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リナグリプチンの心血管・腎の安全性/日本ベーリンガーインゲルハイム

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、心血管疾患の既往もしくは心血管イベントリスクのある、アジアの早期成人2型糖尿病患者を対象としたCAROLINA試験のサブグループ解析の結果を発表した。 発表によれば、本解析においてグリメピリドと比較し、リナグリプチン(商品名:トラゼンタ)は心血管疾患の既往もしくは心血管イベントリスクのあるアジアの早期成人2型糖尿病患者において心血管リスクを増加させないことが明らかになった1)。 また、心血管や腎イベント、またはその両方のリスクが高い成人2型糖尿病患者を対象としたCARMELINA試験とともに、アジアの幅広い2型糖尿病患者におけるリナグリプチンの心血管および腎の安全性のプロファイルが示された2)。CAROLINA試験でリナグリプチンの安全性を評価 世界に糖尿病患者は約4億6,300万人おり、うち半数以上の2億5,100万人が東南アジアと西太平洋地域の患者と推定されている。糖尿病治療の目標は、合併症を予防し、健康人と変わらないQOLの維持、寿命の維持とされている中で合併症の進展防止は大きな課題となっている。 今回発表されたCAROLINA試験は、成人2型糖尿病患者において、リナグリプチンとグリメピリドを比較する心血管アウトカム試験で、43ヵ国600以上の施設から6,033人が参加し、中央値6年以上にわたり観察を行う多施設共同無作為化二重盲検実薬対照試験。心血管疾患の既往もしくは心血管イベントリスクのある、成人2型糖尿病患者に対するリナグリプチン(5mgの1日1回投与)の心血管安全性への影響について、SU薬のグリメピリドを対照として評価することを目的として計画されている。 この試験のサブグループ解析では、全参加者の15.5%にあたるアジアの成人2型糖尿病患者933人が解析対象とされた。その結果、リナグリプチン投与群では、グリメピリド投与群と比較して、低血糖の発現率が低値だった。すべての重症度分類の低血糖の発現率は、グリメピリド投与群の42.1%に対し、リナグリプチン投与群では13.1%。リナグリプチン投与群では、グリメピリド投与群と比較して、体重の増加は認められず、グリメピリド投与群との体重差の平均値は-1.82kgだった。 また、リナグリプチンは長期安全性に関する包括的な臨床データとして、本試験とCARMELINA試験の2つの心血管アウトカム試験のエビデンスを有している。 CARMELINA試験は、心血管イベントあるいは腎イベント、またはその両方のリスクが高い成人2型糖尿病患者において、リナグリプチンの心血管および腎アウトカムへの影響を評価する試験で、27ヵ国600以上の施設から成人2型糖尿病患者6,979人が参加し、中央値2.2年にわたり観察を行う多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験。この試験でも心血管イベントあるいは腎イベント、またはその両方のリスクが高いアジアの成人2型糖尿病患者において、リナグリプチンがプラセボに対して心血管および腎イベントのリスクを増加させないことが示された。そして、これらの結果は、CARMELINA試験の全体集団の結果と一貫していた。リナグリプチンの特徴 成人2型糖尿病患者での血糖降下作用をもつ、1日1回投与のDPP-4阻害薬。年齢、罹病期間、人種、BMI、肝機能および腎機能に関係なく、同一用量で成人2型糖尿病患者に処方ができる。本剤は、すべてのDPP-4阻害薬の中で最も低い腎排泄率を示している。なお、本剤は、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーのアライアンスによって開発・販売されている。

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第14回 日医8年ぶりのトップ交代、診療報酬のツケが行く手を阻む?

「人が決まって嘘をつく時。それは狩りの後、戦争の最中、そして選挙の前」といったのは世界史の教科書で『鉄血宰相』の異名でも取り上げられるドイツのオットー・フォン・ビスマルクである。先日の東京都知事選で圧勝した現職が前回選挙時の公約実現率ほぼゼロという現実は、まさにこの言葉を体現したとも言えるが、それ以上に今回の結果は、今から10年以上前の同選挙のある候補が金切り声をあげて政見放送で言った「所詮選挙なんか多数派のお祭りに過ぎない」との言葉を体現した、といったほうが良いかもしれない。そんな白けた選挙の直前には手に汗握る極めて興味深い選挙があったことは、このサイトの読者ならばよくご存じだろう。日本医師会(日医)会長選挙である。結果は、5選目を目指した横倉 義武氏が174票、これに挑んだ中川 俊男氏が191票。中川氏側から9票動けば横倉氏の勝利となっていたわけだから、ボクシングでいうところのスプリット・デシジョン*である。だが、この近年まれに見る接戦となった会長選挙の結果は、今後日医という組織に瞬殺のアッパーカットのような強烈なダメージを与える可能性がある。*:ボクシングの試合判定で、3人の判定が2対1に分かれること既に各所で報じられているように当初、横倉氏は中川氏に会長職を禅譲する予定だったが、中川氏に代替わりすることを懸念した政治・官僚サイドが横倉氏を慰留。結果、横倉氏が翻意したが、こうした横倉氏の姿勢や官邸・自民党と距離の近さゆえ、政治と妥協的姿勢を図ることへの嫌悪が中川氏が接戦を制した要因と分析されている。中川氏の会長当選後の第一声が「国民の健康と命を守るためならどんな圧力にも決して負けない、そして堂々とものを言える新しい日本医師会に変えていこうと思っている」だったのも、この勝因を意識したものに映る。中川氏側だったある日医の代議員は次のように語る。「横倉会長時代の診療報酬改定では本体は常にプラスだったが、実際のところそのほとんどが0.5%前後。原中 勝征会長時代とは比べ物にならず、結果として現場の運用次第ではマイナスだった」どうやらこの代議員の頭にあるのは、横倉氏の前任だった原中会長時代の2010年度改定の本体改定率1.55%プラス、2012年改定の本体改定率1.379%プラスという数字らしい。しかし、当時の状況を知る人からすれば、この数字こそ異例というのが正しい認識なはずだ。そもそもこの2回の改定時は旧民主党政権時のこと。「聖域なき構造改革」を掲げた自民党・小泉 純一郎政権下での2006年の診療報酬・介護報酬同時改定時の本体1.36%マイナスに対する政治的アンチテーゼとして行われたのが2010年、2012年のプラス改定である。その意味では2018年の診療報酬・介護報酬同時改定時は将来の財源不安なども考慮すれば、本体マイナス改定が必至の情勢で、財務省もそこにはギリギリまでこだわった。にもかかわらず、この時0.55%プラスでおさまったのは、「勝つには勝つが、一人勝ちはしない」という「横倉マジック」で無い袖を振らせた結果だった。逆に言えば、本来マイナスすべきだったツケがたまっているのが現下の状況とも言える。しかも、2025年の地域包括ケア完成に向けて、残すところは2022年の診療報酬改定、2024年の診療報酬・介護報酬同時改定の2回しか残されていない。日医が「堂々とものを言う」方法を間違えれば、財源論と世論を味方に本体マイナス改定という「伝家の宝刀」が抜かれる可能性は否定できない。このように言うと、「日医の集票力を自民党も無視はできない」としたり顔で口にする面々が登場する。戦後、日医会長として25年の長期政権を維持した武見 太郎会長時代は「医師のかばんの中には10票が入っている」と言われ、日医の組織内候補への集票力は100万票超と称されてきた。しかし、その集票力はもはや蜃気楼である。2019年参議院選挙(参院選)で日医組織内候補だった自民党の羽生田 俊議員(元日医副会長)の得票は15万2,807票。日本看護協会、日本薬剤師会の組織内候補よりも得票数は下回り、2013年参院選に初当選した時の24万9,818票から大きく減らした。そもそも日医は2000年代半ばごろからは、病院建設などで激しく対立してきた徳洲会関係者から全国比例区で3~4万票分の支援を受けてもいる。旧民主党政権への失望から国政選挙で保守系野党の得票が伸び悩み、なんとなく空気で自民党が大勝を続ける今、17万人超の会員平均1票にも満たない日医の集票力はとても政治的山を動かせる原動力にはなり得ないのが現実だ。実際、今回の日医選挙の結果に永田町界隈では「中川会長のお手並み拝見」とのささやきも聞かれる。つまるところ、舌鋒の鋭さで知られる中川会長率いる日医の新執行部の言動が傍目に「欲張り村の村長」にしか見えない状況が続くようになれば、巨大なブーメランの直撃を受ける可能性は少なくないといえる。

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内臓脂肪指数は大腸がん発症の予測因子~日本人コホート

 内臓脂肪蓄積は大腸がん発症に関連しているが、内臓脂肪蓄積と機能障害のマーカーである内臓脂肪指数(VAI)と大腸がん発症との関連についての報告はない。今回、京都府立医科大学の岡村 拓郎氏らが、大規模コホートNAGALA研究で検討した結果、VAIの最高三分位群において大腸がん発症リスクが有意に高いことが示された。BMJ Open Gastroenterology誌2020年6月号に掲載。 本研究では、2万7,921人(男性1万6,434人、女性1万1,487人)の参加者をVAIによって三分位に分けた。VAIは、男性では(腹囲/(39.68+1.88×BMI))×(トリグリセライド/1.03)×(1.31/HDLコレステロール)、女性では(腹囲/(36.58+1.89×BMI))×(トリグリセライド/0.81)×(1.52/HDLコレステロール)で算出した。性別、年齢、喫煙、飲酒、運動、ヘモグロビンA1c、収縮期血圧で調整し、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間(中央値4.4年)中に、116人が大腸がんを発症した。・単変量解析では、最低三分位群と比較して、中間および最高三分位群における大腸がん発症のハザード比(HR)は1.30(95%信頼区間[CI]:0.76~2.28、p=0.338)および2.41(同:1.50〜4.02、p<0.001)で、最高三分位群で有意に高かった。・共変量の調整後、中間および最高三分位群における大腸がん発症のHRは1.27(95%CI:0.73〜2.23、p=0.396)および1.98(同:1.15〜3.39、p=0.013)で、最高三分位群で有意に高かった。 著者らは「VAIは大腸がん発症の予測因子になりうる。大腸がんの早期発見のために、VAIが高い人に大腸がん検診を勧めるべき」と結論している。

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高齢1型糖尿病患者における低血糖の抑止とCGM(持続血糖モニター)(解説:吉岡成人氏)-1253

 35年前の本邦における疫学調査では、1型糖尿病の患者は進展した網膜症や末期腎症などの合併症の頻度が高く死亡リスクが高いと報告されている(糖尿病. 1985;28:833-839.)。しかし、近年、インスリン製剤や注入器の進化、さらにはCGMなどの導入により血糖コントロールが改善し、合併症や併発症の早期発見、早期治療が可能となったことも相まって、1型糖尿病のQOLや生命予後が良好なものとなっている。その一方で、罹病期間が長く、高齢となった1型の糖尿病の患者が徐々に増加しており、加齢に伴って引き起こされる無自覚低血糖、認知機能の低下、転倒骨折、不整脈による突然死などが臨床の現場で大きな問題となっている。CGMによって高齢1型糖尿病の低血糖の頻度は減少するか 皮下組織のグルコース濃度を持続的に測定し、リアルタイムでその結果を確認できる機器(isCGM:intermittently scanned continuous glucose monitoring)を用いた場合と、従来の、血糖測定器を用いて1日4回の血糖測定(SMBG)を行う場合で、低血糖の頻度に差があるのか否かを検討した成績が、JAMA誌2020年6月16日号に掲載された。 60歳以上の1型糖尿病203例を対象に、CGM群(103例)とSMBG群(100例)に無作為に1対1の割合で割り付け、無作為化後7週、15週、25週後に来院し、患者自身が測定値を確認できないCGMを1週間装着し、その際のグルコース濃度が70mg/dL未満を示した時間の割合を主要評価項目として、54mg/dL未満、60mg/dL未満の低血糖、高血糖、HbA1c、認知機能などを副次評価項目として検討している。 対象となった患者は、中央値で年齢68歳、罹病期間36年、白人が93%、インスリンポンプを使用している患者が53%、HbA1cは7.5%であった。 グルコース濃度70mg/dL未満の時間(中央値)は、CGM群でベースラインが5.1%(73分/日)、追跡期間では2.7%(39分/日)、SMBG群でベースラインが4.7%(68分/日)、追跡期間では4.9%(70分/日)であり、統計学的に有意な差を認めた(補正後の時間差:-1.9%[-27分/日])。副次評価項目でもCGM群では、54mg/dL未満、60mg/dL未満の低血糖の頻度も減少し、250mg/dLを超えるグルコース濃度の頻度も減少し、HbA1cもCGM群では7.6%から7.2%へと有意な改善を示した。重症低血糖はCGM群1例、SMBG群10例であった。日本における診療の現場で、この研究をどのように捉えるか 今回報告された研究では、罹病期間36年、平均年齢68歳の1型糖尿病が研究の対象となっている。罹病期間が長く、高齢の1型糖尿病ではあるが、約半数はすでにインスリンポンプを使用し、大学院修了者が約30%と高学歴で、年収10万ドルを超える患者も20%以上含まれている。専門的な治療を受けており、社会経済状況が安定した状態にあり、観察前のHbA1cも7.5%ときわめて良好な血糖コントロール状態を維持している。 日本でも、確かに、このような範疇に入る1型糖尿病の患者は一定の割合で存在する。しかし、臨床の現場では、独居や老々介護の中で認知機能が徐々に低下し、低血糖を頻発し、たびたび救急搬送をされることも少なからず経験される。訪問看護師が、週に2~3回患者のもとを訪れ、インスリンの注射手技を確認することしかできない、高齢者施設に入居することを提案しても、そこでは1日2回以下でなければインスリン注射に対応できないといわれ、医療従事者が頭を抱えて憂鬱な思いに駆られることもある。 CGMを利用して低血糖の時間が少なくなることは臨床的に有用なことではあるが、日本において高齢の1型糖尿病が今後ますます増加していくことを考えると、医療のシステム、社会全体のケアのシステムが少しでも改善することこそが、CGMやSMBGよりも大切なのではなかろうかと思われる。

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カリウムイオンを補足する非ポリマー型高K血症治療薬「ロケルマ懸濁用散分包5g/10g」【下平博士のDIノート】第53回

カリウムを便中に出す非ポリマーの高カリウム血症治療薬「ロケルマ懸濁用散分包5g/10g」今回は、高カリウム血症改善薬「ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(商品名:ロケルマ懸濁用散分包5g/10g、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。本剤は、体内に吸収されない非ポリマーの無機陽イオン交換化合物で、消化管内のカリウムイオンを選択的に捕捉して便中に排泄させることにより、血清カリウム値を低下させます。<効能・効果>本剤は高カリウム血症の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年5月20日より発売されています。なお、本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用できません。<用法・用量>通常、成人には開始用量として1回10gを水で懸濁して1日3回、2日間(血清カリウム値や患者の状態に応じて最長3日間まで)経口投与します。以後の維持量は1日1回5gですが、血清カリウム値や患者の状態に応じて1日1回15gを超えない範囲で適宜増減できます。なお、増量を行う場合は5gずつとし、1週間以上の間隔を空けます。血液透析施行中の場合は、初回から1回5gを水で懸濁して、非透析日に1日1回経口投与します。なお、最大透析間隔後の透析前の血清カリウム値や患者の状態に応じて、1日1回15gを超えない範囲で適宜増減します。<安全性>本剤承認の根拠となった主要な第III相試験(非透析患者を対象としたHARMONIZE Global試験、J-LTS試験および慢性血液透析患者を対象としたDIALIZE試験)において確認された主な副作用は、浮腫、体液貯留、全身性浮腫、末梢性浮腫、末梢腫脹、便秘(いずれも10%未満)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、低カリウム血症(11.5%)、うっ血性心不全(0.5%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.このお薬は、消化管内で吸収される前のカリウムを吸着し、便とともに排泄することで、血液中のカリウム値を低下させます。2.分包された薬剤を容器にすべて出してから、約45mL(大さじ3杯)の水と合わせて服用します。この薬は水に溶けないため、よくかき混ぜて、沈殿する前に飲んでください。飲んだ後に容器に薬が残っていたら、水を追加して再度かき混ぜてすべて服用してください。3.飲み忘れた場合は、1回飛ばして、次に飲む時間に1回分を飲んでください。絶対に2回分を一度に飲まないでください。4.いつもと違う手足のだるさ、力が抜ける感じ、筋肉のこわばり、呼吸のしにくさ、めまい、動悸などがある場合は、薬が効き過ぎている可能性があるため、すぐにご連絡ください。<Shimo's eyes>通常、カリウムは腎臓から排泄されて血中のカリウム値は一定の範囲に保たれますが、慢性腎臓病患者や透析患者では、腎機能の低下によりカリウム排泄が低下するため、高カリウム血症を発症しやすくなります。高カリウム血症に用いる既存のカリウム吸着薬としては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム製剤(商品名:ケイキサレート)およびポリスチレンスルホン酸カルシウム製剤(同:カリメート、アーガメイトゼリーなど)があり、いずれもポリマーで構成された陽イオン交換樹脂製剤です。既存薬には独特の味と舌触りがあり、投与量が多いことも相まって、患者さんが継続服用するのが困難な場合があります。飲みにくさを改善するために、ゼリー製剤やフレーバーが開発されているだけでなく、複数の医療機関から飲みやすさの工夫に関する研究結果も報告されています。また、ポリマー性吸着薬は水分によって膨張するため、便秘や腹痛、腹部膨満感などの懸念があります。本剤は国内初となる非ポリマー無機陽イオン交換化合物で、消化管内のカリウムイオンを選択的に捕捉して便中に排泄させます。無味無臭の白色粉末で、開始時は10gを1日3回経口投与であるものの、3日目からは通常5gを1日1回となり、服用量・回数共に比較的少ないため、アドヒアランスの向上が期待できます。本剤の相互作用については、胃内pHの上昇によって、アゾール系抗真菌薬、チロシンキナーゼ阻害薬などの溶解性低下が起きることがあるので、注意が必要です。生活指導としては、腎臓への負担を少しでも減らすために、カリウムを多く含む食品の過剰摂取に注意することや、茹でたり水にさらしたりするなどの調理方法の工夫を伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ロケルマ懸濁用散分包5g/ロケルマ懸濁用散分包10g

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早期DKD併発1型糖尿病、尿酸値低下でも腎機能改善せず/NEJM

 1型糖尿病と早期~中等度の糖尿病性腎臓病(DKD)を有する患者において、アロプリノールの3年投与により血清尿酸値を36%低下させても、腎アウトカムに関して臨床的に意味のある利益のエビデンスは得られなかったとの研究結果が、米国・ハーバード大学医学大学院のAlessandro Doria氏らが実施した「PERL試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2020年6月25日号に掲載された。血清尿酸の高値は、DKDリスクを増加させることが示唆されている。1型糖尿病と早期~中等度のDKDを併発する患者では、血清尿酸値をアロプリノールで低下させると、糸球体濾過量(GFR)の低下が緩徐化される可能性があるという。3ヵ国16施設が参加した無作為化試験 本研究は、3ヵ国(米国、カナダ、デンマーク)の16施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、アロプリノールで血清尿酸値を低下させることで、早期DKDを併発する1型糖尿病患者の腎機能低下を遅延できるかを検証する目的で行われた(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所[NIDDK]などの助成による)。 対象は、1型糖尿病で、推算GFRが40.0~99.9mL/分/1.73m2体表面積であり、DKDの定義(アルブミン尿[尿中アルブミン排泄率:20~3,333μg/分]または過去3~5年間にGFRが年間3mL/分/1.73m2以上低下の所見または既往歴を有する)を満たし、血清尿酸値が4.5mg/dL以上の患者であった。 被験者は、9週間の導入期間ののち、アロプリノールまたはプラセボの経口投与を受ける群に無作為に割り付けられた。アロプリノールは、100mg/日を4週間投与された時点で、推算GFRが≧50mL/分/1.73m2の患者は400mg/日に調整され、25~49mL/分/1.73m2の患者は300mg/日、15~24mL/分/1.73m2の患者は200mg/日を投与された。 主要アウトカムは、3年の介入期間と2ヵ月の休薬期間の終了後におけるベースライン値で補正したGFRとした。GFRはイオヘキソールで測定した。副次アウトカムには、イオヘキソールに基づくGFRの年間低下率や休薬期間後の尿中アルブミン排泄率などが含まれ、安全性の評価も行われた。休薬期間後のGFRは同じ、重篤な有害事象にも差はない 530例(平均年齢51.1±10.9、男性66.2%)が登録され、アロプリノール群に267例、プラセボ群には263例が割り付けられた。 ベースラインの全体の平均糖尿病罹病期間は34.6±12.3年、イオヘキソールによる平均GFRは68.0±16.9mL/分/1.73m2、平均推算GFRは74.7±19.1mL/分/1.73m2、平均血清尿酸値は6.1±1.5mg/dL、平均糖化ヘモグロビン値は8.2±1.3%であった。90.0%がレニン-アンジオテンシン系阻害薬による治療を受けていた。 介入期間中に、アロプリノール群の平均血清尿酸値は6.1mg/dLから3.9mg/dLへ低下し(ベースラインから36%の低下)、休薬期間終了後はベースラインとほぼ同じ値(5.9mg/dL)に上昇した。プラセボ群は6.1mg/dLから変化しなかった。 休薬期間終了後のイオヘキソールによる平均GFRは、両群とも61.2mL/分/1.73m2で、群間差は0.001mL/分/1.73m2(95%信頼区間[CI]:-1.9~1.9、p=0.99)であり、両群間に有意な差は認められなかった。 イオヘキソールによるGFRの平均年間低下率は、アロプリノール群が-3.0mL/分/1.73m2、プラセボ群は-2.5mL/分/1.73m2であり(群間差:-0.6mL/分/1.73m2、95%CI:-1.5~0.4)、有意差はなかった。一方、平均尿中アルブミン排泄率は、アロプリノール群がプラセボ群に比べ、休薬期間終了後には40%(95%CI:0~80)、介入期間終了後は30%(0~60)高かった。 重篤な有害事象は354件(アロプリノール群171件、プラセボ群183件)発生した。重篤な有害事象が1件以上発生した患者の割合は両群でほぼ同等で(93/267例[34.8%]、82/263例[31.2%])、これらのイベントが原因で試験薬を中止した患者の割合も同様であった(16例[6.0%]、11例[4.2%])。重篤な有害事象はまれであったが、致死的重篤な有害事象が発生した患者の数はアロプリノール群で多かった(10例、4例)。 著者は、「尿中アルブミン排泄率は、アロプリノール群がプラセボ群よりも不良であることが示唆されたが、アロプリノールの安全性を懸念する前に、他のDKD患者コホートで、この知見を独立的に検証する必要がある」としている。

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メニューへのカロリー表示が健康や経済にメリット、AHAニュース

 飲食店のメニューにカロリー表示を求める現行の連邦法は、健康的な食事の選択を促し、心血管疾患や糖尿病の患者数の減少に寄与する可能性があるとする研究結果が報告された。このモデリング研究では、人々が飲食店の栄養表示を考慮して注文することによって、2018年から2023年までに心血管疾患を1万4,698件(このうち心血管疾患による死亡は1,575件)、2型糖尿病を2万1,522件回避できると推定された。結果の詳細は米国心臓協会(AHA)が発行する「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」6月4日オンライン版に発表された。 米食品医薬品局(FDA)は2018年5月、20店舗以上の飲食店チェーンを対象に、メニューやメニューボードへのカロリー表示を義務付けた。ただし、現在は、FDAは4月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による緊急事態が収束するまでの一時的な措置として、カロリー表示についての柔軟な対応を認めている。 論文の著者の一人で、米タフツ大学フリードマン栄養科学政策大学院のDariush Mozaffarian氏は「米国では、40年以上にわたり、国民の代謝系の健康問題が増大していたが、そこに感染症の問題も加わることになり、徐々に広がるパンデミックと急速に広がるパンデミックが重なった状況に直面している」と説明。その上で、「COVID-19によって、米国民が健康的な食品を確実に摂取できるようにすることの重要性が浮き彫りになった」と指摘している。 Mozaffarian氏によると、食事の影響を受けやすい糖尿病や高血圧、肥満などはCOVID-19の重症化リスクを高め、入院リスクも上昇させるとされている。 Mozaffarian氏らは今回、連邦政府が35~80歳の男女を対象に実施した健康と栄養に関する調査の食事摂取データを用いて、コンピューターの予測モデルに基づく研究を実施。その結果、メニューへのカロリー表示を受けて消費者が生涯にわたって低カロリーの食事を選ぶようになることで、肥満が減少し、医療費は104億ドル(約1兆1150億円)、また生産性の低下や家族による介護などのインフォーマルケアに伴う「社会的費用」も127億ドル(約1兆3600億円)削減されると推定された。さらに、生涯にわたって低カロリーの食事を選択する習慣が根付くことで、心血管疾患は13万5,781件(このうち死亡例は2万7,646件)、2型糖尿病は9万9,736件、回避できると推定された。 この研究論文の筆頭著者の一人である同大学のJunxiu Liu氏は、「飲食店が、低カロリー食を提供したり、一人前の量を減らすなどしてもっとメニューを刷新すれば、医療費や健康の面で得られる恩恵の大きさは、消費者の選択の変化だけに基づいた場合の2倍になり得る」と述べている。また、この法律は特に、ヒスパニック系や黒人、学歴が低い人や低所得者、肥満者といった特定の集団に大きな健康上の利益をもたらし、健康格差の縮小にも寄与する可能性があると指摘している。 今回の研究には関与していない米ノースウェスタン大学のNorrina Bai Allen氏は、現在カロリー表示を求める規制で一時的な緩和措置がとられていることに一定の理解を示しながらも、Mozaffarian氏らが報告した推計値を見ると、カロリー表示の義務化は有望であるとして、できるだけ早く、カロリー表示を再び義務付けるようにしてほしいと主張している。そして、「COVID-19を含めて理由が何であれ、対策が遅れれば心血管疾患による疾病負担は増大することになる。消費者が簡単に全てのカロリーに関する情報を得ることができ、それに基づいた意思決定を行える世界が理想だといえる」と話している。[2020年6月4日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.

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第13回 自由診療の抗体検査がもたらす市民の勘違い

本連載もようやく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から離れつつあったが、ちょっと再び戻らせてもらう。なぜかというと、最近、SNS上や報道で目にする抗体検査について不安を覚えるようになったからだ。自治体などが今後の対策のための疫学調査として抗体検査を行うことは何ら問題ないと考えている。しかし、企業が従業員に対して一斉実施したり、市中の医療機関が自由診療で抗体検査を行ったりすることに現時点では何ら意義を感じないからだ。そもそも抗体検査の結果が分かった時に人間はどんな反応を示すだろうか? まず、陰性だった場合は、「感染してなかった」と思いほっとする人、「まだ感染していないのか」とやや不安になる人の2つに分かれるだろう。だが、この陰性という結果が無駄な安心を与えてしまう事例も既に明らかになっている。6月10日に判明した名古屋市での女性の感染例だ。この女性は発熱の症状を訴え、COVID-19の抗体検査を受け陰性と判明した。その翌日は勤務先を休んだものの、解熱したとして翌々日から3日間勤務に復帰。その後、味覚・嗅覚の異常を訴え、最終的に抗体検査から1週間後にPCR検査で感染の事実が判明している。要は抗体検査で陰性の発熱だったのでCOVID-19ではないと勘違いしてしまった事例である。では陽性だったらどうだろう? そもそも市中の医療機関の自由診療でCOVID-19の抗体検査を受けに行く人の多くは、前述の名古屋の事例のような現在進行形の類似症状のあるケースよりも過去に類似の症状を経験したか、単に興味本位という人だろう。そうした人が陽性と分かったら、最初は驚き、思い当たる感染時期がないか振り返るに違いない。ただ、入院も必要もなく軽症あるいは無症状で済んだことに加え、抗体があるという事実から安心しきってしまう人がほとんどではないだろうか。ところがこの安心はかなり的外れである可能性が浮上している。新型コロナの抗体価は持続しにくい?先ごろ、nature medicineに発表された中国の重慶医科大学の研究グループによるCOVID-19感染者の血中抗体価を追跡した研究結果が明らかになった。それによると感染者の退院8週間後のCOVID-19特異的IgG抗体は、無症候者の93.3%、有症状者の96.8%で減少し、抗体減少率の中央値は無症候者で71.1%、有症状者で76.2%。また、中和抗体量は無症候者の81.1%、有症状者の62.2%で減少し、抗体減少率の中央値は無症候者で8.3%、有症状者で11.7%だった。この事実からすれば、抗体検査で陽性であっても長期的な「免疫パスポート」にはならない可能性が高いことになる。しかも、現時点では特異的な治療薬、ワクチンも存在しないという現実。つまるところ、抗体検査を受けた人は結果が陰性であれ、陽性であれ、今後注意すべきことは変わらないということである。にもかかわらず最近では大都市圏のクリニックを中心にこのCOVID-19の抗体検査を行う医療機関が増えている。少なくとも通常よりもややお金がかかる自由診療で検査を受けようとする人の心中は「何らかの安心を得たい」ことがほとんどだろう。しかし、医学的に見て何らかの安心が得られる状況ではないのは既に書いたとおりだ。逆にこうした医療機関には、自由診療で抗体検査を行うことで患者側にどんなメリットがあるのか、と問いたい。むしろ一時的かつ張りボテの安心感を与えることで、その後の感染リスクを高める害のほうが多いのではないかと考える。少なくとも私のオツムではどうしてもこの検査にメリットについて明快な答えを提示できないのである。

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週1回のインスリンの有効性・安全性/ノボ ノルディスク ファーマ

 ノボ ノルディスク ファーマは、週1回投与のinsulin icodec*の第II相試験で1日1回投与のインスリン グラルギンU100と同程度の有効性および安全性を示したことを6月19日にリリースするとともに、第80回米国糖尿病学会で発表した。 本試験は、DPP-4阻害薬の併用または非併用下でメトホルミンによって十分にコントロールされていないインスリン治療歴のない成人2型糖尿病患者247名を対象とした、26週間、無作為割り付け、二重盲検、ダブルダミー、treat-to-target、第II相臨床試験。*本製剤および効能・効果は日本を含めて現在開発中であり未承認の製剤basalインスリンの注射回数が週1回になる 主要評価項目である血糖コントロール(HbA1c)のベースラインから投与後26週までの変化量は、insulin icodec週1回投与群とインスリン グラルギンU100の1日1回投与群で同程度(それぞれ-1.33%および-1.15%、p=0.08)だった。また、副次評価項目であるベースラインから投与後26週までの空腹時血糖値(FPG)の変化量は、insulin icodecおよびインスリン グラルギンU100で同程度(それぞれ-58mg/dLおよび-54mg/dL)、ベースラインから投与後26週までの9点測定血糖値プロファイル(血糖自己測定による)の平均値の変化量は、insulin icodecでより大きかった(-7.9mg/dL、p=0.01)ことが示された。 安全性に関し低血糖は、両投与群で同程度だった(レベル2の低血糖[血糖値

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フレイルの健診に有用なテキスト公開/国立長寿医療研究センター

 2020年6月、健康長寿教室テキスト第2版が国立長寿医療研究センターの老年学・社会科学研究センターのホームページ上に公開された。これは同施設のフレイル予防医学研究室(室長:佐竹 昭介氏)が手がけたもので、2014年に初版が発刊、6年ぶりの改訂となる。 健康長寿教室テキストは介護予防に役立てるためのパンフレットで、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)に関する基本的概念に加え、実践編として「お口の体操」「運動」「フレイルや低栄養を予防するための食事の工夫やレシピ」などが掲載されている。このほかにも、最新の話題として、新型コロナなどによる外出制限時の対策にも応用できる内容が紹介されている。なお、健康長寿教室テキストは無料でダウンロードして使えるため、後期高齢者健康診査(いわゆるフレイルの健診)、スタッフ研修、敬老会の資料としても有用である。 健康長寿教室テキストの改訂にあたり荒井 秀典氏(国立長寿医療研究センター理事長)は、「当センターのみならず、国内外で明らかになった成果を取り入れ、お口の健康に関する内容を充実するとともに、よりわかりやすく健康的な食事のレシピや最新版の運動プログラムを含めた内容に一新した。高齢者では多くの病気を合併することが多いが、病気の適切な診断と治療を行うことはもとより、加齢とともに心身が衰えてくる『フレイル』の予防を行うことで、真の健康寿命の延伸をめざした全人的医療を行っている。病気の治療はどの医療機関でもできるが、本テキストに載っているようなフレイル予防を実践しているところはまだまだ少ないのが現状」とし、また、「新型コロナウイルス感染症の影響で外出を控えるようになり、地域での活動も制限され、『生活不活発』による身体機能の低下も懸念されている。本テキストをさまざまな現場で活用することにより、フレイルにならずにいつまでも元気で長生きしていただけることを祈念している」と述べている。<健康長寿教室テキスト目次>◆知識向上編第1章 健康寿命とフレイル第2章 フレイルに関連する状態◆実践編第3章 フレイルを予防するお口のお手入れ第4章 フレイルを予防する栄養第5章 フレイルを予防する運動第6章 フレイルを予防する生活第7章 老いと上手に付き合うために

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COVID-19重症化リスクのガイドラインを更新/CDC

 6月25日、米国疾病予防管理センター(CDC)はCOVID-19感染時の重症化リスクに関するガイドラインを更新し、サイトで公開した。 CDCは、重症化リスクの高い属性として「高齢者」「基礎疾患を持つ人」の2つを挙げ、それぞれのリスクに関する詳細や感染予防対策を提示している。また、今回からリスクを高める可能性がある要因として、妊娠が追加された。高齢者のリスクと推奨される対策 米国で報告されたCOVID-19に関連する死亡者の8割は65歳以上となっている。・他人との接触を避け、やむを得ない場合は手洗い、消毒、マスク着用などの感染予防策をとる。・疑い症状が出た場合は、2週間自宅に待機する。・イベントは屋外開催を推奨、参加者同士で物品を共有しない。・他疾患が進行することを防ぎ、COVID-19を理由に緊急を要する受診を遅らせない。・インフルエンザ、肺炎球菌ワクチンを接種する。・健康状態、服薬状況、終末期ケアの希望などをまとめた「ケアプラン」を作成する。基礎疾患を持つ人のリスクと推奨される対策【年齢にかかわらず、重症化リスクが高くなる基礎疾患】・慢性腎疾患・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・臓器移植による免疫不全状態(免疫システム減弱)・肥満(BMI:30以上)・心不全、冠動脈疾患、心筋症などの深刻な心臓疾患・鎌状赤血球症・2型糖尿病【重症化リスクが高くなる可能性がある基礎疾患】・喘息(中等度~重度)・脳血管疾患(血管と脳への血液供給に影響を与える)・嚢胞性線維症・高血圧または高血圧症・造血幹細胞移植、免疫不全、HIV、副腎皮質ステロイド使用、他の免疫抑制薬の使用による免疫不全状態・認知症などの神経学的状態・肝疾患・妊娠・肺線維症(肺組織に損傷または瘢痕がある)・喫煙・サラセミア(血液疾患の一種)・1型糖尿病 上記の基礎疾患を持つ人は高齢者同様の感染予防対策をとるほか、疾患治療を中断せず、1ヵ月分の処方薬を常備することが推奨されている。

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DES留置のACS、短期DAPT後にチカグレロル単剤で予後改善/JAMA

 薬剤溶出ステント(DES)留置術を受けた急性冠症候群(ACS)患者では、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を3ヵ月間施行後にチカグレロル単剤療法に切り替えるアプローチは、12ヵ月間のチカグレロルベースのDAPTと比較して、1年後の大出血と心血管イベントの複合アウトカムの発生をわずかに低減し、統計学的に有意な改善が得られることが、韓国・延世大学校医科大学のByeong-Keuk Kim氏ら「TICO試験」の研究グループによって示された。研究の成果は、JAMA誌2020年6月16日号に掲載された。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)としてDES留置術を受けたACS患者では、アスピリン+P2Y12阻害薬による短期DAPT施行後にアスピリンを中止することで、出血リスクが軽減するとされる。一方、新世代DES留置術を受けたACS患者において、アスピリン中止後のチカグレロル単剤療法に関する検討は、これまで行われていなかったという。韓国の38施設が参加した無作為化試験 研究グループは、DES留置後のACS患者における、3ヵ月間のDAPT施行後のチカグレロル単剤への切り替えは、12ヵ月間のチカグレロルベースのDAPTと比較して、純臨床有害事象(net adverse clinical event:NACE)を低減するかを検証する目的で、多施設共同非盲検無作為化試験を実施した(韓国・心血管研究センターなどの助成による)。 対象は、2015年8月~2018年10月の期間に、韓国の38施設でDES(超薄型生体吸収性ポリマーシロリムス溶出性ステント)留置術を受けたACS患者(ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞、不安定狭心症)であった。 被験者は、3ヵ月間のDAPT(アスピリン+チカグレロル)施行後に、アスピリンを中止してチカグレロル(90mg、1日2回)単剤に移行する群、またはアスピリンを中止せずにチカグレロルベースのDAPTを12ヵ月間継続する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは1年後のNACEの発生とした。NACEは、大出血と主要心脳血管有害事象(MACCE:死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、標的血管再血行再建術)の複合と定義された。大出血の発生は有意に低下、MACCEには差がない 3,056例(平均年齢61歳、女性628例[20%]、ST上昇型心筋梗塞36%、糖尿病27%)が登録され、2,978例(97.4%)が試験を完遂した。チカグレロル単剤群に1,527例、12ヵ月チカグレロルベースDAPT群には1,529例が割り付けられた。 主要アウトカムは、チカグレロル単剤群で59例(3.9%)に発生し、12ヵ月DAPT群の89例(5.9%)と比較して、その差は小さいものの統計学的に有意であった(絶対群間差:-1.98%、95%信頼区間[CI]:-3.50~-0.45、ハザード比[HR]:0.66、95%CI:0.48~0.92、p=0.01)。 事前に規定された10項目の副次アウトカムのうち、8項目には有意な差はみられなかった。TIMI出血基準による大出血(1.7% vs.3.0%、HR:0.56、95%CI:0.34~0.91、p=0.02)および大出血または小出血(3.6% vs.5.5%、0.64、0.45~0.90、p=0.01)の発生は、チカグレロル単剤群で良好であったが、MACCE(2.3% vs.3.4%、0.69、0.45~1.06、p=0.09)およびその5つの構成要素の個々の発生には差がなかった。 著者は、「これらの知見を解釈する際には、イベント発生率が予想よりも低かった点などを考慮する必要がある」としている。

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すべての診療科に関わる!タバコ問題を自分事にするために知っておきたいこと(1)【新型タバコの基礎知識】第20回

第20回 すべての診療科に関わる!タバコ問題を自分事にするために知っておきたいこと(1)Key Points新型タバコ問題に行く前の段階で、いかに社会はタバコ産業によって歪められているかについて知っておくことがとても重要歴史上、タバコ会社による“安全なタバコ”の開発は一度も成功していないタバコ会社の歴史を知ることで新型タバコ問題がみえてくる残念ながらタバコ問題を客観的に捉え、自分事にできている人は少ないのが現状です。われわれが生まれる前から認識が歪められてしまっていて、そのこと自体に気付くことが難しいからかもしれません。それは医師も例外ではありません。新型タバコ問題に行く前の段階で、いかに社会はタバコ産業によって歪められているかについて知っておくことがとても重要です。新型タバコ問題についてきちんと理解するために、知っておかなければならないことは、人々とタバコとタバコ会社の歴史です。歴史上、タバコ会社による“安全なタバコ”の開発は一度も成功していません。しかし、タバコ会社は、新しいタバコ製品が従来からのタバコ製品よりもより安全ではないかと誤解させることには、何度も成功してきています。その最新の事例が加熱式タバコだと言えるでしょう。人々とタバコとタバコ会社の歴史を知ることで新型タバコ問題がみえてきます。今回は、タバコについてのよくある疑問と一緒に、歴史をみていこうと思います。よく聞かれるのが、「タバコを禁止してくれたら禁煙するのに、なぜ禁止してくれないのか?」というものです。そもそも、なぜ、いまだにタバコは合法であり続けているのでしょうか? 今でもタバコが合法だからこそ、新しいタバコが市場に出てきたとも言えます。紙巻タバコは20世紀前半にかけての産業技術開発により大量生産が可能となり、まず高所得国を中心に普及しました。1900年以前において、タバコは広く普及しておらず、大衆文化ではありませんでした。タバコが国民・住民の文化であるというイメージは、近年にタバコ産業によって意図的に創出されたものです。普及前や普及直後には、タバコによる健康被害は当然分かっていませんでした*1。タバコ産業による巧みなマーケティング戦略により、タバコは20世紀に急激に普及しました。*1:ただし、タバコが普及した当初からタバコの健康被害を懸念する者もいた。そのはるか昔にも、タバコの健康被害は指摘されていた。たとえば、1712年に貝原益軒が著した「養生訓」には「煙草は性毒あり」「煙をふくみて眩ひ倒るゝ事あり」「病をなす事あり」「習へばくせになり、むさぼりて後には止めがたし」などと書かれている。タバコの害を懸念していた状況というのは、現在の新型タバコをめぐる状況と同じだとも言えそうだ。その後、タバコの害に関する研究が進み、1950年前後になってようやく喫煙による健康被害が報告されはじめました。この時になってはじめてタバコには害があると公に分かったわけですが、すでにタバコは広く普及してしまっていました。タバコ利権はすでに巨大なものとなっていたのです。その利権があまりに大きかったがゆえにタバコを擁護する勢力が強大で、すぐにタバコを禁止することができなかったと言えるでしょう。タバコには明らかに害があるとされたにも関わらず、です。今でもタバコが合法であり続けているのには、さらなる理由があります。タバコの害が明らかになったその時、世界のタバコ会社の幹部による会議が開かれました。そこで、タバコ会社は、「できるだけ人々がタバコの害に気付かず、吸い続けてくれるようにマーケティング戦略を駆使して、人々をだましていこう」との方針を決めたのです。タバコの害が報告されて以降も、世の中には、タバコの害を認識していない人がまだ多くいました。タバコの害を認識していない医師をつかまえてきて、タバコは良いものだ! と訴える広告に使ったのです(図)。画像を拡大するタバコ会社がお金を出して、「ストレスが体に悪い」*2、「タバコはストレスを減らす」というストーリーが作られてきたということが、タバコ会社の内部文書等の分析から明らかにされています。タバコはまったくストレスを減らさず、むしろ、ニコチン欠乏によるストレスを増やすと分かっています。ストレスが悪い、というストーリーは、タバコ以外にも悪いものを作りたかったタバコ産業の意図に完全に沿ったものとして作られました。その結果として、ストレスといえば悪いもの、とのイメージができてしまっていますが、これは誤ったイメージです*3。*2:実は、この「ストレスが体に悪い」というストーリーは、動物実験の結果から導かれたものだ。その動物実験では、ストレスとして、お腹に針を刺すと健康が害される、というような実験がされていた。お腹に針を刺すというのはストレスというよりは傷害事件になるレベルの出来事である。それであれば、健康を害してもなんらおかしくはない。そんな実験結果をもとにして、「ストレスは悪い!」というイメージだけが作られてしまったのである。*3:精神科医の中沢正夫氏は「ストレスは悪玉なのではない…ストレスを1つ1つ乗り越えることが、『人間』の発達なのである。ストレスは元来、避けるべき対象ではなく、乗り越えるべき対象なのである。一切のストレスを回避すれば、それは楽であろうが、その人は成長もまたあきらめることになるのである」と書いている。出典:中沢正夫著、ストレス善玉論、情報センター出版局、1987年ストレスはまったくないよりも適度にあった方がよい、過度でない適度なストレスはむしろやる気につながる、といった認識に対して反対される方は少ないのではないでしょうか。タバコ産業が意図的にストレスは悪いという極端なイメージを植え付けてきたために、われわれの認識は大きく歪められてしまっているのです。さて、タバコ問題の歴史に話をもどします。1964年、タバコ問題にとって非常に重要な報告がなされました。米国公衆衛生総監による最初のタバコの有害性に関する報告書が公開されたのです。1950 年代に喫煙と肺がんとの関連を示す研究が相次いで発表されたことを背景にして、喫煙と健康に関する包括的評価が実施され、男性において喫煙と肺がん、喫煙と喉頭がんとの間に因果関係がある*4と結論付けました。この報告の影響もあり、欧米の高所得国では喫煙率が減少傾向となり、日本でも1960年代をピークに喫煙率は減少に転じました。*4:「因果関係がある」とは単に関連しているということではなく、時間的前後関係として先に「喫煙」したことによって後に「肺がん」に罹患したり、肺がんを原因として死亡したりすることが増えるということを指す。1990年代、米国では各地でタバコ病に関する集団訴訟が起こり、タバコ会社が販売するタバコのために人々が病気になり、社会的損失が大きいとして、タバコ会社は追い詰められました。その結果、1998年にMaster Settlement Agreement というタバコ病訴訟の和解があり、米国のタバコ会社はその後25年間をかけて42 兆円にのぼる賠償金(和解金)を米国政府に支払うこととなったのです。その賠償金を使い、米国では多額の費用を要するテレビCM 等の脱タバコ・メディアキャンペーンが積極的に展開されてきています。こういった影響もあり、米国をはじめとした先進国では喫煙率は減少してきました。しかし、タバコ会社が世界中にマーケットを広げていったため、中低所得国にもタバコが普及しました。東南アジアなどの国では以前はほとんどタバコを吸う人はいなかったにもかかわらず、近年急激にタバコが普及してしまっています。タバコ産業は世界のタバコマーケットを維持するために莫大な予算をマーテティング活動に投じているのです。そして、地球人口の増加や中国などの経済新興国におけるタバコ消費量の増大も影響し、実は世界のタバコ消費量は増え続けています1)。1964年にタバコの害が明確に証明されてから50年以上がたっていますが、世界のタバコ消費量はその当時に比べて減るどころか、増えています。タバコ問題は決して過去の問題ではないのです。タバコ会社は、中低所得国では昔の日本や欧米で使われたような古典的なマーケティング戦略を駆使してタバコを売り込んでいます。一方で、日本や欧米のように喫煙率が低下傾向にある先進国におけるタバコ会社の戦略は基本的に一貫しています。「喫煙率が低下していくとしても、少しでも低下するスピードを遅くする。そのために、あらゆる手段を駆使して、タバコ対策を阻害し、少しでも多くの人にタバコを始めてもらい、吸い続けてもらうように仕向ける」という戦略です。2010年に神奈川県で受動喫煙防止条例が制定されました。日本で初めての受動喫煙防止条例です。この時、タバコ会社からの妨害工作がすさまじく、神奈川県は住民世論調査をまるまるやり直す事態となりました。はじめの調査では、タバコ会社による組織的動員によって不自然な反対票の急増が確認されたのでした。調査をやり直した結果、8割近くの県民が条例に賛成していると分かり、この世論が条例成立の後ろ盾となりました。もし、不自然な票の動きに気付いていなければ、日本で最初の受動喫煙防止条例は成立していなかったかもしれません。この辺りの事情はその当時の神奈川県知事であった松沢成文氏の著書『JT、財務省、たばこ利権』2)に詳しく書かれています。第21回は、「すべての診療科に関わる!タバコ問題を自分事にするために知っておきたいこと(2)(最終回)」です。1)Eriksen M, et al. The Tobacco Atlas, Fifth Edition: Revised, Expanded, and Updated. Atlanta, USA: American Cancer Society,2015.2)松沢成文 著. JT、財務省、たばこ利権 ~日本最後の巨大利権の闇~. ワニブックス;2013.

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超速効型インスリン ルムジェブを発売/日本イーライリリー

 6月17日、日本イーライリリーは、超速効型インスリンアナログ製剤(遺伝子組換え)インスリンリスプロ(商品名:ルムジェブ注)の「同ミリオペン」、「同ミリオペンHD」、「同カート」「同100単位/mL」を「インスリン療法が適応となる糖尿病」を効能・効果として新発売した。 本剤は、より良い血糖コントロールの実現のために、健康な人のインスリン分泌により近いインスリン動態の再現を目指し開発された薬剤。 既存の超速効型インスリンアナログ製剤の有効成分に添加剤を加えることで、皮下からの吸収を速め、日本人1型糖尿病患者において従来の製剤と比べて最高濃度の50%に達する時間を13分、曝露持続時間を88分短縮し、速やかなインスリン作用発現および消失を実現した。 本剤は通常、食事開始時(食事前2分以内)に1回2~20単位を皮下注射する。そのため、患者が食事内容を確認した上で、「いただきます」のタイミングで投与することが容易となり、処方薬剤の変更によって患者の現在の生活リズムを大きく変える必要がない。また、必要な場合は食事開始後20分以内に投与することも可能。 同社では、「本剤は、健康な方のインスリン分泌により近いインスリン動態を持つ有望な新薬。食後の血糖値を目標範囲内に収めるための新たな選択肢」と期待を寄せている。ルムジェブ注の概要一般名:インスリンリスプロ(遺伝子組換え)商品名: ルムジェブ注ミリオペン ルムジェブ注ミリオペンHD ルムジェブ注カート ルムジェブ注100単位/mL効能・効果:インスリン療法が適応となる糖尿病用法・用量: 通常、成人では1回2~20単位を毎食事開始時に皮下注射するが、必要な場合は食事開始後の投与も可能。時に投与回数を増やしたり、持続型インスリン製剤と併用したりすることがある。投与量は、患者の症状および検査所見に応じ適宜増減するが、持続型インスリン製剤の投与量を含めた維持量としては通常1日4~100単位。(ルムジェブ注100単位/mLのみ)必要に応じ持続皮下注入ポンプを用いて投与する。薬価: ルムジェブ注ミリオペン(300単位1キット)1,400円 ルムジェブ注ミリオペンHD(300単位1キット)1,400円 ルムジェブ注カート(300単位1筒)1,175円 ルムジェブ注100単位/mL(100単位1mLバイアル)277円製造販売承認日:2020年3月25日薬価基準収載日:2020年5月20日発売日:2020年6月17日

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生活習慣病患者の2割が通院せず自粛/血糖トレンド委員会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、生活習慣病患者の多くが外出を自粛したことに伴い、医療機関への通院を控えた事例が散見される。では、実際どの程度の通院などの自粛がされていたのだろう。 血糖コントロールの重要性、および「血糖トレンド」の概念とその活用方法について、医学的、学術的および患者視点でわかりやすく正確な情報発信を行うこと目的とした委員会である「血糖トレンド委員会」(代表世話人: 西村 理明氏[東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授])は、生活習慣病患者にCOVID-19がどのような影響を与えたのかを分析するため調査を実施し、今回その結果を発表した。●調査概要・調査期間 2020年6月8日(月)・9日(火)・調査方法 インターネット調査・調査対象 生活習慣病患者309名(内訳:高血圧103名、2型糖尿病103名、高脂血症103名)・実施機関 株式会社マクロミル主な調査結果・定期的な通院を必要とする生活習慣病患者の20.4%がコロナ感染予防を理由に通院を自粛。患者の44.9%は今後の通院もいまだに不安。・外出自粛で変わった生活習慣。58.6%の患者が体調管理への意識が向上。・生活習慣病患者の49.8%が自己管理ツールに関心。60代でも7%がツールを利用、49%が関心あり。個々のアンケート調査の内容 「COVID-19の流行が始まってから、普段の通院回数に変化はありましたか」の問いに、「変わらない」(78.6%)、「減った/通院していない」(20.4%)、「増えた」(1.0%)の回答結果だった。また、「減った/通院しなかった理由」(n=63)では、複数回答で「新型コロナ感染予防のため」(77.8%)、「自主的に外出自粛をしていたため」(30.2%)の順で多かった。 「緊急事態宣言が解除されてからの通院状況について」では、「不安はなく、通院を再開した」(33.7%)、「不安はあったが、通院を再開した」(30.4%)の順で多かった。 「オンライン診療に関心があるか」では、「関心はあるが、受診したくない」(38.8%)、「関心があり、受診したい」(30.7%)、「関心がない」(28.5%)の順で多かった。 「自粛期間中、普段よりも自身の体調管理を意識したか」では、「意識をしていた」(58.6%)、「特に意識していない」(41.4%)とセルフメディケーションの意識が向上していた。 最後に「自身の健康管理をサポートしてくれるツールに興味があるか」という問いには、「興味がある」(49.8%)、「興味がない」(41.7%)、「すでに活用している」(8.4%)の回答結果で、とくに60歳以上の回答割合もほぼ同様で、スマートフォンの普及も向上し、今後活用されていく可能性が示唆された。 今回、調査を行った同委員会では、「今回の調査で、糖尿病をはじめとする生活習慣病の患者たちがコロナ感染への不安を抱えながらも、コロナ禍において前向きに体調管理に取り組んでいたことが明らかとなった」と結果を分析している。

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若年1型DM、CGMが血糖コントロールを改善/JAMA

 1型糖尿病の青少年および若年成人患者において、持続血糖測定(CGM)は標準的血糖測定に比べ、血糖コントロールをわずかではあるが統計学的に有意に改善し、患者満足度も良好であることが、米国・ハーバード大学医学大学院のLori M. Laffel氏らが行った「T1D(CITY)研究」で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年6月16日号に掲載された。1型糖尿病患者では、青少年および若年成人期が生涯で最も血糖コントロールが不良とされる。CGMは、成人患者で血糖コントロールの改善が示されているが、青少年および若年成人の患者における有益性は明確ではないという。14~24歳の患者対象、米国の無作為化試験 本研究は、1型糖尿病の青少年および若年成人患者の血糖コントロールにおけるCGMの有効性を評価する無作為化臨床試験であり、米国の14施設の参加の下、2018年1月~2019年5月の期間に実施された(米国・Jaeb Center for Health Researchの助成による)。 対象は、年齢14~24歳、HbA1c 7.5~10.9%の1型糖尿病で、罹患期間が1年以上、インスリンポンプまたは頻回インスリン注射を使用し、1日の総インスリン量が0.4単位/kg/日以上で、試験登録前の3ヵ月間にCGMを使用していない患者であった。 被験者は、CGMを受ける群(CGM群)または通常の血糖モニタリングを受ける群(BGM群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。CGMは、トランスミッターとレシーバー、皮下に装着して7日ごとに交換するセンサーから成り、5分ごとに間質液のグルコース濃度を測定した。 主要アウトカムは、ベースラインから26週までのHbA1cの変化とした。副次アウトカムは20項目で、HbA1c関連アウトカムが7項目、CGM指標が9項目、患者報告アウトカムが4項目だった。平均HbA1c、CGM群0.4%低下、BGM群は不変 153例(平均年齢17[SD 3]歳、女性76例[50%]、平均糖尿病罹患期間9[SD 5]年)が登録され、142例(93%)が試験を完遂した。CGM群に74例、BGM群には79例が割り付けられた。CGM群の68%が、26週の時点で週に5日以上CGMを使用していた。26週までに、9つのCGMデバイスの不具合が起きたが、有害事象との関連はなかった。 平均HbA1cは、CGM群がベースラインの8.9%から26週には8.5%に低下したのに対し、BGM群はベースラインおよび26週とも8.9%であり、CGM群で良好な結果が得られた(補正後群間差:-0.37%、95%信頼区間[CI]:-0.66~-0.08、p=0.01)。 事前に規定された20項目の副次アウトカムについては、HbA1c関連の7つの二値変数のうち3つ(HbA1cが26週までに0.5%以上低下[CGM群44% vs.BGM群21%、補正後群間差:23%、95%CI:7~37、p=0.005]など)、9つのCGM指標のうち8つ(目標血糖値[70~180mg/dL]を達成した時間の平均割合[補正後群間差:6.9%、95%CI:3.1~10.7、p<0.001]など)、4つの患者報告アウトカムのうち1つ(Glucose Monitoring Satisfaction Survey scoreによる患者満足度[補正後群間差:0.27、95%CI:0.06~0.54、p=0.003])が、CGM群で有意に良好であった。 両群で最も頻度の高い有害事象は、重症低血糖(CGM群3例、BGM群2例)、高血糖/ケトーシス(1例、4例)、糖尿病性ケトアシドーシス(3例、1例)であった。 著者は、「これらの知見の臨床的重要性を理解するには、さらなる検討を要する」としている。

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第12回 ニコチン依存症治療用アプリが人間味を帯びたら医者いらず?

疾患治療にスマホアプリが処方される時代がやってきた。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)は6月19日、株式会社CureApp(キュア・アップ)が申請した禁煙治療用アプリ「CureApp SCニコチン依存症治療アプリおよびCOチェッカー」の製造販売承認を了承した。7月にも正式承認となる見込みで、同社は保険適応を目指している。臨床試験でも認められた禁煙治療用アプリの効果日本では2014年に施行された医薬品医療機器等法(薬機法、旧薬事法改正とともに名称変更)で、診断・治療などを目的としたソフトウェア単体も医療機器として分類されることになった。アメリカでは2型糖尿病の治療用アプリが既にFDAの承認を取得して実際に用いられているが、日本国内で臨床試験を経た治療用アプリの承認は初。しかも、禁煙治療用アプリとしては世界初である。このアプリは既存のニコチン製剤による禁煙治療と併用される。喫煙によるニコチン依存は、ニコチン摂取により脳内で起きる快感や報酬感が反復することで起こる身体的依存と喫煙で身に付いたクセや習慣が抜けない心理的依存の2つに分けられ、医療的な措置として、前者はまさにニコチン製剤、後者は診察時の医療従事者によるカウンセリング的なものとなる。ただ、現在の保険適応のニコチン製剤による治療期間は3ヵ月で、最初の1ヵ月間は2週間おき、その後は1ヵ月おきで受診回数は合計5回のみ。しかし、この間、患者は個人差があっても日常的に身体的依存と心理的依存に悩まされる。身体的依存に対するニコチン製剤は毎日2回服用するものの、心理的依存への対処は5回の受診時のみだ。この心理的依存への措置を補完するのが今回のアプリである。報道にもあるように禁煙治療期間中に心理的依存に悩む場合はアプリを立ち上げると、そのつらさに共感し、緩和措置を提案するメッセージが表示される。また、前述のアプリの正式名称からも分かるように禁煙治療中の受診時に測定される呼気中一酸化炭素(CO)濃度の専用測定機器が付属し、測定結果をアプリに送信して医師と共有することでよりきめ細かな日常管理も可能になるという。ちなみにアプリによる治療はニコチン製剤による治療より長い6ヵ月間。医師がアプリを処方した際に患者には処方コードが渡される。このコードをダウンロードしたアプリに入力することで、アプリはアクティベートされ、6ヵ月後には自動的に使用不可となる。実際に行った臨床試験での継続禁煙率は半年間(9~24週)で対照群が50.5%、アプリ使用群が63.9%、1年間(9~52週)では対照群が41.5%、アプリ使用群52.3%でいずれも統計学的な有意差(p=0.010)が認められた。禁煙治療中にはどんなことが起こるのか?率直に言ってもう少し早く承認されていれば、私自身が使ってみたかったと思う。というのも、この原稿を執筆している今現在、ニコチン製剤による禁煙治療中だからだ。ちなみに7月1日で3ヵ月間の全治療コースが終了予定である。前回も書いたが、私は高尿酸血症の解消のため1年7ヵ月で体重14kg減を実現した。減量開始当初はここまでできるとは思っていなかったが、この間、ウエストも20cm減となり、お腹ポッコリが気になって着れなかったボディコンのTシャツも着れるなど良いことは多い。そしてこの14kg減量を実現すると、どうしても喫煙を続けている自分が気になった。要は高級ブランドのワイシャツを着ると、ネクタイも高級ブランドのものにしたくなるような感覚といったらいいのかもしれない。私は安アパートを個人事務所にしており、かつてはほぼ1日中喫煙しながら仕事をしていた。14kg減量できたのだから禁煙もそんなに苦痛なくできるはずだろう、と思って始めたのだが、これが予想外に大変だった。完全禁煙から約2週間は1日3時間ほどしか仕事ができなかった。原稿を書く以上、当然キーボードに両手を置いているはずなのだが、実は結構な頻度で喫煙し、むしろ喫煙の合間に仕事をしているような感覚に近かったのかもしれない。禁煙を開始し、頻繁にタバコを手にしていた左手が手ぶら状態なのがどうにも気になって仕方ない、率直な表現をすると左手をどこに置いて良いのか分からないのだ。それならば左手もキーボードに置いて終始仕事に集中すれば良いだろうと言われるかもしれないが、そんな「生易しい」ものではない。あまりの手持無沙汰に左手をブルブル振り、それも疲れると散歩と称して外をぶらぶら歩く。この繰り返しでまともに着席していられない。この地獄の2週間を過ぎると、今度は食後、飲酒時に無性にタバコが欲しくなる。絶対タバコは購入しないと決めていたが、緊急事態宣言もあり喫煙者がいる飲酒の席がほとんどなかったことも幸いしたかもしれない。2ヵ月以上過ぎた今は2~3日に1回ぐらいは「タバコがあったら」と思うことはあるが、だいぶ慣れてきた。今では喫煙直後と思われる人とすれ違っただけで、それに気づくようにもなっている。禁煙治療を阻害する医師たちとは?この間、受診時に主治医から「どうですか?」と尋ねられた際は率直にそのことを説明していたが、一度だけ「気を紛らわすためには水を飲むとか運動するとかが良いと言われています」と他人事のように言われたぐらいである。臨床試験の結果から推察すれば、私が経験した悩みがこのアプリで解決できる可能性はあるということだ。ただ、このアプリで示されているようなモデルは、医師を巡るある命題を再燃させることにもつながる。近年の人工知能(AI)の台頭とともに一時期活発化した「医師はAIに置き換わるのか」という議論だ。この件は現状のAIの精度が決定打といえないことから、「医師かAIかではなく、AIを使わない医師は淘汰される」との方向で収束しているように思う。また、別の観点からは「AIは患者に共感はできないが、ヒトである医師は患者に共感を示せる」から医師がAIに置き換わることは難しいと言われてきた。だが、今回のアプリが患者への共感の一部も代行できるならば、医師はもはや患者に共感を示せるだけでは不十分となる。古の孫子が唱えた「彼を知り己を知れば百戦殆からず」にならい、アプリの挙動も踏まえてより高い共感を患者に示さねばならなくなる。医師の生存環境はより厳しいものになるが、逆にそれができれば、前述の臨床試験で示された長期的な禁煙継続率も上昇すると肯定的に捉えることは可能だ。ちなみに私は元喫煙者として、経験上、患者の禁煙の阻害になる医師像のほうが明示しやすい。それは健康増進法改正議論が活発化した際にとくに目立った「喫煙の害のみを繰り返し強調する医師」である。こうした医師が間違っているというわけではない。しかし、年々喫煙率が低下し、現在では2割を切る少数派としての喫煙者はいわば確信犯である。その確信犯たる喫煙者に善悪論のみで行動変容を迫ることはかなり困難である。なぜなら自分をひたすら否定する人の忠告にヒトは耳を貸さないからだ。実際、私自身、あの健康増進法改正論議の当時は「意地でも止めるものか」と思ったものだ。喫煙問題に熱心な医師ほど「喫煙はニコチン依存症」と病気であることを強調する。依存症治療では、依存対象と物理的に距離を取らせ、依存対象を分散させるが、そのベースには患者への寄り添いが必要であると多くの精神科医が強調する。だからこそ今回の禁煙治療用アプリの登場で、禁煙治療での「共感=寄り添い」の欠如を改めて感じてしまうのだ。参考Masaki K, et al. NPJ Digit Med. 2020 Mar 12;3:35.[Epub ahead of print]

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高齢1型DM患者の低血糖発現、CGM vs.標準BGM/JAMA

 60歳以上の1型糖尿病高齢患者では、標準的な血糖測定(BGM)に比べ持続血糖測定(CGM)を行うことにより、低血糖がわずかではあるが統計学的に有意に減少することが認められた。米国・AdventHealth Translational Research InstituteのRichard E. Pratley氏らが、米国の内分泌科22施設で実施した無作為化臨床試験の結果を報告した。CGMはリアルタイムで血糖値を評価できることから、1型糖尿病高齢患者の低血糖を軽減することが期待されていた。JAMA誌2020年6月16日号掲載の報告。1型DM高齢患者203例を対象に、CGM vs.標準BGM下の低血糖発現を評価 研究グループは、60歳以上の1型糖尿病患者203例を、CGM群(103例)と標準BGM群(100例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。標準BGM群には、自宅で1日4回以上血糖測定を行ってもらうとともに、無作為化後7、15および25週後に来院してCGM(盲検下)を1週間装着してもらった。両群とも無作為化後4、8、16および26週後に評価した。 主要評価項目は、6ヵ月の追跡期間におけるCGM測定下で血糖値70mg/dL未満を示した時間の割合。副次評価項目は、血糖値54mg/dL未満または60mg/dL未満の低血糖、高血糖、血糖コントロール(血糖値、HbA1c)、認知機能および患者報告アウトカム(PRO)など31項目が事前に定義された。血糖値70mg/dL未満の時間の割合、CGM群で有意に低下 203例の患者背景は、年齢中央値68歳(四分位範囲[IQR]:65~71)、罹病期間中央値36年(IQR:25~48)、女性52%、インスリンポンプ使用者53%、平均HbA1c 7.5%(標準偏差0.9%)であった。203例中83%が6ヵ月間で6日/週以上CGMを使用した。 血糖値70mg/dL未満の時間中央値は、CGM群がベースラインでは5.1%(73分/日)、追跡期間時は2.7%(39分/日)であり、標準BGM群はそれぞれ4.7%(68分/日)、4.9%(70分/日)であった(補正後群間差:-1.9%[-27分/日]、95%信頼区間[CI]:-2.8~-1.1[-40~-16分/日]、p<0.001)。 副次評価項目31項目中、CGM評価による低血糖および高血糖に関する全9項目と、HbA1cに関する7項目中6項目で統計学的有意差が認められたが、認知機能およびPROに関する15項目については、有意差は認められなかった。CGM群では、標準BGM群と比較して平均HbA1cが低下した(補正後群間差:-0.3%、95%CI:-0.4~-0.1、p<0.001)。 主な有害事象(CGM群、標準BGM群)は、重症低血糖(1例、10例)、骨折(5例、1例)、転倒(4例、3例)、救急外来受診(6例、8例)であった。 著者は、社会経済状況が高く専門的な糖尿病治療を受けている患者を対象としていること、介入期間が6ヵ月間と短いこと、旧型のCGMセンサーを使用したことなどを研究の限界として挙げ、「長期的な臨床的有用性を理解するためには、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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セマグルチドのSTEP試験結果を発表/ノボノルディスクファーマ

 ノボノルディスクファーマは、セマグルチド2.4mgの第III相試験STEP2、STEP3においてプラセボ群と比較し、有意な体重減少を示し、臨床試験プログラムを完了したと6月17日に発表した。 本製剤は、ヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)ホルモンのアナログ製剤で、空腹感を軽減し、満腹感を高めることで食事量を減らし、カロリー摂取量を減らすことを助け、体重減少を促す働きをもつ。なお、本製剤および効能・効果は、日本を含めて現在開発中であり、未承認の製剤である。肥満の2型糖尿病患者を対象にしたSTEP2試験 STEP2は68週間の無作為割り付け、二重盲検、多施設共同、プラセボ対照試験。本試験では、セマグルチド2.4mgを週1回、68週間にわたって皮下投与した際のプラセボおよびセマグルチド1.0mg週1回皮下投与に対する有効性および安全性を検討した。対象者は、合併症を伴う肥満または過体重の2型糖尿病の成人1,210例を対象に、生活習慣の介入を行った上で実施した。 無作為割り付けされた全例において、セマグルチド2.4mgの皮下投与による68週間の治療群では、プラセボ群およびセマグルチド1.0mgの皮下投与群と比較して統計的に有意に優れた体重減少が示された。セマグルチド2.4mgの皮下投与群では、ベースラインにおける平均体重99.8kgから9.6%の体重減少が達成されたのに対し、プラセボ群における体重減少は3.4%、セマグルチド1.0mgの皮下投与群における体重減少は7.0%だった。さらに、セマグルチド2.4mgの皮下投与群の68.8%が68週後に5%以上の体重減少に達したのに対し、プラセボ群では28.5%だった。 また、計画書の規定通り行われた場合の治療効果を評価したところ、セマグルチド2.4mgの皮下投与群では、68週後に10.6%の体重減少が認められたのに対し、プラセボ群では3.1%、セマグルチド1.0mgの皮下投与群では7.5%の体重減少が認められた。68週後に5%以上の体重減少が認められたのは、セマグルチド2.4mgの皮下投与群で73.2%であったのに対し、プラセボ群では27.6%だった。以上で本試験では、両主要評価項目を達成した。頻回行動管理療法を併用した肥満患者を対象にしたSTEP3試験 STEP3は68週間の無作為割り付け、二重盲検、多施設共同、プラセボ対照試験。対象者は、合併症を伴う肥満または過体重の成人611例を対象に、セマグルチド2.4mgを週1回、68週間にわたって皮下投与した際のプラセボに対する効果を比較した。両治療は、毎週の行動サポート、栄養士によるカウンセリング、カロリー摂取を抑える食事療法などで定義される頻回行動管理療法と併用して行われた。 無作為割り付けされた全例において、セマグルチド2.4mgの皮下投与に頻回行動管理療法を併用した治療群では、プラセボに頻回行動管理療法を併用した治療群と比較し統計的に有意に優れた体重減少が示された。セマグルチド2.4mgの皮下投与に頻回行動管理療法を併用した68週間の治療群では、ベースラインにおける平均体重105.8kgから16.0%の体重減少が達成されたのに対し、プラセボに頻回行動管理療法を併用した治療群における体重減少は5.7%だった。さらに、セマグルチド2.4mgの皮下投与に頻回行動管理療法を併用した治療群の86.6%が68週後に5%以上の体重減少を達成したのに対し、プラセボに頻回行動管理療法を併用した治療群では47.6%だった。 また、計画書の規定通りに治験が行われた場合の治療効果を評価したところ、セマグルチド2.4mgの皮下投与に頻回行動管理療法を併用した治療群では17.6%の体重減少が認められたのに対し、プラセボに頻回行動管理療法を併用した治療群では5.0%の体重減少が認められた。5%以上の体重減少が認められたのは、セマグルチド2.4mgの皮下投与に頻回行動管理療法を併用した治療群で89.8%であったの対し、プラセボに頻回行動管理療法を併用した治療群では50.0%だった。以上から本試験でも、両主要評価項目を達成した。 安全性につきSTEP2/STEP3試験にあってセマグルチド2.4mgは、これまでの試験と同様、安全かつ忍容性が良好なプロファイルを有すると考えられた。セマグルチド2.4mg皮下投与による主な有害事象は消化器症状で、ほとんどの事象は軽度または中等度で時間の経過とともに消失した。

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