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SGLT2阻害薬ertugliflozinの心血管効果は?/NEJM

 2型糖尿病でアテローム動脈硬化性心血管疾患を有する患者において、標準治療に加えてのSGLT2阻害薬ertugliflozinの投与はプラセボ投与に対して、主要有害心血管イベント(心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合)の発生は非劣性であった。また、副次評価項目の心血管死または心不全による入院の複合アウトカムについて、プラセボに対する優越性は示されなかった。米国・ハーバード大学医学大学院のChristopher P. Cannon氏らが、8,246例超を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検試験で明らかにした。ertugliflozinは、2型糖尿病の血糖コントロールを改善するとして米国その他の国で承認されている。同薬の心血管効果については、明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2020年9月23日号掲載の報告。ertugliflozinの主要有害心血管イベントについて対プラセボの非劣性を検証 研究グループは、2型糖尿病でアテローム動脈硬化性心血管疾患を有する患者を無作為に3群に割り付け、標準的治療に加えて、ertugliflozin 5mg/日、同15mg/日、またはプラセボをそれぞれ投与した。 ertugliflozinの2投与群についてはデータをプールし解析。試験の主要目的は、主要評価項目とした主要有害心血管イベント(心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合)について、ertugliflozin群がプラセボ群に対し非劣性を示すことができるかであった。非劣性マージンは1.3(ertugliflozinのプラセボに対するハザード比[HR]の信頼区間[CI]上限値95.6%)とした。 第1副次評価項目は、心血管死または心不全による入院の複合アウトカムとした。ertugliflozin群の主要有害心血管イベントの非劣性は示されたが 合計8,246例が無作為化を受け、平均追跡期間は3.5年だった。 ertugliflozinまたはプラセボを1回以上投与された8,238例において、主要有害心血管イベントの発生は、ertugliflozin群653/5,493例(11.9%)、プラセボ群327/2,745例(11.9%)だった(HR:0.97、95.6%CI:0.85~1.11、非劣性のp<0.001)。 心血管死または心不全による入院の発生は、ertugliflozin群444/5,499例(8.1%)、プラセボ群250/2,747(9.1%)だった(HR:0.88、95.8%CI:0.75~1.03、優越性のp=0.11)。 また、心血管死に関するHRは0.92(95.8%CI:0.77~1.11)、腎疾患死、腎代替療法、またはベースラインからの血清クレアチニン値の2倍化のいずれかの発生に関するHRは0.81(95.8%CI:0.63~1.04)だった。 肢切断実施は、ertugliflozin 5mg群54例(2.0%)、同15mg群57例(2.1%)、プラセボ群45例(1.6%)だった。

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COVID-19、18~34歳の臨床転帰と重症化因子

 米国や日本では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の若年者における感染が拡大している。しかし、COVID-19は高齢者に影響を及ぼす疾患として説明されることが多く、若年患者の臨床転帰に関する報告は限られる。米国・ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJonathan W. Cunningham氏らは、COVID-19により入院した18~34歳の患者約3,000例の臨床プロファイルと転帰について、JAMA Internal Medicine誌オンライン版2020年9月9日号リサーチレターで報告した。 2020年4月1日から6月30日に、米国の1,030病院を含む病院ベースのPremier Healthcare DatabaseでICD-10に基づきCOVID-19による入院が記録された18~34歳の患者が対象。COVID-19による最初の入院のみが含まれた。対象者のうち、妊婦(1,644例)は除外された。併存症および入院中の転帰については、診断、診療行為、ICD-10の請求コードにより定義された。集中治療の有無は、集中治療室の利用あるいは人工呼吸管理の請求コードにより定義された。 死亡または機械的換気の複合アウトカムに関連する独立因子は、多変量ロジスティック回帰分析を用いて特定した。両側検定p<0.05で有意と設定された。  主な結果は以下の通り。・2020年4月1日~6月30日の間に退院した78万969例のうち、6万3,103例(8.1%)がCOVID-19のICD-10コードを保有しており、そのうち3,222例(5%)が妊娠していない若年患者(18~34歳)で、米国の419病院に入院していた。・平均(SD)年齢は28.3(4.4)歳。1,849例(57.6%)は男性で、1,838例(57.0%)は黒人またはヒスパニック系であった。・1,187例(36.8%)は肥満(BMI≧30)、789例(24.5%)は高度肥満(BMI≧40)、588例(18.2%)は糖尿病、519例(16.1%)は高血圧を有していた。・入院中、684例(21%)が集中治療を、331例(10%)が機械的換気を必要とし、88例(2.7%)が死亡した。・217例(7%)で昇圧薬または強心薬、283例(9%)で中心静脈カテーテル、192人(6%)で動脈カテーテルが使用された。・入院期間中央値は4日(四分位範囲:2~7日)。・生存例のうち、99例(3%)が急性期後、ケア施設に退院した。・高度肥満(調整オッズ比[OR]:2.30、95%信頼区間[CI]:1.77~2.98、vs. 肥満なし;p<0.001)および高血圧(調整OR:2.36、95%CI:1.79~3.12、p<0.001)の患者のほか、男性(調整OR:1.53、95%CI:1.20~1.95、p=0.001)患者は、死亡または機械的換気を要するリスクが高かった。・死亡または機械的換気のオッズは、人種や民族によって大きく変化しなかった。・死亡または機械的換気を必要とした患者のうち140例(41%)に高度肥満があった。・糖尿病患者は、単変量解析で死亡または機械的換気を要するリスクが高かった(OR:1.82、95%CI:1.41~2.36、p<0.001)が、調整後に統計学的有意差に達しなかった(調整OR:1.31、95%CI:0.99~1.73、p=0.06)。・複数の因子(高度肥満、高血圧、糖尿病)のある患者は、これらのない8,862例のCOVID-19中高年(35~64歳)患者(非妊娠)と同等の死亡または機械的換気を要するリスクを有していた。 著者らは、2.7%という院内死亡率は、COVID-19の高齢患者と比較すれば低いが、急性心筋梗塞の若年者の約2倍であるとし、この年齢層のCOVID-19感染者の増加率を考慮すれば、若年者における感染防止対策の重要性を強調する結果だとしている。

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COVID-19重症化予測する5つの血中マーカー同定/国際医療研究センター

 国立国際医療研究センターは9月24日、COVID-19患者から得られた経時的な採血検体により予後予測が可能な分子マーカーの探索を進めた結果、重症・重篤化するケースに共通する5つの因子を特定したと発表した。COVID-19を巡っては、患者の約8割が軽症のまま回復し、残りの約2割が重症・重篤化することがわかっているが、現段階では予後を予測する有効な手段がないため、COVID-19患者全員を隔離もしくは入院させて経過を観察する必要がある。本結果により、重症・重篤化予備軍に注力した経過観察が可能になり、医療資源の有効活用につながることが期待される。研究をまとめた論文は、2020年9月14日付(日本時間)でGene誌オンライン版に掲載された。 本研究では、COVID-19患者28例の採血検体を使い、病態の経過に沿った液性因子の経時的変化について網羅的解析を実施した。その結果、軽症回復者と重症化患者を分けることが可能な因子として、CCL17、IFN-λ3、CXCL9、IP-10、IL-6を同定した。CCL17は、将来の重症者では、感染初期の軽症時から基準値よりも低く、その後重症化するまで低い値が続いた。一方で、軽症者では健常者とほぼ同じ値だった。残りの4因子は、感染初期では軽症者と将来の重症者に違いはないものの、重症化した患者では、数日前から急激に値が上昇することがわかった。 併せて、これら5つの因子がCOVID-19重症化に特異的かどうかについて、ほかの疾患群(C型慢性肝炎、児童精神疾患、2型糖尿病、慢性腎不全、慢性心不全、間質性肺炎、関節リウマチ)から得られた血液で確認した。その結果、CCL17が低い値を取るのは、COVID-19重症者のみだった。IFN-λ3は、C型慢性肝炎で一部高い値を示したが、COVID-19重症者で統計学的に有意に高い値を示した。CXCL9とIP-10についても、COVID-19重症者で特徴的に高い値を示した。IL-6は関節リウマチで高い値を示すことがあったが、COVID-19重症者で統計学的に有意に高い値を示した。これらの結果からも、5つの因子がCOVID-19重症化患者を早期発見および囲い込みに有用である可能性が示された。 同センターでは今後、国内において多施設共同による前向き試験を実施し、実臨床での有効性についてさらに検証を進めていく予定。

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第20回 高齢者の肥満、食事・運動療法の方法と薬剤選択は?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第20回 高齢者の肥満、食事・運動療法の方法と薬剤選択は?Q1 肥満症を合併した高齢者糖尿病ではどのような食事・運動療法を行うべきですか?食事・運動療法を行うにはまず、膝関節疾患や心血管疾患の有無をチェックし、認知機能、身体機能(ADL、サルコペニア、フレイル・転倒)、心理状態、栄養、薬剤、社会・経済状況、骨密度などを総合的に評価します。80歳以上の肥満症では治療によって血管障害や死亡のリスクを減らせるというエビデンスに乏しくなります。しかしながら、減量によって疼痛が軽減され、QOLが改善されるということも報告されていますので、膝関節痛などがある場合は減量を勧めてもいいと思います。肥満症を合併した糖尿病患者ではレジスタンス運動を含めた運動療法と食事療法を併用することが大切です。肥満症の高齢者に食事療法と運動療法の両者を併用し、減量を行うと、食事療法単独または運動療法単独と比べて、身体機能とQOLが改善します。有酸素運動とレジスタンス運動の両者を併用した方がそれぞれ単独の運動よりも歩行速度などの身体能力の改善効果が認められます。レジスタンス運動は肥満症の人は一人で行うことが困難な場合が多いので、介護保険のデイケア、市町村の運動教室などを利用し、監視下で運動することがいいと思います。また、体重による負荷を軽減する運動としてはプール歩行やエアロバイクなどを勧める場合もあります。また、高齢者の肥満では運動療法を行わず、食事療法のみで減量すると骨格筋量や骨密度が減少するリスクがあります。一方、適切なエネルギー量を設定し、運動療法を併用することにより筋肉量、身体機能、および骨密度を低下させることなく減量が可能であるとされています。Look AHEAD研究では高齢糖尿病患者を対象に運動を中心とした生活習慣改善と体重減少を行った介入群では、対照群と比べて、歩行速度が速く、SPPBスコアで評価した身体能力が有意に高いという結果が得られています。介入群は歩行速度低下のリスクが16%減少しました1)。とくに、65歳以上の高齢糖尿病患者でSPPBスコアの改善効果がみられました。食事のエネルギー摂取量に関しては、肥満があるとエネルギー制限を行うことになりますが、過度の制限によるサルコペニア・フレイル・低栄養の悪化に注意する必要があります。肥満高齢者にレジスタンス運動にエネルギー制限を併用した群では運動のみの群に比し体重減少とともに除脂肪量の減少がみられたが、歩行能力や要介護状態は改善し、筋肉内脂肪の減少を認めたという報告があります2)。この結果は減量によって筋肉内の脂肪をとることが筋肉の質を改善することにつながることを示唆しています。「糖尿病診療ガイドライン2019」においては、高齢者では[身長(m)]2×22~25で得られた目標体重に身体活動の係数をかけて総エネルギー量を計算します。J-EDIT研究では目標体重当りのエネルギー量が約25kcal/kg体重以下と35kcal/kg体重以上の群で死亡リスクの上昇がみられ、過度のエネルギー摂取もよくないことが示唆されています3)。高齢者でも肥満があり、減量が必要な場合には目標体重は[身長(m)]2に低めの係数(22~23)をかけて目標体重を求め、目標体重当たり25~30 kcalの範囲でエネルギー量を設定することが望ましいと考えています。一般のサルコペニア・フレイルに対してはタンパク質の十分な摂取(1.0~1.5㎏/㎏体重)が推奨されています。肥満やサルコペニア肥満がある場合のタンパク質摂取に関しては、まだ十分なエビデンスがありませんが、タンパク質は十分に摂取した方がいいという報告があります。膝OAがある高齢糖尿病女性の縦断研究でも、タンパク質の摂取が1.0g/㎏体重以上を摂取した群の方が膝進展力低下や身体機能低下が少ないという結果が得られました(図1)4)。サルコペニア肥満がある高齢女性を低カロリーかつ正常タンパク質(0.8g/㎏体重)摂取群と低カロリーかつ高タンパク質(1.2g/㎏体重)摂取群に割り付けて3ヵ月間治療した結果、骨格筋量の指標は正常タンパク質群では減少したのに対し、高タンパク質摂取群では有意に増加していました5)。したがって、肥満症のある高齢糖尿病患者では、少なくとも1.0g/㎏のタンパク質をとることが望ましいと思われます。画像を拡大するQ2 肥満症を合併した高齢糖尿病、薬物療法は何に注意が必要ですか?個々の病態に合わせて薬物選択を行いますが、肥満があるので、インスリン抵抗性を改善する薬剤を主体に治療します。体重減少を目的にする場合にはメトホルミン(高用量)、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬が使用されます。メトホルミンはeGFR 30ml/min/1.73m2以上を確認して使用し、eGFR 60ml/min/1.73m2以上を確認できれば少なくとも1,500㎎/日以上の高用量で使用します。SGLT2阻害薬は、心血管疾患合併例で、血糖コントロール目標設定のためのカテゴリーI(認知機能正常でADL自立)で積極的に使用し、カテゴリーIIでは運動や飲水ができる場合に使用するのがいいと考えています。GLP-1受容体作動薬は消化器症状に注意して使用します。いずれの薬剤を使用する場合もレジスタンス運動を含む運動を併用し、サルコペニア肥満やフレイルを予防することが大切です。1)Houston DK, et al . J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018;73:1552-1559.2)Nicklas BJ, et al. Am J Clin Nutr. 2015;101:991-999.3)Omura T, et al. Geriatr Gerontol Int. 2020;20:59-65.4)Rahi B, et al. Eur J Nutr. 2016; 55:1729-1739. 5)Muscariello E, et al. Clin Interv Aging. 2016;11:133-140.

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第19回 高齢者の肥満、特有の問題と予後への影響は【高齢者糖尿病診療のコツ】

第19回 高齢者の肥満、特有の問題と予後への影響はQ1 高齢者の肥満、若年者とはちがう特徴とは?最近、高齢糖尿病患者でも肥満症が増えています。我が国の65歳以上の高齢糖尿病患者でBMI 25㎏/m2以上の頻度は2000年から2012年で28.4%から33.0%に増加したという報告もあります1)。こうした高齢者の肥満症の増加は1)加齢に伴う身体活動量の低下2)基礎代謝量の低下3)高齢者の食習慣の欧米化などが関係しているのでないかと思われます。高齢者の肥満症にはいくつかの特徴があります。加齢とともに内臓脂肪は増加し、除脂肪量(骨格筋量)が低下するという体組成の変化が起こり、BMI高値を伴わない腹部肥満、いわゆる隠れ肥満やメタボリックシンドロームが増加します。また、高齢者のBMIは体脂肪量を正確に反映しないことがあります。身長が低下することで、BMIは見かけ上増加することもあります。したがって、高齢者の肥満症の評価にはBMIだけでなく、ウエスト周囲長も測ることが大切です。ウエスト周囲長やウエスト・ヒップ比の高値の方がBMIよりも死亡のリスクの指標となることも知られています。また、高齢期の肥満症では死亡や心血管疾患のリスクが逆に減少するというobesity paradoxがみられる場合があります。これは、BMI低値の方が悪性疾患、サルコペニア、慢性感染症などの併存疾患によるリスクが増加することで、BMI高値におけるリスクが相対的に小さくなることが原因として考えられます。加齢とともに、肥満とサルコペニアが合併したサルコペニア肥満が増えます2)。サルコペニア肥満は糖尿病やメタボリックシンドロームの発症リスクも高いので、高齢者糖尿病でも注意すべきです。サルコペニア肥満では筋肉内の脂肪蓄積によるインスリン抵抗性、炎症、ビタミンD低下などが骨格筋量や筋力の減少をもたらし、身体機能低下をきたすと考えられ考えられています。サルコペニア肥満は、単なる肥満症と比べ、フレイル、ADL低下、転倒、骨粗鬆症、認知機能低下、および死亡をきたしやすいことが特徴です3)。サルコペニア肥満の定義は定まっていませんが、肥満の方は体脂肪%、ウエスト周囲長などで定義しています。われわれの調査では高齢糖尿病患者におけるDXA法による四肢骨格筋量と体脂肪量で定義したサルコペニア肥満の頻度は16.7%という結果でした2)。Q2 高齢者の肥満は身体機能や認知機能、死亡にどのような影響を及ぼしますか?高齢者のBMI 30kg/m2以上の肥満や腹部肥満は、ADL低下、歩行困難、フレイル、易転倒性などの身体機能低下と関連しています。Study of Osteoporosis Fracturesにおける高齢糖尿病患者でも家事や2~3ブロックの歩行が約2~2.5倍障害されると報告されています4)。また、高齢糖尿病患者がフレイルをきたしやすいことも腹部肥満によって一部説明できると報告されています5)。BMI 25kg/m2以上の肥満がある糖尿病患者では複数回の転倒を約3.5倍起こしやすくなります6)。とくにインスリン治療と過体重が重なると、何度も転倒しやすいとされています。中年期の肥満は認知症発症リスクになりますが、高齢期の肥満は認知症発症リスクに抑制的に働くことが知られています。しかしながら、高齢者の肥満患者の体重変化と認知症発症とはJカーブの関連が見られ、体重減少と体重増加の両者がリスクとなっています(図1)。画像を拡大する高齢糖尿病患者でも、BMI低値、体重減少(10%以上)と体重増加(10%以上)が認知症発症の危険因子であると報告されています7)。高齢糖尿病患者ではそれ自体が認知症発症のリスクですが、認知症発症のリスクとなる4つの肥満の中で、体重減少を伴った高齢者の肥満、メタボリックシンドローム(腹部肥満)、サルコペニア肥満に注意する必要があります(図2)。画像を拡大する一方、12の論文のメタ解析により、生活習慣の改善による意図的な体重減少は記憶力と注意力・遂行機能を改善することが明らかになっています8)。 Look Ahead研究では高齢者を含む2型糖尿病患者でもエネルギー制限と運動療法による介入によって、過体重の患者で認知機能の改善が見られています9)。糖尿病初期の肥満症患者を対象にリラグルチド1.8㎎/日を4ヵ月間投与した介入群と対照群で認知機能の変化を検討したRCTでは、両群とも7%の体重減少が得られたが、リラグルチド投与群では短期記憶と記憶複合スコアの有意な増加を認めたと報告されています10)。減量自体の効果よりも、GLP-1の脳のブドウ糖代謝の改善、可溶性AβによるIRS-1のセリンのリン酸化阻害によるインスリン情報伝達障害の改善などによる認知機能の改善効果の可能性もあります。いずれにせよ、高齢者の肥満症の患者では体重減少が意図的か否かに注意する必要があります。高齢糖尿病患者における肥満症と心血管疾患の発症や死亡に関しては、一致した結果が得られていません。肥満症合併の高齢糖尿病患者を対象に生活習慣改善と体重減少の介入を行ったLook AHAED研究では心血管疾患発症の減少は見られなかったと報告されています11)。我が国のJDCS研究とJ-EDIT研究の糖尿病患者のプール解析では、BMI 18.5未満の群で死亡リスクが上昇し、BMI 25㎏/m2以上の群では死亡リスクは増加していませんでした12)。とくに75歳以上ではBMI18.5未満の群の死亡リスクが8.1倍と75歳未満と比べてさらに高くなり、最も死亡リスクが低いBMIは25前後となりました。すなわち、低栄養による死亡リスクの方が増加し、肥満による死亡リスクが相対的に低下したと考えられます。1)Miyazawa I, et al. Endocr J. 2018;65:527-536.2)荒木 厚、周赫英、森聖二郎:日本老年医学会雑誌.2012;49:210-213.3)Batsis JA, et al. J Am Geriatr Soc. 2013;61:974-980.4)Gregg EW, et al. Diabetes Care. 2002; 25: 61-67.5)Volpato S, et al. J Gerontol A BiolSci Med Sci.2005; 60: 1539-1545.6)García-Esquinas E, et al. J Am Med Dir Assoc. 2015;16:748-754.7)Nam GE, et al. Diabetes Care. 2019;42:1217-1224.8)Siervo M, et al. Obes Rev. 2011;12:968-983.9)Espeland MA, et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2014;69:1101-1108.10)Vadini F, et al. Int J Obes (Lond). 2020 Jun;44:1254-1263.11)Wing RR, et al. N Engl J Med. 2013;369:145-154.12)Tanaka S, et al. J Clin Endocrinol Metab. 99: E2692-2696, 2014.

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禁煙と睡眠障害との関係

 喫煙と睡眠障害は密接に関連しているといわれている。スウェーデン・ウプサラ大学のShadi Amid Hagg氏らは、睡眠障害が禁煙の予測因子であるか、喫煙の継続が睡眠障害の発症と関連しているかについて、検討を行った。Respiratory Medicine誌2020年8~9月号の報告。睡眠障害の治療には禁煙プログラムの導入を検討すべき 北欧の男女を対象に、1999~2001年にランダムにアンケートを実施し(RHINE II)、その後2010~12年にフォローアップのアンケートを実施した(RHINE III)。ベースライン時に喫煙者であり、フォローアップ時に喫煙に関するデータを提供した2,568人を分析した。不眠症は、3回/週以上の入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒の発現と定義した。オッズ比(OR)の算出には、多重ロジスティック回帰分析を用いた。 睡眠障害が禁煙の予測因子であるか、喫煙の継続が睡眠障害の発症と関連しているかについて検討した主な結果は以下のとおり。・年齢、BMI、pack-years、高血圧症、糖尿病、慢性気管支炎、鼻炎、喘息、性別、BMI差で調整した後、長期禁煙を達成する可能性が低かった因子は以下のとおりであった。 ●入眠障害(調整OR:0.6、95%CI:0.4~0.8) ●中途覚醒(調整OR:0.7、95%CI:0.5~0.9) ●早朝覚醒(調整OR:0.6、95%CI:0.4~0.8) ●不眠症(調整OR:0.6、95%CI:0.5~0.8) ●日中の過度な眠気(調整OR:0.7、95%CI:0.5~0.8)・いびきと禁煙には、有意な関連が認められなかった。・ベースライン時に睡眠障害でない人では、喫煙を継続すると、フォローアップ中に禁煙した人と比較し、入眠困難リスクの増加が認められた(調整OR:1.7、95%CI:1.2~2.3)。 著者らは「不眠症状や日中の過度な眠気は、禁煙にマイナスに働くと考えられる。また、喫煙は、入眠障害のリスク因子であることが示唆された。睡眠障害の治療には、禁煙プログラムの導入を検討すべきである」としている。

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論文執筆した若手医師には超特急対応で応援だ!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第28回

第28回 論文執筆した若手医師には超特急対応で応援だ!初めて何とか英語で書いた論文原稿を、指導してくださる先輩医師に手渡した時の緊張感は今も忘れられません。論文といっても症例報告です。興味深い経過をとった担当例があり、生意気にも症例報告したいと志願したのです。先輩医師もサポートを快諾してくれました。1日に1行書くことを自らへの課題として執筆しました。英語を書くのは大変な苦労を伴います。「なるべく早く目を通しておくから」そう言って受け取ってくれました。その10分後に廊下で出会ったときには、もう修正を完了した原稿が返ってくるのではないかとドキドキしている自分がいました。その翌日の朝です。「少し手直ししておいたからね」「ありがとうございます」見事に赤ペンが入り、ことごとく修正されています。自分の書いた英語らしきものは、英語に変身していました。論旨も明確になり、何より半分近くに短くなっています。疑問点やコメントも記されています。何と、24時間もかからずに返ってきたのです。そんな短時間で完了する修正作業でないことは明白です。昨夜は遅くまで、もしかすると徹夜で読みこんで修正してくださったのかもしれません。ありがたいことです。自分もこのスピード感に応える以外にありません。翌朝には、再修正版の原稿を手渡しました。何度かのやりとりの後に、完成版ができあがり投稿です。メールが普及する前の時代ですから、国際郵便での「submission:投稿」です。ちゃんと届くいてれよ! 待つこと1ヵ月半、「revise:修正」の返事でした。この返事が届くまでの時間は、無限にも感じられました。「reject:却下」でないだけでも感謝すべき祝報なのですが、当時の自分は生意気にも、修正すべきという編集部からの返答に憤っていました。若さゆえと恥ずかしく思い起こされます。ここからの修正作業にも先輩の力添えをいただき、見事に「accept:採択」され、「publication:出版」されました。紙媒体として届いた英文の別刷を見た時の感激は言いようのないものでした。「Author:著者」としてローマ字で書かれた自分の名前が輝いているようでした。人生の紆余曲折を経て、不思議なことに若手医師から論文原稿を手渡される立場になりました。手渡しではなくメールですが、その若手の心情は痛いほど伝わってきます。自分が受けた先輩からの御恩を、次世代の医師に返さなければなりません。最優先事項として手直し作業に着手します。24時間以内は無理でも、数日内には修正したものを返却したいところです。とくに初めての英語論文の執筆者には、超特急のレスポンスが肝要です。ここで待たせるようでは、育つべき人材も芽が出ません。待たせていけません。人間は期待して待つときには時間を長く感じます。英文の医学雑誌に投稿しようとすると、要項には「impact factor」だけでなく、必ず「submission to first decision」つまり、投稿から最初の掲載可否の判断までの平均の日数が記載されています。投稿してから返事が来るまでの時間は長く感じるのです。待つことが苦手なのは洋の東西を問わないようです。世界中の医学雑誌の中でも頂点に位置するNEJM誌は、「reject:却下」の場合には1週間以内で返答があります。たとえダメでも短時間で決着するのならば挑戦してみようと、良い投稿が集中する仕組みです。膨大な投稿量の論文を読みこむ編集部の医学的な判断力は賞賛に値します。誰でも待たされることにはイライラします。病院を受診する際にイライラしながら待っている人は大勢います。部下からの報告を待ってイライラしている人もいます。論文、それも英語論文を執筆しようという者には、イライラ感を持つことが無いように応援してあげたいものです。イライラせずに待つことができる素晴らしい生き物が猫様です。いつも慌てず泰然自若としています。野生時代の猫は獲物を確実に捕まえられるように、機会をうかがってじっと待っていたそうです。飼い猫は、飼い主を待っていれば期待に応えてくれることを知っています。遊んでほしい、甘えたい、キャットフードが欲しい、いろいろの期待で一杯です。上目遣いにいじらしい姿で待つ猫には、つい優しくしてしまいます。では、猫に邪魔される前に、若手の英語論文の修正作業に取り掛かることにします。

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HFrEFへのエンパグリフロジン、心血管・腎への効果は/NEJM

 2型糖尿病の有無を問わず慢性心不全の推奨治療を受けている患者において、エンパグリフロジンの投与はプラセボと比較して、心血管死または心不全増悪による入院のリスクを低下することが、米国・ベイラー大学医療センターのMilton Packer氏らによる3,730例を対象とした二重盲検無作為化試験の結果、示された。SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の有無を問わず、心不全患者の入院リスクを抑制することが示されている。同薬について、駆出率が著しく低下した例を含む幅広い心不全患者への効果に関するエビデンスが希求されていたことから、本検討が行われた。NEJM誌オンライン版2020年8月29日号掲載の報告。左室駆出率が40%以下に低下した3,730例を対象にプラセボ対照無作為化試験 試験は、慢性心不全(NYHA機能分類II、III、IV)で左室駆出率が40%以下に低下した18歳以上の成人患者3,730例を対象に行われた。 被験者を無作為に2群に割り付け、推奨治療に加えてエンパグリフロジン(10mg 1日1回、1,863例)またはプラセボ(1,867例)を投与し追跡した。 主要アウトカムは、心血管死・心不全増悪による入院の複合であった。DM有無を問わず、心血管死・心不全増悪による入院のリスクを有意に低下 中央値16ヵ月の追跡期間中に、主要アウトカムのイベントは、エンパグリフロジン群では361/1,863例(19.4%)に、プラセボ群では462/1,867例(24.7%)に発生した(心血管死・心不全増悪による入院のハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.65~0.86、p<0.001)。主要アウトカムへのエンパグリフロジンの効果は、2型糖尿病の有無を問わず認められた。 また、階層的検定手順で規定した副次アウトカムである、心不全による入院の総発生件数について、プラセボ群と比べてエンパグリフロジン群で有意に低下したことが(HR:0.70、95%CI:0.58~0.85、p<0.001)、同様に推定糸球体濾過率(eGFR)の年率低下についても有意に遅延させたことが(-0.55 vs.-2.28mL/分/体表面積1.73m2/年、p<0.001)示された。 そのほか、事前に規定されていた解析において、エンパグリフロジン治療を受けた患者は、重篤な腎アウトカムのリスクが低いことも示された(HR:0.50、95%CI:0.32~0.77)。なお、合併症のない性器感染症発生の報告頻度が、エンパグリフロジン群で高かった。

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J-CLEAR特別座談会「COVID-19と循環器疾患」

J-CLEAR特別座談会「COVID-19と循環器疾患」出演東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌氏東海大学医学部内科学系(循環器内科)教授 後藤 信哉氏久留米大学医療センター循環器内科教授 甲斐 久史氏佐賀大学医学部循環器内科教授 野出 孝一 氏循環器の専門医4名がWeb上に集結し、COVID-19に関わる最新の国内外のデータや臨床的知見について解説・討論いただいた。現在までに報告されている知見に基づいて、4名の専門医がCOVID-19と高血圧、血栓症、糖尿病、心不全について科学的に徹底討論。

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第25回 脳の“女性”が雄の性欲の原動力~バイアグラ発売時の熱狂を雄弁に語る映画

男性ホルモン・テストステロンを女性ホルモン・エストロゲン(エストラジオール)に変える酵素・アロマターゼを発現している脳領域が雄マウスの性欲を支える原動力の一翼を担うと分かりました1,2)。脳に限ってアロマターゼを発現しない雄マウス(脳アロマターゼ欠損雄マウス)を調べたノースウエスタン大学の今回の成果はテストステロンが性欲を増進させる仕組みを初めて明らかにしました。雄マウスは雌マウスと一緒にいると正常であれば雌マウスを追いかけて交尾を試みます。しかし脳アロマターゼ欠損雄マウスは性活動に熱心ではなく、血中のテストステロン濃度が充分にもかかわらず正常マウスの半分しか性活動に取り組みませんでした。交尾の頻度は低下し、著者曰く性に“無関心”になっていました。脳アロマターゼ欠損雄マウスを去勢してテストステロンを投与しても性行動の完全な回復は認められませんでした。一方テストステロンとエストラジオールの両方を投与すると性活動が完全に回復し、脳のアロマターゼがテストステロンを発端とする雄の完全な性活動に必要なことが裏付けられました。今回の結果によると病的な性欲衝動を抑えるのに既存のアロマターゼ阻害剤が有効かもしれません。しかし骨粗鬆症などの副作用の心配があります。脳のアロマターゼ遺伝子プロモーター領域のみ抑制する薬が将来的に開発できれば既存のアロマターゼ阻害剤につきものの副作用を引き起こすことなく目当ての効果を引き出すことができそうです。また、逆にアロマターゼ活性を上げる治療は性欲減退に有効かもしれません。性欲減退はよくあることであり、うつ病を治療する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの広く使われている薬剤で生じることもあります。そのような性欲減退に対してアロマターゼ活性を底上げする性欲増進治療が可能かもしれないと今回の研究を率いたSerdar Bulun氏は言っています。男性の性機能改善薬の先駆けバイアグラ発売時の熱狂ぶりがわかる映画ところで男性の性活動を助ける薬といえばおよそ20年前の1998年に米国FDAに承認されたPfizer(ファイザー)のバイアグラ(Viagra)3)が先駆けです。実話に基づく2011年の映画「ラブ&ドラッグ」ではバイアグラの米国での発売時の熱狂ぶりを垣間見ることができます4)。物語はバイアグラのセールスマンと若くしてパーキンソン病を患う女性を中心に進み、アン・ハサウェイが演じる女性・マギーはパーキンソン病患者やその家族の困難や希望を映し出します。性的な描写があるR15+指定(15歳以上鑑賞可)の映画で一緒に見る相手を選びますし好みが分かれると思いますが、美男美女2人の恋愛成就までの道のりを通じてバイアグラ発売の頃のアメリカの医療の実際を伺い知ることができる作品となっています。参考1)Site of male sexual desire uncovered in brain / Eurekalert2)Brooks DC,et al. Endocrinology. 2020 Oct 01;161.3)VIAGRA PRESCRIBING INFORMATION4)「ラブ&ドラック」公式ホームページ

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~プライマリ・ケアの疑問~ Dr.前野のスペシャリストにQ!【糖尿病・内分泌疾患編】

第1回 【糖尿病】初療時のコツ第2回 【糖尿病】生活指導から薬物療法に切り替えるタイミングは?第3回 【糖尿病糖尿病患者の血圧・脂質の管理目標と治療のゴール第4回 【糖尿病】内科で使うべき糖尿病薬のファーストチョイス第5回 【糖尿病】新規糖尿病薬の使い方第6回 【糖尿病】高齢者の治療目標第7回 【糖尿病】慢性合併症の管理第8回 【糖尿病】外来でのインスリン導入第9回 【糖尿病】一歩進んだ外来食事指導第10回 【内分泌疾患】内分泌疾患を見つけるコツ第11回 【内分泌疾患】甲状腺機能亢進症・低下症第12回 【内分泌疾患】内分泌性高血圧第13回 【内分泌疾患】内科医も知っておくべき内分泌緊急症第14回 【内分泌疾患】見落としやすい内分泌疾患 糖尿病、内分泌疾患に関する内科臨床医の疑問をスペシャリストとの対話で解決します!糖尿病については、心血管リスクを考慮した薬剤選択、非専門医が使うべきファーストチョイスなど10テーマをピックアップ。内分泌疾患については、甲状腺機能の異常などの頻繁に見る疾患だけでなく、コモンな症状に隠れている内分泌疾患をジェネラリストが見つけ治療するためのTIPSを解説します。ここでしか聞けない簡潔明解な対談で、スペシャリストの思考回路とテクニックを盗んでください!第1回 【糖尿病】初療時のコツ初回のテーマは、糖尿病の初療時に必ず確認すべき項目。初療のキモは2型糖尿病以外の疾患の除外、そして治療方針を決定するためのアセスメントです。HbA1cだけでなく、いくつかの項目を確認することでその後の治療がグッと効果的なものになります。ポイントを短時間で押さえていきましょう。第2回 【糖尿病】生活指導から薬物療法に切り替えるタイミングは?食事や運動の指導では血糖コントロールがつかず、薬物療法に移行するのは医者の敗北というのは過去の話。薬剤が進歩した現在は、早めに薬物療法を開始するほうがよいケースも多いのです。HbA1cと治療期間の目安を提示し、薬物療法に切り替えるタイミングを言い切ります。第3回 【糖尿病糖尿病患者の血圧・脂質の管理目標と治療のゴール今回は、血圧と脂質の目標値をズバリ言い切ります。血圧、脂質をはじめとした5項目をしっかりとコントロールすれば、糖尿病であっても健常人とさほど変わらない生命予後が期待できることがわかっています。2つの目標値を確実に押えて、診療をブラッシュアップしてください。第4回 【糖尿病】内科で使うべき糖尿病薬のファーストチョイス糖尿病治療薬は数多く、ガイドラインには”患者背景に合わせて選択する”と記述されていますが、実際に何を選べばいいか困惑しませんか? 今回は、プライマリケアで必要十分なファーストチョイスの1剤、セカンドチョイスの2剤をスペシャリストが伝授します。第5回 【糖尿病】新規糖尿病薬の使い方SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は、心血管疾患等の合併がある糖尿病患者において、重要な位置付けの薬剤になっています。それぞれの薬剤の使用が推奨される患者像や、使用に際する注意点をコンパクトに解説。この2つの薬剤を押さえて糖尿病治療の常識をアップデートしてください。第6回 【糖尿病】高齢者の治療目標高齢者の治療では、低血糖を防ぐことが何より重要。患者の予後とQOLを考慮した目標値を、ガイドラインから、そしてスペシャリストが使う超シンプルな方法の2点から伝授します。SU薬などの低血糖を生じやすい薬剤を使わざるを得ない場合の注意点や、認知症がある場合の治療のポイント、在宅で有用な薬剤など、高齢者の糖尿病治療の悩みを一気に解決します。第7回 【糖尿病】慢性合併症の管理糖尿病の慢性合併症は、細小血管障害と、大血管障害に分けると、進展予防のためにコントロールすべき項目がわかりやすくなります。必要な検査の間隔と測定項目をパパっと解説します。とくに糖尿病性腎症の病期ごとの検査間隔は必ず押さえたいポイント。プライマリケアでできるタンパク制限やサルコペニア傾向の高齢者に対する指導も必見です。第8回 【糖尿病】外来でのインスリン導入いま、インスリンは早期に開始し、やめることもできる治療選択肢の1つです。ですが、これまでのイメージから、医師も患者も抵抗を感じることがあるかもしれません。今回は、外来で最も使いやすいBOTの取り入れ方、インスリン適応の判断と投与量、そして患者がインスリン治療に抵抗を示す場合の説明、専門医に紹介すべきタイミングといった、プライマリケアで導入する際に必要な知識をコンパクトに解説します。第9回 【糖尿病】一歩進んだ外来食事指導外来での食事指導では、食品交換表を使った難しい指導が上手くいかないことは先生方も実感するところではないでしょうか。今回は短い時間でできる、一歩踏み込んだ食事指導のトピックを紹介します。「3つの”あ”に注意」、「20ダイエットの勧め」、「会席料理に倣った食べる順番」など、簡単で続けられる見込みのある指導方法を身に付けましょう。第10回 【内分泌疾患】内分泌疾患を見つけるコツ40歳以上の約20%には甲状腺疾患があると知っていますか?内分泌疾患は実はコモンディジーズ。とはいえ、すべての患者で内分泌疾患を疑うのは効率的ではありません。今回は発熱や倦怠感といったありふれた症候から内分泌疾患を鑑別に挙げるためのポイントと、必要な検査項目を解説します。費用の観点からスクリーニング・精査と段階を分けて優先すべき検査項目を整理した情報は必見です。第11回 【内分泌疾患】甲状腺機能亢進症・低下症甲状腺機能亢進症といえばまずバセドウ病が想起されますが、診断には亜急性や無痛性の甲状腺炎との鑑別が必要。内科でパッと実施できる信頼性の高い検査をズバリ伝授します。専門医も行っている方法かつプライマリケアでできる、無顆粒球症のフォローアップは必見です。第12回 【内分泌疾患】内分泌性高血圧初診で高血圧患者を診るときは全例でPAC/PRAを測定してください!これは高血圧患者の5~10%といわれる原発性アルドステロン症を発見するための鍵になる検査。診断の目安となる値、そして外来で測定する際に頭を悩ませる体位についても専門医がクリアカットに解答します。そのほかに知っておくべきクッシング症候群と褐色細胞腫についてもコンパクトに解説します。第13回 【内分泌疾患】内科医も知っておくべき内分泌緊急症今回は生命に関わる内分泌緊急症4つ-甲状腺クリーゼ、副腎不全、高カルシウム血症クリーゼ、粘液水腫性昏睡を取り上げます。それぞれの疾患を疑うべき患者の特徴・対応・フォローをコンパクトに10分で解説。中でも、臨床的に副腎不全を疑うポイントは該当する患者も多いので必ず押さえたいところ。甲状腺クリーゼの初期対応も必ずチェックしてください!第14回 【内分泌疾患】見落としやすい内分泌疾患繰り返す尿管結石やピロリ菌陰性の潰瘍は、内分泌疾患を疑う所見だと知っていましたか? 見落としやすい内分泌疾患TOP5、高カルシウム血症・低カルシウム血症・中枢性尿崩症・SIADH・先端巨大症を確実に発見するために、それぞれを疑うサインと検査項目を解説します。

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「ヘルベッサー」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第16回

第16回 「ヘルベッサー」の名称の由来は?販売名ヘルベッサー®錠30/60※注射剤、カプセル剤は錠剤のインタビューフォームと異なるため、今回は情報を割愛しています。ご了承ください一般名(和名[命名法])ジルチアゼム塩酸塩(JAN) 効能又は効果狭心症、異型狭心症本態性高血圧症(軽症~中等症)用法及び用量狭心症、異型狭心症通常、成人にはジルチアゼム塩酸塩として1回30mgを1日3回経口投与する。効果不十分な場合には、1回60mgを1日3回まで増量することができる。本態性高血圧症(軽症~中等症)通常、成人にはジルチアゼム塩酸塩として1回30~60mgを1日3回経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない(現段階では定められていない)禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)【禁忌 (次の患者には投与しないこと)】(1)重篤なうっ血性心不全の患者〔心不全症状を悪化させるおそれがある。〕(2)2度以上の房室ブロック、洞不全症候群(持続性の洞性徐脈[50拍/分未満]、洞停止、 洞房ブロック等)のある患者〔本剤の心刺激生成抑制作用、心伝導抑制作用が過度にあらわれるおそれがある。〕 (3)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者(4)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人※本内容は2020年9月9日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2016年2月改訂(第11版)医薬品インタビューフォーム「ヘルベッサー®錠30/60 」2)田辺三菱製薬:製品情報

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第24回 COVID-19下水検査の本領発揮?/紫色光の制限で代謝活性が上がる可能性

COVID-19下水検査の本領発揮?糞便と共に排出された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRNAを下水から検出することを米国・アリゾナ大学は感染の早期発見の取り組みの一つとしており、先月8月末の同大学の発表によるとその試みは確かに有効なようです1,2)。先月、学生が入居してから数日後の同大学の寮の下水にSARS-CoV-2ウイルスRNAが含まれており、その寮の世話人と入居学生311人がすぐに検査されました。入居学生は入居前の検査で全員が感染していないことを確認済みでしたが、再検査の結果2人がウイルスを有しており、すぐに隔離されました。下水検査がなければ感染が検出される前にだいぶ広まっていたに違いなく、「もしその2人が発症するまで寮で過ごしていたらどれほどの人に感染が広まっていたか」と同大学再開の取り組みを指揮しているRichard Carmona医師は言っています。脳も光を感じる?~紫色光の制限で代謝活性が上がる可能性私達がものを見ることができるのは光を検出する網膜タンパク質・オプシンのおかげです。光を浴びてオプシンは神経細胞膜のイオンの往来を変え、最終的に視神経を活性化します3)。光を受け止めるのは網膜だけではありません。光が生み出す明暗周期は人の行動や生理を決定付けており、睡眠-覚醒周期を形作り、体温やエネルギー代謝の24時間変動を生み出します。去年10月に米国・オハイオ州シンシナティ小児病院(Cincinnati Children's Hospital)の研究者Richard Lang氏等が率いるチームはいくつかあるオプシンタンパク質の1つ・オプシン5(OPN5)が見ることとは程遠い組織・皮膚に存在し、マウス皮膚の周期的活動を明暗周期に同調させる働きを担うことを明らかにしました4,5)。眼以外のオプシンタンパク質が哺乳類の24時間周期を直接制御していることを示したのはその研究が初めてです。Lang氏等のチームによるOPN5の研究はさらに進展し、先週水曜日9月2日にNature誌に掲載された新たな研究の結果、マウス脳の視床下部視索前野(POA)という領域で発現するOPN5が紫色の光に応じて活性化して褐色脂肪組織(BAT)による発熱を減らす働きがあると判明しました6,7)。OPN5発現細胞があるPOAは脳の奥深くに存在しますが、紫色光は頭蓋を貫通してPOAまで到達することができます。脳からBATへと通じる交感神経系が分泌した神経伝達物質・ノルアドレナリンを受容してBATは熱を生み出し、紫色光でOPN5が活性化した神経はそのBAT活性化神経路を阻害するように働いて熱生成を減らします。ゆえにOPN5の遺伝子を欠くマウスはBATが活発で体温が高く、エネルギーをより消費し、体脂肪やコレステロールが少なく、寒さに強いという特徴を示しました。紫色光は頭蓋を貫通してOPN5発現POA神経まで届く事が確認されていますが、OPN5発現神経を直接活性化するかどうかはまだ分かっていません。また、マウスと同様にサルの視床下部にOPN5が存在することは分かっていますが、自然光がその領域まで達するのかどうかは分かっていません。今後の研究でそれが判明すれば人に役立つ応用技術の開発が大きく前進しそうです。これまでの研究によると、食べるのを明るい時間帯(日中)に限る日中限定食で糖尿病前駆患者のインスリンの効き具合い(感受性)が改善することが明らかになっています3)。インスリン感受性が改善すれば完全な糖尿病に至り難くなります。今回マウスで見つかった仕組みが人にも備わるなら、紫色光を制限してBATを活性化することで日中限定食の代謝改善を増強できるかもしれません。日中限定食と同様に、BATを活性化するβアゴニストは人のインスリン感受性を高め、血糖値を下げ、代謝を底上げします。βアゴニストの効果が紫色光を排除すると向上することが今回の研究で確認されており、紫色光の制限でβアゴニストの代謝改善効果の向上も期待できそうです。生き物は紫色光以外の光も代謝調節に利用しています。Lang氏等のチームが今年1月に発表したマウス研究によると糖や脂肪酸を燃やすBATとは対照的にエネルギーを貯蔵する白色脂肪細胞ではオプシン3(OPN3)が発現しており、OPN3は紫色光ではなく青色光に反応して脂肪分解を促し、白色脂肪細胞から血中へ脂肪酸を放出させます8,9)。そしてOPN3はなんとBATでも発現しており、BATのOPN3は青色光ではなく赤色光に反応して糖の取り込みを増やし、POAのOPN5とは逆にBATでの熱生成を促します10)。普段の生活で何気なく浴びている色とりどりの光は脳や脂肪組織などに作用し、糖などのエネルギーの蓄えを調節する熱生成を加減する働きを担うようです。参考1)The University of Arizona says it caught a dorm’s covid-19 outbreak before it started. Its secret weapon: Poop / The Washington Post2)Poop tests stop COVID-19 outbreak at University of Arizona / Science3)Light-activated neurons deep in the brain control body heat / Nature4)Skin Keeps Time Independent of the Brain5)Buhr ED,et al. Curr Biol. 2019 Oct 21;29:3478-3487.6)Cincinnati Children's: This is Your Brain…on Sunlight / PRNewswire7)Zhang KX, et al. Nature. 2020 Sep 2. [Epub ahead of print]8)Nayak G,et al. Cell Rep. 2020 Jan 21;30:672-686.9)Fat Cells Can Sense Sunlight. Not Getting Enough Can Disrupt Metabolism10)Sato M, et al. PLoS Biol. 2020 Feb 10;18:e3000630.

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ACE阻害薬とARBがCOVID-19重症化を防ぐ可能性/横浜市立大学

 新型コロナウイルスは、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を介して細胞に侵入することが明らかになっており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とレニン-アンジオテンシン系(RAS)との関連が注目されている。ACE阻害薬またはARBの服用とCOVID-19患者の重症度を解析 今回、横浜市立大学附属 市民総合医療センター 心臓血管センターの松澤 泰志氏らの研究グループが、COVID-19罹患前からのACE阻害薬またはARBの服用と重症度との関係について、多施設共同後ろ向きコホート研究(Kanagawa RASI COVID-19 研究)を行った。Hypertension Research誌オンライン版2020年8月21日号での報告。 本研究では、2020年2月1日~5月1日の期間、神奈川県内の6医療機関(横浜市立大学附属市民総合医療センター、神奈川県立循環器呼吸器病センター、藤沢市民病院、神奈川県立足柄上病院、横須賀市立市民病院、横浜市立大学附属病院)に入院したCOVID-19患者151例を対象に、病態に影響を与える背景や要因の解析が行われた。 追跡調査の最終日は2020年5月20日で、すべてのデータは医療記録から遡及的に収集された。高血圧症およびほかの既往歴の情報は、通院歴、入院時の投薬、およびほかの医療機関からの提供内容に基づいている。ACE阻害薬/ARBがCOVID-19患者の意識障害を減らす可能性 COVID-19罹患前からのACE阻害薬またはARBの服用と重症度との関係について研究した主な結果は以下のとおり。・平均年齢は60±19歳で、患者の59.6%が男性だった。151例のうち、39例(25.8%)が高血圧症、31例(20.5%)が糖尿病、22例(14.6%)にACE阻害薬またはARBが処方されていた(ACE阻害薬:3例[2.0%]、ARB:19例[12.6%])。・151例中、14例(9.3%)の院内死があり、14例(9.3%)で人工呼吸、58例(38.4%)で酸素療法が必要だった。入院時、肺炎に関連する意識障害は14例(9.3%)、収縮期血圧<90mmHgに関連する意識障害は3例(2.0%)で観察され、少なくとも13例において、新型コロナウイルス感染が原因とされた。22例(14.6%)がICUに入院した。・患者全体を対象とした単変量解析では、65歳以上(オッズ比[OR]:6.65、95%信頼区間[CI]:3.18~14.76、p<0.001)、心血管疾患既往(OR:5.25、95%CI:1.16~36.71、p=0.031)、糖尿病(OR:3.92、95%CI:1.74~9.27、p<0.001)、高血圧症(OR:3.16、95%CI:1.50~6.82、p=0.002)が、酸素療法以上の治療を要する重症肺炎と関連していた。・多変量解析では、高齢(65歳以上)が重症肺炎と関連する独立した要因だった(OR:5.82、95%CI:2.51~14.30、p<0.001)。・高血圧症患者を対象とした解析の結果、ACE阻害薬またはARBをCOVID-19罹患前から服用している患者では、服用していなかった患者よりも、主要評価項目の複合アウトカム(院内死亡、ECMO使用、人工呼吸器使用、ICU入室)における頻度が少ない傾向だった(14.3%vs.27.8%、p=0.30)。また、副次評価項目については、COVID-19に関連する意識障害が有意に少なかった(4.8%vs.27.8%、p=0.047)。 著者は「われわれの知る限りでは、これがわが国で初めてCOVID-19患者の臨床アウトカムを検討した研究だ。今回、炎症に対するRAS阻害薬の保護効果が、ACE阻害薬/ARBの使用と意識障害の発生減少を関連させる1つのメカニズムである可能性が明らかになった」と記している。

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小児1型DM、クローズドループシステムvs.SAP療法/NEJM

 小児1型糖尿病において、クローズドループ型インスリン注入システム(人工膵島)はセンサー付きインスリンポンプ療法(SAP)と比較して、血糖値が目標値に達していた時間の割合が高かった。米国・バージニア大学糖尿病技術センターのMarc D. Breton氏らが、16週間の多施設共同無作為化非盲検比較試験の結果を報告した。クローズドループ型インスリン注入システムは、小児1型糖尿病患者の血糖コントロールを改善する可能性が示唆されていた。NEJM誌2020年8月27日号掲載の報告。小児1型糖尿病患者101例をクローズドループ群とSAP(対照)群に無作為化 研究グループは2019年6月21日~8月30日に、6~13歳の1型糖尿病患者を、クローズドループ型インスリン注入システム群(クローズドループ群)またはSAP群(対照群)に、3対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、持続血糖モニタリングで測定した血糖値が、目標値70~180mg/dLの範囲にあった時間の割合であった。目標血糖値の時間の割合はクローズドループ群で有意に増加 計101例が無作為化を受けた(クローズドループ群78例、対照群23例)。ベースラインのHbA1c値は5.7~10.1%であった。 血糖値が70~180mg/dLの範囲にあった時間の割合(平均±SD)は、クローズドループ群ではベースラインの53±17%から67±10%(治療を行った16週間の平均)に、対照群では51±16%から55±13%に増加した(平均補正後群間差:11ポイント[1日当たり2.6時間に相当]、95%信頼区間[CI]:7~14、p<0.001)。 血糖値が70mg/dL未満であった時間の割合は、両群とも低値であった(中央値:クローズドループ群1.6%、対照群1.8%)。 クローズドループ群において、システムがクローズドループモードであった時間の割合は中央値93%(四分位範囲:91~95)であった。糖尿病性ケトアシドーシスまたは重篤な低血糖症のエピソードは、いずれの群でも確認されなかった。 なお、著者は、社会経済的状況・HbA1c値・血糖コントロール機器の使用について、今回の試験対象集団が必ずしも一般集団を代表する集団ではなく、また、試験期間が4ヵ月間であり、治療効果が長期にわたり持続するかについては不明であると述べている。

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カナグリフロジンの下肢切断リスク、65歳以上CVD患者で増大/BMJ

 SGLT2阻害薬カナグリフロジンの下肢切断リスクについて、心血管疾患のある65歳以上において最も明白な増大が認められること、追加有害アウトカムの発生に関する必要治療数(NNT)は6ヵ月で556例(切断例はカナグリフロジン投与1万例当たり18例超)であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバード大学医学大学院のMichael Fralick氏らによる検討で明らかにされた。GLP-1受容体作動薬投与群と比較した下肢切断リスクは1.73倍で、発生率の差は1,000人年当たり3.66であったという。先行研究のカナグリフロジンの心血管アウトカムを検討した試験「CANVAS試験」では、カナグリフロジン群がプラセボ群よりも下肢切断リスクが2倍近く高いことが確認されており、同試験対象者が従前試験よりも10歳以上高齢であったこと、またベースラインの心血管リスクが高かったことから、切断リスクの上昇は限定される可能性が示唆されていた。著者は、「今回の結果は、日常的ケアにおけるカナグリフロジン投与の、切断リスクを明らかにするものである」と述べている。BMJ誌2020年8月25日号掲載の報告。カナグリフロジンによる下肢切断リスクをCVDの有無と65歳以上・未満で検証 研究グループは、新たにカナグリフロジンを投与された成人における、年齢および心血管疾患別にみた下肢切断率を推算する住民ベースのコホート試験を行った。 2013~17年の、米国の2つの民間の保険請求データベース(MarketScan、Optum)とメディケア保険請求データベースを基に、新たにカナグリフロジンを処方された患者を抽出し、1対1の割合の傾向スコアマッチングで抽出したGLP-1受容体作動薬を新たに処方された患者と、下肢切断術の発生について比較した。 被験者を以下の4グループに分類し、下肢切断率についてハザード比(HR)と1,000人年当たりの率差を算出。(1)ベースラインで心血管疾患のない65歳未満、(2)ベースラインで心血管疾患のあった65歳未満、(3)ベースラインで心血管疾患のない65歳以上、(4)ベースラインで心血管疾患のあった65歳以上。 メタ解析にて、各グループの統合HRと1,000人年当たりの率差を求め評価した。カナグリフロジン群の下肢切断に関するHRは65歳以上CVD患者で有意差 3つのデータベースから傾向スコアマッチングで、新規のカナグリフロジン処方群または新規のGLP-1受容体作動薬処方群31万840例を抽出し、解析を行った。 カナグリフロジン群のGLP-1受容体作動薬群に対する、下肢切断に関するHRおよび1,000人年当たり率差は、グループ(4)「ベースラインで心血管疾患のあった65歳以上」で、HRが1.73(95%信頼区間[CI]:1.30~2.29)、率差3.66(同:1.74~5.59)と、いずれも有意差が認められた。 一方、その他のグループでは有意差は認められなかった。グループ(1)のHRは1.09(95%CI:0.83~1.43)、率差0.12(同:-0.31~0.55)、グループ(2)はそれぞれ1.18(0.86~1.62)と1.06(-1.77~3.89)、グループ(3)はそれぞれ1.30(0.52~3.26)と0.47(-0.73~1.67)であった。

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レムデシビル、中等度COVID-19への効果は?/JAMA

 中等度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、5日間のレムデシビル投与は標準的治療に比べ、11日目の臨床状態の改善が統計学的に有意であることが示された。10日間投与は標準的治療に比べ、同改善について統計学的な有意差は認められなかったという。ドイツ・ミュンヘン工科大学Rechts der Isar大学病院のChristoph D. Spinner氏らが、596例の入院患者を対象に行った国際共同無作為化試験で明らかにした。レムデシビルは、重症COVID-19患者を対象としたプラセボ対照試験で、臨床的ベネフィットがあることが示されているが、中等度の患者への効果は不明であった。なお、5日間投与で有意差が示された結果について著者は、「示された有意差の臨床的意義については不確実である」と述べている。JAMA誌オンライン版2020年8月21日号掲載の報告。レムデシビル5日、10日投与の有効性を標準的治療と比較 研究グループは、レムデシビル5日間または10日間投与の投与開始後11日時点の臨床状態について、標準的治療と比較する非盲検無作為化試験を行った。 2020年3月15日~4月18日に、米国、欧州、アジアの105病院で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による中等度のCOVID-19肺炎を発症した入院患者を登録した。中等度COVID-19肺炎の定義は、X線所見による肺浸潤と室内気動脈血酸素飽和度94%超とした。 被験者を1対1対1の割合で無作為に3群に分け、レムデシビル(初回200mg/日、翌日から100mg/日)10日間静脈投与(197例)、同5日間静脈投与(199例)、標準的治療(200例)を、それぞれ実施した。 主要エンドポイントは、11日目の臨床状態で、7ポイント順序尺度(死亡[カテゴリー1]~退院[カテゴリー7])で評価した。レムデシビル群と標準的治療群の差については、比例オッズモデルを用いてオッズ比(OR)を求めた。 最終フォローアップは2020年5月20日であった。レムデシビル10日投与群は標準的治療群と有意差なし、5日群で有意差 無作為化を受けた596例のうち、584例が試験を開始し、レムデシビル投与または標準的治療を受けた(年齢中央値57歳[四分位範囲:46~66]、女性227例[39%]、心血管疾患56%、高血圧症42%、糖尿病40%)。試験を完了したのは533例(91%)だった。レムデシビル5日群の投与期間中央値は5日、10日群は6日だった。 11日目の臨床状態は、レムデシビル5日群が標準的治療群に比べ良好で、7ポイント順序尺度で評価したORは1.65(95%信頼区間[CI]:1.09~2.48、p=0.02)だった。 一方で、レムデシビル10日群については、11日目の臨床状態は、標準的治療群と有意差は認められなかった(Wilcoxon rank sum検定のp=0.18)。 なお、28日目までに報告された死亡は、レムデシビル5日群2例(1%)、レムデシビル10日群3例(2%)、標準的治療群4例(2%)だった。また、レムデシビル治療群では標準的治療群と比べて、悪心(レムデシビル群10%vs.標準的治療群3%)、低カリウム血症(6% vs.2%)、頭痛(5% vs.3%)の発生頻度が高かった。

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