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肥満成人におけるリラグルチドの減量効果/NEJM

 先行研究において、GLP-1受容体作動薬のアナログ製剤リラグルチドの1日1回3.0mg皮下注が、体重管理に有用である可能性が報告されていた。これを踏まえて米国・コロンビア大学のXavier Pi-Sunyer氏らは、2型糖尿病を有していない肥満成人、脂質異常症か高血圧を有する(治療の有無を問わず)過体重成人の計3,731例を対象に、同薬投与の有効性、安全性に関する56週の二重盲検無作為化試験を行った。その結果、食事および運動療法の補助としての同薬投与は、体重の減少および代謝コントロールの改善と関連していたことを報告した。NEJM誌2015年7月2日号掲載の報告より。27ヵ国191施設で3,731例を対象にリラグルチドの体重減量効果を検討 対象とした被験者は18歳以上で、2型糖尿病を有していないBMI 30以上、または脂質異常あるいは高血圧を有する(治療、未治療を問わない)BMI 27以上。2011年6月1日~2013年3月18日に、欧州、北南米、アジア、アフリカ、オーストラリアの27ヵ国191施設で総計3,731例が試験に登録され、2対1の割合でリラグルチド3.0mg 1日1回皮下注群とプラセボ群に無作為に割り付けられた。両群にはいずれも生活習慣改善のカウンセリングが行われた。 主要エンドポイントは、体重変化と、ベースライン体重から5%以上減量および10%超減量した人の割合であった。56週時までに5%以上減量63.2% vs.27.1%、10%超減量33.1% vs.10.6% ベースラインにおける被験者の特性は、平均年齢45.1±12.0歳、平均体重106.2±21.4kg、平均BMI値は38.3±6.4であった。女性被験者が78.5%を占め、61.2%が前糖尿病であった。 リラグルチド群には2,487例が、プラセボ群には1,244例が割り付けられた。56週の治療を完了したのは、それぞれ1,789例(71.9%)、801例(64.4%)であった。試験中断理由として、リラグルチド群のほうが多かったのは有害事象によるもの(9.9% vs.3.8%)、逆に少数であったのは治療無効による(0.9% vs.2.9%)、同意取り下げ(10.6% vs.20.0%)であった。 結果、56週時点でリラグルチド群の患者の体重は平均8.4±7.3kg減少したのに対し、プラセボ群は2.8±6.5kgの減少であった(差:-5.6kg、95%信頼区間[CI]:-6.0~-5.1、p<0.001、最終観察繰越し外挿法による)。 全体で体重が5%以上減量した人の割合は、リラグルチド群が63.2%に対しプラセボ群は27.1%(p<0.001)、10%超減量は33.1%、10.6%であった(p<0.001)。 リラグルチド群で最も頻度が高かった有害事象は、軽度~中等度の悪心および下痢であった。重篤有害事象の発現率は、リラグルチド群6.2%、プラセボ群5.0%であった。

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なんと!血糖降下薬RCT論文の1/3は製薬会社社員とお抱え医師が作成(解説:桑島 巌 氏)-384

 オランダ・アムステルダム大学医療センターのFrits Holleman氏らは、1993年から2013年までの血糖降下薬に関するランダム化比較試験(RCT)論文の執筆者が、どの程度論文を量産(productivity)しているかについて、PubMedで検索した。 血糖降下薬に関するRCTは、2001年には70論文だったのが、2013年には566論文と急激に増加した。 1万3,592人の著者による論文(3,782本)のうち、論文多産トップ110人の執筆者だけで991本のRCT論文を出版しており、1人当たり中央値20本の論文に関わっていた。 そのうち、906本(91%)はスポンサー付きであった。しかも、110人のうち48人は製薬会社と雇用関係にあったという。そして、実はその439本(44%)は医学ライターにより執筆されており、そのうち204本はスポンサーが提供したライターであったという。 トップ11(10位は2人)の執筆者だけでみると、354本のRCT論文を発表しており、1人あたり42本に関わっていたというから、ものすごいエネルギーである。 わが国でもRCT論文に関わることが大きな業績とされるようだが、企業とは一線を画した研究者は非常に少ないように思う。 著者らが、利益相反の面から検討した結果、企業とは独立した内容と考えられたのはたった42本(6%)にすぎないというから、RCT論文の3分の1は、製薬会社社員とお抱え医師によって執筆されていたというのは、いかにこの領域のRCTが企業誘導型であるかを如実に表している。高血圧や高脂血症治療薬をはじめ、ほかの領域でもおそらく同様であろう。 この調査は、SU薬やビグアナイド類などの古典的薬剤に加えた、αグルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン誘導体などが登場した時期であり、DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬のRCTは、まだ登場していない時期での調査である。企業の販売競争が激化している今日においては、DPP-4阻害薬などの新規治療薬について、有害事象情報も含めて適正な情報提供を期待したい。 このようなCommercial-based Medicineに惑わされたくないと思う医療関係者の方々には、臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)会員になることをお勧めする。

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98)5W1Hで目標を決めて運動【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師運動の方はいかがですか? 患者やろうとは思っているんですが、なかなか……。 医師なるほど。運動する気持ちは、十分に持っておられるようですね。それでは、具体的かつ効果的な運動目標を立ててみましょうか。 患者よろしくお願いします。 医師まずは、運動は1人で、それとも誰かと? 患者1人だと続かないと思いますので、友人と歩きます。 医師それはいいですね。歩くとしたら、いつ歩きますか? 患者朝食後ですね。 医師それはいいですね(続けて、運動の5W1Hを確認する)。●ポイント誰が(Who)、何を(What)、いつ(When)、どこで(Where)、なぜ(Why)、どのように(How)について確認します●資料

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爆発的に増えた血糖降下薬のRCT論文、著者の特徴は/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学医療センターのFrits Holleman氏らは、血糖降下薬の刊行論文が、一部少数の論文多産著者(supertrialists)によるものなのかどうか、および彼らによる論文の特徴を調べた。その結果、過去20年の無作為化試験(RCT)論文の3分の1は、製薬メーカーの社員(44%)とメーカーと密接に仕事をする大学研究者(56%)により執筆されたものであることを明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年7月1日号掲載の報告。論文多産著者上位110人および11人を特定し、その論文の特徴を精査 研究グループはPubMedで、1993年1月1日~2013年12月31日の間に発表された血糖降下薬に関連したあらゆるRCT論文を検索した。次にPubReMinerを用いて、論文多産著者上位110人、および11人を特定し、彼らが発表したRCT論文について、総著者数、企業スポンサー、メーカー社員著者、利益相反(conflicts of interest)などのさまざまな特徴について調べた。 主要評価項目は、トップ110人およびトップ11人による発表論文の割合とした。論文多産トップ110人のうち48人は製薬メーカー社員 検索により、1万3,592人の著者による3,782本の論文が特定された。 そのうち1,227本(32.4%)に、トップ110人の名前が記されていた。また397本(10.5%)に、トップ11人の名前が記されていた。 トップ110人による発表RCTは991本であった。1人当たりの発表RCTは中央値20本(範囲:4~77)であった。また、トップ11人による発表RCTは354本で、1人当たりの発表RCTは中央値42本(範囲:36~77)であった。 トップ110人のうち48人は、製薬メーカーの社員であった。また、991本のRCTのうち906本のスポンサーが企業によるものであった。 利益相反の評価は704本について行った。そのうち完全な独立性が保たれていると思われたのは42本(6%)であった。 また、991本のRCTにおいて、執筆の補佐者(Medical writing assistance)が439本(44.3%)で確認された。 これらの結果を踏まえて著者は、「過去20年間で、血糖降下治療に関する臨床試験の発表数が爆発的に増大していた。また一部の著者による治療エビデンスへの過度な貢献が認められた。すなわち、糖尿病の血糖降下薬治療におけるRCTのエビデンスのうち3分の1は、1%に満たない著者により執筆されたものであり、それら執筆者のうち44%が製薬メーカーの社員であり、56%は製薬メーカーと密接に仕事をする大学研究者であった」とまとめている。

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Vol. 3 No. 4 高尿酸血症と循環器疾患 心不全・虚血性心疾患とのかかわり

室原 豊明 氏名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学はじめに高尿酸血症は循環器疾患の危険因子の1つとして見なされているが、その具体的な影響度や機序などに関しては不明な点も多い。高尿酸血症が持続すると、いわゆる尿酸の蓄積に伴う疾患や症状が前面に現れてくる。典型的には、痛風・関節炎・尿路結石などである。しかしながら、尿酸そのものは抗酸化作用があるともいわれており、尿酸そのものが血管壁や心筋に直接ダメージを与えているのか否かは未だ不明の部分も多い。ただし、尿酸が体内で生成される過程の最終段階では、酵素であるキサンチンオキシダーゼが作用するが、この時に同時に酸素フリーラジカルが放出され、これらのラジカルが血管壁や心筋組織にダメージを与え、その結果動脈硬化病変や心筋障害が起こるとの考え方が主流である。本稿では、高尿酸血症と循環器疾患、特に心不全、虚血性心疾患とのかかわりに関して緒言を述べたい。高尿酸血症と尿酸代謝尿酸はDNAやRNAなどの核酸や、細胞内のエネルギーの貯蔵を担うATPの代謝に関連したプリン体の最終代謝産物である。プリン体は食事から摂取される部分(約20%)と、細胞内で生合成される部分(約80%)がある。細胞は過剰なプリン体やエネルギー代謝で不要になったプリン体を、キサンチンオキシダーゼにより尿酸に変換し、細胞から血液中に排出する。体内の尿酸の総量は通常は一定に保たれており(尿酸プール約1,200mg)、1日に約700mgの尿酸が産生され、尿中に500mg、腸管等に200mgが排泄される。余分な尿酸は尿酸塩結晶となり組織に沈着したり、結石となる。多くの生物はウリカーゼという酵素を持ち、尿酸を水溶性の高いアラントインに代謝し尿中に排泄することができるが、ヒトやチンパンジーや鳥類はウリカーゼを持たないために、血清尿酸値が高くなりやすい。尿酸の約3/4は腎臓から尿中に排泄される。腎臓の糸球体ではいったん100%濾過されるが、尿細管で再吸収され、6 ~10%のみ体外へ排出される。最近、尿酸の再吸収や分泌を担うトランスポーターが明らかにされ、再吸収では近位尿細管の管腔側膜にURAT1、血管側にGLUT9が、分泌では管腔側にABCG2が存在することが報告されている1, 2)。腎障害としては、尿酸の結晶が沈着して起こる痛風腎のほかに、結晶沈着を介さない腎障害である慢性腎臓病(CKD)も存在する。高尿酸血症のタイプは、尿酸産生過剰型(約10%)、尿酸排泄低下型( 約50~70%)、混合型(約20 ~30%)に分類され、病型を分類するために、簡便法では尿中の尿酸とクレアチニンの比を算出し、その比が 0.5を上回った場合には尿酸産生過剰型、0.5未満の場合には尿酸排泄低下型と分類している。高尿酸血症と循環器疾患の疫学高尿酸血症と動脈硬化性疾患、心血管イベント高尿酸血症は痛風性関節炎、腎不全、尿路結石を起こすだけでなく、生活習慣病としての側面も有しており、高血圧・肥満・糖尿病・高脂血症などの他の危険因子とよく併存し、さらには脳血管障害や虚血性心臓病を合併することが多い3)。尿酸は直接動脈硬化病変も惹起しうるという報告と、尿酸は単なる病態のマーカーに過ぎないという2面の考え方がある。いずれにしても、血清尿酸値の高値は、心血管病変(動脈硬化病変)の進行や心血管イベントの増大と関連していることは間違いなさそうである。尿酸は血管壁において、血小板の活性化や炎症反応の誘導、血管平滑筋の増殖を刺激するなど、局所で動脈硬化を惹起する作用がこれまでに報告されている。実際に、ヒトの頸動脈プラーク部において、尿酸生成酵素であるキサンチンオキシダーゼや、結晶化した尿酸が存在することが報告されている(本誌p.24図を参照)4)。尿酸は直接細胞膜やライソゾーム膜を傷害し、また補体を活性化することで炎症を誘発し血管壁細胞を傷害する。さらに尿酸生成に直接寄与する酵素であるキサンチンオキシダーゼは、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞にも発現しており、この酵素は酸素ラジカルを生成するため、このことによっても細胞がさらなる傷害を受けたり、内皮細胞由来の一酸化窒素(NO)の作用を減弱させたりする。実際に、高尿酸血症患者では血管内皮機能が低下していることや、血管の硬さを表す脈派伝播速度が増大していることが報告されている(本誌p.25図を参照)5)。このように、尿酸が過度に生成される状態になると、尿酸が動脈壁にも沈着し動脈硬化病変を直接惹起させうると考えられている。では、血清尿酸値と心血管イベントとの関係はどうであろうか。1次予防の疫学調査はいくつかあるが、過去の研究では、種々の併存する危険因子を補正した後も、血清尿酸値の高値が心血管イベントの独立した危険因子であるとする報告が多く、女性では7.0mg/dL、男性では9.0mg/dL以上が危険な尿酸値と考えられている。また2次予防の疫学調査でも、血清尿酸値の高値が心血管事故再発の独立した危険因子であることが報告されている3)。日本で行われたJ-CAD研究でも、冠動脈に75%以上の狭窄病変がある患者群において、血清尿酸値高値(6.8mg/dL以上)群では、それ以下の群に比べて心血管イベントが増大することが示されている(本誌p.25図を参照)6)。イベントのみならず、最近のVH-IVUS法を用いたヒトの冠動脈画像の研究から、高尿酸血症はプラーク量や石灰化病変と関連していることが示されている(本誌p.26図を参照)7)。繰り返しになるが、これらが因果関係を持っての尿酸によるイベントや動脈硬化病変の増大か否かについては議論の余地が残るところではある。高尿酸血症と心不全慢性心不全患者では高尿酸血症が多くみられることがこれまでに明らかにされている8)。これは慢性心不全患者には他のさまざまな危険因子が併存しており、このため生活習慣病(multiple risk factor 症候群)の患者も多く、これらに付随して尿酸高値例が自然と多くみられるという考え方がある。もう1つは、慢性心不全患者では多くの場合利尿剤が併用されているため、この副作用のために血清尿酸値が高くなっているという事実がある。いずれにしても、尿酸が生成される過程は、心不全患者では全般に亢進していると考えられており、ここにもキサンチンオキシダーゼの高発現による酸素フリーラジカルの産生が寄与していると考えられている。事実、拡張型心筋症による慢性心不全患者の心筋組織では、キサンチンオキシダーゼの発現が亢進していることが報告されている9)。また、血清尿酸値と血中のキサンチンオキシダーゼ活性も相関しているという報告がある10)。高尿酸血症では、付随するリスクファクターや腎機能障害、炎症性サイトカインの増加、高インスリン血症などが心不全を増悪させると考えられるが、なかでも高尿酸血症に伴う心不全の病態においては、酸化ストレスの関与は以前から注目されている。慢性の不全心では心筋内のキサンチンオキシダーゼの発現が亢進しており、このために酸素フリーラジカルが細胞内で多く産生されている。また、慢性心不全患者の血液中には、心不全のないコントロール群に比べて、内皮結合性のキサンチンオキシダーゼの活性が約3倍に増加していることが報告されている。心筋細胞内のミトコンドリアにおいては、細胞内の酸素フリーラジカルが増加すると、ミトコンドリアDNAの傷害や変異、電子伝達系の機能異常などが起こり、最終的なエネルギー貯蔵分子であるATP産生が低下する。傷害されたミトコンドリアはそれ自身も酸素フリーラジカルを産生するため、細胞のエネルギー代謝系は悪循環に陥り、この結果心筋細胞のエネルギー産生と活動性が低下、すなわち心不全が増悪してくると考えられている。では疫学データではどうであろうか。前述したように、慢性心不全患者では高尿酸血症が多くみられる。さらに2003年にAnkerらが報告した論文では、ベースラインの血清尿酸値が高くなればなるほど、慢性心不全患者の予後が悪化することが示された11)。また筒井らの行った日本におけるJ-CARE-CARD試験でも、高尿酸血症(血清尿酸値が7.4mg/dL以上)は、それ以下の群に比べて、心不全患者の全死亡および心臓死が有意に増加していることが示された(本誌p.27表を参照)12)。このように、高尿酸血症は、心血管イベントの増加のみにとどまらず、慢性心不全の病態悪化や予後とも関連していることがこれまでに明らかにされている。おわりに高尿酸血症と虚血性心疾患、心不全との関係について概説した。尿酸そのものが、直接の原因分子として動脈硬化病変の進展や虚血性心疾患イベントの増加、心不全増悪と関連しているか否かは議論の残るところではあるが、疫学的には高尿酸血症とこれらのイベントに正の相関があることはまぎれもない事実である。この背景には、付随するリスクファクターとキサンチンオキシダーゼ/酸素フリーラジカル系が強く関与しているものと思われる。文献1)Enomoto A et al. Molecular identification of a renal urate anion exchanger that regulates blood urate levels. Nature 2002; 417: 447-452.2)Matsuo H et al. Common defects of ABCG2, a highcapacity urate exporter, cause gout: a functionbased genetic analysis in a Japanese population. Sci Transl Med 2009; 1: 5ra11.3)Fang J, Alderman MH. Serum uric acid and cardiovascular mortality the NHANES I epidemiologic follow-up study, 1971–1992: National Health and Nutrition Examination Survey. JAMA 2000; 283: 2404-2410.4)Patetsios P et al. Identification of uric acid and xanthine oxidase in atherosclerotic plaque. Am J Cardiol 2001; 88: 188-191.5)Khan F et al. The association between serum urate levels and arterial stiffness/endothelial function in stroke survivors. Atherosclerosis 2008; 200: 374-379.6)Okura T et al. Japanese Coronary Artery Disease Study Investigators. Elevated serum uric acid is an independent predictor for cardiovascular events in patients with severe coronary artery stenosis: subanalysis of the Japanese Coronary Artery Disease (JCAD) Study. Circ J 2009; 73: 885-891.7)Nozue T et al. Correlations between serum uric acid and coronary atherosclerosis before and during statin therapy. Coron Artery Dis 2014; 25: 343-348.8)Bergamini Cetal. Oxidative stress and hyperuricaemia: pathophysiology, clinical relevance, and therapeutic implications in chronic heart failure. Eur J Heart Fail 2009; 11: 444-452.9)Cappola TP et al. Allopurinol improves myocardial efficiency in patients with idiopathic dilated cardiomyopathy. Circulation 2001; 104: 2407-2411.10)Landmesser U et al. Vascular oxidative stress and endothelial dysfunction in patients with chronic heart failure: role of xanthine-oxidase and extracellular superoxide dismutase. Circulation 2002; 106: 3073-3078.11)Anker SD et al. Uric acid and survival in chronic heart failure: validation and application in metabolic, functional, and hemodynamic staging. Circulation 2003; 107: 1991-1997.12)Hamaguchi S et al. JCARE-CARD Investigators. Hyperuricemia predicts adverse outcomes in patients with heart failure. Int J Cardiol 2011; 151: 143-147.

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認知症予測にMRI検査は役立つか/BMJ

 認知症発症の予測について、従来リスクデータにMRI検査の情報を加えても、予測能は改善しないことが示された。英国・ニューカッスル大学のBlossom C M Stephan氏らが住民10年間にわたる住民ベースコホート研究の結果、報告した。ただし、再分類能、予後予測能について統計的に有意な改善が示され、また臨床的有用性のエビデンスがあることも示されたという。従来リスク変数は、人口統計、神経心理、健康、生活習慣、身体機能、遺伝をベースとしたものである。これまでMRI情報を加えたモデルと従来モデルとを、住民ベースレベルで比較した検討は行われていなかった。BMJ誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告。従来リスク変数の予測能とMRIデータを加えた場合の予測能を比較 研究グループは、従来リスク変数の統合モデルにMRIデータを加えることで、10年フォローアップの予測を改善するかどうかを検討した。統合リスクモデルに組み込まれたのは、年齢、性別、教育、認識力、身体機能、生活習慣(喫煙、飲酒)、健康(心血管疾患、糖尿病、収縮期血圧)、アポリポ蛋白E遺伝子型であった。 フランスの3都市(ボルドー、ディジョン、モンペリエ)の複数医療機関で被験者を集めて行われた。被験者は65歳以上で認知症を有しておらず、ベースラインでMRI検査を受けており、10年フォローアップの認知症の状態が判明していた1,721例であった。 主要評価項目は、認知症の発症(あらゆる原因によるものとアルツハイマー型)とした。アルツハイマー型に限定した場合でも、両群の識別能に有意差みられず 10年フォローアップにおいて、認知症が確認されたのは119例であった。そのうち84例がアルツハイマー型であった。 統合リスクモデルの認知症識別能に関するC統計量は0.77(95%信頼区間[CI]:0.71~0.82)であった。 同モデルと、MRIの各データを加えたモデルのC統計量の比較において、有意差はみられなかった。MRIデータの白質病変容積を組み込んだモデルのC統計量は0.77(95%CI:0.72~0.82、C統計量の差に関するp=0.48)、全脳容積を組み込んだC統計量は0.77(同:0.72~0.82、p=0.60)、海馬容積の場合は0.79(同:0.74~0.84、p=0.07)であった。また、上記3変数を組み込んだ場合は0.79(同:0.75~0.84、p=0.05)であった。 しかしながら、従来モデルに海馬容積または3変数を加えた場合のモデルでは、再分類指数が有意に改善した(海馬容積モデルp=0.03、3変数統合モデルp=0.04)。また、識別曲線分析におけるネットベネフィットの増大が示された。 同様の結果は、アルツハイマー型に限ってみた場合にも観察された。

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大腿膝窩動脈疾患での薬剤コーティングバルーンの成績/NEJM

 症候性大腿膝窩動脈疾患の患者に対し、パクリタキセル・コーティングバルーンによる血管形成術は、通常のバルーン血管形成術に比べ、長期アウトカムが良好であることが報告された。米国・マサチューセッツ総合病院のKenneth Rosenfield氏らが行った単盲検無作為化試験LEVANT2の結果、術後12ヵ月時点での標的病変1次開存性は、12.6ポイント高く、安全性についてもパクリタキセル・コーティングバルーンの非劣性が示された。経皮的血管形成術(PTA)による末梢動脈疾患(PAD)治療は、血管リコイルや再狭窄の発生により限定的である。薬剤コーティングバルーンによる血管形成術は、再狭窄による開存性を改善する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2015年6月24日号掲載の報告より。476例を対象に、12ヵ月後の標的病変1次開存性を比較 Rosenfield氏らは、症候性間欠性跛行または安静時に虚血性疼痛があり、血管造影で明らかな動脈硬化性病変が認められる患者476例を対象に比較試験を行った。 被験者を無作為に2対1に割り付け、一方にはパクリタキセル・コーティングバルーン血管形成術を、もう一方には通常のバルーン血管形成術を行った。 主要評価項目は、12ヵ月後の標的病変1次開存性で、二分化再狭窄や標的病変血行再建術の必要性がいずれも認められないことと定義した。 安全性に関する主要評価項目は、周術期死亡、12ヵ月時点での四肢関連の合併症など四肢に関係する死亡、切断、再手術の複合エンドポイントだった。標的病変1次開存率、パクリタキセル群で65.2% 両群の特性のベースライン適合度は良好だった。被験者の42.9%が糖尿病を有しており、喫煙者は34.7%だった。 結果、術後12ヵ月時点の標的病変1次開存率は、対照群52.6%に対し、パクリタキセル群は65.2%と、有意に高率だった(p=0.02)。 また、安全性に関する主要評価項目が認められなかった人の割合も、対照群79.0%に対し、パクリタキセル群では83.9%と、非劣性が証明された(非劣性に関するp=0.005)。 機能的アウトカムや、死亡、切断、再手術の発生率については、両群で有意差はなかった。

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97)摂取カロリーの計算法を教える【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者食べているカロリーがよくわからないんです。何かいい方法はありませんか? 医師カロリーの基本を理解しておくとよいですね。 患者カロリーの基本!? 医師そうです。摂取カロリーは、糖質、たんぱく質、脂質、それと……。 患者それと? 医師アルコールで決まってきます。糖質とたんぱく質には4をかけて、脂質はカロリーが高いので9をかけます。 患者なるほど。アルコールはどうなりますか? 医師アルコールには7をかけます。 患者やっぱり、アルコールと油料理の組み合わせがよくないんですね。●ポイント食物繊維や水には、カロリーがないことを補足説明します●資料摂取カロリーを求める式摂取カロリー = 糖質×4+たんぱく質×4+脂質×9+アルコール×7(kcal)※食物繊維×0+水×0(kcal)

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インスリンポンプ、1型糖尿病の心血管死抑制/BMJ

 1型糖尿病患者に対するインスリンポンプ療法は、インスリン頻回注射療法よりも心血管死のリスクが低いことが、デンマーク・オーフス大学のIsabelle Steineck氏らによる、スウェーデン人を対象とする長期的な検討で示された。糖尿病患者では、高血糖と低血糖の双方が心血管疾患(冠動脈心疾患、脳卒中)のリスク因子となるが、持続的皮下インスリン注射(インスリンポンプ療法)はインスリン頻回注射療法よりも、これらのエピソードが少なく、血糖コントロールが良好とされる。一方、これらの治療法の長期的予後に関する知見は十分ではないという。BMJ誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告。約1万8,000例を約7年フォローアップ 研究グループは、1型糖尿病の治療において、インスリンポンプ療法が心血管疾患や死亡に及ぼす長期的な影響の評価を目的とする観察研究を行った(欧州糖尿病学会[EASD]の助成による)。 Swedish National Diabetes Registerに登録された1型糖尿病患者1万8,168例(インスリンポンプ療法:2,441例、インスリン頻回注射療法[MDI]:1万5,727例)のデータを解析した。被験者は、2005~2007年に初回受診し、2012年12月31日までフォローアップされた。 臨床的背景因子、心血管疾患のリスク因子、治療法、既往症の傾向スコアで層別化し、Cox回帰モデルを用いてアウトカムのハザード比(HR)を算出した。平均フォローアップ期間は6.8年(11万4,135人年)であった。 ポンプ療法群はMDI群よりも若く(38 vs.41歳)、収縮期血圧がわずかに低く(126 vs.128mmHg)、男性(45.0 vs.57.1%)や喫煙者(10.5 vs.13.5%)が少なかった(いずれもp<0.001)。また、ポンプ療法群は身体活動性の低い患者が少なかった(21.8 vs.24.0%、p=0.01)。 さらに、ポンプ療法群は、アルブミン尿(20.7 vs.24.0%)や腎機能が低い患者(10.4 vs.11.7%)が少なく、降圧薬(32.0 vs.36.7%)や脂質低下薬(21.0 vs.26.4%)、アスピリン(15.0 vs.18.8%)の使用例が少なかった(腎機能p=0.04、その他p<0.001)。また、心血管疾患(5.4 vs.8.0%)や心不全(0.9 vs.2.3%)の既往例が少なく、教育歴が高い患者(37.3 vs.27.6%)や既婚者(40.3 vs.36.5%)が多かった(いずれもp<0.001)。致死的冠動脈心疾患、致死的心血管疾患、全死因死亡リスクが著明に低下 Kaplan-Meier法による解析では、すべてのアウトカム(致死的/非致死的冠動脈心疾患、致死的/非致死的心血管疾患、致死的心血管疾患、全死因死亡)が、ポンプ療法群で有意に優れていた(いずれもp<0.001)。 ポンプ療法群のMDI群に対する主要エンドポイントの補正後HRは、致死的/非致死的冠動脈心疾患が0.81(95%信頼区間[CI]:0.66~1.01、p=0.05)、致死的/非致死的心血管疾患は0.88(0.73~1.06、p=0.2)であり、ポンプ療法群で良好な傾向がみられたものの有意な差はなかった。 一方、致死的心血管疾患(冠動脈心疾患、脳卒中)の補正後HRは0.58(0.40~0.85、p=0.005)、全死因死亡は0.73(0.58~0.92、p=0.007)であり、いずれもポンプ療法群で有意に良好であった。 また、副次エンドポイントである致死的冠動脈心疾患の補正後HRは0.55(95%信頼区間[CI]:0.36~0.83、p=0.004)と有意差を認めたが、致死的脳卒中は0.67(0.27~1.67、p=0.4)、心血管疾患以外による死亡は0.86(0.64~1.13、p=0.3)であり、有意な差はなかった。 致死的冠動脈心疾患の1,000人年当たりの未補正絶対差は3.0件であり、致死的心血管疾患は3.3件、全死因死亡は5.7件であった。また、低BMI(<18)および心血管疾患の既往歴のある患者を除外したサブグループ解析を行ったところ、結果は全症例とほぼ同様であった。 著者は、「インスリンポンプ療法の生理学的作用や、使用者が受ける臨床的管理、ポンプ使用の教育的側面が、これらの結果に影響を及ぼしているかという問題は未解明のままである」としている。

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壊疽性膿皮症、免疫療法とステロイドは同等/BMJ

 壊疽性膿皮症の治療について、シクロスポリンとプレドニゾロンの有効性は同等であることが、英国内39病院から121例を登録して行われた英国・アバディーン大学のAnthony D Ormerod氏らによる無作為化比較試験STOP GAPの結果、示された。壊疽性膿皮症治療のエビデンス報告は、これまで被験者30例による無作為化試験1件のみだが、現在シクロスポリンを使用する多くの医師が、プレドニゾロンよりもシクロスポリンのほうが有効であり副作用が少ないと確信しているという。プレドニゾロンもシクロスポリンも有力な薬剤で予測可能な副作用を有する。本検討で研究グループは、シクロスポリンのプレドニゾロンに対する優越性を検討した。BMJ誌オンライン版2015年6月12日号掲載の報告より。英国内39病院121例を対象に無作為化比較試験 試験は、多施設共同並行群間比較オブザーバー盲検法にて行われ、2009年6月~2012年11月に英国内39病院から、医師が壊疽性膿皮症と診断した121例(うち女性73例、平均年齢54歳)の患者が参加した。このうち9例は、無作為化後に診断が変更となり、分析には112例が組み込まれた。 プレドニゾロン群に無作為化された被験者(53例)には0.75mg/kg/日が単回経口投与され、シクロスポリン群被験者(59例)には4mg/kg/日が2回に分けて投与された。本検討はプラグマティック試験であり、最大投与量はプレドニゾロン75mg/日、シクロスポリン400mg/日であった。 主要アウトカムは、6週間の平均治癒速度で、デジタル画像診断による評価と盲検化された試験担当医による評価が行われた。副次アウトカムは、治癒までの期間、総合的な治療効果、炎症の消退、自己報告に基づく疼痛、QOL、治療不成功の回数、有害作用、再発までの期間などであった。 アウトカムは、ベースライン、6週時、潰瘍治癒時点で評価した(最長6ヵ月)。両群とも、6ヵ月時の潰瘍治癒は約半数、有害作用発生は約3分の2 112例のうち108例(シクロスポリン群57例、プレドニゾロン群51例)について、ベースラインと6週時の評価データが得られた。両群のベースラインの特性はバランスが取れていた。 結果、6週時点で評価した平均治癒速度(SD)は、シクロスポリン群-0.21(1.00)cm2/日、プレドニゾロン群-0.14(0.42)cm2/日で、両群間の補正後平均差について有意差は示されなかった(0.003cm2/日、95%信頼区間[CI]:-0.20~0.21、p=0.97)。 6ヵ月時までに潰瘍治癒が認められたのは、シクロスポリン群28/59例(47%)、プレドニゾロン群25/53例(47%)であった(シクロスポリン群の補正後オッズ比0.94、95%CI:0.55から1.63、p=0.84)。これら治癒例における再発例は、シクロスポリン群8例(30%)、プレドニゾロン群7例(28%)であった(1.43、0.50~4.07、p=0.50)。 有害作用の報告も両群で同程度であり、約3分の2の発生であった(シクロスポリン群68%、プレドニゾロン群66%)。症例は両群で異なったが、両薬剤の既知の副作用に即していた。顕著な違いは、プレドニゾロン群において新規発症の糖尿病、高血糖が、シクロスポリン群において頭痛、消化管障害、腎障害の頻度が高いことなどであった。 重大有害作用については、両群で9例の報告であった。シクロスポリン群は2例で腹部大動脈瘤と急性腎障害であった。プレドニゾロン群は7例で、そのうち感染症例が6例(うち1例が死亡)と頻度が高かった。 これらの結果を踏まえて著者は、「プレドニゾロンとシクロスポリンは、客観的・患者主観的なアウトカムすべてにおいて差は認められなかった」と結論し、「患者個々の治療は、併存疾患を考慮しながら両薬剤の副作用プロファイルをみて、および患者希望優先で選択可能だろう」と述べている。

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フェブキソスタット、欧州で化学療法に伴う高尿酸血症への適応拡大

 帝人ファーマ株式会社は7月1日、同社が創製し欧州に導出している高尿酸血症・痛風治療剤「ADENURICR」(欧州販売名:アデニュリク、一般名:フェブキソスタット)について、欧州におけるサブライセンス先であるイタリアのメナリーニ社が、「腫瘍崩壊症候群の中間リスク及び高リスクを有する造血器腫瘍患者における化学療法に伴う高尿酸血症」に対する適応拡大の承認取得を発表したことを報告した。 今回の適応拡大は、腫瘍崩壊症候群の中間リスク及び高リスクを有する造血器腫瘍患者346名を対象に行われた第III相臨床試験の成績に基づくもの。 本試験によってフェブキソスタットが既存療法と比較して臨床的意義のある画期的な治療選択肢となり得ることが認められたことにより、販売保護期間(※)が2019年4月20日まで1年間延長されたという。 日本国内においては、帝人ファーマが2014年よりがん化学療法に伴う高尿酸血症を対象疾患とした第III相臨床試験を実施している。※欧州では、先発医薬品承認後の10年間、後発医薬品の販売が禁止されている。詳細は帝人ファーマ株式会社のプレスリリースへ

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VADT試験:厳格な血糖管理は2型糖尿病患者の心血管イベントの抑制に有用なのか(解説:吉岡 成人 氏)-374

厳格な血糖管理と血管障害の阻止 糖尿病の治療の目的は、血糖、血圧、血中脂質などの代謝指標を良好に管理することによって、糖尿病に特有な細小血管障害(網膜症、腎症、神経障害)および動脈硬化性疾患(冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患)の発症・進展を阻止し、糖尿病ではない人と同様な日常生活の質(QOL:quality of life)を維持して、充実した「健康寿命」を確保することである。この点に関し、1型糖尿病患者を対象としたDCCT試験(Diabetes Control and Complications Trial)、2型糖尿病を対象としたUKPDS試験(United Kingdom Prospective Diabetes Study)などの長期にわたる大規模前向き介入試験で、HbA1c 7.0%前後の厳格な血糖コントロールを目指すことで、細小血管障害のみならず、大血管障害の発症・進展が抑止されうることが示唆された。しかし、動脈硬化性疾患のリスクが集積した2型糖尿病患者にHbA1cの正常化を目指すことの臨床的意義を検証したACCORD試験 (Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)、ADVANCE試験 (Action in Diabetes and Vascular Disease:Preterax and Diamicron Modified Release Controlled Evaluation )、VADT 試験(Veterans Affairs Diabetes Trial)では、数年間にわたって厳格な血糖管理を目指すことの有用性は確認できず、とくにACCORD試験では厳格な血糖管理を目指した群で死亡率が上昇するという予想外の結果が得られた。その理由として、厳格な血糖管理を目指すことで引き起こされる低血糖によって、炎症反応、好中球や血小板の活性化、凝固系の異常、心電図におけるQT間隔の延長と不整脈の惹起、血管内皮機能への影響などがあいまって心血管イベントに結び付く可能性が示唆された。観察期間も重要な要素 このようなランダム化試験(RCT)で問題になることの1つに観察期間がある。ほんのわずかの差であっても、長期間にわたって経過を観察することで、イベントの発症頻度に差が出てくるのではないかという考えである。 確かに、1型糖尿病患者を対象としたDCCT-EDIC試験(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)であっても、2型糖尿病を対象としたUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)80試験でも、試験終了後10年を経過した時点で代謝指標に差がなくなったにもかかわらず、厳格な血糖管理を目指した群で、心血管イベントの発症が有意に少なく、病初期の厳格な血糖管理の影響が「metabolic memory」、「legacy effect」として、20年先に福音をもたらすことが確認されている。VADT試験終了後5年間の長期追跡 退役軍人の2型糖尿病患者、1,791例(男性が97%)を強化療法と標準療法の2群に分け、厳格な血糖管理を5.6年にわたって目指すことの有用性を検討したVADT試験では、虚血性心疾患や脳卒中などの心血管イベントに有意な差を示すことができなかった。そこで、その後通常の治療に移行し、1,391例の患者を対象として、中央値で9.8年間追跡した際の主要心血管イベント(心筋梗塞、狭心症、脳卒中、うっ血性心不全の新規発症または増悪、虚血性壊疽による下肢切断、心血管関連死)の初回発生までの期間を主要評価項目とし、心血管死亡率およびすべての死亡率を副次評価項目として再検討したのがこの論文である。 強化療法群と標準治療群のHbA1cの差は試験期間中で平均1.5%(中央値6.9% vs. 8.4%)だったが、試験終了1年時には平均0.5%(中央値7.8% vs.8.3%)に、2~3年時には0.2~0.3%にまで減少した。両群間で脂質や血圧に差はなかった。介入開始後9.8年時において、主要血管イベントの発症率は強化療法群で28.4%(892例中253例)、標準療法群では32.0%(899例中288例)で、強化療法群でリスクが減少しており(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.70~0.99、p=0.04)、絶対リスクでも1,000例/年当たり8.6イベント(116例/年当たり1イベント)の減少をしていた。しかし、Supplementary Appendixに添付されているデータでは心筋梗塞、脳卒中、心不全、壊疽による下肢切断のそれぞれの発生頻度には群間で有意な差はない。心血管死亡率(HR:0.88、95%CI:0.64~1.20、p=0.42)、全死因死亡(HR:1.05、95%CI:0.89~1.25、p=0.54)にも差は認められていない。 主要心血管イベントに包括される個々のイベントで発症頻度に差はなく、また、心血管死の頻度にも差はないものの、いくつかの項目をまとめてみると有意な差が生じている。このデータをもって、厳格な血糖管理群では長期間の観察によって心血管イベントが抑止しうると結論付けてよいのかどうか疑問が残る。統計学的に有意なことが必ずしも臨床的にも有意であるとは限らない。

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TECOS試験:DPP-4阻害薬は心血管イベントを抑止しうるか(解説:吉岡 成人 氏)-375

血糖管理と心血管イベント 2型糖尿病患者において、病初期から厳格な血糖管理を目指すことで心血管イベントや死亡のリスクを有意に低減できる可能性を示したUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)80試験は、legacy effectという言葉を生み出した1)。しかし、糖尿病の罹病期間が長く大血管障害のリスクが高い患者や、すでに大血管障害を引き起こした患者に厳格な血糖管理を試みた大規模臨床試験であるACCORD試験(Action to control Cardiovascular Risk in Diabetes)、ADVANCE試験(Action in Diabetes and Vascular Disease:Preterax and diamicron Modified Release Controlled Evaluation)、VADT試験(Veterans Affairs Diabetes Trial)では、厳格な血糖管理を目指すことの有用性は確認できず、とくに、ACCORD試験では低血糖による死亡率の上昇が大きな懸念として取り上げられた。メタアナリシスと臨床試験の乖離 このような背景の下、低血糖を引き起こさずに、良好な血糖管理を得ることができる薬剤としてDPP-4阻害薬が広く用いられるようになり、ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスからは心血管イベントを抑止する可能性が示唆された2)。しかし、DPP-4阻害薬であるサキサグリプチン、アログリプチンを使用した大規模臨床試験であるSAVOR(Saxagliptin Assessment of Vascular Outcomes Recorded in Patients with Diabetes Mellitus) TIMI 53試験、EXAMINE試験(Examination of Cardiovascular Outcomes with Alogliptin versus Standard of Care in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus and Acute Coronary Syndrome)では、心血管イベントに対する薬剤の安全性(非劣性)を確認することができたが、HbA1cがプラセボ群に比較して0.2~0.3%低下したことのメリットは証明されず、SAVOR-TIMI53試験では心不全による入院のリスクが27%ほど高まったという、理解に悩む結果のみが残された。2015年3月に発表されたEXAMINE試験の事後解析の結果では、複合評価項目(全死亡+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+不安定狭心症による緊急血行再建術+心不全による入院)において、アログリプチン群とプラセボ群で差はなく、心不全による入院の発生率もアログリプチン群3.0%、プラセボ群2.9%(ハザード比[HR]1.07、95%信頼区間[CI]0.79~1.46、p=0.657)で差はなかったと報告されている。しかし、心不全の既往がない患者では、アログリプチン群で心不全による入院が有意に多かった(2.2% vs.1.3% p=0.026)ことが確認されている。期待されていたTECOS試験 このような背景を受けて、2015年6月8日、米国糖尿病学会でシタグリプチンを使用した臨床試験であるTECOS試験(The Trial to Evaluate Cardiovascular Outcomes after Treatment with Sitagliptin)のデータが公表され、即日、New England Journal of Medicine誌にオンライン版で掲載された。1万4,671例(シタグリプチン群7,332例、プラセボ群7,339例)の患者を対象とした、中央値で3.0年の観察期間に及ぶRCTであり、SAVOR-TIMI53試験、EXAMINE試験よりも観察期間が長く、多くの患者を対象とした試験であり、大きな期待を持って発表が待たれた試験である。 主要アウトカムは複合心血管イベントであり、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症による入院のいずれかの発症と定義され、2次アウトカムとして主要アウトカムの構成要素、そのほかに急性膵炎、がんの発症などが包括された。血糖管理は試験開始後4ヵ月の時点で、シタグリプチン群においてHbA1cが0.4%低下しており、試験期間中に差は小さくなったものの有意な差が確認された。しかし、主要エンドポイント、心不全による入院、死亡についてはシタグリプチン群においてもプラセボ群においても差はなく、感染症、重症低血糖にも差はなかった。急性膵炎はシタグリプチン群で多い傾向を示したものの有意な差はなかった(p=0.07)。 HbA1cを0.2~0.4%低下させ、DPP-4阻害薬によって期待された心血管イベントの抑止効果は確認されなかった。3年という研究期間が短すぎるという考えもあるかもしれない。糖尿病患者において心血管イベントを抑止するために 血糖値の管理によって心血管イベントを抑制できるパワーと、スタチンによって脂質管理を向上させることで得られる心血管イベントの抑制には大きな差がある。「食後高血糖の管理によって血管イベントを抑止する」、「DPP-4阻害薬の使用によって心血管イベントを抑えることができる可能性がある」というのは、「商業主義に基づく医療」(commercial based medicine:CBM )の世界でのキャッチコピーである。糖尿病患者において心血管イベントを抑止するうえで重要なのは、血糖の厳格な管理ではなく、脂質や血圧などの標準的な心血管リスクの管理である3)という意見は傾聴に値するのではないかと思われる。

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96)おいしく糖尿病食を食べてもらう前に【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師糖尿病食は、いかがですか? 患者あまりおいしくないですね。 医師それでは、ちょっと味覚(塩分味覚)をチェックしてみましょうか。 患者……これは全然味がしないですね。これも、これも……これならわかります。塩味ですね(6番目のろ紙で正解)。 医師正解です。 患者ほかは何味ですか? 医師じつはすべて塩味です。1~6番まで徐々に濃くなっています(0.6→0.8→1.0→1.2→1.4→1.6%)。1、2番なら味覚は敏感、3、4番なら低下の疑い、5、6番なら低下となります。1.6%だとラーメンの塩分濃度になりますね。だから、ラーメンはおいしく感じるのかもしれません。 患者えっ、そうだったんですか。味オンチになっていたんですね(驚きの声)。 医師それじゃ、減塩トレーニングをしてみましょうか。 患者よろしくお願いします。●ポイント糖尿病で味覚が鈍くなっていることに気づかせ、減塩トレーニングを推奨します●資料加齢、高血圧、糖尿病、アンジオテンシンII受容体拮抗薬など降圧薬の服用が味覚障害と関連している。糖尿病患者は甘味、塩味、酸味味覚が鈍っており、とくに甘味味覚鈍化が顕著である。血糖コントロールと味覚障害の関連も報告されている。教育入院患者に対し、食塩含浸濾紙ソルセイブRを用いて塩味味覚のチェック(0.6~1.6%)をしたところ、糖尿病食がまずいという患者に限って塩分味覚が鈍っていた。ラーメンの塩分濃度は1.6%以上なのに対し、京都の老舗のすまし汁の塩分濃度は0.7%ぐらいである。ラーメンは、おいしいと感じるが、すまし汁の細やかな味はわからないのかもしれない。 1) 坂根直樹. 日本味と匂学会誌. 2006; 13: 257-264. 2) 日本味と匂学会誌 .2006; 13: 143-148.

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第21回

第21回:全般性不安障害とパニック障害のアプローチ監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの場において、原因がはっきりしないさまざまな不安により日常生活に支障を生じている患者を診療する経験があるのではないかと思います。またとくに若い患者たちの中でみることの多いパニック障害もcommonな疾患の1つと思われ、その数は年々増加しているともいわれています。厚労省の調査1)では、何らかの不安障害を有するのは生涯有病率が9.2%であるとされ、全般性不安障害1.8%、パニック障害0.8%という内訳となっています。医療機関を受診する患者ではさらにこの割合が高くなっていると考えられ、臨床では避けて通れない問題となっています。全般性不安障害とパニック障害の正しい評価・アプローチを知ることで患者の不要な受診を減らすことができ、QOLを上げることにつながっていくと考えられます。 タイトル:成人における全般性不安障害とパニック発作の診断、マネジメントDiagnosis and management of generalized anxiety disorder and panic disorder in adults.以下、American Family Physician 2015年5月1日号2)より1. 典型的な病歴と診断基準全般性不安障害(generalized anxiety disorder:GAD)典型的には日常や日々の状況について過度な不安を示し、しばしば睡眠障害や落ち着かなさ、筋緊張、消化器症状、慢性頭痛のような身体症状と関係している。女性であること、未婚、低学歴、不健康であること、生活の中のストレスの存在がリスクと考えられる。発症の年齢の中央値は30歳である。「GAD-7 スコア」は診断ツールと重症度評価としては有用であり、スコアが10点以上の場合では診断における感度・特異度は高い。GAD-7スコアが高いほど、より機能障害と関連してくる。パニック障害(panic disorder:PD)明らかな誘因なく出現する、一時的な予期せぬパニック発作が特徴的である。急激で(典型的には約10分以内でピークに達する)猛烈な恐怖が起こり、少なくともDSM-5の診断基準における4つの身体的・精神的症状を伴うものと定義され、発作を避けるために不適合な方法で行動を変えていくことも診断基準となっている。パニック発作に随伴する最もよくみられる身体症状としては動悸がある。予期せぬ発作が診断の要項であるが、多くのPD患者は既知の誘因への反応が表れることで、パニック発作を予期する。鑑別診断と合併症内科的鑑別:甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、不整脈や閉塞性肺疾患などの心肺疾患、側頭葉てんかんやTIA発作などの神経疾患その他の精神疾患:その他の不安障害、大うつ病性障害、双極性障害物質・薬剤:カフェイン、β2刺激薬、甲状腺ホルモン、鼻粘膜充血除去薬、薬物の離脱作用GADとPDは総じて気分障害、不安障害、または薬物使用などの少なくとも1つの他の精神的疾患を合併している。2. 治療患者教育・指導配慮のある深い傾聴が重要であり、患者教育自体がとくにPDにおいて不安症状を軽減する。また生活の中で症状増悪の誘因となりうるもの(カフェイン、アルコール、ニコチン、食事での誘因、ストレス)を除去し、睡眠の量・質を改善させ、身体的活動を促す。身体的活動は最大心拍数の60%~90%の運動を20分間、週に3回行うことやヨガが推奨される。薬物療法第1選択薬:GADとPDに対してSSRIは一般的に初期治療として考慮される。三環系抗うつ薬(TCA)もGADとPDの両者に対して有効である。PDの治療において、TCAはSSRIと同等の効果を発揮するが、TCAについては副作用(とくに心筋梗塞後や不整脈の既往の患者には致死性不整脈のリスクとなる)に注意を要する。デュロキセチン(商品名:サインバルタ)はGADに対してのみ効果が認められている。buspironeのようなazapirone系の薬剤はGADに対してはプラセボよりも効果があるが、PDには効果がない。bupropionはある患者には不安を惹起するかもしれないとするエビデンスがあり、うつ病の合併や季節性情動障害、禁煙の治療に用いるならば、注意深くモニターしなければならない。使用する薬剤の容量は漸増していかなければならない。通常、薬剤が作用するには時間がかかるため、最大用量に達するまでは少なくとも4週間は投与を続ける。症状改善がみられれば、12ヵ月間は使用すべきである。ベンゾジアゼピン系薬剤は不安の軽減には効果的だが、用量依存性に耐性や鎮静、混乱や死亡率と相関する。抗うつ薬と抗不安薬の併用は迅速に症状から回復してくれる可能性はあるが、長期的な予後は改善しない。高い依存性のリスクと副作用によってベンゾジアゼピンの使用が困難となっている。NICEガイドライン3)では危機的な症状がある間のみ短期間に限り使用を推奨している。中間型から長時間作用型のベンゾジアゼピン系薬剤はより乱用の可能性やリバウンドのリスクは少ない。第2選択薬:GADに対しての第2選択薬として、プレガバリン(商品名:リリカ)とクエチアピン(同:セロクエル)が挙げられるが、PDに対してはその効果が評価されていない。GADに対してプレガバリンはプラセボよりは効果が認められるが、ロラゼパム(同:ワイパックス)と同等の効果は示さない。クエチアピンはGADに対しては効果があるが、体重増加や糖尿病、脂質異常症を含む副作用に注意を要する。ヒドロキシジン(同:アタラックス)はGADの第2選択薬として考慮されるが、PDに対しては効果が低い。作用発現が早いため、速やかな症状改善が得られ、ベンゾジアゼピンが禁忌(薬物乱用の既往のある患者)のときに使用される。精神療法とリラクゼーション療法精神療法は認知行動療法(cognitive behavior therapy:CBT)や応用リラクゼーションのような多くの異なったアプローチがある。精神療法はGADとPDへの薬物療法と同等の効果があり、確立されたCBTの介入はプライマリケアの場では一貫した効果が立証されている。精神療法は効果を判定するには毎週少なくとも8週間は続けるべきである。一連の治療後に、リバウンド症状を認めるのは、精神療法のほうが薬物療法よりも頻度は低い。各人に合わせた治療が必要であり、薬物療法と精神療法を組み合わせることで2年間の再発率が減少する。3. 精神科医への紹介と予防GADとPD患者に対して治療に反応が乏しいとき、非典型的な病歴のもの、重大な精神科的疾患の併発が考慮される場合に、精神科医への紹介が適用となる。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 川上憲人ほか. こころの健康についての疫学調査に関する研究(平成16~18年度厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業). こころの健康についての疫学調査に関する研究,総合研究報告書). 2007. 2) Locke AB, et al. Am Fam Physician. 2015;91:617-624. 3) NICEガイドライン. イギリス国立医療技術評価機構(The National Institute for Health and Care Excellence:NICE).

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母親の高脂肪食、胎児の肺に悪影響

 母親の高脂肪食の摂取が胎児の肺の発育に悪影響を与える可能性があることを、米国・テキサス大学のReina Sarah Mayor氏らが報告した。American journal of physiology-Lung cellular and molecular physiology誌オンライン版2015年6月19日号の掲載報告。 母親の栄養が長期的な幼児の健康に影響することはわかっている。栄養が乏しいと胎盤の発育や胎児の成長にも影響し、心疾患、高血圧、喘息、2型糖尿病などの慢性疾患と深く関係する低体重での出生の原因となる。しかし、これまで母親の栄養と胎児の肺の成長の関係を明らかにした報告はほとんどなかった。研究の結果、母親が高脂肪食を摂取すると胎盤が炎症を起こし、胎盤の機能不全、胎児の発育不全、胎児の肺の発達を妨げることがわかった。とくに、出生前後の高脂肪食の摂取が肺胞の持続的な単純化を引き起こしていた。

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95)いきなり禁煙の前に1歩置く【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師先日の頸動脈エコー検査の結果をみると、動脈硬化が進んでいるようですね。 患者そうなんですか(驚きの声)。動脈硬化を進ませないためには、どうしたらいいですか? 医師血圧と血糖コントロール、そして何よりも大切なのは禁煙です! 患者その禁煙が、なかなかできないんですよね。 医師なるほど。それでは、禁煙準備の方はいかがですか? 患者禁煙の準備!?たしかに、禁煙の準備はいつからでもできますね。 医師そうです。禁煙成功者の話を聞いたり、情報を集めたり、禁煙のパンフレットを読んだりすることは、いつからでもできます。ほかにもカートン買いを止めたり、灰皿を少しずつ減らしたり、喫煙の機会を徐々に減らすこともできます。 患者それじゃあ、今日から禁煙準備を始めます(うれしそうな顔)。●ポイントなかなか禁煙の決意ができない人には、「禁煙準備の話」をすることで、禁煙への関心度が高まります

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シタグリプチン追加で重症心血管イベント増加せず/NEJM

 2型糖尿病患者の治療において、通常治療にDPP-4阻害薬シタグリプチン(商品名:ジャヌビア、グラクティブ)を併用しても、重症心血管イベントは増加しないことが、米国・デューク大学のJennifer B Green氏らが実施したTECOS試験で示された。多くの2型糖尿病治療薬が承認されているが、一部の薬剤で心血管系の長期的な安全性に関して疑問が生じているという。米国FDAや欧州医薬品庁(EMA)は、新薬に対し、血糖降下作用だけでなく臨床的に重要な心血管系の重篤な有害事象の発生率を上昇させないことを示すよう求めている。NEJM誌オンライン版2015年6月8日号掲載の報告より。上乗せの安全性の非劣性を検証 TECOS試験は、心血管疾患を併発した2型糖尿病患者における通常治療へのシタグリプチンの上乗せの長期的な安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化非劣性試験(Merck Sharp & Dohme社の助成による)。 対象は、年齢50歳以上、1~2剤の安定用量の経口血糖降下薬(メトホルミン、ピオグリタゾン、スルホニル尿素薬)またはインスリン製剤により糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が6.5~8.0%に保たれている患者とした。併存する心血管疾患は、重症冠動脈疾患、虚血性脳血管疾患、アテローム性末梢動脈硬化疾患とした。 被験者は、通常治療にシタグリプチン(100mg/日またはeGFR値が≧30、<50mL/分/1.73m2の場合は50mg/日)またはプラセボを併用する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。血糖降下薬は、個々の患者が適切な目標血糖値を達成できるようオープンラベルでの投与が推奨された。 主要複合アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院とした。シタグリプチン群の両側検定による相対リスクのハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が1.3を超えない場合に非劣性と判定した。主要複合アウトカム発生率:11.4 vs. 11.6% 2008年12月~2012年7月までに、38ヵ国673施設に1万4,671例(intention-to-treat[ITT]集団)が登録され、シタグリプチン群に7,332例、プラセボ群には7,339例が割り付けられた。ベースラインの平均HbA1c値は7.2±0.5%、2型糖尿病の平均罹病期間は11.6±8.1年であり、フォローアップ期間中央値は3.0年だった。 HbA1c値は、4ヵ月時にシタグリプチン群がプラセボ群よりも0.4%低くなったが、この差はその後の試験期間を通じて徐々に小さくなった。全体のシタグリプチン群の最小二乗平均差は-0.29%(95%信頼区間[CI]:-0.32~-0.27)であった。 主要複合アウトカムのイベント発生は、シタグリプチン群が839例(11.4%、4.06/100人年)、プラセボ群は851例(11.6%、4.17/100人年)であった。非劣性のper-protocol(PP)解析では、シタグリプチン群のプラセボ群に対する非劣性が確認され(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.88~1.09、p<0.001)、優越性に関するITT解析(0.98、0.89~1.08、p=0.65)では有意な差を認めなかった。 副次複合アウトカムである心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の発生も、PP解析で非劣性であり(HR:0.99、95%CI:0.89~1.11、p<0.001)、ITT解析では優越性を認めなかった(0.99、0.89~1.10、p=0.84)。また、ITT解析では、心不全による入院(1.00、0.83~1.20、p=0.98)、心不全による入院または心血管死(1.02、0.90~1.15、p=0.74)、全死因死亡(1.01、0.90~1.14、p=0.88)も、シタグリプチン群での発生が多いことはなかった。 一方、非心血管アウトカムでは、感染症、がん、腎不全、重症低血糖の発生率は両群間に差がなかった。急性膵炎の頻度はシタグリプチンで高かった(0.3 vs. 0.2%)が、有意な差はなかった(ITT解析:p=0.07、PP解析:p=0.12)。膵がんはシタグリプチン群で少なかった(0.1 vs. 0.2%)が、有意差は認めなかった(p=0.32、p=0.85)。 また、重篤な有害事象(消化器、筋骨格・結合組織、呼吸器など)の発生率には、両群間に臨床に関連する差はみられなかった。 著者は、「シタグリプチンは、心血管疾患のリスクが高い多彩な病態の2型糖尿病患者に対し、心血管合併症を増加させずに使用可能と考えられるが、これらの結果は、より長期の治療やより複雑な併存疾患を有する患者では、ベネフィットとともにリスクの可能性も排除できないことを示唆する」と指摘している。

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IMPROVE-IT試験:LDL-コレステロールは低ければ低いほど良い!(解説:平山 篤志 氏)-371

 2014年の米国心臓協会(AHA)学術集会で発表され話題となったIMPROVE-IT試験がようやく論文化された。 スタチン以外の薬剤、すなわちコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブで、LDLコレステロールを低下させることが心血管イベントを減少させるかという臨床的疑問に、YESと答えた研究である。つまり、本試験がこれまでの臨床試験でのLDLコレステロール値の低下と心血管イベント低下効果の直線上に乗ったことで、LDLコレステロールの“The Lower, the better”が証明されたのである。 2013年のAHA/ACCガイドラインで、脂質管理はLDLコレステロール値に関係なく、動脈硬化性心血管患者では、ストロングスタチンを投与するだけの“Fire and forget”であったが、この試験によりLDLコレステロールを低下させることの有用性が示され、今後のハイリスク患者についてのガイドラインが変更される可能性もある。しかし、LDLコレステロールがエゼチミブ併用群で54mg/dL、スタチン単独群で70mg/dLの差があったものの、イベントでは平均7年間の追跡でわずか6.4%の低減効果に留まった。また、非致死的心筋梗塞と虚血性脳卒中でのイベント低下が認められたものの、心血管死には差がなかった。 実臨床で死亡に差がないということが意義を持つのか? NNT50という数字が高いのか低いのか? この試験では、スタチンがもたらした効果ほどのインパクトはエゼチミブにはなかった。臨床的な有用性の限界かもしれない。ただ、サブ解析で65歳以上、すでに脂質低下薬を服用中の患者、LDLコレステロール値が95mg/dL以下の患者で併用群に効果が認められ、さらに糖尿病患者で有意に併用効果が認められたことから、スタチンで治療されていてもハイリスクな患者には、エゼチミブの追加投与によるLDLコレステロール低下が重要であることが示された。 今後、ハイリスク患者にはストロングスタチンの投与だけでなくLDLコレステロール値を考慮した治療が必要となるであろう。

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