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2050年の世界の糖尿病患者数は13億人に達する可能性

 現時点で世界の糖尿病患者数は5億人以上に上り、今後30年以内に13億人を突破する可能性があるとする研究結果が、「The Lancet」に6月22日掲載された。米ワシントン大学保健指標評価研究所のKanyin Liane Ong氏らが、世界の疾病負担研究(GBD)のデータを利用して推計したもの。 Ong氏は、「世界的な糖尿病患者数の急速な増加は、それ自体が憂慮すべきことであるだけでなく、この病気が虚血性心疾患や脳卒中のリスクを増大させることを考えると、世界中の全ての医療制度の維持が困難になる可能性もある」と語っている。また、「多くの人は、2型糖尿病は単に肥満や運動不足、不適切な食習慣に関連して発症すると信じているかもしれないが、実際には遺伝や社会経済的要因も関連がある。特に低・中所得国においては経済的要因の影響が大きい」と解説する。 Ong氏らの研究では、世界204カ国・地域の性別・年齢層別の糖尿病有病率と障害調整生存年数〔DALY(疾患により失われる健康寿命)〕を調査し、今後の推移を予測した。その結果、2021年時点で世界の糖尿病の年齢標準化有病率は6.1%〔95%不確定区間5.8~6.5〕で患者数は5億2900万人(同5億~5億6400万)となった。その96.0%(95.1~96.8)は2型糖尿病だった。2型糖尿病のDALYは7920万(6780万~9250万)であり、疾患別でトップ10にランク入りした。2型糖尿病のDALYの52.2%(25.5~71.8)はBMIの高さに起因するものと計算され、DALYに対するBMI高値の寄与の割合は1990年から2021年にかけて24.3%(18.5~30.4)増加していた。 2型糖尿病のDALYに寄与する肥満以外の因子としては、不適切な食習慣〔25.7%(8.6~40.7)〕、環境や職業に関連すること〔19.6%(12.7~26.5)〕、喫煙〔12.1%(4.5~20.9)〕、運動不足〔7.4%(3.0~11.2)〕、飲酒〔1.8%(0.3~3.9)〕が続いた。論文の共著者の1人である同研究所のLauryn Stafford氏は、「2型糖尿病の増加を少数の因子のみで説明しようとする人がいるかもしれないが、そのような考え方は、世界中で発生している格差の影響を考慮していない。社会経済的な不平等は、検査や治療へのアクセスの差を生み、それが糖尿病の増加につながっていることを忘れてはならない。2型糖尿病の増加という問題を、全体像としてより詳細に把握する努力が必要だろう」と語っている。 今回の研究からは、どの国でも高齢者層において糖尿病有病率が高いことも分かった。65歳以上の糖尿病有病率は20%以上であり、特に75~79歳で最も高く24.4%に達していた。 また、2050年の糖尿病患者数は13.1億人(12.2~13.9)となり、204の国や地域のうち89カ国・地域(43.6%)で年齢標準化有病率が10%を超えると予測された。地域別では、北アフリカ・中東〔16.8%(16.1~17.6)〕、ラテンアメリカ・カリブ海諸国〔11.3%(10.8~11.9)〕において、2050年時点での糖尿病の年齢標準化有病率が特に高値となると見込まれた。 著者らは、「糖尿病は依然として世界の重大な公衆衛生上の課題である。糖尿病の大部分を占める2型糖尿病は、その大半が予防可能であり、発症後の早い段階で治療介入すれば寛解に至ることもある」と述べ、複雑に絡み合ったリスク因子を効果的にコントロールし得る戦略の確立が急がれるとしている。

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バイアスドリガンドorforglipronは2型糖尿病・肥満症治療のgame changerになり得るか?(解説:住谷哲氏)

 GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病患者に対する血糖降下作用、体重減少作用および臓器保護作用が明らかにされている。さらに肥満症治療薬としてセマグルチド(ウゴービ)が製造承認されて現在薬価収載待ちの状況である。GLP-1受容体作動薬は有用な薬剤であるが注射薬のバリアはなかなか手ごわく、必要な患者に導入できないことが少なくない。そこで登場したのが経口セマグルチド(リベルサス)であったが、早朝空腹時に120mL以下の水で服用してその後30分は飲食不可、となっているので注射薬ほどではないが服薬アドヒアランスを維持するのが難しい。orforglipronは1日1回服用の非ペプチド性GLP-1受容体作動薬であり、本試験は糖尿病を合併しない肥満患者に対するorforglipronの体重減少作用を主要評価項目とした第II相臨床試験である。orforglipronの2型糖尿病患者に対する血糖降下作用を主要評価項目とした第II相臨床試験の結果は、ほぼ同時にLancetに掲載された1)。両試験の結果をみると、orforglipronの体重減少作用および血糖降下作用はきわめて有効であった。 本論文をみたときに経口セマグルチドと同様の薬剤かと思っていたが、筆者の勉強不足であった。医薬品は大きく分けると低分子医薬品(分子量<500)、高分子医薬品(分子量>10,000~15,000)と、その中間の中分子医薬品とになる。orforglipronは、もともと中外製薬で中分子医薬品として創薬されたOWL833(分子量883)が、2018年にEli Lillyに導出されて臨床開発が継続されてきた歴史がある。中分子医薬品は、タンパク質間相互作用(protein-protein interaction)を修飾することによる細胞内シグナル伝達調節作用が期待されており、世界中の製薬企業が開発に注力している。 GLP-1受容体はG蛋白質共役受容体(G-protein coupled receptor:GPCR)に分類される(ちなみにGIPおよびグルカゴン受容体もGPCRに分類される)。GLP-1はGLP-1受容体に結合して細胞内にシグナルを伝達するが、そのシグナルにはGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン(arrestin)依存的シグナルとがある。前者はcAMPなどのセカンドメッセンジャーを介して細胞内Ca濃度を上昇させることでGLP-1作用を発揮する。後者は従来GLP-1受容体の脱感作を誘導すると考えられてきたが、近年その他の多様な細胞内シグナル伝達を担っていることが明らかになりつつある。orforglipronはGLP-1受容体に結合してGタンパク質依存的シグナルのみを活性化しβアレスチン依存的シグナルを活性化しないことが報告されている2)。このようにGPCRを介したGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン依存的シグナルとを選択的に活性化させる分子をバイアスドリガンド(biased ligand)という3)。つまりorforglipronは、これまでのGLP-1受容体作動薬とは異なるまったく新しい作用機序を有する薬剤であり、2型糖尿病・肥満症治療における画期的な新薬となる可能性がある。 すでにEli Lillyは第III相臨床開発プログラムであるACHIEVE(対象は2型糖尿病)およびATTAIN(対象は肥満症)を開始することを発表しており、数年後には2型糖尿病・肥満症治療に新たな展開が期待される。

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CVDの1次予防、6ヵ月の菜食は薬物治療に引けを取らない

 一般集団において、肉類を摂取しない菜食生活は心血管代謝リスクを改善することが報告されているが、心血管疾患(CVD)リスクが高い人における効果は結論が出ていない。そこで、オーストラリア・シドニー大学のTian Wang氏らが、CVD高リスク者やCVD患者を対象に菜食生活と主要な心血管代謝リスク因子との関連についてメタ解析を実施した結果、6ヵ月間の菜食生活は、CVD高リスク者では有意なLDL-コレステロール(LDL-C)やHbA1c、体重の改善と関連していたことを発表した。JAMA Network Open誌2023年7月25日号の報告。 研究グループは、Embase、MEDLINE、CINAHL、CENTRALを用いて、菜食生活を行ったCVD患者または2つ以上のCVDリスク因子を有する高リスクの成人において、LDL-CやHbA1c、収縮期血圧などを測定したランダム化比較試験を検索した。なお、菜食には、乳卵菜食(肉類は食べないが、卵や乳製品は許容)、乳菜食(肉類や卵は食べないが、乳製品は許容)、ヴィーガン(動物由来の食品はすべて食べない)が含まれていた。 主要アウトカムはLDL-C、HbA1c、収縮期血圧の変化(介入前と介入後)の群間差の平均で、副次的アウトカムは体重とエネルギー摂取量の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・1,878例を含む20件の試験が解析に組み込まれた。平均介入期間は25.4週間(範囲:2~24ヵ月)であった。CVD患者を対象とした試験は4件、糖尿病患者を対象とした試験は7件、2つ以上のCVDリスク因子を有する高リスク者を対象とした試験は9件であった。・菜食生活を平均6ヵ月間行うことで、LDL-Cが6.6mg/dL(95%信頼区間[CI]:-10.1~-3.1)、HbA1cが0.24%(95%CI:-0.40~-0.07)、体重が3.4kg(95%CI:-4.9~-2.0)減少した。・菜食と収縮期血圧との関連は有意ではなかった(-0.1mmHg、95%CI:-2.8~2.6)。・GRADE評価によるエビデンスの質は、LDL-CとHbA1cの減少については「中」であった。 これらの結果より、研究グループは「菜食生活は、CVDのリスクが高い人において、標準治療を上回るLDL-C、HbA1c、体重の有意な改善と関連していた。CVD患者における健康的な菜食生活の効果を明らかにするためには、さらなる質の高い試験が必要である」とまとめた。

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暑い季節になりやすい腎臓結石のリスクを下げる方法

 夏の暑い時期には、腎臓結石による耐え難い痛みが発症しやすい。ただし幸いなことに、水分摂取量を増やしたり、食生活を少し変えたりすることで、結石をできにくくすることが可能だ。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのMegan Bollner氏は同大学発のリリースの中で、それらのヒントを紹介している。同氏は、「一度結石ができてしまうと10年以内に再発する確率が最大50%程度に上る。とはいえ、再発する腎臓結石の危険因子の多くは、自分自身でコントロールできるものだ。特に食習慣を変えることが、大きな違いを生む可能性がある」と話している。 腎臓結石は、尿の色が透明でなく、濃い色になっている状態で起こりやすい。結石は、シュウ酸カルシウムなどのミネラルの結晶が元になって形成される。最初のうちは砂粒ほどの小さなものだが、大きく成長すると尿の流れを妨げたりする。症状は、強い腰痛、吐き気、嘔吐、発熱、悪寒、血尿などだ。約10人に1人が生涯のうちに一度は腎臓結石を発症し、男性は女性よりそのリスクがやや高い。米国腎臓財団によると、同国では毎年50万人以上が腎臓結石のために緊急治療を受けているという。ただし、症状の現れない人もいる。 再発の原因として、家族歴、食習慣、肥満、糖尿病、慢性的な脱水状態、炎症性腸疾患などが挙げられる。では、再発を防ぐにはどうすればよいのだろうか。Bollner氏は次のような推奨を掲げている。・水分を積極的に取って、尿を薄める。腎臓結石を患ったことがある人なら、1日にコップ8~12杯飲むとよい。・暑くて汗をかいた場合は、さらに多く水を飲む。・水にレモンまたはライムを加える。それらに含まれているクエン酸は、シュウ酸とカルシウムが結合して結石ができるのを抑えるように働く。・塩分摂取量を減らす。塩分の取り過ぎで尿中のカルシウムの量が増加するため。また減塩は血圧を低下させ、血圧の管理は腎臓にメリットをもたらす。 もう一つのヒントは、カルシウムが豊富な食品を食べることだ。カルシウムは腎臓結石の形成に関係しているため、このヒントは直感的に予防戦略に反するように思えるかもしれない。しかしカルシウムは腸内でシュウ酸と結合して、シュウ酸を尿ではなく便の中へ排泄するように働く。カルシウムが豊富な食品として、乳製品、大豆、豆類、緑色の野菜(ケールやブロッコリー)などが挙げられる。また、果物や野菜を多く取ることも、尿中のクエン酸を増やして腎臓結石の予防に役立つ。 一方、動物性タンパク質を過剰に摂取すると、腎臓結石の発生リスクが高まる。摂取量を控え目にした方がよい動物性タンパク源としては、赤身肉だけでなく、鶏肉、豚肉、魚、卵も含まれる。 また、一般に健康的とされることの多い食品もシュウ酸を含んでいて、腎臓結石の形成に寄与する可能性がある。例えば、ほうれん草、ビート、ナッツ、小麦胚芽などだ。これらの食品のシュウ酸のみであればリスクになる可能性は低いものの、ほかの食品と合わせたシュウ酸摂取量の合計が大きくなるようなケースでは、過剰摂取にならないように量を考えながら取るべきだ。そして、シュウ酸を多く含む食事をした時は、その後の食生活に気を付けたり、乳製品を付け足したりするとよい。

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英語で「妊娠している可能性はありますか?」は?【1分★医療英語】第92回

第92回 英語で「妊娠している可能性はありますか?」は?Is there any possibility that you may be pregnant now?(現在、妊娠している可能性はありますか?)No, I’m not pregnant.(いいえ、妊娠していません)《例文1》Have you ever been pregnant before?(これまでに妊娠したことはありますか?)《例文2》She is expecting.(彼女は妊娠しています)《解説》女性の患者さんに画像検査や処方を行う際、妊娠の可能性について聞く必要がありますが、英語ではどのように聞けばよいでしょうか。こういったときは、“pregnant”(妊娠している)という形容詞を使うと便利です。最もシンプルな表現としては、“Are you pregnant now?”(現在、妊娠していますか?)と聞くことができます。とはいえ、本人に妊娠の自覚がない場合でも妊娠している可能性があるため、“Is there any possibility that you may be pregnant now?”(現在、妊娠している可能性はありますか?)といった丁寧な表現で聞くことが望ましいでしょう。また、妊娠を表す他の単語としては、“expect”(期待する、予期する)という動詞を使って“She is expecting.”という表現を使うこともあります。これは“She is expecting a baby.”を略したもので、「子供を期待している」、つまりは「妊娠している」「出産を控えている」という意味になるのです。講師紹介

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日本におけるアルコール摂取、喫煙と認知症リスク~村上健康コホート研究

 飲酒や喫煙は、生活習慣病リスクに影響するが、認知症への影響については依然としてよくわかっていない。新潟大学のShugo Kawakami氏らは、日本人中高年におけるアルコール摂取や喫煙と認知症リスクとの長期的な関連性を調査するため本研究を実施した。その結果、中程度までのアルコール摂取は認知症リスクが低下し、喫煙は用量依存的に認知症リスク増加との関連が認められた。また、多量のアルコール摂取と喫煙との間に認知症リスクとの相互作用が確認された。Maturitas誌オンライン版2023年6月14日号の報告。 研究デザインは、8年間のフォローアップによるコホート研究。参加者は、40~74歳の地域在住の日本人1万3,802人。2011~13年に自己記入式アンケートを含むベースライン調査を実施した。アウトカムは、介護保険データベースから収集した認知症発症、予測因子は、アルコール摂取量および喫煙とした。共変量は、人口統計、ライフスタイル要因、BMI、一般的な健康状態、脳卒中歴、糖尿病歴、うつ病歴とした。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は、59.0歳。・1週間当たりのエタノール量が1~149g、150~299g、300~449gの群は、対照群と比較し、調整ハザード比(HR)が有意に低く、有意な線形関連性は認められなかった。・飲酒歴、健康状態が不良、病歴を有する人を除外した場合、HRは1に向かい増加が認められた(各々、HR:0.80、0.66、0.82)。・喫煙レベルが高いほど、用量依存的にHRが高く(調整p for trend=0.0105)、1日当たり20本以上の喫煙群では、調整HRが有意に高かった(HR:1.80)。・多量飲酒者(1週間当たりのエタノール量:449g以上)において、喫煙習慣のある人は認知症リスクが高かったが(p for interaction=0.0046)、喫煙習慣のない人では影響が認められなかった。

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糖尿病腎症の病期が網膜症と黄斑浮腫の発症・重症度に関連

 糖尿病腎症の病期が、糖尿病網膜症・黄斑浮腫の発症リスクおよび重症度と、独立した関連のある可能性を示すデータが報告された。JCHO三島総合病院の鈴木幸久氏、自由が丘清澤眼科(東京)の清澤源弘氏の研究によるもので、詳細は「Biomedicines」に5月22日掲載された。 かつて長年にわたって成人の失明原因のトップであった糖尿病網膜症(DR)は、近年の治療の進歩により失明を回避できることが多くなった。とはいえ、緑内障や加齢黄斑変性と並び、いまだ失明の主要原因の一角を占めている。また糖尿病ではDRが軽症であっても黄斑浮腫(DME)を生じることがある。黄斑は眼底の中央に位置し視力にとって重要な網膜であるため、ここに浮腫(むくみ)が生じるDMEでは視力が大きく低下する。DMEの治療も進歩しているが、効果が不十分な症例が存在すること、高額な薬剤の継続使用が必要なケースのあることなどが臨床上の問題になっている。 一方、DRと同じく糖尿病による細小血管合併症に位置付けられている糖尿病腎症(DN)では、血圧上昇や浮腫が生じやすい。DRやDNはいずれも高血糖が主要なリスク因子だが、DNはそれに伴う高血圧や浮腫という高血糖とは異なる機序によっても、DRやDMEのリスクを押し上げている可能性がある。清澤氏らはこれらの点を、以下のケースシリーズ研究によって検討した。 研究対象は、三島総合病院の眼科を受診した2型糖尿病患者261人(平均年齢70.1±10.1歳、男性54.8%)。このうち127人(48.7%)にDR、64人(24.5%)にDMEが認められた。DMEが認められた患者は全てDRを有していた。 DR群と非DR群を比較すると、年齢、性別、BMI、血清脂質値、および高血圧や虚血性心疾患の有病率には有意差がなかった。一方、DR群の方が糖尿病罹病期間が長く、過去のHbA1cの平均値および最高値が高いという有意差があった。また、推算糸球体濾過量(eGFR)が低く(56.2±26.4対67.1±17.0mL/分/1.73m2)、DNの病期が進行していた(1~5期の病期分類で2.4±1.2対1.4±0.6)。 次に、DRの発症・重症度、およびDMEの発症・重症度という4項目それぞれを目的変数とし、性別、糖尿病罹病期間、BMI、過去のHbA1cの平均値・最高値、血清脂質値、高血圧や虚血性心疾患の既往、およびRAS阻害薬やSGLT2阻害薬の処方を説明変数とする多重回帰分析を施行。その結果、糖尿病の罹病期間が長いことや平均HbA1cとともに、DNの病期がDRおよびDMEの発症と重症度の全てに、それぞれ独立して関連していることが明らかになった。 例えば、DME発症に対して、糖尿病罹病期間はオッズ比(OR)1.33(95%信頼区間1.01~1.75)、平均HbA1cはOR5.52(同1.27~24.1)、DNの病期はOR2.80(同1.37~5.72)だった。性別やBMI、血清脂質値、高血圧や虚血性心疾患の既往、RAS阻害薬やSGLT2阻害薬の処方は、DRおよびDMEの発症や重症度と独立した関連が示されなかった。HbA1c最高値はDRの発症についてのみ、有意な説明因子として抽出された。 このほか、単変量解析からは、eGFRはDRおよびDMEの発症や重症度と有意な負の相関があり、アルブミン尿は有意な正の相関があることが示された。RAS阻害薬やSGLT2阻害薬の処方は、いずれに対しても有意な関連が見られなかった。 以上を基に著者らは、「糖尿病腎症が糖尿病による網膜疾患の発症と進展に関与している可能性が考えられ、腎症の病期は糖尿病網膜疾患の予測因子となり得る」と結論付けている。

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8月4日 栄養の日【今日は何の日?】

【8月4日 栄養の日】〔由来〕「えい(8)よう(4)」(栄養)と読む語呂合わせから、栄養を学び、体感することをコンセプトに、食生活を考える日とすることを目的に日本栄養士会が制定。同会では、この日を中心に「栄養週間」として、全国の管理栄養士・栄養士とともに「栄養をたのしむ」生活を応援している。関連コンテンツすぐに使える!糖尿病の食事指導スライド食べ出すと止まらないスナック菓子への対処法【患者指導画集 Part2】野菜不足の患者さんにひと言【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】亜鉛欠乏はCKD進行のリスク因子か食物繊維の摂取とうつ病・不安との関係~メタ解析

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アフターコロナの今、「MR不要論」を考える

 COVID‐19の拡大後、MR数は減少傾向にあり、製薬企業の営業拠点の見直し等も急速に進んだ。アフターコロナにおいて、製薬企業担当者は本当に必要なのだろうか? この疑問について、医師・製薬企業・メディカルスタッフ、それぞれの立場から率直に語り合う機会が設けられた。2023年7月22日(土)、第10回日本糖尿病協会年次学術集会のEXPERT社員シンポジウムで語られた内容を抜粋して紹介する。MRの情報提供は医師に求められていないのか? 医療用医薬品の情報提供には、厳格な法規制があることはよく知られる。具体的に、競合品との比較データや症例紹介が不可となる場合が存在する。反面、臨床現場からは、同効薬の使い分けや効果を発揮しやすい症例像への情報ニーズは高い。そのため、医薬情報担当者であるMRは、自分たちの提供する情報と医療者が求める情報に「乖離がある」と認識しているようだ。2023年6月実施のMR1,407名を対象としたアンケート調査の結果では、「求めたい情報提供に乖離はありますか?」の回答結果は「乖離がある」(17%)、「やや乖離がある」(67%)と乖離を感じるMRが大半であり、「乖離はない」と回答したMRは17%だった。また「情報提供の障壁となっているものは何ですか?(複数回答)」という質問では「面会できない」(74%)が最多で、次いで「販売情報提供ガイドライン」(54%)が挙げられた。 では、実際に医療者側はどう思っているのだろうか? 実は、まったく同じ調査が医師626名を対象に行われている。結果、「情報提供の乖離」に関しては「乖離はない」(51%)が最多で、「情報提供の障壁」に関しても「障壁はない」(57%)が最も多かった。つまり、MRが思うほど、医師にとってMRとの面会価値は低くはないことになる。医療者側の考えるMRの価値とは シンポジウムに登壇した医師からは、コロナ禍で受動的な医局説明会や文献提供がなくなり、現在は能動的なWeb経由での情報収集やWeb講演会の聴講等にシフトしたが、依然「MRによる情報提供も必要」との意見があがった。 具体的に「企業担当者がいて助かったこと」について、医師およびメディカルスタッフのエピソードが紹介された。 医師が助かった例として、臨床現場で疑問が生じた際の迅速なメール対応や地域医療連携および会合のサポート、患者差別や疾患への偏見を減らすための疾患啓発活動が挙げられた。同様に、メディカルスタッフからは添付文書のニュアンスの確認や薬物相互作用に関する論文紹介、食事・運動療法に関する患者向けの資材提供や研修会の案内が役立ったとの声があがった。その一方で、「不快なMR」として、薬の販売に躍起になって情報提供がおろそかになっている場合やレスポンスが遅いケース、周辺知識の不足等が指摘された。MRはどう振る舞うべきか 製薬企業側の代表者も登壇し、今後目指す形として、アフターコロナは、リアル面会とオンライン面会を併用し、ITツールを活用しての情報提供を行うことや、医療従事者に寄り添った活動を心掛けること、とくに自己研鑽を行い、信頼をしてもらうように務めるべき、と発言した。糖尿病協会で行っているEXPERT社員認定制度やe-ラーニング、積極的な学会参加を通じて、医療従事者のニーズを把握し、デジタルを活用しながら、ありとあらゆる形で医療者との関係構築を目指すという。 アフターコロナもMRは忙しい医療従事者の情報ニーズを埋める役割を担うと期待されているようだ。 質問すると、さっと返事が返ってきて助かるという声がある一方、添付文書改訂を知らせにしか来ないとの声もある。MRが医療者に適切な情報を提供するには、疾患への深い知識が必須となる。「患者さんの声」を企業に伝えるためにMRが必要だという意見もあり、いずれにせよ薬剤の情報を熟知し説明できる能力こそが今後の評価軸となる。 アフターコロナのMRの在り方は、EXPERT社員認定などの形で底上げを図り、医療従事者の一員であると自覚し、何より自信を失わないことが重要であるようだ。

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手術前はオゼンピックやウゴービの使用を控えるべし

 米国麻酔科学会(ASA)が6月29日、話題の肥満症治療薬であるオゼンピックやウゴービ(いずれも一般名はセマグルチド)の使用者で、全身麻酔を伴う手術を受ける予定のある人は、手術前日、または手術当日にこれらの薬剤の使用を控えるべきだとする指針を提示した。 糖尿病治療薬として知られるオゼンピックやウゴービを含むGLP-1受容体作動薬は、インスリンの分泌を促すとともに食欲抑制効果を有することから、肥満症治療薬としても注目を浴びている。GLP-1受容体作動薬には、胃の消化運動を抑制して摂取した食べ物をより長く胃の中にとどめておく作用がある。そのため、この薬剤を使用すると、食べる量が減り、それが減量につながる。 しかし、全身麻酔や深鎮静に際しては、胃の中に残存している食べ物は患者の嘔吐リスクを増大させる。ASA会長のMichael Champeau氏は、「胃の中に食べ物が残っていないはずなのに、手術の直前に患者が嘔吐したことが報告されている。そのような事例報告や症例報告を耳にしてすぐに、われわれは、GLP-1受容体作動薬の作用や効果に思い当たった」と話す。 ASAは、GLP-1受容体作動薬を使用している人には、手術前に使用を中止するよう勧めている。例えば、同薬剤を1日1回使用している場合には、手術当日の朝に1日分の使用を、週に1回使用している場合には、手術が終わるまで使用を控えるべきだという。「GLP-1受容体作動薬を毎週日曜日に使用している人が水曜日に手術を受けるのなら、手術前の日曜日には使用してはならない。週1回の使用なら、少なくとも手術の前の週から中止しなければならない」とChampeau氏は補足している。 患者が手術前日に夕食を控えるよう指示されるのには理由があるという。Champeau氏は、「麻酔薬が最初に発見された1840年代には、エーテルで眠らせた患者が嘔吐し、肺に吸い込まれた吐瀉物がひどい肺炎を起こしたり、患者が死んでしまうことが何度も起きた。当時、胃の中に食べ物が残っていると、このようなことが起こり得ることを、誰も知らなかったからだ。これは、全身麻酔の主要な合併症であり、その発生を最小限にとどめるための方法を見つけ出さなければならないことが、非常に早い段階で明らかになった」と説明する。 以上のような理由から、麻酔科医は手術前の絶食時間にこだわる。Champeau氏は、「われわれ麻酔科医は、常に人々をいら立たせているといっても過言ではない。患者が与えられた指導に従わず、手術当日の朝、サンドイッチやトースト、卵などを食べてから手術に臨むと、患者と外科医の双方をいら立たせることになる。なぜなら、基本的にはそうした患者には手術を開始せず、決められた時間、待たせることにしているからだ」と話す。 Champeau氏は、糖尿病をコントロールするためにGLP-1受容体作動薬を使用している患者について、「同薬剤の使用を所定の期間を超えて控える場合には、別の糖尿病治療薬に変更して糖尿病をコントロールしなければならないため、糖尿病を管理している医師のところに行く必要があるだろう」と説明している。 なお、米ジョンズ・ホプキンス大学によれば、GLP-1受容体作動薬にはオゼンピックやウゴービの他に、デュラグルチド(商品名トルリシティ)、エキセナチド(商品名バイエッタ)、リラグルチド(商品名ビクトーザ)、リキシセナチド(アドリキシン、日本での販売名はリキスミア)などがある。

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1回の内視鏡治療で2型糖尿病患者のインスリン治療が不要になる可能性

 1時間ほどの内視鏡治療で、2型糖尿病患者のインスリン治療が不要となる可能性を示唆する研究結果が、米国消化器病週間(DDW2023、5月6~9日、米国・シカゴ)で報告された。アムステルダム大学(オランダ)のJacques Bergman氏らの研究によるもの。同氏はDDW2023に合わせて開催されたメディア対象ブリーフィングにおいて、「1回の介入で少なくとも1年間は治療効果が維持された。この治療法は2型糖尿病の管理を大きく変えるかもしれない」と語った。 検討された新たな治療法は、電気パルスを用いて十二指腸の粘膜の表層を切除する内視鏡手術で、「Recellularization via electroporation therapy(ReCET)」と名付けられている。この治療法が奏効するメカニズムはまだ完全には理解されていない。ただし研究者らは、十二指腸のシグナル伝達の異常のためにインスリン抵抗性が生じている状態で、組織構造を維持したまま、シグナル伝達が劣化した細胞のアポトーシスと再生を誘導することが、インスリン感受性の回復につながると考えている。また、熱などを用いるアブレーションと異なり、組織へのダメージが少ないため、治療に伴う合併症のリスクが低いことも、この手法のメリットとして挙げられるという。 今回発表された研究は、この治療法に必要な技術を所有している米国のEndogenex社の資金提供により実施された。基礎インスリンにより血糖管理されている28~75歳の14人の2型糖尿病患者を対象とするパイロット研究であり、全員に対してこの治療を施行。手技は約1時間で終了し、全員が当日に帰宅した。その後、2週間にわたりエネルギー量が管理された流動食を摂取。2週間後からはGLP-1受容体作動薬であるセマグルチドの投与を開始し、1mg/週まで増量した。内視鏡治療に伴う重篤な有害事象は発生しなかった。 12カ月後の追跡調査で、86%(14人中12人)は、インスリンを使用することなく血糖コントロールを維持していた。空腹時血糖値は、158mg/dLから119mg/dLに、HbA1cは7.2%から6.6%へと有意に改善し、また肝臓内の脂肪量が50%以上低下していた。研究者によると、セマグルチドによる治療のみでもインスリン療法が不要になることがあるが、その割合は通常、投与された患者の20%程度にとどまるとしている。Bergman氏は、「今後3カ月以内に大規模な研究が開始される予定で、それが成功すれば3~5年後には、この手技が2型糖尿病患者の新たな治療選択肢になるのではないか」と話している。 この報告について、米SSMヘルス・セント・アンソニー病院のPooja Singhal氏は、「この処置には多くの可能性がある。血糖値をコントロールする治療ではなく疾患を修飾する治療であって、画期的な方法と成り得る」と述べている。ただし、「この処置が2型糖尿病の改善においてどのような役割を果たすかについて確かな結論を出すには、より多くの研究が必要である」とも話している。 また、今回の研究では肝臓内の脂肪蓄積に対しても顕著な好ましい影響が認められたことに関してSinghal氏は、「肝疾患の治療という点でも非常に興味深い結果だ」と指摘。同氏によると、「非アルコール性脂肪性肝疾患は、今後数年で重度の肝線維化や肝硬変の最大の原因となるだろう」とのことだ。 なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。また、Bergman氏はEndogenex社の顧問を務めている。

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睡眠リズムの乱れで若年者の血圧上昇に対する内臓脂肪の影響が増大する

 若年者では、血圧上昇に対する内臓脂肪組織(VAT)の影響は、睡眠リズムが乱れると増大するという研究結果が「Hypertension」に3月6日掲載された。 VATは心血管代謝系の健康状態に影響し、また両者は同時に睡眠リズムの影響を受けることが知られている。米ペンシルベニア州立大学医学部のNatasha Morales-Ghinaglia氏らが行った今回の後ろ向きコホート研究では、VAT(肥満)が心血管代謝系の健康状態(血圧)に影響を及ぼす際における調整変数(moderator)としての睡眠リズムの役割について検討した。 対象はPenn State Child Cohortに参加した若年者303人(平均年齢16.2±2.2歳、女性47.5%)。アクチグラフを用いて7晩にわたり、総睡眠時間および標準偏差、睡眠中央時刻(就寝時刻から起床時刻までの中央の時刻)および標準偏差を、通学日・非通学日、平日・週末別に算出した。睡眠中央時刻および標準偏差(睡眠の不規則性)が、VATと収縮期血圧(SBP)/拡張期血圧(DBP)との関連に対する調整変数となるか否かを、多変量線形回帰モデルにより人口統計学的因子、総睡眠時間および標準偏差を調整して解析した。VATは二重エネルギーX線吸収スキャンにより測定し、血圧は座位で測定した。 その結果、全体としてのSBPおよびDBPについて、VATと睡眠の不規則性との間に有意な交互作用が認められた(P値はそれぞれ0.007、0.022)。ただし、睡眠中央時刻は有意でなかった。また、平日の通学日のSBPおよびDBPについて、VATと睡眠中央時刻との間に有意な交互作用が認められた(P値はそれぞれ0.026、0.043)。さらに、平日の非通学日のSBPについて、VATと睡眠の不規則性との間に有意な交互作用が認められた(P=0.034)。 著者らは、「今回の結果から、睡眠・覚醒相が不規則であることは、睡眠時無呼吸症候群や睡眠不足とは無関係に、中心性肥満に伴う心血管疾患の発症を助長する可能性がある」と結論。その上で、「われわれの研究は、若年者の睡眠と心血管疾患の問題に対する、行動面からの、また薬物による介入の重要性を示すものであり、トランスレーショナルな観点からも、公衆衛生学的な予防と臨床的ケアの両面で極めて意義深い」と付言している。

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動脈硬化疾患の1次予防に積極的な脂質管理の幅が広がった(解説:平山篤志氏)

 脂質低下療法にスタチンが広く用いられるが、筋肉痛などの副作用を訴える場合があり、スタチン不耐性と呼ばれ使用できない患者がいて、脂質への介入がなされていない場合がある。心血管疾患の既往のある患者の2次予防では、エゼチミブあるいはPCSK9阻害薬を使用してでも脂質低下が行われる。しかし、1次予防の動脈硬化疾患発症リスクの高い対象、たとえば糖尿病患者では脂質低下療法が行われていないことが多く、さらにスタチン不耐性では放置されていることが多い。 本論文は副作用でスタチンを服用できないスタチン不耐性患者を対象に、ベムペド酸(bempedoic acid)を投与したアウトカム試験、CLEAR試験のサブ解析である。CLEAR試験は心血管疾患の既往のある2次予防患者と既往のないハイリスクの1次予防患者を対象としており、ベムペド酸投与によりプラセボと比較してLDL-コレステロールと高感度CRPを有意に低下させ、4ポイントMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、血行再建術)を有意に減少させることを示した。あらかじめ規定されていたサブ解析でも、2次予防だけでなく1次予防でもベムペド酸の有効性が示されていたが、今回は1次予防患者の詳細な結果が報告されている。 CLEAR試験にエントリーされたうちの心血管イベントの既往のない患者4,206例で、計算されたリスクスコアが高い、冠動脈の石灰化が著明、糖尿病がある、などの動脈硬化疾患のリスクが高い対象である。平均LDL-Cが142.2mg/dLで、糖尿病患者が3分の2近く含まれていた。LDL-Cと高感度CRPの低下とともに、心血管イベントの有意な抑制がベムペド酸投与により示された。また、その低下効果も本試験より大であった。この対象群ではNNTが42~44と十分な有効性があった。 実臨床で、どうしても1次予防になると患者教育も難しく、また、副作用の懸念があると脂質低下に逡巡するが、この結果はハイリスク症例、とくに糖尿病患者に積極的な介入が必要であることを痛感させる。ただ、残念ながら、わが国では動脈硬化疾患の発生リスクが低いこと、エビデンスがないことから、どうしても脂質低下療法に消極的になる傾向がある。健康寿命の重要性が叫ばれる今日、目の前にいる患者が10年、20年先に健康でいられるようにするには、今から積極的な介入が必要なのかもしれない。ベムペド酸はそのための1つの武器となりえるかもしれない。

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英語で「ケースバイケース」は?【1分★医療英語】第91回

第91回 英語で「ケースバイケース」は?Do you think we should use this new mediation as our standard of care?(この新薬を私たちの標準治療として使うべきだと思いますか?)I think it depends. It seems to have some side effects too.(それはケースバイケースである[時と場合による]と思います。副作用もあるようですから)I agree. We should use it on a case-by-case basis.(同感です。それはケースバイケース[臨機応変に、個別対応]で使うほうがよいと思います)《例文》The side effects may vary from case to case.(副作用は症例ごとに異なります)《解説》日本語における「ケースバイケース」という表現には、多少意味が異なる2種類の使用方法があると思います。会話例の2番目の医師は、「質問に対する明確な単一の答えがないとき」の返答として「(物事の判断は)時と場合による」という意味で、「ケースバイケース」を動詞的に使っています。この意味を自然に英語にすると、“it depends (on something)”となります。一方で、3番目の医師は「ケースバイケース」を「臨機応変に[使う]」と副詞的に使っており、この場合は英語でもそのまま同じ表現で“on a case-by-case basis”となります。英語で“case-by-case”と表現する場合は、この慣用句としての副詞的な使い方が圧倒的に多いのです。類似表現として、《例文》のように“case to case”という言い方もできます。講師紹介

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1日1回服用で脂質代謝を改善させる高脂血症薬「パルモディアXR錠0.2mg/同0.4mg」【下平博士のDIノート】第126回

1日1回服用で脂質代謝を改善させる高脂血症薬「パルモディアXR錠0.2mg/同0.4mg」今回は、高脂血症治療薬「ペマフィブラート徐放錠(商品名:パルモディアXR錠0.2mg/同0.4mg、製造販売元:興和)を紹介します。本剤は、既存のパルモディア錠0.1mgの徐放性製剤で、1日1回の服用で血中の中性脂肪(TG)を低下させるとともにHDL-コレステロール(HDL-C)を増加させることが期待されています。<効能・効果>高脂血症(家族性を含む)の適応で、2023年6月26日に製造販売承認を取得しました。なお、本剤はLDL-コレステロールのみが高い高脂血症に対する第一選択薬とすることはできません。<用法・用量>通常、成人にはペマフィブラートとして1回0.2mgを1日1回経口投与します。TG高値の程度により、1回0.4mgを1日1回まで増量することができます。<安全性>承認時までの国内臨床試験において、臨床検査値異常を含む副作用は358例中33例(9.2%)に発現しました。0.5%以上に生じた副作用はALT上昇、CK上昇、筋肉痛、発疹でした。なお、重大な副作用として、横紋筋融解症(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.中性脂肪を低下させ、善玉コレステロールを増やす薬です。2.本剤は砕いたり、すりつぶしたりせずに、かまずにそのまま服用してください。3.足のしびれ・痙攣、脱力感、覚えのない筋肉痛など、いつもと違う症状が現れたらすぐに連絡してください。4.禁煙・運動・食生活など、生活習慣の改善も併せて行いましょう。<Shimo's eyes>2017年7月に1日2回投与の即放性製剤のペマフィブラート錠(商品名:パルモディア錠0.1mg、以下「IR錠」)が承認され、2018年6月より販売されています。今回、新たな製剤として、1日1回投与の徐放性(Extended Release)製剤のXR錠が承認されました。服用回数が多いと服薬アドヒアランスが問題となることがありますが、本剤は1日1回の服薬で治療効果が得られるため、良好な服薬アドヒアランスと脂質コントロールが可能になると期待されています。本剤は、フィブラート系薬に分類される高脂血症治療薬で、核内受容体であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体PPARαに選択的に結合し、脂質代謝遺伝子の発現を調節することで、血中のTGを低下させるとともにHDL-Cを増加させる作用を有します。本剤は肝代謝型薬剤であるため、腎機能が低下している患者にも使用しやすいという利点がありますが、一方で肝機能が低下している患者では注意が必要です。IR錠の第III相臨床試験であるフェノフィブラートとの比較検証試験において、TGのベースラインからの減少率は、フェノフィブラート群と比べ有意な差があったという結果が得られています1)。本剤はマルチプルユニット型の徐放性製剤ですので、砕いたり、すりつぶしたりして服用すると、本剤の徐放性が損なわれ、薬物動態が変わる恐れがあります。服薬指導では、そのまま服用するように説明しましょう。参考1)Ishibashi S, et al. J Clin Lipidol. 2018;12:173-184.

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NAFLD→MASLD・NASH→MASHに名称変更する理由とは…

 「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease、わが国ではナッフルディ、ナッフルドと呼ばれる)と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis 、ナッシュ)が名称変更される」と、先日開催された欧州肝臓学会国際肝臓学会議(EASL-ILC)2023で発表された。以前から欧米ではNAFLDやNASHという用語が患者への偏見になるという声が上がっていたようで、今回、米国・シカゴ大学のMary E. Rinella氏らは論文などの趣意に関する専門家や患者支援者が命名法や定義の変更について支持しているか否かを調査した。その結果、改名に際し“metabolic”(代謝性)という用語を含めることが求められ、新たな名称としてNAFLDはMASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)へ、NASHはMASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)への変更が望ましいことが明らかになった。Journal of Hepatology誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。MASLDがNAFLDに代わる名前として選ばれた 調査は肝臓病に関する大きな3団体が主導し修正Delphi法を用いて行われ、命名プロセスとは関係のない専門家からなる独立委員会がこの頭字語とその診断基準に関する最終勧告を作成した。 NAFLDやNASHの名称変更について調査した主な結果は以下のとおり。・本研究では56ヵ国から236人が参加し、4つのオンライン調査と2つのハイブリッド会議にて調査が行われた。・オンライン調査の回答率は、それぞれ87%、83%、83%、78%で、回答者の74%は現在の命名法には名称変更を検討するに足るだけの多くの欠点があると感じていた。・「ノンアルコール」「太っている」という言葉は、各回答者の6割超が“非難されている”と感じていた。・Steatotic liver disease(SLD)は、脂肪肝のさまざまな病因を包含する包括的な用語として選択された。また、steatohepatitisという用語は、保持すべき重要な病態生理学的な概念であると判断された。・NAFLDに代わる名前として選ばれたのは、代謝機能不全に関連した『metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease:MASLD』だった。・その際、5つの心臓代謝危険因子のうち1つ以上を含むように定義変更することで合意が得られた。・代謝異常がなく原因不明の患者は成因不明SLDとみなすこととなった。純粋なMASLD以外で1週間あたりのアルコール摂取量が多い(女性:140~350g/週、男性:210~420g/週)場合は『MetALD』(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)と呼ぶよう、新たなカテゴリーが新設された。 研究者らは「新しい命名法と診断基準は広く支持され、偏見を与えるものではなく、認識と患者の識別を向上させることが可能だ」としている。 医療におけるスティグマと言えば、昨年には日本糖尿病協会が「糖尿病」の名称変更を検討する方針を示し波紋を呼んだ。当時、ケアネットが会員医師に対して名称変更の賛否についてアンケート調査した結果、6割の医師が反対票を投じた。NASH/NAFLDも糖尿病や循環器領域などの代謝系疾患の合併頻度が高いことから、さまざまな診療科で新たな用語を浸透させる必要があるだろう。この結果を受け、今後の日本での動向が気になるところである。

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DPP-4阻害薬の副作用「類天疱瘡」、適切な処置の注意喚起/PMDA

 糖尿病治療薬DPP-4阻害薬やその配合剤の副作用として知られている類天疱瘡。DPP-4阻害薬服用後にこの副作用を疑う皮膚異常がみられたにもかかわらず、投与が継続され類天疱瘡の悪化を来し入院するケースが報告されているという。これに対して医薬品医療機器総合機構PMDAは7月27日に医薬品適正使用のお願いを発出した。DPP-4阻害薬の副作用として類天疱瘡は以前から添付文書に記載 PMDAは以下のように注意を呼びかけている。<DPP-4阻害薬による類天疱瘡への適切な処置について>DPP-4阻害薬の使用中に、そう痒を伴う浮腫性紅斑、水疱、びらん等が現れ、類天疱瘡の発現が疑われる場合には、速やかに皮膚科医と相談し、DPP-4阻害薬の投与を中止するなどの適切な処置を行うよう、注意をお願いいたします。【代表的な症例】70代・男性。シタグリプチン投与開始後、3~4ヵ月目に水疱出現、自然軽快を繰り返し、投与7ヵ月目に水疱が多発し全身に広がり、投与8ヵ月目にクリニック受診。内服薬および外用薬で治療したが改善せず、皮膚科を受診。水疱性類天疱瘡の診断となり、入院。治療により改善しプレドニゾロン減量のうえで、投与9ヵ月目に退院となったが、再度水疱が出現し、水疱形成増悪が確認され、再入院。プレドニゾロンを増量したが改善せず、血漿交換療法を施行。薬剤性の水疱性類天疱瘡が疑われ、シタグリプチンの投与を中止。プレドニゾロンを減量し、シタグリプチンの中止11日後、水疱性類天疱瘡は回復し、退院した。――― 類天疱瘡は、血液中に存在する皮膚の基底膜に対する自己抗体が自己抗原に反応して、皮膚を傷害し、皮膚に水ぶくれ(水疱)を作る病気1)。DPP-4阻害薬やその配合薬の各添付文書には以前から副作用として記され、日本糖尿病学会での演題にも上がるほど比較的認知度の高い副作用ではある。しかし、DPP-4阻害薬やその配合薬の副作用報告数は2018年(365件)をピークに右肩下がりではあるものの、2022年時点でもなお149件報告されている。<該当医薬品>アナグリプチン含有製剤(商品名:スイニー錠、メトアナ配合錠LD/HD)アログリプチン安息香酸塩含有製剤(ネシーナ錠、イニシンク配合錠、リオベル配合錠LD/HD)オマリグリプチン(マリゼブ錠)サキサグリプチン水和物(オングリザ錠)シタグリプチンリン酸塩水和物含有製剤(グラクティブ錠、ジャヌビア錠、スージャヌ配合錠)テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物含有製剤(テネリア錠/OD錠、カナリア配合錠)トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック錠)ビルダグリプチン含有製剤(エクア錠、エクメット配合錠LD/HD)リナグリプチン含有製剤(トラゼンタ錠、トラディアンス配合錠AP/BP)

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