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肥満は「累積」が重要、BMI単独では心血管リスクと関連せず

 肥満が心臓病などのリスクを高めることは古くから知られているが、肥満の程度と肥満該当期間の積である「肥満の累積負荷」の方が、より重要なことを示唆する研究結果が報告された。この累積負荷を考慮に入れた場合、ある一時点のBMIの高さは、心筋梗塞や脳卒中のリスクとの関連が有意でなくなるという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院および米ハーバード大学のAlexander Turchin氏らによる研究の結果であり、詳細は「PLOS ONE」に4月8日掲載された。 この研究は、米国で行われている看護師健康調査(NHS)と医療従事者対象調査(HPFS)のデータを用いて行われた。1990~1999年の間に1回以上、BMI25超(米国の基準では過体重、日本国内の基準では肥満に該当)が記録されていた13万6,498人(平均BMI27.2)を解析対象とした。肥満の累積負荷は、過剰なBMI(25超に相当する値)と、その持続期間(年数)を掛け合わせ、面積として評価した。その四分位数に基づき全体を4群に分類し、性別・年齢層別に心血管イベント(心筋梗塞と脳卒中)の発生リスクを比較した。 2000年から中央値16.7年(四分位範囲12.5~17.8)追跡したところ、1万2,048人(8.8%)に心血管イベントが発生した。四分位群ごとの累積イベント発生率は、女性では第1四分位群から順に、2.62%、2.89%、3.35%、3.53%、男性では13.45%、15.09%、16.80%、17.99%だった。 交絡因子(年齢、性別、人種/民族、喫煙習慣、ベースラインのBMI、糖尿病、高血圧、心不全、動脈硬化性疾患の既往歴および糖尿病または動脈硬化性疾患の家族歴など)の影響を調整後、肥満の累積負荷の第1四分位群と第4四分位群との間に有意なリスク差が認められた。例えば、女性については、35歳未満(ハザード比〔HR〕1.60〔95%信頼区間1.05~2.44〕)と35~50歳(HR1.27〔同1.01~1.58〕)で有意差が観察され、男性では35~50歳(HR1.57〔1.22~2.03〕)と50~65歳(HR1.23〔1.02~1.48〕)において有意差が認められた。 全体的に若年成人において肥満の累積負荷の影響が強く見られ、50歳以上の女性と65歳以上の男性は関連が非有意だった。なお、肥満の累積負荷を考慮に入れた解析では、ベースラインのBMIは性別・年齢層にかかわらず、イベントリスクと有意な関連が見られなかった。 これらの結果を基にTurchin氏らは、一時点においてBMIが高いという情報も警告のサインに違いないが、心臓や血管へのダメージは、過剰な体重による負荷が長く続くほど大きくなると述べている。また、本研究では若年成人で肥満の累積負荷の影響がより強く認められたことに関して研究者らは、肥満は永続的なことではなく修正可能なリスクであることを強調。Turchin氏も、「われわれの研究結果は、ある一時点において肥満であっても体重を減らせば、健康状態が改善する可能性があることも示唆している」としている。 なお、本研究はイーライリリー社の資金提供を受けて実施された。

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「エンレスト」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第87回

第87回 「エンレスト」の名称の由来は?販売名エンレスト®錠50mg、100mg、200mgエンレスト®粒状錠小児用12.5mg、31.25mg一般名(和名[命名法])サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(JAN)効能又は効果<錠50mg・100mg・200mg>成人慢性心不全ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。小児慢性心不全<錠100mg・200mg>高血圧症<粒状錠小児用12.5mg・31.25mg>慢性心不全用法及び用量<慢性心不全>通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する。1回投与量は50mg、100mg又は200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。通常、1歳以上の小児には、サクビトリルバルサルタンとして下表のとおり体重に応じた開始用量を1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に目標用量まで増量する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。小児における用量表(1回投与量)画像を拡大する<高血圧症>通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最大投与量は1回400mgを1日1回とする。(参考)画像を拡大する警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.アンジオテンシン変換酵素阻害薬(アラセプリル、イミダプリル塩酸塩、エナラプリルマレイン酸塩、カプトプリル、キナプリル塩酸塩、シラザプリル水和物、テモカプリル塩酸塩、デラプリル塩酸塩、トランドラプリル、ベナゼプリル塩酸塩、ペリンドプリルエルブミン、リシノプリル水和物)を投与中の患者、あるいは投与中止から36時間以内の患者3.血管性浮腫の既往歴のある患者(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬又はアンジオテンシン変換酵素阻害薬による血管性浮腫、遺伝性血管性浮腫、後天性血管性浮腫、特発性血管性浮腫等)4. アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者(ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)5.重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者6.妊婦又は妊娠している可能性のある女性※本内容は2026年5月21日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2025年9月改訂(第10版)医薬品インタビューフォーム「エンレスト®錠50mg、100mg、200mg/エンレスト®粒状錠小児用12.5mg、31.25mg」

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若年性認知症、そのリスク因子は?

 65歳未満で発症する若年性認知症は、重要な健康上の問題である。しかし、認知症のリスク因子に関する知見の多くは、65歳以降で発症した晩年期認知症の研究から推測されたものである。米国・ミネソタ大学のKatherine Giorgio氏らは、若年性認知症とさまざまな人口統計学的因子、臨床的因子および生活習慣因子との関連性を調査し、それらの推定値を晩年期認知症の場合と比較した。The Lancet Healthy Longevity誌2026年3月号の報告。 英国および米国における5つの地域ベースの縦断的コホート研究(UKバイオバンク、ARIC[Atherosclerosis Risk in Communities Study]研究、フラミンガム心臓研究、多民族アテローム性動脈硬化症研究[Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis]、ホワイトホールII研究)のデータを統合し、標準化した。認知症は、各コホートのプロトコールに従い、入院記録および死亡記録に基づき、臨床評価の有無にかかわらず確認した。リスク因子には、性別、自己申告による人種または民族(ヒスパニック、白人、黒人、アジア人、その他)、学歴、高血圧、糖尿病、肥満、高コレステロール血症、うつ病、過度の飲酒、喫煙、運動不足を含めた。年齢を時間軸とし、時間変動係数を用いたCox回帰モデルを用いて、若年性認知症と晩年期認知症のハザード比(HR)を推定し、発症年齢によってHRが異なるかを検証した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中(中央値13.7年[四分位範囲:12.9~14.4])に、参加者54万4,442例において、若年性認知症を発症したのは807例、晩年期認知症は1万4,253例の発症が確認された。・女性は、男性と比較し、若年性認知症リスクが低かった(HR:0.70、95%信頼区間[CI]:0.61~0.80)。・若年性認知症リスクの上昇と独立して関連していた因子は、黒人と白人の人種(HR:1.61、95%CI:1.23~2.11)、小学校卒業以下の学歴(HR:1.99、95%CI:1.67~2.38)、糖尿病(HR:2.45、95%CI:1.99~3.03)、うつ病(HR:2.73、95%CI:2.34~3.20)、喫煙(HR:1.86、95%CI:1.56~2.22)、肥満(HR:1.24、95%CI:1.04~1.48)、運動不足(HR:1.33、95%CI:1.11~1.59)、過度の飲酒(HR:1.22、95%CI:1.01~1.47)であった。・高血圧ステージ1(HR:1.19、95%CI:0.97~1.47)、高血圧ステージ2(HR:1.16、95%CI:0.94~1.43)、高コレステロール血症(HR:1.11、95%CI:0.92~1.34)は、正の効果推定値を示したが、統計的に有意ではなかった。・人種、運動不足、過度の飲酒を除くすべてのリスク因子は、晩年期認知症よりも若年性認知症との関連性が強かった。 著者らは「若年性認知症の発症における修正可能なリスク因子の重要性が示された。若年性認知症の1次予防における優先度の高いターゲットを特定するためにも、本結果は今後の研究の指針となりうる」としている。

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乾癬は皮膚だけの病気ではない? 重症度と心血管リスクが関連

 乾癬は皮膚に症状が現れる慢性炎症性疾患だが、近年では全身性炎症を背景に心血管疾患リスクの上昇との関連も指摘されている。今回、日本人乾癬患者を対象に、心血管リスク評価に用いられる久山町スコアで解析した結果、乾癬の重症度が高いほど心血管リスクが高いことが示された。研究は、東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の小林愛里氏、照井仁氏(現:米カリフォルニア大学サンフランシスコ校)らによるもので、詳細は「Immunological Medicine」に3月17日付で掲載された。 乾癬は慢性炎症性皮膚疾患であり、近年では心血管疾患との関連が注目されている。乾癬患者では高血圧や脂質異常症などのリスク因子が多く、重症例ほど心血管リスクが高いとされ、日本人においても関連が報告されている。一方で、従来の欧米人での臨床データから作成された評価法では日本人における乾癬患者の心血管リスクを過小評価する可能性がある。そこで本研究では、日本人に適した久山町スコアを用いて乾癬重症度と心血管リスクとの関連を検討した。 久山町スコアは福岡県久山町の住民データ(久山町研究)に基づき、日本人の10年間の心血管疾患発症リスクを予測する指標である。本研究では、乾癬患者における心血管リスクと重症度との関連を検討するため、久山町スコアを用いた単施設の後ろ向き研究を実施した。2010年から2022年にかけて東北大学病院を受診した40~79歳の乾癬患者119人を対象とし、糖尿病、慢性腎臓病、心血管疾患など既存疾患のある48人を除外した71人を解析対象とした。乾癬の重症度はPASI(Psoriasis Area and Severity Index)スコアで評価し、血圧、脂質プロファイル、喫煙歴などに基づき、対象者を低・中・高リスク群に分類した。群間比較にはWilcoxon検定を用い、年齢や性別、血圧、脂質プロファイルなどで調整したロジスティック回帰分析により高リスクの予測因子を検討した。 解析の結果、乾癬の重症度が高いほど心血管リスクが高いことが示され(p=0.003)、特にPASIスコアが10を超える男性では中~高リスク群に分類される割合が高かった(p=0.049)。女性では重症度と心血管リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 血圧や脂質プロファイルなどのリスク因子と心血管リスクとの関連を検討したところ、中~高リスク群では収縮期血圧の上昇(p=0.011)やHDLコレステロールの低下(p=0.017)がみられた。さらにロジスティック回帰分析の結果、収縮期血圧は心血管リスクの独立した予測因子として同定された(p=0.026)。乾癬の罹病期間と心血管リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 さらに、性別や年齢で見ると傾向に違いがみられ、特に40代男性では脂質異常がリスク上昇に関与する可能性が示唆された。 著者らは、本研究により久山町スコアを用いることで乾癬患者の心血管リスクを把握できることが示されたと述べている。特に若年層では、血圧やコレステロールの管理がリスク低下に重要であると指摘している。また、乾癬は皮膚疾患にとどまらない全身性の病気であることから、皮膚科医はかかりつけ医や循環器医と連携し、積極的にリスク管理を進めることが望ましいと強調している。 なお、本研究の限界として、単施設の後ろ向き研究で対象が少なく、治療内容や疾患期間の影響も排除できない点が挙げられる。著者らは、より大規模な研究での検証が望まれると指摘している。

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パーキンソン病患者は腎機能低下リスクが約1.9倍/慶應義塾大

 わが国の全国規模の医療保険請求データと健康診断データを用いた疫学コホート研究の結果、パーキンソン病はその後の腎機能低下リスク上昇と関連していることが、慶應義塾大学の満野 竜ノ介氏らによって示された。Nephrology Dialysis Transplantation誌オンライン版2026年4月15日号掲載の報告。 近年、慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全(ESKD)などの腎機能低下がパーキンソン病の発症リスク上昇と独立して関連していることが示されているが、パーキンソン病発症後の腎転帰については十分に検討されていない。そこで研究グループは、大規模集団ベースコホートを用いて、パーキンソン病患者とパーキンソン病のない成人の間で腎機能低下のリスクを比較した。 研究ではDeSCデータベースを用いて、2014年4月~2024年8月に少なくとも1回の健康診断を受けた18歳以上の成人200万793人を特定した。すでにESKD既往歴または腎代替療法導入歴のある患者などを除外した165万9,421人(年齢中央値68歳、男性41.9%)を解析対象とした。 主要評価項目は、ESKDへの進行(追跡時のeGFRが15mL/分/1.73m2未満)、腎代替療法の開始、ベースラインからのeGFRの30%以上低下を含む複合腎アウトカムとした。初回健康診断から複合腎アウトカムの発生、保険制度からの脱退(死亡を含む)、2024年8月のいずれか早い時点まで追跡した。 主な結果は以下のとおり。・コホート全体で1万1,497例(0.7%)がベースライン時点でパーキンソン病を有していた。・中央値1,092日(四分位範囲:631~1,520)の追跡期間中、複合腎アウトカムが発生したのは、パーキンソン病群361例、非パーキンソン病群3万2,974例であった。・Kaplan-Meier解析では、パーキンソン病群は非パーキンソン病群に比べて複合腎アウトカムのリスクが有意に高かった(log-rank検定のp<0.001)。・年齢、性別、高血圧、糖尿病、ベースラインのeGFRなどを調整した多変量Cox比例ハザードモデルでは、パーキンソン病は複合腎アウトカムと独立して関連していた(ハザード比:1.91[95%信頼区間:1.72~2.12])。・女性およびパーキンソン病治療薬投与群では、腎機能低下との関連がより顕著であった。・この関連性は、認知症や起立性低血圧、排尿障害などを除外した複数の感度分析でも一貫していた。 研究グループは、「今回の研究結果は、パーキンソン病が腎機能低下の臨床的に重要なリスク因子である可能性を示唆している。パーキンソン病の長期的な管理の一環として腎機能をモニタリングすることは、リスクの高い患者の特定に役立つ可能性がある」とまとめた。

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「MASLD診療ガイドライン」改訂、脂肪肝を全身疾患として再定義/日本消化器病学会

 2026年4月、「MASLD診療ガイドライン」が改訂された1)。2020年に発刊した前版の「NAFLD/NASH診療ガイドライン」から6年ぶりの改訂で、第3版となる。2026年4月16~18日に開催された第112回日本消化器病学会総会では、改訂ポイントを解説するパネルディスカッションが開催された。 今改訂の最大のトピックスは、疾患名の変更とその定義だ。従来、脂肪性肝疾患に用いられてきた「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」の疾患名は国際的コンセンサスに基づき、2023年に「MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)」「MASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)」に変更された。日本でも日本消化器病学会・日本肝臓学会がこれに賛同し、2024年8月に「MASLD:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」「MASH:代謝機能障害関連脂肪肝炎」との日本語名を発表している。改訂版ガイドラインでは、これらの新たな疾患名・定義を踏まえた診断・診療体系が提唱された。疾患定義:世界的な名称変更 NAFLDという名称は1980年代に提唱され、その後40年以上にわたり使用されてきた。しかし「non-alcoholic(非アルコール性)」という否定形表現や、「fatty」という言葉が患者へのスティグマにつながるとの指摘が国際的に強まっていた。これを受け、脂肪性肝疾患を「SLD(steatotic liver disease)」という1つの大きな疾患群として捉え直し、そのなかで心代謝系危険因子(CMRF)の有無、飲酒量、その他(薬物、ウイルス、遺伝子など)の要因に応じて疾患を再分類したうえで、その中心的な病態としてMASLDが位置付けられた。従来のNAFLD/NASHとMASLD/MASHの臨床像や診断アルゴリズムはおおむね一致しており、従来のエビデンスは引き続き活用される。診断フローチャート:新たに「MetALD」を設定 新たな疾患分類では、SLDを認めた患者に対し、まず、CMRFの有無を評価する。ガイドラインではCMRFとして 1)肥満:BMI≧23kg/m2 or 腹囲男性>94cm・女性>80cm 2)血糖:空腹時≧100mg/dL or 食後2時間≧140mg/dL or HbA1c≧5.7% or 2型糖尿病 or その治療 3)血圧:収縮期≧130mmHg or 拡張期≧85mmHg or 降圧薬内服 4)中性脂肪:≧150mg/dL or 脂質異常症治療薬内服 5)HDL:男性≦40mg/dL、女性≦50mg/dL or 脂質異常症治療薬内服の5項目を採用している。これらのリスク因子が1つ以上あり、かつ飲酒量が基準未満(純エタノール量:男性30g/日未満・女性20g/日未満)であればMASLDと診断される。 今回のガイドラインでは、新たな疾患カテゴリとして、CMRFが1つ以上の中等量飲酒例(男性30~60g/日・女性20~50g/日)を「MetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)」として独立して規定した。これを超える飲酒量であれば「ALD(アルコール関連肝疾患)」となる。MetALDは従来ではNAFLDから除外されていた群だが、近年、代謝異常とアルコール双方が病態進展に関与すると示されたことを背景に設定され、MASLDよりも肝関連イベントリスクが高いことが報告されている。さらに心血管イベントも増加するとの報告もあることがFRQで示され(FRQ1-1)、今後はこれらの病態に応じた治療法やサーベイランス法の開発が重要となる。診断:肝生検が「必須」から外れる BQ4-1 MASLDの診断に肝生検は必須か? MASLDの診断に肝生検は必須ではない。 今回の改訂で大きな変更点が、確定診断にあたって「肝生検は必須ではない」とされた点だ。これは近年のNIT(非侵襲的検査)の発達によるもので、NITには血液検査による肝線維化マーカー、年齢と検査値を組み合わせたスコアリングシステム(FIB-4 indexなど)、画像検査、そしてこれらの組み合わせがあり、非侵襲的かつ繰り返し評価できることが大きなメリットとなる。とくに複数の線維化マーカーが保険収載されているのは世界中で日本だけであり、この点に関するエビデンスを蓄積することも求められている。一方、肝生検を必要とするケースも依然として存在しており、高リスクMASHの確定診断、炎症の程度の把握が必要なケース、複数のNITの不一致例などが挙げられている。 今回、診断フローチャートのほかに「肝疾患高リスク症例の絞り込み・フォローアップのフローチャート」が作成された。これはNITと肝生検を組み合わせて高リスク症例を絞り込む手順と、その検査や重症度別の患者のフォローアップをかかりつけ医と専門医でどう分担すべきか、という2軸のマトリクスからなる。NITを使った2段階のハイリスク症例の絞り込み、2次リスク評価で使用できるNITのリストアップ、肝生検・超音波エラストグラフィ・MRエラストグラフィによる最終評価と治療方針の決定、その後のリスクに応じたフォローアップ体制など、診断の全体像と医師の役割分担の提唱が可視化されている。非専門医が押さえるべきポイント・従来、「飲酒歴を確認し、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害を除外した残り」としてNAFLDを診断していたが、MASLDにおいてはBMI、糖代謝異常、高血圧、脂質異常症などのCMRFの確認が診断プロセスの中心となる。・飲酒評価の重要性も増した。とくにMetALD概念の導入により、「少量飲酒であれば問題ない」と一律に扱うことは難しくなった。ガイドラインではMASLDを男性30g/日未満、女性20g/日未満、MetALDを男性30~60g/日、女性20~50g/日の飲酒群として整理しているが、実際にはMASLD基準内の少量飲酒でも線維化リスク上昇が報告されており、診療現場では飲酒量を細かく聴取することが重要になる。・「MASLD患者の消化器科へのコンサルテーション基準は?」という設問(BQ4-2)に対しては、「FIB-4 index>2.67(65歳以下の場合)」の高リスク群を紹介基準とし、同1.3~2.67の中間リスク群でも「血小板数<20万/μL」「AST値・ALT値が持続高値」「画像検査で肝硬変の所見を認める」場合には紹介が望ましいとされている。全身疾患としてのMASLD MASLDは多くの疾患と関連するが、診断基準となるCMRF関連4疾患である「2型糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧」についてはBQが設定され、相互補完関係にあることが示されている(BQ3-1~3-4)。さらに、慢性腎障害、内分泌異常、睡眠時無呼吸症候群など、多様な合併症との関連も整理された(BQ3-5、3-6)。また、肝臓以外の悪性腫瘍リスク上昇についても大腸がんを中心に、胃がん、食道がん、婦人科がんとの関連が解説された(BQ3-7)。中でも心血管疾患はMASLD患者の主要死因の1つであり、大規模メタ解析では、MASLD患者の心不全新規発症リスクは一般人口の約1.5倍と報告されている。一方で、肝線維化が心血管リスクを上昇させる独立した因子であるかについては現時点ではまだ明確ではなく、今後探索していくべき課題とされた(FRQ3-1、3-2)。 治療面では、生活習慣介入が中心である点は従来と変わらないが、「単純性脂肪肝だから経過観察のみ」という従来型対応は見直されつつある。肥満、糖尿病の合併例、線維化進展を伴う例では、早期から積極的介入を行う方向性がより明確になっている。GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬など代謝改善薬への期待も高まっており、今後の承認に向けての動きやエビデンス蓄積が注目される。

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肥満のアルコール使用障害、セマグルチドvs.プラセボ/Lancet

 肥満を有する中等度~重度のアルコール使用障害(AUD)患者において、セマグルチド週1回投与により、プラセボと比較してAUDに対する有意な治療効果が認められた。デンマーク・Copenhagen University Hospital-Bispebjerg and FrederiksbergのMette Kruse Klausen氏らが、コペンハーゲンの単施設で実施した26週間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。AUDは、世界の年間死亡者の5%を占めており、新たな治療法の開発が急務となっている。GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドは前臨床試験および初期の臨床試験において、飲酒量を減少させる可能性が示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「今回の結果は、GLP-1受容体作動薬がAUDの新たな治療選択肢となりうることを示唆するこれまでの知見を裏付けるものである」とまとめている。Lancet誌2026年5月2日号掲載の報告。主要エンドポイントは、26週時までの大量飲酒日数の変化 研究グループは、年齢が18~70歳で、『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』に基づきAUDと診断され、かつ国際疾病分類第10版(ICD-10)に従ってアルコール依存症と診断された、アルコール使用障害同定テスト(AUDIT)スコアが15超、BMI値30以上の患者を対象とした。AUDに対する治療を希望する被験者を、セマグルチド群(0.25mgから開始し4週ごとに増量して2.4mgを週1回皮下投与)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、標準的な認知行動療法とともに26週間投与した。 主要エンドポイントは、飲酒量振り返りカレンダー(TLFB)法で推定されたベースラインから26週時までの大量飲酒日の割合の変化であった。ITT集団を対象として、欠測値を多重代入法により補完した反復測定共分散分析(ANCOVA)モデルを用いて評価した。副次エンドポイントは、ベースラインから26週時までの総アルコール摂取量(g)の変化、飲酒をしなかった日数、飲酒日当たりの飲酒量、AUDITスコアなどで、安全性についても評価した。認知行動療法+セマグルチドで大量飲酒が改善 2023年6月10日~2025年2月4日に302例が予備スクリーニングを受け、スクリーニング対象となった135例中108例が登録された(女性53例、男性55例)。全例、1回以上の治療を受け、最終解析に組み込まれた。108例中88例(81%)が試験を完遂した。 主要エンドポイントである大量飲酒日の割合の変化量は、セマグルチド群で平均-41.1%ポイント(95%信頼区間[CI]:-48.7~-33.5)、プラセボ群で-26.4%ポイント(95%CI:-34.1~-18.6)とセマグルチド群で有意に減少した(平均群間差:-13.7%ポイント、95%CI:-22.0~-5.4、p=0.0015)。 副次エンドポイントについても、総アルコール摂取量、飲酒日当たりの飲酒量、AUDITスコアなど複数の項目で、プラセボ群に対するセマグルチド群の有意な効果が示された。 最も多く発現した有害事象は胃腸障害で、悪心の発現割合はプラセボ群の7%に対しセマグルチド群では57%であった。多くの胃腸障害は軽度~中等度で、一過性であった。

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睡眠時無呼吸症候群、日ごとの重症度変動も心血管リスクに影響

 睡眠時無呼吸症候群(OSA)は心疾患、高血圧、脳卒中のリスクを高めることが知られているが、その重症度が日ごとに大きく異なることも、リスクに影響する可能性がある。新たな研究で、OSAの重症度の日ごとの変動が大きい人では、小さい人に比べて、非致死的な主要心血管・脳血管イベント(MACCE)のオッズが34%高いことが示された。フリンダース大学(オーストラリア)のBastien Lechat氏らによるこの研究の詳細は、「Sleep」に3月26日掲載された。 OSAでは、睡眠中の呼吸停止とそれに伴う覚醒が一晩中繰り返され、睡眠の質に悪影響を及ぼすことが知られている。Lechat氏は、「多くの人は、OSAの症状は一定していると考えがちであるが、実際は、ある夜は他の夜よりも著しく悪化するなど日ごとに大きく異なる。このような重症度の上下の繰り返しは心臓にさらなる負荷をかける可能性がある」とニュースリリースで述べている。 本研究では、米食品医薬品局(FDA)承認の市販のマットレス下センサーを用いてOSAの重症度を連日測定した3,159人の成人(女性19%、平均年齢49±13歳)のデータが解析された。OSAの重症度は、1時間当たりに起こる無呼吸と低呼吸の回数を示す指標である無呼吸低呼吸指数(AHI)で評価された。非致死的なMACCE(心筋梗塞、脳卒中、狭心症、うっ血性心不全など)の診断の有無について質問票により確認し、これらとOSAの重症度およびその変動との関連を検討した。 その結果、中等度から重度のOSAを有する人は、OSAのない人と比較して、MACCE発生のオッズが45%高い傾向が認められた(オッズ比1.45、95%信頼区間0.93~2.25)。また、OSAの重症度の変動が大きい人(AHIの75パーセンタイル:8.0回/時)は小さい人(AHIの25パーセンタイル:2.8回/時)と比較して、OSAの重症度や他の交絡因子とは独立して、MACCE発生のオッズが34%高かった(オッズ比1.34、95%信頼区間1.04~1.72)。 研究グループによると、OSAの検査は多くの場合、1晩のみの呼吸測定で行われる。Lechat氏は、「1晩の睡眠検査だけでは一部の患者に誤った安心感を与える可能性がある。平均的には軽症であっても、日ごとの変動が大きい場合にはリスクが高い可能性があるためだ」と指摘している。 研究グループは、OSA患者における心血管リスクの予測が困難である理由の一端は、本結果により一部説明可能であるとの見方を示している。論文の上席著者である同大学のDanny Eckert氏は、「身体は酸素レベルの変動や睡眠の分断の繰り返しに適応することが困難である可能性がある。こうした日ごとの変動は、標準的な検査では捉えられないまま、時間をかけて心臓や血管に徐々に負荷をかける」とニュースリリースで述べている。その上で同氏は、医師が糖尿病や血圧と同様に、OSAについても継時的に評価することを検討すべきだと主張している。 一方、Lechat氏は、OSAには対処法が存在することを強調する。「いびきをかく、あるいは睡眠後も疲労感が残る場合には、医療専門職に相談することで、心血管リスクが見つかる可能性がある。そうしたリスクに対する治療の選択肢は多数存在する」と述べている。

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歯の減少や噛み合わせの低下は体重増加につながる?

 歯を失うと体重が増える可能性がある――そんな研究結果が報告された。歯の本数が少ないこと、噛み合わせ(咬合機能)や歯周の状態が悪いことは体重増加と有意に関連していることが示されたという。研究グループは、歯の喪失が咀嚼能力に影響し、それが健康的な食事の選択を制限する可能性があると指摘している。ペロタス連邦大学(ブラジル)のNatalia Pola氏らによるこの研究結果は、「Journal of Periodontology」に3月6日掲載された。 この研究では、ペンシルベニア州ピッツバーグとテネシー州メンフィスを拠点とする長期健康調査プロジェクト(Health ABC)の参加者903人を追跡して、口腔状態と体重の変化との関連が検討された。参加者は研究開始時に口腔検査を受け、歯の本数、咬合機能、歯周状態が評価された。咬合機能は機能歯ユニット(Functional Tooth Unit;FTU)により、歯周状態は、プロービングデプス(歯肉辺縁から歯周ポケット底部までの距離)または臨床的アタッチメントレベル(Clinical Attachment Level;CAL)により評価された。 参加者は、2年時点と6年時点の体重の変化により、変化なし(568人、62.9%)、5%以上の体重減少(231人、25.6%)、5%以上の体重増加(104人、11.5%)の3群に分類された。解析の結果、体重減少については、歯の本数、咬合機能、歯周状態のいずれの指標とも有意な関連は認められなかった。一方、体重増加については、歯の本数が少ないこと、咬合機能が悪いこと、歯周の状態が悪いことが体重増加と有意に関連していた。特に、咀嚼に重要な役割を果たす臼歯が失われた場合には、体重増加のリスクが17%高かった。 こうした結果について研究グループは、「歯の喪失は、果物や野菜などの食物繊維が豊富で健康的な食品を避け、柔らかくて高カロリーな食品を選ぶ傾向につながる可能性がある」と指摘している。また、Pola氏は、「特に臼歯など、機能的な歯の単位の喪失は、高齢者において4年間の体重増加リスクの上昇と関連していた」と結論付けている。 本研究には関与していない、米国歯周病学会会長で歯周病専門医であるAna Becil Giglio氏は、「これらの結果は、特に高齢期においては、歯周の健康が全身の健康に重要な役割を果たすという、これまでの知見をさらに裏付けるものだ。健康な歯と歯茎を維持することは、より良い栄養状態や生活習慣、高齢期の生活の質(QOL)の向上をサポートする」とニュースリリースで述べた。 研究グループは、健康的な体重の維持や減量を目指す人にとっても、口腔の健康管理は重要な要素となり得ると示唆している。ただし、歯の欠損と体重増加の関係をより正確に理解するためには、さらなる研究が必要だとも付け加えている。

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肥満患者への減量介入がQOLに及ぼす影響

 肥満患者への減量介入は健康関連QOL(HRQOL)にどのような影響を及ぼすであろうか。このテーマについて、米国・ペニントン・バイオメディカル研究センターのKara D. Denstel氏らの研究グループは、プライマリケアのクリニックの肥満患者803例を対象に減量介入を2年にわたり行った。その結果、減量はHRQOLの改善と関連していることがわかった。Obesity誌2026年5月号に掲載。 研究グループは、減量とHRQOLの変化との関連性と減量介入を受けた患者間における治療反応の違いを明らかにすることを目的に、18のプライマリケアのクリニックで、24ヵ月間の集中的なライフスタイル介入群または通常ケア群に無作為に割り付け検討した。一般的なHRQOLおよび体重関連のQOLを、ベースライン時および6、12、24ヵ月時点で評価し、関連性は反復測定線形多重レベルモデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象の肥満患者は803例だった。・全般的HRQOLの変化は人種や性別による差はなく、体重関連QOLも性別による差はなかった。・その一方で、黒人の患者では他の人種と比較し、体重関連QOLの改善度が低かった。・ベースラインから24ヵ月までの体重減少量と体重関連QOLの改善度との間には、次の段階的な関連が認められた。初期体重の5%未満の減量群では7.4(95%信頼区間[CI]:5.1~9.7)、5%以上10%未満の減量群では15.0(95%CI:11.4~18.5)、10%以上の減量群では18.9(95%CI:15.4~22.4)だった。・減量幅が大きいほど、ほとんどの一般的なHRQOL領域における改善度も高かった。 これらの結果から研究グループは、「減量はHRQOLの改善と関連し、体重関連QOLの変化には人種間の差異が認められた。このことは、減量に対する精密医療へのアプローチの必要性を示唆している」と結論付けている。

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高血圧患者、MACE予防と1日の歩数

1日の歩数が1,000歩増えるごとに高血圧患者の心不全や脳卒中などのリスクが低下1日1,000歩増加で減少する発症リスク歩行速度とMACEリスク(2,344歩/日における発症リスクを1とした場合)117.1%減22.4%減9.3%減(1日で最も速い30分間の平均歩行速度)24.5%減30%減発症リスクMACE※心不全心筋梗塞脳卒中0MACE※心不全心筋梗塞脳卒中※MACE(主要心血管イベント):心血管疾患による死亡、心不全・心筋梗塞・脳卒中38.3歩/分76.6歩/分1日の歩数が10,000歩に満たなくても、より多く、より速く歩くことで、心血管病リスクを減少させる可能性があります対象:英国の高血圧患者3万6,192例(平均年齢64歳、男性48%)方法:1日の歩数と歩行強度、MACEおよびその構成要素である心不全・心筋梗塞・脳卒中の発症を平均7.8年追跡Cheng SWM, et al. Eur J Prev Cardiol. 2025 Aug 6. [Epub ahead of print]Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.

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薬剤性過敏症症候群〔DIHS:drug-induced hypersensitivity syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)は、発熱と多臓器障害を伴う重症型薬疹の1つである。抗けいれん薬など特定の薬剤を内服開始後、遅発性に発症し、原因薬剤を中止しても症状の再燃や遷延化がみられることが特徴である。多くの場合、発症後3週間前後でヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)に代表されるヘルペスウイルスの再活性化を伴うことから、薬剤アレルギーとヘルペスウイルス感染症が複合して生じる新たな病態として認識されている(図1)。DIHSのもう1つの特徴として、回復期に1型糖尿病や慢性甲状腺炎などの自己免疫疾患を発症することが知られている。なお、欧米を中心にDRESS(drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms)という疾患概念が用いられるが、DRESSの診断基準にはヘルペスウイルスの再活性化については言及されておらず、DIHSよりも広い範囲の薬疹が含まれる。図1 DIHSの病態の仮説■ 疫学2021年の全国調査によれば、年間受療患者数は人口100万人当たり2.82人と推計されている。男女比は1:1で、発症年齢は40~60代(中央値58歳)が最多である。原因薬剤は比較的限定的であり、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニサミドなどの抗てんかん薬のほか、アロプリノール、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、メキシレチンなどが代表的である。DIHSの致死率は約10%程度と高く、死因の多くはサイトメガロウイルス(CMV)肺炎やニューモシスチス肺炎などの感染症である。■ 病因本症は、原因薬剤を通常2~6週間(平均1ヵ月)内服した後に発症する。病態は、T細胞を主体とする薬物アレルギー反応とヘルペスウイルスの再活性化が中心である。急性期にはTARC/CCL17の著明な上昇や好酸球増多に象徴されるTh2反応の亢進がみられる。また、急性期には制御性T細胞(Treg)の増加がみられるが、経過中にその機能やバランスが崩れることが、ウイルス再活性化や後遺症としての自己免疫疾患発症に関与すると考えられている。さらに、急性期には末梢血のCD4陽性T細胞表面にHHV-6の受容体であるCD134/OX40の発現が亢進しており、これがウイルスの効率的な感染拡大を許容する一因である可能性が示唆されている。■ 症状初期症状として発熱、頸部リンパ節腫脹、顔面や躯幹の紅斑が生じる。皮疹は播種状紅斑丘疹型や多形紅斑型で始まり、急速に拡大してしばしば紅皮症状態に移行する(図2)。特徴的な顔貌として、顔面の浮腫を伴う紅斑、眼周囲の蒼白、鼻孔・口周囲に鱗屑・痂皮を伴う丘疹や小膿疱がみられる(図3)。肝機能障害や腎機能障害などの内臓病変や、異型リンパ球の出現、好酸球増多、白血球増多などの血液学的異常を伴う。図2 DIHSにおける紅皮症状態画像を拡大する図3 DIHSに特徴的な顔貌■ 予後原因薬剤を中止しても皮疹や臓器障害が遷延し、経過中に再燃を繰り返す。発症3~5週間前後にCMVの再活性化が生じ、肺炎、腸炎、消化管出血、肝障害などの致死的な合併症を引き起こすことがある。また、DIHSの症状が軽快した数ヵ月から数年後に、橋本病、劇症1型糖尿病、円形脱毛症、白斑などの自己免疫疾患を発症することがあり、長期的な経過観察が必要である。2 診断診断は、厚生労働省研究班による診断基準(2005年)(表)に基づいて行う。表 薬剤性過敏症症候群(DIHS)診断基準(2005)■ 概念高熱と臓器障害を伴う薬疹で、薬剤中止後も遷延化する。多くの場合、発症2~3週間後にHHV-6の再活性化を生じる。■ 主要所見1. 限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑、多くの場合紅皮症に移行する。2. 原因薬剤中止後も2週間以上遷延する。3. 38℃以上の発熱4. 肝機能障害5. 血液学的異常:a、b、cのうち1つ以上a. 白血球増多(11,000/mm3以上)b. 異型リンパ球の出現(5%以上)c. 好酸球増多(1,500/mm3以上)6. リンパ節腫脹7. HHV-6の再活性化典型DIHS1~7すべて非典型DIHS1~5すべて、ただし4に関しては、その他の重篤な臓器障害をもって代えることができる。■ 参考所見1. 原因医薬品は、抗けいれん薬、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、アロプリノール、ミノサイクリン、メキシレチンであることが多く、発症までの内服期間は2~6週間が多い。2. 皮疹は、初期には紅斑丘疹型、多形紅斑型で、後に紅皮症に移行することがある。顔面の浮腫、口囲の紅色丘疹、膿疱、小水疱、鱗屑は特徴的である。粘膜には発赤、点状紫斑、軽度のびらんがみられることがある。3. 臨床症状の再燃がしばしばみられる。4. HHV-6の再活性化は、(1)ペア血清でHHV-6 IgG抗体価が4倍(2管)以上の上昇、(2)血清(血漿)中のHHV-6 DNAの検出、(3)末梢血単核球あるいは全血中の明らかなHHV-6 DNAの増加のいずれかにより判断する。ペア血清は発症後14日以内と28日以降(21日以降で可能な場合も多い)の2点で確認するのが確実である。5. HHV-6以外に、サイトメガロウイルス、HHV-7、EBウイルスの再活性化も認められる。6. 多臓器障害として、腎障害、糖尿病、脳炎、肺炎、甲状腺炎、心筋炎も生じうる。■ 早期診断の補助検査診断基準項目に「中止後2週間以上の症状の遷延」や「発症2~3週間後のHHV-6再活性化」が含まれるため、発症早期の確定診断は困難である。早期にDIHSを疑う指標として、急性期の血清TARC値の測定が有用であり(4,000pg/mL以上で疑う)、2023年に「DIHS/DRESSの診断の補助」としての保険適用が追加された。■ 鑑別診断と原因薬剤の特定通常の薬疹や、麻しん・風しんなどのウイルス性発疹症との鑑別を要する。DIHSを疑う臨床的ポイントとして、原因薬剤が比較的限られていることから、詳細な薬剤内服歴(2~6週間の服用歴)の聴取が不可欠である。また、原因薬剤中止後も皮疹や臓器障害が遷延・悪化することも、他の薬疹との重要な鑑別点となる。特有の顔貌(図3)や、皮疹が急速に紅皮症化する経過(図2)も診断の有力な手掛かりとなる。HHV-6の再活性化は、一般に末梢血液中のHHV-6 DNAの定量(リアルタイムPCR法)によって判断するが、現時点では保険適用外の検査である。被疑薬の特定には、薬剤添加リンパ球刺激試験(DLST)やパッチテストが有用である。ただし、DLSTは発症早期には偽陰性となりやすく、発症後5週目以降の回復期に実施する必要がある。なお、重症化リスクを考慮し、薬剤の再投与試験(誘発試験)は行わない。3 治療■ 治療の実際DIHSを疑った場合は、第一に被疑薬を中止し、原則として入院加療とする。病初期に起こる全身症状と臓器障害の寛解を目指し、副腎皮質ステロイドの全身投与が治療の基本となる。中等~高用量(プレドニゾロン換算0.5~1mg/kg/日)で開始し、症状が十分に改善するまで(通常7~14日間)維持する。その後は、症状をみながら1~2週間ごとに5~10mg/日ずつ緩徐に漸減する。急激なステロイドの減量は、免疫再構築症候群を招きCMV感染症を顕在化させるリスクがあるため避けるべきである。臓器病変を伴わない軽症例に対しては、ステロイド全身投与を行わず、局所ステロイド外用や補液などの支持療法(supportive therapy)で経過観察することもある。ステロイドパルス療法は、CMVの再活性化や自己免疫疾患の発症に関与するとの否定的見解が主流であり、重篤な臓器障害への進展など特殊な状況に限り検討される。■ CMV感染症への対応発症3~5週前後にCMVが再活性化し、ステロイドの減量を契機として突然、肺炎や消化管出血などの致死的合併症を発症することがある。経過中は常にCMVのモニタリングを行い、顕性感染症を認めた場合には、抗ウイルス薬(ガンシクロビル)の投与による積極的な介入を行う。■ 多剤感作への配慮DIHSの経過中は多剤感作を引き起こしやすいため、解熱や感染予防目的での非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗菌薬の新たな投与は可能な限り避けるべきである。4 今後の展望DIHSの病態については、HHV-6やCMV再活性化の病態への関与について多くの知見が得られてきたものの、依然として未解明な点が残されている。とくに、最適なステロイド減量プロトコールの確立は急務であり、大規模な症例レジストリに基づくエビデンスの蓄積と治療指針の更新が期待される。また、回復期に発症する自己免疫疾患などの遅発性合併症は、患者の長期予後を左右する重要な課題である。今後は、これらの合併症を予測するバイオマーカーの同定や、その発症を制御する新たな介入法の開発が望まれる。5 主たる診療科皮膚科(重篤な臓器障害を伴うため、十分な検査と全身管理を行える施設への早期のコンサルテーションが重要である)。6 参考になるサイト診療、研究に関する情報薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン 2023(日本皮膚科学会/重症多形滲出性紅斑に関する厚労省調査研究班)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)医薬品副作用被害救済制度(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)  (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2026年5月12日

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中性脂肪、がんリスクマーカーに?~日本の全身がん検査プログラム

 京都府立医科大学の手良向 聡氏らが行った後ろ向き観察研究から、ベースラインの血清トリグリセライド(TG)が、将来のがん発症リスクを予測する高感度なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。Health Science Reports誌2026年3月29日号掲載の報告。 日本において、メタボリックシンドローム(Mets)併存患者のがん死亡率は年々増加しており、これらの患者のがんの早期発見が喫緊の課題となっている。近年、Metsの構成要素が活性酸素種(ROS)の生成、ホルモン産生の変化などを通じて、がん発生を促進する可能性が指摘されている。 そこで研究者らはがんの発症とさまざまな危険因子との関連性を調べるため、2009年11月~2019年10月の期間、浜松光医学財団の浜松PET診断センターで全身がん検査を受けた浜松ホトニクスおよび関連企業の従業員1,495人(男性69.9%、平均年齢48.8歳)を対象に検証を行った。検査内容はPET-CT、胸腹部CT、頭部・骨盤MRI/MRA、腹部超音波、包括的な血液検査、腫瘍マーカーなど。主要評価項目は初回検査からがん発症までの期間で、カプランマイヤー法で推定し、Cox比例ハザードモデルを用いて、年齢、ライフスタイル、血液検査値、既往歴など各種リスク因子との関連を解析した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に59例(3.9%)ががんを発症し、診断時の年齢中央値は57歳であった。・がん種は大腸がん(12例)が最も多く、次いで肺がん(8例)、乳がん(7例)、胃がん(7例)、前立腺がん(6例)と続いた。・多変量解析において、TGの上昇はがん発症と統計学的に有意な関連を示した(ハザード比[HR]:1.004、95%信頼区間[CI]:1.001~1.008、p=0.02)。・空腹時TGの正常上限である150mg/dLを境にした解析では、150mg/dL以上の群は150mg/dL未満の群に対し、がん発症のHRが1.99(95%CI:0.94~4.24)となり、臨床的に意義のある傾向が確認された。・高血圧の既往がある場合、がん発症リスクが顕著に高いことが示された(HR:2.88、95%CI:1.49~5.53、p=0.002)。・初回検査からの累積がん発症率は、2年で1.0%、4年で2.3%、6年で3.4%、8年で4.8%であった。 研究者らは、「ベースラインTGががんリスクのバイオマーカーである可能性が示された。また、高血圧の既往も強力な予測因子であり、これら代謝関連因子を適切に管理することが、がん予防戦略において重要となる可能性がある」としている。

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フェニルケトン尿症の新治療薬セピアプテリンへの期待/PTCセラピューティクス

 PTCセラピューティクスは、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬セピアプテリン(商品名:セピエンス)の発売に伴い、都内でメディアセミナーを開催した。わが国のPKUの発生頻度は約6万人の出生に1人の割合で、年間20人前後が診断され、累計で800人以上の患者が報告されている。PKUは未治療や管理が不十分な状態が続くと知的障害、痙攣発作、発達遅延など重度かつ不可逆的な障害が生じる。治療の基本は食事療法で、フェニルアラニン(Phe)が多く含まれる特定の食材(肉・魚・卵など)の摂取が厳しく制限される。 セミナーでは、PKUの病態や治療薬セピアプテリンの臨床試験の概要と今後の治療の位置付けなどについて講演が行われた。新生児マススクリーニング検査で早期診療が可能に 「フェニルケトン尿症に対するセピエンスへの期待」をテーマに濱崎 考史氏(大阪公立大学大学院医学系研究科発達小児医学 教授)が、PKUの病態やセピアプテリンの臨床試験結果、今後の治療の展望などを説明した。 PKUは、いわゆる教科書疾患であり、実臨床で診療する機会は少ない疾患である。PKUは、Pheを代謝するPhe水酸化酵素の先天的な活性低下により、Pheがチロシンに代謝されずに蓄積する。血中Phe濃度の上昇は、発達遅滞や神経症状を来すことがある。そのため無治療の場合、脳の発達障害、小頭症、重度の発達遅滞、行動障害などを来し、治療不十分の場合は、頭痛、うつ状態、神経症、認知能力低下などがある。 PKUは、新生児のマススクリーニング検査の契機となった疾患であり、現在では日齢4または5に血液を採取し、ろ紙検査により診断が行われている。これにより今では早期に診断、治療介入することができるようになっている。 PKUでは血中Phe値を上昇させないために、Pheの摂取を制限する必要があり、治療としては食事からのタンパク質の摂取制限とPheを除去した治療用特殊ミルクによる食事療法が中心となる。食事療法は低タンパク食が中心となり、特別の食材を用意する必要がある。そのため、多額の費用が必要であり(保険適用外)、味も悪く、患者は外食などが難しく社会的孤立を招きやすいという。実際、患者は年齢とともに血中Phe濃度の管理が難しくなることも報告されている1)。 薬物療法について現在わが国で承認されている薬剤では、サプロプテリンとペグバリアーゼの2種類がある。サプロプテリンは顆粒の粉末で服用するが、対象が異型高フェニルアラニン血症など限定されており、全体の20~30%の患者にしか適用がなく普及していない。ペグバリアーゼは皮下注製剤で、成人のみが対象であり、副作用としてアナフィラキシーショックがあるために、アドレナリン自己注射薬(商品名:エピペン)を帯同する必要があるという。 PKU治療の課題として、食事療法ではタンパク制限食へのコスト高やアドヒアランスの問題、薬物療法では使用できる対象年齢や効果不十分の患者への対応などが指摘されている。また、患者からも食事制限への疾病負担や食事への精神的苦痛、QOLの低下などを訴える声も多い。そこで、すべてのPKU患者が血中Phe濃度の管理を負担なく継続できる治療法が求められている。患者の食事の幅を広げるセピアプテリン 今回発売されたセピアプテリンは、Pheの代謝に関わるPAHの補酵素であるBH4の前駆体であり、プテリンのサルベージ経路を介し細胞内BH4に急速に変換され、速やかに細胞内に移行して、細胞内BH4濃度を高める働きがある。 海外で行われた第III相試験のAPHENITY試験では、157例の患者について、導入期にセピアプテリンを14日間投与後に無作為にセピアプテリン群とプラセボ群に割り付け、プラセボ対照を42日間行った。主要評価項目はベースラインから5~6週までの血中Phe値の平均変化量とした。その結果、セピアプテリン投与14日後に血中Phe濃度が30%以上低下した患者割合は66%だった。また、投与5~6週後、血中Phe濃度(5および6週目の平均値、単位:µmol/L)のベースラインからの平均変化量についてプラセボ群(49例)では-16.2だったのに対し、セピアプテリン群(49例)が-410.1とプラセボ群に対する優越性が検証された。安全性については、死亡や重篤な有害事象は報告されず、下痢、胃腸炎などの消化器症状や頭痛などが報告された。 国際共同第III相試験のAPHENITY延長試験では、APHENITY試験後の被験者と非被験者について非盲検継続投与を行い1ヵ月後の平均Pheについて360μmol/Lを基準に分けて、食事によるPhe耐性の評価を行った。主要評価項目はセピアプテリンの長期安全性とベースラインから26週目までの食事中のPhe/タンパク質摂取量の変化である。その結果、血中Phe濃度が360μmol/L未満に維持された患者集団では、食事性Phe摂取量(平均値)が増加した。また、安全性でも主な有害事象は、上気道感染、上咽頭炎、頭痛、下痢、嘔吐、発熱であり、死亡に至るものや重篤なものはなかった。 海外第III相実薬対照試験のAMPLIPHY試験では、セピアプテリンとサプロプテリンの非盲検クロスオーバー試験で効果比較を行った。その結果、平均血中Phe濃度(μmol/L)について、セピアプテリン群(58例)のベースラインが725.8だったものが3、4週目の平均で312.7に低下していた。その一方でサプロプテリン群(56例)はベースラインが790.4だったものが3、4週目の平均で504.8に低下していた。また、血中PheのLS平均変化量について、ベースラインから3、4週目の数値でセピアプテリン群(58例)が-437.0、サプロプテリン群(56例)が-256.6とセピアプテリンはサプロプテリンと比較して血中Phe値を有意に低下させていた。安全性の面でも重篤な有害事象はなく、両薬剤ともに上気道炎、上咽頭炎、下痢などが報告された。 最後に濱崎氏は、わが国の患者の置かれている現状として、次の7項目を挙げた。・食事療法はPKUの治療において大きな役割を担っているが、成人期において継続することが困難・指定難病の対象に加えられたのは、2015年と最近・Phe除去ミルクの医療費負担は軽減されたが、低タンパク食は自己負担・PKUに特化した治療用食品の開発は進んでいない・BH4が反応する可能性はあっても患者が幼少期には負荷試験を実施していないことがある・成人男性PKU患者の通院、食事療法へのアドヒアランスは低いと考えられる・2019年の診療ガイドラインの改訂で、成人の血中Phe濃度の目標値について管理目標値が360μmol/L(6mg/dL)に下がっていることが成人患者には伝わっていない これらの現状を踏まえ、今後のセピアプテリンの臨床的位置付けとして「セピアプテリンは、患者の年齢に制限なく、すべての年代のPKU患者に投与可能な1日1回投与の経口顆粒剤であり、食事療法で非常に困っている患者が、新しい治療薬を服用することで食事療法の幅が広がるものと期待している」と語り、講演を終えた。

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特定健診の「2cm2kg減」は適切? 3万人の代謝指標との関連を検討

 日本の特定健診・特定保健指導では、生活習慣改善の目安として「腹囲2cm・体重2kgの減少(2cm2kg)」が推奨されている。しかし、この目標達成が実際に代謝指標の改善と結びついているか検討した研究は乏しい。そこで、笠原 健矢氏(京都府立医科大学)らの研究グループは、健診コホートデータを用いて2cm2kg目標の妥当性を検討した。その結果、2cm2kg達成は、血糖、血圧、脂質、肝機能といった代謝指標の改善と有意に関連し、実務上の目安としておおむね妥当であることが示唆された。本研究結果は、Obesity誌オンライン版2026年4月4日に掲載された。 研究グループは、2020年にパナソニック社の健康診断を受けた40歳以上のうち、特定保健指導の対象基準に該当する3万240人を解析対象として観察研究を実施した。ベースラインを2020年の健康診断時、評価時点を1年後とし「腹囲が2cm以上減少し、かつ体重が2kg以上減少すること」を「2cm2kg達成」と定義した。2cm2kg達成群と未達成群における代謝指標(血糖、HbA1c、収縮期血圧、拡張期血圧、TG、HDL-C、LDL-C、AST、ALT、γ-GTP)の変化量を比較した。さらに、腹囲・体重の減少量に応じた用量反応関係や、代謝改善を予測する最適カットオフ値についても検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象者のうち、男性の割合は89.6%であった。ベースライン時の平均年齢は52.1歳、平均BMIは27.1kg/m2、平均腹囲は93.3cm。・2cm2kg達成群は5,243人、未達成群は2万4,997人であった。なお、達成群における実際の平均変化量は腹囲-5.19cm、体重-4.93kgであり「2cm2kg」より大きく減少していた。・2cm2kg達成群は未達成群と比較して、以下の代謝指標について1年後の変化量が有意に良好であった(いずれもp<0.0001)。達成群の代謝指標の変化量は以下のとおり。 血糖:-3.77mg/dL HbA1c:-0.15% 収縮期血圧:-4.71mmHg 拡張期血圧:-3.42mmHg TG:-40.14mg/dL HDL-C:+3.19mg/dL LDL-C:-7.62mg/dL AST:-6.54U/L ALT:-13.98U/L γ-GTP:-18.81U/L・腹囲および体重について、1cm1kg、2cm2kg、3cm3kgと減少量が大きくなるにつれて、各代謝指標の改善幅が大きくなるという用量反応関係が認められた。血糖変化はそれぞれ-2.85mg/dL、-3.77mg/dL、-5.26mg/dLであった。・腹囲・体重の減少量が大きいほど、血糖、血圧、TG、HDL-Cの改善達成のオッズも上昇した。体重が3kg超減少した集団では、ほぼ不変の集団と比較して血糖改善(オッズ比[OR]:1.91、95%CI:1.70~2.16)、血圧改善(同:2.24、2.00~2.51)、TG改善(同:2.75、2.46~3.07)、HDL-C改善(同:2.62、2.11~3.25)のオッズが高かった。・ROC解析の結果、代謝改善を予測する最適なカットオフ値はおおむね腹囲-2.1~-0.7cm、体重-1.7~-0.8kgに収まり、2cm2kgという目標設定を支持する結果であった。ただし、AUCは0.58~0.63であり、予測能としては高くなかった。 本研究結果について著者らは、日本の特定健診・特定保健指導における2cm2kgという目標は代謝改善と関連しており、日本の保健指導において2cm2kgの目標を設定することの妥当性を支持するものであったと結論付けた。一方で、本研究は単一企業の就労者コホートを対象とした観察研究であり男性が占める割合が多いこと、保健指導の因果を示したものではないこと、2cm2kg達成群の実際の減少量が目標値より大きかったことなどの限界も指摘している。

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重症CKDでも降圧療法で心血管イベント抑制/Lancet

 英国・オックスフォード大学のGuyu Zeng氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration(BPLTTC)はメタ解析を実施し、心血管リスク低減の観点からは、慢性腎臓病(CKD)患者における降圧治療の相対的効果は、非CKD患者における効果と同等であり、CKDの病期、血圧閾値、蛋白尿の有無にかかわらず一貫した有効性が認められることを示した。ただし、糖尿病合併CKD患者ではこの相対的効果が弱まるため、これらの高リスクサブグループに適合する治療戦略が必要であるという。また、CKDにおける主要な降圧薬のクラス特異的な効果は、CKDの病期や蛋白尿の有無にかかわらず、一般集団で観察される効果と同様であることも示された。CKD患者、とくに進行期の患者について、心血管リスク管理に関するエビデンスは依然として不足していた。Lancet誌2026年4月25日号掲載の報告。RCT46件・約28万5,000例をメタ解析 研究グループは、第3期BPLTTCにおいて血圧降下療法群と対照群に割り付けた無作為化試験の被験者個人データを用いて、1段階法によるメタ解析を実施した。 適格とした無作為化試験は、言語や発表時期を問わず、各群1,000人年以上の追跡期間があり、ベースラインの血圧値およびクレアチニン測定値、ならびにイベント発生までの期間の結果があるものとした。無作為化手順が不明確、心不全または急性期医療に限定されたものは除外した。心不全既往患者や、クレアチニン値が極端な患者は除外した。年齢は問わなかった。 主要アウトカムは主要心血管イベント(致死的または非致死的脳卒中、虚血性心疾患、心不全による入院もしくは死亡の複合で定義)とし、相対的治療効果は層別Cox比例ハザードモデルで推定した。治療効果の異質性は、事前に定義されたCKDの状態、CKDステージ(1~5)、糖尿病、蛋白尿、およびベースライン血圧で分類したサブグループ間で評価した。また、5つの主要な降圧薬クラスにおいて、サブグループ間で治療効果が異なるかどうかを層別ネットワークメタ解析で評価した。 52件の無作為化試験(36万3,684例)のうち、適格基準を満たした46件・28万5,124例が解析に組み込まれた。女性11万6,145例(40.7%)、男性16万8,979例(59.3%)、ベースラインにおけるCKD患者は5万9,185例(20.7%)、2型糖尿病患者は8万6,067例(30.2%)であった。収縮期血圧5mmHg低下で、主要心血管イベントリスクが約10%低下 追跡期間中央値4.4年(四分位範囲:3.2~5.1)において、収縮期血圧の5mmHg低下により、主要心血管イベントのリスクは、CKD患者(ハザード比[HR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.87~0.94)および非CKD患者(HR:0.90、95%CI:0.88~0.93)の両方において、低下が認められた(相互作用のp>0.99)。さらに、観察された相対リスク低下は、ステージ4~5を含むすべてのCKDステージで一貫していた(相互作用のp>0.99)。 同様の治療効果の観察は、蛋白尿の有無別や、120/70mmHg未満群を含む各血圧区分においても認められた。しかしながら、CKD患者における相対的治療効果は、糖尿病合併例(HR:0.96、95%CI:0.90~1.02)で非合併例(HR:0.88、95%CI:0.84~0.93)と比較して著しく減弱していた(相互作用のp=0.044)。 各薬剤クラス内の層別解析では、心血管リスクに対する降圧薬とプラセボのクラス固有効果は、調査したサブグループ全体で変わらないことが示された。

57.

糖尿病患者の心血管リスク軽減のための先手必勝手段:PCSK9阻害薬による早期介入?(解説:島田俊夫氏)

1. セールスポイント:2次予防から「高リスク1次予防」へのパラダイムシフト 本研究の最大のセールスポイントは、これまで主に「心筋梗塞や脳卒中の既往がある患者(2次予防)」に限定されていたPCSK9阻害薬の有効性を、「イベント未発症でリスクが高い糖尿病患者(1次予防)」において初めて証明した点にある。・劇的な脂質改善:エボロクマブ投与により、LDLコレステロール(LDL-C)値をプラセボ群の111mg/dLに対し、エボロクマブ投与群では52mg/dLまで大幅に低下させた。・確かなイベント抑制効果:主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中)のリスクを31%減少(ハザード比:0.69)させた。・早期および持続の効果:治療開始1年後から効果が顕著になり、その後もリスク低下が持続することが確認された。2. 臨床的価値:糖尿病治療における「未充足のニーズ」への応答 臨床現場において、周知のごとく糖尿病患者は動脈硬化のリスクは高く、イベントを起こすまではスタチン単剤などの標準治療にとどまることが多かった。本論文は、以下の価値を示している。・「先手必勝」の正当化:有意な動脈硬化が確認される以前の段階から強力に脂質を低下させることで、将来の重篤なイベントを未然に防げる可能性を示した1)。・ベネフィット:性別、年齢(65歳以上・未満)、ベースラインのLDL-C値によらず、一貫した有効性が確認された2)。・安全性:重篤な有害事象や副作用による投与中止率はプラセボ群と同等であり、長期投与における安全性が再確認された。3. 論文の弱点と限界 非常に強力なデータを示す一方で、以下の点には留意が必要である。・「超高リスク」への限定:対象は糖尿病罹病期間10年以上、インスリン使用など、リスクの高い糖尿病患者に限定されており、すべての糖尿病患者に一律に一般化できるわけではない。・死因分析の解釈:全死因死亡率の減少(ハザード比:0.76)も示唆されたが、統計学的な検定順序の規約により、この結果はあくまで「探索的」な結果として扱うことが妥当である。本研究はサブ解析に基づく結果であり、探索的結果と受け止めることが望ましい。・コスト対効果の課題:PCSK9阻害薬は高価な薬剤であるため、1次予防として広く普及させるには、さらなる経済性評価が求められる(※本論文内では直接的なコストの言及はないが、臨床応用上の一般的課題と理解する)3)。コメント 本論文は、糖尿病患者における心血管疾患予防の新たなスタンダードを示している。「悪くなってからたたく」のではなく、**「悪くなる前に強力に抑え込む」**ことの重要性を科学的に裏付けた、きわめて意義深い研究と言っても過言ではない。しかし、費用対効果については依然として問題が残っていることも事実である。サイレントキラーとしての糖尿病に関しては、大きな成果として素直に受け入れたい結果だと考える。

59.

アルツハイマー病に対する4つの第2世代抗精神病薬の死亡リスク比較

 第2世代抗精神病薬(SGA)は、安全性に関する懸念が存在するにもかかわらず、アルツハイマー病の行動症状のマネジメントに対し、適応外で使用されることが少なくない。しかし、特定のSGA間における死亡リスクを比較したエビデンスは、依然として限られている。米国・ピッツバーグ大学のChen Jiang氏らは、一般的に使用されるSGAで治療を行ったアルツハイマー病患者におけるすべての原因による死亡率を比較し、因果機械学習を用いて治療効果の異質性を検討した。CNS Drugs誌オンライン版2026年3月28日号の報告。 Truvetaプラットフォームの匿名化された電子カルテデータを用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。新規患者デザインを用いて、アリピプラゾール、リスペリドン、クエチアピン、オランザピンによる治療を開始した新規アルツハイマー病患者を特定した。曝露は、Cox比例ハザードモデルにおいて時間変動共変量としてモデル化し、交絡因子を調整するために傾向スコアマッチングを適用した。因果ツリーとターゲット最大尤度推定法を用いて、治療効果に異質性を示すサブグループを特定した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病患者1万7,004例において、アリピプラゾールは、オランザピン(調整ハザード比[aHR]:0.667、95%信頼区間[CI]:0.472〜0.941)およびクエチアピン(aHR:0.677、95%CI:0.462〜0.990)と比較し、死亡率が有意に低かった。・クエチアピンは、オランザピン(aHR:0.833、95%CI:0.702〜0.990)およびリスペリドン(aHR:0.830、95%CI:0.705〜0.978)と比較し、死亡率が低かった。・因果ツリー分析により、とくに2型糖尿病治療薬を使用している患者において、臨床的特徴による治療効果の異質性が明らかになった。・サブグループ解析では、アリピプラゾールは、2型糖尿病治療薬使用患者において保護効果を示した(クエチアピンおよびリスペリドンの併用群と比較し、aHR:0.604、p=0.002)。 著者らは「単剤療法を行っているアルツハイマー病患者において、SGAによる死亡リスクには大きな違いが認められた。アリピプラゾールとクエチアピンは、オランザピンとリスペリドンと比較し、死亡率が低いことが示された。治療効果の異質性は、併存する2型糖尿病などの患者特性に基づいた個別処方の必要性を示唆している」と結論付けている。

60.

60歳以上の甲状腺機能低下症、レボチロキシン中止は可能か/JAMA

 甲状腺ホルモン製剤であるレボチロキシンは、60歳以上の甲状腺機能低下症では一般に生涯にわたって継続投与されるが、長期の投与が常に必要かは定かでないという。オランダ・ライデン大学医療センターのJanneke Ravensberg氏らは、安定用量のレボチロキシンの投与を1年以上受けていた甲状腺機能低下症の60歳以上の集団では、その約4分の1が、投与中止から1年後も適切な甲状腺機能を維持し、甲状腺関連の生活の質(QOL)にも臨床的に意義のある変化を認めないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月6日号で報告された。オランダのプライマリケアの単群前向きコホート研究 研究グループは、レボチロキシンの投与を受けている甲状腺機能低下症の年齢60歳以上の集団における投与中止の成功率を明らかにする目的で、オランダの58の一般診療施設で非盲検単群前向きコホート研究を実施した(ZonMwの助成を受けた)。2020年1月~2022年7月に被験者の登録を行った。 対象は、少なくとも1年間、安定用量(150μg/日以下)のレボチロキシンの投与を受け、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が10mIU/L未満の60歳以上の地域在住者とした。 レボチロキシンの用量を段階的に減量し、各減量時から少なくとも6週間が経過した後に甲状腺機能検査を行った。 主要アウトカムは、レボチロキシンの投与を中止して1年後に、投与中止を継続しており、かつTSH値が10mIU/L未満で、遊離サイロキシン値が基準値の範囲内にある被験者の割合であった。投与量が少ないほど、中止の成功率が高い 370例を登録した。ベースラインの年齢中央値は70.5歳(四分位範囲[IQR]:65.7~75.7、範囲:60.6~89.0)で、294例(79.5%)が女性であった。平均レボチロキシン投与量は84(SD 31)μg/日であり、TSH値中央値は2.2mIU/L(IQR:1.1~3.5、範囲:0.02~9.69)、平均遊離サイロキシン値は1.21(SD 0.18)ng/dLであった。このうち366例が1年後の最終追跡調査を完了した。 370例中95例(25.7%、95%信頼区間[CI]:21.5~30.4)が、1年後の時点でレボチロキシンの投与中止を継続しており、その時点のTSH値中央値は5.03mIU/L(範囲:1.56~9.40)、平均遊離サイロキシン値は1.01ng/dL(範囲:0.80~1.43)であった。 レボチロキシンの投与中止に成功した95例のうち、46例(48.4%、95%CI:38.6~58.3)の1年後のTSH値は4.8mIU/L未満であった。 また、ベースラインのレボチロキシン投与量が少ないほど、投与中止の成功率が高かった。レボチロキシン50μg/日以下の投与を受けていた88例のうち、56例(63.6%)がこの治療の中止に成功し、75μg/日以下の投与を受けていた176例では、79例(44.9%)が中止の成功に至った。介入に関連した重篤な有害事象はない 甲状腺関連QOLは、ベースラインからその後1年の時点まで、全体として臨床的に意義のある変化を認めなかった。また、レボチロキシン中止の成功例と不成功例に層別化しても、QOLの差が臨床的に意義のある最小変化量(MCID)を超えることはなかった。 平均12.9ヵ月の追跡期間中に、16例に17件の重篤な有害事象(予定外の入院15件、死亡2件)が発現したが、試験介入に関連したものはなかった。 著者は、「60歳以上、とくにレボチロキシン50μg/日以下の投与を受けている患者において、レボチロキシン治療の継続の必要性について評価を行うべきである」としている。

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