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血漿ACE2濃度上昇が心血管イベントリスク増大と関連/Lancet

 血漿アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)濃度の上昇は主要な心血管イベントのリスク増大と関連することが、カナダ・マックマスター大学のSukrit Narula氏らによる「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)研究」において示された。ACE2は、レニン-アンジオテンシン系ホルモンカスケードの内因性の拮抗的調節因子であり、循環血中のACE2活性と濃度の上昇は、さまざまな心血管疾患を持つ患者の予後不良マーカーとなる可能性が示唆されていた。Lancet誌2020年10月3日号掲載の報告。5大陸14ヵ国のデータを用いたケースコホート研究 研究グループは、血漿ACE2濃度と、死亡および心血管疾患イベントのリスクとの関連を検証する目的で、PURE研究のデータを用いてケースコホート研究を行った(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成による)。 PURE研究の参加者のうち、5大陸(アフリカ、アジア、欧州、北米、南米)の14ヵ国のデータを用いた。血漿ACE2濃度を測定し、血漿ACE2値の潜在的な決定因子とともに、ACE2と心血管疾患イベントの関連を評価した。 2005年1月~2006年12月の期間にPURE研究に登録された集団のうち、1万753人が解析に含まれた。フォローアップ期間中央値は9.42年(IQR:8.74~10.48)であった。男性、東アジア、高BMIで高値、死亡の最も優れた予測因子の可能性 相対的重要度の最も高い血漿ACE2値の決定因子は性別で、次いで地理的家系、BMI、糖尿病、年齢、収縮期血圧、喫煙、LDLコレステロール値の順であった。男性は女性よりも血漿ACE2値が高く、血漿ACE2濃度は地理的家系によって大きく異なっていた(南アジアが最も低く、東アジアが最も高い)。高BMI、糖尿病、高齢、高血圧、高LDLコレステロール、喫煙は、すべて血漿ACE2値の上昇と関連していた。 臨床的リスク因子と血漿ACE2値の関連の因果関係を検討したところ、遺伝学的に高BMIと2型糖尿病は血漿ACE2の高値と関連したが、高LDLコレステロール、高収縮期血圧、喫煙には関連を認めなかった。 血漿ACE2濃度の上昇は、死亡リスクの増加と関連し(1SD増加ごとのハザード比[HR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.29~1.43)、同様の関連が心血管死(1.40、1.27~1.54)および非心血管死(1.34、1.27~1.43)にも認められた。 また、血漿ACE2濃度は、初発の心不全(1SD増加ごとのHR:1.27、95%CI:1.10~1.46)、心筋梗塞(1.23、1.13~1.33)、脳卒中(1.21、1.10~1.32)、糖尿病(1.44、1.36~1.52)と関連し、これらの結果には年齢、性別、家系、従来の心臓リスク因子とは独立の関係が認められた。脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を加えて補正しても、新規心不全イベントを除き、ACE2値と臨床的エンドポイント(死亡を含む)との独立の関係には頑健性が保持されていた。 ACE2と臨床的リスク因子(糖尿病、BMI、喫煙、非HDLコレステロール、収縮期血圧)の死亡や心血管疾患への影響を解析(臨床的リスク因子、年齢、性別、家系で補正)したところ、ACE2は全死亡(p<0.0001)、心血管死(p<0.0001)、非心血管死(p<0.0001)の最も優れた予測因子であり、心筋梗塞(p<0.0001)では喫煙、糖尿病に次ぐ3番目(非HDLコレステロールとほぼ同等)、心不全(p=0.0032)および脳卒中(p=0.0010)では収縮期血圧、糖尿病に次ぐ3番目に強固な予測因子であった。 著者は、「このようなレニン-アンジオテンシン系の影響を理解して調節することで、心血管疾患の発生を抑制する新たなアプローチがもたらされる可能性がある」としている。

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経口DPP-1阻害薬による気管支拡張症の増悪抑制について(解説:小林英夫氏)-1298

 本論文は気管支拡張症への経口DPP-1(dipeptidyl peptidase 1)阻害薬であるbrensocatib投与により、喀痰中好中球エラスターゼ活性のベースライン低下や臨床アウトカム(増悪)改善が得られたとする第II相試験結果である。DPP-4阻害薬なら糖尿病治療薬として市販されており耳なじみもあろうが、DPP-1阻害薬となると情報が少ないのではないだろうか。詳細説明は割愛するが、好中球エラスターゼなどの好中球セリンプロテアーゼ活性に関与する酵素(DPP-1)を阻害することで、喀痰中の酵素量や活性を低下させえるとのことである。いずれにしろ今後の第III相試験結果を待ちたい。 さて、なぜに昔の疾患と思われている気管支拡張症の検討なのであろうか。まず、気管支拡張症とは疾患名としてよりも、気管支が拡張しているという形態診断名であり、1980年代まではいまや消滅した気管支造影検査によって診断されていた。現在は高分解能CTによって気管支径が併走する肺動脈径の100%以上に拡大しているときに診断される。原因としては、先天性、肺疾患罹患後、免疫不全、アレルギー性疾患などと多岐にわたるが、原因不明(特発性)が最多とされる。気管支拡張症が一時期忘れられていた理由の一部として、筆者はびまん性汎細気管支炎(DPB)へのマクロライド療法の関与を想定する。DPBでは中葉・舌区を中心に気管支拡張合併が通常であり、さらに1980年代にはびまん性気管支拡張の大半はDPB由来ではないかとの本邦論文も発表されている。そのDPBは日本発のマクロライド療法により著減し、最近では希少疾患になろうとしていることから、気管支拡張症も追随して減少したのではと思っていた。 ところが近年、軽症例を含めると、想像以上に多数の潜在症例が埋もれているのではないかと欧米から報告され、気管支拡張症の国際的ガイドラインが刊行されている(Polverino E, et al. Eur Respir J. 2007;50:1700629.)。加えてmicrobiome(体内常在細菌叢とその遺伝情報)が多彩な慢性炎症性疾患の成立に関与しているのではないかという世界的関心の中、気管支拡張症も気道に存在するmicrobiomeが要因の1つではないかと推定されている。健康人の気道からは細菌は検出されないと教えられた世代にとって驚きの知見である。加えて、急増する非結核性抗酸菌症や、関節リウマチなどの免疫性炎症性疾患による気管支拡張症も呼吸器領域では注目の病態である。日本での罹患頻度の統計はないが、関節リウマチを母集団とすると30%もの合併があるという報告も見られ、新たな方法論の発展により気管支拡張症が見直されつつある。

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医療のイノベーション、ヘルスケアベンチャー大賞で体感しよう!

 昨年盛況に終わり、今年2回目を迎える『ヘルスケアベンチャー大賞』(主催:日本抗加齢協会、共催:日本抗加齢医学会)。この最終審査が10月26日(月)に開催される。 ヘルスケアベンチャー大賞は、アンチエイジング領域においてさまざまなシーズをもとに新しい可能性を拓き、社会課題の解決につなげていく試みとして、日本抗加齢医学会のイノベーション委員会発足後、坪田 一男氏(日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長)らが2019年に立ち上げた。ベンチャー企業や個人のアイデアによるビジネスプランを書類審査、1次審査、最終審査の3段階で評価し表彰する。 今年は新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、これまでの日常は非日常となりニューノーマルを余儀なくされている。そんな状況下、ヘルスケア分野でイノベーションを起こそうと多くの起業家や学生が応募した。今回はその中から選出されたファイナリスト8組のユニークなビジネスモデルのプレゼンテーションを聴講できるまたとない機会である。気になる方は参加登録をしてみてはいかがだろうか。第2回ヘルスケアベンチャー大賞 ファイナリスト決定 最終審査【日時】2020年10月26日(月)15~17時【参加方法】WEB開催 (最終審査会参加登録はこちら)【ファイナリスト】<企業5社>合同会社アントラクト:StA2BLEによる転倒リスク評価と機能回復訓練事業株式会社OUI:Smart Eye Cameraを使用した白内障診断AIの開発株式会社Surfs Med:変形性膝関節症に対する次世代インプラントの開発歯っぴー株式会社:テクノロジーで普及を拡張させる口腔ケア事業株式会社レストアビジョン:視覚再生遺伝子治療薬開発<個人3名>佐藤 拓己氏(東京工科大学):寿司を食べながらケトン体を高く保つ方法松本 成史氏(旭川医科大学):メンズヘルス指標に有効な新規「勃起力」計測装置の開発松本 佳津氏(愛知淑徳大学):長寿高齢社会を前提とした真に豊かな住空間をインテリアから考え、活用できる具体的な指標を作成する

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第11回日本製薬医学会年次大会開催のご案内(現地/web併催)

 一般財団法人日本製薬医学会は、2020年10月30日(金)、31日(土)に東京・日本橋ライフサイエンスビルでの開催を予定していた『第11回日本製薬医学会年次大会』を現地開催及びWeb開催の併催へと変更した。Webで参加する場合、参加登録者は会期中に全セッションを随時視聴可能である。また、後日、全参加者を対象としたWeb配信も予定されている[2020年11月14日(土)~11月23日(月)]。 開催概要は以下のとおり。【日時】2020年10月30日(金)~31日(土)【参加条件】登録方法:オンライン参加登録(10月31日まで。10月19日17時までは早期割引あり)参加費:ホームページ参照【テーマ】”産官患民学”連携による製薬医学の推進〜より良い医薬品を"1日も早く"患者さんとそのご家族にお届けするために〜【大会長】小居 秀紀氏(国立精神・神経医療研究センター)【大会概要】学会初日に開催される招待講演は、「医療イノベーションの推進に向けたPMDAの取組み」として、PMDA理事長の藤原 康弘氏に講演いただく。基調講演は、昨今ますます注目が高まっている疾患レジストリに関連し、「精神疾患領域における“産官患民学”連携~精神疾患レジストリ~」として、国立精神・神経医療研究センター病院長の中込 和幸氏にお願いしている。そのほか、シンポジウムでは、コロナ禍でのMA/MSL活動、医療現場と産学の協働に関するセッションや次世代医療基盤法とリアルワールドデータなどに着目した、最新の製薬医学に関連するセッションを皆さまへお届けする。【招待講演】10月30日(金) 13時10分~14時10分テーマ:医療イノベーションの推進に向けたPMDAの取組み座長:岩本 和也氏(日本製薬医学会 理事長)演者:藤原 康弘氏(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構[PMDA]理事長)【基調講演】10月31日(土) 11時30分~12時30分テーマ:精神疾患領域における“産官患民学”連携~精神疾患レジストリ~座長:小居 秀紀氏(第11回日本製薬医学会年次大会 大会長/国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター 情報管理・解析部長)演者:中込 和幸氏(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院長/理事)概略はこちら【お問い合わせ】一般財団法人日本製薬医学会 事務局〒108-0023 東京都港区芝浦4-15-33 芝浦清水ビル 株式会社 マディア 内E-mail:zymukyoku@japhmed.org

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不規則な月経周期、早期死亡リスクを増大/BMJ

 18~22歳、29~46歳時の月経周期の乱れ(不規則でサイクル期間が長い)は、70歳未満の早期死亡リスクの増大と関連することが明らかにされた。同関連は喫煙女性で、わずかだが強いことも示されたという。米国・ハーバード大学医学大学院のYi-Xin Wang氏らが、同国の看護師を対象とした前向きコホート試験「Nurses’ Health Study(NHS、看護師健康調査)II」の被験者約8万例を対象に行った大規模試験で明らかにした。不規則で長期の月経周期は、生殖年齢の女性においてよくみられ、主要な慢性疾患リスクの上昇と関連していることが知られている。一方でそのエビデンスは脆弱であった。BMJ誌2020年9月30日号掲載の報告。14~17歳、18~22歳、29~46歳時の月経期間・規則性と早期死亡の関連を検証 研究グループは、一生涯を通じた不規則で長期間の月経周期が、全死因死亡と関連しているかどうか、また、特定の早期(70歳未満)死亡を引き起こすかどうかを評価する検討を行った。 1993~2017年にNHS IIに参加し、心血管疾患、がん、糖尿病の既往がなく、14~17歳、18~22歳、29~46歳時の月経期間とその周期の規則性に関する情報を得られた女性7万9,505例を対象とした。 全死因死亡と特定の早期(70歳未満)死亡の発生について、多変量Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算して評価した。18~22歳、29~46歳時の月経不規則群、規則群に比べ早期死亡リスクは約1.4倍 追跡期間24年間に発生した早期死亡は1,975例で、死因はがんが894例、心血管疾患が172例だった。 同一年齢範囲群において、常に月経周期が不規則だった女性(月経不規則群)の追跡期間中の死亡率は、月経周期がきわめて規則的だった女性(月経規則群)に比べ高かった。1,000人年当たりの補正前死亡率は、14~17歳時の月経規則群1.05、同月経不規則群1.23であり、18~22歳時の月経規則群1.00、同月経不規則群1.37、29~46歳時の月経規則群1.00、同月経不規則群1.68だった。 追跡期間中の早期死亡に関する多変量補正後HRは、14~17歳時の月経不規則群vs.同月経規則群で1.18(95%CI:1.02~1.37)、18~22歳時の月経不規則群vs.同月経規則群では1.37(1.09~1.73)、29~46歳時の月経不規則群vs.同月経規則群では1.39(1.14~1.70)だった。 これらの関連性は、心血管疾患による早期死亡で最も強かった。長期で不規則な月経周期と早期死亡リスク増大の関連性は、現喫煙者でわずかだが強く認められた。

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糖尿病併存のCOVID-19治療、入院時のシタグリプチン投与が有用

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を巡っては、高血圧症や糖尿病などの併存疾患を有する患者で転帰不良となることがこれまでの研究で明らかになっており、併存疾患に応じた治療を模索する必要がある。イタリア・パヴィア大学のSebastiano Bruno Solerte氏らは、COVID-19治療のために入院した2型糖尿病患者を対象に、標準治療(インスリンなど)にDPP-4阻害薬シタグリプチンを追加したケースと、標準治療のみのコントロールを比較する多施設後ろ向きケースコントロール研究を行った。その結果、シタグリプチン追加群で死亡率の低下と臨床転帰の改善がみられた。Diabetes Care誌オンライン版2020年9月2日号に掲載。 本研究では、2020年3月1日~4月30日、北イタリアの複数の医療機関においてCOVID-19治療のために入院した、連続した2型糖尿病患者338例について、標準治療にシタグリプチンを追加した169例(シタグリプチン追加群)を、年齢・性別をマッチさせた169例(標準治療群)と比較した。主要評価項目は退院、死亡、臨床転帰の改善(7段階の評価スケールで、2ポイント以上の増加と定義)とした。 その結果、シタグリプチン追加群では、標準治療群に比べ死亡率の低下(18% vs.37%、ハザード比:0.44、95%信頼区間:0.29~0.66、p=0.0001)、臨床転帰の改善(60% vs.38%、p=0.0001)および退院者数の増加(120例 vs.89例、p=0.0008)がみられた。 著者らは、本研究で入院時のシタグリプチン治療が死亡率低下および臨床転帰の改善に寄与することが示されたが、進行中のランダム化プラセボ対照試験においてさらなる検証が必要であるとしている。

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メタボ健診の保健指導に心血管リスク低減効果なし~見直しが必要(解説:桑島巖氏)-1295

オリジナルニュースメタボ健診による特定保健指導に心血管リスク軽減効果なし(2020/10/13掲載) 特定健康診査とその結果に基づく特定保健指導は2008年(平成20年)から始まった全国規模の保健事業で、一般的にはメタボ健診と呼ばれているものである。メタボ健診では腹囲とBMIを測定するほか、血圧、HbA1c、LDLコレステロール値などを測定して、その結果により医師や保健師による指導を行うというシステムである。 そもそもの発端は、1989年に米国のKaplanによって提唱された概念で、上半身肥満・糖代謝異常・高中性脂肪血症・高血圧の4つが重なると心筋梗塞に罹患しやすいことから、「死の四重奏(Deadly Quartet)」と呼ばれていたものである。日本でいうメタボリック(メタボ)では、それらの上流に内臓脂肪蓄積を置いているのが、米国の死の四重奏と異なり、わが国では内臓脂肪症候群と呼ぶ場合もある。そこで日本の特定健康診査では腹囲を測定することに重点を置いているのが特徴であり、医療機関では腹部CTも測定するところもある。 しかし、そもそも米国の肥満と日本人の肥満はレベルが違い過ぎて、日本人への腹囲に重点を置く健康審査に、疑問を呈する声は少なくなかった。デンマークで約1万2,000人を対象として、健診を受けた群と受けなかった群を10数年間追跡した研究では、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患の発生や死亡率に両群で差がないという結果が発表された。 今回、京都大学の福間教授らによって行われた約7万5,000人を対象とした追跡調査の結果では、保健指導を受けた群では体重、BMIは1年後わずかに減少したものの3、4年後には元に戻っていた。さらに血圧、糖尿病、抗コレステロール血症に関しては、1年後も、3、4年後も改善効果は認められないという結果であった。 効果が乏しかった理由の1つとして、保健指導の対象となっていても実際に指導を受けた人は16%にすぎないことが関係している可能性もあるが、実際に受けた人だけを対象として解析を行ってもやはり心血管リスク低減効果はみられなかったという。保健指導を受けるべき人が受けていないという現実も重要である。 この制度には年間160億円の費用がかかっており、費用に見合った健康に関する有益性が見いだせないからには、その制度そのものの見直しが必要であると研究主任の福間教授は述べている。

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アンチエイジングのためのHealthy Statement作成が始動/日本抗加齢医学会

 近年、EBM普及推進事業Mindsの掲げるガイドライン作成マニュアルが普及したこともあり、各学会でガイドラインの改訂が活発化している。さまざまな専門分野の医師が集結する抗加齢医学においても同様であるが、病気を防ぐための未病段階の研究が多いこの分野において、ガイドライン作成は非常にハードルが高い。Healthy Statement-ガイドライン作成の第一歩 そこで、日本抗加齢医学会は第20回総会を迎える節目の今年、ワーキング・グループを設立し、今後のガイドライン作成、臨床への活用を目的にコンセンサス・レポートとしてHealthy Statement(以下、ステートメント)の作成を始めた。ステートメントの現況は、9月25日(金)~27日(日)に開催された第20回日本抗加齢医学会の会長特別プログラム1「Healthy Agingのための学会ステートメント(ガイドライン)作成に向けて」にて報告された。 ステートメントは健康寿命の延伸に関して科学的なエビデンスが蓄積されつつある4つの分野(食事、運動、サプリメント、性ホルモン)が検討されており、今回、新村 健氏(兵庫医科大学内科学総合診療科)、宮本 健史氏(熊本大学整形外科学講座)、阿部 康ニ氏(岡山大学脳神経内科学)、堀江 重郎氏(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学/日本抗加齢医学会理事長)らが、各部門の作成状況を発表した。各分野、抗加齢に特化したデータ抽出進む 『食事・カロリー制限とアンチエイジング』について講演した新村氏は、「抗加齢医学の領域において、食事療法・カロリー制限に関するエビデンスは十分と言えず、ガイドライン・診療の手引きを作成するだけの材料が揃っていないのが現状」とし、「食事療法の選択としては日本人での実行性と重要性を重視し、健常者または重篤な疾患を持たない者を対象者に想定している」と述べた。さらに今後の方針として「1つの食事療法に対して、複数のアウトカムから評価し、アンチエイジング医学の多様性を意識する」と話した。 『運動・エクササイズとアンチエイジング』については宮本氏がコメント。「運動介入と高齢者の骨密度、認知症や寿命延伸に関するデータをまとめ、CQを作成した。とくに運動介入は高齢者の骨密度の軽度の増加、認知症予防に強く推奨される。また要介護化の予防に中等度、寿命・健康寿命の延伸には弱く推奨される」など話した。 『サプリメント・機能性表示WGからの報告』について阿部氏が講演。「本ワーキング・グループは感覚器、歯科、循環器、消化器/免疫、皮膚科、脳神経の6領域において活動を行っている。サプリメントは分類上では機能性表示食品に該当するが、医薬品のように観察研究や介入研究が多くデータが豊富に揃っていた。評価文、根拠文献、評価上の要点、エビデンスグレードの各案が出揃い、完成近い品目もある」と解説した。このほか、アルツハイマー病治療において、アミロイドβの根本治療が全滅している現在、サプリメント活用のメリットにも言及した。 『テストステロン(男性ホルモン)』については堀江氏が既存のエビデンスとして、テストステロン低値の人の早逝、内蔵脂肪との関連、そのほか低テストステロンが惹起する身体機能の低下や合併症について説明。「テストステロンはメタボリックシンドローム、耐糖能異常、うつ病、フレイルなどの疾患との関連において十分なエビデンスが存在する。これらのデータを踏まえ、テストステロンは未病のための明日の健康指標になる。さらには、社会参画や運動量など人生のハツラツ度に影響するホルモンであることから、今日の健康指標にもつながる」とし、「今後、性ホルモン分野としてエストロゲン、テストステロンの両方について報告していく」と締めくくった。抗加齢医学の目標、ステートメント完成は2021年を目処 講演後、大会長の南野氏は「抗加齢医学は集団も然り、研究疾患もヘテロである。このヘテロジェナイティを認識したうえで、足りないエビデンスをわれわれで補うことが最終目標である」と述べた。これに堀江氏は「われわれは疾患ではなく、疾患に至る前段階を捉えて研究を行っている。診療ガイドラインの疾患アウトカムと異なるエビデンスが必要であり、それゆえ研究対象も従来の研究とは異なる。たとえば、高齢者の認知機能ではなく40歳くらいの若年者の機能探索がその1つである」と補足し、今後の抗加齢医学会の進むべき道について強調した。Healthy Statementは来年6月頃までにまとめられ、2021年の本学術集会にて発表される予定である。 なお、本講演は10月8日(木)~21日(水)の期間限定でケアネットYouTubeにて配信している。

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メタボ健診の特定保健指導に心血管リスク低減効果なし

 京都大学の福間 真悟氏らの疫学研究により、わが国の特定健康診査(メタボ健診)を受けた勤労世代の男性において、特定保健指導によって体重は1年後にわずかに減少したが、血圧、HbA1c、LDLコレステロールなどの心血管リスク因子改善が認められなかったという結果が発表された。著者らは「特定健康診査の費用が高額(年間約160億円)であることを考慮し、そのシステムを再評価する必要がある」としている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2020年10月5日号掲載の報告。特定保健指導を受けた人に血圧などの心血管リスクの軽減効果なし 著者らは、2013年に健診後、1年以上追跡できた40~74歳の男性約7万4,693人を1~4年間追跡した。腹囲85cm以上、高血圧、糖尿病などの心血管リスク因子を1つ以上有している人では、特定保健指導を受けることが必要とされていた。統計方法は、回帰不連続デザイン(regression discontinuity design:RDD)で実施された。RDDとは、ある連続変数(ここでは腹囲)の値が特定の値より高いか低いかで介入群(ここでは特定保健指導)に割り付けることにより、介入の効果を推定する方法である。本研究では、腹囲85cm以上か否かで分け、特定保健指導の効果におけるその後の腹囲、体重、BMIへの影響のほか、血圧、血糖値(HbA1c)やLDLコレステロールへの影響についても検討した。特定保健指導の内容は、トレーニングを受けた指導員による運動・食事の指導で、必要に応じて医療機関受診などの指導を受けることになっていた。なお、介入群と非介入群についてintention-to-treat解析を行ったが、実際に指導を受けた人は介入群の15.9%にすぎず、指導を受けた人についてtreatment-on-the treated(ToT)解析により検討した。 メタボ検診後の特定保健指導の効果を検証した主な結果は以下のとおり。・対象者の平均年齢は52.1歳、ベースラインでの平均腹囲は86.3cm(腹囲が閾値の-6~0cmの群では82.2cm、0~6cmの群では87.7cm)であった。・腹囲が閾値(85cm)より大きく特定保健指導を受ける群において、腹囲は1年後に-0.34 cm(p=0.02)、体重-0.29kg(p=0.005)、BMIは-0.10(p=0.008)とわずかではあるが減少した。しかし3、4年後には、有意差は消失し効果がみられなかった。・心血管リスクに関して、収縮期血圧、拡張期血圧、HbA1c、LDLコレステロールのいずれも1~4年間で改善が認められなかった。・実際に特定保健指導を受けた人のみで検討したToT解析では、1年後に体重は-1.56kg(p=0.02)、BMIは-0.61(p=0.01)と、いずれもわずかな減少がみられたが、血圧などの心血管リスクの軽減はみられなかった。専門家はこう見る:CLEAR!ジャーナル四天王メタボ健診の保健指導に心血管リスク低減効果なし~見直しが必要(解説:桑島 巖 氏)-1296 コメンテーター :桑島 巖( くわじま いわお ) 氏東京都健康長寿医療センター顧問J-CLEAR理事長

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ダパグリフロジン、CKDの転帰を改善/NEJM

 慢性腎臓病(CKD)患者では、糖尿病の有無にかかわらず、SGLT2阻害薬ダパグリフロジンはプラセボと比較して、推算糸球体濾過量(GFR)の持続的な50%以上の低下や末期腎不全、腎臓または心血管系の原因による死亡の複合の発生リスクを有意に低下させることが、オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J L Heerspink氏らが行った「DAPA-CKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年9月24日号に掲載された。CKD患者は、腎臓や心血管系の有害な転帰のリスクが高いとされる。SGLT2阻害薬は、2型糖尿病患者の大規模臨床試験において、糖化ヘモグロビンを低下させるとともに、腎臓や心血管系の転帰に良好な効果をもたらすと報告されている。一方、CKD患者における糖尿病の有無別のダパグリフロジンの有効性は知られていないという。DAPA-CKD試験には21ヵ国386施設が参加 DAPA-CKD試験は、CKD患者における2型糖尿病の有無別のダパグリフロジンの有効性と安全性を評価する目的の二重盲検プラセボ対照無作為化臨床試験(AstraZenecaの助成による)。21ヵ国386施設が参加し、2017年2月~2018年10月の期間(中国の一部の参加者は2020年3月まで)に無作為割り付けが行われた。 対象は、推算GFRが25~75mL/分/1.73m2体表面積で、尿中アルブミン/クレアチニン比(アルブミンはミリグラム[mg]、クレアチニンはグラム[g]で測定)が200~5,000のCKD患者であった。被験者は、ダパグリフロジン(10mg、1日1回)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、推算GFRの持続的な50%以上の低下、末期腎不全、腎臓または心血管系の原因による死亡の複合とした。 本DAPA-CKD試験は、2020年4月3日、独立データ監視委員会の提言に基づき、有効中止となった。DAPA-CKD試験の主要評価項目はダパグリフロジン群で良好 DAPA-CKD試験には4,304例が登録され、ダパグリフロジンとプラセボの両群に2,152例ずつが割り付けられた。全体の平均年齢(±SD)は61.8±12.1歳、1,425例(33.1%)が女性であった。ベースラインの平均推算GFRは43.1±12.4mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比中央値は949であり、2,906例(67.5%)が2型糖尿病の診断を受けていた。 フォローアップ期間中央値2.4年(IQR:2.0~2.7)の時点で、主要評価項目のイベントは、ダパグリフロジン群が2,152例中197例(9.2%)で、プラセボ群は2,152例中312例(14.5%)で発生した(ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.51~0.72、p<0.001、主要評価項目の1件のイベントの予防に要する治療数:19件、95%CI:15~27)。また、主要評価項目の個々の構成要素はいずれも、ダパグリフロジン群で良好だった。 DAPA-CKD試験の副次評価項目である推算GFRの持続的な50%以上の低下、末期腎不全、腎臓が原因の死亡の複合のHRは0.56(95%CI:0.45~0.68、p<0.001)、心血管系の原因による死亡または心不全による入院のHRは0.71(0.55~0.92、p=0.009)であった。また、ダパグリフロジン群で101例(4.7%)、プラセボ群で146例(6.8%)が死亡した(HR:0.69、95%CI:0.53~0.88、p=0.004)。 ダパグリフロジン群では、主要評価項目のイベント発現のHRは、2型糖尿病患者が0.64(95%CI:0.52~0.79)、非2型糖尿病患者は0.50(0.35~0.72)であり、いずれもプラセボ群と比較して良好で、2型糖尿病の有無で効果に差はなかった。 有害事象および重篤な有害事象の発生率は、全般に両群でほぼ同等であった。糖尿病性ケトアシドーシスは、ダパグリフロジン群では報告がなく、プラセボ群は2例に認められた。2型糖尿病のない患者では、糖尿病性ケトアシドーシスや重度低血糖はみられなかった。 著者は、「SGLT2阻害薬の腎保護作用は、2型糖尿病を伴わないCKD(ACE阻害薬が、腎不全の予防効果が示されている唯一の薬物療法である患者)という幅広い患者集団にまで拡大されることが確認され、ダパグリフロジンの有益な安全性プロファイルが確かめられた」としている。

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Dr.水谷の妊娠・授乳中の処方コンサルト

第1回 【妊娠中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗インフルエンザ薬第2回 【妊娠中】抗てんかん薬・抗うつ薬・麻酔薬第3回 【妊娠中】β刺激薬・チアマゾール・レボチロキシン第4回 【妊娠中】経口血糖降下薬・ワルファリン・制酸薬第5回 【妊娠中】抗リウマチ薬・抗アレルギー薬・タクロリムス外用薬第6回 【妊娠中】漢方薬・CT,MRI検査・悪性疾患の治療方針第7回 【授乳中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗ウイルス薬第8回 【授乳中】抗てんかん薬・向精神薬・全身麻酔第9回 【授乳中】胃腸薬・降圧薬・抗アレルギー薬第10回 【授乳中】ステロイド・乳腺炎への対処・造影検査後の授乳再開 臨床では妊娠中・授乳中であっても薬が必要な場面は多いもの。ですが、薬剤の添付文書を見ると妊婦や授乳婦への処方は禁忌や注意ばかり。必要な治療を行うために、何なら使ってもいいのでしょうか?臨床医アンケートで集めた実際の症例をベースとした30のQ&Aで、妊娠中・授乳中の処方の疑問を解決します。産科医・総合診療医の水谷先生が、実臨床で使える、薬剤選択の基準の考え方、そして実際の処方案を提示します。第1回 【妊娠中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗インフルエンザ薬臨床医アンケートで集めた妊婦・授乳婦への処方の疑問を症例ベースで解説・解決していきます。初回は、妊娠中の解熱鎮痛薬、抗菌薬、抗インフルエンザ薬の選択についてです。明日から使える内容をぜひチェックしてください。第2回 【妊娠中】抗てんかん薬・抗うつ薬・麻酔薬妊娠を機に服薬を自己中断してしまう患者は少なくありません。そして症状の悪化とともに受診することはよくあります。今回は抗てんかん薬、抗うつ薬の自己中断症例から妊娠中の薬剤選択について解説します。緊急手術時に必須の麻酔薬の処方についても必見です。第3回 【妊娠中】β刺激薬・チアマゾール・レボチロキシン喘息は妊娠によって症状の軽快・不変・増悪いずれの経過もとりえます。悪化した場合にβ刺激薬やステロイド吸入など一般的な処方が可能のか?甲状腺関連の疾患では妊娠の希望に応じて、バセドウ病患者はチアマゾールを継続していいのか?橋本病ではレボチロキシンを変更すべきなのか?といった実臨床で遭遇する疑問を解決します。第4回 【妊娠中】経口血糖降下薬・ワルファリン・制酸薬今回のクエスチョンは弁置換術既往の妊婦の抗凝固薬選択。ワルファリンからヘパリンへの変更は適切なのでしょうか?降圧薬の選択では妊娠週数に応じて使用可能な薬剤が変わる点を必ず押さえましょう!そのほか、妊娠中の内視鏡検査の可否とその判断、2型糖尿病の薬剤選択についても取り上げます。2型糖尿病管理は、薬剤選択とともに血糖管理目標についてもチェックしてください。第5回 【妊娠中】抗リウマチ薬・抗アレルギー薬・タクロリムス外用薬膠原病があっても妊娠を継続するにはどのような薬剤選択が必要なのでしょうか?メトトレキサートや抗リウマチ薬の処方変更について解説します。花粉症症状に対する抗アレルギー薬処方、アトピー性皮膚炎へのタクロリムス外用薬の継続可否など、臨床で頻用される薬剤についての解説もお見逃しなく。第6回 【妊娠中】漢方薬・CT,MRI検査・悪性疾患の治療方針妊娠中に漢方薬を希望する患者は多いですが、どういうときに漢方薬を使用すべきなのでしょうか?上気道炎事例を入り口に、妊婦のよくある症状に対する漢方薬の処方について解説します。CTやMRIの適応判断に必要な放射線量や妊娠週数に応じたリスクを押さえ、がん治療については永久不妊リスクのある治療をチェックしておきましょう。第7回 【授乳中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗ウイルス薬今回から授乳中の処方に関する質問を取り上げます。授乳中処方のポイントはRID(相対的乳児投与量)とM/P比(母乳/母体濃度比)。この2つの概念を理解して乳児への影響を適切に検討できるようになりましょう。今回取り上げるのは、解熱鎮痛薬、抗菌薬、抗インフルエンザ薬といった日常診療に必要不可欠な薬剤。インフルエンザについては、推奨される薬剤はもちろん、家庭内での感染予防に対する考え方なども必見です。第8回 【授乳中】抗てんかん薬・向精神薬・全身麻酔ほとんどの母親は服薬中も授乳継続を希望します。多くの薬剤は添付文書上で授乳中止が推奨されていますが、実は授乳を中断しなくてはならないケースはあまり多くありません。育児疲労が増悪因子になりやすい、てんかんや精神疾患について取り上げ、こうした場合の対応を解説します。治療と母乳育児を継続するための、薬剤以外のサポートについても押さえておきましょう。第9回 【授乳中】胃腸薬・降圧薬・抗アレルギー薬授乳中の処方で気を付けるべきは、薬剤の児への移行だけではありません。見落としがちなのが、乳汁分泌の促進・抑制をする薬剤があるということ。症例ベースのQ&Aで、胃腸薬、降圧薬、抗アレルギー薬など日ごろよく処方する薬の注意点を解説していきます。OTC薬で気を付けるべき薬剤やピロリ菌除菌の可否なども押さえておきましょう。第10回 【授乳中】ステロイド・乳腺炎への対処・造影検査後の授乳再開ステロイド全身投与で議論になるのは児の副腎抑制と授乳間隔。どちらも闇雲に恐れる必要はありません。乳腺炎については、投与可能な薬剤だけでなく再発を予防するための知識を押さえておきましょう。造影剤使用後の授乳再開については日米での見解の違いを臨床に活かすための知識を伝授します。

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1日1杯以上の飲酒が糖尿病患者の高血圧リスクと関連?

 これまで、2型糖尿病患者における飲酒と高血圧の関連は、十分に研究されていない。今回、米国・ウェイクフォレスト大学のJonathan J. Mayl氏らのデータ分析で、2型糖尿病患者では、適度な飲酒でも高血圧リスクに関連する可能性が示された。JAHA誌オンライン版2020年9月9日号での報告。 本研究は、成人の2型糖尿病患者を対象に心血管疾患(CVD)を軽減するための介入を比較したランダム化試験(ACCORD試験)の参加者1万200人(平均年齢約63歳)のデータを利用した。参加者は、軽度の飲酒(1~7杯/週)、中程度の飲酒(8~14杯/週)、重度の飲酒(15杯以上/週)の3群に分類された。なお、“1杯”の定義は12オンスのビール、6オンスのワインまたは1.5オンスのリキュールとした。 血圧については、ACC/AHA2017高血圧ガイドラインに従って、正常(収縮期血圧[SBP]120mmHg未満かつ拡張期血圧[DBP]80mmHg未満)、血圧上昇(SBP:120~129mmHgかつDBP:80mmHg未満)、ステージ1高血圧(SBP:130~139mmHgまたはDBP:80~89mmHg)、ステージ2高血圧(SBP:140mmHg以上またはDBP:90mmHg以上)に分類された。 主な結果は以下のとおり。・年齢、性別、人種、BMI、CVDの既往、現在・過去の喫煙状態、2型糖尿病の罹患年数を考慮した多変量ロジスティック回帰モデルでは、軽度の飲酒と血圧上昇または高血圧との間に関連は見られなかった。・中程度の飲酒では、血圧上昇(オッズ比[OR]:1.79、95%CI:1.04~3.11、p=0.03)、ステージ1高血圧(OR:1.66、95%CI:1.05~2.60、p=0.03)およびステージ2高血圧(OR:1.62、95%CI:1.03~2.54、p=0.03)と関連していた。・重度の飲酒では、血圧上昇(OR:1.91、95%CI:1.17~3.12、p=0.01)、ステージ1高血圧(OR:2.49、95%CI:1.03~6.17、p=0.03)およびステージ2高血圧(OR:3.04、95%CI:1.28~7.22、p=0.01)と関連していた。 著者らは「2型糖尿病患者は心血管リスクがとくに高いため、飲酒と高血圧の関係を理解することが非常に重要だ。週に7杯以上の飲酒は、2型糖尿病患者の高血圧に関連している可能性がある」と結論している。

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「ウテメリン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第20回

第20回 「ウテメリン」の名称の由来は?販売名ウテメリン錠®5mg※注射剤は錠剤のインタビューフォームと異なるため、今回は情報を割愛しています。ご了承ください一般名(和名[命名法])リトドリン塩酸塩(JAN)効能又は効果切迫流・早産用法及び用量通常、1回1錠(リトドリン塩酸塩として5mg)を1日3回食後経口投与する。なお、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.強度の子宮出血、子かん、前期破水例のうち子宮内感染を合併する症例、常位胎盤早期はく離、子宮内胎児死亡、その他妊娠の継続が危険と判断される患者[妊娠継続が危険と判断される。]2.重篤な甲状腺機能亢進症の患者[症状が増悪するおそれがある。]3.重篤な高血圧症の患者[過度の昇圧が起こるおそれがある。]4.重篤な心疾患の患者[心拍数増加等により症状が増悪するおそれがある。]5.重篤な糖尿病の患者[過度の血糖上昇が起こるおそれがある。また、糖尿病性ケトアシドーシスがあらわれることもある。]6.重篤な肺高血圧症の患者[肺水腫が起こるおそれがある。]7.妊娠16週未満の妊婦8.本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者※本内容は2020年10月7日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2016年2月(改訂第5版)医薬品インタビューフォーム「ウテメリン®錠5mg」2)キッセイ薬品:製品情報

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臨床上の疑問とリサーチ・クエスチョン【「実践的」臨床研究入門】第1回

学会抄録締切前に良くある? 風景指導医Aそろそろ〇〇学会の抄録締切だね。外来の慢性腎臓病患者さんに対する食事療法のデータも集まってきたし、何か演題出せないかな。専攻医Bデータ・セットはもうあるのですか?指導医Aうん、このUSBに途中までは入力してあるから、足りないところは補って統計解析してみてよ。専攻医Bところで、何について統計解析すれば良いのですか?指導医Aそうだなぁ。あまりよく考えてないけれど、“食事療法と患者予後”みたいな感じでどうかな。それで、どうにか有意差出してみてよ。よろしくね!専攻医Bわかりました、やってみます…(病棟業務で忙しいのに…泣)学会抄録締切直前になると、日本全国の病棟や医局でこのような風景がよくみられるのではないでしょうか。 この架空のシナリオに登場した指導医A先生の発言には、丸投げ感満載の若干パワハラ(アカハラ?)チックな面は置いておくとしても、キチンとした臨床研究を実践するうえで、いくつかの問題点があります。クリニカル・クエスチョンとリサーチ・クエスチョンクリニカル・クエスチョン(CQ)とは臨床現場で日々生じる「漠然とした臨床上の疑問」です。指導医A先生は「“食事療法と患者予後”みたいな感じ」と言っているので、“食事療法と患者予後”について何かCQを持っているのかもしれません。たとえば、「食事療法を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は本当に改善するのだろうか」というような。リサーチ・クエスチョン(RQ)はこの「漠然とした臨床上の疑問」であるCQを「具体的で明確な研究課題」に落とし込んだものです。別の言い方をすれば、RQとは「臨床研究で明らかにしたい臨床上の疑問を、具体的かつ明確に示した短い文」です。典型的なRQは「ある疾患を有する患者にAという治療を行った場合と、行わなかった場合を比較して生命予後に違いがあるだろうか?」というような疑問文の形をとることが多いです。また、RQは以下の4つの要素によって構成されることが一般的です。Patients(対象)Exposure(曝露要因)もしくはIntervention(介入)Comparison(比較対照)Outcome(アウトカム)これらの4つの要素は頭文字を並べてPECOまたはPICOと呼ばれます。このPE(I)COは「漠然とした臨床上の疑問」であるCQを「具体的で明確な研究課題」であるRQに「流し込む」際の、代表的な「鋳型」になります。また、この「鋳型」は臨床研究立案だけでなく臨床研究論文を読み解く際にも有用なツールとなりますので、PE(I)COの要素を意識しながら論文を読んでいただくと良いと思います。臨床上の疑問の定式化:PE(I)CO 指導医A先生の「“食事療法と患者予後”みたいな感じ」のままでは箸にも棒にもかかりません。この発言を忖度して、前述のとおり推察して考えた仮のCQを「食事療法を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか」、としたとします。このCQをもとに、丸投げされてかわいそうな専攻医B先生の身になって、まずはざっくりとRQの典型的な「鋳型」であるPE(I)COへ「流し込む」ことを考えてみましょう。この手順を「臨床上の疑問の定式化」とも言います。CQ:食事療法を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか↓P:慢性腎臓病患者 E:食事療法の遵守C:食事療法の非遵守O:腎予後このように、ざっくりとしたRQ(PECO)を立てたあとは、PECOそれぞれの要素を具体的かつ明確なカタチに磨き上げる必要があります。次回は、RQをブラッシュアップする過程について解説します。1)福原俊一. 臨床研究の道標 第2版. 健康医療評価研究機構;2017.2)木原雅子ほか訳. 医学的研究のデザイン 第4版. メディカル・サイエンス・インターナショナル;2014.3)矢野 栄二ほか訳. ロスマンの疫学 第2版. 篠原出版新社;2013.4)中村 好一. 基礎から学ぶ楽しい疫学 第4版. 医学書院;2020.

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週1回の基礎インスリン、1日1回と同等の血糖降下作用/NEJM

 2型糖尿病患者の治療において、insulin icodecの週1回投与は、インスリン グラルギンU100の1日1回投与と同程度の血糖降下作用を発揮し、安全性プロファイルは同等で低血糖の頻度も低いことが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行った「NN1436-4383試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年9月22日号に掲載された。基礎インスリン注射の回数を減らすことで、2型糖尿病患者の治療の受容やアドヒアランスが改善される可能性があると考えられている。insulin icodecは、糖尿病治療のために開発が進められている週1回投与の基礎インスリンアナログ製剤で、最高濃度到達時間は16時間、半減期は約1週間とされる。週1回と1日1回を比較する実薬対照無作為化第II相試験 本研究は、insulin icodecの週1回投与と、インスリン グラルギンU100の1日1回投与の有効性と安全性を比較する26週間の二重盲検ダブルダミー実薬対照無作為化第II相試験である(Novo Nordiskの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、長期のインスリン治療歴がなく、スクリーニングの180日以上前に2型糖尿病の診断を受け、DPP-4阻害薬投与の有無を問わず安定用量のメトホルミン毎日投与を受けており、糖化ヘモグロビン値が7.0~9.5%の患者であった。 被験者は、insulin icodecを70U/週で投与開始する群(icodec群)またはインスリン グラルギンU100を10U/日で投与開始する群(グラルギン群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。無作為割り付け後は、朝食前の患者の自己測定による血糖値70~108mg/dL(3.9~6.0mmol/L)を目標に、毎週、用量の調整が行われた。 主要エンドポイントは、糖化ヘモグロビン値のベースラインから26週までの変化とした。安全性エンドポイントは、低血糖エピソードやインスリン関連有害事象などであった。糖化ヘモグロビン値<7%達成割合:72% vs.68% 247例が登録され、icodec群に125例、グラルギン群には122例が割り付けられた。ベースラインの全体の平均年齢は59.6±8.9歳、男性が56.3%であった。平均糖尿病罹患期間は9.7±7.4年、平均BMIは31.3±4.6で、46.6%がDPP-4阻害薬の投与を受けていた。 糖化ヘモグロビン値のベースラインから26週までの推定平均変化率は、icodec群が-1.33ポイント、グラルギン群は-1.15ポイントで、icodec群は8.09±0.70%から6.69%へ、グラルギン群は7.96±0.65%から6.87%へと低下した。ベースラインからの変化の群間差は-0.18ポイントであった(95%信頼区間[CI]:-0.38~0.02、p=0.08)。 26週の時点で糖化ヘモグロビン値<7%を達成した患者の割合は、icodec群が72%、グラルギン群は68%であり(推定オッズ比:1.20、95%CI:0.98~2.13)、≦6.5%達成割合はそれぞれ49%および39%だった(1.47、0.85~2.52)。 患者の自己測定による血糖値は、9つの測定時点(朝食後、昼食後、夕食後、就寝時など)のすべてでicodec群がグラルギン群よりも低かった。また、icodec群では、9つの測定時点の平均自己測定血糖値のベースラインから26週までの低下が大きく、治療期間の最後の2週間における厳格な血糖値範囲(70~140mg/dL)内を維持する時間が長かった。空腹時血漿血糖値や体重の変化は両群間で差はなかった。 有害事象は、icodec群52.0%、グラルギン群50.8%で発現した。インスリン関連の主な有害事象の頻度に群間差はなく、過敏症(icodec群1例[0.8%] vs.グラルギン群2例[1.6%])や注射部位反応(5例[4.0%] vs.3例[2.5%])の頻度は低かった。ほとんどの有害事象は軽度で、試験薬関連と判定された重篤な有害事象は認められなかった。また、レベル2(血糖値<54mg/dL)およびレベル3(重度の認知機能障害を伴う)の低血糖の発現率は両群ともに低く、icodec群は0.53件/人年、グラルギン群は0.46件/人年であった(推定率比:1.09、95%CI:0.45~2.65)。 著者は、「これらの知見は、週1回インスリン投与はインスリン管理を容易にし、臨床的有益性をもたらすとともに、年間インスリン注射回数の365回から52回への削減を示唆する」としている。

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胃バイパス術による2型糖尿病改善効果はほとんどすべてが体重減少で説明できる(解説:住谷哲氏)-1291

 肥満外科手術bariatric surgeryが肥満合併2型糖尿病患者の糖代謝異常を大幅に改善することが明らかとなっている。肥満外科手術の術式には、本試験で用いられた胃バイパス術(Roux-en-Y gastric bypass surgery)、スリーブ状胃切除術(sleeve gastrectomy)が代表的であるが、わが国で保険適用となっているのは後者のみであり、主としてこちらの術式が用いられている。これまでの報告で、腸管の連続性intestinal continuityを解除する胃バイパス術が他の術式に比べて糖代謝異常改善効果が高いことが示唆されていたが、統計解析上交絡因子が十分に調整されていないとの批判があり疑問が持たれていた。本試験はその点を明らかにするため、胃バイパス術群と食事療法群との2群において、体重減少の程度(約18%)をマッチさせたうえで、前後における種々の糖代謝パラメータを詳細に比較検討した非ランダム化前向きコホート試験である。 試験に組み込まれたのは体重120kg、BMI 42kg/m2の著明な肥満合併2型糖尿病患者である。そもそもこのような患者において食事療法のみで20%近い体重減少が可能であるのか筆者には疑問であった。論文の方法には、「食事療法についての週1回の教育セッションを実施し、すべての食事はliquid shakes and prepackaged entreesで試験期間中提供された」と記載されていた。これでは摂取カロリーが不明であるが、Supplementを見ると、提供されたのは毎食OPTIFAST HP Shake Mix(160kcal)およびprepackaged entrees (200kcal)であり、1日1,080kcalであった。食事療法群が目標体重を達成したのは平均23週後であった。 主要評価項目は肝インスリン感受性の変化とされた。体重減少の前後で、オクトレオチド併用高インスリン正常血糖クランプ法を用いた詳細な肝、骨格筋でのインスリン感受性評価ならびに膵β細胞機能が評価された。結果は、体重減少量をマッチさせた両群において、評価したすべての項目に有意差を認めなかった。胃バイパス術における、体重減少とは独立した糖代謝改善メカニズムとして、これまで血漿分枝鎖アミノ酸濃度の減少、血中胆汁酸の上昇、腸内細菌叢の変化が提唱されている。本試験においてもこれらの3項目はすべて既報と同様の変化を示したが、両群での糖代謝改善の程度に差は認めなかった。以上から著者らは、胃バイパス術による糖代謝改善効果はほとんどすべて体重減少によるものであると結論している。 筆者の外来でもbariatric surgeryを受けた患者さんが増えてきている。ほとんどは著明な体重減少と2型糖尿病の改善を認めており、その威力を実感している。しかしこれまでにも指摘されていることであるが、手術を受けるまでには厳格な食事療法および心理的サポートが必須であり、手術にたどり着けない患者さんも少なくない。本試験で示された、BMI 42kg/m2の患者さんでも、摂取カロリーを制限することで体重が20%近く減量可能であった結果を肝に銘じておきたい。

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低血糖時の救急処置に初の点鼻薬、バクスミー発売/日本イーライリリー

 2020年10月2日、日本イーライリリーは、「低血糖時の救急処置」を効能・効果として、低血糖時救急治療剤「バクスミー点鼻粉末剤3mg」(一般名:グルカゴン)を発売したと発表した。本剤はグルカゴン点鼻粉末剤で、注射剤以外の低血糖治療剤として初の製剤。室温(1~30℃)で持ち運びができる1回使い切りの製剤で、看護者(家族等)が投与することにより重症低血糖の救急処置を行うことができる。また、鼻粘膜から吸収されるため、重症低血糖に陥り意識を失っている患者に対しても使用可能である。薬剤は噴霧器に充填されており、点鼻容器の先端を鼻に入れ、注入ボタンを押すことで緊急時に迅速かつ簡便に投与できる。 本剤の迅速性および確実性については、糖尿病患者の介護者20例(1型糖尿病患者および2型糖尿病患者の2親等以内の同居家族各10例)を対象とした国内単一施設非盲検部分的クロスオーバー模擬投与試験で検証されている。本剤の経鼻投与およびグルカゴン注射剤1mg筋肉内投与、双方の使用方法の説明を受けた看護者(家族等)がマネキンへの模擬投与を行い、その成功率を確認したところ、本剤を模擬投与した89.5%が全量投与に成功した。模擬投与完了までの平均時間は24秒だった。 製品概要製品名:バクスミー点鼻粉末剤3mg一般名:グルカゴン効能・効果:低血糖時の救急処置用法・用量:通常、グルカゴンとして1回3mgを鼻腔内に投与する製造発売承認日:2020年3月25日発売日:2020年10月2日薬価:8,368.60円(3mg1瓶)

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マスク着用時の口臭対策の基本とは?専門家がアドバイス

 新型コロナウイルス感染症流行の長期化に伴い、マスクを着けることが日常化している。マスク装着時に気になるのが自分の口臭の問題だ。乳酸菌食品メーカーであるオハヨーバイオテクノロジーズは「マスクの中の“臭い”気になりませんか?」と題したプレス資料の中で、口臭の原因と対策について解説している。マスク装着時の口臭対策は着用直前の口腔ケア 口臭の原因は、大きく分けて2つ。1つ目は「体」に原因がある場合で、消化不良や肝機能低下、糖尿病などが考えられる。2つ目は「口の中」に原因がある場合で、歯や舌の汚れや虫歯、歯周病などが要因となる。口臭のうち8割以上が口の中に原因があるとされ、とくに舌の上が白くなる舌苔の増加と歯周病菌による歯茎の炎症やメチルメルカプタンの発生による口臭が代表的な要因だ。 オハヨーバイオテクノロジーズの研究に協力する歯科医・日本大学客員教授の若林 健史氏は、「マスクの装着が常態化したことによって通常時よりも話す機会・時間が少なくなると口周りの動きが減る。それによって唾液の分泌が減少し、口内の循環が減ることで、悪玉菌が留まりやすくなって口内環境が悪化しやすくなる。マスクをしながらの会話は口呼吸になりやすいので口内に乾燥が起こることも考えられる」と述べる。 マスク着用時の口臭対策としては、「マスクを着用する直前に口腔ケアを徹底することが効果的。とくに舌苔を取り除き、増殖を抑制することが大切になる。舌ブラシで舌をきれいにし、歯ブラシ、歯間ブラシでブラッシングを徹底、さらに洗口液でうがいを行うとよい」(若林氏)。加えて、マスク着用の直前に匂いのきついものを食べないようにする、口内環境を整える良質な乳酸菌を食品などから摂り入れることも手軽にできるマスク着用時の口臭対策という。 医療者として、受診患者や入院患者の口臭に気づいた場合はどうすればよいか。「院内や関係医療機関の歯科衛生士を紹介して欲しい。入れ歯をしている方であれば、入れ歯の手入れを食事のすぐあとに徹底して行うことが効果的。口臭は原因によって対処方法が異なるので、専門家に相談することを薦めていただきたい」と若林氏はアドバイスする。 口臭対策品の広告等において、「日本人は欧米人に比べて口臭を持つ人が多い」とされることがあるが、「日本人の歯周疾患の保有率は上昇しているが1)、他国と比べて有意に多いというデータはない」(若林氏)という。多くの場合、口臭の原因は口内にあるため、ブレスケア製品でごまかすのではなく、しっかりとした歯磨きと舌ブラシでのケアがマスク着用時の口臭対策の基本になるという。

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2型DMのCVリスク、SGLT2阻害薬 vs. DPP-4阻害薬/BMJ

 大規模なリアルワールド観察試験において、2型糖尿病患者への短期のSGLT2阻害薬投与はDPP-4阻害薬投与と比べて、重篤な心血管イベントリスクを低減することが示された。カナダ・Jewish General HospitalのKristian B. Filion氏らが複数のデータベースを基に行った後ろ向きコホート研究の結果で、著者は「多種のSGLT2阻害薬にわたる結果であり、SGLT2阻害薬のクラス効果としての心血管効果を示すものであった」と述べている。2型糖尿病へのSGLT2阻害薬投与は増えており、無作為化試験でプラセボ投与と比べて主要有害心血管イベント(MACE)や心不全のリスクを抑制することが示されていた。BMJ誌2020年9月23日号掲載の報告。MACE発生を主要アウトカムに、DPP-4阻害薬と比較 研究グループは2013~18年の、カナダ7州の医療管理データベースと英国の臨床診療研究データリンク(Clinical Practice Research Datalink:CPRD)を基に、リアルワールドの臨床設定での2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の心血管イベントリスクを比較するCanadian Network for Observational Drug Effect Studies(CNODES)を実施した。 対象となった被験者は、SGLT2阻害薬の新規服用者20万9,867例と、期間条件付き傾向スコアでマッチングした同数のDPP-4阻害薬服用者で、平均追跡期間は0.9年だった。 主要アウトカムは、MACE(心筋梗塞、虚血性脳卒中、心血管死の複合)だった。副次アウトカムは、MACEの個々のイベント発生と、心不全、全死因死亡だった。 Cox比例ハザードモデルを用いて、アプローチどおりのSGLT2阻害薬服用者とDPP-4阻害薬服用者を比較した、試験地域特異的な補正後ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算して評価した。試験地域特異的結果は、ランダム効果メタ解析にて統合した。MACE発生リスク24%低下、SGLT2阻害薬のクラス効果を確認 MACE発生率比は、DPP-4群16.5/1,000患者年に対し、SGLT2群11.4/1,000患者年で、SGLT2阻害薬はMACE発生リスクを抑制したことが認められた(HR:0.76、95%CI:0.69~0.84)。 個別に見ても、心筋梗塞(SGLT2群5.1 vs.DPP-4群6.4/1,000患者年、HR:0.82[95%CI:0.70~0.96])、心血管死(3.9 vs.7.7、0.60[0.54~0.67])、心不全(3.1 vs.7.7、0.43[0.37~0.51])、全死因死亡(8.7 vs.17.3、0.60[0.54~0.67])で、同様にリスクの抑制がみられた。虚血性脳卒中についても抑制効果はみられたが、やや控えめだった(2.6 vs.3.5、0.85[0.72~1.01])。 個々のSGLT2阻害薬についてみるとMACEへの効果は類似しており、DPP-4阻害薬とのHRは、カナグリフロジン0.79(95%CI:0.66~0.94)、ダパグリフロジン0.73(0.63~0.85)、エンパグリフロジン0.77(0.68~0.87)だった。

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HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation公開/日本腎臓学会

 日本腎臓学会は透析患者・保存期腎不全患者用の経口腎性貧血治療薬について「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation」を9月29日に学会ホームページ上に公開した。 HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendationは3つに章立てられており、1.総論、2.推奨(どのような患者に使用することが望ましいか、鉄補充をどうすることが望ましいか)、3.注意点(悪性腫瘍、糖尿病網膜症・加齢黄斑変性症、肝機能異常、高血圧、高カリウム血症、血栓塞栓症、血管石灰化、肺高血圧症/心不全、嚢胞の増大、脂質代謝への影響)が記載されている。HIF-PH阻害薬の適応患者と注意点 2019年、世界に先駆け日本で発売されたHIF-PH(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素)阻害薬は、既存の注射薬のエリスロポエチン製剤(ESA: erythropoiesis stimulating agents)とは異なる作用機序を有し、経口薬で全身性の作用を伴う可能性のある腎性貧血治療薬である。保存期患者では注射からの切り替えにより身体への負担が軽減されること、 ESA効果不十分例では切り替えによる効果が期待されている。 一方で、がんや網膜疾患など血管新生が疾患の増悪に働くような病態では、HIFによる防御機構の発動に起因する副作用の可能性も懸念されている。そのような併存疾患を有する患者には、HIF-PH阻害薬投与前の精査、HIF-PH阻害薬投与中の体調変化に十分留意する必要があることから、腎臓内科医のみならず多くの臨床医にこのHIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendationを一読いただきたい。 なお、HIF-PH阻害薬は2019年から現在までにロキサデュスタット(商品名:エベレンゾ、アステラス製薬)、バダデュスタット(同:バフセオ、田辺三菱製薬)、ダプロデュスタット(同:ダーブロック、グラクソ・スミスクライン)の3剤が発売され、今後更に2剤が上市される予定である。

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