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脳卒中再発予防に望ましいLDL-C値は? J-STARS事後解析

 脳卒中の再発を予防するために望ましいLDLコレステロール値を調べるために、J-STARS研究(Japan Statin Treatment Against Recurrent Stroke、脳血管疾患の再発に対するスタチンの予防効果に関する研究、多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験)の事後解析が実施された。その結果、スタチン使用について調整後、無作為化後のLDLコレステロールが80~100mg/dLの群で、脳卒中および一過性虚血発作の複合リスクが低いことが示された。Stroke誌オンライン版2018年3月6日号に掲載。 本解析では、被験者(n=1,578)を無作為化後最終観察までのLDLコレステロールの平均値で20mg/dLごとにグループ分けした。ベースライン時LDLコレステロール、ベースライン時BMI、高血圧、糖尿病、スタチン使用について調整し、調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を各グループについて分析した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化後最終観察までのLDLコレステロールは、プラバスタチン群で104.1±19.3 mg/dL、対照群で126.1±20.6mg/dLであった。・脳卒中および一過性脳虚血発作、全血管イベントの調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが80~100mg/dLのグループで低かった(傾向のpはそれぞれ0.23、0.25)。・アテローム血栓性梗塞に対する調整HRは、ベースライン時LDLコレステロール値を調整後、スタチン使用により有意に減少した(HR:0.39、95%CI:0.19~0.83)。・アテローム血栓性梗塞、頭蓋内出血の調整HRは、無作為化後LDL-コレステロール値によるサブグループ間で類似していた(傾向のpはそれぞれ0.50、0.37)。・ラクナ梗塞の調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが100~120mg/dLのグループで低かった(HR:0.45、95%CI:0.20~0.99、傾向のp=0.41)。

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健康状態に関係なく余暇身体活動で死亡率低下~アジア50万人調査

 余暇身体活動(LTPA)と死亡リスクの関連を評価する研究は、ほとんど欧州系の健康人で実施されている。今回、米国・Vanderbilt-Ingram Cancer CenterのYing Liu氏らが東アジアの健康人および慢性疾患患者のコホートで調査を実施し、アジアの中高齢者において、定期的なLTPAが健康状態にかかわらず死亡率低下と関連していることが示唆された。International journal of epidemiology誌オンライン版2018年2月27日号に掲載。 本研究では、アジアコホートコンソーシアムに含まれる9件の前向きコホートに参加した東アジアの46万7,729人でプール解析を行い、LTPAと全死因および原因別死亡率の関連を調べた。年齢、性別、教育、婚姻状況、喫煙状況の調整後、Cox比例ハザード回帰を用いてLTPAに関連するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間の13.6年に、6万5,858人の死亡が確認された。・LTPAが1時間/週未満の人と比較したところ、LTPA量と全死因および原因別死亡率との間に逆相関が認められた(傾向のp<0.001)。・逆相関は、心血管疾患による死亡、がん以外による死亡で強かった。・LTPAと全死因死亡率との逆相関については、重度でしばしば生命を脅かす疾患である、がん、脳卒中、冠動脈疾患の患者(低LTPAに対する高LTPAのHR:0.81、95%CI:0.73~0.89)と、糖尿病や高血圧などのその他慢性疾患患者(低LTPAに対する高LTPAのHR:0.86、95%CI:0.80~0.93)で認められた。・性別、BMI、喫煙状況による明らかな修飾効果は確認されなかった。

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ミトコンドリア病〔mitochondrial disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義ミトコンドリア病は、ヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により、十分なATPを生成できずに種々の症状を呈する症候群の総称である。ミトコンドリアの機能不全を来す病因として、電子伝達系酵素、それを修飾する核遺伝子群、ピルビン酸代謝、TCAサイクル関連代謝、脂肪酸代謝、核酸代謝、コエンザイムQ10代謝、ATP転送系、フリーラジカルのスカベンジャー機構、栄養不良による補酵素の欠乏、薬物・毒物による中毒などが挙げられる。■ 疫学ミトコンドリア病の有病率は、小児においては10万人当たり5~15人、成人ではミトコンドリアDNA異常症は10万人当たり9.6人、核DNA異常症は10万人当たり2.9人と推計されている1)。一方、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)で報告されたミトコンドリアDNAのA3243G変異の保因者は、健常人口10万人当たり236人という報告があり2)、少なくとも出生10万人当たり20人がミトコンドリア病と推計されている。■ 病因ミトコンドリアは、真核細胞のエネルギー産生を担うのみではなく、脂質、ステロイド、鉄および鉄・硫黄クラスターの合成・代謝などの細胞内代謝やアポトーシス・カルシウムシグナリングなどの細胞応答など、多彩な機能を持つオルガネラであり、核と異なる独自のDNA(ミトコンドリアDNA:mtDNA)を持っている。しかし、このmtDNAにコードされているのは13種類の呼吸鎖サブユニットのみであり、これ以外はすべて核DNA(nDNA)にコードされている。ミトコンドリアに局在する呼吸鎖複合体は、電子伝達系酵素IからIV(電子伝達系酵素)とATPase(複合体V)を指し、複合体IIを除き、mtDNAとnDNAの共同支配である。これらタンパク複合体サブユニットの構造遺伝子以外に、その発現調節に関わる多くの核の因子(アッセンブリー、発現、安定化、転送、ヘム形成、コエンザイムQ10生合成関連)が明らかになってきた。また、ミトコンドリアの形態形成機構が明らかになり、関連するヒトの病気が見つかってきた。ミトコンドリア呼吸鎖と酵素欠損に関連したミトコンドリア病の原因を、ミトコンドリアDNA遺伝子異常(図1)、核DNA遺伝子異常(図2)に分けて示す。図1 ミトコンドリアDNAとミトコンドリア病で報告された遺伝子異常画像を拡大する図2 ミトコンドリア病で報告された核DNAの遺伝子異常画像を拡大する■ 症状本症では、あらゆる遺伝様式、症状、罹患臓器・組織、重症度の組み合わせも取り得る点を認識することが重要である(図3)。エネルギーをたくさん必要とする臓器の症状が出やすい。しかし、本症は多臓器症状が出ることもあれば、単独の臓器障害の場合もあり、しかも、その程度が軽症から重症まで症例ごとに症状が異なる点が、本症の診断を難しくしている。画像を拡大する■ 分類表にミトコンドリア病の分類を示す。ミトコンドリア病の分類は、I 臨床病型による分類、II 生化学的分類、III 遺伝子異常による分類の3種に分かれている。それぞれ、オーバーラップすることが知られているが、歴史的にこの分類が現在も使用されている。表 ミトコンドリア病の分類I 臨床病型による分類1.MELAS:mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes2.CPEO/KSS:chronic progressive external ophthalmoplegia / Kearns Sayre syndrome3.Leigh脳症   MILS:maternally inherited Leigh syndrome   核遺伝子異常によるLeigh脳症4.MERRF:myoclonus epilepsy with ragged-red fibers5.NARP:Neurogenic atrophy with retinitis pigmentosa6.Leber遺伝性視神経萎縮症7.MNGIE:mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy syndrome8.Pearson骨髄膵症候群9.MLASA:mitochondrial myopathy and sideroblastic anemia10.ミトコンドリアミオパチー11.先天性高乳酸血症12.母系遺伝を示す糖尿病13.Wolfram症候群(DiDmoad症候群)14.autosomal dominant optic atrophy15.Charcot-Marie-Tooth type 2A16.Barth症候群 II 生化学的分類1.基質の転送障害1)carnitine palmitoyltransferase I、II欠損症2)全身型カルニチン欠乏症3)organic cation transporter2欠損症4)carnitine acylcarnitine translocase欠損症5)DDP1欠損症2.基質の利用障害1)ピルビン酸代謝   Pyruvate carboxylase欠損症   PDHC欠損症2)脂肪酸β酸化障害3)TCAサイクル関連代謝   succinate dehydrogenase欠損症   fumarase欠損症   α−ketoglutarate dehydrogenase欠損症4)酸化的リン酸化共役の異常   Luft病5)電子伝達系酵素の異常   複合体I欠損症   複合体II欠損症   複合体III欠損症   複合体IV欠損症   複合体V欠損症   複数の複合体欠損症6)核酸代謝7)ATP転送8)フリーラジカルのスカベンジャー9)栄養不良による補酵素の欠乏10)薬物・毒物による中毒III 遺伝子異常による分類1.mtDNAの異常1)量的異常(mtDNA欠乏)   薬剤性(抗ウイルス剤による2次的減少)   γDNApolymerase阻害   核酸合成障害   遺伝性(以下の項目参照)2)質的異常   単一欠失/重複   多重欠失(以下の項目参照)   ミトコンドリアリボソームRNAの点変異   ミトコンドリア転移RNAの点変異   ミトコンドリアタンパクコード領域の点変異2.核DNAの異常1)酵素タンパクの構成遺伝子の変異   電子伝達系酵素サブユニットの核の遺伝子変異2)分子集合に影響を与える遺伝子の異常   (SCO1、SCO2、COX10、COX15、B17.2L、BSL1L、Surf1、LRPPRC、ATPAF2など)3)ミトコンドリアへの転送に関わる遺伝子の異常   (DDP1、OCTN2、CPT I、 CPT II、Acyl CoA synthetase)4)mtDNAの維持・複製に関わる遺伝子の異常   (TP、dGK、POLG、ANT1、C10ORF2、ECGF1、TK2、SUCLA2など)5)mitochondrial fusion に関わる遺伝子の異常   (OPA1、MFN2)6)ミトコンドリアタンパク合成   (EFG1)7)鉄恒常性   (FRDA、ABC7)8)分子シャペロン   (SPG7)9)ミトコンドリアの保全   (OPA1、MFN2、G4.5、RMRP)10)ミトコンドリアでの代謝酵素欠損   (PDHA1、ETHE1)■ 予後臨床試験で効果が証明された薬物治療は、いまだ存在しない。2012年に発表されたわが国のコホート研究では、一番症例数の多いMELASは、発症して平均7年で死亡している。また、その内訳は、小児型MELASで発症後平均6年、成人型MELASでは発症後平均10年で死亡している。そのほか、小児期に発症するLeigh脳症では、明確な疫学研究はないものの、発症年齢が低ければ低いほど早期に死亡することが知られている。いずれにしても、慢性進行性に経過する難病で、多くは寝たきりとなり、心不全、腎不全、多臓器不全に至り死亡する重篤な疾患である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)従来、用いられてきた診断までの方法を図4に示す。臨床症状からどの病気にも当てはまらない場合は、必ずミトコンドリア病もその鑑別に挙げることが大切である。代謝性アシドーシスも本症でよくみられる所見であり、アニオンギャップが20以上開大すれば、アシドーシスの存在を疑う。乳酸とピルビン酸のモル比(L/P比)が15以上(正常では10)、ケトン体比(3-hydroxybutyrate/acetoacetate:正常では33))が正常より増加していれば、1次的な欠損がミトコンドリアマトリックスの酸化還元電位の異常と推測できる。頭部単純CT検査では、脳の萎縮や大脳基底核の両側対称性石灰化などが判明することが多く、その場合、代謝性アシドーシスの存在を疑う根拠となる。頭部MRI検査では、脳卒中様発作を起こす病型であれば、T1で低吸収域、T2、Flairで高吸収域の異常所見がみられる。MELASでは、異常画像は血管支配領域に合致せず、時間的・空間的に出現・消失を繰り返す。脳卒中様発作のオンセットの判断は、DWI・ADC・T2所見を比較することで推測できる。MRSでの乳酸の解析は、高乳酸髄液症の程度および病巣判断に有用である。また、脳血流を定量的に判定できるSPM-SPECT解析は、機能的脳画像として病巣診断、血管性認知症、脳血流の不均衡分布の判断に有用である。画像を拡大する■ 筋生検最も診断に有用な特殊検査は、筋生検である。筋病理では、Gomori trichrome変法染色で、増生した異常ミトコンドリアが赤ぼろ線維(RRF:ragged-red fiber)として確認でき、ミトコンドリアを特異的に染色するコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性染色でも濃染する。RRFがなくても、チトクロームC酸化酵素(COX)染色で染色性を欠く線維やSDHの活性染色で動脈壁の濃染(SSV:SDH reactive vessels)を認めた場合、本症を疑う根拠となる。■ 生化学的検査生検筋、生検肝、もしくは培養皮膚線維芽細胞からミトコンドリアを分離して、酸素消費速度や呼吸鎖活性、blue-native gelによる呼吸鎖酵素タンパクの質および量の推定を行い、生化学的に呼吸鎖異常を検証する。場合によっては、組織内のカルニチン、コエンザイムQ10、脂肪酸の組成分析の必要性も出てくる。大切なことは、ミトコンドリア機能のどの部分の、質的もしくは量的異常かを同定することである。この作業の精度により、その後の遺伝子解析手法への最短の道筋が立てられる。■ 遺伝子検査ミトコンドリア病の遺伝子検索は、mtDNAの検索に加えて新たに判明したnDNAの検索も行わなければいけない。疾患頻度の多いmtDNAの異常症の検出には、体細胞の分布から考え、非侵襲的検査法としては、尿細管剥奪上皮を用いた変異解析が最も有用である。尿での変異率は、骨格筋や心筋、神経組織との相関が非常に高い。一方、ほかの得られやすい臓器としては、血液(白血球)、毛根、爪、口腔内上皮細胞なども有用であるが、尿細管剥奪上皮と比較すると変異率として最大30~40%ほどの低下がみられる。mtDNAの異常症を疑った場合、生涯を通じて再生できない臓器もしくは罹患臓器由来の検体を、遺伝子検査の基本とすることが望ましい。■ 乳酸・ピルビン酸、バイオマーカー(GDF15)の測定従来、乳酸・ピルビン酸がミトコンドリア病のバイオマーカーとして用いられてきた。しかし、これらは常に高値とは限らず、血液では正常でも、髄液で高値をとる場合も多い。さらに、乳幼児期の採血では、採血時の駆血操作で2次的に高乳酸値を呈することもあり(採血条件に由来する高乳酸血症)、その場合は、高アラニン血症の有無で高乳酸血症の存在を鑑別しなければならない。そこで、最近見いだされ、その有用性が検証されたバイオマーカーが「GDF15」である。このマーカーは、感度、特異度ともに98%と、あらゆるMELASの診断に現在最も有用と考えられている3)。最新の診断アルゴリズムを図5に示す4)。従来用いられていた乳酸、ピルビン酸、L/P比、CKと比較しても、最も臨床的に有用である。さらに、GDF15は髄液にも反映しており、この点で髄液には分泌されないFGF21に比較して、より有用性が高い。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症に対する薬物治療の開発は、多くの国で臨床試験として行われているが、2018年2月1日時点で、臨床試験で有効性を証明された薬剤は世界に存在しない。欧州では、Leber遺伝性視神経萎縮症に対して限定的にidebenone(商品名:Raxone)が、米国では余命3ヵ月と宣告されたLeigh脳症に対するvatiquinone(EPI-743)がcompassionate useとして使用されている。わが国では、MELASに対して、脳卒中様発作時のL-アルギニン(同:アルギU)の静注および発作緩解期の内服が、MELASの生存予後を大きく改善しており、適応症の申請を準備している。4 今後の展望創薬事業として、MELASに対するタウリン療法、Leigh脳症に対する5-ALAおよびEPI-743の臨床試験が終了しており、現在、MELAS/MELA Leigh脳症に対するピルビン酸療法が臨床試験中である。また、創薬シーズとして5-MAやTUDCAなどの候補薬も存在しており、今後有効性を検証するための臨床試験が組まれる予定である。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)本症は臨床的に非常に多様性を有し、発症年齢も小児から成人、罹患臓器も神経、筋、循環器、腎臓、内分泌など広範にわたる。診療科としては、小児科、小児神経科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉科、眼科、精神科、老年科、リハビリテーション科など多岐にわたり、最終的には療養、療育施設やリハビリ施設の紹介も必要となる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾患情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:障害者手帳[肢体不自由、聴覚、視覚、心臓、腎臓、精神]、介護申請など)患者会情報日本ミトコンドリア学会ホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:ドクター相談室、患者家族の交流の場・談話室など)ミトコンドリア病患者・家族の会(MCM家族の会)(ミトコンドリア病患者とその家族および支援者の会)1)Gorman GS, et al. Ann Neurol. 2015;77:753-759.2)Manwaring N, et al. Mitochondrion. 2007;7:230-233.3)Yatsuga S, et al. Ann Neurol. 2015;78:814-823.4)Gorman GS, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16080.公開履歴初回2018年3月13日

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意外にも中高齢層にフィット、糖尿病診療でのスマホアプリ活用

 糖尿病患者の“自己管理ノート”としてのスマホアプリの活用は、医療者・患者双方にとってどのようなメリットがあるのか。2018年3月3日、「第52回 糖尿病学の進歩」において「リアルワールドデータによる糖尿病治療の最前線~PHR(パーソナルヘルスレコード)や検査データを活用した新しい診療の実際と展望~」と題したランチョンセミナーが開催された(共催:株式会社ウェルビー/株式会社エスアールエル)。セミナーでは木村 那智氏(医療法人純正会ソレイユ千種クリニック 院長)が登壇。アプリ「Welbyマイカルテ」を主に2型糖尿病患者の診療に取り入れ約3年が経過した中での、使用感やメリットについて紹介した。スタンプ機能で、負担感なく密にコミュニケーション 「Welbyマイカルテ」は、生活習慣病患者を対象とした、血糖値や血圧などの自己管理を支援するスマートフォン向けアプリ。データは手入力のほか、カメラを使った撮影や、血圧計、血糖測定器、体組成計など主要メーカーの機器からの自動取得が可能だ。これらのデータは患者、患者家族、医療者の間で共有でき、コメント機能やスタンプによるコミュニケーションが可能となっている。 2015年の提供開始以来、約22万人が登録しており、木村氏は「患者さんは無料でダウンロード・利用開始でき、使い方も薄いパンフレットで理解できる簡単なもの」と語る。木村氏のクリニックでは、患者が記録した内容を見た医師や看護師がコメントを返すほか、「がんばったね!」という意味でスタンプを送信することも多いという。「LINEのスタンプ機能と同じで、医療者側は一つひとつコメントを入力しなくても簡単に声掛けができ、患者さんにとってはちゃんと見守ってもらえているという安心感につながる」と話した。 同アプリは医療機関との連携を行わず、患者個人として利用することもできるが、ウェルビー社が行った調査によると、医療機関と連携している場合、3ヵ月後の継続率が約5倍となったという。木村氏は「もちろん、“監視されているようでいや”という人もいるので、全員にフィットするわけではない。しかし、患者さんのモチベーションが治療に大きな影響を及ぼす糖尿病診療において、モチベーション維持や行動変容を促す有効なツールの1つであることは間違いない」と語り、食事内容を毎回撮影するなどアプリの使用に“ハマり”、生活習慣が改善されて結果的に体重減少、血糖値低下につながった40代男性の症例を紹介した。継続率が高いのは中高齢層 スマホアプリというと、どうしても若い人向けという印象を持たれがちだが、木村氏は「逆に若い人のほうが続かない傾向がある。“これを機にスマホに変えた”という中高齢層は、孫や子供たちとの会話のきっかけにもなり、嬉々として使ってもらえることが多い」と話す。実際に同社が行った調査では、年齢が上がるほど継続率が高まり、50代以上のユーザーの利用率が高かった。聴取時間は圧倒的に短縮、思いがけない問題点がみつかることも もう1つ、アプリを診療へ取り入れることへの懸念としてよく聞かれるのは、「使い方を教える手間や時間が掛かるし、病院側のメリットがないのでは」というものだが、木村氏は「あらかじめ生活習慣や食事内容がわかるため、聴取時間は短縮し、栄養指導や診察が効率化する」と話す。また、本人はよかれと思ってやっていることが、実は間違った知識だったということも多く、「診察室での聴取だけでは見えてこない改善点がみつかる場合もある」と話した。 同社は今回、株式会社エスアールエルが提供する医師向け検査結果参照システム「PLANET NEXT」と同アプリの連携をスタートさせ、医師は検査結果とPHRを参照できるようになった。また今後、患者もスマートフォンのアプリで検査結果を参照できるようになることから、木村氏は「患者さんがほかの病院や薬局で自分の検査値と自己管理データを見せられるようになると、より効率的な治療が可能になり、患者さん自身の行動変容にもつながるだろう」と述べ、期待感を示した。「通常、次は数週間、数ヵ月後の診察予約となるところを、こういったツールの活用で頻繁に状況をモニタリングできる。対面診療にオンラインツールを加えることは難しいことではなく、いまや普通の道具を、普通に活用することに過ぎない。正確な情報と適切なフォローアップで患者さんはどんどん進化していくので、積極的に活用していってほしい」とまとめた。■参考株式会社ウェルビー「Welbyマイカルテ」

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きわめて高いHDL-Cは心血管死リスク? EPOCH-JAPAN

 心血管疾患(CVD)に対するvery highやextremely highレベルの HDLコレステロール(HDL-C)の影響は十分にわかっていない。最近のいくつかの研究では、extremely highレベルのHDL-CのCVDイベントへの悪影響が報告されているが、原因別CVD死亡率との間に有意な関連はみられておらず、またアジア人集団では研究されていない。今回、日本の主要な循環器疫学コホート研究の統合データベース共同研究であるEPOCH-JAPANにおける大規模なプール解析により、extremely highレベルの HDL-Cがアテローム性CVDによる死亡率に悪影響を及ぼすことを示した。Journal of clinical lipidology誌オンライン版2018年2月8日号に掲載。 本研究では、9つの日本人コホート(40~89歳、4万3,407人)において大規模なプール解析を行った。参加者をHDL-C値により5群に分け、2.33mmol/L以上(90mg/dL以上)をextremely highとした。コホート層別Cox比例ハザードモデルを用いて、全死因死亡および原因別死亡について、1.04~1.55mmol/L(40~59mg/dL)の群と比較した各群の調整ハザード比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・12.1年の追跡期間中に、全死因死亡が4,995人、CVDによる死亡が1,280人確認された。・extremely highレベルのHDL-Cは、アテローム性CVDによる死亡リスクの増加(ハザード比:2.37、95%信頼区間:1.37~4.09)、冠動脈疾患および脳梗塞リスクの増加と有意に関連していた。・extremely highレベルのHDL-Cのリスクは、現飲酒者でより顕著であった。

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低用量スタチンでの糖尿病リスク~日本のコホート研究

 低用量スタチンを服用している日本人の糖尿病新規発症リスクはこれまで検討されていない。今回、秋田大学医学部附属病院薬剤部の加藤 正太郎氏らは、低用量スタチン服用患者を、高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けて糖尿病新規発症リスクを評価した。その結果、高力価スタチン群では低力価スタチン群と比べ有意に発症リスクが高かった。さらに、ステロイドや免疫抑制薬との併用で発症リスクが上昇するため、注意が必要と指摘している。Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics誌オンライン版2018年2月26日号に掲載。 本研究は、スタチン治療を開始した日本人患者2,554例の後ろ向きコホート研究である。同じスタチンの同じ用量を服用している患者のみ登録し、高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けた。アウトカムはスタチン治療中の糖尿病新規発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・本コホートにおける糖尿病新規発症率は7.4%(n=190)であった。・カプランマイヤー生存曲線により、低力価スタチン服用患者に比べ高力価スタチン服用患者において糖尿病新規発症率が有意に高いことが示された(p<0.001、log-rank検定)。・Cox比例ハザード回帰分析により、糖尿病新規発症リスクを有意に増加させる因子として、ベースライン時の空腹時血糖、高力価スタチン使用、男性、Ca拮抗薬・免疫抑制薬・ステロイドとの併用が特定された。

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多枝・左主幹部冠動脈疾患の死亡率、CABG vs.PCI/Lancet

 多枝冠動脈疾患患者では、冠動脈バイパス術(CABG)が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも、死亡に関してベネフィットがあることが示された。とくに、糖尿病の併存や冠動脈の病変が複雑な患者ほど、その傾向は強かった。一方、左主幹部冠動脈疾患患者では、CABGがPCIよりもベネフィットがあることは示されなかった。オランダ・エラスムス大学医療センターのStuart J. Head氏らが、11の無作為化比較試験、被験者総数約1万1,500例を対象に行ったプール解析の結果で、Lancet誌オンライン版2018年2月22日号で発表した。これまで多くの無作為化試験で、冠動脈疾患患者についてCABGとPCIの比較が行われているが、血行再建術の戦略間で死亡の差を評価した試験はなかったという。2017年7月19日時点でレビュー、1年超の死亡転帰を含むRCTを特定 研究グループは、2017年7月19日時点でシステマティック・レビューを行い、CABGおよびステントを用いたPCIに関する無作為化比較試験を特定した。その中で、対象が多枝または左主幹部の冠動脈疾患を有する急性心筋梗塞歴のない患者、ステント(ベアメタルまたは薬剤溶出型)を用いたPCIを実施、全死因死亡について1年超のフォローアップを行っていた試験を適格として解析に含んだ。 対象試験のプール解析では、Kaplan-Meier法を用いて5年全死因死亡率を推算、ランダム効果Cox比例ハザードモデルで各試験を階層化し、CABGとPCIのアウトカムを比較した。また、治療効果の整合性について、ベースライン時の臨床・解剖学的特徴で定義したサブグループで、探索的解析を行った。多枝患者ではPCIとCABGで有意な差、左主幹部疾患では介入の違いで差はみられず 解析には11の無作為化試験、被験者総数1万1,518例(PCI群5,753例、CABG群5,765例)を包含した。平均追跡期間3.8年(SD 1.4)において、976例の死亡が報告された。 平均SYNTAXスコアは26.0(SD 9.5)であり、8,138例中1,798例(22.1%)が同スコア33以上だった。 5年全死因死亡率は、PCI群11.2%に対しCABG群9.2%だった(ハザード比[HR]:1.20、95%信頼区間[CI]:1.06~1.37、p=0.0038)。 多枝患者では、治療介入の違いによる5年全死因死亡率の有意差が認められた(PCI群11.5% vs.CABG群8.9%、HR:1.28[95%CI:1.09~1.49]、p=0.0019)。さらに多枝患者では、糖尿病の併存の有無による違いも認められた。多枝糖尿病群では、PCI群15.5% vs.CABG群10.0%(HR:1.48、95%CI:1.19~1.84、p=0.0004)であったが、多枝非糖尿病患者群では、8.7% vs.8.0%で有意な差は認められなかった(HR:1.08、95%CI:0.86~1.36、p=0.49)。多枝患者ではSYNTAXスコアによる違いもみられ、低スコア群では有意差はみられなかったが(スコア0~22の患者群、p=0.57)、高スコアになると有意差が認められた。スコア23~32の多枝患者群はp=0.0129、スコア33以上の多枝患者群では、PCI群17.7% vs.CABG群10.9%(HR:1.70、95%CI:1.13~2.55、p=0.0094)だった。 一方、左主幹部患者の5年全死因死亡率は、PCI群10.7% vs.CABG群10.5%で、有意差はなかった(HR:1.07、95%CI:0.87~1.33、p=0.52)。糖尿病の有無やSYNTAXスコアの違いによる差も認められなかった。

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「血圧の薬を止めたい」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第16回

■外来NGワード「飲まないと、大変なことになりますよ!」(医学的な怖がらせ)「どうして、私の言うことが聞けないんですか!」(憤りをそのまま伝達)「それなら、好きなようにしなさい!」(患者を見放す)■解説 雑誌やインターネットなどの情報を信じて、今まで飲んでいた「血圧の薬」を止めたいという患者さんがいます。なかには、医師に相談もせず、勝手に降圧薬を止めてしまう患者さんもいます。そういった患者さんに、上から目線で一方的に降圧薬を飲むように指示しても、納得されないことがよくあります。降圧薬の休薬に関する調査によると、休薬後に正常血圧が維持できている率は報告により幅があり異なりますが3~74%だそうです。その特徴として、治療前がI度高血圧(140~159/90~99)、若年者、正常体重、塩分摂取量が少ない、非飲酒者、降圧剤1剤のみの服用、臓器障害がなかったことでありました1)。また、血圧は、冬場には高く、夏場には低くなるという季節変動があることが知られています。降圧薬を減量もしくは中止すると、冬場に血圧が上昇して、脳卒中などのリスクが上昇する危険性があります。中止や減量ができる患者さんは、自分で血圧管理ができていることが条件となります。患者さんの「降圧薬を飲みたくないという気持ち」を理解した後に、降圧薬を飲む意義を患者さんに説明して、心血管疾患や認知症リスクを下げるために何ができるかを一緒に考えられるといいですね2)。 ■患者さんとの会話でロールプレイ患者先生、家で測ってみても血圧が今下がっていて、いい数値だと思うんですけど、この血圧の薬、いつまで飲まなければいけないですか?医師そういう質問、よく受けますよ。患者血圧の薬を止めることはできませんか?医師もちろん、止めることができる人も中にはいますよ!(前置きする)患者えっ、そうなんですか! どんな人なんですか?医師元々、血圧がそれほど高くなくて、動脈硬化がなくて、塩分や運動に気を付けていて、肥満が解消できた人です。患者なるほど。やっぱり、生活習慣に気を付けておかないとだめなんですね(気付きの言葉)。医師それに、もし止めるとするとしても、冬場は止めておいた方がいいですね。寒さで急に血圧が上がる場合もありますし…(身ぶり手ぶりを交えながら)。患者なるほど。今は寒くて、運動できていないし、なかなか痩せられなくて…。医師冬場は鍋物が多くなりますので、塩分の摂取量も夏場に比べると、多くなりがちですからね。患者確かに。医師血圧の薬を飲む目的は、血圧を下げることではなく、脳卒中や認知症などを防ぐことですからね(降圧薬服用の目的を再確認)。患者なるほど。運動して、体重を減らすよう頑張ってみます(嬉しそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「血圧の薬を止めることができる人も中にはいますよ!」「血圧の薬を飲む目的は、血圧を下げることだけではなく、寝たきりや認知症の予防のためですよ」■資料 休薬の目安とは?1)元々、I度の高血圧2)臓器障害がない3)減量、減塩、節酒など生活習慣を改善4)1つの降圧薬で良好の血圧コントロール5)自分で血圧管理ができている1)Sugiyama T, et al. Hypertens Res. 1998;21:103-108.2)坂根直樹. クイズでわかる保健指導のエビデンス50. 中央法規出版;2013.p52-53.

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肥満と肺がんの関連~プール解析

 肥満は肺がんにおける潜在的な防御因子とされている。今回、パリ第11大学のHarinakshi Sanikini氏らによる、4件のコホート研究におけるコホート内ケースコントロール研究のプール解析により、過体重・肥満が肺がんリスク低下に関連するというエビデンスが追加された。BMC cancer誌2018年2月23日号に掲載。 著者らは、ケースコントロール研究を米国、欧州、中国、シンガポールの4コホート(ケース4,172例、コントロール8,471例)の中に組み込んだ。ベースライン時のBMIにより、低体重(18.5未満)、正常体重(18.5以上25未満)、過体重(25以上30未満)、肥満(30以上)の4カテゴリーに分類した。BMIと肺がんの関連については、潜在的な交絡因子を調整し、無条件ロジスティック回帰を用いてオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・参加者全体において、標準体重群を基準とすると、過体重群(OR:0.77、95%CI:0.68~0.86)と肥満群(OR:0.69、95%CI:0.59~0.82)で肺がんリスクの低下が認められた。・喫煙状況による層別解析において、現喫煙者・元喫煙者・非喫煙者の各群で、過体重群と肥満群での肺がんリスクの低下が認められた(相互作用のp=0.002)。・過体重群と肥満群の調整ORはそれぞれ、現喫煙者では0.79(95%CI:0.68~0.92)、0.75(95%CI:0.60~0.93)、元喫煙者では0.70(95%CI:0.53~0.93)、0.55(95%CI:0.37~0.80)、非喫煙者では0.77(95%CI:0.59~0.99)、0.71(95%CI:0.44~1.14)であった。・低体重群では、統計学的に有意な関連は認められなかった(現喫煙者におけるOR:1.24、95%CI:0.98~1.58、元喫煙者におけるOR:0.27、95%CI:0.12~0.61、非喫煙者におけるOR:0.83、95%CI:0.53~1.28)。

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スタチンによる糖尿病発症の危険因子~日本のPMSデータ

 スタチン使用と糖尿病や高血糖症リスクの増加との関連について、慶應義塾大学薬学部の橋口 正行氏らが、日本の市販後調査(PMS)データベースを使用したコホート内ケースコントロール研究で検討した。その結果、脂肪肝および高尿酸血症を併存している患者で、スタチン使用により糖尿病や高血糖症の発症が増加する可能性が示唆された。Clinical Pharmacology in Drug Development誌オンライン版2018年2月20日号に掲載。 データベースには、スタチンを使用している2万6,849例と他の脂質降下薬を使用している5,308例の高脂血症患者が含まれていた。本研究には、1種類以上のスタチンを使用し、スタチンの明確な投薬歴があり、糖尿病ではない患者が参加した。ケースは、スタチン使用中に糖尿病もしくは高血糖症が発症した患者で、各ケースに対して20例のコントロールを無作為に選択しマッチさせた。スタチン使用中の糖尿病および高血糖症のリスク上昇に関連する因子として、性別、年齢、BMI、スタチン使用期間、併存疾患、併用薬、臨床検査値などを検討した。スタチンに関連する糖尿病もしくは高血糖症は、基準範囲を超える異常な血糖値上昇により同定した。 主な結果は以下のとおり。・1万9,868例が試験対象基準を満たし、そのうち24例がケース(スタチン使用中に糖尿病もしくは高血糖症を発症)群の患者であった。・糖尿病もしくは高血糖症の発症について、脂肪肝(調整オッズ比:16.10)および高尿酸血症(調整オッズ比:28.96)の2つの併存疾患因子が抽出された。・非アルコール性脂肪肝は、糖尿病、肥満、インスリン抵抗性と関連し、高尿酸血症は生活習慣と関連していた。

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リアルタイムCGMはハイリスク1型DM患者に有益/Lancet

 インスリン頻回注射(MDI)治療を受けており、低血糖症による意識障害または重症低血糖症を呈したことがある1型糖尿病患者において、リアルタイム持続血糖モニタリング(rtCGM)システムは低血糖症のイベント件数を減らすことが、多施設共同無作為化試験で示された。ドイツ・Science-Consulting in Diabetes GmbHのLutz Heinemann氏らが報告した。これまで、MDI治療を受けるハイリスクの1型糖尿病患者において、低血糖症の回避にrtCGMが有効であるのかは不明であった。Lancet誌オンライン版2018年2月15日号掲載の報告。無作為化試験で自己血糖モニタリングの場合と比較 rtCGMシステムの使用が、低血糖症の発生や重症度を抑制するかどうかを確認するため、ドイツ国内の糖尿病診療施設12ヵ所で、6ヵ月間の非盲検並行群比較による無作為化対照試験を行った。1型糖尿病で、前年に低血糖症による意識障害または重症低血糖症歴がある患者を適格とした。 全患者は、盲検下でrtCGMシステムを28日間装着・使用し(ベースライン)、その後、ブロック無作為化法を用い、試験地を層別化変数として1対1の割合で、非盲検rtCGM(Dexcom G5モバイルシステム)群または対照(連続自己血糖モニタリング:連続SMBG)群に無作為に割り付けられ、26週間の介入を受けた。対照群はフォローアップ期間中(22~26週)、盲検下でrtCGMシステムを使用した。 主要アウトカムは、フォローアップ期間中に発生した、ベースライン補正後の低血糖症イベント(グルコース値3.0mmol/L以下が20分以上と定義)の回数とした。 全データセットには、ベースラインとフォローアップの期間中にrtCGMシステムを使用した被験者が包含された。低血糖症の発生率比、rtCGM群は72%減少 2016年3月4日~2017年1月12日に、149例が無作為化を受け(対照群74例、rtCGM群75例)、141例がフォローアップ期間を完遂した(対照群66例、rtCGM群75例)。 低血糖症イベント回数(/28日間)は、rtCGM群では10.8回(SD 10.0)から3.5回(4.7)と、減少が認められた。一方、対照群では減少と呼べる回数減は認められなかった(14.4回[12.4]から13.7回[11.6])。 低血糖症イベントは、rtCGM群では有意に72%減少したことが認められた(発生率比:0.28[95%信頼区間[CI]:0.20~0.39]、p<0.0001)。 重篤有害事象は18件報告された。うち7件は対照群での報告(重症低血糖症2件、腎移植1件、心筋梗塞1件、大腸ポリープ2件、痙攣1件)で、10件はrtCGM群(重症低血糖症4件、糖尿病性足潰瘍2件、スズメバチ刺傷後のアレルギー反応1件、骨折2件、腎腫瘍切除1件)、1件は無作為化前の報告であった。試験デバイスに関連した報告例はなかった。

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Real World Evidenceからみたカナグリフロジンの有用性(解説:吉岡成人 氏)-819

カナグリフロジンの新たなエビデンス ADA(American Diabetes Association)のガイドラインでは心血管リスクを持つ2型糖尿病患者に、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンやカナグリフロジンの積極的な使用を推奨している。その根拠となる臨床試験は、EMPA-REG OUTCOME試験およびCANVASプログラムである。これらの臨床試験における主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合イベントの発生率であり、対象となった患者も心血管疾患のハイリスクグループであった。今回紹介するのは、米国における民間の医療データベースを基に、2型糖尿病患者における投与薬剤と心血管イベントについて検討したReal World Evidenceとしてのデータである。医療データベースを基に検証 今回の研究は、米国の民間の医療データベースOptum Clinformatics Datamartを基に、18歳以上の2型糖尿病の患者で、2013年4月から2015年9月までにSGLT2阻害薬であるカナグリフロジンまたはDPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SU薬の使用を開始したものを対象として、心血管イベントの発症を比較したものである。処方データを抽出し、患者の背景をマッチさせ、イベントの発症を検討する後ろ向きコホート試験である。 主要評価項目は心不全による入院と複合心血管イベント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中による入院)となっている。カナグリフロジンは心不全の入院を減らすが、心筋梗塞や脳卒中は抑制しない Real world dataを基にした30ヵ月間の観察において、カナグリフロジンが他の薬剤に比較して心不全による入院のリスクを有意に低下させることが確認された。カナグリフロジンンとDPP-4阻害薬を比較した場合、イベントの発生頻度はそれぞれ8.9/1,000人年、12.8/1,000人年であり、ハザード比は0.70(95%信頼区間[CI]:0.54~0.92)。GLP-1アナログ、SU薬と比較したハザード比も0.61(95%CI:0.47~0.78)、0.51(95%CI:0.38~0.67)であった。しかし、複合心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中による入院)については、抑制効果は認められず、ハザード比はDPP-4阻害薬と比較して0.89(95%CI:0.68~1.17)、GLP-1アナログでは1.03(95%CI:0.79~1.35)、SU薬でも0.86(95%CI:0.65~1.13)であった。この傾向は、ベースラインにおけるHbA1c値や心疾患や心不全の既往の有無によってサブグループ解析を行っても同様であったと報告されている。 心疾患の既往の有無などを問わず、カナグリフロジンは心不全による入院を他の薬剤に比較して有意に30~49%抑制するものの、心筋梗塞や脳卒中による入院は抑制し得ないことになる。とはいえ、解析の対象となった患者の平均年齢はおよそ57±10歳前後と若く、観察期間も各群でマッチさせることができたのは0.6±0.5年ほどでしかない。これらの点を勘案すると、SGLT2阻害薬であるカナグリフロジンは、患者の年齢を問わず、投与開始後早い時期から、心不全による入院を抑制する効果を持っているといえる。 SGLT2阻害薬が新たなカテゴリーの利尿薬として心不全を抑制しているのか、それとも、利尿効果を超えた心血管イベント抑制の効果があるのか、今後の展開に期待したい。

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低脂肪vs.低炭水化物ダイエット、体重減効果は?/JAMA

 健康的低脂肪(HLF)ダイエットと健康的低炭水化物(HLC)ダイエットについて、12ヵ月後の体重減効果は同等であることが、米国・スタンフォード大学のChristopher D.Gardner氏らが、609例を対象に行った無作為化比較試験で示された。また遺伝子型やダイエット開始前のインスリン分泌能は、いずれの食事療法の体重減効果とも関連がみられなかったという。結果を踏まえて著者は、「疾病の素因と仮定される遺伝子型およびインスリン分泌能は、HLFとHLCのどちらが至適な食事療法かを識別するのには役立たないようだ」とまとめている。JAMA誌2018年2月20日号掲載の報告。非糖尿病18~50歳を対象に無作為化試験、1年後の体重減を比較 研究グループは、2013年1月29日~2015年4月14日にかけて、BMI値28~40、非糖尿病の18~50歳、609例を対象に、無作為化試験「DIETFITS」(The Diet Intervention Examining The Factors Interacting with Treatment Success)を開始し、2016年5月16日まで追跡した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはHLFダイエットを、もう一方にはHLCダイエットをそれぞれ12ヵ月間行った。具体的には健康教育者が、ダイエットに特異的な少人数セッション(12ヵ月間で22回)を通じて、行動変容を促す介入を行った。 試験では、3つの代表的な一塩基多型(SNP)反応パターンまたはインスリン分泌能(糖負荷後30分の血中インスリン濃度:INS-30)と、体重減との関連についても検証した。体重減は同程度、遺伝子型やインスリン分泌能との関連は認められず 被験者609例の平均年齢は40歳(SD 7)、女性は57%、平均BMI値は33(SD 3)、低脂肪遺伝子型は244例(40%)、低炭水化物遺伝子型は180例(30%)、INS-30平均値は93μIU/mLだった。試験完遂者は481例(79%)だった。 12ヵ月間の多量栄養素の平均分布値は、炭水化物はHLF群48%、HLC群30%、脂肪はそれぞれ29%、45%、蛋白質は21%、23%だった。 12ヵ月時点の体重変化の平均値は、HLF群-5.3kg、HLC群-6.0kgだった(群間差平均:0.7kg、95%信頼区間[CI]:-0.2~1.6kg)。 12ヵ月の体重減について、ダイエットの種類と遺伝子型に相互関連はみられず(p=0.20)、ダイエットの種類とインスリン分泌能(INS-30)にも相互関連は認められなかった(p=0.47)。 なお、18件の有害事象が認められたが、発生の割合は両群で同程度だった。

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てんかん患者の傷害・事故リスクに関するコホート研究

 てんかんの診断を新規に受けた患者における、合併症関連の傷害・事故リスクについて、スウェーデン・カロリンスカ研究所のBenno Mahler氏らが検討を行った。Neurology誌オンライン版2018年1月31日号の報告。 対象はストックホルム北部のてんかん患者で、2001年9月~2008年8月に非誘発性発作を起こした2,130例。すべてのてんかん患者につき、集水域の人口から性別および包含年に一致した8個体をランダムに抽出し、対照群(16,992例)とした。傷害・事故の発生は、スウェーデン患者レジストリおよび死亡原因レジストリの2013年12月までのデータより収集した。また、これらのレジストリから、併存疾患(脳腫瘍、脳卒中、精神医学的疾患、糖尿病など)に関する情報も収集した。 主な結果は以下のとおり。・傷害・事故は、てんかん患者1,033例、対照群6,202例において認められた(HR:1.71、95%CI:1.60~1.83)。・てんかんの診断から最初の2年間におけるリスクが高かった。・性別および教育状況は、ハザード比に有意な影響を及ぼさなかった。・そのリスクは、小児では正常であったが、成人では増加した。・溺水、中毒、服薬による有害事象、重篤な外傷性脳損傷で、ハザード比が最も高かった。・併存疾患のない対照群と比較したハザード比は、併存疾患のないてんかん患者1.17(95%CI:1.07~1.28)、併存疾患のある対照群4.52(95%CI:4.18~4.88)、併存疾患のあるてんかん患者7.15(95%CI:6.49~7.87)であった。 著者らは「新規てんかん患者において、傷害・事故リスクに関するカウンセリングを行う際には、併存疾患の有無を考慮する必要がある。てんかん診断から最初の2年間のリスクが最も高いため、早期の情報提供が重要である」としている。■関連記事てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか寛解後、抗てんかん薬はすぐに中止すべきかADHDの小児および青年における意図しない怪我のリスクとADHD薬の影響

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慢性疾患でがん罹患・死亡リスクが大幅増/BMJ

 糖尿病などの慢性疾患への既往や、血圧・コレステロールといった心血管疾患などのマーカーの異常は、がん罹患リスク、がん死亡リスクの増大と関連することが明らかにされた。慢性疾患は、がん罹患の5分の1以上を、がん死亡の3分の1以上を占めることも示された。一方でこうした慢性疾患に関連したがんリスクは、適度な運動により、40%近く低下することも示されたという。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのHuakang Tu氏らが、40万例超を対象に行った前向きコホート試験の結果で、BMJ誌2018年1月31日号で発表された。40万例超を8.7年間追跡 研究グループは1996~2007年に、米国で総合的な健康診断を受けた18歳以上の40万5,878例を対象にコホート試験を行い、平均8.7年間追跡した。健診では、心血管疾患マーカー(血圧、総コレステロール、心拍数)、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)マーカー(蛋白尿、糸球体濾過量)、肺疾患、痛風性関節炎マーカー(尿酸)について、標準的な方法による測定または診断が行われた。 主要評価項目は、がん罹患率とがん死亡率だった。慢性疾患・マーカーによるがん罹患・死亡リスク、運動で約3~5割低減 8種の疾患・マーカーのうち、血圧値の異常と肺疾患既往以外は、がん罹患のリスクを有意に増大した(補正後ハザード比[HR]の範囲:1.07~1.44)。 がん死亡リスクについては、8種の疾患・マーカーすべてで有意な増加が認められた(HRの範囲:1.12~1.70)。 8種の疾患・マーカーを要約した慢性疾患リスクスコアは、その増大に伴いがん罹患リスクも上昇することが示された。同リスクの最高スコアは、がん罹患リスクを2.21倍(95%信頼区間[CI]:1.77~2.75)に、がん死亡リスクを4.00倍(95%CI:2.84~5.63)に、それぞれ増大した。 慢性疾患リスクの高スコアは、生存年数をかなり損失することと関連しており、同最高スコアによる損失生存年数は、男性は13.3年、女性は15.9年だった。 8種の疾患・マーカーすべてを合わせた、がん罹患率やがん死亡率の人口寄与割合は、それぞれ20.5%、38.9%であり、5つの主要生活習慣要因(喫煙、運動不足、果物や野菜の摂取不足、飲酒、肥満)を複合した場合の24.8%、39.7%に匹敵するものだった。 一方で、運動をすることで、8種の疾患・マーカーによるがん罹患・がん死亡リスクの上昇を減じることができた。身体的に活発な被験者は、運動不足の被験者と比べて、8種の疾患・マーカーによるがん罹患リスクは48%、がん死亡リスクは27%低かった。

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チョコが大好きな患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第15回

■外来NGワード「チョコは食べないようにしなさい!」(理想論の提示)「甘いものは食べないようにしなさい!」(あいまいな食事指導)「チョコは、これから買わないようにしなさい!」(無理な食事指導)■解説 最近、女性から男性だけでなく、女性から女性、さらには自分にチョコレートを贈るようになったバレンタインデー。バレンタインデーのシーズンになると、チョコレートはバカ売れで、消費量はチョコレートの年間消費量の1割強にもなるそうです。また、チョコレートが大好きな人は、他人に渡す分だけでなく、自分で食べる分も買っていたりします。ダークチョコレートには、ポリフェノールが含まれていることから、チョコレートには健康効果が高いとテレビや雑誌などで喧伝されています。しかし、そのエビデンスは限られています。確かに、観察研究を集めたメタ解析では、適度のチョコレートには心血管リスクを低下させる可能性があるのではないかと推察されています。しかし、肥満者を対象とした介入研究では、エネルギー制限をしていてもチョコレートだけでは、残念ながら脂質の改善は認められていません。患者さんの中には現在の食事にプラスして、チョコレートを食べることが健康につながると勘違いしている人がいます。介入研究では、チョコレート分のカロリーを減らして食べるように指導されたりしています。それらのチョコレートに関する研究情報を、患者さんに正しく伝えておくことが大切ですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ患者コレステロールの値は大丈夫ですか? 卵を食べないようにして、食事には気を付けているのですが…。医師卵は控えられているということですか。実は、食事の中では卵というよりは「飽和脂肪酸」がコレステロールを上げないキーワードとなります。患者飽和脂肪酸って、どんなものに含まれているんですか?医師バター、マーガリンやショートニングなどに多く含まれていますので、お菓子や菓子パンには注意が必要ですね。患者あっ、それ大好きです。菓子パンがコレステロールを上げる原因だったんですね。医師あと、気を付けて欲しいのがチョコレート。チョコレートには飽和脂肪酸がたっぷり含まれていますからね。患者えっ、チョコレートは、健康にいいんじゃないんですか?医師確かに、苦いダークチョコにはポリフェノールが入っているので、コレステロールを上げないと期待されていたのですが、肥満の人ではあまり効果がないようです。患者えっ、そうなんですか。健康にいいと思って頑張って食べていたのに。医師それに、チョコを食べたら、その分のカロリーを減らさないといけないのですが、プラスされている人も多いですね。そのため、健康にいいと思って食べていて、体重が増えたという人もいますよ(第三者の話として伝える)。患者たとえば、どのくらいが適量なんですか?医師そうですね。難しいところですが、1枚=5gのチョコ5個で150kcalくらいありますから、ご飯軽く1杯分は減らさないといけないですね。患者それなら、私、チョコの食べすぎですね(気付きの言葉)。医師チョコは、頑張ったご褒美として食べてくださいね。患者わかりました。これからは、チョコは、チョコっとだけにします。■医師へのお勧めの言葉「チョコを食べるだけでは健康になりませんよ。ダークチョコレートを食べた分のカロリーを減らしておかないと、逆に、体重が増えてしまいますよ」1)Gianfredi V, et al. Nutrition.2018;46:103-114.2)Shah SR, et al. J Community Hosp Intern Med Perspect.2017;7:218-221.3)Lee Y, et al. J Am Heart Assoc.2017;12.

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カナグリフロジン、心不全入院を低下も心血管系入院は同等/BMJ

 2型糖尿病の治療において、SGLT2阻害薬カナグリフロジンは、クラスが異なる他の3つの経口薬(DPP-4阻害薬[DPP-4i]、GLP-1受容体作動薬[GLP-1RA]、スルホニル尿素[SU]薬)と比べて、心不全による入院リスクは30~49%低いことが、また急性心筋梗塞/脳卒中による入院リスクは同程度であることが示された。米国・ハーバード大学医学大学院のElisabetta Patorno氏らが、大規模な住民ベースの後ろ向きコホート試験を行い明らかにしたもので、BMJ誌2018年2月6日号で発表した。これまで、カナグリフロジンの心血管安全性を評価した「CANVAS試験」などの結果において、同薬は心不全による入院リスクの低減効果を示しており、今回3種の糖尿病治療薬と直接比較を行うことで、その効果が確認された。米国の民間医療データベースで検証 研究グループは、米国の民間医療データベース「Optum Clinformatics Datamart」を基に、18歳以上の2型糖尿病の患者で、2013年4月~2015年9月にかけて、カナグリフロジンまたはDPP-4i、GLP-1RA、SU薬の服用を開始した患者を対象に、後ろ向きコホート試験を行った。 主要アウトカムは、心不全による入院と複合心血管エンドポイント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中による入院)だった。100以上のベースライン特性を調整した傾向スコアでマッチング法を用い、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算した。SU薬群との比較では、心不全入院リスクおよそ半減 30ヵ月の追跡期間中、カナグリフロジン群の心不全による入院に関するHRは、DPP-4i群との比較で0.70(95%CI:0.54~0.92、比較対象:1万7,667組)、GLP-1RA群との比較で0.61(0.47~0.78、2万539組)、SU薬群との比較で0.51(0.38~0.67、1万7,354組)だった。 複合心血管エンドポイントに関するカナグリフロジン群のHRは、DPP-4i群との比較で0.89(0.68~1.17)、GLP-1RA群との比較で1.03(0.79~1.35)、SU薬群との比較で0.86(0.65~1.13)だった。 なお、ベースライン時のHbA1c値による追加補正を行った感度分析や、心血管疾患または心不全の既往歴の有無によるサブグループ解析の結果も同様なものだった。

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敗血症性ショックに対するグルココルチコイドの投与:長い議論の転機となるか(解説:吉田 敦 氏)-813

 敗血症性ショックにおいてグルココルチコイドの投与が有効であるかについては、長い間議論が続いてきた。グルココルチコイドの種類・量・投与法のみならず、何をもって有効とするかなど、介入と評価法についてもばらつきがあり、一方でこのような重症病態での副腎機能の評価について限界があったことも根底にある。今回大規模なランダム化比較試験が行われ、その結果が報告された。 オーストラリア、英国、ニュージーランド、サウジアラビア、デンマークのICUに敗血症性ショックで入室し、人工呼吸器管理を受けた18歳以上の患者3,800例を、無作為にヒドロコルチゾン(200mg/日)投与群とプラセボ投与群とに割り付けた。この際、SIRSの基準を2項目以上満たすこと、昇圧薬ないし変力作用のある薬剤を4時間以上投与されたことを条件とした。ヒドロコルチゾンは200mgを24時間以上かけて持続静注し、最長で7日間あるいはICU退室ないしは死亡までの投与とした。ランダム化から90日までの死亡をプライマリーアウトカム、さらに28日までの死亡、ショックの再発、ICU入室期間、入院期間、人工呼吸器管理の回数と期間、腎代替療法の回数と期間、新規の菌血症・真菌血症発症、ICUでの輸血をセカンダリーアウトカムとし、原疾患による死亡は除いた。 患者の平均年齢は約62歳、外科手術が行われた後に入室した患者は約31%、感染巣は肺(35%)、腹部(25%)、血液(7%)、皮膚軟部組織(7%)、尿路(7%)の順であり、介入前の基礎パラメーターや各検査値に2群間で差はなかった。なおショック発症からランダム化までは平均約20時間、ランダム化から薬剤投与開始までは0.8時間(中央値)であり、ヒドロコルチゾンの投与期間は5.1日(中央値)であった。 まずプライマリーアウトカムとしての90日死亡率は、ヒドロコルチゾン投与群では27.9%(1,832例中511例)、プラセボ投与群では28.8%(1,826例中526例)であり、有意差はなかった。次いでセカンダリーアウトカムでは、ショックから回復するまでの期間も、ICU退室までの期間も、さらに1回目の人工呼吸器管理の期間もヒドロコルチゾン投与群で有意に短かった(それぞれ3日と4日、p<0.001、10日と12日、p<0.001、6日と7日、p<0.001)。ただし再度人工呼吸器管理が必要な患者もおり、人工呼吸器を要しなかった期間としてみると差はなかった。輸血を要した割合も前者で少なかったが(37.0%と41.7%、p=0.004)、その他、28日死亡率やショックの再発率、退院までの日数、ICU退室後の生存期間、人工呼吸器管理の再導入率、腎代替療法の施行率・期間、菌血症・真菌血症発生率に差はなかった。 これまでの検討では、グルココルチコイドは高用量よりは低用量のほうが成績がよかったものの、二重盲検ランダム化比較試験では一致した結果が得られなかった1,2)。現行のガイドラインでも“十分な輸液と昇圧薬の投与でも血行動態の安定が得られない例”に対し、エビデンスが弱い推奨として記載されている3)。本検討は、上記のランダム化比較試験よりも症例数がかなり増えているのが特徴であり、2群で比較が可能であった項目も多い。したがって、グルココルチコイド投与の目的—改善を目指す指標—をより詳しく評価できたともいえる。一方で21例対6例と少数ではあるが、グルココルチコイド群で副作用が多く、中にはミオパチーなど重症例も存在した。グルココルチコイドとの相関の可能性を含んで、この結果は解釈したほうがよいであろう。本検討は、これまでの議論の転機となり、マネジメントや指針の再考につながるであろうか。これからの動向に注目したい。

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HbA1cと認知機能低下との関連~縦断研究

 HbA1c値および糖尿病の状況と、その後の10年間の認知機能低下について縦断的に調査したところ、これらの間に有意な関連が認められたことを中国科学院のFanfan Zheng氏らが報告した。Diabetologia誌オンライン版2018年1月25日号に掲載。 本研究では、English Longitudinal Study of Ageing(ELSA)のwave 2(2004~05年)からwave 7(2014~15年)のデータを分析した。認知機能をベースライン(wave 2)で評価し、wave 3~7で2年ごとに再評価した。線形混合モデルを使用して縦断的な関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・参加者は、ベースライン時のHbA1c値が15.9~126.3mmol/mol(3.6~13.7%)であった5,189人(女性55.1%、平均年齢65.6±9.4歳)。・平均追跡期間は8.1±2.8年、認知機能評価の平均回数は4.9±1.5回であった。・ベースライン時の年齢、性別、総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド、高感度CRP、BMI、教育、婚姻状況、うつ症状、現在の喫煙状況、飲酒、高血圧、CHD、脳卒中、慢性肺疾患、がんに関する調整後、HbA1cが1mmol/mol増加すると、認知機能全般のzスコア(-0.0009 SD/年、95%CI:-0.0014~-0.0003)、記憶のzスコア(-0.0005 SD/年、95%CI:-0.0009~-0.0001)、実行機能のzスコア(-0.0008 SD/年、95%CI:-0.0013~-0.0004)の低下速度が有意に増加した。・多変量調整された認知機能全般の低下速度は前糖尿病および糖尿病に関連して増加し、正常血糖の参加者と比べ、それぞれ-0.012 SD/年(95%CI:-0.022~-0.002)および-0.031 SD/年(95%CI:-0.046~-0.015)増加した(傾向のp<0.001)。・同様に、記憶、実行機能、見当識のzスコアから、糖尿病による認知機能低下速度の増加が示された。

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