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民間減量プログラム参加者の減量効果は、プライマリ・ケア医による減量治療の2倍

過体重、肥満者の減量達成について、プライマリ・ケア医による標準的な減量治療と、プライマリ・ケア医が地域ベースの民間健康プログラム提供者へと対象者を紹介した場合とを比較した結果、後者のほうが2倍量の減量を達成したことが報告された。過体重、肥満者の増大により、プライマリ・ケアと地域ベースでの減量のための効果的なアプローチが必要とされているなか、英国・MRC Human Nutrition ResearchのSusan A Jebb氏ら研究グループが、オーストラリア、ドイツ、英国の3ヵ国で772例の過体重または肥満者を対象に、前述の比較について検討する平行群非盲検無作為化試験を行った。Lancet誌2011年10月22日号(オンライン版2011年9月8日号)掲載報告より。12ヵ月間の減量治療群と民間減量プログラム参加群との効果を比較試験は2007年9月~2008年11月の間に、オーストラリア70ヵ所、ドイツ39ヵ所、英国6ヵ所の診療所から772例の過体重または肥満の成人患者を集めて行われた。被験者は18歳以上、BMI値27~35で、腹囲女性>88cm/男性>102cm、非インスリン治療中の2型糖尿病など肥満関連のリスク因子を1つ以上有していた。被験者はコンピュータ無作為化システムによって、各国臨床ガイドラインに即した標準治療を受ける群(395例)と、自由参加の民間プログラム「Weight Watchers」を受ける群(377例)とに割り付けられ、いずれも12ヵ月間にわたる介入を受け、その後12ヵ月間追跡された。Weight Watchersは、週1ミーティングで、体重測定、食事や運動のアドバイス、動機づけ、グループ支援を提供するプログラム(http://www.weightwatchers.com/index.aspx)。主要アウトカムは、12ヵ月間の体重変化とし、解析は、intention to treatおよび12ヵ月間の評価を完遂した人について行われた。民間減量プログラムのほうが臨床的に有用の可能性12ヵ月間の評価を完遂したのは、民間プログラム群は230例(61%)、標準治療群は214例(54%)だった。全例解析の結果、民間プログラム群の被験者の減量は、標準治療群の2倍以上を達成していた。すなわち、12ヵ月時点での体重変化の中央値は、LOCF法(途中脱落者のデータについて最終測定値を用いて解析を行う方法)では、民間プログラム群-5.06kg(SE 0.31)に対し、標準治療群は-2.25kg(同0.21)で、補正後格差は-2.77kg(95%信頼区間:-3.50~-2.03)だった。BOCF法(基線データを用いて解析を行う方法)では、民間プログラム群-4.06kg(SE 0.31)に対し、標準治療群は-1.77kg(同0.19)で、補正後格差は-2.29kg(95%信頼区間:-2.99~-1.58)だった。12ヵ月間の評価完遂者を対象とした解析では、民間プログラム群-6.65kg(SE 0.43)に対し、標準治療群は-3.26kg(同0.33)で、補正後格差は-3.16kg(95%信頼区間:-4.23~-2.11)だった。試験参加に関連した有害事象を報告した被験者はいなかった。著者は、「民間減量プログラムへ紹介するほうが、臨床的に有用で、体重管理の早期介入を果たし、より大きな減量効果を達成する可能性がある」と結論している。

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米国・カナダの臨床ガイドライン、作成委員の半数超が作成時に利害対立があったと報告

米国とカナダの脂質異常症(高脂血症)や糖尿病の臨床ガイドラインの作成委員のうち半数超が、いわゆる臨床家と産業界との利害対立が作成時にあったと報告したことが明らかにされた。その一方で、検証したガイドラインのおよそ3分の1は、利害対立に関する情報の開示をしていなかった。さらに、ガイドライン作成に関する出資元が政府の場合には、そうでない場合に比べ、利害対立があったことを報告した委員の割合が少ないことも示された。これは、米国・マウントサイナイ・メディカルスクール予防医学部門のJennifer Neuman氏らが、14の臨床ガイドラインとその作成に携わった委員に対して行った調査の結果で、BMJ誌2011年10月15日号(オンライン版2011年10月11日号)に掲載発表された。利害対立が事実あったと認めた委員は150人・52%、うち12人が未報告同研究グループは、2000~2010年、米国またはカナダで作成された、14の脂質異常症(高脂血症)や糖尿病の臨床ガイドラインについて調査を行った。このうち5つのガイドラインでは、利害対立に関する情報開示の宣言を行っていなかった。これらのガイドライン作成に携わった委員288人のうち、ガイドライン公表時に利害対立があったことを報告したのは138人(48%)、利害対立はなかった(73人)、または報告する機会がなかったとしたのは合わせて150人(52%)だった。しかし、公式には利害対立はなかったと報告していた73人のうち、実際には利害対立があったとした委員が8人(11%)いた。全体では、利害対立があったと認めた委員は150人(52%)に上り、そのうち12人がその旨を報告していなかった。作成委員会座長の半数が利害対立があったと報告調査対象の14のガイドラインのうち、座長が確認できたのは12ガイドラインだった。そのうち、利害対立があったことを認めたのは6人で、全員その旨を報告していた。また、ガイドライン作成委員会の出資元が政府の場合には、利害対立があったとした委員の割合が92人中15人(16%)と、そうでない場合の196人中135人(69%)に比べ、有意に大幅に低率だった(p<0.001)。(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

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術前の貧血は非心臓手術患者の予後を増悪させる

非心臓手術を受ける患者では、術前の貧血はたとえそれが軽度であっても術後30日以内の合併症や死亡のリスクを上昇させることが、レバノンAmerican University of Beirut医療センターのKhaled M Musallam氏らの検討で示された。心臓手術前に貧血がみられた患者は、術後の合併症の罹患率および死亡率が増大することが知られているが、非心臓手術における術前の貧血が予後に及ぼす影響は不明であった。術中の輸血は、少量であっても合併症率、死亡率を上昇させることが報告されており、術前貧血は術中輸血の機会を増大させるためリスク因子とみなされるという。Lancet誌2011年10月15日号(オンライン版10月6日号)掲載の報告。術前貧血が術後アウトカムに及ぼす影響を後ろ向きに評価するコホート試験研究グループは、非心臓手術を受ける患者において、術前の貧血が術後の合併症率、死亡率に及ぼす影響をレトロスペクティブに評価するコホート試験を実施した。「米国外科学会の手術の質改善プログラム(American College of Surgeons’ National Surgical Quality Improvement Program)」のデータベース(世界211病院からプロスペクティブに集められたアウトカムのレジストリー)を用い、2008年に主な非心臓手術を受けた患者のデータについて解析した。30日合併症率および30日死亡率(心臓、呼吸器、中枢神経系、尿路、創傷、敗血症、静脈血栓塞栓症)、人口学的因子、術前・術中のリスク因子に関するデータを収集した。貧血は軽度(ヘマトクリット値が男性29~39%、女性29~36%)および中等度~重度(男女ともヘマトクリット値<29%)に分けた。リスク因子(65歳以上、心疾患、重度COPD、中枢神経疾患、腎疾患、がん、糖尿病、敗血症、肥満)に基づくサブグループにおいて、貧血が術後のアウトカムに及ぼす影響について多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。術後30日合併症率、死亡率が有意に上昇非心臓手術を受けた患者22万7,425例のうち6万9,229例(30.44%)に術前の貧血が認められた。術後の30日死亡率は、術前非貧血患者よりも貧血患者で有意に高く(調整オッズ比:1.42、95%信頼区間:1.31~1.54)、この差は軽度貧血(同:1.41、1.30~1.53)および中等度~重度貧血(同:1.44、1.29~1.60)に一致して認められた。術後30日合併症率も、術前非貧血患者に比べ貧血患者で有意に高く(調整オッズ比:1.35、95%信頼区間:1.30~1.40)、死亡率と同様に軽度貧血(同:1.31、1.26~1.36)および中等度~高度貧血(同:1.56、1.47~1.66)で一致していた。著者は、「非心臓手術を受ける患者では、術前の貧血はたとえそれが軽度であっても術後30日以内の合併症や死亡のリスクを上昇させる」と結論し、「この知見は、年齢、性別、手術手技にかかわらず一貫して認められ、貧血が既知のリスク因子と併存すると、リスク因子がアウトカムに及ぼす影響がさらに増大した」としている。(菅野守:医学ライター)

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チョコレート高摂取による心血管代謝障害の抑制効果が明らかに

チョコレートの摂取量と心血管代謝障害(cardiometabolic disorder)の発生リスクには実質的な関連が認められることが、英国・ケンブリッジ大学のAdriana Buitrago-Lopez氏らの検討で示された。WHOによれば2030年までに約2,360万人が心血管疾患で死亡するとされ、現在、世界の成人の約5分の1が、糖尿病や心血管疾患の増加をもたらすメタボリック症候群に罹患しているとの研究結果もある。近年、心血管代謝障害が世界的に増加しているが、その多くは予防可能と考えられており、ココアやチョコレートは降圧、抗炎症、抗動脈硬化、抗血栓作用を有することが示唆されている。BMJ誌2011年10月1日号(オンライン版2011年8月29日号)掲載の報告。心血管代謝障害の発生リスクに及ぼす影響をメタ解析で評価研究グループは、チョコレートの摂取と心血管代謝障害のリスクの関連を評価するために、無作為化対照比較試験および観察試験の系統的レビューを行い、メタ解析を実施した。2010年10月までに発表された文献のデータベース(Medline、Embase、Cochrane Library、PubMed、CINAHL、IPA、Web of Science、Scopus、Pascal)を検索し、関連論文の文献リストを参照した。抽出された論文の著者に電子メールで連絡をとった。主要評価項目は、心血管疾患(冠動脈心疾患、脳卒中)、糖尿病、メタボリック症候群を含む心血管代謝障害とした。メタ解析では、チョコレートの摂取量が最も多い群と少ない群を比較することで、心血管代謝障害の発生リスクを評価した。最大摂取量群で、心血管疾患リスクが37%、脳卒中リスクが29%低下選択基準を満たした7試験(11万4,009人)のうち6つがコホート試験(日本の1試験[Oba S、et al. Br J Nutr 2010;103:453-9]を含む)、1つは横断的試験であり、無作為化試験は含まれなかった。これらの研究には、チョコレート摂取量の測定法、試験方法、アウトカムの評価法に大きな差異が認められた。5つの試験では、チョコレート摂取量が多いほど心血管代謝障害のリスクが低下していた。摂取量が最も多い群では、最も少ない群に比べ心血管疾患リスクが37%低下(相対リスク:0.63、95%信頼区間:0.44~0.90)し、脳卒中リスクが29%低下(同:0.71、0.52~0.98)した。心不全の抑制効果はみられなかった(相対リスク:0.95、95%信頼区間:0.61~1.48)。日本の試験では、男性で糖尿病の抑制効果が認められた(男性:ハザード比0.65、95%信頼区間0.43~0.97、女性: 同0.73、0.48~1.93)。著者は、「観察試験のエビデンスに基づけば、チョコレートの摂取量と心血管代謝障害のリスク低下には実質的な関連が認められた」と結論し、「チョコレート摂取のベネフィットを確定するには、さらなる検討が必要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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左室拡張能は加齢とともに低下、心不全発症のリスクに

当初4年、その後6年にわたる住民追跡調査研究の結果、左室拡張能障害の有病率は年齢とともに増加が認められ、その機能低下が心不全の発症と関連していることが、米国・メイヨークリニックのGarvan C. Kane氏らにより明らかにされた。心不全発生率は、年齢とともに上昇が認められるが、その約半分は左室駆出率が保持されている。そうした症例では拡張能障害が発症に関わるが、これまで拡張能の年齢依存性の長期的変化について、住民ベースの研究は行われていなかった。JAMA誌2011年8月24/31日号掲載報告より。住民追跡研究、拡張能の4年間の経年変化とその後6年間の心不全発生との関連を評価Kane氏らは、米国ミネソタ州オルムステッドの住民を対象とした追跡調査研究「Olmsted County Heart Function Study」を行った。研究は2つの調査から構成された。まず、無作為選択された45歳以上の参加者2,042例に対し、臨床的な評価、カルテ記録からの情報抽出、心エコー検査を行い、左室拡張能の程度について、ドップラー検査にて標準、軽度、中等度、重度に等級分類した(研究1:1997~2000年)。4年後に、同参加者は研究2(2001~2004年)への協力を要請され研究1と同様の検査を受けた。その後、研究2に協力した参加者コホート[研究1後に生存していた1,960例のうち1,402例(72%)が参加]は、新規心不全の発症について2004~2010年の間、追跡された。主要評価項目は、研究1から研究2の間の拡張能等級の変化と心不全発症の変化とした。拡張能の低下、65歳以上では2.85倍研究1と研究2の4年(SD 0.3)の間に、拡張能障害の有病率は、23.8%(95%信頼区間:21.2~26.4)から39.2%(同:36.3~42.2)へと増加していた(P<0.001)。また、参加者の23.4%(同:20.9~26.0)で拡張能の分類等級が悪化、67.8%(同:64.8~70.6)で不変、改善は8.8%(同:7.1~10.5)であった。拡張能低下と関連していたのは、65歳以上であることだった(オッズ比:2.85、95%信頼区間、1.77~4.72)。6.3年(SD 2.3)のフォローアップの間の心不全発生率は、拡張能が標準になったか標準を維持した人は2.6%(95%信頼区間:1.4~3.8)、軽度のままだったか軽度へ進行した人では7.8%(同:5.8~13.0)、中程度~高度が持続したか同等級へ進行した人では12.2%(同:8.5~18.4)だった(P<0.001)。年齢、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患補正後、拡張能障害と心不全発症とは相関が認められた(ハザード比:1.81、95%信頼区間:1.01~3.48)。(武藤まき:医療ライター)

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2型糖尿病治療薬 リオベル(一般名:アログリプチン安息香酸塩/ピオグリタゾン塩酸塩配合錠)

 2011年7月、アログリプチン安息香酸塩/ピオグリタゾン塩酸塩配合錠(商品名:リオベル配合錠LD,同配合錠HD)が2型糖尿病を適応として製造販売承認を取得した。製剤は低用量のLD製剤と高用量のHD製剤の2規格。アログリプチン(商品名:ネシーナ)の含量(25mg)が一定で、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)の含量(15mg、30mg)のみ差がある。糖尿病の2大病態を改善 アログリプチンとピオグリタゾンの組み合わせは、薬理学的作用から糖尿病の2大病態であるインスリン分泌不全とインスリン抵抗性を改善すると期待される。DPP-4阻害薬であるアログリプチンのインスリン分泌促進作用はブドウ糖濃度依存性であり単独投与では低血糖をおこしにくい。またアログリプチンは他のDPP-4阻害薬と比べ、DPP-4に対する選択性が高い1)という特徴をもつ。一方のピオグリタゾンはインスリン抵抗性の改善を介して血糖降下作用を発揮する薬剤であり、インスリン分泌促進作用がないため単独投与での低血糖の危険は少ないといわれる。また大血管障害既往例への心血管イベント発症抑制2)を示したPROactiveに代表される多数のエビデンスを有している。組み合わせにより期待される相乗効果 2剤の併用による血糖改善作用は承認時のデータで示されている。ピオグリタゾン単独療法で効果不十分例に対し、アログリプチン25mgを追加投与したところ、投与12週時点におけるHbA1c変化量は-0.97%3)であった。また血糖降下作用に加え、db/db マウスを用いた膵保護作用の検討では、アログリプチンならびにピオグリタゾン単独投与でも、膵のインスリン含量はプラセボ群よりも有意に増加したが、両剤の併用でさらに相乗的な膵インスリン含量の増加が認められた4)。アドヒアランスの向上は糖尿病治療に好影響を与える 糖尿病患者の多くは高血圧や脂質異常症などの他疾患を合併しているため、服薬錠数が多く服薬タイミングも様々である。リオベル配合錠は、1日1回1錠の服用で済むことから、服薬アドヒアランスの向上に有効である。アドヒアランスの向上は、より良好な血糖コントロールの達成につながるとの報告もあり、糖尿病治療ではアドヒアランスを意識した治療が重要といえる。使用にあたっての注意点 リオベル配合錠は、既に発売されている配合剤のソニアスやメタクト同様、「2型糖尿病の第一選択薬としないこと」と添付文書に記載されており、投与対象は、原則として両剤を併用し常態が安定している患者、もしくはピオグリタゾン単独で効果不十分な患者となる。承認時までの臨床試験では165例中の42例(25.5%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められており、これらを含め、各単剤で報告のある副作用にも十分な注意が必要である。ピオグリタゾンとアログリプチンでは、これまでに重大な副作用として、心不全の増悪あるいは発症、浮腫、肝機能障害、黄疸、低血糖症状、横紋筋融解症、間質性肺炎、胃潰瘍の再燃が報告されているので、使用に当たってはこれらの副作用にも十分に注意したい。ピオグリタゾンについては、海外の疫学研究5)において、主要解析である全体の解析では膀胱癌の発生リスクの増加はみられないものの、治療期間による層別解析ではピオグリタゾンの長期間の投与によりわずかなリスクの増加という注意喚起もあるため、本剤の有効性と膀胱癌のリスクを事前に説明し、投与後は血尿、頻尿、排尿痛等の症状を経過観察する等、適切に使用することが重要である。まとめ 糖尿病治療では患者さんの病態の多様性に応じて薬剤を使い分けることが多い。そのため、配合剤の選択が一様に普及しづらい一面もある。しかし、服薬錠数が減れば、患者さんにとっての負担が軽減されるのも事実だ。患者さんがインスリン分泌不全とインスリン抵抗性とを併せ持つ病態の場合、今後は、リオベル配合錠が有用な治療選択肢のひとつとなるだろう。

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睡眠呼吸障害がある高齢女性、認知障害・認知症の発症リスク1.85倍に

高齢女性の睡眠呼吸障害は、軽度認知障害や認知症の発症リスクを1.85倍に増大することが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のKristine Yaffe氏らが、認知症の認められない高齢女性約300人を対象とする前向き観察試験を行った結果によるもので、JAMA誌2011年8月10日号で発表した。反復性覚醒や間欠性低酸素血症を特徴とした睡眠呼吸障害は高齢者によくみられ、これまでの断面調査で、低い認知能力との関連が示唆されているものの、認知障害発症につながるかどうかについては明らかにされていなかった。認知症のない高齢女性298人を、平均4.7年追跡研究グループは、2002年1月~2004年4月にかけて、認知症の認められない高齢女性298人[平均年齢82.3歳(SD 3.2)]について、終夜睡眠ポリグラフィを行い、2006年11月~2008年9月に測定された認知状態(正常、認知症、軽度認知障害)との評価を行った。睡眠呼吸障害の定義は、睡眠中1時間につき無呼吸・低呼吸指数15以上とし、多変量解析にて、年齢、人種、ボディマス指数、教育レベル、喫煙の有無、糖尿病・高血圧症の有無、薬物療法の有無(抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、非ベンゾジアゼピン系抗不安薬)、基線での認知スコアについて補正を行い、低酸素症、睡眠の分断および持続が、軽度認知障害や認知症の発症リスクと関連しているかを調べた。追跡期間の平均値は4.7年だった。認知障害などの発症、睡眠障害のない人では約31%、ある人では約45%その結果、睡眠呼吸障害の認められない193人では、軽度認知障害や認知症を発症したのは60人(31.1%)だったのに対し、同障害が認められた105人では47人(44.8%)であり有意に高率だった(補正後オッズ比:1.85、95%信頼区間:1.11~3.08)。また、酸素脱飽和指数の上昇(15回/時以上)や無呼吸・低呼吸時間が睡眠時間の7%超の場合も、いずれも軽度認知障害や認知症の発症リスク増大との関連が認められた。それぞれ補正後オッズ比は1.71(95%信頼区間:1.04~2.83)、2.04(同:1.10~3.78)だった。一方で、睡眠の分断(覚醒回数/時、覚醒時間を低中高に分類し評価)および睡眠持続時間(総睡眠時間を低中高に分類し評価)についてはいずれも関連が認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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糖尿病性腎症患者、ガイドライン推奨値の減塩維持が蛋白尿減少と降圧の鍵

ACE阻害薬最大量で治療中の非糖尿病性腎症患者には、ガイドライン推奨レベルの減塩食を持続して摂らせることが、蛋白尿減少と降圧に、より効果的であることが52例を対象とする無作為化試験の結果、示された。試験は、オランダ・フローニンゲン大学医療センター腎臓病学部門のMaartje C J Slagman氏らが、同患者への追加療法として、減塩食の効果とARB追加の効果とを比較したもので、両者の直接的な比較は初めて。Slagman氏は、「この結果は、より有効な腎保護治療を行うために、医療者と患者が一致協力して、ガイドラインレベルの減塩維持に取り組むべきことを裏付けるものである」と結論している。BMJ誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載報告より。ACE最大量投与中にARB and/or減塩食を追加した場合の蛋白尿と血圧への影響を比較Slagman氏らは、ACE阻害薬最大量服用中の非糖尿病性腎症患者の蛋白尿や血圧への影響について、減塩食を追加した場合と最大量のARBを追加した場合、あるいは両方を追加した場合とを比較する多施設共同クロスオーバー無作為化試験を行った。被験者は、オランダの外来診療所を受診する52例で、ARBのバルサルタン(商品名:ディオバン)320mg/日+減塩食(目標Na+ 50mmol/日)、プラセボ+減塩食、ARB+通常食(同200mmol/日)、プラセボ+通常食の4治療を6週間で受けるように割り付けられた。ARBとプラセボの投与は順不同で二重盲検にて行われ、食事の介入はオープンラベルで行われた。試験期間中、被験者は全員、ACE阻害薬のリシノプリル(商品名:ロンゲス、ゼストリルほか)40mg/日を服用していた。主要評価項目は蛋白尿、副次評価項目が血圧であった。直接対決では減塩食の効果が有意平均尿中ナトリウム排泄量は、減塩食摂取中は106(SE 5)mmol/日、通常食摂取中は184(6)mmol/日だった(P

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強化血糖降下療法は2型糖尿病の全死因死亡、心血管死を改善しない

2型糖尿病患者に対する強化血糖降下療法は、全死因死亡および心血管死を改善せず、そのベネフィットは限定的であることが、フランス・クロード・ベルナール・リヨン第1大学のRemy Boussageon氏らの検討で明らかとなった。強化血糖降下療法は、2型糖尿病の治療や長期的な心血管合併症、腎機能障害、視覚機能障害の予防を目的に広く行われているが、臨床的な有用性は必ずしも明確ではないという。BMJ誌7月30日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載の報告。死亡リスクに及ぼす効果のメタ解析研究グループは、2型糖尿病に対する強化血糖降下療法に関連する全死因死亡および心血管死のリスクを評価するために、無作為化対照比較試験のメタ解析を行った。データベースを用い、18歳以上の2型糖尿病患者に対する強化血糖降下療法が、心血管イベントおよび細小血管合併症に及ぼす効果を評価した無作為化対照比較試験を抽出した。主要評価項目は全死因死亡および心血管死とし、副次的評価項目は重篤な低血糖および大血管/細小血管イベントとした。強化血糖降下療法と標準治療のリスク比およびその99%信頼区間(CI)を算出した。2つの治療法がアウトカムに及ぼす効果は固定効果モデルを用いて評価し、臨床試験の質はJadadスコアで評価した。死亡リスクは改善されず、重篤な低血糖が2倍以上に13試験に登録された3万4,533例が解析の対象となった。そのうち強化血糖降下療法群が1万8,315例、標準治療群は1万6,218例であった。全死因死亡のリスク比は1.04(99%CI:0.91~1.19)、心血管死のリスク比は1.11(同:0.86~1.43)であり、強化血糖降下療法群は標準治療群に比べ有意な効果は示さず、むしろ死亡リスクが高い傾向がみられた。非致死的心筋梗塞のリスク比は0.85(99%CI:0.74~0.96、p<0.001)、微量アルブミン尿のリスク比は0.90(同:0.85~0.96、p<0.001)と、いずれも強化血糖降下療法群で有意な改善効果が認められたが、重篤な低血糖のリスク比は2.33(同:21.62~3.36、p<0.001)であり、強化血糖降下療法群で有意に2倍以上リスクが高かった。質の高い試験(Jadadスコア>3)に限定した解析では、強化血糖降下療法によるリスク低減効果はまったく認めず、うっ血性心不全のリスクは有意に47%増加していた(リスク比:1.47、99%CI:1.19~1.83、p<0.001)。著者は、「このメタ解析の結果により、全体として、全死因死亡や心血管死に関する強化血糖降下療法のベネフィットは限定的であることが示された」と結論し、「大血管障害や細小血管障害の予防における強化血糖降下療法のベネフィット-リスク比は依然として不明である。強化血糖降下療法のベネフィットは重篤な低血糖によって相殺される可能性がある。2型糖尿病の最良の治療アプローチを確立するには、さらなる二重盲検無作為化対照比較試験が必要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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1型糖尿病に対するアバタセプト、膵β細胞の機能低下速度を抑制

早期の1型糖尿病患者に対し、関節リウマチ治療薬アバタセプト(商品名:オレンシア)を投与すると、膵β細胞の機能低下の速度が遅くなることが、米国・Joslin糖尿病センター(ボストン市)のTihamer Orban氏らの検討で示された。1型糖尿病の免疫病原性には膵β細胞を標的とするT細胞性の自己免疫反応が関与しており、T細胞の十分な活性化には、抗原提示細胞(APC)表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子上の抗原とT細胞受容体の相互作用に加え、APC上のCD80、CD86とT細胞上のCD28の相互作用という共刺激シグナルが必須である。アバタセプト(CTLA4-免疫グロブリン融合蛋白)は、この共刺激シグナルを遮断してT細胞の活性化を阻害するため、膵β細胞の機能低下を抑制して1型糖尿病の進展を遅延させる可能性があるという。Lancet誌2011年7月30日号(オンライン版2011年6月28日号)掲載の報告。北米で実施されたプラセボ対照無作為化第II相試験研究グル-プは、新規の1型糖尿病患者に対するアバタセプトの有効性を評価する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験を実施した。2008年3月24日~2009年2月23日までに、アメリカとカナダの15施設から、過去100日以内に1型糖尿病と診断された6~45歳の患者が登録された。これらの患者が、アバタセプト(10mg/kg、最大1,000mg)あるいはプラセボを静注する群に2:1の割合で無作為に割り付けられ、第1、14、28日、以降は1ヵ月に1回、約2年にわたり合計27回の治療が行われた。主要評価項目は、膵臓のインスリン分泌能の指標として、フォローアップ2年の時点における混合食負荷試験から2時間の血清Cペプチド値曲線下面積(AUC)の幾何平均(ベースライン値で調整)とした。デ-タの評価が可能であった全患者についてintention-to-treat解析を行った。Cペプチド値AUCが有意に59%改善、機能低下が9.6ヵ月遅延112例が登録され、アバタセプト群に77例、プラセボ群には35例が割り付けられた。2年後の調整済みCペプチド値AUCは、アバタセプト群(73例)が0.378nmol/Lと、プラセボ群(30例)の0.238nmol/Lに比べ有意に59%(95%信頼区間:6.1~112)高い値を示した(p=0.0029)。この両群間の差は試験期間を通じて認められ、アバタセプト群では、Cペプチド値がプラセボ群と同じ程度にまで低下するのに要する期間が9.6ヵ月遅延すると推察されたことから、アバタセプトによりインスリン分泌能の低下が抑制されたと考えられる。注射関連の有害事象の発生率は、アバタセプト群が22%(17/77例、36件)、プラセボ群は17%(6/35例、11件)であり、有意な差は認めなかった。感染症[42%(32/77例) vs. 43%(15/35例)]や好中球減少[9%(7/77例) vs. 14%(5/35例)]の発生率も両群で同等であった。著者は、「アバタセプトは、共刺激シグナルを阻害することで2年にわたり膵β細胞の機能低下の速度を遅くした」とまとめ、「これにより、臨床的に1型糖尿病と診断される時期にはT細胞の活性化が起きていることが示唆される。一方、2年間のアバタセプト投与期間中、6ヵ月以降は膵β細胞機能の低下率がプラセボと同程度に達したことから、T細胞の活性化は経時的に減弱しており、機能低下に対する他の経路の関与が推測される。今後は、アバタセプト中止後の効果の持続を評価するために観察を続ける必要がある」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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糖尿病性腎症に対するbardoxolone methyl、52週時点でも腎機能改善確認

糖尿病性腎症の治療薬として新規開発中のbardoxolone methylについて、長期効果と用量反応が検証された第2相二重盲検無作為プラセボ対照試験の結果、検討されたいずれの用量群でも、主要アウトカムである24週時点の腎機能の有意な改善が認められ、副次アウトカムである52週時点でも有意な改善が持続していたことが報告された。米国・Renal Associates(テキサス州、サンアントニオ)のPablo E. Pergola氏ら治験研究グループが、NEJM誌2011年7月28日号(オンライン版2011年6月24日号)で発表した。bardoxolone methylは、糖尿病性腎症の慢性炎症および酸化ストレスに着目し開発された経口抗酸化炎症調節薬。試験の結果を踏まえ研究グループは「bardoxolone methylは治療薬として有望である可能性が示された」と結論している。227例をプラセボ群と25mg、75mg、150mg各群に無作為化し52週治療bardoxolone methylの長期有効性を検討する第2相二重盲検無作為プラセボ対照試験は、中等度~重症のCKD(eGFRが20~45mL/分/1.73m2体表面積)を伴う2型糖尿病患者を適格患者として行われた。米国内43施設から集められた573例がスクリーニングを受け、227例が無作為に(1)プラセボ投与群(57例)、(2)bardoxolone methyl 1日1回25mg投与群(57例)、(3)同75mg投与群(57例)、(4)同150mg投与群(56例)に割り付けられ、52週にわたり治療が行われた。4群の基線プロフィールは同等で、平均年齢は67歳、98%がACE阻害薬かARBまたは両方を服薬していた。主要アウトカムは、各治療群の24週時点のeGFRの基線からの変化値で、プラセボ群と比較された。副次アウトカムは、同52週時点の変化値とされた。24週時点で有意な改善、52週時点でも有意な改善持続試験の結果、eGFRの基線からの変化は12週でピーク値を示し、その後、試験期間終了の52週まで比較的安定的に推移していた。24週時点のeGFRの基線からの変化は、bardoxolone methyl各投与群ともプラセボ群との比較で有意な上昇が認められた。eGFR変化の平均値(±SD)は、25mg投与群8.2±1.5mL、75mg投与群11.4±1.5mL、150mg投与群10.4±1.5mLであった(すべての比較のP<0.001)。また、25mg投与群と75mg投与群との変化値の差は有意だったが(P=0.04)、75mg投与群と150mg投与群との差は有意ではなかった(P=0.54)。各投与群のプラセボ群と比較した有意なeGFR上昇は、52週時点でも持続していた[変化値はそれぞれ5.8±1.8mL(P=0.002)、10.5±1.8mL(P<0.001)、9.3±1.9mL(P<0.001)]。bardoxolone methyl各投与群で最も頻度が多かった有害事象は筋痙縮だったが、総じて軽度であり、また用量依存に認められた。その他、よくみられたのが、低マグネシウム血症、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の軽度上昇、胃腸への影響であった。(武藤まき:医療ライター)

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1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alumワクチン療法の可能性

1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alum(水酸化アルミニウム配合グルタミン酸脱炭酸酵素)ワクチン療法について、無作為化二重盲検試験の結果、治療目標としたインスリン分泌の低下を抑制しなかったことが報告された。カナダ・トロント大学小児疾患病院のDiane K Wherrett氏らによる。GADは、1型糖尿病の自己免疫反応の主要なターゲットであり、非肥満性の自己免疫性糖尿病モデルのマウス実験では、糖尿病を予防する可能性が示されていた。Lancet誌2011年7月23日号(オンライン版2011年6月27日号)掲載報告より。診断100日未満3~45歳145例を対象に、接種後1年間のインスリン分泌能を調査試験は、アメリカとカナダ15施設から登録され適格基準を満たした、1型糖尿病との診断が100日未満の3~45歳145例を対象に行われた。被験者は無作為に、GAD-alum 20μgの3回接種群(48例)、同2回接種+alum 1回接種群(49例)、alum 3回接種群(48例)の3つの治療群に割り付けられ、インスリン分泌能が維持されるかを観察した。主要評価項目は、1年時点の血清Cペプチド値(4時間混合食負荷試験の2時間値)の相乗平均曲線下面積(AUC)とし(基線で年齢、性、ペプチド値で補正)、副次評価項目は、HbA1cとインスリン投与量の変化、安全性などを含んだ。接種スケジュールは、基線、4週間後、さらにその8週間後だった。無作為化はコンピュータにて行われ、患者および治験担当者には割り付け情報は知らされなかった。3回接種、2回接種、alum接種の3群間で有意差認められず、免疫療法研究は発展途上結果、1年時点の血清Cペプチド値の2時間AUCは、GAD-alum接種群は0.412nmol/L(95%信頼区間:0.349~0.478)、GAD-alum+alum接種群は0.382nmol/L(95%信頼区間:0.322~0.446)、alum接種群は0.413nmol/L(95%信頼区間:0.351~0.477)で3群間に有意差は認められなかった。同集団平均値比は、GAD-alum接種群vs. alum接種群は0.998(95%信頼区間:0.779~1.22、p=0.98)、GAD-alum+alum接種群vs. alum接種群は0.926(同:0.720~1.13、p=0.50)で、3群間で同等だった。HbA1cとインスリン投与量の変化、有害事象の発生頻度および重症度について、3群間で差は認められなかった。Wherrett氏は、「新規1型糖尿病患者を対象とする4~12週にわたるGAD-alumの2回または3回接種によるワクチン療法により、1年間のインスリン分泌低下を変化することはなかった」と結論。しかし、「免疫療法は非常に望ましく、動物モデルでは有効であったが、ヒトに関してはいまだ発展途上である」として、レビュアーから、投与量・ルート、有効な耐性誘導などさらなる研究が必要だろうとの指摘があったことや、免疫療法の研究を進展させるには免疫調整マーカーの開発が必要であること、また低用量の免疫調整薬投与を含む、GAD療法の併用療法への応用の可能性について言及している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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心房細動を有する75歳以上高齢者の脳卒中リスクは“高リスク”とするのが妥当

心房細動を有する高齢患者の脳卒中リスクの予測能について、近年開発提唱された7つのリスク層別化シェーマを比較検討した結果、いずれも限界があることが報告された。英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア健康科学部門のF D R Hobbs氏らによる。脳卒中のリスクに対しては、ワルファリンなど抗凝固療法が有効であるとの多くのエビデンスがあるにもかかわらず、高齢者への投与率は低く、投与にあたっては特に70歳以上ではアスピリンと安全面について検討される。一方ガイドラインでは、リスクスコアを使いリスク階層化をした上でのワルファリン投与が推奨されていることから、その予測能について検討した。試験の結果を受けHobbs氏は、「より優れたツールが利用可能となるまでは、75歳以上高齢者はすべて“高リスク”とするのが妥当だろう」と結論している。BMJ誌2011年7月16日号(オンライン版2011年6月23日号)掲載報告より。プライマリ・ケアベースの被験者を対象に、既存リスクスコアの予測能を検証既存リスク層別化シェーマの成績の比較は、BAFTA(Birmingham Atrial Fibrillation in the Aged)試験の被験者サブグループを対象に行われた。BAFTA試験は、2001~2004年にイギリスとウェールズ260の診療所から集められた心房細動を有する75歳以上の973例を対象に、脳卒中予防としてのワルファリンとアスピリンを比較検討したプライマリ・ケアベースの無作為化対照試験。Hobbs氏らは、BAFTA被験者でワルファリンを投与されていなかった、または一部期間投与されていなかった665例を対象とし、CHADS2、Framingham、NICE guidelines、ACC/AHA/ESC guidelines、ACCP guidelines、Rietbrock modified、CHA2DS2-VAScの各シェーマの脳卒中リスク予測能を調べた。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓の発生。解析対象のうち虚血性脳卒中の発生は54例(8%)、全身塞栓症は4例(0.6%)、一過性脳虚血発作は13例(2%)だった。最も分類できたのは高リスク、予測精度は全体的に同等低・中間・高リスクへの患者の分類は、3つのリスク層別化スコア(改訂CHADS2、NICE、ACC/AHA/ESC)ではほぼ同等であった。分類された割合が最も高かったのは高リスク患者で(65~69%、n=460~457)、一方、中間リスクへの分類が最も残存した。オリジナルCHADS2スコア(うっ血性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳卒中既往)は、高リスク患者の分類が最も低かった(27%、n=180)。CHADS2、Rietbrock modified CHADS2、CHA2DS2-VASc(CHA2DS2-VASc血管疾患、65~74歳、性別)は、スコア上限値でリスク増大を示すことに失敗した。C統計量は0.55(オリジナルCHADS2)~0.62(Rietbrock modified CHADS2)で、予測精度は全体的に同等であった。なお、ブートストラップ法により各シェーマの能力に有意差はないことが確認されている。

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2型糖尿病に対する診断直後からの強化食事療法が血糖値を改善:Early ACTID試験

 2型糖尿病患者に対する診断直後からの強化食事療法は、通常治療に比べ血糖値や体重減少、インスリン抵抗性を改善し、糖尿病治療薬の使用量を低減するが、これに運動療法を追加しても新たなベネフィットは得られないことが、イギリス・ブリストル大学のR C Andrews氏らが行ったEarly ACTID試験で示され、Lancet誌2011年7月9日号(オンライン版6月25日号)で報告された。血圧の改善効果は得られなかった。2型糖尿病の管理では、診断直後からライフスタイルの変容を導入すれば予後が改善する可能性があるが、介入の有無で予後の比較を行った大規模試験はないという。強化食事療法、強化食事/運動療法の血糖値、血圧への影響を評価 Early ACTID(Activity in Diabetes)試験の研究グループは、イギリス南西部地域において、新規2型糖尿病患者に対する診断直後の食事療法と身体活動による介入が、血圧や血糖値に及ぼす影響を評価する無作為化対照比較試験を実施した。 5~8ヵ月前に新規に診断された2型糖尿病患者(30~80歳)が、次の3つの群に2対5対5の割合で無作為に割り付けられた。・通常治療群(対照群):無作為割り付け時に食事指導と運動の奨励を行い、6ヵ月および12ヵ月後にフォローアップ。・強化食事療法群:5~10%の体重減少を目標とし、食事療法士による無作為割り付け時、3、6、9、12ヵ月後の食事指導、看護師による計9回(6週ごと)の食事療法の評価、指導と目標設定。・強化食事/運動療法群:同様の強化食事療法に歩数計を用いた身体活動プログラム(30分以上の早歩きを週5日以上)を併用。 主要評価項目は、6ヵ月後のHbA1c値および血圧の改善とした。平均HbA1c値が有意に改善、血圧は3群で同等 2005年12月~2008年9月までに593例が登録され、通常治療群に99例(平均年齢59.5歳、男性63%)、強化食事療法群に248例(同:60.1歳、64%)、強化食事/運動療法群には246例(同:60.0歳、66%)が割り付けられ、予後の評価が可能であったのは6ヵ月後が587例(99%)、12ヵ月後は579例(98%)であった。 対照群の平均HbA1c値は、ベースラインの6.72%(SD 1.02)に対し6ヵ月後は6.86%(SD 1.02)とむしろ悪化したが、強化食事療法群は6.64%(SD 0.93)から6.57%(SD 1.06)へ(調整後の対照群との群間差:-0.28%、95%信頼区間:-0.46~-0.10、p=0.0049)、強化食事/運動療法群は6.69%(SD 0.99)から6.60%(SD 1.00)へ(同:-0.33%、-0.51~-0.14、p=0.0009)と有意に改善した。これらの差は、糖尿病治療薬の使用量が減少したにもかかわらず12ヵ月後も持続していた。 体重やインスリン抵抗性についても、介入群で同様の改善効果がみられたが、血圧は3群ともに大きな変化は認めず同等であった。 著者は、「診断直後からの強化食事療法は血糖値を改善するが、これに運動療法を追加しても新たなベネフィットは得られなかった」と結論し、「強化食事療法による介入は食事療法士の支援の下で看護師によって行われるため、地域住民ベースの糖尿病管理サービスに組み込むことも可能であろう」と指摘している。

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2型糖尿病に対する早期強化療法により心血管イベントがわずかに低下傾向に:ADDITION-Europe試験

2型糖尿病に対する早期の多元的な強化療法によって、5年後の心血管イベントや死亡が有意ではないがわずかに減少することが、イギリス・代謝科学研究所のSimon J Griffin氏らが行ったADDITION-Europe試験で示され、Lancet誌2011年7月9日号(オンライン版2011年6月25日号)で報告された。2型糖尿病では、複数の心血管リスク因子に対する多元的な強化療法によって死亡率が半減する可能性が指摘されているが、血圧、脂質、血糖などの個々のリスク因子の治療を診断直後から開始した場合の有効性は不明だという。3ヵ国の343プライマリ・ケア施設が参加したクラスター無作為化試験ADDITION-Europe(Anglo-Danish-Dutch Study of Intensive Treatment In People with Screen Detected Diabetes in Primary Care)試験は、2型糖尿病に対する診断後早期の多元的治療が心血管リスクに及ぼす効果を検討する並行群間クラスター無作為化試験である。2001年4月~2006年12月までに、デンマーク、オランダ、イギリスの343のプライマリ・ケア施設が、ルーチンの糖尿病治療を行う群あるいは早期に多元的強化療法を施行する群に無作為に割り付けられた。患者は、スクリーニング検査で2型糖尿病と診断された40~69歳(オランダのみ50~69歳)の地域住民であった。多元的強化療法群は、既存の糖尿病治療に加え、プライマリ・ケア医や看護師による教育プログラム(治療ターゲット、アルゴリズム、ライフスタイルに関する助言など)への参加をうながし、Steno-2試験などで使用された段階的レジメンに基づくガイドラインに準拠した薬物療法や、健康なライフスタイル実践の指導が行われた。全施設で同じアプローチが使用されたが、薬剤の選択などの最終決定は担当医と患者が行った。ルーチン治療群ではプライマリ・ケア医が患者に検査結果を伝え、標準的な糖尿病治療が施行された。主要評価項目は、初発心血管イベント(5年以内の心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、血行再建術、非外傷性四肢切断)の複合エンドポイントとした。心血管リスク因子がわずかに有意に改善、心血管イベントは有意差はないがわずかに低下ルーチン治療群に176施設(1,379例、診断時平均年齢60.2歳、男性57.3%)が、多元的強化療法群には167施設(1,678例、60.3歳、58.5%)が割り付けられ、主要評価項目の解析は3,055例(99.9%)で可能であった。全体の平均フォローアップ期間は5.3年(SD 1.6)。心血管リスク因子[HbA1c、総コレステロール、LDLコレステロール、収縮期血圧、拡張期血圧]は、強化療法群でわずかではあるが有意に改善された。初発心血管イベントの発生率は、ルーチン治療群が8.5%(15.9/1,000人・年)、強化療法群は7.2%(13.5/1,000人・年)であり(ハザード比:0.83、95%信頼区間:0.65~1.05、p=0.12)、評価項目の個々のコンポーネントも強化療法群で良好な傾向がみられたが、有意差は認めなかった(心血管死:1.6% vs. 1.5%、非致死的心筋梗塞:2.3% vs. 1.7%、非致死的脳卒中:1.4% vs. 1.3%、血行再建術:3.2% vs. 2.6%、非外傷性四肢切断:0% vs. 0%)。全体の死亡率はルーチン治療群が6.7%、強化療法群は6.2%であった(ハザード比:0.91、95%信頼区間:0.69~1.21)。著者は、「2型糖尿病に対する早期の多元的強化療法によって、5年後の心血管イベントや死亡がわずかに減少したが有意差はなかった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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慢性腎臓病に対するLDL-C低下療法、動脈硬化イベントを低減

シンバスタチン(商品名:リポバスなど)と小腸コレステロールトランスポーター阻害薬エゼチミブ(同:ゼチーア)の併用療法は、慢性腎臓病を有する広範な患者において、高い安全性を保持しつつ主なアテローム性動脈硬化イベントを有意に抑制することが、Colin Baigent氏らが行ったSHARP試験で示され、Lancet誌2011年6月25日号(オンライン版2011年6月9日号)で報告された。慢性腎臓病は心血管疾患のリスクを増大させるが、その予防についてはほとんど検討されていない。スタチンを用いたLDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、非腎臓病患者では心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈血行再建術施行のリスクを低減させるが、中等度~重度の腎臓病がみられる患者に対する効果は明らかではないという。腎臓病患者におけるアテローム性動脈硬化イベント抑制効果を評価する無作為化プラセボ対照試験SHARP(Study of Heart and Renal Protection)試験は、中等度~重度腎臓病を有する患者に対するシンバスタチン+エゼチミブの有効性と安全性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照試験。対象は、40歳以上の心筋梗塞や冠動脈血行再建術の既往歴のない慢性腎臓病患者で、シンバスタチン20mg/日+エゼチミブ10mg/日を投与する群あるいはプラセボ群に無作為化に割り付けられた。事前に規定された主要評価項目は、主なアテローム性動脈硬化イベント(非致死的心筋梗塞/冠動脈心疾患死、非出血性脳卒中、動脈の血行再建術施行)の初発とし、intention to treat解析を行った。平均LDL-Cが0.85mmol/L低下、動脈硬化イベントは17%低下2003年8月~2006年8月までに9,270例(透析患者3,023例を含む)が登録され、シンバスタチン+エゼチミブ群に4,650例が、プラセボ群には4,620例が割り付けられた。フォローアップ期間中央値4.9年の時点で、平均LDL-C値はシンバスタチン+エゼチミブ群がプラセボ群よりも0.85mmol/L低下[SE:0.02、服薬コンプライアンス(遵守率≧80%)達成者:約3分の2]し、主なアテローム性動脈硬化イベントの発生率は17%低下した[11.3%(526/4,650例) vs. 13.4%(619/4,620例)、発生率比(RR):0.83、95%信頼区間(CI):0.74~0.94、log-rank検定:p=0.0021]。非致死的心筋梗塞/冠動脈心疾患死の発生率には差はみられなかった[4.6%(213/4,650例) vs. 5.0%(230/4,620例)、RR:0.92、95%CI:0.76~1.11、p=0.37]が、非出血性脳卒中[2.8%(131/4,650例) vs. 3.8%(174/4,620例)、RR:0.75、95%CI:0.60~0.94、p=0.01]および動脈の血行再建術施行率[6.1%(284/4,650例) vs. 7.6%(352/4,620例)、RR:0.79、95%CI:0.68~0.93、p=0.0036]は、シンバスタチン+エゼチニブ群で有意に低下した。LDL-C値低下のサブグループ解析では、主なアテローム性動脈硬化イベントの発生について有意なエビデンスは得られず、透析施行例および非施行例でも同等であった。ミオパチーの発生率は、シンバスタチン+エゼチニブ群0.2%(9/4,650例)、プラセボ群0.1%(5/4,620例)と、きわめて低頻度であった。肝炎[0.5%(21/4,650例) vs. 0.4%(18/4,620例)]、胆石[2.3%(106/4,650例) vs. 2.3%(106/4,620例)]、がん[9.4%(438/4,650例) vs. 9.5%(439/4,620例)、p=0.89]、非血管性の原因による死亡[14.4%(668/4,650例) vs. 13.2%(612/4,620例)、p=0.13]の発生率についても両群間に差はなかった。著者は、「シンバスタチン20mg/日+エゼチミブ10mg/日は、進行性の慢性腎臓病を有する広範な患者において、高い安全性を保持しつつ主なアテローム性動脈硬化イベントの発生率を有意に抑制した」と結論し、「腎臓病のない集団と同様に、LDL-C値低下の絶対値に基づくイベント低下率は年齢、性別、糖尿病、血管疾患の既往、脂質プロフィールにかかわらず同等であったことから、SHARP試験の結果は慢性腎臓病のほとんどの患者に適応可能と考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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過去20年の糖尿病患者に占める糖尿病性腎症者の割合は変化なし、背景に糖尿病治療の実施増大?

米国では1988年から2008年にかけて、糖尿病性腎症の有病率が糖尿病有病率に比して上昇し、2.2%から3.3%へと1.1ポイント増加していたが、一方で、糖尿病患者における糖尿病性腎症患者の割合には、変化はみられなかったという。また、血糖降下薬服用者が増加、特にレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬の服用者が増加していた。米国・ワシントン大学腎研究所のIan H. de Boer氏らが、「糖尿病性腎症有病率は、糖尿病有病率の拡大により増えるだろうが、糖尿病治療の実施により減少する可能性もある」として、米国における糖尿病性腎症有病率の経時的変化を明らかにするため、全米健康栄養検査調査(NHANES)を元に調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月22・29日号で発表した。糖尿病性腎症の全米有病率は増加、20年前2.2%、10年前2.85%、直近5年は3.3%糖尿病の定義は、HbA1c値が6.5%以上とし、糖尿病性腎症の定義は、糖尿病で尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)が30mg/g以上のアルブミン尿、糸球体濾過量(GFR)の低下(推定60mL/min/1.73m2未満)のいずれか、または両方が認められる場合とされた。調査対象は、NHANES III(1988~1994年、n=15,073)、NHANES 1999-2004(n=13,045)、NHANES 2005-2008(n=9,588)。各調査で、糖尿病定義に該当、血糖降下薬を服用のいずれかまたは両方に該当する人は、NHANES IIIは1,431人、NHANES 1999-2004は1,443人、NHANES 2005-2008は1,280人だった。結果、米国民の糖尿病性腎症有病率は、NHANES IIIが2.2%(95%信頼区間:1.8~2.6)、NHANES 1999-2004は2.8%(同:2.4~3.1)、NHANES 2005-2008は3.3%(同:2.8~3.7)だった(補正前傾向p<0.001)。人口統計学的補正後、NHANES IIIからNHANES 1999-2004への増大は18%増(1.18倍)、NHANES IIIからNHANES 2005-2008は34%増(1.34倍)であった(補正後傾向p=0.003)。これら糖尿病性腎症の有病率は、糖尿病有病率に正比例して増加していた。一方で、糖尿病患者に占める糖尿病性腎症者の割合に変化は認められなかった。NHANES IIIは36.4%、NHANES 1999-2004は35.2%、NHANES 2005-2008は34.5%、補正後増大はNHANES IIIからNHANES 1999-2004は0.99倍、NHANES IIIからNHANES 2005-2008は0.98倍であった(傾向p=0.77)。血糖降下薬服用、RAAS阻害薬服用割合がそれぞれ有意に増加糖尿病患者で血糖降下薬を服用している人の割合は、NHANES IIIの56.2%から、NHANES 2005-2008には74.2%へ、またRAAS阻害薬を服用する人の割合が、同11.2%から40.6%へ、それぞれ有意に増えていた(いずれもp<0.001)。また同期間では、GFR低下の有病率が14.9%から17.7%へ上昇(p=0.03)し、アルブミン尿は27.3%から23.7%に低下していたが統計学的に有意ではなかった(p=0.07)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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NV1FGFによる血管新生療法、重症下肢虚血患者の大切断術、死亡を低減せず

重症下肢虚血患者に対する非ウイルス性ヒト線維芽細胞増殖因子1発現プラスミド(NV1FGF)による血管新生療法は、下肢切断術施行および死亡を低減しないことが、英国Ninewells病院のJill Belch氏らが実施したTAMARIS試験で示され、Lancet誌2011年6月4日号(オンライン版2011年5月31日号)で報告された。欧米では最大で約2,000万人が末梢動脈疾患に罹患し、そのうち2~5%が最も重篤な病態である重症下肢虚血に至るという。線維芽細胞増殖因子1(FGF1)は血管の新生を調節、促進し、血管内皮細胞の遊走、増殖、分化を活性化することで既存の血管からの毛細血管の発生を促すことが知られている。下肢虚血患者に対するNV1FGFのプラセボ対照無作為化第III相試験TAMARIS試験は、血行再建術が非適応の重篤な下肢虚血患者に対する血管新生療法としてのNV1FGFの有用性を評価するプラセボ対照無作為化第III相試験である。2007年12月1日~2009年7月31日までに、30ヵ国171施設から、下肢の虚血性潰瘍あるいは軽度の皮膚壊疽がみられ、血行動態に基づく選択基準(足首血圧<70mmHg、爪先血圧<50mmHgあるいはその両方、治療足の経皮的酸素分圧<30mmHg)を満たした患者525例が登録され、NV1FGF(0.2mg/mL、筋注)を投与する群あるいはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。治療は2週ごとに4回(第1、15、29、43日)実施され、1回につき治療足に対し8回の注射が行われた。主治医、患者、研究チームには治療割り付け情報は知らされなかった。評価項目は大切断術(足首より上部での切断)の施行あるいは全死因死亡までの期間および発生率とし、Cox比例ハザードモデルによる多変量解析を用いたintention-to-treat解析を行った。有効な治療法開発が課題として残るV1FGF群に259例が、プラセボ群には266例が割り付けられ、全例が解析の対象となった。全体の平均年齢70歳(50~92歳)、男性が365例(70%)、糖尿病患者は280例(53%)、冠動脈疾患既往歴のある患者は248例(47%)であった。大切断術施行あるいは死亡の割合は、NV1FGF群が33%(86/259例)、プラセボ群は36%(96/266例)であり、有意な差は認めなかった(ハザード比:1.11、95%信頼区間:0.83~1.49、p=0.48)。大切断術の施行や死亡までの期間にも差はみられなかった。虚血性心疾患(NV1FGF群10% vs. プラセボ群10%、p=1.00)、悪性新生物(3% vs. 2%、p=0.55)、網膜疾患(4% vs. 6%、p=0.42)、腎機能障害(7% vs. 6%、p=0.49)の発現率も、両群で同等であった。著者は、「重症下肢虚血患者に対するNV1FGFによる血管新生療法は切断術施行および死亡の低減に有効とのエビデンスは得られなかった」と結論し、「これらの患者に対する有効な治療法の開発は大きな課題として残されている」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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2型糖尿病高齢者の骨折リスク、骨密度Tスコア低下やFRAXスコア上昇と関連

 2型糖尿病を有する高齢者において、大腿骨頸部の骨密度Tスコア低下やWHO骨折評価ツールのFRAXスコア上昇が、骨折リスク増大と関連することが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAnn V. Schwartz氏らが、骨折に関する3つの前向き観察試験の結果を分析し明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月1日号で発表した。2型糖尿病を有する人はそうでない人と比べて、骨密度が高い傾向にあるにもかかわらず骨折リスクが高いことが知られている。しかし骨折予防の中心対象となる骨密度が低い2型糖尿病の高齢者については、そうした関連は明らかにされていなかった。骨密度TスコアやFRAXスコアと、2型糖尿病高齢者の骨折リスクとの関連を分析 Schwartz氏らは、1997~2009年の間に行われた3つの前向き観察試験データを分析した。被験者は、地域に居住する高齢者で、3試験合計で女性9,449人、男性7,436人だった。そのうち2型糖尿病の女性高齢者は770人、男性高齢者は1,199人だった。 2型糖尿病女性高齢者770人のうち、平均追跡期間12.6(標準偏差:5.3)年で、股関節骨折者は84人、非脊椎骨折者は262人であった。同男性者では1,199人のうち、平均追跡期間7.5(標準偏差:2.0)年で、股関節骨折者は32人、非脊椎骨折者は133人だった。骨密度Tスコア1単位低下で股関節骨折リスクは、女性1.88倍、男性5.71倍に 大腿骨頸部骨密度Tスコアが1単位低下することによる、2型糖尿病女性高齢者の年齢補正後ハザード比は、股関節骨折については1.88(95%信頼区間:1.43~2.48)、非脊椎骨折については1.52(同:1.31~1.75)だった。同男性被験者ではそれぞれ5.71(同:3.42~9.53)、2.17(同:1.75~2.69)だった。 また、股関節骨折FRAXスコアが1単位上昇することによる、股関節骨折の年齢補正後ハザード比は、女性では1.05(同:1.03~1.07)、男性では1.16(同:1.07~1.27)だった。骨粗鬆症性骨折FRAXスコア1単位上昇による同ハザード比は、女性では1.04(同:1.02~1.05)、男性では1.09(同:1.04~1.14)だった。 Tスコア、年齢、FRAXスコアを一定とした場合、2型糖尿病患者を有する高齢者のほうが、有さない高齢者に比べ骨折リスクが高かった。また骨折リスクを一定とした場合、2型糖尿病高齢者のほうが、有さない高齢者に比べTスコアは高かった。股関節骨折に関するTスコア差は推定平均、女性0.59(同:0.31~0.87)、男性0.38(同:0.09~0.66)だった。

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インクレチン関連薬は、次のステップへ~ケアネット女性記者による第54回糖尿病学会レポート~

2011年5月19日(木)から3日間、札幌市にて、第54回日本糖尿病学会年次学術集会「糖尿病と合併症:克服へのProspects」が開催された。会長の羽田勝計氏(旭川医科大学)は、会長講演にて、「糖尿病治療における細小血管および大血管障害の発症・進展が阻止されれば、健常人と変わらないQOLの維持、寿命の確保が可能になる」と述べ、合併症の克服により本学会のテーマである「克服へのProspects」が10年後には「克服可能」となることを期待したい、とのメッセージを伝えた。また、今年3月に発生した東日本大震災を受けて、緊急シンポジウム「災害時の糖尿病医療」も開かれた。被災地での糖尿病医療や被災地外からの支援活動、阪神・淡路大震災などの過去の災害における経験が報告され、今後の災害時における糖尿病医療のあり方について討議された。その他、「IDFの新しい2型糖尿病の治療アルゴリズム アジアへの適応は」、「J-DOIT1,2,3,JDCPからのメッセージ」、「インクレチン関連薬の臨床」といった数多くのシンポジウムが開催された。多くのセッションが目白押しではあったが、今回、ケアネットでは特に「インクレチン関連薬」に注目した。昨年度のインクレチン関連薬発売ラッシュ以降、初の学会を迎えたことから、「インクレチン関連薬」にフォーカスしてレポートする。【注目を集めたインクレチン関連薬】昨年度は、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬の発売が相次ぎ、糖尿病治療の歴史にとっても大きな変革の年となった。DPP-4阻害薬では、2009年12月のシタグリプチン(商品名:ジャヌビア/グラクティブ)を皮切りに、2010年にビルダグリプチン(商品名:エクア)、アログリプチン(商品名:ネシーナ)が発売、GLP-1受容体作動薬は、リラグルチド(商品名:ビクトーザ)とエキセナチド(商品名:バイエッタ)が医療現場に登場した。2011年には各薬剤の14日間の投薬期間制限が順次解除されるため、長期投与が可能となり、普及の勢いはさらに増すだろう。本学会でも、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬を総称する「インクレチン関連薬」が注目を集め、シンポジウム、一般講演、ポスターなどで多くの臨床成績が発表された。【効果と安全性、薬剤間の明確な差は?】発表されたデータは、ほとんどが各薬剤の「有効性」と「安全性」に関するものであった。「既存薬からインクレチン関連薬への切り替えで、どの程度血糖値が低下するのか?本当に低血糖は起こさないのか?」という臨床現場の疑問が浮き彫りになった形だ。その結果、多くのデータで各薬剤の有効性と安全性が明らかになった。しかし、これはすべての薬剤で同様の結果が報告されており、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬との間での差はあるものの、同効薬群間での差は大きくはない。どの薬剤を使用しても一定の効果は得られそうだ。【DPP-4阻害薬市場の激化は必至】DPP-4阻害薬に関する各薬剤別の発表データについてみてみると、やはり先行して発売されたシタグリプチンを用いた報告症例が多い印象であった。ビルダグリプチン、アログリプチンについては適応上、透析を行うような重症腎機能障害例にも投与が可能(※ただし慎重投与)ということで、透析患者や腎機能低下症例への投与例の報告があった。ただし、これらはあくまで一部のデータであり、実際の臨床現場において薬剤の使い分けに関する明確な指針や投与患者像を確立することは難しいだろう。DPP-4阻害薬は期待が高いだけに、数多くの種類が市場に出回ることになる。どれを選択するかは現場の医師の手に委ねられることになるだろう。【今後必要となるのは、効果不応例を早期に見分ける指標】とはいえ、すべての患者にインクレチン関連薬が効果を示すというわけではなく、著効例と不応例に分かれる傾向が多くの報告で挙げられた。当然、どのような患者に効果があるのか(最適患者像の探索)、そして不応例を早期に見分けるにはどうすべきか(検査指標とそのカットオフ値)にも注目が集まった。その点に着目した解析結果も発表されたものの、サンプル数が少なく、発表により結果のばらつきがあり、多くの演題で「今後の長期的検討が必要」、「多くの症例蓄積が必要」というまとめに終わった。来年以降、各薬剤の著効例、不応例のそれぞれの臨床的特徴を検討したデータが増え、投与患者像の明確化も進むのではないかと期待される。【インスリンからの切り替え例の報告も】演題の中には、既存経口薬以外にも、BOTやインスリン療法など、すでにインスリン注射を導入している患者からインクレチン関連薬へ切り替える例も報告された。当然、インスリン単位数の少ない症例がメインではあるが、インスリン療法で糖毒性をいったん解除することで内因性の基礎インスリン分泌能の回復が期待でき、その後のインクレチン関連薬の切り替えも奏功する可能性が示唆された。切り替えが奏功した例の特徴としては、糖尿病の罹病期間が短く、合併症が少なく、食後のインスリン追加分泌が保たれたインスリン単位の少ない症例、などが挙げられた。インスリン療法からの切り替えがうまくいけば、患者にとっても朗報である。また、インクレチン関連薬による治療の可能性も広がるだろう。切り替え時の高血糖などに留意は必要だが、安全性に配慮しながら、今後、治療が確立されることを期待したい。【まとめ】今回、多くのインクレチン関連薬の臨床データが発表された。今後さらにDPP-4阻害薬の種類が増える(※アナグリプチン、テネリグリプチン、リナグリプチン、サクサグリプチンが現在フェーズⅢの段階にある)ことを考えると、医師側は各患者にあった薬剤を医師自身の基準で選択していくことが求められそうだ。インクレチン関連薬の発売を契機に、糖尿病治療は大きく変わり始めた。糖尿病治療の目標が、細小血管および大血管障害の発症・進展の阻止とその後の患者のQOLや寿命の確保にある以上、インクレチン関連薬をベースとした早期のエビデンス構築にも期待がかかる。10年後の「克服可能」な糖尿病治療に向け、インクレチン関連薬の今後の動きに注目したい。(ケアネット 佐藤寿美)

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