社会的に一番きつい運動をしているのは軍隊や警察などのグループである。こうしたグループに入隊する前の減量は、入隊後のけがや事故などに影響を与えるのであろうか。このテーマについて、米国陸軍環境医研究所軍事能力部門のVy T. Nguyen氏らの研究グループは、入隊前の体重減少と過酷な基礎戦闘訓練(BCT)中の筋骨格系損傷(MSKI)発生率との関連性を調査した。その結果、入隊のために減量した訓練生はMSKIの発生率が低いことが判明した。この結果はObesity誌オンライン版2025年7月30日号に公開された。
運動前に減量するとけがを減少させる可能性
研究グループは、3,168人の訓練生から自己申告による体重減少を収集し、電子カルテを用いて追跡調査を行った。すべてのMSKIおよび地域特有のMSKIの診断を行い、Cox回帰モデルで性別とCOVID-19パンデミックの有無で層別化し、年齢、身長、過去最高BMI、人種・民族、喫煙歴、過去の身体活動、および受傷歴で調整した。
主な結果は以下のとおり。
・入隊のために減量したと報告した訓練生は829人(26.16%)。
・平均減量数は9.06(標準偏差[SD]:8.62)kgで、最も一般的な減量方法は運動(83.72%)だった。
・入隊のために減量した訓練生は、減量しなかった訓練生と比較し、BCT期間中の全身MSKI発生率(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.74~0.99)および下肢MSKI発生率(HR:0.84、95%CI:0.72~0.98)が低かった。
・減量率(平均:1.27kg/週[SD:1.06])は、MSKI全体または部位別発生率とは関連が認められなかった。
(ケアネット 稲川 進)