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デュピルマブ、水疱性類天疱瘡の適応追加/サノフィ

 サノフィは2026年3月23日、水疱性類天疱瘡に対するデュピルマブ(商品名:デュピクセント)の製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。水疱性類天疱瘡は、自己免疫性の表皮下水疱を生じるまれな疾患で、本邦では指定難病とされている。全身に強い痒みや水疱、紅斑、びらん、痛みを伴い、再発を繰り返すため、日常生活に深刻な影響を及ぼす。主に高齢者に発症し、標準治療にはステロイド薬や免疫抑制薬が使用されるが、長期使用による合併症や副作用への影響が指摘されている。 今回の承認は、中等症~重症の成人水疱性類天疱瘡患者106例を対象とした第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(ADEPT試験)の結果に基づいている。被験者はプラセボ群とデュピルマブ群に1:1で割り付けられ、治療開始時より経口ステロイド薬(OCS)を基礎治療として投与された。治療期間中は、すべての被験者について治験実施計画書で定義したOCS減量レジメンに従い、デュピクセント投与開始後6~16週にかけて疾患活動性が2週間コントロールされていればOCSの漸減を進めた。 主要評価項目である36週時に寛解持続を達成した患者の割合は、デュピルマブ群は18.2%、プラセボ群は4.0%であった(p=0.0250)。寛解持続の達成は、16週までに完全寛解かつOCS漸減を完了し、36週までの投与期間中に再燃が生じることなく、レスキュー療法を必要としないことと定義された。安全性データは、これまでデュピルマブで確立されている安全性プロファイルと同様であった。なお、水疱性類天疱瘡の適応症について、2025年3月にデュピルマブは希少疾病用医薬品に指定されている。<製品概要> ※下線は変更箇所商品名:デュピクセント皮下注300mgペン/同300mgシリンジ、デュピクセント皮下注200mgペン/同200mgシリンジ一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:<300mgペン、300mgシリンジ>既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患・アトピー性皮膚炎注)・結節性痒疹・特発性の慢性蕁麻疹・中等症から重症の水疱性類天疱瘡・気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)注)・慢性閉塞性肺疾患(既存治療で効果不十分な患者に限る)注)・鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)注)<200mgペン、200mgシリンジ>既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患・アトピー性皮膚炎注)・特発性の慢性蕁麻疹・気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)注)注)適使用推進ガイドライン対象用法及び用量(抜粋):〈水疱性類天疱瘡〉通常、成人にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する。

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高血圧の修正可能なリスク因子、日本人で最も影響が大きいのは?

 高血圧の1次予防において、修正可能なリスク因子の特定と優先順位付けが重要であるが、日本人における高血圧症の発症に関する修正可能なリスク因子の人口寄与割合(PAF)に関するデータが不足している。そこで、大規模データベースを用いた検討が実施され、日本人集団における高血圧症の発症で、人口寄与が最も大きい修正可能なリスク因子は、肥満であることが示された。本研究結果は、Hypertension Research誌オンライン版2026年3月4日号で、責任著者の金子 英弘氏(東京大学循環器内科)らによって報告された。 本研究は、DeSCデータベースを用いた後ろ向きコホート研究である。解析対象は、ベースライン時に高血圧症の既往がない106万9,948人(年齢中央値56歳、男性43.7%)とした。修正可能なリスク因子(肥満、睡眠障害、現喫煙、脂質異常症、習慣的飲酒、身体活動不足、糖尿病)と高血圧症の発症との関連について、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。また、それぞれの因子のPAFを算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象の年齢中央値は56歳、男性の割合は43.7%であった。・追跡期間中央値は3.64年で、11万6,690件の高血圧症の発症が記録された(全体の発症率は1万人年当たり290.8)。・多変量解析の結果、評価したすべての修正可能リスク因子は高血圧症の発症と有意に関連していた。各因子に関するハザード比、95%信頼区間は以下のとおり。 肥満:1.35、1.33~1.37 現喫煙:1.23、1.21~1.25 糖尿病:1.22、1.19~1.25 睡眠障害:1.15、1.13~1.16 習慣的飲酒:1.10、1.08~1.12 脂質異常症:1.05、1.04~1.06 身体活動不足:1.05、1.04~1.06・対象集団全体におけるPAFが最も高かったのは肥満であった。各修正可能なリスク因子のPAFは以下のとおり。 肥満:6.36% 睡眠障害:4.11% 現喫煙:3.39% 脂質異常症:2.74% 習慣的飲酒:2.10% 身体活動不足:1.93% 糖尿病:1.55%・肥満のPAFは年齢層が下がるほど高く、40歳未満で15.10%、40~64歳で7.93%、65歳以上で3.70%であった。・肥満のPAFは女性では5.02%であったのに対し、男性では7.93%と高値を示した。・評価したすべての修正可能リスク因子を総合したPAFは、40歳未満で31.39%、40~64歳で24.60%、65歳以上では12.22%であった。・性別でみると、すべての修正可能なリスク因子を総合したPAFは、女性が14.45%であったのに対し、男性では26.37%と高かった。 本研究結果について、著者らは「日本人集団における高血圧症の発症で、人口寄与が最も大きい修正可能なリスク因子は、肥満であることが示された。また、修正可能なリスク因子の影響は、高齢者よりも若年・中年者、女性よりも男性において大きかった」と述べた。また「高血圧の生涯負担を軽減するためには、包括的な生活習慣への介入が重要であり、とくに若年・中年者、男性を主な対象とし、肥満対策に重点を置くべきである」としている。

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COPDの2年以内の呼吸器関連入院リスクを予測するモデルを開発/BMJ

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の管理では、重症増悪や入院のリスクが最も高い患者を特定して医療資源を集中的に投入するとともに、リスクの層別化に基づく管理の必要性が指摘されている。また、国際的なガイドラインは、プライマリケア医が使用できる正確かつ実用的な予後スコアの必要性を強く主張している。英国・バーミンガム大学のRachel E. Jordan氏らは、COPD患者における、2年以内の呼吸器関連の入院のリスクを予測するための予後スコア(BLISSスコア)を開発し、その有効性を検証した。研究の成果は、BMJ誌2026年3月5日号に掲載された。外的妥当性を2つのコホートで検証 予測モデル(BLISSスコア)の開発と内的妥当性の検証には、プライマリケアにおける新規および既存のCOPD患者から成るBirmingham Lung Improvement Studies(BLISS)コホート(最終的なモデル構築の対象は1,894例、このうち253例[13.4%]が入院)のデータを用いた。 また、外的妥当性の検証には次の2つのコホートのデータを使用した。(1)Evaluation of COPD Longitudinally to Identify Predictive Surrogate Endpoints(ECLIPSE)の国際的コホート(中等症~最重症COPD患者1,749例、このうち419例[24.0%]が入院)、(2)Hospital Episode Statisticsと関連付けた英国のプライマリケアのClinical Practice Research Datalink(CPRD)Aurumデータベースに登録されたコホート(COPD患者2万7,340例、このうち3,922例[14.3%]が入院)。 主要アウトカムは、コホート登録から2年以内の急性の呼吸器関連疾患による1回以上の入院、および入院を要するCOPDの重度増悪とした。23の予測因子候補(人口統計学的因子4項目、COPD特異的リスク因子7項目、その他のリスク因子12項目)から適切な因子を選出して予測モデルを開発した。6つの因子から成る予測スコアを確立 2年以内の呼吸器関連入院のリスクを推定するためのBLISSスコアを構成する項目として、23の候補の中から6つの予測因子(年齢、COPDアセスメントテスト[CAT]スコア、過去12ヵ月間の呼吸器関連入院の有無、BMI、糖尿病、対標準1秒量[%FEV1])を採用した。 BLISSスコアは、内的妥当性(過剰適合[overfitting]による増分[optimism]を補正済みのC統計量0.73、95%信頼区間[CI]:0.70~0.77)および外的妥当性(ECLIPSE[C=0.73、95%CI:0.71~0.76]、CPRD[C=0.71、95%CI:0.70~0.72])において同程度の識別性能(discrimination performance)を示した。 また、このスコアの較正性能(calibration performance)は、BLISS(較正勾配[calibration slope]=0.87、95%CI:0.73~1.02)、CPRD(0.89、95%CI:0.85~0.93)、ECLIPSE(0.92、95%CI:0.79~1.05)の各コホートのいずれにおいても良好であった。他のスコアに比べ性能が優れる CPRDコホートにおける層別解析では、異なる集団のサブグループにおいても、BLISSスコアの頑健性が示された。さらに、net benefit分析(臨床的効用性)では、ECLIPSEコホートにおけるBLISSスコアは、Bertensスコア(重度増悪の予測)(C=0.68[95%CI:0.65~0.71]、較正勾配:0.68[95%CI:0.56~0.81])に対する優越性が示された。 著者は、「BLISSスコアは、異なる医療環境や地理的地域に属し、COPDの重症度も異なる患者を含むコホートにおいて、2年以内の呼吸器関連の入院リスクを個別に推定するうえで良好な性能を示した」「採用した6つの変数のうち、4つはプライマリケアの診療記録から容易に入手可能であり、残りの2つは部分的にしか入手できないものの収集は簡単である」「これは、入院リスクを予測するために最も精密な手法で開発された予後スコアであり、プライマリケアの現場におけるCOPD患者に広く適用可能である」としている。

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ロジスティック回帰分析 その3【「実践的」臨床研究入門】第62回

ロジスティック回帰モデルによる交絡因子調整の実際前回までロジスティック回帰モデルの基本的な考え方を説明しました。今回は実際に仮想データ・セットを用いて、EZR(Easy R)を使用したロジスティック回帰モデルによる交絡因子の調整方法について解説します。はじめに、以下の手順で仮想データ・セットをEZRにインポートします。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」次にメニューバーから「統計解析」→「名義変数の解析」→「二値変数に対する多変量解析(ロジスティック回帰)」を選択すると、下図のポップアップウィンドウが開きます。画像を拡大するモデル名には「Logistic_treat」などと入力モデル式は以下のように選択します(連載第60回参照)。目的変数(左辺)treat(厳格低たんぱく食の遵守の有無)説明変数(右辺)下記のtreat以外のすべての説明変数(交絡因子)を「+」でつないで選択oage(年齢)、sex(性別)、dm(糖尿病の有無)、sbp(血圧)、eGFR(ベースラインeGFR)、Loge_UP(蛋白尿定量_対数変換)、albumin(血清アルブミン値)、hemoglobin(ヘモグロビン値)oage+sex+dm+sbp+eGFR+Loge_UP+albumin+hemoglobin「OK」をクリックすると、EZRのRコマンダー出力ウィンドウに下記のコードが表示されます。Logistic_treat

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65歳を過ぎてからの予防でも遅くはない! Lancetの14の危険因子を読み解く(その2)【外来で役立つ!認知症Topics】第39回

前回に続き、今回もLancet誌が掲げる認知症の修正可能な危険因子(リスクファクター)を扱う1)。当初は、前回解説した「難聴」と「高LDLコレステロール(LDL-C)」以外の12因子について個々に述べる予定であったが、その前に筆者自身、見落としがあると反省している。改めて注意喚起すべきは、これらはあくまで「認知症」の危険因子であって、必ずしも「アルツハイマー病(AD)」のみを指すものではないことだ。認知症の危険因子は70以上に及ぶとよく言われるが、示された14の危険因子がすべての認知症原因疾患(AD、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、その他)に当てはまるとは考え難い。一方で世界的に見ても、認知症の3分の2はADが占める。だから実際には、広く認知症全般に対する危険因子を論じているはずが、無意識に「ADの危険因子」として捉えてしまいがちだ。実際に、関係論文を読み込んでみても、こうした分野の知見の大部分はADに関するものであり、それ以外では血管性認知症とレビー小体型認知症に関するものがわずかにあるに過ぎない。たとえば血管性認知症については高血圧と糖尿病などが該当し、レビー小体型認知症なら大気汚染のPM2.5だろうか。いずれにせよ、認知症の危険因子を語るうえでは、ADに関わるものが主体になっている。こうした背景を踏まえ、危険因子とその対策を考えるうえで、基本でありながら見失いがちな「3つの視点」を整理しておきたい。ライフステージに沿った病理の段階を理解するまずLancetによる報告の1つの特徴は、危険因子を年代別に分けていることである。筆者は、これが「若年期・中年期・老年期」の3段階に分けられているのは、ADの発症から進行という病理の段階に沿って危険因子を説明したいからではないかと思う。その段階とは、「発病以前・発病の芽生え・発病前夜」である。1)若年期(発病以前):若年期の教育が、脳の神経回路や「認知予備能」という脳の骨格を作る。つまり大脳の基礎力がこの時期に形成されるわけだ。そして後年、これを維持し育てていくことが予防につながると考えればいいだろう。2)中年期(発病の芽生え):中年期は脳内でアミロイドの沈着が始まるという意味で、AD脳の芽生えの時期だと考えられる。この時期の危険因子では、通称「悪玉コレステロール」のLDL-Cや難聴、糖尿病などの疾病や障害が主体である。これらは中年期に発症しやすくAD病理の悪化を促進させるため、この時期に「悪の芽」を摘んでおくことが重要だ。3)老年期(発症前夜):老年期の危険因子である孤独や大気汚染、視力低下などは、発症の準備がほぼ整ったステージにおける「とどめの一押し」になりうる。これら3つの危険因子は、いずれもアミロイド仮説との直接的な関係は薄いかもしれないが、むしろ脳の衰弱ぶりを露呈させてしまう「最後の悪役」とみなすべきだろう。こうした要因はこれら3つに限らない。たとえば、せん妄や大腿骨頸部骨折、さらに入院など生活の場の変化といった要因もまた、認知症発症のとどめの一押しだったと経験された読者も多いだろう。画像を拡大する「疾患・障害」と「生活・環境」に分けて考える14の危険因子は、大きく2つのグループに分類できる。一つは、「疾患・障害リスク」である。糖尿病やLDL-Cが代表的で、これらは従来のアミロイド仮説を軸に、そこから派生した慢性炎症や抗酸化、また血管脳関門の観点から説明しやすい。もう一つは、「生活・環境リスク」だ。アミロイド仮説では説明し難いものである。上記の「教育」のように、若年期に基礎が作られた脳内ネットワーク・認知予備能といった別の考え方で説明される傾向がある。このように分類する理由を、次のように換言することもできるだろう。つまり前者の危険因子に注目することで、ADという病気の進行プロセスをくい止めようという表街道の予防法があることがわかる。また後者へ注目すれば、健常な神経細胞を増やす、あるいは減少させないという狙いの予防法もあるとわかる。前者が表街道なら、後者は側面からの援護射撃と例えられるだろう。65歳を過ぎてからの「予防」の留意点以上を踏まえて、65歳以上で現在は認知症ではない人を想定して、危険因子と予防を説明する際の留意点を述べたい。まず伝えたいのは、「若年期・中年期の危険因子は、老年期に入ったら無関係になるわけではない」ということだ。たとえば、若い頃の教育が不十分だったとしても、「生涯学習」の言葉どおり、人生を通して学び続ける姿勢は脳の維持につながるはずだ。この考え方は、中年期の危険因子の大半、とくに糖尿病や高血圧といった生活習慣病の管理にも当てはまる。一方で、こうした「老年期からの予防でも遅くはない」という考え方では難しい危険因子もある。その代表は「頭部外傷」だろう。というのは、過去の頭部外傷がもたらした脳へのダメージを癒したり進行を阻止させたりする確たる方法は、今のところなさそうだからである。実際、これまで調べた範囲では、頭部外傷という危険因子への対応の多くは、これからの転倒・転落を防ぐための方法であった。再発防止がポイントという意味で、「うつ病」への対応もそれに似ているかもしれない。最後に、老年期特有の因子として、「孤独」「大気汚染」「視力低下」がある。具体的には次回述べるが、これらは上記の「過去の蓄積」の危険因子とは異なり、「今現在の問題」である。実際の対応がそう容易だとも思われないが、これらへの備えを一念発起して始めるのに遅すぎるということはない。今からでも着手できるという意味で、最も重要かもしれない。1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.

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第311回 妊娠中のつわりとの関連で知られるホルモンが飲み過ぎを防ぐらしい

妊娠中のつわりとの関連で知られるホルモンのGDF15が、酒量の制限にどうやら携わることがドイツでのビール祭り(オクトーバーフェスト)の参加者を含む検討で示されました1,2)。GDF15は吐き気や食べ物を嫌がることに携わる脳領域(最後野)に限って発現するタンパク質複合体に結合します。妊娠初期のGDF15急増と関わる吐き気は、慣れない食物や傷んだ食物を食べないようにして胎児に害が及ばないようにする働きがあると考えられています。GDF15は妊娠していない人にもあり、肥満の人に多いことが示されています。栄養状態、代謝ホルモン、体重が変化しても一定のままであるものの、げっ歯類での検討で摂食抑制効果が示されています。それゆえGDF15は肥満治療に役立ちそうであり、実際、太っている成人の摂食を減らす効果が長時間作動型GDF15受容体作動薬LY3463251の第I相試験で確認されています3)。ただし取るに足る体重低下はあいにく認められませんでした。今や世界中に広まる西洋食での摂取エネルギーの5~10%を占めるアルコールは、多臓器や発達中の胎児に害を及ぼしうる毒物でもあります。妊婦に吐き気を催させる働きに示されるように、GDF15は毒物感知に携わり、その摂取を止めさせ、再びその毒物が口に入らないようにする役割も担うようです。ゆえに毒物の側面をもつアルコールはGDF15によって制御されているかもしれません。その予想を裏付ける結果として、アルコールでGDF15生成が増えることが肝細胞やマウスでの検討で示されています4)。ヒトでも同様かもしれず、デンマークでの野外音楽フェスティバル(ロスキレ・フェスティバル)に参加して一週間大量に飲酒した若い男性の血中のGDF15上昇が認められています5)。その試験に携わった同国のコペンハーゲン大学の内分泌学者Matthew Gillum氏らは、GDF15が飲酒で作られてアルコール飲料の欲求を減らすように働くと仮説を立ててさらに調べてみました。まずは12人の医学部生に協力してもらい、5杯分に相当するアルコール(60g)を1回きり摂取してもらいました。するとGDF15血中濃度は上昇せずむしろ低下しました。一方、オクトーバーフェストで過飲を続けた3人のGDF15は上昇傾向を示しました。3人は連続する3日間に各々が1日に1Lのジョッキおよそ7杯(3人合わせて平均22杯)のビールを飲んでいます。アルコール依存患者のGDF15値も高く、どうやらGDF15の上昇は短期ではなく続けざまの過飲で生じるようです。GDF15の上昇にどんな働きがあるかといえば、Gillum氏の仮説のとおり、飲み過ぎの抑制に一役買っているようです。英国の50万人超を追跡しているUK Biobankの遺伝情報と生活習慣の記録を解析したところ、GDF15が結合する受容体の一部のGFRALを損なわせる変異を有する人は、そうでない人に比べてアルコールをより多く摂取していました。また、GDF15はマウスの飲酒を減らしました。GDF15が携わる経路の増強がアルコール乱用やアルコール関連肝疾患の治療に役立つかどうかのさらなる検討を今回の結果は後押しするでしょう。アルコール依存症患者は生来のGDF15がすでにだいぶ上昇していることからGDF15経路を鈍くする抵抗性があるのかもしれず、GDF15経路の別口でのさらなる活性化が必要かもしれません。とはいうものの、2型糖尿病患者のインスリン抵抗性をインスリンの投与で解決できるように、内因性GDF15が過剰でもその働きをさらに高めてGDF15感受性低下を克服できる望みはあると著者は言っています。参考1)Justesen JM, et al. bioRxiv. 2026 Mar 9. [Epub ahead of print]2)Hormone linked to morning sickness may help reduce alcohol intake / Science3)Benichou O, et al. Cell Metab. 2023;35:274-286.4)Chung HK, et al. Sci Rep. 2017;7:17238.5)Demant M, et al. Eur J Endocrinol. 2021;185:23-32.

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夜食を控えると心臓にメリットがもたらされる

 1日の終わりの習慣を少し変えるだけで、心臓の健康上のメリットを得られることが、新たな研究で明らかになった。就寝前の数時間、食事を控えるだけでよく、摂取カロリーは減らさなくても良いという。 この研究は、米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部睡眠医学科神経学研究室のDaniela Grimaldi氏らの研究によるもので、詳細は「Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology」に2月12日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「体の自然な覚醒・睡眠リズムに合わせて絶食時間を調整することで、心臓、代謝、睡眠の状態を改善できる。これらは全て、心血管の健康を守るために協調して働いている」と解説している。 重要な時間帯は、就寝前の3時間だという。眠りに就く3時間前から照明を抑えて食事を控えると、睡眠中、そして翌日1日を通して、心血管代謝に関わる指標が目に見えるほど改善するとのことだ。注目すべきことは、この研究参加者は摂取カロリーを減らしたわけではなく、単に夜間の食事の時間帯を変更しただけだったという点だ。 論文の上席著者である同大学医学部概日リズム・睡眠医学センターのPhyllis Zee氏は、「時間制限食の生理学的効果を得るには、『何をどれだけ食べるか』だけでなく、『睡眠との関係でいつ食べるか』も重要だ」と話す。なお、時間制限食は、心血管代謝関連マーカーを改善し、時には古くから行われているカロリー制限に匹敵する効果をもたらす可能性があることが研究で示唆されており、近年ますます人気が高まっている。 心血管代謝関連マーカーの数値が良くないと、心臓病や2型糖尿病、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)などの慢性疾患のリスクが上昇する。時間制限食がそれを抑制する可能性が示唆されているが、これまでの時間制限食に関する研究の多くは、代謝調節の鍵となる睡眠のタイミングと絶食のタイミングが一致しているか否かを考慮せずに、どれだけ長く断食するかということに焦点を当ててきていた。 Grimaldi氏らの研究には、36~75歳で肥満・過体重に該当する39人が参加した。参加者全体を2群に分け、7週間半にわたり、介入群は夜間に13~16時間絶食し、対照群は通常通りに食事を続けた。両群ともに、就寝の3時間前に照明を抑えることとした。 解析の結果、介入群は、心血管の健康状態を表す指標に明らかな改善が認められた。例えば、夜間の血圧は3.5%低下し、心拍数も5%低下していた。研究者らは、「これらの変化は、日中の活動中に心拍数と血圧が上昇し、夜間の休息中にそれらが低下するという、より健康的な変化のパターンを反映している。昼夜のメリハリがはっきりするということは、心血管の健康状態の改善と関連している」と述べている。 さらに、介入群では、日中の血糖状態も良好となった。研究者らによると、この変化は「ブドウ糖が体内に入ると、膵臓はより効果的に反応してインスリンが分泌され、血糖値が安定することを示唆している」という。 論文では、「睡眠のタイミングに合わせた時間制限食というこのアプローチは、心血管代謝機能を改善する有望な可能性を秘めた、実用性の高い新たなライフスタイル介入と言える」と結論付けている。

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血糖や肥満、虚血管理を阻むリスク記憶とは、AGEから紐解く

第26回日本抗加齢医学会総会が2026年6月26日(金)~28日(日)の3日間、パシフィコ横浜ノースにて開催される。今回のテーマは『「人新世」のアンチエイジング 食事、運動、睡眠、美容による統合医療』。大会長である山岸 昌一氏(昭和医科大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門 主任教授)が長年の研究で培ってきた糖尿病学と老年医学の関係、本総会のテーマの意味、大会長が力を入れる演題について話を聞いた。「人新世(じんしんせい)」とはまず、今大会のテーマである「人新世」についてお話ししましょう。人新世とは、新しく設定された地質学的な時代区分のことで、人間の活動が地球環境や生態系に多大な影響を及ぼす「現代」を示す言葉です。この時代におけるアンチエイジングを私なりに解釈いたしますと、単に若返りを求めるのではなく、持続可能な地球環境との共生や社会との調和を目指し、究極的な統合医療や健康の探求を目指すことだと思います。とりわけ、食事・運動・睡眠・美容は個人の健康を支える最も基本的な要素であると同時に、医療資源として科学的に評価・活用されるべき対象であるとも考えています。そこで、本大会ではこれらを統合医療の視点から捉え、予防・診断・治療、生活支援にまでつなぐ多角的な議論を展開していきたいと考えています。なお、このテーマに多くの先生が賛同してくださり、過去8年間で最多数の一般演題を応募いただいたようです。糖化×老化、たどり着いた30年の軌跡私の専門とする糖尿病は、患者さんの健康寿命が健康な方と比べて10~15年短く、死亡リスクは1.8倍、さらに老化が加速しやすい疾患であることが過去の研究1)から明らかになっています。また、2024年に米国心臓協会(AHA)が提唱したLife’s Essential 8の中でも糖尿病の有無が寿命を大きく左右することが明らかになってきました。では、なぜ糖尿病が実寿命や健康寿命に悪影響を及ぼすのでしょうか? そのメカニズムにはどうやら“記憶”が関与しているようです。私が医師になった37年前、糖尿病の合併症として教科書に挙げられていたのは、大小血管合併症、感染症、皮膚病くらいでした。しかし、多くの患者さんの診療に当たっていると、認知症やがん、骨粗鬆症などの老年病も糖尿病で合併しやすいことに気が付きました。そこで、糖尿病に一番特徴的な血管合併症である網膜症の病態生理を解明していくことで、最終的には「なぜ、糖尿病で老化が進むのか?」といった課題を明らかにすることができるのではないかと思ったのです。糖尿病網膜症では、内皮細胞の外側を取り囲む周皮細胞が選択的に死滅し、病期が進行していきます。そして、この周皮細胞の消失は、糖尿病でしか観察されません。しかしながら、周皮細胞は、短期間の高血糖の曝露ではなかなか死滅しません。長期間、高血糖に曝露されて初めて周皮細胞は死んでいきます。その後の研究で、年余にわたる高血糖により生体内タンパク質が糖化、変性を受け、AGE(Advanced Glycation End Products、終末糖化産物)と呼ばれる老化物質が体に蓄積していくことで初めて周皮細胞が死んでいくことがわかりました(図1)。ほかの研究者らは、長い年月にわたって糖尿病患者の経過を見ていく中で、過去の高血糖の曝露歴がその後の糖尿病合併症の進展を左右することを見いだしました。そして、現在の血糖コントロールが良好でも、過去長期間にわたり高血糖に曝露していたような患者は、臓器合併症の進展リスクが高く治療が難渋しやすいことから、この現象は「高血糖の記憶(Metabolic Memory)」と呼ばれるようになり、“過去のツケ”のごとく体内に残存する物質、AGEが「高血糖の記憶」に関わることが明らかになっていったのです2)。その後、約20年前に世界で初めて血液中からいろいろなタイプのAGEを簡便に測定する手段を開発することに成功しました。(図1)AGEの蓄積過程画像を拡大する悪い過去を記憶するAGE、どうやって除去する?AGEは「タンパク質と糖が加熱されてできた物質」の総称で、老化を進める原因物質とされています。これらは高血糖状態の体内で作られたり、食べ物から体内に入ったりすることで蓄積が進み、シワやたるみの原因、動脈硬化や心血管疾患の発症リスクの上昇、骨粗鬆症や寝たきりへの発展、大腸がん、乳がんなどのがん発症リスクとの関連も報告されています3)。とくにAGEが問題とされるのは、血糖値が基準値に戻ったとしても、AGE化して一度変性したタンパク質はなかなか元に戻らないこと、加齢に伴いこの蓄積が加速するということです(図2)。(図2)画像を拡大するAGEのうち3分の1は外因性で食事由来によるものです。AGEはどんな食品にも含まれているので、日頃の予防法として重要なのは、調理法のアドバイスです。たとえば、焼き鳥とかステーキなどは茶色の焼き目が付きますが、その部分がAGEなのです。同じ食材でも低温調理などのように調理法を変えるだけでAGE摂取を抑えることができます。私の診察では、「(肉を食べる場合は)焼くよりも茹でるのはどうですか?」といった提案をしています。このように同じ食事でも、調理法や付け合わせを変えることによってAGEの生成量を低減できることが知られています。この食事に由来するAGEに関しては、米国・マウントサイナイ医科大学教授のJaime Uribarri氏をお招きし、最先端のデータをご解説いただく予定です。また、食事由来AGEに予防法があるように、加齢に伴い蓄積するAGEの制御も可能とされ、老化のプロセスとして介入できれば多くの老年病を包括的に制御できると考えられます。私は、AGEを体から除去するAGEアプタマーと呼ばれる医薬品の開発に動物モデルで成功しています。そこで、本大会ではAGEに焦点を当てつつ、老科学仮説の概念に基づきながら、食事・運動・睡眠などの観点からもアンチエイジングを考えていきたいと思っています(図3)。(図3)画像を拡大する会長企画、5つのシンポジウム今回の総会では、認知症、フレイル、睡眠、腸内細菌などの講演が組まれておりますが、AGEに関連のある記憶という概念からもシンポジウムを設定いたしました。新たな抗加齢医学の観点を理解いただくためにも、5つの会長企画シンポジウムにぜひご注目ください。(1)「リスク記憶の分子メカニズム」リスク記憶について(低酸素の記憶、肥満の記憶、コレステロールの記憶)(2)老化治療の最前線老化細胞除去法「セノリシス」や老化細胞阻害薬などの最前線を紹介(3)女性の生涯の健康課題に寄り添う―基礎的研究から支援体制の構築まで―女性の生涯の健康課題に寄り添う治療や研究の最前線について解説(4)AI技術人工知能が抗加齢医学に果たす役割について、診断、サポート、遠隔診療・治療、創薬などの切り口で講演を予定(5)インナービューティーを目指した統合医療身体の内側から健康を担保するため、統合医療の観点からヨガやピラティスをテーマに講演を予定このほか、中野 京子氏(作家・ドイツ文学者)による特別講演「“美”の裏に潜む真実―芸術と老いをめぐる想像力」と題し、同氏の代表著書『怖い絵』から人の心と身体を捉えることで新たなアンチエイジングの発想についてお話しいただく予定です。また、鍋島 陽一氏(京都大学医学研究科健康加齢医学講座)による招待講演では、「Klotho(老化ホルモン)の研究の総括と新たな展望(仮)」と題し、抗加齢医学の最新データをご紹介いただく予定です。一人ひとりがその人らしく年を重ねられる健やかな社会の実現に向けて、本大会が皆さまと共に考える場となることを願っています。一人でも多くの皆さまのご参加をお待ちしております。参考1)Seshasai, S. R. K, et al. N Engl J Med. 2011;364:829-841.2)Yamagishi S, et al. J Diabetes. 2017;9:141-148.3)Si C, et al. Food Funct. 2024;15:1553-1561.

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日本のインスリン治療、非インスリン薬併用が20年で2倍に

 日本におけるインスリン療法の実態とその変遷を解析した大規模リアルワールド研究「Insulin JP2DB Study」の結果が報告された。日本では近年、インスリンと非インスリン薬の併用が増加している。本研究では、その割合が約20年間で大きく増加していることが示された。京都府立医科大学の福井 道明氏らによる本研究はDiabetes Therapy誌オンライン版2026年1月27日号に掲載された。 日本の医療データベース(JP2DB)を用いて、インスリン治療の導入パターンおよび併用薬の使用動向を後ろ向きに解析した。解析は、年次ごとの治療動向を評価する「連続横断解析」と、インスリン導入後の治療法の推移を追跡(2型糖尿病は9ヵ月、1型糖尿病は21ヵ月)した「縦断コホート解析」の2つのデザインで実施された。 インスリン治療法は、bolus(追加インスリン)、basal(基礎インスリン)、premixed(混合型インスリン)、basal-bolus(強化インスリン)などに分類した。さらにDPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬などの非インスリン血糖降下薬の併用状況を評価した。 主な結果は以下のとおり。・連続横断解析では、4,953例(2型糖尿病4,693例、1型糖尿病260例)が対象となった。2型糖尿病においてインスリン治療と非インスリン薬を併用する割合は、2002年の31%から2021年には61%へと倍増した。とくに2014年以降はインスリン使用者の30%以上がDPP-4阻害薬を併用した。SGLT2阻害薬の併用率は2013年の0%から2021年には20.2%に増加した。2018年以降は、1型糖尿病でも非インスリン薬併用の増加傾向が確認された。・縦断コホート解析では、2万7,492例(2型糖尿病2万7,031例、1型糖尿病461例)が対象となった。2型糖尿病では、入院中にインスリン療法を開始した患者は、導入時は追加インスリンが70.8%と高かったが、9ヵ月後には17.3%まで低下した。その代わりに基礎インスリン(6.3%→31.1%)、強化インスリン(17.0%→23.4%)が増加した。外来で開始した場合、導入時は基礎インスリンが最も多く、病院では53.9%、診療所では58.9%を占めた。・1型糖尿病患者では、入院時にインスリン療法を開始した患者の57.9%が追加インスリンを投与されたが、1ヵ月後には強化インスリンが主流(85.0%)となった。外来で開始した場合は、研究期間を通じて強化インスリンが主流であった。 著者らは「2型糖尿病では、導入環境によって治療法に違いが見られた。入院中は高血糖是正を目的に強化インスリンが行われることが多いが、時間の経過とともに退院後の外来管理を想定した治療法へ移行する傾向が示された。外来では低血糖リスクや治療負担を考慮し、初回治療は比較的簡便な基礎インスリンから開始する戦略が一般的であることが示唆された。一方、1型糖尿病では、入院導入例では約6割が追加インスリンで開始されたが、1ヵ月後には85.0%が強化インスリンへ移行していた。外来導入例でも研究期間を通じて強化インスリンが主流であり、導入環境による違いが少なかった。さらに、インスリン治療患者における非インスリン薬併用は年々増加しており、本試験は日本の糖尿病治療が多剤併用戦略へと移行していることを示す結果である」とまとめている。

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日本の健康アウトカムに地域差、「へき地度」で示された疾患別死亡率との関連

 日本では地域によって医療資源や人口構成が異なり、健康アウトカムの差が指摘されている。今回、こうした地域特性を定量的に評価する指標「へき地度(Rurality Index for Japan:RIJ)」を用いた全国規模の研究で、RIJが高い地域ほど脳血管疾患の死亡率や男性の自死率が高い傾向が示された。研究は、横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻の金子惇氏、山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座の池田登顕氏によるもので、詳細は1月26日付で「BMJ Open」に掲載された。 世界的に都市と地方では健康状態や医療アクセスの格差が報告されているが、日本では「へき地性(rurality)」の定義や評価方法が研究ごとに異なり、統一指標による検討は十分に行われていなかった。離島や過疎地域、無医地区など医療アクセスに課題を抱える地域も存在する中、客観的な指標を用いた全国的評価の必要性が指摘されてきた。そこで本研究は、日本の医療におけるへき地尺度(RIJ)を用い、主要5疾患における地域差を評価するとともに、へき地性と高齢化率や社会経済状況との関連を検討した。 研究は、生態学的研究デザインを用い、日本の自治体および政令指定都市の行政区を対象に実施された。人口が0人の地域を除く1,897自治体・行政区、総人口約1億2,600万人を解析対象とした。地域のへき地度はRIJを用いて評価し、RIJスコアは分布に基づいて四分位(Q1〜Q4)に分類した。急性心筋梗塞(AMI)、脳血管疾患(脳卒中・脳出血)、がん、自死について標準化死亡比(SMR)を算出し、死亡データが利用できない糖尿病については外来診療の標準化受療比(SCR)を代替指標として用いた。 解析対象となった1,897の自治体・行政区の解析から、RIJが高い地域ほど、脳血管疾患および男性自死のSMRが高いことが示された。いずれもRIJの上昇に伴い段階的に増加する傾向(用量反応関係)が認められた。 男性の脳卒中・脳出血のSMRは、最もRIJが低い地域(Q1)を基準とすると、RIJのSMRに対する回帰係数がQ2で11.5、Q3で12.7、Q4で18.4と増加し、女性でも同様の傾向がみられた。また男性の自死のSMRでも同様に、Q2で8.7、Q3で12.9、Q4で14.1と、RIJが高いほど回帰係数が上昇した。 AMIでは、RIJが高い地域でSMRが高い傾向がみられたが、明確な段階的増加は確認されなかった。一方、がん死亡率および糖尿病外来受療のSCRについては、RIJとの有意な関連は認められなかった。 さらに、RIJは地域の高齢化率および地理的剥奪指標(ADI)と正の相関を示し、RIJが高いほど高齢者割合や社会経済的困難を抱える傾向が示された(Spearmanの相関係数はそれぞれ0.67、0.55)。これらの結果は、へき地度の高い地域では医療アクセスや社会的支援の面で課題が集中していることを示唆している。 著者らは、「これらの結果は、救急医療へのアクセス改善およびメンタルヘルス支援の強化を含む、へき地度の高い地域に焦点を当てた医療政策の重要性を示している」と述べている。 なお、本研究では自治体単位の解析で個人レベルの因果関係は示せない点や、人口2000人未満の地域が含まれておらず、最もへき地度の高い地域における格差を過小評価した可能性がある点などが限界として挙げられる。またSCRは受療行動や患者移動の影響を受けるため、医療ニーズを直接反映していない可能性もある。 地域差を単なる都市・地方の二分法ではなく、連続的な「へき地度」として捉えた点は、今後の地域医療政策や研究のあり方にも示唆を与える結果といえそうだ。

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日本の心房細動患者、1年後の死亡・脳卒中・血栓塞栓症の発生率は?

 日本の心房細動患者は、経口抗凝固薬の使用率が81%と高く、1年後の全死亡率は0.1%と低く、脳卒中/血栓塞栓症の発生率も0.1%と低いことが、APHRS-AFレジストリ(Asia-Pacific Heart Rhythm Society Atrial Fibrillation Registry)の日本人における1年時の解析で示された。日本医科大学の淀川 顕司氏らがJournal of Arrhythmia誌2026年2月8日号で発表した。 APHRS-AFレジストリはアジアの大都市圏における前向き研究で、心房細動患者のベースライン特性、治療、臨床アウトカムについて重要な情報を提供する。今回、本レジストリに登録された日本人患者の1年間の追跡調査データを解析した。 主な結果は以下のとおり。・登録された4,666例のうち、794例が2015~17年に日本の主な循環器センター28施設から登録された。平均年齢は65.7歳、男性が69.0%で、主な併存疾患は高血圧(37.5%)、脂質異常症(29.0%)、心不全(15.9%)、糖尿病(15.0%)であった。平均CHADS2スコアは1.0、CHA2DS2-VAScスコアは2.0、HAS-BLEDスコアは1.1であった。・登録時の経口抗凝固薬の使用率は81%で、そのうち7%がビタミンK拮抗薬、74%が直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を処方されていた。患者の57.8%がカテーテルアブレーション施行予定であった。・1年間の追跡調査を実施した743例において、1年全死亡率は0.1%(1例、心不全)で、脳卒中/血栓塞栓症発生率も0.1%(1例、肺塞栓症)であった。大出血イベントは0.7%(5例[頭蓋内出血3例、下部消化管出血1例、軟部組織出血1例])に認められた。

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身体活動の不足が糖尿病の合併症を引き起こす

 身体活動の不足と糖尿病の合併症リスクとの関連を示すデータが報告された。合併症の最大10%程度が身体活動の不足に起因していると考えられるという。リオグランデ・ド・スル連邦大学(ブラジル)のJayne Feter氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Sport and Health Science」に1月14日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「糖尿病の合併症は避けようのないものだと見なされることが多い。しかしわれわれの研究結果は、糖尿病患者が身体活動量を増やすことで、合併症のかなりの部分を予防できる可能性があることを示している」と述べている。 この研究では、これまでに世界中で実施されてきた前向きコホート研究や横断研究、計27件のデータを統合して、糖尿病患者237万7,414人の身体活動量と糖尿病が関連する合併症のリスクとの関係を検討した。身体活動の不足は、世界保健機関(WHO)の推奨(週に150分以上の中~高強度の身体活動)を満たしていない場合と定義した。なお、米疾病対策センター(CDC)は、中強度の身体活動とは早歩き、低速での自転車走行、アクティブなヨガなどで、高強度の身体活動とはランニング、水泳、エアロビクスダンス、高速での自転車走行、縄跳びなどが該当するとしている。 解析対象者の平均年齢は55.3~71.3歳の範囲で、女性の割合は33.4~57.1%だった。19カ国(そのうち16カ国は高所得国)からの前向き研究における追跡期間は3.8~27.9年だった。身体活動不足の有病率は国によって大きく異なり、ロシアが27.7%で最も低く、中国が83.9%で最も高かった。日本は44.7%だった。 糖尿病に特異的な合併症である糖尿病網膜症の発症に身体活動不足が寄与する程度(人口寄与割合〔PAF〕)は、9.7%(95%不確実性区間4.1~16.5)と計算された。さらに、糖尿病が関連して発症リスクが高まる合併症では、冠動脈性心疾患のPAFが5.3%(同2.0~9.4)、心血管疾患が5.2%(2.2~8.9)、脳卒中が10.2%(5.1~16.6)、心不全が7.3%(3.1~12.5)だった。日本のデータからは、糖尿病網膜症15.9%(7.6~24.6)、冠動脈性心疾患8.7%(3.8~14.2)、心血管疾患8.5%(4.2~13.4)、脳卒中16.7%(9.5~24.4)、心不全11.9%(5.6~18.7)と計算された。なお、研究者らによると、女性や教育歴の短い人たちは、身体活動不足に関連した糖尿病合併症の有病率が一貫して高い傾向が認められたという。 本研究についてFeter氏は、「糖尿病合併症予防戦略の中心に身体活動を位置付ける必要性を示すものと言える。糖尿病患者に身体活動を促すことが入院や障害の発生および医療費の削減につながり、また患者の生活の質(QOL)を向上させ得るのではないか」と総括している。ただし研究者らは一方で、身体活動の種類が環境によって異なることを考慮すると、画一的なアプローチは機能しないだろうとも述べている。例えば、高所得国の人々は余暇時間に身体活動をする傾向があるのに対して、低所得国の人々は肉体的な仕事として身体活動を行っていることが多いという。

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低炭水化物か低脂肪かではなく、食品の質が重要

 これまで長年にわたり、健康のためには低炭水化物の食生活が良いと主張する人たちと、低脂肪の食生活が良いと主張する人たちの間で議論が繰り返されてきた。しかし、新たに報告された大規模なデータに基づく研究から、重要なことは主要栄養素の比率ではなく、食品としての品質であることが示唆された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のZhiyuan Wu氏らの研究によるもので、詳細は米国心臓病学会(ACC)発行の「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に2月11日掲載された。 この研究では、米国内の医療従事者対象調査(HPFS)に参加した男性4万2,720人、看護師健康調査(NHS)に参加した女性6万4,164人、NHS IIに参加した女性9万1,589人の30年以上にわたる追跡データが解析された。このような大規模な解析により、さまざまなスタイルの食習慣がその後の心臓の健康にどのような影響を与えるかを明らかにすることができた。 524万8,916人年の追跡期間中に、2万33件の冠動脈性心疾患(CHD)が記録されていた。解析の結果、健康的な食品類を中心とする食生活の場合、それが低炭水化物食か低脂肪食かにかかわらず、CHDのリスクが有意に低いという関連が見いだされた。反対に、精製穀物や動物性タンパク質を中心とする非健康的な食生活の場合、それが低炭水化物食か低脂肪食かにかかわらず、CHDリスクが有意に高かった。一例を示すと、非健康的な低炭水化物食の人はCHDのリスクが14%高く、健康的な低炭水化物食の人はそのリスクが15%低いことが示された。 代謝関連の検査値との関連では、低炭水化物食か低脂肪食かにかかわらず、植物性食品、全粒穀物、不飽和脂肪酸の摂取量の多い健康的な食事のスタイルは、トリグリセライド(中性脂肪)が低く、HDL(善玉)コレステロールが高く、炎症レベル(高感度C反応性蛋白)が低いことと関連していた。対照的に、精製穀物や単純糖質の多い食品(白パンや甘いスナック菓子など)および動物性脂肪を多く含む非健康的な食事のスタイルは、動脈硬化の進行につながる検査値異常と関連していた。 論文の筆頭著者であるWu氏は、過去の研究では野菜やナッツなどの多い「健康的な低炭水化物食」と、ベーコンやバターなどの多い「非健康的な低炭水化物食」を区別していなかったため、矛盾する結果が出ることが多かったと指摘。そして、「栄養成分だけに焦点を当てるだけで食品の品質を考慮しない食生活は、健康上のメリットにつながらない可能性がある」と付け加えている。 この論文に対してJACCの編集長であるHarlan Krumholz氏はACC発のリリースの中で、「本研究の結果は心臓の健康にとって最も重要なのは、人々が食べる食品の質であることを示している。炭水化物や脂肪の摂取量が少ない食事スタイルであっても、植物性食品や全粒穀物、および健康的な脂質を重視することが、心血管疾患の予後改善と関連している」と述べている。(HealthDay News 2026年2月13日)

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夕食中心の食事でフレイルリスク上昇

 夕食にエネルギー摂取が偏る高齢者や、朝食と夕食にエネルギー摂取のピークがある高齢者では、朝食・昼食・夕食で均等にエネルギーを摂取する高齢者と比べてフレイルの有病率が高い可能性を、韓国国立保健研究院のHan Byul Jang氏らが示した。Nutrients誌2026年2月22日号掲載の報告。 高齢者のフレイル予防において食事は重要な要素であるが、これまでの研究は主に総エネルギー摂取量や栄養の質に焦点が当てられてきた。近年、時間栄養学(chrono-nutrition)の観点から食事タイミングの重要性が示唆されているが、1日を通したエネルギー摂取の時間的分布を包括的に検討した研究は限られている。そこで研究グループは、食事の量・質・タイミングが高齢者のフレイルと独立して関連するかどうかを検討するため、横断研究を実施した。 本研究では、韓国国民健康栄養調査(KNHANES)の2016~18年のデータを用い、65歳以上の成人4,184人(女性57.1%)を解析した。24時間食事想起記録のない参加者、極端なエネルギー摂取量の参加者、フレイル評価に必要な情報が不足している参加者は除外した。 24時間食事想起記録から1時間単位のエネルギー摂取プロファイルを作成し、総エネルギー摂取量に対する相対分布として標準化した。この時間的エネルギー分布をDynamic Time Warping(DTW)に基づくkernel k-means法でクラスタリングし、5つの食事パターンを同定した。(1)バランス型:3食で均等にエネルギーを摂取するパターン 1,665例(38.8%)(2)持続型:3食と午後の補食によって、持続的にエネルギーを摂取するパターン 735例(17.8%)(3)昼食型:昼食のエネルギー摂取割合が最も高いパターン 737例(18.0%)(4)夕食型:夕食のエネルギー摂取割合が最も高いパターン 627例(15.2%)(5)朝・夕型:朝食と夕食にエネルギー摂取のピークがあるパターン 420例(10.2%) フレイルは修正版Fried基準により定義し、食事の質は健康食指数(Healthy Eating Index)で評価した。複雑サンプリングデザインを考慮した多変量ロジスティック回帰分析により、時間的食事パターンとフレイルとの関連を解析した。さらに、総エネルギー摂取量および健康食指数が両者の関連を媒介するかどうかについても検討した。 主な結果は以下のとおり。●全体の平均年齢は73.1歳で、バランス型(73.6歳)と朝・夕型(74.1歳)が高く、夕食型(71.6歳)が最も低かった。健康食指数は持続型が最も高く、朝・夕型が最も低かった。夕食型は朝食欠食率が最も高く(17.9%)、朝・夕型の半数(51.9%)は昼食を欠食していた。●夕食型および朝・夕型は、バランス型と比べてフレイルのオッズが有意に高かった。調整オッズ比(aOR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -夕食型 aOR:1.48、95%CI:1.03~2.10 -朝・夕型 aOR:1.43、95%CI:1.01~2.03●持続型および昼食型では、有意な関連は認められなかった。●フレイルの構成要素別では、持続型はバランス型に比べて筋力低下(weakness)のリスクが有意に低かった。●媒介分析の結果、夕食型は総エネルギー摂取量が多いことによるフレイル保護効果があったものの、夕食へのエネルギー集中という時間的偏重がその保護効果を打ち消し、独立したフレイルリスクとなる可能性が示唆された。●朝・夕型では、総エネルギー摂取量の減少や食事の質の低下が、フレイルとの関連の一部を説明する可能性が示された。 研究グループは、「これらの知見は、総エネルギー摂取量と食事の質に加え、食事のタイミングとエネルギー配分の時間的バランスもフレイル予防に重要であることを示している。また、時間栄養学をフレイルの予防戦略に組み込むことを支持している」とまとめた。

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がん患者の心血管疾患リスクに糖尿病が影響か

 がん治療の進歩により、生存期間が延びる患者が増える一方で、治療後に心血管疾患(CVD)を発症するリスクが新たな課題として注目されている。しかし、どのような患者がCVDを発症しやすいのかは、十分に明らかになっていない。今回、大阪府の大規模がん登録データを用いた解析で、がんの初回診断時に糖尿病を併存する患者では、CVDの新規発症および全死亡リスクが有意に高いことが示された。研究は、大阪国際がんセンターがん対策センターの桒原佳宏氏、宮代勲氏らによるもので、詳細は1月22日付で「PLOS One」に掲載された。 がん治療の進歩により生存期間が延び、がんサバイバーが増加する一方、がんとCVDは共通の危険因子を多く持ち、治療自体もCVDリスクを高めることから、治療後のCVD発症が重要な課題となっている。しかし、がん患者においてCVD発症に影響する因子は十分に明らかではない。糖尿病は一般集団でCVDリスクを高めることが知られているが、がんの初回診断時にCVDを有さない患者における影響は不明である。欧州心臓病学会(ESC)が策定した心臓とがん医療に関するガイドラインでは、がん患者の糖尿病管理の重要性が示されているが、十分なエビデンスはそろっていない。本研究は、糖尿病併存がCVD発症および死亡に与える影響を明らかにすることを目的とした。 本研究は多施設の後ろ向きコホート研究であり、大阪府がん登録をDPCデータと連結した集団ベースのデータを用いた。2010~2015年にがんと診断され、初回診断時にCVDのない患者を対象とした。糖尿病の有無は糖尿病治療薬の処方歴から判定し、CVD発症はICD-10コードで同定した。がん診断後3年間追跡し、がん診断時の糖尿病併存の有無と全死亡およびCVD発症との関連を、年齢、性別、がん種、病期、BMIなどで調整したCox比例モデルおよび競合リスク解析で評価した。 本研究の解析対象12万1,997人のうち、4,317人は、がんの初回診断時に糖尿病を併存していた。糖尿病を併存する群は、併存しない群と比較して男性の割合が高く、比較的高齢の患者が多かった。また、遠隔転移を有する患者の割合も高かった。 糖尿病を併存する群の3年生存率は61.5%で、併存しない群の78.2%を下回っていた。交絡因子を調整したCox比例ハザードモデルの結果、糖尿病を併存する群では、併存しない群と比較して全死亡リスクが有意に高く(調整ハザード比1.40〔95%信頼区間1.33~1.48〕)、予後不良との関連が示された。がん部位別解析では、糖尿病の併存は一部のがん種を除き、ほとんどのがん部位で予後不良と関連していた。がん診断後に糖尿病と診断された患者を除外した感度解析でも、結果は一貫していた。 死亡を競合リスクとして考慮した競合リスク回帰分析では、糖尿病を併存する患者は、併存しない患者と比較して全CVDの発症リスクが有意に高かった(同1.43〔1.34~1.53〕)。また、心血管イベントの種類やがん種によって関連の強さには差がみられたが、がん種別解析でも全体解析と同様の傾向が認められた。なお、がん診断後に糖尿病と診断された患者を除外して解析しても、主要な結果は変わらなかった。 死亡直前2か月以内に入院歴のあった2万1,292人を対象に死因を推定した解析では、糖尿病を併存する群でCVDによる死亡割合が高かった(6.94% vs. 4.57%)。交絡因子を調整したロジスティック回帰分析でも、糖尿病の併存はCVDによる死亡リスクの上昇と有意に関連していた(オッズ比1.47〔95%信頼区間1.19~1.81〕)。がん種別では、胃がんおよび胆嚢がんでこの関連が有意であった。 著者らは、「がん診断時に心血管疾患のない患者でも、糖尿病を併存している場合、その後の心血管疾患の発症や予後に悪影響を及ぼす可能性が示された。糖尿病管理ががん患者の転帰改善につながるかどうか、今後の検証が必要である」と述べている。 なお、本研究の限界として、診療報酬データに基づく後ろ向き観察研究である点、糖尿病やCVDの誤分類や未調整の交絡因子の影響を否定できない点などを挙げている。

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「フォシーガ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第85回

第85回 「フォシーガ」の名称の由来は?販売名フォシーガ®錠 5mg フォシーガ®錠 10mg 一般名(和名[命名法])ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(JAN)効能又は効果◯2型糖尿病◯1型糖尿病◯慢性心不全ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。◯慢性腎臓病ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。用法及び用量<2型糖尿病>通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。<1型糖尿病>インスリン製剤との併用において、通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。<慢性心不全、慢性腎臓病>通常、成人にはダパグリフロジンとして10mgを1日1回経口投与する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]3.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[糖尿病を有する患者ではインスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]※本内容は2026年3月16日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2025年4月改訂(第15版)医薬品インタビューフォーム「フォシーガ®錠5mg、10mg」

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日本人の腸内細菌叢、世界と異なる特徴は?

 ヒトの腸内細菌叢(マイクロバイオーム)は、宿主の免疫や代謝、健康状態と密接に関わっている。東京大学の西嶋 傑氏らの研究グループは、日本人5,000人以上の腸内メタゲノムデータを解析し、世界37ヵ国と比較した。その結果、日本人の腸内細菌叢にはビフィズス菌が豊富であり、9割が海藻の分解酵素を持つという独自の特徴や、腸内細菌叢の構成には特定の薬剤が大きく影響することなどが判明した。Proceedings of the Japan Academy, Series B誌2026年2月号に掲載。 本研究では、疾患(Disease)、薬剤(Drug)、食習慣(Diet)、アルコール、喫煙、睡眠などの生活習慣(Daily life)、などの詳細な情報と腸内細菌データを統合して収集した大規模オミクス研究基盤である「Japanese 4Dマイクロバイオームコホート」を用いて、日本人5,466人(平均年齢65.9±13.2歳、男性56.9%)の腸内メタゲノムデータを、世界37ヵ国3万1,695人のデータを比較解析し、日本人の独自性を特定した。さらに、1,500項目以上の変数を用いて、細菌叢の多様性に寄与する要因を評価した。 主な結果は以下のとおり。・日本人の腸内には、他の高所得国と比較してビフィズス菌(Bifidobacterium属)が豊富に存在することが認められた。これは日本人に乳糖不耐症が多く、乳製品を摂取して消化されない乳糖が腸に到達し、ビフィズス菌の増殖を促進する可能性が示唆されている。・日本人において、ノリやワカメなどの海藻に含まれる多糖類を分解する酵素遺伝子を持つ個人の割合が約90%に達し、欧米諸国(0~16.7%)より圧倒的に多かった。・腸内細菌叢の構成には、生活習慣よりも薬剤の影響が大きかった。関連の強い順に、胃腸薬、糖尿病薬、抗菌薬/抗ウイルス薬であった。・プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は腸内細菌の多様性を上昇させる一方で、口腔内に多い細菌(レンサ球菌[Streptococcus属]、Lactobacillus属など)が腸内で増加し、日和見感染症の原因となる多剤耐性菌(肺炎桿菌[Klebsiella pneumoniae]、Enterococcus faecium、肺炎球菌[Streptococcus pneumoniae]など)の定着を促進するリスクが示された。・5種類以上の多剤併用により、有益な短鎖脂肪酸(SCFA)産生菌(Roseburia属、Dorea属、Faecalibacterium属、Alistipes属、Coprococcus属、Eubacterium属など)が減少し、日和見病原菌が増加して、腸内細菌叢の多様性が低下することが示された。 本研究により、日本特有の文化的・遺伝的背景によって形成された、集団特異的な腸内細菌叢の特徴が示された。著者らは、とくに高齢者における不要な薬剤の使用中止を含む薬物療法の最適化が、腸内環境の健全性を維持するうえで不可欠だと指摘し、国際的な腸内細菌叢データセットの構築は、精密医療(プレシジョンメディシン)を推進する鍵となるだろうとまとめている。

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1型糖尿病とCKD併存、フィネレノンがUACRを改善/NEJM

 1型糖尿病患者における慢性腎臓病(CKD)の治療では、30年以上前の研究に基づき、生活習慣、血糖値、血圧の最適化に重点が置かれ、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬が推奨されてきたが、これらの介入はCKDの進行を抑制する効果はあるものの、完全に阻止することはできないとされる。オーストラリア・University of New South WalesのHiddo J.L. Heerspink氏らは「FINE-ONE試験」において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンはプラセボと比較して、有効性と安全性の代替指標としての尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を有意に低下させ、高カリウム血症が多くみられるものの重篤な有害事象の頻度に大きな差はないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2026年3月5日号で報告された。9ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 FINE-ONE試験は、9ヵ国で実施した国際的な二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(Bayerの助成を受けた)。2024年2月~2025年2月に参加者を登録した。 対象は、18歳以上、1型糖尿病と診断され、CKD(推算糸球体濾過量[eGFR]:25~<90mL/分/1.73m2)およびアルブミン尿(UACR[アルブミンはmg、クレアチニンはgで測定]200~<5,000)を有し、ACE阻害薬またはARBの投与を受けている患者であった。 被験者を、フィネレノンまたはプラセボを経口投与する群に無作為に割り付けた。フィネレノンの用量は、スクリーニング時eGFR≧60mL/分/1.73m2の患者は20mg/日、同25~<60mL/分/1.73m2の患者は10mg/日で開始した。 主要アウトカムは、6ヵ月の時点におけるベースラインからのUACRの相対的な変化量とした。UACRの減少率が25%高い 242例を登録し、フィネレノン群に120例(平均[±SD]年齢51.3[±14.2]歳、女性34.2%)、プラセボ群に122例(51.9[±13.2]歳、35.2%)を割り付けた。 UACR中央値は、フィネレノン群でベースラインの574.6から6ヵ月時に373.5へ低下し、プラセボ群では506.4から475.6へ低下した。 この6ヵ月間で、UACRは、フィネレノン群で34%の減少(ベースラインとの最小二乗幾何平均比:0.66、95%信頼区間[CI]:0.60~0.73)、プラセボ群で12%の減少(0.88、0.79~0.98)であった。これは、プラセボ群に比べフィネレノン群で25%高い減少率を示したことになり、有意に優れた(6ヵ月時のプラセボ群との最小二乗幾何平均比:0.75、95%CI:0.65~0.87、p<0.001)。血圧、HbA1c値、体重の変化に差はない 最も頻度の高い有害事象は高カリウム血症であった(フィネレノン群12例[10.1%]、プラセボ群4例[3.3%])。高カリウム血症のためフィネレノンの投与を中止した患者は2例(1.7%)だった。また、重篤な有害事象の頻度は両群で同程度であった(14例[11.8%]、14例[11.5%])。 6ヵ月時のeGFRの変化量は、フィネレノン群で-5.6mL/分/1.73m2、プラセボ群で-2.7mL/分/1.73m2であった(群間差:-2.9mL/分/1.73m2、95%CI:-5.1~-0.7)。6ヵ月以降のウォッシュアウト期間中に、フィネレノン群のeGFR値はベースラインの値に近づいた。 6ヵ月の時点で、収縮期血圧のベースラインからの変化量の両群間の差は-0.9mmHg(95%CI:-4.3~2.6)、拡張期血圧の変化量の差は-1.3mmHg(-3.4~0.9)であり、いずれもフィネレノン群のほうが変化量は大きかったが、有意な差はなかった。また、両群とも、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値や体重に有意な変化を認めず、群間差は小さかった。高リスクのサブグループでも有効な可能性 著者は、「ガイドラインに基づく薬物療法(ACE阻害薬、ARBなど)に加えフィネレノンを投与すると、プラセボに比べより大きなUACRの低下が得られ、この効果は、ベースラインのeGFRが最も低い(<45mL/分/1.73m2)集団(最小二乗幾何平均比:0.74、95%CI:0.57~0.97)およびUACRが最も高い(>1,000)集団(0.91、0.70~1.18)といった腎および心血管の有害なアウトカムのリスクがきわめて高いサブグループにおいても同様であった」としている。 なお、著者は考察で「本試験は地理的に多様なCKD合併1型糖尿病患者を対象としたものの、被験者の約3分の2が男性であったことから、これらの知見は試験コホートと同様の特徴を共有する患者にのみ適用可能であり、一般化はできない」と指摘している。

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末梢動脈疾患(PAD)の症状改善にメトホルミンは無効(解説:小川大輔氏)

 末梢動脈疾患(Peripheral Artery Disease;PAD)は、動脈に脂肪やコレステロールが蓄積する動脈硬化によって、腹部大動脈から下肢の動脈が狭くなり血流が制限される疾患である。これにより、歩行時の足の痛み(間欠性跛行)などの症状が生じる。症状はゆっくりと現れることが多いが、急激に悪化する場合もある。主な原因は動脈壁への脂肪、コレステロールなどの蓄積、いわゆるアテローム性動脈硬化と考えられている。PADの患者は動脈硬化を原因とする狭心症や脳梗塞を合併することが多いため、下肢だけでなく全身の動脈硬化症の評価も必要となる。 PADの治療としては、禁煙、生活習慣病の管理、運動療法、薬物療法、血行再建術などがある。PADの最大の原因は喫煙であり、禁煙は必須の治療である。糖尿病、高血圧症、脂質異常症があればそれらの治療も行う。運動療法は血流改善や新しい血管(側副血行路)の発達を促すため、痛みが生じない範囲でのウォーキングなどの運動は有効である。血行再建術は、運動療法やシロスタゾールなどの薬物療法で症状の改善が見られない場合や重症の場合に検討される。カテーテル治療(血管内治療)やバイパス手術はPADの部位や患者の状態を考慮して実施される。 PADは歩行障害を引き起こす重篤な循環器疾患であり、効果的な治療法が限られている。そこで今回非糖尿病のPAD患者に対し、2型糖尿病の治療薬であるメトホルミンを6ヵ月間投与し、歩行能力に与える効果を検証したランダム化二重盲検試験が実施された1)。その結果、メトホルミンはPAD患者の歩行能力改善には効果がないと結論付けられた。 メトホルミンは主に肝臓での糖新生を抑制したり、筋肉や脂肪組織でのブドウ糖の取り込みを促進したりすることによって血糖値を下げる効果がある。その他、血管内皮細胞におけるAMP活性化プロテインキナーゼの活性化、酸化ストレスの抑制、内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化などの作用も報告されている2)。メトホルミンのこれらの“pleiotropic effects”による血管内皮機能の改善により、PAD患者の血流改善や歩行時間延長を期待され、この試験が実施された。 メトホルミンがPAD患者の歩行能力改善に効果がなかった理由として、喫煙率が約30%と高かったことや、インスリン抵抗性の強くない症例が多かったこと、また観察期間が6ヵ月と短かったことなどが考えられる。その他の可能性として、著者らはPAD患者の骨格筋や血管内皮でAMP活性化プロテインキナーゼがすでに最大活性化されているため、メトホルミンの追加効果が得られなかった可能性を考察している。 いずれにしても今回の研究でPADの歩行障害に対するメトホルミンの効果はないことが示された。今後は異なる作用機序を持つ治療薬の開発や、PADの複雑な病態に対処する新たなアプローチの研究が求められる。またそれ以前に、完全禁煙や肥満の是正、厳格な血圧管理など、現状できることをまずはきちんと行うことが重要である。

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GLP-1受容体作動薬、物質使用障害の予防や治療に有効か/BMJ

 GLP-1受容体作動薬の使用は、さまざまな物質使用障害(SUD)の発症リスク低下と一貫して関連し、複数の物質タイプにわたる幅広い予防効果があること、また、SUD既往患者においても有害な臨床アウトカムのリスク低下に関連していることが、米国退役軍人省セントルイス・ヘルスケアシステムのMiao Cai氏らによる観察研究の結果で示された。GLP-1受容体作動薬の使用がアルコール、タバコ、大麻使用障害の発症および再発リスクを低下させることが示されていたが、他の物質に関するエビデンスや、SUD既往患者の臨床アウトカムの改善に有効かどうかを評価する大規模研究は不足していた。著者は、「今回のデータは、GLP-1受容体作動薬がさまざまなSUDの予防と治療の両方において潜在的な役割を果たす可能性を示唆しており、さらなる評価が必要である」とまとめている。BMJ誌2026年3月4日号掲載の報告。退役軍人の医療記録を用いて8件の実薬対照比較試験をエミュレーション 研究グループは、米国退役軍人省の電子医療記録を用いて新規投与開始者に関する8件の実薬対照標的試験エミュレーション(target trial emulation)を行った。内訳は、SUD既往のない患者における新規SUD発症に関する7試験(プロトコール1)と、SUD既往患者における有害アウトカムに関する1試験(プロトコール2)であった。 2型糖尿病を有する米国退役軍人60万6,434例をベース集団とし、患者を2つのプロトコールのいずれかに割り付け、最大3年間追跡した。 プロトコール1(主要試験)では、GLP-1受容体作動薬新規投与開始者12万4,001例およびSGLT2阻害薬新規投与開始者40万816例の計52万4,817例が、プロトコール2では、それぞれ1万6,768例および6万4,849例の計8万1,617例が対象となった。 主要アウトカムは、アルコール、大麻、コカイン、ニコチン、オピオイドの使用障害、その他のSUD発症、およびこれらの複合アウトカムとした。SUD既往患者における有害アウトカムには、SUD関連の救急外来受診、SUD関連入院、SUD関連死、薬物過剰摂取、自殺念慮または自殺企図などが含まれた。 ハザード比(HR)および3年間の純リスク差(NRD、1,000人当たり)を、逆確率重み付けを用いた原因特異的Cox生存モデルに基づいて報告した。アルコール、大麻、コカイン、ニコチン、オピオイド、他のSUD発症リスクの低下と関連 SGLT2阻害薬の開始と比較し、GLP-1受容体作動薬の開始は以下の使用障害のリスク低下と関連していた。・アルコール(HR:0.82[95%信頼区間[CI]:0.78~0.85]、NRD:-5.57[95%CI:-6.61~-4.53])・大麻(0.86[0.81~0.90]、-2.25[-3.00~-1.50])・コカイン(0.80[0.72~0.88]、-0.97[-1.37~-0.57])・ニコチン(0.80[0.74~0.87]、-1.64[-2.19~-1.09])・オピオイド(0.75[0.67~0.85]、-0.86[-1.19~-0.52]) また、主要アウトカムとした、その他のSUD発症(0.87[0.81~0.94]、-1.12[-1.68~-0.55])、複合アウトカム(0.86[0.83~0.88]、-6.61[-7.95~-5.26])のリスク低下も認められた。 SUD既往患者では、GLP-1受容体作動薬の投与開始は、次のリスク低下と関連していた。・SUD関連救急外来受診(HR:0.69[95%CI:0.61~0.78]、NRD:-8.92[-11.59~-6.25])・SUD関連入院(0.74[0.65~0.85]、-6.23[-8.73~-3.74])・SUD関連死(0.50[0.32~0.79]、-1.52[-2.32~-0.72])・薬物過剰摂取(0.61[0.42~0.88]、-1.49[-2.43~-0.55])・自殺念慮または自殺企図(0.75[0.67~0.83]、-9.95[-13.14~-6.77]) 治療アドヒアランスに基づく解析でも、新規SUD発症およびSUD既往患者における有害アウトカムの両方について、治療開始に基づく解析と一貫した結果が示された。

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