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ピオグリタゾンと膀胱がんリスク~約15万人のコホート研究/BMJ

 ピオグリタゾンの使用は膀胱がんのリスクを高め、使用期間や累積用量の増加に伴いリスクが増大することが、カナダ・ジューイッシュ総合病院のMarco Tuccori氏らの、約15万人を対象とした大規模コホート研究の結果、明らかにされた。また、同じチアゾリジン系(TZD)薬のロシグリタゾンでは関連が認められず、膀胱がんのリスク増大はピオグリタゾンに特有で、クラス効果ではないことが示唆されると結論している。ピオグリタゾンと膀胱がんとの関連については、多くの研究で矛盾する結果が報告されており、より長期間追跡する観察研究が求められていた。BMJ誌オンライン版2016年3月30日号掲載の報告。ピオグリタゾンと膀胱がん発症リスクとの関連を14万5,806例で追跡 研究グループは、英国プライマリケアの1,300万例以上の医療記録が含まれるデータベースClinical Practice Research Datalinkを用い、2000年1月1日~13年7月31日に非インスリン糖尿病治療薬による治療を新たに開始した2型糖尿病患者14万5,806例のデータを解析した(追跡調査期間は2014年7月31日まで)。 解析では、治療開始時にすでにがんが発症していた可能性、ピオグリタゾンによるがん発症までの時間を考慮し、初回処方1年後時点からを使用開始とみなし使用期間を算出。Cox比例ハザードモデルを用い、ピオグリタゾン使用の有無ならびに累積使用期間と累積使用量別に、膀胱がん発症の補正ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算した(年齢、登録年、性別、アルコール関連障害、喫煙状況、BMI、HbA1c、がんの既往歴、膀胱炎や膀胱結石の有無、チャールソン併存疾患指数:CCI、糖尿病治療期間、蛋白尿の有無で補正)。 また、先行研究で膀胱がんのリスク増大とは関連がないとされるTZD薬であるロシグリタゾンでも、同様の解析を実施した。ピオグリタゾンの使用期間が長いほど膀胱がんリスクが増大 追跡調査期間平均4.7(SD 3.4)年、計68万9,616人年において、622例が新たに膀胱がんと診断された(粗発症率[/10万人年]90.2)。 他の糖尿病治療薬と比較し、ピオグリタゾンは膀胱がんのリスク増大と関連していた(粗発症率88.9 vs 121.0、補正後HR:1.63、95%CI:1.22~2.19)。一方、ロシグリタゾンでは膀胱がんのリスク増大との関連は認められなかった(粗発症率88.9 vs 86.2、補正HR:1.10、95%CI:0.83~1.47)。使用期間反応関係および用量反応関係は、ロシグリタゾンでは認められなかったが、ピオグリタゾンでは観察された(補正後HR:>2年:1.78、>2万8,000mg:1.70)。

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日本人の眼圧上昇、メタボ因子との関連は?

 日本人を対象とした眼圧上昇とメタボリックシンドローム因子の変化との関連について、山梨大学大学院 社会医学講座助教の横道洋司氏らが、同県住民の健康診断データを用いて分析を行った。その結果、眼圧上昇は、血清トリグリセライド値・血圧値・空腹時血漿中グルコース値(FPG)の長期的な悪化と関連しており、一方で、血清HDLコレステロール値の改善と関連していたと発表した。著者は、「結果については慎重な解釈が必要である」と述べ、「血清脂質と眼圧との関連についてはさらなる生理学的な検討が必要である」とまとめている。BMJ Open誌2016年3月24日号掲載の報告。 先行研究で、心血管リスク因子の眼圧への寄与について検討されてはいるが、高度な相関があるのかについては、心血管疾患の基礎を成す交絡因子によって明白ではない。そこで研究グループは、メタボリックシンドロームの因子に焦点を絞り、眼圧上昇に関与するのか、およびどの程度関与するのかを明らかにする後ろ向きコホート研究を行った。 1999年4月~2009年3月に、民間医療センターを受診し有料の健康診断を受診した県内住民のデータを集めて分析した。 主要評価項目は、眼圧変化が加齢やメタボリックシンドローム因子の変化によって上昇しているのかとした。分析はピアソン相関係数と混合効果モデルを用い、断面調査と縦断研究にて評価を行った。包含された被験者データは、断面調査(2008年4月~09年3月)2万7例、縦断研究(1999年4月~2009年3月に3~10回受診した被験者データを包含)1万5,747例であった。 主な結果は以下のとおり。・断面調査において、眼圧と年齢は負の関連が示された。一方で、腹囲、HDL-C値、トリグリセライド値、収縮期血圧値(SBP)、拡張期血圧値(DBP)、FPG値とは正の関連が示された。・縦断的多変量解析の結果、眼圧変化との関連が有意であったのは、男性(-0.12mmHg)、10歳の加齢(-0.59mmHg)、HDL-Cの1mmol/L上昇(+0.42mmHg)、トリグリセライドの1mmol/L上昇(+0.092mmHg)、SBPの10mmHg上昇(+0.090mmHg)、DBPの10mmHg上昇(+0.085mmHg)、FPGの1mmol/L上昇(+0.091mmHg)であった(いずれもp<0.0001)。

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PCI後1年超のDAPT継続期間を予測するモデル/JAMA

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後1年超の2剤併用抗血小板療法(DAPT)の継続期間を明らかにする予測モデルが開発された。米国、ベスイスラエル・ディーコネス医療センターのRobert W. Yeh氏らが、1万1,648例を対象に行った無作為化試験「DAPT」試験の被験者データから開発した。PCI後のDAPTでは、虚血リスクは減少するが、出血リスクの増大が報告されている。今回開発したモデルは、検証試験の結果、それらを中程度の精度で予測できるものだったという。JAMA誌オンライン版2016年3月29日号掲載の報告より。 PCI後12~30ヵ月の虚血/出血リスク因子を抽出 研究グループは2009年8月~14年5月にかけて、11ヵ国で行われたDAPT試験の被験者1万1,648例のデータを基に、PCI後12ヵ月~30ヵ月の虚血リスクと出血リスクの予測因子を抽出し予測モデルを作成した。DAPT試験では被験者に対し、PCI後12ヵ月間、チエノピリジンとアスピリンによるDAPTを実施した後、被験者を無作為に2群に分け、一方にはチエノピリジンとアスピリンを、もう一方にはプラセボとアスピリンをそれぞれPCI後12~30ヵ月まで投与した。 予測モデルの検証については、ブースストラップ法によるコホート内検証と、2007~14年にかけて行われたPROTECT試験の被験者8,136例を対象にそれぞれ行った。 主要評価項目は、PCI後12~30ヵ月の虚血イベント(心筋梗塞とステント血栓症)と出血イベント(中程度~重度)だった。予測モデルのC統計量、虚血が0.70、出血が0.68 DAPT試験の被験者の平均年齢は61.3歳、女性は25.1%だった。そのうち、虚血イベントが認められたのは348例(3.0%)、出血イベントは215例(1.8%)だった。DAPT試験を基に検証した予測モデルのC統計量は、虚血と出血がそれぞれ0.70と0.68だった。 予測モデルでは、初診時の心筋梗塞、心筋梗歴またはPCI歴、糖尿病、ステント直径3mm未満、喫煙、パクリタキセル溶出ステントに各1ポイント、うっ血性心不全または低駆出分画率の病歴と静脈グラフトインターベンションが各2ポイント、65歳以上75歳未満が-1ポイント、75歳以上が-2ポイントとした。 そのうえで、合計スコアが2以上のグループ(5,917例)については、12~30ヵ月にアスピリンとプラセボを投与した群の虚血イベント発生率が5.7%だったのに対し、チエノピリジンとアスピリンによるDAPT群では、同発生率は2.7%と、有意に低率だった(リスク差:-3.0%、95%信頼区間:-4.1~-2.0、p<0.001)。 一方でスコアが2未満のグループ(5,731例)では、同発生率はプラセボ群が2.3%に対しDAPT群は1.7%と、有意差には至らなかった(p=0.07)。 逆に出血率については、高スコアグループではDAPT群で1.8%に対し、プラセボ群では1.4%と有意差はなく(p=0.26)、低スコアグループではそれぞれ3.0%と1.4%と、DAPT群で高率だった(p<0.001)。 PROTECT試験の被験者による検証では、虚血と出血に関する予測モデルのC統計量は、いずれも0.64だった。虚血イベントについては、高スコアグループが低スコアグループに比べリスクが大きかったが、出血リスクについて有意差はなかった。 これらの結果を踏まえて著者は、同予測モデルの予測精度は中程度であり、今後さらなる試験による検証が必要だとしている。

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糖尿病治療薬、効果の高い組み合わせは?/BMJ

 成人2型糖尿病患者に対し、メトホルミン単剤療法に比べ、メトホルミン+グリプチン、またはグリタゾンの2剤併用療法は、高血糖症リスクを2~4割低下すること、またグリタゾンもしくはグリプチンの単剤療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、重度腎不全リスクが約2.6倍高いことなどが明らかにされた。英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らが、約47万例の2型糖尿病患者を対象に行ったコホート試験の結果で、BMJ誌オンライン版2016年3月30日号で発表した。グリタゾンやグリプチンの臨床試験エビデンスの多くは、HbA1c値といった代替エンドポイントをベースとしたもので、合併症を減らすといった臨床的エンドポイントを評価するものではなかったという。研究グループは、2型糖尿病で長期間投薬治療を受ける大規模集団を対象に、臨床的アウトカムのリスクを定量化する検討を行った。英国1,200ヵ所以上のプライマリケア診療所で約47万例を追跡 2007年4月1日~15年1月31日の間に、英国プライマリケアのデータベース「QResearchデータベース」に参加する診療所1,243ヵ所を通じて、46万9,688例の2型糖尿病患者について前向きコホート試験を行った。被験者の年齢は25~84歳だった。 血糖降下薬(グリタゾン、グリプチン、メトホルミン、SU薬、インスリンその他)の単剤または組み合わせ投与と、切断術、失明、重度腎不全、高血糖症、低血糖症の初発診断記録との関連、および死亡、入院記録との関連を、潜在的交絡因子を補正後、Coxモデルを用いてハザード比(HR)を算出して調べた。単剤、2剤または3剤併用のメリット、リスクが明らかに 追跡期間中にグリタゾンの処方を受けたのは2万1,308例(4.5%)、グリプチンの処方を受けたのは3万2,533例(6.9%)だった。 グリタゾン使用は、非使用に比べ、失明リスクが約3割低かった(補正後ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.57~0.89、発症率:14.4件/1万人年)。一方で低血糖症リスクは約2割増大した(同:1.22、1.10~1.37、65.1件/1万人年)。 グリプチン使用では、低血糖症リスク低下との関連が認められた(同:0.86、0.77~0.96、45.8件/1万人年)。 一方で、被験者のうちグリタゾンやグリプチン単剤療法を行った割合は低かったものの、メトホルミン単剤療法に比べ、重度腎不全リスクは約2.6倍の増大がみられた(補正後HR:2.55、95%CI:1.13~5.74)。 併用に関しては、メトホルミン+グリプチン、またはメトホルミン+グリタゾンの2剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、いずれも高血糖症リスクは低下した(それぞれの補正後HRは0.78と0.60)。 メトホルミン+SU薬+グリタゾンの3剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、失明リスクを3割強減少した(同:0.67、同:0.48~0.94)。 メトホルミン+SU薬+グリタゾンまたはグリプチンの各3剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、低血糖症リスクを5~6倍に増大したものの(それぞれ補正後HR:5.07、6.32)、同リスクはメトホルミン+SU薬の2剤併用療法と同程度だった(同:6.03)。

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妊娠中のカフェイン摂りすぎが子供の体脂肪を増やす?

 妊娠中のカフェイン摂取と低体重児出産との関連性は以前から指摘されており、出生時の低体重は、後の体脂肪分布とインスリン抵抗性に悪影響を与えることが示唆されている。これを踏まえ、オランダ・エラスムス医療センターのEllis Voerman氏らは、母親の妊娠中のカフェイン摂取と、その子供の初期生育、就学年齢時の体脂肪分布との関連性を調査した。その結果、妊娠中のカフェイン多量摂取は、子供の成長パターンや後の体脂肪分布へ悪影響を及ぼす可能性が示唆されたという。Obesity (Silver Spring)誌オンライン版2016年3月26日号掲載の報告。 本研究は人口ベースの出生コホートで、7,857人の母親とその子供が対象となった。母親の妊娠中のカフェイン摂取量については、アンケート調査によって評価を行った。また、子供の出生時からの成長特性、6歳時点での体脂肪とインスリン値を測定した。 結果は以下のとおり。・妊娠中の1日当たりのカフェイン摂取量が2単位未満(1単位=コーヒー1杯に含まれるカフェイン量90mgに相当)の母親の子供に比べて、6単位以上の母親の子供では、出生時の体重が低く、出生時から6歳までの体重増加が大きく、6ヵ月から6歳までのBMIが高い傾向にあった。・(妊娠中の1日当たりのカフェイン摂取量が)4~5.9単位および6単位以上の母親の子供は共に、幼児期のBMIと総体脂肪量がより高い傾向にあった。・(妊娠中の1日当たりのカフェイン摂取量が)6単位以上の母親の子供は、アンドロイド/ガイノイド脂肪量比がより高かった。

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妊娠高血圧症候群は、周産期を過ぎても心筋症の発症リスクである(解説:神谷 千津子 氏)-510

 周産期(産褥性)心筋症は、「心疾患既往のない女性が、妊娠中から産後5ないし6ヵ月以内に、原因不明の心機能低下と心不全を発症する」と定義される、2次性心筋症の1つである。周産期心筋症患者の4割が、妊娠高血圧症候群を発症した後に心筋症を診断されているため、妊娠高血圧症候群は周産期心筋症の最大危険因子といえる。しかしながら、妊娠高血圧症候群が、周産期を過ぎた後にも心筋症の危険因子となりうるかについては、これまでまったく知られていなかった。今回Behrens氏らは、デンマークの全国コホート研究から、妊娠高血圧症候群が周産期を過ぎても心筋症の発症リスクであると、JAMA誌2016年3月8日号に初めて報告した。 対象は、デンマークで1978~2012年に最低1回は分娩した107万5,763人(既存の心疾患や糖尿病、母体死亡症例や周産期心筋症の患者などを除外)、206万7,633妊娠である。The National Patient Register、the Medical Birth Register、Causes of Death Register with cardiomyopathyから対象者・病名などを抽出し、妊娠高血圧症候群の有無と産後6ヵ月以降の心筋症診断率を検討した。 206万7,633妊娠中、7万6,108妊娠が妊娠高血圧症候群を合併しており、その内訳は、重症妊娠高血圧腎症1万2,974妊娠、軽症妊娠高血圧腎症4万4,711妊娠、妊娠高血圧症1万8,423妊娠であった。妊娠高血圧症候群のなかった女性における産後6ヵ月以降の心筋症診断率は7.7/10万person-yearsであったのに対し、重症妊娠高血圧腎症では15.6/10万person-years、軽症妊娠高血圧腎症では14.6/10万person-years、妊娠高血圧症では17.3/10万person-yearsの診断率であった。妊娠高血圧症候群のない群をreferenceにし、母体年齢・母体出生年・経産回数・多胎妊娠や死産の有無で補正した後のハザード比はそれぞれ2.20、1.89、2.06倍であった。 また、産後5年以降に限定した心筋症診断率の検討において、妊娠高血圧症候群のなかった女性では10.9/10万person-years、重症妊娠高血圧腎症では22.5/10万person-years、軽症妊娠高血圧腎症では19.9/10万person-years、妊娠高血圧症では26.1/10万person-yearsの診断率(各ハザード比2.22、1.86、2.25倍)であり、妊娠高血圧症候群は産後5年以降も心筋症の発症リスクであった。 心筋症の中でも拡張型心筋症に限定した診断率や、虚血性心疾患を合併した女性を除外し、糖尿病で補正した心筋症診断率においても、同様に妊娠高血圧症候群は発症リスクであった。 以上から、妊娠高血圧症候群を発症した女性において、周産期以降に心筋症を発症する率は、決して高くはないが、有意差をもって非発症女性よりも増加していることが判明した。妊娠高血圧症候群と周産期心筋症においては、血管新生障害や血管内皮障害や炎症、循環動態変動の関与が示唆されている。今回明らかになった、妊娠高血圧症候群と周産期以降の心筋症の関連については、今後さらなる研究が期待される。

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インクレチン関連薬の心不全リスクを検証/NEJM

 インクレチン関連薬は、一般的な経口糖尿病治療薬の併用療法と比較して、心不全による入院リスクを増大しないことが示された。カナダ・ジューイッシュ総合病院のKristian B. Filion氏らが、国際多施設共同コホート研究Canadian Network for Observational Drug Effect Studies(CNODES)の一環としてデータを解析し明らかにした。インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受動体作動薬など)は、安全性に関して心不全リスクが増大する可能性が示唆されているが、現在進行中の臨床試験でこの問題を検証するには規模が不十分とされていた。NEJM誌2016年3月24日号掲載の報告。カナダ・米国・英国の約150万例でコホート内症例対照研究を実施 研究グループは、カナダ(アルバータ州、マニトバ州、オンタリオ州、サスカチワン州)、米国、英国の6施設からの糖尿病患者の医療データを用い、コホート内症例対照研究を行った(2014年6月30日まで)。コホート全体で149万9,650例が解析対象となった。 心不全により入院した患者1例に対し、同一コホートから性別、年齢、コホート登録日、糖尿病の治療期間、追跡調査期間をマッチさせた最大20例の対照を設定。条件付きロジスティック回帰分析により、経口糖尿病治療薬併用療法と比較したインクレチン関連薬の、心不全入院リスクのハザード比をコホートごとに推算し、ランダム効果モデルを用いてコホート全体を統合した。インクレチン関連薬の使用で心不全入院リスクは増大しない 全体で心不全による入院が2万9,741件認められた(発生率:9.2件/1,000人年)。経口糖尿病治療薬併用療法と比較したインクレチン関連薬の心不全入院リスクは、心不全の既往歴がある患者(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.62~1.19)、心不全の既往歴がない患者(同:0.82、0.67~1.00)いずれにおいても増加はみられなかった。 DPP-4阻害薬(HR:0.84、95%CI:0.69~1.02)、GLP-1受容体作動薬(HR:0.95、95%CI:0.83~1.10)の別にみても結果は同様であった。 著者は、「これまでの臨床試験の対象集団と比較して、本コホートの糖尿病患者の多くは罹病期間が短く(心不全既往歴なし:0.7年、心不全既往歴あり:1.8年)、そのため心不全リスクが低くなった可能性があるが、一方で2次解析により、インクレチン関連薬による心不全リスクは、糖尿病治療期間による違いはないことが示された」と述べている。

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日本糖尿病学会:ワークショップ「輝け!女性糖尿病医」の講演動画をホームページで公開

 日本糖尿病学会「女性糖尿病医サポートの取り組み」ホームページでは、ワークショップ「輝け!女性糖尿病医」の講演動画を公開した。同ワークショップは、同学会の第53回中国四国地方会(2015年10月30日)および第53回九州地方会(同年11月27日)でそれぞれ開催されたもの。 同ホームページ「おすすめのイベント情報 > 過去のイベント」コーナーでは、その他にも開催された関連イベントについて、講演動画/スライドを掲載し、閲覧可能としている。 講演動画は以下関連リンクより閲覧可能。関連リンク「おすすめのイベント情報 > 過去のイベント」(日本糖尿病学会「女性糖尿病医サポートの取り組み」)

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糖尿病網膜症と夜間頻尿が相関

 日本人の2型糖尿病患者を対象とした研究で、細小血管合併症のうち糖尿病網膜症が、夜間頻尿と独立して関連していたことを、愛媛大学の古川 慎哉氏らが報告した。愛媛県内の関連病院による多施設共同研究(道後Study)において、2型糖尿病患者の細小血管合併症と夜間頻尿の関連を検討した結果、明らかになった。Urology誌オンライン版2016年3月16日号に掲載。 本研究では、日本人の2型糖尿病患者731例に自記式質問票を用いて情報を収集。オッズ比は、性別、年齢、BMI、糖尿病罹病期間、現在の喫煙状況、現在の飲酒状況、高血圧、脳卒中、虚血性心疾患、HbA1cで調整した。なお、診断は以下に従い判断した。・夜間頻尿:「夜寝てから朝起きるまでに、排尿するために通常何回起きますか?」という質問に1回以上と回答した場合・糖尿病神経障害:「神経症状」「アキレス腱反射消失」「振動覚異常」のうち2項目以上を満たした場合・糖尿病腎症:「推算糸球体濾過量(eGFR)30mL/分/1.73m2未満」あるいは「尿アルブミン/Cr比34mg/mmolCr以上」、もしくはどちらも該当した場合・糖尿病網膜症:眼科専門医により診断 主な結果は以下のとおり。・夜間頻尿の有病率は80.4%であった。・糖尿病網膜症と夜間頻尿との独立した正の相関が示された(調整オッズ比2.39、95%CI:1.08~6.11)。・糖尿病腎症と糖尿病神経障害は夜間頻尿と関連がみられなかった。

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乾癬治療、メタボリックシンドロームの及ぼす影響は

 2016年3月10日、都内にて「気をつけたい 乾癬の併存疾患とその臨床」をテーマにセミナーが開催された(主催:日本イーライリリー株式会社)。演者は多田 弥生氏(帝京大学医学部 皮膚科 准教授)。 乾癬は、皮膚に生じる厚い銀白色の鱗屑を伴った紅斑が特徴の、慢性・再発性の炎症性角化症である。青年~中年期に好発し、皮膚症状だけでなく何らかの疾患を併発することが多い。とくに頻度の高い併存疾患として、メタボリックシンドローム、高尿酸血症、心血管障害、脂肪肝、関節炎、ぶどう膜炎がある。今回は、乾癬とメタボリックシンドロームの関係を中心に、セミナーの概要を紹介する。乾癬とメタボを結び付ける鍵は「アディポカイン」 乾癬はメタボリックシンドロームが加わることで、慢性的な全身の炎症が促進され、インスリンの抵抗性が増す。この結果、血管内皮細胞障害を経て動脈硬化が進行し、心筋梗塞のリスクが増加する。これら一連の現象は「乾癬マーチ1)」と呼ばれ、広く知られている。それに加えて、近年、脂肪細胞が分泌している「アディポカイン」が乾癬の炎症に関わると注目されている。 アディポカイン(アディポサイトカイン)は、脂肪細胞から分泌される生理活性タンパク質の総称である。肥満が亢進すると、TNF-αに代表される炎症性アディポカインの生産が過剰になり、アディポネクチンなどの抗炎症性アディポカインの生産が減少する。肥満によって、このアディポカインの分泌異常により体内のインスリン抵抗性が増加することで、メタボリックシンドロームをはじめ、さまざまな併存疾患が生じる。乾癬は炎症性アディポカインによって症状が悪化するため、メタボリックシンドロームは、それ自体が乾癬をより悪化させる方向に働く。減量すると、乾癬症状が軽快する 乾癬の病勢が強いほど高血圧、高トリグリセライド血症、高血糖、肥満などメタボリックシンドロームの各要素との併存率が高い2)。そのため、肥満は乾癬を悪化させ、乾癬の悪化がメタボリックシンドロームにつながるという悪循環に陥る。 しかし、減量して、脂肪細胞を健常時に近い状態に戻せば、乾癬の症状が改善することもあるという。実際に、多田氏は体重の大幅な減量を達成することで、乾癬が改善した例を数例経験している。また、減量による治療効果の出やすさも実感している。よって、乾癬の患者はメタボリックシンドロームの改善を行う必要がある。とりわけ肥満患者については、治療開始に当たって、まず体重の減量を指導することが大切である。 また、痩せ型患者であっても、隠れメタボの存在を考慮し、患者の状態に合った適切な指導を行う必要がある。併存疾患の早期治療には、他科との連携が必要 メタボリックシンドロームをはじめとした併存疾患を放置していると、乾癬患者は非常に重篤な状態に陥ることがある。そのため、多田氏は、皮膚科医が具体的な問診を行うことで早期に併存疾患を発見し、時には他科と相談しながら早期治療を行うことが重要である、と主張した。「皮膚科医が、適切な問診で乾癬患者の併存疾患を早期に発見し、適切な診療科に早期に紹介し、専門的な治療につなげていくことで患者のリスクを軽減できる」と強調した。 また、乾癬の重篤化が併存疾患のリスクを高めることを述べたうえで、重症例では生物学的製剤導入による炎症抑制が併存疾患の予後改善につながる可能性がある、と治療強化の重要性も訴え、セミナーを結んだ。参考文献1)Boehncke WH,et al. Exp Dermatol. 2011;20:303 -307.2)Langan SM,et al. J Invest Dermatol. 2012;132:556-562.

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2型糖尿病における基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤の有用性は…(解説:吉岡 成人 氏)-506

基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の併用 米国糖尿病学会(American Diabetes Association:ADA)の推奨する2型糖尿病の治療アルゴリズムでは、第1選択薬はメトホルミンであり、単剤→2剤併用(注射薬であるインスリン、GLP-1受容体作動薬との併用も可)→3剤併用とステップアップして、最終的な注射薬との併用療法として、メトホルミンをベースに基礎インスリンと食事の際の(超)速効型インスリン製剤の併用(強化インスリン療法)、または、基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の併用が勧められている。肥満が多い欧米の糖尿病患者においては、肥満を助長せず、食欲を亢進させないGLP-1受容体作動薬が広く使用されている。基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤の有用性を検討 現在、Novo Nordisk社では持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリンデグルデク(商品名:トレシーバ)とGLP-1受容体作動薬であるリラグルチド(同:ビクトーザ)の固定用量配合剤(3ml中に300単位のインスリンデグルデク、10.8mgのリラグルチドを含むプレフィルドタイプのペン製剤;one dose stepにインスリンデグルデク1単位、リラグルチド0.036mgを含有)に関する臨床試験を行っており、本論文は、配合剤と持効型溶解インスリン製剤であるグラルギン(同:ランタス)を使用してタイトレーションを行った際の有用性を比較検討した試験である。 10ヵ国、75施設から患者をリクルートした多施設国際共同試験であり、ランダム化、オープンラベルの第III相試験である。グラルギン20~50Uと1,500mg以上のメトホルミンの併用でも血糖コントロールが不十分(HbA1c>7.0~10.0%)な2型糖尿病患者557例(平均年齢58.8歳、男性が51,3%、平均BMI:31.7kg/m2)を対象として、空腹時血糖値72~90mg/dLをターゲットに、週に2回、デグルデク/リラグルチドないしはグラルギンでタイトレーションを行う2群に分け、26週にわたって経過を観察した試験である。デグルデク/リラグルチド群(278例)では、16 dose steps(デグルデク16単位、リラグルチド0.6mg)から開始し、50 dose steps(デグルデク50単位、リラグルチド1.8mg)まで増量し、グラルギン群(279例)では最大投与量に上限値を設けずに増量するというプロトコルを採用している。デグルデク/リラグルチド群ではHbA1c、体重が有意に低下、低血糖の頻度も減少 その結果、デグルデク/リラグルチド群ではHbA1cが-1.81%(8.4→6.6%)、グラルギン群-1.13%(8.2→7.1%)となり、推定治療差(ETD)は-0.59%(95%信頼区間:-0.74~-0.45)と非劣性基準を満たし、統計的な優越性基準も満たした(p<0.001)。また、体重についてもデグルデク/リラグルチド群では1.4kg減少し(グラルギン群では1.8kg増加)、低血糖はデグルデク/リラグルチド群で2.23件/患者年(ランタス群では5.05件/患者年)と有意に少なかった。非重篤な胃腸障害はデグルデク/リラグルチド群で79件、グラルギン群で18件とデグルデク/リラグルチド群で多かったが、重篤な有害事象の頻度に差はなかった。日本におけるデグルデク/リラグルチド配合剤の有用性は… 日本ではリラグルチド(商品名:ビクトーザ)、エキセナチド(同:バイエッタ)、エキセナチド持続性注射剤(ビデュリオン)、リキシセナチド(リキスミア)、デュラグルチド(トルリシティ・アテオス)の5種類のGLP-1受容体作動薬が発売されている。インスリンや経口糖尿病治療薬との併用についての保険適用で、薬剤間に若干の差はあるものの、副作用としての嘔気などの消化管機能障害のため、適正な用量までの増量が難しい患者が少なくない。また、発売当初に期待されていた膵β細胞の保護機能に関する臨床データは得られておらず、体重減少や血糖管理が長期間にわたり持続する症例は期待されたほど多くはなく、薬剤の有用性を実感しにくいことも事実である。しかし、週1回製剤のデュラグルチドは注射の操作も簡単であり、認知機能が低下した高齢者などに対して、患者や家族ではなく訪問看護師や地域の一般医が週に1回の注射を行うことで安定した血糖管理が得られる症例もあり、今後幅広く医療の現場で使用される可能性も示唆されている。 いずれにしても、欧米人ほどは大量のインスリンを必要とせず、BMI30kg/m2を超える肥満2型糖尿病患者がさほど多くない日本において、インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤がどの程度の価格で発売され、どのようなタイプの患者にとって福音となるのか、慎重な検討が必要であろう。

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肥満妊婦と新生児の過体重、因果関係が明らかに?/JAMA

 遺伝的にBMIや血糖値が高い母親の子供は出生時体重が重く、これらの関連には因果関係がある可能性が、英国・エクセター大学医療センターのJessica Tyrrell氏らEarly Growth Genetics(EGG)Consortiumの検討で示唆された。研究の成果は、JAMA誌2016年3月15日号に掲載された。過体重で出生した新生児や肥満女性は出産時の合併症のリスクが高いとされる。観察研究では、母親の肥満関連の遺伝形質が出生時体重と関連することが報告されているが、その因果関係はよく知られていないという。約3万組の母子をメンデル無作為化解析で評価 研究グループは、母親のBMIや肥満関連の遺伝形質と子供の出生時体重との因果関係のエビデンスを検証するための検討を行った。 欧州、北米、オーストラリアで実施された人口ベースまたは地域ベースの18試験に参加した欧州系の女性と、EGG Consortiumに参加した女性の合計3万487人のデータを、メンデル無作為化法を用いて解析した。1929~2013年に、単胎の正期産の生児として出生した子供を解析の対象とした。 BMI、空腹時血糖、2型糖尿病、収縮期血圧(SBP)などの遺伝スコアの評価を行った。 3万487人の新生児の各コホートの平均体重は3,325~3,679gであった。母親の妊娠前の平均BMIは22.78~24.83であり、出産時の平均年齢は24.5~31.5歳だった。母親のSBPの遺伝スコアが高い場合は、出生時体重が軽い 母親のBMIの遺伝スコアは、母親のBMI亢進アレル(BMI-raising allele)による子供の出生時体重の2g(95%信頼区間[CI]:0~3)の増加と関連が認められた(p=0.008)。 また、母親の空腹時血糖の遺伝スコアも血糖亢進アレルによる出生時体重の8g(95%CI:6~10)の増加と関連した(p=7×10-14)のに対し、母親のSBPの遺伝スコアはSBP亢進アレルによる出生時体重の4g(同:-6~-2)の減少と関連がみられた(p=1×10-5)。 一方、母親のBMIの遺伝スコアが1 SD(=4ポイント)上昇すると、子供の出生時体重が55g(95%CI:17~93)増加した。また、母親の空腹時血糖が1 SD(=7.2mg/dL)上昇した場合、出生時体重は114g(同:80~147)増加した。これに対し、SBPの1 SD(=10mmHg)の上昇により、出生時体重は208g(同:-394~-21)減少した。 BMIと空腹時血糖は、その遺伝的関連が観察的関連と一致していたが、SBPの遺伝的関連は観察的関連とは逆であった。 著者は、「他の試験で再現されれば、これらの知見は妊婦のカウンセリングや妊娠管理において、体重関連の有害な出生アウトカムの回避に有用となる可能性がある」と指摘している。

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common variantsより rare variantsなのか?(解説:興梠 貴英 氏)-504

 ヒトゲノム計画は、予定より2年早い2000年にドラフトが完成し、ひとつの区切りを迎えた。その後は、ポストゲノム時代と呼ばれるようになり、その中で、生活習慣病のように「ありふれた疾患」は遺伝子のコード領域にあって機能的変化をもたらすようなまれな変異ではなく、比較的アレル頻度が高い(common)変異(single nucleotide polymorphism;SNP)が複数集積することによりリスクが高まるのではないか、つまり、common disease common variantsという仮説の下、全ゲノム的なSNP検索が多く行われた。 これまでに高血圧、脂質異常症、糖尿病に関してリスクとなるcommon SNP(マイナーアレル頻度が5%以上)が多く同定されてきたが、一つひとつのSNPのリスク寄与量が小さかったり、遺伝子のコード領域外にあったりして、なかなか治療介入のための有用な情報とはなっていない。 そうした中で、むしろ遺伝子コード領域の比較的まれな(rare)変異を調べる動きがあり、Stitziel氏らは約12万人(冠動脈疾患患者約4万2,000人、コントロール約7万8,000人)のエクソン領域のジェノタイピングを行い、すでに報告されているPCSK9、LPAの変異と冠動脈疾患との関連を確認した以外に、新たにSVEP1のミスセンス変異が冠動脈疾患リスクの上昇、ANGPTL4の機能喪失変異が冠動脈疾患リスクの低下と有意に関係があることを明らかにし、独立した約7万3,000人の集団において確認した。ANGPTL4については、NEJM誌の同号に別のグループから独立して同様の結果が報告されているが、ANGPTL4はLPLを阻害することが知られており、そのために高中性脂肪血症になり冠動脈疾患リスクが上がると考えられている。本研究集団においてさらに検索を進めたところ、LPLの機能喪失変異が冠動脈疾患リスクの上昇と、また機能亢進変異が冠動脈疾患リスクの低下と関係していることも確認された。 遺伝子コード領域の機能を変えるような変異であれば、薬物的なアプローチが可能となるため、今後もこうした探索は活発に行われることが予想される。

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120)降圧目標は患者さんごとに異なる【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師(血圧測定後)血圧は136/84mmHgですね。 患者それならいいぐらいですね。 医師じつは違います。 患者違う!? 医師そうです。どのくらいまで血圧を下げたらいいのかは、年齢や病気によって異なります。 患者そうなんですか。私の場合はどのくらいにしたらいいんですか? 医師糖尿病がある人の目標は130/80mmHg未満になります。蛋白尿が陽性で、腎臓が悪くなってきている人の目標も130/80mmHg未満です。 患者そうすると、もう少し下げたほうがいいわけですね。 医師そうなると、ベストですね。 患者どんなことに気をつけたらいいですか?●ポイント降圧目標値が、年齢や合併症により異なることをわかりやすく説明します●資料

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わかる統計教室 第3回 理解しておきたい検定 セクション6

インデックスページへ戻る第3回 理解しておきたい検定セクション6 対応のあるデータ、対応のないデータとはセクション1 セクション2 セクション3 セクション4 セクション5セクション5では、標準誤差からのデータの散らばり具合を学習しました。セクション6では、帰無仮説と対立仮説、対応のあるデータと対応のないデータについて学んでいきます。■帰無仮説と対立仮説表16の調査データについて仮説検定を行い、新薬Yの母集団における解熱効果を調べたとしましょう。表16 新薬Yと従来薬Xの効果比較このデータについて、明らかにしたいのは次の2つのテーマです。テーマ(1)帰無仮説新薬Yの投与前体温平均値と投与後体温平均値は等しい。対立仮説新薬Yの体温平均値は投与前後で異なる。「新薬Yの体温平均値は投与前に比べ投与後は低くなり、新薬Yは母集団において解熱効果がある」テーマ(2)帰無仮説新薬Yの低下体温平均値と従来薬Xの低下体温平均値は等しい。対立仮説新薬Yの低下体温平均値と従来薬Xの低下体温平均値は異なる。「新薬Yの低下体温平均値は従来薬Xの低下体温平均値より高く、新薬Yは従来薬Xより母集団において解熱効果がある」このデータに仮説検定を適用し、対立仮説が言えるかを調べてみましょう。帰無仮説は、手紙の前文みたいで形式的なものですね。等しいという帰無仮説を前提にして検定の理論、計算は構築されています。私たち分析者においては、対立仮説が重要と言うことになります。これらの2つのテーマは、どちらも体温の平均値を比較しています。平均値の比較ということでは、両テーマにそれほど大きな違いはありません。しかし、平均値の算出に適用したデータに大きな違いがあるのです。■対応のあるデータ、対応のないデータ表17では「投与前後の比較」は同じ患者のデータ、「低下体温の比較」は異なる患者のデータを適用しています。比較するデータの患者が同じ場合、これを「対応のあるデータ」と言います。比較するデータの患者が異なる場合、これを「対応のないデータ」と言います。表17 対応のあるデータ、対応のないデータ対応のあるデータと対応のないデータでは、仮説検定の方法が異なりますので、注意が必要です。テーマ(1)に対する仮説検定を「対応のある場合のt検定」、テーマ(2)の仮説検定を「対応のない場合のt検定」と言います。そこで、それぞれについて、仮説検定のやり方を習得していく必要があります。最初は、対応のある場合の仮説検定を学びましょう。ただし、そのためにはまず、次のセクションで「信頼区間」について、しっかりと勉強しておきましょう。■今回のポイント1)等しいという帰無仮説を前提にして検定の理論、計算は構築されている。私たち分析者においては対立仮説が重要!2)対応のあるデータと対応のないデータでは、仮説検定の方法が異なる!インデックスページへ戻る

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生体吸収性ステントBVSに対する期待とエビデンスの持つ意味~メタ解析の結果~(解説:上田 恭敬 氏)-502

 新たに開発された生体吸収性ステント(BVS:bioresorbable vascular scaffold)と、現時点で最も優れた臨床成績を示している金属製薬剤溶出性ステント(DES:metallic drug-eluting stent)の1つであるXienceステントを比較した、4つの無作為化比較試験の1年時成績のメタ解析が報告された。症例数の合計は、BVSが2,164症例、Xienceが1,225症例である。 結果は、患者についての複合エンドポイントもデバイス(ステント)についての複合エンドポイントも、群間で有意差を認めなかったというものであった。 論文内でも述べられているが、大規模な長期の臨床試験の結果によって、この新しく開発されたデバイスであるBVSが、従来のDESに比べて本当に優れているか否かを示すには、まだまだ長い時間が必要である。しかし、それまでの間、この新しいデバイスを使い続けるためには、1年時のエビデンスとして、BVSの使用によって患者の予後を悪化させていないことを示す必要があるとの考えから、この解析が行われている。 しかし、1年時の成績から必ずしも長期の予後を予測できないことは、CypherステントとEndeavorステントの比較試験の結果が、1年時と5年時でまったく逆になったことからも明らかである。そのことをわかっていながらも、形だけでもエビデンスと呼べるものをつくらないといけない、現在の過度なエビデンス依存状態がみえる。1年時のBVSの成績がXienceよりも優れていようが劣っていようが、5年あるいはそれ以上の長期の成績において、どちらが優れた結果を示すことになるのかは神のみぞ知る問題である。もし、少しでも長期成績を予測しようと思うのであれば、このような統計データではなく、病理やイメージングを用いた研究の結果を、もっと詳細に議論するべきではないだろうか。 しかも、主なエンドポイントとして設定される複合エンドポイントは、通常、試験の目的(今回の場合「BVSが劣っていないこと」)を示しやすいように工夫されているものである。その主なエンドポイントに差がなかったことを第1に主張している論文の表現法にも、この目的がにじみ出ていると感じる。しかし結果としては、標的血管関連心筋梗塞の発症頻度が有意差をもってBVSで高くなっていて、有意差には至っていないが、ステント血栓症が高頻度となっていることが指摘されている。BVSで手技時間が有意に長く、手技成功率が有意に低くなっていることも重要である。また、無作為化試験のメタ解析でありながら、背景因子にかなりの偏りが存在することも問題と思われる。 本解析の結果から出るメッセージは、「成績に差がなかったからBVSを使い続けることは問題ないですよ」といったお墨付きではなく、「BVSによる心筋梗塞の発症増加が認められ、手技成功率も低いので、広く使われればXienceを使うよりも患者の予後を悪化させる可能性がある」といった、注意喚起の内容とすべきではないだろうか。もちろん、金属が体内に残らないことから生じるメリットも想定される新しい技術であり、長期成績については長期の大規模試験の結果が出るまでは誰にもわからないので、「BVSを使うべきではない」とまではいうべきではないが、その真逆の「1年時点ではまったく劣っていなかった」というのは、やはり違和感を覚える。この解析もいずれ結果の詳細は忘れ去られて、結論のみが独り歩きしてしまうことになるのであろうから、結論にどの結果を強調するかは、非常に重要であると思われる。逆に、さまざまな大規模試験の結論が独り歩きしている中で、その結論のみを鵜呑みにしない態度も重要である。蛇足かもしれないが、COURAGE試験の結論として指摘される「安定狭心症患者には、十分な薬物療法をすれば、必ずしも冠動脈形成術をしなくてもよい」という考えも、鵜呑みにすべきでないエビデンスの1つと著者は考えている。

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IRIS試験:脳梗塞とピオグリタゾン-インスリン抵抗性改善薬が経た長い道のり-(解説:住谷 哲 氏)-500

 本論文のタイトルを見た時には、2型糖尿病患者における脳梗塞(以下では虚血性脳卒中および一過性脳虚血発作を脳梗塞とする)の再発予防にピオグリタゾンが有効なのかと思ったが、正しくは「インスリン抵抗性および脳梗塞の既往を有する非糖尿病患者に対して、ピオグリタゾンの投与は脳梗塞または心筋梗塞の発症リスクを有意に抑制した」との内容である。ピオグリタゾンの2型糖尿病患者における心血管イベントの2次予防効果を検討したPROactive試験1)の結果についてはいろいろと議論があるが、本試験の結果の解釈についても注意が必要と思われる。少なくとも2型糖尿病患者の脳梗塞再発を予防するために明日の外来からピオグリタゾンを積極的に投与すべきである、との結果ではない。 インスリン抵抗性が2型糖尿病患者の心血管イベント発症に深く関与していることは、以前から知られている。したがって、インスリン抵抗性改善薬が心血管イベント発症予防に有効だろうと考えるのは自然である。そこで「ピオグリタゾンによるインスリン抵抗性の改善は2型糖尿病患者における心血管イベントリスクを減少させる」との仮説を証明する目的でPROactive試験が行われたが、結果は解析手法の問題もあり、その仮説は証明されなかった。つまり、インスリン抵抗性を改善することで2型糖尿病患者の心血管イベントが抑制されるか否かは、これまで不明であった。 PROactive試験において、ピオグリタゾンの投与により脳梗塞の発症は抑制されなかったが(ハザード比:0.81、95%信頼区間:0.61~1.07)、その後に発表されたサブ解析では、脳梗塞既往患者においてピオグリタゾンの投与により、脳梗塞再発が47%(95%信頼区間:0.34~0.85、p=0.009)減少することが報告された2)。本試験Insulin Resistance Intervention after Stroke (IRIS)が、ClinicalTrial.govに登録されたのが2004年であることを考えると、本試験の対象患者が心筋梗塞ではなく、脳梗塞既往患者が選択されたのもそのあたりに理由があるのかもしれない。しかしその後、同じくチアゾリジン薬に属するロシグリタゾンが心筋梗塞を増加させる可能性が指摘され、さらに、ピオグリタゾンと膀胱がんとの関連も示唆される中で、インスリン抵抗性改善薬に対する熱狂は潮が引くように冷めていった。本試験は、そのような四面楚歌の状況下で地道に続けられていた臨床試験が、ようやく実を結んだといって良い。実臨床で使用され始めてから20年後に、ようやくインスリン抵抗性改善薬の心血管イベント抑制作用が証明されたのである。 本試験では、試験参加6ヵ月以内に脳梗塞を発症した、HOMA-IR>3.0で定義されるインスリン抵抗性を有する非糖尿病患者3,876例を、プラセボ群とピオグリタゾン群に分けて、中央値4.8年にわたり観察した。主要評価項目は、致死性・非致死性脳梗塞および致死性・非致死性心筋梗塞からなる複合エンドポイントとされた。その結果、ピオグリタゾン投与群で主要評価項目が24%減少した(ハザード比:0.76、95%信頼区間:0.62~0.93、p=0.007)。全死亡については両群に差を認めなかった。しかし、副次評価項目である脳梗塞の発症は、ピオグリタゾン群で減少傾向はあるようにみえるが有意差はついていない(ハザード比0.82、95%信頼区間:0.61~1.10、p=0.19)。脳梗塞の再発予防に対する、ピオグリタゾンの効果を検討する目的であれば、脳梗塞の発症のみを主要評価項目に設定すべきであると思われるが、なぜこのような複合エンドポイントになったのかは記載がない。 ピオグリタゾンを使用する際に、現在最も懸念されているのは心不全および骨折である。心不全の発症に関しては、NYHA III、IVの患者およびNYHA IIでEFの低下している患者は最初から除外されており、さらに、心不全の発症を予防するためのアルゴリズムに基づいて、適宜薬剤の減量が行われたため両群に有意な差はなかった。一方、骨折はピオグリタゾン投与群で明らかに増加しており、100例の患者に5年間ピオグリタゾンを投与すると、3例の患者で脳梗塞および心筋梗塞の発症が予防できるが、入院または手術を必要とする骨折が2例発生する計算となった。 インスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾンが、心血管イベント発症のリスクを低下させることを初めて明らかにした点において、本試験は重要である。しかし、本試験の結果を実臨床に適用するためには下記の点に留意する必要がある。(1)対象は2型糖尿病患者ではない。(2)インスリン測定系は現時点で国際的に統一されていないのでHOMA-IR>3.0は目安程度の意味しかない。(3)脳梗塞および心筋梗塞の複合エンドポイントのリスクが減少したことが示されたのであり、脳梗塞再発予防効果が示されたのではない。(4)心血管イベントの再発予防と引き換えに、入院または手術を必要とする骨折が同程度に増加する可能性がある。 今後、2型糖尿病患者において同様の試験が行われることを期待したいが、現実にはその可能性はきわめて小さいだろう。本論文に対する付属論評でも指摘されているように3)、今後はprecision-medicine approach、つまりピオグリタゾン投与によるリスク・ベネフィット比が最も高い一群(ピオグリタゾン投与により心血管イベントは減少するが心不全、骨折などは増加しない一群)をDNA解析などの結果により投与前に同定し、その一群に対してのみ投与を行うことになっていくだろう。

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末梢血管用ステントZilver PTX、2年目も良好な結果

 2016年3月19日、日本循環器学会学術集会「Late Breaking Clinical Trials/Cohort Studies III」が行われ、福岡山王病院 循環器センター 横井 宏佳氏が、浅大腿動脈用ステントZilver PTXの市販後調査2年目のフォローアップ試験の結果を発表した。 Zilver PTXは、日本が世界に先駆けて発売した浅大腿動脈専用の薬剤溶出ステント(DES)であるが、すでに世界50ヵ国で2,400例以上に使用されている。Zilver PTXは、承認前にはZilver PTX RCT、Zilver PTX SAS試験、市販後にはZilver PTX Japan PMS、Zilver PTX US PAS、EUでの長病変に対するレジストリ研究が行われている。市販後試験の1つ、Zilver PTX Japan PMSの1年の試験結果は、本年のJournal of American College of Cardiology Cardiovascular Intervention誌2016年2月8日号1)で発表されたが、今学会では、その2年フォローアップデータおよび、承認前の2試験(Zilver PTX RCT、Zilver PTX SAS)と比較検討した結果が発表された。 Zilver PTX Japan PMS試験における登録患者の平均年齢は74歳であり、承認前の2試験に比べ高齢であった。また、承認前の2試験に比べ、糖尿病と腎障害を有する例が有意に多く、病変長は14.7mmと有意に長く、完全閉塞が47%、再狭窄への使用が19%と有意に高かった。また、Rutherford 4以上(CLI)も22%含まれており、リアルワールドでは、承認前試験以上に、患者背景が複雑かつ劣悪な患者であることが明らかになった。 この試験では907例、1,075病変をZilver PTXで治療した。2年間のフォローアップ適格患者は741例で、完全フォローアップはそのうち624例である。Thrombosis/Occlusionの発生率は、1年目3%、2年目は3.6%で、1年間で0.6%増加した。これは承認前の2試験や、従来の報告と同等の結果であった。TLR回避率は、1年目91%、2年目は85%で、これも承認前の2試験と同等の結果であった。Primary patency は1年目86.4%、2年は72.3%であり、RCT試験と比べるとやや低いものの、当試験の劣悪な患者背景を考えると、十分容認できるものといえる。 リアルワールドでは、承認前試験と比べ、より複雑な患者・病変背景の中で使われていた。2年目のZilver Japan PMSの結果は、臨床現場においてもこのステントが承認前の成績とほぼ同等の有効性と安全性が得られたことが明らかになった。

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自己免疫性膵炎〔AIP : autoimmune pancreatitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)は、わが国から世界に発信された新しい疾患概念である。わが国におけるAIPは、病理組織学的に膵臓に多数のIgG4陽性形質細胞とリンパ球の浸潤と線維化および閉塞性静脈炎を特徴とする(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis:LPSP)。高齢の男性に好発し、初発症状は黄疸が多く、急性膵炎を呈する例は少ない。また、硬化性胆管炎、硬化性唾液腺炎などの種々の硬化性の膵外病変をしばしば合併するが、その組織像は膵臓と同様にIgG4が関与する炎症性硬化性変化であることより、AIPはIgG4が関連する全身性疾患(IgG4関連疾患)の膵病変であると考えられている。一方、欧米ではIgG4関連の膵炎以外にも、臨床症状や膵画像所見は類似するものの、血液免疫学的異常所見に乏しく、病理組織学的に好中球病変による膵管上皮破壊像(granulocytic epithelial lesion:GEL)を特徴とするidiopathic duct-centric chronic pancreatitis(IDCP)がAIPとして報告されている。この疾患では、IgG4の関与はほとんどなく、発症年齢が若く、性差もなく、しばしば急性膵炎や炎症性腸疾患を合併する。近年、IgG4関連の膵炎(LPSP)をAIP1型、好中球病変の膵炎(IDCP)をAIP2型と分類するようになった。本稿では、主に1型について概説する。■ 疫学わが国で2016年に行われた全国調査では、AIPの年間推計受療者数は1万3,436人、有病率10.1人/10万人、新規発症者3.1人/10万人であり、2011年の調査での年間推計受療者数5,745人より大きく増加している。わが国では、症例のほとんどが1型であり、2型はまれである。■ 病因AIPの病因は不明であるが、IgG4関連疾患である1型では、免疫遺伝学的背景に自然免疫系、Th2にシフトした獲得免疫系、制御性T細胞などの異常が病態形成に関与する可能性が報告されている。■ 症状AIPは、高齢の男性に好発する。閉塞性黄疸で発症することが多く、黄疸は動揺性の例がある。強度の腹痛や背部痛などの膵炎症状を呈する例は少ない。無症状で、糖尿病の発症や増悪にて発見されることもある。約半数で糖尿病の合併を認め、そのほとんどは2型糖尿病である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)自己免疫性膵炎臨床診断基準2018(表)を用いて診断する。表 自己免疫性膵炎臨床診断基準2018【診断基準】A.診断項目I.膵腫大:a.びまん性腫大(diffuse)b.限局性腫大(segmental/focal)II.主膵管の不整狭細像:a.ERPb.MRCPIII.血清学的所見高IgG4血症(≧135mg/dL)IV.病理所見a.以下の(1)~(4)の所見のうち、3つ以上を認める。b.以下の(1)~(4)の所見のうち、2つを認める。c.(5)を認める。(1)高度のリンパ球、形質細胞の浸潤と、線維化(2)強拡1視野当たり10個を超えるIgG4陽性形質細胞浸潤(3)花筵状線維化(storiform fibrosis)(4)閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis)(5)EUS-FNAで腫瘍細胞を認めない.V.膵外病変:硬化性胆管炎、硬化性涙腺炎・唾液腺炎、後腹膜線維症、腎病変a.臨床的病変b.病理学的病変VI.ステロイド治療の効果B.診断I.確診(1)びまん型 Ia+<III/IVb/V(a/b)>(2)限局型 Ib+IIa+<III/IVb/V(a/b)>の2つ以上またはIb+IIa+<III/IVb/V(a/b)>+VIまたはIb+IIb+<III/V(a/b)>+IVb+VI(3)病理組織学的確診 IVaII.準確診限局型:Ib+IIa+<III/IVb/V(a/b)>またはIb+IIb+<III/V(a/b)>+IVcまたはIb+<III/IVb/V(a/b)>+VIIII.疑診(わが国では極めてまれな2型の可能性もある)びまん型:Ia+II(a/b)+VI限局型:Ib+II(a/b)+VI〔+;かつ、/;または〕(日本膵臓学会・厚生労働省IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針を目指す研究班. 膵臓. 2020;33:906-909.より引用、一部改変)本症の診断においては、膵がんや胆管がんなどの腫瘍性の病変を否定することがきわめて重要である。診断に際しては、可能な限りのEUS-FNAを含めた内視鏡的な病理組織学的アプローチ(膵液細胞診、膵管・胆管ブラッシング細胞診、胆汁細胞診など)を施行すべきである。診断基準では、膵腫大、主膵管の不整狭細像、高IgG4血症、病理所見、膵外病変とステロイド治療の効果の組み合わせにより診断する。びまん性の膵腫大を呈する典型例では、高IgG4血症、病理所見か膵外病変のどれか1つを満たせばAIPと診断できる。一方、限局性膵腫大例では、膵がんとの鑑別がしばしば困難であり、従来の診断基準では内視鏡的膵管造影(ERP)による主膵管の膵管狭細像が必要であった。しかし、昨今診断的ERPがあまり行われなくなってきたことなどを考慮して、MR胆管膵管撮影(MRCP)所見、EUS-FNAによるがんの否定所見とステロイド治療の効果を組み込むことにより、ERPなしで限局性膵腫大例の診断ができるようになった。■ 膵腫大“ソーセージ様”を呈する膵のびまん性(diffuse)腫大は、本症に特異性の高い所見である。しかし、限局性(segmental/focal)腫大では膵がんとの鑑別が問題となる。腹部超音波検査では、低エコーの膵腫大部に高エコースポットが散在することが多い(図1)。腹部ダイナミックCTでは、遅延性増強パターンと被膜様構造(capsule-like rim)が特徴的である(図2)。画像を拡大する画像を拡大する■ 主膵管の不整狭細像ERPによる主膵管の不整狭細像(図3、4)は本症に特異的である。狭細像とは閉塞像や狭窄像と異なり、ある程度広い範囲に及んで、膵管径が通常より細くかつ不整を伴っている像を意味する。典型例では狭細像が全膵管長の3分の1以上を占めるが、限局性の病変でも、狭細部より上流側の主膵管には著しい拡張を認めないことが多い。短い膵管狭細像の場合には膵がんとの鑑別がとくに困難である。主膵管の狭細部からの分枝の派生や非連続性の複数の主膵管狭細像(skip lesions)は、膵がんとの鑑別に有用である。MRCPは、主膵管の狭細部からの分枝膵管の派生の評価は困難であることが多いが、主膵管がある程度の広い範囲にわたり検出できなかったり狭細像を呈する、これらの病変がスキップして認められる、また、狭細部上流の主膵管の拡張が軽度である所見は、診断の根拠になる。画像を拡大する画像を拡大する■ 血清学的所見AIPでは、血中IgG4値の上昇(135mg/dL以上)を高率に認め、その診断的価値は高い。しかし、IgG4高値は他疾患(アトピー性皮膚炎、天疱瘡、喘息など)や一部の膵臓がんや胆管がんでも認められるので、この所見のみからAIPと診断することはできない。今回の診断基準には含まれていないが、高γグロブリン血症、高IgG血症(1,800mg/dL以上)、自己抗体(抗核抗体、リウマチ因子)を認めることが多い。■ 膵臓の病理所見本疾患はLPSPと呼ばれる特徴的な病理像を示す。高度のリンパ球、形質細胞の浸潤と、線維化を認める(図5)。形質細胞は、IgG4免疫染色で陽性を示す(図6)。線維化は、紡錘形細胞の増生からなり、花筵状(storiform fibrosis)と表現される特徴的な錯綜配列を示し、膵辺縁および周囲脂肪組織に出現しやすい。小葉間、膵周囲脂肪組織に存在する静脈では、リンパ球、形質細胞の浸潤と線維化よりなる病変が静脈内に進展して、閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis)が生じる。EUS-FNAで確定診断可能な検体量を採取できることは少ないが、腫瘍細胞を認めないことよりがんを否定できる。画像を拡大する画像を拡大する■ 膵外病変(other organ involvement:OOI)AIPでは、種々のほかのIgG4関連疾患をしばしば合併する。その中で、膵外胆管の硬化性胆管炎、硬化性涙腺炎・唾液腺炎(ミクリッツ病)、後腹膜線維症、腎病変が診断基準に取り上げられている。硬化性胆管炎は、AIPに合併する頻度が最も高い膵外病変である。下部胆管に狭窄を認めることが多く(図4)、膵がんまたは下部胆管がんとの鑑別が必要となる。肝内・肝門部胆管狭窄は、原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)や胆管がんとの鑑別を要する。AIPの診断に有用なOOIとしては、膵外胆管の硬化性胆管炎のみが取り上げられている。AIPに合併する涙腺炎・唾液腺炎は、シェーグレン症候群とは異なって、涙腺分泌機能低下に起因する乾燥性角結膜炎症状や口腔乾燥症状は軽度のことが多い。顎下腺が多く、涙腺・唾液腺の腫脹の多くは左右対称性である。後腹膜線維症は、後腹膜を中心とする線維性結合織のびまん性増殖と炎症により、腹部CT/MRI所見において腹部大動脈周囲の軟部影や腫瘤を呈する。尿管閉塞を来し、水腎症を来す例もある。腎病変としては、造影CTで腎実質の多発性造影不良域、単発性腎腫瘤、腎盂壁の肥厚病変などを認める。■ ステロイド治療の効果ステロイド治療の効果判定は、画像で評価可能な病変が対象であり、臨床症状や血液所見は対象としない。ステロイド開始2週間後に効果不十分の場合には再精査が必要である。できる限り病理組織を採取する努力をすべきであり、ステロイドによる安易な診断的治療は厳に慎むべきである。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)経口ステロイド治療が、AIPの標準治療法である。経口プレドニゾロン0.6mg/kg/日の初期投与量を2~4週間投与し、その後画像検査や血液検査所見を参考に約1~2週間の間隔で5mgずつ漸減し、3~6ヵ月ぐらいで維持量まで減らす。通常、治療開始2週間ほどで改善傾向が認められるので、治療への反応が悪い例では膵臓がんを疑い、再検査を行う必要がある。AIPは20~40%に再燃を起こすので、再燃予防にプレドニゾロン5mg/日程度の維持療法を1~3年行うことが多い(図7)。近年、欧米では、再燃例に対して免疫調整薬やリツキシマブの投与が行われ、良好な成績が報告されている。図7 AIPの標準的ステロイド療法画像を拡大する4 今後の展望AIPの診断においては、膵臓がんとの鑑別が重要であるが、鑑別困難な例がいまだ存在する。病因の解明と確実性のより高い血清学的マーカーの開発が望まれる。EUS-FNAは、悪性腫瘍の否定には有用であるが、採取検体の量が少なく病理組織学的にAIPと診断できない例があり、今後採取方法のさらなる改良が求められる。AIPでは、ステロイド治療後に再燃する例が多く、再燃予防を含めた標準治療法の確立が必要である。5 主たる診療科消化器内科、内分泌内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報自己免疫性膵炎診療ガイドライン 2020(日本膵臓学会ホームページ)(医療従事者向けのまとまった情報)自己免疫性膵炎臨床診断基準[2018年](日本膵臓学会ホームページ)(医療従事者向けのまとまった情報)1)日本膵臓学会・厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)「IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針の確立を目指す研究」班.自己免疫性膵炎診断基準 2018. 膵臓. 2018;33:902-913.2)日本膵臓学会・厚生労働省IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針を目指す研究班.自己免疫性膵炎診療ガイドライン2020. 膵臓. 2020;35:465-550.公開履歴初回2014年03月06日更新2016年03月22日更新2024年07月25日

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