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事例32 診療情報提供料(I)の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説事例の「B009 診療情報提供料(I)」が、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)を適用されて査定となりました。査定の原因を調べるためにカルテを参照しました。診療情報提供書発行日の内容に「○○病院に受診、同院△医師から診療状況の問い合わせあり返信」と記載がありました。診療情報提供書の算定要件はその「注1」に「保険医療機関が、診療に基づき、別の保険医療機関での診療の必要を認め、これに対して、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合に、紹介先保険医療機関ごとに患者1人につき月1回に限り算定する」とあります。要約すると「(1)診療に基づき、(2)別の保険医療機関での診療の必要性を認め、(3)患者の同意を得て、(4)診療状況を示す文書(紹介先機関ごとに定められた項目がすべて記入された文書)を添えて、(5)患者の紹介を行った場合」です。紹介先保険医療機関(注に定められた機関を含む)ごとに患者1人につき月1回に限り算定できます。事例では、レセプト内に患者の同意があったことの補記がなく、診察料の算定もないことから「(1)診療に基づき」と「(3)患者の同意を経て」の要件を満たしていないと判断されてD事由が適用されたものと推測ができます。診療情報提供料の算定でよく誤解されるのは、文書のみをもって算定ができると判断されることです。あくまで、患者さんの了解のもとで他の医療機関に紹介する際に算定できるものです。紹介元への単なる返事など診察料を伴わない診療情報提供料は、療養担当規則第2条の2、第16条の2「診療に関する照会には適切に対応する」と定められているために診療情報提供料として算定できないのです。算定要件を満たしたうえで診察料を伴わない診療情報提供料を算定しようとする場合には、患者の同意があったことをレセプトに補記する必要があるのです。医療機関に対して行われる個別指導などにおいて、よく指摘される内容は次のとおりです。紹介先の医療機関名を診療録に明記されていない患者の同意があることを診療録に記載されていない診療録に「提供した文書」の写しが添付されていない同月内で同じ医療機関に同じ患者さんを複数回紹介している

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英語で「骨粗鬆症」、医学用語と患者さんへの言い換え法は?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第33回

医学用語紹介:骨粗鬆症 osteoporosis「骨粗鬆症」について説明する際、患者さんにosteoporosisと言って通じなかった場合、何と言い換えればよいでしょうか? 現場の実感として、osteoporosisはそのままで通じる方もそれなりにいる印象ですが、当然通じないケースもあり、この場合には言い換えが必要になります。講師紹介

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診療に難渋する糖尿病性神経障害の診療マニュアルが登場/糖尿病学会

 糖尿病の合併症の1つに糖尿病性神経障害がある。この疾患の放置は、下肢の切断など重篤な障害を起こし、患者のQOLに多大な影響を及ぼす。日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏)は、この糖尿病性神経障害について『糖尿病性神経障害の評価・診断マニュアル』を作成し、9月16日に同学会のホームページで公開した。 このマニュアルでは、日常臨床でしばしば遭遇するものの、評価や診断が比較的難しく煩雑と考えられている糖尿病性神経障害について、実臨床に即した評価・診断法を整理し、記載している。編集主幹の中村 二郎氏(糖尿病・内分泌内科クリニックTOSAKI名東 院長)は、「このマニュアルを通読することで、糖尿病性神経障害のおかれている状況(腎症や網膜症と比較して診断法・治療法が遅れている点)を理解していただきたい。その上で、マニュアルに紹介した、提供できる最善の評価・診断法を読者が実践くださることを期待する」と寄せている。なお、本マニュアルは、第一三共の「2024年度 神経障害性疼痛教育プログラム」からの助成を受けて作成された。主な目次1.はじめに Introduction2.糖尿病性神経障害とは3.診断の意義と早期発見の重要性4.診断プロセスの全体像5.問診のポイントと項目6.身体診察の手法と解釈7.神経伝導検査の実際8.自律神経機能検査の実際9.診断結果の解釈と対応10.Q&A

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PCOSの妊娠合併症、ミオイノシトールで軽減せず/JAMA

 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を有する女性の妊娠時におけるミオイノシトールサプリメントの摂取は、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症や早産の複合発生率を低下しなかった。オランダ・Amsterdam University Medical Center location AMCのAnne W. T. van der Wel氏らが無作為化試験の結果を報告した。PCOSの女性は妊娠時の合併症リスクが高いことが知られる。先行研究で、ミオイノシトールサプリメントの摂取は、これらのリスクを軽減する可能性があるとされていた。JAMA誌オンライン版2025年9月8日号掲載の報告。妊娠8~16週目のPCOS女性を対象に二重盲検プラセボ対照無作為化試験 研究グループは、PCOSの女性における妊娠時のミオイノシトールの毎日の服用が、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症、早産の複合アウトカムのリスクを軽減するかどうかを評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。 試験は、2019年6月~2023年3月に、オランダ国内の13病院(大学病院4、非大学教育病院9)で妊娠8~16週目のPCOS女性を登録して実施。最終フォローアップは2023年12月27日に完了し、解析は2024年7月に行われた。 被験者は、ミオイノシトール2g+葉酸0.2mg含有の無味の粉末を1日2回摂取する群(ミオイノシトール群)、葉酸0.2mg含有の無味の粉末を1日2回摂取する群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。両群で配布された粉末(小袋入り)は、見た目、味ともに同様だった。被験者は無作為化から出産まで1袋ずつを1日2回、食事に混ぜたり水やジュースに溶かしたりして摂取するか、直接摂取するよう指示された。 主要アウトカムは、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症、早産(妊娠37週目以前)の複合とした。主要アウトカムのイベント発生率、25.0%vs.26.8% 計464例(ミオイノシトール群230例、プラセボ群234例)が登録・無作為化された。平均年齢は31.5(SD 3.8)歳、18例(3.9%)がアジア人で395例(86.1%)が白人であった。 ベースライン特性は、ミオイノシトール群がプラセボ群と比べて生化学的な高アンドロゲン血症の有病率が高かったこと(29.0%[53/183例]vs.18.5%[37/200例])を除き、両群に実質的な差はなかった。なお、主要アウトカムのデータは、ミオイノシトール群224例(97.4%)、プラセボ群228例(97.4%)について入手できた。 主要アウトカムのイベント発生率は、ミオイノシトール群25.0%(56例)、プラセボ群26.8%(61例)であった(相対リスク:0.93、95%信頼区間:0.68~1.28、p=0.67)。

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第280回 コロナ治療薬の今、有効性・後遺症への効果・家庭内感染予防(前編)

INDEXニルマトレルビル/リトナビルモルヌピラビルニルマトレルビルか? モルヌピラビルか?感染症法上の5類移行後、これまでの新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の動向について、その1(第277回)では感染者数、入院者数、死亡者数の観点からまとめ、その2(第278回)では流行ウイルス株とこれに対抗するワクチンの変遷(有効性ではなく規格などの変遷)、その3(第279回)ではワクチンの有効性について比較的大規模に検証された研究を取り上げた。今回は治療薬について、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッド)とモルヌピラビル(同:ラゲブリオ)について紹介する。もっとも、漠然と論文のPubMed検索をするのではなく、日本での5類移行後にNature誌、Science誌、Lancet誌、NEJM誌、BMJ誌、JAMA誌とその系列学術誌に掲載され、比較対照群の設定がある研究をベースにした。ニルマトレルビル/リトナビル2024年4月のNEJM誌に掲載されたのが、国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第II/III相試験「EPIC-SR試験」1)。新型コロナの症状出現から5日以内の18歳以上の成人で、ワクチン接種済みで重症化リスク因子がある「高リスク群」とワクチン未接種または1年以上接種なしでリスク因子がない「標準リスク群」を対象にニルマトレルビル+リトナビルの有効性・安全性をプラセボ対照で比較している。ちなみにこの研究の筆頭著者はファイザーの研究者である。主要評価項目は症状軽快までの期間(28日目まで)、副次評価項目は発症から28日以内の入院・死亡の割合、医療機関受診頻度、ウイルス量のリバウンド、症状再発など。まず両群を合わせたニルマトレルビル/リトナビル群(658例)とプラセボ群(638例)との間で主要評価項目、副次評価項目のいずれも有意差はなし。高リスク群、標準リスク群の層別で介入(ニルマトレルビル/リトナビル投与)の有無による主要評価項目、副次評価項目の評価でもいずれも有意差は認めていない。唯一、高リスク群で有意差はないものの、入院・死亡率がニルマトレルビル/リトナビル群で低い傾向があるくらいだ。実はEPIC-SR試験は、各国でニルマトレルビル/リトナビルの承認根拠となった18歳以上で重症化のリスクが高い外来での新型コロナ軽症・中等症患者を対象にした臨床試験「EPIC-HR試験」の拡大版ともいえる。その意味では、より幅広い患者集団で有効性を示そうとして図らずも“失敗”に終わったとも言える。有効性が示せたEPIC-HR試験と有効性が示せなかったEPIC-SR試験の結果の違いの背景の1つとしては、前者が 2021年7~12月、後者が2021年8月~2022年7月という試験実施時期が考えられる。つまり流行主流株が前者は重症化リスクが高いデルタ株、後者はデルタ株より重症化リスクの低いオミクロン株という違いである。このオミクロン株が流行主流株になってからの研究の1つが、2023年4月にBMJ誌に掲載された米国・VA Saint Louis Health Care Systemのグループによる米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを用いた後ろ向き観察研究2)である。最終的な解析対象は2022年1~11月に新型コロナの重症化リスク因子が1つ以上あり、重度腎機能障害や肝疾患の罹患者、新型コロナ陽性が判明した時点で何らかの薬物治療や新型コロナの対症療法が行われていた人を除く新型コロナ感染者25万6,288例。これをニルマトレルビル群(3万1,524例)と対症療法群(22万4,764例)に分け、主要評価項目を新型コロナ陽性確認から30日以内の入院・死亡率として検討している。その結果では、ワクチンの接種状況別に検討した主要評価項目の相対リスクは、未接種群が 0.60(95%信頼区間[CI]:0.50~0.71)、1~2回接種群が0.65(95%CI:0.57~0.74)、ブースター接種群が0.64(95%CI:0.58~0.71)で、いずれもニルマトレルビル/リトナビル群で有意なリスク減少が認められた。また、感染歴別での相対リスクも初回感染群が0.61(95%CI:0.57~0.65)、再感染群が0.74(95%CI:0.63~0.87)でこちらもニルマトレルビル/リトナビル群でリスク減少は有意だった。また、サブグループ解析では、ウイルス株別でも相対リスクを検討しており、BA.1/BA.2優勢期が0.64(95%CI:0.60~0.72)、BA.5優勢期が0.64(95%CI:0.58~0.70)で、この結果でもニルマトレルビル/リトナビル群が有意なリスク減少を示した。一見するとNEJM誌とBMJ誌の結果は相反するとも言えるが、後者のほうは対象が高齢かつ重症化リスク因子があるという点が結果の違いに反映されていると考えることができる。一方、新型コロナを標的とする抗ウイルス薬では、後遺症への効果や家庭内感染予防効果なども検討されていることが少なくない。後遺症への効果についてはLancet Infectious Disease誌に2025年8月掲載されたイェール大学のグループによるプラセボ対照二重盲検比較研究3)、JAMA Internal Medicine誌に2024年6月に掲載されたスタンフォード大学のグループによって行われたプラセボ対照二重盲検比較研究4)の2つがある。研究実施時期と症例数は前者が2023年4月~2024年2月で症例数が100例(ニルマトレルビル/リトナビル群49例、プラセボ/リトナビル群51例)、後者が2022年11月~2023年9月で症例数が155例(ニルマトレルビル/リトナビル群102例、プラセボ/リトナビル群53例)。両研究ともにニルマトレルビルの投与期間は15日間である。前者は18歳以上で新型コロナ感染歴があり、感染後4週間以内に後遺症と見られる症状が確認され、12週間以上持続している患者が対象。主要評価項目はニルマトレルビル/リトナビルあるいはプラセボ/リトナビル投与開始後28日目の米国立衛生研究所開発の身体的健康に関する患者報告アウトカム(PROMIS-29)のベースラインからの変化だったが、両群間に有意差はなかった。後者は18歳以上、体重40kg超で腎機能が保たれ、新型コロナ感染後、疲労感、ブレインフォグ、体の痛み、心血管症状、息切れ、胃腸症状の6症状のうち2つ以上を中等度または重度で呈し、90日以上持続している人が対象となった。主要評価項目は試験開始10週後のこれら6症状のリッカート尺度による評価だったが、こちらも両群間で有意差は認められなかった。家庭内感染予防についてはNEJM誌に2024年7月に掲載されたファイザーの研究者によるプラセボを対照としたニルマトレルビルの5日間投与と10日間投与の第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験5)がある。対象は2021年9月~2022年4月に新型コロナの確定診断を受けた患者の家庭内接触者で、無症状かつ新型コロナ迅速抗原検査陰性の18歳以上の成人。症例数はニルマトレルビル/リトナビル5日群が921例、10日群が917例、プラセボ群(5日間または10日間投与)が898例。主要評価項目は14日以内の症候性新型コロナ感染の発症率で、結果は5日群が2.6%、10日群が2.4%、プラセボ群が3.9%であり、プラセボ群を基準としたリスク減少率は5日群が29.8%(95%CI:-16.7~57.8、p=0.17)、10日群が35.5%(95%CI:-11.5~62.7、p=0.12)でいずれも有意差なし。副次評価項目の無症候性新型コロナ感染の発生率でも同様に有意差はなかった。もっとも、この研究では参加者の約91%がすでに抗体陽性だったことが結果に影響している可能性がある。モルヌピラビルこの薬剤については、最新の研究報告でいうとLancet誌に掲載されたイギリスでのPANORAMIC試験6)の長期追跡結果となる。同試験は非盲検プラットフォームアダプティブ無作為化対照試験で、2021年12月~2022年4月までの期間、すなわちオミクロン株が登場以降、新型コロナに罹患して5日以内の50歳以上あるいは18歳以上で基礎疾患がある人を対象に対症療法に加えモルヌピラビル800mgを1日2回、5日間服用した群(1万2,821例)と対症療法群(1万2,962例)で有効性を比較したものだ。ちなみに対象者のワクチン接種率は99.1%と、まさにリアルワールドデータである。主要評価項目は28日以内の入院・死亡率だが、これは両群間で有意差なし。さらに副次評価項目として罹患から3ヵ月、6ヵ月時点での「自覚的健康状態(0~10点スケール)」「重症症状の有無(中等度以上)」「持続症状(後遺症)」「医療・福祉サービス利用」「就労・学業の欠席」「家庭内の新規感染発生率」「医薬品使用(OTC含む)」「EQ-5D-5L(健康関連QOL)」を調査したが、このうち3ヵ月時点と6ヵ月時点でモルヌピラビル群が有意差をもって上回っていたのはEQ-5D-5Lだけで、あとは3ヵ月時点で就労・学業の欠席と家庭内の新規感染発生率が有意に低いという結果だった。ただ、家庭内新規感染発生率は6ヵ月時点では逆転していることや、そもそもこの評価指標が6ヵ月時点で必要かという問題もある。また、後遺症では有意差はないのにEQ-5D-5Lと就労・学業の欠席率で有意差が出るのも矛盾した結果である。もっと踏み込めば、この副次評価項目での有意差自体がby chanceだったと言えなくもない。一方、前述のBMJ誌に掲載されたニルマトレルビルに関する米国退役軍人省ヘルスケアデータベースを用いた後ろ向き観察研究を行った米国・VA Saint Louis Health Care Systemのグループは同様の研究7)をモルヌピラビルに関しても行っており、同じくBMJ誌に掲載されている。研究が行われたのはオミクロン株が主流の2022年1~9月で、対象者は60歳以上、BMI 30以上、慢性肺疾患、がん、心血管疾患、慢性腎疾患、糖尿病のいずれかを有する高リスク患者。主要評価項目は30日以内の入院・死亡率である。それによるとモルヌピラビル群7,818例、対症療法群7万8,180例での比較では、主要評価項目はモルヌピラビル群が2.7%、対症療法群が3.8%、相対リスクが0.72(95%CI:0.64~0.79)。モルヌピラビル群で有意な入院・死亡率の減少が認められたという結果だった。ちなみにモルヌピラビル投与による有意な入院・死亡低下効果は、ワクチン接種状況別、変異株別(BA.1/BA.2優勢期およびBA.5優勢期)、感染歴別などのサブグループ解析でも一貫していたという。ニルマトレルビルか? モルヌピラビルか?新型コロナでは早期に上市されたこの2つの経口薬について、「いったいどちらがより有効性が高いのか?」という命題が多くの臨床医にあるだろう。承認当時の臨床試験結果だけを見れば、ニルマトレルビルに軍配が上がるが、果たしてどうだろう。実は極めて限定的なのだが、これに答える臨床研究がある。Lancet Infectious Disease誌に2024年1月に掲載されたオックスフォード大学のグループが実施したタイ・バンコクの熱帯医学病院を受診した発症4日未満、酸素飽和度96%以上の18~50歳の軽症例でのニルマトレルビル/リトナビル、モルヌピラビル、対症療法の3群比較試験8)である。実施時期は2022年6月以降でニルマトレルビル/リトナビル群が58例、モルヌピラビル群が65例、対症療法群が84例。主要評価項目はウイルス消失速度(治療開始0~7日)で、この結果ではニルマトレルビル/リトナビル群は対症療法群に比べ、ウイルス消失速度が有意に加速し、モルヌピラビル群はニルマトレルビル/リトナビル群との非劣性比較でモルヌピラビル群が劣性と判定された(非劣性マージンは10%)。さて、今回はまたもやニルマトレルビル/リトナビルとモルヌピラビルで文字数をだいぶ尽くしたため、次回レムデシビル(同:ベクルリー)、エンシトレルビル(同:ゾコーバ)でようやく最後になる。 1) Hammond J, et al. N Engl J Med. 2024;390:1186-1195. 2) Xie Y, et al. BMJ. 2023;381:e073312. 3) Mitsuaki S, et al. Lancet Infect Dis. 2025;25:936-946. 4) Geng LN, et al. JAMA Intern Med. 2024;184:1024-1034. 5) Hammond J, et al. N Engl J Med. 2024;391:224-234. 6) Butler CC, et al. Lancet. 2023;401:281-293. 7) Xie Y, et al. BMJ. 2023;381:e072705. 8) Schilling WHK, et al. 2024;24:36-45.

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隠れた脂肪の蓄積が心臓の老化を加速させる

 腸の周りや肝臓、筋肉などに溜まった脂肪が心臓の老化を速めるとする、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のDeclan O’Regan氏らの研究結果が、「European Heart Journal」に8月22日掲載された。異所性脂肪と呼ばれるそれらの脂肪の蓄積は体型からは判別しにくく、たとえ体重は健康的とされる範囲であっても、そのような脂肪が蓄積していることがあるという。一方、全身の脂肪蓄積の分布とその影響には性差があり、論文の上席著者であるO’Regan氏は、「ある種の脂肪、特に女性の腰や太ももの周りの脂肪は、老化を抑制する可能性がある」と述べている。 この研究では、英国で行われている住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」の参加者2万1,241人のデータが用いられた。MRI画像データから、血管や心臓の機能などに関連のある126種類の指標を特定し、機械学習により参加者それぞれの心臓年齢を算出。実際の年齢との差を割り出した上で、さまざまな部位に蓄積している脂肪の量との関連を検討した。すると、内臓脂肪などの異所性脂肪が多いほど、実際の年齢と心臓年齢との乖離が大きいことが明らかになった。 O’Regan氏は今回の研究結果を、「健康な人でも隠れた脂肪が有害となり得ることが分かった」と総括している。研究結果を詳しく見ると、内臓脂肪の量は、実際の年齢と心臓年齢との乖離の大きさと有意な関連があった(β=0.656〔95%信頼区間0.537〜0.775〕)。また、筋肉に浸潤している脂肪の量(β=0.183〔同0.122〜0.244〕)や肝臓内の脂肪の量(β=1.066〔0.835〜1.298〕)も、同様の関連が認められた。さらに、血液検査の結果と照らし合わせて解析すると、内臓脂肪の蓄積は全身の炎症と関連があり、そのことが心臓の老化を速めている可能性が示唆された。 一方、脂肪の分布と心臓年齢との関連に、男性と女性の間で差が存在することも示唆された。例えば男性では、いわゆる“リンゴ型肥満”と呼ばれるようなお腹周りへの脂肪の分布が、心臓の老化と強く関連していた。その一方で女性では、“洋ナシ型肥満”と呼ばれるような腰や太ももへの脂肪の分布が、心臓の老化を防ぐような関連が見られた。研究者によると、腰や太ももへの脂肪蓄積は女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量と関連しており、エストロゲンは女性の心臓の老化を防ぐように働くという。「脂肪の分布の違いによって、リンゴ型肥満と洋ナシ型肥満に分類され、健康への影響が異なることは以前から知られていたが、なぜその差が生じるのかは、これまで明らかでない点があった」とO’Regan氏は語っている。 この研究からはまた、身長と体重に基づき算出され、肥満や痩せを判定する指標として広く用いられているBMIが、心臓の健康状態を推測する指標としては十分に機能しないことも示された。O’Regan氏は、「BMIでは体のどの部分に脂肪が蓄積しているかを知ることができない。しかしわれわれの研究は、それを知ることの重要性を示している」と強調している。 なお、同氏らの研究グループでは今後、GLP-1受容体作動薬を用いた減量が、内臓脂肪の蓄積や心臓の健康に及ぼす影響を調査することを計画している。

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高齢者がん診療のキホン【高齢者がん治療 虎の巻】第2回

(2)高齢者がん診療のキホン、治療開始前に患者を評価―GAの実際と活用―<今回のPoint>高齢者がん患者にはGAMが推奨されているGAは初回薬物療法前に、スタッフ誰でもが実施できる体制作りが理想GAの結果は、治療方針や介入の判断に役立つ前回は、構造化された意思決定プロセスを辿ることで、Shared Decision-Making(SDM)の質が高まり、さらにGeriatric Assessment(GA)の実施や結果の解釈にもつながることをお伝えしました。今回は、がん薬物療法を予定する高齢患者に対するGAの実際について解説したいと思います。GAはニューノーマルになっている薬物療法を予定する高齢がん患者に対するGAおよびその結果に基づく介入(GA-guided management:GAM)は、すでに国内外のガイドラインで強く推奨されています。たとえば、米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドラインでは、「65歳以上のすべてのがん患者に対して、PSなどの従来の腫瘍学的評価だけでは把握しきれない問題点をGAで明らかにし、その結果に応じた介入を行い、意思決定に反映させるべきである」と記載されています(Evidence quality:High / Strength of recommendation:Strong)1)。また日本でも、「高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024」において、薬物療法を予定する高齢悪性腫瘍患者へのCGAの実施は、「エビデンスの強さA、推奨度1、合意率100%」で推奨されています(図1)2)。これは、GAMによって患者のアウトカムが改善されたとするランダム化比較試験が多数報告されていることが背景にあります。(図1)画像を拡大する加えて、令和5年度からはがん診療連携拠点病院の施設要件3)に「意思決定能力を含む機能評価を実施すること」という項目が追加されており、GAを導入する施設は着実に増加しています。2024年秋の調査(日本臨床腫瘍学会老年腫瘍WG)では約40%の施設がGAを実施していると報告されています。GAはいつ・誰が・どう使う?GAツールとしては、Geriatric8(G8)とCGA7が代表的です。とくにG8は栄養状態に関する評価に優れており、ある程度包括的な機能評価も可能なことから、スクリーニング目的で広く用いられている印象があります(表1)。(表1)G8スクリーニングシート画像を拡大するそして、現場でよく聞かれるのが、「GAはいつ、誰が、どのように評価し、どう活用するのか?」という点です。●いつ?GAMの有効性を示した臨床試験の多くは、初回薬物療法の前にGAを実施しています。したがって、外来または入院時にGAを行い、カンファレンスで結果を共有し、治療レジメンを検討する流れが望まれます。私自身は、病理診断確定後に患者さんへ告知したタイミングで、いったん待合へ移動していただき、その場でGAを実施することが多くあります。●誰が?GAは、医師・看護師・薬剤師など多職種で柔軟に実施できる体制を整えることが理想です。2024年のCGAに基づく診療・ケアガイドラインでは、とくに看護師による実施が強く推奨されています(図2)が、特定の職種に限定されるものではなく、関わるすべての医療者が一定のスキルをもって対応できる環境づくりが重要です。その上で、医師はGAの構成項目や評価の意義を理解しておくことが不可欠です。治療方針を決定する際に、GAの結果がどう活用できるかを判断する力は、まさに医師の重要な役割となります。●どう使う?たとえばG8で15点以上であれば「perfect health」と判断し、標準治療も検討可能です。一方、14点未満であれば、どの項目でスコアを失点しているかを確認し、追加の詳細なGAを行うか、必要な介入を検討する流れとなります。以上の話を踏まえ、前回の症例にGAを実施してみましょう。<症例>(第1回と同じ患者)88歳、女性。進行肺がんと診断され、本人は『できることがあるなら治療したい』と希望している。既往に高血圧症、糖尿病と軽度の認知機能低下があり、パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は1〜2。診察には娘が同席し、『年齢的にも無理はさせたくない。でも本人が治療を望んでいるなら…』と戸惑いを見せる。遺伝子変異検査ではドライバー変異なし、PD-L1発現25%。告知後、看護師が待合でG8を実施したところ、スコアは10.5点(失点項目:年齢、併用薬数、外出の制限など)。改訂長谷川式簡易知能評価(HDS-R)は20点で認知症の可能性あり。多職種カンファレンスでは、免疫チェックポイント阻害薬の単剤投与を提案。薬剤師には併用薬の整理を、MSWには家庭環境の支援を依頼し、チームで治療準備を整えることとした(次回に続く)。GAの結果がカンファレンスで患者情報の一部として共有されるだけでも、必要な介入が可視化され、治療方針の検討がスムーズになることが実感できたのではないでしょうか。次回は、老年医学の視点から見た高齢者がん診療の考え方について、さらに深掘りしてお伝えします。高齢者がん診療でよく登場するGeriatric-8(G8)とは何か?G8はもともと栄養状態の評価を目的に開発されたMNA(Mini Nutritional Assessment)をベースに、Belleraら4)により2005年に開発された高齢がん患者向けの簡便なスクリーニングツールです。CGAで2項目以上の脆弱性のある項目を有する高齢がん患者を感度82%・特異度63%で識別できると報告されており5)、簡便で臨床現場で扱いやすいことから広く用いられています。一方で、日本人やがん種別でのカットオフ値の適正化や、得られた結果をどのように利用すべきかなど、現場での課題も少なくありません。たとえば、日本人の75歳以上の高齢肺がん患者におけるG8陽性率は80%を超えるとの報告もあります。私自身は、G8スコアが15点以上の患者は“perfect health”と判断し、若年者と同様の治療を検討可能と考えています。一方、14点以下の場合は失点項目を確認し、必要な介入を加えたうえで、高齢者に特化したエビデンスのあるレジメンの選択や、full doseで若年者と同様のレジメンを選択する場合には十分な支持療法を必ず併用するなど、対応を検討するようにしています。1)Dale W, et al. J Clin Oncol. 2023;41:4293-4312.2)老年医学会ほか編. 高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024. 2024. 南山堂.3)厚生労働省:がん診療連携拠点病院等の整備について4)Bellera CA, et al. Ann Oncol. 2012;23:2166-2172.5)Bruijnen CP, et al. J Geriatr Oncol. 2021;12:793-798.講師紹介

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GLP-1受容体作動薬は気候変動対策にも有益

 肥満症治療薬として使用されているオゼンピックやゼップバウンドなどのGLP-1受容体作動薬は、単に体重を減らすだけでなく、地球環境の保護にも役立っている可能性のあることが、新たな研究で示された。これらの薬が心不全患者の減量目的で使用されると、温室効果ガス排出量の削減につながるという。米Lahey病院・医療センターのSarju Ganatra氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2025、8月29日~9月1日、スペイン・マドリード)で発表された。 Ganatra氏らは、左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)患者(GLP-1受容体作動薬を投与された患者1,914人、プラセボを投与された患者1,829人)を対象とした4件の臨床試験のデータを統合して解析した。HFpEFとは、心臓の収縮機能は保たれているものの、心筋が硬いために十分に拡張できず、血液を十分に取り込めない状態を指す。米国心臓病学会(ACC)によれば、心不全患者のほぼ半数がこのタイプに分類される。 心不全悪化イベントの発生数は、GLP-1受容体作動薬を投与された患者では54件であったのに対し、プラセボを投与された患者では86件だった。心不全悪化イベントには入院と病院の往復を伴うと仮定して二酸化炭素(CO2)排出量を推算すると、GLP-1受容体作動薬を使用したHFpEF患者の年間CO2排出量は1人当たり9.45kgと推定され、プラセボ群の9.7kgと比べて少ないことが示された。 Ganatra氏は、「この数値をGLP-1受容体作動薬による治療の対象となる何百万人もの患者に当てはめると、20億kg以上のCO2換算量の削減につながる」と言う。同氏らによると、20億kgのCO2は、満席のボーイング747型機の長距離フライト2万便にほぼ相当し、また、この量のCO2を吸収するには、植えられてから10年が経過した約3,000万本の木が必要になるという。 Ganatra氏はさらに、ESCのニュースリリースの中で、医療廃棄物の発生量や水の使用量についても、同様の規模の削減が見られた」と述べている。その上で同氏は、「今回の研究は、個々の小さな改善の積み重ねが、集団全体として大きなインパクトをもたらすことを明確に示している」と説明している。 さらに、GLP-1受容体作動薬を使用した患者では食物の摂取量が減り、そのことが気候にも良い影響を与えると推定された。Ganatra氏らの推計によると、プラセボ群と比べてGLP-1受容体作動薬群では1日当たりの摂取カロリーが減少したことで年間およそ695kg分のCO2排出量の削減につながったという。 今回の研究結果についてGanatra氏は、「薬物治療から患者の健康状態の改善と地球環境の健全化という2つのメリットを得られる可能性を示した結果だといえる」と述べ、「将来的には政策立案者が医療技術の評価や医薬品の保険適用の決定、医薬品調達の枠組みなどにサステナビリティの指標を組み込むことを期待している」と付け加えた。 Ganatra氏らは次の段階として、実際の排出データと臨床アウトカムを用いてモデルを検証する予定だ。同氏は、「将来的には、臨床試験のデザインや医薬品の規制プロセス、処方の決定に環境への影響が組み込まれ、医療システムがプラネタリーヘルス(地球環境と人類の健康の両立)に関する目標と連携できるようになることを期待している」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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アルドステロンの心血管系に対する直接作用は?(解説:浦信行氏)

 アルドステロンは腎臓におけるNa再吸収亢進作用などにより体液量増大、Na貯留、昇圧作用などを介して心臓を含む臓器障害を発症・増悪させる。重症腎機能障害を有さない症例において、スピロノラクトンを中心とした鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は心不全や心血管死を有意に減少させることが、いくつかの臨床試験で明らかになっている。 一方、透析療法を受けている症例での心保護作用は明らかではなく、安全性も確立されていない。本年8月号のLancet誌では同一研究グループの2つの論文が掲載された。1つは3,689例を対象とし、スピロノラクトン25mg使用群と対照群に2分したRCTのACHIEVE試験(Walsh M, et al. Lancet. 2025;406:695-704.)で、もう1つはこの試験を含む4,349例を対象としたメタ解析(Pyne L, et al. Lancet. 2025;406:811-820.)である。この2論文の解説はCareNet.com(ジャーナル四天王2025年8月28日配信、9月3日配信)に詳述されており、ぜひ一読願いたいが結果はいずれも有意な効果を示さなかった。また、安全性に関しては実薬群で高K血症と女性化乳房が有意に多かった。 腎作用を期待できない症例ではMRAの心保護効果は証明できなかったわけであるが、この研究グループは2016年に先行メタ解析研究(Quach K, et al. Am J Kidney Dis. 2016;68:591-598.)の結果を報告している。その結果は、実薬群の高K血症は有意に多かったが、心血管死や全死亡が対照群の34~40%に有意に抑えられていた。しかし採用された9試験の合計症例は829例にとどまっており、またバイアス・リスクが低いものは5〜6試験で、かつ半数以上の試験が1年以内の短期試験であり、著者らも小規模試験で質が高くないものであることから、より十分な試験期間と規模の大きい質の高い試験で再度検討する必要があるとの考察であった。 今回のACHIEVE試験は大規模で質の高い試験であり、メタ解析もACHIEVE試験に644症例で検討したALCHEMIST試験が加わっており、症例数や質の部分でも高い試験の解析であったが、MRAの有意性は示されなかった。MRは腎臓のみならず、心筋や血管にもあり、また心筋局所からアルドステロン生成・分泌が明らかとなっており、心肥大や線維化などの作用が報告されている。腎作用が期待できない透析例では心作用の意義は大きくないとの解釈もできるが、これらの成績はステロイド骨格を有するMRAでの検討である。これらのMRAは他のステロイド受容体への作用が無視できない。事実、女性化乳房の発症が有意に多かった。 また、ACHIEVE試験での1次エンドポイントは女性ではHR:1.23(0.91~1.67)、男性では0.81(0.66~0.99)で性差があり、かつ、男性では19%有意なイベント抑制効果の可能性も示された。今後は非ステロイド骨格MRAでの検討や、性別での検討も必要になろう。また、透析例の心機能の評価も、より厳密な評価条件が必要であろう。UCGでの評価は体液量の変化でEFは大きく異なる。2群間比較試験では、群分けの段階で一定の条件下での評価が必要である。

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ChatGPTでロールプレイを行う【タイパ時代のAI英語革命】第6回

ChatGPTでロールプレイを行う学んだ英語を「使えるスキル」へと昇華させるためには、もう一歩進んだトレーニングが不可欠です。それが「ロールプレイ」です。ロールプレイは、特定の役割になりきって対話する練習法で、これにより、学んだ単語や表現を実際の文脈の中で使う練習ができ、英語での思考回路と瞬発力を効果的に鍛えることができます。何より、AIが相手であれば、失敗を恐れる必要はありません。納得がいくまで、何度でも同じ場面の練習を繰り返すことができます。ここでは、テキストベースで行う「チャット機能でのロールプレイ」と、より実践的な「音声モードでのロールプレイ」の2つの方法について、具体例を交えて解説します。チャット機能でロールプレイを行うまずは、キーボードで文字を打ち込みながら行う、テキストベースのロールプレイです。こちらは、自分のペースでじっくり考えながら、正確な語彙や文法を使って応答する練習に適しています。プロンプト例#役割あなたはレストランの店員です。#命令レストランの客である私と、英語でロールプレイを行ってください。すると、以下のようなロールプレイが可能です。ServerGood evening, and welcome! My name is Jamie, and I’ll be taking care of you tonight. Can I start you off with something to drink ― perhaps still or sparkling water, or would you like to see our wine list?自分Hi, Jamie. We would like to have still water.ServerAbsolutely, still water it is. I’ll bring that right out for you.In the meantime, would you like a few more minutes to look over the menu, or are you ready to hear about our chef’s specials for the evening?自分We'll look over the menu, thanks.ServerOf course ― take your time. If you have any questions about the menu or dietary preferences, just let me know.I’ll be back shortly with your water.このようにして会話を続けることで、よく使われる表現をインプット・アウトプットすることができます。もし、自分の返答に詰まったり迷ったりしたときは日本語で「答え方の例を教えてください」と質問したり、「『何がお勧めですか』と聞きたいのですが、英語で何と言えばいいですか?」と質問したりすれば、すぐに適切な表現を教えてくれます。また、前回紹介した“Read Aloud”の機能を使えば、ChatGPTが作成した英文を音読してくれるので、リスニング強化につながります。また、“Dictation”の機能を利用すれば音声で入力することができるため、スピーキングの練習を行うこともできます。さらに、一通りの会話が終わった後に、「文法ミスや、より適切な表現があればフィードバックしてください」と入力すれば、復習ができます。このようなやりとりを繰り返し、まずはよく使われる表現に慣れていきましょう。音声モードでロールプレイを行うテキストでのロールプレイに慣れてきたら、次はぜひ「音声モード」でのロールプレイに挑戦してみてください。前回紹介した音声会話機能を使うことで、よりリアルな会話に近い状況で瞬発力を鍛えるトレーニングが可能です。音声モードでのロールプレイは、その場で即座に聞き取り、応答する必要があるため、リスニング力とスピーキング力が同時に、そしてより実践的に鍛えられます。テキストベースで行っていたチャット画面で、音声モードのアイコンをタップし「最初から英語でロールプレイをしてください」などと話し掛けると、音声モードでの会話が可能です。英語のレベルを設定する音声モードで英会話の練習をすると、ChatGPTがネイティブスピーカーのペースで話すため、「英語が速すぎて聞き取れない」「話している途中に割り込まれる」といったストレスを感じることが少なくありません。そうした場合には、あらかじめ英語のレベルや話すスピードを指定しておくことをお勧めします。たとえば、「なるべくゆっくり話してください」「簡単な英語で話してください」などと伝えると、より自分に合ったペースで会話を進めることができます。また、自分の練習したい英語レベルについては、より客観的かつ明確に難易度を示すために、CEFR(Common European Framework of Reference for Languages:ヨーロッパ言語共通参照枠)の基準を活用することをお勧めします。CEFRでは、英語力をA1(初心者)からC2(熟練者)まで6段階に分類しており、各レベルに応じた語彙や表現の難易度が定められています。現在の自分の実力に近いレベル、あるいは1つ上のレベルを指定することで、無理なく効率的に学習を進めることができます。以下にCEFRのレベルを簡単にまとめました。表:CEFRのレベル画像を拡大する以下は、音声モードでの練習時に活用できるプロンプトの例です。プロンプト例#役割あなたはレストランの店員です。#命令レストランの客である私と、英語でロールプレイを行ってください。#制約条件CEFR A2レベルの英語を使用してください。できるだけゆっくり、はっきり話してください。私が話し終わるまでは返答せず、待ってください。話が止まっている場合は相づちだけ打ってください。このように、役割やレベル、話す速度、会話のタイミングなどの詳細な指示をあらかじめ設定することで、より自分に合った練習ができる音声会話モードになります。ストレスなくリスニングやスピーキングのトレーニングを続けるために、ぜひ積極的に活用してください。

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20歳以降の体重10kg増加が脂肪肝リスクを2倍に/京都医療センター

 20歳以降に体重が10kg以上増えた人は、ベースライン時のBMIにかかわらず5年以内に脂肪肝を発症するリスクが約2倍に上昇し、体重変動を問う質問票は脂肪肝のリスクが高い人を即時に特定するための実用的かつ効果的なスクリーニング方法となり得る可能性があることを、京都医療センターの岩佐 真代氏らが明らかにした。Nutrients誌2025年8月6日号掲載の報告。 脂肪性肝疾患は、心血管疾患や代謝性疾患、慢性腎臓病のリスク増大と関連しており、予防と管理のための効果的な戦略の開発が求められている。脂肪肝に関連する質問票項目を特定することで、脂肪性肝疾患の高リスク者の早期発見につながる可能性があることから、研究グループは一般集団の健康診断データベースから収集した生活習慣情報を縦断的に分析し、脂肪肝リスクの高い個人を特定する質問票の有用性を検討した。 対象は、2011~15年にかけて、武田病院健診センターの健康診断受診者のうち、ベースライン時には脂肪肝は認められず、糖尿病や高血圧、脂質異常症、肝疾患などの既往歴もない20歳以上の1万5,063人であった。ベースライン時のBMIに基づいて、BMI値22未満群、22〜25未満群、25以上群の3つのグループに分類した。食習慣と生活習慣に関する質問票項目は、厚生労働省が特定健康診査事業のために提供している標準質問票に基づいて作成され、(1)食習慣・行動、(2)喫煙・飲酒習慣、(3)運動習慣、(4)体重変動、(5)睡眠の23項目で構成されていた。Cox比例ハザードモデルを用いて、ベースライン時の質問票データと5年間の追跡期間における脂肪肝発症率との関連性について、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・1万5,063人のうち、女性は8,294人(55.1%)、平均年齢は47.1歳、平均BMIは21.4であった。・追跡期間中央値4.2年で、1,889例(12.5%)が脂肪肝を発症した。脂肪肝の発症率は、ベースライン時のBMI値が高いほど有意に高かった(傾向のp<0.001)。 -BMI値22未満群 551/9,270例(5.9%) -BMI値22〜25未満群 898/4,519例(19.9%) -BMI値25以上群 440/1,274例(34.5%)・年齢、性別、代謝性疾患および肝障害に関連する因子を調整した後、脂肪肝発症の最も強い危険因子は20歳以降の10kg以上の体重増加であり、とくにBMI値22未満群で顕著であった。 -全体集団 調整HR:2.11、95%CI:1.90~2.34、p<0.001 -BMI値22未満群 調整HR:2.33、95%CI:1.86~2.91、p<0.001 -BMI値22〜25未満群 調整HR:1.43、95%CI:1.25~1.63、p<0.001 -BMI値25以上群 調整HR:1.41、95%CI:1.12~1.77、p=0.003・すべてのBMI群に共通する脂肪肝リスクの低減に関連する質問票項目は特定されなかったが、22未満群では牛乳および乳製品の日常摂取(調整HR:0.75、p=0.001)、22〜25未満群では海藻およびきのこの日常摂取(調整HR:0.63、p=0.006)、25以上群では睡眠満足度(調整HR:0.80、p=0.039)がそれぞれ脂肪肝リスクの低減と最も強く関連していた。 これらの結果より、研究グループは「本研究は、脂肪肝発症のリスクを同定し、低減させるための質問票の潜在的な有用性を強調するものである。質問票に基づいて健診当日にリスクを伝え、生活習慣改善につなげる即日フィードバックのアプローチは、脂肪肝発症のリスクを低減させ、脂肪性肝疾患の予防に貢献する可能性がある」とまとめた。

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低リスク急性心筋梗塞、PCI後1ヵ月でアスピリンは中止可能か/NEJM

 低リスクの急性心筋梗塞で、血行再建術を受けた後、合併症の発現なく1ヵ月間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を完了した患者では、1年後(無作為化から11ヵ月後)の心血管・脳血管イベントの発生に関して、P2Y12阻害薬単剤療法はDAPTに対し非劣性であり、出血イベントの発生率は低減したことが示された。イタリア・University of Padua Medical SchoolのGiuseppe Tarantini氏らTARGET-FIRST Investigatorsが、多施設共同非盲検無作為化対照比較試験「TARGET-FIRST試験」の結果を報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年8月31日号で発表された。欧州40施設で1,942例を登録 TARGET-FIRST試験は、最新の薬剤溶出性ステント(DES)を用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受け、虚血イベントや出血イベントのリスクが低い急性心筋梗塞患者の抗血小板療法において、DAPTを1ヵ月間行った時点でのアスピリン早期中止の、DAPT継続に対する非劣性を検証する目的で、2021年3月~2024年3月に、欧州の40施設で参加者を登録して行われた(フランス・MicroPortの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、急性心筋梗塞発症から7日以内に生体分解性ポリマーを用いたrapamycin(和名:シロリムス)溶出性ステント(MicroPort製)による血行再建術が成功し、その後1ヵ月間、虚血イベントや大出血イベントの発現なしにDAPT(P2Y12阻害薬[プラスグレル、チカグレロル、クロピドグレルから選択]+アスピリン)を完了した患者であった。 被験者を、アスピリンの投与を中止してP2Y12阻害薬単剤に移行する群、またはDAPTを継続する群に、1対1の割合で無作為に割り付け、11ヵ月間投与した。 1,942例を登録し、P2Y12阻害薬単剤群に961例、DAPT継続群に981例が無作為化された。PCI施行から無作為化までの期間中央値は37日であった。全体の平均(±SD)年齢は61.0(±10.6)歳、78.4%が男性で、14.5%が糖尿病、38.7%が高血圧、27.8%が高コレステロール血症を有していた。 無作為化の時点で、P2Y12阻害薬は74.0%でチカグレロル、20.9%でプラスグレル、5.1%でクロピドグレルが処方されていた。また、97.0%がスタチン、79.1%がβ遮断薬、76.7%がACE阻害薬またはARBの投与を受けていた。主要複合アウトカムは非劣性 主要アウトカムは、無作為化から11ヵ月の時点での全死因死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、大出血(BARC出血基準タイプ3または5)の複合とした。非劣性マージンは1.25%ポイントと定義した。 11ヵ月後の主要アウトカムのイベントは、P2Y12阻害薬単剤群で20例(2.1%)、DAPT継続群で21例(2.2%)に発現し(群間差:-0.09%ポイント、95%信頼区間[CI]:-1.39~1.20、非劣性のp=0.02)、P2Y12阻害薬単剤群のDAPT継続群に対する非劣性が示された。 主要アウトカムの個別の構成要素のイベント発生状況は次のとおりだった。(1)全死因死亡(P2Y12阻害薬単剤群0.4%vs.DAPT継続群0.2%、ハザード比[HR]:2.04[95%CI:0.37~11.14])、(2)心筋梗塞(0.7%vs.1.1%、0.72[0.27~1.88])、(3)ステント血栓症(definiteまたはprobable)(0.1%vs.0%)、(4)脳卒中(0.3%vs.0.2%、1.53[0.26~9.18])、(5)大出血(0.7%vs.0.7%、1.02[0.36~2.91])。BARCタイプ2、3、5の出血イベントが有意に改善 主な副次アウトカムであるBARC出血基準タイプ2、3、5の出血イベントは、DAPT継続群で54例(5.6%)に発生したのに対し、P2Y12阻害薬単剤群では25例(2.6%)と有意に少なく(HR:0.46、95%CI:0.29~0.75、優越性のp=0.002)、P2Y12阻害薬単剤群の優越性を確認した。 重篤な有害事象の頻度は両群で同程度であり、P2Y12阻害薬単剤群で108例(11.2%)に144件、DAPT継続群で122例(12.4%)に157件が報告された。 著者は、「今回得られた知見は、虚血イベントや出血イベントのリスクが低い患者を慎重に選択した集団における、早期の解剖学的に完成度の高い血行再建術という特定の条件下で解釈すべきであり、広範で異質性の高い患者集団に直接的に一般化できるものではない」としている。

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透析患者におけるアルドステロン拮抗薬の位置付けを再考する―ALCHEMIST試験の結果から(解説:石上友章氏)

 アルドステロンは副腎皮質球状帯より分泌される鉱質コルチコイドであり、その主要な作用部位は腎臓遠位尿細管に属するアルドステロン感受性遠位ネフロン(aldosterone-sensitive distal nephron:ASDN)である。アルドステロンは核内因子である鉱質コルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR)と結合し、アルドステロン誘導性タンパク(aldosterone-inducible protein:AIP)の遺伝子発現を活性化することにより、ナトリウム再吸収およびカリウム排泄を促進する。この作用特異性は、11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 2(11βHSD2)によって担保される。血中に高濃度に存在し、かつMR親和性においてアルドステロンを凌駕するコルチゾールが、11βHSD2により不活性型のコルチゾンへ変換されることで、MR結合がアルドステロンに選択的に保証されているのである。この点において、アルドステロンは生理的に特異的なシグナル伝達を遂行するホルモンと位置付けられる。 一方で、腎臓以外の臓器においてアルドステロンは線維化、炎症、血管硬化を誘導しうることが知られ、心血管・腎保護的な観点からMR拮抗薬の臨床応用が注目されてきた。小規模試験や観察研究では、心血管イベント抑制効果を示唆する報告も散見されたが、バイアスや症例数の制約から解釈には限界があった。こうした背景の下に実施された大規模二重盲検無作為化試験が、今回Lancet誌に報告されたALCHEMIST試験である。 ALCHEMISTは血液透析中の腎不全患者で、かつ心血管リスクを有する症例を対象に、スピロノラクトン25mg/日とプラセボを比較した多施設共同試験である。主要複合エンドポイント(心血管死、非致死性心筋梗塞、急性冠症候群、脳卒中、心不全入院)の発症率は両群で同等であり(ハザード比:1.00、95%信頼区間:0.73~1.36)、有意差は認められなかった。さらに、既報の無作為化比較試験を統合したメタ解析においても、MR拮抗薬は全死亡あるいは心血管死亡を減少させないことが明らかとなった。安全性の面でも高カリウム血症の発症率に有意差はなく、臨床的便益を裏付ける根拠は得られなかった。 本試験の結果は、透析患者においてアルドステロン拮抗薬の腎外臓器保護効果が臨床的アウトカムの改善に結び付かないことを明確に示している。腎不全透析患者に特徴的な病態、すなわちRAAS活性やアルドステロン作用の修飾が背景にある可能性は否定できないが、いずれにしても現時点で「腎外保護」を目的としたMR拮抗薬の透析患者への投与は支持されない。 以上より、アルドステロンの生理的特異性を再確認するとともに、その腎外作用を臨床応用へと展開するには、病態特異的なメカニズム解明と適格集団の同定が不可欠であることを示唆する結果と解釈される。

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透析患者が被災したら?【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第6回

透析患者が被災したら?豪雨の後の水害で多くの家屋が浸水し、停電、断水のため医療機関も機能不全になっています。避難所のスタッフから、維持透析を週3回行っていて明日が透析日という避難者がいて、対応について相談を受けました。どうすればよいでしょうか?血液透析には、1人当たり1回の透析で100L以上の大量の水が必要であり、装置を動かすには当然電気が必要です。大災害で施設や設備が損傷したり、断水や停電が起きたりすると血液透析ができなくなり、透析患者の生命は危険にさらされます。事実、東日本大震災では、一時は数百施設が透析不能となり、1,300名以上の患者さんが一時的に被災県外に移動しました。熊本地震でも約30施設で透析ができなくなったことが報告されています。普段からの備え透析施設は、支援透析施設が使えるように、患者カードや手帳、透析記録のコピーなど災害時に必要な情報を患者に提供します。他施設で透析をするうえで必要な情報ドライウェイト氏名・年齢アレルギーがあればその内容感染症の有無(慢性肝炎など)処方されている薬の種類とその飲み方人工血管の場合血流の向き普段透析を受けている施設の連絡先普段から患者さんに対して、災害時は透析時間が短くなったり、次の透析までの間隔が長くなったりする場合があることを説明し、自分で自分の身を守ることの大切さを強調しましょう。避難所に避難した場合は、透析患者であることを自治体の職員やボランティア、巡回の医師・看護師に申し出るよう指導をしておくことが必要です。また、透析スタッフもしっかり訓練しておくことも重要です。災害時には、基本的には各自治体が透析災害対策本部のネットワークを利用して、行政・透析関連企業および該当都道府県下のすべての透析施設間の連絡ができるようになっています。日本透析医会の災害時情報ネットワークのウェブサイトも参考にしてください1)。アメリカでは、ハリケーンに備え、前もって透析をしておくことで透析患者の予後を改善することに成功しています。台風など、あらかじめ災害が起こることが予期できる場合には、前倒しをして透析をしておくことも考慮してもいいかもしれません2,3)。避難所での対応【食事】避難所では、非常食や配給食が提供されることが多く、透析患者にとっては平常時よりも尿素窒素やカリウムの数値が高くなる危険性があります。避難所では、水分は日常の3分の2程度に減らすように指導されている患者さんが多いですが、過度な脱水は血栓症の原因にもなります。水分制限は食事摂取の低下の原因にもなります。一方で、食事量が不足してカロリーが減ると、体内のタンパク質が壊れて尿素窒素やカリウムが上昇するため、栄養は十分に摂る必要があります。災害時に透析患者が食事面で留意すべき点食塩、タンパク質、カリウム、リンを平時より大幅に制限する1日の水分量は「尿量+300~400mL以下」に抑えるエネルギー(カロリー)をしっかり確保するカロリー確保には、白米、麺類、パンなど炭水化物が有効です。ただし、麺類やパンには意外に多くの塩分が含まれているため注意が必要です4)。そこで、「カロリーメイト」のようなバランス栄養食品が勧められます。カロリーメイトは、十分なカロリーが摂れ、カルシウム、ビタミン、食物繊維などを多く含む一方、塩分やタンパク質、リン、カリウムの摂取量を比較的抑えやすいというメリットがあります。参考カロリーメイト(ブロックタイプ:1箱4本入り)の場合、カロリー400kcal、カルシウム200mg、食物繊維2g、タンパク質8~9g、カリウム90~100mg、リン80~100mg、食塩相当量約0.7~0.9gです(大塚製薬「カロリーメイト」サイトより)。【応急処置】避難所の医療資源と環境でできることは限られていますが、透析患者の生命を奪うのは主にうっ血性心不全と高カリウムです。危険な高カリウム血症に対しては、内服薬としては陽イオン交換樹脂製剤のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(商品名:ケイキサレート)が使われることがあります。陽イオン交換樹脂製剤は大腸でナトリウムとカリウムを交換しますが、カルシウムも吸着するため、カリウムに対する選択性は乏しいといわれています。ケイキサレート30gを20%ソルビトール50mLに溶解して内服してもらいます。非ポリマー無機陽イオン交換化合物の経口剤であるジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム(商品名:ロケルマ)は、胃で吸収され、カリウムに対する選択性が比較的高いのですが、災害時の使用については即効性の面を考慮し、薬剤師や製造元への確認が必要です。避難所では難しいかもしれませんが、血糖値を測定しながらインスリン+グルコース療法を行い、透析までの緊急回避を行う場合もあります。ヒューマリンR注10単位+50%ブドウ糖550mLを静脈注射し、その後は10%ブドウ糖液を50mL/hで投与する方法が提唱されています5,6)。災害時要配慮者である透析患者の被災時の対応について概説しました。災害医療は、あくまで日常の救急医療の延長であり、普段から「もしも」のことを意識しておくことが必要なことは言うまでもありません。 1) 日本透析医会 災害時情報ネットワーク 2) Lurie N, et al. Early dialysis and adverse outcomes after Hurricane Sandy. Am J Kidney Dis. 2015;66: 507-512. 3) Foster M, et al. Personal disaster preparedness of dialysis patients in North Carolina. Clin J Am Soc Nephrol. 2011;6:2478-2484. 4) Inoue T, Nakao A, Kuboyama K, Hashimoto A, Masutani M, Ueda T, Kotani J. Gastrointestinal symptoms and food/nutrition concerns after the great East Japan earthquake in March 2011: survey of evacuees in a temporary shelter. Prehosp Disaster Med. 2014;29:303-306. 5) Fadel E, et al. Scoping Review of Kidney Patients and Providers Perspectives on Disaster Management. Kidney Int Rep. 2025;10:1346-1359. 6) Lempert KD, et al. Renal failure patients in disasters. Disaster Med Public Health Prep. 2019;13:782-790.

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先進医療技術の普及により1型糖尿病患者の血糖管理が大きく改善

 先進的テクノロジーを用いた医療機器の普及によって、1型糖尿病患者の血糖管理状態が顕著に改善しているとする研究結果が、「JAMA Network Open」に8月11日掲載された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のMichael Fang氏らの研究によるもので、血糖コントロールが良好(HbA1c7%未満)の18歳未満の患者の割合は、2009年は7%であったものが2023年には19%となり、成人患者では同期間に21%から28%に増加したという。 研究者らによると、これらの改善は、持続血糖モニターやインスリンポンプの技術革新によるところが大きいという。Fang氏は、「かつて、1型糖尿病患者の血糖コントロールは困難なことが多かった。こうした顕著な改善は喜ばしい変化だ」と述べている。ただし一方で、1型糖尿病患者の多くが、いまだに十分な血糖コントロールができていないことを、研究者らは指摘している。 米国糖尿病学会(ADA)によると、米国の1型糖尿病患者数は約200万人であり、そのうち30万4,000人は小児や10代の若者で占めている。1型糖尿病は膵臓のインスリン産生細胞が破壊されてしまう自己免疫疾患で、発症後は生存のためにインスリン療法が必須となる。従来のインスリン療法は、指先穿刺による血糖測定とインスリン注射を頻回に行う必要があり、また低血糖対策のための甘い物を常に身に着けておくことが欠かせない。一方、近年になり、持続血糖モニター、および、その測定結果を利用するアルゴリズムに基づき必要なインスリンを自動的に注入するポンプが普及し、安定した血糖値を維持できるようになってきた。 今回報告された研究には、約16万人の成人患者および約2万7,000人の18歳未満の小児・若年患者の医療記録が用いられた。分析の結果、2009~2023年の間に、前述のように血糖管理が良好な患者の割合が顕著に増加していた。その背景として、持続血糖モニターを使用している患者の割合は、小児・若年患者では4%から82%へと20倍以上に増加し、成人患者では5%から57%へと10倍以上に増加していた。また、インスリンポンプを使用している患者の割合は同順に、16%から50%、11%から29%に増加していた。2023年には双方のデバイスを利用している患者が、小児・若年者の47%、成人の22%を占めていた。 ただし、論文の上席著者で同大学院のJung-Im Shin氏は、「このような改善は喜ぶべきことだが、1型糖尿病患者の大半はいまだ最適な血糖コントロールを達成できておらず、改善の余地が残されていることを忘れてはならない」と話している。また、医療格差も認められ、先進的医療機器を利用し良好な血糖コントロールを維持しているのは、白人や民間保険に加入している患者に多いという。例えば18歳未満の患者の中で、良好な血糖コントロールを維持している割合は、白人では21%であるのに対し、ヒスパニック系では17%、黒人では12%にとどまっていた。 なお、研究グループでは今後さらに詳しい調査を続け、心臓病や腎臓病などの糖尿病に多い合併症の罹患率の変化も明らかにすることを計画している。

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GLP-1RAが2型糖尿病患者のGERDリスク増大と関連

 2型糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の処方が、胃食道逆流症(GERD)のリスク増大と関連していることを示すデータが報告された。GLP-1RAが処方されている患者では、SGLT2阻害薬(SGLT2i)が処方されている患者に比べて、GERDおよびGERDに伴う合併症の発症が有意に多く認められるという。全南大学校(韓国)のYunha Noh氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に7月15日掲載された。 2型糖尿病および肥満の治療薬であるGLP-1RAは胃排出遅延作用を有しており、これが血糖上昇抑制や食欲低下に部分的に関与していると考えられている。しかし一方でこの作用は、理論的にはGERDのリスクとなり得る。とはいえ、GLP-1RAの処方とGERDとの関連を示す大規模な研究に基づくエビデンスは十分ではないことから、Noh氏らは英国の臨床データベース(Clinical Practice Research Datalink)を用いて、SGLT2iを実薬対照とするターゲット試験エミュレーション研究を実施し、GERDおよびGERD関連合併症の発症リスクを比較した。 2013~2021年に、GLP-1RAまたはSGLT2iの新規処方が開始されていた18歳以上の成人2型糖尿病患者を2022年3月31日まで追跡し、主要評価項目であるGERDの発症、および副次評価項目であるGERD関連合併症の発症状況を把握。傾向スコアに基づき背景因子を精密層別化(fine stratification)して重み付けした上で、リスク差およびリスク比を算出した。 GLP-1RAが新規処方されていた患者は2万4,708人、SGLT2iが新規処方されていた患者は8万9,096人だった。中央値3.0年の追跡で、SGLT2i群に対するGLP-1RA群のGERD発症リスク比は1.27(95%信頼区間1.14~1.42)であり、リスク差は100人当たり0.7だった。また、GERD関連合併症については、リスク比が1.55(同1.12~2.29)、リスク差は1,000人当たり0.8だった。 著者らは、本研究の限界点として、GERDリスクに影響を及ぼし得る食習慣を含む、ライフスタイル関連因子が把握されていないことなどによる残余交絡が存在する可能性を挙げ、「追試による検証が必要」としている。その上で、「われわれの研究結果は、2型糖尿病患者に対するGLP-1RAの使用はSGLT2iを使用した場合に比較し、GERDの発症とその合併症のリスクを高めることを示唆している」と結論。また、「医師や患者はGLP-1RAがGERDリスクに影響を及ぼし得ることを認識しておくべき」とし、「医師は適切なタイミングで予防および治療介入を行う必要がある」と付け加えている。 なお、2人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

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長らく日の目を見なかったアミリンが抗肥満薬として復活した(解説:住谷哲氏)

 アミリン(amylin)、別名膵島アミロイドポリペプチド(islet amyloid polypeptide:IAPP)は、インスリンと同時に膵β細胞から分泌されるホルモンである。アミリンには消化管運動調節作用があり食後の血糖上昇を抑制することから、すでに20年前にアミリンアナログであるpramlintideが商品名SymlinとしてFDAに血糖降下薬として承認されている(日本では未承認)。しかしpramlintideは半減期が短く、1日3回の注射が必要であるためほとんど使用されていない。 アミリンは当初から食欲中枢に作用して食欲を低下させることが知られていた1)。そこでアミリンの分子構造を変化させることで週1回投与を可能にしたcagrilintideが抗肥満薬として開発された。プラセボと比較した第II相試験では、cagrilintide 2.4mgはプラセボと比較して9.7%の体重減少をもたらした2)。さらに本試験の前段階である第Ib相の臨床試験において、cagrilintide 2.4mg+セマグルチド2.4mg(CagriSema)の投与は17.1%の体重減少をもたらすことが報告されている3)。 本論文は2型糖尿病を合併していない肥満患者に対するCagriSemaの体重減少作用をプラセボおよびcagrilintide、セマグルチドそれぞれ単剤と比較した第IIIa相試験の報告である(2型糖尿病合併肥満患者に対する試験はREDEFINE 2として同誌に同時掲載されている)。その結果はCagriSemaの最大投与量2.4mgで53.6%の患者に20%以上の体重減少が認められた。この結果は、CagriSemaがGLP-1受容体作動薬を含めた抗肥満薬のなかでは最も強力であることを示している。有害事象もcagrilintideとセマグルチド単剤と同様に消化器症状が中心であり、CagriSemaによる新たな有害事象は認められなかった。唯一の懸念材料はCagriSema群で2例の死亡があり、そのうち1例が自殺とされている点である。 わが国では現在セマグルチド(商品名:ウゴービ)およびチルゼパチド(商品名:ゼップバウンド)が抗肥満薬として使用可能である。随時服用可能な経口GLP-1受容体作動薬であるorforglipronも近々抗肥満薬として承認申請予定であり、GIP/GLP-1/Glucagonのトリプルアゴニストであるretatrutideも抗肥満薬として遠からず申請されると思われる。まさに抗肥満薬の百花繚乱時代であるが、専門医としては体重減少の先にある臨床アウトカムの改善を見据えて、適切な薬剤を適切な患者に選択するという基本を忘れてはならない。

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ChatGPTで場面別の英会話を練習する【タイパ時代のAI英語革命】第5回

ChatGPTで場面別の英会話を練習する国際学会への参加、海外の医療機関での研修、あるいは外国人の患者との雑談など、医師が英語を必要とする場面は、医療現場だけに限りません。空港での手続き、レストランでの注文、ホテルでのリクエストといった日常的な場面での円滑なコミュニケーションもまた、海外での経験をより豊かで実りあるものにするために不可欠です。しかし、こうした特定の場面で使われる独特の語彙や表現を、網羅的に学習するのは容易ではありません。旅行英会話集の書籍は画一的な内容で、必ずしも自分の状況に完全に一致するわけではありませんし、分厚い単語帳を最初から覚えていくのも忙しい医師にとって現実的ではありません。そこで活用するべきなのが生成AIです。ユーザーの要求に応じ、個々の「場面」を想定した、自分だけのオーダーメイドの単語・表現集を作成することができます。AIに「場面」を指定して、自分だけの単語帳を作る使い方は非常にシンプルです。自分が英語表現を知りたい「場面」を具体的に指定し、単語やフレーズをリストアップしてもらうだけです。たとえば、「(場面)でよく使われる英単語と英語表現を○個、日本語訳と一緒にリストアップしてください」などと入力すれば、オリジナルの単語帳や表現リストを作成することができます。プロンプト例1「米国の国際学会に参加します。空港の入国審査でよく使われる英語表現を5個、日本語訳と一緒にリストアップしてください」回答例回答例画像を拡大するこれらの基本的な表現は、自然と英語が出てくるようになるまで何度も声に出して練習することで身に付きます。簡単な旅行英会話であれば問題なく話せるものの、複雑な内容になるとわからなくなる…という場合は、プロンプトに「難しい」や「日本人になじみのない」などといった表現を加えることで、難易度を調整できます。プロンプト例2「米国のホテルのチェックインでよく使われる英語表現の中で、日本人になじみのない、やや難しい英語表現を5個、日本語訳と一緒にリストアップしてください」回答例回答例画像を拡大する実際の場面を想定してこれらの英語表現に慣れておくことで、現場でスムーズ&スマートに対応できるでしょう。

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フルーツジュースの適度な摂取が糖尿病リスクを減らす/東京科学大

 フルーツジュースは、2型糖尿病とどのように関連するのであろうか。このテーマについて、東京科学大学大学院医歯学総合研究科の河原 智樹氏らの研究グループは、国内13の大学や病院が参加する大規模調査「J-MICC研究」に登録された1万3,769人分のデータを用い、フルーツジュースを飲む頻度と2型糖尿病との関連を調査した。その結果、遺伝的リスクが高い人ほど、適度にフルーツジュースを飲むことで糖尿病にかかりにくくなるという結果が判明した。この研究結果は、British Journal of Nutrition誌オンライン版2025年7月10日号に掲載された。フルーツジュースが糖尿病の予防になる可能性 研究グループは、2型糖尿病の多遺伝子リスクスコア(PRS)に基づいて、フルーツジュースと2型糖尿病の関連性について、異なる遺伝的リスクを有する群において、フルーツジュースが2型糖尿病のリスクに異なる影響を与えるかどうかを検討した。日本人1万3,769人を対象とした横断研究である日本多施設共同コホート研究(J-MICC)のデータを使用した。 主な曝露因子はフルーツジュースの摂取頻度で「飲まない/1日1杯未満または1日1杯以上」と分類した。2型糖尿病のPRSとして、東アジアの集団を用いて開発されたPGS002379を選択した。主要なアウトカムは、参加者が報告した医師の診断に基づく2型糖尿病とした。 主な結果は以下のとおり。・2型糖尿病のPRSが高い群では、フルーツジュースの摂取と2型糖尿病の間に有意な逆相関が認められた(1日1杯未満でオッズ比[OR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.65~0.93、1日1杯超でOR:0.54、95%CI:0.30~0.96)。・しかし、この関連はPRSが低い群では認められなかった。・フルーツジュースの摂取は、とくに遺伝的に2型糖尿病の高いリスク群で、2型糖尿病と逆相関していた。

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きつい運動の前の減量は受傷発生を減少させる

 社会的に一番きつい運動をしているのは軍隊や警察などのグループである。こうしたグループに入隊する前の減量は、入隊後のけがや事故などに影響を与えるのであろうか。このテーマについて、米国陸軍環境医研究所軍事能力部門のVy T. Nguyen氏らの研究グループは、入隊前の体重減少と過酷な基礎戦闘訓練(BCT)中の筋骨格系損傷(MSKI)発生率との関連性を調査した。その結果、入隊のために減量した訓練生はMSKIの発生率が低いことが判明した。この結果はObesity誌オンライン版2025年7月30日号に公開された。運動前に減量するとけがを減少させる可能性 研究グループは、3,168人の訓練生から自己申告による体重減少を収集し、電子カルテを用いて追跡調査を行った。すべてのMSKIおよび地域特有のMSKIの診断を行い、Cox回帰モデルで性別とCOVID-19パンデミックの有無で層別化し、年齢、身長、過去最高BMI、人種・民族、喫煙歴、過去の身体活動、および受傷歴で調整した。 主な結果は以下のとおり。・入隊のために減量したと報告した訓練生は829人(26.16%)。・平均減量数は9.06(標準偏差[SD]:8.62)kgで、最も一般的な減量方法は運動(83.72%)だった。・入隊のために減量した訓練生は、減量しなかった訓練生と比較し、BCT期間中の全身MSKI発生率(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.74~0.99)および下肢MSKI発生率(HR:0.84、95%CI:0.72~0.98)が低かった。・減量率(平均:1.27kg/週[SD:1.06])は、MSKI全体または部位別発生率とは関連が認められなかった。

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