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妊娠合併症は将来の心臓の健康に悪影響を及ぼす

 妊娠中に妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群といった合併症を発症した女性は、後年の心臓の健康リスクが高いことを示す研究結果が報告された。米ノースウェスタン大学のJaclyn Borrowman氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に4月22日掲載された。 著者らによると、妊娠合併症と健康リスクとの関連は、妊娠前に過体重や肥満であった女性に、特に強く当てはまるという。そして、「女性にとって妊娠中に合併症を発症するか否かは、将来の健康状態や慢性疾患のリスクを予測するという点で、あたかも“ストレス負荷テスト”のようなものだ」と解説。またBorrowman氏は、「われわれの研究結果は、妊娠を考えている女性が体重管理を優先することが、妊娠中および将来の心臓血管の健康につながり得ることを示唆している」と話している。 この研究は、妊娠前に高血圧や糖尿病のない18歳以上の妊婦4,269人(平均年齢30.1±5.6歳)を妊娠28週(範囲24~32週)時点に登録し、観察研究として行われた。妊娠前に、22%は過体重(BMI25~30未満〔国内ではこの範囲も肥満に該当〕)、11%は肥満(BMI30以上)だった。妊娠糖尿病は13.8%に、妊娠高血圧症候群は10.7%に認められた。 出産後11.6±1.3年間追跡(範囲10~14年)。平均41.7±5.6歳の時点において、妊娠前に肥満であった群はそうでない群に比べて、平均血圧(7.0mmHg〔95%信頼区間6.0~8.1〕)、トリグリセライド(28.5mg/dL〔同21.9~35.1〕)、HbA1c(0.3%〔0.2~0.4〕)が有意に高かった。 妊娠糖尿病の発症は、肥満と追跡期間中のHbA1cとの関連を24.6%(20.9~28.4)媒介し、妊娠高血圧症候群の発症は、肥満と追跡期間中の平均動脈圧との関連を12.4%(10.6~14.2)媒介していた。この結果についてBorrowman氏は、「妊娠合併症は将来の心臓病リスクに寄与するが、そのリスクの全てを説明できるわけではなく他の因子も関係している。妊娠合併症と心臓病リスクとの関連性を理解することは、効果的な予防戦略の開発や最良の介入タイミングの決定のために重要である」と話している。 米イノバ・ヘルス・システムのGarima Sharma氏が、この論文に対する付随論評を寄せ、「本研究は、医師が妊娠後の女性の心臓リスク因子を予測する際に役立つ可能性のある、示唆に富む情報を提供している」と評価。また、「示された結果は、妊娠前および出産後に、過剰な脂肪を減らすことの意義を強調するものと言える。抗肥満薬などの新しい治療選択肢が整ってきた現在では、この点はより重要な意味を持つ」と付け加えている。

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セマグルチドはPADを有する2型糖尿病患者の歩行距離を改善する(解説:原田和昌氏)

 症候性末梢動脈疾患(PAD)の罹患者は世界で2億3,000万人超と推定され、高齢化により増加している。PAD患者の機能低下と健康関連QOL低下を改善する治療は、ほとんどなかった。米国・コロラド大学のMarc P. Bonaca氏らは第IIIb相二重盲検無作為化プラセボ対照試験のSTRIDE試験にて、PADを有する2型糖尿病(DM)患者においてセマグルチドがプラセボと比較して歩行距離を改善することを示した。20ヵ国112の外来臨床試験施設で行われた。 2型DMで間欠性跛行を伴うPAD(Fontaine分類IIa度、歩行可能距離>200m)を有し、足関節上腕血圧比(ABI)≦0.90または足趾上腕血圧比(TBI)≦0.70の患者を対象とした。セマグルチド1.0mgを週1回52週間皮下投与する群(396例)またはプラセボ群(396例)に無作為に割り付けた。主要エンドポイントは、定荷重トレッドミルで測定した52週時点の最大歩行距離の対ベースライン比であった。25%が女性で年齢中央値は68.0歳、ベースラインのABIの幾何平均値は0.75、同TBIは0.48、最大歩行距離中央値185.5m、追跡期間中央値は13.2ヵ月であった。 主要エンドポイントは、セマグルチド群(1.21[四分位範囲[IQR]:0.95~1.55])がプラセボ群(1.08[0.86~1.36])よりも有意に大であった(推定治療群間比:1.13[95%信頼区間:1.06~1.21]、p=0.0004)。52週時点の最大歩行距離の絶対改善中央値は、セマグルチド群37m(IQR:-8~109.0)、プラセボ群13m(-26.5~70.0)であった。重篤な有害事象はセマグルチド群19%、プラセボ群20%であり、試験薬に関連した重篤な有害事象はセマグルチド群1%、プラセボ群2%で重篤な胃腸障害の頻度が最も高かった。治療に関連した死亡はなかった。 PADの治療は運動療法とアスピリンまたはクロピドグレル、シロスタゾール、スタチンが基本であり、下肢血行再建術後のPADにはリバーロキサバン2.5mgの1日2回経口投与+アスピリンが承認されている。2020年Marc P. Bonaca氏らによるVOYAGER PAD試験にて主要有害下肢/心血管イベントリスクの低下が示されたことによる。一方、STRIDE試験では歩行距離の延長と副次的評価項目のABI改善が示されており、PAD+2型DM患者に対するセマグルチドの早期承認が望まれる。心血管合併症などでシロスタゾールが使用しにくい患者にとくに有効と考えられる。なお、事後解析では救肢のための血行再建術+薬物追加+死亡も有意に減少していた。 著者らはメカニズムを強調していないが、PAD患者はもともと体重があまり大きくないため体重減少の効果は少なそうである。GLP-1受容体作動薬のDMの臨床試験のメタ解析にてCRP値の低下を含む抗炎症作用が示されており、心血管イベント抑制だけでなく血管自体に効いているという可能性がある。非DM患者に対する効果も興味深いところである。

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糖尿病や腎臓病リスクが高まる健診の未受診期間は?/H.U.グループ中央研究所・国循

 2型糖尿病の進展は、糖尿病性腎症や透析を含む合併症の発症など健康上の大きな問題となる。年1回の健康診断と健康転帰との良好な関係は周知のことだが、定期的な健康診断をしなかった場合の2型糖尿病および透析への進展に及ぼす影響についてはどのようなものがあるだろうか。この課題に対して、H.U.グループ中央研究所の中村 いおり氏と国立循環器病研究センターの研究グループは、年1回の健康診断の受診頻度と糖尿病関連指標との関連、および透析予防における早期介入の潜在的影響について検討した。その結果、健康診断を3年以上連続して受診しなかった人は、2型糖尿病のリスクが高いことが示唆された。この結果は、BMC Public Health誌2025年4月14日号に掲載された。3年連続で健康診断を受けないと上がる2型糖尿病リスク 研究グループは、延岡市の40歳以上の市民2万2,094人を対象に、2021年の健診データを解析した。2018~20年の健診受診状況に基づいて参加者を4群に分類。ロジスティック回帰分析により、健診頻度とHbA1cや推算糸球体濾過量などの糖尿病関連指標との関連を評価した。健康診断を受けていない人が透析を受けるまでの期間は、以前に発表されたモデルを用い、未治療と治療のシナリオによって推定した。 主な結果は以下のとおり。・2021年に健康診断を受診した3,472人のうち、2,098人(60.4%)が女性、1,374人(39.6%)が男性だった。・3年連続で健診を受診しなかった人は、毎年健診を受けていた人よりも2型糖尿病のリスクが高かった(オッズ比:4.69、95%信頼区間:2.78~7.94)。・3年のうち1~2回受診した人と毎年受診した人では、2型糖尿病発症率に有意差は認められなかった。・発症の高リスクな人を対象としたシミュレーションでは、39人中32人に生涯透析を必要とする可能性があったが、早期介入により31人が透析を防ぐことができた。 研究グループでは、この結果から「健康診断を3年以上連続して受診しなかった人は2型糖尿病のリスクが高く、このような集団における糖尿病を予防するための的を絞った公的介入の必要性が強調される」と提言を行っている。

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疫学・自然経過―その1【脂肪肝のミカタ】第2回

疫学・自然経過―その1Q. MASLD由来の肝がんの実態は?腹部超音波検査で脂肪性肝疾患(SLD)と診断された虎の門病院の9,959例を、SLDの新規分類に基づいて肝発がん率を評価した。その結果、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)が0.05%/年、代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)が0.11%/年、アルコール関連肝疾患(ALD)が0.21%/年と、アルコール摂取量に伴い肝発がん率が増加することが確認された(図1)。(図1)腹部超音波検査でSLDと診断された患者のエタノール摂取量別累積肝発がん率画像を拡大するMASLDからの肝発がん率は決して高くはないが1,2)、本邦における対象は2,000万人以上とされ、将来的に肝がんの主な原因の一つになることが予測される。MASLD症例における肝発がんに影響する要因として、肝線維化進行度、高齢、2型糖尿病、肥満、エタノール摂取量などが挙げられる(表1)。とくに、肝線維化進行度は生命予後の予測に重要な因子とされる3-5)。これらの危険因子を組み合わせて、多くの対象の中から、危険なMASLD症例を絞り込むことが必要とされる。(表1) MASLD症例における肝がんの危険因子画像を拡大する1)Kawamura Y, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2016;14:597-605.2)Chen YT, et al. Am J Gastroenterol. 2024;119:2241-2250.3)Rinella ME, et al. Hepatology. 2023;77:1797-1835.4)European Association for the Study of the Liver (EASL) ・ European Association for the Study of Diabetes (EASD) ・ European Association for the Study of Obesity (EASO). J Hepatol. 2024;81:492-1542.5)日本消化器病学会・日本肝臓学会編. NAFLD/NASH診療ガイドライン2020. 南江堂.

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中年患者へのスタチン使用、白内障リスク上昇

 近年、スタチンの使用が白内障の発症に影響を及ぼす可能性が示唆されている1)。そこで、日本人におけるスタチン使用と白内障の発症との関連性について、日本大学薬学部のKazuhiro Kawabe氏らが検討し、中年層でのスタチン使用が白内障リスクを約1.5倍高めることを明らかにした。Scientific Reports誌2025年4月19日号掲載の報告。 研究者らは、日本人の健康診断および保険請求データベースの2005年1月1日~2017年12月31日に記録されたデータを用いて後ろ向きコホート研究を実施。健康診断データの脂質異常症117万8,560例のうち72万4,200例をスタチン非使用群とスタチン使用群(新規使用)に分類し、未調整/年齢・性別による調整/多変量調整のハザード比(HR)を算出してCox比例ハザード回帰分析を行った。主要評価項目はスタチンの使用と白内障リスクの関連性を評価。副次評価項目として、使用されたスタチンの力価や特徴、スタチンごとの白内障リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・集団の平均年齢は、スタチン使用群が51.7歳、スタチン非使用群が45.6歳だった。 ・平均追跡期間は使用群で1.3年、非使用群で3.2年だった。 ・スタチン非使用群と比較し、スタチン使用群では白内障の発症リスク上昇との関連が認められた(調整HR:1.56、95%信頼区間:1.43~1.70)。 ・白内障の粗発生率はスタチン非使用群で1,000人年当たり2.4だったのに対し、スタチン使用群では低力価スタチンの場合は8.8、高力価スタチンの場合は8.7であった。 ・白内障発症リスクをスタチンの力価でみると、高力価スタチンはHR:1.61(同:1.44~1.79)、低力価スタチンはHR:1.48(同:1.30~1.70)と、高力価スタチンのほうが発症リスクはやや高かった。 ・脂溶性スタチンおよび水溶性スタチンのHRは、それぞれ1.56(同:1.39~1.75)と1.56(同:1.38~1.75)であった。 ・フルバスタチンとシンバスタチンを除くすべてのスタチン使用群において、白内障発症リスクが上昇した(アトルバスタチン:1.73[同:1.48~2.03]、ロスバスタチン:1.52[同:1.32~1.74]、ピタバスタチン:1.35[同:1.12~1.64]、プラバスタチン:1.67[同:1.36~2.06])。

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チルゼパチド72週の投与で体重が5%以上減少/リリー・田辺三菱

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、4月11日に発売された持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド[皮下注アテオス])について、プレスセミナーを開催した。プレスセミナーでは、肥満症の基礎情報や肥満症の要因、社会的課題とともに、チルゼパチドの臨床試験であるSURMOUNT-J試験の概要が説明された。肥満症治療は薬物治療・外科治療という新しいアプローチに 「複合的な要因からなる慢性疾患『肥満症』のアンメットニーズ」をテーマに、脇 裕典氏(秋田大学大学院医学系研究科 代謝・内分泌内科学講座 教授)が、肥満症の病態や関係する諸課題について説明した。 過体重およびBMI25以上の肥満者は、全世界で約25億人、わが国では約2,800万人と推計され、成人男性のとくに40~50代で割合が高く、最近では小児の肥満も増加している。 肥満の問題としては、BMI30以上40未満の人では、BMI23以上25未満を基準(ハザード比=1)としたときの全死因の死亡リスクが男性1.36および女性1.37という男女別のコホート研究もある1)。また、肥満はメタボリックドミノの上流に位置し、将来的に慢性腎臓病や糖尿病など重大な健康障害を来すとされている。 肥満および肥満症の要因としては、遺伝的、生理的、環境などさまざまな要因が複合的に関与しているにもかかわらず「自己管理の問題」と考えられがちで、肥満・肥満症のある人は、職場や教育現場のみならず、医療現場においても「スティグマ(偏見や差別)」に直面することがある。また、肥満者自身が自分自身の責任と考えてしまう「セルフ・スティグマ」も指摘されている。 肥満症の定義は、肥満(BMIが25以上)かつ、(1)肥満による耐糖能異常、脂質異常症、高血圧などの11種の健康障害(合併症)が1つ以上ある、または(2)健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に肥満症と診断される。わが国の肥満症の特徴として内臓脂肪蓄積型の肥満が多く、BMIが高値でなくても肥満関連健康障害を伴いやすいという。 肥満症治療の目的は、「減量により健康障害・健康障害リスクを改善し、QOLの改善につなげること」であり、治療では、減量目標を設定し、食事・運動・行動療法を行ったうえで3~6ヵ月を目安に各治療成果を評価する。そして、減量目標が未達成の場合に肥満症治療食の強化や薬物療法、外科療法の導入を考慮するとガイドラインでは明記されている。 ただ、課題としてLook AHEAD研究から集中的な生活習慣介入で短期的に減量しても、長期的に減量した体重を維持できたのは半数未満で、元の体重より増加した例も認められたことから、生活習慣の改善のみで減量した体重を維持するのは困難であることが示唆されている2)。 これは、食欲抑制作用の低下により、満腹感が低下した結果、食欲が亢進すること、基礎代謝が低下し、エネルギー消費量が減少することが指摘され、生活習慣への介入だけでは不十分な可能性もある。 最後にまとめとして、脇氏は「肥満症治療の目標は、減量ではなく、肥満に関連する健康障害の改善とそのリスクの低減であり、QOLの改善である。新たな治療選択肢の登場によって肥満症治療はアプローチや支援を見直すときを迎えている」と従来の治療介入だけではない肥満症治療の選択肢を語り、説明を終えた。72週時点のチルゼパチド投与群は体重が5%以上減少 「第III相臨床試験結果からみる持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド」登場の肥満症市場における意義」をテーマに門脇 孝氏(虎の門病院 院長)が、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの特徴、作用機序、SURMOUNT-J試験の概要について説明を行った。 チルゼパチドは、2024年12月27日に国内製造販売承認を取得し、2025年4月11日に発売された。対象者は、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られないBMI27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害(高血圧、脂質異常症など)を有する者またはBMI35以上の者。 用法・用量について成人では、週1回10mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回10mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量できる。ただし、最大用量は週1回15mgまでとなっている。 この作用機序は、中枢神経系における食欲調節と脂肪細胞における脂質などの代謝亢進により、体重減少作用を示すとされている。 今回の適応承認のために行われたSURMOUNT-J試験は、2型糖尿病を有しない日本人肥満症患者を対象としたプラセボ対照、二重盲検比較試験。主要評価項目は投与72週時点のベースラインからの体重減少であり、チルゼパチド10mg/15mgを週1回投与したときのプラセボ投与に対する優越性を検討した。 対象者は、BMIが27以上35未満で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する患者、またはBMIが35以上で1つ以上の肥満に関連する健康障害を有する患者225例。 その結果、主要評価項目である体重ベースラインから投与72週時までの変化率および投与72週時点の体重について5%以上減少していた患者の割合は、チルゼパチド10mg群および15mg群において、プラセボ群に対し優越性が検証された。投与後72週時の体重のベースラインからの平均変化率は、プラセボ群1.7%減(n=75)に対して、チルゼパチド10mg群17.8%減(n=73)、15mg群22.7%減(n=77)だった。 副次評価項目である投与72週時点の体重が7%以上、10%以上、15%以上、または20%以上減少した患者の割合は、いずれのチルゼパチド群でもプラセボ群と比較し、有意に高かった。 また、ベースラインから投与72週時点のBMIの変化量では、チルゼパチド10mg群では-5.8、15mg群では-7.7、プラセボ群では-0.6だった。そのほか、“Impact of Weight on Quality of Life-Lite Clinical Trials Version”(肥満に関連する生活の質を評価するために開発された20項目)では、チルゼパチド10mg群、15mg群のいずれもプラセボ群と比較し、改善していた。 安全性に関しては、ほかのGLP-1受容体作動薬と同様に、便秘、発熱、悪心、下痢、嘔吐、食欲減退など、主な有害事象は消化器系の症状であった。試験中に確認されたすべての有害事象の割合は、プラセボ群69.3%(n=75)に対し、チルゼパチド10mg群83.6%(n=73)、15mg群85.7%(n=77)であり、死亡などの重篤なものは報告されなかった。

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ノータッチ静脈採取法、CABGの静脈グラフト閉塞を改善/BMJ

 冠動脈バイパス術(CABG)のグラフト採取において、従来法とは異なりノータッチ静脈採取法(no-touch vein harvesting technique)は、静脈の外膜と血管周囲組織を温存し、vasa vasorum(脈管の脈管)の完全性と内皮機能を保持する。そのため、内皮傷害が最小限に抑えられ、炎症反応が軽減されてグラフトの開存性が向上すると指摘されている。中国医学科学院・北京協和医学院のMeice Tian氏らは、「PATENCY試験」の3年間の追跡調査により、従来法と比較して大伏在静脈のノータッチ静脈採取法はCABGにおける静脈グラフトの閉塞を有意に軽減し、患者アウトカムを改善することを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年4月30日号に掲載された。中国の無作為化試験の3年延長試験 PATENCY試験は、CABGにおけるノータッチ静脈採取法の3年間のアウトカムの評価を目的とする無作為化試験であり、2017年4月~2019年6月に中国の7ヵ所の心臓外科施設で患者を登録した(National High Level Hospital Clinical Research Fundingなどの助成を受けた)。今回は、3年間の延長試験の結果を報告した。 年齢18歳以上で、CABGを受ける患者2,655例(平均[±SD]年齢61±8歳、女性22%、糖尿病36%、3枝病変88.4%、左主幹部病変31.7%)を対象とした。被験者を、CABG施行中に大伏在静脈からのグラフト採取法としてノータッチ静脈採取法を行う群(1,337例)、または従来法によるグラフト採取を行う群(1,318例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、CABG後3年の時点における静脈グラフトの閉塞(CT血管造影で評価)とした。グラフトおよび患者レベルとも閉塞率が有意に良好 術後3年間に、全体の2,621例(99.4%)が臨床的なフォローアップを完了し、2,281例(86.5%)が予定されていたCT血管造影を受けた。 術後3年時のグラフトレベルの静脈グラフト閉塞の割合は、従来法群が9.0%(175/1,953グラフト)であったのに対しノータッチ静脈採取法群は5.7%(114/1,988グラフト)と有意に良好であった(オッズ比[OR]:0.62[95%信頼区間[CI]:0.48~0.80]、絶対群間リスク差:-3.2%[95%CI:-5.0~-1.4]、p<0.001)。 また、全2,655例のITT解析でも、3年後の静脈グラフト閉塞の割合は従来法群に比べノータッチ静脈採取法群で低かった(6.1%vs.9.3%、OR:0.63[95%CI:0.51~0.81]、絶対群間リスク差:-3.1%[95%CI:-4.9~-1.4]、p<0.001)。 3年後の患者レベルの静脈グラフト閉塞の割合は、従来法群の13.3%(152/1,141例)に比べノータッチ静脈採取法群は9.2%(105/1,140例)と有意差を認めた(OR:0.66[95%CI:0.51~0.86]、絶対群間リスク差:-4.11[95%CI:-6.70~-1.52]、p=0.002)。創部の皮膚感覚低下、滲出、浮腫が多い 3年後の臨床アウトカムは、非致死的心筋梗塞(ノータッチ静脈採取法群1.2%vs.従来法群2.7%、p=0.01)、再血行再建術(1.1%vs.2.2%、p=0.03)、狭心症の再発(6.2%vs.8.4%、p=0.03)、心臓関連の原因による再入院(7.1%vs.10.2%、p=0.004)の発生率がノータッチ静脈採取法群で良好であった。一方、全死因死亡(3.8%vs.3.4%、p=0.49)、心臓死(2.6%vs.2.4%、p=0.83)、脳卒中(3.7%vs.3.3%、p=0.55)の発生率には両群間に差はなかった。 退院前の脚創部合併症については、皮膚の感覚低下(23.2%vs.17.8%、p<0.001)、滲出(4.3%vs.1.9%、p<0.001)、浮腫(19.0%vs.12.9%、p<0.001)の頻度がノータッチ静脈採取法群で高かった。壊死、コンパートメント症候群などの重度合併症は発現しなかった。また、3ヵ月の時点で未治癒の脚創傷への外科的介入(10.3%vs.4.3%、p<0.001)はノータッチ静脈採取法群で多かったが、12ヵ月時には追加的外科治療の割合は両群で同程度となった。 著者は、「これらの結果により、ノータッチ静脈採取法は長期間にわたってグラフトの開存性を維持し、心筋梗塞や再血行再建術の発生を抑制することで患者アウトカムの改善をもたらすことが示された」としている。

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肝線維化を有するMASH、週1回セマグルチドが有効/NEJM

 中等度または重度の肝線維化を有する代謝機能障害関連脂肪肝炎(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis:MASH)の治療において、プラセボと比較してGLP-1受容体作動薬セマグルチドの週1回投与は、肝臓の組織学的アウトカムを改善するとともに、有意な体重減少をもたらすことが、米国・Virginia Commonwealth University School of MedicineのArun J. Sanyal氏らが実施したESSENCE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年4月30日号で報告された。37ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 ESSENCE試験は、中等度~重度の肝線維化を有するMASHの治療におけるセマグルチドの有効性と安全性の評価を目的とする進行中の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年5月~2023年4月に日本を含む37ヵ国253施設で患者を登録した(Novo Nordiskの助成を受けた)。今回は、最初の800例に関する中間解析の結果を公表した。 年齢18歳以上、生検で確定したMASHで、ステージF2またはF3の肝線維化を有する患者を、セマグルチド(2.4mg)を週1回皮下投与する群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は240週とし、この中間解析は72週目に行った。 主要エンドポイントは、肝線維化の悪化を伴わない脂肪肝炎の消失、および脂肪肝炎の悪化を伴わない肝線維化の改善とした。脂肪肝炎の消失、肝線維化の改善とも有意に優れた セマグルチド群に534例、プラセボ群に266例を割り付けた。全体の平均(±SD)年齢は56.0(±11.6)歳で、女性が57.1%、白人が67.5%であった。平均BMIは34.6(±7.2)で、2型糖尿病患者が55.9%含まれた。肝線維化はステージF2が31.3%、ステージF3が68.8%だった。 72週の時点で、肝線維化の悪化を伴わない脂肪肝炎の消失の割合は、プラセボ群が34.3%であったのに対し、セマグルチド群は62.9%と有意に高かった(推定群間差:28.7%ポイント[95%信頼区間[CI]:21.1~36.2]、p<0.001)。 また、脂肪肝炎の悪化を伴わない肝線維化の改善を示した患者の割合は、プラセボ群の22.4%に比べ、セマグルチド群は36.8%であり有意に良好だった(推定群間差:14.4%ポイント[95%CI:7.5~21.3]、p<0.001)。消化器系有害事象の頻度が高い 副次エンドポイントの解析では、体重の変化量(セマグルチド群-10.5%vs.プラセボ群-2.0%、推定群間差:-8.5%ポイント[95%CI:-9.6~-7.4]、p<0.001)、および脂肪肝炎の消失と肝線維化の改善の両方を達成した患者の割合(32.7%vs.16.1%、16.5%ポイント[10.2~22.8]、p<0.001)が、セマグルチド群で有意に優れた。 一方、36-Item Short Form Health Survey(SF-36)の体の痛み(bodily pain)のベースラインから72週目までの平均変化量(0.9 vs.-0.5、推定群間差:1.3%ポイント[95%CI:0.0~2.7]、p=0.05)は、セマグルチド群で痛みの程度が低い傾向がみられたが、統計学的に有意な差を認めなかった(事前に、p<0.0045を満たす場合に有意差ありと判定することと定めたため)。 重篤な有害事象は、セマグルチド群で13.4%、プラセボ群でも13.4%に発現した。試験中止に至った有害事象は、それぞれ2.6%および3.3%に認めた。最も頻度の高い有害事象は両群とも消化器系のもので、悪心(36.2%vs.13.2%)、下痢(26.9%vs.12.2%)、便秘(22.2%vs.8.4%)、嘔吐(18.6%vs.5.6%)がセマグルチド群で多かった。 著者は、「MASHの生物学的特性に基づくと、脂肪肝炎が消失すると肝線維化が抑制されると予測され、線維化のステージが高いことは不良なアウトカムと関連するため、ステージの低下はとくに重要と考えられる」「本試験の知見と先行研究の結果を統合すると、ステージF2またはF3の肝線維化を有するMASHの治療におけるセマグルチドの有益性が支持される」「セマグルチドは肝硬変患者にも安全に使用できるが、肝硬変における有効性は確立していないため、MASH患者では肝硬変のスクリーニングを行って、それに応じた治療を行うことが重要である」としている。

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第242回 糖尿病薬の適正使用について、医師と患者に注意喚起/PMDA

<先週の動き> 1.糖尿病薬の適正使用について、医師と患者に注意喚起/PMDA 2.百日咳患者が前年比3倍に急増、ワクチン接種と耐性菌対応が急務に/厚労省 3.国立大学病院の6割が赤字見通し、医師の働き方改革と物価高が直撃/国立大学病院長会議 4.子どもの数、過去最少に 出生数減少が深刻化/総務省 5.地方公務員の医師が無許可で副業、2,740万円報酬で免職/静岡県 6.「逆子」施術で医療事故、書類送検の医師に謝罪なし/京都府 1.糖尿病薬の適正使用について、医師と患者に注意喚起/PMDA近年、2型糖尿病治療薬として承認されているGLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)およびGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(同:マンジャロなど)を、痩身や美容目的で適応外使用するケースが急増しており、重大な健康被害も報告されている。これを受け、製薬企業各社および医薬品医療機器総合機構(PMDA)、日本糖尿病学会が相次いで注意喚起を行っている。これらの薬剤は、本来「2型糖尿病」に限定して承認されたものであり、減量や美容目的での使用は認められていない。また、肥満症の適用を取得しているGLP-1受容体作動薬セマグルチド(ウゴービ皮下注)についても、適用患者はBMI27以上で、2つ以上の肥満に関連する合併症(高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患など)を有する、またはBMI35以上の成人の肥満症に対して、6ヵ月以上の食事療法・運動療法を行い、効果不十分の患者に処方可能とされている。実際、ダイエット目的で処方された患者が、嘔吐・下痢・意識喪失などの副作用を訴える事例も相次いでいる。オンライン診療や美容クリニックにおいて「簡単に痩せる薬」として紹介されて処方されるケースが多く、安易な使用が健康リスクを高めている。日本糖尿病学会は、適用外使用によって本来の患者への供給が妨げられる問題も深刻だとし、2023年11月に見解を改訂。不適切な広告や処方を厳しく戒め、医師による慎重な対応を求めている。また、PMDAは、承認効能外での使用を助長する広告や診療が確認された場合には、速やかに規制当局へ報告する体制をとると発表した。さらに、GLP-1作動薬を肥満症治療に用いるには、セマグルチドのように、厚生労働省が定めた適正使用推進ガイドラインに基づいて、施設側には専門医の所属あるいは専門医が所属する施設と適切な連携体制の確立のほか、常勤の管理栄養士による適切な栄養指導ができることが条件になっており、適切な処方が求められている。製薬会社、医療機関、学会のいずれもが「安全性と有効性が確認された範囲での適正使用」を強調しており、医療関係者および患者に対し、安易なダイエット目的での使用を控えるよう改めて強く呼びかけている。 参考 1) GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ(PMDA) 2) GLP-1受容体作動薬及び GIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用について(同) 3) 最適使用推進ガイドライン セマグルチド(厚労省) 4) GLP-1受容体作動薬および GIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解(糖尿病学会) 5) 糖尿病治療薬の「ダイエット薬」としての使用の危険性を改めて強調、医療関係者・患者ともに「適正な使用」に協力を!-PMDA(Gem Med) 6) GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ(ノボ) 7) 【GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬】ダイエット目的での使用に関する注意喚起について(リリー) 2.百日咳患者が前年比3倍に急増、ワクチン接種と耐性菌対応が急務に/厚労省国立健康危機管理研究機構(JIH)によれば、百日咳の感染が全国的に拡大していることが明らかになった。今年の累計患者数は5月初旬時点で1万1,921人に達し、前年(4,054人)の約3倍に上っている。4月21~27日の1週間だけで2,176人の新規患者が報告され、5週連続で過去最多を更新した。新潟県では感染者が全国最多となるなど、各地で過去に例のない規模で流行が続いている。百日咳は細菌による呼吸器感染症で、激しい咳が長期間続き、とくに生後6ヵ月未満の乳児が感染すると重症化して肺炎や脳症、死亡のリスクもある。主な感染経路は飛沫感染で、家庭や学校などでの拡大が指摘されている。今シーズンは、抗菌薬が効きにくい「耐性菌」の感染例も報告されており、治療が難航するケースもある。各自治体では手洗いやマスク着用など基本的な感染対策の徹底を呼びかけており、日本小児科学会は、生後2ヵ月以降の定期接種ワクチンの速やかな実施を推奨。宮城県では追加接種や妊婦へのワクチン接種で母子の抗体を高める対策も紹介されている。10代や小学生を中心とした感染の広がりが目立ち、学校などでの集団感染の可能性も懸念されている。大型連休明けの今後、さらなる拡大を防ぐには、予防接種と日常的な感染対策の両立が鍵となる。 参考 1) 百日せきの累計患者1万人超、5週連続最多…治療薬効きにくい耐性菌が広がったか(読売新聞) 2) 都内の百日咳報告数 連休で前週比3割減 132人、累計は1千人に迫る(CB news) 3) 百日せき ことしの患者が1万人超える 去年1年間の倍以上に(NHK) 4) 百日せき 症状や注意点は? 2025年は流行中 乳児は特に注意を 患者増加で過去最多5週連続に(同) 5) 百日せき感染状況MAP(同) 3.国立大学病院の6割が赤字見通し、医師の働き方改革と物価高が直撃/国立大学病院長会議国立大学病院長会議は2025年5月9日、全国42の国立大学病院のうち6割に当たる25病院が、2024年度決算で赤字になる見通しであると発表した。赤字総額は、前年度の約26億円から大幅に膨らみ、213億円に達する。国立大病院全体として赤字となるのは2年連続となり、経営の悪化が深刻化している。赤字の主な要因は、物価やエネルギー価格の上昇と、「医師の働き方改革」や人事院勧告対応に伴う人件費の急増。2023年度と比較して人件費は284億円増加した一方、診療報酬改定などによる増収は111億円に止まり、コスト増を賄いきれていない。診療材料や医薬品費も20~40%上昇し、高度な医療を提供すればするほど赤字が膨らむ構造となっている。加えて、診療報酬は公定価格で柔軟な調整が難しく、物価高騰に制度が追いついていない状況。赤字幅は一部基金による支援で抑えられたが、根本的な改善には至っていない。大鳥 精司会長(千葉大学病院長)は「診療数を増やしても材料費が高騰しており、やればやるだけ赤字になる」と語り、報酬の引き上げと財政支援の必要性を訴えている。現場ではすでに節約努力が限界に達しており、「あと1~2年で資金が枯渇する病院も出る」との懸念も示された。病院の経営悪化は大学本体の財政にも波及しかねず、国立大病院全体の存続に関わる危機として注視が必要だ。 参考 1) 国立大病院の6割が赤字見通し 2024年度「働き方改革」による人件費増や物価高影響(産経新聞) 2) 国立大病院213億円の赤字、24年度収支 6割の病院が赤字(CB news) 3) 国立大病院、6割が赤字 前年度を大幅に上回る 24年度決算(毎日新聞) 4.子どもの数、過去最少に 出生数減少が深刻化/総務省総務省が子どもの日にあわせて公表した統計によると、今年4月1日時点の15歳未満の子どもの数は1,366万人で、前年より35万人減少し、過去最少を更新した。減少は44年連続で、総人口に占める割合も11.1%と過去最低を記録している。1975年以降、51年連続で割合が低下しており、少子化の進行に歯止めがかかっていないことが鮮明になった。年齢別では、0~2歳が222万人(全体の1.8%)、3~5歳が250万人(2.0%)と、年少層ほど人口が少ない構造が続いている。将来的な労働力や社会保障の担い手が着実に減少していることがうかがえる。都道府県別でもすべての地域で子どもの数が前年を下回り、割合が最も高かったのは沖縄県の15.8%、最も低かったのは秋田県の8.8%だった。少子化は医療や社会保障、教育など多方面に影響を及ぼす。とくに医療では、出生数の減少とともに産婦人科や小児科の診療体制の維持が課題となっており、地方では分娩施設そのものが減少している現状がある。出生率は近年1.3%前後で推移しており、同時に65歳以上の高齢者が総人口の29%を超える中、医療ニーズの変化への対応も急務となっている。地域における出産医療の体制は、今後さらに集約・再編が進むとみられ、自治体による子育て支援や住環境整備といった包括的な政策とあわせて、医療資源の再配分と効率的な活用が要望されている。また、医療関係者にも、地域の実情を踏まえた持続可能な体制構築への関与が求められている。 参考 1) 我が国のこどもの数-「こどもの日」にちなんで-(総務省) 2) 15歳未満の子ども数は44年連続、人口に占める子どもの割合は51年連続で減少-総務省(Gem Med) 3) 子どもの数1,366万人、44年連続減で最低更新 1,400万人割る(日経新聞) 4) 15歳未満の子ども、人口の11.1%に 日本で進む人口危機(CNN) 5) 「世界一安全」な医療が崩れる!? 少子化に苦しむ“産婦人科”「出産費用の保険適用化」がもたらす“負”のシナリオとは(弁護士JPニュース) 6) 地元の病院で産めない…なぜ?いま何が?(NHK) 7) 子どもの数 44年連続減少 手厚い住宅支援に取り組む自治体も(同) 5.地方公務員の医師が無許可で副業、2,740万円報酬で免職/静岡県静岡県は2025年5月9日、健康福祉部の男性理事(62)を、地方公務員法に違反する無許可の兼業行為により懲戒免職とした。部長級職員の懲戒免職は県政史上初めてとなる。理事は、2019年10月~2024年12月までの約5年間、県外の複数の医療機関で診療業務に従事し、25の医療法人から計約2,740万円の報酬を得ていた。理事は県職員であることを伏せ、有給休暇などを使って少なくとも310日勤務。内部通報により発覚し、県が調査を進めたが、本人は一貫して否定。しかし、医療機関への聞き取りなどで事実が判明した。理事は2021年にも同様の無許可診療で文書訓告を受けていたが、再発し、反省もみられなかったことから、最も重い懲戒免職処分とされた。医師は医療提供体制や災害医療、医師確保事業の中核を担っており、県庁内では「県民への裏切り」との批判とともに「穴は大きい」との懸念も出ている。県は税務署や警察にも情報提供し、後任には地域医療課技監を専任配置した。地方公務員についても兼業を原則容認する国の方針はあるが、現状、地方公務員法第38条では今も営利活動には許可が必要であり、無許可の副業は懲戒対象となる。今回の事例は制度の運用とモラル両面での課題を浮き彫りにしている。 参考 1) 兼業許可得ず診療 医師免許持つ静岡県幹部職員を懲戒免職(NHK) 2) 静岡県理事を無許可兼業で懲戒免職…県外の医療機関に勤務、部長級の懲戒免職処分は県政史上初(読売新聞) 3) 副業で計2,740万円あまりの収入…医師免許を持つ県幹部が兼業許可を受けずに県外の医療機関で診療業務に従事し報酬得る 複数の医療法人から給与の受領も 事情聴取に事実を否定も懲戒免職(テレビ静岡) 4) 地方公務員の兼業について(総務省) 5) 地方公務員の兼業・副業促す 総務省が自治体に基準明示(日経新聞) 6.「逆子」施術で医療事故、書類送検の医師に謝罪なし/京都府京都第一赤十字病院(京都市東山区)で、「逆子」の胎児に対して行われた医療行為に関して、施術を担当した50代の男性医師が業務上過失傷害の疑いで京都府警に書類送検された。医師は2020年12月、当時妊娠中だった女性(当時37歳)に対し、腹部を圧迫して胎児を正常な向きに戻す「外回転術」を2度実施。その際、胎児が低酸素状態に陥ったにもかかわらず、緊急帝王切開などの適切な処置を怠った疑いが持たれている。その後、女性は別の医師による帝王切開で出産したが、生まれた男児(現在4歳)は脳の大部分に損傷を受け、脳性麻痺などの重度障害が残った。母親は2023年7月、医師を刑事告訴。京都府警が捜査を進めていた。病院側は「医療過誤があった」と認め、再発防止に取り組むとしているが、医師個人からの謝罪はなく、すでに同病院を退職し、他の医療機関に勤務しているという。母親は「息子の人生にどれほど重いものを残したか。正面から受け止めてほしい」「この件が医療の在り方を見直すきっかけになれば」とコメントしている。今回の事案は、出産医療におけるリスク対応と説明責任のあり方を問い直す事例となっている。 参考 1) 逆子の治療で重い障害負わせた疑い、医師を書類送検(朝日新聞) 2) 「逆子矯正」で胎児に障害、適切な処置怠った疑いで医師を書類送検(読売新聞) 3) 逆子の胎児を回転処置で低酸素状態に 帝王切開せず脳性まひなど障害残す 医師を書類送検(産経新聞)

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事例023 ロスバスタチン錠の過剰で査定【斬らレセプト シーズン4】

解説高コレステロール血症のコントロールに、ロスバスタチン15mgを長期投与していたところ、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)が適用されて10mgに査定となりました。査定の原因を調べるためにカルテを参照しました。前年9月半ばの受診時に、検査結果から重症例と判断されてロスバスタチンが15mgに増量されていました。その後、毎月の受診時に肝機能検査が実施されていました。添付文書の「重要な基本的注意」には、「増量後12週までの間は、原則、月に1回、それ以降は定期的(半年に1回など)に肝機能検査を行うこと」とあります。12月分のレセプトでは、12週を超えていないにもかかわらず検査料が請求されていませんでした。また、3ヵ月分の長期投与が行われていました。レセプトには、コメントや症状詳記の表示はありませんでした。そのために重症例ではないと判断され、一般患者の上限量の10mgまでを認める査定となったものではないかと推測しました。医師には、添付文書に「検査を行うこと」と記載されている場合には、該当検査を実施していただくように伝えました。その場合には、検査に対応する病名に加えて、「添付文書に基づき検査実施」とレセプトに記載をしておくとよいでしょう。

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糖尿病予防、メトホルミンも長期効果

 米国糖尿病予防プログラム(DPP)は、2型糖尿病の発症リスクが高い成人3,234人を対象とした3年間のランダム化臨床試験で、生活習慣介入(Intensive Lifestyle Intervention:ILS、食事・運動・体重管理への集中的介入)、メトホルミン投与、プラセボ投与の3群における、2型糖尿病発症率の違いを比較することを目的としていた。2002年に糖尿病発症率がILS群で58%、メトホルミン群で31%減少したことが報告されている1)。 DPP試験はプロトコル改訂を経て、DPPアウトカムズ研究(DPPOS試験)として継続された。参加者を長期(20年以上)追跡し、治療効果の長期的な影響を評価した。本試験の結果を米国・ジョージ・ワシントン大学のWilliam C. Knowler氏らが、The Lancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版2025年4月28日号で報告した。 DPPOS試験では、メトホルミン群は忍容性があれば1日2回850mgのメトホルミンを継続、ILS群には年2回のグループベースの介入を提供、プラセボ群はプラセボ投与を中止した。さらに全参加者に年4回のグループ形式の生活習慣介入を提供した。主要アウトカムは米国糖尿病協会(ADA)の基準に基づく糖尿病発症率だった。COVID-19感染流行により追跡困難例が発生したため、追跡調査期間は1996年7月31日~2020年2月23日とした。 主な結果は以下のとおり。・DPPに登録された3,195人が解析に含まれた。女性2,171人(68%)と男性1,024人(32%)、ベースライン時の平均年齢は50.6(SD 10.7)歳だった。追跡期間は0.2~23.2年(中央値8.0年)だった。・プラセボ群と比較して、ILS群では糖尿病の発症率が低下した(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.68~0.85、発症率差[RD]:100人年当たり-1.59)。メトホルミン群も同様の傾向が認められ(HR:0.83、95%CI:0.74~0.93、RD:-1.17)、糖尿病未発症の生存期間はILS群で中央値3.5年、メトホルミン群で2.5年延長し、平均値で各2.0年(95%CI:1.2~2.8)、1.2年(95%CI:0.4~2.0)延長した。・糖尿病の累積発症曲線は早期に分離しており、とくに最初の3年間で顕著で、メトホルミン群とILS群の発症率はプラセボ群よりも低かった。・メトホルミン群とILS群の累積発症曲線は、追跡期間の延長に伴い徐々に収束した。全体的な治療効果は、DPP期間中の顕著な初期効果に起因すると推測された。介入効果は、ベースライン時の空腹時血糖値、HbA1c、複数の臨床的および生理学的リスク指標値が高い参加者ではILS群が、若年者ではメトホルミン群がより大きかった。

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栄養士が調整した医療食の提供は医療費削減に有効

 米国では、栄養を医療の一環としてとらえ、慢性疾患の予防や治療に役立てる目的で栄養士が患者の状態に応じて調整した医療食(medically tailored meal;MTM)を提供する「食は薬(Food is Medicine)」プログラムが広範に実施されている。過去の小規模研究では、MTMが患者の健康管理に有効なだけでなく、医療費の削減につながる可能性が示唆されている。こうした中、米タフツ大学フリードマン栄養科学政策大学院のShuyue Deng氏らが、全国規模でMTMを保険適用とした場合の影響を検討した結果、初年度だけで321億ドル(1ドル142円換算で4兆5582億円)の医療費を削減できる可能性が示唆された。この研究の詳細は、「Health Affairs」4月号に掲載された。 Deng氏らは本研究で、過去の研究で用いた集団ベースのオープンコホートシミュレーションモデルを用いて、食事関連の疾患および日常生活動作に制限があるメディケイド、メディケア、または民間保険の加入患者にMTMを提供した場合に、年間入院数、医療費、費用対効果がどのように変化するのかを、1年間および5年間単位で推定した。 その結果、MTMの全国規模での実施により、全国レベルでは初年度だけで321億ドルの医療費削減が可能になると推定された。州別に見ると、50州のうちアラバマ州を除く49州で医療費は削減されると推定された。患者1人当たりの年間削減額が特に大きかったのは、コネチカット州での6,299ドル(約89万4,500円)、ペンシルベニア州での4,450ドル(約63万1,900円)、マサチューセッツ州での4,331ドル(約61万5,000円)だった。アラバマ州では、MTM導入の費用対効果はゼロだったが、健康に対する効果は認められた。 医学的見地からMTMの提供を受ける資格があると推定された米国人は全国で1401万195人に上り、最も多かったのはカリフォルニア州の122万1,035人、最も少なかったのはアラスカ州の1万7,812人であった。さらに、1回の入院を防ぐために何人の患者にMTMを提供する必要があるかについても評価したところ、最も少なかったのはメリーランド州での2.3人、最も多かったのはコロラド州での6.9人だった。米国全体で見ると、MTMの導入により、糖尿病、心臓病、がんの合併症による入院を年間354万2,500件回避できると推定された。 論文の上席著者である、タフツ大学フリードマン栄養科学政策大学院Food is Medicine研究所所長のDariush Mozaffarian氏は、「われわれの研究結果は、MTMが単に良質な医療であるだけでなく、経済的にも高い効果をもたらすことを示している」と同大学のニュースリリースで述べている。 研究グループによると、本研究対象者の約90%がメディケアとメディケイド加入者であり、2025年1月時点で16の州が「食は薬」プログラムによる治療に対するメディケイド適用免除を承認または提案しているという。 Mozaffarian氏は、「州は、革新的な医療の実現と普及において重要な役割を担っている。MTMへの投資は、あらゆる州において、脆弱な患者のケアを変革し、医療に大きな価値を生み出す可能性がある」と述べている。

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DapaTAVI試験―構造的心疾患に対するSGLT2阻害薬の効果(解説:加藤貴雄氏)

 2025年ACCで発表されたDapaTAVI試験(Raposeiras-Roubin S, et al. N Engl J Med. 2025;392:1396-1405.)であるが、TAVI前に心不全および、中等度腎機能障害・糖尿病・左室駆出率低下のいずれかを持つ大動脈弁狭窄症患者が登録された試験である。左室駆出率<40%の患者は約18%で多くがHFmrEF/HFpEFの患者であり、平均年齢が82歳と高齢で、女性が約半数登録された。また、中等度~高度の左室肥大を伴う患者は約60%であった。 結果は、主要評価項目(全死亡または心不全増悪の複合エンドポイント)は、ダパグリフロジン追加群で有意に低い結果で、全死亡では有意な差がなく心不全増悪の差が主に結果に影響していた。主要な2次評価項目でも、心不全入院・心不全の緊急受診においてダパグリフロジン追加群で有意に低い結果であった。 試験結果を実臨床に生かすうえでのポイントは2点あり、1点目は、実臨床における大動脈弁狭窄症の患者層(高齢者・女性・左室肥大例)が登録され有効性を示した点である。安全性について、入院が必要もしくは敗血症につながる尿路感染症の頻度には差がなかったが、性器感染症・低血圧はダパグリフロジン追加群に多い結果であった点は、注意すべき点である。 2点目は、TAVI後の構造的異常として左室肥大がありNT-proBNPが5,300~6,300pg/mLと高い患者層で試験が開始され、心不全悪化を防止した点である。 SGLT2阻害薬は、心不全に対するガイドライン推奨薬の一角に位置付けられている薬剤であり、HFpEF/HFrEFに対する試験結果とも合致する。心不全の既往のある患者を除外した急性心筋梗塞患者対象のSGLT2阻害薬の試験(James S, et al. NEJM Evid. 2024;3:EVIDoa2300286., Butler J, et al. N Engl J Med. 2024;390:1455-1466.)では対照群も含めイベント率が低かった点を合わせて考えると、イベントを起こしやすい構造的心疾患を持つ、ハイリスクな患者へのしっかりとした薬剤の介入の必要性を示したと考えられる。

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ある呼吸法活用で禁煙継続(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師患者禁煙、頑張っておられますね。いえいえ、自分の健康のためですから…。けど、たまに吸いたい衝動にかられて…。医師 なるほど。そんなときはどうされているんですか?患者 水を飲んだり、深呼吸をしたり、しているんですが…。医師 なるほど。それなら、いい呼吸法がありますよ!患者 それは、どんな方法ですか?(興味深々)医師 ちょっと、やってみましょうか。まずは、「ふぅー」と音を立てて口から息を完全に吐き出します。次に、口を閉じて、画 いわみせいじ鼻から息を吸いながら4つ数えます。そして、息を止めて7つ数えます。最後に、8つ数えながら、「ふぅー」と音を立てながら、ゆっくりと口から息を吐き出します。患者 これを何回くらいしたらいいですか?医師 1セットを4回で、ニコチン切れでタバコが吸いたくなる朝や寝る前など、1日に2回からスタートしてみて下さい。これは「4-7-8呼吸法」と呼ばれています。是非、「4(し)7(な)8(や)」かにやってみて下さい。(手で数字を示しながら)患者 はい、わかりました。頑張ってやってみます。(嬉しそうな顔)ポイント自己流の呼吸法ではなく、効果的な呼吸法について実演を交えて説明します。Copyright© 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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複数の食品添加物の相互作用が2型糖尿病リスクを高める

 ダイエット飲料や超加工食品に使われている添加物が、2型糖尿病のリスクを高めることを示唆するデータが報告された。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)のMarie Payen de la Garanderie氏らの研究の結果であり、詳細は「PLOS Medicine」に4月8日掲載された。複数の添加物による相互作用が、リスク上昇に関与している可能性があるという。 約11万人を対象に行われたこの研究によると、人工甘味料入り飲料によく含まれている添加物の混合物(添加物の組み合わせ)は2型糖尿病のリスクを13%増加させ、同様にスナックなどの超加工食品に含まれている添加物の混合物は、リスクを8%増加させることが明らかになった。de la Garanderie氏は、「多くの製品に含まれているいくつかの添加物はしばしば同時に摂取されるが、そのような同時摂取が2型糖尿病のより高いリスクと関連していることが示唆される」と解説。「これらの添加物は修正可能なリスク因子といえ、2型糖尿病予防の新たな戦略への道を開く可能性がある」と付け加えている。 この研究では、フランスで行われている長期縦断疫学研究の参加者10万8,643人(平均年齢42.5±14.6歳、女性79.2%)を、平均7.7±4.6年間追跡したデータが解析に用いられた。参加者は、追跡開始時とその後は半年ごとに、3日間(連続していない平日2日と休日1日)、24時間の食事記録をつけ、追跡開始後最初の2年間のその記録を基に、食品添加物などの摂取量が評価された。 追跡期間中に1,131人が、新たに2型糖尿病と診断されていた。解析の結果、5種類の食品添加物混合物のうち2種類が、2型糖尿病発症リスクの有意な上昇と関連していた。その混合物の一つはダイエット飲料に使用されることのある添加物で、酸味料・酸度調整剤(クエン酸、リン酸、リンゴ酸など)、着色料(カラメル、アントシアニンなど)、甘味料(アスパルテーム、スクラロースなど)、乳化剤(ペクチン、グアーガムなど)、コーティング剤(カルナバワックス)で構成されていた。もう一つの混合物は、さまざまな超加工食品に使用されることのある添加物で、乳化剤(加工デンプンなど)、保存料(ソルビン酸カリウム)、着色料(クルクミン)で構成されていた。 研究者らは、「われわれの知る限り、この研究結果は、同時に摂取されることが多い食品添加物と2型糖尿病リスクに関する、初めての知見である」と述べている。ただし、「なぜこれらの添加物の混合物が2型糖尿病リスクを高めるのかを理解するには、さらなる研究が必要」とコメントしている。 de la Garanderie氏は、「因果関係を証明するには、この観察研究の結果だけでは不十分だ。とはいえ、実験室内で行われた最近の研究では、さまざまな添加物が相互に影響を及ぼし合う『カクテル効果』が発生する可能性が示唆されており、われわれの研究結果はそれと一致するものだ」と述べている。

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若年層の大腸がん、その臨床的特徴が調査で明らかに

 大腸がんは日本人で最も患者数が多いがんであり、一般的に50歳代から年齢が上がるにつれて罹患率も上昇することが知られている。一方で、若年層における大腸がんに関する報告は少ない。しかし、今回50歳未満の大腸がんに関する臨床病理学的所見を調査した研究結果が報告された。大腸がんの好発部位や、スクリーニングの有用性が明らかになったという。研究は札幌医科大学医学部腫瘍内科学講座/斗南病院消化器内科の岡川泰氏らによるもので、詳細は「BMC Gastroenterology」に3月11日掲載された。 近年、高所得国を中心として50歳未満で発症する若年発症型大腸がんが増加している。さらに、若年発症型大腸がんは進行期で診断されることが多く、世界的に重要な懸念事項であるが、日本から若年発症型大腸がんについて報告された研究はわずかであり、その臨床病理学的特徴は不明のままである。このような背景から、研究グループは、若年発症型大腸がんの臨床病理学的所見を調査するために単施設の後ろ向き研究を実施した。 研究には、2015年1月~2021年12月までに北海道札幌市の斗南病院で大腸がんと診断された1,207人の患者が含まれた。この中から、家族性大腸腺腫、炎症性腸疾患、大腸がんの既往のある患者などを除外した、初発の大腸がん患者731人を最終的な解析対象とした。連続変数、カテゴリ変数の比較には、ピアソンのカイ二乗検定とMann-Whitney U検定が適宜適用された。 731人のうち46人(6.3%)が50歳未満(若年発症群)で診断され、685人(93.7%)が50歳以上(高齢発症群)で診断された。若年発症群と高齢発症群の年齢の中央値は、それぞれ45歳と72歳だった。性差、肥満率は両群に差はなかったが、高血圧、脂質異常症、糖尿病、大腸がん以外の悪性腫瘍の既往は高齢発症群で有意に高かった(P<0.01)。診断機会に関しては、大腸がんスクリーニングのための免疫便潜血検査(FIT)により、若年発症群の41.3%で大腸がんが検出され、高齢発症群(26.7%)よりも有意に高かった(P=0.032)。 大腸がんの発生部位別にみると、左側大腸がんの割合は両群に差はなかったが、若年発症群の直腸がんの割合は高齢発症群より有意に高かった(45.7% vs 26.4%、P<0.01)。 診断時の臨床病期(ステージ)に関しては、両群に差はなく、若年発症群と高齢発症群でそれぞれ45.7%と55.2%が非進行期で診断された。さらに両群ともに、非進行期で診断された大腸がん患者は、診断機会としてFITで陽性となる割合が高かった。進行期の患者では自覚症状などをきっかけとして診断される可能性が高かった。 研究結果について著者らは、「本研究では日本人の若年発症型大腸がんは直腸に発生する傾向があり、高齢発症型大腸がん患者と比較してFIT陽性がきっかけで診断されることが多いことが明らかになった。自覚症状などで診断につながる場合はすでに進行期であることが多いため、FITスクリーニングについて啓発し、大腸がんの早期発見に努めることが重要なのではないか」と述べている。 本研究の限界点について、単施設の後ろ向き研究であること、カルテに基づいているため患者背景が十分に解析されていないこと、追跡期間の中央値が43.6ヵ月と短かったことを挙げている。

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炭水化物を減らすと2型糖尿病患者の予後が改善/順天堂大

 2型糖尿病患者では、心血管イベントや死亡のリスクが高いことが知られている。今回、2型糖尿病患者における食事の栄養素と予後との関連性を調査した結果、炭水化物の摂取割合が高いほど心血管イベントや死亡のリスクが増大し、炭水化物を減らして動物性のタンパク質や脂質の摂取を増加させるとそれらのリスクが低減することが、順天堂大学の三田 智也氏らによって明らかになった。Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism誌オンライン版2025年3月21日号掲載の報告。 炭水化物制限は2型糖尿病患者の血糖コントロールに有用である可能性が報告されている。しかし、炭水化物の摂取割合が心血管イベントや死亡リスクに与える影響や、炭水化物の摂取量を減らしてタンパク質や脂質を増やすことによる影響など、依然として不明な点は多い。そこで研究グループは、2型糖尿病患者を対象に、食事の栄養素を含むさまざまな生活習慣と心血管イベントや死亡リスクとの関連性を、最大10年間にわたって前向きに調査した。 対象は、順天堂大学医学部附属順天堂医院などの医療機関に通院中で、心血管イベントの既往がない2型糖尿病患者731例であった。試験開始時、2年後、5年後に食事、身体活動量、睡眠時間、睡眠の質、生活リズムなどのさまざまな生活習慣を質問紙を用いて聴取し、各生活習慣スコアの平均値を算出した。多変量Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、各生活習慣と主要アウトカム(心血管イベントまたは全死因死亡)との関係性を解析した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は57.8±8.6歳、男性が62.9%、平均BMIは24.6±4.1kg/m2であった。・平均追跡期間は7.5±2.4年で、55例(7.5%)で主要アウトカムが発生した。・炭水化物の摂取割合が高いほど主要アウトカムのリスクが高かった(ハザード比:1.06、95%信頼区間:1.02~1.10、p=0.005)。・炭水化物摂取量を減らし、動物性のタンパク質や脂質を増やすほど、主要アウトカムのリスクが低かった。・飽和脂肪酸の摂取割合が高いと主要アウトカムのリスクが低かった。 研究グループは、「これらのデータは2型糖尿病患者において食事の栄養素を考慮する必要性を強調するものである」とまとめた。

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2型糖尿病患者においてもインスリン自動投与システム AIDは有効である(解説:住谷哲氏)

 インスリン自動投与システムautomated insulin delivery(AID)の有効性は1型糖尿病患者においては確立されている1)。AIDにはいくつかの種類があるが、本試験で使用されたのはTandem Diabetes CareのControl-IQ+である。Control-IQ+は、基礎インスリン分泌に加えて高血糖時の補正インスリンcorrection bolusも自動化した新しいclosed-loop systemである。本試験は、すでに米国食品医薬品局(FDA)から1型糖尿病患者に対して承認されているControl-IQ+の、2型糖尿病患者への承認を目指しての臨床試験と思われる。 試験参加者をインスリン頻回注射療法MDIにDexcom G6を併用する群(対照群)とControl-IQ+にDexcom G6を併用する群(AID群)に振り分けて、試験開始13週後のHbA1cを主要評価項目とした。結果は、主要評価項目のHbA1cは対照群で8.1%から7.7%に低下したのに対し、AID群では8.2%から7.3%に低下した。さらに副次評価項目のTIRは対照群で51%から52%に上昇したのに対し、AID群では48%から64%に上昇した。両指標ともにAID群で対照群に比較して有意な改善を認め、AIDは2型糖尿病患者においてもMDIに比較して血糖コントロールの改善に有効であることが示された。 FDAはInsuletのAIDであるOmnipod 5をSECURE-T2D試験2)の結果に基づいて、2型糖尿病患者への使用をすでに承認している。Control-IQ+も本年2月に2型糖尿病患者に対して承認された。2型糖尿病患者に対するAIDが普及するのも時間の問題である。しかしインスリン分泌が保たれている2型糖尿病患者において、AIDを用いてHbA1cをわずかに低下させることが患者の予後を改善するかは、筆者には少々疑問である。2型糖尿病患者におけるAIDの使用については、医療資源の観点も含めた議論が必要であると思われる。

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週3の摂取エネルギー減、毎日のカロリー制限より効果大

 週7日のうち3日の摂取エネルギー量を8割減らし、残りの4日間は自由に摂取する「4:3断続的断食」という方法は、毎日の摂取エネルギー量を少しずつ減らすよりも、減量効果が大きいとする研究結果が報告された。米テネシー大学ノックスビル校のDanielle Ostendorf氏らの研究であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に4月1日掲載された。 Ostendorf氏は本研究の背景を、「毎日のカロリー制限を長期間続けるのは、多くの人にとって困難である」と説明。得られた結果を基に、「身体活動を組み込んだ総合的な減量プログラムの一環としての4:3断続的断食は、毎日のカロリー制限に比較して優れた減量効果をもたらし、新たな減量戦略となり得る」としている。 この研究は、BMIが27~46で年齢18~60歳の成人を対象とする、ランダム化比較試験として実施された。4:3の断続的断食(intermittent fasting)を行う「4:3IMF群」は、1週間のうち連続していない3日の摂取エネルギー量を80%制限し、残りの4日は自由摂取(制限なし)とした。一方、カロリー制限(daily caloric restriction)を連日行う「DCR群」は、1週間の総摂取エネルギー量が4:3IMF群と一致するように、毎日の摂取エネルギー量を34%カットすることとした。なお、両群ともに、グループ単位での行動変容サポートを受け、中強度の身体活動を週300分(米国の身体活動ガイドラインの推奨である150分の2倍)実施するよう指示された。 4:3IMF群84人、DCR群81人、計165人(ベースライン時点において、平均年齢42±9歳、女性73.9%、BMI34.1±4.4)のうち、125人が介入を終了した。ITT解析(介入意図からの逸脱や脱落も含めた事前割り付けどおりの解析)の結果、12カ月時点で4:3IMF群の減量幅はDCR群よりも有意に大きかった(平均差2.89kg〔95%信頼区間0.14~5.65kg〕、P=0.040)。 このほかにも、12カ月間で10%以上の減量を達成した割合は、DCR群は16%であったのに対して4:3IMF群は38%と多かった。また、DCR群は12カ月間の介入中に約30%が脱落したのに対して、4:3IMF群では19%と脱落が少なかった。さらに、4:3IMF群は全体的に摂取エネルギー量がより少なくなる傾向が見られ、血圧やコレステロール値、血糖値の改善も認められた。 研究者らは、「カロリー制限を毎日続けるのは難しく、その代替として断続的断食が注目を集めている。断続的断食の魅力は、カロリー計算が不要で、かつ摂取制限を連日続ける必要がないことだ。さらに、毎日のカロリー制限で生じることのある絶え間ない空腹感が、断続的断食では軽減される可能性がある」と話している。

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