:0.73~0.97、p=0.017)。 6ヵ月の時点での死亡(p=0.015)および治療開始から7日以内の退院(p=0.034)も、ケアバンドル群で優れ、健康関連QOL(EQ-5D-3Lで評価)ドメインのうち痛み/不快感(p=0.0016)と不安/ふさぎ込み(p=0.046)が、ケアバンドル群で良好だった。 また、通常ケア群に比べケアバンドル群の患者は、重篤な有害事象の頻度が低かった(16.0% vs.20.1%、p=0.0098)。 著者は、「このアプローチは、収縮期血圧140mmHg未満を目標とする早期集中血圧管理を基本戦略とする簡便な目標指向型のケアバンドルプロトコールであり、急性期脳内出血患者の機能的アウトカムを安全かつ効果的に改善した」とまとめ、「この重篤な疾患に対する積極的な管理の一環として、医療施設は本プロトコールを取り入れるべきと考えられる」としている。

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7項目でメタボ発症を予測~日本人向けリスクスコア

 向こう5年間でのメタボリックシンドローム(MetS)発症リスクを、年齢や性別、BMIなど、わずか7項目で予測できるリスクスコアが開発された。鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科のSalim Anwar氏、窪薗琢郎氏らの研究によるもので、論文が「PLOS ONE」に4月7日掲載された。 MetSの有病率は、人種/民族、および、その国で用いられているMetSの定義によって異なる。世界的には成人の20~25%との報告があり、日本では年齢調整有病率が19.3%と報告されている。これまでにMetSの発症を予測するためのいくつかのモデルが提案されてきているが、いずれも対象が日本人でない、開発に用いたサンプル数が少ない、検査値だけを検討していて生活習慣関連因子が考慮されていないなどの限界点がある。著者らはこれらの点を考慮し、日本人の大規模なサンプルのデータに基づく予測モデルの開発を試みた。 研究には、2008年10月~2019年3月に鹿児島厚生連病院で年次健康診断を受けた19万8,292人のうち、ベースラインとその5年後(範囲3~7)にも健診を受けていた30~69歳の成人5万4,198人(平均年齢54.5±10.1歳、男性46%)のデータを用いた。全体を無作為に2対1の割合で二分し、3万6,125人のデータをMetS発症予測モデルの開発に用い、1万8,073人のデータはそのモデルの精度検証に用いた。観察期間中のMetS発症率は、開発コホートが6.4%、検証コホートが6.7%だった。 健診項目の中から、多変量解析にてMetS発症リスクに有意な関連の認められた11項目を抽出し、そのβ係数を基に各評価項目をスコア化するという手法により、合計27点のリスクスコアが完成した。評価項目とスコアは、例えば年齢は30代は0点、40~60代は2点、性別は女性0点、男性3点、喫煙2点、習慣的飲酒1点などであり、その他、BMI、収縮期/拡張期血圧、中性脂肪、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、空腹時血糖値が含まれている。 このリスクスコアの開発コホートにおける向こう5年間でのMetS発症予測能は、スコア13点をカットオフ値とした場合、感度87%、特異度74%、スコア14点では感度、特異度ともに81%であり、ROC曲線下面積(AUC)は0.81だった。検証コホートでは、スコア13点で感度89%、特異度74%、スコア14では感度、特異度ともに81%であり、AUCは同じく0.81だった。 次に、臨床現場でより簡便に使用できるように、採血を要さない項目のみに絞り込んだ簡易版を検討。以下のように7項目からなる合計17点のリスクスコアを開発した。その評価項目とスコアは、年齢は40~60代2点、男性3点、BMIは21~22.9が4点、23以上は5点、収縮期血圧は120mmHg以上で2点、拡張期血圧は80mmHg以上で2点、喫煙で2点、習慣的飲酒で1点というもの。 この簡易版リスクスコアの開発コホートにおける向こう5年間でのMetS発症予測能は、スコア15点をカットオフ値とした場合、感度83%、特異度77%、AUC0.78、検証コホートでは、スコア15点で感度82%、特異度77%、AUCは同じく0.78だった。 このほかに、各評価項目の検査値に係数を掛けて加算するという方程式モデルも開発。そのAUCは開発コホート、検証コホートともに0.85だった。 著者らは、「日本人の健診データから開発された3種類のMetS発症予測モデルは、いずれも予測能が高く、特に簡易版は利便性に優れ、大規模な集団からMetSリスクの高い対象者を簡便に抽出する際に有用。これらを臨床の現場に応じて使い分けてほしい」と語っている。

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週1回の基礎インスリンにより糖尿病治療は新時代へ(解説:小川大輔氏)

 1型糖尿病のみならず、2型糖尿病でも経口血糖降下薬で血糖コントロール不良の場合はインスリン療法を行う必要がある。そして生理的なインスリン分泌を再現するために、基礎インスリンとして持効型インスリンを1日1回、追加インスリンとして超速効型インスリンを1日3回組み合わせる基礎・追加インスリン(Basal-Bolus)療法が用いられる。今回Basal-Bolus療法を行っている2型糖尿病患者を対象に、1日1回の持効型インスリンと週1回の持効型インスリンを比較したONWARDS 4試験の結果がLancet誌に発表された1)。 この試験は日本を含む世界9ヵ国で、長期にわたりBasal-Bolus療法を行っている成人2型糖尿病患者を登録して実施された、非盲検無作為化第IIIa相試験である。被験者は、週1回insulin icodecを投与する群(icodec群)と、1日1回インスリン グラルギンを投与する群(グラルギン群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要アウトカムはHbA1cのベースラインから26週目までの変化量とした。安全性アウトカムは低血糖エピソードやインスリン関連有害事象などであった。 スクリーニングで適格性のあった582例が登録され、icodec群に291例、グラルギン群に291例が割り付けられた。ベースラインの全体の平均年齢は59.8±10.0歳、平均HbA1cが8.30±0.88%、平均BMIは30.3±5.0であった。ベースラインから26週までの推定HbA1cの平均変化量は、icodec群が-1.16ポイント、グラルギン群は-1.18ポイントで、icodec群は8.29%から7.14%へ、グラルギン群は8.31%から7.12%へと低下した。ベースラインからの変化の群間差は-0.02ポイントであった(95%信頼区間[CI]:-0.11~0.15、p<0.0001)。 インスリン関連の有害事象はicodec群171例(59%)、グラルギン群167例(57%)で発現した。重篤な有害事象はicodec群22例(8%)、グラルギン群25例(9%)で認められた。ほとんどの有害事象は軽度で、試験薬関連と判定された重篤な有害事象は認められなかった。また、レベル2(血糖値<54mg/dL)およびレベル3(重度の認知機能障害を伴う)の低血糖の発現率は両群ともに低く、icodec群は54例(19%)、グラルギン群は72例(25%)であった(推定率比:0.73、95%CI:0.47~1.14、p=0.17)。 2020年に発表されたinsulin icodecの第II相試験で、insulin icodecの週1回投与はインスリン グラルギンの1日1回投与と同程度の血糖降下作用を発揮することが報告されたが2)、今回の第IIIa相試験でもinsulin icodecのインスリン グラルギンに対する非劣性が示された。血糖降下作用が同等で、低血糖などの副作用が増えないのであれば、1日1回のインスリン注射を週1回に減らすことができるインパクトは大きい。シンプルに1年間に基礎インスリンを注射する回数を365回から52回まで減らすことになるからだ。また、今回の試験のようにBasal-Bolus療法をすでに行っている糖尿病患者だけでなく、まだインスリン注射を行っていない糖尿病患者のインスリン導入のハードルを下げる効果も期待できそうだ。さらに、視力低下や認知機能低下のためインスリン注射ができない患者でも、1日1回の注射が週1回の注射で済むのであれば、インスリン注射を行う家族や介護者の負担軽減につながるだろう。実際の臨床での効果や安全性、さらにインスリン投与量の調整方法などまだ不明な点はあるが、新しい基礎インスリン製剤への期待は大きい。

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肥満NASH、減量・代謝改善手術が薬物療法より有効か/Lancet

 肥満を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の患者の治療において、減量・代謝改善手術は生活様式への介入+至適な薬物療法と比較して、1年後の肝線維化の悪化を伴わないNASHの組織学的消失の割合が有意に高く、安全性にもとくに問題はないことが、イタリア・サクロ・クオーレ・カトリック大学のOrnella Verrastro氏らが実施した「BRAVES試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2023年5月27日号に掲載された。ローマ市3病院の無作為化試験 BRAVES試験は、イタリア・ローマ市の3つの主要病院が参加した52週の非盲検無作為化試験であり、2019年4月~2021年6月の期間に患者のスクリーニングが行われた(イタリア・Fondazione Policlinico Universitario A Gemelliの助成を受けた)。 年齢25~70歳、肥満(BMI値30~55)で、2型糖尿病の有無は問わず、組織学的にNASHが確認され、ほかの肝疾患がない患者が、生活様式の改善+最良の薬物療法または減量・代謝改善手術(Roux-en-Y法による胃バイパス術あるいはスリーブ状胃切除術)を受ける群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、1年後の肝線維化の悪化を伴わないNASHの組織学的消失であった。 生検でNASHが証明された288例(intention-to-treat[ITT]集団)が、3つの群に96例ずつ割り付けられた。全例が白人で、236例(82%、per-protocol[PP]集団)が試験を完遂した。 ITT集団のベースラインの平均年齢は、生活様式改善群が47.81歳、Roux-en-Y胃バイパス術群が47.23歳、スリーブ状胃切除術群が47.21歳、平均体重はそれぞれ118.49kg、125.76kg、119.21kg、平均BMI値はそれぞれ41.87、42.86、41.38であり、HbA1cは6.32%、6.84%、5.93%であった。2型糖尿病はそれぞれ37%、33%、26%の患者にみられた。重症度が高いほど、NASH消失が高率 ITT解析では、主要エンドポイントを満たした患者は、生活様式改善群が15例(16%)であったのに対し、Roux-en-Y胃バイパス術群は54例(56%)、スリーブ状胃切除術群は55例(57%)と有意に優れた(p<0.0001)。 ITT集団における生活様式改善群と比較したNASH消失のリスク比は、Roux-en-Y胃バイパス術群が3.60(95%信頼区間[CI]:2.19~5.92、p<0.0001)、スリーブ状胃切除術群は3.67(2.23~6.02、p<0.0001)と算定された。 一方、PP解析では、主要エンドポイントを満たした患者は、生活様式改善群が80例中15例(19%)であったのに対し、Roux-en-Y胃バイパス術群は77例中54例(70%)、スリーブ状胃切除術群は79例中55例(70%)と有意に優れた(p<0.0001)。 PP集団における生活様式改善群と比較したNASH消失のリスク比は、Roux-en-Y胃バイパス術群が3.74(95%CI:2.32~6.04、p<0.0001)、スリーブ状胃切除術群は3.71(2.30~5.99、p<0.0001)であった。 PP集団のサブグループ解析では、生活様式改善群と比較した重症NASH(非アルコール性脂肪性肝疾患[NAFLD]活動性スコアが4以上で肝線維化Stage2[F2]または3[F3])患者のNASH消失のリスク比は、Roux-en-Y胃バイパス術群が4.4(95%CI:2.06~9.44)、スリーブ状胃切除術群は3.43(1.53~7.67)と高い値を示した。 死亡および生命を脅かす合併症の報告はなかった。減量・代謝改善手術群で、重度の有害事象が156例中10例(6%)に発現したが、再手術を要する例はなく、薬剤または内視鏡による管理で解消した。また、超音波ガイド下肝生検関連の有害事象の頻度は3群で同程度だった。 著者は、「PP解析では減量・代謝改善手術の70%で主要エンドポイントが達成されたが、これは先行の無作為化試験で評価されたすべての薬剤の効果をはるかに上回る」と述べ、「重要な点は、NASHと肝線維化の重症度が高いほど、NASHが消失した患者の割合が高かったことである」とし、「NASHは、肥満と2型糖尿病を有する集団において手術の優先順位を決定する際の重要な因子として考慮すべきであろう」と指摘している。

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英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(1)【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第17回

なぜ数字の口語表現の学習が重要か英語で科学的な内容の発表・議論をする際に意外な落とし穴となることが多いのが、「数字の口語表現」です。基本的な口語表現を理解して、正しく聞き取り、自信を持って使用できるようになることはきわめて重要です。1)数字情報の正確な伝達の重要性正しく数字の情報を伝達することは、科学者としてきわめて重要です。臨床家としては、相手が伝えている数字の情報が理解できない、もしくは自分の意図した数字が正しく伝わらない状況は、文字通り致命的なミスの原因となりえます。学会等での議論においても、数字の情報の伝達が不完全であると、科学者としての信頼を大きく損なうリスクがあります。2)日本での学習機会の不足一方で、英語における数字の口語表現というのは、日本での一般的な英語学習において、あまり重視されない内容でしょう。学校教育、TOEICやTOEFLなどの試験勉強、また英会話スクールなどでは、このような内容をリスニングまたはスピーキングで学習する機会は不足しがちだと思います。3)文脈に依存できないことが多い英語の日常会話においては、いわゆる“broken English”であっても、くじけずに話し続ければ正しく伝わることが多いです。ただし、数字の場合は文脈から推測することができないケースも多く、その表現自体を知らないと、誤って理解してしまう、伝わってしまうことが多いのです。4)口語的な慣用表現が多いさらに、数字の表現方法には、慣用的な口語表現(一種のスラング)が頻用されます。私たち日本人がスピーキングで慣用表現を積極的に使用する必要はありませんが、英語のネイティブスピーカーが日常的に使う表現を聞き取れないことは、時に致命的な障害になってしまいます。5)簡単なルールを理解すれば改善が期待でき、コスパが良い一方で、これらの内容は基本的なルールを覚えることで多くの状況に対応できるようになるため、単語・熟語の暗記に比べて、英語学習の時間対効果の効率は良いと感じます。ただし、耳で聞いた数字を瞬時に頭で理解して、自信を持って即座に返答できるまでには、かなりの反復練習が必要です。「1234567」この数字、英語ではどう表現するでしょう?“One million two hundred thirty-four thousand five hundred sixty-seven”というのが最も基本的な読み方です。英語では「1,234,567」とコンマの部分で区切って数字を表現します。“million”(100万)のさらに上位の単位は“billion”(10億)ですが、一般的な科学的な議論でそこまで使用することは多くはないでしょう。間違いやすいポイントは、“thousand”や“hundred”が単数形であることです。この読み方自体は、おそらく多くの読者にとっても常識かと思いますが、試しに、早口言葉のように口に出して、“1,234,567”を英語で2、3回読んでみてください。瞬発力が求められる英語の会話において、これをスムーズに読むことが簡単ではないことをご理解いただけると思います。「123」“One twenty-three”「1234」“twelve thirty-four”「1200」“twelve hundred”これらは、英語のネイティブスピーカーの慣習的な読み方です。「123」は、正しくは“one hundred twenty-three”ですが、口語的には“one twenty-three”として、“hundred”を省略することが多々あります。「1,234」は「"12" "34"」で区切って“twelve thirty-four”と読み、「1,200」は同様に「"12" "00"」で“twelve hundred”と読まれることも多いです。これらのルールは知らないと、パッと“twelve thirty-four”と言われた時に、「1,234」という数字を思い浮かべることができません。「1.234」“one point two three four”「0.123」“zero point one two three”, “point one two three”「0.012」“zero point zero one two”/ “point zero one two”/ “o point o one two”/ “point o one two”今度はカンマ「,」ではなく、小数点「.」です。小数点以下の数字も頻出なので必修事項です。小数点は、“decimal point”と呼ばれて、数字を読み上げるときは“point”と読みます。「1.234」は“one point two three four”であり、「0.123」は“zero point one two three”です。慣習的に小数点の前の“zero”を省略して、「0.123」を“point one two three”と読むことも多くあります。また“0”(ゼロ)を“o”(オウ)と読むことも多いです。この場合「0.012」は“o point o one two”もしくは“point o one two”となります。講師紹介

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糖尿病患者の眼科受診率は半数以下/国立国際医療研究センター研究所

 糖尿病で重大な合併症に「糖尿病性網膜症」がある。治療の進歩もあり、減少しているとはいえ、本症の予防には定期的なスクリーニングが重要であり、糖尿病を主に診療する内科医と眼科医の間の連携はうまく機能しているのだろうか。この疑問に対し、井花 庸子氏(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センター)らの研究グループは、ナショナルデータベースを用いたレトロスペクティブ横断コホート研究「わが国の糖尿病患者における糖尿病網膜症スクリーニングのための内科と眼科の受診間の患者紹介フロー」を行い、その結果を報告した。Journal of Diabetes Investigation誌5月2日オンライン掲載。■糖尿病患者の眼科受診は半数以下 本研究は、2016年4月~2018年3月までの日本全国保険請求データベースのデータを使用。眼科受診および眼底検査は、特定の医療処置コードを用いて定義した。2017年度に眼科を受診した患者のうち、糖尿病薬を服用している患者の眼科受診と眼底検査の割合を算出し、網膜症検診に関連する因子を特定するため修正ポアソン回帰分析を行い、都道府県別の指標も算出した。 結果は以下のとおり。・糖尿病治療薬を服用している患者440万8,585例(男性57.8%・女性42.2%、インスリン使用14.1%)のうち、47.4%が眼科を受診。・眼科受診者の96.9%が眼底検査を受診。・解析から眼底検査実施割合が高かった共通因子は、女性、高齢者、インスリン使用者、糖尿病学会認定教育施設、病床数の多い医療機関で糖尿病薬を処方されている患者だった。・都道府県別の眼科受診率の幅は38.5~51.0%、同様に眼底検査は92.1~98.7%。 以上の結果を受け、「医師から糖尿病薬を処方された患者のうち、眼科を受診した患者は半数以下だった。一方で、眼科受診をした患者のほとんどが眼底検査を受診していた。糖尿病患者を担当する医師や医療従事者は、担当する患者に眼科受診を勧める必要性を再認識することが必要」と井花氏らは結論付けている。

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蛋白同化ステロイドは使用中止後も長期にわたり健康にダメージを及ぼす

 多くの副作用のあることが明らかであるにもかかわらず、筋肉量の増加やパフォーマンスの向上という誘惑を断ち切れずに、蛋白同化ステロイドを利用しているボディービルダーやアスリートが存在する。しかし、たとえ同薬の使用を中止しても、健康への悪影響は長期間続くことを示す2件の研究結果が、第25回欧州内分泌学会(ECE2023、5月13~16日、トルコ・イスタンブール)で報告された。いずれも、コペンハーゲン大学病院(デンマーク)のYeliz Bulut氏が発表した。同氏は、「ドーピングを行っている人々へのメッセージは明らかであり、それをやめることだ」と語っている。 一つ目の研究は、レクリエーションレベルの筋力トレーニングを行っている18~50歳の健康な男性64人を対象に行ったもの。この対象のうち28人は蛋白同化ステロイドを使用中、22人は以前使用していたことがあり、14人は一度も使用経験がなかった。陽電子放射断層撮影・コンピュータ断層撮影(PET-CT)により心筋血流量を評価したところ、蛋白同化ステロイドを使用中の群と以前使用していた群は、一度も使用経験がない群に比べて心筋血流量が低下していた。なお、この研究の蛋白同化ステロイド中止群の大半は、研究参加の1年以上前に同薬の使用を中止していた。 二つ目の研究は、18~50歳の男性を対象に、テストステロン(男性ホルモン)の測定と主観的な健康観に関するアンケートを行うというもの。対象者のうち89人が蛋白同化ステロイドを使用中、61人が元使用者、30人が使用経験なしだった。元使用者の約4分の3は、研究参加の1年以上前に使用を中止しており、ほかの元使用者は2年以上も前に中止していた。解析の結果、元使用者は倦怠感が強くて社会的機能と精神的幸福感が低下するなど、身体的・精神的健康状態が不良であることが分かった。また、元使用者はテストステロンレベルが低値だった。 Bulut氏は、「蛋白同化ステロイドを使用していると、その中止後も数年間は、生活の質(QOL)の低い状態が続くようだ。これは、同薬の使用中止による離脱症状と、テストステロンレベルが急速に低下することの双方が関与しているのではないか」と述べている。現在、同氏らは、蛋白同化ステロイド中止後の心臓病リスクとQOLの変化を、より大規模なサンプル数で確かめる研究を計画している。 これらの研究には関与していない、米ミシガン大学のRichard Auchus氏は、アスリートにとって最も賢明な方法は同薬を使用しないことであるとするBulut氏の主張に同意を示した上で、「筋肉量を増やしたり健康的になろうという目標自体は立派だが、やっていることは薬物乱用とほとんど変わらない」と論評。また、「蛋白同化ステロイドを用いると、長期的にさまざまな悪影響が生じ得る。しかしながら、リスクを冒すことに頓着しない若者たちの行動を思いとどまらせるのは、なかなか困難なことでもある」と話している。 なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

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CKDに対する集学的治療で腎機能低下が抑制される

 慢性腎臓病(CKD)に対する集学的治療(MDC)の有効性を示すエビデンスが報告された。MDC介入後には腎機能(eGFR)低下速度が有意に抑制されるという。国内多施設共同研究の結果であり、日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科の阿部雅紀氏らによる論文が「Clinical and Experimental Nephrology」に3月31日掲載された。MDCに携わるスタッフの職種数や介入回数が多いほど、腎代替療法や全死亡のリスクが低下するというデータも示されている。 CKDが進行すると生命維持のために腎代替療法(透析または腎移植)が必要となるなど、患者本人のQOLが低下するだけでなく医療経済的な負担も大きくなる。日本は人口当たりの透析患者数が台湾に次いで世界2位であり、CKDの進行を抑える治療戦略の確立が喫緊の課題となっている。CKDの進行抑制には、薬物療法に加えて食事療法や運動療法が重要で、それらをサポートする看護師、管理栄養士、薬剤師や理学療法士などを含む多職種によるMDCが有効と考えられる。国内では2017年に腎臓病療養指導士制度がスタートするなど、MDCを積極的に行う環境が整ってきた。阿部氏らは、国内24施設の多施設共同後方視的コホート研究として、MDCがどのように行われているかという実態の把握と、その有効性を評価した。 2015~2020年に本研究参加施設でMDCが行われたCKD患者のうち、MDC介入前の12カ月と介入後24カ月のeGFRのデータがあり、除外基準(20歳未満、eGFR60mL/分/1.73m2以上、活動性の悪性腫瘍、観察開始時点で腎代替療法が施行または予定されていたなど)に該当しない3,015人を解析対象とした。主要評価項目は、MDC前後でのeGFR低下率の変化であり、そのほかに腎代替療法と全死亡で構成される複合エンドポイントの発生率に関連のある因子などが検討された。 解析対象者のMDC介入時点(ベースライン)の主な特徴は、平均年齢70.5±11.6歳、男性74.2%、eGFRは中央値23.5mL/分/1.73m2(四分位範囲15.1~34.4)、尿タンパクは同1.13g/gCr(0.24~3.1)であり、CKDステージは3が34.5%、4が41.4%、5が24.1%だった。 MDC介入は58.7%が入院で行われ、41.3%は外来で行われていた。入院日数または介入回数(外来)は、入院の場合は中央値7日(四分位範囲6~12)、外来では4回(1~11)で、関与していたスタッフの職種は4職種(3~5)であり、医師以外のスタッフでは管理栄養士(90.4%)、看護師(86.2%)、薬剤師(62.3%)、理学療法士(25.9%)、臨床検査技師(5.9%)、ソーシャルワーカー(2.3%)などが関与していた。 MDC介入前の1年当たりのeGFR低下速度(mL/分/1.73m2/年)は平均-6.02だった。それに対してMDC介入後の6カ月は-0.34、12カ月では-1.40、24カ月では-1.45であり、いずれの時点でも介入前より低下速度が有意に抑制されていた。CKDの原因(糖尿病糖尿病以外)やベースライン時のCKDステージで層別化した解析でも、全てのサブグループでMDC介入後にeGFR低下速度が有意に抑制されていた。副次的評価項目として設定されていた尿タンパク(g/gCr)も、MDC介入時点で中央値1.13であったものが、介入6カ月後は0.96、12カ月後は0.82、24カ月後は0.78と、いずれの時点でも有意に改善を示していた。 中央値35カ月(20~50)の観察期間中に、24.8%に腎代替療法が行われ、4.9%が死亡していた。それら両者を複合エンドポイントとしたCox比例ハザードモデルによる解析の結果、MDCに関与するスタッフの職種〔1職種多いごとにハザード比(HR)0.85(95%信頼区間0.80~0.89)〕や、介入回数〔1回多いごとにHR0.97(同0.96~0.98)〕の多さが、エンドポイント発生リスクの低さと関連していた。また、MDCに栄養士〔HR0.49(0.36~0.66)〕、理学療法士〔HR0.46(0.22~0.93)〕が関与している場合は、それらのスタッフが関与していない場合よりもエンドポイント発生リスクが有意に低いことが分かった。 以上より著者らは、「CKD患者に対するMDCは、原疾患にかかわりなく効果的であり、また比較的初期の段階での介入も有効と考えられる」と結論付けている。

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英語で「患者を椅子に座らせる」は?【1分★医療英語】第83回

第83回 英語で「患者を椅子に座らせる」は?Would you be able to get the patient up on the chair ?(患者さんを[ベッドから]椅子に座らせることはできますか?)Definitely.(もちろんです)《例文1》医師Let’s get the patient up and walking today.(今日は患者さんに立って歩いてもらいましょう)看護師Understood.(わかりました)《例文2》医師No worries. We will get you ready for the surgery.(手術に臨めるように手配します)患者Thank you so much.(ありがとうございます)《解説》この表現は、日々の診療の中で患者さんの状態について話すときに非常によく使われます。“get”の後に目的語である“the patient”(この患者さん)、その後に状態を表す形容詞や動名詞を続けることで、「この患者さんを~の状態にする」という意味になります。《例文》のように、治療の過程で状態変化を伴うときによく使われます。日常会話でも“get”の後にさまざまな名詞と形容詞を付けることでいろんな使い方ができます。たとえば、“get you dressed”だと「服を着てきなさい」という意味になります。非常に使いやすいのでぜひマスターしてください。講師紹介

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日本人2型糖尿病の100人に1人が寛解、達成しやすい人は?/新潟大

 従来、糖尿病を発症すると、一生にわたって治療が必要といわれてきた。しかし、実際には2型糖尿病と診断され、治療を開始した患者のうち、血糖値が正常値近くまで改善し、薬物治療が不要な状態となる患者が存在する。そこで、2021年に米国糖尿病学会(ADA)を中心とする専門家グループは、「薬物療法を行っていない状態でHbA1c値6.5%未満が3ヵ月以上持続している状態」を糖尿病の「寛解」と定義した1)。しかし、日本人2型糖尿病患者において、寛解を達成する割合や、達成する患者の特徴、寛解の持続状況は明らかになっていない。そこで、藤原 和哉氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野 特任准教授)らの研究グループは、全国の糖尿病専門施設に通院中の2型糖尿病患者4万8,320例を対象として、臨床データを後ろ向きに解析した。その結果、約100人に1人が寛解を達成していたことが明らかになった。本研究結果は、Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2023年5月8日号に掲載された。 研究グループは、糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)が保有する日本全国の糖尿病専門施設に継続して通院している2型糖尿病患者4万8,320例の1989~2022年の臨床データを後ろ向きに解析した。寛解の発生率、寛解後の再発(1年間寛解を維持できない状態)の発生率、寛解と再発に関連する因子などを検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間(中央値:5.3年)において、3,677例が寛解を達成し、寛解の発生率は10.5/1,000人年であった。・HbA1c値が6.5~6.9%、ベースライン時の薬物治療なし、BMIが1年間で5~9.9%低下、10%以上低下の群で寛解の発生率が高く、それぞれ27.8/1,000人年、21.7/1,000人年、25.0/1,000人年、48.2/1,000人年であった。・寛解の関連因子を検討した結果、以下の7つの因子が特定された。 -男性 -ベースライン時の年齢が40歳未満 -糖尿病罹病期間1年未満 -ベースライン時のHbA1c値7.0%未満 -ベースライン時のBMI高値 -BMIが1年間で5%以上低下 -ベースライン時の薬物治療なし・寛解を達成した3,677例のうち、2,490例(67.7%)が再発した。・再発の関連因子を検討した結果、以下の3つの因子が特定された。 -糖尿病罹病期間が長い(1年以上) -ベースライン時のBMI低値 -BMIが1年間で0.1%以上増加 本研究結果について、著者らは「これまで、糖尿病は治らないといわれていたが、糖尿病と診断されても、早期から生活習慣改善や薬物治療に取り組み、減量を行うことで2型糖尿病の寛解は可能だということが示された。また、一度寛解に至った場合でも、体重を適正に管理し、定期的に診察を受けることが、寛解後の再発予防に重要である可能性が示された。なお、今回の研究は観察研究であることから、原因と結果の関係を示したものではなく、今後、生活指導や薬物による介入研究を行うことで実際にどの程度の人が寛解し、寛解の状態が持続するかを確認する必要がある」とまとめた。

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変性性僧帽弁閉鎖不全症、経カテーテル修復は有効か/JAMA

 手術リスクの高い孤立性の変性性僧帽弁閉鎖不全症(MR)の患者において、経カテーテル僧帽弁修復は安全に施行可能で、成功率は88.9%に達し、成功例のうち死亡率が最も低かったのは残存MRが軽度以下かつ平均僧房弁勾配が5mmHg以下の患者であったことが、米国・シーダーズ・サイナイ医療センターのRaj R. Makkar氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年5月23・30日号に掲載された。米国のレジストリを用いたコホート研究 研究グループは、変性性MRに対する経カテーテル僧帽弁修復のアウトカムの評価を目的に、レジストリに基づくコホート研究を行った(シーダーズ・サイナイ医療センターSmidt心臓研究所の助成を受けた)。 解析には、2014~22年に米国で、中等度~重度の変性性MRに対して非緊急的にedge-to-edge法による経カテーテル僧帽弁修復(MitraClipデバイス、Abbott製)を受け、米国胸部外科学会(STS)/米国心臓病学会(ACC)のTranscatheter Valve Therapies Registryに登録された患者が含まれた。 主要エンドポイントはMR治療成功とし、残存MRが中等度以下で平均僧房弁勾配<10mmHgと定義された。臨床アウトカムは、残存MRの程度(軽度以下のMR、中等度のMR)と僧房弁勾配の程度(5mmHg以下、5mmHg超10mmHg未満)に基づき評価された。1年後の死亡率、心不全による再入院が有意に改善 1万9,088例が解析の対象となった。年齢中央値は82歳(四分位範囲[IQR]:76~86)、女性が48%で、NYHA心機能分類クラスIII/IVが78%を占め、STS予測に基づく外科的僧房弁修復による死亡リスクは4.6%であった。84.8%が高血圧、31.9%が慢性肺疾患、20.6%が糖尿病を有していた。 MR治療成功は、すべての評価の時点での心エコー検査のデータが得られた1万8,766例のうち1万6,699例(88.9%)で達成された。MR治療成功の割合は、2014年の81.5%から2022年には92.2%へと増加した。 院内での死亡率は1.1%、脳卒中の発生率は0.6%、予定外の心臓手術または介入の割合は1.1%であった。経カテーテル僧帽弁修復後の入院期間中央値は1日(IQR:1~3)だった。また、30日の時点での死亡率は2.7%、脳卒中の発生率は1.2%、僧房弁再介入率は0.97%であった。NYHA心機能分類クラスIII/IVの割合は、30日の時点で15.8%に低下し、有意な改善が認められた(p<0.001)。 経カテーテル僧帽弁修復が失敗した場合と比較して、MR治療成功を達成した患者では、1年後の死亡率(14.0% vs.26.7%、補正後ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.42~0.56、p<0.001)および心不全による再入院(8.4% vs .16.9%、0.47、0.41~0.54、p<0.001)の割合が有意に低かった。 また、経カテーテル僧帽弁修復が失敗した場合と比べて、MR治療成功を達成した患者のうち最も1年後の死亡率が低かったのは、残存MRが軽度以下で平均僧房弁勾配が5mmHg以下の患者であった(11.4% vs.26.7%、補正後HR:0.40、95%CI:0.34~0.47、p<0.001)。 著者は、「高齢で合併症があっても、経カテーテル僧帽弁修復は安全に行えることが示された。今後、外科手術と経カテーテル僧帽弁修復を比較する無作為化臨床試験を行って、変性性MR患者の至適な治療の指針を明らかにする必要があるだろう」としている。

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抑うつ症状の強い女性には下部尿路症状が多い――国内ネット調査

 日本人女性では、頻尿や尿失禁などの下部尿路症状と抑うつ症状との間に有意な関連のあることが明らかになった。特に若年女性で、より強固な関連が認められたという。横浜市立大学附属市民総合医療センター泌尿器・腎移植科の河原崇司氏らが行ったインターネット調査の結果であり、詳細は「Lower Urinary Tract Symptoms」に3月30日掲載された。 頻尿、尿意切迫感、尿失禁、排尿後の尿漏れといった下部尿路症状(LUTS)は加齢とともに増え、特に女性では尿失禁や尿漏れが男性に比べて起こりやすい。LUTSは命にかかわるものではないものの、生活の質(QOL)を大きく低下させる。一方、うつ病も女性に多い疾患であり、かつ、うつ病は時に命にかかわることがある。これまで海外からは、女性のLUTSがうつ病リスクに関連していることを示す研究結果が報告されている。ただし、それを否定する研究もあり、また日本人女性対象の研究報告はまだない。河原氏らの研究は以上を背景として行われた。 インターネット調査のパネル登録をしている日本人女性5,400人に、LUTSと抑うつ症状を把握するためのアンケートへの回答を呼びかけ、4,151人(76.9%)から有効回答を得た。LUTSは、過活動膀胱症状質問票(OABSS)と尿失禁症状に関する質問票(ICIQ-SF)により評価。抑うつ症状は、簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)という指標で評価した。 解析対象4,151人の主な特徴は、平均年齢48.3±13.8歳、配偶者のいる女性64.2%、子どものいる女性52.7%であり、過活動膀胱の有病率が14.2%、切迫性尿失禁は20.3%だった。QIDS-Jで評価した抑うつ症状は、若年層ほど重症度の高い人の割合が高く、20代では重度が12.7%、極めて重度が7.9%を占めていた。 抑うつ症状(QIDS-J)と過活動膀胱の症状(OABSS)の関連を解析した結果、QIDS-Jスコアが高いほどOABSSスコアが高いという、有意な正相関が認められた(P<0.001)。具体的には、QIDS-Jが正常群のOABSSスコアは1.43±1.76点、軽度群は2.16±2.22点、中等度群2.55±2.58点、重度群3.11±3.05点、極めて重度群4.49±4.44点だった。また、過活動膀胱や切迫性尿失禁の有病率も、抑うつ症状が強い群ほど高いという結果だった。 これらの関係を年齢層別に解析すると、全ての年齢層で有意な関連が認められたが、若年層ほど、抑うつレベルが高いこととLUTSの関連が強いことが分かった。例えば、60~80歳の高年者では、QIDS-J正常群を基準として、極めて重度群では過活動膀胱や切迫性尿失禁のリスクが3~4倍〔相対リスク(RR)が同順に3.73、3.05〕であるのに対して、20~39歳では同じ比較で7倍以上のリスク差が見られた(過活動膀胱はRR7.42、切迫性尿失禁はRR7.44)。なお、40~59歳の抑うつレベルとLUTSの関係は、若年者と高年者の中間だった(同順にRR4.71、3.58)。 以上より著者らは、「日本人女性では、LUTSの悪化が抑うつ症状と相関しており、特に若年層でその関連が強く認められる」と結論付けている。なお、高年者より若年者で抑うつとLUTSとの関連が強固であることの理由については、既報文献に基づく考察から、「高年者ではLUTSに影響を及ぼし得る婦人科系疾患や糖尿病などの有病率が高いために、抑うつの影響が相対的に弱まる。反対に若年者はそれらの影響が少ないために、抑うつによる血管内皮機能や膀胱平滑筋への影響などを介したLUTSリスクが、より明確に現れるのではないか」と推察している。

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英語で「服用禁忌」は?【1分★医療英語】第82回

第82回 英語で「服用禁忌」は?Hi Dr. Smith, the patient has a history of angioedema and ACE are contraindicated.(スミス先生、患者さんは血管浮腫の病歴があるのでACE剤は服用禁忌です)Oh okay, let’s change the med then.(そうか、では、処方を変えましょう)《例文1》A bleeding disorder is a contraindication for taking aspirin.(出血性疾患はアスピリンの服用禁忌です)《例文2》Are steroids contraindicated in cancer?(ステロイドはがん患者に服用禁忌でしょうか?)《解説》薬剤を処方するときにお馴染みの「適応」という表現。英語では“indication”で表現します。これに「反対、逆」の接頭語である“contra”を付けた“contraindication”が「禁忌」という意味になります。形容詞的に“contraindicated”として使う場合もあります。米国の場合、添付文書に記載されている警告は3段階あります。注意warnings and precautions禁忌contraindications最大級の警告boxed warning(black box warning)“black box warning”とは文字どおり「黒枠で囲まれた警告」であり、添付文書の一番初めに強調して記載されている、特筆すべき警告です。ちなみに、添付文書は“package insert”といいます。これも文字どおりで、「パッケージに挿入(insert)されたもの」だからですね。医薬品情報収集はスピードが命。私も多岐にわたる医薬品情報については、スマホからでもすぐに見つけられるよう、普段から準備をしています。講師紹介

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